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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061800
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】配管の溶接方法及び自動溶接機
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/028 20060101AFI20230425BHJP
   B23K 37/02 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
B23K9/028 C
B23K37/02 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171949
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591146697
【氏名又は名称】愛知産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴則
(72)【発明者】
【氏名】古川 潤
(72)【発明者】
【氏名】三宅 達也
(72)【発明者】
【氏名】福永 裕也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 重亮
【テーマコード(参考)】
4E081
【Fターム(参考)】
4E081AA06
4E081AA14
4E081BA27
4E081BB02
4E081BB07
4E081CA01
4E081DA11
4E081DA41
4E081DA42
4E081EA09
4E081EA17
4E081EA32
(57)【要約】
【課題】管材の端部接合部の断面形状がいわゆるV開先のものであっても、自動溶接機を用いた際の溶け込み不良を抑え、建築現場での溶接作業を好適に行う。
【解決手段】V開先に加工成形されている配管13、14の端部13a、14aを溶接によって接続する場合、少なくとも初層の溶接は、作業員が手作業で行なって、溶接ビードB1を形成する。次いで自動溶接機によって二層目以降の溶接を実施して、溶接ビードB2を形成する。かかるプロセスを経ることで、溶接工の作業を最小限に抑えて、V開先の管材の溶接作業を好適に行うことができる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管材の端部相互を溶接によって接続する溶接方法において、
少なくとも初層の溶接は、作業員が手作業で行い、
以降の溶接作業は、自動溶接機によって行うことを特徴とする、溶接方法。
【請求項2】
前記溶接される管材の開先は、V開先であることを特徴とする、請求項1に記載の溶接方法。
【請求項3】
管材の端部相互を溶接するために用いる溶接機であって、
前記管材の外周に取り付けられるガイドリングと、
前記ガイドリングの外周に沿って周方向に移動可能な走行部と、
前記走行部に設けられたワイヤリールと、
前記走行部に設けられた溶接トーチと、
前記溶接トーチ近傍に配置され、前記ワイヤリールから繰り出さる溶接ワイヤを支持するワイヤ支持部、とを有し、
前記ワイヤリールの側端面は、前記ガイドリングの周面と平行となるように配置されていることを特徴とする、自動溶接機。
【請求項4】
前記ワイヤリールの回転中心は、前記ガイドリングの軸方向後方側に位置していることを特徴とする、請求項3に記載の自動溶接機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の溶接方法及び自動溶接機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から各種建築現場において配管を接続する場合、配管を構成する管材の端部相互を溶接することが行われている。そして近年は溶接作業の省力化、自動化を図るため、自動溶接機を用いられることがある。
【0003】
自動溶接機としては、例えば特許文献1に開示されているような、配管を溶接するための溶接トーチと、この溶接トーチを3次元的に駆動する走行台車と、前記溶接トーチの進行方向前方に設けられた溶接線検出センサと、この溶接線検出センサが検出した情報をフィードバックして前記溶接トーチの位置を制御する制御装置を備える自動溶接装置において、配管の全周にわたって形成した溶接部に前記溶接トーチを位置決めして得られた位置データを近似した溶接トーチの位置データと前記溶接線検出センサを位置決めして得られた位置データを近似したセンサの位置データとの差を記憶する手段と、前記溶接トーチを用いて溶接を実行するときに前記センサが検出した情報を前記記憶手段に記憶された値を用いて補正して前記溶接トーチを制御する制御装置とを設けた自動溶接装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3414118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、管材の端部相互を溶接する場合、母材の変形を抑制したり、溶接後の接合部分に高い強度が得られる開先溶接と呼ばれる、管材端部を加工した後に溶接を行う方法が採用されている。
