(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006164
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】流路チップ、分離システム、及び、分離方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/22 20060101AFI20230111BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20230111BHJP
C12M 1/42 20060101ALI20230111BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230111BHJP
G01N 15/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G01N27/22 B
C12Q1/04
C12M1/42
C12M1/34 Z
G01N15/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108619
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】515279762
【氏名又は名称】株式会社AFIテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100199314
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】高野 雅代
(72)【発明者】
【氏名】糸井 隆行
(72)【発明者】
【氏名】大代 京一
【テーマコード(参考)】
2G060
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G060AA07
2G060AA15
2G060AD06
2G060AF03
2G060AF11
2G060AG10
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2G060FA01
2G060FA14
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2G060HC10
4B029AA07
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4B063QA01
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4B063QQ03
4B063QQ08
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4B063QX01
(57)【要約】
【課題】懸濁液からの対象誘電体粒子の分離の精度を向上できる流路チップ、分離システム、及び、制御方法を提供する。
【解決手段】流路チップ10は、特定種類の誘電体粒子P1を含む複数種類の誘電体粒子P1,P2を含む懸濁液L1が導入される入口21と入口21から導入された懸濁液L1の複数種類の誘電体粒子P1,P2が流れる流路30とを有する基体10aと、複数種類の誘電体粒子P1,P2のうち特定種類の誘電体粒子P1を流路30の幅方向W1の第1端311側に導く第1電極50と、入口21と第1電極50との間にあって複数種類の誘電体粒子P1,P2を流路30の幅方向W1の第2端312側に導く第2電極60とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定種類の誘電体粒子を含む複数種類の誘電体粒子を含む懸濁液が導入される入口と前記入口から導入された前記懸濁液の複数種類の誘電体粒子が流れる流路とを有する基体と、
前記複数種類の誘電体粒子のうち前記特定種類の誘電体粒子を前記流路の幅方向の第1端側に導く第1電極と、
前記入口と前記第1電極との間にあって前記複数種類の誘電体粒子を前記流路の幅方向の第2端側に導く第2電極と、
を備える、
流路チップ。
【請求項2】
前記第1電極及び前記第2電極の各々は、前記流路の一面にある、
請求項1に記載の流路チップ。
【請求項3】
前記第1電極は、第1所定方向に沿って並ぶ複数の歯部を有するくし形電極であり、
前記第2電極は、第2所定方向に沿って並ぶ複数の歯部を有するくし形電極であり、
前記第1所定方向と前記第2所定方向とは、前記流路の幅方向において互いに反対側に向かう方向である、
請求項1又は2に記載の流路チップ。
【請求項4】
前記第1所定方向は、前記流路において前記懸濁液が流れる方向に沿って前記流路の幅方向の第2端から第1端に向かう方向であり、
前記第2所定方向は、前記流路において前記懸濁液が流れる方向に沿って前記流路の幅方向の第1端から第2端に向かう方向である、
請求項3に記載の流路チップ。
【請求項5】
前記第2電極の複数の歯部は、
前記流路の幅方向の第1端から第2端に向かって延びる第1歯部と、
前記流路の幅方向の第2端から第1端に向かって延びる第2歯部と、
を含み、
前記第1歯部の先端及び前記第2歯部の先端は、前記流路の外部にある、
請求項2~4のいずれか一つに記載の流路チップ。
【請求項6】
前記第2電極の複数の歯部は、
前記流路の幅方向の第1端から第2端に向かって延びる第1歯部と、
前記流路の幅方向の第2端から第1端に向かって延びる第2歯部と、
を含み、
前記第1歯部の先端は、前記流路の幅方向の第2端と所定の距離を隔てて前記流路の内部にあり、
前記第2歯部の先端は、前記流路の外部にある、
請求項2~4のいずれか一つに記載の流路チップ。
【請求項7】
前記流路は、
主流路と、
前記主流路と前記入口との間の連結流路と、
を含み、
前記第1電極は、前記主流路にあり、
前記第2電極は、前記連結流路にあり、
前記連結流路の幅は、前記主流路の幅より狭い、
請求項1~6のいずれか一つに記載の流路チップ。
【請求項8】
前記基体は、
前記流路の幅方向の第1端側に接続される第1収集部と、
前記流路の幅方向の第2端側に接続される第2収集部と、
を有する、
請求項1~7のいずれか一つに記載の流路チップ。
【請求項9】
前記流路は、前記入口と前記第2電極との間において前記流路の幅方向の第2端側に接続され前記懸濁液から前記複数種類の誘電体粒子よりサイズが小さい粒子を除去するフィルタを備える、
請求項1~8のいずれか一つに記載の流路チップ。
【請求項10】
前記第1電極に第1所定電圧を印加するための第1電極パッドと、
前記第1電極パッドとは別に設けられて前記第2電極に前記第1所定電圧とは異なる第2所定電圧を印加するための第2電極パッドと、
を備える、
請求項1~9のいずれか一つに記載の流路チップ。
【請求項11】
前記第2所定電圧は、時間により振幅と周波数との少なくとも一つが変化するように設定される、
請求項10に記載の流路チップ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一つに記載の流路チップと、
前記懸濁液に含まれる前記特定種類の誘電体粒子を含む前記複数種類の誘電体粒子を前記流路の幅方向の第2端側に導くように前記第2電極の電圧を制御し、かつ、前記複数種類の誘電体粒子のうち前記特定種類の誘電体粒子を前記流路の幅方向の第1端側に導くように前記第1電極の電圧を制御する電圧制御装置と、
を備える、
分離システム。
【請求項13】
前記流路チップは使い捨て可能である、
請求項12に記載の分離システム。
【請求項14】
請求項1~請求項11のいずれか一つに記載の流路チップを用いる分離方法であって、
前記懸濁液に含まれる前記特定種類の誘電体粒子を含む前記複数種類の誘電体粒子を前記流路の幅方向の第2端側に導くように前記第2電極の電圧を制御し、
前記複数種類の誘電体粒子のうち前記特定種類の誘電体粒子を前記流路の幅方向の第1端側に導くように前記第1電極の電圧を制御する、
分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流路チップ、分離システム、及び、分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体デバイスのようなマイクロ空間内の粒子制御技術として、誘電泳動が活用されている。バイオ分野では主に細胞や微生物を対象として特性解析や分離濃縮について様々な研究開発が行われている。形態はさまざまであるが例えば特許文献1が挙げられる。
