(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061707
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】簡易建物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/343 20060101AFI20230425BHJP
E04H 6/02 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
E04B1/343 R
E04H6/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171803
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 高志
(72)【発明者】
【氏名】竹田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】中村 知朗
(57)【要約】 (修正有)
【課題】屋根下に対して日光の悪影響をおよぼさない使い勝手の良い簡易建物の提供。
【解決手段】簡易建物は、屋根パネルが取り付けられる桁と、一の格子体と、一の格子体に列設される他の格子体を備え、一の格子体は、胴縁補助材により複数の格子が連結されており、他の格子体は、連結具により複数の格子が連結されており、胴縁補助材と連結具は、一の格子体と他の格子体の隣接位置において列設方向に重複されている状態で、桁の下面に取り付けられていることを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根パネルが取り付けられる桁と、一の格子体と、一の格子体に列設される他の格子体を備え、一の格子体は、胴縁補助材により複数の格子が連結されており、他の格子体は、連結具により複数の格子が連結されており、胴縁補助材と連結具は、一の格子体と他の格子体の隣接位置において列設方向に重複されている状態で、桁の下面に取り付けられていることを特徴とする簡易建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易建物に関する。
【背景技術】
【0002】
簡易建物は、支柱で支えられた透光屋根を有するカーポート等が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような簡易建物は、日光が透光屋根や簡易建物の斜め上方から直接屋根下に至るため、屋根下の自動車や人等に対して日光の悪影響が生じるという問題があった。
このため、屋根下に対して日光の悪影響をおよぼさない使い勝手の良い簡易建物が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述の課題を解決するために請求項1記載による簡易建物は、屋根パネルが取り付けられる桁と、一の格子体と、一の格子体に列設される他の格子体を備え、一の格子体は、胴縁補助材により複数の格子が連結されており、他の格子体は、連結具により複数の格子が連結されており、胴縁補助材と連結具は、一の格子体と他の格子体の隣接位置において列設方向に重複されている状態で、桁の下面に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、以上の構成により、屋根下に対して日光の悪影響をおよぼさない使い勝手の良い簡易建物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明に係る実施形態の簡易建物の正面図である。
【
図4】
図1の屋根部分の拡大図であり、中間省略して示す。
【
図5】
図4の平面図であり、左屋根体の右屋根体の境界部分を示す。
【
図9】(a)は、
図8の(9a)-(9a)線断面図であり、(b)は、
図8の(9b)-(9b)線断面図である。
【
図10】通し破風の取り付け工程図であり、第1工程を示す。
【
図11】通し破風の取り付け工程図であり、第2工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態の簡易建物Aを説明する。
以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0008】
[簡易建物の基本構成]
簡易建物Aは、カーポートであり、
図1~
