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特開2023-6148制御装置、眼鏡レンズ装置、眼鏡、制御方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006148
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】制御装置、眼鏡レンズ装置、眼鏡、制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G02C 5/04 20060101AFI20230111BHJP
   G02C 7/00 20060101ALI20230111BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20230111BHJP
   G02C 7/06 20060101ALI20230111BHJP
   G02C 5/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G02C5/04
G02C7/00
G02C7/02
G02C7/06
G02C5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108591
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】521079488
【氏名又は名称】ViXion株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100134728
【弁理士】
【氏名又は名称】奥川 勝利
(72)【発明者】
【氏名】川合 忠章
(72)【発明者】
【氏名】内海 俊晴
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006AA00
2H006BD00
2H006BD01
(57)【要約】
【課題】装用者の視線が変更されても、眼鏡レンズの本来の機能を発揮することを可能にする。
【解決手段】装用者の眼に対する眼鏡レンズ3,3の位置及び向きのうちの少なくとも一方を制御する制御装置10であって、装用者の視線方向を検出する視線方向検出部21A,21Bの検出結果に基づいて、前記眼鏡レンズ3,3の光軸の位置及び方向のうちの少なくとも一方が変化するように、該眼鏡レンズ3,3を移動させるレンズ移動手段6(駆動部601,602,603)を制御する制御部を有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装用者の眼に対する眼鏡レンズの位置及び向きのうちの少なくとも一方を制御する制御装置であって、
装用者の視線方向を検出する視線方向検出部の検出結果に基づいて、前記眼鏡レンズの光軸の位置及び方向のうちの少なくとも一方が変化するように、該眼鏡レンズを移動させるレンズ移動手段を制御する制御部を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記眼鏡レンズは、焦点距離が変更可能な可変焦点レンズであり、
前記制御部は、前記視線方向検出部の検出結果に基づいて、前記可変焦点レンズの焦点距離も制御することを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の制御装置において、
前記眼鏡レンズは、光軸の方向及び位置のうちの少なくとも一方の光軸パラメータが変更可能な可変焦点レンズであり、
前記制御部は、前記視線方向検出部の検出結果に基づいて、前記可変焦点レンズの前記少なくとも一方の光軸パラメータも制御することを特徴とする制御装置。
【請求項4】
眼鏡レンズと、
装用者の眼に対する前記眼鏡レンズの位置及び向きのうちの少なくとも一方を制御する制御装置とを備えた眼鏡レンズ装置であって、
装用者の視線方向を検出する視線方向検出部と、
前記眼鏡レンズの光軸の位置及び方向のうちの少なくとも一方が変化するように該眼鏡レンズを移動させるレンズ移動手段とを備え、
前記制御装置として、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制御装置を用いることを特徴とする眼鏡レンズ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の眼鏡レンズ装置において、
前記レンズ移動手段は、所定方向に延びる軸の回りで前記眼鏡レンズを回転させる回転手段、及び、所定経路に沿って前記眼鏡レンズを変位させる変位手段のうちの少なくとも一方の手段を含むことを特徴とする眼鏡レンズ装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の眼鏡レンズ装置を備え、
前記眼鏡レンズが眼鏡フレームに保持されていることを特徴とする眼鏡。
【請求項7】
装用者の眼に対する眼鏡レンズの位置及び向きのうちの少なくとも一方を制御する制御方法であって、
装用者の視線方向を検出する視線方向検出部の検出結果に基づいて、前記眼鏡レンズの光軸の位置及び方向のうちの少なくとも一方が変化するように、該眼鏡レンズを移動させるレンズ移動手段を制御する制御工程を有することを特徴とする制御方法。
【請求項8】
装用者の眼に対する眼鏡レンズの位置及び向きのうちの少なくとも一方を制御する制御装置のコンピュータを機能させるプログラムであって、
