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特開2023-61804紫外線硬化型ポリマー組成物、紫外線硬化型アクリル系粘着剤及び紫外線硬化型アクリル系ホットメルト粘着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061804
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】紫外線硬化型ポリマー組成物、紫外線硬化型アクリル系粘着剤及び紫外線硬化型アクリル系ホットメルト粘着剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/08 20060101AFI20230425BHJP
   C09J 133/10 20060101ALI20230425BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230425BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20230425BHJP
   C08K 5/1515 20060101ALI20230425BHJP
   C08K 5/524 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
C08L33/08
C09J133/10
C09J11/06
C08K5/3492
C08K5/1515
C08K5/524
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171956
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】桑原 章滋
(72)【発明者】
【氏名】河田 祐希
【テーマコード(参考)】
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
4J002AE052
4J002BG041
4J002BP031
4J002CD052
4J002EU186
4J002EW067
4J002FD146
4J002FD207
4J002GF00
4J002GJ01
4J040DF051
4J040HB30
4J040HC20
4J040JA06
4J040JB01
4J040JB08
4J040PA30
4J040PA32
(57)【要約】
【課題】 本発明は、UV-A領域の紫外線のように長波長の紫外線に対して優れた反応性を有して容易に架橋(硬化)し且つ耐金属腐食性を有していると共に、架橋後に優れた粘着性を発現する紫外線硬化型ポリマー組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の紫外線硬化型ポリマー組成物は、ポリマーと、トリアジン系開始剤と、ハロゲン化水素捕捉剤とを含むので、優れた硬化性及び耐金属腐食性を有すると共に、架橋後に優れた粘着性を発現する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーと、トリアジン系開始剤と、ハロゲン化水素捕捉剤とを含むことを特徴とする紫外線硬化型ポリマー組成物
【請求項2】
ポリマーがアクリル系ポリマーを含有することを特徴とする請求項1に記載の紫外線硬化型ポリマー組成物。
【請求項3】
ハロゲン化水素捕捉剤の含有量とトリアジン系開始剤の含有量との比(ハロゲン化水素捕捉剤の質量/トリアジン系開始剤の質量)が3~6であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の紫外線硬化型ポリマー組成物。
【請求項4】
ハロゲン化水素捕捉剤が、環状エーテル系化合物を含むことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の紫外線硬化型ポリマー組成物。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項の紫外線硬化型ポリマー組成物を含むことを特徴とする紫外線硬化型アクリル系粘着剤。
【請求項6】
請求項1~4の何れか1項の紫外線硬化型ポリマー組成物を含むことを特徴とする紫外線硬化型アクリル系ホットメルト粘着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型ポリマー組成物、紫外線硬化型アクリル系粘着剤及び紫外線硬化型アクリル系ホットメルト粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネート化合物やエポキシ化合物などの架橋剤を用いたアクリル系粘着剤に比して、紫外線硬化型アクリル系粘着剤は、架橋剤の反応のためのエージングが不要であることや、ポットライフが非常に長いという点から産業的に広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、紫外線の照射によって架橋する紫外線硬化型アクリル系ポリマーであって、150℃にて6時間加熱された後の標準ポリスチレンにより換算された重量平均分子量の変化率が-20~20%であり、且つ、紫外線硬化後の引張せん断ひずみtanθが2.0~6.5である紫外線硬化型アクリル系ポリマーが開示されている。
【0004】
特許文献2には、ポリマを架橋する方法であって、(a)(i)引抜可能な水素原子を含有する放射線架橋性ポリマと、(ii)非重合性の放射線活性化可能な架橋剤とを含んでなる放射線架橋性組成物を提供するステップと、(b)該架橋剤を活性化しかつ該ポリマを架橋するのに十分な波長を有する単色放射線源を提供するステップと、(c)該ポリマを架橋するのに十分な時間をかけて、該単色放射線源から放出された放射線に該放射線架橋性組成物を暴露するステップと、を含む方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-031643号公報
【特許文献2】特表2000-509089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の紫外線硬化型アクリル系ポリマーは、アクリル系ポリマーの側鎖にベンゾフェノンなどの水素引抜型開始剤が導入された紫外線硬化型アクリルホットメルト粘着剤である。
【0007】
上記紫外線硬化型アクリルポリマーは、側鎖に導入されたベンゾフェノン基が紫外線などの放射線により励起され、ポリマー間水素引抜反応が起こり、発生したラジカル同士のカップリングによりポリマー間に架橋を形成して硬化する。
【0008】
しかしながら、ベンゾフェノン基による紫外線硬化は、主な吸光波長がUV-C(短波長)であり、UV-A領域の紫外線には殆ど反応しないことから、汎用性に乏しいと共に、深部硬化性が低いという問題点を有している。
【0009】
一方、特許文献2では、トリクロロメチル基を有するトリアジン系開始剤が用いられ、トリクロロメチル基を有するトリアジン系開始剤により、UV-A領域の紫外線に反応し、水素引抜反応によってポリマー間架橋を形成することができる。
【0010】
しかしながら、上記技術で製造された粘着剤は、架橋反応時に腐蝕性ガスが発生し、ステンレス、銅などの金属に貼着すると金属に腐食が発生するという問題を有している。
【0011】
本発明は、UV-A領域の紫外線のように長波長の紫外線に対して優れた反応性を有して容易に架橋(硬化)し且つ耐金属腐食性を有していると共に、架橋後に優れた粘着性を発現する紫外線硬化型ポリマー組成物及びこれを用いた紫外線硬化型アクリル系粘着剤及び紫外線硬化型アクリル系ホットメルト粘着剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の紫外線硬化型ポリマー組成物は、ポリマーと、トリアジン系開始剤と、ハロゲン化水素捕捉剤とを含む。
【0013】
[ポリマー]
紫外線硬化型ポリマー組成物は、ポリマーを含む。ポリマーは、トリアジン系開始剤によって架橋可能であれば特に限定されないが、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合、優れた粘着性を有するので、アクリル系ポリマーが好ましい。
【0014】
