(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061544
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】弁
(51)【国際特許分類】
F16K 1/42 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
F16K1/42 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171506
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000102452
【氏名又は名称】エスアールエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090310
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 正俊
(72)【発明者】
【氏名】世良 和也
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 幸伸
【テーマコード(参考)】
3H052
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA02
3H052CA01
3H052CB01
3H052CB18
3H052CB19
3H052CB20
3H052EA01
(57)【要約】
【課題】 弁座シートがクリープ変形や劣化して組立当初の弾性力を失っていても、弁座シートからの流体の漏れを防止する。
【解決手段】 弁本体部2内に直線状に形成された軸通路16内に、それに沿って進退可能に軸18が配置されている。軸通路16において軸通路16の周面側に弁座シート36が軸方向に配置され、軸18に弁体24が設けられている。弁座シート36への弁体24の着座時に弁体24の弁座シート36への押圧力に対する反力を発生するように、弁座シート36と接触した反力発生部70が弁本体部2に設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁本体部と、
この弁本体部内に直線状に形成された軸通路と、
この軸通路の長さ方向に沿う異なる位置に、前記軸通路と連通して前記弁本体部内に前記弁本体部の外方に向かって設けられた第1及び第2の流体通路と、
前記軸通路内に、前記軸通路に沿って進退可能に配置された軸と、
前記第1及び第2の流体通路の間にある前記軸通路の部分を包囲して前記弁本体部内に設けられた環状の弁座シートと、
前記第1及び第2の流体通路の間にある前記軸の部分に設けられ、前記軸の進退に従って前記弁座シートに着座及び離座し、前記第1の流体通路側に前記弁座シートとの接触面を有する弁体と、
前記弁座シートへの前記弁体の着座時に、前記弁体の前記弁座シートへの押圧力に対する反力を発生するように、前記第2の通路側の前記弁座シートと接触して前記弁本体部に設けられた反力発生部とを、
有する弁。
【請求項2】
請求項1記載の弁において、前記弁体は、前記弁座シートとの接触面が前記第2の通路側且つ前記軸の中心側に向かって傾斜した第1の傾斜面を有し、前記反力発生部も前記第2の通路側且つ前記軸の中心側に向かって傾斜した第2の傾斜面を有する弁。
【請求項3】
請求項2記載の弁において、前記反力発生部の前記第2の傾斜面は、前記第1の傾斜面の中心に垂直な位置またはそれよりも前記軸側の位置に配置されている弁。
【請求項4】
請求項1記載の弁において、前記反力発生部は、前記弁本体部の外側且つ前記第2の通路側に向かって傾斜した第3の傾斜面を有し、前記第1の流体通路からの流体圧力が前記弁座シートにかかったとき、前記弁座シートの一部に発生する力に対する反力を前記第3の傾斜面が発生する弁。
【請求項5】
請求項1記載の弁において、前記弁座シートは、前記弁本体部内に非拘束状態で設けられ、前記弁体は、前記弁座シートに着座時に、前記弁座シートを前記弁本体部に押圧する弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁に関し、特に弁座シートと弁体とに関する。
【背景技術】
【0002】
