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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061578
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】乳化型ゲル
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20230425BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20230425BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20230425BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230425BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230425BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 31/727 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
A61K8/92
A61Q19/00
A61K8/81
A61P17/16
A61K47/44
A61K47/14
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/06
A61K47/32
A61K8/02
A61K9/06
A61K31/727
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171574
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】593050091
【氏名又は名称】ジャパンメディック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110456
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 務
(74)【代理人】
【識別番号】100117813
【弁理士】
【氏名又は名称】深澤 憲広
(72)【発明者】
【氏名】松澤 優汰
(72)【発明者】
【氏名】谷口 将崇
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD34A
4C076DD37A
4C076DD41A
4C076DD45A
4C076DD46A
4C076DD50
4C076EE09G
4C076EE23
4C076FF02
4C076FF17
4C076FF35
4C083AC011
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC182
4C083AC241
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC371
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC542
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD311
4C083AD312
4C083BB11
4C083BB51
4C083BB60
4C083CC02
4C083DD41
4C083EE06
4C083EE12
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA27
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA28
4C086MA63
4C086NA05
4C086NA20
4C086ZA89
(57)【要約】      (修正有)
【課題】べたつきがなく、さっぱりした使用感を有するとともに、油性成分が持つ保湿力をも併せ持つ保湿性外用剤を開発することを目的とする。
【解決手段】保湿成分を、0~12.5重量%の油性成分、0~1.0重量%の増粘剤を含む基剤組成物中に含む、保湿用外用剤とする。前記保湿成分としてはヘパリン類似物質が好ましい。前記油性成分としては、トリイソオクタン酸グリセリン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、アジピン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル等の脂肪酸エステル;セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;ステアリン酸等の高級脂肪酸;パラフィン、流動パラフィン、白色ワセリン、スクワラン等の炭化水素であることが好ましい。前記増粘剤としてはカルボキシビニルポリマーが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0~12.5重量%の油性成分、0~1.0重量%の増粘剤を含む、外用剤用基剤組成物。
