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  • 特開-空中映像表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006167
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】空中映像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/0346 20130101AFI20230111BHJP
   G06F 3/038 20130101ALI20230111BHJP
   G02B 30/60 20200101ALI20230111BHJP
【FI】
G06F3/0346 422
G06F3/038 310Y
G02B30/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108625
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 雅彦
【テーマコード(参考)】
2H199
5B087
【Fターム(参考)】
2H199BA32
2H199BB12
2H199BB18
2H199BB20
2H199BB52
2H199BB59
5B087AA02
5B087BC32
5B087CC33
5B087DD09
(57)【要約】
【課題】空中タッチパネルとして用いられる空中映像表示装置において、タッチ操作の精度を向上させる。
【解決手段】筐体2と、映像表示部3と、前記映像表示部に表示された映像を反射させるビームスプリッター4と、ビームスプリッターで反射された映像を再帰反射させる再帰反射シート5と、再帰反射された映像が筐体の外部で結像される空中映像が含まれる空間領域内における使用者の指の指先の位置を検知するセンサー7と、センサーで検出された指先の位置から空中映像に最も近い指の腹の位置を算出する位置算出部8とを備えており、位置算出部は、前記映像表示部の表示面に垂直な線とビームスプリッターとのなす角と指先を半球体と仮定したときの半球体の直径とに基づいて、センサーで検出された指先の位置から空中映像に最も近い指の腹の位置を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部に配置された映像表示部と、
前記筐体の開口部に設置され、前記映像表示部に表示された映像を反射させるビームスプリッターと、
前記筐体の内部に設置され、前記ビームスプリッターで反射された前記映像を再帰反射させる再帰反射シートと、
前記再帰反射シートで再帰反射された前記映像が前記筐体の外部で結像される空中映像が含まれる空間領域内における使用者の指の指先の位置を検知するセンサーと、
前記センサーで検出された前記指先の位置から前記空中映像に最も近い前記指の腹の位置を算出する位置算出部とを備えた空中映像表示装置であって、
前記位置算出部は、前記映像表示部の表示面に垂直な線と前記ビームスプリッターとのなす角と前記指先を半球体と仮定したときの前記半球体の直径とに基づいて、前記センサーで検出された前記指先の位置から前記空中映像に最も近い前記指の腹の位置を算出することを特徴とする空中映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、空中映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特殊なメガネが不要で、霧などのスクリーンを使用せずに空中に映像を表示することができる空中映像表示装置が知られている。例えば、ビームスプリッターと再帰反射シートとを用いて、映像表示部に表示された映像をビームスプリッターに対して面対称な位置の空間に結像させて映像を表示する空中映像表示装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-25776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空中映像表示装置において、空中に表示された映像(以下、空中映像と記す)としてタッチパネルを表示させ、使用者が指でそのタッチパネルを操作する空中タッチパネルとしての使用方法がある。使用者の指の位置は、空中映像表示装置の本体に設置された三次元距離センサーで検知される。使用者は空中映像として表示されたタッチパネルに対して上から指を近づけて操作することになる。一方、三次元距離センサーは、使用者がタッチパネルを操作するために空中映像表示装置に近づいたことを検知するためにも用いられる。そのため、三次元距離センサーは、空中映像表示装置の本体の上部に設置されている。三次元距離センサーはこのセンサーから見える物体の表面の位置のみが測定可能であるため、三次元距離センサーは使用者の指の背の方、すなわち爪のある方を測定することになる。そのため、三次元距離センサーは、タッチパネルのタッチ位置となる使用者の指の腹は指の背の陰になって直接測定できない。その結果、三次元距離センサーで測定された指の背の位置と使用者の指の腹の位置とにずれが生じ、タッチ操作の精度が低いという問題があった。
