(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006165
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】流路チップ、及び、分離システム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/10 20060101AFI20230111BHJP
G01N 27/06 20060101ALI20230111BHJP
G01N 15/00 20060101ALI20230111BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G01N27/10
G01N27/06 A
G01N15/00 B
C12M1/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108620
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(71)【出願人】
【識別番号】515279762
【氏名又は名称】株式会社AFIテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100199314
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(72)【発明者】
【氏名】浦川 哲
(72)【発明者】
【氏名】真田 雅和
(72)【発明者】
【氏名】大代 京一
【テーマコード(参考)】
2G060
4B029
【Fターム(参考)】
2G060AA07
2G060AA15
2G060AD06
2G060AE20
2G060AF03
2G060AF06
2G060AF07
2G060AG10
2G060FA01
2G060FA11
2G060HA02
4B029AA07
4B029AA09
4B029BB11
4B029FA01
4B029HA01
4B029HA09
(57)【要約】
【課題】懸濁液からの特定種類の誘電体粒子の分離作業の安定化が図れる流路チップ及び分離システムを提供する。
【解決手段】流路チップ10は、特定種類の誘電体粒子P1を含む複数種類の誘電体粒子P1,P2を含む懸濁液L1が導入される入口21と入口21から導入された懸濁液L1が流れる流路30とを有する基体10aと、複数種類の誘電体粒子P1,P2のうち特定種類の誘電体粒子P1を所定方向に導く誘電泳動力を発生させるために流路30内に位置する分離電極50と、懸濁液L1の電気抵抗を測定するために流路30内に位置するセンサ電極60とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定種類の誘電体粒子を含む複数種類の誘電体粒子を含む懸濁液が導入される入口と前記入口から導入された前記懸濁液の複数種類の誘電体粒子が流れる流路とを有する基体と、
前記複数種類の誘電体粒子のうち特定種類の誘電体粒子を所定方向に導く誘電泳動力を発生させるために前記流路内に位置する分離電極と、
前記懸濁液の電気抵抗を測定するために前記流路内に位置するセンサ電極と、
を備える、
流路チップ。
【請求項2】
前記分離電極と前記センサ電極とは別個の電極である、
請求項1に記載の流路チップ。
【請求項3】
前記センサ電極において前記流路内に位置する部分の面積は、前記分離電極において前記流路内に位置する部分の面積より大きい、
請求項1又は2に記載の流路チップ。
【請求項4】
前記センサ電極のインピーダンスは、前記懸濁液の電気抵抗の測定範囲の下限よりも小さい、
請求項1~3のいずれか一つに記載の流路チップ。
【請求項5】
前記センサ電極のインピーダンスは、前記懸濁液の電気抵抗の測定範囲の下限の1/5以下である、
請求項4に記載の流路チップ。
【請求項6】
前記センサ電極は、前記流路の底面に前記流路の長さ方向に沿って並ぶ複数の歯部を有するくし形電極である、
請求項1~5のいずれか一つに記載の流路チップ。
【請求項7】
前記センサ電極は、前記流路において前記入口と前記分離電極との間と、前記流路において前記分離電極に対して前記入口と反対側との少なくとも一方にある、
請求項1~6のいずれか一つに記載の流路チップ。
【請求項8】
前記流路は、複数の収集部に繋がる複数の分岐流路を含み、
前記センサ電極は、前記複数の分岐流路の少なくとも一つに設けられる、
請求項1~7のいずれか一つに記載の流路チップ。
【請求項9】
前記流路は、複数の収集部に繋がる複数の分岐流路を含み、
前記センサ電極は、前記複数の分岐流路にまたがって設けられる、
請求項1~7のいずれか一つに記載の流路チップ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一つに記載の流路チップと、
前記センサ電極からの出力に基づいて前記懸濁液の電気抵抗を測定する測定装置と、
を備える、
分離システム。
【請求項11】
前記流路チップは使い捨て可能である、
請求項10に記載の分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流路チップ、及び、分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体デバイスのようなマイクロ空間内の粒子制御技術として、誘電泳動が活用されている。バイオ分野では主に細胞や微生物を対象として特性解析や分離濃縮について様々な研究開発が行われている。形態はさまざまであるが例えば特許文献1が挙げられる。
【0003】
特許文献1に開示される分離装置は、血中循環癌細胞(特定種類の誘電体粒子)を含む試料液(懸濁液)が所定方向(液流方向)に流れる流路と、置換部と、解析部と、分離部とを備える。分離部は、一対の電極と、電源部と、収集部とを備える。電源部は、交流電圧を発生して、一対の電極間に供給する。これにより、正の誘電泳動力(引力)が癌細胞に作用し、癌細胞は一対の電極に引きつけられながら一対の電極の延在方向に沿って流路を流れ、収集部に収集される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、懸濁液からの特定種類の誘電体粒子の分離作業の安定化が図れる流路チップ及び分離システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の流路チップは、基体と、分離電極と、センサ電極とを備える。基体は、特定種類の誘電体粒子を含む複数種類の誘電体粒子を含む懸濁液が導入される入口と、入口から導入された懸濁液の複数種類の誘電体粒子が流れる流路とを有する。分離電極は、複数種類の誘電体粒子のうち特定種類の誘電体粒子を所定方向に導く誘電泳動力を発生させるために流路内に位置する。センサ電極は、懸濁液の電気抵抗を測定するために流路内に位置する。
【0007】
本開示の一態様の分離システムは、上記の流路チップと、センサ電極からの出力に基づいて懸濁液の電気抵抗を測定する測定装置とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の態様によれば、懸濁液からの特定種類の誘電体粒子の分離作業の安定化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1の流路チップを備える分離システムの構成例のブロック図
【
図3】センサ電極による求められるインピーダンスのレジスタンス成分とリアクタンス成分との時間変化を示すグラフ
【
図4】センサ電極の面積の違いによる周波数に対するインピーダンスの変化を示す両対数グラフ
