(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061788
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/18 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
C08J9/18 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171926
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】南田 賢明
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA68
4F074AC31
4F074AC32
4F074AD04
4F074AD08
4F074AD13
4F074AD15
4F074AG11
4F074AG20
4F074BA32
4F074BA33
4F074BA95
4F074BB02
4F074BC12
4F074CA34
4F074CA39
4F074CA49
4F074CC03X
4F074CC03Z
4F074CC04Y
4F074CC06X
4F074CC22X
4F074CC32X
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4F074CC34X
4F074CC34Y
4F074CC34Z
4F074DA02
4F074DA24
4F074DA32
4F074DA33
4F074DA34
4F074DA35
4F074DA59
(57)【要約】
【課題】連続気泡率が低いP3HA系発泡粒子を提供すること。
【解決手段】第1のP3HA系発泡粒子を容器内にて加圧処理する加圧工程と、特定の条件を満たすように容器内の圧力を開放するとともに、または開放した後、第1のP3HA系発泡粒子を容器内から払出す払出し工程と、を含む、第2のP3HA系発泡粒子の製造方法、とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を容器内に供給し、当該第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を加圧処理する加圧工程と、
前記容器内の圧力を開放するとともに、または前記容器内の圧力を開放した後、前記第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を前記容器内から払出す払出し工程と、を含み、
前記払出し工程では、以下の式(1)を満たすように前記容器内の圧力を開放する、第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法:
圧力開放速度(MPa/秒)×圧力開放時の容器内圧力(ゲージ圧)(MPa)/圧力開放口の面積(m2)<10.00 ・・・ 式(1)。
【請求項2】
前記加圧工程は、
前記第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子内の圧力(絶対圧)が0.12MPa~0.35MPaとなるように、前記第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を加圧処理する工程である、請求項1に記載の第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
【請求項3】
前記圧力開放速度は、0.0001MPa/秒~0.0350MPa/秒である、請求項1または2に記載の第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
【請求項4】
前記圧力開放時の容器内圧力(ゲージ圧)は、0.04MPa~0.50MPaである、請求項1~3の何れか1項に記載の第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
【請求項5】
前記圧力開放口の面積は、0.0005m2~0.0100m2である、請求項1~4の何れか1項に記載の第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
【請求項6】
前記払出し工程において、圧力開放時の容器内温度が10℃~60℃である、請求項1~5の何れか1項に記載の第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
【請求項7】
前記第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子は有機過酸化物により架橋されたものである、請求項1~6の何れか1項に記載の第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
【請求項8】
前記有機過酸化物はt-ブトキシ基および/またはクミルオキシ基を有する、請求項7に記載の第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法により製造された第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を成形する工程を有する、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体の製造方法。
【請求項10】
容器内にて第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子に加圧処理を行った後、前記容器内から払出された当該第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子であって、
前記第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の連続気泡率と、前記第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の連続気泡率との差が、0%~4%であり、
第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の連続気泡率が9.5%以下である、第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油由来プラスチックは毎年大量に廃棄されており、これらの大量廃棄物による埋立て処分場の不足および環境汚染が深刻な問題として取り上げられている。また近年、マイクロプラスチックが、海洋環境において大きな問題になっている。このため、(a)海、土等の環境中、並びに(b)埋立て処分場およびコンポスト中で、微生物の作用によって分解される生分解性プラスチックが注目されている。生分解性プラスチックは、(a)環境中で利用される農林水産業用資材、並びに(b)使用後の回収および再利用が困難な食品容器、包装材料、衛生用品、ゴミ袋等、への幅広い応用を目指して、開発が進められている。更に生分解性プラスチックから成る発泡成形体は、包装用緩衝材、農産箱、魚箱、自動車部材、建築材料、土木材料等での使用が期待されている。
【0003】
前記生分解性プラスチックの中でも、優れた生分解性およびカーボンニュートラルの観点から、植物原料由来のプラスチックとしてポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(以下、「P3HA」と称する場合がある)が注目されている。
【0004】
上述の生分解性プラスチックを成形体用途に展開することが検討されている。例えば、特許文献1には、生分解性を有する脂肪族ポリエステル系樹脂であるポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を用いた発泡粒子、および、その型内発泡成形体を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような従来技術は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の連続気泡率の観点から、さらなる改善の余地があった。
【0007】
以上のような状況に鑑み、本発明の一実施形態の目的は、連続気泡率が低いポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
〔1〕第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を容器内に供給し、当該第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を加圧処理する加圧工程と、前記容器内の圧力を開放するとともに、または前記容器内の圧力を開放した後、前記第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を前記容器内から払出す払出し工程と、を含み、前記払出し工程では、以下の式(1)を満たすように前記容器内の圧力を開放する、第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法:圧力開放速度(MPa/秒)×圧力開放時の容器内圧力(ゲージ圧)(MPa)/圧力開放口の面積(m2)<10.00・・・式(1)。
〔2〕前記加圧工程は、前記第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子内の圧力(絶対圧)が0.12MPa~0.35MPaとなるように、前記第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を加圧処理する工程である、〔1〕に記載の第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
〔3〕前記圧力開放速度は、0.0001MPa/秒~0.0350MPa/秒である、〔1〕または〔2〕に記載の第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
〔4〕前記圧力開放時の容器内圧力(ゲージ圧)は、0.04MPa~0.50MPaである、〔1〕~〔3〕の何れか1つに記載の第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
〔5〕前記圧力開放口の面積は、0.0005m2~0.0100m2である、〔1〕~〔4〕の何れか1つに記載の第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
〔6〕前記払出し工程において、圧力開放時の容器内温度が10℃~60℃である、〔1〕~〔5〕の何れか1つに記載の第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
〔7〕前記第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子は有機過酸化物により架橋されたものである、〔1〕~〔6〕の何れか1つに記載の第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
〔8〕前記有機過酸化物はt-ブトキシ基および/またはクミルオキシ基を有する、〔7〕に記載の第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
〔9〕〔1〕~〔8〕の何れか1つに記載の第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法により製造された第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を成形する工程を有する、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体の製造方法。