【請求項2】
ゲル状の剤形である、請求項1に記載の外用剤用基剤組成物。
【請求項3】
乳化型ゲルの剤形である、請求項2に記載の外用剤用基剤組成物。
【請求項4】
油性成分が2.0~10.0重量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の外用剤用基剤組成物。
【請求項5】
油性成分が、脂肪酸エステル、高級アルコール、高級脂肪酸、炭化水素のうちの1の成分または複数の成分の組み合わせである、請求項1~4のいずれか1項に記載の外用剤用基剤組成物。
【請求項6】
油性成分が、
トリイソオクタン酸グリセリン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、アジピン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、ラウリン酸ヘキシルからなる群から選択される脂肪酸エステル、
セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコールからなる群から選択される高級アルコール、
ステアリン酸である高級脂肪酸、
パラフィン、流動パラフィン、白色ワセリン、スクワランからなる群から選択される炭化水素、
からなる群から選択される1の成分または複数の成分である、請求項5に記載の外用剤用基剤組成物。
【請求項7】
油性成分が、トリオソクタン酸グリセリン、ミリスチン酸イソプロピル、セトステアリルアルコール、スクワランから構成される、請求項1~6のいずれか1項に記載の外用剤用基剤組成物。
【請求項8】
増粘剤が0.25~0.75重量%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の外用剤用基剤組成物。
【請求項9】
増粘剤が、カルボキシビニルポリマーである、請求項1~8のいずれか1項に記載の外用剤用基剤組成物。
【請求項10】
保湿成分を、0~12.5重量%の油性成分、0~1.0重量%の増粘剤を含む基剤組成物中に含む、保湿用外用剤。
【請求項11】
保湿成分が、ヘパリン類似物質である、請求項10に記載の保湿用外用剤。
【請求項12】
保湿成分が、0.01~0.5質量%のヘパリン類似物質である、請求項10に記載の保湿用外用剤。
【請求項13】
ゲルの剤形である請求項10~12のいずれか1項に記載の保湿用外用剤。
【請求項14】
油性成分が2.0~10.0重量%である、請求項10~13のいずれか1項に記載の保湿用外用剤。
【請求項15】
油性成分が、脂肪酸エステル、高級アルコール、高級脂肪酸、炭化水素のうちの1の成分または複数の成分の組み合わせである、請求項10~14のいずれか1項に記載の保湿用外用剤。
【請求項16】
油性成分が、
トリイソオクタン酸グリセリン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、アジピン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、ラウリン酸ヘキシルからなる群から選択される脂肪酸エステル、
セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコールからなる群から選択される高級アルコール、
ステアリン酸である高級脂肪酸、
パラフィン、流動パラフィン、白色ワセリン、スクワランからなる群から選択される炭化水素、
からなる群から選択される1の成分または複数の成分である、請求項15に記載の外用剤用基剤組成物。
【請求項17】
油性成分が、トリオソクタン酸グリセリン、ミリスチン酸イソプロピル、セトステアリルアルコール、スクワラン、から構成される、請求項10~16のいずれか1項に記載の保湿用外用剤。
【請求項18】
増粘剤が0.25~0.75重量%である、請求項10~17のいずれか1項に記載の保湿用外用剤。
【請求項19】
増粘剤が、カルボキシビニルポリマーである請求項10~18のいずれか1項に記載の保湿用外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性成分の含量を低減した外用剤の発明に関するものである。より具体的には、本発明は、油性成分の含量を低減してべたつきを低減しつつ、保湿性を維持した、乳化型ゲルタイプの外用剤の発明に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、保湿などを目的とした外用剤としては、保湿成分を含む、軟膏、クリーム剤、乳液剤、ローション剤等が使用されている。それぞれの剤形は、それぞれの油性成分の含量に伴って、使用感が異なることが知られている。
