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特開2023-61917不整脈原性活動間の類似性を用いた電気生理学的(EP)信号のクラスタ化
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  • 特開-不整脈原性活動間の類似性を用いた電気生理学的(EP)信号のクラスタ化 図1
  • 特開-不整脈原性活動間の類似性を用いた電気生理学的(EP)信号のクラスタ化 図2
  • 特開-不整脈原性活動間の類似性を用いた電気生理学的(EP)信号のクラスタ化 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061917
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】不整脈原性活動間の類似性を用いた電気生理学的(EP)信号のクラスタ化
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/367 20210101AFI20230425BHJP
   A61B 5/361 20210101ALI20230425BHJP
   A61B 5/363 20210101ALI20230425BHJP
【FI】
A61B5/367
A61B5/361
A61B5/363
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022167442
(22)【出願日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】17/506,120
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・コーエン
(72)【発明者】
【氏名】ナタン・シャロン・カッツ
(72)【発明者】
【氏名】アハロン・ツルゲマン
(72)【発明者】
【氏名】ウラジミール・ドヴォルキン
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127GG05
4C127GG07
4C127GG10
4C127LL08
(57)【要約】
【課題】不整脈原性活動間の類似性を使用して電気生理学的信号をクラスタ化するための方法を提供すること。
【解決手段】方法は、複数の異なるタイプの不整脈を定義することを含む。類似性尺度は、不整脈のタイプについて定義される。患者の心臓内で取得されるEP信号のセットが受信される。EP信号のセットは、類似性尺度を使用して、各クラスタがそれぞれのタイプの不整脈のそれぞれの類似性尺度に適合したEP信号を含む、少なくとも2つのクラスタに分割される。クラスタは、ユーザに対して示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不整脈原性活動間の類似性を使用して電気生理学信号をクラスタ化するための方法であって、
複数の異なるタイプの不整脈を定義することと、
前記不整脈のタイプの類似性尺度を定義することと、
患者の心臓内で取得されたEP信号のセットを受信することと、
前記類似性尺度を使用して、前記EP信号のセットを、各クラスタがそれぞれのタイプの不整脈のそれぞれの類似性尺度に適合したEP信号を含む、少なくとも2つのクラスタに分割することと、
前記クラスタをユーザに対して示すことと、を含む、方法。
【請求項2】
前記クラスタを示すことが、各クラスタの代表的EP信号を示すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記EP信号のセットを分割することが、所与の関心窓にわたった各EP信号内の活動の数Nに基づいて前記EP信号を前記クラスタに割り当てることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記EP信号のセットを分割することが、各EP信号内の活動内のクロスイソピークの数に基づいて前記EP信号を前記クラスタに割り当てることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記EP信号のセットを分割することが、各EP信号内の活動の幅に基づいて前記EP信号を前記クラスタに割り当てることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記EP信号のセットを分割することが、各EP信号内の活動のピーク・ツー・ピークバイポーラ電圧に基づいて前記EP信号を前記クラスタに割り当てることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記EP信号のセットを分割することが、各EP信号内の活動の最も急な傾きに基づいて前記EP信号を前記クラスタに割り当てることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記類似性尺度が、線形和関数及び二次和関数の一方である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記EP信号が、電位図である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
不整脈原性活動間の類似性を使用して電気生理学信号をクラスタ化するためのシステムであって、