【0006】
この点に関し、自動溶接機を用いた溶接は、管材の端部接合部の断面形状をいわゆるV開先とすると、初層の溶け込み不良が発生しやすい。そのため、自動溶接機を用いた溶接を行う際には、管材の端部接合部の断面形状をいわゆるU開先で行うようにしている。
【0007】
しかしながらU開先に加工するには高い加工精度を要し、そのため専用の工作機械で加工する必要がある。ところが狭い建築現場にそれらの工作機械を持ち込んで加工することは実際上不可能である。そのため、事情が許す限り、建築現場から離れた別な場所でU開先加工を行い、加工後の管材を溶接現場に搬送するようにしているが、開先が細いので、搬送途中や設置時に往々にして開先部分を破損したり、変形してしまうおそれがあった。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、管材の端部接合部の断面形状がいわゆるV開先のものであっても、自動溶接機を用いた際の溶け込み不良を抑え、建築現場での溶接作業を好適に行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、管材の端部相互を溶接によって接続する溶接方法において、少なくとも初層の溶接は、作業員が手作業で行い、以降の溶接作業は、自動溶接機によって行うことを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、少なくとも初層の溶接は作業員が手作業で行うようにしたので、溶接される管材の開先がV開先であっても、溶け込み不良の発生を防止することができる。したがって、以降の溶接作業を、自動溶接機を用いて実施することができ、すべての溶接作業を作業員の手作業で行うよりも、自動化、省力化が図れる。
【0011】
そして前記溶接される管材の開先が、V開先のものであれば、建築現場にて容易に加工することができ、従来、自動溶接機を使用する場合に必要であった、管材の端部の形状をU開先とする必要がなく、現場にて容易に管材の端部をV開先加工することができる。
【0012】
他の観点にかかる本発明の自動溶接機は、管材の端部相互を溶接するために用いる溶接機であって、前記管材の外周に取り付けられるガイドリングと、前記ガイドリングの外周に沿って周方向に移動可能な走行部と、前記走行部に設けられたワイヤリールと、前記走行部に設けられた溶接トーチと、前記溶接トーチ近傍に配置され、前記ワイヤリールから繰り出さる溶接ワイヤを支持するワイヤ支持部、とを有し、前記ワイヤリールの側端面は、前記ガイドリングの周面と平行となるように配置されていることを特徴としている。
【0013】
本発明にかかる自動溶接機によれば、溶接ワイヤが巻き付けられているワイヤリールの側端面、すなわち平面視で円形をなす面が、ガイドリングの周面と平行となるように配置されているので、自動溶接機の走行部がガイドリングの外周に沿って回転移動する際、管材中心からの径方向への長さ、すなわち高さを抑えることができ、溶接する際の自動溶接機の回転軌道の範囲を小さく抑えることができる。したがって管材が錯綜して作業スペースが狭い場合でも自動溶接作業を好適に行うことができる。
【0014】
かかる場合、前記ワイヤリールの回転中心は、前記ガイドリングの軸方向後方側、すなわち前記した溶接トーチから離れる方向に位置しているようにしてもよい。
【0015】
このような構成を採用することで、ワイヤ支持部とワイヤリールからの溶接ワイヤの繰り出し部分との距離を長くとることができ、ワイヤ支持部のワイヤリールに対する角度が、例えば大きいものであっても、ワイヤ支持部に至るまでの溶接ワイヤの繰り出し部の長さを長く確保して、溶接ワイヤの軌道がなす曲率半径を大きくとることができる。したがって溶接ワイヤを円滑、適切に繰り出すことが可能になる。またさらに走行部自体はガイドリングの外周に沿って移動する構成上、ガイドリングの厚さ分、全高が高くなっているので、ワイヤリール全体を走行部の後方に配置することで、ワイヤリール自体をガイドリングの上方に位置させる必要がなくなる。したがってその分ワイヤリール自体の高さも抑えることが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、管材の端部接合部の断面形状がいわゆるV開先のものであっても、自動溶接機を用いた際の溶け込み不良を抑え、建築現場での溶接作業を好適に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】V開先に加工された管材の端部を、自動溶接機で溶接した際の断面の説明図である。
