(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061805
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】滑り出し窓装置
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20230425BHJP
E06B 3/50 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B3/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171962
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 滋
(74)【代理人】
【識別番号】100145838
【弁理士】
【氏名又は名称】畑添 隆人
(72)【発明者】
【氏名】野澤 順一
(72)【発明者】
【氏名】杉本 大季
【テーマコード(参考)】
2E014
2E239
【Fターム(参考)】
2E014AA03
2E014GB01
2E014GB02
2E239CA02
2E239CA22
2E239CA26
2E239CA28
2E239CA32
2E239CA44
2E239CA62
(57)【要約】
【課題】
滑り出し窓装置において、窓開口部全閉状態において上下に隣接する障子の召し合わせ部の防火性能を向上させる。
【解決手段】
上枠2と下枠3と左右の縦枠4、5からなり、窓開口部を形成する窓枠と、窓枠に上下方向に連設され、窓開口部を開閉する複数の障子1と、からなる滑り出し窓装置において、窓開口部全閉状態では、上側に位置する障子1の下框7と下側に位置する障子1の上框6とが密接して召し合わせ部Aが形成され、召し合わせ部Aを形成する下框7と上框6の少なくとも一方には、幅方向に亘って熱膨張耐火部材620が設けてある。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠と下枠と左右の縦枠からなり、窓開口部を形成する窓枠と、
窓枠に上下方向に連設され、窓開口部を開閉する複数の障子と、
からなる滑り出し窓装置において、
窓開口部全閉状態では、上側に位置する障子の下框と下側に位置する障子の上框とが密接して召し合わせ部が形成され、
前記召し合わせ部を形成する下框と上框の少なくとも一方には、幅方向に亘って熱膨張耐火部材が設けてある、
滑り出し窓装置。
【請求項2】
前記下框及び前記上框はアルミ型材から形成され、
前記召し合わせ部には、前記熱膨張耐火部材が面する閉塞空間が形成されており、
前記閉塞空間の室内側部位は、前記下框、前記上框の一方あるいは両方に設けた樹脂製の室内側気密片によって閉塞されており、
前記閉塞空間の室外側部位には、前記下框の室外側部位に一体形成された室外側垂下片が、前記上框の室外側見付部の上端部位の室外側に位置して当該上端部位に対向することで相じゃくり構造が形成されており、
前記熱膨張耐火部材は、前記閉塞空間の室内側に寄った部位に面している、
請求項1に記載の滑り出し窓装置。
【請求項3】
前記下框は、室内側見付部と、室外側見付部と、下面部と、を備え、前記室内側見付部の下端には、前記下面部よりも下方に突出する樹脂製の室内側気密片が設けてあり、前記室外側見付部の下端には、前記下面部よりも下方に突出する前記室外側垂下片が一体形成されており、前記室外側垂下片の背面に位置して、樹脂製の室外側気密片が設けてあり、
前記上框は、室内側見付部と、室外側見付部と、上面部と、を備え、前記室内側見付部の上端には、前記上面部よりも上方に突出する樹脂製の室内側気密片が設けてあり、
前記閉塞空間は、前記下框の前記下面部と前記上框の前記上面部との間に形成され、
前記閉塞空間の室内側部位は、前記下框の前記室内側気密片と前記上框の前記室内側気密片が接触することで閉塞されており、前記閉塞空間の室外側部位は、前記室外側気密片が前記上框の室外側部位に接触することで閉塞されており、前記下框の前記室外側垂下片の下端部位が、前記上框の上面部を越えて下方に延び、前記上框の室外側見付部の上端部位に室外側から対向しており、
前記熱膨張耐火部材は、前記上框の前記上面部あるいは前記下框の前記下面部の室内側に寄った部位に設けてある、
