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特開2023-61977潜在性硬化剤の混合物を含有する一液型強化エポキシ接着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061977
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】潜在性硬化剤の混合物を含有する一液型強化エポキシ接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20230425BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230425BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230425BHJP
   C09J 163/02 20060101ALI20230425BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/06
C09J11/08
C09J163/02
C08G59/50
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023010879
(22)【出願日】2023-01-27
(62)【分割の表示】P 2019545921の分割
【原出願日】2018-02-19
(31)【優先権主張番号】62/463,704
(32)【優先日】2017-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519415100
【氏名又は名称】ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】オーヴィル、テイラー
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナン、ビンドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】コッホ、フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】クリントン、コーディー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】接着剤が、より低温で硬化される一方、硬化した接着剤において良好な接着特性及び機械的特性を生じさせることを可能にする、一液型強化エポキシ接着剤及びこれらの接着剤を使用する組み立てプロセスを提供する。
【解決手段】混合物中において、A)少なくとも1つの非ゴム変性エポキシ樹脂と、B)少なくとも1つの強化剤と、C)少なくとも1つのエポキシ硬化触媒と、D)ジシアンジアミド及び1つ以上のジヒドラジド化合物を含む硬化剤混合物とを含む一液型強化エポキシ接着剤であって、前記ジシアンアジアミド及び1つ以上のジヒドラジド化合物は、1:99~99:1の重量比で存在する、一液型強化エポキシ接着剤とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合物中において、A)少なくとも1つの非ゴム変性エポキシ樹脂と、B)少なくと
も1つの強化剤と、C)少なくとも1つのエポキシ硬化触媒と、D)ジシアンジアミド及
び1つ以上のジヒドラジド化合物を含む硬化剤混合物とを含む一液型強化エポキシ接着剤
であって、前記ジシアンアジアミド及び1つ以上のジヒドラジド化合物は、1:99~9
9:1の重量比で存在する、一液型強化エポキシ接着剤。
【請求項2】
前記強化剤は、構成成分B-1、B-2及びB-3の少なくとも1つを含み、構成成
分B-1は、最大で35,000の数平均分子量と、少なくとも1000原子質量単位の
重量を有する少なくとも1つのポリエーテル又はジエンゴムセグメントと、キャップされ
たイソシアネート基とを有する1つ以上の反応性ウレタン基含有ポリエーテル及び/又は
尿素基含有ポリエーテルであり、構成成分B-2は、1つ以上のコア-シェルゴムであり
、及びB-3は、1つ以上のゴム変性エポキシ樹脂である、請求項1に記載の一液型強化
エポキシ接着剤。
【請求項3】
構成成分Bは、B-1)最大で35,000の数平均分子量と、少なくとも1000
原子質量単位の重量を有する少なくとも1つのポリエーテル又はジエンゴムセグメントと
、キャップされたイソシアネート基とを有する1つ以上の反応性ウレタン基含有ポリエー
テル及び/又は尿素基含有ポリエーテルと、B-3)1つ以上のゴム変性エポキシ樹脂と
の混合物である、請求項1又は2に記載の一液型強化エポキシ接着剤。
【請求項4】
構成成分B-3は、構成成分A~Dの総重量の1~20%を構成する、請求項3に記
載の一液型強化エポキシ接着剤。
【請求項5】
前記少なくとも1つのジヒドラジド化合物は、少なくとも120℃の融解温度を有す
る、請求項1~4のいずれか一項に記載の一液型強化エポキシ接着剤。
【請求項6】
構成成分A~Dの組み合わされた重量に基づいて12~45%のゴム含有量を有する
、請求項1~5のいずれか一項に記載の一液型強化エポキシ接着剤。
【請求項7】
前記ジシアンジアミド及び少なくとも1つのジヒドラジド化合物は、共に構成成分A
~Dの組み合わされた重量の2~12%を構成する、請求項1~6のいずれか一項に記載
の一液型強化エポキシ接着剤。
【請求項8】
構成成分Aは、構成成分A~Dの組み合わされた重量の60~80%を構成する、請
求項1~7のいずれか一項に記載の一液型強化エポキシ接着剤。
【請求項9】
構成成分Aは、ビスフェノールの少なくとも1つのジグリシジルエーテルを含む、請
求項1~8のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項10】
2つの基材を結合するための方法であって、2つの基材間の結合層において、請求項
1~9のいずれか一項に記載の接着剤の層を形成してアセンブリを形成することと、次い
で、少なくとも130℃の温度まで加熱することにより、前記結合層における前記接着剤
層を硬化させて、前記結合層で前記2つの基材に結合された硬化した接着剤を形成するこ
ととを含む方法。
【請求項11】
前記温度は、130~175℃である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記温度は、130~165℃である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記2つの基材は、互いに少なくとも5×10-6m/m-Kだけ異なる線熱膨張係
数を有する、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記基材の1つは、金属であり、及び他方の基材は、熱可塑性有機ポリマー、熱硬化
性有機ポリマー又は繊維複合体である、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
結合及びコーティングされたアセンブリを形成するための方法であって、1)第1及
び第2の基材間の結合層において、請求項1~9のいずれか一項に記載の接着剤の層を形
成して、前記結合層で前記接着剤組成物とそれぞれ接触している前記第1及び第2の基材
を含むアセンブリを形成することと、次いで、
2)前記アセンブリをコーティング浴に浸漬して、前記アセンブリの露出面の少なくと
も一部上に未硬化コーティングの層を形成することと、
3)前記脱脂されたアセンブリを少なくとも130℃の温度まで加熱して前記接着剤を
硬化させて、前記結合層で前記基材に結合された硬化した接着剤を形成し、且つ同時に前
記コーティング層を硬化させることと
を含む方法。
【請求項16】
