(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061761
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】建築用パネル取付治具
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
E04G21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171881
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504082025
【氏名又は名称】株式会社イング
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】島袋 孝博
(72)【発明者】
【氏名】岩永 篤二
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 春樹
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA01
2E174DA14
2E174DA17
2E174DA34
(57)【要約】
【課題】建築用パネルの取り付け、取り付ける際の測定、位置調整、位置決めの作業を治具の各辺に有し、一つの治具で且つ治具の各辺の形状がお互い干渉することなく、一連の作業が行える建築用パネル取付治具を提供する。
【解決手段】金属製のパネルフレームを有する建築用パネルを建築物本体に取り付ける際に用いられる建築用パネル取付治具Sであって、複数の直線状の辺を備えた枠体Wと、枠体Wの各辺11,21,31,41に建築用パネルPの取付に利用する異なる機能である建築用パネルの建築物本体側へ引き込む機能10、建築用パネル間の目地幅ゲージの機能20、パネルフレーム間隔幅調整の機能30、建築用パネルの下げ振り測定の機能40、を備え、建築用パネル取付治具Sの各辺11,21,31,41に形成された機能10~40を利用して建築用パネルPを建築物本体に取り付ける。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のパネルフレームを有する建築用パネルを建築物本体に取り付ける際に用いられる建築用パネル取付治具であって、
複数の直線状の辺を備えた枠体と、
前記枠体の各辺に前記建築用パネルの取付に利用する異なる機能と、を備え、
前記各辺に形成された機能を利用して前記建築用パネルを前記建築物本体に取り付けることを特徴とする建築用パネル取付治具。
【請求項2】
前記各辺に形成された機能は、
少なくとも、建築用パネルを建築物本体側へ引き込む機能と、
建築用パネル間の目地幅ゲージの機能と、
パネルフレーム間隔幅調整の機能と、
建築用パネルの下げ振り測定の機能と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の建築用パネル取付治具。
【請求項3】
前記取り付けられる建築用パネルは、金属製のパネルフレームの所定位置に係合孔が形成された外壁用パネルであり、
前記建築用パネルを引き込むため、前記枠体を構成する辺に形成された建築物本体側への引き込み機能は、前記係合孔と係合するL字状の鍵状部材と、該鍵状部材と前記辺との間に脱落防止磁石が一体に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の建築用パネル取付治具。
【請求項4】
前記目地幅ゲージの機能は、L字状の鍵状部材の先端側の直線部分が10mmの棒体で形成され、目地幅ゲージの機能のときに枠体の握り手となる辺は、幅が10mmの矩形枠で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の建築用パネル取付治具。
【請求項5】
前記枠体の握り手となる辺は、幅が10mmの矩形枠の外側に、磁石を備えた棒状体が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の建築用パネル取付治具。
【請求項6】
前記建築用パネルの下げ振り測定の機能は、枠体の握り手の外側面にゲージ目盛が形成され、ゲージ目盛を上面にした状態で、取り付けられた建築用パネルの内部側への一定距離で上方から下げ振りにより、ゲージ目盛面に錘を垂下し、垂直を確認することを特徴とする請求項2に記載の建築用パネル取付治具。
