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特開2023-61504フィルムコンデンサおよびフィルムコンデンサの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061504
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサおよびフィルムコンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 13/02 20060101AFI20230425BHJP
   H01G 4/32 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
H01G13/02 C
H01G4/32 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171423
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐野 正仁
(72)【発明者】
【氏名】武藤 広和
(72)【発明者】
【氏名】田中 豊
(72)【発明者】
【氏名】野村 和宏
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082AB04
5E082EE07
5E082FF05
5E082FG06
(57)【要約】
【課題】挿入部材と空洞部の内周面との間に隙間が生じにくく、巻回体の両端面に溶射された金属が空洞部へ侵入しにくいフィルムコンデンサを提供する。
【解決手段】フィルムコンデンサ1は、第1蒸着電極と、第1フィルムと、第2蒸着電極と、第2フィルムとがこの順に重ねられ、第1蒸着電極が内側、第2フィルムが外側となるように巻回されて形成されたコンデンサ本体10と、コンデンサ本体10の中心を貫通するように形成された円柱状の空洞部11と、空洞部11に挿入された巻芯体20と、を備える。巻芯体20は、空洞部11の直径よりも小さな直径を有する円柱状の軸部を含み、軸部には、当該軸部の外周面から径方向に突出し当該外周面を周回する複数の突起部22が、軸方向に連なるように軸部と一体形成される。突起部22は、空洞部11の内周面に接触する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、第1フィルムと、第2電極と、第2フィルムとがこの順に重ねられ、前記第1電極が内側、前記第2フィルムが外側となるように巻回されて形成された巻回体と、
前記巻回体の中心を貫通するように形成された円柱状の空洞部と、
前記空洞部に挿入された挿入部材と、を備え、
前記挿入部材は、前記空洞部の直径よりも小さな直径を有する円柱状の軸部を含み、
前記軸部には、当該軸部の外周面から径方向に突出し当該外周面を周回する複数の突起部が、軸方向に連なるように前記軸部と一体形成され、
前記突起部は、前記空洞部の内周面に接触する、
ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記突起部の先端が前記空洞部の内周面に食い込んでいる、
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項3】
第1電極と、第1フィルムと、第2電極と、第2フィルムとを、この順に重ね、前記第1電極が内側、前記第2フィルムが外側となるように棒状の巻取軸で巻き取ることにより巻回体を形成する工程と、
前記巻取軸が取り外されたことにより前記巻回体の中心に形成された円柱状の空洞部に、挿入部材を挿入する工程と、
前記挿入部材が挿入された前記巻回体の両端面に金属を溶射する工程と、を備え、
前記挿入部材は、前記空洞部の直径よりも小さな直径を有する円柱状の軸部を含み、
前記軸部には、当該軸部の外周面から径方向に突出し当該外周面を周回する複数の突起部が、軸方向に連なるように前記軸部と一体形成され、
前記挿入部材が前記空洞部に挿入されると、前記突起部が前記空洞部の内周面に接触する、
ことを特徴とするフィルムコンデンサの製造方法。
【請求項4】
前記挿入部材の直径は、前記挿入部材が挿入される前の前記空洞部の直径よりも大きく、
前記挿入部材は、前記空洞部に圧入される、