〔10〕容器内にて第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子に加圧処理を行った後、前記容器内から払出された当該第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子であって、前記第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の連続気泡率と、前記第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の連続気泡率との差が、0%~4%であり、第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の連続気泡率が9.5%以下である、第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、連続気泡率が低いポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0012】
本明細書において、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を「P3HA系発泡粒子」または「発泡粒子」と称する場合があり、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体を「P3HA系発泡成形体」または「発泡成形体」と称する場合がある。また、本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡粒子の製造方法では、当該製造方法の材料と、当該製造方法で得られる成果物の両方がP3HA系発泡粒子である。しかしながら、本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡粒子で得られるP3HA系発泡粒子の内圧は、当該製造方法の材料であるP3HA系発泡粒子の内圧よりも高い。本明細書では、便宜上、(a)本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡粒子の製造方法の材料であるP3HA系発泡粒子と、当該製造方法で処理中(換言すれば、容器内に存在する)P3HA系発泡粒子とを、「第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子」、「第1のP3HA系発泡粒子」または「第1の発泡粒子」と称する場合があり、(b)本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡粒子の製造方法により得られた(換言すれば、容器内から払出された)P3HA系発泡粒子を「第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子」、「第2のP3HA系発泡粒子」または「第2の発泡粒子」と称する場合がある。また、本明細書において、第1の発泡粒子と第2の発泡粒子とを区別しない場合、単に「発泡粒子」と称する場合がある。すなわち、「発泡粒子」は、第1の発泡粒子および第2の発泡粒子の各々を意図する。
【0013】
なお、本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡粒子の製造方法を実施して得られたP3HA系発泡粒子(第2のP3HA系発泡粒子)を、再度、本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡粒子の製造方法に供してもよい。
【0014】
〔1.本発明の一実施形態の技術的思想〕
特許文献1に記載のような従来のP3HA系発泡粒子を用いて、表面美麗であり、内部融着率が高く、かつ収縮が少ないP3HA系発泡成形体を得るためには、さらなる改善の余地があった。
【0015】
ここで、P3HA系発泡粒子の連続気泡率が低いほど、表面美麗であり、内部融着率が高く、かつ収縮が少ないP3HA系発泡成形体を得ることができる。
【0016】
本発明者は、製造直後において、連続気泡率が低いP3HA系発泡粒子であっても、表面美麗性、内部融着率および収縮性に劣るP3HA系発泡成形体が得られる場合があるという知見を独自に得た。本発明者はかかる理由について、鋭意検討を行った。
【0017】
鋭意検討の過程で、本発明者は、P3HA系発泡粒子への「内圧付与」に着目した。当該「内圧付与」工程は、(a)P3HA系発泡粒子の一段発泡粒子から二段発泡粒子を製造する際に一段発泡粒子に対して実施する場合があり、または(b)P3HA系発泡粒子からP3HA系発泡成形体を製造する際に当該P3HA系発泡粒子に対して実施する場合がある。内圧付与工程に供した後のP3HA系発泡粒子を成形に使用することにより、例えば、得られるP3HA系発泡性体の密度を材料であるP3HA系発泡粒子の密度から大きく減少させることがない(密度を維持できる)という利点がある。
【0018】
より具体的には、P3HA系発泡粒子への内圧付与では、容器内に投入したP3HA系発泡粒子に対して、圧力を付与し、P3HA系発泡粒子に内圧を付与する。その後、P3HA系発泡粒子を容器内から取出し、二段発泡および/または成形に使用する。
【0019】
鋭意検討の結果、本発明者は、当該内圧付与前のP3HA系発泡粒子と比較して、内圧付与後に得られるP3HA系発泡粒子では、驚くべきことに、連続気泡率が増加することを独自に見出した。
【0020】
すなわち、本発明者は、内圧付与前のP3HA系発泡粒子の連続気泡率が低い場合であっても、内圧付与を経ることによって、P3HA系発泡粒子の連続気泡率は高くなることから、得られる発泡成形体の表面美麗性、内部融着率および収縮性が悪くなる場合があることを独自に見出した。
【0021】
これらの新規知見を踏まえ、本発明者らは、内圧付与前のP3HA系発泡粒子と、内圧付与後のP3HA系発泡粒子との連続気泡率の差(増加量)を小さくすることを目的として、さらなる検討を行った。
【0022】
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下の知見を独自に見出し、本発明を完成するに至った:内圧付与後のP3HA系発泡粒子を、特定の条件下で容器内から取出すことにより、内圧付与前のP3HA系発泡粒子と、内圧付与後のP3HA系発泡粒子との連続気泡率の差が小さくでき、その結果、連続気泡率の低いポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を提供できること。
【0023】
〔2.第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法は、第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を容器内に供給し、当該第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を加圧処理する加圧工程と、前記容器内の圧力を開放するとともに、または前記容器内の圧力を開放した後、前記第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を前記容器内から払出す払出し工程と、を含み、前記払出し工程では、以下の式(1)を満たすように前記容器内の圧力を開放する、第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法:圧力開放速度(MPa/秒)×圧力開放時の容器内圧力(ゲージ圧)(MPa)/圧力開放口の面積(m2)<10.00・・・式(1)。
【0024】
本製造方法は、上述の構成を有するため、連続気泡率が低い第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を提供できるという利点を有する。また、当該製造方法では、当該利点に伴い、表面美麗であり、内部融着率が高く、かつ収縮が少ないP3HA系発泡成形体を提供し得る第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を提供できるという利点を有する。
【0025】
さらに、本製造方法により、食品容器、包装材料、衛生用品、ゴミ袋、包装用緩衝材、農産箱、魚箱、自動車部材、建築材料、土木材料等の用途において、より好適に、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体を利用できる。これにより、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。
【0026】
本明細書において、X単量体に由来する繰り返し単位を「X単位」と称する場合がある。繰り返し単位は、構成単位ともいえる。
【0027】
以下、本製造方法における各成分について説明する。
【0028】
(2-1.第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子)
第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子に架橋構造を導入するとともに、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子を発泡して得られる発泡粒子である。ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子は、P3HAを含むポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂組成物からなる。本明細書において、「ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(P3HA)系樹脂組成物」を「樹脂組成物」と称する場合があり、「ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(P3HA)系樹脂粒子」を「樹脂粒子」と称する場合がある。
【0029】
(ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート))
本発明の一実施形態に係るP3HAは、3-ヒドロキシアルカノエート単位を必須の構成単位(モノマー単位)として有する重合体である。本明細書において、「3-ヒドロキシアルカノエート」を「3HA」と称する場合もある。P3HAとしては、具体的には、下記一般式(2)で示される繰り返し単位を含む重合体が好ましい:
[-CHR-CH2-CO-O-]・・・(2)。
一般式(2)中、RはCnH2n+1で表されるアルキル基を示し、nは1~15の整数を示す。Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。nとしては、1~10が好ましく、1~8がより好ましい。
【0030】
P3HAとしては、特に微生物から産生されるP3HAが好ましい。微生物から産生されるP3HAは、3HA単位が、全て(R)-3HAであるポリ[(R)-3HA]である。
【0031】
P3HAは、3HA単位(特に一般式(2)の繰り返し単位)を、P3HAの全繰り返し単位100モル%中、50モル%以上含むことが好ましく、70モル%以上含むことがより好ましく、80モル%以上含むことがさらに好ましい。また、繰り返し単位(モノマー単位)としては、3HA単位のみであってもよいし、3HA単位に加えて、3HA以外の単量体に由来する繰り返し単位(例えば、4-ヒドロキシアルカノエート単位等)を含んでいてもよい。
【0032】
3HA単位の具体例としては、3-ヒドロキシブチレート単位、3-ヒドロキシバレレート単位および3-ヒドロキシヘキサノエート単位などが挙げられる。3-ヒドロキシブチレートは、融点および引張強度がプロピレンに近い。それ故、本発明の一実施形態に係るP3HAは、3-ヒドロキシブチレート単位を含むことが好ましい。本明細書において、「3-ヒドロキシブチレート」を「3HB」と称する場合もある。