【請求項7】
前記パネルフレーム間隔幅調整の機能は、前記枠体の建築物本体側へ引き込み機能を形成した辺と、枠体の握り手を形成した辺の間に、建築用パネル間の間隙を広げる手段が形成され、
前記間隙を広げる手段は、前記辺に固定された腕体間に配設された二枚の拡張部材と、該拡張部材間の間隙を大きくすることによって前記間隙を広げることを特徴とする請求項2に記載の建築用パネル取付治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用パネル取付治具に係り、特に、金属製のパネルフレームを有する建築用パネルを建築物本体に向かって引き込み、所定位置に取り付ける際に用いられる建築用パネル取付治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から工場にて製造された各種建築用パネルは、例えばパネル積載ラックに平積みされた状態で、トラック等の運搬車両に積み込まれて、建築現場に輸送されている。
輸送された建築用パネルは、パネル積載ラックに平積みされた状態から、建築現場に据え付けられたクレーン等によって一端部を吊り上げられ、建て起こすように持ち上げられ、建築物本体に対して取り付けられることになる。
【0003】
そうした中で、建築用パネルとして、例えば外壁パネルを建築物本体に取り付けるためには、まず吊り上げられた外壁パネルを建築物本体に向かって引き込む必要がある。そして、引き込んだ外壁パネルの下端を建築物本体に対してボルト締結した後、さらに外壁パネルの上端を建築物本体に対してボルト締結することで取り付け作業が完了する。
上記のような外壁パネルを引き込む作業は、外壁パネルよりも屋内側にいる作業者と、外壁パネルよりも屋外側にいる作業者の2名によって通常行われている。
しかしながら、作業者が2名必要であって作業効率が悪い、また狭小地の場合には足場を設置することが出来ず作業者が屋外側に立てない等の問題点から、特許文献1、2のような建築用パネル引き込み具が提案されているところである。
【0004】
特許文献1に記載のパネル引き寄せ具は、建築用パネルに引っ掛けるための短腕ピックと、作業者の持ち手部分となる長腕ピックとを備えており、長腕ピックが短腕ピックに対してリンクを介して回転可能となるように取り付けられている。
本パネル引き寄せ具を用いることで、作業者1名によって建築用パネルを建築物本体に向かって引き寄せることができる。
【0005】
また特許文献2に記載のパネル位置調整用治具は、外壁パネル内面の開口部に引っ掛けるためのパネル位置調整治具と、パネル位置調整治具を引き寄せるための引き寄せ装置と、を備えている。
本パネル位置調整用治具を用いることによっても、作業者1名で建築用パネルを建築物本体に向かって引き寄せることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平3-52079号公報
【特許文献2】特開平9-195514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2のようなパネル引き込み具では、外壁パネル等の建築用パネルを保持して引き込むことはできるが、外壁パネルを取り付ける際に、手でつかむところがなく、微調整をして位置決めすることが難しい。
隣り合う外壁パネルが取り付いた場合に、介添えする手が隣り合う外壁パネルに挟まれるため、さらに位置決めが難しい。
また、磁石に把手がついた治具では、取り付け場所で磁力が十分に発揮できない部位や、引っ張り方次第では外れることがある。
さらに外壁パネルを所定の位置に取り付けた後、目地幅やフレームの傾きの測定や、目地幅調整は、その作業用の測定機器・工具を用いて行っているので、複数の工具が必要であり、複数の工具の持ち運び、それぞれの作業に適した工具を用いる必要があって、両手が塞がり、連続した作業には適していない。
【0008】