【0003】
日本薬局方(非特許文献1)において、「軟膏剤」は、「有効成分を基剤に溶解又は分散した半固形状の皮膚に塗布する製剤」と定義される油性成分をベースとする剤形である。皮膚への刺激性が少なく、傷やじゅくじゅくしたところにも塗ることができることが特徴である。
【0004】
「クリーム剤」は、「水中油型又は油中水型に乳化した半固形状の皮膚に塗布する製剤」と定義される油性成分と水性成分を含む剤形で、軟膏に比べて伸びがよく、べとつかず、水で洗い流せることが特徴である。
【0005】
「ローション剤」は、「有効成分を水性の液に溶解又は乳化若しくは微細に分散した外用液剤」と定義される剤形である。油性成分を含む「乳剤型ローション」(いわゆる乳液剤、以下これを単に「乳液剤」という)と、油性成分を含まない狭義のローション剤(澄明なローション剤、以下これを単に「ローション剤」という)とに分けられる。乳液剤は、クリーム剤と同様に、軟膏と比べて伸びがよく、べとつかず、水で洗い流せることが特徴であり、一方、ローション剤は、非常に伸びがよく、速乾性で、化粧への影響が少ない、さっぱりとした使用感であることが特徴である。
【0006】
これらの剤形は、それぞれ前述したような特徴(利点)を有するが、同時にそれぞれの剤形に伴う欠点も有している。すなわち、軟膏は、伸びが悪く、べたつくという欠点を持ち、クリーム剤や乳液剤は、皮膚への刺激性があり、保湿効果はあるもののべたつきを感じるという欠点を持ち、ローション剤は、油性成分を含まないことから、保湿力に欠けるという欠点を持っていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】第十八改正日本薬局方
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、軟膏剤、クリーム剤、乳液剤、ローション剤のそれぞれの剤形が持つ欠点を解決し、それぞれの剤形の利点を得られる新規な剤形を開発することを目的とする。より具体的には、べたつきがなく、さっぱりした使用感を有するとともに、油性成分が持つ保湿力をも併せ持つ保湿性外用剤を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者らは、油性成分の配合量を少なくし、乳化型ゲルの剤形とすることで、べたつきがなく、さっぱりとした使用感を持つことに加えて、剤形自体が持つ保湿力を併せ持つ、外用剤用基剤組成物を提供することができ、これを使用して保湿成分を製剤化することで、べたつきがなく、さっぱりとした使用感を持つとともに、高い保湿性を併せ持つ新規な保湿用外用剤を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
より具体的には、本件出願は、前述した課題を解決するため、以下の態様を提供する:
[1-1]: 0~12.5重量%の油性成分、0~1.0重量%の増粘剤を含む、外用剤用基剤組成物;
[1-2]: ゲル状の剤形である、[1-1]に記載の外用剤用基剤組成物;
[1-3]: 乳化型ゲルの剤形である、[1-2]に記載の外用剤用基剤組成物;
[1-4]: 油性成分が2.0~10.0重量%である、[1-1]~[1-3]のいずれかに記載の外用剤用基剤組成物;
[1-5]: 油性成分が、脂肪酸エステル、高級アルコール、高級脂肪酸、炭化水素のうちの1の成分または複数の成分の組み合わせである、[1-1]~[1-4]のいずれかに記載の外用剤用基剤組成物;
[1-6]: 油性成分が、
トリイソオクタン酸グリセリン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、アジピン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、ラウリン酸ヘキシルからなる群から選択される脂肪酸エステル、
セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコールからなる群から選択される高級アルコール、
ステアリン酸である高級脂肪酸、
パラフィン、流動パラフィン、白色ワセリン、スクワランからなる群から選択される炭化水素、
からなる群から選択される1の成分または複数の成分である、[1-5]に記載の外用剤用基剤組成物;
[1-7]: トリオソクタン酸グリセリン、ミリスチン酸イソプロピル、セトステアリルアルコール、スクワランから構成される、[1-1]~[1-6]のいずれかに記載の外用剤用基剤組成物;
[1-8]: 増粘剤が0.25~0.75重量%である、[1-1]~[1-7]のいずれかに記載の外用剤用基剤組成物;
[1-9]: 増粘剤が、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される、[1-1]~[1-8]のいずれかに記載の外用剤用基剤組成物;
[2-1]: 保湿成分を、0~12.5重量%の油性成分、0~1.0重量%の増粘剤を含む基剤組成物中に含む、保湿用外用剤;
