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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061494
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】可塑化装置及び可塑化方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/58 20060101AFI20230425BHJP
   B29C 45/78 20060101ALI20230425BHJP
   B29C 45/60 20060101ALI20230425BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20230425BHJP
   B29C 45/54 20060101ALN20230425BHJP
【FI】
B29C45/58
B29C45/78
B29C45/60
B29C45/76
B29C45/54
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171408
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】村田 博文
(72)【発明者】
【氏名】加藤 利美
(72)【発明者】
【氏名】依田 穂積
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AJ12
4F206AJ13
4F206AK05
4F206AK07
4F206AK09
4F206AK11
4F206AK13
4F206AK14
4F206AP05
4F206AQ03
4F206JA07
4F206JD04
4F206JL02
4F206JM01
4F206JM04
4F206JN03
4F206JN11
4F206JQ29
4F206JQ46
4F206JQ63
4F206JT01
4F206JT40
(57)【要約】
【課題】樹脂材料が食い込み不良になることを防止することができる可塑化技術を提供する。
【解決手段】スクリュー(72)は、温度制御棒(90)を内蔵している。温度制御棒(90)は、断熱板(92)で構成される断熱部と、ヒータ(98)を内蔵する加熱部と、冷却手段(94)で冷却される冷却部とを備えている。ドライブロッド(102)により、温度制御棒(90)は、スクリュー(72)に対して軸方向へ移動される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱筒と、この加熱筒に回転自在に収納されたスクリューと、前記加熱筒に設けられた落下口へ樹脂材料を投入するホッパとを備え、
前記加熱筒内へ投入された前記樹脂材料を前記スクリューの回転で可塑化すると共に前記加熱筒に設けられた出口から可塑化済みの樹脂材料を吐出する可塑化装置であって、
前記スクリューは、温度制御棒を内蔵し、
この温度制御棒は、断熱部と、この断熱部よりも前記出口側に設けられヒータを備える加熱部と、前記断熱部よりも前記出口から離れる部位に設けられ冷却手段で冷却される冷却部とを備え、
前記断熱部は、前記落下口の近傍に設けられ、
前記可塑化装置は、前記スクリューに対して前記温度制御棒を軸方向へ移動する温度制御棒移動手段を備えていることを特徴とする可塑化装置。
【請求項2】
加熱筒と、この加熱筒に回転自在に収納されたスクリューと、前記加熱筒に設けられた落下口へ樹脂材料を投入するホッパとを備え、
前記加熱筒内へ投入された前記樹脂材料を前記スクリューの回転で可塑化すると共に前記加熱筒に設けられた出口から可塑化済みの樹脂材料を吐出する可塑化装置であって、
前記スクリューは、温度制御棒を内蔵し、
この温度制御棒は、断熱部と、この断熱部よりも前記出口側に設けられ第1ヒータを備える第1加熱部と、この第1加熱部よりも前記出口側に設けられ第2ヒータを備える第2加熱部と、前記断熱部よりも前記出口から離れる部位に設けられ冷却手段で冷却される冷却部とを備え、
前記断熱部は、前記落下口の近傍に設けると共に、
前記可塑化装置は、前記スクリューに対して前記断熱部、前記第1加熱部及び前記冷却部を一括して軸方向へ移動する第1温度制御棒移動手段と、この第1温度制御棒移動手段とは独立して前記スクリューに対して前記第2加熱部を軸方向へ移動する第2温度制御棒移動手段と、を備えていることを特徴とする可塑化装置。
【請求項3】
請求項2記載の可塑化装置であって、
前記第1加熱部は、第1ディスクと、この第1ディスクから前記第2加熱部へ延びる第1爪と、前記第1ディスク及び前記第1爪に挿入される前記第1ヒータとからなり、
前記第2加熱部は、第2ディスクと、この第2ディスクから前記第1加熱部へ延びる第2爪と、前記第2爪及び前記第2ディスクに挿入される前記第2ヒータとからなり、
隣り合う2本の前記第2爪の間に、前記第1の爪が軸方向移動可能に嵌められていることを特徴とする可塑化装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載の可塑化装置であって、
前記スクリューの有効長さをL、前記スクリューの外径をDとしたときに、L/Dは、0.5~3.0の範囲にあり、前記Dは、少なくとも80mmであることを特徴とする可塑化装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の可塑化装置を準備する準備工程と、
予定される可塑化作業において、そのときの計量値としきい値を比較する比較工程と、
この比較工程で前記計量値が前記しきい値以下であるときには、前記温度制御棒を前記出口に近づくように移動し、前記計量値が前記しきい値を超えているときには、前記温度制御棒を前記出口から離れるように移動する移動工程と、
