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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000062
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】車輪及び車両
(51)【国際特許分類】
   B60B 19/00 20060101AFI20221222BHJP
   B62D 57/028 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
B60B19/00 D
B62D57/028 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100659
(22)【出願日】2021-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】林 敏也
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 紘
(57)【要約】
【課題】単純な構造で、平地走行時の安定性を維持しつつ段差を乗り越えることができる車輪及び車両を提供する。
【解決手段】車輪1は、車軸Aw回りに各々回動可能な車軸部材10及び車輪本体20と、回動可能車軸部材10の車輪本体20に対する相対回動に伴って爪収容位置と爪突出位置との間で腕回転軸Aa回りに回動する腕部材30と、爪回転軸Ac回りに伸展位置と屈曲位置との間で回動可能な爪部材40と、爪部材40を屈曲位置から伸展位置へ向かう方向に常時付勢する爪付勢部50と、を備え、腕部材30が爪収容位置にある場合、爪部材40が車輪本体20の外周より径方向内側に収容され、腕部材30が爪突出位置にあり爪部材40が伸展位置にある場合、爪部材40が車輪本体20の外周より径方向外側に一部を突出させ、腕部材30が爪突出位置にあり爪部材40が屈曲位置にある場合、爪部材40が車輪本体20の外周より径方向内側に収容される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車軸回りに回動可能な車軸部材と、
前記車軸回りに前記車軸部材に対して回動可能な車輪本体と、
前記車軸に平行な腕回転軸回りに回動可能であるように前記車輪本体に支持されかつ前記車軸部材の前記車輪本体に対する相対回動に伴って爪収容位置と爪突出位置との間で回動する腕部材と、
前記車軸及び前記腕回転軸に平行な爪回転軸回りに前記腕部材に対して伸展位置と屈曲位置との間で回動可能であるように前記腕部材に支持される爪部材と、
前記爪部材が前記屈曲位置から前記伸展位置へ向かう方向に前記爪部材を常時付勢する爪付勢部と、
前記車軸部材及び前記車輪本体の回転方向及び回転速度を各々制御する制御部と、
を備え、
前記腕部材が前記爪収容位置にある場合、前記爪部材が前記車輪本体の外周より径方向内側に収容され、
前記腕部材が前記爪突出位置にある場合であって前記爪部材が前記伸展位置にある場合、前記爪部材が前記車輪本体の外周より径方向外側に一部を突出させ、
前記腕部材が前記爪突出位置にある場合であって前記爪部材が前記屈曲位置にある場合、前記爪部材が前記車輪本体の外周より径方向内側に収容される、
車輪。
【請求項2】
前記車軸部材が前記車輪本体に対して一方向へ相対回転するように前記制御部が前記車軸部材及び前記車輪本体の回転方向及び回転速度を制御した場合、前記腕部材が前記爪収容位置から前記爪突出位置へ向かう方向に回転し、
前記車軸部材が前記車輪本体に対して一方向とは反対側の他方向へ相対回転するように前記制御部が前記車軸部材及び前記車輪本体の回転方向及び回転速度を制御した場合、前記腕部材が前記爪突出位置から前記爪収容位置へ向かう方向に回転し、
前記制御部が前記車軸部材と前記車輪本体とが同回転方向かつ同回転速度で回転するように制御した場合、前記腕部材が前記車輪本体に対する相対位置を維持する、
請求項1に記載の車輪。
【請求項3】
前記腕部材が前記爪突出位置にある場合であって、前記爪部材の接地面から受ける反力の方向が、当該爪部材と接地面との接点に対して前記爪回転軸より前記腕回転軸側に向かう方向である場合、当該爪部材が前記爪付勢部の付勢力に抗して前記伸展位置から前記屈曲位置へ向かう方向に回転する、
請求項1又は2に記載の車輪。
【請求項4】
前記腕部材が前記爪突出位置にある場合であって、前記爪部材の接地面から受ける反力の方向が、当該爪部材と接地面との接点に対して前記爪回転軸より前記腕回転軸側とは反対側に向かう方向である場合、当該爪部材が前記伸展位置に維持される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の車輪。
【請求項5】
前記爪部材は、前記腕部材が前記爪突出位置にありかつ前記爪部材が前記屈曲位置にある状態で、曲率中心及び曲率半径が前記車輪本体と同一である凸状の凸状円弧壁部を外周面の一部に含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の車輪。
