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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006156
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】光検出システムおよび光子数算出方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/42 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
G01J1/42 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108600
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】小沼 駿
【テーマコード(参考)】
2G065
【Fターム(参考)】
2G065AA01
2G065AB05
2G065BA02
2G065BA09
2G065BB06
2G065BC02
2G065CA30
2G065DA06
(57)【要約】
【課題】別固体の光センサと放電の程度を比較可能にする。
【解決手段】光検出システムは、レンズ機構21の焦点距離が第1の値である第1の状態と、焦点距離が第2の値である第2の状態について光センサ1の放電確率を算出する放電確率算出部202と、光センサ1の既知の感度パラメータとして、工場出荷時の放電確率を予め記憶する感度パラメータ記憶部19と、感度パラメータと、第1、第2の状態のときに放電確率算出部202によって算出された放電確率と、光センサ1の基準の受光量と第1の状態のときの受光量との所定の第1の比率と、基準の受光量と第2の状態のときの受光量との所定の第2の比率とに基づいて、光検出システムの工場出荷時と現場設置後において光センサ1の受光面に到達する光子の数の比率を算出する光子数算出部205を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から放出される光を検出するように構成された光センサと、
前記光源と前記光センサとの間に設けられ、焦点距離を調整可能なように構成されたレンズ機構と、
前記光センサの電極に駆動パルス電圧を周期的に印加するように構成された印加電圧生成部と、
前記光センサの放電電流を検出するように構成された電流検出部と、
この電流検出部によって検出された放電電流に基づいて前記光センサの放電を検出するように構成された放電判定部と、
前記レンズ機構の焦点距離が所定の第1の値である第1の状態と、前記焦点距離が前記第1の値と異なる所定の第2の値である第2の状態のそれぞれについて、前記印加電圧生成部による前記駆動パルス電圧の印加回数と、この駆動パルス電圧の印加中に前記放電判定部によって検出された放電の回数とに基づいて放電確率を算出するように構成された放電確率算出部と、
前記光センサの既知の感度パラメータとして、光検出システムの工場出荷時の放電確率を予め記憶するように構成された記憶部と、
前記記憶部に記憶されている感度パラメータと、前記第1、第2の状態のときに前記放電確率算出部によって算出された放電確率と、前記光センサの基準の受光量と前記第1の状態のときの受光量との所定の第1の比率と、前記基準の受光量と前記第2の状態のときの受光量との所定の第2の比率とに基づいて、光検出システムの工場出荷時と現場設置後において前記光センサの受光面に到達する光子の数の比率を算出するように構成された光子数算出部とを備えることを特徴とする光検出システム。
【請求項2】
請求項1記載の光検出システムにおいて、
前記光子数算出部は、光検出システムの工場出荷時と現場設置後の前記光子の数の比率をE/Ere、前記第1、第2の状態のときに前記放電確率算出部によって算出された放電確率をP1,P3、前記基準の受光量と前記第1の状態のときの受光量との所定の第1の比率をr1、前記基準の受光量と前記第2の状態のときの受光量との所定の第2の比率をr3、前記記憶部に記憶されている工場出荷時の放電確率をPreとしたとき、
【数1】
により、前記光子の数の比率E/Ereを算出することを特徴とする光検出システム。
【請求項3】
光源から放出される光を検出するように構成された光センサと、
前記光源と前記光センサとの間に設けられ、焦点距離を調整可能なように構成されたレンズ機構と、
前記光センサの電極に駆動パルス電圧を周期的に印加するように構成された印加電圧生成部と、
前記光センサの放電電流を検出するように構成された電流検出部と、
この電流検出部によって検出された放電電流に基づいて前記光センサの放電を検出するように構成された放電判定部と、
前記レンズ機構の焦点距離が所定の第1の値である第1の状態と、前記焦点距離が前記第1の値と異なる所定の第2の値である第2の状態のそれぞれについて、前記印加電圧生成部による前記駆動パルス電圧の印加回数と、この駆動パルス電圧の印加中に前記放電判定部によって検出された放電の回数とに基づいて放電確率を算出するように構成された放電確率算出部と、
前記光センサの既知の感度パラメータとして、光検出システムの工場出荷時の放電確率と、前記駆動パルス電圧の基準パルス幅と、前記駆動パルス電圧のパルス幅に依存して発生しかつ前記光センサの受光量に依存せずに発生する、前記光センサの光電効果による放電以外のノイズ成分による第1種の非正規の放電の放電確率と、前記駆動パルス電圧のパルス幅と前記光センサの受光量とに依存せずに発生する、前記ノイズ成分による第2種の非正規の放電の放電確率とを予め記憶するように構成された記憶部と、
前記記憶部に記憶されている感度パラメータと、前記第1、第2の状態のときに前記放電確率算出部によって算出された放電確率と、前記光センサの基準の受光量と前記第1の状態のときの受光量との所定の第1の比率と、前記基準の受光量と前記第2の状態のときの受光量との所定の第2の比率と、前記第1、第2の状態のときの前記駆動パルス電圧のパルス幅とに基づいて、光検出システムの工場出荷時と現場設置後において前記光センサの受光面に到達する光子の数の比率を算出するように構成された光子数算出部とを備えることを特徴とする光検出システム。
【請求項4】
請求項3記載の光検出システムにおいて、
前記光子数算出部は、光検出システムの工場出荷時と現場設置後の前記光子の数の比率をE/Ere、前記第1、第2の状態のときに前記放電確率算出部によって算出された放電確率をP1,P3、前記基準の受光量と前記第1の状態のときの受光量との所定の第1の比率をr1、前記基準の受光量と前記第2の状態のときの受光量との所定の第2の比率をr3、前記記憶部に記憶されている工場出荷時の放電確率をPre、前記駆動パルス電圧の基準パルス幅をT0、前記第1種の非正規の放電の放電確率をPaB、前記第2種の非正規の放電の放電確率をPbB、前記第1、第2の状態のときの前記駆動パルス電圧のパルス幅をTとしたとき、
【数2】
により、前記光子の数の比率E/Ereを算出することを特徴とする光検出システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光検出システムにおいて、
前記基準の受光量と前記第1の状態のときの受光量との比率が前記第1の比率となるように前記レンズ機構の焦点距離を前記第1の値に制御して、光検出システムを前記第1の状態とし、さらに前記基準の受光量と前記第2の状態のときの受光量との比率が前記第2の比率となるように前記レンズ機構の焦点距離を前記第2の値に制御して、光検出システムを前記第2の状態とするように構成された受光量比率設定部をさらに備えることを特徴とする光検出システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光検出システムにおいて、
前記放電確率算出部は、光検出システムの現場設置前の工場出荷時に、前記印加電圧生成部による前記駆動パルス電圧の印加回数と、この駆動パルス電圧の印加中に前記放電判定部によって検出された放電の回数とに基づいて放電確率を算出して、算出した放電確率を前記記憶部に格納することを特徴とする光検出システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光検出システムにおいて、