ことを特徴とする請求項3に記載のフィルムコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサおよびフィルムコンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1電極と、第1フィルムと、第2電極と、第2フィルムとがこの順に重ねられ、第1電極が内側、第2フィルムが外側となるように巻回されて形成された巻回体と、巻回体の中心を貫通するように形成された円柱状の空洞部と、空洞部に挿入された円柱状の挿入部材と、を備え、巻回体の両端面に、金属の溶射により端面電極が形成されたフィルムコンデンサが知られている。かかるフィルムコンデンサでは、空洞部が挿入部材で埋められることにより、溶射された金属が空洞部内に侵入することが抑制される。かかるフィルムコンデンサの一例が、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-303058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のフィルムコンデンサでは、挿入部材の真円度が低い場合に、挿入部材の外周面と空洞部の内周面との間に空洞部を貫くような隙間が生じ得る。この場合、巻回体の両端面に溶射された金属が、空洞部へ侵入し、毛細管現象により隙間を流れて中央部で合流することにより、両側の端面電極がショートした状態になる虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、挿入部材と空洞部の内周面との間に隙間が生じにくく、巻回体の両端面に溶射された金属が空洞部へ侵入しにくいフィルムコンデンサ、および、かかるフィルムコンデンサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、フィルムコンデンサに関する。本態様に係るフィルムコンデンサは、第1電極と、第1フィルムと、第2電極と、第2フィルムとがこの順に重ねられ、前記第1電極が内側、前記第2フィルムが外側となるように巻回されて形成された巻回体と、前記巻回体の中心を貫通するように形成された円柱状の空洞部と、前記空洞部に挿入された挿入部材と、を備える。ここで、前記挿入部材は、前記空洞部の直径よりも小さな直径を有する円柱状の軸部を含む。前記軸部には、当該軸部の外周面から径方向に突出し当該外周面を周回する複数の突起部が、軸方向に連なるように前記軸部と一体形成される。前記突起部は、前記空洞部の内周面に接触する。
【0007】
本発明の第2の態様は、フィルムコンデンサの製造方法に関する。本態様に係る製造方法は、第1電極と、第1フィルムと、第2電極と、第2フィルムとを、この順に重ね、前記第1電極が内側、前記第2フィルムが外側となるように棒状の巻取軸で巻き取ることにより巻回体を形成する工程と、前記巻取軸が取り外されたことにより前記巻回体の中心に形成された円柱状の空洞部に、挿入部材を挿入する工程と、前記挿入部材が挿入された前記巻回体の両端面に金属を溶射する工程と、を備える。ここで、前記挿入部材は、前記空洞部の直径よりも小さな直径を有する円柱状の軸部を含む。前記軸部には、当該軸部の外周面から径方向に突出し当該外周面を周回する複数の突起部が、軸方向に連なるように前記軸部と一体形成される。前記挿入部材が前記空洞部に挿入されると、前記突起部が前記空洞部の内周面に接触する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、挿入部材と空洞部の内周面との間に隙間が生じにくく、巻回体の両端面に溶射された金属が空洞部へ侵入しにくいフィルムコンデンサ、および、かかるフィルムコンデンサの製造方法を提供することができる。
【0009】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)は、実施の形態に係る、フィルムコンデンサの斜視図である。図1(b)は、第1端面電極および第2端面電極が形成される前のフィルムコンデンサの斜視図である。
図2図2は、実施の形態に係る、軸方向に沿って切断されたフィルムコンデンサの断面図である。
図3図3(a)は、実施の形態に係る、第1フィルムおよび第2フィルム一部が巻回された状態のコンデンサ本体を示す図である。図3(b)は、実施の形態に係る、ヒューズパターンの部分で幅方向に切断されたコンデンサ本体の断面図であり、図3(c)は、実施の形態に係る、ヒューズパターンのない部分で幅方向に切断されたコンデンサ本体の断面図である。
図4図4(a)は、実施の形態に係る、巻芯体の側面図である。図4(b)は、図4(a)のA―A´断面図である。
図5図5(a)は、実施の形態に係る、巻芯体の一端部と、コンデンサ本体の空洞部の入口近傍とが示された図である。図5(b)は、実施の形態に係る、巻芯体が挿入された状態のコンデンサ本体の空洞部の入口近傍が示された図である。
図6図6は、実施の形態に係る、フィルムコンデンサの製造工程を示すフローチャートである。
図7図7(a)、(b)は、変更例に係る、巻芯体の構成を示す図である。
図8図8は、変更例に係る、フィルムコンデンサの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0012】