【0005】
本願は、上述の課題を解決するためになされたもので、空中タッチパネルとして用いられる空中映像表示装置において、タッチ操作の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の空中映像表示装置は、筐体と、筐体の内部に配置された映像表示部と、筐体の開口部に設置され、映像表示部に表示された映像を反射させるビームスプリッターと、筐体の内部に設置され、ビームスプリッターで反射された映像を再帰反射させる再帰反射シートと、再帰反射シートで再帰反射された映像が筐体の外部で結像される空中映像が含まれる空間領域内における使用者の指の指先の位置を検知するセンサーと、センサーで検出された指先の位置から空中映像に最も近い指の腹の位置を算出する位置算出部とを備えており、位置算出部は、映像表示部の表示面に垂直な線とビームスプリッターとのなす角と指先を半球体と仮定したときの半球体の直径とに基づいて、センサーで検出された指先の位置から空中映像に最も近い指の腹の位置を算出している。
【発明の効果】
【0007】
本願の空中映像表示装置においては、位置算出部が映像表示部の表示面に垂直な線とビームスプリッターとのなす角と指先を半球体と仮定したときの半球体の直径とに基づいて、センサーで検出された指先の位置から空中映像に最も近い指の腹の位置を算出しているので、タッチ操作の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る空中映像表示装置の模式図である。
図2】実施の形態1の空中映像表示装置における座標系の説明図である。
図3】実施の形態1の空中映像表示装置における三次元距離センサーが検知する指の位置の説明図である。
図4】実施の形態1の空中映像表示装置におけるモデル化した指の説明図である。
図5】実施の形態1において、モデル化した指における三次元距離センサーの測定位置とタッチパネルに触れる位置との関係を示した説明図である。
図6】実施の形態1において、空中映像に対して指の角度が変化したときの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願を実施するための実施の形態に係る空中映像表示装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一符号は同一もしくは相当部分を示している。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る空中映像表示装置の模式図である。本実施の形態の空中映像表示装置1は、筐体2と、筐体2の内部に配置された映像表示部3と、筐体2の開口部に設けられたビームスプリッター4と、筐体2の内部に配置された再帰反射シート5とを有する。映像表示部3から出射された光は、ビームスプリッター4に入射し、その一部が反射されて再帰反射シート5に入射する。再帰反射シート5は、入射した光を入射方向へ反射する特性を有している。再帰反射シート5は、ビームスプリッター4から入射した光をビームスプリッター4に向かって反射させる。再帰反射シート5からビームスプリッター4に向かって反射された光は、一部がビームスプリッター4を透過する。このようにして映像表示部3に表示された映像は、ビームスプリッター4を通過して筐体2の外部で結像されて空中映像6となる。使用者10は、この空中映像6を観察することができる。例えば、空中映像6として種々の機器を操作するためのタッチパネルを表示させる。使用者10は、空中映像6として表示されたタッチパネルに指10aを近づけることでタッチパネルに対するタッチ操作を行うことができる。指10aの位置は、筐体2に設けられ、空中映像6が含まれる空間領域内の物体の位置を検出する三次元距離センサー7で測定することができる。映像表示部3としては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LED素子が配列されたディスプレイなどを用いることができる。ビームスプリッター4としては、ハーフミラー、反射型偏光板などを用いることができる。再帰反射シート5としては、球状の透明ガラスビーズを並べたガラスビーズ方式のシート、透明な三角錐を配列したマイクロプリズム方式のシートなどを用いることができる。三次元距離センサー7としては、例えばToFセンサー(Time of Flight Sensor)、ステレオカメラなどを用いることができる。
