(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006182
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】アクチュエータおよびアクチュエータのアース構造
(51)【国際特許分類】
H01F 7/16 20060101AFI20230111BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H01F7/16 Z
F16K31/06 305A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108646
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】千尋 美香
【テーマコード(参考)】
3H106
5E048
【Fターム(参考)】
3H106DC04
3H106DD05
3H106EE34
3H106GA30
5E048AD02
(57)【要約】
【課題】本発明によれば、簡素な構造でアース接続を得る。
【解決手段】アクチュエータの一態様は、ケース内にコイルが収容された本体部と、上記コイルの内部に一端側が挿入されて上記本体部から他端側が突き出した、当該コイルの磁力で駆動される駆動軸と、を備え、上記ケースは、アース部材の上記他端側と接触する金属のアース接触部を、上記一端側を向いた外面に有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内にコイルが収容された本体部と、
前記コイルの内部に一端側が挿入されて前記本体部から他端側が突き出した、当該コイルの磁力で駆動される駆動軸と、を備え、
前記ケースは、アース部材の前記他端側と接触する金属のアース接触部を、前記一端側を向いた外面に有するアクチュエータ。
【請求項2】
前記コイルがソレノイドコイルである請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記コイルの巻線の一端に繋がった端子を有し、前記ケース外に突き出したコネクタ部を更に備えた請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記アース接触部が前記他端側から前記一端側に凹み、前記アース部材の前記他端側の少なくとも一部が当該凹みの内部に収まる請求項1から3のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記アース接触部の前記凹みにおける、凹み方向に直交した方向の幅は、前記他端側より前記一端側の方が狭い請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記アース接触部は、前記凹みの前記一端側に前記アース部材の前記一端側が嵌まる請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記ケースは、少なくとも前記アース接触部を有する箇所がプレス加工で形成される請求項1から6のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のアクチュエータと、
前記アース部材と、
アースされ、前記アース部材の前記一端側が接触した被接触部と、
を備えるアクチュエータのアース構造。
【請求項9】
前記アース部材がコイルスプリングである請求項8に記載のアクチュエータのアース構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータおよびアクチュエータのアース構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルを内蔵したアクチュエータの一種として、ソレノイドコイルで可動鉄心(プランジャ)を移動させて駆動力を出力するソレノイドアクチュエータが知られる。ソレノイドアクチュエータは、例えばバルブと一体化してプランジャでバルブを開閉するソレノイドバルブなどに応用される。ソレノイドバルブは、例えば自動変速機における、変速制御用のライン圧や変速時のクラッチ圧の制御に使用される。
【0003】
コイルを内蔵したアクチュエータの使用時にはアクチュエータはアース接続(ボディアース)される。例えば特許文献1では、ソレノイドバルブにおいて、ガイドにアース端子を圧入する際、ガイドとの接触面積を減らし、多角形または三角形おにぎり形状を円形に変形させながら圧入することにより圧入荷重を低下・安定させると共に、アース端子の変形を抑える技術が提案される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、特殊な形状のアース端子が必要であり、構造の煩雑化や大型化を招く。
そこで、本発明は、簡素な構造でアース接続を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るアクチュエータの一態様は、ケース内にコイルが収容された本体部と、上記コイルの内部に一端側が挿入されて上記本体部から他端側が突き出した、当該コイルコイルの磁力で駆動される駆動軸と、を備え、上記ケースは、アース部材の上記他端側と接触する金属のアース接触部を、上記一端側を向いた外面に有する。
【0007】
