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特開2023-61787発泡性樹脂粒子、発泡粒子および発泡成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061787
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】発泡性樹脂粒子、発泡粒子および発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/224 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
C08J9/224 CET
C08J9/224 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171925
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】飯田 敦士
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基理人
(72)【発明者】
【氏名】木口 太郎
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA33
4F074AA76
4F074BA37
4F074BA38
4F074CA38
4F074CA46
4F074CA49
4F074CC04Y
4F074CC04Z
4F074CC10X
4F074CC47Z
4F074DA02
4F074DA12
4F074DA24
4F074DA32
4F074DA35
4F074DA59
(57)【要約】
【課題】VOC放散量が少ない発泡成形体を短い成形サイクルで提供し得る、発泡性樹脂粒子を提供すること。
【解決手段】構成単位としてスチレン単位およびアクリロニトリル単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含み、表面に特定のプロピレングリコール単位含有化合物を特定量含有する発泡性樹脂粒子、とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子であって、
前記基材樹脂は、スチレンに由来する構成単位およびアクリロニトリルに由来する構成単位を含み、
前記発泡性樹脂粒子は、表面に、発泡性樹脂粒子本体100重量部に対して、プロピレングリコール単位含有化合物を、0.03重量部~0.25重量部含有し、
前記プロピレングリコール単位含有化合物は、
数平均分子量1000以上のポリプロピレングリコール、末端が飽和アルキルエーテルで置換されたポリプロピレングリコール、末端が飽和脂肪酸エステルで置換されたポリプロピレングリコールおよび末端が飽和脂肪酸エステルで置換されたプロピレングリコールから成る群から選択される1種以上である、発泡性樹脂粒子。
【請求項2】
前記基材樹脂100重量部中、
前記スチレンに由来する構成単位を70重量部~90重量部、および、
前記アクリロニトリルに由来する構成単位を10重量部~30重量部含有する、請求項1に記載の発泡性樹脂粒子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発泡性樹脂粒子を発泡してなる、発泡粒子。
【請求項4】
請求項3に記載の発泡粒子を成形してなる、発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性樹脂粒子、発泡粒子および発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性樹脂粒子として発泡性ポリスチレン樹脂粒子が良く知られている。発泡性ポリスチレン樹脂粒子は型内発泡成形により容易に成形体を得ることができ、安価であることから一般的に広く利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、以下の発泡性熱可塑性重合体粒子の製造方法が開示されている:スチレン又はスチレンを含有するビニル系単量体を重合してなり、かつ特定の構造を有する脂肪酸ビスアミドを特定量含む熱可塑性重合体粒子の表面に、表面浸食剤として脂肪酸と多価アルコールとの部分エステル類を塗布する。
【0004】
また、特許文献2には、アクリロニトリル系単量体残基、スチレン系単量体残基および他の重合性単量体残基の各々特定量により構成される共重合体を基材樹脂とし、これに易揮発性発泡剤を特定量含有してなる発泡性共重合体樹脂粒子の表面及び/又は表面付近に、常温で液状のプロピレングリコールの高級脂肪酸エステルを存在させてなる発泡性共重合体樹脂組成物が開示されている。
【0005】
発泡性ポリスチレン樹脂粒子からなる発泡成形体は、軽量性および断熱性能に優れる反面、含有する揮発性有機化合物(以下、英語表記のVolatile Organic Compoundsの頭文字をとって「VOC」と記載することもある)の単位時間当たりの放散量が多いことが問題であった。そのため、VOCの規格が厳しい自動車および建材分野などで使用する場合は、発泡成形体を数日乾燥させるなどの処置が必要であり、前記処置はコストアップの一因となっている。
【0006】
例えば、特許文献3には、構成単位としてスチレン単位およびアクリロニトリル単位を各々特定量含む基材樹脂と、発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子が開示されている。また、特許文献3に開示される発泡性樹脂粒子では、発泡性樹脂粒子を発泡させてなる発泡粒子の表面に対する全反射測定法によるフーリエ変換赤外分光分析で得られた赤外吸収スペクトルにおける、波長2230cm-1の吸光度(D2230)と波長1600cm-1の吸光度(D1600)との比、D2230/D1600が特定の値を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58-222121号
【特許文献2】特開昭63-268750号
【特許文献3】国際公開公報WO2021/187142
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のような従来技術は、VOC放散量の低減、および、成形サイクルの短縮の両立の観点からは十分なものでなく、さらなる改善の余地があった。
【0009】
本発明の一実施形態は、前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、VOC放散量が少ない発泡成形体を短い成形サイクルで提供し得る、新規の発泡性樹脂粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、スチレンに由来する構成単位およびアクリロニトリルに由来する構成単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含み、かつ表面にプロピレングリコール単位含有化合物を特定量含有する発泡性樹脂粒子であれば、前記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
〔1〕基材樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子であって、前記基材樹脂は、スチレンに由来する構成単位およびアクリロニトリルに由来する構成単位を含み、前記発泡性樹脂粒子は、表面に、発泡性樹脂粒子本体100重量部に対して、プロピレングリコール単位含有化合物を、0.03重量部~0.25重量部含有し、前記プロピレングリコール単位含有化合物は、数平均分子量1000以上のポリプロピレングリコール、末端が飽和アルキルエーテルで置換されたポリプロピレングリコール、末端が飽和脂肪酸エステルで置換されたポリプロピレングリコールおよび末端が飽和脂肪酸エステルで置換されたプロピレングリコールから成る群から選択される1種以上である、発泡性樹脂粒子。