【0033】
P3HAは、3HB単位(モノマー単位)を、P3HAの全繰り返し単位100モル%中、80モル%以上含むことが好ましく、85モル%以上含むことがより好ましい。P3HAとしては、特に、3HB単位を含み、かつ3HBが全て(R)-3HBである重合体(微生物によって産生された重合体)が好ましい。
【0034】
P3HAが2種以上の繰り返し単位を含む場合、含有量が最も多い繰り返し単位以外の繰り返し単位の由来となるモノマーをコモノマーと称する。本明細書において、「コモノマーに由来する繰り返し単位」を「コモノマー単位」と称する場合もある。
【0035】
コモノマーとしては、特に限定されないが、3-ヒドロキシヘキサノエート(以下、3HHと称する場合がある)または4-ヒドロキシブチレート(以下、4HBと称する場合がある)などが好ましい。
【0036】
P3HAの具体例としては、例えば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(以下、「P3HB3HV」と称する場合がある。)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(以下、「P3HB3HH」と称する場合がある。)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシノナノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシウンデカノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(以下、「P3HB4HB」と称する場合がある。)等が挙げられる。特に、加工性および発泡成形体の物性等の観点から、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)またはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましい。本発明の一実施形態において、上述したP3HAとしては、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
P3HAは、3HB単位を必須の繰り返し単位(構成単位)として有し、かつコモノマー単位を有することが好ましい。すなわち、P3HAは、3HB単位とコモノマー単位とを有する共重合体であることが好ましい。P3HAが3HB単位とコモノマー単位とを有する場合について説明する。この場合、P3HAにおける全繰り返し単位100モル%中の3HB単位とコモノマー単位との比率(3HB単位/コモノマー単位)としては、99/1(モル%/モル%)~80/20(モル%/モル%)が好ましく、97/3(モル%/モル%)~80/20(モル%/モル%)がより好ましく、95/5(モル%/モル%)~85/15(モル%/モル%)がさらに好ましい。P3HAの全繰り返し単位100モル%に対するコモノマー単位の比率が1モル%以上であれば、P3HAの溶融混練可能な温度域と熱分解温度域とが十分に離れているため、得られる発泡粒子が加工性に優れるという利点を有する。一方、P3HAの全繰り返し単位100モル%に対するコモノマー単位の比率が20モル%以下であれば、溶融混練時のP3HA系組成物の結晶化が早く、生産性が高い。このような各モノマー単位の比率を有するP3HAは、当業者に公知の方法、例えば国際公開WO2009/145164号に記載の方法に準拠して作製することができる。
【0038】
なお、P3HA中の各モノマー単位の比率は、当業者に公知の方法、例えば国際公開2013/147139号に記載の方法により求めることができる。
【0039】
本発明の一実施形態において、P3HAの製造方法は特に限定されず、化学合成による製造方法であってもよいし、微生物による製造方法であってもよい。中でも、微生物による製造方法が好ましい。P3HAの微生物による製造方法については、公知の方法を適用できる。
【0040】
3HBと、その他のヒドロキシアルカノエートとのコポリマー生産菌として、具体的には、P3HB3HVおよびP3HB3HH生産菌であるアエロモナス・キヤビエ(Aeromonas caviae)、P3HB4HB生産菌であるアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)等が挙げられる。特に、P3HB3HHに関し、P3HA合成酵素群の遺伝子を導入することでP3HB3HHの生産性を向上させたアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(Alcaligenes eutrophus AC32, FERM BP-6038)(T.Fukui,Y.Doi,J.Bateriol.,179,p4821-4830(1997))等がより好ましい。P3HAの製造方法では、アルカリゲネス・ユートロファス AC32株等の微生物を適切な条件で培養して菌体内にP3HB3HHを蓄積させた微生物菌体が好適に用いられる。またコポリマー生産菌に関して、前記以外にも、生産したいP3HAに合わせて、各種P3HA合成関連遺伝子を導入した遺伝子組み換え微生物を用いても良い。また、微生物(菌)の培養条件についても、生産したいP3HAに合わせて、基質の種類を含む様々な培養条件の最適化をすればよい。
【0041】
本発明の一実施形態において、P3HAを生産する微生物を培養する方法は特に限定されず、例えば、国際公開第WO2019/142717号に記載の方法を使用することができる。
【0042】
第1の発泡粒子におけるP3HAの含有量は、特に限定されないが、得られる発泡粒子および発泡成形体が生分解性に優れることから、発泡粒子100重量%に対して、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましい。
【0043】
第1の発泡粒子は、更に、P3HA以外の樹脂成分(「その他の樹脂成分」と称する場合がある)を含んでいてもよい。その他の樹脂成分としては、例えば、(a)ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル、または(b)脂肪族芳香族ポリエステル等が挙げられる。P3HAと共に、これらその他の樹脂成分の1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
第1の発泡粒子のその他の樹脂成分の含有量は特に限定されないが、例えば、P3HA100重量部に対して、10重量部~400重量部が好ましく、50重量部~150重量部がより好ましい。
【0045】
(添加剤)
樹脂組成物は、P3HAを含む樹脂成分に加え、添加剤をさらに含んでもよい。添加剤としては、例えば、結晶核剤、ポリアルキレングリコール、気泡調整剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、導電剤、断熱剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、無機充填剤、有機充填剤、加水分解抑制剤等を目的に応じて使用できる。添加剤としては、特に生分解性を有する添加剤が好ましい。なお、「結晶核剤」は、「結晶化核剤」と称する場合がある。
【0046】
結晶核剤としては、例えば、ペンタエリスリトール等、従来公知の結晶核剤を使用できる。結晶核剤の使用量は特に限定されない。
【0047】
気泡調整剤としては、例えば、タルク等、従来公知の気泡調整剤を使用できる。気泡調整剤の使用量は特に限定されない。
【0048】
滑剤としては、例えば、ベヘン酸アミドおよびエルカ酸アミド等、従来公知の滑剤を使用できる。滑剤の使用量は特に限定されない。
【0049】
また、第1の発泡粒子の製造方法では、架橋剤を使用するのが好ましい。架橋剤を使用することにより、得られる第1の発泡粒子中のP3HAは、架橋構造を有するP3HAとなる。その結果、連泡しにくくなり、連続気泡率の低い発泡粒子が得られるという利点を有する。発泡工程では樹脂粒子中のP3HAの架橋反応も進行するため、発泡工程は架橋工程ともいえる。
【0050】
架橋剤としては、P3HAを架橋できる限り特に限定されない。架橋剤としては、有機過酸化物が好ましい。換言すれば、第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子は有機過酸化物により架橋されたものであることが好ましい。
【0051】
有機過酸化物については、後述の(2-2.第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法)の項で詳述する。
【0052】
(第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の物性)
以下に、第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の物性について詳述する。
【0053】
(ゲル分率)
発泡粒子は、架橋構造を有することが好ましい。本明細書において、発泡粒子の架橋構造は、発泡粒子のゲル分率によって評価される。発泡粒子が架橋構造を有するとは、発泡粒子のゲル分率が、発泡粒子100重量%に対して、1重量%以上であることを意図する。発泡粒子を架橋する方法は特に限定されないが、後述するように発泡粒子の製造時に架橋剤を添加する方法が挙げられる。なお、ゲル分率は、加圧工程および払出し工程を経ることにより、変化することはない。換言すれば、第1の発泡粒子のゲル分率は第2の発泡粒子のゲル分率ともいえ、第2の発泡粒子を解析して得られるゲル分率は第1の発泡粒子のゲル分率とみなすこともできる。
【0054】
発泡粒子のゲル分率は、発泡粒子100重量%に対して、30重量%~80重量%であることが好ましく、50重量%~80重量%であることがより好ましく、60重量%~75重量%であることがさらに好ましい。発泡粒子のゲル分率が、発泡粒子100重量%に対して、(a)30重量%以上である場合、発泡成形体を成形するとき、良質の発泡成形体を提供し得る発泡粒子の成形温度幅が広くなり、生産性が向上するという利点を有し、(b)80重量%以下である場合、表面美麗性に優れる発泡成形体が得られるという利点を有する。
【0055】
なお、本発明の一実施形態において、発泡粒子のゲル分率とは、当該発泡粒子中のP3HAの架橋度を示す指標である。発泡粒子のゲル分率は、架橋剤の種類、および/またはその使用量等により制御し得る。
【0056】
本明細書において、発泡粒子のゲル分率の測定方法は以下の(1)~(5)の通りである:(1)150mlのフラスコに、1gの発泡粒子と、100mlのクロロホルムとを入れる;(2)大気圧下、62℃で、フラスコ内の混合物を8時間加熱還流する;(3)得られる加熱処理物を100メッシュの金網を備える吸引濾過装置を用いて濾過処理する;(4)金網上の濾過処理物を、80℃のオーブン中で真空条件下にて8時間乾燥し、乾燥物の重量Wg(g)を測定する;(5)以下の式により、ゲル分率を算出する:
ゲル分率(重量%)=Wg/1×100。
【0057】
(2-2.第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法)
以下に、樹脂粒子を調製する樹脂粒子調製工程と、当該樹脂粒子を発泡させる発泡工程とを順に含む製造方法を例に挙げて、第1の発泡粒子の製造方法について説明する。第1の発泡粒子の製造方法は以下の製造方法に限定されるものではない。
【0058】
(樹脂粒子調製工程)