【
図5】センサ電極の面積の違いによる周波数に対する計測効率の変化を示す片対数グラフ
【
図6】センサ電極の面積が小さい場合の周波数に対するインピーダンスの変化の範囲を示す両対数グラフ
【
図7】センサ電極の面積が大きい場合の周波数に対するインピーダンスの変化の範囲を示す両対数グラフ
【
図8】実施の形態2の流路チップの構成例の概略平面図
【
図9】実施の形態3の流路チップの構成例1の概略平面図
【
図10】実施の形態3の流路チップの構成例2の概略平面図
【
図11】実施の形態4の流路チップの構成例1の概略平面図
【
図12】実施の形態4の流路チップの構成例2の概略平面図
【
図13】実施の形態4の流路チップの構成例3の概略平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1.実施の形態]
[1.1 実施の形態1]
[1.1.1 概要]
図1は、実施の形態1の分離システム1の構成例のブロック図である。
図1の分離システム1は、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離を可能とする。懸濁液L1は、特定種類の誘電体粒子P1を含む複数種類の誘電体粒子を含む。
図1の分離システム1は、誘電泳動の原理を利用して、懸濁液L1に含まれる複数種類の誘電体粒子から特定種類の誘電体粒子P1を分離する。本実施の形態では、懸濁液L1は、血液である。複数種類の誘電体粒子は、例えば、血液に含まれる細胞である。血液に含まれる細胞の例としては、がん細胞及び白血球が挙げられる。本実施の形態では、説明を容易にするために、懸濁液L1は、2種類の誘電体粒子P1,P2を含むとする。特定種類の誘電体粒子P1はがん細胞、特に、血中循環癌細胞(CTC)である。誘電体粒子P2は、白血球である。
図1の分離システム1は、血液(懸濁液L1)から血中循環癌細胞(特定種類の誘電体粒子P1)を分離するために利用される。
【0011】
図1の分離システム1は、懸濁液L1を流す流路チップ10を備える。
図1の流路チップ10は、基体10aと、分離電極50と、センサ電極60とを備える。基体10aは、特定種類の誘電体粒子P1を含む複数種類の誘電体粒子P1,P2を含む懸濁液L1が導入される入口21と、入口21から導入された懸濁液L1の複数種類の誘電体粒子P1,P2が流れる流路30とを有する。分離電極50は、複数種類の誘電体粒子P1,P2のうち特定種類の誘電体粒子P1を所定方向に導く誘電泳動力を発生させるために流路30内に位置する。センサ電極60は、懸濁液L1の電気抵抗を測定するために流路30内に位置する。
【0012】
図1の流路チップ10では、分離電極50が、誘電泳動力を発生させることで、分離電極50は、複数種類の誘電体粒子P1,P2のうち特定種類の誘電体粒子P1を所定方向に導くことができて、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離が可能となる。誘電泳動力の大きさは、懸濁液L1中に発生する電場強度に依存する。懸濁液L1中に発生する電場強度は、分離電極50のインピーダンス(リアクタンスとレジスタンス)と懸濁液L1の電気抵抗により決まる。懸濁液L1の電気抵抗による影響は比較的大きく、懸濁液L1の電気抵抗が変わると電場強度も変化し、これは、誘電泳動力の大きさの変化につながる。誘電泳動力の大きさが変化すると、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離がうまくいかない場合がある。このような状況に対して、
図1の流路チップ10は、センサ電極60を備えており、センサ電極60により、懸濁液L1の電気抵抗を測定することが可能である。そのため、流路チップ10によれば、懸濁液L1の電気抵抗を考慮して、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離作業を実行できる。例えば、センサ電極60による懸濁液L1の電気抵抗の測定値に応じて分離電極50に印加する電圧を調整したり、流路チップ10に供給する懸濁液L1の成分を調整したりできる。センサ電極60による懸濁液L1の電気抵抗の測定値が異常値である場合に、分離作業を中止することが可能となる。したがって、流路チップ10によれば、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離作業の安定化が図れる。
【0013】
[1.1.2 詳細]
以下、実施の形態1の流路チップ10及び分離システム1について更に説明する。
図1に示すように、分離システム1は、流路チップ10と、電圧制御装置11と、測定装置12と、解析装置13とを備える。
【0014】
[1.1.2.1 流路チップ]
流路チップ10は、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離のためのマイクロ流路を構成する。分離システム1においては、懸濁液L1は、流路チップ10に流され、流路チップ10内において懸濁液L1から特定種類の誘電体粒子P1が分離される。分離システム1では、流路チップ10は、コンタミネーションの防止の観点から、使い捨て可能に構成される。
【0015】
図2は、流路チップ10の概略平面図である。
図2の流路チップ10は、基体10aと、分離電極50と、センサ電極60と、分離電極パッド71,72と、センサ電極パッド81,82とを備える。
【0016】
基体10aは、入口21と、流路30と、複数の収集部40-1,40-2(以下、総称して符号40を付す)とを有する。基体10aは、流路チップ10の外形を規定する部分である。本実施の形態では、基体10aは、矩形の板状である。基体10aは、例えば、ガラス又はシリコーン(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS))製の基板等を用いて形成される。一例として、基体10aは、分離電極50とセンサ電極60と分離電極パッド71,72とセンサ電極パッド81,82とが表面に形成された第1基板(例えば、ガラス基板)に、入口21と流路30と複数の収集部40-1,40-2とにそれぞれ対応する空間が表面に形成された第2基板(例えば、PDMS基板)を張り付けて構成されてよい。
【0017】
入口21は、
図1に示すように、基体10aにおいて懸濁液L1が導入される部分である。入口21は、例えば、懸濁液L1の供給源にチューブにより接続され、チューブを介して懸濁液L1が供給される。
【0018】
流路30は、基体10aにおいて入口21から導入された懸濁液L1の複数種類の誘電体粒子P1,P2が流れる部分である。
図2に示すように、流路30は、主流路31と、複数(図示例では2つ)の分岐流路32-1,32-2(以下、総称して符号32を付す)とを含む。
【0019】
図2の主流路31は、流路30の主体を構成する。主流路31は、流路30において特定種類の誘電体粒子P1の分離をするための部分である。本実施の形態では、主流路31は、平面視において矩形状である。主流路31の長さ方向(
図2における左右方向)の第1端(
図2における左端)は入口21に接続される。主流路31の長さ方向の第2端(
図2における右端)は各分岐流路32に接続される。
【0020】
複数の分岐流路32-1,32-2は、流路30において、主流路31で互いに分離された誘電体粒子P1,P2同士が再び混ざらないように誘電体粒子P1,P2を搬送する部分である。複数の分岐流路32-1,32-2は、主流路31において入口21とは反対側にある。したがって、各分岐流路32は、主流路31に対して下流側(
