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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061605
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】呼気計測システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/083 20060101AFI20230425BHJP
   A61B 5/087 20060101ALI20230425BHJP
   G01N 33/497 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
A61B5/083
A61B5/087
G01N33/497 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171621
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】717005224
【氏名又は名称】三原 孝士
(71)【出願人】
【識別番号】519003734
【氏名又は名称】田中 大右
(72)【発明者】
【氏名】三原 孝士
(72)【発明者】
【氏名】田中 大右
【テーマコード(参考)】
2G045
4C038
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045CB22
2G045DA27
2G045DA28
2G045DA74
2G045DB30
2G045FB19
4C038SS04
4C038ST00
4C038ST05
4C038SU04
4C038SU17
4C038SU20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、人体の呼気中のエチルアルコールやアセトン、硫化水素等の成分を検出・計測することで口腔内の健康状態や衛生状態を知りうることを目的とするものであるが、従来はガスセンサに向かって呼気を吹きかける場合に息を吹きかける方向や、量、吹きかける速さ、時間等によって計測結果が大きく変わってしまうという課題があった。
【解決手段】本発明は、安価で軽量なプラスチック材料を用いて本体を構成し、センサも安価で小型なガスセンサと流量センサを用いて構成するもので、呼気導入部にガスセンサの近傍に小型の流量(気体の風速・風量)センサを具備し、その流量センサを用いて、流量センサを通過した呼気の容量(容積)を計測し、ガスセンサに導入される呼気の容量(容積)を推定することで、呼気の量と呼気中の気体成分の両者を計測し正確なデータを得るように工夫された呼気成分の計測システムを提供するものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気中の成分を検出することが可能な検出素子と、空気の風速を検出可能な流量センサを具備し、これらの検出素子を同時に動作させることで、呼気が口内から確実に吐出されていることを確認しながら呼気中の化学成分を検出できるような構成であることを特徴とする呼気計測システム。
【請求項2】
呼気を導入する導入口と、導入された呼気を排気できる排気穴を具備した請求項1の構成
【請求項3】
呼気の流入量は気体の流量センサで計測される流速を時間積分することで得られることを特徴とする請求項1、2の構成
【請求項4】
呼気の流入量は抵抗値500Ω以下の固体、或いは薄膜抵抗をもちいて、当該抵抗に通電した場合の発熱を、当該抵抗が受ける空気の流れによって発生する温度の変化を用いて流速値を計測することを特徴とした請求項1、2、3の構成
【請求項5】
呼気中の特定の化学成分と、センサシステムに導入される呼気排出量は、事前に唇の形を模した直径が7mmから25mmの吐出部を持つ呼気濃度および呼気容積の校正装置を用いてガスセンサのピーク電圧から濃度を求めた校正式に従って校正すること特徴とした請求項1、2、3、4の構成
【請求項6】
検出可能な呼気の成分は、呼気中の硫化水素、ジメチルサルファイド、メチルメルカプタン、アセトン、エチルアルコールであることを、特徴とする請求項1、2、3,4、5の構成