〔2〕前記基材樹脂100重量部中、前記スチレンに由来する構成単位を70重量部~90重量部、および、前記アクリロニトリルに由来する構成単位を10重量部~30重量部含有する、〔1〕に記載の発泡性樹脂粒子。
〔3〕〔1〕または〔2〕に記載の発泡性樹脂粒子を発泡してなる、発泡粒子。
〔4〕〔3〕に記載の発泡粒子を成形してなる、発泡成形体。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、VOC放散量が少ない発泡成形体を短い成形サイクルで提供し得る、新規の発泡性樹脂粒子を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0014】
本明細書においてX単量体に由来する構成単位を、「X単位」とも称する。また、本明細書において特記しない限り、構成単位として、X単位と、X単位と、・・・およびX単位(nは2以上の整数)とを含む共重合体を、「X/X/・・・/X共重合体」とも称する。X/X/・・・/X共重合体としては、明示されている場合を除き、重合様式は特に限定されず、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよい。
【0015】
〔1.本発明の一実施形態の技術的思想〕
発泡成形体の物性として、自動車および建材分野などでは揮発性有機化合物(VOC)の放散量が少ないことが求められている。発泡性樹脂粒子の中でも、アクリロニトリル単位を有する発泡性樹脂粒子は、VOC放散量の少ない発泡成形体を提供できるという利点を有する(例えば、特許文献3)。そのため、本発明者は、まず、VOC放散量の少ない発泡成形体を提供するために、アクリロニトリル単位を有する発泡性樹脂粒子の提供について検討した。
【0016】
一方で、アクリロニトリル単位は、発泡性樹脂粒子にガスバリア性を付与する。それ故、アクリロニトリル単位を含む発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子は高いガスバリア性を有する。
【0017】
また、アクリロニトリル単位を含む発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子を、金型を用いて成形したとき、得られた発泡成形体を金型から取り出すと、アクリロニトリル単位を含まない一般的なポリスチレン系発泡成形体と比較して、発泡成形体が膨れ易い。ここで、発泡成形体が膨張した場合、(a)得られる発泡成形体の寸法および形状が変化することで製品として利用できない問題、並びに(b)膨張により成形金型から離型できなくなる問題、などが発生する。そこで、かかる発泡成形体の膨張について検討したところ、本発明者は、以下の推測に至った:発泡成形体の膨張の直接の原因は、成形に使用したガス(発泡剤)が、金型から取り出された発泡成形体の発泡粒子内に残っており、当該ガスにより発泡成形体が膨張することであると推測した。また、本発明者らは、上述したように、アクリロニトリル単位を含む発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子は高いガスバリア性を有するため、当該発泡粒子の金型を使用した成形において、発泡成形体からガスが抜け難い傾向があり、それ故、発泡成形体内の発泡圧が下がり難い傾向があると推測した。ここで、金型を使用した発泡粒子の成形では、得られた発泡成形体に対して冷却水をかけた後、金型内を真空状態にすることで蒸発潜熱(吸熱)を利用して発泡成形体を冷却する工程(冷却工程)が実施され得る。本発明者らは、成形後の発泡成形体の発泡粒子内に残存したガスは、上述した冷却工程において、発泡成形体から抜けると推測した。すなわち、アクリロニトリル単位を含む発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子から膨張の少ない発泡成形体を得たい場合には、冷却工程の時間を長く設定する必要があり、成形サイクル(1回の成形に要する時間、ともいえる)が長くなりやすい傾向があった。
【0018】
そこで、本発明者は、アクリロニトリル単位を含む発泡性樹脂粒子を用いる場合であっても、発泡成形体を短い成形サイクルで提供できるよう、鋭意検討を行った。その結果、本発明者は、発泡性樹脂粒子の表面に適切な量のプロピレングリコール単位含有化合物を含有させることにより、驚くべきことに、短い成形サイクルで発泡成形体が提供できるという知見を独自に見出した。一方、本発明者は、鋭意検討の過程において、発泡性樹脂粒子の表面のプロピレングリコール単位含有化合物の含有量が多い場合には、驚くべきことに、得られる発泡成形体からのVOC放散量が増加するという知見も独自に得た。
【0019】
そこで、本発明者は、アクリロニトリル単位を含む発泡性樹脂粒子を用いる場合であっても、VOC放散量が少ない発泡成形体を短い成形サイクルで提供できるよう、さらに鋭意検討を行った。その結果、本発明者は、驚くべきことに、アクリロニトリル単位を含む発泡性樹脂粒子の表面にプロピレングリコール単位含有化合物を0.03重量部~0.25重量部含有することにより、VOC放散量が少ない発泡成形体を短い成形サイクルで提供し得る発泡性樹脂粒子が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0020】
〔2.発泡性樹脂粒子〕
本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子は、基材樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子であって、前記基材樹脂は、スチレンに由来する構成単位およびアクリロニトリルに由来する構成単位を含み、前記発泡性樹脂粒子は、表面に、発泡性樹脂粒子本体100重量部に対して、プロピレングリコール単位含有化合物を、0.03重量部~0.25重量部含有し、前記プロピレングリコール単位含有化合物は、数平均分子量1000以上のポリプロピレングリコール、末端が飽和アルキルエーテルで置換されたポリプロピレングリコール、末端が飽和脂肪酸エステルで置換されたポリプロピレングリコールおよび末端が飽和脂肪酸エステルで置換されたプロピレングリコールから成る群から選択される1種以上である。
【0021】
本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子は、上述した構成を有するため、VOC放散量が少ない発泡成形体を短い成形サイクルで提供し得るという利点を有する。また、本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子は、上述した構成を有するため、耐熱性、強度、融着性および表面性に優れる発泡成形体を提供し得るという利点も有する。
【0022】
本明細書の以下の記載においては、表面にプロピレングリコール単位含有化合物を含まない発泡性樹脂粒子(発泡性樹脂粒子そのもの、または発泡性樹脂粒子それ自体、ともいえる)を「発泡性樹脂粒子本体」と称する場合があり、その表面にプロピレングリコール単位含有化合物を含有する発泡性樹脂粒子を「発泡性樹脂粒子」と称する場合がある。また、本明細書において、発泡性樹脂粒子を発泡して得られる粒子を「発泡粒子」と称する場合があり、当該発泡粒子を成形して得られる成形体を「発泡成形体」と称する場合がある。また、本明細書において、「本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子本体」を「本発泡性樹脂粒子本体」と称する場合があり、「本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子」を「本発泡性樹脂粒子」と称する場合があり、「本発明の一実施形態に係る発泡粒子」を「本発泡粒子」と称する場合があり、「本発明の一実施形態に係る発泡成形体」を「本発泡成形体」と称する場合がある。また、本明細書において、発泡性樹脂粒子本体の表面にプロピレングリコール単位含有化合物を含有するとは、(i)発泡性樹脂粒子が含むプロピレングリコール単位含有化合物の全量が、発泡性樹脂粒子本体の樹脂表面で層を形成している状態、(ii)発泡性樹脂粒子が含むプロピレングリコール単位含有化合物の全量が、発泡性樹脂粒子本体の表層部に含浸している状態、または、(iii)発泡性樹脂粒子が含むプロピレングリコール単位含有化合物の一部が発泡性樹脂粒子本体の樹脂表面で層を形成しており、かつ当該プロピレングリコール単位含有化合物の残りの部分が発泡性樹脂粒子本体の表層部に含浸している状態、のいずれかを意図する。
