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特開2023-61867誘電体組成物及びこれを含む積層型キャパシタ
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  • 特開-誘電体組成物及びこれを含む積層型キャパシタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061867
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】誘電体組成物及びこれを含む積層型キャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002546
(22)【出願日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0140052
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、フイ スン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン、セオク ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン ウー
(72)【発明者】
【氏名】セオ、ジェオン ウーク
(72)【発明者】
【氏名】アン、ヒェグ スーン
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヒョ ジュ
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ヒー スン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE02
5E001AE03
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG01
(57)【要約】
【課題】誘電体組成物及びこれを含む積層型キャパシタを提供する。
【解決手段】
本発明の一実施形態に係る誘電体組成物は、BaTiO系主成分と、それぞれBaよりもさらに短いイオン半径とより多い原子量を有する第1及び第2元素を含むドナー成分と、Mg、Al、Mn、Vの少なくとも一つを含むアクセプター成分を含み、第2元素のイオン半径は第1元素のイオン半径よりも長く、第2元素のモル含有量は第1元素のモル含有量よりも少なく、アクセプター成分のモル含有量はドナー成分のモル含有量よりも多いことができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BaTiO系主成分と、
それぞれBaよりもさらに短いイオン半径とより多い原子量を有する第1及び第2元素を含むドナー成分と、
Mg、Al、Mn、Vの少なくとも一つを含むアクセプター成分と、を含み、
前記第2元素のイオン半径は、前記第1元素のイオン半径よりも長く、
前記第2元素のモル含有量は、前記第1元素のモル含有量よりも少なく、
前記アクセプター成分のモル含有量は、前記ドナー成分のモル含有量よりも多い、誘電体組成物。
【請求項2】
前記第1元素はジスプロシウム(Dy)を含み、
前記第2元素はサマリウム(Sm)を含む、請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項3】
前記ドナー成分において前記第1及び第2元素を含むランタン族元素の総モル含有量は、前記主成分のチタン(Ti)100モルに対して0モル超過2.41モル未満である、請求項1または2に記載の誘電体組成物。
【請求項4】
前記ドナー成分においてランタン族元素の総モル含有量に対する前記第2元素のモル含有量の比は、0.04超過0.24未満である、請求項3に記載の誘電体組成物。
【請求項5】
前記第2元素のモル含有量は、前記主成分のチタン(Ti)100モルに対して0モル超過0.22モル未満である、請求項1から4のいずれか一項に記載の誘電体組成物。
【請求項6】
前記アクセプター成分のモル含有量に対する前記ドナー成分のモル含有量の比は0.1超過0.32未満である、請求項1から5のいずれか一項に記載の誘電体組成物。
【請求項7】
BaTiO系主成分と、
ジスプロシウム(Dy)及びサマリウム(Sm)を含むランタン族元素を含む副成分と、を含み、
前記副成分においてランタン族元素の総モル含有量は、前記主成分のチタン(Ti)100モルに対して0モル超過2.41モル未満であり、
前記副成分においてランタン族元素の総モル含有量に対するサマリウム(Sm)のモル含有量の比は0.04超過0.24未満である、誘電体組成物。