前記温度は、130~175℃である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記温度は、133~165℃である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第1及び第2の基材は、互いに少なくとも5×10-6m/m-Kだけ異なる線
熱膨張係数を有する、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記基材の1つは、金属であり、及び他方の基材は、熱可塑性有機ポリマー、熱硬化
性有機ポリマー又は繊維複合体である、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一液型強化エポキシ接着剤及びこれらの接着剤を使用する組み立てプロセ
スに関する。
【背景技術】
【0002】
一液型強化エポキシ構造用接着剤は、自動車及び他の製品の製造において普及しつつ
ある。これらの単一液型配合物は、樹脂及び硬化剤を別々に保存、計量及び混合する必要
性が回避されるため、自動組み立てラインでの使用が簡単になる。
【0003】
エポキシ樹脂及び硬化剤は、共にパッケージ化されるため、一液型接着剤は、潜在的
な硬化を示さなければならない。硬化は、通常の保管及び輸送条件下で開始できないが、
代わりに、典型的には高温が含まれる特定の硬化条件に接着剤がさらされるまで硬化を遅
らせなければならない。
【0004】
この理由のため、一液型強化エポキシ接着剤には一般に潜在性硬化剤が配合される。
この目的のため、ジシアンジアミドが広く使用される。ジシアンジアミドは、ほとんどの
エポキシ樹脂に難溶である固体物質である。ジシアンジアミドは、200℃超の温度で融
解する。その高い融解温度及びエポキシ樹脂中での低い溶解性がその潜在性に寄与する。
ジシアンジアミドを含有するエポキシ接着剤における発熱硬化の開始は、典型的には16
5℃以上の温度で見られ、通常、特性を完全に生じて適切な硬化を得るには少なくとも1
80℃の硬化温度が必要である。
【0005】
いくらか低い硬化開始温度が望ましい場合がある。所定の一連の硬化条件下でより高
い硬化度を得ることができ、これは、より優れた最終特性につながる。硬化時間は、低減
され得る。より低い硬化温度を使用することができ、これは、より低いエネルギー使用量
、揮発性有機化合物の生成の減少及びより高い硬化温度に耐えられない基材の結合に接着
剤を使用する能力を含む、いくつかの利点を有する。異なる線熱膨張係数を有する基材物
質が接着されている場合、硬化温度が低いと、接着されたアセンブリが冷却された際に見
られる収縮の差が小さくなる。これにより、それ以外の場合に接着結合の破損又は接着し
たアセンブリの変形を促進する可能性のある応力が低減する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一態様では、混合物中において、A)少なくとも1つの非ゴム変性エポキ
シ樹脂と、B)少なくとも1つの強化剤と、C)少なくとも1つのエポキシ硬化触媒と、
D)ジシアンジアミド及び1つ以上のジヒドラジド化合物を含む硬化剤混合物とを含む一
液型強化エポキシ接着剤であって、ジシアンジアミド及び1つ以上のジヒドラジド化合物
は、1:99~99:1の重量比で存在する、一液型強化エポキシ接着剤である。
【0007】
本発明の接着剤組成物は、驚くべきことに、低い硬化開始温度を示す。硬化開始温度
は、多くの場合、約140℃と低く、これは、ジシアンジアミド又はジヒドラジド化合物
を単独で使用した場合に見られるよりも20~25℃低い。それにもかかわらず、接着剤
は、貯蔵安定性があり、硬化して多数の基材と強力な結合を形成する。硬化した接着剤は
、硬化剤としてジシアンジアミドのみ又はジヒドラジドのみを含有し、同じ条件下で硬化
する他の同様の硬化した接着剤よりも高いガラス転移温度を示し得る。
【0008】
本発明は、2つの基材を結合するための方法であって、2つの基材間の結合層におい
て、本発明の第1の態様の接着剤の層を形成してアセンブリを形成することと、次いで、
少なくとも130℃の温度まで加熱することにより、結合層における接着剤層を硬化させ
て、結合層で2つの基材に結合された硬化した接着剤を形成することとを含む方法でもあ
る。
【0009】
本発明は、結合及びコーティングされたアセンブリを形成するための方法であって、
1)第1の基材と第2の基材との間の結合層において、本発明の第1の態様の接着剤の層
を形成して、結合層で接着剤組成物とそれぞれ接触している第1及び第2の基材を含むア
センブリを形成することと、次いで、
2)アセンブリをコーティング浴に浸漬して、アセンブリの露出面の少なくとも一部上
に未硬化コーティングの層を形成することと、
3)工程2)からの硬化したアセンブリを少なくとも140℃の温度まで加熱して接着
剤を硬化させて、結合層で基材に結合された硬化した接着剤を形成し、且つ同時にコーテ
ィング層を硬化させることと
を含む方法でもある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本接着剤は、少なくとも1つの非ゴム変性エポキシ樹脂を含有し、これにより、硬化
前にエポキシ樹脂が後述のようにゴムに化学的に結合していないことを意味する。
【0011】
広範囲のエポキシ樹脂を非ゴム変性エポキシ樹脂として使用することができ、米国特
許第4,734,332号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)の2欄66行~
4欄24行で記載されるようなものが挙げられる。エポキシ樹脂は、1分子当たり平均少
なくとも1.8個、好ましくは少なくとも2.0個のエポキシド基を有しなければならな
い。エポキシ当量は、例えば、75~350、好ましくは140~250、いくつかの実
施形態では150~225であり得る。非ゴム変性エポキシ樹脂の混合物が存在する場合
、混合物は、少なくとも1.8個、好ましくは少なくとも2.0個の平均エポキシ官能基
及び前の文章におけるようなエポキシ当量を有しなければならない。より好ましくは、混
合物中の各エポキシ樹脂は、このようなエポキシ官能基及びエポキシ当量を有する。
【0012】
好適な非ゴム変性エポキシ樹脂としては、多価フェノール化合物(例えば、レゾルシ
ノール、カテコール、ヒドロキノン、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノール
AP(1,1-ビス(4-ヒドロキシルフェニル)-1-フェニルエタン)、ビスフェノ
ールF、ビスフェノールK及びテトラメチルビフェノールなど)のジグリシジルエーテル
;脂肪族グリコールのジグリシジルエーテル(例えば、C2~24アルキレングリコール
などのジグリシジルエーテル);フェノール-ホルムアルデヒドノボラック樹脂(エポキ
シノボラック樹脂)、アルキル置換フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール-ヒ
ドロキシベンズアルデヒド樹脂、クレゾール-ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、ジシク
ロペンタジエン-フェノール樹脂及びジシクロペンタジエン置換フェノール樹脂のポリグ
リシジルエーテル並びにこれらの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0013】
好適なエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA樹脂のジグリシジルエーテルが挙げ
られ、例えばOlin Corporationにより、D.E.R.(登録商標)33
0、D.E.R.(登録商標)331、D.E.R.(登録商標)332、D.E.R.