図2における右側)に位置する。分岐流路32-1は、主流路31の幅方向(
図2における上下方向)の第1端311側に接続される。
図1に示すように、分岐流路32-1は、主流路31で分離された特定種類の誘電体粒子P1が流れる部分である。分岐流路32-2は、主流路31の幅方向の第2端312側に接続される。
図2に示すように、分岐流路32-1は、複数種類の誘電体粒子P1,P2から特定種類の誘電体粒子P1が分離された残りの誘電体粒子P2が流れる部分である。
【0021】
複数の収集部40は、第1収集部40-1と、第2収集部40-2とを含む。第1収集部40-1は、分岐流路32-1を介して主流路31の幅方向の第1端311側に接続される。第1収集部40-1は、分岐流路32-1を流れる特定種類の誘電体粒子P1を収集する。第1収集部40-1は、例えば、排出口を備え、これによって、特定種類の誘電体粒子P1を含む溶液S1を流路チップ10から外部に供給してよい。第2収集部40-2は、分岐流路32-2を介して主流路31の幅方向W1の第2端312側に接続される。第2収集部40-2は、分岐流路32-2を流れる誘電体粒子P2を収集する。第2収集部40-2は、例えば、排出口を備え、これによって、誘電体粒子P2を含む溶液S2を流路チップ10から外部に供給してよい。
【0022】
分離電極50は、懸濁液L1の複数種類の誘電体粒子P1,P2のうち特定種類の誘電体粒子P1を所定方向に導く誘電泳動力を発生させるために流路30内に位置する。
図2では、分離電極50の全部ではなく一部が流路30内に位置する。本実施の形態では、所定方向は、主流路31の幅方向の第1端311側に向かう方向である。本実施の形態では、
図2に示すように、分離電極50は、主流路31に配置される。分離電極50は、主流路31の底面に配置される。分離電極50は、例えば、比較的安価な平面電極により形成されてよい。一例として、分離電極50は、基体10aの第1基板に形成される電極層と、電極層上に形成される保護層とを備えて構成されてよい。電極層の材料は、例えば、Al等の金属である。保護層は、例えば、酸化ケイ素である。
【0023】
分離電極50は、主流路31の底面に所定方向D1に並ぶ複数の歯部511,521を有するくし形電極である。所定方向D1は、誘電体粒子P1に作用させる誘電泳動力の方向に対応する。所定方向D1は、例えば、流路30において懸濁液L1が流れる方向(
図2における右方向)に沿って流路30の幅方向の第1端311から第2端312に向かう方向(
図2における右下方向)である。複数の歯部511,521は、複数の第1歯部511と複数の第2歯部521とを含む。第1歯部511と第2歯部521とは交互に並ぶ。複数の第1歯部511は、主流路31の幅方向の第1端311から第2端312に向かって延びる。複数の第2歯部521は、主流路31の幅方向の第2端312から第1端311に向かって延びる。
【0024】
図2の分離電極50は、一対の電極パターン51,52を含む。電極パターン51は、複数の第1歯部511と、主流路31の幅方向の第1端311側にあって複数の歯部511の基端を連結する連結部512とを備える。連結部512は流路30の外部にある。電極パターン52は、複数の第2歯部521と、主流路31の幅方向の第2端312側にあって複数の第2歯部521の基端を連結する連結部522とを備える。連結部522は流路30の外部にある。
【0025】
センサ電極60は、分離電極50とは別個の電極である。センサ電極60は、分離電極50に対して流路30の入口21と反対側にある。本実施の形態では、センサ電極60は、複数の分岐流路32-1,32-2にまたがって設けられる。センサ電極60は、懸濁液L1の電気抵抗を測定するために流路30内に位置する。
図2では、センサ電極60の全部ではなく一部が流路30内に位置する。なお、本実施の形態では、懸濁液L1の電気抵抗は、インピーダンス、又は、レジスタンス及びリアクタンスの少なくとも一つを含むとする。
【0026】
センサ電極60は、分岐流路32の底面に配置される。センサ電極60は、例えば、比較的安価な平面電極により形成されてよい。一例として、センサ電極60は、基体10aの第1基板に形成される電極層と、電極層上に形成される保護層とを備えて構成されてよい。電極層の材料は、例えば、Al等の金属である。保護層は、例えば、酸化ケイ素である。
【0027】
図2に示すように、センサ電極60は、流路30の底面に流路30の長さ方向に沿って並ぶ複数の歯部611,621を有するくし形電極である。本実施の形態では、複数の歯部611,621は、流路30の各分岐流路32にその長さ方向に沿って並ぶ。複数の歯部611,621は、複数の第1歯部611と複数の第2歯部621とを含む。第1歯部611と第2歯部621とは交互に並ぶ。第1分岐流路32-1において、複数の第1歯部611は、第1分岐流路32-1における第2分岐流路32-2とは反対側から第1分岐流路32-1における第2分岐流路32-2側に向かって延びる。複数の第2歯部621は、第1分岐流路32-1における第2分岐流路32-2側から第1分岐流路32-1における第2分岐流路32-2とは反対側に向かって延びる。第2分岐流路32-2において、複数の第1歯部611は、第2分岐流路32-2における第1分岐流路32-1とは反対側から第2分岐流路32-2における第1分岐流路32-1側に向かって延びる。複数の第2歯部621は、第2分岐流路32-2における第1分岐流路32-1側から第2分岐流路32-2における第1分岐流路32-1とは反対側に向かって延びる。
【0028】
図2のセンサ電極60は、第1電極パターン61と第2電極パターン62を含む。第1電極パターン61は、第1及び第2分岐流路32-1,32-2にそれぞれ位置する複数の第1歯部611と、第1分岐流路32-1に位置する複数の第1歯部611の基端を連結する連結部612と、第2分岐流路32-2に位置する複数の第1歯部611の基端を連結する連結部612と、連結部612同士を接続する接続部613とを備える。各連結部612は流路30の外部にある。第2電極パターン62は、第1及び第2分岐流路32-1,32-2にそれぞれ位置する複数の第2歯部621と、第1及び第2分岐流路32-1,32-2の間にあって複数の第2歯部621の基端を連結する連結部622とを備える。
【0029】
センサ電極60を用いて懸濁液L1の電気抵抗を測定するにあたっては、センサ電極60の第1及び第2電極パターン61,62間に測定用電圧を印加した状態で、センサ電極60の第1及び第2電極パターン61,62間に懸濁液L1を通って流れる電流を測定する。測定用電圧は、例えば、所定周波数の交流電圧である。これによって、センサ電極60の第1及び第2電極パターン61,62間のインピーダンスが測定可能である。センサ電極60の第1及び第2電極パターン61,62間のインピーダンスは、リアクタンス成分(虚数部)と、レジスタンス成分(実数部)とを含む。主に、リアクタンス成分は、センサ電極60によって決まり、レジスタンス成分は、懸濁液L1の電気抵抗によって決まる。より詳細には、レジスタンス成分は、センサ電極60の電気抵抗を含む。したがって、測定用電圧に対するセンサ電極60の第1及び第2電極パターン61,62間のインピーダンスから、懸濁液L1の電気抵抗を求めることが可能である。なお、測定用電圧の所定周波数は、ある特定の周波数又はある範囲を持った周波数帯であってよい。測定用電圧の所定周波数がある範囲を持った周波数帯である場合には、のこぎり波や三角波等を利用した計測が実施される。
【0030】