【請求項8】
前記副成分においてランタン族元素の総モル含有量は、前記主成分のチタン(Ti)100モルに対して1.35モル未満であり、
前記副成分においてサマリウム(Sm)のモル含有量は、前記主成分のチタン(Ti)100モルに対して0モル超過0.22モル未満である、請求項7に記載の誘電体組成物。
【請求項9】
前記副成分は、Mg、Al、Mn、Vの少なくとも一つをさらに含み、
前記副成分においてMg、Al、Mn、Vの総モル含有量は、前記副成分においてランタン族元素の総モル含有量よりも多い、請求項7または8に記載の誘電体組成物。
【請求項10】
前記副成分においてMg、Al、Mn、Vの総モル含有量に対する前記副成分においてランタン族元素の総モル含有量の比は、0.1超過0.32未満である、請求項9に記載の誘電体組成物。
【請求項11】
少なくとも一つの第1内部電極及び少なくとも一つの第2内部電極が少なくとも一つの誘電体層を間に挟んで第1方向に交互に積層された積層構造を含む本体と、
前記少なくとも一つの第1内部電極及び前記少なくとも一つの第2内部電極にそれぞれ連結されるように互いに離隔して前記本体に配置された第1及び第2外部電極と、を含み、
前記誘電体層は請求項1または7に記載の誘電体組成物を含む、積層型キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体組成物及びこれを含む積層型キャパシタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型キャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、コンピュータ、PDA、携帯電話などの電子機器部品として広く用いられており、高信頼性、高強度特性を有しながら、電気機器(車両含む)の部品としても広く用いられている。
【0003】
積層型キャパシタに含まれ得る誘電体組成物の誘電率が高いほど、積層型キャパシタのサイズに対する静電容量は高く、サイズに対する静電容量は、電子(electronic)機器用積層型キャパシタにおいてさらに重要であることができる。
【0004】
積層型キャパシタに含まれ得る誘電体組成物の絶縁抵抗が高いほど、積層型キャパシタは高い耐電圧/耐電力を有することができ、耐電圧/耐電力は電気(electric)機器用積層型キャパシタにおいてさらに重要であることができる。
【0005】
積層型キャパシタに含まれ得る誘電体組成物の信頼性が高いほど、積層型キャパシタの量産過程における不良率は減少し、長い寿命を有し、さらに様々な環境で用いられることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10-2016-0123645号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、誘電体組成物及びこれを含む積層型キャパシタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る誘電体組成物は、BaTiO系主成分と、それぞれBaよりもさらに短いイオン半径とより多い原子量を有する第1及び第2元素を含むドナー成分と、Mg、Al、Mn、Vの少なくとも一つを含むアクセプター成分と、を含み、上記第2元素のイオン半径は上記第1元素のイオン半径よりも長く、上記第2元素のモル含有量は上記第1元素のモル含有量よりも少なく、上記アクセプター成分のモル含有量は上記ドナー成分のモル含有量よりも多いことができる。
【0009】
本発明の一実施形態に係る誘電体組成物は、BaTiO系主成分と、ジスプロシウム(Dy)及びサマリウム(Sm)を含むランタン族元素を含む副成分と、を含み、上記副成分においてランタン族元素の総モル含有量は、上記主成分のチタン(Ti)100モルに対して0モル超過2.41モル未満であり、上記副成分においてランタン族元素の総モル含有量に対するサマリウム(Sm)のモル含有量の比は、0.04超過0.24未満であることができる。
【0010】
本発明の一実施形態に係る積層型キャパシタは、少なくとも一つの第1内部電極及び少なくとも一つの第2内部電極が少なくとも一つの誘電体層を間に挟んで第1方向に交互に積層された積層構造を含む本体と、上記少なくとも一つの第1内部電極及び少なくとも一つの第2内部電極にそれぞれ連結されるように互いに離隔して上記本体に配置された第1及び第2外部電極と、を含み、上記誘電体層は上記誘電体組成物を含むことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態に係る誘電体組成物及びこれを含む積層型キャパシタは、絶縁抵抗及び信頼性を全体的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る誘電体組成物を含むことができる積層型キャパシタを示した斜視図である。