(登録商標)383、D.E.R.661及びD.E.R.(登録商標)662樹脂の表
記で販売されている。
【0014】
エポキシノボラック樹脂を使用し得る。このような樹脂は、Olin Corpor
ationからD.E.N.(登録商標)354、D.E.N.(登録商標)431、D
.E.N.(登録商標)438及びD.E.N.(登録商標)439として市販されてい
る。
【0015】
他の好適な非ゴム変性エポキシ樹脂は、脂環式エポキシドである。脂環式エポキシド
は、下記の構造:
【化1】
(式中、Rは、水素、脂肪族、脂環式及び/又は酸素、窒素などのヘテロ原子を含み得
る芳香族基であり、及びnは、1~10、好ましくは2~4の整数である)
によって示されるように、炭素環における2個の隣接原子に結合するエポキシ酸素を有
する飽和した炭素環を含む。nが1である場合、脂環式エポキシドは、モノエポキシドで
ある。nが2以上である場合、ジエポキシド又はポリエポキシドが形成される。Rは、好
ましくは、最大で10個の炭素原子を含有する。モノエポキシド、ジエポキシド及び/又
はポリエポキシドの混合物を使用することができる。米国特許第3,686,359号明
細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような脂環式エポキシ樹脂
を本発明で使用し得る。特に注目される脂環式エポキシ樹脂は、(3,4-エポキシシク
ロヘキシル-メチル)-3,4-エポキシ-シクロヘキサンカルボキシレート、ビス-(
3,4-エポキシシクロヘキシル)アジパート、ビニルシクロヘキセンモノオキシド及び
これらの混合物である。
【0016】
他の好適なエポキシ樹脂としては、米国特許第5,112,932号明細書に記載さ
れているようなオキサゾリドン含有化合物が挙げられる。加えて、鎖伸長されたエポキシ
-イソシアネートコポリマー、例えばD.E.R.592及びD.E.R.6508(O
lin Corporation)として市販されているものなどを使用することができ
る。
【0017】
非ゴム変性エポキシ樹脂は、好ましくは、ビスフェノールのジグリシジルエーテル(
これは、鎖伸長され得る)又はこれらと最大で10重量%の別のタイプの非ゴム変性エポ
キシ樹脂との混合物を含む。最も好ましいエポキシ樹脂は、ビスフェノールA又はビスフ
ェノールFのジグリシジルエーテル(これは、鎖伸長され得る)である。これらは、約1
70~600以上、好ましくは225~400の平均エポキシ当量を有し得る。
【0018】
強化剤(構成成分B)は、-20℃以下の少なくとも1つのガラス転移温度(示差走
査熱量計による)を有する物質である。とりわけ好適な強化剤は、
B-1)最大で35,000の数平均分子量と、少なくとも1000原子質量単位の重
量を有する少なくとも1つのポリエーテル又はジエンゴムセグメントと、キャップされた
イソシアネート基とを有する1つ以上の反応性ウレタン基含有ポリエーテル及び/又は尿
素基含有ポリエーテル、
B-2)1つ以上のコア-シェルゴム、及び
B-3)1つ以上のゴム変性エポキシ樹脂
である。
【0019】
B-1タイプの強化剤は、例えば、米国特許第5,202,390号明細書、同第5
,278,257号明細書、国際公開第2005/118734号パンフレット、同第2
007/003650号パンフレット、同第2012/091842号パンフレット、米
国特許出願公開第2005/0070634号明細書、同第2005/0209401号
明細書、同第2006/0276601号明細書、欧州特許出願公開第A-0 308
664号明細書、同第A-1 498 441号明細書、同第A-1 728 825号
明細書、同第A-1 896 517号明細書、同第A-1 916 269号明細書、
同第A-1 916 270号明細書、同第A-1 916 272号明細書及び同第A
-1 916 285号明細書に記載されている。
【0020】
B-1タイプの強化剤は、好都合には、イソシアネート末端ポリエーテル又はジエン
ゴムを形成し、且つイソシアネート基をフェノール又はポリフェノールでキャップする工
程を含むプロセスで製造される。イソシアネート末端ポリエーテル又はジエンゴムは、好
都合には、ヒドロキシル末端ポリエーテル若しくはアミン末端ポリエーテル又はヒドロキ
シル末端ジエンゴム若しくはアミン末端ジエンゴムを過剰なポリイソシアネートと反応さ
せて、ウレタン又は尿素基及び末端イソシアネート基を有する付加物を生成することによ
り製造される。必要に応じて、イソシアネート末端ポリエーテル又はジエンゴムを、キャ
ッピング反応を実施する前に鎖延長及び/又は分枝化することができる。
【0021】
イソシアネート末端ポリエーテルのポリエーテル部分は、テトラヒドロフラン(テト
ラメチレンオキシド)、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、1,2
-プロピレンオキシド及びエチレンオキシドの1つ以上のポリマー又はコポリマーであり
得、ポリマー又はコポリマーの総重量に基づいてテトラヒドロフラン、1,2-ブチレン
オキシド、2,3-ブチレンオキシド及び1,2-プロピレンの1つ以上の少なくとも7
0重量%のポリマー又はコポリマーが好ましい。ポリマー又はコポリマーの総重量に基づ
いて少なくとも80重量%のテトラヒドロフランのポリマーが特に好ましい。
【0022】
イソシアネート末端ポリエーテルは、好都合には、出発ポリエーテル上の1当量のヒ
ドロキシル基及び/又は第1級若しくは第2級アミノ基当たり少なくとも1.5当量、好
ましくは1.8~2.5当量又は1.9~2.2当量のポリイソシアネートの比において
、ヒドロキシル末端ポリエーテル及び/又はアミン末端ポリエーテルをポリイソシアネー
トと反応させることにより調製される。出発ポリエーテルは、好ましくは、1分子当たり
2~3個、より好ましくは2個のヒドロキシル及び/又は第1級若しくは第2級アミノ基
を有する。ポリイソシアネートは、好ましくは、1分子当たり2個のイソシアネート基を
有する。イソシアネート末端ポリエーテルは、好ましくは、1分子当たり2~3個、より
好ましくは2個のイソシアネート基を有する。出発ポリエーテルは、好ましくは、900
~800、より好ましくは1500~6000又は1500~4000の数平均分子量を
有する。ポリイソシアネートは、好ましくは、最大で300の分子量を有する。
【0023】
イソシアネート末端ジエンポリマーは、好都合には、出発ジエンポリマー上の1当量
のヒドロキシル基当たり少なくとも1.5当量、好ましくは1.8~2.5当量又は1.