装用者の視線方向を検出する視線方向検出部の検出結果に基づいて、前記眼鏡レンズの光軸の位置及び方向のうちの少なくとも一方が変化するように、該眼鏡レンズを移動させるレンズ移動手段を制御する制御手段として、前記コンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、眼鏡レンズ装置、眼鏡、制御方法、プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、近視の発症又は進行を遅延させる目的で、油/水封入レンズ等の可変焦点レンズを電気的に制御し、可変焦点レンズの焦点距離を変化させる制御を行うレンズ装置が開示されている。この装置では、可変焦点レンズを着用した近視の装用者に対し、ピントの合う状態の焦点距離とプラスパワー(+3D)に対応する焦点距離(ピントの合わない状態の焦点距離)との切り替えを、装用者が感知できないほど高い周波数で行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-173825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
装用者は、眼鏡レンズ装置の使用中に視線方向を変更することがある。例えば、装用者が、視認対象物を近くのものから遠方のものへ変更するとき(近方視から遠方視へ切り替えるとき)、装用者の視線方向が変更される。また、視認対象物までの距離が変更されるときに生じる輻輳開散運動によっても、装用者の両眼が違う方向に動いて装用者の各眼の視線方向が変更される。
【0005】
従来の眼鏡レンズ装置は、装用者の視線方向が基準方向(例えばレンズの中心軸方向)から変更されると、例えば、眼鏡レンズの光軸から装用者の視線が許容範囲を超えるほど大きく外れてしまい、当該レンズの本来の機能が発揮されないおそれがある。また、眼鏡レンズが小さい場合には、例えば、装用者の視野においてレンズ外の視野部分の占める割合が増えて、装用者の利便性を損なうおそれもある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、装用者の眼に対する眼鏡レンズの位置及び向きを制御する制御装置であって、装用者の視線方向を検出する視線方向検出部の検出結果に基づいて、前記眼鏡レンズの光軸の位置及び方向のうちの少なくとも一方が変化するように、該眼鏡レンズを移動させるレンズ移動手段を制御する制御部を有することを特徴とするものである。
本制御装置においては、視線方向検出部によって検出される装用者の視線方向に基づいてレンズ移動手段を制御し、当該眼鏡レンズの位置及び向きのうちの少なくとも一方を変化させることができる。これにより、当該眼鏡レンズを通じて視認する装用者の視線が変更されても、これに追従して当該眼鏡レンズの位置や向きが変更され、当該眼鏡レンズの光軸から装用者の視線が許容範囲を超えるほど外れることが抑制される。その結果、装用者の視線が変更されても、眼鏡レンズの本来の機能(近視、遠視、乱視などの屈折異常を含む眼の異常を矯正する機能など)を発揮することが可能となる。
また、眼鏡レンズが小さい場合(例えば、人間の眼の大きさあるいは眼の角膜の大きさと同程度又はこれらの大きさよりもわずかに大きい程度である場合)、装用者の視線が眼鏡レンズの中心軸から少し外れるだけで、眼鏡レンズ外の部分が装用者の視野に入り、装用者の利便性を損ないやすい。本制御装置によれば、装用者の視線が変更されても、これに追従して当該眼鏡レンズの位置や向きが変更されることで、装用者の視野においてレンズ外の視野部分の占める割合が増えるのを抑制でき、装用者の利便性向上を図ることができる。
【0007】
前記制御装置において、前記眼鏡レンズは、焦点距離が変更可能な可変焦点レンズであってもよく、前記制御部は、前記視線方向検出部の検出結果に基づいて、前記可変焦点レンズの焦点距離も制御してもよい。
本制御装置においては、レンズ移動手段による可変焦点レンズ(眼鏡レンズ)の位置及び向きの少なくとも一方の変化に合わせて、可変焦点レンズの焦点距離を変化させることができる。これによれば、装用者が可変焦点レンズ(眼鏡レンズ)を通じて視認している視認対象物との距離の変化を伴う輻輳開散、または視線変更を行った場合でも、装用者の眼の毛様体筋の弛緩や収縮などの動きを少なくすることができ、装用者の違和感や眼の疲労を抑制することが可能となる。
【0008】
また、前記制御装置において、前記眼鏡レンズは、光軸の方向及び位置のうちの少なくとも一方の光軸パラメータが変更可能な光軸可変レンズであってもよく、前記制御部は、前記視線方向検出部の検出結果に基づいて、前記光軸可変レンズの前記少なくとも一方の光軸パラメータも制御してもよい。
本制御装置においては、視線方向検出部によって検出される装用者の視線方向に基づいて、光軸可変レンズ(眼鏡レンズ)の光軸の方向及び位置のうちの少なくとも一方の光軸パラメータも変更される。これによれば、レンズ移動手段による光軸可変レンズ(眼鏡レンズ)の位置や向きの変更だけでレンズ光軸の位置や方向を変更する場合よりも、光軸可変レンズの光軸の位置や方向を制御することの自由度が向上する。例えば、レンズ移動手段によって光軸可変レンズ(眼鏡レンズ)の位置や向きを変更することでレンズ光軸の位置や方向をおおまかに調整した後、光軸可変レンズの光軸パラメータを制御してレンズ光軸の位置や方向を微調整するといった制御が可能となる。また、例えば、レンズ移動手段によって光軸可変レンズ(眼鏡レンズ)の位置を変更してレンズ光軸の位置を調整し、光軸可変レンズの光軸パラメータを制御してレンズ光軸の方向を調整するといった制御も可能となる。
【0009】
本発明の他の態様は、眼鏡レンズと、装用者の眼に対する前記眼鏡レンズの位置及び向きのうちの少なくとも一方を制御する制御装置とを備えた眼鏡レンズ装置であって、装用者の視線方向を検出する視線方向検出部と、前記眼鏡レンズの光軸の位置及び方向のうちの少なくとも一方が変化するように該眼鏡レンズを移動させるレンズ移動手段とを備え、前記制御装置として、前記制御装置を用いることを特徴とするものである。
本眼鏡レンズ装置によれば、装用者の視線が変更されても、眼鏡レンズの本来の機能を発揮することが可能となる。また、眼鏡レンズが小さい場合においては、装用者の視線が変更されても、装用者の視野においてレンズ外の視野部分の占める割合が増えるのを抑制でき、装用者の利便性向上を図ることができる。
【0010】
前記眼鏡レンズ装置において、前記レンズ移動手段は、所定方向に延びる軸の回りで前記眼鏡レンズを回転させる回転手段、及び、所定経路に沿って前記眼鏡レンズを変位させる変位手段のうちの少なくとも一方の手段を含んでもよい。