図3は、センサ電極60により求められるインピーダンス(センサ電極60の第1及び第2電極パターン61,62間のインピーダンス)のレジスタンス成分とリアクタンス成分との時間変化を示すグラフである。
図3は、所定時間の間、インピーダンスを計測した結果を示す。所定時間は、例えば、2時間である。
図3において、Xはリアクタンス成分を示し、Rはレジスタンス成分を示す。
図3から明らかなように、リアクタンス成分Xはほとんど変化していないが、レジスタンス成分Rは時間により変化している。特に、
図3ではレジスタンス成分Rは時間により減少している。
【0031】
分離電極パッド71,72は、分離電極50に所定電圧を印加するために用いられる。分離電極パッド71,72は、分離電極50の一対の電極パターン51,52間に所定電圧を印加するために、分離電極50の一対の電極パターン51,52にそれぞれ接続される。分離電極パッド71,72は、例えば、配線パターン等により分離電極50の一対の電極パターン51,52にそれぞれ接続される。分離電極パッド71,72は、基体10aの外面に位置するように配置される。分離電極パッド71,72間の電圧を制御することによって、分離電極50の電圧が制御可能である。
【0032】
センサ電極パッド81,82は、分離電極パッド71,72とは別に設けられる。センサ電極パッド81,82は、センサ電極60に測定用電圧を印加するために用いられる。センサ電極パッド81,82は、センサ電極60の第1及び第2電極パターン61,62間に測定用電圧を印加するために、センサ電極60の第1及び第2電極パターン61,62にそれぞれ接続される。センサ電極パッド81,82は、例えば、配線パターン等によりセンサ電極60の一対の電極パターン61,62にそれぞれ接続される。センサ電極パッド81,82は、基体10aの外面に位置するように配置される。センサ電極パッド81,82間の電圧を制御することによって、センサ電極60の電圧が制御可能である。
【0033】
図1及び
図2に示すように、流路チップ10は、懸濁液L1の電気抵抗を測定するためのセンサ電極60を備える。流路チップ10において、分離電極50とセンサ電極60とは別個の電極である。そのため、分離電極50とセンサ電極60とを、それぞれの目的に適した条件で設計することが可能である。例えば、分離電極50をセンサ電極60として用いる場合には、特定種類の誘電体粒子P1に誘電泳動力を作用させるという分離電極50に求められる条件により構成が制限されるが、本実施の形態では、センサ電極60が分離電極50とは独立した電極であるから、分離電極50に求められる条件によりセンサ電極60の構成は制限されない。よって、センサ電極60が分離電極50の構造に依存しなくてすむから、高い設計自由度によりセンサ電極60による検出感度を調整できる。その結果、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離作業の安定化が図れる。
【0034】
以下、センサ電極60の構成についてさらに説明する。本実施の形態では、センサ電極60において流路30内に位置する部分の面積は、分離電極50において流路30内に位置する部分の面積より大きい。本実施の形態の場合、センサ電極60において流路30内に位置する部分の面積は、センサ電極60の複数の歯部611,621において流路30内に位置する部分の面積の総和である。センサ電極60において流路30内に位置する部分の面積は、例えば、歯部611,621の寸法(主に幅)、歯部611,621の間隔、及び、歯部611,621の数により変更可能である。センサ電極60において流路30内に位置する部分の面積を調整するにあたっては、歯部611,621の数を変更することが好ましい。本実施の形態の場合、分離電極50において流路30内に位置する部分の面積は、分離電極50の複数の歯部511,521において流路30内に位置する部分の面積の総和である。分離電極50において流路30内に位置する部分の面積は、例えば、歯部511,521の寸法(主に幅)、歯部511,521の間隔、及び、歯部511,521の数により変更可能である。分離電極50において流路30内に位置する部分の面積を調整するにあたっては、歯部511,521の数を変更することが好ましい。
【0035】
分離電極50においては、誘電体粒子P1への負担を軽減するため、誘電体粒子P1と分離電極50との接触時間は短いほうがよい。そのため、分離電極50において流路30内に位置する部分の面積は小さく設定される傾向にある。一方で、センサ電極60において流路30内に位置する部分の面積は大きいほうがよい場合がある。
【0036】
図4は、センサ電極60の面積の違いによる測定用電圧の周波数に対するインピーダンスの測定値の変化を示す両対数グラフである。
図4において、G11は、センサ電極の面積が小さい場合に対応し、G12は、センサ電極の面積が大きい場合に対応する。G12のほうが、G11よりも、センサ電極60において流路30内に位置する部分の面積が大きい。
図4から分かるように、センサ電極60の面積の違いによって、測定用電圧の周波数に対するインピーダンスの測定値の変化が異なる。
【0037】
図5は、センサ電極60の面積の違いによる測定用電圧の周波数に対する計測効率の変化を示す片対数グラフである。計測効率は、インピーダンスの測定値に対する懸濁液L1の電気抵抗の百分率である。
図5において、G21は、センサ電極の面積が小さい場合に対応し、G22は、センサ電極の面積が大きい場合に対応する。
図5に示すように、G21の計測効率の最大値が40%程度であるのに対して、G22の計測効率の最大値は90%を超える。計測効率が高いということは、インピーダンスの測定値に対するセンサ電極60のインピーダンスの影響が少ないということであり、センサ電極60の性能のばらつきによる影響を低減して、流路チップ10における性能のばらつきを低減できる。よって、計測効率は高いほうがよい。
【0038】
懸濁液L1の電気抵抗は、時間により変化する場合がある。懸濁液L1の電気抵抗の変化をどの程度許容できるかは、センサ電極60のインピーダンス(主にリアクタンス)により決まる。
図6は、センサ電極60の面積が小さい場合の周波数に対するインピーダンスの測定値の変化の範囲を示す両対数グラフである。
図7は、センサ電極60の面積が大きい場合の周波数に対するインピーダンスの測定値の変化の範囲を示す両対数グラフである。懸濁液L1の電気抵抗が変化することにより、周波数に対するインピーダンスの測定値が変化する。これは、
図6及び
図7において、グラフの上下移動として現れている。グラフがどの程度変化できるかは、センサ電極60のインピーダンスで決まる。
図6及び
図7において、点線G31,G32で挟まれた領域が、周波数に対するインピーダンスの測定値のグラフが変化可能な範囲であって、点線G31,G32はセンサ電極60のインピーダンスで決まる。点線G31,G32は、懸濁液L1の電気抵抗の変化による影響を受けない。点線G31,32間の距離、インピーダンスの測定値の変化の範囲が周波数方向に広がれば広がるほど、懸濁液L1の電気抵抗の計測効率が向上し、さらに計測に利用可能な周波数帯域も広がる。
図6及び
図7から明らかなように、センサ電極60の面積が大きい場合には、計測に利用可能な周波数帯域が広く、ある一つの周波数で一桁以上の懸濁液L1の電気抵抗の変動を読み取ることができる場合がある。一方で、センサ電極60の面積が小さい場合には、計測可能な周波数帯域が狭く、センサ電極60による計測の性能は、センサ電極60の面積が大きい場合よりも劣る。
【0039】