請求項2に記載の滑り出し窓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓装置に係り、詳しくは、防火性能を備えた滑り出し窓装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窓装置は、窓開口部を障子で開閉するものである。窓装置には、複数の障子を備えたものが知られており、例えば、特許文献1には、複数の障子を備えた滑り出し窓が記載されている。
【0003】
窓装置において、窓開口部全閉状態において防火性能が要求される場合があり、所定時間加熱された時であっても、障子によって仕切られた室外側空間と室内側空間との間に防火上不利な隙間が生じないことが必要となる。
【特許文献1】実用新案登録第2569062号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、滑り出し窓装置において、窓開口部全閉状態において上下に隣接する障子の召し合わせ部の防火性能が向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を達成するために本発明が採用した技術手段は、
上枠と下枠と左右の縦枠からなり、窓開口部を形成する窓枠と、
窓枠に上下方向に連設され、窓開口部を開閉する複数の障子と、
からなる滑り出し窓装置において、
窓開口部全閉状態では、上側に位置する障子の下框と下側に位置する障子の上框とが密接して召し合わせ部が形成され、
前記召し合わせ部を形成する下框と上框の少なくとも一方には、幅方向に亘って熱膨張耐火部材が設けてある、
滑り出し窓装置、である。
熱膨張耐火部材は上框、下框の両方に設けてもよく、この場合、例えば、一方の熱膨張耐火部材が召し合わせ部の室内側部位に設けられ、他方の熱膨張耐火部材が召し合わせ部の室外側部位に設けられる。
【0006】
1つの態様では、前記下框及び前記上框はアルミ型材から形成され、
前記召し合わせ部には、前記熱膨張耐火部材が面する閉塞空間が形成されており、
前記閉塞空間の室内側部位は、前記下框、前記上框の一方あるいは両方に設けた樹脂製の室内側気密片によって閉塞されており、
前記閉塞空間の室外側部位には、前記下框の室外側部位に一体形成された室外側垂下片が、前記上框の室外側見付部の上端部位の室外側に位置して当該上端部位に対向することで相じゃくり構造が形成されており、
前記熱膨張耐火部材は、前記閉塞空間の室内側に寄った部位に面している。
【0007】
1つの態様では、前記下框は、室内側見付部と、室外側見付部と、下面部と、を備え、前記室内側見付部の下端には、前記下面部よりも下方に突出する樹脂製の室内側気密片が設けてあり、前記室外側見付部の下端には、前記下面部よりも下方に突出する前記室外側垂下片が一体形成されており、前記室外側垂下片の背面に位置して、樹脂製の室外側気密片が設けてあり、
前記上框は、室内側見付部と、室外側見付部と、上面部と、を備え、前記室内側見付部の上端には、前記上面部よりも上方に突出する樹脂製の室内側気密片が設けてあり、
前記閉塞空間は、前記下框の前記下面部と前記上框の前記上面部との間に形成され、
前記閉塞空間の室内側部位は、前記下框の前記室内側気密片と前記上框の前記室内側気密片が接触することで閉塞されており、前記閉塞空間の室外側部位は、前記室外側気密片が前記上框の室外側部位に接触することで閉塞されており、前記下框の前記室外側垂下片の下端部位が、前記上框の上面部を越えて下方に延び、前記上框の室外側見付部の上端部位に室外側から対向しており、
前記熱膨張耐火部材は、前記上框の前記上面部あるいは前記下框の前記下面部の室内側に寄った部位に設けてある。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、窓装置の複数枚の障子の召し合わせ部を形成する下框と上框の少なくとも一方に幅方向に亘って熱膨張耐火部材を設けることによって、窓開口部が全閉状態にある時に、火災時の熱で上框あるいは/および下框が変形したり、下框と上框の間の空間の室内側部位を閉塞する樹脂が溶融したりしたような場合であっても、熱膨張耐火部材が発泡して、上框と下框の間の空間を塞ぐことによって、召し合わせ部において、障子によって仕切られた室外側空間と室内側空間との間に防火上不利な隙間が生じることを可及的に防止している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】全閉状態にある窓装置を室外側から見た正面図である。
