(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061975
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】治療的核酸送達のための生物界間のプラットフォーム
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20230425BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230425BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20230425BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20230425BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230425BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230425BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230425BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230425BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230425BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230425BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20230425BHJP
C12N 15/44 20060101ALN20230425BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20230425BHJP
【FI】
C12N1/21
A61K31/7088
A61K35/74 A
A61K35/744
A61K48/00
A61P31/00
A61P35/00
A61P37/02
A61P37/08
A61P43/00 105
C12N15/09 Z
C12N15/44
C12N15/63 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023010843
(22)【出願日】2023-01-27
(62)【分割の表示】P 2019555028の分割
【原出願日】2018-04-03
(31)【優先権主張番号】62/480,875
(32)【優先日】2017-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519357659
【氏名又は名称】シベック バイオテクノロジーズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】リンジー エム.リンケ
(72)【発明者】
【氏名】ダーシー モーラ
(57)【要約】
【課題】核酸が高められた安定性を有するように操作された上皮組織に治療的核酸を送達するための生物界間のプラットフォーム。
【解決手段】このプラットフォームは、治療的核酸送達媒体と同時パッケージングするために、TAR RNA結合タンパク質(TRBP)の二本鎖RNA結合ドメイン(dsRBD)ドメインの発現、細菌送達媒体におけるRNase R活性のノックアウト、メチルトランスフェラーゼ遺伝子の発現、HEN1等、以前の送達プラットフォームに多数の改善を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原核生物のベクターを含む非病原性細菌であって、該ベクターが、1以上の治療的核酸をコードするDNA分子及び前記治療的核酸の転写を制御する原核生物のプロモーターを含み、前記細菌が操作され、減少された治療的核酸分解表現型を示し、前記治療的核酸の目的の効果又は活性の安定性、大きさ、又は持続期間を増加させる、非病原性細菌。
【請求項2】
前記治療的核酸が、低分子干渉RNA/低分子ヘアピン型RNA(siRNA/shRNA)、microRNA(miRNA)、アンタゴmiR、RNA又はDNAアプタマー、メッセンジャーRNA(mRNA)、スプライス-スイッチングオリゴヌクレオチド(splice-switching oligonucleotide)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチジーンオリゴヌクレオチド(antigene oligonucleotide)、DNAザイム、RNAデコイ、リボザイム、ペプチド核酸、オリゴマー、及び干渉性欠損粒子から選択される核酸である請求項1に記載の非病原性細菌。
【請求項3】
前記細菌が操作され、dsRNA結合タンパク質(dsRBP)又はdsRBPの1以上の結合ドメイン又はフラグメントを発現する請求項1に記載の非病原性細菌。
【請求項4】
前記dsRBP又は前記1以上の結合ドメイン又はフラグメントが、治療的核酸産生プラスミドにおいてコードされる請求項3に記載の非病原性細菌。
【請求項5】
前記細菌が操作され、TAR RNA-結合タンパク質(TRBP)、核内因子90、(NF90)、ZNF346、SiD-1、及びKu70、並びにそれらの組合せから選択されるタンパク質からdsRBP結合ドメインを発現する請求項3に記載の非病原性細菌。
【請求項6】
前記細菌が操作され、減少したRNase活性を示す請求項1に記載の非病原性細菌。
【請求項7】
前記細菌が、機能的rnr遺伝子を欠く操作された細菌である請求項6に記載の非病原性細菌。
【請求項8】
RNase E、RNase I、RNase H、及びRNase Jからなる群から選択されるタンパク質をコードする遺伝子が、前記細菌において削除又はダウンレギュレートされる請求項6に記載の非病原性細菌。
【請求項9】
前記細菌が操作され、治療的核酸の3’末端ヌクレオチドをメチル化する産物を発現する請求項1に記載の非病原性細菌。
【請求項10】
前記細菌が操作され、HEN1タンパク質又は活性メチルトランスフェラーゼフラグメント又はそのドメインを発現する請求項9に記載の非病原性細菌。
【請求項11】
前記HEN1タンパク質又は活性メチルトランスフェラーゼフラグメント又はそのドメインが、クロストリジウム・サーモセラム(C.thermocellum)HEN1のC末端メチラーゼドメインである請求項9に記載の非病原性細菌。
【請求項12】
前記細菌が、リステリア(Listeria)、エルシニア(Yersinia)、リケッチア(Rickettsia)、赤痢菌(Shigella)、大腸菌(E.coli)、サルモネラ菌(Salmonella)、レジオネラ菌(Legionella)、クラミジア菌(Chlamydia)、ブルセラ菌(Brucella)、ナイセリア菌(Neisseria)、バークホルデリア菌(Burkolderia)、ボルデテラ菌(Bordetella)、ボレリア菌(Borrelia)、コクシエラ菌(Coxiella)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、ヘリコバクター(Helicobacter)、ブドウ球菌(Staphylococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)、ポルフィロモナス(Porphyromonas)、ビブリオ(Vibrio)、トレポネーマ(Treponema)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、及びビフィズス菌(Bifidobacteriae)からなる細菌の群からの操作された細菌である請求項1に記載の非病原性細菌。
【請求項13】
原核生物のベクターを含む非病原性細菌であって、該ベクターが、1以上の治療的核酸をコードするDNA分子及び前記治療的核酸の転写を制御する原核生物のプロモーターを含み、前記治療的核酸が、1以上の標的分子に干渉し、前記細菌が操作され、標的細胞にシアル酸残基を結合させるタンパク質を発現することを特徴とする非病原性細菌。
【請求項14】
前記細菌が操作され、インフルエンザヘマグルチニン-1(HA-1)タンパク質又はそのフラグメント又は結合ドメインを発現する請求項13に記載の非病原性細菌。
【請求項15】
前記細菌が操作され、Invタンパク質又はそのフラグメント又は結合ドメインを発現する請求項13に記載の非病原性細菌。
【請求項16】
原核生物のベクターを含む非病原性細菌であって、該ベクターが、1以上の治療的核酸をコードするDNA分子及び前記治療的核酸の転写を制御する原核生物のプロモーターを含み、前記治療的核酸が、1以上の標的分子に干渉し、前記DNA分子が抗生物質耐性遺伝子を欠くことを特徴とする非病原性細菌。
【請求項17】
原核生物のベクターを含む非病原性細菌であって、該ベクターが、1以上の治療的核酸をコードするDNA分子及び前記治療的核酸の転写を制御する原核生物のプロモーターを含み、前記治療的核酸が、1以上の標的分子に干渉し、前記非病原性細菌が操作され、栄養要求変異体となったことを特徴とする非病原性細菌。
【請求項18】
前記非病原性細菌及び前記DNA分子が、抗生物質耐性遺伝子を欠く請求項17に記載の非病原性細菌。
【請求項19】
1以上のアミノ酸の合成において、前記細菌が操作され、染色体性欠損となった請求項17に記載の非病原性細菌。
【請求項20】
前記細菌が、ヒスチジン合成が欠損するように操作された請求項19に記載の非病原性細菌。
【請求項21】
前記DNA分子が、1以上のアミノ酸をコードし、それによって前記DNA分子を有する集団の選択は、前記1以上のアミノ酸が欠乏している培地での成長により促進され、前記DNA分子上のアミノ酸を欠損させる遺伝子の存在により、前記DNA分子を有する細菌の成長を可能にする請求項19に記載の非病原性細菌。
【請求項22】
前記細菌が、hisD又はhisBノックアウトである請求項19に記載の非病原性細菌。
【請求項23】
対象の病気を治療するキットであって、前記キットが、組成物中に請求項1に記載の非病原性細菌を含み、前記組成物が、鼻腔内への鼻腔内投与、上部及び下部呼吸ターゲティングのためのエアロゾル投与、頬側送達のための口腔での吸収、GI吸着のための摂取、デリケートな生殖器粘膜上皮への適用、及び眼内送達のための局所投与から選択される経路における投与に適した形態で提供されることを特徴とするキット。
【請求項24】
原核生物のベクターを含む非病原性細菌であって、該ベクターが、1以上の治療的核酸をコードするDNA分子及び前記治療的核酸の転写を制御する原核生物のプロモーターを含み、前記細菌が操作され、dsRNA結合タンパク質(dsRBP)を発現することを特徴とする非病原性細菌。
【請求項25】
前記治療的核酸が、低分子干渉RNA/低分子ヘアピン型RNA(siRNA/shRNA)、microRNA(miRNA)、アンタゴmiR、RNA又はDNAアプタマー、メッセンジャーRNA(mRNA)、スプライス-スイッチングオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチジーンオリゴヌクレオチド、DNAザイム、RNAデコイ、リボザイム、ペプチド核酸、オリゴマー、及び干渉性欠損粒子から選択される核酸である請求項24に記載の非病原性細菌。
【請求項26】
前記dsRBPが、TAR RNA結合タンパク質(TRBP)である請求項24に記載の非病原性大腸菌(E.coli)細菌。
【請求項27】
前記細菌を更に操作し、少なくとも1つの遺伝子を発現し、対象の標的組織に前記細菌の侵入を促進する請求項24に記載の非病原性細菌。
【請求項28】