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来は困難であった呼気のセンサへの吹きかけ方による影響がない呼気中濃度が計測できる呼気中のアルコールやアセトン、硫化水素等を計測する呼気計測システムを提案することを目的にしている。
【背景技術】
【0002】
本技術分野においては、呼気中のアルコール濃度を計測するためのアルコールセンサが最も良く普及している。
【0003】
従来のアルコールセンサは、手持ち可能なセンサ容器の先端に取り付けられた、多くは酸化物半導体を用いたガスセンサに息を吹きかけることで、呼気中のアルコールを検出するものであった。
【0004】
この方法では、被験者が自らセンサ部に息を吹きかけるため、息を吹きかける位置や、息の量、息の吹きかける速度と言った不安定要素が極めて多く、再現性の無いものであった。
【0005】
特に自動車・航空機を含む公共交通機関の運転の前に、呼気中のアルコール濃度の検出では、体内の血液に残留する正確なアルコール濃度を検出する必要があるにも関わらず、センサ部に呼気の吹きかけ方によって大きく異なるのは、検出対象者と異なる人物の呼気を不正に利用できる可能性を含んでおり、大きな社会問題である。
【0006】
例えば、センサ部に息が掛からないように、向きを少し変えて息を吹きかけた場合は、呼気中のアルコールが極めて僅かであるとの計測結果が出てしまい、十全なアルコール濃度を検出できず基準値を超える濃度を示す検出対象者を看過すれば、大事故に繋がりかねない。
【0007】
このような背景や課題から、特許文献1に示す公開公報では、呼気を導入する導入管の内部に、圧力センサと電磁バルブ、更にその電磁バルブの後部にガスセンサを具備し、呼気が導入されると当該圧力センサの信号が検出され、その圧力センサによって電磁バルブが開いて、呼気が導入され、ガスセンサによって呼気が計測される構成が開示されている。
【0008】
この公開特許には圧力センサは呼気が導入されて圧力が閾値を超えて上がった場合に電磁バルブを開き、そのオン時間を用いてセンサの連続使用時間を積算して、センサの交換時期を通知する構成としている。
【0009】
他の構成として特許文献2に示す公開公報では、呼気中の二酸化炭素濃度を正確に計測するために差圧センサを具備した装置であって、一旦容量が判ったサンプルバッグに呼気を収集し、二酸化炭素吸着材料を使って吸着し、これによるサンプル気体の圧力の減少を当該差圧センサにて二酸化炭素の濃度を検出するシステムが提案されている。
【0010】
これらの特許文献1,2では圧力センサによって呼気の有無や濃度を計測するシステムが提案されているが、我々は安価で小型に構成できるMEMS(Micro Electric Mechanical System) 式の絶対圧センサを用いて、呼気の排気量を計測したところ、数Pa以下の極めて高い精度の圧力の変化を検出できないと呼気量を計測出来ないこと、ケース内の圧力があがるとガスセンサの精度が落ちると言うことを突き止めた。
【0011】
ここで数Paの精度とは、気象における高気圧や低気圧の気圧差(例えば20hPa)の1/200以下であって、これらの気圧配置による気象条件を問わず計測するには差圧センサを使う必要があるが、その構成やセンサの精度、アナログ回路で構成することは容易ではない。
【0012】
特許文献3に示す公開公報では、呼気を導入するマウスピース、細菌等を防止するフィルター、呼気の導入管の内部に、酸素センサ、二酸化炭素センサ、流量センサ、圧力センサと温度センサを具備した手持ちユニットを構成し、これらのセンサの値を総合処理して呼気中の二酸化酸素の濃度を含む呼気の状態を計測するシステムが提案されている。
【0013】
しかしこの方法では、計測装置が大型となり、かつマウスピースを使って呼気を導入するために衛生的な観点から計測が困難であって、医療機関等でないと実施できない。
【0014】
特許文献4は、アルコールの検出システムとしてマウスピースを備えた据え置き型の装置の中に、被験者のID入力装置、顔写真撮影装置を備えたガス検出装置であって、風量・風速・風圧および二酸化炭素の少なくても一つが一定の基準を越えた時に顔写真を撮影することで確実な呼気の収集を可能にする構成が示されている。
【0015】
しかしこの方法では、風量・風速・風圧を計測する手段が風車型のセンサであるために、計測装置が大型となり、かつ風速がある程度大きくないと検出できないという課題や、風車が回転して乱流がおこりガスセンサの信号がこの乱入によって乱れてしまうと言う課題が容易に考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特願2005-176276 「呼気の評価装置及び方法」
