IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

<>
  • 特開-カッタヘッド 図1
  • 特開-カッタヘッド 図2
  • 特開-カッタヘッド 図3
  • 特開-カッタヘッド 図4
  • 特開-カッタヘッド 図5
  • 特開-カッタヘッド 図6
  • 特開-カッタヘッド 図7
  • 特開-カッタヘッド 図8
  • 特開-カッタヘッド 図9
  • 特開-カッタヘッド 図10
  • 特開-カッタヘッド 図11
  • 特開-カッタヘッド 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061710
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】カッタヘッド
(51)【国際特許分類】
   B23F 5/16 20060101AFI20230425BHJP
   B23F 21/10 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
B23F5/16
B23F21/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171806
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】馮 雁楠
【テーマコード(参考)】
3C025
【Fターム(参考)】
3C025AA03
3C025EE00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】カッタヘッドによる歯車の加工時のびびり振動を抑えて、歯車の加工精度を向上させる。
【解決手段】カッタヘッド1は、歯溝3の間隔と同じ間隔で配置されカッタヘッド1の周方向に順に第1番目から第M番目までの番号が付されたカッタ刃4から、所定番号のカッタ刃が間引かれた複数のカッタヘッド1を備える。歯溝3の数Nとカッタ刃4の数Mとには、1以外の公約数はない。カッタ刃4の数Mには、1とM以外の約数がある。間引かれるカッタ刃4の所定番号は、カッタ刃の数Mの約数で割られたときの余りが同じ数である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スカイビング加工により、N個の歯溝を有する歯車を形成するためのカッタヘッドであって、
前記歯溝の間隔と同じ間隔で配置され前記カッタヘッドの周方向に順に第1番目から第M番目までの番号が付されたカッタ刃から、所定番号のカッタ刃が間引かれた複数のカッタ刃を備え、
前記歯溝の数Nと前記カッタ刃の数Mとには、1以外の公約数はなく、
前記カッタ刃の数Mには、1とM以外の約数があり、
前記間引かれるカッタ刃の所定番号は、前記カッタ刃の数Mの約数で割られたときの余りが同じ数である、
カッタヘッド。
【請求項2】
スカイビング加工により、N個の歯溝を有する歯車を形成するためのカッタヘッドであって、
前記歯溝の間隔と同じ間隔で配置され前記カッタヘッドの周方向に順に第1番目から第M番目までの番号が付されたカッタ刃から、所定のカッタ刃が間引かれた複数のカッタ刃を備え、
前記歯溝の数Nと前記カッタ刃の数Mとには、1以外の公約数はなく、
前記カッタ刃の数Mには、1とM以外の約数はなく、
前記間引かれる所定のカッタ刃は、前記歯溝のうちの所定の歯溝に入る順番において、所定個数おきに位置する、
カッタヘッド。
【請求項3】
スカイビング加工により、N個の歯溝を有する歯車を形成するためのカッタヘッドであって、
前記歯溝の間隔と同じ間隔で配置され前記カッタヘッドの周方向に順に第1番目から第M番目までの番号が付されたカッタ刃から、所定番号のカッタ刃が間引かれた複数のカッタ刃を備え、
前記歯溝の数Nと前記カッタ刃の数Mとには、1以外の公約数があり、
前記カッタ刃の数Mには、1とM以外の約数があり、
前記間引かれるカッタ刃の所定番号は、前記カッタ刃の数Mの約数で割られたときの余りが同じ数である、
カッタヘッド。