【0003】
特許文献1に開示される分離装置は、血中循環癌細胞(特定種類の誘電体粒子)を含む試料液(懸濁液)が所定方向(液流方向)に流れる流路と、置換部と、解析部と、分離部とを備える。分離部は、一対の電極と、電源部と、収集部とを備える。電源部は、交流電圧を発生して、一対の電極間に供給する。これにより、正の誘電泳動力(引力)が癌細胞に作用し、癌細胞は一対の電極に引きつけられながら一対の電極の延在方向に沿って流路を流れ、収集部に収集される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、懸濁液からの特定種類の誘電体粒子の分離の精度を向上できる流路チップ、分離システム、及び制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の流路チップは、特定種類の誘電体粒子を含む複数種類の誘電体粒子を含む懸濁液が導入される入口と前記入口から導入された前記懸濁液の複数種類の誘電体粒子が流れる流路とを有する基体と、前記複数種類の誘電体粒子のうち前記特定種類の誘電体粒子を前記流路の幅方向の第1端側に導く第1電極と、前記入口と前記第1電極との間にあって前記複数種類の誘電体粒子を前記流路の幅方向の第2端側に導く第2電極とを備える。
【0007】
本開示の一態様の分離システムは、上記の流路チップと、前記懸濁液に含まれる前記特定種類の誘電体粒子を含む前記複数種類の誘電体粒子を前記流路の幅方向の第2端側に導くように前記第2電極の電圧を制御し、かつ、前記複数種類の誘電体粒子のうち前記特定種類の誘電体粒子を前記流路の幅方向の第1端側に導くように前記第1電極の電圧を制御する電圧制御装置とを備える。
【0008】
本開示の一態様の分離方法は、上記の流路チップを用いる分離方法であって、前記懸濁液に含まれる前記特定種類の誘電体粒子を含む前記複数種類の誘電体粒子を前記流路の幅方向の第2端側に導くように前記第2電極の電圧を制御し、前記複数種類の誘電体粒子のうち前記特定種類の誘電体粒子を前記流路の幅方向の第1端側に導くように前記第1電極の電圧を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の態様によれば、懸濁液からの特定種類の誘電体粒子の分離の精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1の流路チップを備える分離システムの構成例のブロック図
【
図3】
図2の流路チップの第2電極の周辺の部位の拡大図
【
図4】(a)~(c)は第2電極に誘電体粒子が引き付けられる様子を示す流路チップの断面図
【
図5】第2電極に印加される電圧の振幅が時間で変化する場合の誘電体粒子の移動の様子を示す流路チップの部分平面図
【
図6】
図1の分離システムでの分離率の時間変化を示すグラフ
【
図7】実施の形態2の流路チップの構成例における第2電極の周辺の部位の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.実施の形態]
[1.1 実施の形態1]
[1.1.1 概要]
図1は、実施の形態1の分離システム1の構成例のブロック図である。
図1の分離システム1は、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離を可能とする。懸濁液L1は、特定種類の誘電体粒子P1を含む複数種類の誘電体粒子を含む。
図1の分離システム1は、誘電泳動の原理を利用して、懸濁液L1に含まれる複数種類の誘電体粒子から特定種類の誘電体粒子P1を分離する。本実施の形態では、懸濁液L1は、血液である。複数種類の誘電体粒子は、例えば、血液に含まれる細胞である。血液に含まれる細胞の例としては、がん細胞及び白血球が挙げられる。本実施の形態では、説明を容易にするために、懸濁液L1は、2種類の誘電体粒子P1,P2を含むとする。特定種類の誘電体粒子P1はがん細胞、特に、血中循環癌細胞(CTC)である。誘電体粒子P2は、白血球である。
図1の分離システム1は、血液(懸濁液L1)から血中循環癌細胞(特定種類の誘電体粒子P1)を分離するために利用される。
【0012】
図1の分離システム1は、懸濁液L1を流す流路チップ10を備える。
図1の流路チップ10は、基体10aと、第1電極50と、第2電極60とを備える。基体10aは、特定種類の誘電体粒子P1を含む複数種類の誘電体粒子P1,P2を含む懸濁液L1が導入される入口21と、入口21から導入された懸濁液L1の複数種類の誘電体粒子P1,P2が流れる流路30とを有する。第1電極50は、複数種類の誘電体粒子P1,P2のうち特定種類の誘電体粒子P1を流路30の幅方向W1の第1端311側に導く。第2電極60は、入口21と第1電極50との間にあって複数種類の誘電体粒子P1,P2を流路30の幅方向W1の第2端312側に導く。
【0013】
図1の流路チップ10では、入口21と第1電極50との間に第2電極60が配置されている。第2電極60は、複数種類の誘電体粒子P1,P2を流路30の幅方向W1の第2端312側に導くことができる。つまり、第1電極50により複数種類の誘電体粒子P1,P2のうち特定種類の誘電体粒子P1を流路30の幅方向W1の第1端311側に導く前に、第2電極60により複数種類の誘電体粒子P1,P2を流路30の幅方向W1の第2端312側に位置させることが可能である。これによって、複数種類の誘電体粒子P1,P2のうちの特定種類の誘電体粒子P1以外の誘電体粒子P2が流路30の幅方向W1の第1端311側に存在する確率を減らすことができる。したがって、流路チップ10によれば、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離の精度を向上できる。
【0014】
[1.1.2 詳細]
以下、実施の形態1の流路チップ10及び分離システム1について更に説明する。
図1に示すように、分離システム1は、流路チップ10と、電圧制御装置11と、解析装置12とを備える。
【0015】
[1.1.2.1 流路チップ]
流路チップ10は、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離のためのマイクロ流路を構成する。分離システム1においては、懸濁液L1は、流路チップ10に流され、流路チップ10内において懸濁液L1から特定種類の誘電体粒子P1が分離される。分離システム1では、流路チップ10は、コンタミネーションの防止の観点から、使い捨て可能に構成される。
【0016】
図2は、流路チップ10の概略平面図である。
図2の流路チップ10は、基体10aと、第1電極50と、第2電極60と、第1電極パッド71,72と、第2電極パッド81,82とを備える。
【0017】
基体10aは、入口21,22と、流路30と、複数の収集部40-1,40-2(以下、総称して符号40を付す)とを有する。基体10aは、流路チップ10の外形を規定する部分である。本実施の形態では、基体10aは、矩形の板状である。基体10aは、例えば、ガラス又はシリコーン(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS))製の基板等を用いて形成される。一例として、基体10aは、第1電極50と第2電極60と第1電極パッド71,72と第2電極パッド81,82とが表面に形成された第1基板(例えば、ガラス基板)に、入口21と入口22と流路30と複数の収集部40-1,40-2とにそれぞれ対応する空間が表面に形成された第2基板(例えば、PDMS基板)を張り付けて構成されてよい。
【0018】
入口21は、
図1に示すように、基体10aにおいて懸濁液L1が導入される部分である。入口21は、例えば、懸濁液L1の供給源にチューブにより接続され、チューブを介して懸濁液L1が供給される。入口22は、
図1に示すように、基体10aにおいて置換液L2が導入される部分である。置換液L2は、例えば、懸濁液L1から不要成分を除去して、懸濁液L1の複数種類の誘電体粒子P1,P2を搬送するために用いられる。不要成分は、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離において不要な成分である。不要成分としては、血液に含まれる赤血球等の小型細胞P3及び溶液が挙げられる。置換液L2は、複数種類の誘電体粒子P1,P2の搬送が可能で、複数種類の誘電体粒子P1,P2への誘電泳動力を作用させることを阻害しないように選択されてよい。特に、置換液L2は特定種類の誘電体粒子P1の分離を容易にするために、懸濁液L1の溶液よりも導電率が低い液体が利用される。ただし、懸濁液L1の溶液の導電率が低い場合はその限りではない。