このように、センサ電極60において流路30内に位置する部分の面積は大きいほうが好ましい。よって、本実施の形態では、センサ電極60において流路30内に位置する部分の面積は、分離電極50において流路30内に位置する部分の面積より大きく設定される。これによって、分離電極50による誘電体粒子P1への負担を軽減しながらも、センサ電極60による計測の性能の向上が図れる。
【0040】
上述したように、計測効率(インピーダンスの測定値に対する懸濁液L1の電気抵抗の百分率)は高いほうが好ましい。よって、センサ電極60のリアクタンスは、規定値以上の計測効率が得られるように設定されるとよい。本実施の形態では、センサ電極60のリアクタンスは、懸濁液L1の電気抵抗の測定範囲の下限よりも小さい。例えば、センサ電極60のリアクタンスは、懸濁液L1の電気抵抗の測定範囲の下限の1/5以下であってよい。センサ電極60のリアクタンスは、測定用電圧の周波数に対する値である。懸濁液L1の電気抵抗の測定範囲は、流路チップ10に供給される懸濁液L1の性質に基づいて適宜設定される。例えば、懸濁液L1の電気抵抗の測定範囲が、700Ω~1000Ω程度である場合に、センサ電極60のリアクタンスは100Ω程度に設定される。
【0041】
[1.1.2.2 電圧制御装置]
図1の電圧制御装置11は、誘電泳動力を発生させるために流路チップ10に与える電圧を制御する。本実施の形態では、電圧制御装置11は、分離電極50の電圧を制御することで、懸濁液L1に含まれる複数種類の誘電体粒子P1,P2からの特定種類の誘電体粒子P1の分離をする。電圧制御装置11は、例えば、ファンクションジェネレータを備える。
図1の電圧制御装置11は、分離電極パッド71,72を介して分離電極50に接続される。電圧制御装置11は、複数種類の誘電体粒子P1,P2のうち特定種類の誘電体粒子P1を所定方向に導く誘電泳動力を発生させるために分離電極50の電圧を制御する。本実施の形態では、電圧制御装置11は、分離電極パッド71,72を介して、分離電極50に所定電圧を印加する。所定電圧は、例えば、交流電圧である。所定電圧の周波数は、分離電極50によって特定種類の誘電体粒子P1に対して正の誘電泳動力が作用するように設定される。この場合に、複数種類の誘電体粒子P1,P2のうちの特定種類の誘電体粒子P1以外の誘電体粒子P2に対しては、誘電泳動力が作用しないか、又は、正又は負の誘電泳動力(引力又は斥力)が作用したとしてもその誘電泳動力は比較的小さくなるように、周波数が設定される。所定電圧の周波数は、例えば、600kHzである。
【0042】
[1.1.2.3 測定装置]
図1の測定装置12は、センサ電極60からの出力に基づいて懸濁液L1の電気抵抗を測定する。本実施の形態では、測定装置12は、センサ電極60の電圧を制御することで、懸濁液L1の電気抵抗を測定する。測定装置12は、例えば、ファンクションジェネレータ等の信号発生器とオシロスコープ等の測定器との組み合わせ、又はソース/メジャー・ユニットを備える。
図1の測定装置12は、センサ電極パッド81,82を介してセンサ電極60に接続される。測定装置12は、センサ電極パッド81,82を介してセンサ電極60の第1及び第2電極パターン61,62間に測定用電圧を印加した状態で、センサ電極60の第1及び第2電極パターン61,62間に流れる電流をセンサ電極60からの出力として測定する。測定用電圧とセンサ電極60からの出力とから、センサ電極60の第1及び第2電極パターン61,62間のインピーダンスが求まる。センサ電極60の第1及び第2電極パターン61,62間のインピーダンスは、センサ電極60によって決まるリアクタンス成分と、懸濁液L1の電気抵抗によって決まるレジスタンス成分とを含む。したがって、測定装置12は、測定用電圧に対するセンサ電極60の第1及び第2電極パターン61,62間のインピーダンスから、懸濁液L1の電気抵抗を求めることが可能である。
【0043】
[1.1.2.4 解析装置]
図1の解析装置13は、懸濁液L1に含まれる複数種類の誘電体粒子P1,P2からの特定種類の誘電体粒子P1の分離に関する解析を実行する。
図1の解析装置13は、撮像装置131と、処理装置132と、表示装置133とを備える。
【0044】
撮像装置131は、流路チップ10における対象部位の画像を取得する。対象部位は、例えば、主流路31である。主流路31の画像から、流路30を通過する誘電体粒子P1,P2の移動軌跡が得られる。撮像装置131は、例えば、CCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサ等の撮像素子を有するカメラと、光学顕微鏡モジュールとを備える。光学顕微鏡モジュールは、位相差顕微鏡であってもよいし、落射顕微鏡であってもよい。また、光学顕微鏡モジュールは、例えばレンズ交換などにより、位相差顕微鏡と落射顕微鏡とに切替え可能に構成されてもよい。また、蛍光観察を行う場合、適宜、蛍光フィルタを用いる。撮像装置131の動作は、処理装置132によって制御されてよい。
【0045】
表示装置133は、処理装置132からの情報を表示する。表示装置133は、例えば、液晶ディスプレイ及びや有機ELディスプレイディスプレイである。
【0046】
処理装置132は、解析装置13の動作を制御する。処理装置132は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。1以上のプロセッサが(1以上のメモリ等に記憶された)プログラムを実行することで、所定の機能を実現する。一例として、処理装置132は、撮像装置131で撮像された画像について画像解析を行い、主流路31を通過する誘電体粒子P1,P2の移動軌跡を求める。処理装置132は、撮像装置131で撮像された画像、又は、画像解析によって求められた移動軌跡を、表示装置133により表示してもよい。
【0047】
[1.1.3 効果等]
以上述べた、流路チップ10は、特定種類の誘電体粒子P1を含む複数種類の誘電体粒子P1,P2を含む懸濁液L1が導入される入口21と入口21から導入された懸濁液L1の複数種類の誘電体粒子P1,P2が流れる流路30とを有する基体10aと、複数種類の誘電体粒子P1,P2のうち特定種類の誘電体粒子P1を所定方向に導く誘電泳動力を発生させるために流路30内に位置する分離電極50と、懸濁液L1の電気抵抗を測定するために流路30内に位置するセンサ電極60とを備える。この構成によれば、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離作業の安定化が図れる。
【0048】
また、流路チップ10において、分離電極50とセンサ電極60とは別個の電極である。この構成によれば、分離電極50とセンサ電極60とをそれぞれの目的に適した条件で設計することができて、特定種類の誘電体粒子P1の分離作業の安定化が図れる。
【0049】
また、流路チップ10において、センサ電極60において流路30内に位置する部分の面積は、分離電極50において流路30内に位置する部分の面積より大きい。この構成によれば、流路チップ10における性能のばらつきを低減でき、さらに、センサ電極60による計測の性能を向上できる。
【0050】
また、流路チップ10において、センサ電極60のリアクタンスは、懸濁液L1の電気抵抗の測定範囲の下限よりも小さい。この構成によれば、流路チップ10における性能のばらつきを低減できる。
【0051】
また、流路チップ10において、センサ電極60のリアクタンスは、懸濁液L1の電気抵抗の測定範囲の下限の1/5以下である。この構成によれば、流路チップ10における性能のばらつきを低減でき、さらに、センサ電極60による計測の性能を向上できる。
【0052】
