(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061613
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】パティキュレートフィルタ
(51)【国際特許分類】
B01J 35/04 20060101AFI20230425BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230425BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20230425BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20230425BHJP
B01D 46/00 20220101ALN20230425BHJP
【FI】
B01J35/04 301E
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/022 C
F01N3/035 A
B01D46/00 302
B01D46/00 ZAB
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171637
(22)【出願日】2021-10-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】高▲崎▼ 孝平
(72)【発明者】
【氏名】村脇 啓介
(72)【発明者】
【氏名】池部 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】森島 毅
(72)【発明者】
【氏名】太田 貴也
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 幸司
(72)【発明者】
【氏名】平林 武史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 あけみ
【テーマコード(参考)】
3G190
4D058
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】コート層形成による圧力損失の増大を低減するウォールフロー型のパティキュレートフィルタを提供する。
【解決手段】ここで開示されるパティキュレートフィルタ1は、ウォールフロー型の基材10と、基材10に形成されたコート層20とを備えている。基材10は、排ガス流入側の端部のみが開口した入側セル12と、排ガス流出側の端部のみが開口した出側セル14と、入側セル12と出側セル14とを仕切り、入側セル12と出側セル14とを連通する複数の細孔18が形成されている隔壁16とを備えている。コート層20は、細孔18の壁面18aに設けられており、第1の無機酸化物22と、第2の無機酸化物24とを含む。第1の無機酸化物22の平均粒径は、第2の無機酸化物24の平均粒径よりも大きく、第1の無機酸化物22と第2の無機酸化物24との重量比率の合計100%のうち、第2の無機酸化物24の重量比率が10%以上50%以下である。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排ガス中の粒子状物質を捕集するために用いられるパティキュレートフィルタであって、
ウォールフロー型の基材と、
前記基材に形成されたコート層と
を備えており、
前記基材は、
排ガス流入側の端部のみが開口した入側セルと、
排ガス流出側の端部のみが開口した出側セルと、
前記入側セルと前記出側セルとを仕切り、当該入側セルと当該出側セルとを連通する複数の細孔が形成されている隔壁と
を備え、
前記コート層は、前記細孔の壁面に設けられており、
前記コート層は、第1の無機酸化物と、第2の無機酸化物とを含み、
前記第1の無機酸化物の平均粒径は、前記第2の無機酸化物の平均粒径よりも大きく、
前記第1の無機酸化物と前記第2の無機酸化物との重量比率の合計を100%としたとき、前記第2の無機酸化物の重量比率が10%以上50%以下である、
パティキュレートフィルタ。
【請求項2】
前記第1の無機酸化物が、セリア-ジルコニア複合酸化物であり、前記第2の無機酸化物が、アルミナである、請求項1に記載のパティキュレートフィルタ。
【請求項3】
前記第2の無機酸化物の前記重量比率が20%以上30%以下である、請求項2に記載のパティキュレートフィルタ。
【請求項4】
さらに、前記コート層が、前記排ガス中の少なくとも一種の排ガス成分を酸化若しくは還元し得る触媒として機能する触媒金属を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パティキュレートフィルタに関する。詳しくは、車両の内燃機関から排出される排気ガスに含まれる粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集するために用いられるパティキュレートフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両エンジン等の内燃機関から排出される排ガスには、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有毒な排ガス成分や、粒子状物質(PM:Particulate Matter)等が含まれている。このため、内燃機関の排気系には、PMを捕集可能なパティキュレートフィルタが配置されている。特に、近年では、パティキュレートフィルタに、PM排出抑制機能に加え、排ガス成分を浄化する機能を付与するために、例えば、パティキュレートフィルタに排ガス成分を酸化若しくは還元可能な触媒(例えば、Pt、Pd、Rh等の触媒金属)を含むコート層を設けることが提案されている。