メモリであって、
複数の異なるタイプの不整脈の定義と、
前記不整脈のタイプについての類似性尺度の定義と、を記憶するように構成された、メモリと、
プロセッサであって、
患者の心臓内で取得されたEP信号のセットを受信し、
前記類似性尺度を使用して、前記EP信号のセットを、各クラスタがそれぞれのタイプの不整脈のそれぞれの類似性尺度に適合したEP信号を含む、少なくとも2つのクラスタに分割し、
前記クラスタをユーザに対して示すように構成された、プロセッサと、を含む、システム。
【請求項11】
前記プロセッサが、各クラスタの代表的なEP信号を示すことによって、前記クラスタを示すように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサが、所与の関心窓にわたる各EP信号内の活動の数Nに基づいて前記EP信号を前記クラスタに割り当てることによって、前記EP信号のセットを分割するように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサが、各EP信号内の活動内のクロスイソピークの数に基づいて前記EP信号を前記クラスタに割り当てることによって、前記EP信号のセットを分割するように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記プロセッサが、各EP信号内の活動の幅に基づいて前記EP信号を前記クラスタに割り当てることによって、前記EP信号のセットを分割するように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記プロセッサが、各EP信号内の活動のピーク・ツー・ピークバイポーラ電圧に基づいて前記EP信号を前記クラスタに割り当てることによって、前記EP信号のセットを分割するように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記プロセッサが、各EP信号内の活動の最も急な傾きに基づいて前記EP信号を前記クラスタに割り当てることによって、前記EP信号のセットを分割するように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
前記類似性尺度が、線形和関数及び二次和関数の一方である、請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
前記EP信号が、電位図である、請求項10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には電気生理学的(EP)信号分析に関し、詳細には心臓不整脈の分析に関する。
【背景技術】
【0002】
クラスタ化とは、データセット内のグループ又はクラスタを識別するタスクを指す。密度ベースのクラスタ化において、クラスタとは、高密度のオブジェクトの連続する領域にわたってデータ空間内に散らばったデータオブジェクトのセットである。密度ベースのクラスタ同士は、低密度のオブジェクトの隣接する領域によって互いに分離されている。低密度領域に位置するデータオブジェクトは、典型的には、ノイズ又は外れ値と見なされる。
【0003】
心臓組織における活動信号の伝播を特徴付けるための方法が特許文献にこれまでに提案されている。例えば、米国特許第9,737,227号は、解剖学的構造内又はその近くに配置された複数のマッピング電極によって生理学的活動の活動信号を検知することを含む、心臓の解剖学的構造をマッピングするためのシステム及び方法について記載している。検知された活動信号間のパターンは、類似性尺度の対応するペア間の相関に基づいて分類される、識別されたパターンの各固有のペア間で生成された類似性尺度に基づいて識別される。特性値表現は、類似性尺度のグループごとに決定され、特性表現の要約プロットとして表示される。
【0004】
別の例として、米国特許出願公開第2010/0280400号は、対象の体内の心臓事象に関連するエピソード拍動を検出するために使用することができる心リズム管理システムについて記載している。これらの事象を監視し、不整脈エピソードにおける不整脈性候補心拍について脱分極の形態情報を導出することができる。1つ以上の候補エピソードの特定の形態に従ったユーザのラベリングに基づいて不整脈性候補心拍の少なくとも1つを選択することによって不整脈性心拍形態のテンプレートを生成することができる。使用方法も示されている。
【0005】
米国特許出願公開第2004/0176697号は、心房細動中の心電図(ECG)の分析について記載している。詳細には、本発明は、心臓モデルの作成及び検証のためのそのような方法の使用、並びに心臓疾患の精密な診断における使用に関する。所与の患者又は患者群の心房細動の分類を、階層的方法(例えば、単リンク法、平均法(重み付けあり、及び重み付けなし)、重心法、中央値及び完全リンク法)、並びに、非階層的方法、例えば、k平均クラスタリングアルゴリズム法、適応k平均法、kメドイド法、及びファジークラスタ化法を含む、数学的クラスタ分析を行った係数を用いた自動回帰(AR)モデルを使用して行う。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に記載される本発明の実施形態は、複数の異なるタイプの不整脈を定義することを含む、不整脈原性活動間の類似性を使用して電気生理学的信号をクラスタ化するための方法を提供する。類似性尺度は、不整脈のタイプについて定義される。患者の心臓内で取得されるEP信号のセットが受信される。EP信号のセットは、類似性尺度を使用して、各クラスタがそれぞれのタイプの不整脈のそれぞれの類似性尺度に適合したEP信号を含む、少なくとも2つのクラスタに分割される。クラスタは、ユーザに対して示される。