弁には、本体部内の軸通路をその長さ方向に沿って摺動する軸に設けた弁体を、軸通路の周囲に設けた弁座に着座及び離座させて、弁の開閉を行い、流体の通過、遮断を切り換えるものがある。例えば特許文献1に開示されている弁では、
図4に示すように上部が開口した弁箱100の開口よりも下側の位置に直線状の流体通路102が水平に形成されている。この弁箱100の上部開口に軸挿入部材104が弁箱100の開口の底106と間隔をあけて被せられ、この間隔が水平な別の流体通路108とされている。なお、軸挿入部材104の軸通路108側の面の中央には突出部110が形成され、その先端112は、弁箱100の開口の底106に到達している。突出部110が遮断している軸通路108を連通させるために、突出部110には横孔114が形成されている。軸挿入部材104と弁箱100との中央を貫通して、軸通路116が形成され、この軸通路116によって2つの流体通路102と108とが連通させられている。この軸通路116に沿って摺動する軸118が軸通路116に配置されている。この軸118の中途(2つの流体通路102と108との間)に弁体120が設けられている。弁箱100の開口の底106の中央に軸通路116を包囲し、軸通路116と連通するするように軸通路102側に窪んだ環状の凹所122が形成されている。この凹所122内に環状の弁座シート124が配置されている。弁座シートは、例えば樹脂製である。弁座シート124の流体通路106側の面は、弁箱100の開口の底106と一致した位置にあり、この面は、軸挿入部材104の突出部110の先端112に接触している。弁座シート124の流体通路102側の内孔面に、弁体120が着座、離座する。弁体120が弁座シート124に着座することによって、2つの流体通路102と108とが遮断され、弁体120が弁座シート124から離座することによって2つの流体通路102と108とが繋がる。
【0003】
弁挿入部材104は、弁箱100にネジ結合されたアクチュエータ組立体の本体128によって流体通路102側に押圧されている。その結果、弁座シート124は、軸挿入部材104の突出部110の先端112によって前記の環状の凹所122の底126に
図4に示すように押圧力Pによって押圧されている。一方、凹所122の底126には、押圧力Pと反対方向に反力Rが生じ、これらによって弁座シート124は凹所122の底126に固定されている。弁座シート124は、これらの押圧力Pと反力Rにより、弾性変形している。なお、符号130で示すのはバネで、アクチュエータ組立体の本体128内に含まれ、弁体120が弁座シート124に着座するように軸118を
図4における上側に引っ張っている。アクチュエータ組立体の本体部128内には、図示していないが、流体アクチュエータが組み込まれ、流体が供給されたとき、バネ130の押圧力に抗して、弁体120が弁座シート124から離座するように、軸118を
図4における下方に駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、弁体120が弁座シート124が着座していない状態では、軸挿入部材104の突出部110の更に先端112の押圧力Pと、凹所122の底126が発生する反力Rとによって固定されているが、弁座シート124に弁体120が着座しているとき、弁体120が弁座シート124を押す押圧力P1が反力Rと同じ方向で弁座シート124に加わり、弁座シート124を凹所122の底126に押圧する押圧力は、P-P1となり減少し、その反力もP-P1と減少し、弁体120が弁座シート124から離座しているときよりも、押圧力もその反力も小さくなる。温度変化がある状態で、この弁を使用する場合や、長期間にわたってこの弁を使用する場合、弁座シート124が経年によって、クリープしたり、弁座シート124が劣化したりすると、弁座シートの弾性力が落ちるので、押圧力Pが小さくなり、これにより弁体着座時の反力も小さくなる。その結果、軸通路102及び108の流体に圧力差がある場合、凹所122を通って、流体の漏れが生じる。
【0006】