原核生物のベクターを含む非病原性大腸菌(E.coli)細菌であって、該ベクターが、1以上のsiRNAをコードするDNA分子及び前記siRNAの転写を制御するプロモーターを含み、前記siRNAが、1以上の標的RNA分子に干渉し、前記細菌が操作され、dsRNA結合タンパク質(dsRBP)を発現することを特徴とする非病原性大腸菌(E.coli)細菌。
【請求項29】
前記細菌が更に操作され、少なくとも1つのinv遺伝子及び少なくともインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA-1)タンパク質を発現する請求項28に記載の非病原性大腸菌(E.coli)細菌。
【請求項30】
前記dsRBPが、TAR RNA結合タンパク質(TRBP)である請求項28に記載の非病原性大腸菌(E.coli)細菌。
【請求項31】
原核生物のベクターを含む非病原性大腸菌(E.coli)細菌であって、該ベクターが、1以上のsiRNAをコードするDNA分子及び前記siRNAの転写を制御するプロモーターを含み、前記siRNAが、1以上の標的RNA分子に干渉し、前記細菌が操作され、減少したRNase活性を示すことを特徴とする非病原性大腸菌(E.coli)細菌。
【請求項32】
前記細菌が、機能的rnr遺伝子を欠損している請求項31に記載の非病原性大腸菌(E.coli)細菌。
【請求項33】
33℃以下、30℃以下、27℃以下、25℃以下、22℃以下、20℃以下、及び17℃以下からなる群から選択される温度で、非病原性RNase R欠損媒体を成長させる工程を含むことを特徴とする生物界間送達媒体を製造する方法。
【請求項34】
前記細菌が、リステリア(Listeria)、エルシニア(Yersinia)、リケッチア(Rickettsia)、赤痢菌(Shigella)、大腸菌(E.coli)、サルモネラ菌(Salmonella)、レジオネラ菌(Legionella)、クラミジア菌(Chlamydia)、ブルセラ菌(Brucella)、ナイセリア菌(Neisseria)、バークホルデリア菌(Burkolderia)、ボルデテラ菌(Bordetella)、ボレリア菌(Borrelia)、コクシエラ菌(Coxiella)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、ヘリコバクター(Helicobacter)、ブドウ球菌(Staphylococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)、ポルフィロモナス(Porphyromonas)、ビブリオ(Vibrio)、トレポネーマ(Treponema)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、及びビフィズス菌(Bifidobacteriae)からなる細菌の群からの操作された細菌である請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記細菌が、非病原性大腸菌(E.coli)である請求項34に記載の方法。
【請求項36】
原核生物のベクターを含む非病原性大腸菌(E.coli)細菌であって,該ベクターが、1以上のsiRNAをコードするDNA分子及び前記siRNAの転写を制御するプロモーターを含み、前記siRNAが、1以上の標的RNA分子に干渉し、前記細菌が操作され、siRNAの3’末端ヌクレオチドをメチル化することを特徴とする非病原性大腸菌(E.coli)細菌。
【請求項37】
原核生物のベクターを含む非病原性大腸菌(E.coli)細菌であって、該ベクターが、1以上のsiRNAをコードするDNA分子及び前記siRNAの転写を制御するプロモーターを含み、前記siRNAが、1以上の標的RNA分子に干渉し、前記細菌が操作され、HEN1遺伝子を発現し、それによってHEN1が、前記siRNAの3’末端ヌクレオチドのメチル化を促進することを特徴とする非病原性大腸菌(E.coli)細菌。
【請求項38】
原核生物のベクターを含む非病原性大腸菌(E.coli)細菌であって、該ベクターが、1以上のsiRNAをコードするDNA分子及び前記siRNAの転写を制御するプロモーターを含み、前記siRNAが、1以上の標的RNA分子に干渉し、前記細菌が操作され、HEN1遺伝子のC末端メチラーゼドメインを発現し、それによってHEN1のC末端メチラーゼドメインが、siRNAの3’末端ヌクレオチドのメチル化を促進することを特徴とする非病原性大腸菌(E.coli)細菌。
【請求項39】
原核生物のベクターを含む非病原性大腸菌(E.coli)細菌であって、該ベクターが、1以上のsiRNAをコードするDNA分子及び前記siRNAの転写を制御するプロモーターを含み、前記siRNAが、1以上の標的RNA分子に干渉し、前記細菌が操作され、dsRNA結合タンパク質(dsRBP)及びHEN1遺伝子を発現することを特徴とする非病原性大腸菌(E.coli)細菌。
【請求項40】
前記非病原性大腸菌(E.coli)細菌が、機能的rnr遺伝子を欠損している請求項39に記載の非病原性大腸菌(E.coli)細菌。
【請求項41】
前記細菌を更に操作し、少なくとも1つのinv遺伝子及び少なくともインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA-1)タンパク質を発現する請求項40に記載の非病原性大腸菌(E.coli)細菌。
【請求項42】
原核生物のベクターを含む非病原性細菌であって、該ベクターが、1以上の治療的核酸をコードするDNA分子及び前記治療的核酸の転写を制御する原核生物のプロモーターを含み、前記治療的核酸が1以上の標的分子に干渉し、前記細菌が操作され、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA-1)タンパク質を発現することを特徴とする非病原性細菌。
【請求項43】
前記細菌が更に操作され、少なくとも1つのinv遺伝子を発現する請求項42に記載の非病原性細菌。
【請求項44】
前記治療的核酸が、1以上の標的インフルエンザウイルスRNA分子に干渉する請求項43に記載の非病原性細菌。
【請求項45】
原核生物又は真核生物のベクターを含む非病原性細菌又は酵母であって、該ベクターが、1以上の核酸をコードするDNA分子及び前記核酸の転写を制御するプロモーターを含み、前記細菌又は酵母が操作され、染色体からインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA-1)タンパク質を発現することを特徴とする非病原性細菌又は酵母。
【請求項46】
原核生物又は真核生物のベクターを含む非病原性細菌又は酵母であって、該ベクターが、1以上の核酸をコードするDNA分子及び前記核酸の転写を制御するプロモーターを含み、前記細菌又は酵母が操作され、染色体からhlyA、inv、HA-1、TRBP、HEN1を発現することを特徴とする非病原性細菌又は酵母。
【請求項47】
前記核酸が、治療的核酸である請求項46に記載の非病原性細菌又は酵母。
【請求項48】
原核生物又は真核生物のベクターを含む非病原性細菌又は酵母であって、該ベクターが、1以上の核酸をコードするDNA分子及び前記核酸の転写を制御するプロモーターを含み、前記細菌又は酵母が操作され、染色体からdsRNA結合タンパク質(dsRBP)又はdsRBP結合ドメインを発現することを特徴とする非病原性細菌又は酵母。
【請求項49】
前記細菌が操作され、TAR RNA結合タンパク質(TRBP)、核内因子90、(NF90)、ZNF346、SiD-1、及びKu70、並びにその組合せから選択されるタンパク質からdsRBP結合ドメインを発現する請求項48に記載の非病原性細菌。
【請求項50】
プラスミドを含む非病原性細菌又は酵母であって、該プラスミドが、1以上の核酸をコードするDNA分子及び前記核酸の転写を制御するプロモーターを含み、治療的核酸が、1以上の標的分子に干渉し、前記非病原性細菌又は酵母が操作され、DNA分子の選択又は維持のための栄養要求変異体となったことを特徴とする非病原性細菌又は酵母。
【請求項51】
前記治療的核酸が、低分子干渉RNA低分子ヘアピン型RNA(siRNA shRNA)、micro RNA(miRNA)、アンタゴmiR、RNA又はDNAアプタマー、メッセンジャーRNA(mRNA)、スプライス-スイッチングオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチジーンオリゴヌクレオチド、DNAザイム、RNAデコイ、リボザイム、ペプチド核酸、オリゴマー、及び干渉性欠損粒子から選択される核酸である請求項1に記載の非病原性細菌。
【請求項52】
標的細胞にシアル酸残基を結合させるタンパク質が、コロナウイルス(coronavirus)、ノロウイルス(norovirus)、ロタウイルス(rotavirus)、ムンプスウイルス(mumps virus)、パラインフルエンザ(parainfluenza)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、及びコレラ菌(Vibrio cholera)からのシアル酸結合タンパク質又は結合ドメインである請求項13に記載の非病原性細菌。
【請求項53】
前記細菌が操作され、dsRNA結合タンパク質(dsRBP)又はdsRBPの1以上の結合ドメイン又はフラグメントを発現し、前記細菌が操作され、減少したRNase活性を示し、前記細菌が操作され、前記治療的核酸の3’末端ヌクレオチドをメチル化する産物を発現する請求項1に記載の非病原性細菌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年4月3日に提出された米国仮出願第62/480,875号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、疾患の治療及び予防に関する。より具体的には、本発明は、治療的核酸を上皮組織に送達するための改善された侵入性を有する生物界間のプラットフォームに関し、前記生物界間のプラットフォームが操作され、高められた安定性を有する核酸を生成する。
【0003】
核酸(NA)の治療的応用は、広範囲の臨床標的に対して強力な可能性を有する。しかしながら、特定の細胞及び組織へのNAの送達、及びその一過性のターゲティング効果は、それらの能力と臨床応用を活用する上で大きな障害のままである。
【0004】
リボ核酸(RNA)干渉(RNAi)は、遺伝子発現を特異的に阻害する技術である。多くの場合、約21~27ヌクレオチドの長さを有する小さな二本鎖低分子干渉RNA(siRNA)又は低分子ヘアピン型RNA(shRNA)によって実行される。
【0005】
siRNA及びshRNAの有効性は、多数の要因によって制限される場合がある。第一に、siRNAとshRNAは、リボヌクレアーゼ(RNase)によって簡単に分解され、それによってその有効性が低下させる。第二に、細胞膜に浸透することができず、生物学的利用能が非常に低くなる。siRNAは、独立して細胞膜を通過することができないため、多くの場合、ウイルスベクターや合成担体等の送達媒体が使用される。これらのウイルス及び合成siRNA媒体は、細胞死、RNAi/microRNA飽和、及び肝毒性、腫瘍形成等の臨床的有効性に重大な制限と懸念をもたらす。合成媒体は、多くの場合、送達効率が低く、臨床的有効性を達成するために高用量を必要とし、これは費用がかかり、多くの場合毒性となり得る。更に、siRNA系の応用は、歴史的に一過性のRNAi効果に関連付けられ、臨床ターゲティングに必要なサイレンシング効果が一時的であることを意味する。shRNA/siRNAの化学修飾と多数のナノテクノロジー系送達手法の適用が追求されてきたが、限られた数の標的組織への限定された送達効率、及びRNAiの一時的な効果は、依然として大きな障害のままである。特定の組織に対する、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、低分子干渉RNA/低分子ヘアピン型RNA(siRNA/shRNA)、microRNA(miRNA)、アンタゴmiR、アプタマー、メッセンジャーRNA(mRNA)、スプライス-スイッチングオリゴヌクレオチド(splice-switching oligonucleotide)、干渉性欠損粒子、及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、RNAi媒介剤及びその他の核酸の標的細胞内送達のための送達プラットフォームは、トランスレーショナルな医療のために核酸系の技術が保持する治療的可能性を利用するために不可欠である。本発明は、以下の開示で提示されるような送達プラットフォームを提供する。
