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特開2023-6145旋動式破砕機用のウェッジリングパッドの施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006145
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】旋動式破砕機用のウェッジリングパッドの施工方法
(51)【国際特許分類】
   B02C 2/04 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
B02C2/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108581
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智
(72)【発明者】
【氏名】芦田 義和
(72)【発明者】
【氏名】細田 敦
(72)【発明者】
【氏名】柴田 祐二
【テーマコード(参考)】
4D063
【Fターム(参考)】
4D063BB02
4D063BB17
4D063GA07
4D063GB07
4D063GC21
4D063GC25
(57)【要約】
【課題】旋動式破砕機用のウェッジリングに、ウェッジリングパッドを簡便に設けることが可能な施工方法を提供する。
【解決手段】旋動式破砕機のバウル20とバウル20の傾倒を抑制する支持部材27との間に介装されるウェッジリング28の外周面に設けられ、ウェッジリング28と支持部材27との間に介在する旋動式破砕機用のウェッジリングパッド29の施工方法において、ウェッジリング28に臨む面に接着剤が設けられたウェッジリングパッド29の周方向の一部をウェッジリング28に接触させる接触工程と、ウェッジリング28とウェッジリングパッド29との接触点Aから周方向に離れた押圧点Bに押圧荷重を負荷し、接触点Aから押圧点Bに向かって、ウェッジリング28の外周面にウェッジリングパッド29を連続的に貼り付ける貼り付け工程と、を有する構成とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋動式破砕機のバウル(20)と該バウル(20)の傾倒を抑制する支持部材(27)との間に介装されるウェッジリング(28)の外周面に設けられ、前記ウェッジリング(28)と前記支持部材(27)との間に介在する旋動式破砕機用のウェッジリングパッド(29)の施工方法において、
前記ウェッジリング(28)に臨む面に接着剤が設けられた前記ウェッジリングパッド(29)の周方向の一部を前記ウェッジリング(28)に接触させる接触工程と、
前記ウェッジリング(28)と前記ウェッジリングパッド(29)との接触点(A)から周方向に離れた押圧点(B)に押圧荷重を負荷し、前記接触点(A)から前記押圧点(B)に向かって、前記ウェッジリング(28)の外周面に前記ウェッジリングパッド(29)を連続的に貼り付ける貼り付け工程と、
を有することを特徴とする旋動式破砕機用のウェッジリングパッドの施工方法。
【請求項2】
前記貼り付け工程において、前記接触点(A)から前記ウェッジリングパッド(29)の周方向の両側に位置する前記押圧点(B)に押圧荷重を負荷し、前記接触点(A)から前記両押圧点(B)に向かって、前記ウェッジリング(28)の外周面に前記ウェッジリングパッド(29)を貼り付けるようにした請求項1に記載の旋動式破砕機用のウェッジリングパッドの施工方法。
【請求項3】
前記貼り付け工程において、前記ウェッジリング(28)の外周面の曲率に沿う内面を有する押圧部材(35)を用い、該押圧部材(35)の周方向両端の前記押圧点(B)で前記ウェッジリングパッド(29)を前記ウェッジリング(28)に向かって押圧するようにした請求項2に記載の旋動式破砕機用のウェッジリングパッドの施工方法。
【請求項4】
前記接触点(A)の位置に対応して、前記ウェッジリング(28)の外周面にねじ穴が、前記ウェッジリングパッド(29)および前記押圧部材(35)に貫通穴がそれぞれ形成されており、前記ウェッジリングパッド(29)および前記押圧部材(35)に形成された前記各貫通穴を通って前記ウェッジリング(28)の外周面に形成された前記ねじ穴に押圧ボルト(36)をねじ込むとともに、前記押圧ボルト(36)の前記押圧部材(35)の外周面側にナット(37)を設け、該ナット(37)のねじ込みによって前記押圧部材(35)を介して前記ウェッジリングパッド(29)を前記ウェッジリング(28)に向かって押圧するようにした請求項3に記載の旋動式破砕機用のウェッジリングパッドの施工方法。