【請求項6】
前記腕部材及び前記爪部材は、前記車軸回りに回転対称かつ等間隔に複数設けられる、
請求項1から5のいずれか1項に記載の車輪。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の車輪と、
前記車軸部材を前記車軸回りに回動可能に支持する車体と、
を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自律走行搬送ロボット(AMR;Autonomous Mobile Robot)、無人搬送台車(AGV;Auto Guided Vehicle)、搬送用カート、電動車いす、掃除ロボット、パートナーロボット等の自走車に搭載される駆動輪には、走行路に存在する段差、凹凸、傾斜部、階段等の障害物の乗り越え及び昇降を行う技術が求められている。特許文献1には、走行輪の周方向に分割され走行輪の径方向外側に出退開閉可能に支持された複数の分割部を、選択的に突出展開して段差に係合させることで、段差を乗り越える車輪の構造が開示されている。また、特許文献2には、閉じ回転位置では転動周面を形成し、展開回転位置では転動周面外へ突出する、周方向所定間隔で設けられる複数の転動爪体を備える車輪の構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-155520号公報
【特許文献2】特開2011-031796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の車輪は、車輪側にそれぞれの分割部に対する変形用のアクチュエータが配置されるため、駆動源から回転するアクチュエータへの伝達部の機構が複雑である。また、特許文献2の車輪は、車輪の外輪自体を変形させるため、外輪が完全な円にならず、走行時の安定性に問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、単純な構造で、平地走行時の安定性を維持しつつ段差を乗り越えることができる車輪及び車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車輪は、車軸回りに回動可能な車軸部材と、前記車軸回りに前記車軸部材に対して回動可能な車輪本体と、前記車軸に平行な腕回転軸回りに回動可能であるように前記車輪本体に支持されかつ前記車軸部材の前記車輪本体に対する相対回動に伴って爪収容位置と爪突出位置との間で回動する腕部材と、前記車軸及び前記腕回転軸に平行な爪回転軸回りに前記腕部材に対して伸展位置と屈曲位置との間で回動可能であるように前記腕部材に支持される爪部材と、前記爪部材が前記屈曲位置から前記伸展位置へ向かう方向に前記爪部材を常時付勢する爪付勢部と、前記車軸部材及び前記車輪本体の回転方向及び回転速度を各々制御する制御部と、を備え、前記腕部材が前記爪収容位置にある場合、前記爪部材が前記車輪本体の外周より径方向内側に収容され、前記腕部材が前記爪突出位置にある場合であって前記爪部材が前記伸展位置にある場合、前記爪部材が前記車輪本体の外周より径方向外側に一部を突出させ、前記腕部材が前記爪突出位置にある場合であって前記爪部材が前記屈曲位置にある場合、前記爪部材が前記車輪本体の外周より径方向内側に収容される。
【0007】
車輪は、平地走行時には爪部材を車輪本体の外周より径方向内側に収容することによって車輪本体の外周が全周に亘って転動周面を構成するので、平地走行時の安定性を維持することができる。また、車輪は、爪付勢部によって爪部材が腕部材に対して伸展する方向に常時付勢されており、段差走行時には腕部材に対して伸展する位置にある爪部材の一部が車輪本体の外周より径方向外側に突出するように腕部材を車輪本体に対して移動させることができる。車輪は、爪部材の一部が車輪本体の外周より径方向外側に突出するよう変形することによって、進行方向に位置する爪部材が段差を捉えて走破することができる。爪部材は、車軸部材と車輪本体とを相対回転させるという単純な構造で、突出及び収容することができる。さらに、車輪は、変形している状態においても、爪部材が屈曲する方向に外力を受けることによって、外力を受けた爪部材が爪付勢部の付勢力に抗して車輪本体の外周より径方向内側に収容される。これにより、段差の直前及び直後や、段差走破中において、車輪を変形させている状態でも、爪部材の先端直径を小さくすることができるので、車輪自体の上下動を抑制することができる。
【0008】
本発明の一態様に係る車輪は、前記車軸部材が前記車輪本体に対して一方向へ相対回転するように前記制御部が前記車軸部材及び前記車輪本体の回転方向及び回転速度を制御した場合、前記腕部材が前記爪収容位置から前記爪突出位置へ向かう方向に回転し、前記車軸部材が前記車輪本体に対して一方向とは反対側の他方向へ相対回転するように前記制御部が前記車軸部材及び前記車輪本体の回転方向及び回転速度を制御した場合、前記腕部材が前記爪突出位置から前記爪収容位置へ向かう方向に回転し、前記制御部が前記車軸部材と前記車輪本体とが同回転方向かつ同回転速度で回転するように制御した場合、前記腕部材が前記車輪本体に対する相対位置を維持する。