図3に示すように、立設された支柱1の上部に架設された吊り下げ梁2を有し、この吊り下げ梁2から吊り下げ具2aを介して左屋根体3及び右屋根体4からなる屋根体Bが吊り下げられていると共に、屋根体Bの下部に格子ユニット5及び支柱1の側部に側部格子ユニット500が取り付けられたものである。
【0009】
[屋根体の構成]
屋根体Bは、
図1及び
図2に示すように、それぞれ独立した構造とする左屋根体3と右屋根体4を備えており、設置時には、左屋根体3と右屋根体4とを別々に位置合わせしながら取り付けることができるようになっている。
このような屋根体Bは、左屋根体3と右屋根体4とを別々に取り付けることができるので、大面積となる屋根体Bの設置作業を容易に行うことができる。
【0010】
[左屋根体の構成]
左屋根体3は、
図4及び
図5に示すように、左側の桁(以下「左桁」という)30と右側の桁(以下「右桁」という)31とにわたり透光性を有する屋根パネル32が架設されている。
左桁30と右桁31の直上には、前後方向の全域にわたり破風300、310が取り付けられており、上下方向で側面が略同面となるようにされ、左桁30と破風300とが同一体を呈すると共に、右桁31と破風310とが同一体を呈するようにされている。
左桁30と右桁31の下面には、それぞれ胴縁6が取り付けられている。
また、胴縁6の下面には、それぞれ胴縁補助材7が取り付けられている。
胴縁補助材7は、格子ユニット5の後述する複数の格子材50を取り付けるものである。
以下の説明では、左桁30に取り付けられた破風300を外破風300とし、右桁31に取り付けられた破風310を内破風310とする。
【0011】
[右屋根体の構成]
右屋根体4は、
図4及び
図5に示すように、右側の桁(以下「右桁」という)40と左側の桁(以下「左桁」という)41とにわたり透光性を有する屋根パネル42が架設されている。
右桁40と左桁41には、前後方向の全域にわたり破風400、410が取り付けられており、上下方向で側面が略同面となるようにされ、右桁40と破風400とが同一体を呈すると共に、左桁41と破風410とが同一体を呈するようにされている。
右桁40と左桁41の下面には、それぞれ胴縁6が取り付けられている。
また、胴縁6の下面には、それぞれ胴縁補助材7が取り付けられている。
胴縁補助材7は、格子ユニット5の後述する複数の格子材50を取り付けるものである。
以下の説明では、右桁40に取り付けられた破風400を外破風400とし、左桁41に取り付けられた破風410を内破風410とする。
【0012】
ここで、
図1~
図4を参照されたい。
左屋根体3及び右屋根体4の前後には、左屋根体3の左桁30から右屋根体4の右桁40にわたる一枚の通し破風8が取り付けられており、シームレスで、屋根体B、左屋根体3の左桁30、右桁31、右屋根体4の右桁40、左桁41の前後端を隠すようになっている。
【0013】
[胴縁の構成]
胴縁6は、左桁30、41及び右桁31、40の前後方向に沿っており、
図7~
図9に示すように、左桁30、41及び右桁31、40に対してねじ止めにより固定されている。
胴縁6の下面には、胴縁6の全長にわたり被係合部60が下向き開放状に凹設されており、この被係合部60に胴縁補助材7の後述する係合部70が係合するようになっている。
すなわち、胴縁6の全長にわたって被係合部60が設けられているため、胴縁補助材7を胴縁6の長手方向の 任意の位置で係合できるため、屋根下の適宜位置に部分的に格子ユニット5を設けることができる。
【0014】
[胴縁補助材の構成]
胴縁補助材7は、胴縁6の前後方向に沿っており、
図9に示すように、上部に前述の係合部70が突設されており、係合部70が被係合部60に係止されると共に、ねじ止めすることで、胴縁補助材7が胴縁6の下面に固定される。
胴縁6の被係合部60に対する胴縁補助材7の係合部70の係合は、フック状の係合部70を被係合部60の下方から挿入すると共に、被係合部60に対して上方から引掛けることで係合され、この状態において胴縁補助材7が胴縁6に対して係止される。
すなわち、胴縁補助材7が胴縁6に対して係止されているため、ねじ止め作業時に胴縁補助材7を支えることなく行うことができるので、胴縁6に対する胴縁補助材7の固定作業を容易、且つ迅速に行うことができる。
【0015】
[格子ユニットの構成]
格子ユニット5は、前述の複数の格子材50を連結して構成されたものであり、
図7及び
図8に示すように、複数の格子材50を有する一の格子体(以下、「屋根下格子体」という)5a及び複数の格子材50を有する他の格子体(以下、「延長格子体」という)5bを備えている。
格子ユニット5は、
図1~