また、本発明に係るアクチュエータのアース構造の一態様は、上記アクチュエータと、上記アース部材と、アースされ、上記アース部材の上記一端側が接触した被接触部材と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡素な構造でアース接続を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明のアクチュエータの一実施形態が組み込まれた自動変速機の一部を示す図。
【
図2】
図2は、変速機カバーに固定された電磁弁を示す図。
【
図6】
図6は、電磁弁が変速機カバーとアース接続したアース構造を示す図。
【
図8】
図8は、電磁弁の樹脂部分内での電気接続構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示のアクチュエータおよびアクチュエータのアース構造の実施形態を詳細に説明する。但し、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするため、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。また、先に説明した図に記載の要素については、後の図の説明において適宜に参照する場合がある。
図1は、本発明のアクチュエータの一実施形態が組み込まれた自動変速機の一部を示す図である。
【0011】
図1には、変速機カバー300と、油圧制御装置200と、電磁弁100が示される。但し、変速機カバー300と油圧制御装置200については一部分のみが示される。
図1に示す電磁弁100の数は一例であり、電磁弁100は複数でもよい。
変速機カバー300は自動変速機の筐体の一部であり、筐体のカバー取付部(図示せず)に対して着脱自在に取り付けられる。
油圧制御装置200は、内部に複数の油路を有し、各油路の開閉によってオイルの流れを変えることで変速ギア(図示せず)を切り替える。
【0012】
電磁弁100は、本発明のアクチュエータの一実施形態に相当し、油圧制御装置200に取り付けられて油路の開閉を行う。電磁弁100は、油圧制御装置200に対して着脱自在であり、変速機カバー300に固定される。
図2は、変速機カバー300に固定された電磁弁100を示す図である。
【0013】
電磁弁100は、保持板310によって保持され、保持板310がボルト320で変速機カバー300に固定されることで電磁弁100も変速機カバー300に固定される。
【0014】
電磁弁100は、図示が省略された電源コードによって変速機カバー300側から電流が供給されて駆動する。また、電磁弁100は、変速機カバー300側にアースされる。
【0015】
図3~
図5は、電磁弁100の構造を示す図である。
図3は、電磁弁100の出力側を示した斜視図であり、
図4は、電磁弁100のアース側を示した斜視図であり、
図5は、電磁弁100の断面図である。
電磁弁100は、外観上、本体部110と、出力部120と、コネクタ部130とを有し、内部にはプランジャ140を有する。
本体部110は、電力の供給を受けてプランジャ140を駆動する。
出力部120は、上述した油圧制御装置200に挿入されてプランジャ140の移動により上述の油路を開閉する。
コネクタ部130には、本体部110に電力を供給するコード(図示せず)が接続される。
【0016】
プランジャ140は、一端側が本体部110内に挿入され、他端側が出力部120内に延び、当該一端側と当該他端側とに移動する。以下の説明ではプランジャ140を方向の基準とし、
図5の左側を「軸方向一端側」と称し、
図5の右側を「軸方向他端側」と称する場合がある。
本体部110は、カバー111と、ソレノイドコイル112と、ヨーク113と、押しバネ114とを有する。
【0017】
金属製のカバー111と磁性材料からなるヨーク113とを併せたケースが本発明にいうケースの一例に相当し、ケース内部には、ボビン116に巻線が巻き回されたソレノイドコイル112が収容される。言い換えると、本体部110ではカバー111およびヨーク113からなるケース内にソレノイドコイル112が収容される。
【0018】
ヨーク113はソレノイドコイル112で発生された磁界をプランジャ140に導き、プランジャ140は磁界によって軸方向一端側へと引きつけられる。押しバネ114は、ソレノイドコイル112の磁界が切れたときにプランジャ140を軸方向他端側へと押し戻す。言い換えると、ソレノイドコイル112の内部に軸方向一端側が挿入されて本体部110から軸方向他端側が突き出し、ソレノイドコイル112の磁力で駆動される。
【0019】
ソレノイドコイル112は本発明にいうコイルの一例に相当し、プランジャ140は本発明にいう駆動軸の一例に相当する。本発明にいうコイルがソレノイドコイル112であることにより、直線駆動型で小型のアクチュエータが実現される。
出力部120は、筒部121と弁部122を有する。
筒部121は樹脂製で本体部110に対し軸方向他端側へと延びた筒状の構造を有する。筒部121は内部に流入路123と流出路124を有する。
【0020】
弁部122は、筒部121の流入路123と流出路124との間に設けられ、プランジャ140の先端が弁部122内の球体122aを押していると弁部122は閉まって流入路123と流出路124との間を遮る。プランジャ140の先端が弁部122内の球体122aから離れると弁部122は開き、流入路123と流出路124とが繋がってオイルが流れる。
コネクタ部130は、カバー111およびヨーク113からなるケースから外部に突き出す。コネクタ部130は角筒131と端子132を有する。
【0021】