前記加熱筒内へ投入された前記樹脂材料を前記スクリューの回転で可塑化しつつ、前記加熱筒に設けられた出口から可塑化済みの樹脂材料を吐出して計量する可塑化・計量工程と、からなる可塑化方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項記載の可塑化装置を準備する準備工程と、
前記温度制御棒移動手段で前記温度制御棒を軸方向に移動する移動工程と、
前記加熱筒内へ投入された前記樹脂材料を前記スクリューの回転で可塑化しつつ、前記加熱筒に設けられた出口から可塑化済みの樹脂材料を吐出して計量する可塑化・計量工程と、からなる可塑化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料を可塑化する可塑化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックの成形分野では、可塑化装置が実用に供されている。
多くの可塑化装置は、加熱筒にスクリューを内蔵したものを主要素とする。加熱筒は外面にバンドヒータが巻かれている。このバンドヒータの熱と樹脂材料自体の混錬熱とにより可塑化が進行する。
【0003】
ただし、加熱筒の熱容量が大きいため、加熱筒の温度と樹脂材料の温度とに乖離が生じ、温度制御のレスポンス(応答性)が悪くなる。
その対策を講じた可塑化装置が、提案されている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0004】
特許文献1に開示される可塑化装置は、バンドヒータを備える加熱筒と、この加熱筒に回転自在に収納されるスクリューとを備え、このスクリューに棒状ヒータを内蔵している。
【0005】
本発明者らが試行したところ、ある条件のときに、ホッパ下の落下口付近で樹脂材料が食い込み不良になることが分かった。食い込み不良になるとは、例えば半溶融状態の樹脂材料がおこし状に固まりスクリューに巻き付くことを指す。食い込み不良の発生は、可塑化作業に支障をきたす。
ある条件とは、計量値が小さいときや可塑化時間が長いときであった。
計量値が小さいと、樹脂材料の投入量が少なくなり、樹脂材料の温度が短時間で変化する。この温度変化により、食い込み不良になる。
可塑化時間が長いと、樹脂材料の温度が予定以上に変化する。この温度変化により、食い込み不良になる。
【0006】
従来の構造では、構造上スクリューの温度コントロールが難しく、樹脂材料が食い込み不良になることを、十分に防止することができなかった。
しかし、近年、樹脂成形品の品質向上の一環として、食い込み不良の防止対策が強く望まれるようになってきた。
そこで、樹脂材料が食い込み不良になることを防止することができる可塑化技術が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-262812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、樹脂材料が食い込み不良になることを防止することができる可塑化技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、加熱筒と、この加熱筒に回転自在に収納されたスクリューと、前記加熱筒に設けられた落下口へ樹脂材料を投入するホッパとを備え、
前記加熱筒内へ投入された前記樹脂材料を前記スクリューの回転で可塑化すると共に前記加熱筒に設けられた出口から可塑化済みの樹脂材料を吐出する可塑化装置であって、
前記スクリューは、温度制御棒を内蔵し、
この温度制御棒は、断熱部と、この断熱部よりも前記出口側に設けられヒータを備える加熱部と、前記断熱部よりも前記出口から離れる部位に設けられ冷却手段で冷却される冷却部とを備え、
前記断熱部は、前記落下口の近傍に設けられ、
前記可塑化装置は、前記スクリューに対して前記温度制御棒を軸方向へ移動する温度制御棒移動手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、加熱筒と、この加熱筒に回転自在に収納されたスクリューと、前記加熱筒に設けられた落下口へ樹脂材料を投入するホッパとを備え、
前記加熱筒内へ投入された前記樹脂材料を前記スクリューの回転で可塑化すると共に前記加熱筒に設けられた出口から可塑化済みの樹脂材料を吐出する可塑化装置であって、
前記スクリューは、温度制御棒を内蔵し、
この温度制御棒は、断熱部と、この断熱部よりも前記出口側に設けられ第1ヒータを備える第1加熱部と、この第1加熱部よりも前記出口側に設けられ第2ヒータを備える第2加熱部と、前記断熱部よりも前記出口から離れる部位に設けられ冷却手段で冷却される冷却部とを備え、
前記断熱部は、前記落下口の近傍に設けると共に、
前記可塑化装置は、前記スクリューに対して前記断熱部、前記第1加熱部及び前記冷却部を一括して軸方向へ移動する第1温度制御棒移動手段と、この第1温度制御棒移動手段とは独立して前記スクリューに対して前記第2加熱部を軸方向へ移動する第2温度制御棒移動手段と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の可塑化装置であって、
前記第1加熱部は、第1ディスクと、この第1ディスクから前記第2加熱部へ延びる第1爪と、前記第1ディスク及び前記第1爪に挿入される前記第1ヒータとからなり、
前記第2加熱部は、第2ディスクと、この第2ディスクから前記第1加熱部へ延びる第2爪と、前記第2爪及び前記第2ディスクに挿入される前記第2ヒータとからなり、
隣り合う2本の前記第2爪の間に、前記第1の爪が軸方向移動可能に嵌められていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1~3のいずれか1項記載の可塑化装置であって、