樹脂粒子調製工程は、P3HAと、必要に応じて添加剤とを含むP3HA系樹脂粒子を調製する工程である。樹脂粒子調製工程は、後述する発泡工程の前に実施され得る。樹脂粒子調製工程は、P3HAを含む樹脂組成物を発泡に利用しやすい形状に成形する工程ともいえる。樹脂粒子調製工程の態様としては、樹脂粒子を得ることができる限り特に限定されない。
【0059】
樹脂粒子調製工程は、
(a)P3HAと、必要に応じて添加剤とを含む樹脂組成物を溶融混練する溶融混練工程と、
(b)溶融混練された樹脂組成物を発泡に利用しやすい形状に成形する粒子成形工程とを含むことが好ましい。溶融混練工程および粒子成形工程の具体的態様としては特に限定されず、従来公知の方法を適宜使用できる。
【0060】
(発泡工程)
第1の発泡粒子の製造方法における発泡工程の態様としては、樹脂粒子を発泡させることができる限り、特に限定されない。本発明の一実施形態において、発泡工程は、
(a)樹脂粒子と、水系分散媒と、架橋剤と、発泡剤と、必要に応じて分散剤および/または分散助剤とを容器中に分散させる分散工程と、
(b)容器内温度を一定温度まで昇温し、かつ容器内圧力を一定圧力まで昇圧する昇温-昇圧工程と、
(c)容器内温度および圧力を一定温度かつ一定圧力で保持する保持工程と、
(d)容器の一端を解放し、容器内の分散液を、発泡圧力(すなわち、容器内圧力)よりも低圧の領域(空間)に放出する放出工程と、を含むことが好ましい。
【0061】
発泡工程における、分散工程、昇温-昇圧工程、保持工程および放出工程の具体的態様としては特に限定されず、従来公知の方法を適宜使用できる。
【0062】
第1の発泡粒子の製造方法では、上述のように、架橋剤を使用することが好ましい。架橋剤を使用することにより、得られる第1の発泡粒子中のP3HAは、架橋構造を有するP3HAとなる。発泡工程では樹脂粒子中のP3HAの架橋反応も進行するため、発泡工程は架橋工程ともいえる。
【0063】
架橋剤としては、P3HAを架橋できる限り特に限定されない。架橋剤としては、有機過酸化物が好ましい。換言すれば、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子は有機過酸化物により架橋されたものであることが好ましい。有機過酸化物は、(a)樹脂粒子製造工程で使用してもよく、(b)発泡工程(例えば分散工程)で使用してもよく、(c)樹脂粒子製造工程および発泡工程(例えば分散工程)で使用してもよい。より具体的に、有機過酸化物をP3HAと反応させるためには、(a)樹脂粒子製造工程において有機過酸化物とP3HAを溶融混練してもよく、(b)発泡工程の分散工程において樹脂粒子と有機過酸化物とを水系分散媒中に分散させてもよく、(c)有機過酸化物とP3HAを溶融混練するとともに、さらに、樹脂粒子と有機過酸化物とを水系分散媒中に分散させてもよい。発泡工程の分散工程において、樹脂粒子製造工程にて製造された樹脂粒子と有機過酸化物とを水系分散媒中に分散させることにより、当該樹脂粒子に有機過酸化物を含浸および反応させることができる。これらの理由から、発泡粒子の製造方法において、架橋剤としては有機過酸化物が好ましい。なお、架橋剤として有機過酸化物を使用する場合、P3HAの分子鎖同士が直接(架橋剤に由来する構造を介することなく)結合することにより、架橋構造が形成される。
【0064】
使用するP3HAの種類等によるが、架橋剤として使用する有機過酸化物としては、1時間半減期温度が90℃~160℃の有機過酸化物が好ましく、1時間半減期温度が105℃~125℃の有機過酸化物がより好ましく、1時間半減期温度が110℃~125℃の有機過酸化物がさらに好ましい。具体的には、過酸化ベンゾイル(BPO、1時間半減期温度:92℃)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(TBEC、1時間半減期温度:121℃)、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(TBIC、1時間半減期温度:118℃)、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(TAEC、1時間半減期温度:117℃)、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート(TAIC、1時間半減期温度:115℃)、t-ブチルパーオキシイソブチレート(1時間半減期温度:93℃)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(1時間半減期温度:95℃)、t-ブチルパーオキシイソノナノエート(1時間半減期温度:123℃)、t-ブチルパーオキシアセテート(1時間半減期温度:123℃)、t-ブチルパーオキシジベンゾエート(1時間半減期温度:125℃)、t-アミルパーオキシイソブチレート(1時間半減期温度:93℃)、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(1時間半減期温度:92℃)、t-アミルパーオキシイソノナノエート(1時間半減期温度:114℃)、t-アミルパーオキシアセテート(1時間半減期温度:120℃)、t-アミルパーオキシベンゾエート(1時間半減期温度:122℃)、ジクミルパーオキサイド(1時間半減期温度:137℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(1時間半減期温度:140℃)、ジ-t-ブチルパーオキサイド(1時間半減期温度:149℃)、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(1時間半減期温度:116℃)、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン(1時間半減期温度:127℃)、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン(1時間半減期温度:112℃)、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(1時間半減期温度:114℃)等が挙げられる。1時間半減期温度が90℃以上である有機過酸化物を使用する場合、所望のゲル分率の発泡粒子を得られる傾向があるという利点を有する。一方、1時間半減期温度が160℃以下である有機過酸化物を使用する場合、未反応の架橋剤が最終生成物中に残存する虞がないという利点を有する。
【0065】
架橋剤として使用する有機過酸化物としては、得られる発泡粒子中のP3HAの架橋が均一な架橋に近づくことから、t-ブトキシ基および/またはクミルオキシ基を有する有機過酸化物がさらに好ましい。t-ブトキシ基および/またはクミルオキシ基を有する過酸化物として、具体的には、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(TBEC)、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(TBIC)、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソノナノエート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシジベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。また、t-ブトキシ基および/またはクミルオキシ基を有する有機過酸化物を使用する場合、t-ブトキシ基および/またはクミルオキシ基を有さない有機過酸化物(例えばBPO)と比較して、環境負荷が少ないという利点も有する。t-ブトキシ基および/またはクミルオキシ基を有する有機過酸化物の中でも、得られる発泡粒子中のP3HAの架橋が均一な架橋により近づくため、t-ブトキシ基および/またはクミルオキシ基を有し、かつ、パーオキシカーボネート基を有する有機過酸化物が好ましい。
【0066】
本発明者は、架橋剤としてt-ブトキシ基および/またはクミルオキシ基を有する有機過酸化物を用いる場合、驚くべきことに、付与された発泡粒子内圧が減圧しにくい発泡粒子を容易に得ることができる、という知見を独自に得た。それ故、架橋剤としてt-ブトキシ基および/またはクミルオキシ基を有する有機過酸化物を用いる場合、従来技術よりも低い内圧の付与により内部融着率が高い発泡成形体を提供し得る発泡粒子を容易に得ることができる。
【0067】
架橋剤の使用量は、特に限定されないが、樹脂粒子100重量部に対して、0.1重量部~5.0重量部が好ましく、0.3重量部~3.0重量部がより好ましく、0.5重量部~3.0重量部がさらに好ましく、1.0重量部~3.0重量部がよりさらに好ましい。架橋剤の使用量が樹脂粒子100重量部に対して0.1重量部以上である場合、(a)得られる発泡粒子を十分に架橋することができるとともに、(b)得られる発泡粒子の独立気泡率が高くなり、表面美麗性が良好で成形収縮率が小さい発泡成形体を得ることができる。一方、架橋剤の使用量が樹脂粒子100重量部に対して、5.0重量部以下である場合、架橋剤の添加量に応じた効果を得られるため、経済的に無駄が生じる虞がない。架橋剤の使用量は発泡粒子のゲル分率と正の相関関係があり、発泡粒子のゲル分率の値に大きく影響する。そのため、得られる発泡粒子のゲル分率を考慮して架橋剤の使用量を厳密に設定することが望ましい。発泡工程(例えば分散工程)で使用する樹脂粒子がすでに架橋剤を含んでいる場合があるが、その場合、樹脂粒子が発泡工程前に既に含んでいる架橋剤の量と、発泡工程(例えば分散工程)において使用される架橋剤の量との合計量が、上記の範囲を充足することが好ましい。
【0068】
発泡剤としては、窒素、二酸化炭素、空気等の無機ガス;プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等の炭素数3~5の飽和炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、およびメチルエチルエーテル等のエーテル;モノクロルメタン、ジクロロメタン、ジクロロジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素;水等が挙げられる。発泡剤としては、上述した無機ガス、炭素数3~5の飽和炭化水素、エーテル、ハロゲン化炭化水素および水からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上を用いることができる。中でも、環境負荷や発泡力の観点から、発泡剤としては窒素または二酸化炭素を用いることが好ましい。これら発泡剤の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の発泡剤を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。
【0069】
発泡剤の使用量は、特に限定されないが、樹脂粒子100重量部に対して、2重量部~10000重量部が好ましく、5重量部~5000重量部がより好ましく、10重量部~1000重量部がさらに好ましい。発泡剤の使用量が樹脂粒子100重量部に対して2重量部以上である場合、密度の好適な発泡粒子を得ることができる。一方、発泡剤の使用量が樹脂粒子100重量部に対して10000重量部以下である場合、発泡剤の添加量に応じた効果が得られるため、経済的な無駄が生じない。
【0070】
第1の発泡粒子の製造方法では、分散剤を使用することが好ましい。分散剤を使用することにより、樹脂粒子同士の合着(ブロッキングと称する場合がある。)を抑制でき、安定的に発泡粒子を製造できるという利点を有する。分散剤としては、例えば、第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、タルク、クレイ、酸化アルミニウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム等の無機物が挙げられる。これら分散剤の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の分散剤を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。