本発明は、弁座シートがクリープ変形や劣化して、弁を組み立てた当初の弁座シートの弾性力を弁座シートが失っていても、流体の漏れを防止できる弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の弁は、弁本体部を有している。この弁本体部内に軸通路が直線状に形成されている。この軸通路の長さ方向に沿う異なる位置に、前記軸通路と連通して前記弁本体部内に第1及び第2の流体通路が弁本体部の外方に向かって設けられている。第1及び第2の流体通路には、流体、例えば気体または液体を流通させることが可能である。前記軸通路内に軸が前記軸通路に沿って進退可能に配置されている。軸の進退は、例えば駆動手段によって行うこともできるし、手動によって行うこともできるし、前記流体通路の圧力によって行うこともできる。前記第1及び第2の流体通路の間にある前記軸通路の部分を包囲して前記弁本体部内に環状の弁座シートが設けられている。弁座シートとしては種々のものを使用することができ、例えば高弾性係数を持つ材質製とすることができる。高弾性係数を持つ材質としては、例えば硬質樹脂、ゴム、弁本体部及び軸よりも柔らかい金属、具体的には銅合金がある。前記軸の第1及び第2の流体通路の間にある部分に弁体が設けられている。この弁体は前記軸の進退に従って前記弁座シートに着座または離座する。弁体は、前記第1の流体通路側に前記弁座シートとの接触面を有している。弁体が弁座シートから離座した時には、第1及び第2の流体通路が接続され、弁体が弁座シートに着座時には、第1及び第2の流体通路は遮断される。前記弁座シートへの前記弁体の着座時に、前記弁体の前記弁座シートへの押圧力に対する反力を発生するように、前記第2の通路側の前記弁座シートと接触して前記弁本体部に反力発生部が設けられている。反力発生部としては、弁座シートに接触するように弁本体部に設ければよく、例えば平面であってもよいし、弁座シートに接触する突部であってもよい。
【0008】
このように構成された弁では、弁体が弁座シートに着座すると、弁体が弁座シートを弁本体部に押圧する。その押圧力と反対方向の反力が反力発生部によって発生する。この反力と弁体からの押圧力との両方によって挟まれて弁座シートが押圧される。従って、弁座シートと弁体との間に隙間が生じず、第1及び第2の流体通路に圧力差があっても、弁座シートと弁体との間から流体が漏れることがない。しかも、弁本体部と弁座シートとの接触面にも隙間が生じず、第1及び第2の流体通路に圧力差があっても、流体が弁座シートから漏れることはない。
【0009】
上記の態様の弁において、前記弁体は、前記弁座シートとの接触面が前記第2の通路側かつ前記軸の中心側に向かって傾斜した第1の傾斜面を有するものとすることができる。この場合、前記反力発生部も前記第2の通路側かつ前記軸の中心側に向かって傾斜した第2の傾斜面を有している。
【0010】
この構成では、弁体に第1の傾斜面を構成し、弁座シートに第1の傾斜面と一致する傾斜面を形成しているので、弁体を大型にしなくても、弁体と弁座シートとの接触面積を大きくすることができ、大きな押圧力を発生することができ、反力発生部は、第1の傾斜面と同様な第2の傾斜面を有しているので、大きな反力を発生することができ、弁座シートが弁本体部から浮き上がることなく、良好に弁座シートを押圧することができる。
【0011】
さらに、前記反力発生部の第2の傾斜面は、前記第1の傾斜面の中心に垂直な位置またはそれよりも前記軸側の位置に配置されたものとすることができる。
【0012】
この構成では、反力発生部の配置位置を調整することによって反力を適度なものとすることができる。
【0013】
上記の態様において、前記反力発生部は、前記弁本体部の外側且つ前記第2の通路側に向かって傾斜した第3の傾斜面を有するものとすることができる。この場合、前記第1の流体通路からの流体圧力が前記弁座シートにかかったとき、前記弁座シートの一部に発生する力に対する反力を前記第3の傾斜面が発生する。
【0014】
この構成によれば、例えば第1の流体通路の流体圧が、弁座シートに弁体と弁本体部の外側方向からかかっても、反力発生部の第3の傾斜面によっても反力が発生し、これが第2の傾斜面による反力と相まって、弁座シートと弁本体部との接触面を介して、第1の流体通路からの流体が第2の流体通路側に漏れることを防止できる。
【0015】
上記の実施態様において、前記弁座シートは、前記弁本体部内に非拘束状態で設けることができる。この場合、前記弁体は、前記弁座シートに着座時に、前記弁座シートを前記弁本体部に押圧する。