前記光子数算出部によって算出された光子の数の比率に基づいて、光検出システムの現場設置後の前記光センサの受光量を算出するように構成された受光量算出部をさらに備えることを特徴とする光検出システム。
【請求項8】
光源と光センサとの間に設けられたレンズ機構の焦点距離が所定の第1の値である第1の状態のときに、前記光センサの電極に駆動パルス電圧を周期的に印加する第1のステップと、
前記第1の状態のときの前記光センサの放電電流を検出する第2のステップと、
前記第1の状態のときの前記放電電流に基づいて前記光センサの放電を検出する第3のステップと、
前記第1のステップによる前記駆動パルス電圧の印加回数と、この駆動パルス電圧の印加中に前記第3のステップで検出した放電の回数とに基づいて前記第1の状態のときの放電確率を算出する第4のステップと、
前記レンズ機構の焦点距離が前記第1の値と異なる所定の第2の値である第2の状態のときに、前記光センサの電極に駆動パルス電圧を周期的に印加する第5のステップと、
前記第2の状態のときの前記光センサの放電電流を検出する第6のステップと、
前記第2の状態のときの前記放電電流に基づいて前記光センサの放電を検出する第7のステップと、
前記第5のステップによる前記駆動パルス電圧の印加回数と、この駆動パルス電圧の印加中に前記第7のステップで検出した放電の回数とに基づいて前記第2の状態のときの放電確率を算出する第8のステップと、
前記光センサの既知の感度パラメータとして、光検出システムの工場出荷時の放電確率を予め記憶する記憶部を参照し、この記憶部に記憶されている感度パラメータと、前記第1、第2の状態のときに前記第4、第8のステップで算出した放電確率と、前記光センサの基準の受光量と前記第1の状態のときの受光量との所定の第1の比率と、前記基準の受光量と前記第2の状態のときの受光量との所定の第2の比率とに基づいて、光検出システムの工場出荷時と現場設置後において前記光センサの受光面に到達する光子の数の比率を算出する第9のステップとを含むことを特徴とする光子数算出方法。
【請求項9】
光源と光センサとの間に設けられたレンズ機構の焦点距離が所定の第1の値である第1の状態のときに、前記光センサの電極に駆動パルス電圧を周期的に印加する第1のステップと、
前記第1の状態のときの前記光センサの放電電流を検出する第2のステップと、
前記第1の状態のときの前記放電電流に基づいて前記光センサの放電を検出する第3のステップと、
前記第1のステップによる前記駆動パルス電圧の印加回数と、この駆動パルス電圧の印加中に前記第3のステップで検出した放電の回数とに基づいて前記第1の状態のときの放電確率を算出する第4のステップと、
前記レンズ機構の焦点距離が前記第1の値と異なる所定の第2の値である第2の状態のときに、前記光センサの電極に駆動パルス電圧を周期的に印加する第5のステップと、
前記第2の状態のときの前記光センサの放電電流を検出する第6のステップと、
前記第2の状態のときの前記放電電流に基づいて前記光センサの放電を検出する第7のステップと、
前記第5のステップによる前記駆動パルス電圧の印加回数と、この駆動パルス電圧の印加中に前記第7のステップで検出した放電の回数とに基づいて前記第2の状態のときの放電確率を算出する第8のステップと、
前記光センサの既知の感度パラメータとして、光検出システムの工場出荷時の放電確率と、前記駆動パルス電圧の基準パルス幅と、前記駆動パルス電圧のパルス幅に依存して発生しかつ前記光センサの受光量に依存せずに発生する、前記光センサの光電効果による放電以外のノイズ成分による第1種の非正規の放電の放電確率と、前記駆動パルス電圧のパルス幅と前記光センサの受光量とに依存せずに発生する、前記ノイズ成分による第2種の非正規の放電の放電確率とを予め記憶する記憶部を参照し、この記憶部に記憶されている感度パラメータと、前記第1、第2の状態のときに前記第4、第8のステップで算出した放電確率と、前記光センサの基準の受光量と前記第1の状態のときの受光量との所定の第1の比率と、前記基準の受光量と前記第2の状態のときの受光量との所定の第2の比率と、前記第1、第2の状態のときの前記駆動パルス電圧のパルス幅とに基づいて、光検出システムの工場出荷時と現場設置後において前記光センサの受光面に到達する光子の数の比率を算出する第9のステップとを含むことを特徴とする光子数算出方法。
【請求項10】
請求項8または9記載の光子数算出方法において、
前記基準の受光量と前記第1の状態のときの受光量との比率が前記第1の比率となるように前記レンズ機構の焦点距離を前記第1の値に制御して、光検出システムを前記第1の状態とする第10のステップと、
前記基準の受光量と前記第2の状態のときの受光量との比率が前記第2の比率となるように前記レンズ機構の焦点距離を前記第2の値に制御して、光検出システムを前記第2の状態とする第11のステップとをさらに含むことを特徴とする光子数算出方法。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか1項に記載の光子数算出方法において、
光検出システムの現場設置前の工場出荷時に、前記光センサの電極に駆動パルス電圧を周期的に印加する第12のステップと、
前記光センサの放電電流を検出する第13のステップと、
前記放電電流に基づいて前記光センサの放電を検出する第14のステップと、
前記第12のステップによる前記駆動パルス電圧の印加回数と、この駆動パルス電圧の印加中に前記第14のステップで検出した放電の回数とに基づいて放電確率を算出して、算出した放電確率を前記記憶部に格納する第15のステップとをさらに含むことを特徴とする光子数算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火炎などの光を検出する光検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃焼炉等において火炎の光から放出される紫外線に基づいて火炎の有無を検出する光センサとして、光電管式紫外線センサが利用される場合がある。光電管式紫外線センサの放電には、光電効果による放電以外のノイズ成分による非正規な放電現象(疑放電)が起きることが観測されている。
【0003】
特許文献1では、光センサに印加する駆動パルスのパルス幅を制御して放電の受光量を計算から求め、光量から光センサの寿命を判定することができる火炎検出システムが提案されている。しかし、実際の光センサの放電には故障と総称されるノイズによる非正規の放電が含まれており、火炎による光がない場合でも放電が起きてしまい、誤検出してしまう場合があった。そのような放電の誤検出を除去するために、ノイズ成分の放電確率を除去した受光量を考慮する必要がある。
【0004】
そこで、特許文献2に開示された火炎検出システムでは、ノイズ成分の非正規の放電確率を考慮した受光量の求め方が提案されており、精度よく火炎の有無を検出することを可能としている。
また、特許文献3に開示された故障検出装置では、光センサへ入射する電磁波を遮断するシャッタ機構を設けることで光センサの自己放電による故障を検出することが提案されている。
【0005】
特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示された技術では、いずれも光センサの受光量を算出している。しかしながら、受光量は光センサ固体の相対値であったため、別固体の光センサと放電の程度を比較することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-84422号公報
【特許文献2】特開2018-84423号公報