【
図4】
図3における上下の障子の召し合わせ部の部分拡大図である。
【
図6】
図4と類似の図であって、召し合わせ部における熱膨張耐火部材の作用効果を説明する図である。アルミ型材から形成された下框及び上框を黒塗りして示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[A]窓装置の基本構成
[A―1]窓装置の全体構成
図1に示すように、窓装置は、窓枠と、窓枠によって形成された窓開口部を開閉する複数枚(
図1では2枚を例示)のパネルないし障子1とから構成されている。窓装置を構成する障子1の枚数は限定されず、例えば、3以上の障子を備えるものでもよい。本実施形態に係る窓装置は防火性能を備えており、防火のための構成については、後述する。
【0011】
窓枠は、上枠2、下枠3、左右の縦枠4、5から構成されており、上枠2、下枠3、左右の縦枠4、5に囲まれた縦長方形状の窓開口部が形成されている。障子1は、上框6、下框7、左右の縦框8、9から構成された横長方形状の框と、框で囲まれた横長方形状の領域にはめ込まれたガラス板10と、から構成されており、上下に連設された複数枚の障子1によって窓開口部を開閉するようになっている。
【0012】
本実施形態では、窓枠及び障子1の框はアルミニウム型材(以下、「アルミ型材」と呼ぶ)から形成されている。ガラス板10は、室内側面部100、室外側面部101、上端面102、下端面103、幅方向端部の側端面を備えている。本実施形態に係るガラス板10は複層の複合ガラスであるが、ガラス板10は単層であってもよい。
【0013】
図2、
図3、
図4、
図6において、右側が室内側、左側が室外側である。
図5において、下側が室内側、上側が室外側である。本明細書において、「室内側」、「室外側」という表現は、部材が実際に室内側あるいは室外側に位置する場合に加えて、部材や部材の部分の相対的な位置や方向を規定するものとしても用いられる点に留意されたい。
【0014】
[A―2]本実施形態に係る窓装置の開閉機構
本実施形態に係る窓装置は、すべり出し窓である。各障子1は、上端部を回動支点として前後方向に回動可能であると共に、回動支点は、窓枠の左右の縦枠4、5に沿って上下方向に移動自在に設けられた左右の開閉操作バー11(
図2、
図5参照)を介して、上下方向に移動自在となっている。
【0015】
各障子1は、窓枠の左右の縦枠4、5と、各障子1の左右の縦框8、9との間に設けた連結機構を介して窓枠に連結されている。
図2に示すように、連結機構は、開閉操作バー11と、第1アーム12と、第2アーム13と、ベース14と、ブラケット15と、作動プレート16と、を有する。ベース14は、縦枠4、5に固定されている。ベース14には上下に延びる長穴140が形成されており、長穴140の上端部は室内側に傾斜している。
【0016】
第1アーム12は、障子1の縦框8、9の上方部位に連結されており、第1アーム12の上端部は係合ピン120を介して、ベース14に回動自在かつ上下スライド自在に連結されている。第1アーム12の上部に突設した係合ピン120は、ベース14の長穴140内にスライド自在に嵌められており、長穴140にガイドされる。係合ピン120がベース14の長穴140の上端部に位置している時に障子1が直立姿勢となって窓開口部が閉じられ、係合ピン120が長穴140の下端部に位置している時に障子1が傾斜姿勢となって窓開口部が開放される(
図2参照)。第1アーム12の中央付近より下の部分には、第2アーム13の上端部が回動自在に連結されている。第2アーム13の下端部は縦枠4、5に固定されたブラケット15に回動自在に連結されている。
【0017】