【0003】
このようなパティキュレートフィルタは、例えば、ウォールフロー型の基材と、当該基材に形成された触媒コート層とを備えている。ウォールフロー型の基材は、排ガス流入側の端部のみが開口した入側セルと、排ガス流出側の端部のみが開口した出側セルと、両セルを仕切る多孔質の隔壁とを備えている。また、当該基材の隔壁の表面及び/又は内部には、触媒コート層が形成されている。かかる構造のパティキュレートフィルタに供給された排ガスは、入側セルに流入して隔壁を通過した後に出側セルから排出される。このとき、多孔質の隔壁にPMが捕集されると共に、当該隔壁に形成された触媒コート層によって排ガス成分が浄化される。例えば、特許文献1には、このような構成の一例が開示されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、基材と、該基材上にウォッシュコートとを含む排ガス浄化のための触媒物品が開示されている。このウォッシュコートには、触媒成分と、平均粒径が約10nm~約1000nmの機能性結合剤とが含まれており、上記触媒成分の平均粒径を上記機能性結合剤の10倍超とすることで、多孔質で事実上のクラックを有さないウォッシュコートが実現される、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/060049号
【特許文献2】特表2018-503511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、パティキュレートフィルタに触媒コート層を形成することで、排ガス浄化機能を付与することができるが、その代わりに、触媒コート層によって排ガスの流路が狭くなるため、圧力損失(以下「圧損」ともいう)が増大してしまう。そのため、触媒コート層を形成した場合であっても、圧力損失を低減させる技術が望まれる。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コート層形成による圧力損失の増大を低減し得るウォールフロー型のパティキュレートフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ウォールフロー型の基材の隔壁の細孔における排ガスの流路を広くするために、該細孔の壁面に形成されるコート層の空間率に注目した。ここで、「コート層の空間率」とは、コート層の所定の体積あたりに占める空隙の占有率のことをいい、空間率が低いほどコート層に含まれる構成要素(例えば、種々の無機酸化物)が密に配置されていることを示す。本発明者は、コート層の空間率を下げることで、排ガスが細孔を通過する流路をより広くできると考え、鋭意検討を行った。その結果、平均粒径の異なる無機酸化物を混合し、これらの重量比率を所定の範囲とすることで、コート層形成による圧力損失の増大を低減できることが見出された。
【0009】
即ち、ここで開示されるパティキュレートフィルタは、内燃機関から排出される排ガス中の粒子状物質を捕集するために用いられるパティキュレートフィルタであって、ウォールフロー型の基材と、上記基材に形成されたコート層とを備えている。上記基材は、排ガス流入側の端部のみが開口した入側セルと、排ガス流出側の端部のみが開口した出側セルと、上記入側セルと上記出側セルとを仕切り、当該入側セルと当該出側セルとを連通する複数の細孔が形成されている隔壁とを備えている。上記コート層は、上記細孔の壁面に設けられており、第1の無機酸化物と、第2の無機酸化物とを含む。上記第1の無機酸化物の平均粒径は、上記第2の無機酸化物の平均粒径よりも大きく、上記第1の無機酸化物と上記第2の無機酸化物との重量比率の合計を100%としたとき、上記第2の無機酸化物の重量比率が10%以上50%以下である。
かかる構成によれば、コート層の空間率を低下させることができ、排ガスの流路を広くすることができるため、圧力損失の増大を低減することができる。
【0010】
また、ここで開示されるパティキュレートフィルタの好ましい一態様では、上記第1の無機酸化物が、セリア-ジルコニア複合酸化物であり、上記第2の無機酸化物が、アルミナである。かかる構成によれば、コート層の空間率がより好適に低下し、圧力損失の増大をより低減することができる。
さらに好ましい一態様では、上記第2の無機酸化物の上記重量比率が20%以上30%以下である。かかる構成によれば、圧力損失の増大をより一層低減することができる。
【0011】