【特許文献3】特開平05-012581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、別固体の光センサと放電の程度を比較することが可能な光検出システムおよび光子数算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光検出システムは、光源から放出される光を検出するように構成された光センサと、前記光源と前記光センサとの間に設けられ、焦点距離を調整可能なように構成されたレンズ機構と、前記光センサの電極に駆動パルス電圧を周期的に印加するように構成された印加電圧生成部と、前記光センサの放電電流を検出するように構成された電流検出部と、この電流検出部によって検出された放電電流に基づいて前記光センサの放電を検出するように構成された放電判定部と、前記レンズ機構の焦点距離が所定の第1の値である第1の状態と、前記焦点距離が前記第1の値と異なる所定の第2の値である第2の状態のそれぞれについて、前記印加電圧生成部による前記駆動パルス電圧の印加回数と、この駆動パルス電圧の印加中に前記放電判定部によって検出された放電の回数とに基づいて放電確率を算出するように構成された放電確率算出部と、前記光センサの既知の感度パラメータとして、光検出システムの工場出荷時の放電確率を予め記憶するように構成された記憶部と、前記記憶部に記憶されている感度パラメータと、前記第1、第2の状態のときに前記放電確率算出部によって算出された放電確率と、前記光センサの基準の受光量と前記第1の状態のときの受光量との所定の第1の比率と、前記基準の受光量と前記第2の状態のときの受光量との所定の第2の比率とに基づいて、光検出システムの工場出荷時と現場設置後において前記光センサの受光面に到達する光子の数の比率を算出するように構成された光子数算出部とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の光検出システムの1構成例において、前記光子数算出部は、前記第1、第2の状態のときに前記放電確率算出部によって算出された放電確率P1,P3、前記基準の受光量と前記第1の状態のときの受光量との所定の第1の比率r1、前記基準の受光量と前記第2の状態のときの受光量との所定の第2の比率r3、前記記憶部に記憶されている工場出荷時の放電確率Preにより、前記光子の数の比率E/Ereを算出することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の光検出システムは、光源から放出される光を検出するように構成された光センサと、前記光源と前記光センサとの間に設けられ、焦点距離を調整可能なように構成されたレンズ機構と、前記光センサの電極に駆動パルス電圧を周期的に印加するように構成された印加電圧生成部と、前記光センサの放電電流を検出するように構成された電流検出部と、この電流検出部によって検出された放電電流に基づいて前記光センサの放電を検出するように構成された放電判定部と、前記レンズ機構の焦点距離が所定の第1の値である第1の状態と、前記焦点距離が前記第1の値と異なる所定の第2の値である第2の状態のそれぞれについて、前記印加電圧生成部による前記駆動パルス電圧の印加回数と、この駆動パルス電圧の印加中に前記放電判定部によって検出された放電の回数とに基づいて放電確率を算出するように構成された放電確率算出部と、前記光センサの既知の感度パラメータとして、光検出システムの工場出荷時の放電確率と、前記駆動パルス電圧の基準パルス幅と、前記駆動パルス電圧のパルス幅に依存して発生しかつ前記光センサの受光量に依存せずに発生する、前記光センサの光電効果による放電以外のノイズ成分による第1種の非正規の放電の放電確率と、前記駆動パルス電圧のパルス幅と前記光センサの受光量とに依存せずに発生する、前記ノイズ成分による第2種の非正規の放電の放電確率とを予め記憶するように構成された記憶部と、前記記憶部に記憶されている感度パラメータと、前記第1、第2の状態のときに前記放電確率算出部によって算出された放電確率と、前記光センサの基準の受光量と前記第1の状態のときの受光量との所定の第1の比率と、前記基準の受光量と前記第2の状態のときの受光量との所定の第2の比率と、前記第1、第2の状態のときの前記駆動パルス電圧のパルス幅とに基づいて、光検出システムの工場出荷時と現場設置後において前記光センサの受光面に到達する光子の数の比率を算出するように構成された光子数算出部とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の光検出システムの1構成例において、前記光子数算出部は、前記第1、第2の状態のときに前記放電確率算出部によって算出された放電確率P1,P3、前記基準の受光量と前記第1の状態のときの受光量との所定の第1の比率r1、前記基準の受光量と前記第2の状態のときの受光量との所定の第2の比率r3、前記記憶部に記憶されている工場出荷時の放電確率Pre、前記駆動パルス電圧の基準パルス幅T0、前記第1種の非正規の放電の放電確率PaB、前記第2種の非正規の放電の放電確率PbB、前記第1、第2の状態のときの前記駆動パルス電圧のパルス幅Tにより、前記光子の数の比率E/Ereを算出することを特徴とするものである。
また、本発明の光検出システムの1構成例は、前記基準の受光量と前記第1の状態のときの受光量との比率が前記第1の比率となるように前記レンズ機構の焦点距離を前記第1の値に制御して、光検出システムを前記第1の状態とし、さらに前記基準の受光量と前記第2の状態のときの受光量との比率が前記第2の比率となるように前記レンズ機構の焦点距離を前記第2の値に制御して、光検出システムを前記第2の状態とするように構成された受光量比率設定部をさらに備えることを特徴とするものである。
また、本発明の光検出システムの1構成例において、前記放電確率算出部は、光検出システムの現場設置前の工場出荷時に、前記印加電圧生成部による前記駆動パルス電圧の印加回数と、この駆動パルス電圧の印加中に前記放電判定部によって検出された放電の回数とに基づいて放電確率を算出して、算出した放電確率を前記記憶部に格納することを特徴とするものである。
また、本発明の光検出システムの1構成例は、前記光子数算出部によって算出された光子の数の比率に基づいて、光検出システムの現場設置後の前記光センサの受光量を算出するように構成された受光量算出部をさらに備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の光子数算出方法は、光源と光センサとの間に設けられたレンズ機構の焦点距離が所定の第1の値である第1の状態のときに、前記光センサの電極に駆動パルス電圧を周期的に印加する第1のステップと、前記第1の状態のときの前記光センサの放電電流を検出する第2のステップと、前記第1の状態のときの前記放電電流に基づいて前記光センサの放電を検出する第3のステップと、前記第1のステップによる前記駆動パルス電圧の印加回数と、この駆動パルス電圧の印加中に前記第3のステップで検出した放電の回数とに基づいて前記第1の状態のときの放電確率を算出する第4のステップと、前記レンズ機構の焦点距離が前記第1の値と異なる所定の第2の値である第2の状態のときに、前記光センサの電極に駆動パルス電圧を周期的に印加する第5のステップと、前記第2の状態のときの前記光センサの放電電流を検出する第6のステップと、前記第2の状態のときの前記放電電流に基づいて前記光センサの放電を検出する第7のステップと、前記第5のステップによる前記駆動パルス電圧の印加回数と、この駆動パルス電圧の印加中に前記第7のステップで検出した放電の回数とに基づいて前記第2の状態のときの放電確率を算出する第8のステップと、前記光センサの既知の感度パラメータとして、光検出システムの工場出荷時の放電確率を予め記憶する記憶部を参照し、この記憶部に記憶されている感度パラメータと、前記第1、第2の状態のときに前記第4、第8のステップで算出した放電確率と、前記光センサの基準の受光量と前記第1の状態のときの受光量との所定の第1の比率と、前記基準の受光量と前記第2の状態のときの受光量との所定の第2の比率とに基づいて、光検出システムの工場出荷時と現場設置後において前記光センサの受光面に到達する光子の数の比率を算出する第9のステップとを含むことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の光子数算出方法は、光源と光センサとの間に設けられたレンズ機構の焦点距離が所定の第1の値である第1の状態のときに、前記光センサの電極に駆動パルス電圧を周期的に印加する第1のステップと、前記第1の状態のときの前記光センサの放電電流を検出する第2のステップと、前記第1の状態のときの前記放電電流に基づいて前記光センサの放電を検出する