【請求項4】
スカイビング加工により、N個の歯溝を有する歯車を形成するためのカッタヘッドであって、
前記歯溝の間隔と同じ間隔で配置され前記カッタヘッドの周方向に順に第1番目から第M番目までの番号が付されたカッタ刃から、所定のカッタ刃が間引かれた複数のカッタ刃を備え、
前記歯溝の数Nと前記カッタ刃の数Mとには、1以外の公約数があり、
前記カッタ刃の数Mには、1とM以外の約数があり、
前記間引かれる所定のカッタ刃は、前記複数の歯溝のうち前記公約数分の所定の歯溝のそれぞれに入る順番において、所定個数おきに位置する、
カッタヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークをスカイビング加工して歯車を形成するためのカッタヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークから歯車を形成する方法の1つとして、スカイビング加工がある。スカイビング加工では、カッタヘッドが、ワークに対して一定角度で交差するように配置される。カッタヘッドは、カッタヘッドの周方向に並んで配置された複数のカッタ刃を有している。カッタ刃は、カッタヘッドの周方向に等ピッチで配置される(例えば、特許文献1参照)。カッタヘッドが回転すると共に、ワークがカッタヘッドの回転に同期して回転することで、カッタヘッドがワークを加工する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-33732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したスカイビング加工によって、大径の歯車、又は大モジュールの歯車を加工する場合、加工時にびびり振動が発生することがある。その場合、歯車の加工精度が低下する恐れがある。加工時のびびり振動の発生要因の1つは、カッタ刃のワークに対する切削抵抗である。従って、ワークに同時に接触するカッタ刃の数を少なくして、切削抵抗を低減することが考えられる。
【0005】
しかし、カッタヘッド全体のカッタ刃の数を少なくすると、カッタヘッドの外径が小さくなる。その場合、カッタヘッドの支持剛性が低下するため、びびり振動を抑えることは困難である。本発明の目的は、カッタヘッドによる歯車の加工時のびびり振動を抑えて、歯車の加工精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係るカッタヘッドは、スカイビング加工により、N個の歯溝を有する歯車を形成するためのカッタヘッドである。本態様に係るカッタヘッドは、歯溝の間隔と同じ間隔で配置されカッタヘッドの周方向に順に第1番目から第M番目までの番号が付されたカッタ刃から、所定番号のカッタ刃が間引かれた複数のカッタヘッドを備える。歯溝の数Nとカッタ刃の数Mとには、1以外の公約数はない。カッタ刃の数Mには、1とM以外の約数がある。間引かれるカッタ刃の所定番号は、カッタ刃の数Mの約数で割られたときの余りが同じ数である。
【0007】
本発明の第2の態様に係るカッタヘッドは、スカイビング加工により、N個の歯溝を有する歯車を形成するためのカッタヘッドである。本態様に係るカッタヘッドは、歯溝の間隔と同じ間隔で配置されカッタヘッドの周方向に順に第1番目から第M番目までの番号が付されたカッタ刃から、所定のカッタ刃が間引かれた複数のカッタ刃を備える。歯溝の数Nとカッタ刃の数Mとには、1以外の公約数はない。カッタ刃の数Mには、1とM以外の約数はない。間引かれる所定のカッタ刃は、複数の歯溝のうちの所定の歯溝に入る順番において、所定個数おきに位置する。
【0008】
本発明の第3の態様に係るカッタヘッドは、スカイビング加工により、N個の歯溝を有する歯車を形成するためのカッタヘッドである。本態様に係るカッタヘッドは、歯溝の間隔と同じ間隔で配置されカッタヘッドの周方向に順に第1番目から第M番目までの番号が付されたカッタ刃から、所定番号のカッタ刃が間引かれた複数のカッタヘッドを備える。歯溝の数Nとカッタ刃の数Mとには、1以外の公約数がある。カッタ刃の数Mには、1とM以外の約数がある。間引かれるカッタ刃の所定番号は、カッタ刃の数Mの約数で割られたときの余りが同じ数である。