これによれば、簡易な構成で、眼鏡レンズの光軸の位置及び方向のうちの少なくとも一方が変化するように、眼鏡レンズを移動させることができる。
【0011】
本発明の更に他の態様は、眼鏡であって、前記眼鏡レンズ装置を備え、前記眼鏡レンズが眼鏡フレームに保持されていることを特徴とするものである。
眼鏡レンズ装置の使用態様が眼鏡であれば、装用者が当該眼鏡を装用する日常生活の中で、眼鏡レンズを通じて視認する装用者の視線が変更されても、眼鏡レンズの本来の機能を発揮することが可能となる。また、眼鏡レンズが小さい場合においては、装用者の視線が変更されても、装用者の視野においてレンズ外の視野部分の占める割合が増えるのを抑制でき、装用者の利便性向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明の更に他の態様は、装用者の眼に対する眼鏡レンズの位置及び向きのうちの少なくとも一方を制御する制御方法であって、装用者の視線方向を検出する視線方向検出部の検出結果に基づいて、前記眼鏡レンズの光軸の位置及び方向のうちの少なくとも一方が変化するように、該眼鏡レンズを移動させるレンズ移動手段を制御する制御工程を有することを特徴とするものである。
本制御方法によれば、装用者の視線が変更されても、眼鏡レンズの本来の機能を発揮することが可能となる。また、眼鏡レンズが小さい場合においては、装用者の視線が変更されても、装用者の視野においてレンズ外の視野部分の占める割合が増えるのを抑制でき、装用者の利便性向上を図ることができる。
【0013】
また、本発明の更に他の態様は、装用者の眼に対する眼鏡レンズの位置及び向きのうちの少なくとも一方を制御する制御装置のコンピュータを機能させるプログラムであって、装用者の視線方向を検出する視線方向検出部の検出結果に基づいて、前記眼鏡レンズの光軸の位置及び方向のうちの少なくとも一方が変化するように、該眼鏡レンズを移動させるレンズ移動手段を制御する制御手段として、前記コンピュータを機能させることを特徴とするものである。
本プログラムによれば、装用者の視線が変更されても、眼鏡レンズの本来の機能を発揮することが可能となる。また、眼鏡レンズが小さい場合においては、装用者の視線が変更されても、装用者の視野においてレンズ外の視野部分の占める割合が増えるのを抑制でき、装用者の利便性向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、装用者の視線が変更されても、眼鏡レンズの本来の機能を発揮することが可能となる。また、眼鏡レンズが小さい場合においては、装用者の視線が変更されても、装用者の視野においてレンズ外の視野部分の占める割合が増えるのを抑制でき、装用者の利便性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る眼鏡の構成を模式的に示す正面図。
図2】同眼鏡の構成を模式的に示す平面図。
図3】同眼鏡における可変焦点レンズの概略構成を示す断面図。
図4】同眼鏡における可変焦点レンズの概略構成を示す平面図。
図5】同眼鏡における制御装置の構成を示すブロック図。
図6】同眼鏡における左眼視線方向検出部の概略構成を示す平面図。
図7】本実施形態における光軸パラメータ制御の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、制御装置を備えた眼鏡レンズ装置としての眼鏡に適用した一実施形態について説明する。
なお、本発明を適用可能な眼鏡レンズ装置は、眼鏡に限らず、装用者(以下「ユーザー」という。)に装用される他の物品であってもよい。また、ユーザーに装用される物品に限らず、本発明は、眼科などに設置される据え置き型の眼鏡レンズ装置などにも適用可能である。
【0017】
図1は、本実施形態に係る眼鏡1の構成を模式的に示す正面図であり、図2は、本実施形態に係る眼鏡1の構成を模式的に示す平面図である。
本実施形態における眼鏡1は、眼鏡フレーム2と、左右一対の眼鏡レンズである可変焦点レンズ3,3と、可変焦点レンズ3,3を移動させるレンズ移動手段としてのレンズ移動機構6,6と、レンズ移動機構6,6を制御する制御装置としての制御装置10と、を備えている。なお、本実施形態では、眼鏡レンズとして可変焦点レンズ3,3を用いているが、これに限らず、焦点距離以外のレンズパラメータを電気的に制御可能な他のレンズ(光軸可変レンズなど)や、レンズパラメータを電気的に制御できない一般的なレンズ(公知の眼鏡に使用されている眼鏡レンズなど)であってもよい。
【0018】
眼鏡フレーム2は、ブリッジ部4と、鼻当部7と、左右一対のヨロイ部8,8と、左右一対のテンプル部9,9と、を備えている。
【0019】
ブリッジ部4は、左右のヨロイ部8,8間にわたって左右方向に延在し、ブリッジ部4の左右方向両端部にヨロイ部8,8が取り付けられる。ブリッジ部4には、各可変焦点レンズ3,3をそれぞれ保持している各レンズ移動機構6,6が左右方向に移動可能に取り付けられる。
【0020】
鼻当部7は、ブリッジ部4に保持され、ユーザーが眼鏡1を装着した際にユーザーの鼻に当接して眼鏡1の位置を位置決めする部材である。
【0021】
ヨロイ部8,8は、ブリッジ部4とテンプル部9,9とを連結する部材である。本実施形態におけるヨロイ部8,8は、ブリッジ部4の端部に取り付けられる取付部8aと、テンプル部9を回動可能に支持するヒンジ部8bとを備えている。
【0022】
テンプル部9,9は、ユーザーが眼鏡1を装着した際にユーザーの耳に掛けられる部材である。本実施形態における左右のテンプル部9,9は、ヨロイ部8,8が備えるヒンジ部8bにより眼鏡1の左右方向中央側に向かってそれぞれ折りたたむことができるように構成されている。
【0023】