【0007】
いくつかの実施形態では、クラスタを示すことは、各クラスタの代表的なEP信号を示すことを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、EP信号のセットを分割することは、所与の関心窓にわたる各EP信号内の活動の数Nに基づいてEP信号をクラスタに割り当てることを含む。
【0009】
一実施形態では、EP信号のセットを分割することは、各EP信号内の活動内のクロスイソピークの数に基づいてEP信号をクラスタに割り当てることを含む。
【0010】
別の実施形態では、EP信号のセットを分割することは、各EP信号内の活動の幅に基づいてEP信号をクラスタに割り当てることを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、EP信号のセットを分割することは、各EP信号内の活動のピーク・ツー・ピークバイポーラ電圧に基づいてEP信号をクラスタに割り当てることを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、EP信号のセットを分割することは、各EP信号内の活動の最も急な傾きに基づいてEP信号をクラスタに割り当てることを含む。
【0013】
一実施形態では、類似性尺度は、線形和関数及び二次和関数の一方である。
【0014】
いくつかの実施形態では、EP信号は、電位図である。
【0015】
更に、本発明の別の実施形態によれば、メモリ及びプロセッサを含む、不整脈原性活動間の類似性を使用して電気生理学的信号をクラスタ化するためのシステムが更に提供される。メモリは、(i)複数の異なるタイプの不整脈と、(ii)不整脈のタイプの類似性尺度の定義と、を記憶するように構成される。プロセッサは、(a)患者の心臓内で取得されたEP信号のセットを受信し、(b)類似性尺度を使用して、EP信号のセットを、各クラスタがそれぞれのタイプの不整脈のそれぞれの類似性尺度に適合したEP信号を含む、少なくとも2つのクラスタに分割し、(c)クラスタをユーザに対して示すように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
図1】本発明の例示的な実施形態による、電気生理学的(electrophysiological、EP)マッピング及びアブレーションのためのシステムの概略描図である。
図2】本発明の例示的な実施形態による、各グラフが異なるタイプの心臓EP信号を表す、EP信号の一連の概略的グラフである。
図3】本発明の例示的な実施形態による、不整脈原性EP信号間の類似性を用いてEP信号をクラスタ化する方法を概略的に示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
概論
心室などの患者の器官の組織の電気的活動は、遠位端に適当な電極が取り付けられたマッピングカテーテルを使用して、例えば、電気解剖学的及び/又は電気生理学的にマッピングすることができる。EPマッピングシステムは、カテーテルによって出力された信号を取得して分析することができる。
【0018】
実際には、心不整脈分析法において、極めて多数、例えば、数万又は更に多くのEP信号(例えば、双極性電位図)を取得することができる。医師は、これらの多数のEP信号の中でもEP信号の小さなサブセットのみ、例えば、ある特殊な分裂電位を示す電位図、又は特定の周期若しくは局所興奮時間(LAT)を特徴とする電位図のみを見ることに関心がある場合がある。しかしながら、取得されるEP信号の数が多いため、取得されたEP信号のセット全体の中のサブセットの要素を特定することは困難であるとともに時間もかかる。
【0019】
以下に記載される本発明の実施形態は、例えば、EP信号のセットをクラスタに自動的に分割するアルゴリズムを提供する(EP信号は、電位図(EGM)又は心電図(ECG)であってよい)。例示的な実施形態では、電位図のセットは、不整脈を有する患者から取得される。次いで、電位図を分析して、興奮時間、興奮持続時間、電位図のピーク数、ピークの勾配などのパラメータを見つける。アルゴリズムは、これらのパラメータを使用して、各電位図を、通常の伝導、心房細動、粗動、頻脈、又は他のタイプの不整脈などの複数のタイプの所定のEP活動のうちの1つと関連付ける。
【0020】
EP信号の各タイプについて、「類似性尺度」とは、定義されたEP信号のタイプ(例えば、不整脈のタイプ)内のEP信号(例えば、電位図)に関連する所定の距離である。この数学的類似性、例えば、以下に記載するような類似性メトリックによって定義されるものは、「隣接する」信号を定義するパラメータの境界を規定する。一例として、特定のタイプの不整脈の電位図は、各ピークがある指定範囲内、例えば、2mV~5mVの最大電圧を有する2つの活動を有するものとして定義することができる。電位図は、その2つの活動が所与の電位図の所与の類似性の差(例えば、10%)内にある場合にこのタイプの所与の電位図の近傍と見なされる。