図2図1のA-A'を示した断面図である。
図3図1のB-B'を示した断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る誘電体組成物の組成による絶縁抵抗(IR)及び積層型キャパシタの信頼性を示した図面である。
図5a】本発明の一実施形態に係る誘電体組成物のサマリウム(Sm)の含有量による絶縁抵抗を示したグラフである。
図5b】本発明の一実施形態に係る誘電体組成物のジスプロシウム(Dy)の含有量による絶縁抵抗を示したグラフである。
図6】本発明の一実施形態に係る積層型キャパシタの信頼性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。さらに、本発明の実施形態は、当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一符号で示される要素は同一要素である。
【0014】
なお、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、複数の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を付与して説明する。
【0015】
明細書全体において、或る部分が或る構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0016】
本発明の実施形態を明確に説明するために六面体の方向を定義すると、図面上に示されたL、W及びTは、それぞれ長さ方向、幅方向及び厚さ方向を表す。ここで、厚さ方向は、誘電体層が積層される積層方向と同一概念で用いられることができる。
【0017】
以下では、本発明の一実施形態に係る積層型キャパシタを説明し、特に積層セラミックキャパシタについて説明するが、これに制限されるものではない。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る誘電体組成物を含むことができる積層型キャパシタを示した斜視図であり、図2は、図1のA-A'線に沿った断面図であり、図3は、図1のB-B'線に沿った断面図である。
【0019】
図1図2及び図3を参照すると、本発明の一実施形態に係る誘電体組成物を含むことができる積層型キャパシタ100は、本体110、第1外部電極131、及び第2外部電極132を含むことができる。図1は、本体110の内部を示すために体積の約1/4が切断された形態を示しているが、実際の積層型キャパシタ100は体積の約1/4が切断されない可能性があり、中心からL方向、W方向及びT方向のそれぞれを基準にしてほぼ対称的な形態であることができる。
【0020】
本体110は、少なくとも一つの第1内部電極121及び少なくとも一つの第2内部電極122が少なくとも一つの誘電体層111を間に挟んで第1方向(例:T方向)に交互に積層された積層構造を含むことができる。
【0021】
例えば、本体110は、積層構造の焼成によってセラミック本体から構成されることができる。ここで、本体110に配置された少なくとも一つの誘電体層111は焼結された状態であり、隣接する誘電体層間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0022】
例えば、本体110は、長さ方向Lの両側面、幅方向Wの両側面、及び厚さ方向Tの両側面を有する六面体から形成されることができ、上記六面体の角及び/またはコーナーは研磨されるにつれて丸い形態であることができる。但し、本体110の形状、寸法及び誘電体層111の積層数は、本実施形態に示したものに限定されるものではない。
【0023】
少なくとも一つの誘電体層111は、その厚さを積層型キャパシタ100の容量設計に合わせて任意に変更することができ、本発明の一実施形態に係る誘電体組成物を含むことができる。
【0024】
少なくとも一つの誘電体層111の形成に用いられるセラミック粉末の平均粒径は特に制限されず、積層型キャパシタ100の要求規格(例:電子機器用キャパシタのように小型化及び/または高容量が求められるか、電気機器用キャパシタのように高い耐電圧特性及び/または強い強度が求められるなど)によって調節されることができるが、例えば、400nm以下に調整されることができる。
【0025】