図2】作業員が手作業で管材の端部を仮付けしている様子を示す説明図である。
図3】管材の端部を仮付けする際の溶接箇所の順を示す説明図である。
図4】仮付けの後に作業員が手作業で管材の端部の初層の溶接を行っている様子を示す説明図である。
図5】V開先に加工された管材の端部を、作業員の手作業で初層の溶接を行った後の断面の説明図である。
図6】手作業による溶接の後、作業員が管材の端部に自動溶接のための準備を施している様子を示す説明図である。
図7】自動溶接機によって、管材端部を溶接している様子を示す説明図である。
図8図2の溶接後、自動溶接機によって溶接をした後の断面の説明図である。
図9】実施の形態で使用される自動溶接機の斜視図である。
図10図9の自動溶接機の平面図である。
図11図9の自動溶接機の管材の軸方向から見た正面図である。
図12図9の自動溶接機を含む自動溶接装置の構成を示す説明図である。
図13図9の自動溶接機を用いた溶接方法の溶接のフローチャートである。
図14】他の実施の形態にかかる自動溶接機の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
図1は、配管を構成する管材1、2の端部接合部を斜めに切削加工するなどして、母材である対向する管材1、2の各端部1a、2a間の空間が、断面V字型となるように加工されたV開先の様子を示している。このV開先の管材1、2の端部を自動溶接すると、図1に示したように溶接金属からなる溶接ビードBがV開先の端部1a、2a間内に形成されるが、端部1a、2a間における管の中心側の微小な隙間Dまで溶接ビードBが到達せず、いわゆる溶け込み不良が発生していた。
【0020】
そこで実施の形態にかかる溶接方法は、下記の工程を経て溶接作業を行う。この例は、図2に示したように、床面10から立ち上がる竪管11に、エルボ管12を接続し、このエルボ管12に対して水平に接続された配管13に対し、順次配管14を溶接することで水平方向に伸長させる配管工事の様子を示している。配管13、14の溶接によって接合する端部は、図1に示した例と同様、V開先に加工されている。
【0021】
図2は、配管13に配管14を仮付けしている様子を示している。仮付け作業を行う作業員P1は、高所作業リフト15の作業台16の上で仮付け作業を行う。床面上には、溶接作業に必要な各種ガス(たとえばアルゴンガス、アセチレンガスなど)のボンベ17が置かれており、溶接器具などは作業台16に載置されている。
【0022】
仮付け作業は、作業員P1が溶接棒を用いて、間隔をおいて周方向に配管13と配管14との端部を溶接するものであり、例えば図3に示したように、軸方向からみて右下(図中のa)、左上(図中のb)、左下(図中のc)、右上(図中のd)の順に仮付け溶接を行う。仮付けは溶接の本作業の前に実施されるものである。このとき、地上(床面上)には、作業員P2がボンベ17その他の機器等を監視している。
【0023】
仮付け作業が終わると、図4に示したように、作業員P3が手作業による溶接作業を行う。手作業による配管の溶接は、相応の知識、技量、経験を持った者が行う必要がある。そのため所謂溶接工が従事する。これに対して前記した仮付けを行う作業員P1は、溶接工ほどの知識、技量、経験は必要がないので、例えば配管工の中で溶接技術を有する者であれば仮付け作業に従事させることができる。また地上にいる作業員P2についても、溶接工ほどの知識、技量、経験は必要がなく、工事安全の講習、実習を受けたり、相応の経験を有し、現場の施工を管理できる者で足りる。
【0024】
作業員P3による手作業による溶接は、図3中の矢印で示したように、「地」で示される底部から周方向に沿って上方向に順次行う。これは例えば溶融状態のビードが垂れ落ちることを防止するためである。
【0025】
このようにして手作業による溶接を終えた後の配管13、14の断面の様子を図5に示した。図示のように、配管13、14の端部13a、14a空間には溶接ビードB1が形成され、内側の隙間Dにも溶接ビードB1が充填されている。そして手作業による溶接を終えた後の配管13、14の端部13a、14a空間形状は、形成された溶接ビードB1によって、あたかも浅いU開先に似たものとなっている。
【0026】
その後、図6に示したように、作業員P4が作業台16に上がって、自動溶接機21を配管13、14の溶接予定箇所にセットする。この作業は溶接工でなくともなしえる作業であり、例えば配管工が従事する。
【0027】
そして自動溶接機21をセットした後、地上(床上)にて、作業員P5が自動溶接機21を操作する。かかる作業は、溶接についての一般的な知識を有する者や適宜の自動溶接機の講習を受けて操作可能なものであれば、従事可能であり、格別溶接工が作業員P5を務める必要はない。
【0028】
自動溶接機21によって溶接を行った後の配管13、14の断面の様子を図5に示した。配管13、14の端部13a、14a空間には手動溶接によって形成された溶接ビードB1の上に、自動溶接による溶接ビードB2が形成されている。