【0009】
車輪は、車軸部材の回転方向及び回転速度と、車輪本体の回転方向及び回転速度とを、それぞれ制御して、車軸部材を車輪本体に対して相対回転させることによって、腕部材を車輪本体に対して移動させて変形する。また、車輪は、車軸部材の回転方向及び回転速度と、車輪本体の回転方向及び回転速度とを、それぞれ制御して、車軸部材を車輪本体に対して相対回転させないようにすることによって、爪部材の収容状態又は突出可能状態を維持する。すなわち、2つの回転駆動源の制御の仕方により、爪部材を突出させる変形と、爪部材を収容させる変形と、各状態の維持とを行うことができるので、車輪全体を大型化せず、回転駆動源から車軸部材及び車輪本体までの伝達を簡単な構成で実現しつつ、安定的な平地走行及び段差走破が可能である。また、爪部材の収容状態又は突出可能状態を維持することができるので、車輪の意図しない変形を抑制でき、安定的な平地走行及び段差走破が可能である。
【0010】
本発明の一態様に係る車輪は、前記腕部材が前記爪突出位置にある場合であって、前記爪部材の接地面から受ける反力の方向が、当該爪部材と接地面との接点に対して前記爪回転軸より前記腕回転軸側に向かう方向である場合、当該爪部材が前記爪付勢部の付勢力に抗して前記伸展位置から前記屈曲位置へ向かう方向に回転する。
【0011】
これにより、車輪は、段差を捉えない爪部材を、車輪本体の外周より径方向内側に収容することができるので、段差の直前及び直後や、段差走破中において、車輪を変形させている状態でも、爪部材の先端直径を小さくすることができ、車輪自体の上下動を抑制することができる。
【0012】
本発明の一態様に係る車輪は、前記腕部材が前記爪突出位置にある場合であって、前記爪部材の接地面から受ける反力の方向が、当該爪部材と接地面との接点に対して前記爪回転軸より前記腕回転軸側とは反対側に向かう方向である場合、当該爪部材が前記伸展位置に維持される。
【0013】
これにより、車輪は、爪部材が段差に引っ掛かった際に、伸展位置を超えてさらに回転することがないので、爪部材の先端を支点として車輪本体を段差下の走行面から浮き上がらせ、段差に乗り上げることができる。
【0014】
本発明の一態様に係る車輪において、前記爪部材は、前記腕部材が前記爪突出位置にありかつ前記爪部材が前記屈曲位置にある状態で、曲率中心及び曲率半径が前記車輪本体と同一である凸状の凸状円弧壁部を外周面の一部に含む。
【0015】
これにより、車輪は、平地走行時には凸状円弧壁部が転動周面の一部を構成するため、平地走行時の安定性を維持することができる。
【0016】
本発明の一態様に係る車輪において、前記腕部材及び前記爪部材は、前記車軸回りに回転対称かつ等間隔に複数設けられる。
【0017】
これにより、車輪は、周方向に均等になるので、走行時の安定性を向上させることができる。また、車輪は、段差に到達した際に、爪部材が段差に引っ掛かるまでに空転する量を抑制することができる。
【0018】
本発明の一態様に係る車両は、前記車輪と、前記車軸部材を前記車軸回りに回動可能に支持する車体と、を備える。
【0019】
車両は、平地走行時には爪部材を車輪本体の外周より径方向内側に収容することによって車輪本体の外周が全周に亘って転動周面を構成する車輪を備えるので、平地走行時の安定性を維持することができる。また、車両は、爪付勢部によって爪部材が腕部材に対して伸展する方向に常時付勢されており、段差走行時には腕部材に対して伸展する位置にある爪部材の一部が車輪本体の外周より径方向外側に突出するように腕部材を車輪本体に対して移動させることができる。車両は、爪部材の一部が車輪本体の外周より径方向外側に突出するよう車輪が変形することによって、進行方向に位置する爪部材が段差を捉えて走破することができる。爪部材は、車軸部材と車輪本体とを相対回転させるという単純な構造で、突出及び収容することができる。さらに、車両は、車輪が変形している状態においても、爪部材が屈曲する方向に外力を受けることによって、外力を受けた爪部材が爪付勢部の付勢力に抗して車輪本体の外周より径方向内側に収容される。これにより、段差の直前及び直後や、段差走破中において、車輪を変形させている状態でも、爪部材の先端直径を小さくすることができるので、車輪自体の上下動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、単純な構造で、平地走行時の安定性を維持しつつ段差を乗り越えることができる車輪及び車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施形態に係る車輪の構成を模式的に示す側面図である。
図2図2は、図1のA-A断面図である。
図3図3は、図1の車輪の全ての爪部材が突出した状態を示す正面図である。
図4図4は、図3の状態から一部の爪部材が収容した状態を示す正面図である。
図5図5は、図1の車輪の爪部材の動作を説明するための説明図である。