[2-2]: 保湿成分が、ヘパリン類似物質である、[2-1]に記載の保湿用外用剤;
[2-3]: 保湿成分が、0.01~0.5質量%のヘパリン類似物質である、[2-1]または[2-2]に記載の保湿用外用剤;
[2-4]: ゲルの剤形である[2-1]~[2-3]のいずれか1項に記載の保湿用外用剤;
[2-5]: 油性成分が2.0~10.0重量%である、[2-1]~[2-4]のいずれかに記載の保湿用外用剤;
[2-6]: 油性成分が、脂肪酸エステル、高級アルコール、高級脂肪酸、炭化水素のうちの1の成分または複数の成分の組み合わせである、[2-1]~[2-5]のいずれかに記載の保湿用外用剤;
[2-7]: 油性成分が、
トリイソオクタン酸グリセリン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、アジピン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、ラウリン酸ヘキシルからなる群から選択される脂肪酸エステル、
セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコールからなる群から選択される高級アルコール、
ステアリン酸である高級脂肪酸、
パラフィン、流動パラフィン、白色ワセリン、スクワランからなる群から選択される炭化水素、
からなる群から選択される1の成分または複数の成分である、[2-6]に記載の保湿用外用剤;
[2-8]: トリオソクタン酸グリセリン、ミリスチン酸イソプロピル、セトステアリルアルコール、スクワランから構成される、[2-1]~[2-7]のいずれかに記載の保湿用外用剤;
[2-9]: 増粘剤が0.25~0.75重量%である、[2-1]~[2-8]のいずれかに記載の保湿用外用剤;
[2-10]: 増粘剤が、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される、[2-1]~[2-9]のいずれかに記載の保湿用外用剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、油性成分の配合量を少なくし、乳化型ゲルの剤形とすることで、べたつきがなく、さっぱりとした使用感を持つことに加えて、剤形自体が持つ保湿力を併せ持つ、外用剤用基剤組成物を提供することができ、これを使用して保湿成分を製剤化することで、べたつきがなく、さっぱりとした使用感を持つとともに、高い保湿性を併せ持つ新規な保湿用外用剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
外用剤用基剤組成物
本発明は、一態様において、新規な外用剤用基剤組成物を提供する。この外用剤用基剤組成物は、0~12.5重量%の油性成分、0~1.0重量%の増粘剤を含むことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の外用剤用基剤組成物は、0~12.5重量%の油性成分を含むことを特徴とする。本発明の外用剤用基剤組成物は、水中油型(O/W型)クリーム剤、水中油型(O/W型)乳液剤よりも、べたつきがなく、さっぱりさせることを特徴とする。この外用剤用基剤組成物を使用して外用剤を製剤化することにより、軟膏剤やクリーム剤、乳液剤と比較して、包含される油性成分により生じる「べたつき」を低減させ、さっぱりとした使用感を持つ外用剤を提供することができる。
【0014】
本発明の外用剤用基剤組成物は、油性成分を、外用剤用基剤組成物中に0~12.5重量%の範囲で含むことができ、より好ましくは1.0~11.0重量%の範囲で含むことができ、さらに好ましくは2.0~10.0重量%の範囲で含むことができる。
【0015】
本発明の外用剤用基剤組成物中で使用することができる油性成分は、薬剤学的に許容される油性成分であればどのようなものを使用してもよい。このような油性成分として、脂肪酸エステル、高級アルコール、高級脂肪酸、炭化水素のうちの1の成分または複数の成分の組み合わせを使用することができる。より具体的には、本発明において使用する具体的な油性成分は:
脂肪酸エステル:トリイソオクタン酸グリセリン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、アジピン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル;
高級アルコール:セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール;
高級脂肪酸:ステアリン酸;
炭化水素:パラフィン、流動パラフィン、白色ワセリン、スクワラン;
を使用することができる。
【0016】