【請求項5】
前記押圧部材(35)の周方向両端部に貫通穴が形成されているとともに、前記周方向両端部の貫通穴の位置に対応して前記ウェッジリング(28)の外周面にねじ穴が、前記ウェッジリングパッド(29)に貫通穴がそれぞれ形成されており、前記貼り付け工程後に、前記押圧部材(35)および前記ウェッジリングパッド(29)の周方向両端部に形成された前記貫通穴を通って前記ウェッジリング(28)の外周面に形成された前記ねじ穴に固定ボルト(39)をねじ込むとともに、前記固定ボルト(39)の前記押圧部材(35)の外周面側にナット(40)を設け、該ナット(40)のねじ込みによって前記押圧部材(35)の周方向両端部において前記ウェッジリングパッド(29)を前記ウェッジリング(28)に向かって押圧するようにした請求項4に記載の旋動式破砕機用のウェッジリングパッドの施工方法。
【請求項6】
前記ウェッジリングパッド(29)の周方向両端部に形成されている貫通穴の大きさが、その周方向中央部に形成されている貫通穴の大きさよりも大きい請求項5に記載の旋動式破砕機用のウェッジリングパッドの施工方法。
【請求項7】
前記ウェッジリング(28)と前記押圧部材(35)を挟み込んで固定する固定部材(41)を設け、該固定部材(41)で前記ウェッジリングパッド(29)に設けられた接着剤が硬化するまで前記ウェッジリング(28)と前記ウェッジリングパッド(29)との固定状態を維持する固定工程をさらに有する請求項3から6のいずれか1項に記載の旋動式破砕機用のウェッジリングパッドの施工方法。
【請求項8】
前記固定工程において、前記固定部材(41)を、まず前記接触点(A)の近傍の位置に設け、この位置から前記押圧部材(35)の周方向両端部に向かって順次設けていく請求項7に記載の旋動式破砕機用のウェッジリングパッドの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、旋動式破砕機用のウェッジリングにウェッジリングパッドを取り付ける際の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジョークラッシャなどの破砕機によって一次破砕された被処理物をさらに細かく破砕する際に旋動式破砕機(コーンクラッシャ)が用いられることがある。この旋動式破砕機は、例えば下記特許文献1に示すように、主軸7とともに旋動するマントル9と、機体フレーム1に対して昇降可能なバウル(昇降筒)21に設けられたバウルライナ10とを有し、マントル9とバウルライナ10との間で岩石などの被砕物Pを噛み込んでこれを砕くように構成されている。
【0003】
特許文献1に示すタイプの旋動式破砕機においては、バウル21で支持されたバウルライナ10と旋動運動するマントル9との間で出口隙間を円周上に沿って連続的に変化させることによって破砕を行っている。すなわち、出口隙間が最小となる部分で破砕を行い、周方向に対向する出口隙間が最大となる部分から被砕物Pが破砕された破砕物の排出が行われる。
【0004】
このように、マントル9とバウルライナ10の円周上の一箇所で破砕が行われる旋動式破砕機においては、その破砕に伴う偏荷重によって、バウルライナ10を支持している環状油圧シリンダ22のバウル21(環状油圧シリンダ22のピストンに相当)が上部フレーム2(環状油圧シリンダ22のシリンダに相当)に対して傾倒した状態となりやすい。バウル21が傾倒すると、バウル21の外周面や上部フレーム2の内周面に形成された硬質クロムメッキ層が損傷し、この損傷位置をバウル21および上部フレーム2に設けられたパッキン23、24、25が通過する際にこのパッキン23、24、25が欠損して液密性が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本願図面の図1に示すように、バウル20の上部にその外周部を支持する支持部材27を設けてバウル20の傾倒を防止することが考えられる。この支持部材27は、円筒部27aと、その円筒部27aの上端部から径方向内向きに延設された鍔部27bとを有し、この鍔部27bは、バウル20の上端部にビス(図示せず)によって固定されている。円筒部27aの下端部内側には、ウェッジリング28が設けられている。このウェッジリング28は、周方向の一部に切り欠き28aが形成された平面視C字形をなし、その素材のもつ弾性によって径方向に拡縮可能となっている。その内面には、上側ほど拡径するテーパ面28bが形成されている。
【0006】