図6図6は、図1の車輪の爪部材の動作を説明するための説明図である。
図7図7は、実施形態に係る車輪を搭載する適用例としての車両の構成例を模式的に示す側面図である。
図8図8は、図7に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図9図9は、図7に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図10図10は、図7に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図11図11は、図7に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図12図12は、図7に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図13図13は、図7に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図14図14は、図7に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図15図15は、図7に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図16図16は、図7に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図17図17は、図7に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図18図18は、図7に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図19図19は、図7に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図20図20は、図7に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図21図21は、図7に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図22図22は、図7に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図23図23は、図7に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0023】
[実施形態]
まず、実施形態に係る車輪1の構成について、図1から図6までを参照して説明する。図1は、実施形態に係る車輪1の構成を模式的に示す側面図である。図2は、図1のA-A断面図である。図3は、図1の車輪1の全ての爪部材40が突出した状態を示す正面図である。図4は、図3の状態から一部の爪部材40が収容した状態を示す正面図である。図5及び図6は、図1の車輪1の爪部材40の動作を説明するための説明図である。
【0024】
以下の説明において、車輪1が段差の走破が可能な方向への回転方向を正回転方向R1といい、正回転方向R1とは反対側の回転方向を逆回転方向R2という。車輪1が段差の走破が可能な方向へ回転する場合の進行方向は、図1図3及び図4において、右方向である。正回転方向R1は、図1図3及び図4において、時計方向である。逆回転方向R2は、図1図3及び図4において、反時計方向である。また、正面とは、車輪1が段差の走破が可能な方向へ回転する場合の進行方向側の面を示し、側面とは、車輪1が自走車に搭載される際に車体の外側又は内側寄りの面を示す。図2において、外側は、左方であり、内側は、右方である。
【0025】
実施形態の車輪1は、宅配ロボット、無人搬送台車、搬送用カート、電動車いす、掃除ロボット、パートナーロボット等の自走車に搭載される駆動輪である。自走車は、例えば、左右対称に車輪1が配置される四輪車両(例えば、後述の図7参照)が想定されるが、本発明ではこれに限定されない。車輪1は、車軸部材10と、車輪本体20と、腕部材30と、爪部材40と、爪付勢部50と、車軸駆動部60と、本体駆動部70と、制御部80と、支持部90と、を備える。
【0026】
車軸部材10は、軸心が車軸Awに一致する円柱状の軸部材である。車軸部材10は、後述の支持部90に対して車軸Aw回りに回動可能に設けられる。車軸部材10は、支持部90の第1貫通孔91に挿通し、軸受B1を介して支持部90に対して車軸Aw回りに回動可能に支持される。
【0027】
車軸部材10は、内端面10aに、軸心が車軸Awと一致する軸穴10bを含む。内端面10aは、車軸部材10の車軸Aw方向において車輪1が自走車に搭載される際に車体の内側寄りに面する端面である。軸穴10bには、後述の車軸駆動部60の爪用アクチュエータ65の出力軸66が挿通して固定される。車軸部材10は、被支持部11と、本体支持部12と、歯車固定部13と、腕作動歯車14と、を含む。
【0028】