作動プレート16は、開閉操作バー11における各障子1の上端部と対応する部分に、開閉操作バー11から室外側に突出するように設けてあり、開閉操作バー11の上下動に伴って、作動プレート16が上下動して、係合ピン120を上下に移動させる。作動プレート16には、長穴160が形成されており、作動プレート16は、ベース14と第1アーム12の上端部との間に介装されており、長穴160内には、係合ピン120がスライド自在に嵌まっており、係合ピン120は、長穴160にガイドされる。開閉操作バー11の下動により作動プレート16を所定距離下動させると、係合ピン120はベース14の長穴140を下方に移動し、第1アーム12が係合ピン120を中心にして室外側に回動すると共に第2アーム13が下端部を中心として室外側に回動し、障子1が傾動して開口部を開放する。
【0018】
開閉操作バー11の下端部には、開閉操作バー11を上下動させる作動機構が連結されている。作動機構は、左右の開閉操作バー11に上端部が回動自在に連結されたリンク17と、リンク17の下端部に上端部が回動自在に連結され、下端部が回動支点となる回動アーム18と、からなる屈伸機構である。左右の開閉操作バー11の下端部には、それぞれ作動機構が連結されており、左右の作動機構は、左右の回動アーム18の下端部の回動支点同士を連結する回動軸19によって連動されている。一方の作動機構には、伝達機構を介して、リンク17と回動アーム18とからなる屈伸機構を上下に屈伸させる操作ハンドルHが設けてある。左右の作動機構と、左右の作動機構を連動する回動軸19と、一方の作動機構を屈伸させる操作ハンドルHとから、障子1の開閉操作機構が構成される。操作ハンドルHを回転することで、左右のリンク17と回動アーム18が屈伸することで、左右の開閉操作バー11が下動または上動する。
【0019】
[B]窓枠の詳細
窓枠の上枠2は、開口幅方向に水平に延びる長尺部材であって、
図3に示すように、室内側見付部20と、室内側見付部20の下端部位から室外側に向かって水平状に延びる下面部21と、室内側見付部20の上端部位から室外側に向かって延びる上面部22と、を備えている。上面部22は下面部21に対して室外側に延びており、上面部22の室外側に室外側見付部23が一体形成されている。下面部21の先端には、室内側シール材S1が幅方向に亘って取り付けられている。室外側見付部23の下方部位には、室外側シール材S2が幅方向に亘って取り付けられている。
【0020】
窓枠の下枠3は、開口幅方向に水平に延びる長尺部材であって、
図3に示すように、下枠3は、垂直状の室内側見付部30と、室内側見付部30の上方部位から室外側に向かって水平状に延びる上面部31と、室内側見付部30の下方部位から室外側に向かって延びる下面部32と、を備えている。下面部32は上面部31に対して室外側に延びており、下面部32の室外側には当該下面部32の下側に位置して室外側見付部33が一体形成されている。上面部31の先端には、室内側シール材S3が幅方向に亘って取り付けられている。下面部32の室外側端部には折曲片320が一体形成されている。
【0021】
窓枠の縦枠4は、開口高方向に垂直に延びる長尺部材であって、
図5に示すように、縦枠4は、室内側見付部40と、室内側見付部40の見付方向内側から室外側に延びる内側見込片41と、室内側見付部40の見付方向外側から室外側に延びる外側見込部42と、を備えている。外側見込部42は、内側見込片41に対して室外側に延びており、外側見込部42の室外側端部から外側に延びる室外側見付部43が形成されている。縦枠4の内側見込片41の先端には、室内側シール材S4が高さ方向に亘って取り付けられている。縦枠4の外側見込部42の室外側部位には、室外側シール材S5が高さ方向に亘って取り付けられている。
【0022】
窓枠の縦枠5は、開口高方向に垂直に延びる長尺部材であって、
図5に示すように、縦枠5は、室内側見付部50と、室内側見付部50の見付方向内側から室外側に延びる内側見込面51と、室内側見付部50の見付方向外側から室外側に延びる外側見込面52と、を備えている。外側見込面52は、内側見込面51に対して室外側に延びており、外側見込面52の室外側端部から外側に延びる室外側見付部53が形成されている。縦枠5の内側見込面51の先端には、室内側シール材S6が高さ方向に亘って取り付けられている。縦枠5の外側見込面52の室外側部位には、室外側シール材S7が高さ方向に亘って取り付けられている。
【0023】
[C]障子の詳細
[C―1]障子の上框及び上端部位の構成
障子1の上框6は、障子1の幅方向に延びる長尺部材であり、