ウェッジリング28の下側には、油圧シリンダ30が設けられている。この油圧シリンダ30は、上部フレーム3の外周側に形成されたフランジ31の上に配置されており、油圧シリンダ30の本体から出没するロッド30aによって、ウェッジリング28は上向きに押圧される。
【0007】
ウェッジリング28の内側には、パッキンリテーナ25の外周側に形成された固定部材32が対向するように配置されている。この固定部材32の外面には、上側ほど拡径するテーパ面32aが形成されている。ウェッジリング28に形成されたテーパ面28bと、固定部材32に形成されたテーパ面32aは、互いに接触している。油圧シリンダ30のロッド30aを突出させてウェッジリング28を上向きに押圧すると両テーパ面28b、32aが強く当接し、その当接力によって、固定部材32が径方向内向きに、支持部材27が径方向外向きにそれぞれ押圧された状態となる。このように押圧することによって、バウル20の上部を安定させて偏荷重による傾倒を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001-190968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図1に示すウェッジリング28の外周には、このウェッジリング28と支持部材27との間に介在するウェッジリングパッド29が設けられる。このウェッジリングパッド29は、その裏面(ウェッジリング28の外周面に臨む面)に接着剤を設けられており、ウェッジリング28に貼り付けられた上で、スリングベルトを巻き付けて締め付けることによって接着剤が硬化するまで固定される。
【0010】
ところが、このウェッジリング28は大きいもので直径が1000mm以上もあり、しかも、周方向に複数枚のウェッジリングパッド29を並べて配置しなければならないことが多く、その貼り付け作業が非常に面倒である。また、スリングベルトの締め付け強さによっては、ウェッジリングパッド29の端部(隣り合うウェッジリングパッド29の継ぎ目)に段差が生じてしまい、作業者の技量によっては仕上がりの品質にばらつきが生じることがあった。
【0011】
そこで、この発明は、旋動式破砕機用のウェッジリングに、ウェッジリングパッドを簡便に設けることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、この発明においては、
旋動式破砕機のバウルと該バウルの傾倒を抑制する支持部材との間に介装されるウェッジリングの外周面に設けられ、前記ウェッジリングと前記支持部材との間に介在する旋動式破砕機用のウェッジリングパッドの施工方法において、
前記ウェッジリングに臨む面に接着剤が設けられた前記ウェッジリングパッドの周方向の一部を前記ウェッジリングに接触させる接触工程と、
前記ウェッジリングと前記ウェッジリングパッドとの接触点から周方向に離れた押圧点に押圧荷重を負荷し、前記接触点から前記押圧点に向かって、前記ウェッジリングの外周面に前記ウェッジリングパッドを連続的に貼り付ける貼り付け工程と、
を有することを特徴とする旋動式破砕機用のウェッジリングパッドの施工方法を構成した。
【0013】
このように、押圧点に押圧荷重を負荷することにより、接触点から押圧点に向かって、ウェッジリングの外周面にウェッジリングパッドを簡便かつ皴などを生じることなくきれいに貼り付けることができる。
【0014】
前記構成においては、
前記貼り付け工程において、前記接触点から前記ウェッジリングパッドの周方向の両側に位置する前記押圧点に押圧荷重を負荷し、前記接触点から前記両押圧点に向かって、前記ウェッジリングの外周面に前記ウェッジリングパッドを貼り付けるようにするのが好ましい。
【0015】
このように、接触点から周方向の両方向の押圧点に向かって貼り付け作業を行うことにより、周方向の両方向における押圧荷重のバランスが取れ、その作業を一層スムーズに行うことができる。
【0016】
周方向の両側に位置する押圧点に押圧荷重を負荷する構成においては、
前記貼り付け工程において、前記ウェッジリングの外周面の曲率に沿う内面を有する押圧部材を用い、該押圧部材の周方向両端の前記押圧点で前記ウェッジリングパッドを前記ウェッジリングに向かって押圧するのが好ましい。
【0017】
このように、ウェッジリングの外周面の曲率に沿う内面を有する押圧部材を用いることにより、貼り付け工程の完了時点において、この押圧部材の内面でウェッジリングパッドをウェッジリングに均一に押圧することができ、良好な仕上がり状態を確保することができる。
【0018】