被支持部11は、後述の支持部90の第1貫通孔91に挿通し、軸受B1を介して支持部90に対して車軸Aw回りに回動可能に支持される部分である。本体支持部12は、後述の車輪本体20の筒状部21に挿通し、軸受B2を介して車輪本体20を車軸Aw回りに回動可能に支持する部分である。歯車固定部13は、腕作動歯車14の軸孔14aに挿通し、腕作動歯車14に固定される部分である。
【0029】
なお、実施形態の本体支持部12は、車軸部材10の車軸Aw方向において、被支持部11に対して外端面10c側に位置する。外端面10cは、車軸部材10の車軸Aw方向において内端面10aと反対側の側面であって、車輪1が自走車に搭載される際に車体の外側に面する端面である。また、実施形態の歯車固定部13は、車軸部材10の車軸Aw方向において、本体支持部12に対してさらに外端面10c側に位置し、正面視において車輪本体20より外側に突出する。
【0030】
腕作動歯車14は、軸心に沿って軸孔14aが形成され、外周面に歯部14bが形成される中空の外歯車である。腕作動歯車14は、軸心が車軸Awに一致するように、軸孔14aの内周面が歯車固定部13の外周面に固定される。歯部14bは、後述の腕部材30の腕基部32に形成される歯部32cと噛み合う。
【0031】
車輪本体20は、車軸Aw回りに車軸部材10に対して回動可能に設けられる。車輪本体20は、実施形態において、後述の支持部90の外側面90a側に隣接して設けられる。車輪本体20は、筒状部21と、円板状部22と、外輪部23と、3つの腕支持軸部24と、3つの規制部25と、本体歯車26と、を含む。
【0032】
筒状部21は、軸心が車軸Awに一致し、車軸Aw方向の両端が開口する円筒状である。筒状部21の内側には、車軸部材10が挿通する。筒状部21は、内周面21aが、軸受B2を介して車軸部材10の外周面に固定される。これにより、車輪本体20は、筒状部21において、軸受B2を介して、車軸部材10に対して車軸Aw回りに回動可能に支持される。また、車輪本体20は、筒状部21、軸受B2、車軸部材10、及び軸受B1を介して、後述の支持部90に対して車軸Aw回りに回動可能に支持される。
【0033】
円板状部22は、軸心が車軸Awと一致しする中空の円板状である。円板状部22は、側面視において、筒状部21の径方向外側に設けられる。円板状部22の内周縁は、筒状部21の外周面21bに接続する。円板状部22は、車軸Aw方向の厚みが、筒状部21の車軸Aw方向の長さより小さい。円板状部22の外周縁は、外輪部23の内周面23aに接続する。
【0034】
外輪部23は、軸心が車軸Awに一致する円筒状である。外輪部23は、側面視において、円板状部22の径方向外側に設けられる。外輪部23は、車輪本体20の外周縁に沿って設けられる。すなわち、外輪部23は、車輪本体20において、最も径方向外側の部分を構成する。外輪部23は、車軸Aw方向の厚みが、円板状部22の車軸Aw方向の厚みよりも大きい。外輪部23は、外周面23bが、全周に亘って車輪1の転動周面を構成する。外輪部23は、外周面23bの周方向に沿って取り付けられる環状のタイヤ部(不図示)を有していてもよい。タイヤ部は、例えば、ゴム等で形成され、走行時における接地面から受ける車輪本体20への衝撃を吸収する。
【0035】
腕支持軸部24は、軸心が車軸Awと平行な腕回転軸Aaに一致する円柱状の軸部材である。腕支持軸部24は、実施形態において、1つの車輪1に対して3つ設けられる。それぞれの腕支持軸部24は、円板状部22の外側面22aに固定して設けられる。外側面22aは、車輪1が自走車に搭載される際に車体の外側に面する側面である。腕支持軸部24は、後述の腕部材30のに挿通し、軸受B3を介して腕部材30を腕回転軸Aa回りに回動可能に支持する。3つの腕支持軸部24に対応する3つの腕回転軸Aaは、車軸Awとの距離が全て等しい。また、3つの腕回転軸Aaは、車軸Aw回りに回転対称かつ等間隔に設けられる。
【0036】
なお、腕支持軸部24は、円板状部22と一体成形されてもよい。腕支持軸部24は、実施形態では3つ設けられるが、1つ、2つ、又は4つ以上設けられてもよい。腕支持軸部24は、後述の腕部材30が設けられる数に対応して、1つの腕部材30に対して1つずつ設けられる。
【0037】
規制部25は、後述の腕部材30の腕回転軸Aa回りの一方向への回転範囲を規制するストッパ部材である。それぞれの規制部25は、円板状部22の外側面22aに固定して設けられる。規制部25は、腕部材30に接触することによって、腕部材30の一方向への回転範囲を規制する。なお、一方向は、後述する突出方向Rpである。
【0038】
規制部25は、実施形態において、1つの車輪1に対して3つ設けられる。3つの規制部25は、車軸Aw回りに回転対称かつ等間隔に設けられる。すなわち、3つの規制部25は、対応する腕部材30を、同一の回転角度で規制する。なお、規制部25は、円板状部22と一体成形されてもよい。規制部25は、実施形態では3つ設けられるが、後述の腕部材30が設けられる数に対応して、1つの腕部材30に対して1つずつ設けられる。
【0039】