例えば、少なくとも一つの誘電体層111は、チタン酸バリウム(BaTiO)などのパウダーを含んで形成されたスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥して複数個のセラミックシートを設けることによって形成されることができる。上記セラミックシートは、セラミック粉末、バインダー、溶剤を混合してスラリーを製造し、上記スラリーをドクターブレード法で数μmの厚さを有するシート(sheet)状に製作することによって形成されることができるが、これに限定されない。
【0026】
少なくとも一つの第1内部電極121及び少なくとも一つの第2内部電極122は、導電性金属を含む導電性ペーストを印刷して誘電体層の積層方向(例:T方向)に沿って本体110の長さ方向Lの一側面と他側面に交互に露出するように形成されることができ、中間に配置された誘電体層によって互いに電気的に絶縁されることができる。
【0027】
例えば、少なくとも一つの第1内部電極121及び少なくとも一つの第2内部電極122のそれぞれは、粒子平均大きさが0.1~0.2μmであり、40~50重量%の導電性金属粉末を含む内部電極用導電性ペーストによって形成されることができるが、これに限定されない。上記導電性ペーストは、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、鉛(Pb)または白金(Pt)などの単独またはこれらの合金であることができ、本発明がこれに限定されるものではない。
【0028】
例えば、上記セラミックシート上に上記内部電極用導電性ペーストを印刷工法などで塗布して内部電極パターンを形成することができる。上記導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、及びインクジェット印刷法などを用いることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記内部電極パターンが印刷されたセラミックシートを200~300層積層し、圧着、焼成することで本体110を製作することができる。
【0029】
積層型キャパシタ100の静電容量は、少なくとも一つの第1内部電極121及び少なくとも一つの第2内部電極122間の積層方向(例:T方向)の重なり面積に比例し、少なくとも一つの第1内部電極121及び少なくとも一つの第2内部電極122の総積層数に比例し、少なくとも一つの第1内部電極121及び少なくとも一つの第2内部電極122間の間隔に反比例することができる。上記間隔は、少なくとも一つの誘電体層111のそれぞれの厚さと実質的に同一であることができる。
【0030】
積層型キャパシタ100は、少なくとも一つの第1内部電極121及び少なくとも一つの第2内部電極122間の間隔が短いほど、厚さに対してさらに大きい静電容量を有することができる。一方、積層型キャパシタ100の耐電圧は、上記間隔が長いほど高いことができる。したがって、上記間隔は積層型キャパシタ100の要求規格(例:電子機器用キャパシタのように小型化及び/または高容量が求められるか、電気機器用キャパシタのように高い耐電圧特性及び/または強い強度が求められるなど)によって調整されることができる。少なくとも一つの第1内部電極121及び少なくとも一つの第2内部電極122のそれぞれの厚さも上記間隔の影響を受けることができる。
【0031】
例えば、積層型キャパシタ100は、高い耐電圧特性及び/または強い強度が求められる場合に、少なくとも一つの第1内部電極121及び少なくとも一つの第2内部電極122間の間隔がそれぞれの厚さの2倍を超過するように設計されることができる。例えば、積層型キャパシタ100は、小型化及び/または高容量が求められる場合に少なくとも一つの第1内部電極121及び少なくとも一つの第2内部電極122のそれぞれの厚さが0.4μm以下であり、総積層数が400層以上になるように設計されることができる。
【0032】
第1及び第2外部電極131、132は、少なくとも一つの第1内部電極121及び少なくとも一つの第2内部電極122にそれぞれ連結されるように互いに離隔して本体110に配置されることができる。
【0033】
例えば、第1及び第2外部電極131、132のそれぞれは、金属成分が含まれたペーストにディッピング(dipping)する方法、導電性ペーストを印刷する方法、シート(Sheet)転写、パッド(Pad)転写方法、スパッタめっきまたは電解めっきなどで形成されることができる。例えば、第1及び第2外部電極131、132は、上記ペーストが焼成されることによって形成された焼成層及び上記焼成層の外面に形成されためっき層を含むことができ、上記焼成層及び上記めっき層の間に導電性樹脂層をさらに含むことができる。例えば、上記導電性樹脂層は、エポキシなどの熱硬化性樹脂に導電性粒子が含有されることによって形成されることができる。上記金属成分は、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、鉛(Pb)、スズ(Sn)などの単独またはこれらの合金であることができるが、これに限定されない。