前記押圧部材を用いる構成においては、
前記接触点の位置に対応して、前記ウェッジリングの外周面にねじ穴が、前記ウェッジリングパッドおよび前記押圧部材に貫通穴がそれぞれ形成されており、前記ウェッジリングパッドおよび前記押圧部材に形成された前記各貫通穴を通って前記ウェッジリングの外周面に形成された前記ねじ穴に押圧ボルトをねじ込むとともに、前記押圧ボルトの前記押圧部材の外周面側にナットを設け、該ナットのねじ込みによって前記押圧部材を介して前記ウェッジリングパッドを前記ウェッジリングに向かって押圧するのが好ましい。
【0019】
このようにすると、ナットのねじ込みによって、押圧部材をウェッジリングパッドに向かって簡便に押圧することができる。
【0020】
前記接触点の位置に設けられたナットのねじ込みによって押圧する構成においては、
前記押圧部材の周方向両端部に貫通穴が形成されているとともに、前記周方向両端部の貫通穴の位置に対応して前記ウェッジリングの外周面にねじ穴が、前記ウェッジリングパッドに貫通穴がそれぞれ形成されており、前記貼り付け工程後に、前記押圧部材および前記ウェッジリングパッドの周方向両端部に形成された前記貫通穴を通って前記ウェッジリングの外周面に形成された前記ねじ穴に固定ボルトをねじ込むとともに、前記固定ボルトの前記押圧部材の外周面側にナットを設け、該ナットのねじ込みによって前記押圧部材の周方向両端部において前記ウェッジリングパッドを前記ウェッジリングに向かって押圧するのが好ましい。
【0021】
このようにすると、押圧部材によるウェッジリングパッドの押圧状態を維持することができ、一層良好な仕上がり状態を確保することができる。
【0022】
前記固定ボルトに設けられたナットのねじ込みによって前記押圧部材で押圧する構成においては、
前記ウェッジリングパッドの周方向両端部に形成されている貫通穴の大きさが、その周方向中央部に形成されている貫通穴の大きさよりも大きいのが好ましい。
【0023】
このようにすると、押圧部材の押圧によって、ウェッジリングパッドが周方向に多少変位しても、押圧部材に形成された貫通穴(およびウェッジリングに形成されたねじ穴)と、ウェッジリングパッドに形成された貫通穴が周方向にずれず、ウェッジリングパッドに皴が生じるのを防止することができる。
【0024】
前記押圧部材を用いる構成においては、
前記ウェッジリングと前記押圧部材を挟み込んで固定する固定部材を設け、該固定部材で前記ウェッジリングパッドに設けられた接着剤が硬化するまで前記ウェッジリングと前記ウェッジリングパッドとの固定状態を維持する固定工程をさらに有するのが好ましい。
【0025】
このようにすると、固定部材でウェッジリングと押圧部材を挟み込むことにより押圧力が増大し、かつ、均一に圧力を付与することができるため、短時間でムラなくウェッジリングパッドを貼り付けることができる。
【0026】
また、前記固定工程において、前記固定部材を、まず前記接触点の近傍の位置に設け、この位置から前記押圧部材の周方向両端部に向かって順次設けていくのが好ましい。
【0027】
このようにすると、固定部材での固定時にウェッジリングパッドに皴が生じにくく、良好な仕上がり状態を得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明では、旋動式破砕機用のウェッジリングパッドの施工方法において、ウェッジリングに臨む面に接着剤が設けられたウェッジリングパッドの周方向の一部を前記ウェッジリングに接触させた上で、前記ウェッジリングと前記ウェッジリングパッドとの接触点から周方向に離れた押圧点に押圧荷重を負荷し、前記接触点から前記押圧点に向かって、前記ウェッジリングの外周面に前記ウェッジリングパッドを連続的に貼り付けるようにしたので、接触点から押圧点に向かって、ウェッジリングの外周面にウェッジリングパッドを簡便かつ皴などを生じることなくきれいに貼り付けることができる。
【0029】
また、ウェッジリングパッドの全体を均一に貼り付けることで、ウェッジリングの周方向に対してウェッジリングパッドを複数枚分割して貼り付ける際に、その継ぎ目に凹凸が発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】バウルの傾倒を防止する支持部材を備えた旋動式破砕機の一例を示す断面図
図2図1に示す旋動式破砕機の作用を示す断面図であって、(a)はバウルが上昇した状態、(b)はバウルが下降した状態
図3図1に示す旋動式破砕機に用いられるウェッジリングの斜視図