【0009】
本発明の第4の態様に係るカッタヘッドは、スカイビング加工により、N個の歯溝を有する歯車を形成するためのカッタヘッドである。本態様に係るカッタヘッドは、歯溝の間隔と同じ間隔で配置されカッタヘッドの周方向に順に第1番目から第M番目までの番号が付されたカッタ刃から、所定のカッタ刃が間引かれた複数のカッタ刃を備える。歯溝の数Nとカッタ刃の数Mとには、1以外の公約数がある。カッタ刃の数Mには、1とM以外の約数がある。間引かれる所定のカッタ刃は、複数の歯溝のうち公約数分の所定の歯溝のそれぞれに入る順番において、所定個数おきに位置する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るカッタヘッドによれば、歯溝の間隔と同じ間隔で配置された複数のカッタ刃から、所定のカッタ刃が間引かれた配置で、カッタ刃が配置される。従って、カッタ刃の間隔を維持したうえでカッタ刃の数が減らされる場合と比べて、カッタヘッドの外径の減少が抑えられる。また、カッタ刃の数が少なくなっていることで、ワークに同時に接触するカッタ刃の数が少なくなる。そのため、切削抵抗が低減されることで、歯車の加工時のびびり振動を抑えられる。それにより、歯車の加工精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るカッタヘッドとワークとを示す側面断面図である。
図2】カッタヘッドとワークとを示す上面図である。
図3】カッタヘッドのカッタ刃の通常配置を示す上面図である。
図4】第1実施形態の第1実施例に係るカッタ刃の通常配置を示す表である。
図5】第1実施形態の第1実施例に係るカッタヘッドのカッタ刃の配置を示す表である。
図6】第1実施形態の第2実施例に係るカッタ刃の通常配置を示す表である。
図7】第1実施形態の第2実施例に係るカッタヘッドのカッタ刃の配置を示す表である。
図8】第2実施形態の実施例に係るカッタ刃の通常配置を示す表である。
図9】第2実施形態の実施例に係るカッタヘッドのカッタ刃の配置を示す表である。
図10】第3実施形態及び第4実施形態の実施例に係るカッタ刃の通常配置を示す表である。
図11】第3実施形態の実施例に係るカッタヘッドのカッタ刃の配置を示す表である。
図12】第4実施形態の実施例に係るカッタヘッドのカッタ刃の配置を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態に係るカッタヘッドについて説明する。図1は、実施形態に係るカッタヘッド1とワーク2とを示す側面断面図である。図2は、実施形態に係るカッタヘッド1とワーク2とを示す上面図である。カッタヘッド1は、スカイビング加工により、ワーク2を切削することで、複数の歯溝3を有する歯車を形成する。カッタヘッド1とワーク2とは、図示しない駆動装置により、互いに同期して回転する。図1に示すように、カッタヘッド1の回転軸A1は、ワーク2の回転軸A2に対して傾斜している。
【0013】
図2に示すように、カッタヘッド1は、複数のカッタ刃4を有している。カッタヘッド1のカッタ刃4の配置は、図3に示すカッタ刃4の通常配置から、所定のカッタ刃4が間引かれた配置となっている。通常配置では、ワーク2の複数の歯溝3の間隔と同じ間隔で、複数のカッタ刃4がそれぞれ配置されている。本実施形態では、通常配置でのカッタ刃4の数Mと、ワーク2の歯溝3の数Nと応じて、所定のカッタ刃4が通常配置から間引かれることで、カッタヘッド1のカッタ刃4の配置が決定される。以下、第1~第4実施形態に係るカッタヘッド1のカッタ刃4の配置について説明する。
【0014】
以下の説明では、図3に示すように、通常配置のカッタ刃4には、カッタヘッド1の周方向に順に、第1番目から第M番目までの番号が付されているものとする。図3では、各カッタ刃4に付された符号の括弧内の数字が、各カッタ刃4の番号を示している。例えば、4(2)は、第2番目のカッタ刃4を意味している。