【発明の概要】
【0006】
生物界間NA送達媒体は、本明細書中で教示されている幾つかの独特な機能を用いることで大幅に進歩している。本発明は、多数の重要且つ実質的な特徴及び/又は従来の送達プラットフォームへの進歩を備えた改変された生物界間送達媒体を提供する。最初の進歩は、生物界間送達媒体内の同時パッケージングのために、トランス活性化応答(TAR)RBP(TRBP)等の二本鎖RNA結合タンパク質(dsRBP)の二本鎖RNA-結合ドメイン(dsRBD)を発現させることである。この革新の背後にある根拠は、TRBP等のdsRBPがdsRNAに高い親和性で結合し、RNA分解に対する保護を提供し、miRNA前駆体の安定化を提供し、siRNA及びmiRNA媒介遺伝子サイレンシングの重要なコンポーネントとして機能することである。2番目の進歩は、細菌送達媒体のRNase R活性をノックアウトすることである。この改変の背後にある根拠は、細菌細胞の指数関数的増殖に続いて、shRNA生成が最大化されると、細菌の増殖を停止させ、37℃未満で培養物をインキュベートすると、二本鎖(ds)RNAの崩壊を阻害し、それによってコードされた治療的shRNAの安定性が向上するということである。3番目の進歩は、送達媒体内で同時にパッケージングするために、HEN1等のメチルトランスフェラーゼ遺伝子を発現させることである。この改変の背後にある根拠は、HEN1等のメチルトランスフェラーゼによって提供される3’末端ヌクレオチドのメチル化が、siRNAの3’-5’分解及び3’ウリジル化に対して保護し、最終的にsiRNAの安定性を増加させ、RNAiを強化することである。追加の改善点と成果を以下に記載する。これらの提案された改善点は、それぞれ、siRNAのshRNA安定性と治療寿命を向上させる独特の手法を示す。
【0007】
本明細書中で教示される技術は、以下(1)~(10)を含む、現在の最先端のプラットフォーム及び他のNA系の送達適用に対しての多くの利点を提供する。(1)効率的な細胞内送達及びエンドソーム・エスケープを伴う粘膜上皮組織への標的送達。(2)触媒及び持続的RNAiサイレンシングのためのshRNAペイロードの安定した送達。(3)高価な合成siRNA製造の排除。(4)経口、鼻腔内、眼内、膣内、直腸内、及び呼吸器への投与に適応可能な臨床投与。(5)臨床目的(デリケートな粘膜組織に刺激を与えない)のために確認された安全記録を有する天然由来の媒体の利用(6)緊急事態発生時(即ち、インフルエンザの大流行)の疾病準備の迅速なスケールアップ。(7)感染症、免疫疾患、アレルギー疾患の実現可能な治療的適用。(8)既存のワクチン接種、抗生物質、抗ウイルス等のレジメンと併用が可能なこと。(9)毒素や病原体の侵入のリスクを高める可能性がある浸透促進剤の必要性の排除。(10)NAが、原核生物のRNAポリメラーゼによって生成され、配列に依存しない方法で送達され、NA系治療薬を単独又は組み合わせて(即ち、siRNA/shRNA、miRNA、アンタゴmiR、アプタマー、mRNA、スプライス-スイッチングオリゴヌクレオチド、干渉性欠損粒子、アンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するための多用途の高いプラットフォームにする。
【0008】
この新しいな手法は、NA送達に関する新しい視点を提供し、現在のNA送達手法に関連する多くの欠点に対処する。一般に、本明細書で教示される改善は、下記(a)~(d)の治療的適用を含む多くの用途で生物界間送達媒体の機能を高める。(a)HEN1及びTRBPの発現等により、生成及び送達されるNAの安定性を改善し、RNase Rノックアウトを提供すること。(b)プラスミド上ではなく染色体上に、特定の遺伝子(例えば、inv、hlyA、HEN1、TRBP、及び/又はHA-1遺伝子)の遺伝子を発現させる等、生物界間送達媒体自体の安定性を向上させ、それによって送達媒体の安定性が向上し、製造が容易になること。(c)送達媒体の侵入性が改善すること(例:HA-1を含ませ、プラスミドではなく染色体から、HA-1とinvの両方を発現させることによって。但し、これらの遺伝子のプラスミドからの発現も本明細書で考慮される)。(d)製造/調節又は治療的適用に理想的ではない抗生物質選択の必要性を除去すること。これらの改変は全て相乗的に作用して、治療的適用のための生物界間NA送達系の機能を改善する。
【0009】
第1の態様において、本発明は、必要に応じて、原核生物又は真核生物のベクターを含む非病原性細菌又は酵母を提供する。前記ベクターは、1以上の治療的核酸をコードするDNA分子(例えば、短い二本鎖RNA)及び短い二本鎖RNAの転写を制御するプロモーターを含み、前記短い二本鎖RNAは、1以上の標的RNA分子に干渉し、前記細菌は操作され、1以上のdsRNA結合タンパク質(dsRBP)を発現する。多くのdsRBPは、dsRNAを高い親和性で結合して分解を防ぎ、miRNA前駆体を結合して安定化し、siRNA及びmiRNA誘導遺伝子サイレンシングにおいて重要な役割を果たすことが知られている。dsRBPの発現は、分解を制限し、miRNA前駆体とそれによる成熟産物の濃度を増加させ、標的遺伝子サイレンシングへの関与に必要なコンポーネントを提供することにより、安定性を高め、利用可能な治療的核酸の濃度を増加させることが提案されている。有利な実施形態においては、dsRBPは、TAR RNA結合タンパク質(TRBP)である。更に、このプラットフォームは、siRNA/shRNA、miRNA模倣体(miRNA mimics)、阻害剤等、広範囲の他のNA分子をコード/送達する能力を有する。他の可能なdsRNA結合タンパク質は、核内因子90、(NF90)、ZNF346、SiD-1、及びKu70(及びそれらの組合せ)を含む。
【0010】
第2の態様においては、本発明は、原核生物又は真核生物のベクターを含む非病原性細菌又は酵母を提供し、前記ベクターは、例えば、短い二本鎖RNA(例えば、siRNA/shRNA)を含む1以上のNA分子をコードするDNA分子、及び短い二本鎖RNAの転写を制御するプロモーターを含み、前記短い二本鎖RNAは、1以上の標的RNA分子に干渉し、前記細菌は操作され、RNase活性が不足している。有利な実施形態においては、前記細菌は、機能的なrnr遺伝子を欠乏している。RNase Rノックアウトに加えて、ノックアウト用に標的にされることができる他のRNaseタンパク質は、RNase E、RNase I、RNase H、RNase J、及びそれらの組合せを含む。
【0011】
第3の態様においては、本発明は、原核生物のベクターを含む非病原性細菌を提供し、前記ベクターは、例えば、短い二本鎖RNA(例えば、siRNA/shRNA)を含む1以上のNA分子をコードするDNA分子、及び短い二本鎖RNAの転写を制御するプロモーター等を含み、前記短い二本鎖RNAは、1以上の標的RNA分子に干渉し、前記細菌が操作され、メチルトランスフェラーゼは、siRNAの3’末端ヌクレオチドのメチル化を促進する。より具体的には、細菌系は、HEN1又は2’-0-メチルトランスフェラーゼ活性を有する別のメチルトランスフェラーゼ遺伝子を含む、メチルトランスフェラーゼ遺伝子を発現し、それによってメチルトランスフェラーゼは、siRNAの3’末端ヌクレオチドのメチル化を促進する。3’末端ヌクレオチドのメチル化は、3-5’分解及び3’ウリジル化を含むRNA分解の主な原因に対する保護を提供し、最終的に安定性を高める及び/又はRNAi経路への関与に利用可能な治療的NAの濃度を増加させる。
【0012】
第4の態様においては、本発明は、原核生物又は真核生物のベクターを含む非病原性細菌又は酵母を提供し、前記ベクターは、例えば、短い二本鎖RNA(例えば、siRNA/shRNA)を含む1以上のNA分子をコードするDNA分子、及び短い二本鎖RNAの転写を制御するプロモーターを含み、前記短い二本鎖RNAは、1以上の標的NA分子に干渉し、前記細菌は操作され、dsRNA結合タンパク質(dsRBP)及びHEN1遺伝子を発現する。有利な実施形態においては、第4の態様の大腸菌(E.coli)細菌は操作され、RNase活性が不足している。特に有利な実施形態においては、前記細菌は、機能的rnr遺伝子を欠乏している。
【0013】
第5の態様においては、本発明は、原核生物又は真核生物のベクターを含む非病原性細菌又は非病原性酵母を提供し、該ベクターは、1以上の核酸をコードするDNA分子及び前記治療的核酸の転写を制御する原核生物のプロモーターを含み、前記非病原性細菌又は酵母は操作され、減少した核酸分解表現型を示す。
【0014】
広義には、前記1以上の核酸は、1以上の分子又は化合物と相互作用する。これは、疾患状態のために生物を治療するため、又は生物の遺伝子又は遺伝子産物の効果を研究するため等、標的細胞又は生物における効果をアップレギュレート又はダウンレギュレートする目的のためであることができる。有利な実施形態においては、前記1以上の核酸は、治療的核酸である。前記治療的核酸は、病原体核酸配列等の1以上の標的に干渉することができる。治療的NA(TNA)は、前記治療的核酸の性質と同一性に応じて、多くの種類の標的分子(RNA、DNA、その他のオリゴヌクレオチド等)に干渉することができる。TNAは、1以上の宿主因子又は病原体因子と相互作用(干渉、標的化、改変、変更)することができ、前記宿主因子は、オリゴヌクレオチド、タンパク質、遺伝子等であることができる。例として、TNAは、癌遺伝子又は癌遺伝子の産物と相互作用して、癌を調節し、癌又は癌治療を研究することができる。更に有利な実施形態においては、減少した核酸分解表現型は、目的の治療効果又は活性の安定性、大きさ、及び/又は持続時間を増加させる。非病原性酵母は、適切な真核生物プラスミド/エピソーム及びプロモーター配列を使用すると考えられる。
【0015】
第6の態様においては、本発明は、原核生物又は真核生物のベクターを含む非病原性細菌又は非病原性酵母を提供し、該ベクターは、1以上の核酸をコードするDNA分子及び治療的核酸の転写を制御する原核生物又は真核生物プロモーターを含み、前記非病原性細菌又は酵母は操作され、inv、hlyA、HEN1、TRBP、及び/又はHA-1遺伝子の染色体組込みを有する。inv、hlyA、HEN1、TRBP、及び/又はHA-1遺伝子の染色体組込みは、これらの遺伝子の発現(細菌のゲノム対プラスミドから発現される場合、より安定してより大きな発現)を高める方法を提供し、送達系の安定性を改善する。それは、細菌がプラスミドを維持し、プラスミドから遺伝子を発現しなければならない系に比べて、細菌がゲノムから発現しやすい系を生成する。言い換えれば、プラスミドではなく細菌のゲノムから発現された場合、より安定しており、より大きな発現をもたらす。非病原性酵母は、適切な真核生物プラスミド/エピソーム及びプロモーター配列を使用すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明のより完全な理解のために、下記の添付の図面に関連して行われる以下の詳細な説明を参照すべきである。
