(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061421
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】排泄物処理材の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
B01J 2/20 20060101AFI20230425BHJP
A01K 1/015 20060101ALI20230425BHJP
B01J 2/00 20060101ALI20230425BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
B01J2/20
A01K1/015 B
B01J2/00 B
B01J20/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171292
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】321000026
【氏名又は名称】株式会社大貴
(74)【代理人】
【識別番号】100179327
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 憲正
(72)【発明者】
【氏名】吉永 隼士
【テーマコード(参考)】
2B101
4G004
4G066
【Fターム(参考)】
2B101AA13
2B101AA20
2B101GB05
4G004BA02
4G004LA06
4G066AB29B
4G066AB30B
4G066AC11B
4G066AC12B
4G066AC17B
4G066AC37B
4G066AC39B
4G066FA21
4G066FA27
4G066FA34
(57)【要約】
【課題】複数の粒状体間の密度のばらつきを小さく抑えることのできる排泄物処理材の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】製造装置は、複数の粒状体からなる排泄物処理材を製造する装置であって、造粒機10を備えている。造粒機10は、被造粒材料を押出造粒することにより、各粒状体を構成する造粒物を形成する。造粒機10は、ダイス12、及びローラー16を有している。ダイス12には、被造粒材料を通過させる複数の貫通孔13が設けられている。ローラー16は、中心軸A1の周りに公転しながら、被造粒材料を各貫通孔13に押し込む。ダイス12の温度は、押出造粒時、中心軸A1から遠ざかるにつれて次第に高くなる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の粒状体からなる排泄物処理材を製造する方法であって、
押出造粒機を用いて被造粒材料を押出造粒することにより、前記各粒状体を構成する造粒物を形成する造粒工程を含み、
前記押出造粒機は、前記被造粒材料を通過させる複数の貫通孔が設けられたダイス、及び前記ダイスの中心軸の周りに公転しながら前記被造粒材料を前記各貫通孔に押し込むローラーを有し、
前記ダイスの温度は、押出造粒時、前記中心軸から遠ざかるにつれて次第に高くなることを特徴とする排泄物処理材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記ダイスの温度の最大値と最小値との差は、10℃以上である排泄物処理材の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記ダイスの温度の最大値と最小値との差は、40℃以下である排泄物処理材の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記押出造粒機は、前記ダイスを第1の温度に加熱する第1のヒーターを有し、
前記第1のヒーターは、前記ダイスの有効領域の外側に設けられている排泄物処理材の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記押出造粒機は、前記ダイスを前記第1の温度よりも低い第2の温度に加熱する第2のヒーターを有し、