9~2.2当量のポリイソシアネートの比において、出発ヒドロキシル末端ジエンポリマ
ー又はアミン末端ジエンポリマーをポリイソシアネートと反応させることにより調製され
る。
【0024】
出発ジエンポリマーは、好ましくは、ポリイソシアネートとの反応前に-20℃以下
、好ましくは-40℃以下のガラス転移温度を有する。ジエンポリマーは、共役ジエンの
液体ホモポリマー又はコポリマー、特にジエン/ニトリルコポリマーである。共役ジエン
は、好ましくは、ブタジエン又はイソプレンであり、特にブタジエンが好ましい。好まし
いニトリルモノマーは、アクリロニトリルである。好ましいコポリマーは、ブタジエンア
クリロニトリルコポリマーである。ゴムは、好ましくは、凝集体中において、30重量%
以下の重合不飽和ニトリルモノマー、好ましくは約26重量%以下の重合ニトリルモノマ
ーを含有する。
【0025】
出発ジエンポリマーは、好ましくは、1分子当たり2~3個、より好ましくは2個の
ヒドロキシル及び/又は第1級若しくは第2級アミノ基を有する。ポリイソシアネートは
、好ましくは、1分子当たり2個のイソシアネート基を有する。イソシアネート末端ジエ
ンポリマーは、好ましくは、1分子当たり2~3個、より好ましくは2個のイソシアネー
ト基を有する。出発ジエンエンポリマーは、好ましくは、900~800、より好ましく
は1500~6000、更により好ましくは2000~3000の数平均分子量を有する
。ポリイソシアネートは、好ましくは、最大で300の分子量を有する。
【0026】
イソシアネート末端ポリエーテル及びイソシアネート末端ジエンポリマーは、芳香族
又は脂肪族イソシアネート基を有し得る。イソシアネート末端ポリマーが上記のプロセス
で製造される場合、ポリイソシアネートは、トルエンジアミン若しくは2,4’-及び/
若しくは4,4’-ジフェニルメタンジアミンなどの芳香族ポリイソシアネート又はイソ
ホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、水素添加トルエン
ジイソシアネート、水素添加メチレンジフェニルイソシアネート(H12MDI)などの
脂肪族ポリイソシアネートであり得る。
【0027】
イソシアネート末端ポリマーを生成するための反応は、任意選択的に、イソシアネー
ト基をポリエーテル又はジエンポリマーのイソシアネート反応性基と反応させるための触
媒の存在下において、出発ポリエーテル又はジエンゴムをポリイソシアネートと組み合わ
せ、60~120℃まで加熱することによって実施され得る。イソシアネート含有量が一
定値若しくは目標値に減少するまで、又は出発ポリエーテル若しくはジエンポリマーのア
ミノ基及び/若しくはヒドロキシル基が消費されるまで反応を継続する。
【0028】
必要に応じて、出発ポリエーテル又はジエンポリマーとポリイソシアネートとの間の
反応に分枝剤を添加することによって分枝を実施することができる。本発明の目的におい
て、分枝剤は、最大で599、好ましくは50~500の分子量並びに1分子当たり少な
くとも3個のヒドロキシル、第1級アミノ及び/又は第2級アミノ基を有するポリオール
又はポリアミン化合物である。少しでも使用される場合、分枝剤は、一般に、分枝剤及び
出発ポリエーテル又はジエンポリマーの組み合わされた重量の10%以下、好ましくは5
%以下、更により好ましくは2%以下を構成する。分枝剤の例としては、ポリオール、例
えばトリメチロールプロパン、グリセリン、トリメチロールエタン、エチレングリコール
、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、スクロース
、ソルビトール、ペンタエリスリトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンな
ど、並びに最大で599、特に最大で500の数平均分子量を有するこれらのアルコキシ
レートが挙げられる。
【0029】
鎖延長は、必要に応じて、キャッピング工程を実施する前にイソシアネート末端ポリ
エーテル又はジエンポリマーを鎖延長剤と反応させることにより実施することができる。
鎖延長剤は、最大で749、好ましくは50~500の分子量を有するポリオール又はポ
リアミン化合物並びに1分子当たり2個のヒドロキシル、第1級アミノ及び/又は第2級
アミノ基を含む。好適な鎖延長剤の例としては、脂肪族ジオール、例えばエチレングリコ
ール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロ
ピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキ
サンジオール、シクロヘキサンジメタノールなど;脂肪族又は芳香族ジアミン、例えばエ
チレンジアミン、ピペラジン、アミノエチルピペラジン、フェニレンジアミン、ジエチル
トルエンジアミンなど、並びに2個のフェノールヒドロキシル基を有する化合物、例えば
レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノール、ビスフェノールA、ビス
フェノールAP(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン)、ビ
スフェノールF、ビスフェノールK、ビスフェノールM、テトラメチルビスフェノール及
びo,o’-ジアリル-ビスフェノールAなどが挙げられる。とりわけ、2個のフェノー
ルヒドロキシル基を有する化合物が好ましい。
【0030】
次いで、イソシアネート末端ポリエーテル又はジエンポリマーのイソシアネート基を
キャッピング剤と反応させることによってキャップする。少なくとも90%のイソシアネ
ート基、より好ましくは少なくとも95%のイソシアネート基は、モノフェノール又はポ
リフェノールでキャップされる。モノフェノールの例としては、フェノール、それぞれ1
~30個の炭素原子を含有し得る1個以上のアルキル基を含有するアルキルフェノール、
ハロゲン化フェノール、カルダノール又はナフトールが挙げられる。好適なポリフェノー
ルは、1分子当たり2個以上、好ましくは2個のヒドロキシル基を含有し、レゾルシノー
ル、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールA
P(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン)、ビスフェノール
F、ビスフェノールK、ビスフェノールM、テトラメチルビスフェノール及びo,o’-
ジアリル-ビスフェノールA並びにこれらのハロゲン化誘導体が挙げられる。イソシアネ
ート基の最大で10%、好ましくは最大で5%を他のキャッピング剤、例えばアミン、ベ
ンジルアルコール、ヒドロキシ官能性アクリレート又はメタクリレート化合物、チオール
化合物、アセトアミドなどの少なくとも1つのアミン水素を有するアルキルアミド化合物
及びケトオキシム化合物などでキャップし得る。
【0031】
キャッピング反応は、任意選択的に、イソシアネート基をキャピング剤のイソシアネ
ート反応性基と反応させるための触媒の存在下において、すでに記載された一般的な条件
下、すなわち記載の比で物質を合わせて、それらを室温又は60~120℃などの高温で
反応させることにより実施することができる。イソシアネート含有量が一定値(これは、
好ましくは、0.1重量%未満である)に減少するまで反応を継続する。イソシアネート
基の3%未満、好ましくは1%未満は、キャップされないままであり得る。
【0032】
得られた強化剤(構成成分B-1)は、1000以上の分子量を表すピークのみを考
慮して、GPCにより測定した際、好適には少なくとも3000、好ましくは少なくとも