【0023】
(2-1.VOC)
VOCは、広義には、例えば日本国の大気汚染防止法にて定義されるように、「排出口から大気中に排出され、また飛散したときに気体である有機化合物」を意味する。各技術分野において、VOCとして規制されるべき化合物が指定されている。例えば、日本国の厚生労働省は、下記の物質について室内濃度指針値を定めている:ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、スチレン、ノナナール、テトラデカン、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、p-ジクロロベンゼン、クロロピリホス、ダイアジノン、およびフェノブカルブ。また、日本国の自動車工業会は、下記物質について自動車室内の濃度規制を行っている:ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、スチレン、テトラデカン、フタル酸ジ-n-ブチル、およびフタル酸ジ-2-エチルヘキシル。
【0024】
本明細書においてVOCとは、「発泡性樹脂粒子、発泡粒子または発泡成形体が含み得る化合物のうち、(a)大気中に排出され、また飛散したときに気体であり、かつ(b)日本国の厚生労働省が室内濃度指針値を定めている有機化合物」を意図する。具体的には、本明細書においてVOCとは、スチレンおよびエチルベンゼンを意図する。
【0025】
(2-2.発泡性樹脂粒子本体)
本発泡性樹脂粒子本体は、基材樹脂と発泡剤とを含む。
【0026】
(2-3.基材樹脂)
本発明の一実施形態において、基材樹脂は、基材樹脂100重量部中、スチレンに由来する構成単位を70重量部~90重量部、および、アクリロニトリルに由来する構成単位を10重量部~30重量部含有する。
【0027】
基材樹脂におけるスチレン単位およびアクリロニトリル単位の合計含有量を100重量部とした場合に、例えば、(i)スチレン単位は70.0重量部~90.0重量部であり、およびアクリロニトリル単位は10.0重量部~30.0重量部であることが好ましく、(ii)スチレン単位は70.0重量部~88.0重量部であり、および、アクリロニトリル単位は12.0重量部~30.0重量部であることがより好ましく、(iii)スチレン単位は72.0重量部~88.0重量部であり、および、アクリロニトリル単位は12.0重量部~28.0重量部であることがより好ましく、(iv)スチレン単位は74.0重量部~88.0重量部であり、および、アクリロニトリル単位は12.0重量部~26.0重量部であることがより好ましく、(v)スチレン単位は75.0重量部~85.0重量部であり、および、アクリロニトリル単位は15.0重量部~25.0重量部であることがさらに好ましく、(vi)スチレン単位は80.0重量部~84.5重量部であり、および、アクリロニトリル単位は15.5重量部~20.0重量部であることが特に好ましい。アクリロニトリル単位の含有量が10.0重量部以上である場合、発泡性樹脂粒子が提供する発泡成形体は、(a)ガスバリア性に優れるためVOCとしてのスチレンの放散量が少なく、かつ(b)耐熱性および強度に優れる、という利点を有する。アクリロニトリル単位の含有量が30.0重量部以下である場合、発泡性樹脂粒子は成形性に優れ、かつ発泡性樹脂粒子の製造時に重合安定性が増すという利点を有する。
【0028】
本発泡性樹脂粒子が含む基材樹脂は、構成単位として、さらにα-メチルスチレン単位を含んでいてもよい。基材樹脂がさらにα-メチルスチレン単位を含む場合、基材樹脂のガラス転移温度が上昇するため、発泡性樹脂粒子は、十分な耐熱性を有する発泡成形体を提供できる。
【0029】
基材樹脂におけるスチレン単位、アクリロニトリル単位およびα-メチルスチレン単位の合計含有量を100重量部とした場合に、α-メチルスチレン単位の含有量は、好ましくは0重量部~15重量部であり、より好ましくは0重量部より多く15重量部以下であり、より好ましくは3重量部~15重量部であり、さらに好ましくは4重量部~10重量部であり、特に好ましくは4重量部~7重量部である。α-メチルスチレン単量体はα位にメチル基があり、立体障害が大きく、それ故に、反応性が乏しいという特徴がある。また、α-メチルスチレン単位が基材樹脂に含まれる場合、基材樹脂中のα-メチルスチレン単位の部位は分解しやすいという特徴がある。それ故に、基材樹脂中のα-メチルスチレン単位の含有量が0重量部より多い場合、換言すれば基材樹脂の製造にα-メチルスチレン単量体を使用する場合、発泡性樹脂粒子の製造時に、重合速度が速くなりすぎないため重合を制御しやすいという利点を有する。また、基材樹脂中のα-メチルスチレン単位の含有量が15重量部以下である場合、(a)得られる基材樹脂が分解しにくいため、発泡性樹脂粒子は難燃性に優れる発泡成形体を提供でき、(b)重合反応時の反応性が悪化しないため得られる基材樹脂の重量平均分子量は低くなりすぎず、(c)発泡性樹脂粒子はVOCとしてスチレン含有量が少ないものとなり、かつ(d)発泡性樹脂粒子はVOCとしてスチレン放散量の少ない発泡成形体を提供できる。
【0030】
基材樹脂は、構成単位として、スチレン単位、アクリロニトリル単位およびアルファメチルスチレン単位以外の構成単位を含んでいてもよい。基材樹脂は、構成単位として、例えば、(a)オレフィン系単量体、(b)スチレンおよびアルファメチルスチレン以外のスチレン系単量体に由来する構成単位、並びに(c)アクリル酸エステル系単量体に由来する構成単位を、さらに含んでいてもよい。
【0031】
オレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエンなどが挙げられる。
【0032】
スチレンおよびアルファメチルスチレン以外のスチレン系単量体としては、例えば、パラメチルスチレン、t-ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系誘導体が挙げられる。
【0033】
アクリル酸エステル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0034】
基材樹脂に含まれ得る、スチレン、アクリロニトリルおよびα-メチルスチレン以外の単量体に由来する構成単位は、1種であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0035】
(2-4.発泡剤)
本発泡性樹脂粒子が含む発泡剤としては、特に限定されない。発泡剤の具体例としては、例えば、(a)プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等の、炭素数3~5の脂肪族炭化水素類;および(b)ジフルオロエタン、テトラフルオロエタン等の、オゾン破壊係数がゼロであるフルオロカーボン類;等の揮発性発泡剤が挙げられる。これら発泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発泡性樹脂粒子における発泡剤の含有量は、基材樹脂100重量部に対して、3重量部~10重量部が好ましく、4重量部~8重量部がより好ましい。発泡剤の含有量が基材樹脂100重量部に対して、(a)3重量部以上である場合、所望する発泡倍率を得ることが容易となる傾向にあり、(b)10重量部以下である場合、発泡剤を含浸させる工程で発泡性樹脂粒子本体の凝集が生じ難くなる傾向にある。また、含浸工程を安定に実施するとともに、十分な発泡力を有する発泡性樹脂粒子を得る観点から、(a)発泡剤の含有量は、基材樹脂100重量部に対して、4重量部~6重量部が特に好ましく、(b)発泡剤として、n-ブタンおよびイソブタンを組み合わせて使用することが特に好ましい。