前記第2のヒーターは、前記ダイスの径方向について、前記第1のヒーターよりも内側に設けられている排泄物処理材の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記複数の貫通孔は、互いに等しい長さを有する排泄物処理材の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記複数の貫通孔は、互いに等しい径を有する排泄物処理材の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記被造粒材料は、有機物を主材料とする排泄物処理材の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記各粒状体は、吸水性を有しており、排泄物を吸収することにより当該排泄物を処理する排泄物処理材の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記造粒工程において形成された前記造粒物を被覆材料で被覆する被覆工程を含む排泄物処理材の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記被覆工程においては、前記造粒工程において形成された前記造粒物が収容された容器を回転させながら、当該造粒物の周囲に前記被覆材料を付着させる排泄物処理材の製造方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記被覆材料は、有機物を主材料とする排泄物処理材の製造方法。
【請求項13】
複数の粒状体からなる排泄物処理材を製造する装置であって、
被造粒材料を通過させる複数の貫通孔が設けられたダイス、及び前記ダイスの中心軸の周りに公転しながら前記被造粒材料を前記各貫通孔に押し込むローラーを有し、前記被造粒材料を押出造粒することにより、前記各粒状体を構成する造粒物を形成する押出造粒機を備え、
前記ダイスの温度は、押出造粒時、前記中心軸から遠ざかるにつれて次第に高くなることを特徴とする排泄物処理材の製造装置。
【請求項14】
請求項13に記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記ダイスの温度の最大値と最小値との差は、10℃以上である排泄物処理材の製造装置。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記ダイスの温度の最大値と最小値との差は、40℃以下である排泄物処理材の製造装置。
【請求項16】
請求項13乃至15の何れかに記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記押出造粒機は、前記ダイスを第1の温度に加熱する第1のヒーターを有し、
前記第1のヒーターは、前記ダイスの有効領域の外側に設けられている排泄物処理材の製造装置。
【請求項17】
請求項16に記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記押出造粒機は、前記ダイスを前記第1の温度よりも低い第2の温度に加熱する第2のヒーターを有し、
前記第2のヒーターは、前記ダイスの径方向について、前記第1のヒーターよりも内側に設けられている排泄物処理材の製造装置。
【請求項18】
請求項13乃至17の何れかに記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記複数の貫通孔は、互いに等しい長さを有する排泄物処理材の製造装置。
【請求項19】
請求項13乃至18の何れかに記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記複数の貫通孔は、互いに等しい径を有する排泄物処理材の製造装置。
【請求項20】
請求項13乃至19の何れかに記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記被造粒材料は、有機物を主材料とする排泄物処理材の製造装置。
【請求項21】
請求項13乃至20の何れかに記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記各粒状体は、吸水性を有しており、排泄物を吸収することにより当該排泄物を処理する排泄物処理材の製造装置。
【請求項22】
請求項21に記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記押出造粒機により形成された前記造粒物を被覆材料で被覆する被覆機を備える排泄物処理材の製造装置。
【請求項23】
請求項22に記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記被覆機は、前記押出造粒機により形成された前記造粒物を収容する容器を有し、当該造粒物が収容された前記容器を回転させながら、当該造粒物の周囲に前記被覆材料を付着させる排泄物処理材の製造装置。
【請求項24】