【0071】
分散剤の使用量は、特に限定されないが、樹脂粒子100重量部に対して、0.1重量部~3.0重量部が好ましく、0.5重量部~1.5重量部がより好ましい。
【0072】
発泡工程の分散工程において、樹脂粒子に架橋剤を含浸および反応させるとき、P3HAの架橋効率を上げるために、容器内の酸素濃度および分散液中の溶存酸素量を低くすることが好ましい。容器内の酸素濃度および分散液中の溶存酸素量を低くする方法としては、二酸化炭素および窒素等の無機ガスで容器内の気体および分散液中に溶解している気体を置換すること、並びに容器内の気体を真空引きすることが挙げられる。
【0073】
発泡粒子の製造方法では、樹脂粒子同士の合着抑制効果を向上させるために、分散助剤を使用してもよい。分散助剤としては、例えば、アルカンスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤が挙げられる。これら分散助剤の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の分散助剤を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。
【0074】
分散助剤の使用量は、特に限定されないが、樹脂粒子100重量部に対して、0.001重量部~0.500重量部が好ましく、0.010重量部~0.200重量部がより好ましい。樹脂粒子同士の合着抑制効果をより向上させるために、前記分散剤と当該分散助剤とは、併用することが好ましい。
【0075】
(2-3.第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法)
上述した第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子に対して内圧を付与することにより、第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を得ることができる。
【0076】
以下、本製造方法に含まれる具体的な工程について説明する。
【0077】
(加圧工程)
加圧工程は、第1の発泡粒子を容器内へ投入した後、容器内の第1の発泡粒子を加圧処理することによって、第1の発泡粒子内の圧力を調整する工程である。なお、「発泡粒子内の圧力」は、「発泡粒子の内圧」ともいえる。加圧工程は、第1の発泡粒子に内圧を付与する工程ともいえる。
【0078】
本製造方法で使用する容器としては、特に限定されないが、加圧処理に耐えられる容器であることが好ましく、例えば、耐圧容器であることが好ましい。
【0079】
加圧工程において、容器内を加圧する方法は特に限定されないが、容器内に無機ガスを導入(圧入)する方法が挙げられる。加圧工程において、容器内に無機ガスを導入することにより、容器内を加圧し得、かつ容器内の第1の発泡粒子に無機ガスを含浸させることができる。その結果、容器内の第1の発泡粒子に対して内圧を付与することができる。加圧工程において、容器内に導入する無機ガスの量を調節することにより、容器内の圧力を所望の設定圧力に調整でき、かつ、容器内の第1の発泡粒子の内圧(換言すれば、得られる第2の発泡粒子の内圧)を所望の内圧に調整できる。
【0080】
加圧工程における無機ガスとしては、具体的には、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等が挙げられる。これら無機ガスの1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の無機ガスを混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。これら無機ガスの中でも、発泡成形体の生産性が良好となり、かつ、コストを低減できることから、空気および/または二酸化炭素が好ましく、空気がより好ましい。
【0081】
本明細書において、加圧工程にて、第1の発泡粒子に内圧を付与するために設定する、容器内圧力のことを「設定圧力」と称する。換言すれば、加圧工程では、容器内の圧力を設定圧力まで昇圧(加圧)し、容器内圧力を設定圧力で一定時間保持することにより、第1の発泡粒子に内圧を付与することができる。
【0082】
加圧工程における設定圧力は、第1の発泡粒子に付与したい所望の内圧により、適宜設定すればよい。設定圧力は、例えば、0.10MPa(ゲージ圧)~0.50MPa(ゲージ圧)であることが好ましく、0.10MPa(ゲージ圧)~0.40MPa(ゲージ圧)であることがより好ましく、0.10MPa(ゲージ圧)~0.30MPa(ゲージ圧)であることがさらに好ましく、0.10MPa(ゲージ圧)~0.25MPa(ゲージ圧)であることが特に好ましい。当該構成によれば、第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子に対して好ましい内圧を付与できるという利点を有する。
【0083】
加圧工程は、第2のP3HA系発泡粒子内の圧力(絶対圧)が0.12MPa(絶対圧)~0.35MPa(絶対圧)となるように、第1のP3HA系発泡粒子を加圧処理する工程であることが好ましい。換言すれば、本製造方法で得られる第2のP3HA系発泡粒子の内圧(絶対圧)は、0.12MPa(絶対圧)~0.35MPa(絶対圧)であることが好ましい。本製造方法で得られる第2のP3HA系発泡粒子の内圧(絶対圧)は、0.13MPa(絶対圧)~0.34MPa(絶対圧)であることがより好ましく、0.14MPa(絶対圧)~0.30MPa(絶対圧)であることがより好ましく、0.15MPa(絶対圧)~0.25MPa(絶対圧)であることがさらに好ましく、0.16MPa(絶対圧)~0.19MPa(絶対圧)であることが特に好ましい。第2のP3HA系発泡粒子内の圧力(絶対圧)が0.120MPa(絶対圧)以上である場合、金型を用いる発泡粒子の型内発泡成形時に、金型内で発泡粒子が十分に膨張するため、表面美麗性および収縮性に優れる発泡成形体を提供できるという利点を有する。また、加圧工程が、第2のP3HA系発泡粒子内の圧力(絶対圧)が0.12MPa(絶対圧)~0.19MPa(絶対圧)となるように、第1のP3HA系発泡粒子を加圧処理する工程である場合、特に以下のような利点を有する:(a)表面美麗性および収縮性により優れる発泡成形体を提供できるという利点を有する;(b)型内発泡成形時に、金型に比較的近い距離の発泡粒子のみが急速に膨張する虞が無く、金型内部の発泡粒子にまで蒸気が行き渡り得る。その結果、融着性に優れる発泡成形体を提供できるという利点を有する。また、加圧工程が、第2のP3HA系発泡粒子内の圧力(絶対圧)が0.19MPa(絶対圧)より高く0.35MPa(絶対圧)以下となるように、第1のP3HA系発泡粒子を加圧処理する工程である場合、特に以下のような利点を有する:第2の発泡粒子を作製してから型内発泡成形まで時間がかかる場合(例えば、第2の発泡粒子を作製後、別工場へ発送し、型内発泡成形に使用する場合)であっても、第2の発泡粒子の形状を維持できる。そのため、表面美麗性、内部融着率および収縮性に優れる発泡成形体を提供できるという利点を有する。
【0084】
本明細書において、第2の発泡粒子内の圧力(第2の発泡粒子の内圧)の測定方法は、以下の(1)~(5)の通りである:(1)第2の発泡粒子の重量W1(g)を測定する;(2)当該第2の発泡粒子を150℃、30分間加熱し、当該第2の発泡粒子内の無機ガスを散逸させる;(3)無機ガスを散逸させた第2の発泡粒子について、再度、当該第2の発泡粒子の重量W2(g)を測定する;(4)無機ガスを散逸させる前後の第2の発泡粒子の重量差(W1-W2)から無機ガスの重量(ΔW)を算出する;(5)理想気体の状態方程式(例えば以下の式)より第2の発泡粒子内の圧力P(MPa(絶対圧))を算出する:
発泡粒子内の圧力P(MPa(絶対圧))=(1+ΔW/28.8×0.082×(273+T)×(ρ×1000/W2))/9.87
上記の式において、Tは第2の発泡粒子の重量を測定する際の温度(室温)であり、ρは、第2の発泡粒子(重量W1の発泡粒子)の見かけ密度(g/cc)である。
【0085】
なお、本明細書において、第2の発泡粒子内の圧力(第2の発泡粒子の内圧)の見かけ密度の測定方法は、以下の(1)~(3)の通りである:(1)エタノールが入ったメスシリンダーを用意し、当該エタノール中に重量Wd(g)の第2の発泡粒子を沈める;(2)エタノールの水位上昇分(水没法)より読みとられる第2の発泡粒子の容積をVd(cc)とする;(3)以下の式により、第2の発泡粒子の見かけ密度を算出する;
見かけ密度(g/cc)=Wd/Vd。
【0086】
ここで、第2の発泡粒子の内圧は時間経過に伴い減少する。しかしながら、ポリエチレンおよびポリプロピレン等から得られる発泡粒子と比較して、P3HA系発泡粒子の内圧は減少しにくく、長期間内圧を保持されるという利点を有する。成形体製造時のP3HA系発泡粒子内の圧力(絶対圧)は、上述したように、0.12MPa(絶対圧)~0.19MPa(絶対圧)であることが好ましい。そのため、本製造方法における加圧工程では、第2のP3HA系発泡粒子内の圧力(絶対圧)が0.12MPa(絶対圧)~0.35MPa(絶対圧)となるように、第1のP3HA系発泡粒子を加圧処理する工程であることが好ましい。また、加圧工程では、第2のP3HA発泡粒子における時間経過による内圧の減少を考慮し、第2の発泡粒子の内圧が成形体製造時に成形に好適な内圧(0.12MPa(絶対圧)~0.19MPa(絶対圧))となるよう、加圧工程時に第1の発泡粒子に付与する内圧を調整することが好ましい。
【0087】
加圧工程では、容器内圧力を設定圧力で保持する前に、容器内圧力を、設定圧力よりも高い圧力で一定時間保持してもよい。当該構成によると、第1の発泡粒子に内圧を付与するための時間、換言すれば加圧工程の時間を短くできるという利点を有する。容器内圧力を設定圧力で保持する前に、容器内圧力を設定圧力よりも高い圧力で一定時間保持する場合、通常、設定圧力よりも高い圧力で容器内圧力を保持する時間は、設定圧力で容器内圧力を保持する時間よりも短い。また、加圧工程では、容器内圧力を設定圧力で保持した後に、容器内圧力を、設定圧力よりも高いまたは低い圧力で一定時間保持してもよい。容器内圧力を設定圧力で保持した後に、容器内圧力を設定圧力よりも高いまたは低い圧力で一定時間保持する場合、通常、設定圧力よりも高いまたは低い圧力で容器内圧力を保持する時間は、設定圧力で容器内圧力を保持する時間よりも短い。それゆえ、設定圧力は、加圧工程において、最も長い時間維持される容器内圧力ともいえる。
【0088】
加圧工程における容器内温度は特に限定されない。また、第1の発泡粒子を容器内に入れる前に、加圧容器および第1の発泡粒子を加温してもよい。内圧付与が効率的に行えることから、加圧工程における容器内温度は、例えば、10℃~90℃が好ましく、40℃~90℃がより好ましい。なお、加圧工程において、容器内に第1の発泡粒子を投入する前に、容器内温度を上述した範囲内の温度に調整してもよく、容器内に第1の発泡粒子を投入した後、容器内温度を上述した範囲内の温度に調整してもよい。また、加圧工程において、容器内の圧力を設定温度まで昇圧するともに、容器内温度を上述した範囲内の温度に調整してもよく、容器内の圧力を設定温度まで昇圧した後に、容器内温度を上述した範囲内の温度に調整してもよい。
【0089】
(払出し工程)