【
図1A】
図1は、治療的NA生成プラスミドの2つのバージョンの図表示である。(A)プラスミドバージョンAは、治療的NAの安定性のエンハンサーに加えて、ターゲティングと送達に必要な全ての遺伝子を含み、12,100bpを超えると非常に大きく不安定である。(B)他の全ての必要な遺伝子は、改善された効率及び安定性、並びに約4,700bpの小さなプラスミドサイズのために送達媒体染色体に移されているため、プラスミドバージョンBは、治療的NA配列とHisD抗生物質を含まない選択マーカーのみを含む。
【
図2】
図2は、RNase R活性の除去を示す図である。送達媒体のRNase R機能を排除することは、この熱ショックタンパク質が低いインキュベーション温度で誘導されないことを意味する。NAは、低温で安定性が高いため、例えばRNase Rの非存在下において、17℃でインキュベートすると、疾患部位への送達のための治療的NAの濃度が高くなる。
【
図3】
図3は、本明細書中で教示される、増強を伴う呼吸上皮細胞における生物界間核酸送達媒体の作用機構の図表示である。
【
図4】
図4は、疾患に関連する部位への特異的送達のために、それぞれβ1インテグリン及びシアル酸受容体に結合する細胞表面タンパク質インベイシン及びHA-1を発現する強化された送達媒体(左に示される)を示す図である。これにより、インベイシンタンパク質のみを発現する現在の最新技術(右に示される)と比較して、より高い侵入性が可能になる。強化された送達媒体は、同じ宿主細胞表面受容体に結合する病原体と競合することもできるため、病原体の取り込みが減少する。
【
図5】
図5は、TRBP等のdsRBPの送達媒体発現を示す図である。それは、dsRNAに結合し、Dicerによるプロセシングを通じてそれを安定化させて、siRNAを生成し、その後ガイド鎖認識、及び標的配列との相互作用のためにRISC複合体にローディングされる。TRBPに結合していないshRNA(及び他のdsRNA核酸)は、RNaseによる分解に対して弱い。TRBPの大きな利用可能性と存在量は、大きなshRNA安定性と高いガイド鎖siRNA配列の濃度と相関する。
【
図6】
図6は、図面及び関連するヒストグラムである。(上の図)強化された送達媒体は、siRNAのフォワード鎖及びリバース鎖の3’末端ヌクレオチドをメチル化するHEN1等の3’メチルトランスフェラーゼを発現し、それによって通常3’末端ヌクレオチドから始まる分解を引き起こすRNaseからの保護を提供する。3’メチル基は、RNA分解に寄与することが知られているウリジル化も防ぐ。(下のグラフ)HEN1を発現する強化された送達媒体による生成及び送達後、グラフは、非メチル化siRNA(siRNA)と比較した場合のng cDNA当たりに予測されるメチル化siRNA(me-siRNA)のコピーを経時的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、様々な異なる真核生物種における広範な治療的適用のために特定の組織を標的とするように調整されることができる多用途の送達プラットフォームを提供することにより、治療的核酸の送達を促進する。治療的核酸は、最初、疾患の治療に大きな可能性を示したが、標的組織及び細胞へのこれらの核酸の送達の欠点により、その可能性は完全には実現されていない。サイレンシング効果の大きさと持続時間、及び広範な臨床応用の将来の開発のために多数の関連組織を標的とする送達プラットフォームの使用に対して、顕著な改善がなされることがある。より焦点を当てた意味で、改善は、送達媒体と、送達媒体によって生成される核酸の両方の高められた安定性、媒体の改善された侵入性、改善された安全性、及び製造プロセスと法的考慮のための改善された特性を有するように改善がなされ得る。
【0018】
エキソソーム、リポソーム、及び他の脂肪小胞は、離れた組織に送達するためのRNAペイロードを運ぶNA送達プラットフォームとして使用されてきた。リポソーム等の送達媒体には、小胞含有量の漏出、バッチ間の変動、生産コストの高さ、及び制限された標的能力を含む欠点を有する。この生物界間送達媒体は、組織の作用部位で、特定の細胞内送達に天然の受容体媒介エンドサイトーシスを使用する非病原性細菌媒介RNAi送達媒体の使用に基づいており、エンドソームでのshRNAの蓄積、及びRNAiサイレンシングのための標的細胞の細胞質へのshRNAペイロードの効率的な放出をもたらす。これらの生物界間媒体は、粘膜上皮組織を特異的に標的とし、構成的に生成されたshRNAのペイロードを配列に依存しない方法で送達するように操作された大腸菌(E.coli)細胞であった。
【0019】
shRNA発現プラスミドを含む非病原性細菌を使用する操作されたRNAi送達プラットフォームを用いる生物界間のRNA干渉は、AIV感染の重症度を劇的に低下させ、鳥類の上皮細胞のAIV排出を阻害するために使用されてきた。(Linke,Lyndsey M等“inhibiting Avian Influenza Virus Shedding Using a Novel RNAi Antiviral Vector Technology:Proof of Concept in an Avian Cell Model.”AMB Express 6(2016):16.PMC.Web.27 Mar.2018.)生物界間のshRNA送達用RNAシステムは、Linke等のUS2016/0177296A1で教示され、その内容は参照により全体が組み込まれている。生物界間の核酸送達系は、プラスミドからshRNAを転写するように操作された大腸菌(E.coli)等の非病原性細菌を使用する。生物界間の核酸干渉は、標的細胞への細菌の侵入と標的細胞へのその侵入後の非病原性細菌の内容物の放出の両方を促進するshRNA発現プラスミドに追加の遺伝子を含めることにより、臨床応用に関連するものになった。具体的には、2つの因子又は遺伝子をコードする系が開発され、粘膜上皮細胞へのshRNAの送達が可能になった(インベイシン遺伝子(Inv)及びリステリオリシンO遺伝子(hylA)。Inv遺伝子は、粘膜上皮細胞に存在するβ(1)インテグリン受容体と相互作用し、受容体媒介エンドサイトーシスを引き起こす大腸菌(E.coli)表面(Xiang等 2006)におけるインベイシンタンパク質の発現に必要である(Conte等 1994;Isberg and Barnes 2001;Isberg and Leong 1990)。hlyA遺伝子は、エンドソーム膜の破裂とその後の細胞の細胞質へのshRNAの放出を促進するポア形成毒素、リステリオリシン(Listeriolysin)O(LLO)をコードする(Grillot-Courvalin等 1998;Mathew等 2003;Nguyen and Fruehauf 2009;Radford等 2002;Xiang等 2006)。上記の研究で使用された生物界間の生物界間の核酸送達媒体は、ジアミノピメリン酸(Dap)栄養要求変異体であり、カナマイシン耐性だった。
【0020】
これらの媒体は、大腸菌(E.coli)が細胞質ゾルで放出するために宿主のエンドソームから逃れることを可能にする膜孔形成毒素であるリステリオリシン(Listeriolysin)O(LLO)を発現する。エンドソーム内部の栄養素の欠如は、溶菌及びエンドソーム膜を破壊するLLO毒素の放出を促進する。放出されたshRNAはその後、siRNAに処理され、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に組み込まれる。
【0021】
これらの細菌は、shRNAの送達を調節することができる。宿主エンドソーム内に入ると、それらは生存不能になり、shRNAを生成しなくなり、それによってRISCメカニズムに過負荷をかけ、宿主に望ましくない副作用を引き起こす可能性を排除する。
【0022】
生物界間送達媒体は、目的の臨床標的遺伝子に対する原核生物RNAのポリメラーゼの制御下で、shRNA(又は他の治療的核酸)を構成的に生成できる、T7ポリメラーゼ等の原核生物のRNAポリメラーゼの制御下で、shRNA(又は他の治療的核酸)発現カセットで形質転換されることができる。原核生物のRNAポリメラーゼを含めると、細菌は、標的細胞ではなく、目的の産物(例えば、治療的核酸)の発現源として関与する。ウイルスターゲティングの場合、このプラットフォーム技術は、幾つかのshRNAをコードして、複数のウイルスRNAターゲットを標的にすることができる。更に、発現カセットでshRNAを産生する配列の代わりに、又はそれに加えて、他の治療的核酸を含めることができ、この系は、追加の病原体又は疾患関連分子を標的にすることができる。この混合物の手法は、突然変異によるウイルス回避のリスクを制限する。更に、このプラットフォームは、miRNA模倣体や阻害剤を含む、広範囲の他のNA分子をコードする機能を有する。言い換えれば、提案された系は、siRNA/shRNAに加えて他の核酸を送達する能力を有し、micro RNA模倣体又はmicro RNA阻害剤等の分子の送達、コード化、及び送達に適合されなかった現在の最新の技術よりも顕著な改善である。
【0023】
生物界間の送達プラットフォームは、ジアミノピメリン酸(Dap)栄養要求性である非病原性細菌を用いる。大腸菌(E.coli)を含む特定の細菌は、細胞壁の成分としてDapを必要とし、栄養要求性株は、Dap添加培地外で増殖又は生存することができない。非病原性で非コロニー形成性の細菌として、これらの媒体は、宿主に既知のリスクをもたらさず、確認された安全記録を有する。更に、非接合性ベクターとして、宿主ゲノムへの組込み及び腫瘍形成のリスクはない。以前の研究(未発表のデータ)では、これらの細菌性媒体が、試験した種で観察された臨床的疾患、毒性、又は組織の病因と関連していないことを実証した。したがって、細菌は、宿主細胞又は標的種に対して「非病原性」であり、疾患を引き起こさない。
【0024】
我々は、送達された核酸(NA)の安定性の改善、細胞崩壊メカニズムに対する二重鎖干渉RNAの耐性の改善、侵入性の改善、及び/又は製造プロセス、安全性、送達系に関連する規制問題の改善を中心とした、独特な改変を有する現在の生物界間送達媒体を改善することを提案している。dsRNAの安定性を増加させる根拠は、shRNA(及びこの送達プラットフォームを使用して生成及び送達されることができる他のNA分子)のペイロードの安定化は、shRNAの入手及びより多くのsiRNAの処理を増加させる。侵入性を改善する根拠は、生物界間送達媒体がより広範囲の宿主細胞に付着するより大きな機会を有し、それにより取り込まれ細胞内化される(intracellularized)生物界間送達媒体の数を増やすことにある。これらの改善は、最適な治療的適用のために、より強く長期にわたるRNAi効果を提供するであろう。これらの改善は、個別又は任意の組み合わせで行われ、治療及び臨床応用のための技術の翻訳の可能性を促進する。
【0025】
送達されたNAの侵入性及び安定性の改善は、本明細書で教示される複数の手法を通じて達成されることができる。送達媒体を改善する第1の手法は、dsRNAの安定性を増加させるdsRNA結合タンパク質(dsRBP)を含ませることである。搬送媒体を改善する第2の手法は、RNA分解に関与する重要な細菌酵素の活性を排除することである。送達媒体を改善する第3の手法は、dsRNAの安定したメチル化を引き起こす遺伝子/タンパク質を含ませることである。1つの実施形態においては、TAN RNA結合タンパク質(TRBP)及びHEN1遺伝子のC末端メチラーゼドメインがコードされ、大腸菌(E.coli)細菌送達ベクターにおけるRNase R活性がノックアウトされる。これらの製剤の改善は、shRNAを含む核酸を、上/下呼吸、口腔、胃腸(GI)、膣、直腸、及び眼の上皮を含む広範な粘膜上皮組織に送達するために利用される。これらの改良された生物界間のNA送達媒体を投与する方法は、局所作用のための鼻腔への鼻腔内投与、上部及び下部呼吸ターゲティングのためのエアロゾル化、頬側送達のための口腔での吸収、GI吸着のための摂取、デリケートな性器粘膜上皮への適用、及び眼内送達のための局所投与を含む。これらの改善された送達媒体は、広範囲の種(ヒト、鳥類、ブタ、ウシ、イヌ、ウマ、ネコ)における幅広い疾患(感染性、アレルギー性、癌性、免疫性)を予防及び/又は治療するために用いられることができる。