第3のステップと、前記第1のステップによる前記駆動パルス電圧の印加回数と、この駆動パルス電圧の印加中に前記第3のステップで検出した放電の回数とに基づいて前記第1の状態のときの放電確率を算出する第4のステップと、前記レンズ機構の焦点距離が前記第1の値と異なる所定の第2の値である第2の状態のときに、前記光センサの電極に駆動パルス電圧を周期的に印加する第5のステップと、前記第2の状態のときの前記光センサの放電電流を検出する第6のステップと、前記第2の状態のときの前記放電電流に基づいて前記光センサの放電を検出する第7のステップと、前記第5のステップによる前記駆動パルス電圧の印加回数と、この駆動パルス電圧の印加中に前記第7のステップで検出した放電の回数とに基づいて前記第2の状態のときの放電確率を算出する第8のステップと、前記光センサの既知の感度パラメータとして、光検出システムの工場出荷時の放電確率と、前記駆動パルス電圧の基準パルス幅と、前記駆動パルス電圧のパルス幅に依存して発生しかつ前記光センサの受光量に依存せずに発生する、前記光センサの光電効果による放電以外のノイズ成分による第1種の非正規の放電の放電確率と、前記駆動パルス電圧のパルス幅と前記光センサの受光量とに依存せずに発生する、前記ノイズ成分による第2種の非正規の放電の放電確率とを予め記憶する記憶部を参照し、この記憶部に記憶されている感度パラメータと、前記第1、第2の状態のときに前記第4、第8のステップで算出した放電確率と、前記光センサの基準の受光量と前記第1の状態のときの受光量との所定の第1の比率と、前記基準の受光量と前記第2の状態のときの受光量との所定の第2の比率と、前記第1、第2の状態のときの前記駆動パルス電圧のパルス幅とに基づいて、光検出システムの工場出荷時と現場設置後において前記光センサの受光面に到達する光子の数の比率を算出する第9のステップとを含むことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の光子数算出方法の1構成例は、前記基準の受光量と前記第1の状態のときの受光量との比率が前記第1の比率となるように前記レンズ機構の焦点距離を前記第1の値に制御して、光検出システムを前記第1の状態とする第10のステップと、前記基準の受光量と前記第2の状態のときの受光量との比率が前記第2の比率となるように前記レンズ機構の焦点距離を前記第2の値に制御して、光検出システムを前記第2の状態とする第11のステップとをさらに含むことを特徴とするものである。
また、本発明の光子数算出方法の1構成例は、光検出システムの現場設置前の工場出荷時に、前記光センサの電極に駆動パルス電圧を周期的に印加する第12のステップと、前記光センサの放電電流を検出する第13のステップと、前記放電電流に基づいて前記光センサの放電を検出する第14のステップと、前記第12のステップによる前記駆動パルス電圧の印加回数と、この駆動パルス電圧の印加中に前記第14のステップで検出した放電の回数とに基づいて放電確率を算出して、算出した放電確率を前記記憶部に格納する第15のステップとをさらに含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光検出システムの工場出荷時と現場設置後の光子の数の比率を算出することができる。本発明では、光子数の比率を算出することで別固体の光センサと放電の程度を比較することができる。従来技術で求めた受光量は光センサのばらつきの影響を受けるため、受光量に基づいて光センサの寿命を判定すると光センサの寿命を誤って判定してしまう可能性があった。一方、本発明では、光子数の比率を算出することで光センサのばらつきの影響を排除することができるので、光子数の比率に基づいて光センサの寿命を判定すれば、光センサの寿命を誤って判定してしまう可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、レンズ機構によって光センサの電極面の受光量を変えたときの受光量比を説明する図である。
図2図2は、本発明の第1の実施例に係る光検出システムの構成を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の第1の実施例において光センサに印加される駆動パルス、および電流検出回路において検出される検出電圧を示す波形図である。
図4図4は、レンズ機構によって光センサの電極面の受光量を変えたときの受光量比を説明する図である。
図5図5は、本発明の第1の実施例に係る光検出システムの工場出荷時の動作を説明するフローチャートである。
図6図6は、本発明の第1の実施例に係るリボルバ型のレンズ機構を光源側から見た正面図である。
図7図7は、本発明の第1の実施例に係る光検出システムの現場設置後の動作を説明するフローチャートである。
図8図8は、本発明の第1、第2の実施例に係る光検出システムを実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[発明の原理]
本発明では、感度パラメータが既知である光センサと、焦点距離が可変なレンズ機構とを設け、光センサが感度を有する波長の光において受光量を可変としたときの放電確率を利用することで、光検出システムの工場出荷時との相対的な光子数を決定する。焦点距離が可変なレンズ機構としては、複数のレンズを備えたリボルバ型のレンズ機構によって焦点距離を可変とし、受光量を相対化する例が挙げられる。
【0018】
本発明では、光センサの光子数の比率を算出する。特許文献1に開示された技術では、光センサの受光量を算出し、受光量から光センサの寿命を判定していた。しかし、受光量は光センサ固体の相対値であったため、別固体の光センサと受光量を比較することは困難であった。本発明では、光センサの光子数の比率を算出することで別固体の光センサの放電の程度を比較することができる。
【0019】
[第1の実施例]
以下、光センサの受光量を可変としたときの光子数の算出方法について説明する。本発明の第1の実施例では、光センサの正規放電のみを考慮する例について説明する。光電効果を利用した光センサは、光子が電極に当たることで通電する光電管である。通電は次の条件で進行する。
【0020】
[光センサの動作]
光センサの1対の電極間に電圧を印加した状態において、一方の電極に光子が当たると、ある確率で光電子が飛び出し、電子なだれを起こしながら通電する(電極間に放電電流が流れる)。
電極間に電圧が掛かっている間、光センサは通電し続ける。あるいは、光センサの通電が確認されたら直ちに電圧を下げることで通電が停止する。このように、光センサは、電極間の電圧が下がると、通電を終了する。
【0021】
光センサの電極に光子が1個当たったときに、光センサが放電する確率をP1とする。また、光センサの電極に光子が2個当たったときに、光センサが放電する確率をP2とする。P2は1個目の光子でも2個目の光子でも放電しない確率の逆なので、P2とP1の関係は、式(1)のように表される。
【0022】
【数1】
【0023】
一般にn個の光子が光センサの電極に当たったときに光センサが放電する確率をPn、m個の光子が光センサの電極に当たったときに光センサが放電する確率をPmとすると(n,mは自然数)、式(1)と同様に式(2)と式(3)が成り立つ。
【0024】
【数2】
【0025】
式(2)と式(3)から、PnとPmの関係として式(4)が導ける。
【0026】
【数3】
【0027】
焦点距離を可変にできるレンズを通して光を検出する場合を考える。単位面積および単位時間あたりに光センサの電極に飛来してくる光子の数をE、レンズの面積をSl、光センサの放電開始電圧以上の電圧を電極間に印加する時間(以下パルス幅と呼ぶ)をTiとすると、電圧印加1回あたりに電極に衝突する光子の数はETilで表される。よって、同一の光センサを、ある条件Aと別の条件Bで動作させた際の、光子数E、面積S、パルス幅T、放電確率Pの関係は式(5)のとおりとなる。ここで、基準とする光子数をE0と定め、QA=EA/E0,QB=EB/E0とすると、式(6)となる。ここで、Qiを受光量と呼ぶこととする。
【0028】
【数4】
【0029】