前記スクリューの有効長さをL、前記スクリューの外径をDとしたときに、L/Dは、0.5~3.0の範囲にあり、前記Dは、少なくとも80mmであることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1~4のいずれか1項記載の可塑化装置を準備する準備工程と、
予定される可塑化作業において、そのときの計量値としきい値を比較する比較工程と、
この比較工程で前記計量値が前記しきい値以下であるときには、前記温度制御棒を前記出口に近づくように移動し、前記計量値が前記しきい値を超えているときには、前記温度制御棒を前記出口から離れるように移動する移動工程と、
前記加熱筒内へ投入された前記樹脂材料を前記スクリューの回転で可塑化しつつ、前記加熱筒に設けられた出口から可塑化済みの樹脂材料を吐出して計量する可塑化・計量工程と、からなる可塑化方法である。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項1~4のいずれか1項記載の可塑化装置を準備する準備工程と、
前記温度制御棒移動手段で前記温度制御棒を軸方向に移動する移動工程と、
前記加熱筒内へ投入された前記樹脂材料を前記スクリューの回転で可塑化しつつ、前記加熱筒に設けられた出口から可塑化済みの樹脂材料を吐出して計量する可塑化・計量工程と、からなる可塑化方法である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、温度制御棒は、加熱部と断熱部と冷却部とを有し、温度制御棒移動手段により軸方向へ移動される。
計量値が小さいときなどには、落下口に冷却部を臨ませる。落下口近傍が低温になるため、樹脂材料が食い込み不良になる心配はない。スクリューにより移動した樹脂材料は加熱部で可塑化される。
計量値が大きいときなどには、落下口に加熱部を臨ませて、樹脂材料の可塑化を促す。
よって、本発明によれば、樹脂材料が食い込み不良になることを防止することができる可塑化装置が提供される。
【0016】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明と同じ効果が発揮されると共に次に述べる効果が発揮される。
加熱部を第1加熱部と第2加熱部とに区分し、両者を接近させたり離したりすることができる。離すことにより、加熱部の軸方向長さを見かけ上延ばすことができる。
よって、本発明によれば、より細かな加熱制御を実施することができる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、第1ヒータと第2ヒータとを一部ラップ(一部重複)させることができる。このラップ代を用いることにより、第1加熱部から第2加熱部を離したときにであっても、第1ヒータと第2ヒータで良好にスクリューを加熱することができる。
【0018】
請求項4に係る発明では、スクリューの有効長さをL、スクリューの外径をDとしたときに、L/Dは、0.5~3.0の範囲とした。L/Dが0.5以上であれば、スクリューに必要な条数の螺旋溝を形成することができる。L/Dが3.0以下であれば、スクリューの全長を抑えることができ、可塑化装置の小型化を促すことができる。
加えて、本発明では、スクリューの外径Dを、少なくとも80mmとしたので、スクリューに十分に大径の温度制御棒を収納することができる。
【0019】
請求項5に係る発明は、可塑化方法であって、しきい値と計量値とを比較することにより、温度制御棒の位置を決める。
計量値が小さいときなどには、落下口に冷却部を臨ませる。落下口近傍が低温になるため、樹脂材料が食い込み不良になる心配はない。スクリューにより移動した樹脂材料は加熱部で可塑化される。
計量値が大きいときなどには、落下口に加熱部を臨ませ、樹脂材料の可塑化を促す。
よって、本発明によれば、樹脂材料が食い込み不良になることを防止することができる可塑化方法が提供される。
【0020】
請求項6に係る発明は、しきい値を用いないで実施する可塑化方法である。
しきい値を用いないため、しきい値を設定する煩わしさやしきい値の設定ミスを回避することができる。その上で、本発明によれば、樹脂材料が食い込み不良になることを防止することができる可塑化方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る可塑化装置を含む竪型射出成形装置の基本構成図である。
図2図1の2-2矢視図である。
図3図1の要部拡大図であり、本発明に係る可塑化装置を含む射出装置の基本構成図である。
図4】可塑化装置の要部を示す図である。
図5】可塑化装置の要部断面図である。
図6】温度制御棒の温度分布を説明する図である。
図7】温度制御棒の作用を説明する図である。
図8】本発明に係る可塑化方法を説明するフロー図である。
図9】比較工程と移動工程を説明するフロー図である。
図10】可塑化・計量工程と射出工程を説明するフロー図である。
図11】変更した比較工程と移動工程を説明するフロー図である。
図12】さらに変更した可塑化方法を説明するフロー図である。
図13】さらに変更した可塑化方法を説明するタイムチャートである。
図14】温度制御棒の変更例を説明する分解斜視図である。
図15】変更した温度制御棒(加熱部が接した形態)の作用を説明する図である。
図16】変更した温度制御棒(加熱部が離れた形態)の作用を説明する図である。
図17】変更した可塑化装置の要部断面図である。
図18】更に変更した可塑化装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例0023】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、シリンダにおいて、「伸動」は、ピストンロッドを前進させてシリンダ全長が伸びることを意味し、「縮動」はピストンロッドを後退させてシリンダ全長が縮むことを意味する。
【0024】