請求項22又は23に記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記被覆材料は、有機物を主材料とする排泄物処理材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄物処理材を製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の排泄物処理材としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された排泄物処理材は、動物又は人の排泄物の処理に用いられる排泄物処理材であって、吸水性を有する複数の粒状体からなる。各粒状体を構成する粒状の芯部は、造粒機を用いて形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の造粒機としては、被造粒材料(芯部を構成する材料)を通過させる複数の貫通孔が設けられたダイス、及びダイスの中心軸の周りに公転しながら被造粒材料を各貫通孔に押し込むローラーを有する押出造粒機が一般に用いられる。
【0005】
しかしながら、かかる押出造粒機においては、ダイスの中心軸から遠ざかるにつれて、ローラーが被造粒材料を押し込む力が弱くなる。すなわち、ダイスの位置(中心軸からの距離)によって、ローラーが被造粒材料を押し込む力の強さが異なる。かかる力の差は、貫通孔を通過する被造粒材料に加わる圧力の差となる。従来、このようにして生じる圧力差が、得られる複数の粒状体間での密度のばらつきの原因となっていた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、複数の粒状体間の密度のばらつきを小さく抑えることのできる排泄物処理材の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による排泄物処理材の製造方法は、複数の粒状体からなる排泄物処理材を製造する方法であって、押出造粒機を用いて被造粒材料を押出造粒することにより、上記各粒状体を構成する造粒物を形成する造粒工程を含み、上記押出造粒機は、上記被造粒材料を通過させる複数の貫通孔が設けられたダイス、及び上記ダイスの中心軸の周りに公転しながら上記被造粒材料を上記各貫通孔に押し込むローラーを有し、上記ダイスの温度は、押出造粒時、上記中心軸から遠ざかるにつれて次第に高くなることを特徴とする。
【0008】
この製造方法においては、ダイス及びローラーを有する押出造粒機が用いられる。押出造粒時のダイスの温度は、その中心軸から遠ざかるにつれて次第に高くなる。被造粒材料を貫通孔に押し込む力の強さが等しい場合、ダイスの温度が高い部分程、被造粒材料が柔らかくなり、被造粒材料を高密度で造粒しやすくなる。それゆえ、中心軸から比較的遠い位置(被造粒材料を押し込む力が比較的弱い位置)におけるダイスの温度を比較的高くし、中心軸に比較的近い位置(被造粒材料を押し込む力が比較的強い位置)におけるダイスの温度を比較的低くすることにより、造粒物ひいては粒状体の密度のばらつきを小さく抑えることができる。
【0009】
また、本発明による排泄物処理材の製造装置は、複数の粒状体からなる排泄物処理材を製造する装置であって、被造粒材料を通過させる複数の貫通孔が設けられたダイス、及び上記ダイスの中心軸の周りに公転しながら上記被造粒材料を上記各貫通孔に押し込むローラーを有し、上記被造粒材料を押出造粒することにより、上記各粒状体を構成する造粒物を形成する押出造粒機を備え、上記ダイスの温度は、押出造粒時、上記中心軸から遠ざかるにつれて次第に高くなることを特徴とする。
【0010】
この製造装置においては、ダイス及びローラーを有する押出造粒機が設けられている。押出造粒時のダイスの温度は、その中心軸から遠ざかるにつれて次第に高くなる。被造粒材料を貫通孔に押し込む力の強さが等しい場合、ダイスの温度が高い部分程、被造粒材料が柔らかくなり、被造粒材料を高密度で造粒しやすくなる。それゆえ、中心軸から比較的遠い位置(被造粒材料を押し込む力が比較的弱い位置)におけるダイスの温度を比較的高くし、中心軸に比較的近い位置(被造粒材料を押し込む力が比較的強い位置)におけるダイスの温度を比較的低くすることにより、造粒物ひいては粒状体の密度のばらつきを小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の粒状体間の密度のばらつきを小さく抑えることのできる排泄物処理材の製造方法及び製造装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による排泄物処理材の一実施形態を示す模式図である。
【
図3】本発明による排泄物処理材の製造装置の一実施形態を示す構成図である。
【
図7】ダイス12の有効領域12aについて説明するための平面図である。
【
図8】被覆機20の構造を説明するための図である。
【
図9】本発明による排泄物処理材の製造方法の一実施形態における造粒工程を説明するための図である。
【