図1(A)、図1(B)に示すように、焦点距離が可変なレンズ機構21によって光センサ1の電極面の受光量Qaを100%としたときと、受光量をQb(Qa≠Qb)としたときの受光量の比率rbを考えると式(7)で表すことができる。
【0030】
【数5】
【0031】
[光検出システムの構成と動作]
図2は本発明の第1の実施例に係る光検出システムの構成を示すブロック図である。光検出システムは、光センサを駆動し、光センサの駆動結果から光子数の比率および受光量を算出するものである。この光検出システムは、炎やLEDやランプなどの光源100から生じる光(紫外線)を検出する光センサ1と、外部電源2と、光センサ1および外部電源2が接続された演算装置3と、光源100と光センサ1との間に設けられたレンズ機構21とを備えている。
【0032】
光センサ1は、両端部が塞がれた円筒状の外囲器と、この外囲器の両端部を貫通する2本の電極ピンと、外囲器内部において電極ピンにより互いに平行に支持された2枚の電極とを備えた光電管から構成されている。このような光センサ1では、電極支持ピンを介して電極間に所定の電圧を印加した状態において、光源100に対向配置された一方の電極に紫外線が照射されると、光電効果によりその電極から電子が放出され、電極間に放電電流が流れる。
【0033】
外部電源2は、例えば、100[V]または200[V]の電圧値を有する交流の商用電源からなる。
【0034】
演算装置3は、外部電源2に接続された電源回路11と、この電源回路11に接続された印加電圧生成回路12およびトリガ回路13と、光センサ1の下流側の端子1bと接地ラインGNDとの間に直列に接続された抵抗R1とR2とからなる分圧抵抗14と、この分圧抵抗14の抵抗R1とR2との接続点Paに生じる電圧(参照電圧)Vaを光センサ1に流れる電流Iとして検出する電流検出回路15と、印加電圧生成回路12とトリガ回路13と電流検出回路15とが接続された処理回路16とを備えている。
【0035】
電源回路11は、外部電源2から入力される交流電力を、印加電圧生成回路12およびトリガ回路13に供給する。また、演算装置3の駆動用の電力は、電源回路11より取得される。ただし、交流/直流を問わず別電源から駆動用の電力を取得するように構成することもできる。
【0036】
印加電圧生成回路12(印加電圧生成部)は、電源回路11により印加される交流電圧を所定の値まで昇圧させて光センサ1に印加する。本実施例では、処理回路16からの矩形パルスPSと同期した200[V]のパルス状の電圧(光センサ1の放電開始電圧VST以上の電圧)を駆動パルス電圧PMとして生成し、この生成した駆動パルス電圧PMを光センサ1に印加する。図3に光センサ1に印加される駆動パルス電圧PMを示す。駆動パルス電圧PMは、処理回路16からの矩形パルスPSと同期しており、そのパルス幅Tは矩形パルスPSのパルス幅と等しい。処理回路16からの矩形パルスPSについては後述する。
【0037】
トリガ回路13は、電源回路11により印加される交流電圧の所定の値点を検出し、この検出結果を処理回路16に入力する。本実施例において、トリガ回路13は、電圧値が最小となる最小値点を所定の値点(トリガ時点)として検出する。このように交流電圧について所定の値点を検出することにより、その交流電圧の1周期を検出することが可能となる。
【0038】
分圧抵抗14は、抵抗R1とR2との分圧電圧として参照電圧Vaを生成し、電流検出回路15に入力する。ここで、光センサ1の上流側の端子1aに印加される駆動パルスPMの電圧値は、上述したように200[V]という高電圧となっているので、光センサ1の電極間に電流が流れた時にその下流側の端子1bに生じる電圧をそのまま電流検出回路15に入力すると電流検出回路15に大きな負荷がかかることとなる。このため、本実施例では、分圧抵抗14によって電圧値が低い参照電圧Vaを生成し、これを電流検出回路15に入力するようにしている。
【0039】
電流検出回路15(電流検出部)は、分圧抵抗14から入力される参照電圧Vaを光センサ1の放電電流Iとして検出し、この検出した参照電圧Vaを検出電圧Vpvとして処理回路16に入力する。
処理回路16は、矩形パルス生成部17と、A/D変換部18と、感度パラメータ記憶部19と、中央処理部20とを備えている。
【0040】
矩形パルス生成部17は、トリガ回路13がトリガ時点を検出する毎に、すなわち電源回路11からトリガ回路13に印加される交流電圧の1周期毎に、パルス幅Tの矩形パルスPSを生成する。この矩形パルス生成部17が生成する矩形パルスPSが印加電圧生成回路12へ送られる。矩形パルス生成部17と印加電圧生成回路12とは、駆動パルス電圧PMのパルス幅を調整可能である。すなわち、矩形パルス生成部17が矩形パルスPSのパルス幅を所望の値に設定することにより、矩形パルスPSと等しいパルス幅の駆動パルス電圧PMが印加電圧生成回路12から出力される。
A/D変換部18は、電流検出回路15からの検出電圧VpvをA/D変換し、中央処理部20へ送る。
【0041】
中央処理部20は、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現され、放電判定部201と、放電確率算出部202と、パルス印加数積算部203と、印加数判定部204と、光子数算出部205と、受光量算出部206と、受光量判定部207と、受光量比率設定部208として機能する。
【0042】
中央処理部20において、放電判定部201は、電流検出回路15によって検出された光センサ1の放電電流に基づいて光センサ1の放電を検出する。具体的には、放電判定部201は、光センサ1に駆動パルス電圧PMが印加される毎(矩形パルスPSが生成される毎)に、A/D変換部18から入力される検出電圧Vpvと予め定められている閾値電圧Vthとを比較し(図3参照)、検出電圧Vpvが閾値電圧Vthを超えた場合に光センサ1が放電したと判定し、放電回数nを1増やす。
【0043】
放電確率算出部202は、光センサ1に印加された駆動パルス電圧PMの印加回数Nが所定数を超えたとき(矩形パルスPSのパルス数が所定数を超えたとき)に、放電判定部201によって検出された放電回数nと駆動パルス電圧PMの印加回数Nとから光センサ1の放電確率Pを算出する。
【0044】
この放電確率Pをフレーム信号として出力する。ある動作条件、受光量Q0(Q0≠0)、パルス幅T0における放電確率P0が既知であるとする。例えば光検出システムの出荷検査において、定められた受光量とパルス幅における放電確率Pを測定しておく方法がある。このとき、受光量Q、パルス幅T、放電確率Pの関係は、式(8)となる。ただし、P=0はQ=0とする。本発明では、P=0のときとP=1のときは、受光量Qの算出処理から除外する。
【0045】
【数6】
【0046】
いま、Q0,T0,P0が既知で、Tは光検出システムが制御しているパルス幅なので既知である。複数回の駆動パルス電圧PMを光センサ1に印加し、放電回数nを測定し、放電確率Pを算出すれば、未知数である受光量Qを式(8)から算出することができる。
【0047】
式(8)から、ある動作条件、受光量Q0、パルス幅T0における放電確率PaAが既知であるとし、受光量Q、パルス幅T、放電確率Pの関係は、式(9)で与えられる。
【0048】
【数7】
【0049】
[焦点距離の異なるレンズを用いたときの光子数の算出方法]
図4(A)~図4(C)に示すようにレンズ機構21の焦点距離を変えたときに、焦点距離が異なる3つの状態の放電確率をPi(i=1~3)、受光量をQiとする。ここで、Q1=r12,Q3=r32(r1≠r3)となることとし、比率r1,r3が既知で、図4(B)の状態のときに光センサ1の電極に到達する、電極単位面積当たりの光子の数Eが未知であるとする。
【0050】
光検出システムの現場設置後に図4(A)の状態で測定したときの放電確率P1、受光量Q1を式(9)に代入したものを式(10)とし、図4(C)の状態で測定したときの放電確率P3、受光量Q3を式(9)に代入したものを式(11)とする。
【0051】
【数8】
【0052】
式(10)を(11)で除すると式(12)を得る。
【0053】
【数9】
【0054】
また、光検出システムの工場出荷時に、レンズ機構21の焦点距離を任意の値に設定して放電確率がPreであったときの受光量Qreについて算出しているとし、放電確率Pre、受光量Qreが既知であるとする。放電確率Pre、受光量Qreを式(9)に代入し、式を変形して式(13)を得る。