例えば、建築用パネルとして外壁パネルの場合には、外壁パネルの引き込みが行え、建築用パネルの設置位置での垂直度の測定、目地幅調整など治具の形状にお互い干渉することなく、建築用パネル取り付け施工の一連の作業、つまり建築用パネル取り付け、取り付ける際の測定(建築用パネルの鉛直出しを含む)、位置調整、位置決めの作業を、複数の個別の治具ではなく、一つの治具で治具の各辺の形状から、治具の各辺がお互い干渉することなく、且つ一連の作業が連続して行える建築用パネル取付治具が求められていた。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、建築用パネル取り付け施工の一連の作業、つまり少なくとも建築用パネルの取り付け、取り付ける際の測定、位置調整、位置決めの作業を治具の各辺に有し、複数の個別の治具ではなく、一つの治具で且つ治具の各辺の形状がお互い干渉することなく、一連の作業が行える建築用パネル取付治具を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、各個別治具の運搬を不用にして、作業者の作業性を向上させた建築用パネル取付治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題は、本発明の建築用パネル取付治具によれば、金属製のパネルフレームを有する建築用パネルを建築物本体に取り付ける際に用いられる建築用パネル取付治具であって、
複数の直線状の辺を備えた枠体と、前記枠体の各辺に前記建築用パネルの取付に利用する異なる機能と、を備え、前記各辺に形成された機能を利用して前記建築用パネルを前記建築物本体に取り付けることにより解決される。
【0012】
本発明によれば、複数の直線状の辺を備えた枠定において、それぞれの直線状の辺に前記建築用パネルの取付に利用する異なる機能を備えているので、これらの機能を利用して前記建築用パネルを前記建築物本体に取り付けることができる。したがって、治具としては複数の機能を有する一つの枠体から構成されるので、個別の機能を有する治具を複数用いないで、建築用パネルを建築物本体に取り付けることができ、複数の治具を運搬することなく、一つの治具で且つ治具の各辺の形状がお互い干渉することなく、一連の作業が行える。
【0013】
より詳しくは、請求項2のように、前記各辺に形成された機能は、少なくとも、建築用パネルを建築物本体側へ引き込む機能と、建築用パネル間の目地幅ゲージの機能と、建築用パネルの下げ振り測定の機能と、パネルフレーム間隔幅調整の機能と、を備えたこと、により解決される。
【0014】
このように枠体の各辺には、少なくとも4つの機能を備えているので、一つの治具で、少なくとも4つの機能を行え、複数の治具を個別に用いることなく作業を行える。また治具が一つであるので、作業現場での紛失、置き場などに困らずに作業を一貫して行える。
【0015】
さらに、前記取り付けられる建築用パネルは、金属製のパネルフレームの所定位置に係合孔が形成された外壁用パネルであり、前記建築用パネルを引き込むため、前記枠体を構成する辺に形成された建築物本体側への引き込み機能は、前記係合孔と係合するL字状の鍵状部材と、該鍵状部材と前記辺との間に脱落防止磁石が一体に形成されていると、好適である。
【0016】
このように、建築用パネルは、金属製のパネルフレームの所定位置に係合孔が形成された外壁用パネルであれば、建築物本体側へ引き込むときに、前記係合孔とL字状の鍵状部材を係合し、建築物本体側へ引き込むことができる。このとき、該鍵状部材と前記辺との間に脱落防止磁石が一体に形成されているので、前記係合孔とL字状の鍵状部材が外れたり緩んだりしても、脱落防止磁石により、治具が建築用パネルに密着して支えられ、脱落することがない。
【0017】
また、前記目地幅ゲージの機能は、L字状の鍵状部材の先端側の直線部分が10mmの棒体で形成され、目地幅ゲージの機能のときに枠体の握り手となる辺は、幅が10mmの矩形枠で形成されていると好適である。
【0018】
また目地幅ゲージとして使用するときには、L字状の鍵状部材の先端側の直線部分が10mmの棒体で形成されているので、棒体を目地幅に合わせてはかることができる。また目地幅ゲージとしては、枠体の握り手となる辺は、幅が10mmの矩形枠で形成されているので、この部分を目地幅に合わせてはかることができる。
このとき、前記枠体の握り手となる辺は、幅が10mmの矩形枠の外側に、磁石を備えた棒状体が設けられていると好適である。