図5に示すように、前後方向(並列方向)において延長格子体5bの一部の格子材50を通し破風8よりも屋根体Bの外方へ飛び出させていると共に、屋根下格子体5a及び延長格子体5bの長手方向の端部が左桁30(外破風300)、右桁40(外破風400)よりも屋根体Bの外方へ飛び出させている。
尚、本発明では、格子ユニット5の構成として、格子材50を通し破風8側からのみ飛び出させた構成、或いは、格子材50を左桁30、右桁40側からのみ飛び出させた構成が含まれる。
また、格子ユニット5の構成として、必要に応じて前側の通し破風8、後側の通し破風8、左桁30及び右桁40のうちの少なくともいずれか一つの位置で飛び出させる構成が含まれる。
【0016】
屋根下格子体5aは、
図1~
図5に示すように、屋根体Bの前後方向の範囲内にあり、複数の格子材50を前後方向に一定間隔で並列させて、胴縁補助材7にねじ止めにより取り付けて連結することにより形成されている。
【0017】
延長格子体5bは、
図5、
図7、
図8に示すように、前述のように前後方向で並列された格子材50の一部が通し破風8よりも屋根体Bの外方へ飛び出させてあり、複数の格子材50を前後方向に一定間隔で並列させて連結具9に固定することで形成され、連結具9を屋根下格子体5aに連結することにより、屋根下格子体5aと連続するように取り付けられている。
【0018】
連結具9は、
図5及び
図6に示すように、平面コ字型に形成された板状のものであり、コ字型の凹部を胴縁補助材7が入り込む嵌合凹部90とし、嵌合凹部90の両側にある凸片を屋根下格子体5aの格子材50に固定する固定部91とし、前方の部分を延長格子体5bの格子材50を取付ける取付部92としている。
連結具9は、屋根下格子体5aの格子材50に固定部91を固定した状態で、取付部92が通し破風8よりも屋根体Bの外方へ飛び出すようにされている。
【0019】
このような連結具9を用いた延長格子体5bの取り付け構造は、連結具9の取付部92の下面に延長格子体5bの格子材50をねじ止めにより固定する。
取付部92は、取り付けられた格子材50同士の間隔が、一定間隔で取り付けられた屋根下格子体5aの間隔と同じ間隔となるようにねじ孔が設定されている。
次に、延長格子体5bの格子材50が固定された連結具9の嵌合凹部90に胴縁補助材7を嵌合させ、固定部91を屋根下格子体5aの格子材50の上面に載せると共に、固定部91を格子材50にねじ止めにより固定する。
これにより、胴縁補助材7と連結具9は、屋根下格子体5aと延長格子体5bの隣接位置において格子材50の列設方向に重複されている状態で、左桁30、41及び右桁31、40の下面に取り付けられる。
【0020】
このような連結具9は、延長格子体5bの格子材50の一部が通し破風8よりも屋根体Bの外方へ飛び出させることができると共に、屋根下格子体5aの格子材50と延長格子体5bの格子材50をすべて同じ間隔で取り付けることができる。
また、連結具9を格子材50の上部に位置させているため、下から見上げた時に連結具9が格子材50によって目立たないようにすることができる。
連結具9は、すべての胴縁補助材(4か所)7がある部分に取り付けられており、延長格子体5bの取付け状態を確実なものとしている。
また、連結具9を備えた延長格子体5bは、延長格子体5bを備えていない既存の簡易建物Aの屋根下格子体5aに対して後付けすることができる。
また、連結具9の取付部92の前後長さを長いものとして、延長格子体5bの格子材50の本数を増やすことで、延長格子体5bの飛び出し量を大きくすることができ、これによって、上方斜めからの日光の照射をより大きく抑制することができる。
また、延長格子体5bの連結具9は、胴縁6に固定された胴縁補助材7に固定された屋根下格子体5aに固定されているため、間接的に胴縁6に固定されることになり、これにより、延長格子体5bに積雪等による荷重が加わっても、胴縁6で受けることになるため、荷重による延長格子体5bの破損を防止できる。
【0021】
[通し破風の構成]
通し破風8は、前述(
図1及び
図4参照)のように、左屋根体3の左桁30から右屋根体4の右桁40にわたる長さのものであり、シームレスで、左屋根体3の左桁30、右桁31、右屋根体4の右桁40、左桁41の前後端を隠すようになっている。
また、取り付けられた通し破風8には、左屋根体3の左桁30、右桁31、右屋根体4の右桁40、左桁41の端面が当接した状態で、左屋根体3の外破風300及び内破風310と、右屋根体4の外破風400及び内破風410に対して、ねじ止めされたアングル材80を介してねじ止めされている。