本実施形態における可変焦点レンズ3,3は、電気的に制御可能な可変焦点機能を有する可変焦点レンズであれば、焦点可変方式に限定されない。例えば、液晶層の屈折率を電気的に制御して焦点距離を変更可能な液晶方式のものや、液体界面を屈折面とし、液体の濡れ性を電気的に制御して当該界面の曲率を変更することで焦点距離を変更可能な静電液体方式などが挙げられる。特に、焦点距離の変化範囲が広く、焦点距離の変化速度が高速である静電液体方式が好ましい。
【0024】
可変焦点レンズ3,3は、静電液体方式のもので、公知の可変焦点レンズ(焦点可変レンズ、エレクトロウェッティングデバイス、液体レンズなどとも言う。)を用いることができる。本実施形態の可変焦点レンズ3,3は、例えばレンズ部分の直径が5mm~12mm程度の可変焦点レンズを採用している。なお、より大型の可変焦点レンズを用いることで、可変焦点レンズがカバーできるユーザーの視線方向範囲が広がり、ユーザーの利便性を高めることができる。
【0025】
図3は、本実施形態における可変焦点レンズ3の概略構成を示す断面図である。
図4は、本実施形態における可変焦点レンズ3の概略構成を示す平面図である。
本実施形態の可変焦点レンズ3は、図3に示すように、界面Iで非混合状態で接触している絶縁液311と導電液312とが、環状の第一電極301と、第一電極301の上端と下端を閉じる2つの透明な窓部材303,304とによって封入された構成を有する。絶縁液311は例えば油性液体であり、導電液312は例えば比較的導電率の低い水性液体である。第一電極301には電圧V0が印加されるが、本実施形態では環状の第一電極301を接地しているため、V0=0Vである。また、第一電極301は、封入されている絶縁液311及び導電液312に対し、絶縁層301aによって絶縁されている。
【0026】
また、本実施形態の可変焦点レンズ3は、第一電極301の軸Oに対する対称位置に複数対の第二電極302A,302B,・・・が配置されている。本実施形態では、図4に示すように、4対の第二電極302A~302Hが軸Oを中心とした円周上に配置されており、合計8つの第二電極302A~302Hを備えている。
【0027】
第二電極302A~302Hは、図3に示すように、導電液312に接触する位置に配置されている。各第二電極302A~302Hに電圧VA~VHを印加すると、各第二電極302A~302Hと第一電極301との間に電位差が生じ、エレクトロウェッティング効果によって絶縁液311の端部Ia(界面Iの端部Ia)を第一電極301上の絶縁層部分301bに沿って変位させることができる。このように絶縁液311の端部Iaが変位することにより、絶縁液311の形状が変化して界面Iの曲率が変更される。したがって、第二電極302A~302Hに印加する電圧VA~VHを制御することにより、界面Iを屈折面とする可変焦点レンズ3の焦点距離を変化させることができる。
【0028】
特に、本実施形態の可変焦点レンズ3は、第二電極302A~302Hに印加する電圧VA~VHを制御することにより、屈折面である界面Iを、拡散レンズ(凹レンズ)、平面レンズ、集光レンズ(凸レンズ)に変形させることができる。したがって、本実施形態の眼鏡1は、可変焦点レンズ3を拡散レンズ(凹レンズ)とすることで近視ユーザー用の眼鏡として使用でき、また、可変焦点レンズ3を集光レンズ(凸レンズ)とすることで遠視ユーザー用の眼鏡として使用できる。
【0029】
本実施形態の可変焦点レンズ3は、ジオプター換算(焦点距離の逆数)で-15D以上+15D以下の範囲で、焦点距離を変化させることができる。このように焦点距離の変化範囲が広い可変焦点レンズ3を用いることで、例えば、弱視のような低視力のユーザーに対応することも可能である。
【0030】
本実施形態において、第一電極301の軸Oの対称位置に配置されるすべての第二電極302A~302Hに同じ電圧を印加することで、可変焦点レンズ3の光軸を第一電極301の軸Oに一致させたまま、焦点距離を変化させることができる。一方で、各第二電極302A~302Hに対して異なる電圧を印加すれば、焦点距離を変化させるだけでなく、可変焦点レンズ3の光軸をずらしたり傾けたりすることも可能である。すなわち、本実施形態の可変焦点レンズ3は、印加電圧VA~VHを制御することによって、光軸の位置と方向のいずれか一方及び両方を変化させることができる。
【0031】
制御装置10は、図1に示すように、バッテリー20とともに、左右のヨロイ部8,8のうちの一方(図中左側のヨロイ部8)に設けられている。制御装置10は、バッテリー20から可変焦点レンズ3の各第二電極302A~302Hへ印加する電圧を制御することにより、可変焦点レンズ3の光軸の位置や方向並びに焦点距離を制御することができる。
【0032】
レンズ移動機構6,6は、それぞれが保持している可変焦点レンズ3,3の光軸の位置及び方向のうちの少なくとも一方が変化するように、それぞれの可変焦点レンズ3,3を独立して移動させることができる。本実施形態におけるレンズ移動機構6は、第一駆動部601と、第二駆動部602と、第三駆動部603と、を備えている。
【0033】
第一駆動部601は、可変焦点レンズ3の中心軸O(第一電極301の軸)とブリッジ部4の長手方向(図1中矢印xの方向)との両方に対して直交する方向に延びる回転軸A(中心軸Oを通る軸)の回りで可変焦点レンズ3を回転させる回転手段である。本実施形態における第一駆動部601の一例としては、回転軸Aに沿って長尺な回転軸部6aの一端(図1中下端)で可変焦点レンズ3を保持し、回転軸部6aの外周面に設けられる被係合部に駆動側の係合部を係合させる構成が挙げられる。この構成においては、第一駆動源(駆動モータ)の回転駆動力により係合部を駆動させることで、回転軸部6aの外周面上の被係合部を介して回転駆動力を回転軸部6aに伝達し、図1中符号θで示すように、回転軸部6aを回転軸Aの回りで回転させる。第一駆動源は、制御装置10の主制御部11によって正逆回転可能に制御され、また、主制御部11の制御により回転軸部6aの回転位置(回転角度)を目標回転位置(回転角度)に位置決めすることができ、これにより可変焦点レンズ3の向き(可変焦点レンズ3の光軸の方向)を制御することができる。
【0034】