また、ここで開示されるパティキュレートフィルタの好ましい一態様では、さらに、上記コート層が、上記排ガス中の少なくとも一種の排ガス成分を酸化若しくは還元し得る触媒として機能する触媒金属を含む。かかる構成によれば、コート層に排ガス浄化機能が付与され、PMの捕集だけでなく排ガス成分の浄化にも寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係るパティキュレートフィルタが配置される排気系の一例の模式図を示す。
【
図2】一実施形態に係るパティキュレートフィルタを模式的に示す斜視図である。
【
図3】一実施形態に係るパティキュレートフィルタの筒軸方向に沿った断面を模式的に示す図である。
【
図4A】一実施形態に係るパティキュレートフィルタの基材の隔壁の断面を模式的に示す拡大図である。
【
図4B】従来のパティキュレートフィルタの基材の隔壁の断面の一例を模式的に示す拡大図である。
【
図5】小粒径重量比率と圧損比との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を適宜参照しつつ、ここで開示されるパティキュレートフィルタの実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術知識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において数値範囲に関してA~Bと記載されている場合、A以上B以下を意味し、Aより大きくBより小さい範囲を包含する。
【0014】
<内燃機関の排気系>
まず、ここで開示されるパティキュレートフィルタを好適に使用できる排気系について説明する。
図1は、パティキュレートフィルタが配置される排気系の一例の模式図を示す。
図1では、内燃機関(エンジン)2の排気系(排気管4)には、排ガス浄化用触媒5と、パティキュレートフィルタ1とが配置されている。
【0015】
内燃機関2には、酸素と燃料ガスを含む混合気が供給される。内燃機関2は、この混合気を燃焼させて力学的エネルギーを発生させる。内燃機関2は、例えば、ガソリンエンジンを主体として構成される。また、内燃機関2は、ガソリンエンジン以外のエンジン(例えばディーゼルエンジン等)であり得る。
【0016】
内燃機関2で混合気の燃焼によって生じた排ガスは、
図1中の矢印で示すように、エキゾーストマニホールド3と排気管4とで構成された排気系に排出される。なお、本明細書では、説明の便宜上、排ガスの流通方向における内燃機関2に近い側を上流といい、内燃機関2から遠い側を下流という。
【0017】
排気管4には、排ガスの成分や温度に関する情報等を検知するセンサ8が取り付けられている。このセンサ8は、エンジンコントロールユニット(ECU:Engine Control Unit)7と接続されている。そして、センサ8が検知した情報は、ECU7に送信され、内燃機関2の運転制御を補正する情報の一つとして利用される。
【0018】
排気管4に排出されたガスは、排ガス浄化用触媒5とパティキュレートフィルタ1を通過し、排気系の外部へと排出される。排ガス浄化用触媒5は、排ガス中の有毒な排ガス成分(NOx、HC、CO)を酸化若しくは還元可能な触媒金属(例えば、Pt、Pd、Rh等)を含むため、排ガス中の排ガス成分を浄化することができる。また、パティキュレートフィルタ1を通過することで、PMが捕集される。さらに、パティキュレートフィルタ1が触媒金属を含む場合には、パティキュレートフィルタ1を通過することにより、排ガス成分を浄化することができる。
【0019】
なお、
図1では、パティキュレートフィルタ1の上流に排ガス浄化用触媒5が配置されているが、パティキュレートフィルタ1の下流に排ガス浄化用触媒5が配置されていてもよい。また、
図1では、排気系に触媒として排ガス浄化用触媒5の1種が配置されているが、触媒が2種以上配置されていてもよい。例えば、排ガス浄化用触媒5の下流側にアンダーフロア触媒等が配置されてもよい。この場合であっても、パティキュレートフィルタ1の配置場所は、特に限定されず、例えば、アンダーフロア触媒の上流側または下流側に配置することができる。
【0020】
<パティキュレートフィルタ>
以下、パティキュレートフィルタ1の一実施形態について詳細に説明する。
図2は、一実施形態に係るパティキュレートフィルタを模式的に示す斜視図である。
図3は、一実施形態に係るパティキュレートフィルタの筒軸方向に沿った断面を模式的に示す図である。
図4Aは、一実施形態に係るパティキュレートフィルタの基材の隔壁の断面を模式的に示す拡大図である。なお、本明細書にて参照する各図における符号Aは「排ガスの流通方向」を示す。また、符号Xは「隔壁の延伸方向」を示し、符号Yは「基材の隔壁の厚み方向」を示す。
【0021】
図2および3に示すように、パティキュレートフィルタ1は、基材10と、コート層20とを備えている。以下、各々について説明する。
【0022】
1.基材
基材10は、パティキュレートフィルタの骨組みを構成する。
図2に示すように、本実施形態では、排ガスの流通方向Aに沿って伸びる円筒形の基材10が用いられている。なお、基材の外形は、円筒形に限定されず、楕円筒形、多角筒形などであってもよい。また、基材10の全長や容量も、特に限定されず、内燃機関2(