図4】この発明に係る旋動式破砕機用のウェッジリングパッドの施工方法の流れを示す底面図であって、(a)は接触工程、(b)は貼り付け工程(途中段階)、(c)は貼り付け工程(完了段階)、(d)は固定工程、(e)は固定部材を取り外した状態(完了状態)
図5】(a)は図4(a)中のV-V線に沿う断面図、(b)は図4(b)中のV-V線に沿う断面図、(c)は図4(c)中のV-V線に沿う断面図、(d)は図4(e)中のV-V線に沿う断面図
図6】(a)は図4(a)中のVI-VI線に沿う断面図、(b)は図4(b)中のVI-VI線に沿う断面図、(c)は図4(c)中のVI-VI線に沿う断面図、(d)は図4(d)中のVI-VI線に沿う断面図、(e)は図4(e)中のVI-VI線に沿う断面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
旋動式破砕機(コーンクラッシャ)の一例を図面に基づいて説明する。図1に示す旋動式破砕機は、下部フレーム2と上部フレーム3から構成される機体フレーム1を備えている。下部フレーム2は、その中央において垂直方向の軸心周りに回転する回転軸4を回転自在に保持する筒部5と、その筒部5から水平方向外向きに延設された保持部6とを有している。
【0032】
回転軸4には、垂直方向から傾斜した傾斜穴7が形成されている。この傾斜穴7には、主軸8の下部が回転自在に挿入されており、この主軸8は、回転軸4に対して偏心した状態で回転する。傾斜穴7の内面と主軸8の外面との間には、インナブッシュ9が設けられている。主軸8にはマントルコア10が設けられ、このマントルコア10の表面には破砕用のマントル11が設けられている。
【0033】
回転軸4は、筒部5の下部に設けられた軸受12によって支持されており、駆動機(図示せず)からプーリ13、かさ歯車14などを介して駆動力を与えられて回転する。回転軸4の外面と筒部5の内面との間には、アウタブッシュ15が設けられている。回転軸4が回転すると、この回転軸4に対し偏心する主軸8に設けられたマントル11(マントルコア10)は旋動する。
【0034】
マントルコア10の底面には、球面の一部からなる球面部16が形成されている。この球面部16は、機体フレーム1の筒部5の上部に固定されたスラスト部17によって回転自在に支持されている。マントルコア10の外周縁には、スカート部18が形成されている。このスカート部18の下端には、マントルコア10の下部側への粉塵の侵入や、潤滑油の外部への漏れを防止するための封止部19が設けられている。
【0035】
上部フレーム3の内側には、円筒状のバウル20が設けられている。上部フレーム3とバウル20の間には、その周方向の全周に亘る環状の油圧シリンダ21が設けられている。この油圧シリンダ21は、上部油圧室21aと下部油圧室21bを有する複動形で、両油圧室21a、21bへの作動油の給排によって、バウル20を上下動させることができる。バウル20の内側には、マントル11と対向するバウルライナ22が設けられており、図2(a)(b)に示すように、バウル20を上下させることによって、マントル11とバウルライナ22との間の隙間sの大きさを調節することができる。
【0036】
上部フレーム3とバウル20との間には、パッキン23、24が設けられている。また、上部フレーム3の上端に固定されたパッキンリテーナ25とバウル20との間にも同様にパッキン26が設けられている。これらのパッキン23、24、26によって作動油の漏れと油圧シリンダ21内への粉塵の侵入を防止している。
【0037】
図1および図2に示すように、バウル20の上端部には、このバウル20の傾倒を抑制するための支持部材27が設けられている。この支持部材27は、円筒部27aと、その円筒部27aの上端部から径方向内向きに延設された鍔部27bとを有している。鍔部27bは、バウル20の上端部にビス(図示せず)によって固定されている。円筒部27aの下端部内側には、ウェッジリング28が設けられている。このウェッジリング28は、図3に示すように、周方向の一部に切り欠き28aが形成された平面視C字形をなし、その素材のもつ弾性によって径方向に拡縮可能となっている。その内面には、上側ほど拡径するテーパ面28bが形成されている。
【0038】
ウェッジリング28の外周側には、支持部材27の円筒部27aとウェッジリング28との間に介在するウェッジリングパッド29が、接着剤によって上下2段に貼り付けられている。この旋動式破砕機においては、ウェッジリングパッド29として、ウェッジリング28の外周長さを約4等分した上下それぞれ4枚の帯状のフェノール樹脂系の樹脂材を用いたが、その素材、形状、使用枚数などは変更される場合がある。