【0016】
このように構成すると、弁座シートが軸方向に拘束されていないので、弁体が弁座シートに着座するごとに、弁体が弁座シートを弁本体部に押圧する。従って、弁座シートにクリープ変形や劣化が生じて、本弁を組み立てた当初の弾性力を弁座シートが失っていても、確実に弁座シートは弁本体部に押圧される。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、弁体による押圧力と、反力発生部によって発生した上記押圧力の反力とによって弁座シートを押圧するので、弁座シートにクリープ変形や劣化が生じていて、弁座シートがこの弁を組み立てた当初の弾性力を失っていても、かつ第1及び第2の流体通路の流体に圧力差があっても、弁体と弁座シートとの接触面から流体が漏れることを防止でき、また、弁座シートと弁本体部との接触面からも流体の漏れを防止することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の1実施形態の弁の縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の1実施形態の弁は、開閉弁に本発明を実施したものである。この開閉弁は、高圧流体、例えば高圧気体、具体的には水素ガスを供給、遮断するもので、例えば水素ガスが供給されている配管中に配置される。
【0020】
この開閉弁は、
図1に示すように、弁本体部2と駆動部4とを備えている。弁本体部2は、弁ハウジング6を有している。弁ハウジング6は、例えば概略筒状に形成された金属製、例えばステンレス製である。弁ハウジング6の
図1における上下方向の異なる位置に、ポート8、10が形成されている。ポート8は、弁ハウジング6の一端、例えば
図1における上端側に在る部分の外周面からその内部に向かって水平に形成されている。ポート10は、弁ハウジング6の他端、例えば
図1における下端側の部分の外周面からその内部に向かって水平に形成されている。即ち、2つのポート8、10は弁ハウジング6の上下方向の異なる位置に形成されている。これらポート8、10それぞれに連なって、弁ハウジング6の中央に向かって水平に第1の流体通路12及び第2の流体通路14が直線状に形成されている。これら第1及び第2の流体通路12、14の内奥端は、軸通路16に連通している。従って、ポート8、10は、第1及び第2の流体通路12、14及び軸通路16を介して通じている。なお、ポート8は、例えば1次側ポートとして、ポート10は、例えば2次側ポートとして使用される。
【0021】
軸通路16は、弁ハウジング6の一端と他端とをつなぐ直線、例えば
図1の上下方向の中心軸線上に直線状に形成されたもので、例えば円孔である。軸通路16は、上下両端で半径方向に拡大され、かつ開口し、中途には複数の段が形成され、直径が異なる複数の箇所がある。この軸通路16内に、その長さ方向、例えば上下方向に沿って軸18が配置されている。軸18は、金属製、例えばステンレス製で、軸通路16と同心に配置され、軸通路16に沿って進退可能である。
【0022】
軸18は、弁ハウジング6の下端付近から弁ハウジング6の上端よりも幾分上まで位置している。軸18の中途、例えば第1の流体通路12にほぼ対応する位置には概略円筒状の膨大部20が形成されている。膨大部20の下側には、膨大部20よりも細径の円筒状の首部22が形成されている。
図2に示すように、首部22の下端の全域に弁体24が一体に形成されている。弁体24については、後に詳述する。弁体24の下側に連なって細径の円筒状部26が形成され、円筒状部26の下端には、円筒状部26よりも太径の円筒状部28が形成されている。
【0023】
太径の円筒状部28の上部の一部と、細径の円筒状部26と弁体24とを覆うように、軸通路16内に、弁本体部2の一部をなす下側案内部材30が配置されて、円筒状部26、28を案内する。下側案内部材30は、例えば弁ハウジング6と同一の金属製である。下側案内部材30の中心軸上に上下に貫通した貫通孔32が形成され、第2の流体通路14と連通している。この貫通孔32の中心軸線と軸16の中心軸線とは一致している。
【0024】
図2に拡大して示すように、貫通孔32の上端に、これの外周囲を囲うように弁座34が、下側案内部材30に形成されている。この弁座34は、下側案内部材30の上端部に形成され、貫通孔32に通じている環状の凹所で、