図10】本発明による排泄物処理材の製造方法の一実施形態における造粒工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明による排泄物処理材の一実施形態を示す模式図である。排泄物処理材6は、排泄物(主に尿)の処理に用いられる排泄物処理材であって、排泄物を処理するための複数の粒状体30からなる。各粒状体30の粒径は、例えば、5mm以上20mm以下である。ここで、粒状体30の粒径は、粒状体30を内包しうる最小の球の直径として定義される。排泄物処理材6は、猫や犬等の動物の排泄物を処理する動物用の排泄物処理材であってもよいし、人の排泄物を処理する人用の排泄物処理材であってもよい。排泄物処理材6は、例えば、複数の粒状体30が箱状のトイレに敷設された状態で使用される。
【0015】
本実施形態において各粒状体30は、吸水性を有しており、排泄物を吸収することにより当該排泄物を処理する。粒状体30が吸水性を有するというには、次の試験により測定される液通過率が60%未満であることが必要である。まず、内径10cm、目開き1mmの篩に50g相当の粒状体30(サンプル)を入れる。篩の下には、空のビーカーを設置する。そして、サンプルに対し、外筒の内径3cm、筒先の内径4mmのシリンジ(テルモ社製60mlシリンジ)を用いて、30mlの水を10秒かけて滴下する。1分間放置した後、ビーカー内の水量を計測する。計測した水量の滴下した水量(30ml)に対する割合をもって液通過率とする。すなわち、ビーカー内の水量が18ml未満であれば、液通過率が60%未満となるため、粒状体30が吸水性を有するといえる。
【0016】
図2は、粒状体30を示す模式図である。粒状体30は、尿を取り込んで粒状体30の内部に保持する。粒状体30は、芯部32(造粒物)及び被覆部34を有している。芯部32は、略円柱状に造粒されている。芯部32は、尿を吸水及び保水する機能を有する。芯部32は、吸水性材料を含有している。芯部32は、吸水性材料を主材料としている。ここで、芯部32の主材料とは、芯部32を構成する1又は2以上の材料のうち、当該芯部32に占める重量割合が最大のものをいう。
【0017】
芯部32は、吸水性材料のみからなってもよいし、吸水性材料と他の材料とからなってもよい。吸水性材料は、有機物であることが好ましい。有機物である吸水性材料としては、例えば、紙類、茶殻、プラスチック類又はオカラを用いることができる。芯部32は、接着性材料を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。接着性材料としては、例えば、吸水性ポリマー、澱粉、CMC(カルボキシメチルセルロース)、PVA(ポリビニルアルコール)、又はデキストリンを用いることができる。吸水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等のアクリル系吸水性ポリマーが挙げられる。
【0018】
紙類は、パルプを主体とする材料をいう。紙類としては、例えば、通常の紙の他にも、塩ビ壁紙分級物(塩ビ壁紙を分級することにより得られる紙)、フラッフパルプ、製紙スラッジ、パルプスラッジ等が挙げられる。プラスチック類としては、例えば、紙おむつ分級物(紙おむつを分級することにより得られるプラスチック)を用いてもよい。オカラは、乾燥オカラであることが好ましい。
【0019】
被覆部34は、芯部32を覆っている。被覆部34は、芯部32の周囲の全体を覆っていてもよいし、芯部32の周囲の一部のみを覆っていてもよい。被覆部34は、使用時に尿を吸収した粒状体30どうしを接着させて固まりにする機能を有する。被覆部34も、吸水性材料を主材料としている。被覆部34の主材料の定義は、芯部32の主材料の定義と同様である。被覆部34に含有される吸水性材料も、有機物であることが好ましい。被覆部34は、接着性材料を含有している。
【0020】
図3は、本発明による排泄物処理材の製造装置の一実施形態を示す構成図である。製造装置1は、上述の排泄物処理材6を製造する装置であって、造粒機10、及び被覆機20を備えている。
【0021】
図4及び
図5は、それぞれ、造粒機10を示す平面図及び底面図である。また、
図6は、
図4のVI-VI線に沿った端面図である。造粒機10は、被造粒材料(芯部32を構成する材料)を押出造粒することにより、各粒状体30を構成する造粒物(芯部32)を形成する押出造粒機である。
【0022】
造粒機10は、ダイス12、ヒーター14a(第1のヒーター)、ヒーター14b(第2のヒーター)、ローラー16、及びカッター18を有している。ダイス12は、平面視で円形をしている。ダイス12の厚みは、均一である。ダイス12には、被造粒材料を通過させる複数の貫通孔13が設けられている。なお、以下の記述において「複数の貫通孔13」は、別段の断りがない限り、ダイス12に設けられた全ての貫通孔13を指すものとする。複数の貫通孔13は、互いに等しい長さを有している。また、複数の貫通孔13は、互いに等しい径を有している。各貫通孔13の断面(ダイス12の厚み方向に垂直な断面)の形状は、円形である。また、ダイス12の厚み方向(