図1に示すように、竪型射出成形装置10は、型締め軸20aが鉛直であって、下型13と上型14とからなる金型12を型締めする型締装置20と、この型締装置20の上に配置される射出装置50とを、主要素とする装置である。
【0025】
型締装置20は、床(又は機台)16に固定されるベッド21と、このベッド21に固定される圧受盤22と、この圧受盤22に載せられるターンテーブル23と、圧受盤22より下に配置され圧受盤22に設けたハーフナット位置調整手段24で昇降される牽引盤25と、牽引盤25の下に配置されるハーフナット26と、圧受盤22より上に配置され圧受盤22に設けた型開閉手段27で昇降される可動盤28と、この可動盤28から下げられ圧受盤22及び牽引盤25を貫通するタイバー31と、ハーフナット位置調整手段24や型開閉手段27等へ圧油を制御しつつ供給するポンプモータユニット32を備えている。
【0026】
ハーフナット位置調整手段24は、ハーフナット位置調整油圧シリンダ24Aが好適である。同様に、型開閉手段27は、型開閉油圧シリンダ27Aが好ましい。
【0027】
なお、圧受盤22は、ボルト等を緩めることでベッド21から外すことができる。よって、本発明における「固定」は、完全固定の他、分離可能に結合されている形態を含む。
また、ハーフナット位置調整手段24や型開閉手段27を、ベッド21に設けることは差し支えない。
【0028】
牽引盤25は、例えば、上に開口する型締シリンダ33を有する。この型締シリンダ33に圧受盤22から下へ延びるピストン部34を収納する。型締シリンダ33とピストン部34との間に圧油室35が形成される。圧油室35に圧油が供給されると、牽引盤25が下がる。
【0029】
タイバー31は、下端部に係合部36が設けられている。この係合部36は、例えば、鋸歯部である。以下、係合部36を鋸歯部36と読み替える。
ハーフナット26は係合部としての鋸歯部36に係合する(噛み合う)半割ナットである。ハーフナット26は、牽引盤25に設けたハーフナット開閉手段37で開閉される。ハーフナット開閉手段37はハーフナット開閉油圧シリンダ37Aが好ましい。
【0030】
鋸歯部36は、歯が竹の節(ふし)のように、等ピッチで並んでいるものが好ましい。歯は、矩形断面、台形断面、三角断面の何れでもよい。ハーフナット26には対応する歯が設けられている。
【0031】
タイバー31及びハーフナット26は、丈夫で硬い鋼で造られる。鋼同士の接触を円滑にするため、鋸歯部36とハーフナット26との間にグリース潤滑を施す。鋸歯部36より高い位置にて、タイバー31の外周面に給脂する。グリースは流れ落ちて、鋸歯部36に達する。給脂は、自動、手動の何れでもよい。
【0032】
好ましくは、ハーフナット26の作動を監視するハーフナット作動監視機構38を、ハーフナット26の近傍に設ける。しかし、型開閉手段27及びハーフナット位置調整手段24の位置制御が精密に行えることを条件に、ハーフナット作動監視機構38を省くことは差し支えない。
【0033】
ハーフナット作動監視機構38は、近接スイッチ、リミットスイッチなど任意のセンサが使用できる。そのうちで、近接スイッチは、相手金属が一定距離内に接近したときに「物体あり」、相手金属が一定距離を超えて離れているときに「物体なし」と判別する非接触型センサである。ハーフナット26は廃グリースで濡れているが、非接触型センサであれば、誤検出の心配がない。その上、安価である。よって、近接スイッチが推奨される。
【0034】
好ましくは、ハーフナット26の下に且つ床16上に、廃グリースを受けるトレイ41を配置する。トレイ41は皿状の容器である。定期的又は随時、トレイ41を引き出し、溜まった廃グリースを処理することにより、床16上の汚れを防止する。
【0035】
好ましくは、ベッド21をカバー42で囲う。このカバー42は安全カバーの役割を果たす。ベッド21をカバー42で囲うことにより、型締装置20の外観性が高まる。ただし、安全柵等で代替できるため、カバー42は必須ではない。
【0036】
図2は、図1の2-2矢視図である。
図2に示すように、タイバー31は、三角形の頂点に各々配置されている。うち、1本のタイバー31が、ターンテーブル23の回転中心を構成する。
製品取り出し位置17にて、下型13から樹脂成形品を取り出す。空になった下型13はターンテーブル23を180°回転させることにより、型締め位置18に移される。
製品取り出し作業と型締め作業とが並行して行えるため、ターンテーブル23を採用することにより、生産性を高めることができる。
【0037】
ただし、ターンテーブル23は、型締め位置18と製品取り出し位置17とを往復する往復台に代えることができる。この場合は、タイバー31は、4本にすることが望ましい。
または、ターンテーブル23や往復台を省いてもよい。この場合も、タイバー31は、4本にすることが望ましい。
【0038】
よって、型締装置20において、タイバー31の本数は自由に決めることができると共にターンテーブル23を設けるか否か、や往復台を設けるか否かは任意である。
【0039】
図1の型締装置20において、ハーフナット26を開いて、鋸歯部36から分離する。次に、型開閉手段27を伸動して、可動盤28を上昇させる。可動盤28が上昇することに伴って、下型13から上型14が分離すると共にタイバー31が上昇する。
【0040】
次に、射出装置50を説明する。
図3に示すように、射出装置50は、可動盤28から上へ延びる射出位置決め手段51と、この射出位置決め手段51で支えられる射出盤52と、この射出盤52に吊り下げられる射出シリンダ53と、射出盤52に適宜立てられる第1ブラケット54及び第2ブラケット55と、射出盤52等で支えられる可塑化装置70と、可塑化装置70の要部である加熱筒71から下へ延び樹脂材料を貯留する材料貯留部材57と、この材料貯留部材57の高さ途中から分岐し射出シリンダ53まで延びる分岐部材58とを、主要素とする。