これらの油性成分は、いずれか一つの成分を単独で所定の濃度範囲で使用してもよく、または複数の成分を組み合わせて、油性成分として合計して所定の濃度範囲となるように調整して使用してもよい。本発明の好ましい外用剤用基剤組成物の一態様において、油性成分として、トリオソクタン酸グリセリン、ミリスチン酸イソプロピル、セトステアリルアルコール、スクワランを組み合わせて使用することができる。
【0017】
その一方、一般的に、外用剤用基剤組成物に含まれる油性成分の量を低減することにより、外用剤用基剤組成物の粘度が低下し、その結果として、外用剤の剤形(外用剤用基剤組成物自体)に基づく保水性が低下することが知られている。この問題を解決することを目的として、本発明においては、外用剤の粘度を上昇させることを目的として、外用剤用基剤組成物中に0~1.0重量%の増粘剤を使用することができる。増粘剤を使用することにより、本発明の外用剤用基剤組成物は、粘度が高いゲル状の剤形とすることができ、外用剤の剤形(外用剤用基剤組成物自体)に基づく保水性が向上される。
【0018】
本発明の外用剤用基剤組成物は、増粘剤を、外用剤用基剤組成物中に0~1.0重量%の範囲で含むことができ、より好ましくは0.10~0.85重量%の範囲で含むことができ、さらに好ましくは0.25~0.75重量%の範囲で含むことができる。
【0019】
本発明の外用剤用基剤組成物中で使用することができる増粘剤は、薬剤学的に許容される増粘剤であればどのようなものを使用してもよい。例えば、カルボキシビニルポリマー、セルロース系の増粘剤(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)などを使用することができる。これらの成分は、いずれか一つの成分を単独で所定の濃度範囲で使用してもよく、または複数の成分を組み合わせて、増粘剤として合計して所定の濃度範囲となるように調整して使用してもよい。本発明の好ましい外用剤用基剤組成物の一態様において、増粘剤としてカルボキシビニルポリマーを使用することができる。
【0020】
本発明の外用剤用基剤組成物は、増粘させることにより乳化粒子が合一しにくくなり、乳化物の分離を抑制することができる。従って、本発明の外用剤用基剤組成物は、乳化型ゲルの剤形とすることができる。
【0021】
保湿用外用剤
本発明は、別の一態様において、前述した新規な外用剤用基剤組成物中に保湿成分を含む、保湿用外用剤を提供することができる。この保湿用外用剤は、保湿成分を、0~12.5重量%の油性成分、0~1.0重量%の増粘剤を含む基剤組成物中に含むことを特徴とするものである。
【0022】
本発明の保湿用外用剤は、保湿成分として、ヘパリン類似物質、尿素などの成分を含むことができる。前述したように、本発明の保湿用外用剤を作製する際に使用する新規な外用剤用基剤組成物は、外用剤の剤形(外用剤用基剤組成物自体)に基づく保水性が向上されるが、これとは別に、薬剤学的な有効成分として、保湿成分を含むことができる。この結果、本発明の保湿用外用剤は、さっぱりとした使用感を持つとともに、高い保湿性を併せ持つ外用剤とすることができる。
【0023】
本発明の保湿用外用剤は、保湿成分としてヘパリン類似物質を使用する場合、保湿用外用剤中に、0.01~0.5質量%のヘパリン類似物質、より好ましくは0.1~0.3質量%のヘパリン類似物質を含むことができ、あるいは、保湿成分として尿素を使用する場合、5.0~20.0重量%の尿素を含むことができる。
【0024】
本発明の保湿用外用剤を構成する際に使用する外用剤用基剤組成物は、前述した通りのものである。
【0025】
本発明の保湿用外用剤は、0~12.5重量%の油性成分を含むことを特徴とする。本発明の保湿用外用剤は、外用剤用基剤組成物が水中油型(O/W型)クリーム剤、水中油型(O/W型)乳液剤よりも、べたつきがなく、さっぱりとした使用感であることを特徴とする。この保湿用外用剤は、軟膏剤やクリーム剤、乳液剤と比較して、包含される油性成分により生じる「べたつき」が低減され、さっぱりとした使用感を持つものとして提供することができる。
【0026】
本発明の保湿用外用剤は、油性成分を、保湿用外用剤中に、0~12.5重量%の範囲で含むことができ、より好ましくは1.0~11.0重量%の範囲で含むことができ、さらに好ましくは2.0~10.0重量%の範囲で含むことができる。
【0027】
本発明の保湿用外用剤中で使用することができる油性成分は、外用剤用基剤組成物について上述した通りである。本発明の好ましい保湿用外用剤の一態様において、油性成分として、トリオソクタン酸グリセリン、ミリスチン酸イソプロピル、セトステアリルアルコール、スクワランを組み合わせて使用することができる。
【0028】
本発明においては、保湿用外用剤の粘度を上昇させることを目的として、保湿用外用剤中に0~1.0重量%の増粘剤を使用することができる。増粘剤を使用することにより、本発明の保湿用外用剤は、粘度が高いゲル状の剤形とすることができる。
【0029】