【0021】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、既定のタイプ及びそれらのそれぞれの距離を用いて、特定のEP信号が定義されたタイプの1つの中にクラスタ化されているかどうかを判定するクラスタ化アルゴリズムを実行する。使用することが可能な典型的なクラスタ化アルゴリズムとしては、以前に文献に記載されているDBSCAN及びOPTICSアルゴリズムが挙げられる。これら2つのアルゴリズムについては、例えば、Kriegelらによる「Density-based clustering,」(WIREs Data Mining and Knowledge Discovery,Volume 1,Issue 3,May/June 2011,p.231-240)と題する総説に記載されている。
【0022】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、EP信号をユーザの介入なしに自動的にクラスタ化する。EP信号を信号のクラスタ化グループ(すなわち、タイプ)、例えば10個のグループにサブ分割することで、医師がEP信号を調べるために要し得る時間が短縮される。したがって、医師は、取得された信号の多く又はすべてを調べる代わりに、10個のクラスタタイプの代表的な信号を調べるだけでよい。
【0023】
システムの説明
図1は、本発明の例示的な実施形態による、電気生理学的(electrophysiological、EP)マッピング及びアブレーションのためのシステム21の概略描図である。図1は、患者25の心臓23のEPマッピングを実行するためにEPマッピングカテーテル29を使用している医師27を図示している。カテーテル29は、その遠位端において、マッピング電極22に各々結合された1つ以上のアーム20を備える多チャネル電極アレイ50を備える。マッピング手技中に、電極22は、心臓23の組織から信号を取得する、及び/又は心臓23の組織に信号を注入する。詳細には、電極22は、ユニポーラ及び/又はバイポーラ電位図などの心臓内EP信号を取得する。
【0024】
カテーテル29は、高周波(RF)又は不可逆的エレクトロポレーション(IRE)などのアブレーションを行うために更に使用することができる。
【0025】
心臓23内のマッピング電極22のそれぞれの位置(すなわち、電位図が測定される場所)も追跡され、それにより、プロセッサ28は、取得された各電位図を、信号が取得された位置と関連付けることができる。システム21は、患者25の身体に接続された複数の外部電極24を使用して、電気的位置信号を外部から検知する。例えば、3個の外部電極24を患者の胸に接続し、別の3個の外部電極を患者の背中に接続することができる。例示しやすいように、1本の外部電極しか図1には示されていない。
【0026】
検知された電気位置信号を使用して、患者の心臓23内のマッピング用電極22の位置を追跡するために使用可能なシステムの一例は、CARTO(登録商標)3システム(Biosense Webster製、Irvine、California)である。CARTO(登録商標)3システムは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,456,182号に詳細に記載される、Advanced Current Location(ACL)して知られる追跡方法を用いる。
【0027】
データ取得モジュール33は、カテーテル29内に敷設された導線リンクを介して電気インターフェース35に伝達される複数の電位図信号を受信する。システム21のプロセッサ28は、電気的インターフェース35を介してこれらの心臓信号を受信し、前述の類似性関数に基づいて、開示されるクラスタ化アルゴリズムを使用して、図2に示される例のように、約10種のEP信号タイプ(例えば、システム21のディスプレイ26に示される電位図40のタイプ)となり得る異なる既定の不整脈タイプ、例えば、心房細動、頻脈、粗動などに従って、これらの信号をクラスタ化する。これにより、医師27は、マッピング結果を臨床的に評価するうえで、より多くの取得された信号ではなく、少しの数(例えば、10種)のEP信号(例えば、信号40)のみを調べるだけでよい。この情報に基づいて、医師27は、例えば、アブレーションを実施することを判断することができる。
【0028】
様々なタイプの不整脈の定義、及び対応する類似性尺度の定義は、典型的には、プロセッサ28によって使用されるメモリ31に記憶される。プロセッサ28はまた、EPマップを構築するなど、更なる分析を行うために、クラスタ化された電位図をメモリ31に記憶する。
【0029】
図1に示される例示的な実施形態は、純粋に、概念を分かりやすくするために選択されたものである。Lasso(登録商標)カテーテル(Biosense Websterにより製造される)又はバスケットカテーテルのものなど、他の種類の多電極検知構成を用いることもできる。加えて、接触センサは、電気解剖学的カテーテル29の遠位端部に装着され、組織との電極接触の物理的品質を示すデータを送信してもよい。例示的な実施形態では、いくつかの電極22の測定値は、その物理的接触の質が乏しいため捨てることができるが、他の電極の測定値は、その接触の品質が高いために有効と見なすことができる。
【0030】