【0041】
材料貯留部材57は、下端にノズル59を備え、このノズル59の近傍にシャット弁61を備えている。このシャット弁61は、シャット弁開閉手段62により、開閉される。
また、分岐部材58にはプランジャ63が移動自在に収納され、このプランジャ63は射出シリンダ53で駆動される。
分岐部材58を含む材料貯留部材57と加熱筒71はバンドヒータ64で加熱される。
また、加熱筒71の底に、樹脂材料を吐出する出口65及びこの出口65を開閉する出口弁66が設けられている。出口弁66は加熱筒71の近傍に設けた出口弁駆動手段67で駆動される。
【0042】
可塑化装置70の詳細構造は、後述する図4及び図5で説明するが、加熱筒71は射出盤52で支持され、スクリュー72は軸受73を介して第1ブラケット54で回転自在に支持され、温度制御棒移動手段74及びホッパ75は第2ブラケット55に固定的に支持され、スクリュー72を回すスクリュー回転手段76は射出盤52に固定されている。
温度制御棒移動手段74は、温度制御棒(図5、符号90)を、軸方向に(スクリュー72の回転軸に沿って)移動する機構である。
【0043】
スクリュー72の上部に大径プーリ77が一体形成され、スクリュー回転手段76の回転軸に小径プーリ78が設けられ、大径プーリ77と小径プーリ78とにベルト79が掛け渡されているため、スクリュー回転手段76でスクリュー72を所定方向に所定速度で回転させることができる。
なお、大径プーリ77を大径ギヤに交換し、小径プーリ78を小径ギヤに交換してもよい。
【0044】
図4に示すように、加熱筒71は、底に出口65及び出口弁66を備えている。底の一部81を取り外せるようにして、出口弁66の組み込みを容易にしてもよい。
加熱筒71は、上部に落下口82を備えている。この落下口82はホッパ(図3、符号75)に繋がっている。落下口82から投入された樹脂材料は、加熱筒71の内周面とスクリュー72の外周面との隙間に広がる。そのため、落下口82の近傍が供給部83となる。
【0045】
図5に示すように、スクリュー72に、温度制御棒90が軸方向移動可能に収納されている。
温度制御棒90は、下端ブロック91と、この下端ブロック91に載っている断熱板92と、この断熱板92に載っている筒状のスリーブ93と、このスリーブ93に設けられている冷却手段94とからなる。
冷却手段94は、例えば、スリーブ93に巻きつけた冷却チューブ95である。冷却チューブ95に給液菅96とドレーン菅97とが接続される。
【0046】
なお、冷却手段94は、スリーブ93に、ロングドリルにより直接開けた冷媒通路であってもよい。この場合、冷却チューブ95が省かれるため、スリーブ93の外径は断熱板92や下端ブロック91の外径と同じとする。スリーブ93が十分に大径となるため、冷媒通路は容易に形成される。冷媒通路に給液菅96とドレーン菅97とを接続される。
【0047】
下端ブロック91には、ヒータ98が複数本嵌め込まれている。ヒータ98へ給電する被覆電線99はスリーブ93内を通って上へ延びる。
ヒータ98は、電熱線が絶縁材で覆われている棒状ヒータが好適であるが、板状ヒータ、面ヒータ、セラミックヒータ、IH(電磁誘導加熱)ヒータ、ハロゲンランプヒータの何れでもよく、加熱具や加熱手段として知られている物であれば、何れも採用可能である。
【0048】
スリーブ93から六角穴付きボルト101を下げ、下端ブロック91にねじ込むことで、下端ブロック91と断熱板92とスリーブ93とを一体化する。
また、スリーブ93の中心を通ってドライブロッド102が下げられ、このドライブロッド102の下端が下端ブロック91にねじ込まれる。ドライブロッド102は、温度制御棒移動手段(図3、符号74)により所定距離昇降される。
【0049】
好ましくは、下端ブロック91にリング103を嵌め、スリーブ93に対して下端ブロック91が軸直角方向へ振れることを防止する。リング103は、ピストンリングであってもよく、要は下端ブロック91が左右に振れることを防止する作用を発揮する環状部材であれば種類は問わない。
【0050】
ただし、リング103を介在させると、回転するスクリュー72に下端ブロック91が連れ回り易くなる。対策として、スリーブ93の上部に平面部104を設ける。平面部104は円筒の外周の一部を切削して平面にしたものである。この平面部104に回転止め板105を当てる。これにより、スリーブ93の連れ回りが防止される。
【0051】
このような構成の温度制御棒90を収納する(組み込む)には、スクリュー72はある程度大径である必要がある。
そこで、図4において、スクリュー72の下端と落下口82との距離を、有効長さLとし、スクリュー72の外径をDとしたときに、L/Dは、0.5~3.0の範囲にあり、Dは、少なくとも80mmであることが望まれる。
【0052】
Dが80mmであれば、十分な大きさの温度制御棒90を楽にセットすることができる。
なお、L/Dが0.5未満では、有効長さLが小さくなり、外周に十分な条数の螺旋溝が形成できなくなる。また、L/Dが3.0を超えると、図3に示す可塑化装置70が上下に延びて、射出装置50が大型になる。
L/Dは、0.5~3.0の範囲であれば、スクリュー72に十分な条数の螺旋溝が形成でき、可塑化装置70の軸方向寸法を小さくすることができる。
【0053】
図6(a)に示すように、下端ブロック91はヒータ(図5、符号98)を内蔵しているため、加熱部106となる。スリーブ93は冷却チューブ95が巻かれているため、冷却部107となる。断熱板92は、断熱部108となり、加熱部106から冷却部107への熱の移動を遮断する役割と、冷却部107で加熱部106が冷却されることを防止する役割とを果たす。
図6(b)に示すように、加熱部106は高温になり、冷却部107は低温になり、断熱部108は高温と低温の中間の温度になる。