<フィルムコンデンサの構成>
まず、本実施の形態に係るフィルムコンデンサ1について説明する。フィルムコンデンサ1は、後述する本実施の形態に係るフィルムコンデンサ1の製造方法により製造される。
【0013】
図1(a)は、フィルムコンデンサ1の斜視図である。図1(b)は、第1端面電極40および第2端面電極50が形成される前のフィルムコンデンサ1の斜視図である。図2は、軸方向に沿って切断されたフィルムコンデンサ1の断面図である。
【0014】
フィルムコンデンサ1は、巻回体であるコンデンサ本体10と、挿入部材である巻芯体20と、外装フィルム30と、第1端面電極40と、第2端面電極50とを備える。フィルムコンデンサ1は、断面が真円形の円柱形状を有する。
【0015】
コンデンサ本体10は、蒸着電極が形成された2枚の誘電体フィルムを重ねた状態で巻回することにより構成される。コンデンサ本体10には、当該コンデンサ本体10の中心を貫通するように、細長い円柱状の空洞部11が形成される。空洞部11には、巻芯体20が挿入されている。
【0016】
外装フィルム30は、コンデンサ本体10の外周面に複数回(複数ターン)巻かれる。これにより、コンデンサ本体10の外周面は、複数層の外装フィルム30で被覆され、コンデンサ本体10の傷つき、破損などが防止される。外装フィルム30の材質として、たとえば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、ポリエチレン・ナフタレート(PEN)などを挙げることができる。
【0017】
第1端面電極40および第2端面電極50は、それぞれ、コンデンサ本体10の第1端面12および第2端面13に、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等の金属を溶射することにより形成される。第1端面電極40および第2端面電極50には、フィルムコンデンサ1から電気を引き出すため、バスバー、リード線などの引き出し端子(図示せず)が接続される。
【0018】
次に、コンデンサ本体10の構成について、詳細に説明する。
【0019】
図3(a)は、第1フィルム110および第2フィルム120の一部が巻回された状態のコンデンサ本体10を示す図である。図3(b)は、ヒューズパターン145の部分で幅方向に切断されたコンデンサ本体10の断面図であり、図3(c)は、ヒューズパターン145のない部分で幅方向に切断されたコンデンサ本体10の断面図である。
【0020】
コンデンサ本体10は、第1フィルム110と、第2フィルム120と、第1電極である第1蒸着電極130と、第2電極である第2蒸着電極140とを含む。
【0021】
第1フィルム110と第2フィルム120は、第1フィルム110が内側(上側)となり、第2フィルム120が外側(下側)となるように重ねられた状態で巻回される。第1フィルム110および第2フィルム120は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、ポリエチレン・ナフタレート(PEN)などの樹脂材料からなる透明な誘電体フィルムである。第1フィルム110と第2フィルム120は、ほぼ等しい幅寸法を有する。第1フィルム110には、その幅方向における一方の端に、その長手方向に途切れることなく連続的に延びる第1絶縁マージン部111が形成される。第2フィルム120には、その幅方向における第1フィルム110の一方の端とは反対側の端に、その長手方向に途切れることなく連続的に延びる第2絶縁マージン部121が形成される。第1絶縁マージン部111および第2絶縁マージン部121は、金属、即ちアルミニウム含有層が蒸着されていないマージン部分である。
【0022】
第1蒸着電極130は、アルミニウム含有層であり、第1フィルム110の一方(上側)のフィルム面110aに形成される。アルミニウム含有層は、たとえば、アルミニウムまたはアルミニウムとマグネシウム等の金属との合金の蒸着により形成される。なお、アルミニウムとの合金となる金属には、亜鉛が含まれないことが望ましい。第1蒸着電極130は、第1フィルム110の長手方向に分割されることなく連続するように形成される。第1蒸着電極130は、第1フィルム110における幅方向の他方の端まで形成され、第2端面電極50に繋がる。
【0023】
第2蒸着電極140は、第1蒸着電極130と同様のアルミニウム含有層であり、第1フィルム110の他方(下側)のフィルム面に対向する第2フィルム120の一方(上側)のフィルム面120aに形成される。第2蒸着電極140は、第2フィルム120における幅方向の第2絶縁マージン部121側の端とは反対の端まで形成され、第1端面電極40に繋がる。
【0024】