【0015】
また、図2に示すように、ワーク2の歯溝3には、ワーク2の周方向に順に、第1番目から第N番目までの番号が付されているものとする。図2では、各歯溝3に付された符号の括弧内の数字が、各歯溝3の番号を示している。例えば、3(3)は、3番目の歯溝3を示している。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態では、以下の(1-1)から(1-3)のルールに従い、カッタヘッド1のカッタ刃4の配置が決定される。
(1-1)歯溝3の数Nとカッタ刃4の数Mとには、1以外の公約数はない。
(1-2)カッタ刃4の数Mには、1とM以外の約数がある。
(1-3)間引かれるカッタ刃4の所定番号は、カッタ刃4の数Mの約数で割られたときの余りが同じ数である。
【0017】
(第1実施形態の第1実施例)
図4は、第1実施形態の第1実施例に係るワーク2の歯溝3と、各歯溝3に対応する通常配置のカッタ刃4との関係を示す表である。図4において、欄B1は、歯溝3の番号を示している。列B2は、歯溝3の切削のサイクル数を示している。1サイクルは、第1番目から第N番目までのN個の歯溝3が切削されることを意味する。また、破線B3内の数字は、各歯溝3に対応する通常配置のカッタ刃4の番号を示している。
【0018】
例えば、図4の表では、第1番目のサイクルでは、第1番目から第14番目の歯溝3に対して、第1番目から第14番目のカッタ刃4がそれぞれ対応している。また、第15番目から第23番目の歯溝3に対して、第1番目から第9番目のカッタ刃4がそれぞれ対応している。他の図面においても、図4と同様の配置で、ワーク2の歯溝3の番号と、サイクル数と、カッタ刃4の番号とが示されている。
【0019】
図4に示すように、第1実施形態の第1実施例では、歯溝3の数Nは、23である。カッタ刃4の数Mは、14である。従って、上述したルール(1-1)及び(1-2)を満たす。ルール(1-1)及び(1-2)を満たす場合、各歯溝3は、M個の全てカッタ刃4によって切削される。例えば、図4に示すように、第1番目の歯溝3は、14サイクルの間に、第1番目から第14番目までの全てのカッタ刃4によって1回ずつ切削される。第2番目以降の歯溝3についても同様に、14サイクルの間に、第1番目から第14番目までの全てのカッタ刃4によって1回ずつ切削される。
【0020】
図5は、第1実施形態の第1実施例に係るカッタヘッド1のカッタ刃4の配置を示す表である。図5の表では、図4の表から、所定のカッタ刃4の番号が間引きされている。間引きされている所定のカッタ刃4の番号は、カッタ刃4の数Mの約数で割られたときの余りが同じ数である。
【0021】
詳細には、第2,4,6,8,10,12,14番目のカッタ刃4が間引きされている。これらは、カッタ刃4の数14の約数2で割られた時の余りが0となる数である。従って、カッタヘッド1は、第1、3,5,7,9,11,13番目のカッタ刃4が配置され、第2,4,6,8,10,12,14番目のカッタ刃4が間引かれたカッタ刃4の配置を有している。
【0022】
図5に示すように、各歯溝3は、カッタヘッド1の全てのカッタ刃4によって切削される。例えば、第1番目の歯溝3は、14サイクルの間に、第1、3,5,7,9,11,13番目の全てのカッタ刃4によって、切削される。第2番目以降の歯溝3についても同様に、14サイクルの間に、第1、3,5,7,9,11,13番目の全てのカッタ刃4によって1回ずつ切削される。
【0023】
また、例えば、通常配置では4つの歯溝3に同時にカッタ刃4が接触するものとする。第1実施形態の第1実施例に係るカッタヘッド1では、上述のようにカッタ刃4が間引かれていることで、図5において破線B4で示すように、歯溝3に同時に接触するカッタ刃4の数が減少する。そのため、切削抵抗が低減されることで、歯車の加工時のびびり振動を抑えられる。それにより、歯車の加工精度が向上する。
【0024】
なお、第1,3,5,7,9,11,13番目のカッタ刃4が間引きされてもよい。これらは、カッタ刃4の数14の約数2で割られた時の余りが1となる数である。