【0054】
図7(a)では、温度制御棒90が前進(下降)位置にある。
図7(b)に示すように、スクリュー温度は図6(b)と近似した曲線となる。そして、横軸に付した供給部83(図4図5の符号83に相当)の中心は低温域にあり、供給部83は全体としてほぼ低温域にある。
図7(a)、(b)の形態は、少量の樹脂材料を供給部83へ投入するときや、樹脂材料をゆっくりと可塑化するときに適している。
【0055】
樹脂材料が少ないとは、計量値が小さい又は小容量であることと同意である。
計量値が小さい又は小容量であると樹脂材料は直ぐに高温となり、食い込み不良になりやすいが、本発明のように供給部83を低温にすることで、樹脂材料の温度上昇を抑え、食い込み不良になることを防止することができる。
【0056】
対して、図7(c)では、温度制御棒90が後退(上昇)位置にある。
図7(d)に示すように、温度曲線は右にずれる。結果、供給部83の中心は高温域にあり、供給部83は全体としてほぼ高温域にある。
図7(c)、(d)の形態は、大量の樹脂材料を供給部83へ投入するときや、樹脂材料を迅速に可塑化するときに適している。
【0057】
樹脂材料が大量であるとは、計量値が大きい又は大容量であることと同意である。
すなわち、計量値が大きい又は大容量であると樹脂材料は直ぐには高温にならず、食い込み不良になることもない。供給部における樹脂材料を加熱することで、樹脂材料を迅速に可塑化することができる。
【0058】
以上の構成からなる可塑化装置70を用いて実施する可塑化方法を、図8図10に基づいて説明する。
図8のST(STはステップ番号を示す。以下同じ)10で、図3図5で説明した可塑化装置70を準備する。
ST20の比較工程で、予定されている計量値を、しきい値と比較する。
ST30の移動工程で、比較結果に基づいて温度制御棒を移動する。
ST40の可塑化・計量工程で、加熱筒内へ投入された樹脂材料をスクリューの回転で可塑化しつつ、加熱筒に設けられている出口から可塑化済みの樹脂材料を吐出して計量する。
以上のST20、ST30及びST40を以下に詳しく説明する。
【0059】
ST20(比較工程)とST30(移動工程)の詳細を、図9で説明する。
図9のST21で、しきい値を設定する。このしきい値は、温度制御棒を前進させるか後退させるかを決める値であり、射出成形のトライアルや経験則などに基づいて決められる。
【0060】
ST22で、予定の計量値を読み込む。
ST23で、予定の計量値がしきい値以下であるか、超えているかを判別する。
以上のST21~ST23で、比較工程が構成される。
【0061】
ST23で、予定の計量値がしきい値以下であると判別されたときには、ST31で、温度制御棒を前進させ、図7(a)の形態にする。
また、ST23で、予定の計量値がしきい値を超えている判別されたときには、ST32で、温度制御棒を後退させ、図7(c)の形態にする。
【0062】
図8のST40(可塑化・計量工程)及び射出工程の詳細を、図10で説明する。
図10のST41で、出口弁を開く。すなわち、図3で、出口弁66を移動して出口65を開く。
ST42で、シャット弁を閉じる。すなわち、図3で、シャット弁61を回してノズル59を閉じる。
ST43で、射出シリンダの背圧制御を実施する。すなわち、図1で、ポンプモータユニット32により、プランジャに所定の反力(抵抗力)が加わるように、射出シリンダ53の背圧制御を開始する。
【0063】
ST44で、スクリューを回転しつつ樹脂材料を可塑化する。図3において、樹脂材料は材料貯留部材57及び分岐部材58に充満する。この充満により、プランジャ63が徐々に後退(図右へ移動)する。プランジャ63の移動距離は、エンコーダなどで周知の手段で計測される。
【0064】
プランジャ63の断面積×プランジャ63の移動距離=計量値の算式により、樹脂材料が計量される。
ST45で、計量完了を調べ、計量が完了したら、背圧制御を終了し、出口弁を閉じる(ST46)。
以上のST41~ST46で、可塑化・計量工程が構成される。
【0065】
ST47で、型締めが完了していることを確認し、確認ができたら、シャット弁61を開く(ST48)。
シャット弁61が開けられたら、プランジャ63を前進して、樹脂材料をノズル59から射出する(ST49)。
ST50で、射出が終了したことが確認できたら、シャット弁61を閉じる(ST51)。
以上のST47~ST51で、射出工程が構成される。
【0066】
以上の説明中、図9のST21で、しきい値を設定したが、このしきい値は複数個を設定してもよい。その具体例を図11に基づいて説明する。
図11(a)は、図7(c)に第1~第4ポジションP1~P4を加入した図面である。
第4ポジションP4は、下端ブロック91(すなわち、温度制御棒90)の後退限位置を示す。
第1ポジションP1は、下端ブロック91(温度制御棒90)の前進限位置を示す。
【0067】
第2ポジションP2と第3ポジションP3は、P1とP4の中間位置を示し、第2ポジションP2は第3ポジションP3よりも第1ポジションP1に近い位置にあり、第3ポジションP3は第2ポジションP2よりも第4ポジションP4に近い位置にある。
【0068】
図11(a)に対応するフローを、図11(b)で説明する。
図11(b)のST61で、第1~第3しきい値を設定する。
ST62で、予定の計量値を読み込む。
ST63で、予定の計量値を第1~第3しきい値と比較する。
以上のST61~ST63で、比較工程が構成される。
【0069】
ST63で、予定の計量値が第1しきい値以下であると判別されたときには、ST64で、温度制御棒を第1ポジションP1へ移動する。
ST63で、予定の計量値が第1しきい値を超え第2しきい値以下であると判別されたときには、ST65で、温度制御棒を第2ポジションP2へ移動する。