【0026】
送達媒体を操作し、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA-1)タンパク質を発現することにより、シアル酸受容体を発現する上皮細胞への送達媒体のターゲティングを強化することを我々は提案する。HA-1は単独で、又は送達媒体中のインベイシンタンパク質と組み合わせて発現されることができると考えられる。送達媒体におけるHA-1の発現は、それにより細菌細胞の取り込みと宿主細胞への細胞内化の適切な手段を提供するだけでなく、標的細胞における受容体部位へのアクセスを遮断することで、競合する病原体(例えばインフルエンザウイルス、及び付着/侵入用のシアル酸受容体を使用する他の病原体)の取り込みと感染を力学的に(mechanically)防止する。腸、眼、及び呼吸器粘膜上皮細胞を標的とするウイルス及び細菌感染症の場合、媒体送達のためのHA-1タンパク質の含有は、局所送達及び侵入病原体に対する最大限の保護のためにそれらの組織を標的とするためのより大きな親和性を治療的及び予防的に提供する。
【0027】
実施例1-dsRBPを発現するためのエンジニアリング大腸菌(E.coli)
第1の態様においては、送達媒体の改善は、原核生物RNAポリメラーゼの制御下で、dsRNA結合タンパク質ドメインを発現用の治療的核酸産生プラスミドにクローニングすることで、又は大腸菌(E.coli)においてdsRNA結合タンパク質(dsRBP)を染色体的に発現させて、dsRBPを含ませることで非病原性細菌によって産生されるdsRNAの安定性を増加させることで達成されることができる。
【0028】
dsRBPのファミリーは、真核生物、原核生物、及びウイルスにコードされた産物に見られる65~68アミノ酸の1つ以上の進化的に保護されたdsRNA結合ドメイン(dsRBD)を含む(Ryter等 1998)。これらのdsRBDは、タンパク質とRNA二重鎖との間の多くの相互作用の要因として、1992年に初めて認識された(Johnston等 1992;McCormack等 1992)。dsRBPファミリーは、TAR RNA結合タンパク質(TRBP)を含み、これは非配列特異的な方法でdsRNAとだけに相互作用する(Ryter等;Manche等)。TRBPは、3つの高度に保護されたdsRBDを含むが、1つ目と2つ目は、dsRNAの分解を結合し保護するのに高い親和性を有する(Yamishita等;Daviet等;Tian等)。TRBPは、RNAiに関与することができる(Gatignol等、Gredell等、Lee and Ambros、Tian等;Daniels等;Parker等)。これら2つのTRBP結合ドメインは、in vitro及びin vivoでのshRNA siRNA分解の結合と防止のために用いられることができ、siRNA及びmicroRNA(miRNA)によって誘導される遺伝子サイレンシングで役割を果たし、miRNAヘアピン前駆体を結合し、成熟化のための経路を安定化させることで、細胞で生理学的役割を果たす(Chendrimada等;Koh等;Gregory等;Dar等;Yamashita等;Koh等)。したがって、2つのドメインのみが優先的に使用されるか、3つ全てを生物界間のベクターに含めることができる。要約すると、TRBPはdsRNAゲートキーパーのように機能する。このdsRNA結合タンパク質を生物界間のベクターに同時にコードすることは、生物界間のNAの送達媒体を改善するための手ごわい手法を表す。TRBPの代わりに、又はTRBPに加えて、発現を検討できる他のdsRBPは、核内因子90(NF90)、ZNF346、SiD-1、及びKu70(及びそれらの組合せ)を含む。
【0029】
実施例2-RNase Rノックアウト
第2の態様においては、RNA分解の原因となる酵素の活性を除去又は低減することにより、送達媒体の特性の改善を達成することができる。大腸菌(E.coli)等の細菌においては、構造化されたRNA二重鎖崩壊は、加水分解性3’→5’エキソリボヌクレアーゼであるRNase Rによってのみ行わる(Matos 2009;Khemici and Carpousis;Cheng and Deutscher 2005;Vincent and Deutscher 2009;Awano等 2007,Awano 2010;Chen等 1998;Hossain 2015;Hossain 2016)。shRNA/siRNA分子の場合と同様に、RNase Rは、3’一本鎖オーバーハングを特異的に結合することにより、これらのdsRNAを分解することができる(Cheng and Deutscher,Vincent and Deutscher 2006)。実際、RNase Rは、広範な二次RNA構造により分解する(chew)ことができる唯一の3’→5’エキソリボヌクレアーゼである(Vincent and Deutscher 2009)。RNase Rはrnr遺伝子によってコードされる低温ショックタンパク質であり、その活性は細菌細胞の成長条件を変えることで調節されることができる(Chen等 1998;Cheng and Deutscher;Cairrao and Arraiano 2006;Cairrao等 2003)。大腸菌(E.coli)の指数関数的な成長温度が、37℃から15℃にシフトすると、RNase R低温ショック応答が刺激される(Awano等 2007)。つまり、RNase R活性が増加し、dsRNA崩壊が大きくなる。研究によって、同時に、より安定したdsRNA基質の濃度が高い場合、特に低いインキュベーション温度において、RNase Rヘリカーゼ活性が、dsRNAに対する効果的なヌクレアーゼ活性において必要な触媒的役割を果たすことを実証した(Hossain等 2015,Hossain等 2016,Awano等 2007;Awano等 2010)。rnr遺伝子を欠く大腸菌(E.coli)変異体は、標準的な37℃の成長温度で効率的に複製できたが、dsRNAを消化できなかった(Chen等 1998;Khemici and Carpousis;Cheng and Deutscher;Vincent and Deutscher 2009;Vincent and Deutscher 2006;Awano等 2007;Hossain等 2015;Hossain等 2016(両方);Awano等 2010)。shRNA分子とsiRNA分子の安定性は、低温で改善されるので、RNase R活性の低温ショック誘導が回避されることができる場合にのみ、高いNA濃度を維持するために培養温度を下げることが望ましいであろう。したがって、大腸菌(E.coli)細菌送達媒体でのRNase R活性のノックアウトは、NAの強化された送達につながり得る。RNase Rノックアウトを備えた改変された大腸菌(E.coli)細菌送達媒体においては、shRNA生成が最大化された場合の細菌細胞の指数関数的増殖の後、細菌の増殖を停止し、37℃未満で培養物を培養することで、dsRNAの崩壊が抑制され、それによってコードされた治療的shRNAの安定性を高める。したがって、生物界間の系は、特別なshRNA(又は他の治療的核酸)生成プラスミドで形質転換されたrnr遺伝子を欠く大腸菌(E.coli)等の非病原性細菌を含むことができると考えられる。更に、これらのrnr欠損大腸菌(E.coli)細菌は、33℃以下、30℃以下、27℃以下、25℃以下、22℃以下、20℃以下、17℃以下等の低い温度(即ち、37℃未満)、好ましくは25℃以下、最も好ましくは17℃以下で増殖させることができると、考えられる。そのような低い温度での増殖は、分解を制限しながら、所望のshRNAの生成を可能する。更に、rnr欠乏生物界間の核酸送達系で使用されるshRNA生成プラスミドは、TRBP等のdsRBDをコードする遺伝子を含むことができると考えられる。ノックアウトへの手法の1つは、削除をリコンビニアリングする(recombineering)ことで起こり、それによって大腸菌(E.coli)がRNase Rタンパク質生成しなくなり、本質的に大腸菌(E.coli)変異体を作出する。rnr遺伝子の機能を排除する他の手法は、Cre-lox、FLP-FRT、選択-対抗選択、及びCRISPR/Casを介した遺伝子編集を含む。大腸菌のRNase活性を除去するためにノックアウトできる他の遺伝子があるため、ノックアウトは、rnr遺伝子だけでなく、対象になると考えられる。一般に、大腸菌(E.coli)におけるRNase Rの除去を含むRNase触媒活性の除去は、大腸菌(E.coli)の有効性を高めることができる。ノックアウトの他の標的には、RNase E、RNase I、RNase H、RNase J、及びそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
実施例3-siRNAの3’末端ヌクレオチドのメチル化
第3の態様においては、shRNAのメチル化の安定化を引き起こす遺伝子を、治療的NA生成プラスミド等に含めることにより、送達媒体の特性の改善を達成することができる。上記のように、dsRNAの分解は、主にエキソヌクレアーゼによって引き起こされる(Czauderna等 2003)。siRNAの3’末端ヌクレオチドのメチル化は、siRNAの3’-5’分解及び3’ウリジル化から保護するため、エキソヌクレアーゼに対する安定化効果を提供する(Ji&Chen 2012;Lifang等 2010;Kurth&Mochizuki 2009;Chan等 2009)。siRNA分子がセンス鎖の末端のみで改変されている場合、又はsiRNAヘアピンの場合は3’末端で改変されている場合に、RNAi活性は維持される(Czauderna等 2003)。3’末端のメチル化は、全ての植物siRNAの機能に必要であり、一部の哺乳類及び細菌のsiRNAでも同様に観察される。HEN1遺伝子は、3’末端ヌクレオチドの2’-ヒドロキシルへのメチル基のS-アデノシルメチオニン依存性転移を触媒するメチラーゼである、メチルトランスフェラーゼHen1をコードする(Jain&Shuman 2010;Baranauske等 2015)。幾つかの細菌種のHen1ドメインは、真核生物のホモログと機能的に同等であることが証明されている(Chan等 2009)。メチル化アッセイを使用して、Chan等(2009)は、ヒト及び細菌(クロストリジウム・サーモセラム:Clostridium thermocellum)組換えHEN1タンパク質が、小さな一本鎖RNA(21-30nt)で酵素的に同等のメチル化活性を表すことを示した。しかしながら、クロストリジウム・サーモセラム(C.thermocellum)、Hen1のC末端メチラーゼドメインは、その全長の対応物及びヒトHen1よりも改善された酵素活性を示し、このドメインが独立して機能できることを示した。したがって、生物界間送達媒体で、HEN1遺伝子のパッケージング、又は有利な実施形態においてHEN1遺伝子のC末端メチラーゼドメインのパッケージングは、エキソヌクレアーゼに対するsiRNAの安定化効果を提供する。言い換えれば、HEN1はコードされたshRNAを積極的にメチル化及び安定性を高め、それによりin vivoでの治療的適用に最適に好適なshRNAを提供する。
【0031】
実施例4-インフルエンザヘマグルチニン-1(HA-1)タンパク質を発現するために操作される非病原性細菌