4,000~約35,000、好ましくは約20,000まで、より好ましくは約15,
000までの数平均分子量を有する。
【0033】
構成成分B-1の多分散度(重量平均分子量の数平均分子量に対する比)は、好適に
は、約1~約4、好ましくは約1.5~2.5である。強化剤は、好適には、1分子当た
り平均で約1.5個、好ましくは約2.0個~約6個、好ましくは約4個、より好ましく
は約3個、更により好ましくは約2.5個のキャップしたイソシアネート基を含有する。
特に好ましいプレポリマーは、1分子当たり平均1.9~2.2個のキャップしたイソシ
アネート基を含有する。
【0034】
コア-シェルゴム(構成成分B-2)は、ゴム状コアを有する粒子状物質である。ゴ
ム状コアは、好ましくは、-20℃未満、より好ましくは-50℃未満、更により好まし
くは-70℃未満のT(DSCによる)を有する。ゴム状コアのTは、-100℃未
満であり得る。コア-シェルゴムは、好ましくは、少なくとも50℃のTを有する少な
くとも1つのシェル部分も有する。コア-シェルゴムのコアは、ブタジエンなどの共役ジ
エン若しくはn-ブチル-、エチル-、イソブチル-若しくは2-エチルヘキシルアクリ
レートなどの低級アルキルアクリレートのポリマー又はポリマーであり得るか、又はシリ
コーンゴムであり得る。ゴムのコアに任意選択的に化学的にグラフト又は架橋されるシェ
ルポリマーは、好ましくは、少なくとも1つの低級アルキルメタクリレート、例えばメチ
ルメタクリレート、エチルメタクリレート又はt-ブチルメタクリレートなどから重合さ
れる。このようなメタクリレートモノマーのホモポリマーを用い得る。更に、最大で40
重量%のシェルポリマーは、好ましくは、他のモノビニリデンモノマー、例えばスチレン
、ビニルアセテート、ビニルクロリド、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチ
ルアクリレートなどから形成される。グラフト化シェルポリマーの分子量は、例えば、2
0,000~500,000であり得る。コア-シェルゴムは、エポキシ樹脂などのキャ
リア中でム粒子の分散体の形態で提供され得る。有用なコア-シェルゴムの例としては、
欧州特許出願公開第1 632 533 A1号明細書に記載されているもの、及びKa
neka Kane Ace(Kaneka Kane Ace MX 156、及びK
aneka Kane Ace MX 120コア-シェルゴム分散体を含む)の表記で
Kaneka Corporationにより販売されているものなどが挙げられる。
【0035】
本発明の目的のためのゴム変性エポキシ樹脂(構成成分B-3)は、少なくとも30
0g/mol、好ましくは少なくとも500g/molの脂肪族鎖によって分離された少
なくとも2個のエポキシド基を有する化合物である。脂肪族鎖は、例えば、アルキレン基
;アルケニル基;ジエンポリマー若しくはコポリマー;又はポリエーテル、例えばポリ(
プロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)若しくはプロピレンオキシド及びエチ
レンオキシドのコポリマーなどであり得る。ゴム変性エポキシ樹脂は、硬化前に-20℃
以下、好ましくは-30℃以下のガラス転移温度を有し得る。
【0036】
ゴム変性エポキシ樹脂の1つの有用なタイプは、それぞれ少なくとも300g/mo
l、好ましくは500g/molの重量を有する1つ以上のポリエーテルセグメントを含
有するエポキシ末端ポリエーテルである。ポリエーテルセグメントは、それぞれ最大で1
0,000、最大で3,000又は最大で2,000g/molの重量を有し得る。有用
なエポキシ末端ポリエーテルの1つのタイプは、ポリエーテルジオールのジグリシジルエ
ーテルである。ポリエーテルジオールは、例えば、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(
エチレンオキシド)又はプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマーであり得る。
有用である市販のエポキシ末端ポリエーテルとしては、Olin Corporatio
nによりD.E.R.(登録商標)732及びD.E.R.(登録商標)736として販
売されているものが挙げられる。
【0037】
第2の有用なタイプのゴム変性エポキシ樹脂は、以前に記載された非ゴム変性エポキ
シ樹脂のいずれかと、エポキシド反応性基、例えばアミノ又は好ましくはカルボキシル基
などを有する少なくとも1つの液体ゴムとの反応生成物である。得られた付加物は、構造
用接着剤が硬化する際に付加物が更に反応する反応性エポキシド基を有する。液体ゴムの
少なくとも一部は、示差走査熱量計(DSC)により測定した際に-40℃以下、特に-
50℃以下のガラス転移温度(T)を有することが好ましい。好ましくは、ゴムは、-
25℃以下のガラス転移温度を有する。ゴムTは、-100℃又は更にそれより低い場
合があり得る。
【0038】
この第2のタイプのゴム変性エポキシ樹脂の例は、アミン末端ポリエーテルと過剰な
ポリエポキシドとの反応生成物である。ポリエポキシドは、アミン末端ポリエーテルのア
ミノ基をキャップし、反応生成物上に遊離エポキシド基を生成する。アミン末端ポリエー
テルは、ポリエポキシドとの反応前に好ましくは1分子当たり2個又は3個のアミノ基を
有する。アミン末端ポリエーテルは、少なくとも300g/mol、好ましくは少なくと
も500g/mol、最大で10,000、最大で3,000又は最大で2,000g/
molの重量を有し得る。ポリエポキシドは、上述の非ゴム変性エポキシ樹脂のいずれか
であり得、とりわけポリフェノールのグリシジルエーテルが好ましい。
【0039】
第2のタイプのゴム変性エポキシ樹脂は、過剰なポリエポキシドと、共役ジエンのホ
モポリマー又はコポリマー、特にジエン/ニトリルコポリマーとの反応生成物であり得る
。共役ジエンは、好ましくは、ブタジエン又はイソプレンであり、特にブタジエンが好ま
しい。好ましいニトリルモノマーは、アクリロニトリルである。好ましいコポリマーは、
ブタジエンアクリロニトリルコポリマーである。ゴムは、好ましくは、凝集体中において
、30重量%以下の重合不飽和ニトリルモノマー、好ましくは約26重量%以下の重合ニ
トリルモノマーを含有する。ゴムは、1分子当たり平均で好ましくは約1.5個、より好
ましくは約1.8個~約2.5個、より好ましくは約2.2個のエポキシド反応性末端基
を含有する。カルボキシル末端ゴムが好ましい。ゴム(ポリエポキシドとの反応前)の重
量分子量(M)は、好適には、約2000~約6000、より好ましくは約3000~
約5000である。
【0040】
好適なカルボキシル官能性ブタジエン及びブタジエン/アクリロニトリルゴムは、N
oveonからHycar(登録商標)2000X162カルボキシル末端ブタジエンホ
モポリマー、Hycar(登録商標)1300X31、Hycar(登録商標)1300
X8、Hycar(登録商標)1300X13、Hycar(登録商標)1300X9及
びHycar(登録商標)1300X18カルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリ
ルコポリマーの商標名で市販されている。好適なアミン末端ブタジエン/アクリロニトリ
ルコポリマーは、Hycar(登録商標)1300X21の商標名で販売されている。
【0041】
他のゴム変性エポキシ樹脂としては、エポキシ化脂肪酸(これは、二量体化又はオリ
ゴマー化され得る)及びエポキシ基を含有するように変性されているエラストマーポリエ
ステルが挙げられる。
【0042】
エポキシ硬化触媒(構成成分C)は、硬化剤でエポキシ樹脂の反応を触媒する1つ以
