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  • 特開-ヒューム吸引型溶接トーチ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061472
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】ヒューム吸引型溶接トーチ
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/29 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
B23K9/29 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171372
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】593175349
【氏名又は名称】みずほ産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391046584
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100092842
【弁理士】
【氏名又は名称】島野 美伊智
(74)【代理人】
【識別番号】100166578
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 芳光
(72)【発明者】
【氏名】森下 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】大野 慎也
(72)【発明者】
【氏名】桑野 裕生
(72)【発明者】
【氏名】原木 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】松尾 健司
(72)【発明者】
【氏名】井口 卓也
(72)【発明者】
【氏名】中畑 暁人
【テーマコード(参考)】
4E001
【Fターム(参考)】
4E001LD07
4E001LH02
(57)【要約】
【課題】 溶接部から発生するヒュームを効率良く吸引してする排出することができるヒューム吸引型溶接トーチを提供すること。
【解決手段】 溶接トーチ本体と、上記溶接トーチ本体の外周に設置されたヒューム吸引機構と、を具備してなるヒューム吸引型溶接トーチにおいて、上記ヒューム吸引機構は先端にヒューム吸引フードを備えていて、上記ヒューム吸引フードの先端部はフレア状に拡径されていて、拡がる部分の内壁は滑らかなRで形成されていることを特徴とするもの。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接トーチ本体と、上記溶接トーチ本体の外周に設置されたヒューム吸引機構と、を具備してなるヒューム吸引型溶接トーチにおいて、
上記ヒューム吸引機構は先端にヒューム吸引フードを備えていて、
上記ヒューム吸引フードの先端部はフレア状に拡径されていて、拡がる部分の内壁は滑らかなRで形成されていることを特徴とするヒューム吸引型溶接トーチ。
【請求項2】
請求項1記載のヒューム吸引型溶接トーチにおいて、
上記拡径の角度θは20°~30°であり、上記拡がる部分の内壁の半径RはR8mm~R30mmの範囲であることを特徴とするヒューム吸引型溶接トーチ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のヒューム吸引型溶接トーチにおいて、
上記溶接トーチ本体は先端にシールドノズルを備えていて、
上記ヒューム吸引フードの上記シールドノズルに対する軸方向位置を調整可能にしたことを特徴とするヒューム吸引型溶接トーチ。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れかに記載のヒューム吸引型溶接トーチにおいて、
上記ヒューム吸引機構は基端に端部材を備えていて、
上記端部材と上記溶接トーチ本体との間をシール部材によってシールしたことを特徴とするヒューム吸引型溶接トーチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はヒューム吸引型溶接トーチに係り、特に、先端に取り付けられるヒューム吸引フードの吸引口の形状を工夫することにより、ヒューム吸引性能の向上を図ることができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のヒューム吸引型溶接トーチの構成を開示するものとして、例えば、特許文献1、特許文献2、等がある。
【0003】
まず、特許文献1に記載されているヒューム吸引型溶接トーチの場合には、ヒュームを吸引するためのチャンバアダプタが設けられている。このチャンバアダプタの先端は閉塞されていて側面に複数個の吸引口が設けられている。これらの吸引口を介して発生するヒュームを吸引する。