【特許文献2】特願2013-258283 「ガス濃度計測装置及び交換通知方法」
【特許文献3】特願2009-542931 「生理的異常の検出を支援する装置、システムおよび方法」
【特許文献4】特許4063663 「アルコール検出システム」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来のガスセンサを用いた呼気センサシステムはガスセンサを外部に露出させた場合が多く、呼気をガスセンサに吹きかける方式のため、呼気を吹きかける向きや量、吹き付ける速度によって大きく変わっていた。
【0018】
このため、呼気中のアルコールや硫化水素の濃度を正確に計測することはできなかった。
【0019】
呼気中のアルコールや硫化水素を正確に計測するためには、呼気の導入量を正確に計測しなければならないため、特許文献1、2、3、4のようにガスセンサの他に圧力センサや流量センサ、風車センサ等を具備して、呼気の量を計測する必要があるが、特許文献1のような電磁バルブの開閉を判断する圧力センサのみでは呼気の排出量は計測できない。
【0020】
また特許文献2,3、4のようにガスセンサの他に、圧力センサや流量センサ、風車センサ等を具備して呼気の排出量を計測して正確な呼気中のガス濃度を計測する方式では、複雑な構成が必要であった。
【0021】
さらに特許文献4の方法では、風量・風速・風圧を計測する手段が風車型のセンサであるために、計測装置が大型となり、かつ風速がある程度大きくないと検出できないという課題や、風車が回転して乱流がおこりガスセンサの信号がこの乱流によって乱れてしまうと言う課題が容易に考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本技術分野では、手持ちできる小型・軽量な装置にも関わらず、呼気内部のアルコールや硫化水素等の成分を呼気容積中のモル濃度或いは体積濃度として、正確に計測できる手段を提案する。
【0023】
呼気計測で困難であるのは、呼気は肺から排出される二酸化炭素を含む気体が口腔内を通過するときに歯や口腔粘膜表面の呼気成分を抽出するために、呼気が口から出るときの呼気内の成分が時間的、空間的に均一ではない可能性があるため、正確に計測するためには呼気を容積が明確なサンプルバッグに一旦収集し、当該バッグ中で均一化された後に、そのサンプルバッグを濃度計測する必要があった。
【0024】
すなわち呼気を吐く速度や強度に依らず、呼気の絶対量を計測する手段を有することで確実な計測を実現する構成が必要である。
【0025】
ここで呼気の容量Vb(mL)の内部にm(g)のエチルアルコール、或いは硫化水素等が入っている場合の濃度Cb(g/mL)は、(1)式を用いて与えられる(mの単位はgでもuLでも良い)。
【数1】
【0026】
この容積を計測する方法としては、呼気を導入する導入口近傍に流量センサ(ここで気体である場合は風速センサと言っても良い)を配置することで近似的に呼気の容積を推定する。
【0027】
呼気の排出された気体の容積を求めるには排出断面積S(平方cm)とした場合での、そこを流れる気体の流量F(m/s)が計測できれば、その初期時間t0(秒)からt1(秒)までの時間積分を行う2式を用いて呼気容量Vb(mL)を推定する。
【数2】
【0028】
ここで排出断面積が明確に定義されない場合は、式3のように排出断面積S(平方cm)に変えて係数kを用いて、そこを流れる気体の流速F(m/s)を計測し、その初期時間t0(秒)からt1(秒)までの時間積分を行い、呼気容量Vb(mL)を推定する手段を用い、ある容量の空気を一定速度で、流量センサからの距離等を一定にした条件で流量センサに吹き付けて、その容量と流量センサ信号の相関をとって容積校正(キャリブレーション)を行って係数kを求める。
【数3】
【0029】
本発明では、このセンサシステムの機能を達成するために、実施例1である図1に示すようにセンサシステム1はガスセンサ3、呼気導入部2、流量センサ4、電子回路基板17、ケース6で構成され、ガスセンサ3および流量センサ4は呼気導入口8の内部に位置していることを特徴としている。
【0030】
図1に示す構成図のなかで、ケース6の上部に開口された呼気導入口8は呼気を導入できる構成であればどのようなものでもよいが、マウスピースやストロー等を通して被験者の唇に接する必要が無いため、衛生的である。