【0019】
流路30は、基体10aにおいて入口21から導入された懸濁液L1の複数種類の誘電体粒子P1,P2が流れる部分である。
図2に示すように、流路30は、主流路31と、連結流路32と、複数(図示例では2つ)の分岐流路33-1,33-2(以下、総称して符号33を付す)と、接続路34、35と、フィルタ90とを含む。本実施の形態では、流路30における基体10aの第1基板側の面を底面とし、流路30における基体10aの第2基板側の面を上面とする。
【0020】
主流路31は、流路30の主体を構成する。主流路31は、流路30において特定種類の誘電体粒子P1の分離をするための部分である。本実施の形態では、主流路31は、平面視において(基体10aの厚み方向から見て)矩形状である。主流路31は、主流路31の長さ方向に直交する面での断面形状は矩形状である。主流路31の幅方向は、流路30の幅方向W1に対応する。主流路31の幅方向W1の第1端311及び第2端312は、流路30の幅方向W1の第1端及び第2端に対応する。
図2に示すように、主流路31には、第1電極50が配置される。この点については後に詳しく説明する。
【0021】
連結流路32は、流路30において主流路31と入口21との間の部分である。したがって、連結流路32は、主流路31に対して上流側(
図2における左側)に位置する。本実施の形態では、連結流路32は、平面視において(基体10aの厚み方向から見て)矩形状である。連結流路32は、連結流路32の長さ方向に直交する面での断面形状は矩形状である。連結流路32の長さ方向の第1端が入口21に接続され、連結流路32の長さ方向の第2端が主流路31に接続される。連結流路32の幅方向は、流路30の幅方向W1に対応する。連結流路32の幅方向W1の第1端321及び第2端322は、流路30の幅方向W1の第1端及び第2端に対応する。本実施の形態では、連結流路32の幅は、主流路の幅より狭い。
図2に示すように、連結流路32には、第2電極60が配置される。この点については後に詳しく説明する。
【0022】
複数の分岐流路33-1,33-2は、流路30において、主流路31で互いに分離された誘電体粒子P1,P2同士が再び混ざらないように誘電体粒子P1,P2を搬送する部分である。複数の分岐流路33-1,33-2は、主流路31において連結流路32とは反対側にある。したがって、各分岐流路33は、主流路31に対して下流側(
図2における右側)に位置する。分岐流路33-1は、主流路31の幅方向W1の第1端311側に接続される。
図1に示すように、分岐流路33-1は、主流路31で分離された特定種類の誘電体粒子P1が流れる部分である。分岐流路33-2は、主流路31の幅方向W1の第2端312側に接続される。
図2に示すように、分岐流路33-1は、複数種類の誘電体粒子P1,P2から特定種類の誘電体粒子P1が分離された残りの誘電体粒子P2が流れる部分である。
【0023】
接続路34は、流路30において入口21と連結流路32とを接続する部分である。接続路34は、連結流路32の長さ方向の第1端と入口21との間に位置する。接続路35は、流路30において入口22と連結流路32とを接続する部分である。接続路35は、連結流路32の長さ方向の第1端側において連結流路32の幅方向W1の第1端321と入口22との間に位置する。
【0024】
フィルタ90は、流路30において入口21と第2電極60との間にある。フィルタ90は、流路30の幅方向W1の第2端側に接続される。フィルタ90は、懸濁液L1から複数種類の誘電体粒子P1,P2よりサイズが小さい粒子を除去する。フィルタ90は、サイズにより粒子の分離を行う。複数種類の誘電体粒子P1,P2よりサイズが小さい粒子は、複数種類の誘電体粒子P1,P2のうち最もサイズが小さい誘電体粒子よりサイズが小さい粒子である。本実施の形態では、複数種類の誘電体粒子P1,P2よりサイズが小さい粒子は、懸濁液L1の上述の不要成分である赤血球等の小型細胞P3である。
図2のフィルタ90は、水力学的濾過法(hydrodynamic filtration;HDF)の原理により、懸濁液L1から複数種類の誘電体粒子P1,P2を分離する。具体的には、
図2のフィルタ90は、収集部91と、複数の排出路92と、連結路93とを備える。複数の排出路92の寸法(長さ、幅、及び高さ)は、複数の排出路92が接続される連結流路32の寸法より小さいが、複数種類の誘電体粒子P1,P2よりサイズが小さい粒子を通すように設定される。複数の排出路92の長さ方向の第1端は、連結流路32の長さ方向の第1端側において連結流路32の幅方向W1の第2端322に接続される。複数の排出路92は、流路30において接続路35より下流側にある。これによって、入口21及び接続路34を経由して連結流路32に入った懸濁液L1の不要成分が、入口22及び接続路35を経由して連結流路32に入った置換液L2により複数の排出路92に押し出される。複数種類の誘電体粒子P1,P2は、複数の排出路92に押し出されることなく、連結流路32の幅方向W1の第2端322側に偏った状態で、連結流路32内を流れる。フィルタ90によれば、複数種類の誘電体粒子P1,P2を、流路30の幅方向W1の第2端側に導くことができる。このように、フィルタ90によっても、複数種類の誘電体粒子P1,P2の流路30の幅方向W1の第2端側への配向は実現されるが、流路30の形状によっては(特に流路30の幅が広くなる場合には)、複数種類の誘電体粒子P1,P2が流路30内を進行するにつれて、複数種類の誘電体粒子P1,P2が分散する傾向を示す。そのため、フィルタ90だけでは、複数種類の誘電体粒子P1,P2を流路30の幅方向W1の第2端側に安定的に位置させることは難しい。連結路93は、複数の排出路92の長さ方向の第2端を収集部91に接続する。これによって、懸濁液L1から除去された不要成分が収集部91に搬送される。収集部91は、例えば、排出口を備え、これによって、懸濁液L1から除去された不要成分を含む溶液S3が流路チップ10から外部に排出される。フィルタ90では、主に排出路92の寸法(長さ、幅、及び高さ)を変えることで所望のサイズ以上の粒子のみを主流路31に導入することができる。
【0025】
複数の収集部40は、流路30の幅方向W1の第1端側に接続される第1収集部40-1と、流路30の幅方向W1の第2端側に接続される第2収集部40-2とを含む。第1収集部40-1は、分岐流路33-1を介して主流路31の幅方向W1の第1端311側に接続される。第1収集部40-1は、分岐流路33-1を流れる特定種類の誘電体粒子P1を収集する。第1収集部40-1は、例えば、排出口を備え、これによって、特定種類の誘電体粒子P1を含む溶液S1を流路チップ10から外部に供給してよい。第2収集部40-2は、分岐流路33-2を介して主流路31の幅方向W1の第2端312側に接続される。第2収集部40-2は、分岐流路33-2を流れる誘電体粒子P2を収集する。第2収集部40-2は、例えば、排出口を備え、これによって、誘電体粒子P2を含む溶液S2を流路チップ10から外部に供給してよい。
【0026】
第1電極50は、懸濁液L1の複数種類の誘電体粒子P1,P2のうち特定種類の誘電体粒子P1を流路30の幅方向W1の第1端側に導くために用いられる。本実施の形態では、
図2に示すように、第1電極50は、流路30の主流路31に配置され、懸濁液L1の複数種類の誘電体粒子P1,P2のうち特定種類の誘電体粒子P1を主流路31の幅方向W1の第1端311側に導く。第1電極50は、特定種類の誘電体粒子P1に流路30の幅方向W1の第1端(主流路31の幅方向W1の第1端311)側に向かう向きの誘電泳動力を与えるように構成される。一例として、
図2に示すように、特定種類の誘電体粒子P1は、流路30を流れる方向の力F11を受けて、流路30内を移動する。第1電極50は、特定種類の誘電体粒子P1に誘電泳動力F12を与えることによって、特定種類の誘電体粒子P1を主流路31の幅方向W1の第1端311側に向かう向きの力F13を作用させる。
【0027】