本発明の保湿用外用剤は、増粘剤を、保湿用外用剤中に、0~1.0重量%の範囲で含むことができ、より好ましくは0.10~0.85重量%の範囲で含むことができ、さらに好ましくは0.25~0.75重量%の範囲で含むことができる。
【0030】
本発明の保湿用外用剤中で使用することができる増粘剤は、外用剤用基剤組成物について上述した通りである。本発明の好ましい保湿用外用剤の一態様において、増粘剤としてカルボキシビニルポリマーを使用することができる。
【0031】
本発明の保湿用外用剤は、増粘させることにより乳化粒子が合一しにくくなり、乳化物の分離を抑制することができる。従って、本発明の保湿用外用剤は、乳化型ゲルの剤形とすることができる。
【0032】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に示す。下記に示す実施例はいかなる方法によっても本発明を限定するものではない。
【実施例0033】
実施例1:外用剤中の油性成分の濃度による使用感の評価
本実施例においては、様々な濃度の油性成分を含む外用剤の、油性成分濃度の相違に基づく使用感を評価することを目的とした。
【0034】
本実施例においては、以下の表1に示すように、油性成分の濃度を種々にして、保湿成分であるヘパリン類似物質を0.30重量%含む、処方1~処方6までの組成物を作成した。油性成分としては、トリオソクタン酸グリセリン、ミリスチン酸イソプロピル、セトステアリルアルコール、スクワランを使用し、処方1~処方6の油性成分の濃度を、それぞれ0%、2%、5%、10%、12.5%、15%とした。
【0035】
一方、油性成分を低減させることに伴って、本実施例のすべての処方において、増粘剤としてカルボキシビニルポリマーを添加した。
【0036】
本実施例におけるそれぞれの処方では、乳化剤目的としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(20E.O.)(4P.O.)、モノステアリン酸グリセリンを、pH調節剤目的としてジイソプロパノールアミンを、それぞれ使用した。
【0037】
【表1】
【0038】
保湿成分であるヘパリン類似物質は、これらのいずれの処方においても、分離なく製剤化されていた。
【0039】
次に、これらのそれぞれの処方について、6人の被験者に使用感を以下の通り得点付けを行った:
1:べたつきを感じない
2:べたつきをほとんど感じない
3:どちらでもない
4:べたつきをやや感じる
5:べたつきを感じる
【0040】
この結果、それぞれの処方について被験者の点数を平均し、平均値を以下の基準に従って分類し、使用感を評価した(表2):
〇:1≦使用感の平均値<2.5
△:2.5≦使用感の平均値X<4
×:4≦使用感の平均値X≦5
【0041】
【表2】
【0042】
これらの試験の結果、増粘剤濃度を0.50%とした場合に、油性成分の配合量が0~12.5重量%とすることにより、使用感のよい外用剤を提供することができることが示された。
【0043】
実施例2:外用剤中の増粘剤の濃度による使用感の評価
本実施例においては、様々な濃度の増粘剤を含む外用剤の、増粘剤濃度の相違に基づく使用感を評価することを目的とした。
【0044】
本実施例においては、以下の表3に示すように、増粘剤の濃度を種々にして、保湿成分であるヘパリン類似物質を0.30重量%含む、処方7~処方10までの組成物を作成し、実施例1で作製した処方3とともに使用した。増粘剤としては、カルボキシビニルポリマーを使用し、処方7~処方9、処方3、処方10の増粘剤濃度を、それぞれ、1.25%、1.00%、0.75%、0.50%、0.25%とした。
【0045】
【表3】
【0046】
保湿成分であるヘパリン類似物質は、これらのいずれの処方においても、分離なく製剤化されていた。
【0047】
次に、これらのそれぞれの処方について、6人の被験者に使用感を以下の通り得点付けを行った:
1:べたつきを感じない
2:べたつきをほとんど感じない
3:どちらでもない
4:べたつきをやや感じる
5:べたつきを感じる
【0048】
この結果、それぞれの処方について被験者の点数を平均し、平均値を以下の基準に従って分類し、使用感を評価した(表4):
〇:1≦使用感の平均値<2.5
△:2.5≦使用感の平均値X<4
×:4≦使用感の平均値X≦5
【0049】
【表4】
【0050】
これらの試験の結果、油性成分の配合量を5重量%とした場合に、増粘剤濃度を0.25~1.00重量%とすることにより、使用感のよい外用剤を提供することができることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、油性成分の配合量を少なくし、乳化型ゲルの剤形とすることで、べたつきがなく、さっぱりとした使用感を持つことに加えて、剤形自体が持つ保湿力を併せ持つ、外用剤用基剤組成物を提供することができ、これを使用して保湿成分を製剤化することで、べたつきがなく、さっぱりとした使用感を持つとともに、高い保湿性を併せ持つ新規な保湿用外用剤を提供できる。