払出し工程は、容器内の圧力を開放するとともに、または開放した後、内圧が付与された第1の発泡粒子を、容器内から払出す、または取出す工程である。「容器内の圧力を開放する」とは、「加圧工程で昇圧された容器内の圧力を減圧する」ともいえる。払出し工程は、内圧が付与された第2の発泡粒子を得る工程ともいえる。
【0090】
払出し工程において、容器内の圧力を開放する方法は特に限定されないが、例えば、容器内に導入された無機ガス(気体)を容器外へ排出する方法が挙げられる。
【0091】
本製造方法で使用する容器には、(a)容器内圧力を開放するための圧力開放部、および(b)容器内の第1の発泡粒子を取り出すための発泡粒子取出し部が設けられていてもよい。圧力開放部には、開口部と、圧力開放部の開閉を制御するためのバルブが備えられ得る。圧力開放部および発泡粒子取出し部は同じ部材であってもよい。容器としては、例えば、(a)払出し部を備える耐圧容器、または(b)パージライン、および、マンホールまたはサイドホールを備える耐圧容器、等が好適に挙げられる。
【0092】
本製造方法において、容器として、払出し部を備える容器を使用する場合(場合A)について説明する。払出し部は、例えば、払出し部の開閉を制御するためのバルブと、払出し口とを備える。場合Aでは、払出し部のバルブを開くことにより、容器内の圧力を開放するとともに、容器内外の圧力差を利用して容器内の第1の発泡粒子を、払出し部の払出し口を通して、容器外へ払出すことができる。従って、場合Aにおいて、払出し部は、圧力開放部でもあり、発泡粒子取出し部でもある。また、場合Aにおいて、圧力開放口は払出し部の払出し口である。すなわち、圧力開放口の面積は、払出し口の断面の面積である。
【0093】
容器として、パージライン、および、マンホールまたはサイドホールを備える容器を使用する場合(場合B)について説明する。場合Bにおいて、パージラインは、圧力開放部であり、例えば、パージラインの開閉を制御するためのバルブと、開口部とを備える。場合Bにおいて、マンホールまたはサイドホールは、発泡粒子取出し部である。場合Bでは、パージラインのバルブを開くことにより、容器内の圧力を(例えば大気圧まで)開放した後、容器内の第1の発泡粒子を、マンホールまたはサイドホールから、容器外へ取り出す(払出す)ことができる。場合Bにおいて、圧力開放口はパージラインの開口部である。すなわち、圧力開放口の面積は、パージラインの開口部の断面の面積である。
【0094】
払出し工程において、容器内の圧力を開放する時の容器内圧力を、「圧力開放時の容器内圧力(ゲージ圧)」とする。圧力開放時の容器内圧力は、容器に備えられた圧力開放部のバルブを開ける直前の容器内圧力ともいえる。
【0095】
払出し工程において、圧力開放部のバルブを開いてから閉じるまでに低下した圧力を「低下圧力」と定義し、圧力開放部のバルブを開いてから閉じるまでに経過した時間を「払出し時間」と定義する。ただし、上述した場合Aにおいて、払出し部(圧力開放部)のバルブを開いている間に、容器内のすべての発泡粒子が払出された場合は、(a)払出し部のバルブを開いてから全発泡粒子が容器内から払出されるまでに低下した容器内圧力を「低下圧力」と定義し、(b)払出し部のバルブを開いてから全発泡粒子が容器内から払出されるまでに経過した時間を「払出し時間」と定義する。また、上述した場合Bにおいて、容器内の圧力を大気圧まで開放する場合は、(a)容器内の圧力と大気圧との差を「低下圧力」と定義し、(b)パージラインのバルブを開いてから容器内の圧力が大気圧となるまでに経過した時間を「払出し時間」と定義する。
【0096】
圧力開放時の容器内圧力(ゲージ圧)は、0.04MPa(ゲージ圧)~0.50MPa(ゲージ圧)が好ましく、0.06MPa(ゲージ圧)~0.30MPa(ゲージ圧)がより好ましく、0.08MPa(ゲージ圧)~0.20MPa(ゲージ圧)がさらに好ましい。圧力開放時の容器内圧力(ゲージ圧)が0.04MPa以上である場合、第1の発泡粒子に効率的に内圧を付与できるという利点を有する。圧力開放時の容器内圧力(ゲージ圧)が0.50MPa以下である場合、高圧に耐え得る重装備の容器を使用する必要がなく、一般的な耐圧容器を使用できるという利点を有する。圧力開放時の容器内圧力(ゲージ圧)は、例えば、加圧工程における設定圧力であってもよい。換言すれば、加圧工程において容器内圧力を設定圧力で保持した後に、容器内圧力を変更することなく、圧力開放を実施してもよい。
【0097】
本明細書において、低下圧力(MPa)を払出し時間(秒)で除して得られた値を、「圧力開放速度」とする。圧力開放速度は、0.0001MPa/秒~0.0350MPa/秒であることが好ましく、0.0001MPa/秒~0.0345MPa/秒であることがより好ましく、0.0001MPa/秒~0.0335MPa/秒であることがさらに好ましく、0.0001MPa/秒~0.0050MPa/秒であることが特に好ましい。圧力開放速度は、0.0000MPa/秒より早く、実質的には0.0001MPa/秒以上となり得る。払出し速度が0.00350MPa/秒以下であると、本製造方法実施前後の発泡成形粒子の連続気泡率の差(増加量)を小さくできるという利点を有する。
【0098】
圧力開放口の面積は、0.0005m2~0.0100m2であることが好ましく、0.0005m2~0.0050m2がより好ましく、0.0005m2~0.0030m2がさらに好ましく、0.0005m2~0.0025m2が特に好ましい。当該構成によれば、容器内から第2の発泡粒子を払出しやすいとの利点を有する。圧力開放口の断面の形状が円形である場合、圧力開放口の面積は圧力開放口の断面の径から求めることができる。
【0099】
また、本発明の一実施形態に係る第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法は、払出し工程では、以下の式(1)を満たす:
圧力開放速度(MPa/秒)×圧力開放時の容器内圧力(ゲージ圧)(MPa)/圧力開放口の面積(m2)<10.00 ・・・式(1)。
【0100】
圧力開放速度(MPa/秒)×圧力開放時の容器内圧力(ゲージ圧)(MPa)/圧力開放口の面積(m2)の値は、10.00未満であり、9.00未満であることが好ましく、8.00未満であることがより好ましく、7.00未満であることがさらに好ましく、6.00未満であることが特に好ましい。
【0101】
本発明者は、前記式(1)の値が、驚くべきことに、後述する、第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の連続気泡率と、第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の連続気泡率との差と相関関係があるという知見を独自に得た。すなわち、当該式(1)の値が小さいほど、前述した連続気泡率の差が小さくなり、より好ましい。
【0102】
払出し工程では、容器内を冷却してもよい。容器内を冷却することにより、容器内の第1の発泡粒子を冷却することができる。本明細書において、払出し工程における、容器内の圧力開放時(換言すれば、圧力開放部のバルブを開く直前)の容器内の温度を、「圧力開放時の容器内温度」と称する。換言すれば、加圧工程で容器内温度を調整した後、加圧工程および/または払出し工程において、容器内を圧力開放時の容器内温度まで冷却してもよい。圧力開放時の容器内温度は、10℃~60℃が好ましく、15℃~55℃がより好ましく、20℃~50℃がさらに好ましく、25℃~45℃が特に好ましい。ここで、15℃~25℃は室温であるともいえる。それ故、圧力開放時の容器内温度は、換言すれば、室温~60℃が好ましく、室温~55℃がより好ましく、室温~50℃がさらに好ましく、室温~45℃が特に好ましい。圧力開放時の容器内温度が上述した範囲内である場合、得られる第2の発泡粒子の連続気泡率が低くなるという利点を有する。
【0103】
〔3.第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子〕
本発明の一実施形態に係る第2のP3HA系発泡粒子は、容器内にて第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子に加圧処理を行った後、前記容器内から払出された当該第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子であって、前記第1のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の連続気泡率と、前記第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の連続気泡率との差が、0%~4%であり、第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の連続気泡率が9.5%以下である。
【0104】
本発明の一実施形態に係る第2のP3HA系発泡粒子は、上述した構成を有するため、表面美麗であり、内部融着率が高く、かつ収縮が少ないP3HA系発泡成形体を提供できるという利点を有する。
【0105】
当該第2のP3HA系発泡粒子について、前記第1のP3HA系発泡粒子の連続気泡率と、前記第2のP3HA系発泡粒子の連続気泡率との差は、0.0%~4.0%であり、0.0%~3.5%であることが好ましく、0.0%~3.0%であることがより好ましく、0.0%~2.5%であることがさらに好ましく、0.0%~1.5%であることが特に好ましい。当該構成によれば、低い連続気泡率を有する、第2のP3HA系発泡粒子の製造方法を提供することができる。前記連続気泡率との差が上述した範囲内である場合、得られる第2のP3HA系発泡粒子は、より表面美麗であり、内部融着率がより高く、かつ収縮がより少ないP3HA系発泡成形体を提供できるという利点も有する。
【0106】
また、前記第2のP3HA系発泡粒子の連続気泡率は9.5%以下であり、9.0%以下であることが好ましく、8.5%以下であることがより好ましく、8.0%以下であることがさらに好ましく、7.5%以下であることが特に好ましい。当該構成によれば、低い連続気泡率を有する、第2のP3HA系発泡粒子の製造方法を提供し、それ故、より表面美麗であり、内部融着率がより高く、かつ収縮がより少ないP3HA系発泡成形体を提供できるという利点を有する。
【0107】
本発明の一実施形態に係る第2のP3HA系発泡粒子は、〔2.第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法〕の項に記載の製造方法により得られることが好ましい。
【0108】
本発明の一実施形態に係る第2のP3HA系発泡粒子は、二段発泡粒子の製造に用いることができ、また、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体の製造に用いることもできる。
【0109】
(二段発泡)
上述した第1の発泡粒子の製造方法において、発泡工程だけでは、所望の見掛け密度の発泡粒子が得られない場合がある。その場合、第1の発泡粒子の製造方法で得られた第1の発泡粒子を本製造方法に供し、得られた第2の発泡粒子をさらに膨張(発泡)させてもよい。第2の発泡粒子をさらに発泡させることを「二段発泡」と称し、その工程を「二段発泡工程」と称する。第1の発泡粒子について、本製造方法と二段発泡工程とを実施することにより、上述した発泡工程で得られた第1の発泡粒子の見掛け密度よりもさらに小さい見掛け密度の発泡粒子を得ることができる。
【0110】
二段発泡工程では、例えば、第2の発泡粒子を水蒸気等で加熱して更に膨張させ、所望の見掛け密度の発泡粒子を得る。二段発泡工程にて得られる発泡粒子を二段発泡粒子と称する場合がある。また、二段発泡工程を行う場合、前記発泡工程を一段発泡工程と称し、一段発泡工程で得られる発泡粒子を一段発泡粒子と称する場合がある。
【0111】