【0011】
使用者10は、空中映像6として表示されたタッチパネルに指10aを近づけてタッチ操作を行うことができる。このタッチ操作は非接触であるため、接触による手の汚染、タッチパネルを介した有害物質の拡散などを防ぐことができる。
【0012】
使用者10の指10aの位置は、三次元距離センサー7で測定される。この三次元距離センサー7は、使用者10がタッチパネルを操作するために空中映像表示装置1に近づいたことを検知するためにも用いられるため、通常は空中映像表示装置1の本体の上部に設置されている。三次元距離センサー7は、このセンサーから見える物体の表面の位置のみが測定可能であるため、タッチパネルのタッチ位置となる使用者10の指10aの腹側は指の背の陰になって直接測定できない。そのため、使用者10の指10aの腹の位置と三次元距離センサー7で測定された指の背の位置とにずれが生じ、タッチ操作の精度が低いという問題があった。
【0013】
本実施の形態の空中映像表示装置1は、三次元距離センサー7で測定された指10aの指先の位置からタッチパネルのタッチ位置となる指10aの腹の位置を算出することで、タッチ操作の精度を向上させたものである。そのため、本実施の形態の空中映像表示装置1は、三次元距離センサー7で測定された指10aの指先の位置からタッチパネルのタッチ位置となる指10aの腹の位置を算出する位置算出部8を備えている。
【0014】
図2は、本実施の形態の空中映像表示装置1における座標系の説明図である。図2に示すように、本実施の形態において、センサー座標系と空中映像座標系とを定義する。センサー座標系は空中映像表示装置1の構造に基づくものであり、空中映像座標系は空中映像表示装置1が表示する空中映像の虚像の構造に基づくものである。センサー座標系のZs軸は、ビームスプリッター4と平行な方向である。センサー座標系のYs軸は、ビームスプリッター4に対して直角な方向である。センサー座標系のXs軸は、Zs軸およびYs軸に直角な方向である。なお、このセンサー座標系は、三次元距離センサー7のもつ固有の座標系を三次元距離センサー7の取り付け位置などで補正して、空中映像表示装置1の構造に基づく座標系に変換したものである。これに対して、空中映像座標系のZi軸は、空中映像6に対して直角な方向である。空中映像座標系のYi軸は、空中映像6と平行な方向である。空中映像座標系のXi軸は、Zi軸およびYi軸に直角な方向である。ここで、センサー座標系のXs軸と空中映像座標系のXi軸とは互いに平行で、図1において紙面に垂直な方向とする。したがって、図2に示すように、センサー座標系に対して空中映像座標系はXi軸を中心に角度θだけ回転している。空中映像6は映像表示部3に表示された映像がビームスプリッター4に対して面対称な位置に表示されたものなので、角度θは映像表示部3の表示面に垂直な線とビームスプリッター4とのなす角に相当する。
なお、本実施の形態においては、センサー座標系として三次元距離センサー7のもつ固有の座標系を三次元距離センサー7の取り付け位置などで補正して空中映像表示装置1の構造に基づく座標系に変換したものを用いているが、センサー座標系として三次元距離センサー7のもつ固有の座標系を用いてもよい。
【0015】
次に、本実施の形態の空中映像表示装置1における指10aの測定位置について説明する。図3は、三次元距離センサー7が測定する指10aの位置の説明図である。図3(a)に示すように、使用者10が指10aでタッチパネルを操作するときに指10aがタッチパネルに触れる位置は、指10aの指の腹11の部分である。三次元距離センサー7は、空中映像表示装置1の本体の上部に設置されている。そのため、三次元距離センサー7は、図3(b)に太線で示すように、使用者の指10aの背の側の表面を測定することになる。ここで、三次元距離センサー7は、使用者の指10aの背の最先端の指先12の位置を測定する。
【0016】
図4は、本実施の形態の空中映像表示装置1におけるモデル化した指の説明図である。図4に示すように、本実施の形態では、指の形状を円柱と半球体とが組み合わされた形状と仮定する。すなわち、指10aの胴体部分を直径Dの円柱と仮定し、指先の部分を直径Dの半球体と仮定する。そして、タッチパネルを操作するときにタッチパネルに触れる位置は、指先の部分の半球体の一部とする。
【0017】