【0055】
【数10】
【0056】
式(13)に式(12)を代入して変形すると式(14)となる。
【0057】
【数11】
【0058】
1=r12,Q3=r22を式(14)に代入すると式(15)となる。
【0059】
【数12】
【0060】
2=(ESl)/(E0l),Qre=(Erel)/(E0l)を式(15)に代入すると、式(16)のようにE/Ereを求めることができる。
【0061】
【数13】
【0062】
したがって、光検出システムの現場への設置後の既知の値P1,P3,r1,r2および工場出荷時の既知の値Pre,Qreによって工場出荷時と現場設置後の光子数の比率E/Ereを算出することが可能となる。
【0063】
以下、本実施例の光検出システムの動作について更に詳細に説明する。図5は本実施例の光検出システムの工場出荷時の動作を説明するフローチャートである。
例えば工場出荷時の検査段階で、レンズ機構21の焦点距離を任意の値に手動で設定する(ステップS100)。光源100からの光はレンズ機構21を通って光センサ1に入射する。
【0064】
図6はリボルバ型のレンズ機構21を光源100側から見た正面図である。リボルバ型のレンズ機構21は、焦点距離が異なる複数のレンズ210~212がリボルバ213に固定されており、リボルバ213を回転させることで、光源100と光センサ1との間に挿入されるレンズ210~212を変えることができ、焦点距離を変えることができるようになっている。
【0065】
レンズ機構21は、リボルバ型に限るものではなく、レンズを光軸方向に沿って移動させることで焦点距離を変更可能なものであってもよい。
また、レンズ機構21がモーター等の駆動機構を備えた構成であってもよい。この場合は、受光量比率設定部208がレンズ機構21の焦点距離を制御することができる。
【0066】
放電確率算出部202は、矩形パルス生成部17に指示して駆動パルス電圧PMの印加を開始させる。放電確率算出部202からの指示に応じて、矩形パルス生成部17は、矩形パルスPSのパルス幅を所定の値Tに設定する。このパルス幅の設定により、印加電圧生成回路12は、パルス幅Tの駆動パルス電圧PMを光センサ1の1対の端子1a,1b間に印加する(ステップS101)。なお、パルス幅Tは、基準パルス幅T0と同じでもよい。
【0067】
放電判定部201は、電流検出回路15からの検出電圧Vpvと予め定められている閾値電圧Vthとを比較し、検出電圧Vpvが閾値電圧Vthを超えた場合に光センサ1が放電したと判定する。放電判定部201は、光センサ1が放電したと判定すると、これを1回として放電回数nをカウントする(ステップS102)。放電回数nと駆動パルス電圧PMの印加回数Nの初期値は共に0である。こうして、ステップS101,S102の処理が繰り返し実行される。
【0068】
パルス印加数積算部203は、矩形パルス生成部17から出力される矩形パルスPSを数えることにより、駆動パルス電圧PMの印加回数Nを数える。
印加数判定部204は、駆動パルス電圧PMの印加回数Nを所定数Nthと比較する。
【0069】
放電確率算出部202は、ステップS101によるパルス幅Tの駆動パルス電圧PMの印加開始時からの駆動パルス電圧PMの印加回数Nが所定数Nthを超えたと印加数判定部204が判定したとき(ステップS103においてYES)、このときの駆動パルス電圧PMの印加回数Nと放電判定部201によって検出された放電回数nとに基づいて、式(17)により放電確率Preを算出する(ステップS104)。
re=n/N ・・・(17)
【0070】
感度パラメータ記憶部19には、光センサ1の既知の感度パラメータとして、光センサ1の受光量Q0と、駆動パルス電圧PMの基準パルス幅T0と、駆動パルス電圧PMのパルス幅が基準パルス幅T0で光センサ1の受光量がQ0のときの正規の放電の放電確率PaAと、図4(B)の状態の基準の受光量Q2が得られるときの光センサ1の電極面の受光面積S2とが予め記憶されている。
【0071】
受光量算出部206は、放電確率算出部202によって算出された放電確率Preが0より大きくかつ1未満の場合(ステップS105においてYES)、放電確率Preと、放電確率Preを求めたときの駆動パルス電圧PMのパルス幅Tと、感度パラメータ記憶部19に記憶されているパラメータQ0,T0,PaAとに基づいて、式(9)により受光量Q=Qreを算出する(ステップS106)。このときの算出では、式(9)のPにPreを代入すればよい。
【0072】
また、受光量算出部206は、放電確率算出部202によって算出された放電確率Preが0または1の場合(ステップS105においてNO)、ステップS101に戻る。こうして、放電確率Preが0より大きくかつ1未満になるまで、ステップS101~S105の処理が繰り返され、受光量Qreを算出できた時点で終了となる。放電確率算出部202は、0より大きくかつ1未満となった放電確率Preの値を感度パラメータ記憶部19に格納する。
【0073】
次に、光検出システムの現場設置後の動作を図7を用いて説明する。光検出システムの現場設置後に、受光量比率設定部208は、受光量比率と放電確率の番号iを1に初期化する(ステップS200)。受光量比率設定部208は、図4(B)の状態の基準の受光量Q2に対して受光量が図4(A)の状態のQ1になり、Q1=r12が成立するように、レンズ機構21の焦点距離を所定の第1の値に制御する(ステップS201)。
【0074】
放電確率算出部202は、矩形パルス生成部17に指示して駆動パルス電圧PMの印加を開始させる。放電確率算出部202からの指示に応じて、矩形パルス生成部17は、矩形パルスPSのパルス幅を所定の値Tに設定する。このパルス幅の設定により、印加電圧生成回路12は、パルス幅Tの駆動パルス電圧PMを光センサ1の1対の端子1a,1b間に印加する(ステップS202)。なお、現場設置後のパルス幅Tは、工場出荷時のパルス幅Tと異なる値でもよい。
【0075】
放電判定部201は、上記と同様に電流検出回路15からの検出電圧Vpvが閾値電圧Vthを超えた場合に光センサ1が放電したと判定し、放電回数ni=n1を1増やす(ステップS203)。放電回数n1と駆動パルス電圧PMの印加回数N1の初期値は共に0である。こうして、ステップS202,S203の処理が繰り返し実行される。
【0076】
放電確率算出部202は、ステップS202によるパルス幅Tの駆動パルス電圧PMの印加開始時からの駆動パルス電圧PMの印加回数Ni=N1が所定数Nthを超えたと印加数判定部204が判定したとき(ステップS204においてYES)、このときの駆動パルス電圧PMの印加回数Ni=N1と放電判定部201によって検出された放電回数ni=n1とに基づいて、式(18)により放電確率Pi=P1を算出する(ステップS205)。
1=n1/N1 ・・・(18)
【0077】
放電確率算出部202は、算出した放電確率P1が0または1の場合(ステップS206においてNO)、ステップS202に戻る。こうして、放電確率P1が0より大きくかつ1未満になるまで、ステップS202~S206の処理が繰り返し行われる。
【0078】
放電確率算出部202は、算出した放電確率P1が0より大きくかつ1未満の場合(ステップS206においてYES)、番号iを2増やす(ステップS207)。放電確率算出部202は、番号iが5より小さい場合(ステップS208においてYES)、ステップS201に戻る。
【0079】
放電確率P1が0より大きくかつ1未満で、番号iが5より小さい場合、受光量比率設定部208は、図4(B)の状態の基準の受光量Q2に対して受光量が図4(C)の状態のQ3になり、Q3=r32が成立するように、レンズ機構21の焦点距離を所定の第2の値に制御する(ステップS201)。
【0080】
なお、受光量Q1,Q3のうちどちらか一方は、受光量Q2と同じでもよい。すなわち、受光量比率r1,r3(r1≠r3)のうちどちらか一方は1でもよい。
【0081】