第二駆動部602は、回転軸Aの軸線方向に沿って可変焦点レンズ3を変位させる変位手段である。本実施形態における第二駆動部602の一例としては、U字状の支持アーム6bの各端部が回転軸Aの軸線方向に沿って移動可能にブリッジ部4に取り付けられている。ブリッジ部4は、中空状の円筒部材で構成され、ブリッジ部4の内部には、支持アーム6bの一端部(ブリッジ部4の長手方向中央側の端部)を図1中符号zの方向(回転軸Aの軸線方向)に沿って往復移動させるリニア移動ステージが配置されている。支持アーム6bには、図1に示すように、第一駆動部601及び回転軸部6aが取り付けられている。このような構成により、第二駆動部602がz方向リニア移動ステージにより支持アーム6bを図1中符号zの方向に沿って移動させることで、回転軸部6aに取り付けられた可変焦点レンズ3を回転軸A(所定経路)に沿って移動させることができる。z方向リニア移動ステージの駆動源(第二駆動源)は、制御装置10の主制御部11によって制御され、主制御部11の制御によりz方向リニア移動ステージによる支持アーム6bのz方向位置を目標位置に位置決めすることができる。これにより、可変焦点レンズ3の位置(高さ)すなわち可変焦点レンズ3の光軸の位置(高さ)を制御することができる。
【0035】
第三駆動部603は、ブリッジ部4の長手方向に沿って可変焦点レンズ3を変位させる変位手段である。本実施形態における第三駆動部603の一例としては、ブリッジ部4の内部に、第二駆動部602のz方向リニア移動ステージを図1中符号xの方向(ブリッジ部4の長手方向)に沿って往復移動させるx方向リニア移動ステージが配置されている。このような構成により、第三駆動部603がx方向リニア移動ステージによりz方向リニア移動ステージをx方向に沿って移動させることで、z方向リニア移動ステージに取り付けられた支持アーム6bを介して、可変焦点レンズ3をブリッジ部4の長手方向(所定経路)に沿って移動させることができる。x方向リニア移動ステージの駆動源(第三駆動源)は、制御装置10の主制御部11によって制御され、主制御部11の制御によりx方向リニア移動ステージによるz方向リニア移動ステージのx方向位置を目標位置に位置決めすることができる。これにより、可変焦点レンズ3の位置(左右方向位置)すなわち可変焦点レンズ3の光軸の位置(左右方向位置)を制御することができる。
【0036】
図5は、本実施形態における制御装置10の構成を示すブロック図である。
本実施形態における制御装置10は、主制御部11と、電圧変更部12と、操作部13と、を備えている。制御装置10は、可変焦点レンズ3の第二電極302A~302Hと、電圧を供給する電源としてのバッテリー20と、ユーザーの視線方向を検出する視線方向検出部21A,21Bと、レンズ移動機構6の各駆動部601~603とが接続されている。なお、本実施形態では、ユーザーの各眼の視線方向をそれぞれ検出する2つの視線方向検出部21A,21Bが備わっているが、ユーザーのいずれか一方の眼の視線方向を検出する視線方向検出部だけが備わっている構成や、ユーザーの両眼に共通する1つの視線方向を検出する視線方向検出部が備わっている構成などを採用してもよい。
【0037】
主制御部11は、例えば、CPU、RAM、ROMなどが実装された制御基板(コンピュータ)によって構成され、ROMに記憶されている所定の制御プログラムを実行することにより、眼鏡レンズ装置である眼鏡1の全体的な制御を行う。特に、本実施形態では、主制御部11は、視線方向検出部によって検出されるユーザーの視線方向(検出結果)に基づいて、可変焦点レンズ3,3の光軸の位置及び方向のうちの少なくとも一方が変化するように、可変焦点レンズ3を移動させるレンズ移動機構6を制御する制御部(制御手段)として機能する。
【0038】
電圧変更部12は、主制御部11の制御の下、バッテリー20から可変焦点レンズ3の各第二電極302A~302Hへ印加する電圧を変更する。電圧変更部12は、各第二電極302A~302Hへ印加する電圧を、第二電極302A~302Hごとに個別に変更することができる。ただし、電圧変更部12は、第二電極302A~302Hの一部だけ(例えば1対の第二電極だけ)を部分的に変更可能なものであってもよい。
【0039】
操作部13は、ユーザーによって操作されることで、ユーザーの操作内容を示す操作信号を主制御部11に出力する。操作部13が受け付けるユーザー操作としては、例えば、電源のオンオフ操作、主制御部11の実行指示、主制御部11の制御内容の変更などが挙げられる。操作部13は、受け付けるユーザー操作の内容に適した種類の操作器(機械式や静電タッチ式などのボタン、ダイヤルなどの回転型操作部など)によって構成される。なお、これらのユーザー操作を不要とする構成とすることも可能であり、その場合には操作部13を省略することが可能である。
【0040】
バッテリー20は、制御装置10の電源として機能し、可変焦点レンズ3の第二電極302A~302Hに供給する電圧、レンズ移動機構6に供給する電力を出力する。バッテリー20は、一次電池であってもよいし、二次電池であってもよい。また、太陽光パネルなどの発電機能を備えたものであってもよい。
【0041】
2つの視線方向検出部21A,21Bは、ユーザーの右眼と左眼のそれぞれの視線方向を個別に検出するものであり、視線方向が検知できるものであれば、その構成は限定されないが、眼鏡フレーム2上に配置できる構成であるのが好ましい。
【0042】
図6は、本実施形態における左眼視線方向検出部21Bの概略構成を示す平面図である。なお、図6では、説明のため、眼鏡フレーム2の図示は省略され、左眼用の可変焦点レンズ3のみが図示されている。
本実施形態の左眼視線方向検出部21Bは、光源211と、ハーフミラー212と、撮像手段としてのカメラ213と、画像処理部214と、から構成されている。なお、右眼視線方向検出部21Aの構成は、左眼視線方向検出部21Bと同様であるため、説明を省略する。
【0043】