本体歯車26は、軸心に沿って軸孔26aが形成され、外周面に歯部26bが形成される中空の外歯車である。本体歯車26は、円板状部22の内側面22b側において、軸心が車軸Awに一致するように、軸孔26aの内周面が筒状部21の外周面21bに固定される。内側面22bは、外側面22aと反対側の側面であって、車輪1が自走車に搭載される際に車体の内側寄りに面する側面である。
【0040】
歯部26bは、後述の本体駆動部70の本体駆動歯車72に形成される歯部72bと噛み合う。本体歯車26は、実施形態では本体駆動歯車72と直接噛み合って、本体駆動歯車72の回転方向と反対方向に回転するが、本体駆動歯車72と別の歯車を介して回転を伝達されてもよいし、本体駆動歯車72の回転方向と同方向に回転するように設けられてもよい。
【0041】
腕部材30は、実施形態において、1つの車輪1に対して3つ設けられる。それぞれの腕部材30には、車輪本体20の腕支持軸部24が挿通する軸孔31が設けられる。軸孔31は、軸受B3を介して腕支持軸部24の外周面に固定される。これにより、それぞれの腕部材30は、車輪本体20の腕支持軸部24によって、対応する腕回転軸Aa回りに回動可能に支持される。腕部材30は、図1に示す爪収容位置と、図3及び図4に示す爪突出位置との間で、腕回転軸Aa回りに回動可能である。
【0042】
腕部材30は、突出方向Rpに回転することにより、爪収容位置から爪突出位置に車輪本体20に対して相対的に移動する。突出方向Rpは、腕回転軸Aa回りかつ逆回転方向R2と同方向の回転方向である。突出方向Rpは、図1図3及び図4において、腕回転軸Aaを中心とした反時計方向である。少なくとも腕部材30が爪突出位置にある場合、後述の爪部材40は、車輪本体20の外周より径方向外側に一部を突出させることが可能である。
【0043】
腕部材30は、収容方向Rsに回転することにより、爪突出位置から爪収容位置に車輪本体20に対して相対的に移動する。収容方向Rsは、腕回転軸Aa回りかつ正回転方向R1と同方向の回転方向である。収容方向Rsは、図1図3及び図4において、腕回転軸Aaを中心とした時計方向である。腕部材30が爪収容位置にある場合、爪部材40は、車輪本体20の外周より径方向内側に収容される。
【0044】
腕部材30は、少なくとも、図1に示す爪収容位置と図3及び図4に示す爪突出位置とにおいて、車輪本体20の外周より径方向内側に位置する。腕部材30は、実施形態において、腕基部32と、爪支持軸部33と、連結部34と、を含む。
【0045】
腕基部32は、軸孔31を中空部とする円筒状部32aと、円筒状部32aから遠心方向に膨出して設けられる凸状部32bと、を含む。腕基部32は、円筒状部32aにおける外周面に形成される歯部32cを含む。歯部32cは、車軸部材10の腕作動歯車14の歯部14bと噛み合う。腕基部32は、腕作動歯車14の歯部14bと噛み合って、腕作動歯車14の回転方向と反対方向に回転する。すなわち、腕部材30は、車軸部材10の車輪本体20に対する相対回動に伴って、車軸部材10の相対回転方向と反対方向に回転する。
【0046】
腕基部32は、凸状部32bにおける外周面の一部に規制壁部32dを含む。規制壁部32dは、後述の爪部材40の爪回転軸Ac回りの一方向への回転範囲を規制するストッパとしての機能を有する。規制壁部32dは、爪部材40の規制壁部40cに接触することによって、爪部材40の一方向への回転範囲を規制する。なお、一方向は、後述する伸展方向Reである。
【0047】
爪支持軸部33は、軸心が車軸Aw及び腕回転軸Aaに平行な爪回転軸Acに一致する円柱状の軸部材である。爪支持軸部33は、連結部34を介して腕基部32に固定して設けられる。爪支持軸部33は、後述の爪部材40の軸孔41に挿通し、軸受B4を介して爪部材40を爪回転軸Ac回りに回動可能に支持する。
【0048】
爪支持軸部33は、腕部材30の車輪本体20に対する腕回転軸Aa回りの相対回動に伴って、腕回転軸Aa回りに揺動する。腕作動歯車14が車輪本体20に対して相対回動する際、3つの腕部材30の腕回転軸Aa回りの回転量は互いに等しい。また、3つの腕部材30に対応するそれぞれの3つの爪支持軸部33は、車軸Awとの距離が常に全て等しい。したがって、3つの爪支持軸部33は、常に車軸Aw回りに回転対称かつ等間隔である状態を維持する。
【0049】
連結部34は、腕基部32と爪支持軸部33とを連結する。実施形態において、腕基部32の外側面と爪支持軸部33の外端面とを覆うカバーを含む。連結部34は、車輪本体20に対して腕回転軸Aa回りに、腕基部32及び爪支持軸部33と一体的に回動する。
【0050】
爪部材40は、1つの腕部材30に対して1つ設けられる。すなわち、爪部材40は、実施形態において、1つの車輪1に対して3つ設けられる。それぞれの爪部材40には、腕部材30の爪支持軸部33が挿通する軸孔41が設けられる。軸孔41は、軸受B4を介して爪支持軸部33の外周面に固定される。これにより、それぞれの爪部材40は、腕部材30の爪支持軸部33によって、対応する爪回転軸Ac回りに回動可能に支持される。爪部材40は、図3に示す伸展位置と、図4の下方に位置する爪部材40に示す屈曲位置との間で、腕回転軸Aa回りに回動可能である。