【0025】
或いは、カッタ刃4の数14の約数7で割られた時の余りが同じとなる番号のカッタ刃4が間引かれてもよい。この場合、第7,14番目のカッタ刃4が間引きされてもよい。これらは、カッタ刃4の数14の約数7で割られた時の余りが0となる数である。第1、8番目のカッタ刃4が間引きされてもよい。これらは、カッタ刃4の数14の約数7で割られた時の余りが1となる数である。第2,9番目のカッタ刃4が間引きされてもよい。これらは、カッタ刃4の数14の約数7で割られた時の余りが2となる数である。第3,10番目のカッタ刃4が間引きされてもよい。これらは、カッタ刃4の数14の約数7で割られた時の余りが3となる数である。同様に、カッタ刃4の数14の約数7で割られた時の余りが4以降となる番号のカッタ刃4が間引きされてもよい。
【0026】
或いは、これらの番号のカッタ刃4の組み合わせが間引きされてもよい。上述の通り、第1実施形態の第1実施例は、上述の通り、(1-3)を満たす。まとめると、第1実施形態の第1実施例はルール(1-1)、(1-2)及び(1-3)を満たす。
【0027】
(第1実施形態の第2実施例)
図6は、第1実施形態の第2実施例に係るワーク2の歯溝3と、各歯溝3に対応する通常配置のカッタ刃4との関係を示す表である。第1実施形態の第2実施例では、歯溝3の数Nは、23である。カッタ刃4の数Mは、15である。従って、上述したルール(1-1)及び(1-2)を満たす。
【0028】
図7は、第1実施形態の第2実施例に係るカッタヘッド1のカッタ刃4の配置を示す表である。図7の表では、図6の表から、所定のカッタ刃4の番号が間引きされている。間引きされている所定のカッタ刃4の番号は、カッタ刃4の数Mの約数で割られたときの余りが同じ数である。従って、第1実施形態の第2実施例は、上述のルール(1-3)を満たす。まとめると、第1実施形態の第2実施例はルール(1-1)、(1-2)及び(1-3)を満たす。
【0029】
詳細には、第3,6,9,12,15番目のカッタ刃4が間引きされている。これらは、カッタ刃4の数15の約数3で割られた時の余りが0となる数である。従って、カッタヘッド1は、第1,2,4,5,7,8,10,11,13,14番目のカッタ刃4が配置され、第3,6,9,12,15番目のカッタ刃4が間引かれたカッタ刃4の配置を有している。
【0030】
図7に示すように、各歯溝3は、カッタヘッド1の全てのカッタ刃4によって切削される。例えば、第1番目の歯溝3は、15サイクルの間に、第1,2,4,5,7,8,10,11,13,14番目の全てのカッタ刃4によって、切削される。第2番目以降の歯溝3についても同様に、15サイクルの間に、第1,2,4,5,7,8,10,11,13,14番目の全てのカッタ刃4によって、切削される。また、第1実施例と同様に、上述のようにカッタ刃4が間引かれていることで、歯溝3に同時に接触するカッタ刃4の数が減少する。
【0031】
(第2実施形態)
次に第2実施形態に係るカッタヘッド1のカッタ刃4の配置について説明する。第2実施形態では、以下の(2-1)から(2-3)のルールに従い、カッタヘッド1のカッタ刃4の配置が決定される。
(2-1)歯溝3の数Nとカッタ刃4の数Mとには、1以外の公約数はない。
(2-2)カッタ刃4の数Mには、1とM以外の約数はない。
(2-3)間引かれる所定のカッタ刃4は、複数の歯溝3のうちの所定の歯溝3に入る順番において、所定個数おきに位置する。
【0032】
(第2実施形態の実施例)
図8は、第2実施形態の実施例に係るワーク2の歯溝3と、各歯溝3に対応する通常配置のカッタ刃4との関係を示す表である。第2実施形態の実施例では、歯溝3の数Nは、23である。カッタ刃4の数Mは、13である。従って、上述したルール(2-1)及び(2-2)を満たす。
【0033】