上の物質である。それは、封入されているか、又はそうでなければ高温にさらされたとき
にのみ活性になる潜在型である。とりわけ、好ましいエポキシ触媒は、尿素、例えばp-
クロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(モヌロン)、3-フェニル-1,1-ジメチル
尿素(フェヌロン)、3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(ジウロン)、
N-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-N’,N’-ジメチル尿素(クロロトルロン
)、ベンジルジメチルアミンのようなtert-アクリル-若しくはアルキレンアミン、
2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ピペリジン又はこれらの誘導
体など、様々な脂肪族尿素化合物、例えば欧州特許第1 916 272号明細書に記載
されているようなものなど、C~C12アルキレンイミダゾール又はN-アリールイミ
ダゾール、例えば2-エチル-2-メチルイミダゾール若しくはN-ブチルイミダゾール
及び6-カプロラクタムである。ポリ(p-ビニルフェノール)マトリックスに組み込ま
れた2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(欧州特許第0 197
892号明細書に記載されているような)又はノボラック樹脂に組み込まれた2,4,6
-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(米国特許第4,701,378号明細書
に記載されているものを含む)が好適である。
【0043】
硬化剤(構成成分D)は、ジシアンジアミド及びジヒドラジドの混合物である。ジヒ
ドラジドは、有機ジカルボン酸とヒドラジンとの反応生成物に対応する。それは、好まし
くは、少なくとも120℃又は少なくとも140℃の融解温度を有する。ジヒドラジドは
、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、ステアリン酸ジヒドラジド、テトラフタル酸ジヒド
ラジド又はイソフタル酸ジヒドラジドであり得る。
【0044】
ジシアンジアミド及びジヒドラジドは、1:99~99:1の重量比で存在する。好
ましい重量比は、65:35~99:1である。より好ましい比は、50:50~95:
5、60:40~95:5又は60:40~90:10である。
【0045】
構成成分Aは、例えば、構成成分A~Dの組み合わされた重量の少なくとも30%、
少なくとも40%、少なくとも50%又は少なくとも55%を構成する。構成成分Aは、
例えば、構成成分A~Dの組み合わされた重量の最大で90%、最大で85%、最大で7
5%、最大で70%、最大で65%又は最大で60%を構成する。
【0046】
構成成分Bは、好ましくは、構成成分A~Dの組み合わされた重量に基づいて1~5
0%のゴム含有量を有する接着剤を提供するのに十分な量で存在する。好ましいゴム含有
量は、同じものに基づいて少なくとも5%、少なくとも10%又は少なくとも15%、最
大で40%まで、最大で35%まで又は最大で30%まで、より好ましくは構造用接着剤
の8~15重量%である。
【0047】
本発明の目的のための総ゴム含有量は、構成成分B物質の重量の構成成分A~Dの組
み合わされた重量に対する比である。場合により、1つ以上の構成成分B物質は、1つ以
上の他の物質との混合物の形態で提供され得る。これらの他の物質は、構成成分B物質の
重量に加えられない。これらの他の物質の重量は、他の材料がコンポーネントA、C又は
D物質として認められる場合にのみ、コンポーネントA~Dの合計重量に加えられる。
【0048】
したがって、例えば、コア-シェルゴム生成物が60%のエポキシ樹脂中の40%の
ゴム粒子の分散体として供給される場合、生成物の総重量の40%が構成成分B物質の重
量に加えられ、残りの重量が構成成分A物質の重量に加えられる。同様に、ゴム変性エポ
キシ樹脂は、過剰なエポキシ樹脂との混合物の形態で供給されることが多い。過剰なエポ
キシ樹脂は、構成成分Aの重量に加えられる。
【0049】
構成成分B-1、B-2及びB-3(存在する場合)の各々は、構成成分A~Dの総
重量の1~50%を構成し得る。
【0050】
具体的な実施形態では、構成成分Bは、少なくとも1つのB-1及び少なくともB-
3物質の混合物である。このような実施形態では、B-1物質は、構成成分A~Dの総重
量の10~30%を構成し得、及びB-3物質は、構成成分A~Dの総重量の1~10%
を構成し得る。
【0051】
別の具体的な実施形態では、構成成分Bは、ゴム粒子が構成成分A~Dの総重量の1
0~30%を構成するコア-シェルゴムである。
【0052】
構成成分Cの重量は、例えば、構成成分A~Dの総重量の少なくとも0.1%、少な
くとも0.25%又は少なくとも0.5%を構成し得、例えば構成成分A~Dの総重量の
最大で5%、最大で3%又は最大で2%を構成し得る。
【0053】
構成成分Dは、例えば、構成成分A~Dの総重量の少なくとも1%、少なくとも2%
、少なくとも3%又は少なくとも4%を構成し得、例えばこれらの最大で12%、最大で
10%又は最大で9%を構成し得る。
【0054】
構成成分A~Dの重量は、例えば、接着剤の総重量の30~100%、50~100
%、50~90%又は50~85%を構成し得る。構成成分A~Dが接着剤の総重量の1
00%未満を構成する場合、接着剤は、1つ以上の任意選択的な成分も含有するであろう
【0055】
接着剤は、1つ以上の鉱物充填剤を含有し得る。これらは、(1)接着剤のレオロジ
ーを望ましい方法で改良すること、(2)1単位重量当たりの全体のコストを低減させる
こと、(3)水分若しくは油を接着剤から若しくはそれが適用される基材から吸収するこ
と、及び/又は(4)接着破壊ではなく凝集破壊を促進することなどのいくつかの機能を
果たし得る。好適な鉱物充填剤の例としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、タルク
、カーボンブラック、織物繊維、ガラス粒子又は繊維、アラミドパルプ、ホウ素繊維、炭
素繊維、鉱物シリケート、雲母、粉末状石英、水和酸化アルミニウム、ベントナイト、ウ
ォラストナイト、カオリン、ヒュームドシリカ、シリカエアロゲル、ポリ尿素化合物、ポ
リアミド化合物又はアルミニウム粉末若しくは鉄粉末などの金属粉末が挙げられる。特に
注目される別の充填剤は、最大で200ミクロンの平均粒径及び最大で0.2g/ccの
密度を有するマイクロバルーンである。粒径は、好ましくは、約25~150ミクロンで
あり、密度は、好ましくは、約0.05~約0.15g/ccである。密度を下げるのに
好適な熱膨張性マイクロバルーンとしては、Dualite Corporationか
らDualite(商標)の商標名で市販されているもの、及びAkzo Nobelか
らExpancel(商標)の商標名で販売されているものが挙げられる。
【0056】
鉱物充填剤の全て又は一部は、1~50μmの直径(D50、顕微鏡により測定した
際)及び6~20のアスペクト比を有する繊維の形態であり得る。繊維の直径は、2~2
0μm又は2~10μmであり得、アスペクト比は、8~20又は8~16であり得る。
繊維の直径は、繊維と同じ断面積を有する円の直径とみなされる。繊維のアスペクト比は
、6以上、例えば6~25、6~20、8~20又は8~15などであり得る。
【0057】
代わりに、鉱物充填剤の全て又は一部は、5以下、特に2以下のアスペクト比及び最