プロセッサ28は、典型的には、本明細書に記載されている機能を実行するようにプログラムされたソフトウェアと共に汎用コンピュータを備える。ソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができる。あるいは、代替的に又は追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの、非一時的実体的媒体上に提供及び/又は記憶することができる。具体的に言えば、プロセッサ28は、図3に記載される各ステップをプロセッサ28が実行することを可能とする専用アルゴリズムを実行する。
【0031】
不整脈原性活動間の類似性を使用したEP信号のクラスタ化
上記に述べたように、提供されるクラスタ化アルゴリズムは、取得されたEP信号を分析して、興奮時間、興奮持続時間、EP信号のピーク数、及びピークの傾きなどのEP信号のパラメータを見つける。プロセッサは、これらのパラメータを類似度尺度で使用するアルゴリズムを用いて、異常と認められた場合に各EP信号を様々な既定の不整脈タイプと関連付ける。
【0032】
例示的な実施形態では、(類似性関数についての)心房粗動不整脈のタイプごとのクラスタ化パラメータは、以下のとおりである。
関心窓(WOI)内の活動数:N
活動内のクロスイソピークの数:P
活動の幅:W
活動のピーク・ツー・ピークバイポーラ電圧
活動の最も急な傾き:S
【0033】
EP信号のペア間で、[0,1]の範囲内の類似性関数の正規化された値は、差:dP、dW、dV、dSを用いて対応して計算される。
【0034】
ステージクラスタ化モデルを仮定すると、第1のステージは、WOI内の活動の数Nによってのみ特徴付けられ、4つのクラスタ(平坦:0個の活動、単一電位、二重電位、その他:2つ超の活動)を生成する。
【0035】
モデルの第2のステージは、パラメータの残りの部分に対する類似性関数F(EP_信号_1,EP_信号_2)に基づいて計算される
F(EP_sig_1、EP_sig_2)=0.5・dP+0.25・dS+0.125・dV+0.125・dW
【0036】
上記の線形類似性関数は、例として挙げたものである。他の関数、又はノルム、例えば、dP、dW、dV、及びdSの二次的なものを使用することができる。
【0037】
図2は、本発明の例示的な実施形態による、各グラフが異なる心臓活動タイプを表す、EP信号の概略グラフのセット41である。図2は、不整脈原性活動のタイプなどの、心臓EP信号タイプのそれぞれの既定のクラスタを表す10個のそのような概略グラフを示す。示されるEP信号は、バイポーラ電位図である。
【0038】
セット41では、異なるグラフは、共通のWOI202内の異なる数N個の活動42を有し得る。例えば、EP信号タイプ2及び4が、N=2個の活動42(例えば、ピーク、複合ピーク)を有しているのに対して、EP信号タイプ6及び9は、N=3個のピークを有している。それに関して、EP信号タイプ3は、N>4個のピークを有することによって固有である。
【0039】
別の例として、EP信号タイプ7が活動の大きな幅Wを示しているのに対して、EP信号タイプ4及び10は、より狭いWを示している。
【0040】
医師は、心臓活動を評価し、またタイプのどれが臨床的有意性を有するかを判定するために、10個のクラスタ代表的なEP信号タイプ1~10のセット41のみを調べるだけでよい。例えば、ほとんどのタイプは、疑わしい電気的活動、異常な基質、可能なアブレーション標的、又は医師にとっての他の関心形態を表す少数のタイプのみを有する正常な心臓活動を表すことができる。
【0041】
図2の各グラフは概略的であり、あくまで例として、技術を例示するために示されるものである。特に、示されたグラフのセット41は、特定の使用事例を表す(例えば、診断値事例を表す)ことを意図したものではない。実際の不整脈の実際のEP信号は、本明細書に示されるものとは異なり得る。
【0042】
図3は、本発明の例示的な実施形態による、不整脈原性EP信号間の類似性を用いてEP信号をクラスタ化する方法を概略的に示すフロー図である。示された例示的な実施形態によれば、アルゴリズムは、不整脈タイプ定義ステップ302において、医師27などのユーザが、異なる不整脈タイプのグループを定義する(例えば、アルゴリズムがインストールされたプロセッサ28を使用して選択する)際に開始するプロセスを実行する。
【0043】
次に、類似性尺度定義ステップ304において、アルゴリズムが各不整脈タイプについて定義された類似性尺度を選択し、医師27は、選択された1つ以上の類似性尺度のパラメータを任意選択的に調整することができる。
【0044】
EPデータ受信ステップ306において、プロセッサ28が、心室をマッピングした(又はリアルタイムでマッピングする)多電極カテーテル(例えば、カテーテル29)によって取得された数千ものEP信号のセットを受信する。
【0045】
クラスタ化ステップ308において、プロセッサ28は、1つ以上の類似性尺度を使用して、EP信号のセットを、各クラスタが不整脈のタイプのそれぞれの類似性尺度に適合したそのEP信号を特徴とする、少なくとも2つのクラスタに分割する。
【0046】
最後に、プロセッサ28は、EP信号提示ステップ310において、異なるクラスタのセット41などの代表的なグラフをディスプレイ26に示す。典型的には、プロセッサは、信号の各クラスタからの中央信号をクラスタの代表的信号として選択する。しかしながら、他の任意の適当な選択を用いることもできる。
【0047】