第2蒸着電極140には、第1端面電極40に繋がる端部に、その長手方向に延びる長手方向スリット部141が形成される。また、第2蒸着電極140には、その長手方向に所定の間隔を置いて当該第2蒸着電極140をその幅方向に横切る幅方向スリット部142が形成される。幅方向スリット部142は、幅方向に対して傾くように、長手方向スリット部141から第2絶縁マージン部121に亘って形成される。第2蒸着電極140は、長手方向スリット部141と複数の幅方向スリット部142とにより、その長手方向に延びて第1端面電極40に繋がる共通電極143と、その長手方向に並ぶ複数個の分割電極144とに分割される。
【0025】
なお、第1絶縁マージン部111および第2絶縁マージン部121の幅は、長手方向スリット部141および幅方向スリット部142の幅よりも大幅に広い。
【0026】
第1蒸着電極130と、第1蒸着電極130に対向する各分割電極144とにより、コンデンサ10aが構成される。
【0027】
コンデンサ本体10は、第1蒸着電極130と第2蒸着電極140とが重なり合う有効電極領域RB1と、有効電極領域RB1から第1蒸着電極130および第2蒸着電極140の幅方向において外れる非有効電極領域RB2とを含む。
【0028】
長手方向スリット部141は、非有効電極領域RB2に設けられる。このため、第2蒸着電極140では、各分割電極144における長手方向スリット部141の近傍部分が非有効電極領域RB2に含まれる。また、各分割電極144における第1蒸着電極130と重なり合う部分が有効電極領域RB1に含まれる。有効電極領域RB1は、コンデンサ10aの容量に寄与する。
【0029】
各分割電極144と共通電極143との間には、長手方向スリット部141に架け渡されるようにして、ヒューズパターン145が形成される。ヒューズパターン145のパターン幅は、たとえば、0.5mm程度に設定される。
【0030】
次に、巻芯体20の構成について、詳細に説明する。
【0031】
図4(a)は、巻芯体20の側面図である。図4(b)は、図4(a)のA―A´断面図である。
【0032】
巻芯体20は、ポリプロピレン(PP)等の樹脂材料により形成され、細長い円柱状(丸棒状)の軸部21と、軸方向に連なるように軸部21と一体形成された複数の突起部22とを含む。複数の突起部22は、円環状を有しており、軸部21の外周面から径方向に突出し当該外周面を周回する。各突起部22は、周方向に切断したときの断面がほぼ半円形状を有しており、先端が円弧を描いている(図2参照)。
【0033】
図5(a)は、巻芯体20の一端部と、コンデンサ本体10の空洞部11の入口近傍とが示された図である。図5(b)は、巻芯体20が挿入された状態のコンデンサ本体10の空洞部11の入口近傍が示された図である。なお、図5(a)、(b)では、コンデンサ本体10は、空洞部11の断面が示されている。
【0034】
図5(a)に示すように、巻芯体20の直径(外径)D1は、巻芯体20が挿入される前のコンデンサ本体10の空洞部11の直径(内径)D2よりも、圧入が可能な程度に大きくされている。コンデンサ本体10は、2枚のフィルムを巻回した構成であり、空洞部11の内周面がある程度の弾性を有する。このため、図5(b)に示すように、巻芯体20が空洞部11に挿入された状態において、複数の突起部22の先端が、空洞部11の内周面に食い込むように、当該内周面に接触している。なお、巻芯体20の軸部21の直径D3(図4参照)は、空洞部11の直径D2よりも小さい。
【0035】
図2図5(b)に示すように、空洞部11に挿入された巻芯体20の両端面は、コンデンサ本体10の両端面12、13とほぼ面一となる。
【0036】
<フィルムコンデンサの製造方法>
次に、フィルムコンデンサ1の製造方法について説明する。
【0037】
図6は、フィルムコンデンサ1の製造工程を示すフローチャートである。
【0038】
図6に示すように、フィルムコンデンサ1の製造工程は、フィルム巻回工程と、外装フィルム被覆工程と、巻芯体挿入工程と、金属溶射工程と、を含む。
【0039】
まず、フィルム巻回工程が行われる。フィルム巻回工程では、上側のフィルム面110aに第1蒸着電極130が形成された第1フィルム110が第1巻出軸(図示せず)から送り出されるとともに、上側のフィルム面120aに第2蒸着電極140が形成された第2フィルム120が第2巻出軸(図示せず)から送り出される。そして、第1蒸着電極130と、第1フィルム110と、第2蒸着電極140と、第2フィルム120とが、この順に重なった状態で、第1蒸着電極130が内側、第2フィルム120が外側となるように巻回され、巻取軸(図示せず)で巻き取られる。これにより、コンデンサ本体10が形成される。コンデンサ本体10から巻取軸が取り外されると、コンデンサ本体10の中心に、細長い円柱状の空洞部11が形成される。空洞部11の内周面に相当する第1フィルム110の部分には、第1蒸着電極130が形成されていない。