第1電極50は、流路30の一面に配置される。本実施の形態では、第1電極50は、主流路31の底面に配置される。第1電極50は、例えば、比較的安価な平面電極により形成されてよい。一例として、第1電極50は、基体10aの第1基板に形成される電極層と、電極層上に形成される保護層とを備えて構成されてよい。電極層の材料は、例えば、Al等の金属である。保護層は、例えば、酸化ケイ素である。
【0028】
第1電極50は、第1所定方向D1に並ぶ複数の歯部511,521を有するくし形電極である。第1所定方向D1は、流路30において懸濁液L1が流れる方向(
図2における右方向)に沿って流路30の幅方向W1の第1端(
図2における上端)から第2端(
図2における下端)に向かう方向である。複数の歯部511,521は、複数の第1歯部511と複数の第2歯部521とを含む。第1歯部511と第2歯部521とは交互に並ぶ。複数の第1歯部511は、流路30の幅方向W1の第1端から第2端に向かって延びる。つまり、複数の第1歯部511は、主流路31の幅方向W1の第1端311から第2端312に向かって延びる。複数の第2歯部521は、流路30の幅方向の第2端から第1端に向かって延びる。つまり、複数の第2歯部521は、主流路31の幅方向W1の第2端312から第1端311に向かって延びる。
【0029】
図2の第1電極50は、一対の電極パターン51,52を含む。電極パターン51は、複数の第1歯部511と、主流路31の幅方向W1の第1端311側にあって複数の歯部511の基端を連結する連結部512とを備える。連結部512は流路30の外部にある。電極パターン52は、複数の第2歯部521と、主流路31の幅方向W1の第2端312側にあって複数の第2歯部521の基端を連結する連結部522とを備える。連結部522は流路30の外部にある。
【0030】
第2電極60は、入口21と第1電極50との間にある。第2電極60は、懸濁液L1の複数種類の誘電体粒子P1,P2を流路30の幅方向W1の第2端312側に導くために用いられる。
図3は、流路チップ10の第2電極60の周辺の部位の拡大図である。
図3では、図面を簡略化するために、第2電極60のみを図示している。
図3に示すように、第2電極60は、流路30の連結流路32に配置され、懸濁液L1の複数種類の誘電体粒子P1,P2を連結流路32の幅方向W1の第2端322側に導く。第2電極60は、複数種類の誘電体粒子P1,P2に流路30の幅方向W1の第2端(連結流路32の幅方向W1の第2端322)側に向かう向きの誘電泳動力を与えるように構成される。一例として、
図3に示すように、複数種類の誘電体粒子P1,P2は、流路30を流れる方向の力F21を受けて、流路30内を移動する。第2電極60は、複数種類の誘電体粒子P1,P2に誘電泳動力F22を与えることによって、複数種類の誘電体粒子P1,P2を連結流路32の幅方向W1の第2端322側に向かう向きの力F23を作用させる。
【0031】
第2電極60は、流路30の一面に配置される。本実施の形態では、第2電極60は、連結流路32の底面に配置される。第2電極60は、例えば、比較的安価な平面電極により形成されてよい。一例として、第2電極60は、基体10aの第1基板に形成される電極層と、電極層上に形成される保護層とを備えて構成されてよい。電極層の材料は、例えば、Al等の金属である。保護層は、例えば、酸化ケイ素である。
【0032】
図2及び
図3に示すように、第2電極60は、第2所定方向D2に並ぶ複数の歯部611,621を有するくし形電極である。第2所定方向D2は、流路30の幅方向W1において、上述の第1所定方向D1と反対側に向かう方向である。より詳細には、第2所定方向D2は、流路30において懸濁液L1が流れる方向(
図2における右方向)に沿って流路30の幅方向W1の第2端(
図2における下端)から第1端(
図2における上端)に向かう方向である。複数の歯部611,621は、複数の第1歯部611と複数の第2歯部621とを含む。第1歯部611と第2歯部621とは交互に並ぶ。複数の第1歯部611は、流路30の幅方向W1の第1端から第2端に向かって延びる。つまり、複数の第1歯部611は、連結流路32の幅方向W1の第1端321から第2端322に向かって延びる。複数の第2歯部621は、流路30の幅方向の第2端から第1端に向かって延びる。つまり、複数の第2歯部621は、連結流路32の幅方向W1の第2端322から第1端321に向かって延びる。
図3に示すように、第2電極60では、第1歯部611の先端611a及び第2歯部621の先端621aは、流路30の外部、つまり、連結流路32の外部にある。
図3の第2電極60では、第1歯部611の先端611a及び第2歯部621の先端621aが流路30の外部にあればよいから、第2電極60と流路30との位置合わせが容易になる。特に、上述したように基体10aが第1基板に第2基板を貼り合わせて構成される場合、第2電極60が形成された第1基板に対して、流路30に対応する凹部が形成された第2基板を高精度に位置合わせしなくて済むから、高いアライメント精度が要求されない。よって、流路チップ10の製造の容易化が図れる。
【0033】
図2の第2電極60は、一対の電極パターン61,62を含む。電極パターン61は、複数の第1歯部611と、連結流路32の幅方向W1の第1端321側にあって複数の歯部611の基端を連結する連結部612とを備える。連結部612は流路30の外部にある。電極パターン62は、複数の第2歯部621と、連結流路32の幅方向W1の第2端322側にあって複数の第2歯部621の基端を連結する連結部622とを備える。連結部622は流路30の外部にある。
【0034】
図4(a)~(c)は、第2電極60により複数種類の誘電体粒子P1,P2が移動する様子を示す流路チップ10の断面図である。
図4(a)は、第2電極60における入口21側の端部(
図2での左端部)での流路チップ10の断面図である。
図4(b)は、第2電極60の中央部での流路チップ10の断面図である。
図4(c)は、第2電極60における第1電極50側の端部(
図2での右端部)での流路チップ10の断面図である。
図4(a)~(c)から理解されるように、流路30の連結流路32内の誘電体粒子P1,P2は、第2電極60に引き付けられる。これによって、誘電体粒子P1,P2は、第2電極60が設けられている流路30の底面に引き付けられる。さらに、誘電体粒子P1,P2は、連結流路32の幅方向W1の第2端322側に導かれる。
【0035】
本実施の形態では、流路30において入口21と第2電極60との間にフィルタ90を設け、フィルタ90によっても、複数種類の誘電体粒子P1,P2を流路30の幅方向W1の第2端側に配向している。つまり、流路チップ10では、フィルタ90によって複数種類の誘電体粒子P1,P2をある程度流路30の幅方向W1の第2端側に配向した後に、さらに第2電極60による誘電泳動力によって、複数種類の誘電体粒子P1,P2を流路30の幅方向W1の第2端側に安定的に位置させている。
【0036】
第1電極パッド71,72は、第1電極50に第1所定電圧を印加するために用いられる。第1電極パッド71,72は、第1電極50の一対の電極パターン51,52間に第1所定電圧を印加するために、第1電極50の一対の電極パターン51,52にそれぞれ接続される。第1電極パッド71,72は、例えば、配線パターン等により第1電極50の一対の電極パターン51,52にそれぞれ接続される。第1電極パッド71,72は、基体10aの外面に位置するように配置される。第1電極パッド71,72間の電圧を制御することによって、第1電極50の電圧が制御可能である。
【0037】
第2電極パッド81,82は、第1電極パッド71,72とは別に設けられる。第2電極パッド81,82は、第2電極60に第1所定電圧とは異なる第2所定電圧を印加するために用いられる。第2電極パッド81,82は、第2電極60の一対の電極パターン61,62間に第2所定電圧を印加するために、第2電極60の一対の電極パターン61,62にそれぞれ接続される。第2電極パッド81,82は、例えば、配線パターン等により第2電極60の一対の電極パターン61,62にそれぞれ接続される。第2電極パッド81,82は、基体10aの外面に位置するように配置される。第2電極パッド81,82間の電圧を制御することによって、第2電極60の電圧が制御可能である。
【0038】