図1参照)の性能や排気管4の寸法等に応じて適宜変更することができる。また、基材10には、パティキュレートフィルタの基材に使用され得る従来公知の素材を特に制限なく使用できる。かかる基材10の素材の一例として、コージェライト、炭化ケイ素(SiC)、チタン酸アルミニウムなどのセラミックや、ステンレス鋼などの合金に代表されるような高耐熱性素材が挙げられる。例えば、コージェライトは、熱衝撃に対する耐久性に優れているため、高温の排ガスが供給されやすいガソリンエンジン用のパティキュレートフィルタ(GPF)の基材の素材として特に好適に使用できる。
【0023】
本実施形態における基材10は、ウォールフロー型の基材である。具体的には、
図2お
よび3に示すように、基材10は、排ガス流入側の端部のみが開口した入側セル12と、排ガス流出側の端部のみが開口した出側セル14と、入側セル12と出側セル14とを仕切る多孔質な隔壁16とを備えている。具体的には、入側セル12は、排ガス流入側の端部が開口し、かつ、排ガス流出側の端部が封止部12aで塞がれたガス流路である。一方、出側セル14は、排ガス流入側の端部が封止部14aで塞がれ、かつ、排ガス流出側の端部が開口したガス流路である。また、隔壁16は、排ガスが通過可能な細孔が複数形成された仕切り材である。この隔壁16は、入側セル12と出側セル14とを連通させる細孔18(
図4A参照)を複数有している。なお、本実施形態に係るパティキュレートフィルタ1では、隔壁16の延伸方向Xに垂直な断面における入側セル12(出側セル14)の形状が正方形である(
図2参照)。しかし、延伸方向に垂直な断面における当該入側セル(出側セル)の形状は、正方形に限定されず、種々の形状を採用できる。例えば、平行四辺形、長方形、台形などの矩形状、三角形状、その他の多角形状(例えば、六角形、八角形)、円形など種々の幾何学形状であってもよい。
【0024】
基材10の隔壁16は、PM捕集性能や圧損抑制性能などを考慮して形成されていることが好ましい。例えば、隔壁16の厚みは、100μm~350μm程度が好ましい。さらに、隔壁16の気孔率は、20体積%~70体積%程度が好ましく、50体積%~70体積%がより好ましい。また、隔壁16の通気性を十分に確保して圧損の増大を抑えるという観点から、細孔18の平均細孔径は、8μm以上が好ましく、12μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましい。一方、適切なPM捕集性能を確保するという観点から、細孔18の平均細孔径の上限値は、30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。なお、隔壁16の気孔率および平均細孔径は、水銀圧入法によって測定された値である
【0025】
2.コート層
図3、4Aに示すように、コート層20は、基材10の隔壁16の細孔18の壁面18aに形成されている。本実施形態では、コート層20は、隔壁16の入側セル12と接する表面(入側面16a)から出側セル14と接する表面(出側面16b)に向かう所定の領域に設けられている。
【0026】
コート層20は、第1の無機酸化物22と、第2の無機酸化物24とを含む。コート層20は、第1の無機酸化物22と、第2の無機酸化物24とが集合することで、多孔質に形成されている。
【0027】
また、コート層20は、少なくとも一種の排ガス成分を酸化若しくは還元し得る触媒として機能する触媒金属を含み得る。典型的には、かかる触媒金属は、第1の無機酸化物22及び/又は第2の無機酸化物24に担持される。これにより、コート層20に排ガス浄化性能を付与することができる。触媒金属としては、例えば、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)等の白金族元素に属する金属あるいはその他の酸化若しくは還元触媒として機能する金属が挙げられる。このなかでも、PdおよびPtは、一酸化炭素および炭化水素の浄化性能(酸化浄化能)に優れ、RhはNOxの浄化性能(還元浄化能)に優れるため、これらは三元触媒として特に好ましい触媒金属である。これらに加えて、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)その他のアルカリ土類金属、アルカリ金属、遷移金属等からなる金属を助触媒成分として併用してもよい。触媒金属の電子顕微鏡観察に基づく平均粒子径は、好ましくは0.5nm~50nmであり、より好ましくは1nm~20nmであり得るが特に限定されない。
【0028】