アクリル系ポリマーは、アクリル系ポリマーを重合することによって得ることができる。アクリル系モノマーとしては、特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)メタクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキルアクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの飽和脂肪族環構造を有する(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレートが挙げられ、アルキル基の炭素数が1~8のアルキル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。アクリル系モノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0015】
ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、10000以上が好ましく、50000以上がより好ましく、70000以上がより好ましく、80000以上が特に好ましい。ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、500000以下が好ましく、300000以下がより好ましく、250000以下がより好ましく、200000以下が特に好ましい。重量平均分子量(Mw)が10000以上であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。重量平均分子量(Mw)が500000以下であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。
【0016】
ポリマーの数平均分子量(Mn)は、30000以上が好ましく、40000以上がより好ましく、50000以上がより好ましい。ポリマーの数平均分子量(Mn)は、300000以下が好ましく、150000以下がより好ましく、130000以下がより好ましく、110000以下がより好ましく、90000以下が特に好ましい。数平均分子量(Mn)が30000以上であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。数平均分子量(Mn)が150000以下であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。
【0017】
ポリマーの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、5.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.0以下が特に好ましい。分散度が5.0以下であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。
【0018】
ポリマーの重量平均分子量及び数平均分子量は、後述するA-B-A型のトリブロックポリマーの測定要領と同一であるので、その説明を省略する。
【0019】
ポリマーの130℃での溶融粘度は、10Pa・s以上が好ましく、30Pa・s以上がより好ましく、40Pa・s以上がより好ましい。ポリマーの130℃での溶融粘度は、100Pa・s以下が好ましく、90Pa・s以下がより好ましく、85Pa・s以下がより好ましい。ポリマーの130℃での溶融粘度が10Pa・s以上であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。ポリマーの130℃での溶融粘度が100Pa・s以下であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた塗工性及び粘着性を有する。
【0020】
なお、ポリマーの130℃での溶融粘度は、後述するA-B-A型のトリブロックポリマーの測定要領と同一であるので、その説明を省略する。
【0021】
ポリマーのガラス転移温度Tgは、-70℃以上が好ましく、-50℃以上がより好ましく、-40℃以上がより好ましい。ポリマーのガラス転移温度Tgは、0℃以下が好ましく、-10℃以下がより好ましい。ポリマーのガラス転移温度Tgが-70℃以上であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。ポリマーのガラス転移温度Tgが0℃以下であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。
【0022】
ポリマーのガラス転移温度Tgは、後述するA-B-A型のトリブロックポリマーの測定要領と同一であるので、その説明を省略する。
【0023】
アクリル系ポリマーとしては、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有するので、重合体ブロックBの両末端のそれぞれに重合体ブロックAが結合してなるA-B-A型トリブロックポリマーであることが好ましい。なお、重合体ブロックBの両末端に結合している重合体ブロックAは、この重合体ブロックを構成しているモノマーの種類及び/又はモノマーの含有量が同一であっても相違していてもよい。
【0024】
A-B-A型のトリブロックポリマーの重合体ブロックAを構成しているモノマーとしては、特に限定されず、ラジカル重合、カチオン重合又はアニオン重合などの重合反応し得るモノマーが挙げられ、エチレン性不飽和結合を有するモノマーが好ましい。
【0025】
重合体ブロックAを構成しているモノマーは、非架橋性モノマーが好ましい。非架橋性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)メタクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキルアクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの飽和脂肪族環構造を有する(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレートなどが挙げられる。紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有するので、飽和脂肪族環構造を有する(メタ)アクリレートがより好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート及びアダマンチル(メタ)アクリレートがより好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及び4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましく、シクロヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。なお、(メタ)アクリル系モノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0026】
本発明において、「架橋性」とは、紫外線、電子線などの放射線の照射、加熱、湿気(水)、酸、塩基及び/又は架橋剤との反応などの架橋処理によって化学結合を形成して架橋可能であることをいう。非架橋性モノマーは、分子中に架橋性を有する基を有していない。
【0027】
架橋性を有する基としては、特に限定されず、例えば、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、グリシジル基、オキセタニル基、トリメトキシシリル基、イソシアネート基、アミノ基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、ベンゾフェノン基、ベンゾイン基、チオキサントン基などが挙げられ、グリシジル基、ベンゾフェノン基、ベンゾイン基及びチオキサントン基が好ましく、グリシジル基、ベンゾフェノン基がより好ましい。なお、(メタ)アクリロイルは、メタクリロイル又はアクリロイルを意味する。
【0028】