以上述べたように、流路チップ10では、分離に特化した分離用誘電泳動電極である第1電極50の上流に位置制御に特化した位置制御用電極である第2電極60が配置されている。流路チップ10では、第1電極50による特定種類の誘電体粒子P1の分離の前に、複数種類の誘電体粒子P1,P2を所望の位置に制御できるため、分離精度の向上が図れる。より低い電圧を第1電極50に印加しても分離が可能となり、同じ電圧であれば流量を上げることができ、分離速度の向上が図れる。また、位置制御用の第2電極60を分離用の第1電極50と分けて設置しているため、第1電極50及び第2電極60の電圧を個別に設定できる。例えば、第1電極50に特定種類の誘電体粒子P1の分離に適した周波数及び振幅の電圧を印加しながら、第2電極60に複数種類の誘電体粒子P1,P2の位置制御に適した周波数及び振幅の電圧を印加することが可能となる。これによっても、分離精度及び分離速度の向上が図れる。
【0039】
[1.1.2.2 電圧制御装置]
図1の電圧制御装置11は、誘電泳動力を発生させるために流路チップ10に与える電圧を制御する。本実施の形態では、電圧制御装置11は、第1電極50の電圧と第2電極60の電圧とをそれぞれ制御することで、懸濁液L1に含まれる複数種類の誘電体粒子P1,P2からの特定種類の誘電体粒子P1の分離をする。電圧制御装置11は、例えば、ファンクションジェネレータを備える。
【0040】
図1の電圧制御装置11は、第1電極パッド71,72を介して第1電極50に接続される。
図1の電圧制御装置11は、第2電極パッド81,82を介して第2電極60に接続される。
【0041】
電圧制御装置11は、複数種類の誘電体粒子P1,P2のうち特定種類の誘電体粒子P1を流路30の幅方向W1の第1端側に導くように第1電極50の電圧を制御する。本実施の形態では、電圧制御装置11は、第1電極パッド71,72を介して、第1電極50に第1所定電圧を印加する。第1所定電圧は、例えば、交流電圧である。第1所定電圧の周波数は、第1電極50によって特定種類の誘電体粒子P1に対して正の誘電泳動力が作用するように設定される。この場合に、複数種類の誘電体粒子P1,P2のうちの特定種類の誘電体粒子P1以外の誘電体粒子P2に対しては、誘電泳動力が作用しないか、又は、正又は負の誘電泳動力(引力又は斥力)が作用したとしてもその誘電泳動力は比較的小さくなるように、周波数が設定される。第1所定電圧の周波数は、例えば、600kHzである。
【0042】
電圧制御装置11は、懸濁液L1に含まれる特定種類の誘電体粒子P1を含む複数種類の誘電体粒子P1,P2を流路30の幅方向W1の第2端側に導くように第2電極60の電圧を制御する。本実施の形態では、電圧制御装置11は、第2電極パッド81,82を介して、第2電極60に第2所定電圧を印加する。第2所定電圧は、第1所定電圧と異なる。第2所定電圧は、例えば、第1所定電圧とは異なる交流電圧である。第2所定電圧の周波数は、第2電極60によって特定種類の誘電体粒子P1を含む複数種類の誘電体粒子P1,P2に対して正の誘電泳動力が作用するように設定される。第2所定電圧の周波数は、例えば、1500kHzである。
【0043】
第2所定電圧は、振幅及び周波数が固定された交流電圧であってよい。このような第2所定電圧が第2電極60に継続的に印加された場合には、
図3に示すように、誘電体粒子P1,P2は第2電極60(特に歯部611,621)に引き付けられて、連結流路32の幅方向W1の第2端322側において歯部611,621近傍に溜まる。誘電体粒子P1,P2がある程度溜まると、後続の誘電体粒子P1,P2に押し出される形で、連結流路32から主流路31に流入する。振幅及び周波数が固定された交流電圧を継続的に第2電極60に印加する場合には、連結流路32の幅方向W1の第2端322側に溜まった誘電体粒子P1,P2が後続の誘電体粒子P1,P2に押し出されることを利用する。後続の誘電体粒子P1,P2に押し出された誘電体粒子P1,P2は、第2電極60から浮き上がって連結流路32内を主流路31に向かって移動することになる。誘電体粒子P1,P2を連結流路32の幅方向W1の第2端322側に安定的に位置させたい場合には、このような押し出しを利用しないほうがよい。また、誘電体粒子P1,P2は後続の誘電体粒子P1,P2に押し出されるまでは第2電極60に接触したままとなるから、第2電極60との接触時間が比較的長い。そのため、誘電体粒子P1,P2の負担を考慮すると接触時間は短いほうがよい。
【0044】
そこで、第2所定電圧は、時間により振幅が変化するように設定されてよい。例えば、第2所定電圧は、振幅が第1値である第1期間と振幅が第2値である第2期間とが交互に現れるように設定されてよい。例えば、第1期間は、第1値が規定値であるオン期間、第2期間は第2値が0であるオフ期間であってよい。この場合、第2所定電圧は、間欠的に第2電極60に印加される。つまり、第2所定電圧にはデューティ比が設定されてよい。デューティ比は、例えば、50%以上又は90%以上であってよく、99%以下であってよい。
【0045】
図5は、第2電極60に印加される電圧(第2所定電圧)の振幅が時間で変化する場合の誘電体粒子P1,P2の移動の様子を示す流路チップ10の部分平面図である。第2所定電圧の振幅が時間で変化することによって、第2電極60により誘電体粒子P1,P2に作用する誘電泳動力を時間的に変化させることができる。そのため、誘電泳動力が比較的大きい間に誘電体粒子P1,P2が第2電極60に引き付けられて、誘電泳動力が比較的小さい間に誘電体粒子P1,P2が第2電極60から離れやすくなる。そのため、誘電体粒子P1,P2は、後続の誘電体粒子P1,P2に押されなくても、第2電極60から離れて主流路31に流れやすくなる。これにより、上述のような押し出しに頼る場合に比べれば、第2電極60による誘電体粒子P1,P2の配向の精度が向上する。また、誘電体粒子P1,P2が第2電極60に接触する時間を短くできて、誘電体粒子P1,P2への負担を軽減できる。
【0046】
第2所定電圧は、時間により周波数が変化するように設定されてよい。第2電極60により誘電体粒子に作用する誘電泳動力は、第2電極60に印加される電圧の周波数の影響を受ける。そのため、第2所定電圧の周波数が時間で変化することによって、第2電極60により誘電体粒子P1,P2に作用する誘電泳動力を時間的に変化させることが可能となる。
【0047】
このように、第2所定電圧の振幅と周波数との少なくとも一つを時間で変化させてよい。第2所定電圧の振幅の時間変化は、デューティ比の設定又は振幅変調により実行されてよい。第2所定電圧の周波数の時間変化は、周波数変調により実行されてよい。このようにすることによって、第2電極60により誘電体粒子P1,P2に作用する誘電泳動力を時間的に変化させることが可能となる。そのため、誘電泳動力が比較的大きい間に誘電体粒子P1,P2が第2電極60に引き付けられて、誘電泳動力が比較的小さい間に誘電体粒子P1,P2が第2電極60から離れやすくなる。これにより、上述のような押し出しに頼る場合に比べれば、第2電極60による誘電体粒子P1,P2の配向の精度が向上する。また、誘電体粒子P1,P2が第2電極60に接触する時間を短くできて、誘電体粒子P1,P2への負担を軽減できる。
【0048】
以上述べた電圧制御装置11では、流路チップ10を用いる分離方法が実行可能である。この分離方法は、懸濁液L1に含まれる特定種類の誘電体粒子P1を含む複数種類の誘電体粒子P1,P2を流路30の幅方向W1の第2端側に導くように第2電極60の電圧を制御し、複数種類の誘電体粒子P1,P2のうち特定種類の誘電体粒子P1を流路30の幅方向W1の第1端側に導くように第1電極50の電圧を制御する。この分離方法によれば、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離の精度を向上できる。
【0049】
[1.1.2.3 解析装置]
図1の解析装置12は、懸濁液L1に含まれる複数種類の誘電体粒子P1,P2からの特定種類の誘電体粒子P1の分離に関する解析を実行する。
図1の解析装置12は、撮像装置121と、処理装置122と、表示装置123とを備える。
【0050】