図4に示すように、室内側見付部60と、室外側見付部61と、室内側見付部60及び室外側見付部61の上端部位を接続する上面部62と、上面部62の下方に離間して、室内側見付部60と室外側見付部61の間を接続する中間上面63と、を備えており、上面部62と中間上面63の間には中空部が形成されている。室内側見付部60の下端部位と室外側見付部61の下端部位は離間対向しており、室内側見付部60の下端部位と室外側見付部61の下端部位の間にガラス板10の上端部位が受け入れられて固定されている。
【0024】
室内側見付部60の下端には、室内側ガスケット(本明細書において、ガスケットは「固定用シール材」と置き換えることができる)G1が設けてあり、室外側見付部61の下端には、室外側ガスケットG2が設けられている。ガラス板10の上端部位は、室内側ガスケットG1と室外側ガスケットG2で挟持されており、室内側ガスケットG1がガラス板10の室内側面部100の上端部位に密着し、室外側ガスケットG2がガラス板10の室外側面部101の上端部位に密着している。本実施形態では、室内側ガスケットG1は樹脂製であり、室内側見付部60の下端部位には室内側ガスケットG1に対向してポケット部が形成されており、このポケット部に熱膨張耐火部材600が上框6の全長に亘って設けてある。室外側ガスケットG2は、樹脂と熱膨張耐火材料からなる複合材である。ガラス板10の上端面102と中間上面63とは離間対向しており、中間上面63の下面には、ガラス板10の上端面102に対向してポケット部が形成されており、ポケット部には熱膨張耐火部材630が上框6の全長に亘って設けてある。火災時の熱によって、熱膨張耐火部材630、600、室外側ガスケットG2の熱膨張耐火部材が発泡することで、火災時に、障子1の上框6とガラス板10の上端部位との間に隙間が生じて、室内外空間が連通されることを可及的に防止している。
【0025】
上框6の上面部62において、室内側に寄った位置には、断面視皿状ないし凹状のポケット部が上框6の全長に亘って設けてあり、ポケット部には熱膨張耐火部材620が上框6の全長に亘って設けてある。上框6には、上框6の室内側見付部60の室内側に位置して、室内側見付部60を覆うように樹脂製の室内側面部64が設けてある。室内側面部64の上端部位は、上面部62を越えて上方に延びる室内側気密片640となっている。
【0026】
下側に位置する障子1の上框6について説明したが、上側に位置する障子1の上框6の構成は実質的に同じである。
図3に示すように、障子1が全閉姿勢にある時に、上枠2の室内側シール材S1が上側の障子1の上框6の室内側気密片640に当接し、上枠2の室外側シール材S2が上側の障子1の上框6の室外側見付部61と上面部62との角部(突片621を含む)当接するようになっており、最上位の障子1の上框6が窓枠の上枠2に密接している。
【0027】
[C―2]障子の下框及び下端部位の構成
障子1の下框7は、障子1の幅方向に延びる長尺部材であり、
図4に示すように、室内側見付部70と、室外側見付部71と、室内側見付部70及び室外側見付部71の下方部位を接続する下面部72と、下面部72の上方に離間して、室内側見付部70と室外側見付部71の間を接続する中間下面73と、を備えており、下面部72と中間下面73の間には中空部が形成されている。室内側見付部70の上端部位と室外側見付部71の上端部位は離間対向しており、室内側見付部70の上端部位と室外側見付部71の上端部位の間にガラス板10の下端部位が受け入れられて固定されている。
【0028】
室内側見付部70の上端には、室内側ガスケットG3が設けてあり、室外側見付部71の上端には、室外側ガスケットG4が設けられている。ガラス板10の下端部位は、室内側ガスケットG3と室外側ガスケットG4で挟持されており、室内側ガスケットG3がガラス板10の室内側面部100の下端部位に密着し、室外側ガスケットG4がガラス板10の室外側面部101の下端部位に密着している。本実施形態では、室内側ガスケットG3は樹脂製であり、室内側見付部70の上端部位には室内側ガスケットG3に対向してポケット部が形成されており、このポケット部に熱膨張耐火部材700が下框7の全長に亘って設けてある。室外側ガスケットG4は、樹脂と熱膨張耐火材料からなる複合材である。