【0004】
次に、特許文献2に記載されているヒューム吸引フード付溶接トーチの場合には、ヒューム吸引フードを直管状に設けその先端開口部を介してヒュームを吸引する構成が開示されている。又、ヒューム吸引フードの先端を漏斗状に拡径するとともにその内側のシールドガス放出ノズルの先端部も拡径させた構成も開示されている。さらに、上記特許文献1に記載されている構成と同等の構成も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭53-48118号公報
【特許文献2】実開昭49-136823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の構成によると次のような問題があった。
特許文献1、特許文献2に記載されている何れの構成によっても、ヒューム吸引性能が高いとはいえず、その為、ヒュームを効率良く吸引させるためには吸引口を溶接部位に接近させるようにしている。ところが、その距離が近すぎると溶接部位をシールドしているシールドガスを吸引してしまい、シールドガスの流れを乱して溶接欠陥を発生させてしまうという問題があった。
【0007】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、ヒューム吸引性能の向上を図ることができるヒューム吸引型溶接トーチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するべく本願発明の請求項1によるヒューム吸引型溶接トーチは、溶接トーチ本体と、上記溶接トーチ本体の外周に設置されたヒューム吸引機構と、を具備してなるヒューム吸引型溶接トーチにおいて、上記ヒューム吸引機構は先端にヒューム吸引フードを備えていて、上記ヒューム吸引フードの先端部はフレア状に拡径されていて、拡がる部分の内壁は滑らかなRで形成されていることを特徴とするものである。
又、請求項2によるヒューム吸引型溶接トーチは、請求項1記載のヒューム吸引型溶接トーチにおいて、上記拡径の角度θは20°~30°であり、上記拡がる部分の内壁の半径RはR8mm~R30mmの範囲であることを特徴とするものである。
又、請求項3によるヒューム吸引型溶接トーチは、請求項1又は請求項2記載のヒューム吸引型溶接トーチにおいて、上記溶接トーチ本体は先端にシールドノズルを備えていて、上記ヒューム吸引フードの上記シールドノズルに対する軸方向位置を調整可能にしたことを特徴とするものである。
又、請求項4によるヒューム吸引型溶接トーチは、請求項1~請求項3の何れかに記載のヒューム吸引型溶接トーチにおいて、上記ヒューム吸引機構は基端に端部材を備えていて、上記端部材と上記溶接トーチ本体との間をシール部材によってシールしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
以上述べたように本願発明の請求項1によるヒューム吸引型溶接トーチによると、溶接トーチ本体と、上記溶接トーチ本体の外周に設置されたヒューム吸引機構と、を具備してなるヒューム吸引型溶接トーチにおいて、上記ヒューム吸引機構は先端にヒューム吸引フードを備えていて、上記ヒューム吸引フードの先端部はフレア状に拡径されていて、拡がる部分の内壁は滑らかなRで形成されているので、ヒューム吸引性能の向上を図ることができる。それによって、ヒューム吸引フードの吸引口を溶接部位からできるだけ離間させることができ、シールドガスの吸引それに起因した溶接欠陥の発生を防止することができる。
又、請求項2によるヒューム吸引型溶接トーチによると、請求項1記載のヒューム吸引型溶接トーチにおいて、上記拡径の角度θは20°~30°であり、上記拡がる部分の内壁の半径RはR8mm~R30mmの範囲であるので、上記効果を確実なものとすることができる。
又、請求項3によるヒューム吸引型溶接トーチによると、請求項1又は請求項2記載のヒューム吸引型溶接トーチにおいて、上記溶接トーチ本体は先端にシールドノズルを備えていて、上記ヒューム吸引フードの上記シールドノズルに対する軸方向位置を調整可能にしたので、ヒューム吸引性能の向上を図るために、上記ヒューム吸引フードをシールドノズルとの関係で最適な位置に取り付けることができる。
又、請求項4によるヒューム吸引型溶接トーチによると、請求項1~請求項3の何れかに記載のヒューム吸引型溶接トーチにおいて、上記ヒューム吸引機構は基端に端部材を備えていて、上記端部材と上記溶接トーチ本体との間をシール部材によってシールしたので、それによっても、ヒューム吸引性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態を示す図で、ヒューム吸引型溶接トーチの構成を示す断面図である。