第1の無機酸化物22および第2の無機酸化物24は、触媒金属を担持可能な無機酸化物や、酸素を吸蔵・放出可能な酸素ストレージ能(OSC:oxygen storage capacity)を有する無機酸化物(いわゆるOSC材)等であり得る。触媒金属を担持可能な無機酸化物としては、例えば、アルミナ(Al2O3)、セリア(CeO2)、ジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)等が挙げられる。また、イットリア(Y2O3)等の希土類金属酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物等であり得る。OSC材としては、例えば、セリア-ジルコニア複合酸化物(CZ又はZC複合酸化物)等が挙げられる。OSC材は、排ガス浄化の助触媒として機能し得るため、第1の無機酸化物22と第2の無機酸化物24の少なくとも一方にOSC材が採用されることが好ましい。また、耐熱性向上の観点から、例えばイットリウム(Y)、ランタン(La)、ニオブ(Nb)、プラセオジム(Pr)その他の希土類元素を含む酸化物が微量添加されたセリア、セリア-ジルコニア複合酸化物等のOSC材を好ましく採用することができる。なお、第1の無機酸化物22と第2の無機酸化物24は、典型的には、相互に異なる無機酸化物で構成されるが、同種の無機酸化物で構成されていてもよい。
【0029】
図4Aに示すように、本実施形態では、第1の無機酸化物22と第2の無機酸化物24はそれぞれ粒子状に形成されている。第1の無機酸化物22と第2の無機酸化物24は、典型的には、それぞれ一次粒子が集合して構成された二次粒子であり得る。なお、本明細書において「一次粒子」とは、凝集やシンタリングなどによって集合した二次粒子を構成する微小粒子を指す。
【0030】
第1の無機酸化物22と、第2の無機酸化物24とは異なる平均粒径を有している。第1の無機酸化物22の平均粒径Daは、第2の無機酸化物24の平均粒径Dbよりも大きくなるように設計されている(即ち、Da>Db)。また、第1の無機酸化物22と、第2の無機酸化物24との重量比率の合計を100%としたとき、第2の無機酸化物24の重量比率が10%以上50%以下となるように設計されている。本発明者の検討により、第1の無機酸化物22と第2の無機酸化物24とを上記設計にすることにより、パティキュレートフィルタの圧力損失を低減できることが見出された。以下、従来のパティキュレートフィルタのコート層と比較しながら説明する。
【0031】
図4Bは、従来のパティキュレートフィルタの基材の隔壁の断面の一例を模式的に示す拡大図である。図示されている従来のパティキュレートフィルタ100では、コート層120が基材の隔壁116の細孔118の壁面118aに形成されている。また、コート層120は、隔壁116の入側セル112と接する表面(入側面116a)から出側セル114と接する表面(出側面116b)に向かう所定の領域に設けられている。コート層120は、1種の無機酸化物122を含んでおり、無機酸化物122が集合することで多孔質に形成されている。
【0032】
排ガスが細孔118を通過して入側セル112から出側セル114へ流れるとき、コート層120が形成されている部分は、無機酸化物122が集合しているためスムーズに通過することができない。そのため、コート層120の細孔118の壁面118aからの厚みが厚いと、コート層120を通過する排ガスの比率が高くなり、圧力損失が高くなる。換言すれば、コート層120で囲まれた細孔径の幅が狭くなることで、圧力損失が高くなる。
【0033】
また、
図4Bに示すように、1種の無機酸化物122が集合して形成されるコート層120では、無機酸化物122の間に比較的大きな空隙が生じ易く、コート層120の空間率が高くなる傾向がある。これにより、コート層120の細孔118の壁面118aからの厚みが増すため、排ガスがスムーズに流れることができる細孔径の中心部の幅が狭くなる。そのため、排ガスが入側セル112から出側セル114へ流れづらくなり、圧力損失が高くなる。
【0034】
一方で、ここで開示されるパティキュレートフィルタ1は、コート層20に平均粒径の異なる第1の無機酸化物22と第2の無機酸化物24とが含まれることで、コート層20の空隙が低減され、コート層20の空間率が低くなる。そのため、従来のコート層120と同じコート量のコート層20を形成した場合でも、コート層20の細孔18の壁面18aからの厚みを従来よりも薄くすることができる。これにより、入側セル112から出側セル114へ排ガスが流れやすくなるため、圧力損失を従来よりも低減することができる。また、この圧力損失の低減効果は、本発明者の鋭意検討により、平均粒径がより小さい第2の無機酸化物24の重量比率を10%以上50%以下としたときに顕著に発揮されることが見出された。
【0035】
第1の無機酸化物22と第2の無機酸化物24は、細孔18に侵入可能な平均粒径を有しており、従来パティキュレートフィルタの隔壁の細孔の壁面(隔壁の内部)に形成されるコート層に含まれ得る無機酸化物の平均粒径の範囲であればよい。そのため、特に限定されるものではないが、第1の無機酸化物22と第2の無機酸化物24の平均粒径は、例えば、0.1μm~10μmの範囲、好ましくは0.5μm~5μmの範囲で設定されるとよい。
【0036】
第1の無機酸化物22の平均粒径Daと、第2の無機酸化物24の平均粒径Dbとの比(DaをDbで除した値:Da/Db)は、1<Da/Dbであって、好ましくは1.5≦Da/Db、より好ましくは1.8≦Da/Db(例えば2≦Da/Db)であり得る。これにより、コート層20の空間率をより好適に低減することができる。また、Da/Dbの上限は、特に限定されるものではないが、例えば、Da/Db≦5であって、Da/Db≦3、Da/Db≦2.5であり得る。