【0029】
従来、自動溶接機よる自動溶接が、U開先の場合は所期の溶接が実現できていたことを鑑みると、既述したように、手作業による溶接を終えた後の配管13、14の端部13a、14a空間形状は、初層の手作業による溶接ビードB1によってあたかも浅いU開先に似たものとなっているので、自動溶接機のトーチによっても、溶接ビードB1の上層に好適に溶接ビードB2を形成することが可能になっている。
【0030】
以上のように、本実施の形態にかかる溶接方法によれば、配管13、14の端部接合部の断面形状がいわゆるV開先のものであっても、自動溶接機21を用いた際の溶け込み不良を防止することができる。またすべての溶接作業を溶接工が行う必要はなく、少なくとも初層のみの溶接を溶接工が行えば、事前の仮付け作業、自動溶接機21を用いた溶接作業に溶接工が従事する必要はない。すなわち、手動溶接を行う作業員P3のみが溶接工であれば足り、他の作業員P1、P2、P4、P5は溶接工である必要はない。したがって前記した一連の作業においては、溶接工の労力を最小限に抑えて、建築現場での溶接作業を好適に行うことが可能である。
【0031】
また便宜上、作業に従事する作業員をP1~P5として説明したが、実際の作業においては、仮付け作業を行う作業員P1は配管工でも務めることができ、また自動溶接機21をセットする作業員P4も配管工でも従事可能である。また地上にて安全管理を行う作業員P2、自動溶接機21を操作する作業員P5も、配管工で従事可能である。したがって実施の形態にかかる溶接方法は、最低限、1人の溶接工と1人の配管工で作業を行うことができる。その結果、溶接作業全体を通してみれば、溶接工の人員を従来よりも削減することが可能であり、近年人員の確保が難しくなってきている溶接工を効率よく、作業に従事させることができる。
【0032】
前記した溶接方法に使用した自動溶接機21は、既存のこの種の自動溶接機でも使用可能であるが、本願においては、本発明の実施に適した、例えば図9図10図11に示した自動溶接機31を提案できる。
【0033】
この自動溶接機31は、モータ等を有する走行部32を有している。走行部32は、一対のリングレール33a、33bを有し、径方向に分割可能な一体となったリング状のガイドレール33の外周の周面33c上を走行可能である。ガイドレール33の内周には、配管14等の管材外周にガイドレール33を固定するための複数の固定脚34が設けられている。配管14等の管材外周への固定にあたっては、締め付けボルト(図示せず)の緊締によって行う。
【0034】
溶接を行う溶接トーチ35は、適宜の固定部材36を介して走行部32に固定される。溶接トーチ35の先端には、溶接ワイヤ41が逐次送り出される。すなわち溶接ワイヤ41は、ワイヤリール42に巻き付けられており、ワイヤ送給機構43によってワイヤ矯正部44を介して、溶接トーチ35直下に位置するワイヤ支持部となるワイヤノズル45の先端部に連続供給されるようになっている。ワイヤ送給機構43は、適宜の支持部材43aによって走行部32に固定されている。
【0035】
溶接トーチ35の直下、溶接ワイヤ41の先端、並びに溶接状況は、撮像カメラ46によって撮影可能である。また撮像領域は、ライト47によって照明される。
【0036】
そして図11に示したように、ワイヤリール42の側端面42a、42bは、ガイドレール33の周面33cと平行となるように配置されている。通常この種のワイヤリール42は、平行に対向している平坦な円板によって側端面42a、42bが構成され、その間に溶接ワイヤ42が巻き付けられている。またワイヤリール42自体は、その回転中心部42cの下端部が、ブラケットなどの支持部材42dによって支持されている。支持部材42dは、走行部32に固定されている。
【0037】
さらにワイヤリール42の回転中心となる回転中心部は42cを、図10に示したように、ガイドレール33の軸方向後方側、すなわち走行部32から離れる方向(図中の矢印Uで示される方向)に位置させている。
【0038】
この自動溶接機31は、例えば図12に示した自動溶接装置51の構成装置として使用できる。自動溶接装置51は、電源、ガス等を供給し、さらに各種の制御を行う制御装置を備えたするサプライユニット52を有している。サプライユニット52の下面にはキャスタ53が設けられており、移動可能である。自動溶接装置51は開閉自在な扉54を前面に有し、内部には溶接に必要なボンベ等が収納されている。また作業員が携行可能なリモコン装置55は、サプライユニット52とは、例えば有線で接続されている。
【0039】