撮像装置121は、流路チップ10における対象部位の画像を取得する。対象部位は、例えば、主流路31である。主流路31の画像から、主流路31を通過する誘電体粒子P1,P2の移動軌跡が得られる。撮像装置121は、例えば、CCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサ等の撮像素子を有するカメラと、光学顕微鏡モジュールとを備える。光学顕微鏡モジュールは、位相差顕微鏡であってもよいし、落射顕微鏡であってもよい。また、光学顕微鏡モジュールは、例えばレンズ交換などにより、位相差顕微鏡と落射顕微鏡とに切替え可能に構成されてもよい。また、蛍光観察を行う場合、適宜、蛍光フィルタを用いる。撮像装置121の動作は、処理装置122によって制御されてよい。
【0051】
表示装置123は、処理装置122からの情報を表示する。表示装置123は、例えば、液晶ディスプレイ及びや有機ELディスプレイディスプレイである。
【0052】
処理装置122は、解析装置12の動作を制御する。処理装置122は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。1以上のプロセッサが(1以上のメモリ等に記憶された)プログラムを実行することで、所定の機能を実現する。一例として、処理装置122は、撮像装置121で撮像された画像について画像解析を行い、主流路31を通過する誘電体粒子P1,P2の移動軌跡を求める。処理装置122は、撮像装置121で撮像された画像、又は、画像解析によって求められた移動軌跡を、表示装置123により表示してもよい。
【0053】
[1.1.3 試験]
上記の流路チップ10を備える分離システム1の効果を確認するために、特定種類の誘電体粒子P1の分離率を測定した。
図6は、
図1の分離システム1での分離率の時間変化を示すグラフである。
図6において、丸のドットは所定間隔(例えば10秒)で測定した分離率を示し、実線は対応する期間における分離率の平均を示す。
図6の分離率は、分岐流路33-1と分岐流路33-2に流れる誘電体粒子P1全体の内、分岐流路33-1に流れる誘電体粒子P1の割合である。
図6において、時刻t1~t2の期間及び時刻t3~t4の期間においては、第2電極60に電圧(第2所定電圧)を印加していない。時刻t2~t3及び時刻t4~t5の期間においては、第2電極60に電圧(第2所定電圧)を印加している。
図6から理解されるように、第2電極60に電圧を印加している期間(時刻t2~t3の期間及び時刻t4~t5の期間)のほうが、第2電極60に電圧を印加していない期間(時刻t1~t2の期間及び時刻t3~t4の期間)よりも、分離率が高い。
【0054】
[1.1.4 効果等]
以上述べた流路チップ10は、特定種類の誘電体粒子P1を含む複数種類の誘電体粒子P1,P2を含む懸濁液L1が導入される入口21と入口21から導入された懸濁液L1の複数種類の誘電体粒子P1,P2が流れる流路30とを有する基体10aと、複数種類の誘電体粒子P1,P2のうち特定種類の誘電体粒子P1を流路30の幅方向W1の第1端側に導く第1電極50と、入口21と第1電極50との間にあって複数種類の誘電体粒子P1,P2を流路30の幅方向W1の第2端側に導く第2電極60とを備える。この構成によれば、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離の精度を向上できる。
【0055】
また、流路チップ10において、第1電極50は、第1所定方向D1に並ぶ複数の歯部511,521を有するくし形電極である。第2電極60は、第2所定方向D2に並ぶ複数の歯部611,621を有するくし形電極である。第1所定方向D1と第2所定方向D2とは、流路30の幅方向W1において互いに反対側に向かう方向である。この構成によれば、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離の精度を向上できる。
【0056】
また、流路チップ10において、第1電極50及び第2電極60の各々は、流路30の一面にある。この構成によれば、第1電極50及び第2電極60の各々を平面電極により構成することができ、製造コストの低下が図れる。
【0057】
また、流路チップ10において、第1所定方向D1は、流路30において懸濁液L1が流れる方向に沿って流路30の幅方向W1の第2端から第1端に向かう方向である。第2所定方向D2は、流路30において懸濁液L1が流れる方向に沿って流路30の幅方向W1の第1端から第2端に向かう方向である。この構成によれば、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離の精度を向上できる。
【0058】
また、流路チップ10において、第2電極60の複数の歯部611,621は、流路30の幅方向W1の第1端から第2端に向かって延びる第1歯部611と、流路30の幅方向W1の第2端から第1端に向かって延びる第2歯部621とを含む。第1歯部611の先端611a及び第2歯部621の先端621aは、流路30の外部にある。この構成によれば、第2電極60と流路30との位置合わせが容易になり、流路チップ10の製造の容易化が図れる。
【0059】
また、流路チップ10において、流路30は、主流路31と、主流路31と入口21との間の連結流路32とを含む。第1電極50は、主流路31にある。第2電極60は、連結流路32にある。連結流路32の幅は、主流路31の幅より狭い。この構成によれば、製造コストの低下が図れる。
【0060】
また、流路チップ10において、基体10aは、流路30の幅方向W1の第1端側に接続される第1収集部40-1と、流路30の幅方向W1の第2端側に接続される第2収集部40-2とを有する。この構成によれば、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離の精度を向上できる。
【0061】
また、流路チップ10において、流路30は、入口21と第2電極60との間において流路30の幅方向W1の第2端側に接続され懸濁液L1から複数種類の誘電体粒子P1,P2よりサイズが小さい粒子P3を除去するフィルタ90を備える。この構成によれば、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離の精度を向上できる。
【0062】
また、流路チップ10において、第1電極50に第1所定電圧を印加するための第1電極パッド71,72と、第1電極パッドとは別に設けられて第2電極60に第1所定電圧とは異なる第2所定電圧を印加するための第2電極パッド81,82とを備える。この構成によれば、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離の精度を向上できる。
【0063】
また、流路チップ10において、第2所定電圧は、時間により振幅と周波数との少なくとも一つが変化するように設定される。この構成によれば、第2電極60による誘電体粒子P1,P2の配向の精度が向上する。また、誘電体粒子P1,P2が第2電極60に接触する時間を短くできて、誘電体粒子P1,P2への負担を軽減できる。
【0064】
以上述べた分離システム1は、流路チップ10と、懸濁液L1に含まれる特定種類の誘電体粒子P1を含む複数種類の誘電体粒子P1,P2を流路30の幅方向W1の第2端側に導くように第2電極60の電圧を制御し、かつ、複数種類の誘電体粒子P1,P2のうち特定種類の誘電体粒子P1を流路30の幅方向W1の第1端側に導くように第1電極50の電圧を制御する電圧制御装置11とを備える。この構成によれば、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離の精度を向上できる。
【0065】
また、分離システム1において、流路チップ10は使い捨て可能である。この構成によれば、コンタミネーションを防止でき、さらに分離システム1の使い勝手が向上する。
【0066】
以上述べた分離方法は、流路チップ10を用いる分離方法であって、懸濁液L1に含まれる特定種類の誘電体粒子P1を含む複数種類の誘電体粒子P1,P2を流路30の幅方向W1の第2端側に導くように第2電極60の電圧を制御し、複数種類の誘電体粒子P1,P2のうち特定種類の誘電体粒子P1を流路30の幅方向W1の第1端側に導くように第1電極50の電圧を制御する。この構成によれば、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離の精度を向上できる。
【0067】
[1.2 実施の形態2]
図7は、実施の形態2の流路チップ10Aの構成例における第2電極60の周辺の部位の拡大図である。実施の形態2の流路チップ10Aは、連結流路32に対する第2電極60の位置が、実施の形態1の流路チップ10と異なっている。