図3に拡大して示すように、底34aと、底34aに連なる周面とを有している。この弁座34に環状の弁座シート36が配置されている。この弁座シート36は、高弾性係数を持つ材質、例えば硬質樹脂製である。この弁座シート36の下面は弁座34の底34aに接近して位置し、弁座シート36の周面は弁座34の周面側に接近して位置し、弁座シート36の上面は下側案内部材30の上面と一致している。この弁座シート36は、弁座34に配置されているだけであり、押圧固定されていない。
【0025】
弁本体部2の一部をなす軸通過部材38内を、軸18の首部22及び膨大部20が通過している。この軸通過部材38は、下側案内部材30の上側に位置するように軸通路16内に配置されている。軸通過部材38の下端が、弁座シート36の弁体24側の一部を除いて上面に接触している。但し、軸通過部材38は、弁座シート36を弁座34の底34a側には押圧してなく、軸通過部材38の下端が弁座シート36の上方向への移動を拘束している。
【0026】
軸18の膨大部20よりも上部の上側部分40は膨大部20よりも細径の円筒状に形成され、上端は、
図1に示すように、弁ハウジング6の上端よりも幾分上方に位置している。上側部分40は、弁本体部2の一部をなす上側案内部材42によって上下方向に案内される。上側案内部材42は、軸通過部材38の上側位置にするように軸通路16内に配置されている。
【0027】
弁ハウジング6の上端には上述した駆動部4が取りつけられている。駆動部4は、結合板44にねじ結合され、結合板44は弁ハウジング6にねじ結合されている。駆動部4の駆動軸46が軸18の上側部分40に係合され、駆動軸46は、駆動部4内でピストン48と一体である。ピストン48は、駆動部4内を弁本体部2側とその反対側の部屋とに(
図1における下側の部屋と上側の部屋とに)区画しており、上側の部屋に配置されたバネ50によって下側に押圧されている。この状態では、軸18の弁体24が弁座シート36に着座し、閉弁状態にある。駆動部4に設けられた駆動流体ポート52からピストン48の下側の部屋に駆動流体が供給されると、ピストン48がバネ50の押圧力に抗して押し上げられ、軸18が上側に摺動し、弁体24が弁座シート36から離座する。
【0028】
軸18の円筒状部28の下部に接触するようにシール部材54、56がスリーブ58を間に挟んで、下側案内部材30の下端より下方に配置されている。これらシール部材54、56及びスリーブ58を包囲するように、弁本体部2の一部をなす支持部材60が配置されている。この支持部材60の下部は、押圧部材、例えば蓋部材62の支持穴64に収容され、この支持穴64中央の貫通孔66を通って軸18の円筒状部28の下端が蓋部材62内に進入している。蓋部材62はその外周囲に形成されたネジを利用して弁ハウジング6にネジ結合されている。
【0029】
上側案内部材42の中央には、軸18の上側部分40の周面に接するシール部材68、70が間隔をあけて配置され、シール部材68、70の間にスリーブ72が配置され、シール部材70と軸通過部材38との間にスリーブ74が配置されている。
【0030】
図3に拡大して示すように、弁体24の外周面には、第1の傾斜面24aが形成されている。第1の傾斜面24aは、第2の流体通路14側でかつ軸18の中心側に向かって、具体的には軸通路16(貫通孔32)の中心軸側に斜め下方を向いて傾斜している。弁座シート36の内周面の上面、即ち弁体24の第1の傾斜面24aが接触可能な面には、傾斜面36aが形成されている。この傾斜面36aも、軸通路16(貫通孔32)の中心軸側に斜め下方を向いて傾斜し、弁体24が弁座シート36に着座したとき、弁体24の第1の傾斜面24aと弁座シート36の傾斜面36aとが密着するように、傾斜角度が同一に設定されている。弁座シート36は、弁座34の底34aと軸通過部材38の下端とに挟まれている。
【0031】
弁座34の底34aには、反力発生部76が形成されている。即ち、弁体24と反対側(対向する側)に反力発生部76が存在する。反力発生部76は、弁座34の底34aの全周に環状に形成されている。反力発生部76は、例えば弁座シート36側に突出した突部で、第2の傾斜面76aを有している。第2の傾斜面76aは、弁座34の貫通孔32に臨む面よりも外側で、弁体24の第1の傾斜面24aの首部22側の端よりも内側の位置、望ましくは