角筒131は樹脂製で軸方向一端側が開口し、端子132は角筒131の底から軸方向一端側へと突き出す。端子132は、ソレノイドコイル112の巻線の一端に接続される。つまり、コネクタ部130は、ソレノイドコイル112の巻線の一端に繋がった端子132を有し、上記ケース外に突き出す。ケース外に突き出したコネクタ部130を介してソレノイドコイル120へ容易に電力が供給できる。
【0022】
電磁弁100は上述したように変速機カバー300側にアースされる。具体的には、カバー111の軸方向一方側の外面にアース接触部115が設けられ、アース接触部115にアース用スプリング330の軸方向他端側が挿入される。アース用スプリング330は、本発明にいうアース部材の一例に相当する。つまり、ケースの一部であるカバー111は、アース用スプリング330の軸方向他端側と接触する金属のアース接触部115を、軸方向一端側を向いた外面に有する。この結果、カバー111の軸方向一端側でアース用スプリング330の軸方向他端側と接触する簡素な構造でアース接続が得られる。
なお、「軸方向一端側を向いた外面」とは、本実施形態の場合、カバー111の筒状の側面111aを除いたカバー111の底面111b全体である。
【0023】
アース接触部115は、本発明にいうアース接触部の一例に相当し、本実施形態では、軸方向他端側から軸方向一端側に凹み、アース用スプリング330の軸方向他端側の少なくとも一部が当該凹みの内部に収まる構造を有する。本発明にいうアース接触部は凹み構造に限定されず、例えば軸方向他端側に張り出した凸部でもよい。但し、本実施形態におけるアース接触部115のように凹み構造であると、アース用スプリング330がアース接触部115の凹みに収まるのでアース用スプリング330の位置が安定して好ましい。
図6は、電磁弁100が変速機カバー300とアース接続したアース構造を示す図である。
【0024】
変速機カバー300は、電磁弁100と対向した箇所に、被接触部340を有する。被接触部340は、アースされ、アース用スプリング330の軸方向一端側が接触する。
【0025】
電磁弁100と被接触部340とがアース用スプリング330を間に挟んだ簡素なアース構造によりアース接続が得られる。本発明にいうアース部材は、例えば皿ばねや、ばね性の無い部材であってもよい。但し、本実施形態におけるアース用スプリング330のようにコイルスプリングが用いられると、アース構造の組み付けが容易である。
図7は、電磁弁100のカバー111の断面図である。
【0026】
カバー111のアース接触部115は凹み構造を有し、底115aと開口115bを有する。本実施形態ではカバー111がプレス加工で形成される。本発明にいうケースは、少なくともアース接触部を有する箇所がプレス加工で形成されることが好ましい。プレス加工により製造コストが抑制される。
【0027】
アース接触部115は、底115a側の径より開口115b側の径の方が大きい。言い換えると、アース接触部115の凹みにおける、凹み方向に直交した方向の幅は、軸方向他端側(開口115b側)より軸方向一端側(底115a側)の方が狭い。開口側が広いと組立て時にアース用スプリング330を挿入するのが容易であり、奥が狭いとアース用スプリング330の位置が安定する。
【0028】
また、アース接触部115の底115a側の径はアース用スプリング330の径よりも小さい。このため、アース接触部115は、凹みの軸方向一端側(底115a側)にアース用スプリング330の軸方向一端側が嵌まる。アース用スプリング330がアース接触部115の凹みに嵌まることにより、アース用スプリング330がアース接触部115に固定され、アース用スプリング330の位置が更に安定する。
【0029】
図8は、電磁弁100の樹脂部分内での電気接続構造を示す図である。
【0030】
本実施形態では、コネクタ部130の角筒131から出力部120の筒部121まで一体の樹脂部材となっており、樹脂部材の内部に端子132などの金属部材が埋め込まれている。
【0031】
金属部材のうち端子132はソレノイドコイル112の巻線の一端と電気接続される。
【0032】
ヨーク接続部135は端子132とは分離した金属部材であり、ソレノイドコイル112の巻線の他端はヨーク接続部135と電気的に接続される。ヨーク接続部135は半田接続などでヨーク113に固定されると共にヨーク113と電気接続され、ヨーク113はカバー111に電気接続される。この結果、ソレノイドコイル112の巻線の他端はアース用スプリング330に電気接続されることになる。
【0033】
なお、上記では、本発明のアクチュエータおよびアクチュエータのアース構造における使用方法の一例として、自動車の自動変速機や電磁弁やソレノイドアクチュエータが挙げられるが、本発明のアクチュエータおよびアクチュエータのアース構造の使用方法は上記に限定されず、回転駆動型のアクチュエータであるモータや、モータを備える電動オイルポンプや、減速装置などといった、ボディアースを有する各種の電動化製品について広範囲に使用可能である。
【0034】
上述した実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0035】
100 :電磁弁
110 :本体部
111 :カバー
112 :ソレノイドコイル
113 :ヨーク
114 :押しバネ
115 :アース接触部
115a :底
115b :開口
120 :出力部
121 :筒部
122 :弁部
123 :流入路
124 :流出路
130 :コネクタ部
131 :角筒
132 :端子
140 :プランジャ
200 :油圧制御装置
300 :変速機カバー
330 :アース用スプリング
340 :被接触部