このような通し破風8は、シームレスで、屋根体B、左屋根体3の左桁30、右桁31、右屋根体4の右桁40、左桁41の前後端を隠す他に、左屋根体3の左桁30、右桁31、右屋根体4の右桁40、左桁41を当接させることにより、左屋根体3及び右屋根体4の位置決めを行う定規となる。
また、通し破風8が一枚物であるので、左屋根体3と右屋根体4とにそれぞれ独立した破風を備えたものに比べて、破風の枚数を削減できると共に、2枚の破風同士のつなぎ目を隠す端部キャップを不要にできるため、部品点数を削減することができると共に、破風の取り付け作業を迅速に行うことができる。
【0022】
[通し破風の取付け工程]
次に、通し破風8の取付け工程を
図10及び
図11を参照して説明する。
第1工程(
図10):最初に通し破風8にアングル材80を固定し、この状態でアングル材80を左屋根体3の外破風300及び右屋根体4の外破風400の側面にねじ止めする。
このとき、通し破風8に左屋根体3の左桁30、右桁31、右屋根体4の右桁40、左桁41を当接させることで、左屋根体3及び右屋根体4の位置が左右方向で同面となる。
第2工程(
図11):次に、アングル材80を左屋根体3の内破風310及び右屋根体4の内破風410の側面にねじ止めする。
この工程により通し破風8を取り付けることによって、左屋根体3及び右屋根体4の位置決めを行うことができる。
通し破風8で位置決めされた左屋根体3及び右屋根体4は、通し破風8により一体化された屋根体Bとなるため、この屋根体Bを前後にずらしながら屋根体Bの配置位置を調整することで、左屋根体3及び右屋根体4を正常に設置することができる。
【0023】
以上の構成とする簡易建物Aによると、以下の作用効果を奏する。
1:複数の格子材50を有する格子ユニット5が屋根パネル32、42の下方に取り付けられているので、屋根パネル32、42から屋根下に対して日光の照射量を低減し、直射日光による屋根下へ悪影響を抑制しながら、必要な日光の照射量を確保することができる。
また、屋根下から上方を見たときに格子ユニット5によって、屋根パネル32、42を見にくくできると共に、一定間隔で並列された複数の格子材50を有する格子ユニット5が最も目立つため、意匠性の向上を実現できる。
【0024】
2:格子ユニット5の前後方向の一部を通し破風8よりも屋根体Bの外方へ飛び出させていると共に、格子ユニット5の左右方向の一部が左桁30、右桁40よりも屋根体Bの外方へ飛び出させているので、簡易建物Aの斜め上方から屋根下に対して日光の照射量を低減し、直射日光による屋根下へ悪影響を抑制しながら、必要な日光の照射量を確保することができる。
また、格子ユニット5の飛び出した部分により、意匠性の向上が期待できる。
【0025】
3.格子ユニット5における飛び出した部分である延長格子体5bを連結する連結具9が、屋根下格子体5aと延長格子体5bの上方に配置されているので、屋根下から上方を見たときに屋根下格子体5aと延長格子体5bによって、連結具9を見にくくできるため、意匠性の向上を実現できる。
【0026】
4:左屋根体3及び右屋根体4が通し破風8で位置決めしていると共に、通し破風8により左屋根体3及び右屋根体4を一体化した屋根体Bとなるため、左屋根体3及び右屋根体4を有する屋根体Bの配置位置の調整を迅速、且つ容易に行うことができる。
また、通し破風8は、左屋根体3の左桁30、右桁31、右屋根体4の右桁40、左桁41の前後端をシームレスで隠すことができるので、意匠性の向上が期待できる。
【0027】
したがって、日光による屋根下への悪影響の抑制、屋根体Bの施工作業性の向上、意匠性の向上等を実現した良好な使い勝手を有する簡易建物Aを提供できる。
【0028】
以上、本発明に係る実施形態の簡易建物Aを、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0029】
また、前述の各実施形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0030】
A:簡易建物
B:屋根体
1:支柱
2:吊り下げ梁
2a:吊り下げ具
3:左屋根体
30:左桁
31:右桁
32:屋根パネル
300:外破風
310:内破風
4:右屋根体
42:屋根パネル
400:外破風
410:内破風
5:格子ユニット
5a:屋根下格子体
5b:延長格子体
50:格子材
500:側部格子ユニット
6:胴縁
60:被係合部
7:胴縁補助材
70:係合部
8:破風
80:アングル材
9:連結具
90:嵌合凹部
91:固定部
92:取付部