第4の態様においては、細菌を操作して、インフルエンザヘマグルチニン-1(HA-1)タンパク質をゲノム(染色体)発現又はプラスミド発現のいずれかによって、発現させることにより、送達媒体の粘膜組織、特に呼吸器粘膜組織への局所的且つ標的化された送達を改善することができる。HA-1は、インフルエンザウイルスの表面で見られる糖タンパク質であり、受容体を介したエンドサイトーシスによってウイルスの付着と標的細胞への侵入を促進する(White等 1997)。HA-1は、呼吸粘膜上皮細胞を含む標的細胞の表面に存在する、シアル酸に対する高い親和性を有する受容体部位を含む球状頭部を表す(Russell等 2008)。好ましい実施形態においては、HA-1は、大腸菌(E.coli)表面で発現され、細菌の取り込みのために粘膜上皮細胞上のシアル酸表面受容体と相互作用する。HA-1タンパク質は、インフルエンザタイプA又はBのいずれかのウイルスサブタイプに由来する。全長のHA-1遺伝子は、標準的なクローニング方法論を用いて、shRNA生成プラスミド(又は治療的核酸を生成するために構築された他のプラスミド)にクローン化されるか、例えば、ギブソン・アセンブリ法及び市販のギブソン・アセンブリクローニングキット、フリッパーゼフリッパーゼ認識部位(FLP/FRT)部位特異的組換え技術(Posfai等 1994,Bertram等 2009)、セレクション・カウンター・セレクションストラテジー(selection-counter-selection strategies)、又はCRISPR Cas操作(Jiang等 2013,Jiang等 2015,Pyne等 2015,Reisch等 2015,Zhao等 2016)を用いて、大腸菌(E.coli)染色体に組み込まれる。
【0032】
大腸菌(E.coli)細胞の表面にHA-1タンパク質を追加すると、Invのみの単独発現よりも改善される。1つの実施形態においては、HA-1は、独立して又は別の実施形態で発現され、Invと組み合わせて発現されて、Inv単独では提供されない独特のファセット(facet)を提供する。呼吸組織に感染するインフルエンザウイルス等、標的細胞への細胞内侵入のためにシアル酸受容体を利用するウイルス性及び細菌性病原体の場合、HA-1タンパク質を介した大腸菌(E.coli)細胞を結合させることは、感染性病原体(すなわち、インフルエンザウイルス)と標的細胞上のシアル酸受容体との本質的な結合相互作用を物理的に遮断する。これは、それにより、細菌細胞の取り込み及び宿主細胞への細胞内化のための適切な手段を提供するだけでなく、競合する病原体(すなわち、インフルエンザウイルス)の取り込み及び感染を力学的に防ぐであろう。呼吸器粘膜上皮細胞を標的とするウイルス及び細菌感染の場合、媒体送達のためにHA-1タンパク質を含めることにより、局所送達のためにこれらの組織を標的とする高い親和性、及び侵入した病原体に対する最大限の保護を治療的且つ予防的に提供する。コロナウイルス(coronaviruses)、ノロウイルス(norovirus)、ロタウイルス(rotavirus)、ムンプスウイルス(mumps virus)、パラインフルエンザ(parainfluenza)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、及びコレラ菌(Vibrio cholerae)(Mastrovich等 2013;Varki 2008)を含む他の病原体は、宿主細胞上のシアル酸に結合するタンパク質を生成し、侵入又は感染を促進することが知られている。更に、これらのタンパク質、又はこれらの病原体のタンパク質からの結合タンパク質ドメインは、インフルエンザHA-1タンパク質(又はHA-1からのシアル酸残基結合ドメイン)の代替として用いられることができると考えられる。
【0033】
実施例5:非病原性細菌からの抗生物質耐性遺伝子の除去
第5の態様においては、カナマイシン耐性を含むがこれに限定されない抗生物質耐性遺伝子(選択マーカーとしてプラスミドに含まれることができる)を除去することにより、送達システムの製造プロセス、安全性、及び規制上の考慮事項が改善される。抗生物質耐性遺伝子は、細菌発現ベクターの大部分に選択マーカーとして含まれる(Peubez等 2010)。抗生物質耐性は、ヒトと動物の健康にとって大きな懸念事項であり、これを反映するために生物学的製剤の規制要件はより厳しくなっている(Mignon 2015)。製造プロセスに抗生物質を含める必要性を排除することで、コストが削減され、意図しない宿主での抗生物質耐性が細菌送達システムによって誘発される懸念がなくなる。有利な実施形態においては、この送達媒体は、以下の実施例6に記載されるアミノ酸栄養要求性及び補間系等の抗生物質を含まない系を使用し、所望のプラスミド含有細菌を特異的に選択する。
【0034】
実施例6-非病原性栄養要求変異体の作出
送達系の機能性と安定性は、アミノ酸栄養要求性及び相補性を含むがこれらに限定されない代謝又は栄養選択マーカーを含めることにより改善され、したがって、送達系の製造プロセス、安全性、及び規制上の考慮を改善する。
【0035】
第6の態様においては、アミノ酸栄養要求性及び相補性を含むがこれらに限定されない代謝又は栄養選択マーカーを含めることにより、送達系の機能性及び安定性が改善される(例えば、ヒスチジンを含むがこれに限定されない必須アミノ酸を標的とする)。アミノ酸合成経路の1以上の重要な遺伝子を大腸菌(E.coli)染色体上で標的とし、必要なアミノ酸を産生できない栄養要求変異体を作出する。プラスミド上のノックアウト遺伝子又は遺伝子群の補充は、プラスミドを含む大腸菌(E.coli)のみの生存を可能にし、アミノ酸を欠く培地での効率的且つ信頼性の高い選択を可能にする(Peubez等 2010;Mignon等 2105;Fiedler等 2017)。同様の原則は、細菌の生存に不可欠な他の栄養素又は栄養素処理経路にも当てはまる。この手法は、上記の実施例5で説明された改善を更に支持する、抗生物質を使用しない製造を容易にする。大腸菌(E.coli)において、10段階の経路で合成され、hisD遺伝子産物、二機能酵素のヒスチジノールデヒドロゲナーゼは、最後の2つの酸化工程に触媒作用を及ぼし(Ramage等 2012;Matte等 2003)、hisB産物、二機能酵素のヒスチジノールホスファターゼは、7番目と9番目の工程に触媒作用を及ぼす(Winkler&Ramos-Montanez 2009;Chiariotti等 1986)。hisA、hisB、hisC、hisD、hisE、hisG、hisH、及びhisl遺伝子産物は、ヒスチジン合成、またそれによる最小培地における大腸菌(E.coli)の増殖において必要である(Joyce等 2006)が、計算モデルと公開された実験により、hisD又はhisBノックアウトは、ヒスチジンの有無に完全に依存し、培養培地に存在する他のアミノ酸又は代謝物に依存しない成長の株を生成することが示されている(Bertels等 2012;Tepper&Shlomi 2011)。
【0036】
有利な実施形態では、大腸菌(E.coli)は、ヒスチジン栄養要求性として操作され、細菌は、機能的なhisD遺伝子(産物:ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ)を欠き、shRNA生成プラスミド(又は治療的NAを生成するために構築された他のプラスミド)が操作され、hisD遺伝子を発現することにより、ヒスチジン生合成経路を補完し、ヒスチジン欠乏培地における細菌複製を可能にする。他の実施形態においては、大腸菌(E.coli)は操作され、機能的なhisA、hisB、hisC、hisE、hisG、又はhisH遺伝子を欠き、原核生物のベクターは操作され、失われた遺伝子を発現する。ヒスチジン合成に関与する遺伝子の場合、遺伝子は、細菌のhisp1プロモーター又は別の原核生物のプロモーターの制御下でプラスミド上に発現されることができる(Alifano等 1996)。
【0037】
実施例7-生物界間送達媒体による複数の治療的核酸の発現
第7の態様においては、個々の又は複数の治療的NAの発現を単一のプラスミド上で可能にすることにより、送達系の機能性及び安定性が向上する。下記1)~3)を含む多くの異なる構成が可能である。1)単一のプロモーターの制御下でタンデムに(in tandem)単一の発現カセットにおいて発現されるNA。2)それぞれ独自のプロモーター及びターミネーターの制御下だが、同じプロモーター配列の使用による競合的発現を有する独立した発現カセット。3)それぞれ異なる発現のための異なるプロモーターの制御下で独立した発現カセットにおけるNA。数多くの公開された研究で実証されているように、スペーサーの長さと配列、プロモーター配列と強度、治療的NAタイプ(例えばshRNA)とサイズ、及び発現される治療的NAの数を含む、プラスミド構成の具体的詳細は、いずれもNA発現レベル、siRNAフォールディング/プロセッシング、サイレンシング特異性、及びRNAi活性に影響を及ぼす。この作業の多くは、HIVモデルに対して行われるが、各手法でプラスミドの設計と最適化を適切に導くための良好な方法が利用可能である(Liu等 2007;Mcintyre等 2011;Spanavello等 2016;Choi等 2015;Wang等 2013)。単一プラスミドにおける複数のNAの発現により、幾つかの重要な改善が達成される。即ち、大腸菌(E.coli)細菌内の各NA発現プラスミドよりむしろ、特定の規制当局にとって単一の「活性」成分として分けて見なされ、関連するNA標的を含む大腸菌(E.coli)の単一系統を培養するだけで、製造が簡素化され、標的能力を拡大して、病原体突然変異のリスクを軽減し、単一の治療で複数の疾患の治療を可能にする。
【0038】
プラスミド上の複数の特定の核酸配列のタンデム発現は、異なるターゲットで複数の核酸を発現している場合でも、製造がより簡単で安価な系を提供する(例えば、単一培養として製造されることができる)。これにより、ばらつきが減少し、製造プロセスがより予測可能になるため、系の安定性が向上する。また、これにより、複数ではなく単一のアクティブ/治療薬として簡素化された規制経路(米国及び国際)を容易にし、コストと供給源の要件が削減される。
【0039】
実施例8-Inv、LLO、HA-1、HEN1、及び/又は TRBPの染色体発現