このようにすると、目地幅に合わせて枠体の握り手となる辺を、磁石で仮固定できて、治具を支えずに両手が自由に使えるようになり、作業がしやすくなる。
【0019】
また、前記建築用パネルの下げ振り測定の機能は、枠体の握り手の外側面にゲージ目盛が形成され、ゲージ目盛を上面にした状態で、取り付けられた建築用パネルの内部側への一定距離で上方から下げ振りにより、ゲージ目盛面に錘を垂下し、垂直を確認するように構成する。
【0020】
このように構成すると、枠体の握り手の外側面のゲージ目盛を上面にした状態で、前記建築用パネルの上方から所定距離(例えば50mm)の位置から下げ振りを行い、簡単な構成で、錘により鉛直方向出しができ、建築用パネルを鉛直方向に取り付けることができる。
【0021】
さらに前記パネルフレーム間隔幅調整の機能は、前記枠体の建築物本体側へ引き込み機能を形成した辺と、枠体の握り手を形成した辺の間に、建築用パネル間の間隙を広げる手段が形成され、前記間隙を広げる手段は、前記辺に固定された腕体間に配設され二枚の拡張部材と、該拡張部材間の間隙を大きくすることによって前記間隙を広げるように構成すると好適である。
【0022】
上記構成によれば、複数の建築用パネルの取付において、隣接する建築用パネルの配置に誤差が生じても、パネルフレーム間隔幅調整の機能により、一定の範囲に収めることができ、その後の目地幅に合った取付位置等の修正できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の建築用パネル取付治具によれば、複数の機能を有する一つの枠体から構成される治具で、これらの機能を利用して建築用パネルを建築物本体に取り付けることができる。つまり、個別の機能を有する治具を複数用いないで、建築用パネルを建築物本体に取り付けることができる。したがって、複数の治具を運搬することなく、また一つの治具でありながら、複数の機能の各辺が、お互い干渉することなく、且つ一連の作業が行える。
また治具が一つで、少なくとも四つの機能があるにも拘らず、作業現場での紛失、置き場などに困らずに作業を一貫して行える。
【0024】
建築用パネルが、外壁用パネルであれば、建築物本体側へ引き込むときに、前記係合孔とL字状の鍵状部材を係合し、建築物本体側へ引き込むことができる。このとき、該鍵状部材と前記辺との間に脱落防止磁石が配設されているので、前記係合孔とL字状の鍵状部材が外れたり、緩んだりしても、脱落防止磁石により、治具が建築用パネルに密着して脱落することがない。
【0025】
また目地幅ゲージとして使用するときには、L字状の鍵状部材の先端側の直線部分が10mmの棒体で形成されているので、棒体を目地幅に合わせてはかることができる。また目地幅ゲージとしては、枠体の握り手となる辺は、幅が10mmの矩形枠で形成されているので、この部分を目地幅に合わせて測ることができる。
【0026】
さらに下げ振り機能である枠体の握り手の外側面のゲージ目盛を上面にした状態で、前記建築用パネル上方で、建物本体からの所定距離位置(例えば50mm)から下げ振りを行い、簡単な構成で、錘により鉛直方向出しができ、建築用パネルを鉛直方向に位置させ建物本体に取り付けることができる。
【0027】
複数の建築用パネルの取付において、隣接する建築用パネルの配置に誤差が生じても、パネルフレーム(建築用パネル)間隔幅調整の機能により、隣接して取り付けるパネルフレーム(建築用パネル)の間隔を一定の範囲に収めることができ、目地幅等の修正を行える。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図3】引き込み機能を構成する部分の説明図である。
【
図4】建築用パネルを引き込むときの説明図である。
【
図5】建築用パネルを建築物本体に向かって引き込むときの説明図である。
【
図6】建築用パネルを引き込むときの鍵状部材を取付けた状態の説明図である。
【
図7】建築用パネルを建築物本体に対して取り付けた状態の説明図である。
【
図8】パネルフレーム間隔幅調整を行うときの説明図である。
【
図9】パネルフレーム間隔幅調整を行うときの拡張部材の説明図である。
【
図10】パネルフレーム間隔幅調整の作動時の説明図である。
【
図11】建築用パネルの下げ振り測定をするときの使用状態を示す説明図である。
【