図6の上下方向)について、各貫通孔13の径は一定である。複数の貫通孔13は、ダイス12の略全面にわたって点在している。
【0023】
ダイス12の温度は、押出造粒時、ダイス12の中心軸A1から遠ざかるにつれて次第に高くなる。すなわち、ダイス12の温度は、ダイス12の径方向外側に進むにつれて次第に高くなる。ここで、ダイス12の中心軸A1とは、平面視でダイス12の中心を通り、ダイス12の厚み方向に延びる仮想的な直線をいう。それゆえ、中心軸A1から比較的遠い位置に存在する貫通孔13の内面の温度は、中心軸A1に比較的近い位置に存在する貫通孔13の内面の温度よりも高い。ダイス12の温度の最大値と最小値との差は、10℃以上40℃以下であることが好ましい。
【0024】
ダイス12の温度は、ダイス12の径方向の全体において次第に高くなってもよいが、ダイス12の径方向の一部においてのみ次第に高くなってもよい。ただし、ダイス12の温度は、ダイス12の有効領域12aの全体において、次第に高くなることが好ましい。ここで、有効領域12aとは、
図7に示すように、平面視で、貫通孔13を1つも含まない最大の円C1と全ての貫通孔13を含む最小の円C2とで囲まれたドーナツ状の領域をいう。円C1及び円C2の中心は、ダイス12の中心に一致する。円C1は、中心に最も近い貫通孔13の一部さえも含まない。一方、円C2は、中心から最も遠い貫通孔13の全体を含む。
【0025】
ヒーター14a及びヒーター14bは、ダイス12の温度を制御するために設けられている。ヒーター14aは、有効領域12aの外側に設けられている。本実施形態においてヒーター14aは、ダイス12を包囲するようにダイス12の側面に取り付けられている。ヒーター14aは、環状に設けられている。ヒーター14aは、ダイス12を第1の温度に加熱する。第1の温度は、例えば、90℃以上140℃以下である。ヒーター14bは、ダイス12の径方向について、ヒーター14aよりも内側に設けられている。すなわち、ダイス12の中心軸A1からヒーター14bまでの距離は、中心軸A1からヒーター14aまでの距離よりも小さい。本実施形態においてヒーター14bは、ダイス12の有効領域12a内に埋め込まれている。ヒーター14bも、環状に設けられている。ヒーター14bは、ダイス12を第2の温度に加熱する。第2の温度は、第1の温度よりも低い。第2の温度は、例えば、80℃以上120℃以下である。なお、ヒーター14a,14bは、誘導加熱によりダイス12を加熱してもよい。
【0026】
ダイス12の表面側(被造粒材料の入口側)には、ローラー16が設けられている。ローラー16は、円柱状をしており、その中心軸がダイス12の径方向に延びている。本実施形態においては、複数(具体的には4つ)のローラー16が設けられている。各ローラー16の一端は、ダイス12の表面の中心部に位置する回転軸17に連結されている。回転軸17の中心軸は、ダイス12の中心軸A1に一致する。回転軸17は、その中心軸の周りに回転(自転)するように構成されている。各ローラー16は、その中心軸の周りに回転(自転)しつつ、回転軸17と共にダイス12の中心軸A1の周りに回転(公転)する。このように、ローラー16は、中心軸A1の周りに公転しながら、被造粒材料を各貫通孔13に押し込む。ローラー16は、ダイス12に設けられた全ての貫通孔13上を通過することが可能である。
【0027】
ダイス12の裏面側(被造粒材料の出口側)には、カッター18が設けられている。カッター18は、ダイス12の裏面の中心部からダイス12の径方向に延びている。このカッター18は、ダイス12の裏面に沿って回転しながら、各貫通孔13から押し出された被造粒材料を切断する。詳細には、カッター18は、ダイス12の裏面に平行な面内で、ダイス12の中心軸A1の周りに回転する。なお、カッター18は、上述のローラー16とは独立して回転できるように構成されている。カッター18は、ダイス12に設けられた全ての貫通孔13上を通過することが可能である。
【0028】
図3に戻って、被覆機20は、造粒機10により形成された各造粒物(芯部32)を粉体状の被覆材料(被覆部34を構成する材料)で被覆するものである。被覆機20は、
図8に示すように、ドラム22(容器)を有している。ドラム22は、略円筒状をしており、回転可能に設けられている。具体的には、ドラム22は、その中心軸の周りに回転可能である。ドラム22の中心軸は、水平である。ドラム22には、造粒機10により形成された複数の芯部32が収容される。被覆機20は、これらの芯部32が収容されたドラム22を回転させながら、各芯部32の周囲に被覆材料を付着させる。
【0029】