放電確率算出部202は、矩形パルス生成部17に指示して駆動パルス電圧PMの印加を開始させる。放電確率算出部202からの指示に応じて、矩形パルス生成部17は、矩形パルスPSの出力を一旦停止した後、矩形パルスPSのパルス幅を所定の値Tに設定する。このパルス幅の設定により、印加電圧生成回路12は、パルス幅Tの駆動パルス電圧PMを光センサ1の1対の端子1a,1b間に印加する(ステップS202)。
【0082】
放電判定部201は、上記と同様に電流検出回路15からの検出電圧Vpvが閾値電圧Vthを超えた場合に光センサ1が放電したと判定し、放電回数ni=n3を1増やす(ステップS203)。放電回数n3と駆動パルス電圧PMの印加回数N3の初期値は共に0である。こうして、ステップS202,S203の処理が繰り返し実行される。
【0083】
放電確率算出部202は、ステップS202によるパルス幅Tの駆動パルス電圧PMの印加開始時からの駆動パルス電圧PMの印加回数Ni=N3が所定数Nthを超えたと印加数判定部204が判定したとき(ステップS204においてYES)、このときの駆動パルス電圧PMの印加回数Ni=N3と放電判定部201によって検出された放電回数ni=n3とに基づいて、式(19)により放電確率Pi=P3を算出する(ステップS205)。
3=n3/N3 ・・・(19)
【0084】
放電確率算出部202は、算出した放電確率P3が0または1の場合(ステップS206においてNO)、ステップS202に戻る。こうして、放電確率P3が0より大きくかつ1未満になるまで、ステップS202~S206の処理が繰り返し行われる。
【0085】
放電確率算出部202は、算出した放電確率P3が0より大きくかつ1未満の場合(ステップS206においてYES)、番号iを2増やす(ステップS207)。
光子数算出部205は、番号iが5に達した場合(ステップS208においてNO)、放電確率算出部202によって算出された放電確率P1,P3と、受光量比率設定部208によって設定された受光量比率r1,r3と、感度パラメータ記憶部19に記憶されている工場出荷時の放電確率Preとに基づいて、式(16)により、工場出荷時と現場設置後の光子数の比率E/Ereを算出する(ステップS209)。
【0086】
受光量算出部206は、光子数算出部205によって算出された光子数の比率E/Ereと、感度パラメータ記憶部19に記憶されている受光面積S2とに基づいて、式(20)により受光量Qを算出する(ステップS210)。
Q=(E/Ere)S2 ・・・(20)
【0087】
受光量判定部207は、受光量算出部206によって算出された受光量Qと所定の受光量閾値Qthとを比較し(ステップS211)、受光量Qが受光量閾値Qthを超えた場合(ステップS211においてYES)、火炎有りと判定する(ステップS212)。また、受光量判定部207は、受光量Qが受光量閾値Qth以下の場合(ステップS211においてNO)、火炎無しと判定する(ステップS213)。
【0088】
以上のように、本実施例では、光センサ1の光子数の比率E/Ereを算出することができる。本実施例では、光子数の比率E/Ereを算出することで別固体の光センサと放電の程度を比較することができる。
【0089】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。本実施例では、光電効果による放電以外のノイズ成分による非正規な放電現象(疑放電)も考慮した例について説明する。本実施例においても、光検出システムの構成は第1の実施例と同様であるので、図2の符号を用いて説明する。
【0090】
[ノイズを考慮した光検出システムの動作]
光センサ1の放電と時間との関係としては、下記の2とおりが考えられる。
(a)駆動パルス電圧PMの印加中に一律の確率で現れる放電(式(9))。
(b)駆動パルス電圧PMの立ち上がり若しくは立ち下がり時に現れる放電。
【0091】
次に、光センサ1の放電と受光量との関係は、下記の2とおりが考えられる。
(A)受光量と式(9)の関係に従って現れる放電。
(B)受光量と無関係に表れる放電。
【0092】
【表1】
【0093】
表1のマトリクスのとおり、(a)、(b)と(A)、(B)の組み合わせで光センサ1のノイズ放電を類型できる。本発明では、(a)と(A)の組み合わせ(aA)、(a)と(B)の組み合わせ(aB)、(b)と(A)の組み合わせ(bA)、(b)と(B)の組み合わせ(bB)が確実に観測される可能性が高いと考えられる。
【0094】
aAの組み合わせの放電は、「感度」と呼ばれる正常な放電(式(9)に組み込み済み)である。aBの組み合わせの放電は、熱電子などがトリガとなる紫外線量に無関係な放電である。bAの組み合わせの放電は、突入電流や残存イオンにより駆動パルス電圧の立ち上がり若しくは立ち下がり時に限定的に発生する放電のうち光量に依存する放電である。bBの組み合わせの放電は、突入電流や残存イオンにより駆動パルス電圧の立ち上がり若しくは立ち下がり時に限定的に発生する放電のうち光量に依存しない放電である。
【0095】
なお、表1に類型化したものはUV(ultraviolet)故障モードの全てではない。例えば放電が切れない、感度波長が異なるなど、表1に含まれない故障モードがある。
【0096】
以上のaAの放電と3種のaB,bA,bBのノイズ放電とは、式(21)の形で表すことができる。
【0097】
【数14】
【0098】
式(21)において、PaBは受光量Q、パルス幅TにおけるaBの放電確率、PbAは受光量Q、パルス幅TにおけるbAの放電確率、PbBは受光量Q、パルス幅TにおけるbBの放電確率である。
【0099】
[焦点距離の異なるレンズを用いたときの光子数の算出方法]
式(21)において、放電確率PaB,PbBが既知であるとする。図4(A)~図4(C)に示したようにレンズ機構21の焦点距離を変えたときに、焦点距離が異なる3つの状態の放電確率をPi(i=1~3)、受光量をQiとする。ここで、Q1=r12,Q3=r32(r1≠r3)となることとし、比率r1,r3が既知で、図4(B)の状態のときに光センサ1の電極に到達する、電極単位面積当たりの光子の数Eが未知であるとする。
【0100】
光検出システムの現場設置後に図4(A)の状態で測定したときの放電確率P1、受光量Q1を式(21)に代入したものを式(22)とし、図4(C)の状態で測定したときの放電確率P3、受光量Q3を式(21)に代入したものを式(23)とする。
【0101】
【数15】
【0102】
式(22)を(23)で除すると式(24)を得る。
【0103】
【数16】
【0104】
また、光検出システムの工場出荷時に、レンズ機構21の焦点距離を任意の値に設定して放電確率がPreであったときの受光量Qreについて算出しているとし、放電確率Pre、受光量Qreが既知であるとする。放電確率がPre、受光量がQreのときの式(21)について、放電確率PaB,PbBが既知であるため、変形して式(25)を得る。
【0105】
【数17】
【0106】
式(25)に式(24)を代入して変形すると式(26)となる。
【0107】
【数18】
【0108】
1=r12,Q3=r22を式(26)に代入すると式(27)となる。
【0109】
【数19】
【0110】
2=(ESl)/(E0l),Qre=(Erel)/(E0l)を式(27)に代入すると、式(28)のようにE/Ereを求めることができる。
【0111】
【数20】
【0112】
したがって、光検出システムの現場への設置後の既知の値P1,P3,r1,r3および工場出荷時の既知の値PaB,PbB,T0,Pre,Qreによって工場出荷時と現場設置後の光子数の比率E/Ereを算出することが可能となる。
【0113】
以下、本実施例の光検出システムの動作について更に詳細に説明する。本実施例においても、光検出システムの工場出荷時の動作の流れは第1の実施例と同様であるので、図5を用いて工場出荷時の動作について説明する。
例えば工場出荷時の検査段階で、第1の実施例と同様にレンズ機構21の焦点距離を手動または受光量比率設定部208による制御によって任意の値に設定する(ステップS100)。
【0114】
印加電圧生成回路12は、パルス幅Tの駆動パルス電圧PMを光センサ1の1対の端子1a,1b間に印加する(ステップS101)。