重合体ブロックAを構成しているモノマー単位中において、非架橋性モノマー単位の含有量は、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有するので、60質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。
【0029】
アクリル系ポリマーがA-B-A型のトリブロック構造である場合、重合体ブロックBの両末端に結合している2個の重合体ブロックAは、同一である必要はなく相違していてもよい。即ち、重合体ブロックBの両末端に結合している2個の重合体ブロックAは、これを構成しているモノマー単位の種類及び含有量は同一であっても相違していてもよいし、分子量が同一であっても相違していてもよい。
【0030】
重合体ブロックAを構成している重合体の分子量は、1000以上が好ましく、3000以上がより好ましく、5000以上がより好ましく、5500以上がより好ましい。重合体ブロックAを構成している重合体の分子量は、50000以下が好ましく、30000以下がより好ましく、25000以下がより好ましく、22000以下がより好ましい。重合体ブロックAを構成している重合体の分子量が1000以上であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。重合体ブロックAを構成している重合体の分子量が50000以下であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。
【0031】
A-B-A型のトリブロックポリマーにおいて、重合体ブロックBの両末端に結合している2個の重合体ブロックAの分子量の比は、2.4以下が好ましく、2.2以下がより好ましく、2.0以下がより好ましい。分子量の比が上記範囲内であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。なお、分子量の比は、2個の重合体ブロックA、Aの分子量のうち、大きい分子量を小さい分子量で除した値をいう。
【0032】
なお、本発明において、重合体ブロックAを構成している重合体の分子量は、重合体ブロックA部分重合物のピークトップ分子量と、A-B-A型のトリブロックポリマーのピークトップ分子量から重合体ブロックA-重合体ブロックB部分重合物のピークトップ分子量を引いた値とをいう。
【0033】
A-B-A型のトリブロックポリマーにおいて、重合体ブロックBを構成しているモノマーは、非架橋性であることが好ましい。即ち、重合体ブロックBの重合体ブロックBを構成しているモノマーは、非架橋性モノマーであることが好ましい。重合体ブロックBを構成しているモノマーが架橋性を有していないと、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。
【0034】
A-B-A型のトリブロックポリマーにおいて、重合体ブロックBを構成しているモノマーとしては、特に限定されず、ラジカル重合、カチオン重合又はアニオン重合などの重合反応し得るモノマーが挙げられ、エチレン性不飽和結合を有するモノマーが好ましい。
【0035】
重合体ブロックBを構成しているモノマーとしては、非架橋性モノマーを含むことが好ましい。非架橋性モノマーとしては、例えば、アクリル系モノマーなどが挙げられる。アクリル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)メタクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸などが挙げられ、(メタ)アクリレートが好ましく、アルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。アルキル(メタ)アクリレートは、アルキルアクリレートが好ましい。なお、(メタ)アクリル系モノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、2以上が好ましく、4以上がより好ましい。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、12以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下がより好ましい。アルキル基の炭素数が2以上であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。アルキル基の炭素数が12以下であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。
【0036】
重合体ブロックBを構成しているモノマーは、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有するので、(メタ)アクリル酸を含むことが好ましく、アクリル酸を含むことがより好ましい。
【0037】
重合体ブロックBを構成しているモノマー単位中において、非架橋性モノマー単位の含有量は、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有するので、60質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。
【0038】
重合体ブロックBを構成しているモノマーと、重合体ブロックAを構成しているモノマーとは、重合体ブロックを構成しているモノマーの種類及び/又は含有比率が相違している。
【0039】
A-B-A型のトリブロックポリマーにおいて、重合体ブロックAの総含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が特に好ましい。重合体ブロックAの総含有量が5質量%以上であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。
【0040】
A-B-A型のトリブロックポリマーにおいて、重合体ブロックAの総含有量は、39質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下がより好ましい。重合体ブロックAの総含有量が39質量%以下であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。
【0041】
A-B-A型のトリブロックポリマーにおいて、重合体ブロックBの含有量は、61質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上がより好ましい。重合体ブロックBの総含有量が61質量%以上であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。
【0042】
A-B-A型のトリブロックポリマーにおいて、重合体ブロックBの含有量は、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がより好ましい。重合体ブロックBの総含有量が95質量%以下であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。
【0043】
重合体ブロックBを構成している重合体の分子量は、5000以上が好ましく、40000以上がより好ましく、50000以上がより好ましい。重合体ブロックBを構成している重合体の分子量は、400000以下が好ましく、240000以下がより好ましく、150000以下がより好ましい。重合体ブロックBを構成している重合体の重量平均分子量が5000以上であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。重合体ブロックBを構成している重合体の分子量が400000以下であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。
【0044】