【0034】
積層型キャパシタ100は、外部基板(例:プリント回路基板)に実装または内装されることができ、第1及び第2外部電極131、132を介して上記外部基板の配線、ランド、はんだ及びバンプの少なくとも一つに連結されることで上記外部基板に電気的に連結された回路(例:集積回路、プロセッサ)に電気的に連結されることができる。
【0035】
図1図2、及び図3を参照すると、本体110は上部カバー層112、下部カバー層113、及びコア領域115を含むことができ、コア領域115はマージン領域114及び容量領域116を含むことができる。
【0036】
上部及び下部カバー層112、113は、第1方向(例:T方向)にコア領域115を間に挟むように配置され、それぞれ少なくとも一つの誘電体層111よりもさらに厚いことができる。
【0037】
上部及び下部カバー層112、113は、外部環境要素(例:水分、めっき液、異物)がコア領域115に浸透することを防ぐことができ、本体110を外部衝撃から保護することができ、本体110の曲げ強度も向上させることができる。
【0038】
例えば、上部及び下部カバー層112、113は、少なくとも一つの誘電体層111と同一材料や異なる材料(例:エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂)を含むことができる。
【0039】
容量領域116は、少なくとも一つの第1内部電極121及び少なくとも一つの第2内部電極122の間を含むことができるため、積層型キャパシタ100の静電容量を形成することができる。
【0040】
容量領域116は、少なくとも一つの第1内部電極121及び少なくとも一つの第2内部電極122が少なくとも一つの誘電体層111を間に挟んで第1方向(例:T方向)に交互に積層された積層構造を含むことができ、上記積層構造と同一のサイズを有することができる。
【0041】
マージン領域114は、少なくとも一つの第1内部電極121及び少なくとも一つの第2内部電極122の境界線Mと本体110の表面との間を含むことができる。
【0042】
複数のマージン領域114は、第1方向(例:T方向)に垂直な第2方向(例:W方向)に容量領域116を間に挟むように配置されることができる。例えば、複数のマージン領域114は、少なくとも一つの誘電体層111と類似した方式(積層方向は異なる)で形成されることができ、本発明の一実施形態に係る誘電体組成物を含むことができる。
【0043】
複数のマージン領域114は、少なくとも一つの第1内部電極121及び少なくとも一つの第2内部電極122が本体110から第2方向(例:W方向)の表面に露出することを防ぐことができるため、外部環境要素(例:水分、めっき液、異物)が上記第2方向の表面を介して少なくとも一つの第1内部電極121及び少なくとも一つの第2内部電極122に浸透することを防止することができ、積層型キャパシタ100の信頼性及び寿命を向上させることができる。また、少なくとも一つの第1内部電極121及び少なくとも一つの第2内部電極122は、複数のマージン領域114によって第2方向に効率的に拡張して形成されることができるため、複数のマージン領域114は少なくとも一つの第1内部電極121及び少なくとも一つの第2内部電極の重なり面積を広げて積層型キャパシタ100の静電容量の向上にも寄与することができる。
【0044】
本発明の一実施形態に係る誘電体組成物は、ABO構造のperovskite系としてBaTiO系主成分を含むことができるため、高い誘電率を有することができ、積層型キャパシタの静電容量を高めることができる。
【0045】
本明細書において、「主成分」とは、他の成分に比べて比較的多い重量比率を占める成分を意味することができ、全体組成物または全体誘電体層の重量を基準にして50重量%以上である成分を意味することができる。なお、「副成分」とは、他の成分に比べて比較的少ない重量比率を占める成分を意味することができ、全体組成物または全体誘電体層の重量を基準にして50重量%未満である成分を意味することができる。また、本発明の一実施形態に係る誘電体組成物は、上述した誘電体の主成分及び副成分以外にも様々なセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤などを含有することができる。例えば、上記誘電体組成物は、バインダーとしてポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、アクリル樹脂などを含むことができる。