またサプライユニット52には、自動溶接機31の作動に必要な各種のケーブル、ホース類が接続される。すなわち、母材である配管の管材と接続されるアース線60、シールドガスホース61、トーチ冷却水戻り側ホース62、トーチ冷却水出側ホース63、パワーケーブル64等の各種のトーチ用ケーブルが、ケーブルヘッダ65を介して、自動溶接機31と接続される。さらにトーチ、走行部32等を制御するための制御用ケーブル66が、サプライユニット52と自動溶接機31との間で接続される。そして撮像カメラで撮像した画像信号は、カメラケーブル67を介して、サプライユニット52のモニター68へと出力される。なお扉54の前面には、電流値、ガス供給流量等を表示する、メータ類69が設けられている。
【0040】
このようにサプライユニット52と自動溶接機31との間には複数の各種ケーブル、ホース類が接続されるが、前記した各種トーチ用ケーブルや制御用ケーブルの接続にあたっては、サプライユニット52におけるこれらケーブル類の接続部、端子を色分けしたり、ケーブル、ホース類を、色分けした接続部、端子と同一の色分けすることで、誤接続を防止することが可能である。
【0041】
またリモコン装置55は、自動溶接機31の走行部32の走行速度、溶接ワイヤ41の送り出し速度、さらには溶接トーチ35への出力(電流値)、溶接トーチ35の位置調整が行えるように構成されている。したがって溶接対象の配管の外周に自動溶接機31をセットし、ケーブル、ホース類の必要な接続を行うことで、離れた場所にて自動溶接機31を制御しつつ、これを稼働させることが可能である。したがって、リモコン装置55を携行してこれらの作業を行う者は、必ずしも溶接工である必要はなく、必要な講習等を受けて自動溶接機31を操作可能な者であれば、配管工やその他の作業員であっても、自動溶接に従事することができる。
【0042】
以上のような自動溶接装置51を用いた溶接のプロセスの一例を図13のフローチャートに示した。まず溶接接続対象となる配管を溶接現場に搬入する(ステップS1)。次いで配管の端部を開先加工する(ステップS2)。既述したように、本発明によればV開先であっても溶け込み不良の発生を防止して好適に溶接を行えるので、現場では加工容易なV開先加工が行える。
【0043】
次いで配管の吊り込みや取り付けを行う(ステップS3)。そして開先加工した配管相互を対向させて、開先合わせを行う(ステップS4)。その後既述した仮付け作業を実施する(ステップS5)。その後手作業による初層の溶接を実施する(ステップS6)。手作業による初層の溶接が終わると、溶接対象の配管の現場環境を確認する(ステップS7)。これは自動溶接機31やサプライユニット52の設置場所を再度確認するためのものである。
【0044】
環境を確認した後、サプライユニット52を現場に設置する(ステップS8)。次いでサプライユニット52における一次電源の接続、ケーブル、ホース類の敷設、接続、ガイドレール33の取り付け、走行部32の設置等を行う(ステップS9)。そしてこれらの作業が終わると、溶接開始前に、溶接トーチ35の位置、溶接ワイヤ41等の位置等を確認するため一旦走行部32を作動させて、各種のデータを取得して溶接線のティーチングを実施する(ステップS10)。その後微調整が必要な気場合には、これらを行い、その後に自動溶接作業を実施する(ステップS11)。
【0045】
以上の工程において、必ず溶接工が行う必要のある作業は、初層溶接(ステップS6)のみであり、他の作業は配管工やその他の者で実施可能である。したがって実施の形態にかかる溶接方法によれば、溶接工の作業を最小限に抑えることができ、しかも適切な溶接作業を行うことが可能である。なお初層の溶接とは、文字通り、最初に配管相互を溶接する際の最初の溶接作業だけを意味するものではなく、例えば一回目の溶接によって一部足りないところがあれば、引き続いて手作業による溶接を行い、自動溶接機31による溶接が可能となった時点で、以降の溶接作業は自動溶接機31を用いて溶接することになる。したがって本発明において、初層とは必ずしも最初の溶接を意味するものではない。
【0046】
そして前記した自動溶接機31によれば、図11に示したように、ワイヤリール42の側端面42a、42bが、ガイドレール33の周面33cと平行となるように配置されているので、走行部32がガイドレール33の外周の周面33cに沿って回転移動する際、管材の中心からの径方向への長さ、すなわち高さHを低く抑えることができる。すなわち、溶接する際の自動溶接機31の回転軌道の範囲を小さく抑えることができる。したがって作業スペースが狭い場合でも自動溶接作業を行うことができる。
【0047】
またワイヤリール42の回転中心となる回転中心部42cを、ガイドレール33の軸方向後方側、すなわち走行部32から離れる方向(図中の矢印Uで示される方向)に位置させているので、溶接トーチ35に近接するワイヤノズル45とワイヤリール42からの溶接ワイヤ41の繰り出し部分との距離を長くとることができる。すなわち、図10に即して言えば、ワイヤノズル45のワイヤリール42に対する角度が、例えば大きいものであっても、ワイヤノズル45に至るまでの溶接ワイヤ41の繰り出し部の長さを長くとって、溶接ワイヤ41の軌道がなす曲率半径を大きくとることができる。