【0037】
第1の無機酸化物22の平均粒径Daは、特に限定されるものではないが、例えば、1.5μm~5μmであって、好ましくは1.5μm~3μm、より好ましくは1.5μm~2.5μm(例えば1.7μm~2.3μm)であり得る。
【0038】
第2の無機酸化物24の平均粒径Dbは、特に限定されるものではないが、例えば、0.5μm~1.5μmであって、好ましくは0.7μm~1.3μm、より好ましくは0.8μm~1.2μm(例えば0.9μm~1.1μm)であり得る。
【0039】
なお、本明細書において「平均粒径」とは、レーザ回折・散乱法に基づく粒度分布測定装置により測定される体積基準の粒度分布における積算50%粒径(D50)である。具体的には、平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、LA-920)を用い、屈折率を1.20+0.01i(iは虚数項)に設定して測定した値を採用できる。なお、平均粒径は、二次粒子の粒径を包含して算出されたものである。
【0040】
第1の無機酸化物22と、第2の無機酸化物24との重量比率の合計を100%としたとき、第2の無機酸化物24の重量比率は、好ましくは10%以上50%以下であって、より好ましくは10%以上40%以下、さらに好ましくは20%以上30%以下である。かかる範囲であれば、コート層20の空間率がより適切に制御され、圧力損失を好適に低減することができる。
【0041】
好適な一例では、第1の無機酸化物22がセリア-ジルコニア複合酸化物であり、第2の無機酸化物24がアルミナである。かかる構成であれば、第2の無機酸化物24(アルミナ)の上記重量比率を20%以上30%以下に設計したとき、特に顕著に圧力損失を低減することできる。
【0042】
コート層20の基材10の容量1Lあたりのコート量は、特に限定されるものではないが、例えば、20g/L以上であって、30g/L以上、50g/L以上であり得る。例えば、コート層20に触媒金属が含まれている場合に、上記範囲であれば排ガス浄化性能が向上するため好適である。一方、コート層20の形成量の上限値は、圧力損失を低減させる観点から、200g/L以下が好ましく、150g/L以下がより好ましく、120g/L以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、基材10の容量は、基材10の純容積に加え、入側セル12、出側セル14、隔壁の細孔18等の空隙の容積を含む嵩容積のことをいう。
【0043】
特に限定されるものではないが、基材10の隔壁16の厚み方向Yにおいて、隔壁16の厚みTwを100%としたとき、コート層20が形成される領域(厚みTc)の割合は、例えば10%以上であって、20%以上、30%以上であり得る。これにより、コート層20に含まれ得る触媒金属やOSC材の効果がよりよく発揮される。また、圧力損失の増大を抑制する観点から、コート層20が形成される割合は、例えば、隔壁16の厚みTwの80%以下であるとよく、70%以下、60%以下、50%以下であり得る。
【0044】
また、特に限定されるものではないが、入側セル12の隔壁の延伸方向Xにおける全長を100%としたとき、コート層20が形成される領域(長さ)の割合は、例えば、10%以上であって、30%以上、50%以上、70%以上、90%以上(例えば100%)であり得る。本技術によれば、コート層20が形成される領域が広い場合であっても、圧力損失の増大を低減することができる。なお、典型的には、コート層20は基材10の排ガス流入側の端部から排ガス流出側の端部に向かって形成される。この場合には、上記コート層20が形成される領域(長さ)の割合は、排ガス流入側の端部からの長さの割合のことをいう。
【0045】
<パティキュレートフィルタの製造方法>
以下、本実施形態に係るパティキュレートフィルタ1の製造方法の一例について説明する。なお、パティキュレートフィルタ1の製造方法は、以下の製造方法に限定されるものではない。
【0046】
(1)スラリーの調製
まず、上述したコート層20の材料を所定の分散媒に分散させることによってスラリーを調製する。分散媒には、この種のスラリーの調製に用いられ得る分散媒を特に制限なく使用できる。例えば、分散媒は、極性溶媒(例えば、水)であってもよいし、非極性溶媒(例えば、メタノール等)であってもよい。また、スラリーには、上述したコート層20の材料と分散媒の他に、粘度調整用の有機成分が含まれていてもよい。かかる粘度調整用の有機成分としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)等のセルロース系ポリマーが挙げられる。なお、粘度調整用の有機成分の添加量や種類によりスラリーの粘度を調整することにより、コート層20が形成される領域の調節を容易に行うことができる。
【0047】