また、流路チップ10において、センサ電極60は、流路30の底面に流路30の長さ方向に沿って並ぶ複数の歯部611,621を有するくし形電極である。この構成によれば、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離作業の安定化が図れる。
【0053】
また、流路チップ10において、センサ電極60は、流路30において分離電極50に対して入口21と反対側にある。この構成によれば、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離作業の安定化が図れる。
【0054】
また、流路チップ10において、流路30は、複数の収集部40に繋がる複数の分岐流路32を含む。センサ電極60は、複数の分岐流路32にまたがって設けられる。この構成によれば、流路30内を通過する全ての懸濁液L1の電気抵抗を測定できる。例えば、流路30の幅方向において懸濁液L1の電気抵抗の分布が生じると、複数の収集部40に流入する懸濁液L1が異なる電気抵抗を有する場合がある。上記構成では流路30内を通過する全ての懸濁液L1の電気抵抗を測定するから、このような懸濁液L1の電気抵抗の分布の影響を低減できて、より正確な懸濁液L1の電気抵抗の測定が可能となる。また、電圧制御装置11、測定装置12及び解析装置13等の外部装置への適切なフィードバックが可能になる。
【0055】
以上述べた分離システム1は、流路チップ10と、センサ電極60からの出力に基づいて懸濁液L1の電気抵抗を測定する測定装置12とを備える。この構成によれば、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離作業の安定化が図れる。
【0056】
また、分離システム1において、流路チップ10は使い捨て可能である。この構成によれば、コンタミネーションを防止でき、さらに分離システム1の使い勝手が向上する。
【0057】
[1.2 実施の形態2]
図8は、実施の形態2の流路チップの構成例の概略平面図である。以下、
図8の流路チップには符号10Aを付す。
図8の流路チップ10Aは、複数のセンサ電極60A-1,60A-2(以下、総称して符号60Aを付す)を備える。複数のセンサ電極60A-1,60A-2は、複数の分岐流路32-1,32-2それぞれに設けられる。
【0058】
図8に示すように、センサ電極60A-1は、流路30の底面に流路30の長さ方向に沿って並ぶ複数の歯部611,621を有するくし形電極である。本実施の形態では、センサ電極60A-1の複数の歯部611,621は、流路30の第1分岐流路32-1にその長さ方向に沿って並ぶ。センサ電極60A-1は、第1電極パターン61A-1と第2電極パターン62A-1とを含む。第1電極パターン61A-1は、第1分岐流路32-1に位置する複数の第1歯部611と、第1分岐流路32-1の外部にあって複数の第1歯部611の基端を連結する連結部612とを含む。第2電極パターン62A-2は、第2分岐流路32-2に位置する複数の第2歯部621と、第1分岐流路32-1の外部にあって複数の第2歯部621の基端を連結する連結部622とを含む。
【0059】
図8に示すように、センサ電極60A-2は、流路30の底面に流路30の長さ方向に沿って並ぶ複数の歯部611,621を有するくし形電極である。本実施の形態では、センサ電極60A-2の複数の歯部611,621は、流路30の第2分岐流路32-2にその長さ方向に沿って並ぶ。センサ電極60A-2は、第1電極パターン61A-2と第2電極パターン62A-2とを含む。第1電極パターン61A-2は、第2分岐流路32-2に位置する複数の第1歯部611と、第2分岐流路32-2の外部にあって複数の第1歯部611の基端を連結する連結部612とを含む。第2電極パターン62A-2は、第2分岐流路32-2に位置する複数の第2歯部621と、第2分岐流路32-2の外部にあって複数の第2歯部621の基端を連結する連結部622とを含む。
【0060】
図8の流路チップ10Aは、センサ電極60A-1に接続されるセンサ電極パッド81-1,82-1と、センサ電極60A-2に接続されるセンサ電極パッド81-2,82-2とを備える。複数のセンサ電極60Aには、個別に、電圧を印加できるようになっている。
【0061】
以上述べたように、流路チップ10Aでは、流路30は、複数の収集部40に繋がる複数の分岐流路32を含む。センサ電極60Aは、複数の分岐流路32の各々に設けられる。この構成によれば、複数の分岐流路32それぞれを通過する懸濁液L1の電気抵抗を測定できる。例えば、流路30の幅方向において懸濁液L1の電気抵抗の分布が生じると、複数の収集部40に流入する懸濁液L1が異なる電気抵抗を有する場合がある。上記構成では各分岐流路32を通過する懸濁液L1の抵抗を測定するから、このような懸濁液L1の電気抵抗の分布の影響を低減できて、より正確な懸濁液L1の電気抵抗の測定が可能となる。また、電圧制御装置11、測定装置12及び解析装置13等の外部装置への適切なフィードバックが可能になる。流路チップ10Aが複数のセンサ電極60Aを備えているから、複数のセンサ電極60Aからの出力を利用できる。例えば、複数のセンサ電極60Aからの出力の平均値を利用して懸濁液L1の電気抵抗を求めることが可能となる。この場合、センサ電極60Aのばらつきによる影響を低減できる。また、複数のセンサ電極60Aの一部が断線等しても、懸濁液L1の電気抵抗を求めることが可能となる。
【0062】
[1.3 実施の形態3]
図9は、実施の形態3の流路チップの構成例1の概略平面図である。以下、
図9の流路チップには符号10B1を付す。
図9の流路チップ10B1は、実施の形態1の流路チップ10の流路30とは異なる流路30Bを備える。
図9の流路30Bは、実施の形態1のような分岐流路32を有しておらず、主流路31で構成される。主流路31の長さ方向(
図9における左右方向)の第1端(
図9における左端)は入口21に接続される。主流路31の長さ方向の第2端(
図9における右端)は収集部40に接続される。
【0063】
図9の流路チップ10B1は、実施の形態1の流路チップ10のセンサ電極60とは異なるセンサ電極60Bを備える。
図9のセンサ電極60Bは、分離電極50に対して入口21と反対側にある。より詳細には、センサ電極60Bは、主流路31において、分離電極50と収集部40との間にある。
図9に示すように、センサ電極60Bは、主流路31の底面に主流路31の長さ方向に沿って並ぶ複数の歯部611,621を有するくし形電極である。センサ電極60Bは、第1電極パターン61Bと第2電極パターン62Bとを含む。第1電極パターン61Bは、主流路31に位置する複数の第1歯部611と、主流路31の外部にあって複数の第1歯部611の基端を連結する連結部612とを含む。第2電極パターン62Bは、主流路31に位置する複数の第2歯部621と、主流路31の外部にあって複数の第2歯部621の基端を連結する連結部622とを含む。
【0064】
図9の流路チップ10B1において、センサ電極パッド81,82は、センサ電極60Bの第1電極パターン61B及び第2電極パターン62Bにそれぞれ接続される。
【0065】
なお、流路チップ10B1では、分離電極50は、特定種類の誘電体粒子P1を捕捉するように構成されてよい。つまり、分離電極50は、複数種類の誘電体粒子P1,P2のうち特定種類の誘電体粒子P1を所定方向に導く誘電泳動力を発生させるために流路30B内に位置するが、所定方向は分離電極50に近付く方向であってよい。
【0066】
図10は、実施の形態3の流路チップの構成例2の概略平面図である。以下、
図10の流路チップには符号10B2を付す。