【0048】
より詳述すれば、ワイヤリール42の回転中心となる回転中心部42cを、ガイドレール33の軸方向の前方に位置させると、図10のR1で示される曲がり部分における曲率半径が小さくなり、それによって溶接ワイヤ41が曲がってしまって、溶接ワイヤ41の送り出しに支障が生じるおそれがある。これに対し、本実施の形態のように、ワイヤリール42の回転中心となる回転中心部42cを、ガイドレール33の軸方向後方側、すなわち走行部32から離れる方向に位置させることで、R1で示される曲がり部分における曲率半径を大きくすることができ、溶接ワイヤ41を円滑にワイヤノズル45に送り出すことが可能である。
【0049】
またさらに走行部32はガイドレール33の外周の周面33cに沿って移動するので、管材の軸方向におけるガイドレール33の位置と同じ位置にワイヤリール42を配置すると、どうしてもガイドレール33の厚さ分だけ、ワイヤリール42の外方の側端面42aの高さが高くなってしまう。これに対し、ワイヤリール42全体を走行部32の後方に配置することで、ガイドレール33の上方に位置させる必要がなくなり、溶接対象の管材に近接してワイヤリール42を位置させることができる。したがってその分ワイヤリール42自体の高さを抑えることが可能である。かかる場合、走行部32に設ける支持部材42dは、例えば支持部材42dの取り付け位置から下方へと湾曲したり、屈曲した形状のブラケット等を用いればよい。
【0050】
図9図10に示した自動溶接機31に設けられたワイヤリール42は所謂5キロ巻きの相対的に小径のものであったが、巻き付けられる溶接ワイヤを長くするには、より大径の、例えば10キロ巻きといわれるワイヤリールを走行部32に取り付ける必要がある。
【0051】
図14に示した自動溶接機31は、そのような相対的に大径のワイヤリール72を図9図10に示した自動溶接機31の走行部32に取り付けた例を示している。
【0052】
ワイヤリール72は図10に示したワイヤリール42よりも径が大きく、したがって側端面72aの径はワイヤリール42よりも大きい。そのため、図10に示したワイヤリール42の位置にそのまま配置することはできない。
【0053】
そこで図14に示した自動溶接機31では、走行部32を挟んでワイヤ送給機構43と反対の位置にワイヤリール72を配置して、支持部材72dによってワイヤリール72を支持するようにした。この場合、ワイヤ送給機構43が図10に示した位置のままでは、ワイヤリール72から繰り出される溶接ワイヤ41は、ワイヤ送給機構43に対して直線的に入り口部に導入することは難しく、また走行部32と干渉してしまう。
【0054】
この点図14に示した自動溶接機31では、ワイヤ送給機構43を支持部材43aに対して、回動するように構成したので、図14に示したように、走行部32側へと回転移動させることができる。これによって、ワイヤリール72から繰り出される溶接ワイヤ41をワイヤ送給機構43に対して直線的に導入することができ、またワイヤリール72から繰り出される溶接ワイヤ41を走行部32と干渉することなく、ワイヤ送給機構43に導入することが可能である。
【0055】
かかる場合も、ワイヤリール72の回転中心部72cを、ガイドレール33の軸方向後方側、すなわち走行部32から離れる方向(図中の矢印Uの方向)に位置させていることで、図中のR1、R2で示される曲がり部分における曲率半径を大きくすることができ、溶接ワイヤ41を円滑にワイヤノズル45に送り出すことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、特に配管の溶接による接続作業に有用である。
【符号の説明】
【0057】
1、2 管材
1a、2a 端部
10 床面
11 竪管
12 エルボ管
13、14 配管
13a、14a 端部
15 高所作業リフト
16 作業台
17 ボンベ
21、31 自動溶接機
32 走行部
33 ガイドレール
33a、33b リングレール
34 固定脚
35 トーチ
41 溶接ワイヤ
42、72 ワイヤリール
43 ワイヤ送給機構
44 ワイヤ矯正部
45 ワイヤノズル
46 撮像カメラ
47 ライト
51 自動溶接装置
52 サプライユニット
55 リモコン装置
60 アース線
61 シールドガスホース
62 トーチ冷却水戻り側ホース
63 トーチ冷却水出側ホース
64 パワーケーブル
B、B1、B2 溶接ビード
P1~P5 作業員
図1
図2
図3
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図6
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図9
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図14