【0039】
ウェッジリング28の下側には、油圧シリンダ30が設けられている。この油圧シリンダ30は、上部フレーム3の外周側に形成されたフランジ31の上に配置されている。油圧シリンダ30の本体から出没するロッド30aによって、ウェッジリング28は上向きに押圧される。
【0040】
ウェッジリング28の内側には、パッキンリテーナ25の外周側に形成された固定部材32が対向するように配置されている。この固定部材32の外面には、上側ほど拡径するテーパ面32aが形成されている。ウェッジリング28に形成されたテーパ面28bと、固定部材32に形成されたテーパ面32aは、互いに接触している。油圧シリンダ30のロッド30aを突出させてウェッジリング28を上向きに押圧すると両テーパ面28b、32aが強く当接し、その当接力によって、固定部材32が径方向内向きに、支持部材27が径方向外向きにそれぞれ押圧された状態となる。
【0041】
下部フレーム2の上端部には、位置センサ33が設けられている。この位置センサ33の上端に設けられた接触子33aは、支持部材27の円筒部27aの下端に接触している。この位置センサ33によって、下部フレーム2に対するバウル20の昇降量(マントル11とバウルライナ22との間の隙間sの大きさ)を検出することができる。
【0042】
支持部材27の鍔部27bの内側には、被破砕物Pを投入するためのホッパ34が設けられている。このホッパ34に被破砕物Pを投入して回転軸4を回転させると、主軸8を介してマントルコア10が旋動回転する。すると、マントル11とバウルライナ22との間に岩石などの被破砕物Pが噛み込まれ、所定の大きさに破砕された破砕物P’がマントル11とバウルライナ22との間の隙間sから排出される。破砕に伴ってマントル11とバウルライナ22が摩耗して両者の間の隙間sの大きさが変化するが、そのときは油圧シリンダ21を動作させることでマントル11に対してバウルライナ22を昇降させて、その隙間sの大きさを一定に保つ。
【0043】
この破砕に際しては、バウル20(バウルライナ22)に偏荷重が作用するが、油圧シリンダ30を動作させて固定部材32を径方向内向きに、支持部材27を径方向外向きにそれぞれ押圧することにより、バウル20の上部を安定させて、偏荷重によるバウル20の傾倒を抑制することができる。
【0044】
ウェッジリング28へのウェッジリングパッド29の施工方法について図4から図6を用いて説明する。この施工方法は、接触工程、貼り付け工程、および、固定工程を有している。
【0045】
接触工程は、図4(a)、図5(a)および図6(a)に示すように、ウェッジリング28の外周の曲率よりも小さな曲率を有し、ウェッジリング28に臨む面に接着剤が設けられたウェッジリングパッド29の周方向の一部をウェッジリング28に接触させる工程である。この実施形態においては、平板状(曲率がほぼ0)で長尺(ウェッジリング28の外周長さの約1/4の長さ)のウェッジリングパッド29を用い、その長さ方向のほぼ中央をウェッジリング28の外周の一点(以下、この点を接触点Aと称する。)に接触させる。さらに、この接触点Aを跨ぐように、ウェッジリング28の外周面の曲率に沿う内面を有する押圧部材35を配置する。この押圧部材35の周方向長さは、ウェッジリング28の外周長さの約1/4である。
【0046】
接触点Aの位置に対応して、ウェッジリング28の外周面にねじ穴が、ウェッジリングパッド29および押圧部材35に貫通穴がそれぞれ形成されている。そして、両貫通穴を通ってねじ穴に押圧ボルト36(寸切りボルト)をねじ込むとともに、押圧ボルト36の押圧部材35の外周面側にナット37を設ける。このとき、押圧部材35の両端は、ウェッジリングパッド29とそれぞれ周方向の一点(以下、これらの点を押圧点Bと称する。)で接触している。ウェッジリング28の底面には、このウェッジリング28を地面から浮かせて作業を行いやすくするための脚部38が取り付けられている。
【0047】
貼り付け工程は、図4(b)、図5(b)および図6(b)に示すように、ウェッジリング28とウェッジリングパッド29との接触点Aから周方向に離れた押圧点Bに押圧荷重を負荷し、接触点Aから押圧点Bに向かって、ウェッジリング28の外周面にウェッジリングパッド29を徐々に変形させながら連続的に貼り付ける工程である。この実施形態においては、押圧ボルト36に設けられたナット37をねじ込んで押圧部材35をウェッジリング28に接近させることで押圧部材35の周方向両端の押圧点Bに押圧荷重を負荷し、接触点Aから両押圧点Bに向かってウェッジリングパッド29を貼り付けている。