図3に示すように第1の傾斜面24aの中央からの垂直線が弁座34の底34aと交差する位置よりも貫通孔32側(内側)の位置に、形成されており、第1の傾斜面24a、傾斜面36aと同じく軸通路16(貫通孔32)の中心軸側に斜め下方を向いて傾斜している。これら第1の傾斜面24a、傾斜面36a及び第2の傾斜面76aの傾斜角は、近似した角度である。第2の傾斜面76aの首部22側の端より外側(弁ハウジング6側)に平面76bが形成され、外側に水平に伸びている。この平面76bの弁ハウジング6側の端から弁座34の底34a側に、弁ハウジング6側を向いて下方に第3の傾斜面76cが形成されている。即ち、第3の傾斜面76cは、弁本体部2の外側且つ第2の通路14側に向かって、具体的には軸22と反対側(弁ハウジング6の外側)に向かって斜め下方に傾斜している。第2の傾斜面76aと第3の傾斜面76cとはちょうど逆向きに、近似した角度で傾斜している。この反力発生部76の第2の傾斜面76a、平面76b及び第3の傾斜面76cが弁座シート36における弁座34の底34a側の面に接触している。第2の傾斜面76aと弁座34の底34aとの接続部、第2の傾斜面76aと平面76bとの接続部、平面76bと第3の傾斜面76cとの接続部、第3の傾斜面76cと弁座34の底34aとの接続部には、いずれも丸みが付けられている。
【0032】
弁体24は、駆動流体が駆動流体ポート52に供給されるごとに、弁座シート36から離座し、駆動流体が駆動流体ポート52から排出されるごとに、弁座シート36に着座する。弁体24が弁座シート36に着座するごとに、弁座シート36は、新たに弁座34の底34a側の反力発生部76に押圧される。従って、長期の着座状態が続いたことにより弁座シート36にクリープ変形や経年劣化が生じて、弾性力を失っても、開閉する度に、着座した際の反力発生部76に新たに押しつけ力を発生するので、弁座シート36を弁座34に確実に押圧することができる。
【0033】
しかも、弁体24の第1の傾斜面24aの押圧力に対する反力を反力発生部76の第2の傾斜面76aが発生し、弁座シート36は弁体24による押圧力とその反力とに挟み込まれて固定される。従って、弁座シート36にクリープ変形や劣化が生じても、着座状態で、第1の流体通路12及び第2の流体通路14の水素ガスに圧力差があっても、第1の傾斜面24aと弁座シート36の傾斜面36aとの接触面及び弁座シート36と弁座34の底34aとの面から、水素ガスの漏れが生じることはない。
【0034】
一般に、弁ハウジング6と軸通過部材38との間には、
図3に示すように、微少な隙間78があり、この隙間78は第1の軸通路12及び1次ポート8に通じている。下側案内部材30の貫通孔32の圧力(2次側ポート10の水素ガスの圧力)が、1次ポート8の圧力よりも高い場合、反力発生部76を設けていないなら、2次側ポート10の圧力で弁座シート36の貫通孔32側の一部が持ち上げられ、弁座34の底34a及び隙間78を介して2次側ポート10の水素ガスが1次側ポート8に漏れる可能性があるが、上述したように反力発生部76を設けているので、弁座シート36は反力発生部76の第2の傾斜面76aと弁体24の第1の傾斜面24aとに密着しており、2次側ポート10の水素ガスが1次側ポート8に漏れることはない。
【0035】
また、反力発生部76は、傾斜面76cも有しており、隙間78の圧力が貫通孔32の圧力よりも高い場合、隙間78からの圧力による押圧力に対して傾斜面76cが反力を発生し、隙間78の圧力による押圧力と、反力発生部76の第3の傾斜面76cによる反力とによって、弁座シート36が強固に固定され、隙間78から水素ガスが貫通孔32側に漏れることを防止できる。
【0036】
軸通過部材38の弁座シート36側の面に、即ち
図1における軸通過部材38の下面に、突部状の移動拘束部80が形成されている。これは、弁座シート36の