【0068】
図7の第2電極60は、実施の形態1と同様に、流路30の連結流路32に配置され、懸濁液L1の複数種類の誘電体粒子P1,P2を連結流路32の幅方向W1の第2端322側に導く。第2電極60は、複数種類の誘電体粒子P1,P2に流路30の幅方向W1の第2端(連結流路32の幅方向W1の第2端322)側に向かう向きの誘電泳動力を与えるように構成される。一例として、
図7に示すように、複数種類の誘電体粒子P1,P2は、流路30を流れる方向の力F21を受けて、流路30内を移動する。第2電極60は、複数種類の誘電体粒子P1,P2に誘電泳動力F22を与えることによって、複数種類の誘電体粒子P1,P2を連結流路32の幅方向W1の第2端322側に向かう向きの力F23を作用させる。
【0069】
図7に示すように、第2電極60は、実施の形態1と同様に、流路30の底面に第2所定方向D2に並ぶ複数の歯部611,621を有するくし形電極である。複数の歯部611,621は、複数の第1歯部611と複数の第2歯部621とを含む。第1歯部611と第2歯部621とは交互に並ぶ。複数の第1歯部611は、流路30の幅方向W1の第1端から第2端に向かって延びる。つまり、複数の第1歯部611は、連結流路32の幅方向W1の第1端321から第2端322に向かって延びる。複数の第2歯部621は、流路30の幅方向の第2端から第1端に向かって延びる。つまり、複数の第2歯部621は、連結流路32の幅方向W1の第2端322から第1端321に向かって延びる。
図7の第2電極60では、第1歯部611の先端611aは、連結流路32の外部ではなく、連結流路32の幅方向W1の第2端322と所定の距離を隔てて連結流路32の内部にある。つまり、第1歯部611の先端611aは、流路30の幅方向W1の第2端と所定の距離を隔てて流路30の内部にある。一方で、第2歯部621の先端621aは、連結流路32の外部、つまり、流路30の外部にある。
【0070】
図7の第2電極60において、第1歯部611の先端611aが、連結流路32の外部ではなく、連結流路32の幅方向W1の第2端322と所定の距離を隔てて連結流路32の内部にあることで、連結流路32の幅方向W1の第2端322と第1歯部611の先端611aとの間に、誘電体粒子P1,P2の通路が形成されやすい。つまり、
図7に矢印Aで示すように、第2電極60により連結流路32の幅方向W1の第2端322側に導かれた誘電体粒子P1,P2が第2電極60の第1歯部611の先端611aと連結流路32の幅方向W1の第2端322との間を通って第2電極60から第1電極50に向かいやすくなる。そのため、実施の形態1で述べた、後続の誘電体粒子P1,P2による押し出しがなくても、自然と第2電極60から離れて主流路31に向かうことになる。そのため、第2電極60による誘電体粒子P1,P2の配向の精度が向上する。また、誘電体粒子P1,P2が第2電極60に接触する時間を短くできて、誘電体粒子P1,P2への負担を軽減できる。なお、所定の距離は、特に限定されないが、誘電体粒子P1,P2を第2電極60から第1電極50に移動させることができるように適宜設定され得る。
【0071】
以上述べたように、流路チップ10Aでは、第2電極60の複数の歯部611,621は、流路30の幅方向W1の第1端から第2端に向かって延びる第1歯部611と、流路30の幅方向W1の第2端から第1端に向かって延びる第2歯部621とを含む。第1歯部611の先端611aは、流路30の幅方向W1の第2端と所定の距離を隔てて流路30の内部にある。第2歯部621の先端621aは、流路30の外部にある。この構成によれば、流路30の幅方向W1の第2端側に導かれた誘電体粒子P1,P2が第2電極60の第1歯部611の先端611aと流路30の幅方向W1の第2端との間を通って第2電極60から第1電極50に向かいやすくなるから、第2電極60による誘電体粒子P1,P2の配向の精度が向上する。また、誘電体粒子P1,P2が第2電極60に接触する時間を短くできて、誘電体粒子P1,P2への負担を軽減できる。
【0072】
[2.変形例]
本開示の実施の形態は、上記実施の形態に限定されない。上記実施の形態は、本開示の課題を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施の形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0073】
一変形例において、分離システム1は、必ずしも解析装置12を備えている必要はない。分離システム1は、少なくとも流路チップ10と電圧制御装置11とを備えていればよい。
【0074】
一変形例において、懸濁液L1は血液に限定されない。懸濁液L1は、分離対象となる誘電体粒子を含んでいれば特に限定されない。誘電体粒子は、上記の細胞に限定されない。誘電体粒子は、例えば、膜小胞や、微生物、真菌、芽胞、ウイルス、エクソソーム、DNAやRNAなどの核酸であってもよい。
【0075】
一変形例において、流路チップ10の形状は変更可能である。特に、基体10aの形状は上記の実施の形態に限定されない。基体10aの形状は、流路30に応じて適宜設定されればよい。流路30は、上記の実施の形態のような直線状ではなく、曲線状であってよい。流路30は、主流路31、連結流路32、分岐流路33、及び接続路34、35のように明確に分かれている必要はない。主流路31と連結流路32との幅は同じであってよいし、連結流路32は主流路31に対して曲がっていてもよい。
【0076】
一変形例において、入口22は必須ではない。つまり、懸濁液L1の成分の、置換液L2による置換は必須ではない。また、流路30の形状によっては、収集部40も必須ではない。
【0077】
一変形例において、第1電極50の数及び形状は変更可能である。第1電極50は、複数種類の誘電体粒子から特定種類の誘電体粒子を流路30の幅方向W1の第1端側に導くことができればよい。第1電極50の形状によっては、第1電極パッド71,72は省略可能である。
【0078】
一変形例において、第2電極60の形状は変更可能である。第2電極60は、複数種類の誘電体粒子を流路30の幅方向W1の第2端側に導くことができればよい。流路チップ10は、複数の第2電極60を備えてよい。複数の第2電極60は互いに協働して、複数種類の誘電体粒子を流路30の幅方向W1の第2端側に導いてよい。例えば、複数の第2電極60によって第1~第4誘電体粒子を流路30の幅方向W1の第2端側に導く場合には、第1の第2電極60が第1及び第2誘電体粒子を流路30の幅方向W1の第2端側に導き、第2の第2電極60が第3及び第4誘電体粒子を流路30の幅方向W1の第2端側に導いてよい。また、第2電極60の形状によっては、第2電極パッド81,82は省略可能である。
【0079】
一変形例において、フィルタ90の数及び形状は変更可能である。フィルタ90は、HDF(hydrodynamic filtration)を利用する構成に限定されない。フィルタ90は、例えば、DLD(Deterministic lateral displacement)を利用する構成であってよい。また、フィルタ90は必須ではない。
【0080】
[3.態様]
上記実施の形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施の形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0081】
第1の態様は、流路チップ(10;10A)であって、特定種類の誘電体粒子(P1)を含む複数種類の誘電体粒子(P1,P2)を含む懸濁液(L1)が導入される入口(21)と前記入口(21)から導入された前記懸濁液(L1)の複数種類の誘電体粒子(P1,P2)が流れる流路(30)とを有する基体(10a)と、前記複数種類の誘電体粒子(P1,P2)のうち前記特定種類の誘電体粒子(P1)を前記流路(30)の幅方向(W1)の第1端側に導く第1電極(50)と、前記入口(21)と前記第1電極(50)との間にあって前記複数種類の誘電体粒子(P1,P2)を前記流路(30)の幅方向(W1)の第2端側に導く第2電極(60)とを備える。この態様によれば、懸濁液(L1)からの特定種類の誘電体粒子(P1)の分離の精度を向上できる。
【0082】