【0048】
押圧部材35の周方向両端部に貫通穴が形成されているとともに、周方向両端部の貫通穴の位置に対応してウェッジリング28の外周面にねじ穴が、ウェッジリングパッド29に貫通穴がそれぞれ形成されている。ウェッジリングパッド29の周方向両端部の貫通穴は、その周方向中央部(接触点A)の位置の貫通穴よりも大きく形成されている。このようにすると、押圧部材35の押圧に伴ってウェッジリングパッド29がその周方向に延びた(変形した)場合でも、このウェッジリングパッド29に皴が生じるのを抑制することができる。ウェッジリングパッド29の周方向両端部の貫通穴は、周方向に延びる長孔としてもよい。
【0049】
押圧ボルト36に設けられたナット37を完全に締め付けると、図4(c)、図5(c)および図6(c)に示すように、ウェッジリングパッド29がウェッジリング28の外周に沿うように変形して貼り付けられた状態となる。この状態で、押圧部材35およびウェッジリングパッド29の周方向両端部に形成された貫通穴を通ってウェッジリング28の周方向両端部の外周面に形成されたねじ穴に固定ボルト39(寸切りボルト)をねじ込むとともに、固定ボルト39の押圧部材35の外周面側にナット40を設ける。そして、このナット40を完全にねじ込むと、押圧部材35によって、ウェッジリングパッド29がウェッジリング28の外周面に向かって押圧された状態となる。
【0050】
この実施形態においては、ウェッジリング28の外周面の曲率に沿う内面を有する押圧部材35を用いることで、この押圧部材35によってウェッジリングパッド29の周方向全体をウェッジリング28の外周面に押し付けることを可能としたが、ウェッジリングパッド29を変形させつつウェッジリング28の外周面に貼り付けることができれば良いのであれば、例えば平面視コ字形の押圧部材35でウェッジリングパッド29をウェッジリング28に押圧する構成とすることができる可能性もある。
【0051】
固定工程は、図4(d)および図6(d)に示すように、ウェッジリング28と押圧部材35を挟み込んで固定する固定部材41を設け、この固定部材41でウェッジリングパッド29に設けられた接着剤が硬化するまでウェッジリング28とウェッジリングパッド29との固定状態を維持する工程である。この実施形態では、固定部材41として万力を採用した。
【0052】
この固定部材41は、まず接触点Aの近傍の位置に設けられる。そして、この位置から押圧部材35の周方向両端部に向かって順次複数設けられる。このようにすると、固定部材41での固定作業の際に、ウェッジリングパッド29に皴が生じるのを抑制することができる。なお、この固定工程は、例えばウェッジリングパッド29の貼り付けに速乾性の接着剤を使用した場合などに省略できる可能性もある。
【0053】
固定工程において接着剤が硬化したら、図4(e)、図5(d)および図6(e)に示すように、押圧部材35、固定部材41、押圧ボルト36および固定ボルト39を取り外した上で、ウェッジリング28の外周の他の箇所において、上記の接触工程、貼り付け工程、固定工程を繰り返す。ウェッジリング28の全周にウェッジリングパッド29を貼り付けたら、ウェッジリング28の底面に設けられた脚部38を取り外して一連の工程を終了する。
【0054】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味およびすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
1 機体フレーム
2 下部フレーム
3 上部フレーム
4 回転軸
5 筒部
6 保持部
7 傾斜穴
8 主軸
9 インナブッシュ
10 マントルコア
11 破砕用マントル
12 軸受
13 プーリ
14 かさ歯車
15 アウタブッシュ
16 球面部
17 スラスト部
18 スカート部
19 封止部
20 バウル
21 油圧シリンダ
21a 上部油圧室
21b 下部油圧室
22 バウルライナ
23、24、26 パッキン
25 パッキンリテーナ
27 支持部材
27a 円筒部
27b 鍔部
28 ウェッジリング
28a 切り欠き
28b テーパ面
29 ウェッジリングパッド
30 油圧シリンダ
30a ロッド
31 フランジ
32 固定部材
32a テーパ面
33 位置センサ
33a 接触子
34 ホッパ
35 押圧部材
36 押圧ボルト
37、40 ナット
38 脚部
39 固定ボルト
41 固定部材
P 被破砕物
P’ 破砕物
A 接触点
B 押圧点
図1
図2
図3
図4
図5
図6