【0031】
また呼気導入口8は、ケース6の表面に装着されており、その形状は円形であることが望ましく、またガスセンサ3と流量センサ4は可能なかぎり近傍に設置され、さらに流量センサは小型であることが必須であるので抵抗体や抵抗線、或いは薄膜抵抗体を使った熱センサ型であることを特徴としている。
【0032】
第一の実施例では、呼気の導入部2としてケース内に開けられた呼気導入口8に導入された呼気を逃がすために排気口5も装備されている。
【0033】
図2に示す第二の実施例では呼気センサシステム1は、ケース6の表面に呼気導入部2として保護メッシュ7が構成され、その保護メッシュ7の内部にガスセンサ3、 流量センサ4が配置され、ケース6の内部に電子回路基板17が構成されていること特徴としている。
【0034】
第二の実施例では、保護メッシュ7を介してガスセンサや流量センサがケースの外部に出ているため、呼気がセンサのケース6の内部に入ることは無いため、装置の信頼性や衛生面であっても利点が大きく、必要に応じて保護メッシュ7をアルコール等でふき取る程度でよく、メンテナンスが極めて楽である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】この発明の実施例(実施例1)の構成図、呼気センサシステムの構成を示す。
図2】実施例2の構成図(実施例2)、呼気センサシステムの断面を示す。
図3】実施例1のブロックダイアグラム図を示す。
図4】センサシステムの校正(キャリブレーション)手段を示す。
図5】実施例1の構成で計測した呼気を模した空気の導入量と計測された容積の相関を示す。
図6】実施例1の構成で計測した呼気を模した空気の導入時間と計測された容積の相関を示す。
図7】実施例1の構成で計測した硫化水素気体サンプルの校正式の算出結果を示す。
図8】実施例1の構成で吐出穴と呼気導入口の位置を変えた場合の硫化水素濃度と容積の測定結果を示す。
図9】実施例1の構成で吐出穴と呼気導入口の距離を変えた場合の硫化水素濃度と容積の測定結果を示す。
図10】実施例1の構成で測定データである硫化水素濃度や呼気容積をコンピュータで表示する場合の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1が本発明の実施例(実施例1)の構成図であり、呼気センサシステム1はガスセンサ3、呼気導入部2、呼気導入口8、排気穴5,流量センサ4、電子回路基板17、ケース6で構成され、ガスセンサ3および流量センサ4は呼気導入口8の内部に位置していることを特徴としている。
【実施例0037】
図1に示す実施例1は本発明の呼気センサシステム1の基本的な構成であって、被験者は呼気導入口8に3cmから5cm程度の距離を置いて息を吹きかけることで、呼気が呼気導入口8からケース6の内部に導入され、その流れは排気穴5からケース6の外部に排出される。
【0038】
図3は、実施例1のセンサシステム1の計測のためのブロックダイアグラムであり、ガスセンサ3、流量センサ4、初段アンプ11、差動アンプ12、ガスセンサ用オフセット補正電源13、流量センサ用オフセット補正電源14、ADC内臓マイコン15、そしてコンピュータインターフェースモジュール16で構成されている。
【0039】
ここで、ADC内臓マイコン15はADCが外付けでも良いし、またコンピュータインターフェースモジュール16は例えばシリアルインターフェース、USB信号処理モジュール、無線モジュールやイーサネットモジュールでも良い。
【0040】
ここでガスセンサ3はアルコールや硫化水素と言った比較的活性のある分子に感度のある化学センサが必要であって、一般的には亜鉛等の金属の酸化物を400-500℃に加熱して表面の触媒反応を用いたMOS(Metal Oxide Semiconductor)型センサは整合性が良く、更に小型で消費電力を抑えるためにマイクロホットプレートと言うMEMS(Micro Electric Mechanical System)デバイスであることが望ましい。
【0041】
このMOS型センサは被検出気体分子が無い状態でのセンサ抵抗値がオフセット電圧として検出され、このオフセット電圧が周辺の温度や圧力によって変化すると同時に、経時変化もあるためガスセンサ用オフセット補正電源13を用いて導入された被検出気体の濃度に比例した正しいセンサ信号を得るように補正する必要がある。