なお、本発明において、重合体ブロックBを構成している重合体の分子量は下記の要領で算出された値をいう。リビング重合を活性化しうる構造(例えば、交換連鎖反応部位など)を1分子当たり1個有する化合物を用いて重合されたA-B-A型のトリブロックポリマーの場合、重合体ブロックBを構成している重合体の分子量は、重合体ブロックA-重合体ブロックB部分重合物のピークトップ分子量から、重合体ブロックA部分重合物のピークトップ分子量を引いた値をいう。リビング重合を活性化しうる構造(例えば、交換連鎖反応部位など)を1分子当たり2個有する化合物を用いて重合されたA-B-A型のトリブロックポリマーの場合、重合体ブロックBを構成している重合体の分子量は、A-B-A型のトリブロックポリマーのピークトップ分子量から重合体ブロックA部分重合物のピークトップ分子量を引いた値をいう。
【0045】
A-B-A型のトリブロックポリマーにおいて、重合体ブロックAの分子量と重合体ブロックBの分子量との比(重合体ブロックAの分子量/重合体ブロックBの分子量)は、0.03以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.08以上がより好ましい。A-B-A型のトリブロックポリマーにおいて、重合体ブロックAの分子量と重合体ブロックBの分子量との比(重合体ブロックAの分子量/重合体ブロックBの分子量)は、0.32以下が好ましく、0.22以下がより好ましく、0.17以下が特に好ましい。重合体ブロックAの分子量と重合体ブロックBの分子量との比が0.03以上であると、基材層と粘着剤層との間の界面剥離を抑制して粘着部材の優れた粘着性を維持することができると共に、粘着剤層自身も高温及び高湿度下において優れた粘着性を維持することができる。重合体ブロックAの分子量と重合体ブロックBの分子量との比が0.32以下であると、粘着部材の粘着性が向上する。なお、A-B-A型のトリブロックポリマーにおいて、重合体ブロックAの分子量は、2個の重合体ブロックAの分子量の相加平均値(算術平均値)をいう。
【0046】
A-B-A型のトリブロックポリマーの重量平均分子量(Mw)は、10000以上が好ましく、50000以上がより好ましく、70000以上がより好ましく、80000以上が特に好ましい。A-B-A型のトリブロックポリマーの重量平均分子量(Mw)は、500000以下が好ましく、300000以下がより好ましく、250000以下がより好ましく、200000以下が特に好ましい。重量平均分子量(Mw)が10000以上であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。重量平均分子量(Mw)が500000以下であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。
【0047】
A-B-A型のトリブロックポリマーの数平均分子量(Mn)は、30000以上が好ましく、40000以上がより好ましく、50000以上がより好ましい。A-B-A型のトリブロックポリマーの数平均分子量(Mn)は、300000以下が好ましく、150000以下がより好ましく、130000以下がより好ましく、110000以下がより好ましく、90000以下が特に好ましい。数平均分子量(Mn)が30000以上であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。数平均分子量(Mn)が150000以下であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。
【0048】
A-B-A型のトリブロックポリマーの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.0以下がより好ましい。分散度が3.0以下であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。
【0049】
A-B-A型のトリブロックポリマーの重合体ブロックを構成している重合体の分子量、重合体ブロックA部分重合物、重合体ブロックA-重合体ブロックB部分重合物、並びに、A-B-A型のトリブロックポリマーの重量平均分子量及び数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。具体的には、A-B-A型のトリブロックポリマー0.01gを採取し、採取したA-B-A型のトリブロックポリマーを試験管に供給した上で、試験管にTHF(テトラヒドロフラン)を加えてA-B-A型のトリブロックポリマーを500倍に希釈し、フィルタリングを行って、測定試料を作製する。
【0050】
この測定試料を用いてGPC法によって、A-B-A型のトリブロックポリマーの重合体ブロックを構成している重合体の分子量、並びに、A-B-A型のトリブロックポリマーの重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを測定することができる。
【0051】
A-B-A型のトリブロックポリマーの重合体ブロックを構成している重合体の分子量、並びに、A-B-A型のトリブロックポリマーの重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 Waters社製 ACQUITY APCシステム
測定条件 カラム:Waters社製 HSPgel(TM)HR MB-M
移動相:テトラヒドロフラン使用 0.5mL/分
検出器:RI検出器
標準物質:ポリスチレン
SEC温度:40℃
【0052】
A-B-A型のトリブロックポリマーにおいて、硬質成分は、重合体ブロックA及びBのうちのガラス転移温度の高い重合体ブロックによって主に構成される一方、軟質成分は、重合体ブロックA及びBのうちのガラス転移温度の低い重合体ブロックによって主に構成される。
【0053】
硬質成分を主に重合体ブロックAによって構成し且つ軟質成分を主に重合体ブロックBによって構成することによって、A-B-A型のトリブロックポリマーに適度な硬さを付与しつつ、A-B-A型のトリブロックポリマーを架橋させて得られる架橋体の重合体ブロックA及びB間の極性差に起因した層分離構造を良好に形成することができ、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。
【0054】
重合体ブロックAを構成する非架橋性モノマーとして飽和脂肪族環構造を有するモノマー(好ましくは、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート及びアダマンチル(メタ)アクリレート、より好ましくは、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及び4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート)を含有させることによって、硬質成分を高い比率で重合体ブロックAから構成することができ、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。
【0055】
A-B-A型のトリブロックポリマーにおける130℃での溶融粘度は、10Pa・s以上が好ましく、30Pa・s以上がより好ましく、40Pa・s以上がより好ましい。A-B-A型のトリブロックポリマーにおける130℃での溶融粘度は、100Pa・s以下が好ましく、90Pa・s以下がより好ましく、85Pa・s以下がより好ましい。A-B-A型のトリブロックポリマーにおける130℃での溶融粘度が10Pa・s以上であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。A-B-A型のトリブロックポリマーにおける130℃での溶融粘度が100Pa・s以下であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた塗工性及び粘着性を有する。
【0056】
なお、A-B-A型のトリブロックポリマーにおける130℃での溶融粘度は、A-B-A型のトリブロックポリマーを130℃に維持した状態でB型粘度計及びローターNo.4~26を用いて回転数10rpmの条件下にて測定した値とする。例えば、下記に示した測定装置を用意する。A-B-A型のトリブロックポリマー13g採取し、Thermosel内に装着するアルミ筒に投入する。温度を130℃に設定してA-B-A型のトリブロックポリマーを溶融する。ローターNo.4-29を用いて30分間に亘って溶融粘度の測定を行なう。30分間の測定後の数値を読み取り、130℃における溶融粘度とする。