続いて、製造装置1の動作と併せて、本発明による排泄物処理材の製造方法の一実施形態を説明する。この製造方法は、造粒工程及び被覆工程を含むものである。造粒工程は、造粒機10を用いて被造粒材料を押出造粒することにより、芯部32を形成する工程である。被造粒材料は、有機物を主材料とすることが好ましい。被造粒材料は、有機物のみからなってもよいし、有機物と無機物との混合物からなってもよい。なお、造粒に先立って、被造粒材料には、粉砕、混練、加水等の前処理が必要に応じて行われる。
【0030】
造粒工程においては、
図9に示すように、ダイス12の表面側に供給された被造粒材料M1が、ダイス12の表面上を転動するローラー16によって貫通孔13に押し込まれる。このとき、ダイス12の温度は、中心軸A1から遠ざかるにつれて次第に高くなるように制御される。貫通孔13に押し込まれた被造粒材料M1は、ダイス12の裏面側に押し出される。被造粒材料M1が押し出される際、ダイス12の裏面側では、カッター18が回転し続けている。これにより、貫通孔13から押し出された被造粒材料M1は、
図10に示すように、カッター18によって切断される。このようにして切断された部分が、造粒物(芯部32)となる。
【0031】
被覆工程は、造粒工程において形成された各造粒物を被覆材料で被覆する工程である。被覆工程においては、造粒工程において形成された芯部32をドラム22(
図8参照)内に収容した後、ドラム22を回転させながら、各芯部32の周囲に被覆材料を付着させる。被覆材料は、有機物を主材料とすることが好ましい。被覆材料は、有機物のみからなってもよいし、有機物と無機物との混合物からなってもよい。被覆材料の付着は、例えば、散布又は噴霧により行うことができる。これにより、被覆部34が形成される。その後、篩分け、乾燥等の後処理が必要に応じて行われる。以上により、複数の粒状体30からなる排泄物処理材6が得られる。
【0032】
本実施形態の効果を説明する。本実施形態においては、ダイス12及びローラー16を有する造粒機10が用いられている。押出造粒時のダイス12の温度は、中心軸A1から遠ざかるにつれて次第に高くなる。被造粒材料を貫通孔13に押し込む力の強さが等しい場合、ダイス12の温度が高い部分程、被造粒材料が柔らかくなり、被造粒材料を高密度で造粒しやすくなる。被造粒材料が柔らかくなると、造粒時に被造粒材料が凝集しやすくなるからである。それゆえ、中心軸A1から比較的遠い位置(被造粒材料を押し込む力が比較的弱い位置)におけるダイス12の温度を比較的高くし、中心軸A1に比較的近い位置(被造粒材料を押し込む力が比較的強い位置)におけるダイス12の温度を比較的低くすることにより、造粒物(芯部32)ひいては粒状体30の密度のばらつきを小さく抑えることができる。したがって、複数の粒状体30間の密度のばらつきを小さく抑えることのできる排泄物処理材6の製造方法及び製造装置1が実現されている。
【0033】
ところで、粒状体30の密度のばらつきは、吸水性能等の品質のばらつきにもつながる。この点、本実施形態においては、ダイス12の中心軸A1からの距離の違い(ローラー16が被造粒材料を押し込む力の違い)に起因する圧力差を補償することにより、粒状体30の密度のばらつきを小さく抑えている。これにより、排泄物処理材6全体の均質性を高めることができる。
【0034】
上述の圧力差を充分に補償する観点から、ダイス12の温度の最大値と最小値との差は、10℃以上であることが好ましい。他方、ダイス12の温度の最大値と最小値との差が大きすぎると、過補償となりかねない。すなわち、中心軸A1から比較的遠い位置に存在する貫通孔13を通じて形成された造粒物の密度が中心軸A1に比較的近い位置に存在する貫通孔13を通じて形成された造粒物の密度を大きく逆転し、結果として粒状体30間の密度のばらつきを小さく抑えられない事態となりかねない。かかる観点から、ダイス12の温度の最大値と最小値との差は、40℃以下であることが好ましい。
【0035】
造粒機10は、ダイス12の有効領域12aの外側に設けられたヒーター14aを有している。これにより、簡易な構成で、ダイス12における所望の温度分布(中心軸A1から遠ざかるにつれて次第に高くなる温度分布)を実現することができる。
【0036】
造粒機10は、ヒーター14aよりも内側に設けられたヒーター14bを有している。これにより、ヒーター14aしか設けられていない場合に比して、ダイス12における所望の温度分布を容易に実現することができる。
【0037】
ところで、貫通孔13の長さが大きい程、被造粒材料に加わる圧力が高くなる。それゆえ、複数の貫通孔13の長さが一定でない場合、その長さの違いも、造粒物の密度差(長さが比較的小さい貫通孔13を通じて形成される造粒物の密度と、長さが比較的大きい貫通孔13を通じて形成される造粒物の密度との差)に影響を与える。この点、本実施形態において複数の貫通孔13は、互いに等しい長さを有している。この場合、貫通孔13の長さは造粒物の密度差に影響を与えないため、密度差のコントロールが容易になる。すなわち、密度差に影響を与える因子がダイス12の温度に絞られるため、貫通孔13の長さ及びダイス12の温度の双方が因子になる場合に比して、容易に密度差を補償することができる。