左眼視線方向検出部21Bのうちの光源211及びカメラ213は、図2の符号21Bで示すように、眼鏡フレーム2の左側ヨロイ部8の近くの左側テンプル部9上に取り付けられている。一方、左眼視線方向検出部21Bのうちのハーフミラー212は、図6に示すように、眼鏡1を装着したユーザーの左眼Eと左眼用の可変焦点レンズ3との間に配置される。ハーフミラー212は、可変焦点レンズ3と一体構成とするのが好ましいが、別体構成としてもよい。
【0044】
ハーフミラー212は、入射する近赤外光を反射し、可視光は透過する機能を有している。これにより、可変焦点レンズ3を通じて入射する視認対象物からの可視光Lは、図6に示すように、ハーフミラー212を通過してユーザーの眼Eに入射することになり、ユーザーは視認対象物を視認することができる。
【0045】
光源211は、非可視光として、例えば近赤外光L0を照射する。光源211は、ハーフミラー212に対し、眼鏡1を装着したユーザーの眼Eと同じ側に配置される。光源211から照射される近赤外光L0は、ハーフミラー212で反射され、ユーザーの眼Eに入射される。ユーザーの眼Eに入射した近赤外光は、ユーザーの眼E(眼の角膜)で反射され、再びハーフミラー212に到達する。そして、ユーザーの眼Eで反射した近赤外光L1は、ハーフミラー212で反射され、光源211の近傍に配置されているカメラ213に入射される。
【0046】
カメラ213は、光源211から照射される非可視光の画像を撮像する撮像手段であり、本実施形態では、近赤外光の画像を撮像可能な近赤外カメラである。本実施形態のカメラ213は、可視光を遮断するフィルタを備え、可視光に邪魔されることなく、ユーザーの眼Eで反射された近赤外光L1の画像を撮像することができる。カメラ213で撮像された画像のデータは、画像処理部214に出力される。
【0047】
画像処理部214は、例えば、CPU、RAM、ROMなどが実装された制御基板(コンピュータ)によって構成され、ROMに記憶されている所定の視線方向検出プログラムを実行することにより、カメラ213で撮像された画像データに基づいてユーザーの眼Eの視線方向を検出する。なお、画像処理部214の機能を制御装置10の主制御部11に持たせ、画像処理部214を省略してもよい。
【0048】
カメラ213によって撮像される非可視光画像である近赤外画像には、ユーザーの眼Eの画像が含まれる。画像処理部214は、カメラ213から出力されるユーザーの眼Eの画像から、眼Eの視線方向を検出する。眼Eの視線方向を検出する方法は、特に限定はないが、例えば、カメラ213によって撮像された画像には近赤外光の輝点が含まれるので、この輝点を利用する方法が挙げられる。具体的には、この輝点は、眼Eの視線方向によらず、画像上における眼Eの固定地点に表示されることから、この輝点を基準位置とし、この基準位置に対する眼Eの瞳孔中心の相対位置から、眼Eの視線方向を検出することができる。なお、カメラ213から出力される画像における輝点及び瞳孔中心の検出は、エッジ抽出やハフ変換などの既存の画像処理技術を用いて実現することができる。
【0049】
次に、本実施形態における可変焦点レンズ3,3の移動制御の一例について説明する。
図7は、本実施形態における移動制御の流れを示すフローチャートである。
本実施形態における移動制御では、所定の制御プログラムを実行する主制御部11が、視線方向検出部21A,21Bの各検出結果(ユーザーの右眼と左眼の各視線方向の検出結果)に基づいて、可変焦点レンズ3,3の光軸の位置及び方向が変化するように、レンズ移動機構6の各駆動部601~603を制御する。なお、ユーザーの右眼と左眼にそれぞれ対応する2つの可変焦点レンズ3,3の制御は独立して行われるが、その制御内容は同様であるため、以下、左右の可変焦点レンズ3,3を区別することなく説明する。
【0050】
本実施形態では、操作部13がユーザーによる電源オンの操作を受け付けると(S1)、まず、可変焦点レンズ3の基本焦点距離の設定が完了していない場合には、基本焦点距離の設定を行う(S2)。本実施形態では、可変焦点レンズ3の位置や向き(光軸の方向や位置)が変化されても、可変焦点レンズ3の焦点距離は基本焦点距離のまま変化させない。なお、ここでは、電源オンになることで移動制御が開始される例であるが、これに限らず、例えば、眼鏡1がユーザーに装着されたことを検知する装着検知部を設け、ユーザーが眼鏡1を装着したことを検知することで移動制御が開始されるように構成してもよい。
【0051】
基本焦点距離は、眼鏡1を利用するユーザーの利用用途(ユーザーが視認対象物を視認する距離)に応じて、任意に設定することができる。例えば、ユーザーが近くの視認対象物(スマートフォン、タブレット、ゲーム機、書籍など)を視認する用途に眼鏡1を利用するときには、この近くの視認対象物にピントが合う焦点距離に基本焦点距離を設定し、逆に、ユーザーが離れた視認対象物(離れた場所の映像(映画など)、美術品などの鑑賞物、景色など)を視認する用途に眼鏡1を利用するときには、この遠くの視認対象物にピントが合う焦点距離に基本焦点距離を設定する。
【0052】
また、基本焦点距離は、眼鏡1を利用するユーザーの利用用途に関係なく、ユーザーごとに固定の焦点距離に設定してもよい。例えば、近視、遠視、乱視などの屈折異常を含む眼の異常をもつユーザーであれば、ユーザーの処方屈折力(基本屈折力)に対応する焦点距離に基本焦点距離を設定する。この場合、例えば、近視ユーザーであれば、マイナス屈折力に対応する焦点距離が基本焦点距離として設定される。
【0053】
なお、基本焦点距離の設定作業は、専門の作業者あるいはユーザー自身が操作部13を操作することにより行うことができる。例えば、操作部13に屈折力が表記されたダイヤルが設けられている場合、ユーザーの処方屈折力に一致するようにダイヤルを回すことで、基本焦点距離の設定を行うことができる。この場合、ダイヤルの回転位置に応じた電気信号(操作信号)が主制御部11に送られ、主制御部11は、この信号に対応する電圧が可変焦点レンズ3の第二電極302A~302Hに印加されるように、電圧変更部12を制御する。これにより、可変焦点レンズ3における絶縁液311と導電液312との界面Iの形状変化により界面Iの曲率が変更され、可変焦点レンズ3の焦点距離が、設定された基本焦点距離に変更される。