【0036】
(2-5.発泡性樹脂粒子本体の製造方法)
本発泡性樹脂粒子本体の製造方法としては、基材樹脂を調製(重合)した後、得られた基材樹脂に発泡剤を含浸させる方法が挙げられる。基材樹脂の調製方法(重合方法)および発泡剤の含浸方法については、いずれも、公知の製造方法を適用することができ、特に限定されない。但し、基材樹脂の調製方法としてシード懸濁重合法を採用する場合には、シードとなる樹脂粒子本体中の構成単位(すなわち、シードの含有する構成単位)も、発泡性樹脂粒子本体の構成単位として包含される。
【0037】
(2-6.プロピレングリコール単位含有化合物)
本発明の一実施形態に係るプロピレングリコール単位含有化合物は、数平均分子量1000以上のポリプロピレングリコール、末端が飽和アルキルエーテルで置換されたポリプロピレングリコール、末端が飽和脂肪酸エステルで置換されたポリプロピレングリコールおよび末端が飽和脂肪酸エステルで置換されたプロピレングリコールから成る群から選択される1種以上である。発泡性樹脂粒子本体の表面にプロピレングリコール単位含有化合物を塗布することにより、発泡性樹脂粒子の表面にプロピレングリコール単位含有化合物を含有する発泡性樹脂粒子を得ることができる。
【0038】
尚、発泡性樹脂粒子本体に塗布されたプロピレングリコール単位含有化合物は、実質的にその全量が発泡性樹脂粒子本体に付着し、発泡性樹脂粒子に含有される。すなわち、プロピレングリコール単位含有化合物は外添剤として作用し、プロピレングリコール単位含有化合物は外添剤ともいえる。
【0039】
本発泡性樹脂粒子は、その表面にプロピレングリコール単位含有化合物を含有することにより、発泡成形体を短い成形サイクルで提供することができる。プロピレングリコール単位含有化合物により、発泡成形体の成形サイクルが短くなる理由は定かではないが、以下のように推察される:表面にプロピレングリコール単位含有化合物を含有する発泡性樹脂粒子を発泡(加熱)するとき、発泡性樹脂粒子表面のプロピレングリコール単位含有化合物が当該表面を可塑化させる。これにより、得られる発泡粒子の表面にクラック(溝)が生じ得る。表面にプロピレングリコール単位含有化合物を含有する発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子の金型を用いる成形では、発泡粒子表面の可塑化および発泡粒子表面のクラック等により、発泡成形体からのガスの散逸が促進される。そのため、当該発泡粒子の成形では発泡成形体の冷却時間を短くでき、その結果、当該発泡粒子は、短い成形サイクルで発泡成形体を得ることができる。なお、本発明は、かかる推察に限定されるものではない。
【0040】
数平均分子量1000以上のポリプロピレングリコールの数平均分子量は、1000以上である限り特に限定されないが、1200以上が好ましく、1500以上がより好ましく、1800以上がさらに好ましく、2000以上がよりさらに好ましく、3000以上が特に好ましい。当該構成によると、発泡性樹脂粒子が発泡成形体をより短い成形サイクルで提供できるという利点を有する。
【0041】
末端が飽和アルキルエーテルで置換されたポリプロピレングリコールにおける、飽和アルキルエーテルとしては特に限定されず、例えば、ステアリルエーテル、ラウリルエーテル、パルミチルエーテル、ミリスチルエーテル、セロチルエーテルおよびグリセリルエーテル等が挙げられる。発泡性樹脂粒子が発泡成形体をより短い成形サイクルで提供できることから、飽和アルキルエーテルとしては、ステアリルエーテルおよびグリセリルエーテルが好ましく、グリセリルエーテルがより好ましい。
【0042】
末端が飽和アルキルエーテルで置換されたポリプロピレングリコールの数平均分子量としては特に限定されず、例えば、1000以上が好ましく、1200以上がより好ましく、1500以上がより好ましく、1800以上がさらに好ましく、2000以上がよりさらに好ましく、3000以上が特に好ましい。当該構成によると、発泡性樹脂粒子が発泡成形体をより短い成形サイクルで提供できるという利点を有する。
【0043】
末端が飽和アルキルエーテルで置換されたポリプロピレングリコールの具体例としては、特に限定されず、(a)ポリオキシプロピレンステアリルエーテルおよび分子量3000以上のポリオキシプロピレングリセリルエーテルから成る群から選択される1種以上であることが好ましく、(b)ポリオキシプロピレンステアリルエーテルおよび分子量3500以上のポリオキシプロピレングリセリルエーテルから成る群から選択される1種以上であることがより好ましく、(c)分子量3500以上のポリオキシプロピレングリセリルエーテルであることがさらに好ましい。当該構成によると、発泡性樹脂粒子が発泡成形体をさらに短い成形サイクルで提供できるという利点を有する。
【0044】
末端が飽和脂肪酸エステルで置換されたポリプロピレングリコールにおける、飽和脂肪酸エステルとしては特に限定されず、例えば、モノステアレート、ジステアレート、モノラウレート、ジラウレート、モノパルミテート、ジパルミテート、モノミリステート、ジミリステート、モノセロテートおよびジセロテート等が挙げられる。発泡性樹脂粒子が発泡成形体をより短い成形サイクルで提供できることから、飽和脂肪酸エステルとしては、モノステアレート、ジステアレート、モノラウレートおよびジラウレートが好ましく、モノステアレートおよびモノラウレートがより好ましく、モノステアレートがさらに好ましい。
【0045】
末端が飽和脂肪酸エステルで置換されたポリプロピレングリコールの数平均分子量としては特に限定されず、例えば、1000以上が好ましく、1200以上がより好ましく、1500以上がより好ましく、1800以上がさらに好ましく、2000以上がよりさらに好ましく、3000以上が特に好ましい。当該構成によると、発泡性樹脂粒子が発泡成形体をより短い成形サイクルで提供できるという利点を有する。
【0046】
末端が飽和脂肪酸エステルで置換されたポリプロピレングリコールの具体例としては、特に限定されず、例えば、(a)ポリプロピレングリコールモノステアレート、ポリプロピレングリコールジステアレート、ポリプロピレングリコールモノラウレートおよびポリプロピレングリコールジラウレートから成る群から選択される1種以上であることが好ましく、(b)ポリプロピレングリコールジステアレートであることがより好ましい。
【0047】
末端が飽和脂肪酸エステルで置換されたプロピレングリコールにおける、飽和脂肪酸エステルとしては特に限定されず、例えば、モノステアレート、ジステアレート、モノラウレート、ジラウレート、モノパルミテート、ジパルミテート、モノミリステート、ジミリステート、モノセロテートおよびジセロテート等が挙げられる。発泡性樹脂粒子が発泡成形体をより短い成形サイクルで提供できることから、飽和脂肪酸エステルとしては、モノステアレート、ジステアレート、モノラウレートおよびジラウレートが好ましく、モノステアレートおよびモノラウレートがより好ましく、モノステアレートがさらに好ましい。
【0048】
末端が飽和脂肪酸エステルで置換されたプロピレングリコールの分子量としては特に限定されず、例えば、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、220以上がより好ましく、240以上がさらに好ましく、260以上がよりさらに好ましく、300以上が特に好ましい。当該構成によると、発泡性樹脂粒子が発泡成形体をより短い成形サイクルで提供できるという利点を有する。