図9は、第2実施形態の実施例に係るカッタヘッド1のカッタ刃4の配置を示す表である。図9の表では、図8の表から、所定のカッタ刃4の番号が間引きされている。間引きされている所定のカッタ刃4は、複数の歯溝3のうちの所定の歯溝3に入る順番において、所定個数おきに位置する。従って、第2実施形態の実施例は、上述したルール(2-3)を満たす。まとめると、第2実施形態の実施例は、ルール(2-1)、(2-2)及び(2-3)を満たす。
【0034】
詳細には、第8,12,3,7番目のカッタ刃4が間引きされている。これらは、第1番目の歯溝3に入るカッタ刃4の順番(第1,11,8,5,2,12,9,6,3,13,10,7,4番目)において、2個おきに位置するカッタ刃4の番号である。従って、カッタヘッド1は、第1,2,4,5,6,9,10,11,13番目のカッタ刃4が配置され、第3,7,8,12番目のカッタ刃4が間引かれたカッタ刃4の配置を有している。
【0035】
図9に示すように、各歯溝3は、カッタヘッド1の全てのカッタ刃4によって切削される。例えば、第1番目の歯溝3は、13サイクルの間に、第1,2,4,5,6,9,10,11,13番目の全てのカッタ刃4によって、切削される。第2番目以降の歯溝3についても同様に、13サイクルの間に、第1,2,4,5,6,9,10,11,13番目の全てのカッタ刃4によって、切削される。また、第1実施形態と同様に、上述のようにカッタ刃4が間引かれていることで、歯溝3に同時に接触するカッタ刃4の数が減少する。
【0036】
なお、上記の所定個数は、2個にかぎらず、1個、或いは2個より大きくてもよい。
【0037】
(第3実施形態)
次に第3実施形態に係るカッタヘッド1のカッタ刃4の配置について説明する。第3実施形態では、以下の(3-1)から(3-3)のルールに従い、カッタヘッド1のカッタ刃4の配置が決定される。
(3-1)歯溝3の数Nとカッタ刃4の数Mとには、1以外の公約数がある。
(3-2)カッタ刃4の数Mには、1とM以外の約数がある。
(3-3)間引かれるカッタ刃4の所定番号は、カッタ刃4の数Mの約数で割られたときの余りが同じ数である。
【0038】
(第3実施形態の実施例)
図10は、第3実施形態の実施例に係るワーク2の歯溝3と、各歯溝3に対応する通常配置のカッタ刃4との関係を示す表である。第3実施形態の実施例では、歯溝3の数Nは、22である。カッタ刃4の数Mは、14である。従って、上述したルール(3-1)及び(3-2)を満たす。
【0039】
図11は、第3実施形態の実施例に係るカッタヘッド1のカッタ刃4の配置を示す表である。図11の表では、図10の表から、所定のカッタ刃4の番号が間引きされている。間引かれるカッタ刃4の所定番号は、カッタ刃4の数Mの約数で割られたときの余りが同じ数である。従って、第3実施形態の実施例は、上述したルール(3-3)を満たす。まとめると、第3実施形態の実施例は、ルール(3-1)、(3-2)及び(3-3)を満たす。
【0040】
詳細には、第2,4,6,8,10,12,14番目のカッタ刃4が間引きされている。これらは、カッタ刃4の数14の約数2で割られた時の余りが0となる数である。従って、カッタヘッド1は、第1,3,5,7,9,11,13番目のカッタ刃4が配置され、第2,4,6,8,10,12,14番目のカッタ刃4が間引かれたカッタ刃4の配置を有している。
【0041】
図11に示すように、奇数番号の各歯溝3は、カッタヘッド1の全てのカッタ刃4によって切削される。例えば、第1番目の歯溝3は、7サイクルの間に、第1,3,5,7,9,11,13番目の全てのカッタ刃4によって、切削される。しかし、偶数番号の歯溝3については、切削されない。従って、奇数番号の歯溝3の加工後に、カッタヘッド1とワーク2とを1つの歯溝3分だけ、ずらして、再度、加工が行われる。それにより、偶数番号の歯溝3についても、7サイクルの間に、第1,3,5,7,9,11,13番目の全てのカッタ刃4によって、切削される。また、第1実施形態と同様に、上述のようにカッタ刃4が間引かれていることで、歯溝3に同時に接触するカッタ刃4の数が減少する。
【0042】
(第4実施形態)
次に第4実施形態に係るカッタヘッド1のカッタ刃4の配置について説明する。第4実施形態では、以下の(4-1)から(4-3)のルールに従い、カッタヘッド1のカッタ刃4の配置が決定される。