【0054】
可変焦点レンズ3の基本焦点距離の設定が完了したら、主制御部11は、視線方向検出部21A,21Bによる検出動作を開始させる(S3)。これにより、光源211から照射された近赤外光L0が、ハーフミラー212で反射されてユーザーの各眼Eに入射され、その反射光が再びハーフミラー212で反射されてそれぞれのカメラ213に入射され、各眼Eの画像が撮像される。そして、各カメラ213で撮像された各眼Eの画像データは、それぞれの画像処理部214によって画像処理がなされ、各眼Eの画像から各眼Eの視線方向が検出される。この視線方向の検出動作は、所定のサンプリング間隔で繰り返し実行される。
【0055】
視線方向検出部21A,21Bで検出された各眼Eの視線方向の検出結果は主制御部11に送られる。主制御部11は、レンズ移動機構6の各駆動部601~603を制御し、視線方向の検出結果に基づいて可変焦点レンズ3の位置及び向きの制御を実行する(S4)。具体的には、主制御部11は、視線方向の検出結果に対応する目標回転位置θ及び目標位置x,bzへの駆動命令を、レンズ移動機構6の各駆動部601~603へ出力する制御を実行する。これにより、ユーザーの視線方向が変わると、その検知結果に応じて、レンズ移動機構6の第一駆動部601が目標回転位置θに回転駆動し、第二駆動部602が目標位置zに移動し、第三駆動部603が目標位置xに移動し、可変焦点レンズの光軸の位置及び方向が、変更後のユーザーの視線方向に追従するように変化する。
【0056】
なお、操作部13がユーザーによる電源オフの操作を受け付けると(S5のYes)、主制御部11は、移動制御を終了する。このとき、可変焦点レンズ3の各第二電極302A~302Hへの電圧供給はオフにしてもよいし、オンにしてもよい。可変焦点レンズ3の各第二電極302A~302Hへの電圧供給はオフにすれば、バッテリー20の電力消費を節約することができる。
【0057】
一方、可変焦点レンズ3の各第二電極302A~302Hへの電圧供給はオンにすれば、本眼鏡1を通常の眼鏡としてそのまま利用することが可能となる。この場合、例えば、操作部13がユーザーによる電源オフの操作を受け付けたときに、可変焦点レンズ3の焦点距離が基本焦点距離のままとなるように、各第二電極302A~302Hへ電圧を印加し続ける。
【0058】
本実施形態によれば、眼鏡1を利用しているユーザーの視線が変更されても、これに追従して眼鏡1の可変焦点レンズ3,3の位置及び向きが変更され、可変焦点レンズ3,3の光軸からユーザーの視線が許容範囲を超えるほど大きく外れることが抑制される。その結果、ユーザーの視線が変更されても、可変焦点レンズ3,3の本来の機能(ユーザーの眼をレンズによって矯正する機能)を適正に発揮することができる。
【0059】
また、本実施形態における可変焦点レンズ3,3は、上述したように、レンズ部分の直径が5mm~12mm程度であり、人間の眼の大きさあるいは眼の角膜の大きさと同程度又はこれらの大きさよりもわずかに大きい程度である。このような小さいレンズの場合、ユーザーの視線が可変焦点レンズ3,3の中心軸Oから少し外れるだけで、レンズ外の部分(可変焦点レンズ3,3の外周部(第一電極301等)の非レンズ部分、可変焦点レンズ3,3の外側の景色など)がユーザーの視野に入る。そのため、ユーザーが可変焦点レンズ3,3を通じて視認対象物を視認しにくくなり、ユーザーの利便性を損ないやすい。
【0060】
本実施形態によれば、ユーザーの視線が変更されても、これに追従して可変焦点レンズ3,3の位置や向きが変更されるため、ユーザーの視線と可変焦点レンズ3,3の中心軸Oとを略一致させることが可能である。これにより、ユーザーの視線が変更されても、レンズ外の部分がユーザーの視野に入りにくくなり、ユーザーの視野においてレンズ外の視野部分の占める割合が増えるのを抑制でき、ユーザーの利便性向上を図ることができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、可変焦点レンズ3,3の焦点距離を維持しつつ可変焦点レンズ3,3の位置や向きが変化する。そのため、ユーザーが可変焦点レンズ3,3を通じて視認している視認対象物との距離を変化させないまま視線を変更した場合に、ユーザーの眼の毛様体筋の弛緩や収縮などの動きが少なく、ユーザーの違和感や眼の疲労が抑制される。
【0062】
ただし、本実施形態において、可変焦点レンズ3,3の焦点距離が、ユーザーの視線方向の検出結果に応じて変化する可変焦点レンズ3,3の光軸の位置及び方向に対応する焦点距離となるように、可変焦点レンズ3,3の焦点距離を制御してもよい。この場合、例えば、ユーザーの視線方向と可変焦点レンズ3,3の焦点距離との対応関係を記述したテーブルデータなどを記憶部に記憶しておく。そして、主制御部11は、ユーザーの視線方向の検出結果に基づき、レンズ移動機構6を制御してユーザーの視線方向に追従するように可変焦点レンズ3,3の光軸の位置及び方向が変更する一方で、変更後の光軸の位置及び方向に対応する焦点距離を記憶部から読み出して可変焦点レンズ3,3の焦点距離が変化するように電圧変更部12を制御する。
【0063】
これによれば、例えば、ユーザーが、視認対象物を近くのものから遠方のものへ変更する場合(近方視から遠方視へ切り替えるとき)やその逆の場合のように、可変焦点レンズ3,3を通じて視認している視認対象物との距離の変化を伴って視線を変更する場合に、視認対象物との距離の変化に応じて可変焦点レンズ3,3の焦点距離を自動調整することができる。したがって、視認対象物との距離の変化を伴って視線を変更する場合でも、ユーザーの眼の毛様体筋の弛緩や収縮などの動きが少なく、ユーザーの違和感や眼の疲労が抑制される。
【0064】