図12】建築用パネルの下げ振り測定をするときの使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態に係る建築用パネル取付治具について、図を参照しながら説明する。
図1乃至
図12は本発明に係る建築用パネル取付治具について説明するものであり、
図1は建築用パネル取付治具の平面図、
図2は
図1の斜視図、
図3は引き込み機能を構成する部分の説明図、
図4は建築用パネルを引き込むときの説明図、
図5は建築用パネルを建築物本体に向かって引き込むときの説明図、
図6は建築用パネルを引き込むときの鍵状部材を取付けた状態の説明図、
図7は建築用パネルを建築物本体に対して取り付けた状態の説明図、
図8はパネルフレーム間隔幅調整を行うときの説明図、
図9はパネルフレーム間隔幅調整を行うときの拡張部材の説明図、
図10はパネルフレーム間隔幅調整の作動時の説明図、
図11は建築用パネルの下げ振り測定をするときの使用状態を示す説明図、
図12は建築用パネルの下げ振り測定をするときの使用状態を示す説明図である。
【0030】
本発明は、金属製のパネルフレームを有する建築用パネルを建築物本体に取り付ける際に用いられる建築用パネル取付治具に関するものである。
建築現場においてクレーンで吊り上げられた建築用パネルPを建築物本体(図示せず)に取り付けるために、建築用パネルP自体を建築物本体に向かって引き込み、取り付ける際に利用する異なる機能を有する建築用パネル取付治具Sである。
つまり、建築用パネル取付治具Sは、建築用パネルの取り付けについて、利用する異なる機能を備え、これらの機能を利用して、屋内側にいる作業者が、建築用パネルを建築物本体に取り付けるものである。
【0031】
本例の建築用パネル取付治具Sは、複数の直線状の辺11,21,31,41を備えた枠体Wと、この枠体Wの各辺11,21,31,41に建築用パネルPの取付に利用する異なる機能(10,20,30,40)を備えており、各辺11,21,31,41に形成された機能を利用して、建築用パネルPを建築物本体に取り付けるものである。なお、枠体Wの各辺11,21,31,41の幅や厚みは、各機能に合わせて異なるように形成してもよい(但し各辺の機能の利用時に他の辺と干渉しないように構成する)。
【0032】
以下の実施形態で説明する建築用パネルPは、
図4及び
図5で示すように、金属製のパネルフレームFの所定位置に係合孔hが形成された外壁用パネルである。なお、詳細は図示しないが、本実施態様の建築用パネルPは、建築物の外壁を構成し、予め完成された(プレセットされた)パネルで、上下方向に長尺な矩形状の外壁パネルであり、建築物の構造体を形成する金属製のパネルフレームFで断面略コ字形状の長尺な鋼材を矩形状に枠組みすることにより形成されている。
【0033】
そして、パネルフレームFの上下の端から一部突出した状態でパネルフレームFの表面側に固定される仕上げ面材と、パネルフレームFの裏面に取り付けられるシート状の繊維系断熱材などから主に構成されている。さらに、枠組みされたパネルフレームFによって囲まれる空間内には、グラスウールや発泡ウレタン等からなる不図示の断熱材が充填され、仕上げ面材は、外装仕上げ面材であって、セラミック系の外壁材や耐水合板等から形成されている。なお建築用パネルPは取り付けられる位置、用途等によって各種構成が存在する。
【0034】
前記異なる機能としては、少なくとも以下の四つの機能(10,20,30,40)を備えている。
(1)建築用パネルの建築物本体側へ引き込む機能10
(2)建築用パネル間の目地幅ゲージの機能20
(3)パネルフレーム(建築用パネル)間隔幅調整の機能30
(4)建築用パネルの下げ振り測定の機能40
なお、本実施形態では、上記4つの機能を持ち、この機能を各辺に形成したため、四角形の治具としているが、4つ以上の機能を有するように、四角形以外に、五角形等の多角形としてもよい。但し各辺が、他の機能の辺や、施工・組立の他部材の障害とならないように、形成位置・配置とすることが必要である。
【0035】
<(1)建築用パネルの建築物本体側へ引き込む機能10>
この外壁用パネル(建築用パネルP)を建築物本体側へ引き込むため、枠体Wの一部を構成する辺11に形成された建築物本体側への引き込む機能10は、