図10の流路チップ10B2は、
図9の流路チップ10B1と、分離電極50とセンサ電極60Bとの位置関係が異なる。
図10のセンサ電極60Bは、流路30Bにおいて分離電極50に対して入口21と反対側ではなく、流路30Bにおいて入口21と分離電極50との間にある。
【0067】
実施の形態3の流路チップにおいては、センサ電極60Bは、流路30Bの入口21と分離電極50との間と、分離電極50に対して入口21と反対側との両方にあってよい。このように複数のセンサ電極60Bを設ける場合には、例えば、複数のセンサ電極60Bからの出力の平均値を利用して懸濁液L1の電気抵抗を求めることが可能となる。この場合、センサ電極60Bのばらつきによる影響を低減できる。また、複数のセンサ電極60Bの一部が断線等しても、懸濁液L1の電気抵抗を求めることが可能となる。
【0068】
以上述べたように、センサ電極60Bは、入口21と分離電極50との間と、分離電極50に対して入口21と反対側との少なくとも一方にあればよい。この構成によれば、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離作業の安定化が図れる。この点は、前述の実施の形態1及び後述の実施の形態4においても同様である。
【0069】
[1.4 実施の形態4]
図11は、実施の形態4の流路チップの構成例1の概略平面図である。以下、
図11の流路チップには符号10C1を付す。
図11の流路チップ10C1は、実施の形態1の流路チップ10の流路30とは異なる流路30Cを備える。
図11の流路30Cは、主流路31と入口22とを接続する接続路33を備える。入口22は、基体10aに形成される。入口22は、基体10aにおいて置換液が導入される部分である。置換液は、例えば、懸濁液L1から不要成分を除去して、懸濁液L1の複数種類の誘電体粒子P1,P2を搬送するために用いられる。不要成分は、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離において不要な成分である。不要成分としては、血液に含まれる赤血球等の小型細胞P3及び溶液が挙げられる。置換液は、複数種類の誘電体粒子P1,P2の搬送が可能で、複数種類の誘電体粒子P1,P2への誘電泳動力を作用させることを阻害しないように選択されてよい。特に、置換液は特定種類の誘電体粒子P1の分離を容易にするために、懸濁液L1の溶液よりも導電率が低い液体が利用される。なお、基体10aには、置換液により置換された懸濁液L1の不要成分を排出する排出口が設けられてよい。
【0070】
図12は、実施の形態4の流路チップの構成例2の概略平面図である。以下、
図12の流路チップには符号10C2を付す。
図12の流路チップ10C2は、実施の形態2の流路チップ10Aの流路30とは異なる流路30Cを備える。
図12の流路30Cは、主流路31と入口22とを接続する接続路33を備える。
【0071】
図13は、実施の形態4の流路チップの構成例3の概略平面図である。以下、
図13の流路チップには符号10C3を付す。
図13の流路チップ10C3は、実施の形態3の流路チップ10B1の流路30Bとは異なる流路30Cを備える。
図13の流路30Cは、主流路31と入口22とを接続する接続路33を備える。
【0072】
以上述べたように、実施の形態4において、流路30Cは、置換液を導入するための入口22に接続される接続路33を有してよい。これによって、懸濁液L1から不要成分の除去が可能となる。
【0073】
実施の形態4のように、置換液を利用する場合、置換液による置換が十分に行われない場合がある。このような場合、懸濁液L1の電気抵抗は不安定になりやすい。しかしながら、実施の形態4も、センサ電極60,60A,60Bを備えているから、センサ電極60,60A,60Bによる懸濁液L1の電気抵抗の測定値に応じて分離電極50に印加する電圧を調整したり、流路チップ10C1,10C2,10C3に供給する懸濁液L1の成分を調整したりできる。センサ電極60,60A,60Bによる懸濁液L1の電気抵抗の測定値が異常値である場合に、分離作業を中止することが可能となる。したがって、流路チップ10C1,10C2,10C3によれば、懸濁液L1からの特定種類の誘電体粒子P1の分離作業の安定化が図れる。
【0074】
[2.変形例]
本開示の実施の形態は、上記実施の形態に限定されない。上記実施の形態は、本開示の課題を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施の形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0075】
一変形例において、分離システム1は、必ずしも解析装置13を備えている必要はない。分離システム1は、流路チップ10と測定装置12とを備えてよい。
【0076】
一変形例において、懸濁液L1は血液に限定されない。懸濁液L1は、分離対象となる誘電体粒子を含んでいれば特に限定されない。誘電体粒子は、上記の細胞に限定されない。誘電体粒子は、例えば、膜小胞や、微生物、真菌、芽胞、ウイルス、エクソソーム、DNAやRNAなどの核酸であってもよい。
【0077】
一変形例において、流路チップ10,10A,10B1,10B2,10C1,10C2,10C3の形状は変更可能である。特に、基体10aの形状は上記の実施の形態に限定されない。基体10aの形状は、流路30,30B,30Cに応じて適宜設定されればよい。流路30,30B,30Cは、上記の実施の形態のような直線状ではなく、曲線状であってよい。また、流路30,30B,30Cの形状によっては、収集部40も必須ではない。
【0078】
一変形例において、分離電極50の数及び形状は変更可能である。分離電極50は、複数種類の誘電体粒子から特定種類の誘電体粒子を所定方向に導く誘電泳動力を発生させることができればよい。分離電極50の形状によっては、分離電極パッド71,72は省略可能である。
【0079】
一変形例において、センサ電極60,60A,60Bの形状は変更可能である。センサ電極60,60A,60Bは、懸濁液L1の電気抵抗を測定できればよい。センサ電極60,60A,60Bの形状によっては、センサ電極パッド81,82は省略可能である。
【0080】
一変形例において、流路チップ10A,10C2では、センサ電極60Aは、複数の分岐流路32の全てに設けられていなくてよい。センサ電極60Aは、複数の分岐流路32の少なくとも一つに設けられていればよい。この場合には、分岐流路(32)毎の懸濁液(L1)の電気抵抗の測定が可能となる。特に、複数の分岐流路32の全部ではなく一部の分岐流路32だけにセンサ電極60Aを設けることで、センサ電極60Aの設置に必要なスペース及びコストの低減が図れる。
【0081】
一変形例において、流路チップ10,10A,10C1,10C2,10C3においても、流路30,30B,30Cにおける入口21と分離電極50との間にセンサ電極60Bを設けてよい。
【0082】
一変形例において、流路30は、入口21と分離電極50との間にフィルタを備えてよい。フィルタは、例えば、懸濁液L1から複数種類の誘電体粒子P1,P2よりサイズが小さい粒子を除去する。複数種類の誘電体粒子P1,P2よりサイズが小さい粒子は、複数種類の誘電体粒子P1,P2のうち最もサイズが小さい誘電体粒子よりサイズが小さい粒子である。複数種類の誘電体粒子P1,P2よりサイズが小さい粒子は、例えば、懸濁液L1に含まれる赤血球等の小型細胞である。このようなフィルタは、水力学的濾過法(hydrodynamic filtration;HDF)の原理により、懸濁液L1において複数種類の誘電体粒子P1,P2と複数種類の誘電体粒子P1,P2よりサイズが小さい粒子とを分離可能である。