測定器:DV-E Viscometer(Brookfield社製)
Thermosel(Brookfield社製)
【0057】
A-B-A型のトリブロックポリマーのガラス転移温度Tgは、-70℃以上が好ましく、-50℃以上がより好ましく、-40℃以上がより好ましい。A-B-A型のトリブロックポリマーのガラス転移温度Tgは、0℃以下が好ましく、-10℃以下がより好ましい。A-B-A型のトリブロックポリマーのガラス転移温度Tgが-70℃以上であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。A-B-A型のトリブロックポリマーのガラス転移温度Tgが0℃以下であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。
【0058】
A-B-A型のトリブロックポリマーのガラス転移温度Tgは、回転型レオメータにおける動的粘弾性測定において、周波数1Hz、昇温速度5℃/分、及び、測定温度領域-50~150℃の測定条件下にて測定された正接損失tanδの極大値を示す温度とする。1mmの厚みとしたA-B-A型のトリブロックポリマーを用い、例えば、下記の条件下にて、A-B-A型のトリブロックポリマーのガラス転移温度を測定する。
測定機器:回転型レオメータ Discovery HR 10(ティー・エイ・インスツルメント社製)
ジオメトリ:φ8mmクロスハッチ/φ25mmパラレルプレート
周波数:1Hz
昇温速度:5℃/分
測定温度領域:-50~150℃
【0059】
次に、ポリマーの製造方法について説明する。ポリマーの製造方法は、特に限定されず、例えば、モノマーを汎用のラジカル重合開始剤の存在下にて汎用の要領でラジカル重合させる製造方法などが挙げられる。
【0060】
アクリル系ポリマーがA-B-A型のトリブロックポリマーである場合、A-B-A型のトリブロックポリマーの製造方法を説明する。A-B-A型のトリブロックポリマーは、汎用の重合方法を用いて製造することができるが、リビング重合を用いて製造することが好ましい。
【0061】
リビング重合は、例えば、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合、リビングアニオン重合が挙げられるが、高い汎用性と重合反応の安全性の点からリビングラジカル重合が好ましい。
【0062】
リビングラジカル重合法としては、例えば、イニファーター重合、ニトロキシド介在重合(NMP)、遷移金属触媒による原子移動ラジカル付加重合(ATRP)、ジチオエステル化合物による可逆的連鎖移動重合(RAFT)、有機テルル化合物による重合(TERP)、有機化合物触媒による可逆移動触媒重合(RTCP)、可逆配位媒介重合(RCMP)などが挙げられる。
【0063】
特に、可逆的連鎖移動重合(RAFT)は、(1)モノマー汎用性が高いこと、(2)酸素及び光に対して極端な反応性低下を生じないこと、(3)極端な低温又は高温でなくても反応が進行することから簡便な重合反応環境で実施可能でき高い生産性を有すること、(4)金属及びハロゲンなどの毒物を使用しないこと、(5)十分な分子量を有するA-B-A型のトリブロックポリマーを製造できることから好ましい。
【0064】
可逆的連鎖移動重合(RAFT)を実施するために用いられるジチオエステル化合物としては、交換連鎖反応性を有するジチオエステル化合物であれば、特に限定されず、例えば、ジチオベンゾエート化合物、トリチオカーボネート化合物、ジチオカルバメート化合物、キサンテート化合物などが挙げられ、トリチオカーボネート化合物が好ましい。
【0065】
トリチオカーボネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸、4-{[(2-カルボキシエチル)スルファニルチオカルボニル]スルファニル}プロパン酸、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、4-[(2-カルボキシエチルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]-4-シアノペンタン酸などの交換連鎖反応部位を1個のみ有するトリチオカーボネート化合物、S,S-ジベンジルトリチオカーボネート、ビス{4-[エチル-(2-ヒドロキシエチル)カルバモイル]ベンジル}トリチオカーボネートなどの交換連鎖反応部位を2個有するトリチオカーボネート化合物など挙げられ、交換連鎖反応部位を1個のみ有するトリチオカーボネート化合物が好ましく、2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸がより好ましい。
【0066】
トリチオカーボネート化合物を用いて製造されるA-B-A型のトリブロックポリマーにおいて、トリチオカーボネート化合物の化学構造に起因して、A-B-A型のトリブロックポリマー中におけるトリチオカーボネート化合物残基の導入位置が異なる。トリチオカーボネート化合物が一個の交換連鎖反応部位のみを有している場合、トリチオカーボネート化合物残基は、A-B-A型のトリブロックポリマーを構成している重合体ブロックの末端に導入される。一方、トリチオカーボネート化合物が2個の交換連鎖反応部位を有している場合、トリチオカーボネート化合物残基は、A-B-A型のトリブロックポリマーを構成している重合体ブロックの内部に導入される。そして、交換連鎖反応部位を1個のみ有するトリチオカーボネート化合物を用いて可逆的連鎖移動重合(RAFT)によって製造されたA-B-A型のトリブロックポリマーは、熱や光によってトリチオカーボネート化合物残基が分解しても、A-B-A型のトリブロックポリマー構造自体は分解されないことから、熱安定性及び紫外線架橋反応性に更に優れている。
【0067】
A-B-A型のトリブロックポリマーは、上述の通り、ジチオエステル化合物による可逆的連鎖移動重合(RAFT)により製造されることが好ましい。可逆的連鎖移動重合(RAFT)の重合形態としては、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などが挙げられ、溶液重合が好ましい。なお、A-B-A型のトリブロックポリマーを溶液重合によって製造する場合、系内の溶剤を脱処理する必要がある。
【0068】
A-B-A型のトリブロックポリマーを製造するには多段階重合が行われる。例えば、交換連鎖反応部位を1個のみ有するジチオエステル化合物を用いて可逆的連鎖移動重合(RAFT)を行う場合、先ず、重合体ブロックAを構成するモノマーを、ジチオエステル化合物を用いて(ジチオエステル化合物の存在下にて)十分に重合させて、重合体ブロックA部分重合物を得る(1段階目重合)。次に、重合反応系内に重合体ブロックBを構成するモノマーを供給して十分に重合させ、重合体ブロックA-重合体ブロックB部分重合物を得る(2段階目重合)。更に、重合反応系内に重合体ブロックAを構成するモノマーを供給して十分に重合させて、重合体ブロックBの両末端に重合体ブロックAが結合してなるA-B-A型のトリブロックポリマーを得ることができる。
【0069】
又、交換連鎖反応部位を2個有するジチオエステル化合物を用いて可逆的連鎖移動重合(RAFT)を行う場合、重合体ブロックAを構成するモノマーを、ジチオエステル化合物を用いて(ジチオエステル化合物の存在下にて)十分に重合させて、重合体ブロックA部分重合物を得る(1段階目重合)。次に、重合反応系内に重合体ブロックBを構成するモノマーを供給し重合する(2段階目重合)ことによって、重合体ブロックA部分重合物の中間部に重合体ブロックBを形成し、A-B-A型のトリブロックポリマーを得ることができる。
【0070】
[トリアジン系開始剤]
紫外線硬化型ポリマー組成物は、トリアジン系開始剤を含有している。トリアジン系開始剤は、水素引き抜き型ラジカル重合開始剤である。トリアジン系開始剤においては、紫外線の照射によりトリアジン系開始剤中の炭素-ハロゲン原子結合が開裂してハロゲン原子ラジカルが生じ、このハロゲン原子ラジカルにより水素引抜反応が発生する。水素引き抜き型ラジカル重合開始剤は、ポリマーから水素を引き抜いてラジカルを生成して架橋反応を開始させることから、ポリマーが架橋性を有する基を含有していなくても、ポリマーを架橋させることができる。