【0051】
爪部材40は、屈曲方向Rfに回転することにより、伸展位置から屈曲位置に腕部材30に対して相対的に移動する。屈曲方向Rfは、爪回転軸Ac回りかつ正回転方向R1と同方向の回転方向である。屈曲方向Rfは、図1図3及び図4において、爪回転軸Acを中心とした時計方向である。腕部材30が爪突出位置にある場合であって爪部材40が屈曲位置にある場合、爪部材40は、車輪本体20の外周より径方向内側に収容される。
【0052】
爪部材40は、伸展方向Reに回転することにより、屈曲位置から伸展位置に腕部材30に対して相対的に移動する。伸展方向Reは、爪回転軸Ac回りかつ逆回転方向R2と同方向の回転方向である。伸展方向Reは、図1図3及び図4において、爪回転軸Acを中心とした反時計方向である。腕部材30が爪突出位置にある場合であって爪部材40が伸展位置にある場合、爪部材40は、車輪本体20の外周より径方向外側に一部を突出させる。
【0053】
爪部材40は、後述の爪付勢部50によって、屈曲位置から伸展位置へ向かう伸展方向Reに常時付勢されている。爪部材40は、図5に示すように、爪回転軸Ac方向視(すなわち、車軸Aw方向視)で、接地面から受ける反力Frの方向が、爪部材40と接地面との接点(以降、接地点Pcと呼ぶ)に対して、爪回転軸Acより腕回転軸Aa側とは反対側に向かう方向である場合、伸展位置に維持される。すなわち、反力Frの方向が接地点Pcと爪回転軸Acとを結ぶ仮想線Lvより伸展方向Re側である場合、爪部材40は、伸展位置に維持される。
【0054】
爪部材40は、図6に示すように、爪回転軸Ac方向視(すなわち、車軸Aw方向視)で、接地面から受ける反力Frの方向が、接地点Pcに対して、爪回転軸Acより腕回転軸Aa側に向かう方向である場合、後述の爪付勢部50の付勢力に抗して伸展位置から屈曲位置へ向かう屈曲方向Rfに回転する。すなわち、反力Frの方向が接地点Pcと爪回転軸Acとを結ぶ仮想線Lvより屈曲方向Rf側である場合、爪部材40は、屈曲方向Rfに回転する。
【0055】
爪部材40は、少なくとも、図1に示すように腕部材30が爪収容位置にある場合、車輪本体20の外周より径方向内側に位置する。また、図4の下方に位置する爪部材40に示すように、腕部材30が爪突出位置にある場合であって爪部材40が屈曲位置にある場合、爪部材40は、車輪本体20の外周より径方向内側に位置する。爪部材40は、外周面に、凸状円弧壁部40aと、凹状円弧壁部40bと、規制壁部40cと、を含む。
【0056】
凸状円弧壁部40aは、爪部材40の外周面の一部であって、車軸Aw方向視で凸状の円弧形状の面である。凸状円弧壁部40aは、腕部材30が爪突出位置にありかつ爪部材40が伸展位置にある状態で、爪部材40の逆回転方向R2側を向く。凸状円弧壁部40aは、曲率半径が車輪本体20と同一である。凸状円弧壁部40aは、腕部材30が爪突出位置にありかつ爪部材40が屈曲位置にある状態で、曲率中心が車輪本体20と同一である。すなわち、凸状円弧壁部40aは、腕部材30が爪突出位置にありかつ爪部材40が屈曲位置にある場合、車輪1の転動周面の一部を構成する。凸状円弧壁部40aにおいて、爪回転軸Acに対する遠心側の端部は、爪部材40の先端部40dである。
【0057】
凹状円弧壁部40bは、爪部材40の外周面の一部であって、車軸Aw方向視で凹状の円弧形状の面である。凹状円弧壁部40bは、腕部材30が爪突出位置にありかつ爪部材40が伸展位置にある状態で、爪部材40の正回転方向R1側を向く。凹状円弧壁部40bにおいて、爪回転軸Acに対する遠心側の端部は、爪部材40の先端部40dである。
【0058】
規制壁部40cは、爪部材40の外周面の一部であって、腕部材30の規制壁部32dと対向する面である。規制壁部40cは、爪部材40の爪回転軸Ac回りの一方向への回転範囲を規制するストッパとしての機能を有する。規制壁部40cは、腕部材30の規制壁部32dに接触することによって、爪部材40の一方向への回転範囲を規制する。一方向は、伸展方向Reである。
【0059】
なお、実施形態では、部分的な突出も「突出」に含まれるものとする。より詳しくは、爪部材40が伸展位置にある状態において、腕部材30が爪収容位置から爪突出位置へ向かう方向に車輪本体20に対して相対的に移動して、爪部材40が車輪本体20の外周より径方向外側に少しでも突出した場合、例えば図3のように腕部材30が爪突出位置まで完全に移動しなかったとしても爪部材40が突出したものとする。
【0060】
また、腕部材30が爪突出位置にある状態において、爪部材40が屈曲位置から伸展位置へ向かう方向に腕部材30に対して相対的に移動して、爪部材40が車輪本体20の外周より径方向外側に少しでも突出した場合、例えば図3のように爪部材40が伸展位置まで完全に移動しなかったとしても爪部材40が突出したものとする。
【0061】