【0049】
末端が飽和脂肪酸エステルで置換されたプロピレングリコールの具体例としては、特に限定されず、例えば、(a)プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールジステアレート、プロピレングリコールモノラウレートおよびプロピレングリコールジラウレートから成る群から選択される1種以上であることが好ましく、(b)プロピレングリコールモノステアレートおよびプロピレングリコールモノラウレートから成る群から選択される1種以上であることがより好ましく、(c)プロピレングリコールモノステアレートであることがさらに好ましい。
【0050】
本発明者は、鋭意検討の過程で、末端が不飽和脂肪酸エステルで置換されたプロピレングリコールよりも、末端が飽和脂肪酸エステルで置換されたプロピレングリコールの方が、驚くべきことに、成形サイクル短縮化の効果が高いという知見を独自に得た。
【0051】
本発泡樹脂粒子におけるプロピレングリコール単位含有化合物の含有量(換言すれば、発泡性樹脂粒子本体に対するプロピレングリコール単位含有化合物の塗布量)は、発泡性樹脂粒子本体100重量部に対して、0.03重量部~0.25重量部であり、0.04重量部~0.20重量部が好ましく、0.04重量部以上0.20重量部未満が好ましく、0.04重量部~0.15重量部がより好ましく、0.04重量部~0.10重量部がより好ましく、0.04重量部~0.08重量部がさらに好ましく、0.04重量部~0.06重量部が特に好ましい。プロピレングリコール単位含有化合物の前記含有量が、発泡性樹脂粒子100重量部に対して、0.03重量部以上である場合、プロピレングリコール単位含有化合物による成形サイクル短縮化の効果が十分に発揮されるという利点がある。プロピレングリコール単位含有化合物の前記含有量が、発泡性樹脂粒子100重量部に対して、0.25重量部以下である場合、得られる発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子表面の可塑化が適切な範囲内となり、当該発泡粒子表面に存在するクラックも適切な範囲内となる。その結果、得られる発泡性樹脂粒子から最終的に得られる発泡成形体のVOC放散量が少なく、かつ強度に優れるという利点を有する。また、プロピレングリコール単位含有化合物の前記含有量が、発泡性樹脂粒子100重量部に対して、0.25重量部以下である場合、得られる発泡性樹脂粒子から最終的に得られる発泡成形体が十分な強度(例えば曲げ強度)を有するという利点を有する。
【0052】
(2-8.その他の添加剤)
本発泡性樹脂粒子は、基材樹脂および発泡剤に加えて、本発明の一実施形態の効果を阻害しない範囲で、任意でその他の添加剤をさらに含んでいてもよい。前記その他の添加剤としては、溶剤、可塑剤、気泡調整剤、造核剤、難燃剤、難燃助剤、熱線輻射抑制剤、顔料、染料および単量体成分などが挙げられる。
【0053】
前記溶剤は、沸点が50℃以上であることが好ましい。溶剤の具体例としては、例えば、(a)トルエン、へキサン、ヘプタン等の炭素数6以上の脂肪族炭化水素;および(b)シクロヘキサン、シクロオクタン等の炭素数6以上の脂環族炭化水素、等が挙げられる。これら溶剤は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
前記可塑剤は、発泡性樹脂粒子本体の製造時(重合時)に添加(使用)され得る。可塑剤としては、沸点が200℃以上である、一般に可塑剤として用いられる化合物が好ましい。可塑剤としては、例えば前記化合物の中から、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
前記気泡調整剤の具体例としては、例えば、(a)メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等の脂肪族ビスアマイド;および(b)ポリエチレンワックス、等が挙げられる。これら気泡調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
前記造核剤の具体例としては、例えば、メタクリル酸メチル系共重合体、ポリエチレンワックス、タルク、脂肪酸ビスアマイド、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。脂肪酸ビスアマイドの具体例としては、例えば、メチレンビスステアリルアマイド、エチレンビスステアリルアマイド、ヘキサメチレンビスパルミチン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド等が挙げられる。これら造核剤は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
前記難燃剤の具体例としては、例えば、(a)ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモブタン、ヘキサブロモシクロヘキサン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系化合物;(b)テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、2,4,6-トリブロモフェノール等の臭素化フェノール類;(c)テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、2,2-ビス[4’-(2”,3”-ジブロモアルコキシ)-3’,5’-ジブロモフェニル]-プロパン等の臭素化フェノール誘導体;および(d)臭素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体、臭素化ランダムスチレン-ブタジエン共重合体、臭素化スチレン-ブタジエングラフト共重合体等の臭素化ブタジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体(例えば、Chemtura社製のEMERALD3000、若しくは、特表2009-516019号公報に記載されている共重合体);等が挙げられる。前記難燃剤として、上述した以外の公知の難燃剤を使用することもできる。これら難燃剤は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
前記難燃助剤の具体例としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等が挙げられる。前記難燃助剤として、上述した以外の公知の難燃助剤を使用することもできる。これら難燃助剤は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
前記その他の添加剤は、例えば、発泡性樹脂粒子本体の製造時に発泡性樹脂粒子本体に対して添加すればよい。これらその他の添加剤を発泡性樹脂粒子本体に対して添加する時期および/または添加方法は、特に限定されない。
【0060】
(2-9.その他の外添剤)
本発泡性樹脂粒子は、当該発泡性樹脂粒子の表面に、ブロッキング防止剤(例えば、高級脂肪酸の金属塩のステアリン酸亜鉛およびステアリン酸マグネシウム等)、帯電防止剤、撥水剤、融着促進剤等の公知の外添剤を、本発明の一実施形態の効果を阻害しない範囲でさらに含有していてもよい。例えば、融着促進剤としては、常温で固体である、カスターワックス(ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド)、ステアリン酸ソルビタンエステルなど、高級脂肪酸のトリエステル、ジエステル、モノエステル類、ショ糖エステル類が挙げられる。これらその他の外添剤を添加(使用)する時期は特に限定されない。その他の外添剤が室温で固体の外添剤である場合、良好な流動性が得られる点でプロピレングリコール単位を含む化合物の塗布が終了した後の発泡性樹脂粒子本体に対して、当該外添剤を添加するのが好ましい。なお、本明細書において、「外添剤」とは、添加剤のうち、特に、発泡性樹脂粒子の表面に含まれるもの、換言すれば発泡性樹脂粒子本体の表面に塗布されるものをいう。