図4で示す外壁用パネルに形成された係合孔hと、L字状の鍵状部材12aとを係合する。そして引き込む機能10は、
図1乃至
図3で示すように、L字状の鍵状部材12(12a,12b)と、脱落防止の磁石(永久磁石)13aと、この磁石13aを保持する保持用金物13bとから形成され、保持用金物13bは連結竿12cによって固着されている。脱落防止の磁石13a及び保持用金物13bには、中心に孔が形成され、L字状の鍵状部材12bが貫通するように構成されている。
そして連結竿12cは、図示しないが、上記のように中心に孔を有する円筒状となっており、この円筒状の孔に、鍵状部材12bが挿着されて保持されている。
また、連結竿12cの一端側(辺11側)は、辺11に固着され、他端側(保持用金物13b側)は、保持用金物13bと磁石13aとを固着している。つまり、保持用金物13bは、辺11との間に連結竿12cを介して連結されている。
【0036】
本実施形態では、磁石13aは、
図3で示すように、円盤状で形成され、磁石13aの保持用金物13b側の面は、保持用金物13bとの接合が強固になるように平面となっている。また磁石13aと接する保持用金物13bの平面と反対側は、円筒状の連結竿12cより広い延出面が形成され、この延出面で保持用金物13bと接合し、保持用金物13bを支持すると共に、筒状部が磁石13aの中心孔と嵌合され、磁石13aと保持用金物13bと連結竿12cが一体になっており、円筒状の連結竿12cに、鍵状部材12bが嵌入して固着されている。これにより、磁石13aと保持用金物13bは、一体に固着されている。
脱落防止の磁石(永久磁石)13aは、鍵状部材12(12a,12b)の部分が、建築用パネルPと離れた場合にも、磁石13aで建築用パネルPに取り付き、紛失しないように構成されている。そして、辺11と連結竿12cは、結合部材14(例えば、ねじ、ビスなど)により固着されている。
【0037】
建築用パネルの建築物本体側へ引き込む機能10の動作は、まず、
図5で示すように、建築用パネル取付治具Sに形成された鍵状部材12の先端側をパネルフレームFの係合孔hに挿入し、鍵状部材12を引掛ける。このとき、鍵状部材12をパネルフレームFに引掛けた後、脱落防止磁石13aが、パネルフレームFに当接して建築用パネル取付治具Sが保持され脱落せず、両手が自由となり、建築用パネル取付治具S自体の脱落を気にせずに、手放しでほかの作業が可能となるため、他の作業を行える。
そして、パネルフレームFを、
図5の下側図のように、建築用パネル取付治具Sの握り手となる辺21を持って、建築物本体側へ引き込む。なお、鍵状部材12の先端側は、次述する目地幅ゲージとなっている。
【0038】
図6は、図示しないクレーンで、建築用パネルとしての外壁パネルPのパネルフレームFに形成された係合孔hに、鍵状部材12を引掛け、引き込む前の状態で、建築用パネル取付治具Sが脱落しないように、脱落防止の磁石13がパネルフレームFに密着した状態を示すものである。
梁を構成するH鋼61に外壁パネルPを取付けるための締結用フランジ62をボルトナット63で締結しており、この締結用フランジ62に、ボルトナット64を用いて外壁パネルPを取付ける例を示している。なお、外壁パネルPの取付けは、この例に限るものではなく、L字状フランジを用いてもよい。
上記作業方法であれば、建築用パネルPを建築物本体に向かって引き込む際に、建築用パネルPを傷つけることなく安定して引き込むことができる。
【0039】
<(2)建築用パネル間の目地幅ゲージの機能20>
目地幅ゲージの機能は、L字状の鍵状部材12の先端側の直線部分が10mmの棒体で形成されており、この先端側の部分を目地に合わせて配置させることにより、ゲージとして利用するものである。
【0040】
また、目地幅ゲージの機能のときに枠体Wの握り手となる辺21は、
図3で示すように、厚み幅が10mmの矩形枠で形成されているので、この幅でも目地に合わせて配置させることにより、ゲージとして利用するものである。なお枠体Wの握り手となる辺21は、厚みの幅が10mmで、矩形枠の外側に、磁石(永久磁石)を備えた棒状体22を設けてもよい。このように磁石の棒状体22を設けると、この部分にパネルフレームFが当接することにより、建築用パネル取付治具Sが磁石により保持され、建築用パネル取付治具Sの脱落を気にせず、他の作業を行える。さらに、握り手の部分が大きくなり、握りやすくなるので、引き込み易くなる。