ST63で、予定の計量値が第2しきい値を超え第3しきい値以下であると判別されたときには、ST66で、温度制御棒を第3ポジションP3へ移動する。
ST63で、予定の計量値が第3しきい値を超えていると判別されたときには、ST67で、温度制御棒を第4ポジションP4へ移動する。
以上のST64~ST67で、移動工程が構成される。
【0070】
以上に述べたように、しきい値を複数個設定することにより、より細かな温度制御が可能となる。
なお、この具体例ではしきい値の個数を3としたが、しきい値の個数は2又は4以上設定することは差し支えない。温度制御棒のポジションの数は、しきい値の個数に1を加えた値となる。
【0071】
なお、本発明方法は、しきい値を用いる他、しきい値を用いないで実施することも可能である。その具体例を図12に基づいて説明する。
図12のST10で、図3図5で説明した可塑化装置70を準備する。
ST30の移動工程では、外部情報に基づいて温度制御棒を移動する。このST30(移動工程)の詳細は、図9又は図11(b)で説明済みであるため、説明を省略する。
【0072】
外部情報は、予定される計量値や、予定される可塑化時間や、樹脂材料の種類などである。
計量値が少ないときや、可塑化時間が長いときや、溶融温度が低い樹脂材料のときに、温度制御棒移動手段により、温度制御棒を前進させる。
計量値が多いときや、可塑化時間が短いときや、溶融温度が高い樹脂材料のときに、温度制御棒移動手段により、温度制御棒を後退させる。
【0073】
ST40の可塑化・計量工程で、加熱筒内へ投入された樹脂材料をスクリューの回転で可塑化しつつ、加熱筒に設けられている出口から可塑化済みの樹脂材料を吐出して計量する。
ST40(可塑化・計量工程)の詳細は、図10で説明済みであるため、説明を省略する。
【0074】
以上に説明した実施例では、移動工程で温度制御棒を軸方向へ移動し、可塑化・計量工程中は、温度制御棒を軸方向の移動は行わずに静止させていた。
しかし、材料の種類等(結晶性/非晶性の違い、樹脂の溶融し易さ/溶融し難さの違い、食い込み不良の発生し易さ/発生し難さの違い等)により、可塑化・計量工程中に温度制御棒を移動させた方が、より良い効果が得られる場合がある。
【0075】
そこで移動させる場合の温度制御棒の位置制御について、図13で説明する。
図13(a)に示すように、小容量(計量値が小さいとき)では、可塑化・計量工程の初期で温度制御棒を前進(下降)位置から後退(上昇)位置へ移動する。後退位置で可塑化の大部分を実施する。可塑化・計量工程の末期で温度制御棒を後退位置から前進位置へ移動する。
【0076】
図13(b)に示すように、中容量(小容量と大容量の間の容量)では、可塑化・計量工程の時間が小容量より長くする。その上で、小容量と同様に、可塑化・計量工程の初期で温度制御棒を前進位置から後退位置へ移動する。後退位置で可塑化の大部分を実施する。可塑化・計量工程の末期で温度制御棒を後退位置から前進位置へ移動する。
【0077】
図13(c)に示すように、大容量(計量値が大きいとき)では、可塑化・計量工程の初期で温度制御棒を中間(前進と後退の中間)位置から後退(上昇)位置へ移動する。後退位置で可塑化の大部分を実施する。可塑化・計量工程の末期で温度制御棒を後退位置から中間位置へ移動する。
【0078】
なお、図13(a)~(c)において、可塑化・計量工程の中間位置で、温度制御棒の位置を変更することは差し支えない。すなわち、本発明では温度制御棒を温度制御棒移動手段により移動可能としたので、随時もしくは任意に温度制御棒の位置の制御が可能となる。
【0079】
ところで、図7(c)において、温度制御棒(下端ブロック91)を後退させたことにより、下端ブロック91の前に、ヒータ無し領域109が出現する。樹脂材料を溶融させることを考慮すると、ヒータ無し領域109は無い方が良い。その対策例を次に説明する。
【0080】
図14に示すように、下端ブロック91を、第1加熱部111と、第2加熱部112とに分割する。
第1加熱部111は、第1ディスク113と、この第1ディスク113から第2加熱部112へ延ばした4本の柱状の第1爪114と、この第1爪114に挿入する第1ヒータ115とからなる。
【0081】
第2加熱部112は、第2ディスク116と、この第2ディスク116から第1加熱部111へ延ばした4本の柱状の第2爪117と、この第2爪117に挿入する第2ヒータ118とからなる。
第1ディスク113の高さ寸法と第22ディスク116の高さ寸法の和が、下端ブロック91の最小高さ寸法となる。
【0082】
第1加熱部111と、第2加熱部112とに分割した変更例の作用を、図15及び図16に基づいて説明する。
図15(a)に示すように、隣り合う2本の第2爪117の間に1本の第1爪114が密に嵌る。嵌っているため、第2加熱部112に対して第1加熱部111が回転することはない。すなわち、第2加熱部112に対して第1加熱部111は軸方向の移動のみが可能となる。
第1ヒータ115は、第2ヒータ118にL2だけラップ(重複)している。
【0083】
図15(b)に示すように、第1加熱部111に第2加熱部112が、接した形態でスクリュー72に収納されている。
図15(c)に示すように、加熱部106は高温になる。
【0084】
図16(a)に示すように、第2加熱部112に対して第1加熱部111が離れるように、第1加熱部111を相対的に移動する。この移動によりラップ代(図15(a)、符号L2)はほぼゼロになる。見かけ上、第1加熱部111と第2加熱部112は、第1ヒータ115と第2ヒータ118とで過不足なく加熱される。
【0085】
図16(b)に示すように、第1加熱部111から第2加熱部112が、離れた形態でスクリュー72に収納されている。
図16(c)に示すように、加熱部106は、高温になる。すなわち、図7(c)に示すヒータ無し領域109が解消される。