(4-1)歯溝3の数Nとカッタ刃4の数Mとには、1以外の公約数がある。
(4-2)カッタ刃4の数Mには、1とM以外の約数がある。
(4-3)間引かれる所定のカッタ刃4は、複数の歯溝3のうちの公約数分の所定の歯溝3のそれぞれに入る順番において、所定個数おきに位置する。
【0043】
(第4実施形態の実施例)
ルール(4-1)及び(4-2)は、上述したルール(3-1)及び(3-2)とそれぞれ同じである。従って、図10に示す第3実施形態の実施例と同様に、第4実施形態の実施例の通常配置では、歯溝3の数Nは、22である。カッタ刃4の数Mは、14である。
【0044】
図12は、第4実施形態の実施例に係るカッタヘッド1のカッタ刃4の配置を示す表である。図12の表では、図10の表から、所定のカッタ刃4の番号が間引きされている。間引きされている所定のカッタ刃4は、複数の歯溝3のうち公約数分の隣接する所定の歯溝3に入る順番において、所定個数おきに位置する。実施例では、公約数は2であることから、間引きされている所定のカッタ刃4は、隣接する2つの所定の歯溝3のそれぞれに入る順番において、2個おきに位置する。従って、第4実施形態の実施例は、上述したルール(4-3)を満たす。まとめると、第4実施形態の実施例は、ルール(4-1)、(4-2)及び(4-3)を満たす。
【0045】
詳細には、第9,11,13,2,4,6番目のカッタ刃4が間引きされている。これらは、第1番目の歯溝3に入るカッタ刃4の順番(図10における第1,9,3,11,5,13,7番目)において、1個おきに位置するカッタ刃4の番号と、第2番目の歯溝3に入るカッタ刃4の順番(図10における第2,10,4,12,6,14,8番目)において、1個おきに位置するカッタ刃4の番号である。従って、カッタヘッド1は、第1,3,5,7,8,10,12,14番目のカッタ刃4が配置され、第2,4,6,9,11,13番目のカッタ刃4が間引かれたカッタ刃4の配置を有している。なお、厳密には、ルール(4-3)によれば、第8番目のカッタ刃も間引かれることになる。しかし、本実施例では、公約数が2であることにより第m番目(例えば第1番目)と第m+1番目(例えば第2番目)の歯溝3が独立している。独立した2つの歯溝3の加工条件は同じであることが望ましい。そのため、本実施例では、2つの歯溝3に入る刃の数を同じにするために、カッタヘッド1は、第8番目のカッタ刃4を含む配置を有している。ただし、第8番目のカッタ刃も間引かれてもよい。
【0046】
第4実施形態の実施例においても、図12に示すように、第1実施形態と同様に、上述のようにカッタ刃4が間引かれていることで、歯溝3に同時に接触するカッタ刃4の数が減少する。
【0047】
以上説明した本実施形態に係るカッタヘッド1によれば、歯溝3の間隔と同じ間隔で配置された複数のカッタ刃4から所定のカッタ刃4が間引かれた態様で、カッタ刃4が配置される。従って、カッタ刃4の間隔を維持したうえでカッタ刃4の数が減らされる場合と比べて、カッタヘッド1の外径の減少が抑えられる。また、カッタ刃4の数が少なくなっていることで、ワーク2に同時に接触するカッタ刃4の数が少なくなる。そのため、切削抵抗が低減されることで、歯車の加工時のびびり振動を抑えられる。それにより、歯車の加工精度が向上する。
【0048】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0049】
上記の実施形態では、カッタヘッド1は、ワーク2を内歯歯車に加工する。しかし、カッタヘッド1は、ワーク2を外歯歯車に加工してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、カッタヘッドによる歯車の加工時のびびり振動が抑えられ、歯車の加工精度が向上する。
【符号の説明】
【0051】
1:カッタヘッド、 3:歯溝、 4:カッタ刃
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12