第2の態様は、第1の態様に基づく流路チップ(10;10A)である。第2の態様において、前記第1電極(50)及び前記第2電極(60)の各々は、前記流路(30)の一面にある。この態様によれば、前記第1電極(50)及び前記第2電極(60)の各々を平面電極により構成することができて、製造コストの低下が図れる。
【0083】
第3の態様は、第1又は第2の態様に基づく流路チップ(10;10A)である。第3の態様において、前記第1電極(50)は、前記流路(30)の底面に第1所定方向(D1)に並ぶ複数の歯部(511,521)を有するくし形電極である。前記第2電極(60)は、前記流路(30)の底面に第2所定方向(D2)に並ぶ複数の歯部(611,621)を有するくし形電極である。前記第1所定方向(D1)と前記第2所定方向(D2)とは、前記流路(30)の幅方向(W1)において互いに反対側に向かう方向である。この態様によれば、懸濁液(L1)からの特定種類の誘電体粒子(P1)の分離の精度を向上できる。
【0084】
第4の態様は、第3の態様に基づく流路チップ(10;10A)である。第4の態様において、前記第1所定方向(D1)は、前記流路(30)において前記懸濁液(L1)が流れる方向に沿って前記流路(30)の幅方向(W1)の第2端から第1端に向かう方向である。前記第2所定方向(D2)は、前記流路(30)において前記懸濁液(L1)が流れる方向に沿って前記流路(30)の幅方向(W1)の第1端から第2端に向かう方向である。この態様によれば、懸濁液(L1)からの特定種類の誘電体粒子(P1)の分離の精度を向上できる。
【0085】
第5の態様は、第2~第4の態様のいずれか一つに基づく流路チップ(10)である、第5の態様において、前記第2電極(60)の複数の歯部(611,621)は、前記流路(30)の幅方向(W1)の第1端から第2端に向かって延びる第1歯部(611)と、前記流路(30)の幅方向(W1)の第2端から第1端に向かって延びる第2歯部(621)とを含む。前記第1歯部(611)の先端(611a)及び前記第2歯部(621)の先端(621a)は、前記流路(30)の外部にある。この態様によれば、第2電極(60)と流路(30)との位置合わせが容易になり、流路チップ(10)の製造の容易化が図れる。
【0086】
第6の態様は、第2~第4の態様のいずれか一つに基づく流路チップ(10A)である、第6の態様において、前記第2電極(60)の複数の歯部(611,621)は、前記流路(30)の幅方向(W1)の第1端から第2端に向かって延びる第1歯部(611)と、前記流路(30)の幅方向(W1)の第2端から第1端に向かって延びる第2歯部(621)とを含む。前記第1歯部(611)の先端(611a)は、前記流路(30)の幅方向(W1)の第2端と所定の距離を隔てて前記流路(30)の内部にある。前記第2歯部(621)の先端(621a)は、前記流路(30)の外部にある。この態様によれば、流路(30)の幅方向(W1)の第2端側に導かれた誘電体粒子(P1,P2)が第2電極(60)の第1歯部(611)の先端(611a)と流路(30)の幅方向(W1)の第2端との間を通って第2電極(60)から第1電極(50)に向かいやすくなるから、第2電極(60)による誘電体粒子(P1,P2)の配向の精度が向上する。また、誘電体粒子(P1,P2)が第2電極(60)に接触する時間を短くできて、誘電体粒子(P1,P2)への負担を軽減できる。
【0087】
第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか一つに基づく流路チップ(10;10A)である、第7の態様において、前記流路(30)は、主流路(31)と、前記主流路(31)と前記入口(21)との間の連結流路(32)とを含む。前記連結流路(32)の幅は、前記主流路(31)の幅より狭い。この態様によれば、製造コストの低下が図れる。
【0088】
第8の態様は、第1~第7の態様のいずれか一つに基づく流路チップ(10;10A)である、第8の態様において、前記基体(10a)は、前記流路(30)の幅方向(W1)の第1端側に接続される第1収集部(40-1)と、前記流路(30)の幅方向(W1)の第2端側に接続される第2収集部(40-2)とを有する。この態様によれば、懸濁液(L1)からの特定種類の誘電体粒子(P1)の分離の精度を向上できる。
【0089】
第9の態様は、第1~第8の態様のいずれか一つに基づく流路チップ(10;10A)である、第9の態様において、前記流路(30)は、前記入口(21)と前記第2電極(60)との間において前記流路(30)の幅方向の第2端側に接続され前記懸濁液(L1)から前記複数種類の誘電体粒子(P1,P2)よりサイズが小さい粒子(P3)を除去するフィルタ(90)を備える。この態様によれば、懸濁液(L1)からの特定種類の誘電体粒子(P1)の分離の精度を向上できる。
【0090】
第10の態様は、第1~第9の態様のいずれか一つに基づく流路チップ(10;10A)である。第10の態様において、前記第1電極(50)に第1所定電圧を印加するための第1電極パッド(71,72)と、前記第1電極パッドとは別に設けられて前記第2電極(60)に前記第1所定電圧とは異なる第2所定電圧を印加するための第2電極パッド(81,82)とを備える。この態様によれば、懸濁液(L1)からの特定種類の誘電体粒子(P1)の分離の精度を向上できる。
【0091】
第11の態様は、第10の態様に基づく流路チップ(10;10A)である。第11の態様において、前記第2所定電圧は、時間により振幅と周波数との少なくとも一つが変化するように設定される。この態様によれば、第2電極(60)による誘電体粒子(P1,P2)の配向の精度が向上する。また、誘電体粒子(P1,P2)が第2電極(60)に接触する時間を短くできて、誘電体粒子(P1,P2)への負担を軽減できる。
【0092】
第12の態様は、分離システム(1)であって、第1~第11の態様のいずれか一つに記載の流路チップ(10;10A)と、前記懸濁液(L1)に含まれる前記特定種類の誘電体粒子(P1)を含む前記複数種類の誘電体粒子(P1,P2)を前記流路(30)の幅方向(W1)の第2端側に導くように前記第2電極(60)の電圧を制御し、かつ、前記複数種類の誘電体粒子(P1,P2)のうち前記特定種類の誘電体粒子(P1)を前記流路(30)の幅方向(W1)の第1端側に導くように前記第1電極(50)の電圧を制御する電圧制御装置(11)とを備える。この態様によれば、懸濁液(L1)からの特定種類の誘電体粒子(P1)の分離の精度を向上できる。
【0093】
第13の態様は、第12の態様に基づく分離システム(1)である。第13の態様において、前記流路チップ(10;10A)は使い捨て可能である。この態様によれば、コンタミネーションを防止でき、さらに分離システム(1)の使い勝手が向上する。
【0094】
第14の態様は、第1~第11の態様のいずれか一つに記載の流路チップ(10;10A)を用いる分離方法であって、前記懸濁液(L1)に含まれる前記特定種類の誘電体粒子(P1)を含む前記複数種類の誘電体粒子(P1,P2)を前記流路(30)の幅方向(W1)の第2端側に導くように前記第2電極(60)の電圧を制御し、かつ、前記複数種類の誘電体粒子(P1,P2)のうち前記特定種類の誘電体粒子(P1)を前記流路(30)の幅方向(W1)の第1端側に導くように前記第1電極(50)の電圧を制御する。この態様によれば、懸濁液(L1)からの特定種類の誘電体粒子(P1)の分離の精度を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本開示は、流路チップ、分離システム、及び、分離方法に適用される。具体的には、懸濁液に含まれる複数種類の誘電体粒子から特定種類の誘電体粒子を分離するための流路チップ、分離システム、及び、分離方法に、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 分離システム
10,10A 流路チップ
10a 基体
11 電圧制御装置
21 入口
30 流路
31 主流路
32 連結流路
40-1 第1収集部
40-2 第2収集部
50 第1電極
511 第1歯部(歯部)
521 第2歯部(歯部)
60 第2電極
611 第1歯部(歯部)
611a 先端
621 第2歯部(歯部)
621a 先端
71,72 第1電極パッド
81,82 第2電極パッド
90 フィルタ
L1 懸濁液
P1,P2 誘電体粒子
P3 粒子
W1 幅方向
D1 第1所定方向
D2 第2所定方向