【0046】
本発明の一実施形態に係る誘電体組成物に含まれる副成分は、ドナー(donor)成分及びアクセプター(acceptor)成分を含むことができる。
【0047】
ドナー(donor)成分及びアクセプター(acceptor)成分は、主成分のABO構造のA(Baに対応)及びB(Tiに対応)にそれぞれ置換して固溶されることができる。
【0048】
ドナー(donor)成分は、バリウム(Ba)よりもさらに短いイオン半径(ionic radius)及びより多い原子量を有する元素(例:ランタン族元素)を含むことができる。バリウム(Ba)の原子価は+2であり、上記ドナー成分は概ね+3原子価(+3のfixed-valence)を有することができるため、上記ドナー成分が置換及び固溶された主成分の一部は1つの正電荷(single positive charge)をさらに有することができる。したがって、BaTiO系主成分の一部に上記ドナー成分が置換及び固溶されるにつれて、酸素(O)空孔の濃度は減少することができ、誘電体組成物の信頼性は向上することができる。
【0049】
ドナー(donor)成分は、それぞれバリウム(Ba)よりもさらに短いイオン半径(ionic radius)及びより多い原子量を有する第1及び第2元素を含み、上記第2元素のイオン半径は上記第1元素のイオン半径よりも長いことができる。
【0050】
上記第2元素のイオン半径がバリウム(Ba)のイオン半径及び上記第1元素のイオン半径の間のイオン半径を有することができるため、上記第2元素はバリウム(Ba)のイオン半径に対応することができる+2原子価の特性及び上記第1元素のイオン半径に対応することができる+3原子価の特性の中間的な特性を有することができる。
【0051】
したがって、上記第2元素は、上記第1元素が主成分のバリウム(Ba)を置換する過程での限界的状況で置換されない主成分の一部のバリウム(Ba)をさらに置換することができ、主成分の酸素(O)空孔の濃度も減少させることができる。結局、上記第1及び第2元素を含むドナー(donor)成分は、主成分により効果的に置換及び固溶され、主成分の酸素(O)空孔の濃度をより効果的に減少させることができる。
【0052】
バリウム(Ba)のイオン半径は1.35Åであり、ランタン族元素であるLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dyのイオン半径はそれぞれ1.03Å、1.02Å、0.99Å、0.98Å、0.96Å、0.94Å、0.92Åであることができる。例えば、上記第1元素は、1.35Åよりもさらに短いイオン半径を有するジスプロシウム(Dy)であることができ、上記第2元素は、1.35Åよりもさらに短く、0.92Åよりも長いイオン半径を有するサマリウム(Sm)であることができる。
【0053】
一方、絶縁抵抗(IR)は、上記第1及び第2元素を含むドナー(donor)成分の置換及び固溶によって減少することができ、低い絶縁抵抗(IR)は積層型キャパシタの耐電圧及び/または信頼性を低下させることができる。
【0054】
本発明の一実施形態に係る誘電体組成物は、上記第1及び第2元素を含むドナー(donor)成分を用いながらも、高い絶縁抵抗(IR)及び/または信頼性を有することができる。
【0055】
まず、上記第2元素のモル含有量は、上記第1元素のモル含有量よりも少ないことができる。上記第2元素が+2原子価の特性及び+3原子価の特性の中間的な特性によって絶縁抵抗(IR)の低下により大きな影響を与えることがあるため、本発明の一実施形態に係る誘電体組成物は、多数の第1元素及び少数の第2元素を含むドナー(donor)成分を用いることで絶縁抵抗(IR)の低下を抑制することができる。
【0056】
アクセプター(acceptor)成分は、Mg、Al、Mn、Vの少なくとも一つを含むことができる。Mg、Al、Mn、Vの少なくとも一つを含むアクセプター(acceptor)成分は、ドナー(donor)成分の増加に伴う絶縁抵抗(IR)の低下を抑制する上で効率的な元素であることができる。通常、ドナー(donor)成分に対応する電子(electron)及びアクセプター(acceptor)成分に対応する正孔(hole)は一対一で相互作用することができる。
【0057】
アクセプター(acceptor)成分のモル含有量は、ドナー(donor)成分のモル含有量よりも多いことができる。これにより、大量のアクセプター(acceptor)成分は、ドナー(donor)成分による絶縁抵抗(IR)の減少をさらに効率的に抑制することができる。