【0041】
<(3)パネルフレーム(建築用パネル)間隔幅調整の機能30>
パネルフレーム(建築用パネル)間隔幅調整の機能30は、枠体Wが四角形の場合、枠体Wの建築物本体側へ引き込み機能を形成した辺11と、枠体Wの建築物本体側へ引き込みのときの枠体Wの握り手を形成した辺21の間の辺31又は41のいずれかに(本実施形態では辺31)、パネルフレーム(建築用パネルP)間の間隙を広げる手段が形成されている。
【0042】
間隙を広げる手段としては、辺31又は41のいずれか(本実施形態では辺31)に固定された腕体32,33間に二枚の拡張部材34,35が配設され、この拡張部材34,35間の間隙を大きくすることによって間隙を広げ、配置されたパネルフレーム(建築用パネルP)を調整する構成としている。拡張部材34,35は、長い腕体32側の保持部32bと、短い腕体33側の保持部33bの2箇所で保持され、拡張部材34,35の間隙が調節可能になっている。
【0043】
より具体的には、上記腕体32,33は、
図2、
図8、
図10で示すように、枠体Wの辺31に固定される固定部32a,33aと、この固定部32a,33aから辺31との段差が形成されるように保持部32b,33bを形成して、建築用パネル取付治具Sの他の構成部分や周囲の部材との干渉を防止している。拡張部材34,35による間隙調整は、回動軸36及び辺31に対して水平に動く移動軸38によって行われる。
拡張部材34は間隙調整における移動はせず、拡張部材35が可動し、拡張部材34と拡張部材35の間隔を調節する。この回動軸36及び移動軸38は、保持部32b,33bで保持され、間隙調整を行う。なお符号39は、腕体32,33を辺31に固定するビス等の固定部材である。
【0044】
拡張部材34は、
図9及び
図10で示すように、パネルフレームF(建築用パネルP)間に挟む挿入部34a(35a)と、この挟む挿入部34aから所定距離位置の面(片側面)にパネルフレームF(建築用パネルP)の挿入側端部と係合する挿入止め部34b(35b)と、拡張部材34,35の幅調整を行う回動軸螺合部34c及び36c(ねじ部)と、移動軸38と連結する連結孔34dとから構成されている。
他方の拡張部材35は、
図9及び
図10で示すように、パネルフレームF(建築用パネルP)間に挟む挿入部35aと、この挿入部35aから所定距離位置の面(片側面)にパネルフレームF(建築用パネルP)の挿入側端部と係合する挿入止め部35bと、拡張部材34,35の幅調整を行う36c(ねじ部)及び小径部36d,先端の小径ねじ部36eを挿通する挿通孔35cと、移動軸38を挿通する挿通孔35dとで形成されている。
【0045】
より詳しく説明すると、回動軸36は、回動軸36を回動させるための凹部(レンチRの嵌合部R1と嵌り合う)が形成された回動頭部36aと、回動頭部36aに連続した連結部36bと、回動軸受け部34cと螺合するねじ部36cと、このねじ部36cと連続した小径部36dと、小径部36dの先端の小径ねじ部36eを有し、
図2,
図9,
図10で示すように、拡張部材34,35を連結している。
そして回動軸36は、保持部32bで回動可能に保持している。回動頭部36aは、断面六角の嵌合部R1を備えたレンチRが入るように、六角の凹部36fとなっている。なお符号34eは、回動軸36の端部を固定する固定ナットである。またレンチRではなく、断面が六角形のバールであってもよく、回動軸36を回動できればよい。
また移動軸38は、移動を規制する移動軸38より大きめの筒部38bと、移動軸38の端部を固定する固定ナット38cとから構成され、筒部38bが前記保持部33bに当接するまで、軸38の移動が許容されるように構成されて、レンチRの回動により
図10の矢印のように移動動作ができるようになっている。なお符号34dは拡張部材34を案内する移動軸38の連結孔である。
【0046】
次に、パネルフレームF(建築用パネル)の間隔幅調整機能の動作を説明する。
先ず、
図8、
図10で示すように、パネルフレームF(建築用パネルP)間に二枚の拡張部材34,35を挟むように挿入する。そして、回動頭部36aの六角状の凹部36fに、嵌合部R1を嵌め込み、レンチRを回転させて、拡張部材35が可動して、拡張部材34,35の間隔を調整する。