【0040】
次に、外装フィルム被覆工程が行われる。外装フィルム被覆工程では、コンデンサ本体10の外周面に外装フィルム30が複数回巻かれ、外装フィルム30の各層が熱溶着される。これにより、コンデンサ本体10の外周面が、複数層の外装フィルム30で被覆される。
【0041】
次に、巻芯体挿入工程が行われる。巻芯体挿入工程では、コンデンサ本体10の空洞部11に巻芯体20が挿入される。これにより、空洞部11が巻芯体20で埋まる。上述の通り、巻芯体20の直径D1は、コンデンサ本体10の空洞部11の直径D2よりも大きいため、巻芯体20は、空洞部11に圧入される。図5(b)の通り、複数の突起部22の先端が、空洞部11の内周面に食い込むように接触する。
【0042】
複数の突起部22は、先端が円弧状を有しているので、巻芯体20の圧入の際、空洞部11の内周面である第1フィルム110が傷つけられにくい。また、空洞部11の内周面に相当する第1フィルム110の部分には、第1蒸着電極130が形成されていないので、第1蒸着電極130が傷つくことがない。
【0043】
次に、金属溶射工程が行われる。金属溶射工程では、巻芯体20で空洞部11が埋められコンデンサ本体10の第1端面12および第2端面13に、溶射装置(図示)から金属が溶射される。これにより、第1端面12に第1端面電極40が形成され、第2端面13に第2端面電極50が形成される。
【0044】
こうして、フィルムコンデンサ1が完成する。
【0045】
本実施の形態では、巻芯体20が、円柱状の軸部21の外周面に複数の環状の突起部22が軸方向に連なるように一体形成された構成であり、円柱状の軸部21のみで構成される場合に比べて、樹脂材料を用いて成形製造された際にひけが生じにくく、真円度が高くなりやすい。よって、巻芯体20の外周面、即ち各突起部22の先端部と、空洞部11の内周面との間に隙間が生じにくい。また、巻芯体20にひけが生じても、真円度の低い突起部22が個々に生じることになるため、ある突起部22の部分で空洞部11の内周面との間に隙間が生じても、隙間が巻芯体20の軸方向に連なりにくい。これにより、コンデンサ本体10の両端面12、13に金属が溶射された際、溶射された金属が空洞部11に侵入し、毛細管現象により隙間を流れて中央部に達してしまう、ということが生じにくい。よって、完成したフィルムコンデンサ1において、第1端面電極40と第2端面電極50とがショートした状態になることが防止される。
【0046】
さらに、巻芯体20が空洞部11に挿入されると、複数の突起部22の先端が空洞部11の内周面に食い込んだ状態となる。これにより、複数の突起部22が空洞部11の内周面に強く接触した状態となるので、溶射された金属が、一層、空洞部11の内部(中央部)へと侵入しにくくなる。
【0047】
さらに、複数の突起部22は、軸部21の外周面において、軸方向にほぼ隙間なく並んでいる。これにより、巻芯体20の外周面と空洞部11の内周面との接触部分が多くなるので、溶射された金属が、より一層、空洞部11の内部へと侵入しにくくなる。
【0048】
<実施の形態の効果>
以上、本実施の形態によれば、以下の効果が奏される。
【0049】
フィルムコンデンサ1は、第1蒸着電極130と、第1フィルム110と、第2蒸着電極140と、第2フィルム120とがこの順に重ねられ、第1蒸着電極130が内側、第2フィルム120が外側となるように巻回されて形成されたコンデンサ本体10と、コンデンサ本体10の中心を貫通するように形成された円柱状の空洞部11と、空洞部11に挿入された巻芯体20と、を備える。巻芯体20は、空洞部11の直径D2よりも小さな直径D3を有する円柱状の軸部21を含み、軸部21には、当該軸部21の外周面から径方向に突出し当該外周面を周回する複数の突起部22が、軸方向に連なるように軸部21と一体形成される。突起部22は、空洞部11の内周面に接触する。
【0050】
この構成によれば、巻芯体20と空洞部11の内周面との間に隙間が生じにくくなるので、コンデンサ本体10の両端面12、13に金属が溶射された際、溶射された金属が空洞部11に侵入し、毛細管現象により隙間を流れて中央部に達してしまう、ということ防止でき、第1端面電極40と第2端面電極50とがショートした状態になることを防止できる。
【0051】
さらに、フィルムコンデンサ1は、巻芯体20の突起部22の先端が空洞部11の内周面に食い込んでいる。
【0052】
この構成によれば、複数の突起部22が空洞部11の内周面に強く接触した状態となるので、溶射された金属が、一層、空洞部11の内部へと侵入しにくくなる。
【0053】