第8の態様においては、Inv、LLO、HA-1、HEN1、及び/又はTRBP発現の安定性、Inv、LLO、HA-1、HEN1、Inv、LLO、HA-1、HEN1、及び/又はTRBPの発現(全体の存在量)、並びに送達媒体の製造プロセスは、大腸菌(E.coli)染色体(又は他の非病原性細菌又は酵母)上へのこれらの遺伝子の発現を組み込むことで改善される。これにより、Inv、LLO、HA-1、HEN1、及び/又はTRBP遺伝子を安定して発現する細菌株を産生する。菌株を構築する際、発現カセットが操作された細菌に組み込まれる細菌の染色体に沿った領域を見つけることができる。例えば、ギブソン・アセンブリ法及び市販のギブソン・アセンブリクローニングキット、フリッパーゼ/フリッパーゼ認識部位(FLP/FRT)部位特異的組換え技術(Posfai等 1994,Bertram等 2009)、セレクション・カウンター・セレクションストラテジー(selection-counter-selection strategies)、又はCRISPR/Cas操作(Jiang AEM,Jiang NBT 2013,Pyne AEM,Reisch等 2015,Zhao等 2016)を用いて、これらの遺伝子(Inv、LLO、HA-1、HEN1、及び/又はTRBP)の任意の組み合わせの全長の配列、又はその短縮された部分は、大腸菌染色体に組み込まれることができる。ゲノム発現は、幾つかの理由でプラスミド発現に対する改善された手法である。プラスミドの運搬と維持は、大腸菌(E.coli)細胞を選択的に不利な状態にする。プラスミドからの発現における依存(reliance)は、細菌内部のプラスミドの存在を維持するために、特定の環境条件下で大腸菌(E.coli)細胞を成長させることが必要とされる。これにより製造が複雑になり、細菌ストレスが増大することがある。製造中、大規模発酵のさまざまな条件は、大腸菌(E.coli)細胞でのプラスミドDNAの複製に影響を与えるため、遺伝子発現の効率(安定性と存在量)に大きく影響する。この実施形態においては、これらの機能遺伝子のゲノム組換えにより、特に増殖条件が変動する場合、細菌がプラスミド複製を維持する必要を排除する。更に、これらの遺伝子がプラスミドから除去され、発現のために大腸菌(E.coli)染色体に組み込まれる場合、大腸菌(E.coli)細胞はより速く成長する(G Wegrzyn and A Wegrzyn 2002)。この実施形態においては、大腸菌(E.coli)染色体からのInv、LLO、HA-1、HEN1、及び/又はTRBPのゲノム発現は、プラスミド発現と比較して、これらの遺伝子のより多くの存在量ももたらす。プラスミド発現における依存は、母細胞の分裂後に両方の娘細胞に分配するのに十分な量のコピーを生成するために、しばしばプラスミドを複製する必要があることを意味する。これにより、安定で一貫したゲノム由来の発現と比較して、子孫細胞におけるプラスミド由来遺伝子の発現が低下する(存在量の低下)。全体として、大腸菌(E.coli)染色体へInv、LLO、HA-1、HEN1、及び/又はTRBPを組み換えることは、特に大規模な製造プロセスにおいて、安定性を改善し、これらの遺伝子の発現を増加させる。
【0040】
本発明の上記方法の1つの実施形態においては、細菌は非病原性又は非病原性である。この実施形態の別の態様においては、細菌は治療的である。この実施形態の別の態様においては、細菌は侵入性である、又は操作され、侵入性となり、宿主細胞に侵入する。このような細菌の例としては、リステリア(Listeria)、エルシニア(Yersinia)、リケッチア(Rickettsia)、赤痢菌(Shigella)、大腸菌(E.coli)、サルモネラ菌(Salmonella)、レジオネラ菌(Legionella)、クラミジア菌(Chlamydia)、ブルセラ菌(Brucella)、ナイセリア菌(Neisseria)、バークホルデリア菌(Burkolderia)、ボルデテラ菌(Bordetella)、ボレリア菌(Borrelia)、コクシエラ菌(Coxiella)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、ヘリコバクター(Helicobacter)、ブドウ球菌(Staphylococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)、ポルフィロモナス(Porphyromonas)、ビブリオ(Vibrio)、トレポネーマ(Treponema)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、及びビフィズス菌(Bifidobacteriae)が挙げられる。この実施形態の別の態様においては、送達媒体は、酵母類(Saccharomyce)及びカンジダ属酵母(Candida yeasts)等の真菌細胞である。
【0041】
本発明の有利な実施形態においては、NA分子を含む侵入性送達媒体は、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、経口、鼻腔内、眼内、直腸内、膣内、骨内、経口、浸漬、局所、尿道内、及びエアロゾル投与接種経路により宿主に導入される。
【0042】
有利な実施形態においては、本発明は、RNA媒介剤及び他の核酸の標的細胞内送達のための生物界間のプラットフォームに関する。そのようなRNAi剤及びNAとしては、デオキシリボヌクレアーゼ(DNA)、RNA、siRNA/shRNA、miRNA、アンタゴmiR、アプタマー、mRNA、スプライス-スイッチングオリゴヌクレオチド、干渉性欠損粒子、及びアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
粘膜を横切る病原体侵入の経路
胸膜、腹膜、皮膚を含む、病原体が人体に侵入する可能性が最も高い表面は、粘膜免疫系によって保護されている(Janeway等 2001)。粘膜表面は、病原体からの体の内部への最初の防御線であり、外部環境におけるアレルゲンである。上皮細胞はタイトジャンクションを形成し、全ての粘膜表面に動的層を形成する(Parham 2014;Presland&Jurevic 2002)。粘膜表面を覆う湿った粘液層は、上皮細胞と白血球によって分泌される「防御化合物」の混合物を含み、物理的バリアを形成するが、選択された微生物にも直接作用する場合がある(Linden等 2008)。気道、消化管、尿生殖路、及び目等のその他の臓器は、粘膜上皮表面を含む主要な系を表す(Parham 2014)。胃腸(GI)管だけでも、400平方メートル超の印象的な(impressive)表面積を有する(Guandalini等 2008)。病原体又はアレルゲンが粘膜防御の突破に成功すると、病気の反応は、通常、体のその区画に含まれる(Janeway等 2001)。
【0044】
提案された生物界間のNA送達系によって標的とされることができる例示的なウイルス:
多数の疾患が、粘膜上皮を含む複数の組織タイプに影響する。単純ヘルペスウイルス1型及び2型(HSV-1及びHSV-2)は、口、目、及び生殖器を含む粘膜上皮細胞で複製する(Chentoufi&Ben ohamed 2012;Karasneh&Shukla 2011;NIAID)。米国では、約65%の人々がHSV-1に対して血清陽性であるが、世界的な有病率ははるかに高く、約90%の人がHSV-1及び/又はHSV-2に感染していると考えられている(Wald&Corey 2007)。先進国では、HSV-1は角膜失明とウイルス性脳炎の主な原因である(Chentoufi&BenMohamed 2012)。産道におけるHSV-2の周産期感染は、新生児ヘルペス症例の約85%に関与している(Chentoufi&BenMohamed 2012)。インフルエンザは、目、鼻、肺、喉の粘膜を含む呼吸組織に感染する、世界的に重要で伝染性の高いウイルスである。ワクチン接種の入手可能性にもかかわらず、毎年何百万人もの人が季節性インフルエンザで病気になり、ウイルスの新興(emerging)及び広域流行株が脅威のままである(NIAID)。ヒトパピローマウイルス(HPV)は、口、喉、上気道の粘膜上皮細胞に感染することがある(Nguyen等 2014;Rautava&Syrjanen 2011)。HPVは更に、肛門生殖器上皮粘膜に感染し、世界で最も一般的な性感染症の1つであり、米国だけで毎年推定100万~550万人の新規症例が発生している(Burd 2003;NIAID)。
【0045】
呼吸器系の粘膜上皮細胞に影響を及ぼす他の重要な疾患には、ハンセン病、結核、並びに百日咳、呼吸器合胞体ウイルス、MERS及びSARS等の伝染性の高い疾患を含む。肺気腫、喘息、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、気管支炎は、他の肺疾患である。GI粘膜では、コレラ等の広範囲の病気が年間300万から500万の新しい症例を引き起こすことが知られている(NIAID)。淋病、クラミジア等の性感染症(Becker 1996)、及び梅毒も、膣及び直腸組織を含む泌尿生殖器粘膜上皮細胞の健康における大きな懸念である(NIAID)。本明細書で教示される生物界間のNA送達系は、標的shRNAの送達を通じてこれらの疾患の治療に使用され得ると考えられる。
【0046】
多くの異なる疾患は、異なる組織タイプの粘膜上皮に特異的に影響を及ぼし、これらの部位における病原体の複製に対処することは、治療的治療の選択肢を提供する。この送達プラットフォームは、治療的NAを広範な粘膜上皮組織に送達する可能性を有する。したがって、生物界間NA送達媒体の特性を改善することに加え、疾患にかかりやすい幾つかの臨床的に関連する粘膜上皮組織にこれらの媒体を送達する実現可能性を実証する。
【0047】
これらの組織には、上/下呼吸器、口腔、GI、膣、直腸、及び眼の上皮を含む。
【0048】
本明細書で教示されるプラットフォームは、非常に特異的且つ臨床的に関連する粘膜上皮組織を標的とする効率的/適切な投与適用を利用して、NAの送達を促進し、NA系のヒトの医学の分野で大きな進歩をもたらす。送達媒体は、局所作用のために鼻腔に投与され、上部及び下部呼吸器疾患のためにエアロゾル化され、頬側送達のために口腔で吸収され、GI吸着のために摂取し、デリケートな生殖器粘膜上皮に適用され、局所な眼内送達のために投与されることができる。この技術は、高められた安定性、治療効力、及び全体的な改善された機能特性で、粘膜上皮組織に安全で効果的なNA送達媒体を提供する。この生物界間のNA送達系プラットフォームは、NA治療の分野で大きな進歩を遂げており、幅広い臨床関連組織に影響を与える膨大な数の疾患に対処しながら、莫大な数の治療的適用を有する。
【0049】
特許請求の範囲の用語集
本発明の化合物に関する用語である「投与」及びその変形(例えば、化合物を「投与する」)は、治療を必要とする対象の系に化合物を導入することを意味する。本発明の化合物が1以上の他の活性薬剤(例えば、AIVワクチン等)と組み合わせて提供される場合、「投与」及びその変形は、それぞれ、化合物及び他の薬剤の同時及び連続導入を含むと理解される。
【0050】
本明細書において、「組成物」という用語は、指定された量の指定された成分を含む製品、並びに指定された量の指定された成分の組み合わせから直接又は間接的に生じる製品を包含することを意図する。
【0051】
本明細書において、「治療的に有効な量」という用語は、研究者、獣医、医師又はその他の臨床医によって求められる組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘発する活性化合物又は医薬品の量を意味する。ウイルス感染に関しては、有効量は、臨床疾患、臨床症状、ウイルス力価又は対象からのウイルス排出によって証明されるように、又は動物間の伝染を予防又は低減する能力によって証明されるように、有効量は、病気に罹患することを防ぐ、又は病気の重症度を減らすのに十分な量を含む。幾つかの実施形態においては、有効量は、臨床疾患及び/又は症状の発症を遅らせる、又は疾患を予防するのに十分な量である。幾つかの実施形態においては、有効量は、ウイルス力価を下げる、及び/又はウイルス排出を減少させるのに十分な量である。有効量は、1回以上の用量で投与されることができる。
【0052】
本明細書において、「治療」とは、有益又は望ましい臨床結果を得ることを指す。有益又は望ましい臨床結果には、症状の緩和、ウイルス感染の程度の減少、ウイルス感染の安定した(即ち悪化しない)状態、ウイルス感染の拡散の防止又は遅延(例えば、排出)、ウイルス感染の進行の予防、遅延、緩徐、及び/又は体重/体重増加の維持の1以上を含むが、これらに限定されない。本発明の方法は、治療のこれらの態様の任意の1以上を熟慮する。
【0053】
「薬学的に許容される」成分とは、合理的な利益/リスク比に見合った過度の有害な副作用(毒性、刺激、アレルギー反応等)のない動物での使用に適した成分である。
【0054】
「安全且つ有効な量」とは、本発明の方法で用いられた場合に、適切な利益リスク比に見合った過度の有害な副作用(毒性、刺激、アレルギー反応等)を伴わずに所望の治療反応をもたらすのに十分な成分の量を指す。
【0055】
出願全体で使用される「a」及び「an」という用語は、文脈が明確に別の記載をしない限り、参照される成分又は工程の「少なくとも1つ」、「少なくとも最初」、「1以上」、又は「複数」を意味するという意味で使用される。例えば、「細胞」という用語は、それらの混合物を含む複数の細胞を含む。