二段発泡工程において、第2の発泡粒子を加熱する水蒸気等の圧力(以下、「二段発泡圧力」と称する場合がある。)は、用いる発泡粒子の特性および所望の見掛け密度によって異なり、一概には規定できない。二段発泡圧力は、0.01MPa(ゲージ圧)~0.17MPa(ゲージ圧)が好ましく、0.03MPa(ゲージ圧)~0.11MPa(ゲージ圧)がより好ましい。
【0112】
二段発泡粒子のゲル分率としては、第1の発泡粒子のゲル分率と同じ態様であることが好ましい。すなわち、二段発泡粒子のゲル分率としては、前述の(ゲル分率)の項の記載を適宜援用できる。
【0113】
〔4.ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体の製造方法〕
本発明の一実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体の製造方法は、〔2.第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法〕の項に記載の製造方法により製造された第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子、または〔3.第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子〕の項に記載の第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を成形する工程を有する。
【0114】
本発明の一実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体の製造方法は、上述の構成を有するため、表面美麗であり、内部融着率が高く、かつ収縮が少ないポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体を提供できるという利点を有する。
【0115】
本発明の一実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体は、〔2.第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法〕の項に記載の製造方法により得られる第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子、または〔3.第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子〕の項に記載の第2のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を成形してなる発泡成形体、ともいえる。
【0116】
本発明の一実施形態においては、以下(1)~(4)を順に行ってもよい:
(1)第1の発泡粒子の製造方法で得られた第1の発泡粒子を本製造方法に供し、第2の発泡粒子を得る;
(2)前記(1)で得られた第2の発泡粒子を上述した二段発泡工程に供し、第1の発泡粒子の見掛け密度よりもさらに小さい見掛け密度の第2の発泡粒子(二段発泡粒子)を得る;
(3)前記(2)で得られた二段発泡粒子を本製造方法に供し、第2の発泡粒子(内圧が付与された二段発泡粒子)を得る;
(4)前記(3)で得られた内圧が付与された二段発泡粒子を本発明の一実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体の製造方法に供し、発泡成形体を得る。
なお、前記(1)で得られた第2の発泡粒子は内圧が付与された発泡粒子であるが、前記(2)で得られた二段発泡粒子は、前記(2)の二段発泡工程を経るため内圧が付与されていない発泡粒子である。前記(3)において二段発泡粒子を本製造方法に供することより、内圧が付与されていない二段発泡粒子に再度内圧を付与する。そして、前記(4)では内圧が付与された二段発泡粒子を用いて発泡成形体を得る。
【0117】
以下、本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡成形体の製造方法に含まれる具体的な工程について説明する。
【0118】
第2の発泡粒子を用いて、様々な成形方法により、様々な発泡成形体を得ることができる。以下、金型を使用する型内発泡成形法を一例に挙げ、本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡成形体の製造方法をさらに詳しく説明する。なお、本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡成形体の製造方法では、型内発泡成形法に限定されるものではない。
【0119】
(金型)
金型としては、特に限定されず、例えば、固定型と移動型とを備えている金型を上げることができる。当該金型の移動型は駆動可能な型ともいえ、当該金型の固定型は駆動し得ない型ともいえる。固定型および移動型は、固定型に向かって移動型を駆動させる(当該操作を「型閉じ」と称する場合がある)ことにより、固定型および移動型の内部に成形空間を形成可能である。
【0120】
本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡成形体の製造方法は、加圧工程に続いて、以下の工程を有することが好ましい。
【0121】
(i)前記加圧工程によって内圧が付与された発泡粒子を、金型の成形空間内に充填する充填工程;および
(ii)前記充填工程において金型の成形空間内に充填された発泡粒子を加熱し、発泡粒子を融着させる発泡成形工程。
【0122】
(充填工程)
内圧が付与された発泡粒子の内圧は時間経過に伴い減少する。しかしながら、上記のとおり、本発泡粒子は、内圧の付与から長期間、成形に好適な内圧を維持することができる。そのため、充填工程は、第2の発泡粒子の時間経過による内圧の減少を考慮し、第2の発泡粒子の内圧が発泡成形時に成形に好適な内圧となる期間に行うことが好ましい。本発泡粒子を原料として用いる場合、加圧工程から充填工程まで大きな時間的猶予があるという利点を有する。
【0123】
充填工程において、金型は型閉じされていなくてもよく、固定型と移動型との間にわずかな隙間(クラッキングとも称する)が形成されていてもよい。クラッキング(mm)は特に限定されず、例えば0.0mm超20.0mm以下であってもよく、1.0mm~10.0mmであってもよく、1.0mm~4.0mmであってもよい。
【0124】
内圧が付与され発泡粒子を、金型の成形空間内に充填する方法としては、特に限定されず、例えば公知の充填機を通して、発泡粒子を充填することができる。
【0125】
(発泡成形工程)
発泡成形工程は、発泡成形体を得る工程ともいえる。
【0126】
充填工程において金型がクラッキングを有する場合、発泡成形工程において、金型が完全に型閉じされるように、固定型に向かって移動型を駆動させる。
【0127】
発泡成形工程において、発泡粒子を融着させる方法は特に限定されない。例えば、金型を水蒸気で予熱した後、金型を水蒸気で一方加熱および逆一方加熱し、さらに金型を水蒸気で両面加熱することにより、発泡粒子を融着させることができる。ここで、「一方加熱および逆一方加熱のときの水蒸気圧力」を「水蒸気圧力A」とし、「両面加熱のときの水蒸気圧力」を「水蒸気圧力B」とする。
【0128】
水蒸気圧力Aの圧力としては特に限定されないが、0.01MPa(ゲージ圧)~0.15MPa(ゲージ圧)であることが好ましく、0.02MPa(ゲージ圧)~0.13MPa(ゲージ圧)であることがより好ましく、0.04MPa(ゲージ圧)~0.13MPa(ゲージ圧)であることがさらに好ましい。当該構成によると、内部融着率が高い発泡成形体が得られる傾向があるという利点を有する。
【0129】
水蒸気圧力Bは0.20MPa(ゲージ圧)以下が好ましく、0.19MPa(ゲージ圧)以下がより好ましく、0.16MPa(ゲージ圧)以下がさらに好ましく、0.14MPa(ゲージ圧)以下がよりさらに好ましい。水蒸気圧力Bが低いほど、経済的な負担が小さくなる。水蒸気圧力Bの下限値は特に限定されないが、0.05MPa(ゲージ圧)以上が好ましく、0.09MPa(ゲージ圧)以上がより好ましい。水蒸気圧力Bの下限値が上述した範囲内である場合、内部融着率および耐衝撃性に優れる発泡成形体が得られる傾向があるという利点を有する。
【0130】
(生産性)
本明細書において、本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡成形体の製造方法の生産性は、成形サイクルの長さによって評価される。本明細書において、成形サイクルとは、発泡成形工程において、金型が完全に型閉じされるように固定型に向かって移動型を駆動させ始めた時点から、得られた発泡成形体を金型から取り出し終わるまでに要する時間(秒)を意図する。
【0131】
本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡成形体の製造方法は、成形サイクルが180秒以下であることが好ましく、175秒以下であることがより好ましく、170秒以下であることがさらに好ましく、165秒以下であることがよりさらに好ましく、160秒以下であることが特に好ましい。成形サイクルが180秒以下である場合、生産効率よく発泡成形体を提供できる。
【実施例0132】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲を限定されるものではない。
【0133】
〔材料〕
実施例および比較例で使用した物質を以下に示す。
【0134】
(ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート))
P3HA-1:当該P3HA-1は、P3HB3HH(モノマー比率は、3HB/3HH=95/5(モル%/モル%)、融点145℃)であり、国際公開WO2021/085534の実施例1に記載の方法に準拠して作製した。
【0135】
(結晶核剤)
ペンタエリスリトール(三菱ケミカル社製ノイライザーP)
(気泡調整剤)
タルク(林化成社製タルカンパウダーPK-S)
(滑剤)
ベヘン酸アミド(日本精化製、BNT-22H)
エルカ酸アミド(日本精化製、ニュートロン-S)
(発泡剤)
二酸化炭素(エア・ウォーター株式会社製)
窒素(エア・ウォーター株式会社製)
(架橋剤)
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(TBEC:日油株式会社製パーブチルE)
(分散剤)
第三リン酸カルシウム(太平化学産業社製)
(分散助剤)
アルカンスルホン酸ナトリウム(花王株式会社製ラテムルPS)。
【0136】
〔測定方法〕
実施例および比較例において実施した評価方法に関して、以下に説明する。
【0137】
(発泡粒子の内圧)
発泡粒子の内圧の測定方法は、以下の(1)~(5)の通りであった:(1)加圧工程後の発泡粒子の重量W1(g)を測定した;(2)当該発泡粒子を150℃、30分間加熱し、当該発泡粒子内の無機ガスを散逸させた;(3)無機ガスを散逸させた発泡粒子について、再度、当該発泡粒子の重量W2(g)を測定した;(4)無機ガスを散逸させる前後の発泡粒子の重量差(W1-W2)から無機ガスの重量(ΔW)を算出した;(5)理想気体の状態方程式(具体的には以下の式)より発泡粒子の内圧P(MPa(絶対圧))を算出した:
発泡粒子の内圧P(MPa(絶対圧))=(1+ΔW/28.8×0.082×(273+T)×(ρ×1000/W2))/9.87
上記の式において、Tは加圧工程後の発泡粒子の重量を測定した際の温度(室温)であり、ρは、加圧工程後の発泡粒子(重量W1の発泡粒子)の見かけ密度(g/cc)である。
【0138】