大で100μm、好ましくは最大で25μmの最長寸法を有する低アスペクト比の粒子の
形態であり得る。
【0058】
鉱物充填剤は、存在する場合、例えば接着剤組成物の総重量の1~40%を構成し得
る。いくつかの実施形態では、それは、接着剤組成物の重量の少なくとも5%又は少なく
とも10%を構成し得、例えばこれらの重量の最大で35%を構成し得る。鉱物充填剤が
ヒュームドシリカを含む場合、接着剤は、最大で10重量%、好ましくは1~6重量%の
ヒュームドシリカを含有し得る。ヒュームドシリカは、1つ以上の他の鉱物充填剤と共に
存在し得る。
【0059】
モノマー又はオリゴマーの付加重合性エチレン性不飽和物質が任意選択的に接着剤組
成物中に存在する。本物質は、約1500未満の分子量を有しなければならない。この物
質は、例えば、アクリレート若しくはメタクリレート化合物、不飽和ポリエステル、ビニ
ルエステル樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂のエポキシ付加物であり得る。この物質を重
合させるためのフリーラジカル源を提供するため、フリーラジカル開始剤も同様に接着剤
組成物に含めることができる。このタイプのエチレン性不飽和物質を含めることにより、
エチレン性不飽和の選択的重合による接着剤の部分硬化をもたらす可能性が提供される。
【0060】
接着剤組成物は、二量体化脂肪酸、希釈剤、可塑剤、増量剤、顔料及び染料、難燃剤
、チキソトロープ剤、発泡剤、流動調整剤、接着促進剤及び酸化防止剤などの他の添加剤
を更に含有することができる。好適な発泡剤としては、物理的タイプ及び化学的タイプの
両方の剤が挙げられる。接着剤は、国際公開第2005/118734号パンフレットに
記載されているように、ポリビニルブチラール又はポリエステルポリオールなどの熱可塑
性粉末も含有し得る。
【0061】
接着剤は、前述の構成成分を適用して硬化する前に一緒に混合する一液型接着剤であ
る。温度が十分に低く、早期硬化が起こらない限り、成分を合わせる方法は、特に重要で
はない。配合した接着剤は、例えば、適用して硬化する前に少なくとも1日の期間にわた
り、最大で100℃、最大で80℃、最大で60℃又は最大で40℃の温度で保存され得
る。
【0062】
接着剤は、好ましくは、少なくとも130℃であるが、155℃以下である硬化開始
温度を有する。好ましくは、硬化開始温度は、少なくとも133℃又は少なくとも140
℃であり、165℃以下、160℃以下又は150℃以下であり得る。本発明の目的のた
めの硬化開始温度は、10℃/分の加熱速度を用いた示差走査熱量計(DSC)により測
定される。硬化開始温度は、温度軸と、熱流曲線の上り勾配の中点(ハーフハイト)に接
する線との交点にある。
【0063】
接着剤は、好ましくは、DSCにより測定した際に150~170℃のピーク発熱温
度を示す。ピーク発熱は、発熱熱流がそのピークに達する温度である。
【0064】
前述の接着剤組成物は、2つの基材間の結合層で層に形成されアセンブリを形成し、
接着剤層は、結合層で硬化されて、2つの基材の各々に結合された硬化した接着剤を形成
する。
【0065】
接着剤は、任意の好都合な技術により基材に適用することができる。必要に応じて、
これを冷たいまま適用するか又は温めて適用することができる。例えば、コーキングガン
、他の押出装置又はジェットスプレー法を使用して、手動及び/又はロボットでこれを適
用できる。接着剤組成物が基材の少なくとも1つの表面に適用されると、基材は、接着剤
が基材間の結合層に位置するように接触する。
【0066】
適用後、接着剤は、硬化温度以上に加熱することにより硬化される。場合により、特
により長い硬化時間が許容される場合、より低温を使用することができるが、一般的には
、少なくとも130℃まで接着剤を加熱することにより硬化工程を実施することが好まし
い。加熱温度は、220℃以上にもなり得るが、本発明の利点は、より低い硬化開始温度
であるため、硬化温度は、好ましくは、最大で200℃、最大で180℃、最大で170
℃又は最大で165℃である。
【0067】
本発明の接着剤は、木材、金属、被覆金属、アルミニウム、様々なプラスチック及び
充填プラスチック基材、ガラス繊維などを含む様々な基材を互いに結合させるのに使用す
ることができる。1つの好ましい実施形態において、接着剤は、自動車の部品を互いに結
合させるか、又は自動車の部品を自動車上に結合させるのに使用される。このような部品
は、鋼鉄、コーティングした鋼鉄、亜鉛めっき鋼、アルミニウム、コーティングしたアル
ミニウム、プラスチック及び充填したプラスチック基材であり得る。
【0068】
本発明のより低い硬化開始温度のために幾分中程度の硬化温度を使用できる。これに
より、接着剤は、異なる基材を共に結合するのに特に有用になる。有意差のあるCLTE
を有する基材は、硬化工程中及び硬化後の結合アセンブリの冷却時、大きく異なる量の膨
張及び収縮を示すことが多い。これは、接着破壊及び/又は完成部品の変形をもたらす可
能性がある。硬化が非常に高温で実施される場合、この問題は、特に重大である。本発明
の接着剤を幾分低い温度で硬化させる能力は、異なる量の膨張及び収縮により引き起こさ
れる応力を低減し、それにより引き起こされる接着破壊及び変形の出現率を低減すること
ができる。
【0069】
異なる基材は、ASTM E831により測定した際、互いに少なくとも5×10
m/m-K、少なくとも10×10-6m/m-K又は少なくとも20×10-6m/
m-Kだけ異なる線熱膨張係数(CLTE)を有し得る。
【0070】
基材の組み合わせの例としては、鋼鉄及びアルミニウム;鋼鉄及びマグネシウム;並
びにアルミニウム及びマグネシウムなどの異なる金属の組み合わせ;鋼鉄、マグネシウム
、アルミニウム又はチタンなどの金属と、熱可塑性有機ポリマー又は熱硬化性有機ポリマ
ーなどのポリマー材料との組み合わせ;並びに鋼鉄、アルミニウム、マグネシウム又はチ
タンなどの金属と、炭素繊維複合材料又はガラス繊維複合材料などの繊維複合材料との組
み合わせが挙げられる。
【0071】
特に注目される用途は、自動車若しくは他の車両フレーム構成部品の互いへの又は他
の構成部品への結合である。結合される構成部品には、前述のように異なるCLTEを有
する異なる物質が含まれ得る。
【0072】
組み立てられた自動車及び他の車両フレームの部材は、焼成硬化を必要とするコーテ
ィング材料でコーティングされていることが多い。コーティングは、典型的には、160
℃~210℃もの範囲であり得る温度で焼成される。このような場合、フレーム構成部品
に接着剤を適用して、次いでコーティングを適用し、コーティングの焼成及び硬化と同時
に接着剤を硬化させることが便利であることが多い。接着剤を適用する工程と、コーティ
ングを適用する工程との間において、硬化工程が実施されるまで、基材と接着剤を互いに
対して固定された位置に維持するためにアセンブリを互いに固定し得る。固定装置として
機械的手段を使用することができる。これらは、例えば、硬化工程が完了したら除去でき
る様々なタイプのクランプ、バンドなどの一時的な機械的手段を含む。例えば、様々なタ
イプの溶接、リベット、スクリュー及び/又は圧着法などの機械的固定手段は、永久的で
あり得る。代わりに又は加えて、コーティングが適用された後、最終硬化工程が実施され
るまで、接着剤の残部を未硬化のままにしながら、接着剤組成物の1つ以上の具体的な部
分をスポット硬化させて、基材間に1つ以上の局在化した接着結合を形成することによっ
て固定を行うことができる。より低い硬化温度、例えば140℃~200℃、140℃~
180℃、140℃~175℃又は140℃~165℃は、本発明の接着剤のより低い硬