第1の無機酸化物22と第2の無機酸化物24は、例えば、上記分散媒中で従来公知方法に従ってミリング加工することで、所望の平均粒径に調整することができる。かかる加工は、第1の無機酸化物22を含むスラリーと、第2の無機酸化物24を含むスラリーとを準備し、個別に実施することが好ましい。その後、第1の無機酸化物22と第2の無機酸化物24とを所望の質量比となるように、これらのスラリーを混合することができる。なお、所望の平均粒径に調整することができれば、第1の無機酸化物22と第2の無機酸化物24とを同じスラリーに混合した状態でミリング加工を行ってもよい。なお、ミリング加工としては、例えば、ビーズミル、ボールミル等による加工が挙げられる。
【0048】
(2)スラリーの導入
次に、上記準備したスラリーを隔壁16の細孔18内に導入することによってコート層20を形成する。なお、スラリーを細孔18内に導入する手段は、特に限定されず、従来から公知の手段を特に制限なく使用することができる。かかるスラリー導入手段の一例として、エアブロー法や吸引コート法などが挙げられる。エアブロー法では、基材10の端部をスラリーに浸漬させて入側セル12の内部にスラリーを浸透させた後に、基材10を取り出してエアブローを実施することによって、スラリーを細孔18内に導入する。一方、吸引コート法では、基材10の排ガス流入側の端部をスラリーに浸漬させた状態で、排ガス排出側の端部から吸引することによってスラリーを細孔18内に導入する。吸引コート法では、吸引力を調節することで、スラリーがコートされる領域を調整することができる。
【0049】
その後、所定の温度および時間で焼成することにより、基材10の隔壁16の細孔18の壁面18aにコート層20を形成することができる。コートされたスラリーの焼成条件は、基材または無機酸化物の形状およびサイズによって変動するため特に限定しないが、典型的には400~1000℃程度で約1~5時間程度の焼成を行うことによって、目的のコート層20を形成することができる。
【0050】
以上、ここに開示されるパティキュレートフィルタの実施形態について説明した。なお、ここに開示さるパティキュレートフィルタは、上述の実施形態に限定されない。例えば、上述した
図3に示す実施形態では、コート層20は、隔壁16の入側セル12と接する表面(入側面16a)から出側セル14に向かう所定の領域に形成されているが、コート層20は、隔壁16の出側セル14と接する表面(出側面16b)から入側セル12に向かう所定の領域に形成されてもよい。この場合、コート層形成用のスラリーを入側セル12側から導入する代わりに、出側セル14側から導入すればよいため、上述の実施形態におけるコート層20の形成領域に関する説明を出側セル14側に読み替えることで理解される。また、コート層20は、隔壁16の入側面16aおよび出側面16bの両側から形成されてもよい。
【0051】
また、
図3に示す実施形態では、パティキュレートフィルタ1は、コート層20以外のコート層を有していないが、例えば、隔壁16の表面に形成されるコート層(例えば、触媒金属を含む触媒層)を有していてもよい。
【0052】
ここで開示されるパティキュレートフィルタは、ガソリンパティキュレートフィルタ(GPF)、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)等として使用することができ、特に、GPFとしての使用が好ましい。
【0053】
以下、ここで開示される技術に関するいくつかの実施例について説明するが、ここで開示される技術をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0054】
[試験1]
<サンプル1>
まず、基材として、基材容積1.314L、長さ122mmのウォールフロー型の円筒状のハニカム基材(コージェライト製、セル数300cpsi、隔壁厚み8ミル(1ミルは1/1000インチ)、平均細孔径15μm、気孔率60%)を準備した。
次に、コート層形成用スラリーに混合する無機酸化物として、セリア-ジルコニア複合酸化物(ZC材)とアルミナの2種類を準備した。ZC材は、純水中でミリングすることで、平均粒径1μmのZC材を含むZC材含有スラリーを準備した。また、アルミナも同様に、純水中でミリングすることで、平均粒径1μmのアルミナを含むアルミナ含有スラリーを準備した。そして、ZC材:アルミナ=80%:20%の重量比率となるようにZC材含有スラリーとアルミナ含有スラリーとを混合し、コート層形成用スラリーを作製した。
次いで、上記準備した基材に上記作製したコート層形成用スラリーを入側セルから流し込み、ブロアーで不要部分を吹き払った。これにより、隔壁の細孔の壁面にコート層形成用スラリーをコーティングした。
次に、この基材を120℃の乾燥機で2時間乾燥させ、水分を除去した。そして、電気炉で500℃、2時間焼成することで、サンプル1のパティキュレートフィルタを製造した。なお、サンプル1において、基材容積1LあたりのZC材のコート量が80g/L、アルミナのコート量が20g/Lであった。
【0055】
<サンプル2>
アルミナの平均粒径を2μmに変更した以外はサンプル1と同様にして、サンプル2のパティキュレートフィルタを製造した。
【0056】
<サンプル3>
ZC材の平均粒径を2μmに変更した以外はサンプル1と同様にして、サンプル1のパティキュレートフィルタを製造した。
【0057】
[圧力損失の評価]