【0056】
「及び/又は」という用語は、本明細書で使用される場合は常に、「及び」、「又は」、及び「この用語によって結び付けられた要素の全て又は任意のその他の組合せ」の意味を含む。
【0057】
本明細書において、「含む」という用語は、製品、組成物、及び方法が参照された成分又は工程を含むが、他を除外しないことを意味することを意図している。「本質的に製品、組成物、及び方法を定義するために使用される場合からなる」とは、本質的に重要な他の成分又は工程を除外することを意味するものとする。したがって、列挙された成分から本質的になる組成物は、微量汚染物質及び薬学的に許容される担体を除外しないであろう。「からなる」とは、他の成分又は工程の微量要素を除外することを意味する。
【0058】
本明細書において、微生物、例えば細菌又は細菌治療粒子(BTP)を参照する場合の「侵入性」という用語は、少なくとも1つの分子、例えばRNA又はRNAをコードするDNA分子を標的細胞へ送達することができる微生物を指す。侵入性微生物は、細胞膜を通過することができ、それにより前記細胞の細胞質に入り、その内容の少なくとも一部、例えばRNA又はRNAをコードするDNAを標的細胞に送達することができる微生物であることができる。少なくとも1つの分子を標的細胞に送達するプロセスは、好ましくは侵入機構(apparatus)を大幅に変更しない。
【0059】
本明細書で使用される「生物界間」という用語は、宿主ゲノム組換えすることなくプロセシングのために標的組織内において、細菌(または他の侵入性微生物)を使用して核酸を生成し、細胞内で(即ち、界:原核生物から真核生物にわたって、又は門:無脊椎動物から脊椎動物へわたって)核酸を送達する送達系を指す。
【0060】
侵入性微生物としては、例えば真核細胞膜等の細胞膜を通過して細胞質に侵入する等することで、少なくとも1つの分子を標的細胞に自然に送達することができる微生物、並びに元々侵入性ではなく、侵入性となるように、遺伝子組み換え等で改変される微生物を含む。他の好ましい実施形態においては、「侵入因子」又は「細胞質標的化因子」とも呼ばれる「侵入因子」に細菌又はBTPを連結することによって、元々侵入性でない微生物を改変して侵入性にすることができる。本明細書で使用される、「侵入因子」は、非侵入性細菌又はBTPによって発現されると、細菌又はBTPを侵入性にするタンパク質又はタンパク質の群等の因子である。本明細書で使用される、「侵入因子」は、「細胞質標的化遺伝子」によってコードされる。侵入性微生物は、当技術分野で一般的に記載されている(例えば、U.S.Pat.Pub.Nos.US20100189691A1及びUS20100092438A1、及びXiang,S.等,Nature Biotechnology 24,697-702(2006).)。それぞれは、全ての目的のために参照によりその全体が組み込まれる。好ましい実施形態においては、本出願の実施例で教示されるように、侵入性微生物は、大腸菌(E.coli)である。しかしながら、NAの送達のための生物界間送達媒体として機能するように、追加の微生物を潜在的に適合させることができると考えられる。これらの非病原性で侵入性細菌及びBTPは、侵入性を示す、又は侵入性を示すように改変され、種々のメカニズムを介して宿主細胞に侵入することができる。通常、特殊なリソソーム内での細菌又はBTPの破壊をもたらす専門の食細胞による細菌又はBTPの取り込みに対して、侵入性細菌又はBTP株は、非食細胞の宿主細胞に侵入する能力を有する。このような細胞内細菌の自然に発生する例としては、エルシニア(Yersinia)、リケッチア(Rickettsia)、レジオネラ菌(Legionella)、ブルセラ菌(Brucella)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、ヘリコバクター(Helicobacter)、コクシエラ菌(Coxiella)、クラミジア菌(Chlamydia)、ナイセリア菌(Neisseria)、バークホルデリア菌(Burkolderia)、ボルデテラ菌(Bordetella)、ボレリア菌(Borrelia)、リステリア(Listeria)、赤痢菌(Shigella)、サルモネラ菌(Salmonella)、ブドウ球菌(Staphylococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)、ポルフィロモナス(Porphyromonas)、トレポネーマ(Treponema)、及びビブリオ(Vibrio)であるが、この性質は、侵入関連遺伝子の伝達によって、プロバイオティクスを含む、大腸菌(E.coli)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、Lactococcus、又はビフィズス菌(Bifidobacteriae)等の他の細菌又はBTPにも導入されることができる(P.Courvalin,S.Goussard,C.Grillot-Courvalin,C.R.Acad.Sci.Paris 318,1207(1995))。生物界間NA送達媒体としての使用のための候補として追加の細菌種を評価する際に考慮又は対処される要素としては、候補の病原性、又はその欠如、標的細胞に対する候補細菌の向性、若しくは細菌を操作し、標的細胞の内部にNAを送達するための程度、及び宿主の自然免疫を誘発することによって候補細菌が提供する相乗効果の値が挙げられる。
【0061】
核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、又は任意の密接に関連する化合物として定義さる。それらは、コードの又は非コードの、合成又は天然由来、単一又は二重鎖セグメントであることができ、多くの場合、結合された多くの(2つ以上の)ヌクレオチドの分子からなる。例としては、低分子干渉RNA低分子ヘアピン型RNA(siRNA/shRNA)、micro RNA(miRNA)、アンタゴmiR、RNA又はDNAアプタマー、メッセンジャーRNA(mRNA)、スプライス-スイッチングオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチジーンオリゴヌクレオチド(antigene oligonucleotide)、DNAザイム、RNAデコイ、リボザイム、ペプチド核酸、オリゴマー、及び干渉性欠損粒子が挙げられる。
【0062】
治療的核酸は、本明細書に記載のNA、又は疾患の治療、疾患の研究に使用される、又は所望の遺伝子改変の達成に使用される、又は遺伝子導入の目的のために使用される密接に関連する化合物である。それらは、特定の遺伝子又は疾患に関与する他の分子の機能の特定の阻害又は中断又は変更が治療上望ましいと考えられる場合に使用される。
【0063】
本明細書で使用する場合、(1)医薬組成物を対象に内部(摂取、吸入、注射等により)、局所的に(体内への吸収の為に皮膚に)投与する、或いはその逆で、且つ(2)医薬組成物は、対象が疾患に罹患し、疾患に通常関連する症状/臨床疾患を経験するのを防ぐ場合に、疾患への曝露の前後に疾患が予防される。又は、対象が疾患に罹患し、重症度の程度の差はあるが、疾患に通常関連する症状/臨床疾患の一部又は全てを経験又は経験しない場合、対象は疾患から通常の健康状態に回復する。
【0064】
本発明の方法を実施するためのキットが更に提供される。「キット」とは、少なくとも1つの試薬、例えば本発明のpH緩衝液を含む任意の製造物(例えばパッケージ又は容器)を意図する。キットは、本発明の方法を実施するための手段として宣伝、配布、又は販売されることができる。更に、キットは、キット及びその使用方法を説明する添付文書を含むことができる。キット試薬のいずれか又は全ては、密閉容器又はパウチ等の外部環境からそれらを保護する容器内に提供されることができる。
【0065】
有利な実施形態においては、キット容器は、薬学的に許容される担体を更に含むことができる。キットは、滅菌希釈剤を更に含むことができ、別の追加の容器に保存されることが好ましい。別の実施形態においては、キットは、対象の疾患を治療及び/又は予防する方法としてのpH緩衝液と抗病原体剤の併用治療の使用を指示する印刷された説明書を含む添付文書を更に含む。キットは、追加の抗病原体剤(例えば、アマンタジン、リマンタジン、及びオセルタミビル)、そのような薬剤の効果を高める薬剤、又は治療の有効性又は忍容性を改善する他の化合物を含む追加の容器を含むこともできる。キットはまた、当該技術の範囲内にある特定の従来の技術(すなわち、核酸抽出)を実施するために使用される少なくとも1つの試薬を含むことができる。
【0066】
本発明の実施は、特に明記しない限り、有機化学、ポリマー技術、分子生物学(組換え技術を含む)、細胞生物学、生化学、及び免疫学の従来の技術及び説明を使用することができ、これらは当技術分野の範囲内である。そのような従来の技術には、ポリマーアレイ合成、ハイブリダイゼーション、ライゲーション、及びラベルを使用したハイブリダイゼーションの検出を含む。本明細書に記載される上記の例を参照することにより、好適な技術の具体的に説明されることができる。しかしながら、他の同等の従来の手順も当然用いられることができる。このような従来の技術及び説明は、Genome Analysis:A Laboratory Manual Series(Vols.I-IV),Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cells:A Laboratory Manual,PCR Primer:A Laboratory Manual,and Molecular Cloning:A Laboratory Manual(all from Cold Spring Harbor Laboratory Press),Stryer,L.(1995)Biochemistry(4th Ed.)Freeman,N.Y.,Gait,“Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach”1984,IRL Press,London,Nelson and Cox(2000),Lehninger,Principles of Biochemistry 3rd Ed.,W.H.Freeman Pub.,New York,N.Y. and Berg等(2002)等標準的実験マニュアルで見ることが可能である。
【0067】
Biochemistry,5th Ed.,W.H.Freeman Pub.,New York,N.Y.の全ては、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0068】
本出願において引用される全ての参考文献は、本明細書と矛盾しない範囲で参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0069】
上記に記載される利点、及び前述の説明から明らかになる利点は、効率的に達成され、本発明の範囲から逸脱することなく上記の構成に特定の変更を加えることができるため、全ての事項が含まれることが意図されていることが理解されるであろう。前述の説明に含まれる、又は添付の図面に示されている事項は、限定的な意味ではなく、例示として解釈されるものとする。
【0070】
また、以下の特許請求の範囲は、本明細書に記載される本発明の一般的及び特定の特徴の全て、及び言語の問題として、その間にあると言われる本発明の範囲の全ての記述を包含することを意図することも理解されたい。本発明は、記載された。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載される発明。
【外国語明細書】