図2】本発明の一実施の形態を示す図で、図2(a)はヒューム吸引フードの側面図、図2(b)は図2(a)のb-b断面図、図2(c)は図2(a)のc-c断面図である。
図3】本発明の一実施の形態を示す図で、図3(a)はスリーブの側面図、図3(b)は図3(a)のb-b断面図、図3(c)は図3(b)のc-c矢視図である。
図4】本発明の一実施の形態の効果を説明するための図で、図4(a)は一実施の形態の場合の吸引作用を示す図、図4(b)は比較例の場合の吸引作用を示す図である。
図5】本発明の一実施の形態の効果を説明するための図で、一実施の形態の場合の吸引作用を示す写真である。
図6】比較例を示す図で、吸引作用を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1乃至図6を参照して本発明の一実施の形態について説明する。図1は本実施の形態によるヒューム吸引型溶接トーチの断面図である。まず、溶接トーチ本体1があり、この溶接トーチ本体1にはトーチパイプ3がある。このトーチパイプ3の外周には熱収縮性の絶縁チューブ5が被覆されている。上記トーチパイプ3の図1中右側には図示しない把持部が螺合・連結されていて、その把持部のさらに図中右側には接続金具(図示せず)が螺合・接合されている。上記把持部には別の図示しない接続金具が接合されていて、その接続金具にはシールドガス供給ホース(図示せず)が連結されている。
【0012】
上記トーチパイプ3の先端側にはチップボディ7が螺合・接合されている。上記チップボディ7の外周側には絶縁材からなるインシュレータ9が螺合・接合されている。上記チップボディ7の先端側にはコンタクトチップ11が螺合・接合されている。上記チップボディ7とコンタクトチップ11の接合部の外周側にはセラミックス製のオリフィス13が設置されている。上記チップボディ7とコンタクトチップ11の外周側にはシールドノズル15が設置されている。上記シールドノズル15はスリーブ17を介して上記インシュレータ9に接合されている。
【0013】
上記トーチパイプ3、チップボディ7の内周側にはチューブ21が内装されていて、このチューブ21内には図示しない溶接ワイヤが挿通されている。この溶接ワイヤの先端部は上記コンタクトチップ11の先端から所定量突出・配置されている。
【0014】
上記チップボディ7の先端部には複数個のシールドガス流出口7aが穿孔されている。上記オリフィス13にも複数個のシールドガス流出口13aが穿孔されている。シールドガスは上記トーチパイプ3とチューブ21との間に供給され、上記チップボディ7とチューブ21の間を通って、上記シールドガス流出口7a、13aを介して、上記オリフィス13とシールドノズル15との間に流出する。そこからコンタクトチップ11の外周を通って溶接部位に噴射される。
【0015】
上記トーチ本体1の外周側にはヒューム吸引機構31が設置されている。まず、スリープ33があり、このスリーブ33の図1中右側には可撓性パイプ35が接合されている。上記可撓性パイプ35の図1中右側には分岐管37が接合されている。上記分岐管37の図1中右側には端部材39が接合されている。上記スリープ33の外周側にはヒューム吸引フード41が設置されている。上記分岐管37には図示しないヒューム吸引ホースが接続されていて、そのヒューム吸引ホースは図示しない集塵機に接続されている。
【0016】
上記ヒューム吸引フード41には、図2にも示すように、切欠部51が形成されていて、この切欠部51には5箇所に固定ねじ貫通部51aが形成されている。一方、スリーブ33側には、図3に示すように、3個の貫通孔53、53、53が穿孔されている。上記固定ねじ貫通部51aの位置と上記貫通孔53の位置を適宜調整して図示しない固定ねじをねじ込む。それによって、上記ヒューム吸引フード41の上記シールドノズル15に対する軸方向位置を調整して任意の位置に固定する。
【0017】
上記ヒューム吸引フード41の先端の吸引口61はフレア状に滑らかなRで形成されている。フレア状の角度θは、例えば、20°~30°の範囲で任意に設定される。又、上記フレア形状の拡がる部分の内壁の半径RはR8mm~R30mmの範囲で任意に設定される。又、上記吸引口61のエッジ部にはR加工が施されている。このようなフレア状の吸引口61を設けることにより、吸引時に渦の流れを発生させるようにして、外周付近からの吸引性能を強化し、その流れの効果により前方からの吸引を抑制するようにしている。それによって、吸引口61を溶接部位からできるだけ離間させることを可能にしてシールドガスの吸引を抑制するようにしている。
【0018】
上記分岐管37と端部材39との間にはシール部材71が設置されている。又、上記端部材39とトーチパイプ3との間にもシール部材73が設置されている。
【0019】
以上の構成を基瀬その作用を説明する。