なお、本実施形態における移動制御では、第一駆動部601により可変焦点レンズ3,3の向きを回転軸Aを中心に左右方向(θ方向)に変更することができるが、可変焦点レンズ3,3の向きを他の方向へ回転させる回転手段を設けてもよい。例えば、可変焦点レンズ3,3の向きを、回転軸Aに対して直交する方向(ブリッジ部4の長手方向)に延びる軸(可変焦点レンズ3,3の中心軸Oを通る軸)を中心に上下方向に変更できるような回転手段を設けてもよい。これにより、ユーザーの視線が上下方向に変更された場合でも、この視線変更に追従して可変焦点レンズ3,3の向きを変更することができる。
【0065】
本実施形態における移動制御では、可変焦点レンズ3,3の位置及び向きをレンズ移動機構6における3つの駆動部601~603によって変更しているが、これらのうちの一部の駆動部を省略してもよい。また、レンズ移動機構6における3つの駆動部601~603のうちの一部の駆動部に対する移動制御に代えて、可変焦点レンズ3,3の光軸パラメータを変化させる光軸パラメータ制御を実行してもよい。
【0066】
すなわち、本実施形態における可変焦点レンズ3は、各第二電極302A~302Hに対して異なる電圧を印加することで、光軸の位置及び方向のいずれか一方又は両方を変化させることのできる光軸可変レンズである。したがって、所定の制御プログラムを実行する主制御部11が電圧変更部12を制御することにより、視線方向検出部21A,21Bの検出結果に基づいて、可変焦点レンズ3,3の光軸パラメータである光軸の位置や方向が変化するように、可変焦点レンズ3,3を制御することができる。
【0067】
よって、例えば、主制御部11が電圧変更部12により可変焦点レンズ3,3の光軸の方向が変化するように可変焦点レンズ3,3を制御する光軸パラメータ制御を実行すれば、所定方向に延びる軸の回りで可変焦点レンズ3,3を回転させる回転手段(例えば、本実施形態の第一駆動部601)を省略することが可能である。この場合、眼鏡レンズ装置(眼鏡1)の構成の簡素化、小型化を図ることができる。
【0068】
もちろん、このような回転手段と光軸パラメータ制御とを併用してもよい。この場合、例えば、回転手段による移動制御によってレンズの光軸方向の変更可能範囲に加えて、光軸パラメータ制御による光軸方向の変更可能範囲を上乗せでき、ユーザーの視線変更に追従可能な範囲を広げることが可能となる。また、例えば、回転手段による移動制御によってレンズ光軸の方向をおおまかに調整した後、光軸パラメータ制御によってレンズ光軸の方向を微調整するといった制御が可能となる。
【0069】
同様に、例えば、主制御部11が電圧変更部12により可変焦点レンズ3,3の光軸の位置が変化するように可変焦点レンズ3,3を制御する光軸パラメータ制御を実行すれば、所定経路に沿って可変焦点レンズ3,3を変位させる変位手段(例えば、本実施形態の第二駆動部602や第三駆動部603)を省略することが可能である。この場合も、眼鏡レンズ装置(眼鏡1)の構成の簡素化、小型化を図ることができる。
【0070】
もちろん、このような変位手段と光軸パラメータ制御とを併用してもよい。この場合も、例えば、変位手段による移動制御によってレンズの光軸位置の変更可能範囲に加えて、光軸パラメータ制御による光軸位置の変更可能範囲を上乗せでき、ユーザーの視線変更に追従可能な範囲を広げることが可能となる。また、例えば、変位手段による移動制御によってレンズ光軸の位置をおおまかに調整した後、光軸パラメータ制御によってレンズ光軸の位置を微調整するといった制御が可能となる。
【0071】
また、本実施形態における移動制御では、第二駆動部602及び第三駆動部603により可変焦点レンズ3,3の位置を、z方向及びx方向に沿ってそれぞれ変更することができるが、可変焦点レンズ3,3の位置を他の方向に沿って変位させる変位手段を設けてもよい。例えば、可変焦点レンズ3,3の位置を、z方向及びx方向の両方に対して直交する方向(ユーザーの眼の前後方向)に沿って変位できるような変位手段を設けてもよい。これによれば、ユーザーの視線が変更されたときに、本実施形態のレンズ移動機構6(3つの駆動部601~603)だけの構成よりも、ユーザーの視線と可変焦点レンズ3,3の中心軸Oとを一致させる精度を高めることができるなどのメリットが得られる。
【0072】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに眼鏡1等の眼鏡レンズ装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0073】
ハードウェア実装については、上述した工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0074】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、前記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0075】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 :眼鏡
2 :眼鏡フレーム
3 :可変焦点レンズ
4 :ブリッジ部
6 :レンズ移動機構
6a :回転軸部
6b :支持アーム
7 :鼻当部
8 :ヨロイ部
8a :取付部
8b :ヒンジ部
9 :テンプル部
10 :制御装置
11 :主制御部
12 :電圧変更部
13 :操作部
20 :バッテリー
21A,21B:視線方向検出部
211 :光源
212 :ハーフミラー
213 :カメラ
214 :画像処理部
301 :第一電極
301a,301b:絶縁層
302A~302H:第二電極
303,304:窓部材
311 :絶縁液
312 :導電液
601 :第一駆動部
602 :第二駆動部
603 :第三駆動部
D :レンズ間距離
I :界面
Ia :端部
L :可視光
L0,L1:近赤外光
O :軸
PD :瞳孔間距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7