【0042】
このガスセンサ用オフセット補正電源13は、可変抵抗を用いて発生させても良いし、出力信号の時間的な平均値を常時計測してこれを参照電圧として使っても良く、或いはADCで検出されたデジタル信号をマイコンやホストコンピュータで演算処理しても良い。
【0043】
ここで流量センサ4はタングステンやニクロム線を用いた熱線、小型サーミスタを使った方式、温度特性があまりよくない小型炭素抵抗を用いた方式が考えられるが、安価で構成できることから小型炭素抵抗を用いたものが望ましく、本提案例では50オームから200オームの1/6ワットの小型炭素抵抗を用いたが、電源電圧が高い場合は大きな抵抗が利用できるため、500オーム以下が望ましい。
【0044】
本実施例では、小型炭素抵抗100オームに3V、30mAすなわち90mWの電力を与えて、数℃から数十℃の温度に加熱して定常状態にし、空気の流れがあった場合にこの小型炭素抵抗の表面から熱を奪いとることで、炭素抵抗の平均温度がさがり、これによる抵抗の変化を検出し、これを予め取得したキャリブレーションデータを用いてリアルタイムで計算して、この小型炭素抵抗の周囲の流速を推定するものである。
【0045】
この流量センサ4は無風状態でのセンサ抵抗値がオフセット電圧として検出され、このオフセット電圧が周辺の温度や圧力によって変化すると同時に経時変化もあるため、流量センサ用オフセット補正電源14を用いて流量に比例した正しいセンサ信号を得るように補正する必要がある。
【0046】
この流量センサ用オフセット補正電源14は、可変抵抗を用いて発生させても良いし、出力信号の時間的な平均値を常時計測してこれを参照電圧として使っても良く、或いはADCで検出されたデジタル信号をマイコンやホストコンピュータで演算処理しても良い。
【0047】
図4に第一の実施例の構成のセンサシステムのガス濃度と呼気容積を計測・校正(キャリブレーション)するため構成を示す。
【0048】
この構成は、平台とスタンド支柱で校正される検出ガス評価スタンド9に呼気を吐く時の人間の唇の形状を似せた唇型呼気吐出部10を固定し、唇型呼気吐出部10に500mLの大形シリンジ18をシリコンゴム等で制作された連結チュウブを介してガスを導入し、このシリンジ18に所定の濃度のガスを唇型呼気吐出部10を介して呼気導入部2に送られる。
【0049】
この唇型呼気吐出部10の吐出部の形状は実際の呼気の計測時の息の吹き付け方で変わり、例えば口笛を吹くような唇を細くしてフーと吹く場合は吐出部の直径を7mmから12mm程度にし、また口を開けてハーと吹く場合は吐出部の直径を15mmから25mm程度にして、更に内部に気体流の流れを均一にするような気体拡散板を挿入すると良い。
【0050】
この場合に、実際に呼気計測をする場合の、計測結果に係る変動パラメータとして呼気導入口8、或いは呼気導入部2と唇の距離、呼気を吹き込む時の呼気導入口8或いは呼気導入部2との角度、呼気の容量や呼気を吹き込む時の速度が考えられるが、これらのパラメータはこの図4に示された検出ガス評価スタンド9を用いて自由に変更して実験を行うことが可能である。
【0051】
特に呼気に含まれるガス種の種類(例えばアルコール、硫化水素、ジメチルサルファイド、メチルメルカプタン、更にアセトン等)や容積を変えるにはシリンジに導入するガス種と容積を設定し、呼気の吹き出し速度を変えるにはシリンジのピストンの押し出し速度を変えることで可能になる。
【0052】
実際に呼気センサを使って見ると、呼気を吹き付ける呼気導入口8或いは呼気導入部2から僅かに呼気がずれてしまった場合に、どのように計測結果に影響を及ぼすかが極めて重要であるが、これも本装置を使って唇型呼気吐出部10と呼気導入口8或いは呼気導入部2との相対位置を変えて実験することが可能となる。
【0053】
図5は本装置を使って呼気の容積を計測・校正(キャリブレーション)を行ったデータの一例であり、空気をシリンジに一定量入れて、唇型呼気吐出部10と呼気導入口8或いは呼気導入部2との距離(高さ)を5cmとし、呼気導入口8或いは呼気導入部2の中心に角度は垂直で導入し、導入速度は1秒に100mLとして計測し、その結果をもとに式3の係数kを求めて実施した結果を用いて、再度同様な条件でシリンジの容量と再計測した結果であって、模擬的に呼気の量をシリンジで変えて導入した場合に導入容積と計測容積に良い相関が得られたことを示す。
【0054】