【0083】
[3.態様]
上記実施の形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施の形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0084】
第1の態様は、流路チップ(10;10A;10B1;10B2;10C1;10C2;10C3)であって、特定種類の誘電体粒子(P1)を含む複数種類の誘電体粒子(P1,P2)を含む懸濁液(L1)が導入される入口(21)と前記入口(21)から導入された前記懸濁液(L1)の複数種類の誘電体粒子(P1,P2)が流れる流路(30;30B;30C)とを有する基体(10a)と、前記複数種類の誘電体粒子(P1,P2)のうち特定種類の誘電体粒子(P1)を所定方向に導く誘電泳動力を発生させるために前記流路(30;30B;30C)内に位置する分離電極(50)と、前記懸濁液(L1)の電気抵抗を測定するために前記流路(30;30B;30C)内に位置するセンサ電極(60;60A;60B)とを備える。この態様によれば、懸濁液(L1)からの特定種類の誘電体粒子(P1)の分離作業の安定化が図れる。
【0085】
第2の態様は、第1の態様に基づく流路チップ(10;10A;10B1;10B2;10C1;10C2;10C3)である。第2の態様において、前記分離電極(50)と前記センサ電極(60;60A;60B)とは別個の電極である。この態様によれば、分離電極(50)とセンサ電極(60)とをそれぞれの目的に適した条件で設計することができて、特定種類の誘電体粒子(P1)の分離作業の安定化が図れる。
【0086】
第3の態様は、第1又は第2の態様に基づく流路チップ(10;10A;10B1;10B2;10C1;10C2;10C3)である。第3の態様において、前記センサ電極(60;60A;60B)において前記流路(30;30B;30C)内に位置する部分の面積は、前記分離電極(50)において前記流路(30;30B;30C)内に位置する部分の面積より大きい。この態様によれば、流路チップ10における性能のばらつきを低減でき、さらに、センサ電極(60)による計測の性能を向上できる。
【0087】
第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか一つに基づく流路チップ(10;10A;10B1;10B2;10C1;10C2;10C3)である。第4の態様において、前記センサ電極(60;60A;60B)のインピーダンス(又はリアクタンスとレジスタンス)は、前記懸濁液(L1)の電気抵抗の測定範囲の下限よりも小さい。この態様によれば、流路チップ10における性能のばらつきを低減できる。
【0088】
第5の態様は、第4の態様に基づく流路チップ(10;10A;10B1;10B2;10C1;10C2;10C3)である。第5の態様において、前記センサ電極(60;60A;60B)のインピーダンス(又はリアクタンスとレジスタンス)は、前記懸濁液(L1)の電気抵抗の測定範囲の下限の1/5以下である。この態様によれば、流路チップ10における性能のばらつきを低減でき、さらに、センサ電極(60)による計測の性能を向上できる。
【0089】
第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか一つに基づく流路チップ(10;10A;10B1;10B2;10C1;10C2;10C3)である。第6の態様において、前記センサ電極(60;60A;60B)は、前記流路(30;30B;30C)の底面に前記流路(30;30B;30C)の長さ方向に沿って並ぶ複数の歯部(611,621)を有するくし形電極である。この態様によれば、懸濁液(L1)からの特定種類の誘電体粒子(P1)の分離作業の安定化が図れる。
【0090】
第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか一つに基づく流路チップ(10;10A;10B1;10B2;10C1;10C2;10C3)である。第7の態様において、前記センサ電極(60;60A;60B)は、前記流路(30B)において前記入口(21)と前記分離電極(50)との間と、前記流路(30B)において前記分離電極(50)に対して前記入口(21)と反対側との少なくとも一方にある。この態様によれば、懸濁液(L1)からの特定種類の誘電体粒子(P1)の分離作業の安定化が図れる。
【0091】
第8の態様は、第1~第7の態様のいずれか一つに基づく流路チップ(10A;10C2)である。第8の態様において、前記流路(30;30C)は、複数の収集部(40)に繋がる複数の分岐流路(32)を含む。前記センサ電極(60A)は、前記複数の分岐流路(32)の少なくとも一つに設けられる。この態様によれば、分岐流路(32)毎の懸濁液(L1)の電気抵抗の測定が可能となる。ここで、複数の分岐流路(32)の全部にセンサ電極(60A)を設けることで、流路(30)の幅方向において懸濁液(L1)の電気抵抗の分布が生じても、このような懸濁液(L1)の電気抵抗の分布の影響を低減できて、より正確な懸濁液(L1)の電気抵抗の測定が可能となる。一方で、複数の分岐流路(32)の全部ではなく一部の分岐流路(32)だけにセンサ電極(60A)を設けることで、センサ電極(60A)の設置に必要なスペース及びコストの低減が図れる。
【0092】
第9の態様は、第1~第7の態様のいずれか一つに基づく流路チップ(10;10C1)である。第9の態様において、前記流路(30;30C)は、複数の収集部(40)に繋がる複数の分岐流路(32)を含む。前記センサ電極(60)は、前記複数の分岐流路(32)にまたがって設けられる。この態様によれば、流路(30)内を通過する全ての懸濁液(L1)の電気抵抗を測定できて、より正確な懸濁液(L1)の電気抵抗の測定が可能になる。
【0093】
第10の態様は、分離システム(1)であって、第1~第9の態様のいずれか一つに基づく流路チップ(10;10A;10B1;10B2;10C1;10C2;10C3)と、前記センサ電極(60;60A;60B)からの出力に基づいて前記懸濁液(L1)の電気抵抗を測定する測定装置(12)とを備える。この態様によれば、懸濁液(L1)からの特定種類の誘電体粒子(P1)の分離作業の安定化が図れる。
【0094】
第11の態様は、第10の態様に基づく分離システム(1)である。第11の態様において、前記流路チップ(10;10A;10B1;10B2;10C1;10C2;10C3)は使い捨て可能である。この態様によれば、コンタミネーションを防止でき、さらに分離システム(1)の使い勝手が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本開示は、流路チップ、及び、分離システムに適用される。具体的には、懸濁液に含まれる複数種類の誘電体粒子から特定種類の誘電体粒子を分離するための流路チップ、及び、分離システムに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 分離システム
10,10A,10B1,10B2,10C1,10C2,10C3 流路チップ
10a 基体
12 測定装置
21 入口
30,30B,30C 流路
40-1 第1収集部(収集部)
40-2 第2収集部(収集部)
50 分離電極
60,60A,60B センサ電極
611 第1歯部(歯部)
621 第2歯部(歯部)
L1 懸濁液
P1,P2 誘電体粒子