まず、シールドガスの流れであるが、上記トーチパイプ3とチューブ21との間に供給され、上記チップボディ7とチューブ21の間を通って、上記シールドガス流出口7a、13aを介して、上記オリフィス13とシールドノズル15との間に流出する。そこからコンタクトチップ11の外周を通って溶接部位に噴射される。
【0020】
上記シールドガスによって溶接部位をシールドした状態で溶接ワイヤと図示しない被溶接物との間にアークを発生させながら所定の溶接を行う。
【0021】
溶接部位で発生したヒュームは、上記ヒューム吸引フード41の吸引口61を介してヒューム吸引フード41内に吸引され、そこからスリーブ33、可撓性パイプ35、分岐管37を介して吸引され、さらに、吸引ホースを介して集塵機に吸引される。
【0022】
以上、本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
まず、ヒューム吸引性能の向上を図ることができる。これはヒューム吸引フード41の吸引口61をフレア状に滑らかなRで形成して吸引口61付近における渦状の吸引力の流れを発生させることにより、外周方向からの流れを導くことが可能になることによる。
ヒューム吸引性能を向上させることができたことにより、ヒューム吸引フード41の吸引口61を溶接部位からできるだけ離間させることができ、それによって、シールドガスの吸引をなくして溶接欠陥の発生を防止することができる。
ヒューム吸引フード41の吸引口61を滑らかなRでフレア状に形成し、内壁をRの形状にすることにより、吸引風の流れが壁面に沿って渦状に発生するため、前方への吸引の影響を抑制して外周側面からの吸引を主とすることができ、それによっても、シールドガスの吸引をなくすことができる。
又、ヒューム吸引フード41のスリーブ33に対する軸方向位置を調整することにより、ヒューム吸引フード41のシールドノズル15に対する軸方向位置を最適な位置に調整することができる。
又、シール部材71、73によってシールするようにしているので、それによっても、ヒューム吸引性能を向上させることができる。
【0023】
ここで、本実施の形態の場合のヒューム吸引フード41と比較例によるヒューム吸引フード141によるヒューム吸引作用の違いを、図4を参照して説明する。本実施の形態の場合のヒューム吸引フード41は、既に説明したように、先端部はフレア状に拡径されていて、拡がる部分の吸引口61の内壁は滑らかなRで形成されている。これに対して、比較例の場合のヒューム吸引フード141はは直線的なテーパ状に拡径されていて、先端部の吸引口161の内壁は直線的に形成されている。
【0024】
図4(a)は本実施の形態の場合を示していて、先端部の内壁に沿って発生しした気流が回り込み、外周に逃げたヒュームを効果的に吸引・捕集する。又、回り込む分前方への影響は少ないので、シールドガスを吸引することはない。
図4(b)は比較例の場合を示していて、先端部の内壁に沿って直線的な気流が発生し、前方のヒュームを吸引・捕集するとともにシールドガスをも吸引してしまう。又、外周に逃げたヒュームの吸引・捕集効果は低い。
【0025】
次に、本実施の形態の場合のヒューム吸引フード41と比較例によるヒューム吸引フード241によるヒューム吸引作用の違いを、図5図6の実際の写真を参照して説明する。
図5の写真は本実施の形態の場合を示していて、先端部の内壁に沿って発生しした気流が回り込み、外周に逃げたヒュームを効果的に吸引・捕集している様子を確認することができる。
図6の写真は比較例の場合を示していて、真っ直ぐなヒューム吸引フード241を使用しており、先端部の内壁に沿って直線的な気流が発生し、前方のヒュームを吸引・捕集するとともにシールドガスをも吸引してしまう様子を確認することができる。
【0026】
尚、本発明は前記一実施の形態に限定されるものではない。
まず、ヒューム吸引フードの先端のフレア形状と内壁のR形状は図示したものに限定されず様々な形状が考えられる。
ヒューム吸引フードのスリーブに対する位置調整のための構成についても図示したものに限定されず様々な構成が考えられる。
溶接トーチ本体の構成はあくまで一例である。
ヒューム吸引機構の構成についてもあくまで一例である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本願発明はヒューム吸引型溶接トーチに係り、特に、先端に取り付けられるヒューム吸引フードの形状を工夫することにより、ヒューム吸引性能の向上を図ることができるように工夫したものに関し、例えば、ヒュームが大量に発生する溶接現場で使用される溶接トーチに好適である。
【符号の説明】
【0028】
1 溶接トーチ本体
15 シールドノズル
31 ヒューム吸引機構
33 スリーブ
35 可撓性ホース
37 分岐管
39 端部材
41 ヒューム吸引フード
51 切欠部
51a 固定ねじ貫通孔
53 貫通孔
61 吸引口
71 シール部材
73 シール部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6