各サンプルのパティキュレートフィルタの入側セル側に、20℃の空気を7m3/分の流量で流入させ、出側セル側から排出させた。このときのパティキュレートフィルタの上流側における空気の圧力と、下流側における空気の圧力とを圧損測定装置(ツクバリカセイキ株式会社製)を用いて測定し、圧力損失(kPa)を算出した。表1に、サンプル1のパティキュレートフィルタの圧力損失を100としたときの相対値(圧損比)を示す。
【0058】
【0059】
表1に示すように、サンプル3では、サンプル1および2よりも圧損比が低くなった。サンプル1~3のコート量およびZC材とアルミナの重量比は一定であるため、この圧損比の差は、ZC材とアルミナの平均粒径の違いによって生じたものであると考えられる。
【0060】
[試験2]
次に、大粒径の無機酸化物(ZC材)小粒径の無機酸化物(アルミナ)の重量比率を変化させたときの圧力損失の変化について検討した。
【0061】
<サンプル4>
基材容積1LあたりのZC材のコート量が50g/L、アルミナのコート量が50g/Lとなるように変更した以外はサンプル3と同様にして、サンプル4のパティキュレートフィルタを製造した。即ち、ZC材:アルミナ=50%:50%の重量比率となるようにした。
<サンプル5>
基材容積1LあたりのZC材のコート量が30g/L、アルミナのコート量が70g/Lとなるように変更した以外はサンプル3と同様にして、サンプル5のパティキュレートフィルタを製造した。即ち、ZC材:アルミナ=30%:70%の重量比率となるようにした。
<サンプル6>
基材容積1LあたりのZC材のコート量が90g/L、アルミナのコート量が10g/Lとなるように変更した以外はサンプル3と同様にして、サンプル6のパティキュレートフィルタを製造した。即ち、ZC材:アルミナ=90%:10%の重量比率となるようにした。
<サンプル7>
基材容積1LあたりのZC材のコート量が60g/L、アルミナのコート量が40g/Lとなるように変更した以外はサンプル3と同様にして、サンプル7のパティキュレートフィルタを製造した。即ち、ZC材:アルミナ=60%:40%の重量比率となるようにした。
【0062】
サンプル4~7についても、試験1と同様にして圧力損失を評価した。結果を表2および
図5に示す。なお、圧損比は試験1と同様に、サンプル1を100としたときの相対値で示す。
【0063】
【0064】
表2および
図5から明らかなように、小粒径であるアルミナの重量比率が10%~50%であるとき、圧損比が93以下となり、圧損比が低下することがわかる。また、アルミナの重量比率が10%~40%であるとき、より圧損比が低下することができる。さらに、アルミナの重量比率が20%~30%であるとき、特に圧損比が低下することがわかる。
【0065】
以上、ここで開示される技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記具体例では、触媒金属を担持していない無機酸化物を用いたが、触媒金属を担持した無機酸化物を使用した場合であっても圧損比が低減されることは、ここで開示される技術情報から理解される。また、上記具体例では、入側セル側の隔壁の細孔の壁面にコート層を形成したが、出側セル側の隔壁の細孔の壁面にコート層を形成した場合であっても低減されることは、ここで開示される技術情報から理解される。
【符号の説明】
【0066】
1 パティキュレートフィルタ
2 内燃機関
3 エキゾーストマニホールド
4 排気管
5 排ガス浄化用触媒
7 ECU
8 センサ
10 基材
12 入側セル
12a 封止部
14 出側セル
14a 封止部
16 隔壁
16a 入側面
16b 出側面
18 細孔
18a 壁面
20 コート層
22 第1の無機酸化物
24 第2の無機酸化物
【手続補正書】
【提出日】2023-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排ガス中の粒子状物質を捕集するために用いられるパティキュレートフィルタであって、
ウォールフロー型の基材と、
前記基材に形成されたコート層と
を備えており、
前記基材は、
排ガス流入側の端部のみが開口した入側セルと、
排ガス流出側の端部のみが開口した出側セルと、
前記入側セルと前記出側セルとを仕切り、当該入側セルと当該出側セルとを連通する複数の細孔が形成されている隔壁と
を備え、
前記コート層は、前記細孔の壁面に設けられており、
前記コート層は、第1の無機酸化物と、第2の無機酸化物とを含み、
前記第1の無機酸化物がセリア-ジルコニア複合酸化物であり、
前記第2の無機酸化物がアルミナであり、
前記第1の無機酸化物の平均粒径は、前記第2の無機酸化物の平均粒径よりも大きく、
前記第1の無機酸化物と前記第2の無機酸化物との重量比率の合計を100%としたとき、前記第2の無機酸化物の重量比率が10%以上50%以下である、
パティキュレートフィルタ。
【請求項2】
前記第2の無機酸化物の前記重量比率が20%以上30%以下である、請求項1に記載のパティキュレートフィルタ。
【請求項3】
さらに、前記コート層が、前記排ガス中の少なくとも一種の排ガス成分を酸化若しくは還元し得る触媒として機能する触媒金属を含む、請求項1または2に記載のパティキュレートフィルタ。