【0071】
紫外線硬化型ポリマー組成物は、トリアジン系開始剤を含有していることから、UV-A領域の長い波長を有する紫外線によって良好に硬化することができ、優れた粘着性を発現する。そして、UV-A領域の長い波長を有する紫外線は、紫外線硬化型ポリマー組成物の内部の深くまで透過し、紫外線硬化型ポリマー組成物は深部硬化性に優れている。
【0072】
トリアジン系開始剤としては、特に限定されず、例えば、2-[2-(フラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[(4-メトキシフェニル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[(3,4-ジメトキシフェニル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンなどのトリクロロ基を有するトリアジン系開始剤、2-[2-(フラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリブロモメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリブロモメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[(4-メトキシフェニル)ビニル]-4,6-ビス(トリブロモメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[(3,4-ジメトキシフェニル)ビニル]-4,6-ビス(トリブロモメチル)-1,3,5-トリアジンなどのトリブロモ基を有するトリアジン系開始剤などが挙げられ、紫外線硬化型ポリマー組成物の深部硬化性が向上するので、トリクロロ基を有するトリアジン系開始剤が好ましく、2-[(4-メトキシフェニル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンがより好ましい。なお、光ラジカル重合開始剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0073】
紫外線硬化型ポリマー組成物中におけるトリアジン系開始剤の含有量は、ポリマー100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.4質量部以上がより好ましい。紫外線硬化型ポリマー組成物中におけるトリアジン系開始剤の含有量は、ポリマー100質量部に対して2質量部以下が好ましく、1.9質量部以下がより好ましく、1.8質量部以下がより好ましく、1.7質量部以下がより好ましく、1.6質量部以下がより好ましく、1.5質量部以下がより好ましく、1.4質量部以下がより好ましく、1.3質量部以下がより好ましい。紫外線硬化型ポリマー組成物中におけるトリアジン系開始剤の含有量が0.1質量部以上であると、紫外線硬化型ポリマー組成物の深部硬化性が向上する。紫外線硬化型ポリマー組成物中におけるトリアジン系開始剤の含有量が2質量部以下であると、紫外線硬化型ポリマーを粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた粘着性を有する。 となり好ましい。
【0074】
[ハロゲン化水素捕捉剤]
紫外線硬化型ポリマー組成物は、ハロゲン化水素捕捉剤を含有している。ハロゲン化水素捕捉剤は、紫外線硬化型ポリマー組成物への紫外線照射時に、トリアジン系開始剤の炭素-ハロゲン原子結合の開裂によって生じるハロゲン原子ラジカルが水素を引き抜くことによって生じるハロゲン化水素を捕捉し、硬化後の紫外線硬化型ポリマー組成物中のトリアジン系開始剤の経時分解物(ハロゲン化水素)の量を低減することができる。トリアジン系開始剤の分解物は、金属を腐食させる原因となるが、上述のように、硬化後の紫外線硬化型ポリマー組成物中のトリアジン系開始剤の含有量は低減化されており、硬化後の紫外線硬化型ポリマー組成物に、ステンレスや銅などの金属に接触した場合にあっても金属の腐食を効果的に低減又は防止することができる(耐金属腐食性)。
【0075】
ハロゲン化水素捕捉剤は、トリアジン系開始剤の分解物であるハロゲン化水素を捕捉することができれば、特に限定されないが、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に、粘着剤が優れた耐金属腐食性を有しながら優れた粘着性を有しているので、有機系のハロゲン化水素捕捉剤が好ましく、エポキシ基を有するハロゲン化水素捕捉剤がより好ましく、エポキシ化された植物油がより好ましい。なお、ハロゲン化水素補足剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。「有機系のハロゲン化水素捕捉剤」とは、ハロゲン化水素捕捉剤中、炭素原子の総質量が50質量%以上であるハロゲン化水素捕捉剤をいう。
【0076】
エポキシ基を有するハロゲン化水素捕捉剤について、分子中に含まれるエポキシ基数は、3個以上が好ましい。エポキシ基を有するハロゲン化水素捕捉剤について、分子中に含まれるエポキシ基数は、20個以下が好ましい。分子中に含まれるエポキシ基数が3個以上であると、紫外線硬化型ポリマー組成物が優れた耐金属腐食性を有する。分子中に含まれるエポキシ基数が20個以下であると、紫外線硬化型ポリマーを粘着剤として用いた場合に、粘着剤が優れた粘着性を有する。
【0077】
エポキシ化された植物油としては、特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁(アマニ)油、エポキシ化米糠油、エポキシ化桐油、エポキシ化ごま油、エポキシ化やし油、エポキシ化ひまし油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化コーン油、エポキシ化綿実油、エポキシ化パーム油、エポキシ化ひまわり油、エポキシ化アーモンド油、エポキシ化カシューナッツ油、エポキシ化ヘーゼルナッツ油、エポキシ化松の実油などが挙げられ、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油が好ましい。その他の有機系のハロゲン化水素捕捉剤としてはホスファイト系化合物があり、例えば、アルカノール(C=12~16)・4,4’-イソプロピリデンジフェノール・トリフェニルホスファイト重縮合物などが挙げられる。
【0078】
エポキシ化された植物油は、特にアクリル系ポリマーとの相溶性に優れており、アクリル系ポリマーの凝集力の低下(粘着性の低下)を防止しながら、アクリル系ポリマー中に良好に分散させることができ、紫外線硬化型ポリマー組成物中において生じるハロゲン化水素を効果的に捕捉し、硬化後の紫外線硬化型ポリマー組成物中のトリアジン系開始剤の経時分解物(ハロゲン化水素)の量を低減することができる。
【0079】
ハロゲン化水素捕捉剤のエポキシ当量は、100以上が好ましく、110以上がより好ましく、120以上がより好ましく、130以上がより好ましく、140以上がより好ましく、150以上がより好ましく、160以上がより好ましい。ハロゲン化水素捕捉剤のエポキシ当量は、300以下が好ましく、290以下がより好ましく、280以下がより好ましく、270以下がより好ましく、260以下がより好ましい。ハロゲン化水素捕捉剤のエポキシ当量が100以上であると、紫外線硬化型ポリマー組成物が優れた耐金属腐食性を有する。ハロゲン化水素捕捉剤のエポキシ当量が300以下であると、紫外線硬化型ポリマー組成物が優れた耐金属腐食性を有する。なお、ハロゲン化水素捕捉剤のエポキシ当量は、JIS K7236に準拠して測定された値をいう。
【0080】
ハロゲン化水素捕捉剤のホスファイト当量は、400以上が好ましく、420以上がより好ましく、450以上がより好ましい。ハロゲン化水素捕捉剤のホスファイト当量は、650以下がより好ましく、630以下がより好ましく、610以下がより好ましい。ハロゲン化水素捕捉剤のホスファイト当量が400以上であると、紫外線硬化型ポリマー組成物が優れた耐金属腐食性を有する。ハロゲン化水素捕捉剤のホスファイト当量が650以上であると、紫外線硬化型ポリマー組成物が優れた耐金属腐食性を有する。ハロゲン化水素捕捉剤のホスファイト当量は、ハロゲン化水素捕捉剤の分子量をホスファイト基数(分子中のホスファイト基の数)で除して得られた値をいう。なお、ホスファイト基とは、下記式(1)で示される原子団をいう。式(1)中、*1、*2、及び、*3は結合手であって単結合を意味する。