【0061】
(2-10.発泡性樹脂粒子の製造方法)
本発泡性樹脂粒子の製造方法としては、特に限定されず、例えば、発泡性樹脂粒子本体に、プロピレングリコール単位含有化合物、および必要に応じてその他の外添剤を添加し、得られた混合物を混合する方法が挙げられる。ここで、「プロピレングリコール単位含有化合物およびその他の外添剤」を、「プロピレングリコール単位含有化合物等の外添剤」と称する場合もある。
【0062】
本発泡性樹脂粒子の製造では、発泡性樹脂粒子本体の表面にプロピレングリコール単位含有化合物等の外添剤をできる限り均一に塗布することが好ましい。そのため、発泡性樹脂粒子本体とプロピレングリコール単位含有化合物等の外添剤との混合物において、これら混合物を均一に混合することができる混合機器を用いることが好ましい。当該混合機器としては、例えば、(a)スーパーミキサー、ナウタミキサー、ユニバーサルミキサー、プロシェアミキサー、アペックスミキサー、ヘンシェルミキサー、レーディゲーミキサー等のミキサー;および(b)リボンブレンター、タンブラ-型ブレンター等のブレンター;が挙げられる。混合機器における混合時間等の条件は、(a)混合能力;並びに(b)脂肪酸グリセリド等の外添剤の種類および塗布量;等を考慮して、調整すればよい。
【0063】
本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子の製造方法は、以下のような構成であってもよい:(i)混合機器に、発泡性樹脂粒子本体と、プロピレングリコール単位含有化合物と(並びに必要に応じてその他の外添剤と)を投入し、発泡性樹脂粒子本体とプロピレングリコール単位含有化合物と(並びに必要に応じてその他の外添剤と)を混合することによって、当該発泡性樹脂粒子本体の表面にプロピレングリコール単位含有化合物を塗布する工程(プロピレングリコール単位含有化合物塗布工程)を含む、発泡性樹脂粒子の製造方法。上述した製造方法によると、VOC放散量が少ない発泡成形体を短い成形サイクルで提供し得る発泡性樹脂粒子をより容易に提供できる、という利点を有する。
【0064】
但し、本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子の製造方法は、発泡性樹脂粒子本体の表面に、プロピレングリコール単位を含む化合物を、上述した量(含有量)で塗布することができる方法であればよく、特に限定されない。
【0065】
〔3.発泡粒子〕
本発明の一実施形態に係る発泡粒子は、前記〔2.発泡性樹脂粒子〕の項に記載の本発泡性樹脂粒子を発泡してなる。
【0066】
本発泡粒子は、上述した構成を有するため、VOC放散量が少ない発泡成形体を短い成形サイクルで提供できるという利点を有する。また、本発泡粒子は、上述した構成を有するため、耐熱性、強度、融着性および表面性に優れる発泡成形体を提供できるという利点も有する。
【0067】
ここで、発泡性樹脂粒子から発泡成形体を得るとき、先ず、発泡性樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得、その後、当該発泡粒子を成形して発泡成形体を得る場合がある。それ故、発泡性樹脂粒子から発泡成形体を得る過程で、発泡性樹脂粒子を発泡させることを「予備発泡する」または「一次発泡する」と称する場合があり、得られる発泡粒子を「予備発泡粒子」または「一次発泡粒子」と称する場合がある。
【0068】
発泡性樹脂粒子を発泡させる方法としては、例えば、円筒形の予備発泡装置を使用し、水蒸気等の加熱媒体を用いて発泡性樹脂粒子を加熱して発泡させる等の、通常の方法を採用することができる。発泡性樹脂粒子の発泡に使用する装置、および発泡の条件は、発泡性樹脂粒子本体の組成および/または所望する発泡倍率等に応じて適宜、設定すればよく、特に限定されない。
【0069】
本発泡粒子の発泡倍率は特に限定されず、例えば、5倍~60倍であることが好ましく、10倍~55倍であることがより好ましく、20倍~50倍であることがさらに好ましく、30倍~50倍であることが特に好ましい。発泡粒子の発泡倍率が、(a)5倍以上である場合、当該発泡粒子は軽量である発泡成形体を提供できるという利点を有し、(b)60倍以下である場合、当該発泡粒子は強度に優れる発泡成形体を提供できるという利点を有する。発泡粒子の発泡倍率の測定方法は、下記の実施例にて詳述する。
【0070】
本発泡粒子の連続気泡率は特に限定されず、例えば、2.5%~8.0%であることが好ましく、3.0%~7.0%であることがより好ましく、3.0%~6.5%であることがさらに好ましく、3.0%~6.0%であることが特に好ましい。当該構成によると、VOC放散量が少なく、強度が高い発泡成形体を短い成形サイクルで提供できるという利点を有する。なお、連続気泡率は、発泡粒子表面に存在するクラックの量(個数)に比例する。換言すれば、連続気泡率は、発泡粒子の表面のクラック数を反映しており、連続気泡率が高いほど、発泡粒子の表面のクラック数が多いことを意図する。上述したように、発泡粒子の表面のクラックにより、発泡粒子内のガス(発泡剤)が放散されやすくなり、発泡成形体を短いサイクルで提供可能となる。その一方で、発泡粒子の表面のクラック数が多い程、換言すれば連続気泡率が高い程、VOCの放散量が増加し得る。また、本発明者は、発泡粒子の表面のクラック数が多い程、換言すれば連続気泡率が高い程、得られる発泡成形体の強度が低下することも独自に見出した。そのため、成形サイクルの短縮とVOC放散量とのバランス、または成形サイクルの短縮とVOC放散量と発泡成形体の強度とのバランスの観点から、本発泡粒子の連続気泡率は前記範囲内の値が好ましい。発泡粒子の連続気泡率の測定方法は、下記の実施例にて詳述する。
【0071】
〔4.発泡成形体〕
本発明の一実施形態に係る発泡成形体は、前記〔3.発泡粒子〕の項に記載の本発泡粒子を成形してなる。ここで、発泡粒子から発泡成形体を得る過程で、発泡粒子を加熱し、発泡させることを「二次発泡する」と称する場合がある。
【0072】
本発泡成形体は、上述した構成を有するため、VOC放散性が少ないという利点を有する。また、本発泡成形体は、上述した構成を有するため、耐熱性、強度、融着性および表面性にも優れるという利点を有する。
【0073】
発泡粒子を成形させる方法としては、特に限定されず、例えば、型内発泡成形法等の、通常の方法を採用することができる。型内発泡成形法とは、金型内に発泡粒子を充填し、水蒸気等の加熱媒体を金型内に吹き込んで当該発泡粒子を加熱することにより、当該発泡粒子を発泡させ、当該発泡粒子同士を融着させて、発泡成形体を得る方法である。型内発泡成形法による発泡粒子の成形を、型内成形と称する場合もある。本発明の一実施形態に係る発泡粒子は、前記〔3.発泡粒子〕の項に記載の本発泡粒子を型内成形してなるものであってもよい。
【0074】
発泡粒子の成形に使用する装置、および成形の条件は、発泡性樹脂粒子本体の組成、発泡粒子の組成、および/または所望する発泡倍率等に応じて適宜、設定すればよく、特に限定されない。
【0075】
〔5.用途〕
本発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子(本発泡粒子)は、VOC放散量が少ない発泡成形体を短い成形サイクルで提供することができる。また、本発泡成形体は、VOC放散量が少なく、VOC放散性に優れるものである。さらに、本発泡成形体は耐熱性、強度、融着性および表面性にも優れる、という利点を有する。また、本発泡粒子および本発泡成形体は、軽量であり、かつ緩衝性および断熱性に優れるという利点も有する。そのため、本発泡性樹脂粒子、本発泡粒子および本発泡成形体は、食品容器等の包装材料(トレー)、各種梱包材、建築土木部材、自動車部材、比較的温度の高い配管の保温材、屋根用断熱材、ソーラーシステム用保温材、給湯器用保温材等として、好適に利用できる。本発泡性樹脂粒子、本発泡粒子および本発泡成形体は、特に、自動車部材、比較的温度の高い配管の保温材、屋根用断熱材、ソーラーシステム用保温材、給湯器用保温材等として、好適に利用できる。