【0086】
図17に示すように、ドライブロッド102の下端は、第2加熱部112(図14、第2ディスク116)にねじ込まれる。そして、ドライブロッド102は第1温度制御棒移動手段121で上下に駆動される。
【0087】
また、第1加熱部111は、断熱板92、スリーブ93及び冷却手段94と共に、第2温度制御棒移動手段122で上下に駆動される。
その他の構成要素は、図5と同じであるため、図5の符号を流用し、詳細な説明は省略する。
【0088】
以上により、図15(b)の形態に加えて、次の形態が得られる。
第1温度制御棒移動手段121と第2温度制御棒移動手段122を、一緒に前進(下降)させることにより、図7(a)、(b)と同じ形態が得られる。
第1温度制御棒移動手段121と第2温度制御棒移動手段122を、一緒に後退(上昇)させることにより、図7(c)、(d)と同じ形態が得られる。
【0089】
次に、温度制御棒90の更なる変更例を、図18に基づいて説明する。
図18に示すように、下部ブロック91は、全体が断熱材で構成され、鍔91aと、この鍔91aより小径の円柱部91bとからなる。その上で、円柱部91bにヒータ98が巻かれる。
以上により、断熱材製の鍔91aが断熱部108を構成し、ヒータ98が加熱部106を構成する。
【0090】
以上の説明から明らかなように、断熱部108は、断熱板(図5、符号92)で構成することや断熱材製の鍔91aで構成することができる。よって、断熱部108の構造は、断熱性能を発揮する構造であればよく、実施例(変更例を含む。)に限定されるものではない。
【0091】
また、ヒータ98は、下端ブロック91に内蔵する形態や、下端ブロック91に巻きつける形態とすることができる。よって、加熱部106の形態は、加熱性能を発揮する形態であればよく、実施例(変更例を含む。)に限定されるものではない。
【0092】
尚、図1では、本発明の可塑化装置70を、型締め軸20aが鉛直である竪型射出成形装置10に適用したが、本発明の可塑化装置70を、型締め軸20aが水平である横型射出成形装置に適用することは差し支えない。
横型射出成形装置に適用するときは、図3に示す射出シリンダ53、加熱筒71及びスクリュー72の姿勢は、図3のままとし、ノズル59が水平となるように、材料貯留部材57が変形される。
【0093】
また、図1において、ハーフナット位置調整手段24、型開閉手段27及びハーフナット開閉手段37は、油圧シリンダが好ましいが、電動シリンダもしくはエアシリンダ又は同等の手段であってもよい。
同様に、射出位置決め手段51、シャット弁開閉手段62、出口弁駆動手段67及び温度制御棒移動手段74は、油圧シリンダが好ましいが、電動シリンダもしくはエアシリンダ又は同等の手段であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、樹脂材料を可塑化する可塑化装置に好適である。
【符号の説明】
【0095】
50…射出装置、65…出口(加熱筒に設けられた出口)、70…可塑化装置、71…加熱筒、72…スクリュー、74…温度制御棒移動手段、75…ホッパ、82…落下口、90…温度制御棒、92…断熱板、94…冷却手段、98…ヒータ、106…加熱部、107…冷却部、108…断熱部、111…第1加熱部、112…第2加熱部、115…第1ヒータ、118…第2ヒータ、121…第1温度制御棒移動手段、122…第2温度制御棒移動手段、D…スクリューの外径、L…スクリューの有効長さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2022-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
請求項2記載の可塑化装置であって、
前記第1加熱部は、第1ディスクと、この第1ディスクから前記第2加熱部へ延びる第1爪と、前記第1ディスク及び前記第1爪に挿入される前記第1ヒータとからなり、
前記第2加熱部は、第2ディスクと、この第2ディスクから前記第1加熱部へ延びる第2爪と、前記第2爪及び前記第2ディスクに挿入される前記第2ヒータとからなり、
隣り合う2本の前記第2爪の間に、前記第1爪が軸方向移動可能に嵌められていることを特徴とする可塑化装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の可塑化装置であって、
前記第1加熱部は、第1ディスクと、この第1ディスクから前記第2加熱部へ延びる第1爪と、前記第1ディスク及び前記第1爪に挿入される前記第1ヒータとからなり、
前記第2加熱部は、第2ディスクと、この第2ディスクから前記第1加熱部へ延びる第2爪と、前記第2爪及び前記第2ディスクに挿入される前記第2ヒータとからなり、
隣り合う2本の前記第2爪の間に、前記第1爪が軸方向移動可能に嵌められていることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0095
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0095】
50…射出装置、65…出口(加熱筒に設けられた出口)、70…可塑化装置、71…加熱筒、72…スクリュー、74…温度制御棒移動機構、75…ホッパ、82…落下口、90…温度制御棒、92…断熱板、94…冷却機構、98…ヒータ、106…加熱部、107…冷却部、108…断熱部、111…第1加熱部、112…第2加熱部、113…第1ディスク、114…第1爪、115…第1ヒータ、116…第2ディスク、117…第2爪、118…第2ヒータ、121…第1温度制御棒移動機構、122…第2温度制御棒移動機構、D…スクリューの外径、L…スクリューの有効長さ。
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正の内容】
図5