図1における上面に接触し、弁座シート36の全周に沿って形成されている。移動拘束部80は、反力発生部76よりも弁ハウジング6側に、即ち外側によった位置にあり、傾斜面80a、平面80b、傾斜面80cを有している。傾斜面80aは、反力発生部76の傾斜面76cと同様に弁ハウジング6の外側側かつ斜め下方を向いて傾斜している。傾斜面80cは、傾斜面80aとは反対に、第1及び第2の傾斜面24a、76aと同様に軸通路16(貫通孔32)側に斜め下方を向いて傾斜している。
【0037】
隙間78の圧力が下側案内部材30の貫通孔32の圧力よりも高いとき、弁座シート36は、隙間78側の圧力によって弁体24側に押圧されるが、移動拘束部80が軸通過部材38に設けられているので、弁座シート36は移動拘束部80によって弁体24側に移動することを防がれ、弁座シート36は変形がしにくくなる。なお、移動拘束部80は場合によっては除去することができる。
【0038】
上記の実施形態では、弁座シート36として硬質樹脂製のものを使用したが、これに限ったものではなく、例えば高弾性係数を持つもの、具体的にはゴム製、銅合金製のもの(弁ハウジング6や弁体24よりも柔らかい金属)を使用することもできる。反力発生部76は、傾斜面76a、76cを有するものを示したが、いずれか一方のみを有し、他方を垂直面とすることもできる。また、反力発生部76は、平面76bを有するものを示したが、平面76bを省略し、傾斜面76aに続けて直ちに傾斜面76cを形成することもできる。反力発生部76は、傾斜面76a、76cを有するものを示したが、傾斜面76a、76cに代えて弁座34の底34aに対して垂直な面を有するものを使用することもできるし、突部状のものを省略し、弁座34の底34aを反力発生部として使用することもできる。また、弁体24も傾斜面24aを有するものとしたが、垂直面を有するものとすることもできる。但し、弁体24に傾斜面を形成する方が、垂直面を形成するよりも構造上容易で、水素ガスを漏れにくくすることができる。上記の実施形態では、バネ50の押圧力によって弁体26が弁座シート36を押圧し、駆動流体ポート54に駆動流体が供給されたときのみ、弁体26が弁座シート36から離脱するように構成したが、逆に駆動流体が供給されていないとき、弁体26が前座シート36から離脱しており、駆動流体が供給されたときのみ、弁体26が弁座シート36を押圧するように構成することもできる。また、上記の実施形態では、本発明を開閉弁に実施したが、例えば駆動部4をバネだけによって構成し、ポート10を1次側ポート、ポート8を2次側ポートとして使用し、1次側ポート10の圧力が、バネ50によって設定された圧力よりも上昇したとき、弁体24が弁座シート36から離座して、1次側ポート10の水素ガスを2次側ポート8に流して、1次側ポート10の圧力がバネ50による設定圧力より低下したとき、弁体24が弁座シート36に着座することによって1次側ポート10の圧力をバネ50による設定圧力以下の圧力とする圧力調整弁に、本発明を実施することもできる。また、例えば駆動部4をバネ50と操作レバーとによって構成し、操作レバーを作業者が操作していないとき、バネ50の押圧力によって軸18を
図1の下方に押圧して弁体24を弁座シート36に着座させておき、操作レバーを作業者が操作することによって、バネ50の押圧力に打ち勝つ力を軸18に加えて、軸18を
図1の上方に移動させて、弁体24を弁座シート36から離座させる手動操作の開閉弁に本発明を実施することもできるし、逆に、操作レバーを作業者が操作していないとき、バネ50の押し上げ力によって軸18を
図1の上方に押し上げて弁体24を弁座シート36から離座させておき、操作レバーを作業者が操作することによって、バネ50の押し上げ力に打ち勝つ力を軸18に加えて、軸18を
図1の下方に移動させて、弁体24を弁座シート36に着座させる手動操作の開閉弁に本発明を実施することもできる。上記の実施形態では、軸18は単独で構成されたものを示したが、軸18を長さ方向に沿う異なる複数の箇所で分割した複数の軸部材によって軸18を構成することもできる。また、上記の実施形態では、開閉弁は、水素ガスを通過、遮断したが、水素ガス以外の流体(気体、または液体)を通過、遮断させてもよい。
【符号の説明】
【0039】
6 弁ハウジング(弁本体部)
16 軸通路
18 軸
24 弁体
30 下側案内部材(弁本体部)
36 弁座シート
38 軸通過部材(弁本体部)
42 上側案内部材(弁本体部)
60 支持部材(弁本体部)
76 反力発生部