【0029】
中間下面73の上面には、ガラス板10の下端面103に対向してポケット部が形成されており、ポケット部には下框7の長さ方向に亘って熱膨張耐火部材730が設けてある。中間下面73には、熱膨張耐火部材730の上側に位置して、幅方向に間隔を存して複数個、本実施形態では2個のセッティングブロック731が設けてあり、ガラス板10の下端面103は、セッティングブロック731に載置されており、ガラス板10は、セッティングブロック731によって支持されている。火災時の熱によって、熱膨張耐火部材730、700、室外側ガスケットG4の熱膨張耐火部材が発泡することで、火災時に、障子1の下框7とガラス板10の下端部位との間に隙間が生じて、室内外空間が連通されることを可及的に防止している。
【0030】
下框7には、下框7の室内側見付部70の室内側に位置して、室内側見付部70を覆うように樹脂製の室内側面部74が設けてある。下框7の下面部72の室内側端部には、下面部72よりも下方に突成され、室内側に開口するポケット部が下框7の全幅に亘って一体形成されており、ポケット部には、室内側面部74の下方に隣接して樹脂製の室内側気密片75が下框7の全幅に亘って設けてある。下框7の室外側見付部71の下端部位は、下面部72を越えて下方に延びる室外側垂下片710となっている。室外側垂下片710の基端部位(上端部位)の内側にはポケット部が下框7の全幅に亘って設けてあり、このポケット部に樹脂製の室外側気密片76が設けてある。室外側垂下片710の下端は、室外側気密片76の下端よりも下方に位置している。
【0031】
複数枚の障子1が全閉姿勢にある時に、下側の障子1の上框6の上面部62と、上側の障子1の下框7の下面部72が離間対向し、下側の障子1の上框6の室内側気密片75が、上側の障子1の下框7の室内側面部64の室内側気密片640に当接し、下側の障子1の上框6の室外側の突片621が、上側の障子1の下框7の室外側気密片76に当接し、上側の障子1の下框7の室外側垂下片710が下側の障子1の上框6の室外側見付部61の上方部位の室外側に位置して、当該上方部位に対向して垂下している。このようにして、上側に位置する障子1の下框7と下側に障子1の上框6とが密接して召し合わせ部Aが形成されている。
【0032】
上側に位置する障子1の下框7について説明したが、下側に位置する障子1の下框7の構成は、以下に述べる幾つかの点を除いて、実質的に同じである。障子1が全閉姿勢にある時に、下枠3の室内側シール材S3が下側の障子1の下框7の室内側面部74に当接しており、室外側垂下片710の基端部位(上端部位)の内側のポケット部に設けられた室外側気密片76´は、室外側垂下片710の下端を越えて下方に延びており、下端が下枠3の下面部32の室外側端部に形成した折曲片320に当接するようになっており、最下位の障子1の下框7が窓枠の下枠3に密接している。なお、下側(最下位)の障子1の下框7において、室内側のポケット部には、室内側気密片75は設けられていない。
【0033】
[C―3]障子の縦框及び側端部位の構成
障子1の縦框8は、室内側見付部80と、室外側見付部81と、室内側見付部80及び室外側見付部81の見付方向外側部位を接続する側端面82と、側端面82の見付方向内側に離間して、室内側見付部80と室外側見付部81の間を接続する中間見込面83と、を備えており、側端面82と中間見込面83の間には中空部が形成されている。室外側見付部81には側端面82に対して外側に突出する突出部810が一体形成されている。室内側見付部80の内側端部と室外側見付部81の内側端部は離間対向しており、室内側見付部80の内側端部と室外側見付部81の内側端部の間にガラス板10の一方の側端部位が受け入れられて固定されている。
【0034】