【実施例0076】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0077】
実施例および比較例における、発泡粒子および発泡成形体の製造方法、並びに、各種測定方法および評価方法は、以下の通りである。また、「部」および「%」は、特に断りのない限り、重量基準(重量部および重量%)である。
【0078】
<発泡粒子の製造>
篩によって所定の粒子径に分級した発泡性樹脂粒子を、加圧式予備発泡機(大開工業(株)製、BHP)に投入した。そして、加熱媒体として水蒸気を用い、吹き込み蒸気圧を0.08MPa(ゲージ圧)~0.12MPa(ゲージ圧)として加熱することによって、発泡性樹脂粒子を発泡させた。その後、得られた発泡粒子を室温で24時間放置した。
【0079】
<発泡粒子の発泡倍率>
発泡粒子の発泡倍率を以下(1)~(3)の手順で測定した:(1)発泡粒子を10g秤取り、1000cmのメスシリンダーへ入れた;(2)メスシリンダーの目盛から、10gの発泡粒子の体積を測定した;(3)以下の式により、発泡粒子の発泡倍率を算出した;
発泡倍率(cm/g):発泡粒子の体積(cm)/10g。
【0080】
<発泡粒子の連続気泡率>
空気比較式比重計(ベックマン社製、930型)を用いて、発泡粒子の独立気泡体積(V0)を求め、同一の発泡粒子について別途エタノール浸漬体積(V1)を求めた。発泡粒子のエタノール浸漬体積(V1)は、エタノールを含むメスシリンダーのエタノール中に発泡粒子を沈め、メスシリンダーにおけるエタノールの液面上昇分から算出した。得られた独立気泡体積(V0)およびエタノール浸漬体積(V1)から、下記式に基づき、連続気泡率(%)を算出した。
連続気泡率(%)=((V1-V0)/V1)×100。
【0081】
<ブロッキング性>
前記<発泡粒子の製造>において、予備発泡機から発泡粒子を取り出すときに、当該発泡粒子を目開きが1cmの網に通過させ、網を通過しなかった予備発泡粒子を回収した。網を通過しなかった発泡粒子の重量を計量してブロッキング量とした。そして、下記算出式に基づいてブロッキング率を算出した。
ブロッキング率[重量%]=ブロッキング量[g]/発泡粒子の全量[g]×100
得られたブロッキング率に基づき、ブロッキング性を以下の基準で評価した。
◎(良好):ブロッキング率が0.10重量%以下
○(合格):ブロッキング率が0.10重量%を超え、0.15重量%以下
△(不良):ブロッキング率が0.15重量%を超え、0.20重量%以下
×(非常に不良):ブロッキング率が0.20重量%を超える。
【0082】
<発泡成形体の製造と成形サイクル>
発泡成形体は、縦450mm×横300mm×深さ25mmの大きさの金型、及び成形機((株)ダイセン製、KR-57)を使用して製造した:(1)金型内に、上述した方法によって製造した発泡粒子を充填した;(2)加熱媒体として水蒸気を用い、水蒸気の吹き込み時間を18秒、水蒸気の吹き込み蒸気圧を0.06MPa(ゲージ圧)とした成型条件にて型内発泡成形を行い、発泡倍率(嵩倍率)40倍に加熱発泡(二次発泡)させた;(3)水冷を3秒実施後、真空冷却を行い、面圧0.30MPa(ゲージ圧)以下となったら真空冷却終了とした;(4)金型から取り出して発泡成形体を得た。得られた発泡成形体を、室温で24時間乾燥させ、融着性評価および表面性評価に使用した。ここで、発泡粒子の加熱発泡から真空冷却終了までの工程(上述の(2)及び(3)の工程)に要する時間を測定し、得られた値(秒)を成形サイクルとした。
【0083】
<VOC放散性評価>
発泡成形体からのスチレンおよびエチルベンゼンの放散量(すなわちVOC放散量)は、以下(1)~(7)を順に実施して算出した:(1)0.025gの発泡成形体を準備した;(2)当該発泡成形体を容積20mlの耐圧ガラス容器に入れた;(3)当該耐圧ガラス容器を、島津製作所(株)製のガスクロマトグラフィー(GC-2014)に連結されている島津製作所(株)製のヘッドスペースサンプラ(HS-10)に設置した;(4)HS-10にて、耐圧ガラス容器を60℃にて2時間放置した;(5)2時間後、島津製作所(株)製のガスクロマトグラフィー(GC-2014)を用いて耐圧ガラス容器内の気体を分析し、気体中のスチレンおよびエチルベンゼンの量を検出した;(6)スチレンまたはエチルベンゼンを内部標準シクロペンタノールと共に塩化メチレンに溶解し、得られた溶解物を前記ガスクロマトグラフィーに供し、ガスクロマトグラフィーを実施することにより、スチレンまたはエチルベンゼンの検量線を得た;(7)検量線および耐圧ガラス容器内の気体についてそれぞれ実施したガスクロマトグラフィーの結果から、放散されたスチレンおよびエチルベンゼンの重量を、発泡成形体の重量を基準とした重量比率(ppm)によって算出した。
なお、ガスクロマトグラフィーの条件は、下記の通りとした。
キャピラリーカラム:GLサイエンス製Rtx-1
カラム温度条件:50℃から80℃まで昇温速度3℃/分で昇温後、80℃から180℃まで昇温速度10℃/分で昇温
キャリアガス:ヘリウム。
【0084】
次いで、得られた結果(放散されたスチレンおよびエチルベンゼンの総量、すなわちVOC総量)に基づき、以下の基準で、発泡成形体のVOC放散性を評価した。
○(良好):VOC総量が15ppm未満である
×(不良):VOC総量が15ppm以上である。
【0085】
<融着性評価>
以下のようにして融着率を算出した:(1)発泡成形体を破断した;(2)破断面を観察して、観察視野に存在する全粒子(100%)中、発泡粒子の界面ではなく、発泡粒子が破断している発泡粒子の個数を計測した;(3)得られた結果を用いて、以下の式に基づき、融着率を算出した;
融着率(%)=(発泡粒子界面ではなく、発泡粒子が破断している発泡粒子の個数)/観察視野に存在する全粒子数×100。
以下の基準に基づき得られた融着率から、発泡成形体の融着性を評価した。なお、融着率が大きいほど、融着性が良好であることを意図し、「○」以上を合格とした。
◎(良好):融着率が90%以上
○(合格):融着率が80%以上、90%未満
△(不良):融着率が70%以上、80%未満
×(非常に不良):融着率が70%未満。
【0086】
<表面性評価>
得られた発泡成形体の表面状態を目視観察し、以下の基準にて表面性を評価した。
◎(良好):表面の溶融、粒間が無い、すなわち、非常に美麗。
○(合格):表面の溶融、粒間が少ない、すなわち、美麗。
△(不良):表面の溶融、粒間がある、すなわち、外観やや不良。
×(非常に不良):表面の溶融、粒間が多い、すなわち、外観不良。
【0087】
〔実施例1〕
製品名:カネパール(登録商標)CI((株)カネカ製)を篩によって分級して得られた粒子径0.6mm~1.4mmの粒子を、発泡性樹脂粒子本体とした。カネパール(登録商標)CIは、(i)基材樹脂および発泡剤を含み、(ii)基材樹脂は、スチレン単位、アクリロニトリル単位およびα-メチルスチレン単位を、スチレン/アクリロニトリル/α-メチルスチレン=71/24/5の比率で有するものであり、(iii)発泡剤としてブタンを、発泡性樹脂粒子本体100重量部当たり6.5重量部含むものである。
【0088】
発泡性樹脂粒子本体100重量部をナウタミキサー(ホソカワミクロン(株)製)に投入した。その後、プロピレングリコール単位含有化合物として、表3に記載のポリプロピレングリコール(数平均分子量2000、日油(株)製、ユニオール(登録商標)D-2000)を表3に記載の量(0.05重量部)、ナウタミキサーに120秒間かけて投入した。その後、ナウタミキサー内の原料を30分間攪拌し、発泡性樹脂粒子を得た。