【0058】
図4は、本発明の一実施形態に係る誘電体組成物の組成による絶縁抵抗(IR)及び積層型キャパシタの信頼性を示した図面であり、総11個の具体的組成例(Prototype積層型キャパシタsample)を例示するが、これに限定されない。信頼性の〇は、×に比べて比較的信頼性が高いことを示し、信頼性の×は、〇に比べて比較的信頼性が低いことを示し、誘電体組成物及び積層型キャパシタの不良を示すものではない。すなわち、信頼性の〇及び×間の差異は大きいことがあるが、誘電体組成物及び積層型キャパシタの良品及び不良を決定する基準ではない。
【0059】
図4の各副成分(添加剤)の含有量は、チタン酸バリウム(BaTiO)またはチタン(Ti)100モル(mol)に対するモル含有量を示す。明細書全体において、モル含有量は、酸化物または炭酸塩などの添加形態を区分しない。例えば、アクセプター成分であり得るVの酸化物であるV0.1モルは、Vの0.2モルと同一であることができる。
【0060】
例えば、モル含有量は、TEM(Transmission Electron Microscopy)、AFM(Atomic Force Microscope)、SEM(Scanning Electron Microscope)、光学顕微鏡、及びsurface profilerの少なくとも一つを用いた分析によって視覚的に測定されるか、重量と体積との間の関係によって質量的に測定されるか、または化学反応によって抽出される物質を介して間接的に測定されることもある。
【0061】
図4を参照すると、本発明の一実施形態に係る誘電体組成物は、ジスプロシウム(Dy)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、バナジウム(V)及びアルミニウム(A1)の少なくとも一部を副成分(添加剤)として含むことができる。
【0062】
図4において、ランタン族元素(La)の総モル含有量は、ジスプロシウム(Dy)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)及びテルビウム(Tb)の総モル含有量として計算され、図4に示すモル含有量は小数点3桁で四捨五入した値であり、総モル含有量は、四捨五入する前の各モル含有量から計算された後に四捨五入した値である。
【0063】
図4の1行目から6行目の具体的な組成例は、ランタン族元素(La)の総モル含有量が0モル超過2.41モル未満に属し、ランタン族(La)元素の総モル含有量に対するサマリウム(Sm)のモル含有量の比は、0.04超過0.24未満に属することができる。これにより、過酷な環境(例:115℃で7.56Vが印加された状態)を所定時間(例:48時間)経る前の絶縁抵抗(初期IR)及び経た後の絶縁抵抗(後期IR)は、所定の絶縁抵抗(例:10の5乗オーム)を超過することがあるため、高い絶縁抵抗及び信頼性を得ることができる。
【0064】
図4の7行目の具体的な組成例は、ランタン族元素(La)の総モル含有量が2.41モル以上であるため、比較的低い絶縁抵抗(初期IR、後期IR)を有することができる。
【0065】
図4の8行目の具体的な組成例は、ランタン族(La)元素の総モル含有量に対するサマリウム(Sm)のモル含有量の比が0.24以上であるため、比較的低い絶縁抵抗(初期IR、後期IR)を有することができる。
【0066】
図4の9行目及び10行目の具体的な組成例は、ランタン族(La)元素の総モル含有量に対するサマリウム(Sm)のモル含有量の比が0.04以下であるため、過酷な環境を所定時間経る前の絶縁抵抗(初期IR)及び経た後の絶縁抵抗(後期IR)の間の差異が大きいことがあることから、比較的低い信頼性を有することがある。
【0067】
したがって、本発明の一実施形態に係る誘電体組成物は、総モル含有量が0モル超過2.41モル未満のランタン族元素(La)を含有し、0.04超過0.24未満のランタン族(La)元素の総モル含有量に対するサマリウム(Sm)のモル含有量の比を有することができるため、高い絶縁抵抗及び信頼性を有することができる。
【0068】
また、図4の1行目から6行目の具体的な組成例は、副成分のランタン族元素の総モル含有量が主成分のチタン(Ti)100モルに対して1.35モル未満であり、副成分においてサマリウム(Sm)のモル含有量は主成分のチタン(Ti)100モルに対して0モル超過0.22モル未満であることができるため、高い絶縁抵抗及び信頼性を得ることができる。
【0069】
図4の8行目の具体的な組成例は、副成分においてサマリウム(Sm)のモル含有量が主成分のチタン(Ti)100モルに対して0.22以上であるため、比較的低い絶縁抵抗(初期IR、後期IR)を有することができる。