化開始温度により、このようなプロセスで使用可能である。
【実施例0073】
以下の実施例は、本発明を説明するものであるが、その範囲を限定することを意図し
ない。特に指示がない限り、全ての部及びパーセントは、重量によるものである。特に指
示がない限り、全ての分子量は、数平均である。
【0074】
以下の実施例において、NRM(非ゴム変性)エポキシ樹脂は、約187のエポキシ
当量を有する液体のビスフェノールAのジグリシジルエーテルである。
【0075】
RM(ゴム変性)エポキシ樹脂は、ジエポキシドでキャップされたカルボキシル末端
ブタジエンゴムである。
【0076】
コア-シェルゴムは、60%の非ゴム変性エポキシ樹脂中に約40%のコア-シェル
ゴム粒子の分散体である。
【0077】
強化剤は、ビスフェノールブロック化イソシアネート基を含有するウレタン基含有エ
ラストマー強化剤である。それは、例えば、米国特許第5,278,257号明細書の実
施例19に記載されている一般的な方法を使用して、分子量2000のポリテトラヒドロ
フランをイソホロンジイソシアネートと反応させてウレタン基含有イソシアネート末端プ
レポリマーを形成し、次いでイソシアネート基をキャップすることにより調製される。そ
の数平均分子量は、35,000未満である。
【0078】
ジシアンジアミドは、Air ProductsからのAmicure CG 12
00Gジシアンジアミドである。
【0079】
ADHは、A&C CatalystsからTechnicure(登録商標)AD
Hとして入手可能なアジピン酸ジヒドラジドである。
【0080】
接着促進剤は、Huntsman CorporationからRAM 1087と
して市販されている。
【0081】
着色剤は、Huntsman CorporationからAraldit DW
blue 0135として市販されている。
【0082】
CNSLは、カシューナッツ殻油であり、CardoliteによりNC-700と
して販売されている。
【0083】
充填剤は、ヒュームドシリカ、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムの混合物である。
【0084】
グリシジルネオデカノエートは、HexionからCardura E-10として
市販されている。
【0085】
触媒は、Emerald Performance Materialにより販売さ
れている芳香族置換尿素であるOmicure(登録商標)U-52Mである。
【0086】
実施例1~6並びに比較試料A及びB
一液型接着剤の実施例1~6並びに比較試料A及びBを、表1に示したように成分を
混合することにより調製する。接着剤組成物に関する硬化開始温度、ピーク発熱温度及び
硬化エンタルピーを決定するために10℃/分の0℃~250℃でDSC分析を実施する
。チャンバを0℃まで冷却し、第2スキャンを10℃/分で最大で200℃まで実施し、
硬化した接着剤のガラス転移温度を決定する。
【0087】
【表1】
【0088】
ジシアンジアミン及びジヒドラジド硬化剤の組み合わせは、全ての場合の比較試料A
と比較して及び実施例2~6の場合の比較試料Bと比較して、実施例1~6の各々につい
て硬化開始温度の実質的な低下をもたらす。ピーク発熱温度も著しく低下する。より低い
開始温度は、硬化が加熱プロセス中により早く始まり、したがって全ての場合において同
じ加熱レジメンではあるものの、より長い時間にわたって進行することを意味する。
【0089】
重ね剪断検査用試料を、1.6mmの冷間圧延鋼試験片を使用して作製する。試験片
を洗浄し、ガラスビーズ(0.254mm直径)を試験片の1つの上にまばらに散らし、
接着剤試料を適用し、次いで接着剤の上部に第2の試験片を配置することにより、検査用
試料を作製する。各場合の結合面積は、25×12.7mmであり、接着層の厚さは、ガ
ラスビーズによって0.254mmに制御されている。試験試料を140℃で30分間硬
化させて、DIN ISO 1465に従って重ね剪断力について評価する。試験は、2
3℃及び12.7mm/分の試験速度で実施する。結果を表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
これらの結果は、本発明の接着剤を幾分低い温度の140℃で硬化させる場合、重ね
剪断力の劇的な増加を示す。
【0092】
定性硬化試験を比較試料A及びB並びに実施例1~6の各々で実施する。6mmのビ
ーズをパネルに適用し、140℃の予熱したオーブン内に置く。5分間隔においてスパチ
ュラでビーズ全体にわたってならし、ビーズを目視検査する。スパチュラがビーズを切り
裂いたり、傷つけたり又は別の方法で変形させたりする場合、この試験により、不完全な
硬化が示される。25分後、実施例1~6の全てが硬化したが、比較試料のいずれも硬化
しなかった。
【0093】
比較試料A及びB並びに実施例1で保存安定性を評価する。新しく調製した試料の各
々の粘度は、3s-1の剪断速度の25mm平行板粘度計を用いて38℃で測定する。試
料は、それぞれ50℃の密閉容器でエージングされ、粘度試験のために試料が定期的に引
き出される。結果を表3に示す。
【0094】
【表3】
【0095】
表3のデータから分かるように、ジヒドラジド硬化剤を含有する接着剤(比較試料B
)は、本試験で貧弱な熱安定性を有する。比較試料Aは、ジシアンジアミドで得られる良
好な熱安定性を示す。驚くべきことに、実施例1は、ジヒドラジド硬化剤の存在にもかか
わらず、比較試料Aの熱安定性に非常に近い熱安定性を示す。
【0096】
以下のとおり比較試料A及びB並びに実施例4で衝撃剥離試験を実施する。衝撃剥離
試験のための試験用試験片は、30×20mmの結合領域を有する100mm×20mm
である。試験片をアセトンで洗浄した後、接着剤試料を0.8mmGMC-5E冷間圧延
鋼試験片(ACT Laboratories)の結合領域に適用する。別の鋼鉄試験片
を接着剤と接触させて配置し、接着剤層の厚さを0.254mmに維持するためにスペー
サを存在させながら、アセンブリを約10kgのおもりで絞って各試験用試料を準備する
。組み立てられた試験用試料を170℃で30分間硬化させる。衝撃剥離試験は、ISO
11343くさび衝撃法に従って実施する。試験は、表4に示されているように、23℃
又は-40℃の温度において、試料を用いて2m/秒の動作速度で90ジュールの衝撃荷
重下において実施する。
【0097】
加えて、170℃/30分の硬化後、重ね剪断力を以前に示したようにこれらの試料
で評価する。
【0098】
試験の結果は、表4に示すとおりである。
【0099】
【表4】
【0100】
表4のデータは、本発明の接着剤がより高温での硬化でも良好な接着特性を示すこと
を示している。広範囲の温度にわたって接着剤を硬化できることは、条件が常に厳密に制
御されているとは限らない製造設定において重要な利点である。
【0101】
実施例7~9並びに比較試料C及びD
一液型接着剤の実施例7~9並びに比較試料C及びDを、表5に示したように成分を
混合することにより調製する。DSC分析を実施して、接着剤組成物についての硬化開始
温度、ピーク発熱温度及び硬化エンタルピーを決定し、硬化した接着剤のガラス転移温度
を決定する。
【0102】
【表5】
【0103】
コア-シェルゴムで強化されたこれらの系は、実施例1~6よりも低い硬化開始温度
及びピーク発熱温度を示し、一般的に示す。それにもかかわらず、これらの場合でも、ジ
シアンジアミド及びジヒドラジドの組み合わせにより、両方の値が大幅に低下する。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【外国語明細書】