【0038】
複数の貫通孔13は、互いに等しい径を有している。この場合、互いに等しい径を有する複数の粒状体30が得られる。これにより、排泄物処理材6全体の均質性を一層高めることができる。
【0039】
各粒状体30は、吸水性を有しており、排泄物を吸収することにより当該排泄物を処理する。この場合、排泄物を粒状体30の内部に閉じ込めることにより、排泄物から発生した悪臭が周囲に漂うのを抑制することができる。
【0040】
被造粒材料が有機物を主材料とする場合、焼却処分に適した粒状体30を得るのに有利である。被覆材料も有機物を主材料とする場合、焼却処分に適した粒状体30を得るのに一層有利である。このように粒状体30が焼却処分に適していれば、使用済みの排泄物処理材6を可燃ゴミとして捨てることもできるため、ユーザにとっての利便性が向上する。
【0041】
芯部32は、接着性材料を含む被覆材料(被覆部34)で被覆されている。これにより、排泄物を吸収した粒状体30どうしを相互に接着させ、使用済みの複数の粒状体30からなる固まりを形成することができる。このように粒状体30の固まりが形成されることにより、未使用の粒状体30と使用済みの粒状体30とが混在する排泄物処理材6の中から、使用済みの粒状体30を選択的に除去することが容易になる。
【0042】
被覆の際、芯部32が収容されたドラム22を回転させながら、各芯部32の周囲に被覆材料を付着させている。これにより、各芯部32の周囲全体に被覆材料を万遍なく付着させることができる。
【0043】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。上記実施形態においては、ダイス12の温度が、ダイス12の有効領域12aの全体において、中心軸A1から遠ざかるにつれて次第に高くなる場合を例示した。しかし、ダイス12の温度は、有効領域12aの一部においてのみ、中心軸A1から遠ざかるにつれて次第に高くなってもよい。その場合、残部におけるダイス12の温度は、均一であってもよいし、不均一であってもよい。
【0044】
上記実施形態においては、ダイス12に2つのヒーター(ヒーター14a,14b)が設けられた場合を例示した。しかし、ダイス12には、3つ以上のヒーターが設けられてもよい。その場合、それらのヒーターは、ダイス12の径方向について相異なる位置に設けられる。また、径方向の比較的内側に設けられたヒーターの加熱温度の方が、径方向の比較的外側に設けられたヒーターの加熱温度よりも小さく設定される。あるいは、ダイス12には、1つだけヒーター(ヒーター14a)が設けられてもよい。
【0045】
上記実施形態においては、貫通孔13の断面形状が円形である場合を例示した。しかし、貫通孔13の断面形状は、任意であり、例えば、楕円形、多角形等であってもよい。貫通孔13の断面形状が円形でない場合、貫通孔13の径は、当該断面を内包し得る最小の円の直径として定義される。
【0046】
上記実施形態においては、造粒機10にカッター18が設けられた場合を例示した。しかし、造粒機10には、カッター18が設けられていなくてもよい。その場合、カッター18以外の公知の手段によって、各貫通孔13から押し出された被造粒材料を切断すればよい。
【0047】
上記実施形態においては、粒状体30が、芯部32及び被覆部34からなる複層構造(二層構造)を有する場合を例示した。しかし、被覆部34を設けることは必須でない。すなわち、粒状体30は、芯部32のみからなる単層構造を有していてもよい。その場合、芯部32に接着性材料が含有されることが好ましい。被覆部34を設けない場合、被覆機20は不要であり、被覆工程も実行されない。
【0048】
上記実施形態においては、排泄物を吸収することにより当該排泄物を処理する粒状体30を例示した。しかし、粒状体30は、疎水性を有しており、排泄物を透過させることにより当該排泄物を処理するものであってもよい。粒状体30が疎水性を有するというには、上述した試験により測定される液通過率が60%以上であることが必要である。かかる疎水性の粒状体30を用いた場合、排泄物は、粒状体30間の隙間を通過する。この場合、排泄物をトイレの下方に導くことにより、排泄物から発生した悪臭がトイレの上部から外に漏れるのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 製造装置
6 排泄物処理材
10 造粒機(押出造粒機)
12 ダイス
12a 有効領域
13 貫通孔
14a ヒーター(第1のヒーター)
14b ヒーター(第2のヒーター)
16 ローラー
17 回転軸
18 カッター
20 被覆機
22 ドラム(容器)
30 粒状体
32 芯部(造粒物)
34 被覆部
A1 中心軸