本明細書に記載される実施形態は、主として心臓用途を対象にしたものであるが、本明細書に記載される方法及びシステムは、脳の電気的活動のマッピングなどの他の用途にも使用することができる。
【0048】
したがって、上述の実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、上記に具体的に示し、かつ説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれた文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義される範囲で本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な部分と見なすものとする。
【0049】
〔実施の態様〕
(1) 不整脈原性活動間の類似性を使用して電気生理学信号をクラスタ化するための方法であって、
複数の異なるタイプの不整脈を定義することと、
前記不整脈のタイプの類似性尺度を定義することと、
患者の心臓内で取得されたEP信号のセットを受信することと、
前記類似性尺度を使用して、前記EP信号のセットを、各クラスタがそれぞれのタイプの不整脈のそれぞれの類似性尺度に適合したEP信号を含む、少なくとも2つのクラスタに分割することと、
前記クラスタをユーザに対して示すことと、を含む、方法。
(2) 前記クラスタを示すことが、各クラスタの代表的EP信号を示すことを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記EP信号のセットを分割することが、所与の関心窓にわたった各EP信号内の活動の数Nに基づいて前記EP信号を前記クラスタに割り当てることを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記EP信号のセットを分割することが、各EP信号内の活動内のクロスイソピーク(cross iso-peaks)の数に基づいて前記EP信号を前記クラスタに割り当てることを含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記EP信号のセットを分割することが、各EP信号内の活動の幅に基づいて前記EP信号を前記クラスタに割り当てることを含む、実施態様1に記載の方法。
【0050】
(6) 前記EP信号のセットを分割することが、各EP信号内の活動のピーク・ツー・ピークバイポーラ電圧に基づいて前記EP信号を前記クラスタに割り当てることを含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記EP信号のセットを分割することが、各EP信号内の活動の最も急な傾きに基づいて前記EP信号を前記クラスタに割り当てることを含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記類似性尺度が、線形和関数及び二次和関数の一方である、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記EP信号が、電位図である、実施態様1に記載の方法。
(10) 不整脈原性活動間の類似性を使用して電気生理学信号をクラスタ化するためのシステムであって、
メモリであって、
複数の異なるタイプの不整脈の定義と、
前記不整脈のタイプについての類似性尺度の定義と、を記憶するように構成された、メモリと、
プロセッサであって、
患者の心臓内で取得されたEP信号のセットを受信し、
前記類似性尺度を使用して、前記EP信号のセットを、各クラスタがそれぞれのタイプの不整脈のそれぞれの類似性尺度に適合したEP信号を含む、少なくとも2つのクラスタに分割し、
前記クラスタをユーザに対して示すように構成された、プロセッサと、を含む、システム。
【0051】
(11) 前記プロセッサが、各クラスタの代表的なEP信号を示すことによって、前記クラスタを示すように構成されている、実施態様10に記載のシステム。
(12) 前記プロセッサが、所与の関心窓にわたる各EP信号内の活動の数Nに基づいて前記EP信号を前記クラスタに割り当てることによって、前記EP信号のセットを分割するように構成されている、実施態様10に記載のシステム。
(13) 前記プロセッサが、各EP信号内の活動内のクロスイソピークの数に基づいて前記EP信号を前記クラスタに割り当てることによって、前記EP信号のセットを分割するように構成されている、実施態様10に記載のシステム。
(14) 前記プロセッサが、各EP信号内の活動の幅に基づいて前記EP信号を前記クラスタに割り当てることによって、前記EP信号のセットを分割するように構成されている、実施態様10に記載のシステム。
(15) 前記プロセッサが、各EP信号内の活動のピーク・ツー・ピークバイポーラ電圧に基づいて前記EP信号を前記クラスタに割り当てることによって、前記EP信号のセットを分割するように構成されている、実施態様10に記載のシステム。
【0052】
(16) 前記プロセッサが、各EP信号内の活動の最も急な傾きに基づいて前記EP信号を前記クラスタに割り当てることによって、前記EP信号のセットを分割するように構成されている、実施態様10に記載のシステム。
(17) 前記類似性尺度が、線形和関数及び二次和関数の一方である、実施態様10に記載のシステム。
(18) 前記EP信号が、電位図である、実施態様10に記載のシステム。
図1
図2
図3
【外国語明細書】