【0081】
式(1)で示されるホスファイト基の結合手*1~*3には、水素原子などの一価の原子、又は、一価の原子団(例えば、フェニル基、アルキル基、その他の原子の集群など)が結合している。なお、原子団の価数は、この原子団が結合し得る他の原子又は原子団の数(原子価)を意味する。式(1)において、結合手*1及び*2には、アルキル基が結合していることが好ましく、炭素数が12~16のアルキル基が結合していることがより好ましい。
【0082】
【化1】
【0083】
ハロゲン化水素捕捉剤は、環状エーテル系化合物を含有していることが好ましい。環状エーテル系化合物を含有していると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に、粘着剤が優れた耐金属腐食性を有しながら優れた粘着性を有している。
【0084】
環状エーテル系化合物は、分子内に環状構造を有し且つこの環状構造のなかにエーテル結合(-C-O-C-)を含む化合物をいう。環状エーテル系化合物中に含まれている環状エーテル構造としては、特に限定されず、例えば、エチレンオキシド構造(エポキシ構造)、オキセタン構造、テトラヒドロフラン構造、ジオキサン構造などが挙げられ、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に、粘着剤が優れた耐金属腐食性を有しながら優れた粘着性を有しているので、エチレンオキシド構造(エポキシ構造)が好ましい。
【0085】
ハロゲン化水素捕捉剤中において、環状エーテル系化合物の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がより好ましく、99質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。環状エーテル系化合物の含有量が50質量%以上であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に、粘着剤が優れた耐金属腐食性を有しながら優れた粘着性を有している。
【0086】
紫外線硬化型ポリマー組成物において、ハロゲン化水素捕捉剤の含有量は、ポリマー100質量部に対して0.1質量以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.8質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がより好ましく、2質量部以上がより好ましく、2.5質量部以上がより好ましい。ハロゲン化水素捕捉剤の含有量は、ポリマー100質量部に対して10質量部以下がより好ましく、8質量部以下がより好ましく、7質量部以下がより好ましく、6質量部以下がより好ましく、5.5質量部以下がより好ましい。ハロゲン化水素捕捉剤の含有量が0.1質量以上であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に粘着剤が優れた耐金属腐食性を有する。ハロゲン化水素捕捉剤の含有量が10質量部以下であると、紫外線硬化型ポリマーは優れた紫外線硬化性を有している。
【0087】
紫外線硬化型ポリマー組成物において、ハロゲン化水素捕捉剤の含有量とトリアジン系開始剤の含有量との比(ハロゲン化水素捕捉剤の質量/トリアジン系開始剤の質量)は、3以上が好ましい。ハロゲン化水素捕捉剤の含有量とトリアジン系開始剤の含有量との比(ハロゲン化水素捕捉剤の質量/トリアジン系開始剤の質量)は、6以下が好ましい。ハロゲン化水素捕捉剤の含有量とトリアジン系開始剤の含有量との比(ハロゲン化水素捕捉剤の質量/トリアジン系開始剤の質量)が上記範囲内であると、紫外線硬化型ポリマー組成物を粘着剤として用いた場合に、粘着剤が優れた耐金属腐食性を有しながら優れた粘着性を有している。
【0088】
[添加剤]
紫外線硬化型ポリマー組成物は、その物性を阻害しない範囲内において、可塑剤、反応性可塑剤、接着性付与樹脂、酸化防止剤、重合禁止剤、トリアジン系開始剤を除く紫外線開始剤、微粒子などを含有してもよい。
【0089】
[紫外線硬化型ポリマー組成物]
紫外線硬化型ポリマー組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、ポリマー、トリアジン系開始剤及びハロゲン化水素捕捉剤に、必要に応じて添加剤を加えて加熱しながら溶融混合することによって紫外線硬化型ポリマー組成物を製造することができる。
【0090】
紫外線硬化型ポリマー組成物は、被着体上に塗工された後、紫外線硬化型ポリマー組成物に紫外線、好ましくは、UV-A領域の紫外線を照射されることによって、ポリマーが架橋されて粘着性を発現する。
【0091】
紫外線硬化型ポリマー組成物に架橋構造を導入して硬化させて得られた架橋ポリマーは、優れた粘着性を有している。紫外線硬化型ポリマー組成物は、溶剤を加えることなく、適度な溶融粘度を有しており、優れた塗工性を有し、ホットメルト粘着剤として好適に用いることができる。
【0092】
そして、紫外線硬化型ポリマー組成物は、トリアジン系開始剤を含んでいることから、UA-A領域の長い波長を有する紫外線によっても優れた硬化性を有していると共に、UV-A領域の長い波長を有する紫外線は、紫外線硬化型ポリマー組成物の深くまで透過し、紫外線硬化型ポリマー組成物の深部まで良好に硬化させることができる。
【0093】
従って、紫外線硬化型ポリマー組成物によれば、厚み方向に均質で且つ厚みの厚い粘着剤層を容易に製造することができる。
【0094】
また、紫外線硬化型ポリマー組成物は、ハロゲン化水素捕捉剤を含有していることから、紫外線硬化型ポリマー組成物の架橋時に生じ、金属の腐食の原因となるトリアジン系開始剤の分解物をハロゲン化水素捕捉剤によって良好に捕捉し、又は、硬化後の紫外線硬化型ポリマー組成物中のトリアジン系開始剤の経時分解物(ハロゲン化水素)の量を低減することができ、紫外線硬化型ポリマー組成物を硬化させて得られる架橋ポリマーに金属が接触した場合にあっても金属に腐食が生じることを低減又は防止することができ、被着体を良好な状態に長期間に亘って良好に維持することができる。
【発明の効果】
【0095】
本発明の紫外線硬化型ポリマー組成物は、UV-A領域の紫外線のように長波長の紫外線に対して優れた反応性を有して容易に架橋(硬化)し且つ耐金属腐食性を有していると共に、架橋後に優れた粘着性を発現する。
【発明を実施するための形態】
【0096】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例0097】
実施例及び比較例において、下記の化合物を用いた。
【0098】
[ポリマー1の合成]
攪拌機、冷却管、温度計及び窒素ガス導入口を備えたセパラブルフラスコに、シクロヘキシルアクリレートと、トリチオカーボネート化合物として2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸と、溶剤として酢酸エチルとをそれぞれ表1に示した配合量ずつ供給し、攪拌して反応液を作製した。
【0099】
セパラブルフラスコ内を窒素ガスで置換した後、ウォーターバスを用いて反応液を60℃に保持した。次に、セパラブルフラスコ内の反応液に重合開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を表1に示した配合量供給して可逆的連鎖移動重合(RAFT)を開始した。反応液を6時間に亘って60℃に保持し、重合体ブロックA部分重合物を得た(1段階目)。
【0100】
重合体ブロックA部分重合物を含む反応液に、n-ブチルアクリレート及びアクリル酸と、溶剤として酢酸エチルとをそれぞれ表1に示した配合量ずつ供給した。反応液を6時間に亘って60℃に保持して可逆的連鎖移動重合(RAFT)を行い、重合体ブロックA-重合体ブロックB部分重合物を得た(2段階目)。
【0101】