ここで、発泡粒子(加圧後の発泡粒子)の見かけ密度の測定方法は、以下の(1)~(3)の通りであった:(1)エタノールが入ったメスシリンダーを用意し、当該エタノール中に重量Wd(g)の発泡粒子を沈めた;(2)エタノールの水位上昇分(水没法)より読みとられる発泡粒子の容積をVd(cc)とした;(3)以下の式により、発泡粒子の見かけ密度を算出した;
見かけ密度(g/cc)=Wd/Vd。
【0139】
(発泡粒子の連続気泡率)
まず、ASTMD2856-87の手順C(PROCEDURE C)に記載の方法に準拠して、発泡粒子の体積Vc(cm3)を測定した。次いで、体積Vcを測定後の発泡粒子の全量を、エタノールの入ったメスシリンダーに沈め、メスシリンダーの水位上昇分(水没法)から、該発泡粒子の見掛け上の体積Va(cm3)を求めた。該発泡粒子の連泡率は、式(Va-Vc)/Va×100(%)より求めた。
【0140】
(発泡成形体の表面美麗性)
発泡成形体の表面美麗性の評価方法は以下の通りであった:発泡成形体の表面を目視で観察し、以下の基準に基づいて、表面美麗性を評価した;
○(良好):発泡成形体の表面に、ヒケ、しわおよび粒間の隙間がなく、表面の凹凸も目立たない。
×(不良):発泡成形体の表面に、ヒケ、しわおよび粒間の隙間の何れか1つ以上が存在し、および/または、表面の凹凸が目立つ。
【0141】
(発泡成形体の内部融着率)
内部融着率の測定方法は、以下の(1)~(4)の通りであった:(1)発泡成形体の表面に対して、カッターで垂直方向に、厚さ(50mm)の1/20~1/5の切り込みを入れた;(2)その後、発泡成形体を切り込みに沿って手で破断した;(3)得られた破断面のうち、切り込み部分を除き、かつ厚さ方向の中央を含むようにして縦(厚さ方向)45mm×横90mmの範囲を目視で観察し、当該範囲内に存在する全発泡粒子、および当該範囲内において粒子界面以外で破断している発泡粒子(すなわち発泡粒子自体が破断している発泡粒子)の数を計測した;(4)以下の式に基づき内部融着率を算出した;
内部融着率(%)=(縦(厚さ方向)45mm×横90mmの前記範囲内において粒子界面以外で破断している発泡粒子数/当該範囲内に存在する全発泡粒子数)×100。
【0142】
(発泡成形体の収縮率)
発泡成形体の収縮率の測定方法および評価方法は以下の(1)~(3)の通りであった:(1)発泡成形体の長手方向の長さt(mm)を測定した;(2)当該発泡成形体の型内発泡成形に使用した金型の成形空間における、発泡成形体の長手方向に対応する方向の長さK(mm)を測定した;(3)以下の式に基づき発泡成形体の収縮率を算出した:
収縮率(%)={(K-t)/K}×100。
【0143】
〔製造例1〕
(第1の発泡粒子の製造)
(樹脂粒子製造工程)
P3HA系組成物の溶融混練には、二軸押出機(東芝機械社製TEM-26SX)を用いた。100重量部のP3HA-1と、結晶核剤としてペンタエリスリトール1.0重量部と、気泡調整剤としてタルク0.10重量部と、滑剤としてベヘン酸アミド0.10重量部およびエルカ酸アミド0.10重量部とを計量し、ドライブレンドして、P3HA系組成物を調製した。調製したP3HA系組成物を二軸押出機に供給し、当該P3HA系組成物をシリンダー設定温度130℃~160℃にて溶融混練した(溶融混練工程)。押出機の先端に取り付けたダイスのノズルから180℃の溶融混練されたP3HA系組成物を吐出した。吐出されたP3HA系組成物を、43℃の水で水冷後、切断して、長さ/直径が2.5の円柱状のP3HA系樹脂粒子を得た(粒子成形工程)。
【0144】
(発泡工程)
前記(樹脂粒子製造工程)で得られたP3HA系樹脂粒子100重量部と、架橋剤としてTBEC2.0重量部と、純水350重量部と、分散剤として第三リン酸カルシウム1.8重量部と、分散助剤としてアルカンスルホン酸ナトリウム0.15重量部とを、耐圧容器内に供給した。耐圧容器内の原料を攪拌した。以降、分散液の放出が終わるまで、耐圧容器内の内容物(分散液)を攪拌し続けた。
【0145】
耐圧容器内に窒素を導入して真空引きを行い、耐圧容器内の酸素を除去した。さらに、耐圧容器内に発泡剤として二酸化炭素を供給し、分散液を調製した(分散工程)。その後、耐圧容器内の温度を129℃の発泡温度まで昇温した。さらに、耐圧容器に二酸化炭素を供給して耐圧容器内の圧力を3.3MPa(ゲージ圧)の発泡圧力まで昇圧した(昇温―昇圧工程)。次いで、耐圧容器内の温度および圧力を、それぞれ、発泡温度および発泡圧力付近で60分間保持した(保持工程)。保持工程後、耐圧容器下部のバルブを開き、直径3.6mmの開口オリフィスを通して、前記耐圧容器の分散液を大気圧下に放出し、第1のP3HA系発泡粒子を得た(放出工程)。当該発泡粒子の表面に付着した分散剤等を水で洗浄した後、第1の発泡粒子を75℃で乾燥した。
【0146】
(実施例1)
(加圧工程)
容器として、払出し部を備えた耐圧容器を使用した。払出し部は、(i)配管の途中に設けられたバルブと、(ii)口径2.8cmであり、断面形状が円形の払出し口と、を備えていた。第1の発泡粒子を80℃の耐圧容器に供給した。耐圧容器内の温度を80℃に維持した状態で、耐圧容器内に空気を導入することで耐圧容器内の圧力を表1に記載の設定圧力より高い圧力まで昇圧した。次いで、耐圧容器内から空気を放出することにより、耐圧容器内の圧力を、0.02MPa/hrの速度で、表1に記載の「設定圧力」まで減圧した後に、耐圧容器内の温度を表1に記載の「圧力開放時の容器内温度」まで降温した。これらの操作により、当該第1の発泡粒子の内圧が表1に記載の「発泡粒子の内圧(絶対圧)」の「払出し工程直後」に記載の圧力となるように、第1の発泡粒子を加圧処理した。なお、「払出し工程直後」に記載の圧力は、払出し工程で得られた第2の発泡粒子について上述した方法で発泡粒子の内圧を測定して得られた値である。
【0147】
(払出し工程)
加圧工程の後、払出し部のバルブを開くことにより、耐圧容器内の圧力を開放するとともに、払出し口を通して、第1の発泡粒子を容器内から払出し、第2の発泡粒子を得た。払出し口から成形に必要な分量の第1の発泡粒子が払出された後、直ちにバルブを閉じた。払出し工程の圧力開放の条件を表1に記載する。なお、実施例1および6では、圧力開放口の面積は、払出し部の払出し口の面積であった。また、全ての実施例および比較例において、表1中の「圧力開放速度」および「圧力開放口面積」に関しては、便宜上、それぞれ、小数点第5位と小数点第2位とを四捨五入して、計算し、その結果を記載した。
【0148】
(実施例2および3)
(加圧工程)
容器として、圧力開放部とマンホールとを備えた耐圧容器を使用した。圧力開放部は、(i)管の途中に設けられたバルブと、(ii)口径2.8cmであり、断面形状が円形の開口部と、を備えていた。第1の発泡粒子を80℃の耐圧容器に供給した。耐圧容器内の温度を80℃に維持した状態で、耐圧容器内に空気を導入することで耐圧容器内の圧力を表1に記載の「設定圧力」まで昇圧した。かかる操作により、当該第1の発泡粒子の内圧が表1に記載の「発泡粒子の内圧(絶対圧)」の「払出し工程直後」に記載の圧力となるように、第1の発泡粒子を加圧処理した。
【0149】
(払出し工程)
加圧工程の後、耐圧容器内の温度を表1に記載の「圧力開放時の容器内温度」まで降温した。次いで、圧力開放部のバルブを開くことにより、表1の「圧力開放速度」にて、耐圧容器内の圧力を大気圧まで開放した。耐圧容器内の圧力開放後、マンホールから第1の発泡粒子を取り出し、第2の発泡粒子を得た。払出し工程の圧力開放の条件を表1に記載する。なお、実施例2および3では、圧力開放口の面積は、圧力開放部の開口部の面積であった。
【0150】
(実施例4および5)
(加圧工程)
容器として、払出し部を備えた耐圧容器を使用した。払出し部は、(i)配管の途中に設けられたバルブと、(ii)口径5.5cmであり、断面形状が円形の払出し口と、を備えていた。第1の発泡粒子を80℃の耐圧容器に供給した。耐圧容器内の温度を80℃に維持した状態で、耐圧容器内に空気を導入することで耐圧容器内の圧力を表1に記載の「設定圧力」まで昇圧した。かかる操作により、当該第1の発泡粒子の内圧が表1に記載の「発泡粒子の内圧(絶対圧)」の「払出し工程直後」に記載の圧力となるように、第1の発泡粒子を加圧処理した。
【0151】
(払出し工程)
加圧工程の後、耐圧容器内の温度を表1に記載の「圧力開放時の容器内温度」まで降温した。次いで、払出し部のバルブを開くことにより、耐圧容器内の圧力を開放するとともに、払出し口を通して、第1の発泡粒子を容器内から払出し、第2の発泡粒子を得た。払出し口から成形に必要な分量の第1の発泡粒子が払出された後、直ちにバルブを閉じた。払出し工程の圧力開放の条件を表1に記載する。なお、実施例4および5では、圧力開放口の面積は、払出し部の払出し口の面積であった。
【0152】
(実施例6)
(加圧工程)
容器として、払出し部を備えた耐圧容器を使用した。払出し部は、(i)配管の途中に設けられたバルブと、(ii)口径5.5cmであり、断面形状が円形の払出し口と、を備えていた。それ以外は、実施例1と同じ方法により加圧工程を実施した。
【0153】
(払出し工程)
実施例1と同じ方法により払出し工程を実施し、第2の発泡粒子を得た。払出し工程の圧力開放の条件を表1に記載する。
【0154】
(実施例7および8)
(加圧工程)
容器として、圧力開放部とマンホールとを備えた耐圧容器を使用した。圧力開放部は、(i)管の途中に設けられたバルブと、(ii)口径5.0cmであり、断面形状が円形の開口部と、を備えていた。それ以外は、実施例2と同じ方法により加圧工程を実施した。
【0155】
(払出し工程)
圧力開放速度を表1の「圧力開放速度」に変更したこと以外は、実施例2と同じ方法により払出し工程を実施し、第2の発泡粒子を得た。払出し工程の圧力開放の条件を表1に記載する。
【0156】
(比較例1)
実施例1と同じ方法により加圧工程および払出し工程を実施し、第2の発泡粒子を得た。払出し工程の圧力開放の条件を表1に記載する。
【0157】
(比較例2)
(加圧工程)
容器として、払出し部を備えた耐圧容器を使用した。払出し部は、(i)配管の途中に設けられたバルブと、(ii)口径2.8cmであり、断面形状が円形の払出し口と、を備えていた。それ以外は、実施例4と同じ方法により加圧工程を実施した。
【0158】
(払出し工程)
実施例4と同じ方法により払出し工程を実施し、第2の発泡粒子を得た。払出し工程の圧力開放の条件を表1に記載する。
【0159】
(発泡成形体の製造)
実施例1~8および比較例1~2で得た第2の発泡粒子を用いて、以下の方法で発泡成形体を製造(成形)した。金型としては、成形機(DAISEN社製EP-900)に搭載された、縦370mm×横320mm×厚さ50mmの成形空間を有する金型を使用した。クラッキングを3.0mmとした金型の成形空間内に、充填機を用いて、第2の発泡粒子を充填した(充填工程)。
【0160】
次いで、固定型に向かって移動型を駆動させ、金型を完全に型閉じした後、金型を水蒸気で予熱し、さらに、金型を水蒸気で一方加熱および逆一方加熱し、さらに金型を水蒸気で両面加熱した。かかる操作により、充填された第2の発泡粒子を融着させ、発泡成形体を得た(発泡成形工程)。ここで、一方加熱および逆一方加熱のときの水蒸気圧力(水蒸気圧力A)を0.06MPa(ゲージ圧)とし、両面加熱のときの水蒸気圧力(水蒸気圧力B)を0.13MPa(ゲージ圧)とした。得られた発泡成形体を金型から取り出し、75℃で乾燥した。乾燥後の発泡成形体について、表面美麗性、内部融着率および収縮率を測定および評価し、結果を表1に示した。
【0161】
本発明の一実施形態によると、連続気泡率が低いポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を提供できる。当該発泡成形体は、食品容器、包装材料、衛生用品、ゴミ袋、包装用緩衝材、農産箱、魚箱、自動車部材、建築材料、土木材料等に好適に使用し得る。