室内側見付部80の見付方向内側端には、室内側ガスケットG5が設けてあり、室外側見付部81の見付方向内側端には、室外側ガスケットG6が設けられている。ガラス板10の一方の側端部位は、室内側ガスケットG5と室外側ガスケットG6で挟持されており、室内側ガスケットG5がガラス板10の室内側面部100の一方の側端部位に密着し、室外側ガスケットG6がガラス板10の室外側面部101の一方の側端部位に密着している。本実施形態では、室内側ガスケットG5は樹脂製であり、室内側見付部80の見付方向内側端には室内側ガスケットG5に対向してポケット部が形成されており、このポケット部に熱膨張耐火部材が縦框8の全長に亘って設けてある。室外側ガスケットG6は、樹脂と熱膨張耐火材料からなる複合材である。ガラス板10の一方の側端面と中間見込面83とは離間対向しており、中間見込面83にはポケット部が形成されており、ポケット部には高さ方向に亘って熱膨張耐火部材が設けてある。火災時の熱によって、上記熱膨張耐火部材、室外側ガスケットG6の熱膨張耐火部材が発泡することで、火災時に、障子1の縦框8とガラス板10の一方の側端部位との間に隙間が生じて、室内外空間が連通されることを可及的に防止している。
【0035】
障子1が全閉姿勢にある時に、障子1の縦框8の室内側見付部80が縦枠4の室内側シール材S4に当接し、室外側見付部81の突出部810が室外側シール材S5に当接するようになっており、障子1の縦框8が窓枠の縦枠4に密接している。室外側見付部81の突出部810の背面には高さ方向に亘ってポケット部が形成されており、このポケット部には熱膨張耐火部材が設けてある。
【0036】
障子1の縦框9は、室内側見付部90と、室外側見付部91と、室内側見付部90及び室外側見付部91の見付方向外側部位を接続する側端面92と、側端面92の見付方向内側に離間して、室内側見付部90と室外側見付部91の間を接続する中間見込面93と、を備えており、側端面92と中間見込面93の間には中空部が形成されている。室外側見付部91には側端面92に対して外側に突出する突出部910が一体形成されている。室内側見付部90の内側端部と室外側見付部91の内側端部は離間対向しており、室内側見付部90の内側端部と室外側見付部91の内側端部の間にガラス板10の他方の側端部位が受け入れられて固定されている。
【0037】
室内側見付部90の見付方向内側端には、室内側ガスケットG7が設けてあり、室外側見付部91の見付方向内側端には、室外側ガスケットG8が設けられている。ガラス板10の他方の側端部位は、室内側ガスケットG7と室外側ガスケットG8で挟持されており、室内側ガスケットG7がガラス板10の室内側面部100の他方の側端部位に密着し、室外側ガスケットG8がガラス板10の室外側面部101の他方の側端部位に密着している。本実施形態では、室内側ガスケットG7は樹脂製であり、室内側見付部90の見付方向内側端には室内側ガスケットG7に対向してポケット部が形成されており、このポケット部に熱膨張耐火部材が縦框9の全長に亘って設けてある。室外側ガスケットG8は、樹脂と熱膨張耐火材料からなる複合材である。ガラス板10の他方の側端面と中間見込面93とは離間対向しており、中間見込面93には、ガラス板10の他方の側端面に面してポケット部が形成されており、ポケット部には高さ方向に亘って熱膨張耐火部材が設けてある。火災時の熱によって、上記熱膨張耐火部材、室外側ガスケットG8の熱膨張耐火部材が発泡することで、火災時に、障子1の縦框9とガラス板10の他方の側端部位との間に隙間が生じて、室内外空間が連通されることを可及的に防止している。
【0038】
障子1が全閉姿勢にある時に、障子1の縦框9の室内側見付部90が縦枠5の室内側シール材S6に当接し、室外側見付部91の突出部910が室外側シール材S7に当接するようになっており、障子1の縦框9が窓枠の縦枠5に密接している。室外側見付部91の突出部910の背面には高さ方向に亘ってポケット部が形成されており、このポケット部には熱膨張耐火部材が設けてある。
【0039】
[D]召し合わせ部の防火構造
本実施形態に係る窓装置は、上枠2と下枠3と左右の縦枠4、5からなり、窓開口部を形成する窓枠と、窓枠に上下方向に連設され、窓開口部を開閉する複数の障子1と、からなり、窓開口部全閉状態では、最上位の障子1の上框6が上枠2に密接し、最下位の障子1の下框7が下枠3に密接し、上側に位置する障子1の下框7と下側に位置する障子1の上框6とが密接して召し合わせ部Aが形成されている。この状態において、滑り出し窓装置が火災時の熱に所定時間曝されると、加熱によって、障子1の水平方向に延びる上框6、下框7が変形するおそれがあり、召し合わせ部Aを形成する上框6及び下框7が変形すると、召し合わせ部Aに隙間が生じるおそれがある。本実施形態では、召し合わせ部Aに形成された空間に面するように熱膨張耐火部材620が設けられているので、召し合わせ部Aが火災時の熱に曝された時には、熱膨張耐火部材620が発泡して、上框6と下框7の間の空間を塞ぐようになっており、召し合わせ部Aにおいて、障子1によって仕切られた室外側空間と室内側空間との間に防火上不利な隙間が生じることを可及的に防止している。