重合体ブロックA-重合体ブロックB部分重合物を含む反応液に、シクロヘキシルアクリレートと、溶剤として酢酸エチルとをそれぞれ表1に示した配合量供給した。反応液を6時間に亘って60℃に保持して可逆的連鎖移動重合(RAFT)を行った後、酢酸エチルを除去してポリマー1を得た(3段階目)。得られたポリマー1は、重合体ブロックBの両末端に重合体ブロックAが結合してなるA-B-A型トリブロックポリマーであった。得られたポリマー1の数平均分子量、重量平均分子量、分散度及び130℃における溶融粘度を表1に示した。
【0102】
[ポリマー2の合成]
攪拌機、冷却管、温度計及び窒素ガス導入口を備えたセパラブルフラスコに、n-ブチルアクリレートと、2-エチルヘキシルアクリレートと、アクリル酸と、連鎖移動剤としてn-ドデシルメルカプタンと、溶剤として酢酸エチルとをそれぞれ表2に示した配合量ずつ供給し、攪拌して反応液を作製した。
【0103】
セパラブルフラスコ内を窒素ガスで置換した後、ウォーターバスを用いて反応液を60℃に保持した。次に、セパラブルフラスコ内の反応液に重合開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を表2に示した配合量供給してフリーラジカル重合を開始した。反応液を6時間に亘って60℃に保持した後、酢酸エチルを除去してポリマー2を得た。得られたポリマー2の数平均分子量、重量平均分子量、分散度及び130℃における溶融粘度を表2に示した。
【0104】
[トリアジン系開始剤]
・2-(p-メトキシフェニル)-4,6-(ビス)トリクロロメチル-1,3,5-トリアジン
・2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン
【0105】
[ハロゲン化水素捕捉剤(塩化水素捕捉剤)]
・エポキシ化大豆油(ADEKA社製 商品名「アデカサイザーO-130P」、エポキシ当量:239、一分子当りのエポキシ基数:3個以上)
・エポキシ化亜麻仁油(ADEKA社製 商品名「アデカサイザーO-180A」エポキシ当量:188、一分子当りのエポキシ基数:3個以上)
・特殊ホスファイト[アルカノール(C=12~16)・4,4’-イソプロピリデンジフェノール・トリフェニルホスファイト重縮合物(ADEKA社 商品名「アデカスタブ1500」)、ホスファイト当量:556]
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製 商品名「jER―828」)
エポキシ当量:189、一分子当りのエポキシ基数:2個以下)
【0106】
(実施例1~15、比較例1~2)
ポリマー、トリアジン系開始剤及びハロゲン化水素捕捉剤を表3に示す配合量ずつ容器に供給し、130℃に加熱の上、溶融混合して紫外線硬化型ポリマー組成物を得た。
【0107】
得られた紫外線硬化型ポリマー組成物について、耐SUS腐食性、UV-A反応性、及び、粘着性を下記の要領で測定し、その結果を表3に示した。
【0108】
(試験シートの作製)
紫外線硬化型ポリマー組成物を130℃に加熱した上で、50μmの厚みを有するポリエチレンテレフタレートフィルム上に50μmの厚みとなるように塗工し、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に紫外線硬化型ポリマー組成物層を形成した。
【0109】
ポリエチレンテレフタレートフィルム上の紫外線硬化型ポリマー組成物層に、LED-紫外線ランプ(シーシーエス社製 装置本体名「LSS-B10」、照射器名「HLDL-120U6-NWPSC」)を用いて、365nmの単一波長の紫外線(UV-A)を照射強度530mW/cm2及び積算光量3000mJ/cm2にて照射し、紫外線硬化型ポリマー組成物を架橋、硬化させて架橋ポリマー層を生成して試験シートを作製した。
【0110】
(耐SUS腐食性1)
SUS304板を用意し、このSUS304板の表面を#240の耐水紙やすりで研磨した後、ヘキサンとアセトンとが容積比3:1の割合で混合された混合溶媒で払拭した。
【0111】
SUS304板の研磨面上に、試験シートをその架橋ポリマー層が対向するように貼着して積層体を作製した。積層体を23℃及び相対湿度50%の環境下にて4日放置した。積層体の試験シートをSUS304板から剥離した。SUS304板における試験シートが貼着されていた面(貼着面)について、腐食が生じていた面積S1を測定した。SUS304板の研磨面のうち、試験シートが貼着されていた面積をS0とした。貼着面の腐食割合を下記式に基づいて算出し、下記基準に基づいて評価した。
貼着面の腐食割合(%)=100×S1/S0
A:貼着面の腐食割合が0%であった。
B:貼着面の腐食割合が0%を超え且つ30%未満であった。
C:貼着面の腐食割合が30%以上であった。
【0112】
(耐SUS腐食性2)
耐SUS腐食性1と同様の要領で積層体を作製し、積層体を23℃及び相対湿度50%の環境下にて4日放置した後、130℃に設定された恒温槽に2時間放置した。貼着面の腐食割合を耐SUS腐食性1と同様の要領で測定し、同様の基準にて評価した。
【0113】
(ゲル分率)
上述の要領で作製された試験シートの架橋ポリマー層から約0.2g(Xgとする)の試験体を採取してガラス瓶に供給した。ガラス瓶内にテトラヒドロフラン30gを投入し、一晩放置した。
【0114】
しかる後、振とう器を用いてガラス瓶を2時間に亘って振とうし、試験体がテトラヒドロフランによって充分膨潤した状態とした。200メッシュのSUS金網上に、テトラヒドロフランによって膨潤した試験体をろ取した。SUS金網上にろ取した試験体を80℃に設定したオーブン内に2時間放置し、試験体内のテトラヒドロフランを揮発させた。乾燥した試験体の質量(Ygとする)を測定し、下記式に基づいてゲル分率を算出した。
ゲル分率(質量%)=100×Y/X
【0115】
[粘着性]
(対SUSせん断保持力)
上述の要領で作製された試験シートをカッターを用いて幅25mm、長さ100mmの短冊状(長方形状)に切断して試験片を作製した。
【0116】
SUS304板を用意し、このSUS304板の表面を#240の耐水紙やすりで研磨した後、ヘキサンとアセトンとが容積比3:1の割合で混合された混合溶媒で払拭した。
【0117】
試験片をその長さ方向の端部25mm部分をSUS304板の研磨面上に架橋ポリマー層によって貼着して積層体を作製した。積層体におけるSUS304板からはみ出した試験片部分をフックに取り付けた。この状態において、試験片及びSUS304板は、試験片の下端部25mm部分がSUS304板の上端部25mmに貼着した状態となっており、試験片及びSUS304板は共にその長さ方向が垂直に指向した状態に垂れ下がった状態となっていた。
【0118】
積層体をフックに取り付けた状態で80℃に設定されたオーブン内に投入し、試験片が80℃に保持されるようにすると共に、積層体のSUS304板に1kgの分銅を掛け、試験片とSUS304板との貼着面に1kgのせん断応力がかかるようにした。下記基準に基づいて評価した。
A:試験開始1時間経過後もSUS304板は落下しなかった。
B:試験開始10分~1時間の間にSUS304板が落下した。
C:試験開始10分未満のうちにSUS304板が落下した。
【0119】
(対SUS剥離強度)
上述の要領で作製された試験シートをカッターを用いて幅25mm、長さ130mmの短冊状(長方形状)に切断して試験片を作製した。
【0120】
SUS304板を用意し、このSUS304板の表面を#240の耐水紙やすりで研磨した後、ヘキサンとアセトンとが容積比3:1の割合で混合された混合溶媒で払拭した。
【0121】
試験片をその長さ方向の端部50mm部分をSUS304板の研磨面上に架橋ポリマー層によって貼着して積層体を作製した。
【0122】
得られた積層体を卓上形精密万能試験機(島津製作所社製 商品名「オートグラフAGS-100NX」)を用いてSUS304板及び試験片の未貼着部分を上下それぞれに固定した上で、300mm/minの速度で180°の角度で引張試験を行って、対SUS剥離強度を測定した。剥離した全距離測定時の平均値を測定値(N/25mm)とした。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】