【0070】
また、図4の5行目及び6行目の具体的な組成例は、互いにジスプロシウム(Dy)のモル含有量とテルビウム(Tb)のモル含有量が互いに異なり、ジスプロシウム(Dy)とテルビウム(Tb)の総モル含有量がほぼ同一の組成を有することができ、いずれも高い絶縁抵抗及び信頼性を有することができる。すなわち、本発明の一実施形態に係る誘電体組成物に含まれたランタン族(La)元素(または本明細書の第1及び第2元素)は、ジスプロシウム(Dy)及びサマリウム(Sm)に限定されない。図4のサマリウム(Sm)は、本明細書の第2元素に対応することができる。
【0071】
また、図4の1行目から6行目の具体的な組成例は、アクセプター成分(Mg、Al、Mn、V対応)のモル含有量に対するドナー成分(Dy、Sm、Gd、Tb)のモル含有量の比(D/A)が0.1超過0.32未満に属することがある。これにより、過酷な環境を所定時間経る前の絶縁抵抗(初期IR)及び経た後の絶縁抵抗(後期IR)は、所定の絶縁抵抗を超過することができるため、高い絶縁抵抗及び信頼性を得ることができる。
【0072】
図4の7行目の具体的な組成例は、アクセプター成分(Mg、Al、Mn、V対応)のモル含有量に対するドナー成分(Dy、Sm、Gd、Tb)のモル含有量の比(D/A)が0.32以上に属することができるため、比較的低い絶縁抵抗(初期IR、後期IR)を有することができる。
【0073】
図4の11行目の具体的な組成例は、アクセプター成分(Mg、Al、Mn、V対応)のモル含有量に対するドナー成分(Dy、Sm、Gd、Tb)のモル含有量の比(D/A)が0.10以下に属することがあるため、過酷な環境を所定時間経る前の絶縁抵抗(初期IR)及び経た後の絶縁抵抗(後期IR)の間の差異が大きいことがあることから、比較的低い信頼性を有することがある。
【0074】
図5aは、本発明の一実施形態に係る誘電体組成物のサマリウム(Sm)の含有量による絶縁抵抗を示したグラフであり、図5bは、本発明の一実施形態に係る誘電体組成物のジスプロシウム(Dy)の含有量による絶縁抵抗を示したグラフである。
【0075】
図5a及び図5bを参照すると、絶縁抵抗(Insulation Resistance)は、サマリウム(Sm)及び/またはジスプロシウム(Dy)の含有量が増加するにつれて減少することがあるため、本発明の一実施形態に係る誘電体組成物は比較的低い総モル含有量のランタン族(La)元素を含有することで高い絶縁抵抗を有することができる。
【0076】
また、サマリウム(Sm)の含有量が増加するにつれて絶縁抵抗が減少する傾きは、ジスプロシウム(Dy)のそれよりも大きいことがあるため、本発明の一実施形態に係る誘電体組成物は、サマリウム(Sm、第2元素に対応)のモル含有量よりもさらに多いジスプロシウム(Dy、第1元素に対応)のモル含有量を有することで高い絶縁抵抗を有することができる。
【0077】
図6は、本発明の一実施形態に係る積層型キャパシタの信頼性を示したグラフである。
【0078】
図6を参照すると、本発明の一実施形態に係る積層型キャパシタの信頼性は、過酷な環境(例:115℃で7.56Vが印加された状態)を所定時間(例:48時間)経ることで、絶縁抵抗(Insulation Resistance)が急激に低下する現象(NG)の発生頻度によって測定されることができる。
【0079】
例えば、上記頻度が低いと判断する基準は、上記頻度が標準正規分布の1シグマを外れる頻度よりも低いか否かに関連し、本発明の一実施形態に係る誘電体組成物を含む積層型キャパシタは、図6のように、NGの頻度が基準よりも低いことがあるため、高い信頼性を有することができる。
【0080】
以上では、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態及び添付図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。
【0081】
したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野の通常の知識を有する者によって様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0082】
100 積層型キャパシタ
110 本体(body)
111 誘電体層
112 上部カバー層
113 下部カバー層
114 マージン領域
115 コア領域
116 容量領域
121 第1内部電極
122 第2内部電極
131 第1外部電極
132 第2外部電極
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6