【0040】
本実施形態に係る熱膨張耐火部材620の作用効果について、
図6を参照しつつ、より詳細に説明する。本実施形態に係る障子1の下框7及び上框6はアルミ型材(
図6の黒塗部分)から形成されている。下框7は、室内側見付部70と、室外側見付部71と、下面部72と、を備え、室内側見付部70の下端には、下面部72よりも下方に突出する樹脂製の室内側気密片75が設けてあり、室外側見付部71の下端には、下面部72よりも下方に突出する室外側垂下片710が一体形成されており、室外側垂下片710の背面(内側ないし室内側)に位置して、樹脂製の室外側気密片76が設けてあり、室外側垂下片710は、室外側気密片76の室外側に位置して、室外側気密片76全体を覆っている。上框6は、室内側見付部60と、室外側見付部61と、上面部62と、を備え、室内側見付部60の上端には、上面部62よりも上方に突出する樹脂製の室内側気密片640が設けてある。上框6の上面部62の室内側半部に位置して、上框6の全幅に亘ってポケット部が形成されており、このポケット部に熱膨張耐火部材620が設けてある。図示の態様では、下面部72のやや室外側寄りにポケット部が形成されており、このポケット部に熱膨張耐火部材を設けてもよい。
【0041】
召し合わせ部Aには、下框7の下面部72と上框6の上面部62との間に位置して閉塞空間Sが形成されており、閉塞空間Sの室内側部位は、下框7に設けた室内側気密片75と上框6に設けた室内側気密片640が重なるように接触することで閉塞されており、閉塞空間Sの室外側部位は、室外側気密片76が上框6の室外側部位(室外側の突片621)に接触することで閉塞されており、さらに、下框7の室外側垂下片710の下端部位が、上框6の上面部62を越えて下方に延び、上框6の室外側見付部61の上端部位に室外側から対向して相じゃくり構造が形成されている。
【0042】
本実施形態に係る召し合わせ部Aに形成された閉塞空間Sの室内側部位は樹脂(室内側気密片75、室内側気密片640)によって閉塞されており、熱の影響を受けやすく、火災時に室内側気密片75、上室内側気密片640が溶融ないし消失すると、閉塞空間Sの室内側部位に隙間が生じる可能性がある。一方、閉塞空間Sの室外側部位は樹脂(室外側気密片76)によって閉塞されているが、室外側気密片76を室外側から覆うように室外側垂下片710が位置しており、室外側垂下片710が上框6の室外側見付部61の上端部位との間であいじゃくり構造を形成しているので、火災時に室外側気密片76が溶融ないし消失しても相じゃくり構造が維持されて、閉塞空間Sの室外側部位に直線的な隙間が形成されることが防止される。
【0043】
本実施形態に係る熱膨張耐火部材620は、上框6の上面部62の室内側半部に位置して設けてあり、熱膨張耐火部材620は閉塞空間Sの室内側に寄った部位(室内側気密片75、室内側気密片640の近傍)に面している。したがって、召し合わせ部Aの室内側部位が火災時の熱に曝されて、室内側気密片75、室内側気密片640が溶融するような場合には、同時に、熱膨張耐火部材620が熱に曝されて発泡して、閉塞空間Sの室内側部位を閉塞するようになっている。したがって、火災時の熱で上框6ないし下框7が変形して隙間が大きくなったり、室内側気密片75、上室内側気密片640が溶融したような場合であっても、上框6と下框7の間の空間を塞ぐことで、召し合わせ部Aに室外側空間と室内側空間を貫通するような防火上不利な隙間が生じることを可及的に防止している。
【符号の説明】
【0044】
1 障子
2 上枠
3 下枠
4、5 縦枠
6 障子の上框
60 室内側見付部
61 室外側見付部
62 上面部
620 熱膨張耐火部材
640 室内側気密片
7 障子の下框
70 室内側見付部
71 室外側見付部
710 室外側垂下片
72 下面部
75 室内側気密片
76 室外側気密片
A 召し合わせ部
S 閉塞空間