放電判定部201は、電流検出回路15からの検出電圧Vpvが閾値電圧Vthを超えた場合に光センサ1が放電したと判定し、放電回数nを1増やす(ステップS102)。
【0115】
放電確率算出部202は、ステップS101によるパルス幅Tの駆動パルス電圧PMの印加開始時からの駆動パルス電圧PMの印加回数Nが所定数Nthを超えたとき(ステップS103においてYES)、このときの駆動パルス電圧PMの印加回数Nと放電判定部201によって検出された放電回数nとに基づいて、式(17)により放電確率Preを算出する(ステップS104)。
【0116】
受光量算出部206は、放電確率算出部202によって算出された放電確率Preが0より大きくかつ1未満の場合(ステップS105においてYES)、放電確率Preと、放電確率Preを求めたときの駆動パルス電圧PMのパルス幅Tと、感度パラメータ記憶部19に記憶されているパラメータQ0,T0,PaAとに基づいて、式(9)により受光量Q=Qreを算出する(ステップS106)。
【0117】
放電確率Preが0または1の場合には、放電確率Preが0より大きくかつ1未満になるまで、ステップS101~S105の処理が繰り返され、受光量Qreを算出できた時点で終了となる。放電確率算出部202は、0より大きくかつ1未満となった放電確率Preの値を感度パラメータ記憶部19に格納する。
【0118】
次に、光検出システムの現場設置後の動作を図7を用いて説明する。光検出システムの現場設置後に、受光量比率設定部208は、番号iを1に初期化する(ステップS200)。受光量比率設定部208は、図4(B)の状態の基準の受光量Q2に対して受光量が図4(A)の状態のQ1になり、Q1=r12が成立するように、レンズ機構21の焦点距離を所定の第1の値に制御する(ステップS201)。
【0119】
印加電圧生成回路12は、パルス幅Tの駆動パルス電圧PMを光センサ1の1対の端子1a,1b間に印加する(ステップS202)。
放電判定部201は、電流検出回路15からの検出電圧Vpvが閾値電圧Vthを超えた場合に光センサ1が放電したと判定し、放電回数ni=n1を1増やす(ステップS203)。
【0120】
放電確率算出部202は、ステップS202によるパルス幅Tの駆動パルス電圧PMの印加開始時からの駆動パルス電圧PMの印加回数Ni=N1が所定数Nthを超えたとき(ステップS204においてYES)、このときの駆動パルス電圧PMの印加回数Ni=N1と放電判定部201によって検出された放電回数ni=n1とに基づいて、式(18)により放電確率Pi=P1を算出する(ステップS205)。放電確率算出部202は、算出した放電確率P1が0より大きくかつ1未満の場合(ステップS206においてYES)、番号iを2増やす(ステップS207)。
【0121】
放電確率P1が0より大きくかつ1未満で、番号iが5より小さい場合、第1の実施例と同様に受光量比率設定部208は、図4(B)の状態の基準の受光量Q2に対して受光量が図4(C)の状態のQ3になり、Q3=r32が成立するように、レンズ機構21の焦点距離を所定の第2の値に制御する(ステップS201)。
【0122】
印加電圧生成回路12は、パルス幅Tの駆動パルス電圧PMを光センサ1の1対の端子1a,1b間に印加する(ステップS202)。
放電判定部201は、電流検出回路15からの検出電圧Vpvが閾値電圧Vthを超えた場合に光センサ1が放電したと判定し、放電回数ni=n3を1増やす(ステップS203)。
【0123】
放電確率算出部202は、ステップS202によるパルス幅Tの駆動パルス電圧PMの印加開始時からの駆動パルス電圧PMの印加回数Ni=N3が所定数Nthを超えたとき(ステップS204においてYES)、このときの駆動パルス電圧PMの印加回数Ni=N3と放電判定部201によって検出された放電回数ni=n3とに基づいて、式(19)により放電確率Pi=P3を算出する(ステップS205)。放電確率算出部202は、算出した放電確率P3が0より大きくかつ1未満の場合(ステップS206においてYES)、番号iを2増やす(ステップS207)。
【0124】
本実施例の感度パラメータ記憶部19には、工場出荷時の放電確率Pre、受光面積Sreに加えて、光センサ1の既知の感度パラメータとして、光センサ1の受光量Q0と、駆動パルス電圧PMの基準パルス幅T0と、受光面積S2と、非正規の放電の放電確率PaB,PbBとが予め記憶されている。
【0125】
放電確率PaBは、上記のとおり駆動パルス電圧PMのパルス幅に依存して発生しかつ光センサ1の受光量に依存せずに発生する、光センサ1の光電効果による放電以外のノイズ成分による放電の確率である。放電確率PbBは、上記のとおり駆動パルス電圧PMのパルス幅と光センサ1の受光量とに依存せずに発生する、光センサ1の光電効果による放電以外のノイズ成分による放電の確率である。
【0126】
本実施例の光子数算出部205は、番号iが5に達した場合(ステップS208においてNO)、放電確率算出部202によって算出された放電確率P1,P3と、受光量比率設定部208によって設定された受光量比率r1,r3と、放電確率P1,P3を求めたときの駆動パルス電圧PMのパルス幅Tと、感度パラメータ記憶部19に記憶されている工場出荷時の放電確率Preと基準パルス幅T0と非正規の放電の放電確率PaB,PbBとに基づいて、式(28)により、工場出荷時と現場設置後の光子数の比率E/Ereを算出する(ステップS209)。
【0127】
受光量算出部206は、光子数算出部205によって算出された光子数の比率E/Ereと、感度パラメータ記憶部19に記憶されている受光面積S2とに基づいて、式(20)により受光量Qを算出する(ステップS210)。
【0128】
受光量判定部207は、受光量算出部206によって算出された受光量Qと受光量閾値Qthとを比較し(ステップS211)、受光量Qが受光量閾値Qthを超えた場合(ステップS211においてYES)、火炎有りと判定する(ステップS212)。また、受光量判定部207は、受光量Qが受光量閾値Qth以下の場合(ステップS211においてNO)、火炎無しと判定する(ステップS213)。
【0129】
こうして、本実施例では、第1の実施例と同様の効果を得ることができる。また、本実施例では、光センサ1の正規の放電以外のノイズ成分を除外した光子数の比率E/Ereを算出することができる。
【0130】
第1、第2の実施例では、光源100が火炎の場合を例に挙げて説明しているが、本発明の光検出システムは火炎以外の光源100にも適用可能である。
【0131】
第1、第2の実施例で説明した感度パラメータ記憶部19と中央処理部20とは、CPU(Central Processing Unit)と記憶装置とインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。
【0132】
このコンピュータの構成例を図8に示す。コンピュータは、CPU300と、記憶装置301と、インタフェース装置(I/F)302とを備えている。I/F302には、印加電圧生成回路12と矩形パルス生成部17とA/D変換部18などが接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明の光子数算出方法を実現させるためのプログラムは記憶装置301に格納される。CPU300は、記憶装置301に格納されたプログラムに従って第1、第2の実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、火炎検出システムに適用することができる。また、本発明は、火炎以外の光の検出に対しても適用できる。
【符号の説明】
【0134】
1…光センサ、2…外部電源、3…演算装置、11…電源回路、12…印加電圧生成回路、13…トリガ回路、14…分圧抵抗、15…電流検出回路、16…処理回路、17…矩形パルス生成部、18…A/D変換部、19…感度パラメータ記憶部、20…中央処理部、21…レンズ機構、201…放電判定部、202…放電確率算出部、203…パルス印加数積算部、204…印加数判定部、205…光子数算出部、206…受光量算出部、207…受光量判定部、208…受光量比率設定部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8