フィルムコンデンサ1の製造方法は、第1蒸着電極130と、第1フィルム110と、第2蒸着電極140と、第2フィルム120とを、この順に重ね、第1蒸着電極130が内側、第2フィルム120が外側となるように棒状の巻取軸で巻き取ることによりコンデンサ本体10を形成するフィルム巻回工程と、巻取軸が取り外されたことによりコンデンサ本体10の中心に形成された円柱状の空洞部11に、巻芯体20を挿入する巻芯体挿入工程と、巻芯体20が挿入されたコンデンサ本体10の両端面12、13に金属を溶射する金属溶射工程と、を備える。巻芯体20は、空洞部11の直径D2よりも小さな直径D3を有する円柱状の軸部21を含み、軸部21には、当該軸部21の外周面から径方向に突出し当該外周面を周回する複数の突起部22が、軸方向に連なるように軸部21と一体形成される。巻芯体20が空洞部11に挿入されると、突起部22が空洞部11の内周面に接触する。
【0054】
この製造方法によれば、巻芯体20と空洞部11の内周面との間に隙間が生じにくくなるので、コンデンサ本体10の両端面12、13に金属が溶射された際、溶射された金属が空洞部11に侵入し、毛細管現象により隙間を流れて中央部に達してしまう、ということ防止できる。これにより、完成したフィルムコンデンサ1において、第1端面電極40と第2端面電極50とがショートした状態になることを防止できる。
【0055】
さらに、フィルムコンデンサ1の製造方法において、巻芯体20の直径D1は、巻芯体20が挿入される前の空洞部11の直径D2よりも大きくされ、巻芯体20は、空洞部11に圧入される。
【0056】
この製造方法によれば、複数の突起部22が空洞部11の内周面に強く接触した状態となるので、溶射された金属が、一層、空洞部11の内部へと侵入しにくくなる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、また、本発明の適用例も、上記実施の形態の他に、種々の変更が可能である。
【0058】
図7(a)、(b)は、変更例に係る、巻芯体20A、20Bの構成を示す図である。
【0059】
上記実施の形態では、巻芯体20は、複数の突起部22が、軸部21の外周面において、軸方向にほぼ隙間なく並ぶような構成とされる。しかしながら、巻芯体20に替えて、図7(a)に示す巻芯体20Aが用いられてもよい。巻芯体20Aでは、複数の突起部22が、軸部21の外周面において、軸方向に隙間を有して並ぶような構成とされる。たとえば、隙間は、突起部22の軸方向における幅と同程度にできる。
【0060】
また、上記実施の形態では、巻芯体20は、複数の突起部22が、軸部21の外周面に、個々の環状体として独立して設けられる。しかしながら、巻芯体20に替えて、図7(b)に示す巻芯体20Bが用いられてもよい。巻芯体20Bでは、複数の突起部22が、軸部21の外周面において、螺旋状に連続するような構成とされる。
【0061】
図8は、変更例に係る、フィルムコンデンサ1Aの構成を示す図である。
【0062】
上記実施の形態では、コンデンサ本体10の空洞部11に、1本の巻芯体20が挿入される。しかしながら、図8に示すフィルムコンデンサ1Aのように、空洞部11に、巻芯体20よりも短い2本の巻芯体20Cが挿入されてもよい。この場合、コンデンサ本体10の各端面12、13から各巻芯体20Cが挿入される。図8に示すように、各巻芯体20Cが空洞部11の中央に届かなくてもよい。
【0063】
さらに、上記実施の形態のコンデンサ本体10では、第1フィルム110の一方のフィルム面110aに第1蒸着電極130が形成され、第2フィルム120の一方のフィルム面120aに第2蒸着電極140が形成された。しかしながら、コンデンサ本体10は、第1フィルム110の一方のフィルム面110aに第1蒸着電極130が形成され、他方のフィルム面に第2蒸着電極140が形成され、第2フィルム120に第2蒸着電極140が形成されないような構成とされてもよい。
【0064】
さらに、第1蒸着電極130および第2蒸着電極140の構成は、上記実施の形態の構成に限られない。たとえば、第2蒸着電極140が分割電極144により構成されなくてもよい。
【0065】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、各種電子機器、電気機器、産業機器、車両の電装等に使用されるフィルムコンデンサ、および、かかるフィルムコンデンサの製造方法に有用である。
【符号の説明】
【0067】
1、1A フィルムコンデンサ
10 コンデンサ本体(巻回体)
11 空洞部
12 第1端面
13 第2端面
20、20A、20B、20C 巻芯体(挿入部材)
21 軸部
22 突起部
110 第1フィルム
120 第2フィルム
130 第1蒸着電極(第1電極)
140 第2蒸着電極(第2電極)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8