図5は、本実施の形態において、モデル化した指における三次元距離センサー7の測定位置とタッチパネルに触れる位置との関係を示した説明図である。図5は、図2に示した座標系を角度θで回転した座標系で示している。空中映像座標系のXi軸方向とセンサー座標系のXs軸方向とは平行であるので、これ以降YZ平面で説明する。三次元距離センサー7は、モデル化した指10aの指先のセンサー座標系におけるYs軸方向の最も端部に位置する点を測定する。そして、その点を空中映像座標系で点(yd、zd)とする。このとき、点(yd、zd)の接線方向はセンサー座標系におけるZs軸方向と平行となる。そのため、図5に示したように、点(yd、zd)とモデル化した指先の半球体の中心Cとを結んだ線分とYi軸に平行な直線とのなす角はθとなる。
【0018】
タッチパネルを操作するときに指10aのタッチパネルに最も近い位置はモデル化した指先の半球体の一部であり、図5に示したように、空中映像座標系おけるZi軸方向の最も端部に位置する点とする。そして、その点を空中座標系で点(ya、za)とする。このようにモデル化した指において、点(yd、zd)は図3に示す指先12の位置に相当し、点(ya、za)は図3に示す空中映像に最も近い指の腹11の位置に相当する。このとき、点(yd、zd)と点(ya、za)との間には、次に示す2つの式が成り立つ。
【0019】
ya=yd+D/2×cosθ (1)
za=zd-D/2+D/2×sinθ (2)
【0020】
本実施の形態の空中映像表示装置1においては、映像表示部3の表示面に垂直な線とビームスプリッター4とのなす角をθとし、使用者の指先の形状を半球体と仮定してその半球体の直径をDとしたときに、位置算出部8が三次元距離センサー7で測定された指先の位置(yd、zd)から(1)式および(2)式を用いて、タッチパネルに最も近い指の腹の位置(ya、za)を算出する。なお、指先12の位置と指の腹11の位置とのXs軸方向のずれはないものとする。映像表示部3の表示面に垂直な線とビームスプリッター4とのなす角は、空中映像表示装置1の構造で一義的に決まる。また、使用者の指先の形状を半球体と仮定したとき、その半球体の直径も予め決めておくことができる。なお、三次元距離センサー7で使用者の指10aの胴体部分の幅を測定し、その幅を使用者の指先の形状を半球体と仮定したときの半球体の直径としてもよい。
【0021】
このように構成された空中映像表示装置においては、三次元距離センサーで測定された指先の位置から、タッチパネルに最も近い指の腹の位置を算出することができるので、タッチ操作の精度を向上させることができる。
【0022】
図6は、空中映像に対して指の角度が変化したときの説明図である。図6に示すように、空中映像6に対して指10aの角度が変化しても、指先の形状を半球体と仮定しているので、指10aの背の最先端の位置は変化しない。そのため、空中映像に対して指の角度が変化しても同じ式を用いてタッチパネルに最も近い指の腹の位置を算出することができる。
【0023】
実施の形態1においては、ビームスプリッターと再帰反射シートとを用いた方式の空中映像表示装置で説明した。これ以外の方式の空中映像表示装置として、二面コーナーリフレクタアレイと呼ばれる光学プレートを用いた方式、直交ミラーアレイと呼ばれる光学プレートを用いた方式のものがある。これらの方式の空中映像表示装置においては、図1に示した空中映像表示装置において、再帰反射シートが除かれビームスプリッターの位置に光学プレートが配置される。このような空中映像表示装置は、映像表示部に表示された映像を光学プレートに対して面対称な位置の空間に結像させて空中映像を表示することができる。このような方式の空中映像表示装置においても、三次元距離センサーで測定された指の背の位置と使用者の指の腹の位置とにずれが生じ、タッチ操作の精度が低いという問題がある。このような方式の空中映像表示装置においても、三次元距離センサー7で測定された指10aの指先の位置からタッチパネルのタッチ位置となる指10aの腹の位置を算出することで、タッチ操作の精度を向上させることができる。
【0024】
本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
したがって、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0025】
1 空中映像表示装置、2 筐体、3 映像表示部、4 ビームスプリッター、5 再帰反射シート、6 空中映像、7 三次元距離センサー、8 位置算出部、10 使用者、10a 指、11 指の腹、12 指先。
図1
図2
図3
図4
図5
図6