図6には図5と同様の方法の実験において、シリンジのピストンの押し出し速度を変えた場合の計測される容積の量の相関を示し、400mLの空気の場合は約4秒以上の時間で導入した場合に正しい計測が出来、あまり早い速度で呼気を吹きかけると誤差が大きくなってしまうことが判明した。
【0055】
図7は、図4の実験装置を用いて呼気中に含まれる代表的な成分である硫化水素の濃度と計測時の濃度に比例するピーク電圧の相関を示した実験結果であって、縦軸に導入した硫化水素の濃度(ppm)、横軸に計測で得られたピーク電圧をmV単位で示す。
【0056】
この硫化水素は、ガステック社の校正用硫化水素発生キットHSC-10を用い、60ppmの計測範囲のガス検知管を用いて38ppmの硫化水素希薄ガスを2リットルのサンプルバッグに制作し、これを100mLシリンジで取得し、これに空気900mLで希薄して1リットルの3.8ppmの2次の希薄ガスを制作し、これをシリンジに入れた後、必要な濃度に空気を混ぜて調整し、必要な量をシリンジに残して校正ガスにした。
【0057】
図7に示す校正用のデータの横軸をX、縦軸をYとして2次曲線でフィッティングした結果を赤のラインで示し、その時の係数を用いて計測値から濃度を推定する校正処理を行った。
【0058】
図8の上部には唇を絞って口笛を吹くような形で呼気計測を行うことを前提にして、図6に示す計測システムにおいて唇型呼気吐出部10の開口部を10mmにし、その唇型呼気吐出部10と呼気導入口8或いは呼気導入部2との距離(高さ)を5cmに固定して、唇型呼気吐出部10の呼気導入口部8或いは呼気導入部2の相対的な水平方向の位置を横軸にして計測された硫化水素の濃度を縦軸にした計測データを示し、また図8の下部には同様な計測条件において縦軸は呼気の計測容量を示す。
【0059】
図8では、口笛を吹くような形にした状態で呼気を吹き込んだ場合は、唇と呼気導入口8或いは呼気導入部2の位置が僅かに変化した場合に大きく計測濃度が変化していることが判明した。
【0060】
図9の上部には唇を絞って口笛を吹くような形で呼気計測を行うことを前提にして、図6に示す計測システムにおいて唇型呼気吐出部10の開口部を10mmにし、その唇型呼気吐出部10と呼気導入口8或いは呼気導入部2との距離(高さ)を横軸にして計測された硫化水素の濃度を縦軸にした計測データを示し、また図8の下部には同様な計測条件において縦軸は呼気の計測容量を示す。
【0061】
図9で判明したことは、唇と呼気導入口8或いは呼気導入部2との距離が小さいほど高い濃度として観察され、また観察される呼気量には大きな変化が無いことが判明した。
【0062】
以上のように図8図9を比較して考察すると、呼気計測に笛を吹くような唇の形にした状態で呼気を吹き込んだ場合は、唇と呼気導入口8或いは呼気導入部2の位置が僅かに変化することで大きく計測濃度が変化したのに対して、唇と呼気導入口8或いは呼気導入部2の距離(高さ)が近い方が安定にして計測できることから呼気を計測する場合の唇の形は比較的大きく開いて「ハー」と吹きかける方が良い事が判明した。
【0063】
図10には本発明で校正した呼気計測システムのデータ表示の1例であって、測定を開始すると呼気の中の硫化水素の濃度の時間変化の推移、呼気の体積、更にセンサシステムの温度を計測し、そのデータを保存する機能を有している。
【0064】
図2は本発明の実施例(実施例2)の構成図であり、センサシステム1は呼気の導入部2に保護メッシュ7、ガスセンサ3、流量センサ4、電子回路基板17、ケース6で構成され、ガスセンサ3および流量センサ4は保護メッシュ7の内部に位置していることを特徴としている。
【0065】
この実施例2の場合の回路ブロック構成の方法や、呼気の容積、呼気の濃度に対する校正(キャリブレーション)方法は実施例1と全く同じである。

【符号の説明】
【0066】

1 センサシステム
2 呼気導入部
3 ガスセンサ
4 流量センサ
5 排気部
6 ケース
7 保護メッシュ
8 呼気導入口
9 検出ガス評価スタンドおよび固定台
10 唇型ガス吐出部
11 センサ初段アンプ
12 センサオフセット補正差動アンプ
13 ガスセンサオフセット補正基準電源発生回路
14 流量センサオフセット補正基準電源発生回路
15 ADC内蔵マイコン
16 シリアルインファーフェースモジュール
17 電子回路基板
18 検出ガス用シリンジ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10