【0089】
前記した<発泡粒子の製造>と<発泡成形体の製造と成形サイクル>に記載の方法により、発泡粒子および発泡成形体を作製した。基材樹脂の組成を表1に示す。また、得られた発泡粒子および発泡成形体について、上述した各種測定および評価を行った。その結果を、表3~5に示す。
【0090】
〔実施例2~9および比較例1~8〕
プロピレングリコール単位含有化合物の種類および塗布量(含有量)を表3~5に記載の種類および塗布量にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同じ方法で、発泡性樹脂粒子、発泡粒子および発泡成形体を得た。得られた発泡粒子および発泡成形体について、上述した各種測定および評価を行った。その結果を、表3~5に示す。
【0091】
実施例6、比較例1、比較例4では、実施例1と同じ、ポリプロピレングリコールを、プロピレングリコール単位含有化合物として使用した。
【0092】
実施例2ではポリプロピレングリコール(数平均分子量4000、日油(株)製、ユニオール(登録商標)4000)を、実施例3ではポリプロピレングリコールジステアレート(数平均分子量2600、日油(株)製、ユニセーフ(登録商標)NKL-9520)を、実施例4ではプロピレングリコールモノステアレート(分子量342、理研ビタミン(株)、リケマール(登録商標)PS-100)を、それぞれ、プロピレングリコール単位含有化合物として使用した。
【0093】
実施例5ではプロピレングリコールモノラウレート(分子量272、理研ビタミン(株)製、リケマール(登録商標)TypeBP)を、実施例7ではポリオキシプロピレンステアリルエーテル(数平均分子量1200、日油(株)製、ユニルーブ(登録商標)MS-70K)、実施例8ではポリオキシプロピレングリセリルエーテル(数平均分子量3000、日油(株)製、ユニオール(登録商標)TG-3000)を、それぞれ、プロピレングリコール単位含有化合物として使用した。
【0094】
実施例9ではポリオキシプロピレングリセリルエーテル(数平均分子量4000、日油(株)製、ユニオール(登録商標)TG-4000)を、比較例2ではポリプロピレングリコール(数平均分子量700、日油(株)、ユニオール(登録商標)D-700)を、比較例3ではポリオキシプロピレングリセリルエーテル(数平均分子量330、日油(株)、ユニオール(登録商標)TG-330)を、比較例5ではグリセリンモノステアレート(分子量358、理研ビタミン(株)製、リケマール(登録商標)S-100)を、比較例6ではプロピレングリコールモノオレート(分子量340、理研ビタミン(株)製、リケマール(登録商標)PO-100V)を、比較例7ではメチルフェニルシリコーンオイル(信越化学工業(株)製、KF-54)を、比較例8では流動パラフィン(カネダ(株)製、ハイコールK-350)を、それぞれ、プロピレングリコール単位含有化合物として使用した。
【0095】
〔実施例10〕
撹拌機付き6Lオートクレーブに水110重量部、第3リン酸カルシウム(分散剤)0.105重量部、α-オレインスルフォン酸ソーダ(界面活性剤)0.0075重量部、重合開始剤として過酸化ベンゾイル0.15重量部およびt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート0.29重量部、難燃剤としてテトラブロモビスフェノール-A-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピル)エーテル2.0重量部、難燃助剤としてジクミルパーオキサイド1.1重量部、ならびに連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマーを仕込んだ。真空ポンプでゲージ圧が0.06MPaとなるまでオートクレーブ内を脱気した。
【0096】
その後、攪拌機により、オートクレーブ内原料の攪拌を開始した。原料を攪拌しながら、スチレン82.0重量部およびアクリロニトリル15.0重量部をオートクレーブ内にさらに仕込んだ。その後、オートクレーブ内の原料を攪拌機により30分間攪拌した。その後、オートクレーブ内の温度を90℃まで昇温し、オートクレーブ内の温度を、90℃で6時間保持することにより、第1重合工程を実施した。
【0097】
第1重合工程の途中、第1重合工程の開始から5時間が経過した後、アクリロニトリル3.0重量部をオートクレーブ内に添加した。第1重合工程の開始から、5時間が経過した時点の重合転化率は91.2%であった。
【0098】
ここで、重合転化率は、以下(1)~(7)を順に実施して算出した:
(1)容器内の反応混合物(例えば水性懸濁液)を、濾紙(型番21150(直径150mm)、ADVANTEC社製)により濾過した;(2)濾紙上に得られた残渣を採集し、乾燥した;(3)乾燥された残渣(以下、乾燥残渣とも称する。)を、内部標準シクロペンタノールと共に塩化メチレンに溶解した;(4)得られた溶解物をガスクロマトグラフィー(GC-2014、島津製作所(株)製)に供し、ガスクロマトグラフィーを実施し、当該溶解物中の単量体の量を検出した;(5)共重合反応に使用した単量体を内部標準シクロペンタノールと共に塩化メチレンに溶解し、得られた溶解物を前記ガスクロマトグラフィーに供し、ガスクロマトグラフィーを実施することにより、共重合反応に使用した単量体の検量線を得た;(6)検量線および溶解物についてそれぞれ実施したガスクロマトグラフィーの結果から、溶解物、すなわち乾燥残渣中の単量体の重量を、乾燥残渣の重量を基準とした重量比率(ppm)にて算出した;(7)10000ppmを1%として、得られた結果(乾燥残渣中の単量体の重量比率(ppm))を用い、以下の式に基づき重合転化率を算出した;
重合転化率(%)=100-(乾燥残渣中の単量体の重量比率(ppm)/10000)。
なお、ガスクロマトグラフィーの条件は、下記の通りとした。
キャピラリーカラム:GLサイエンス製Rtx-1
カラム温度条件:50℃から80℃まで昇温速度3℃/分で昇温後、80℃から180℃まで昇温速度10℃/分で昇温
キャリアガス:ヘリウム。
【0099】
第1重合工程の終了後、すなわち第1重合工程の開始から6時間経過後、(i)ノルマルリッチブタン(ノルマルブタン重量部/イソブタン重量部=70/30)を5重量部、オートクレーブ内に仕込み、かつ、(ii)114℃で5時間保持することにより、第2重合工程とともに、発泡剤含浸工程を実施した。すなわち、第2重合工程の重合温度(114℃)および、第2重合工程の重合時間(5時間)は、それぞれ、発泡剤含浸工程の含浸温度および含浸時間である。その後、オートクレーブ内の温度を40℃まで冷却して第2重合工程を終了させた。次いで、オートクレーブ内の生成物を脱水し、さらに、40℃で乾燥することによって、発泡性樹脂粒子本体を得た。当該操作以降は、実施例1の方法と同じ方法で、発泡性樹脂粒子、発泡粒子および発泡成形体を得た。得られた発泡粒子および発泡成形体について、上述した各種測定および評価を行った。その結果を、表4に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【0104】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の一実施形態によれば、VOC放散量が少ない発泡成形体を短い成形サイクルで提供し得る、発泡性樹脂粒子を提供することができる。また、本発明の一実施形態によれば、耐熱性および強度に優れる発泡成形体を提供し得る、発泡性樹脂粒子を提供することができる。そのため、本発明の一実施形態は、比較的温度の高い配管の保温材、屋根用断熱材、自動車部材、ソーラーシステム用保温材、給湯器用保温材等の分野に、好適に利用できる。