これにより、二枚の拡張部材34,35の間隔が
図10の矢印方向に広がり、パネルフレームF(建築用パネルP)の間隔を広げる。
次に、10mm間隔を広げてゲージで確認する。このときのゲージとしては、L字状の鍵状部材12の先端側の直線部分、握り手となる辺21などにより10mm幅を測定する。
【0047】
<(4)建築用パネルの下げ振り測定の機能40>
建築用パネル取付治具Sによる建築用パネルPの下げ振り測定の機能40は、枠体Wの握り手側の辺41の外側面(
図11,
図12参照)にゲージ目盛42が形成され、ゲージ目盛42を上面(天井側)にした状態で、取り付けられた建築用パネルPの建築物本体内部側への一定距離で、上方から下げ振りにより、ゲージ目盛面42に錘50を垂下し、下げ振り測定目盛により、建築用パネルPの垂直を確認する。
【0048】
つまり、握り手部分である辺41に目盛があり、建築用パネルPの傾きを測定するもので、辺21に配設された棒状体22が磁石(永久磁石)で形成されているので、先ず、握り手部分である辺41に配設された棒状体22を建築用パネルPのフレームFに取り付ける。
そして、
図11で示すように、建物に取り付けた建築用パネルPからD距離の位置(本実施形態では50mm)で、上部側位置から錘50を紐51によって垂下し、建築用パネルPを取付けた状態の鉛直度を測定するものである。
【0049】
次に、建築用パネル取付治具Sを用いて、建築用パネルPを建築物本体に対して取り付ける方法を簡単に説明する。
先ず、屋内側にいる作業者が、クレーンで吊り上げられた建築用パネルPの下方部分に対して建築用パネル取付治具Sにより、建築用パネルPの建築物本体側へ引き込む機能10を用いて、建築用パネルPを建築物本体に引き込む。この機能は、
図4乃至
図7で説明したものである。
【0050】
次に、パネルフレームF(建築用パネルP)間の目地幅ゲージの機能20により、パネルフレームF(建築用パネルP)間の目地幅を測定し、目地幅を所定幅に合わせる。
さらにパネルフレームF(建築用パネルP)間隔幅調整の機能30により、隣接する建築用パネルPの間隔が一定になるようにして、修正をして取り付ける。
次に、建築用パネルPの下げ振り測定の機能40により、建築用パネルPを取付けたときに、鉛直方向に取り付けたかどうかを測定する。
以上のように、本発明に係る建築用パネル取付治具Sでは、一つの治具が、複数の機能を有しているので、この治具だけで、建築用パネルPを測定しながら、取り付けることができる。
【0051】
<その他の実施形態>
例えば天井パネルや床パネル、内壁パネル等の建築用パネルや、梁等の鉄骨部材からなる建築用パネルを取付ける際に、この建築用パネル取付治具Sが用いられても良い。
なお、上記説明例では、建築用パネルPの実施例として予め完成された(プレセットされた)完成パネルが用いられているが、完成パネルに特に限定されることなく利用可能である。すなわち、パネルフレームFを少なくとも有している建築用パネルであれば適用可能である。
【0052】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
10 建築用パネルの建築物本体側へ引き込み機能
11,21,31,41 辺
12(12a,12b) 鍵状部材
12c 連結竿
13 磁石(永久磁石)
13a 磁石
13b 保持用金物
14 結合部材
20 建築用パネル間の目地幅ゲージ機能
22 棒状体
30 パネルフレーム間隔幅調整機能
32,33 腕体
32a,33a 固定部
32b,33b 保持部
34,35 拡張部材
34a,35a 挿入部
34b,35b 挿入止め部
34c 軸螺合部、軸受け部
34d 35d 連結孔
34e 固定ナット
35c 挿通孔
36 回動軸
36a 回動頭部
36b 連結部
36c 大径ねじ部(ねじ部)
36d 小径部
36e 小径ねじ部
36f 凹部
38 移動軸(軸)
38b 筒部
38c 固定ナット
39 固定部材
40 建築用パネルの下げ振り測定機能
42 ゲージ目盛
50 錘
51 紐
61 H鋼
62 締結用フランジ
63 ボルトナット
64 ボルトナット
F パネルフレーム
h 係合孔
P 建築用パネル(外壁用パネル)
R レンチ
R1 嵌合部
S 建築用パネル取付治具
W 枠体