また、実施形態では、部分的な収容も「収容」に含まれるものとする。より詳しくは、爪部材40が伸展位置にある状態において、爪突出位置から爪収容位置へ向かう方向に腕部材30が車輪本体20に対して相対的に移動して、爪部材40の突出した部分が少しでも収容された場合、例えば図1のように腕部材30が爪収容位置まで完全に移動しなかったとしても、爪部材40が収容されたものとする。
【0062】
また、腕部材30が爪突出位置にある状態において、爪部材40が伸展位置から屈曲位置へ向かう方向に腕部材30に対して相対的に移動して、爪部材40の突出した部分が少しでも収容された場合、例えば図4のように爪部材40が屈曲位置まで完全に収容しなかったとしても爪部材40が収容されたものとする。
【0063】
爪付勢部50は、爪部材40を伸展方向Reに常時付勢する。すなわち、爪付勢部50は、爪部材40を屈曲位置から伸展位置へ向かう方向に常時付勢する。爪付勢部50は、実施形態において、トーションばねである。爪付勢部50は、コイル部51と、第1端部52と、第2端部53と、を含む。コイル部51は、針金状のばね材がコイル状に巻かれてなる。コイル部51には、爪支持軸部33が挿通される。すなわち、コイル部51は、爪回転軸Ac回りに巻かれる。第1端部52は、コイル部51の一端から接線方向に引き出された腕部分である。第1端部52は、腕部材30の腕基部32に固定される。第2端部53は、コイル部51の他端から接線方向に引き出された腕部分である。第2端部53は、爪部材40に固定される。
【0064】
車軸駆動部60は、後述の支持部90に対して車軸部材10を車軸Aw回りに回動させる。車軸駆動部60は、爪用アクチュエータ65を含む。爪用アクチュエータ65は、車軸部材10の回転駆動源である。爪用アクチュエータ65によるトルクは、車軸部材10の腕作動歯車14を介して腕部材30に伝達される。
【0065】
爪用アクチュエータ65は、例えば、インナーロータ式のモータである。爪用アクチュエータ65は、例えば、ステータと、電力が供給されることによってステータに対して回転するロータと、ロータと共に回転する出力軸66と、を含む。出力軸66は、車軸Awと同軸である。出力軸66は、車軸部材10の内端面10aに設けられた軸穴10bに挿通して固定される。
【0066】
爪用アクチュエータ65は、車輪1が搭載される自走車の車体側に設けられた電源(不図示)から電力が供給される。爪用アクチュエータ65は、電力が供給されることによって、車軸部材10を車軸Aw回りに回転させる。爪用アクチュエータ65の出力軸66の回転方向及び回転速度は、後述の制御部80によって制御される。
【0067】
本体駆動部70は、後述の支持部90に対して車輪本体20を車軸Aw回りに回動させる。本体駆動部70は、本体駆動軸71と、本体駆動歯車72と、本体用アクチュエータ75と、を含む。
【0068】
本体駆動軸71は、軸心が車軸Awと平行な本体駆動回転軸Adに一致する円柱状の軸部材である。本体駆動軸71は、後述の支持部90に対して本体駆動回転軸Ad回りに回動可能に設けられる。本体駆動軸71は、支持部90の第2貫通孔93に挿通し、軸受B5を介して支持部90に対して本体駆動回転軸Ad回りに回動可能に支持される。
【0069】
本体駆動軸71は、内端面に、軸心が本体駆動回転軸Adと一致する軸穴を含む。内端面は、本体駆動回転軸Ad方向において、車輪1が自走車に搭載される際に車体の内側寄りに面する端面である。軸穴には、後述の本体用アクチュエータ75の出力軸76が挿通して固定される。
【0070】
本体駆動歯車72は、軸心に沿って軸孔72aが形成され、外周面に歯部72bが形成される中空の外歯車である。本体駆動歯車72は、軸心が本体駆動回転軸Adに一致するように、軸孔72aの内周面が本体駆動軸71の外周面に固定される。歯部72bは、車輪本体20の本体歯車26に形成される歯部26bと噛み合う。
【0071】
本体用アクチュエータ75は、車輪本体20の回転駆動源である。本体用アクチュエータ75によるトルクは、本体駆動軸71、本体駆動歯車72及び本体歯車26を介して車輪本体20に伝達される。
【0072】
本体用アクチュエータ75は、例えば、インナーロータ式のモータである。本体用アクチュエータ75は、例えば、ステータと、電力が供給されることによってステータに対して回転するロータと、ロータと共に回転する出力軸76と、を含む。出力軸76は、本体駆動回転軸Adと同軸である。出力軸76は、本体駆動軸71の内端面に設けられた軸穴に挿通して固定される。
【0073】
本体用アクチュエータ75は、車輪1が搭載される自走車の車体側に設けられた電源(不図示)から電力が供給される。本体用アクチュエータ75は、電力が供給されることによって、車輪本体20を本体駆動回転軸Ad回りに回転させる。本体用アクチュエータ75の出力軸76の回転方向及び回転速度は、後述の制御部80によって制御される。
【0074】
制御部80は、車軸部材10及び車輪本体20の回転方向及び回転速度を各々制御する。具体的には、制御部80は、実施形態において、爪用アクチュエータ65の出力軸66及び本体用アクチュエータ75の出力軸76の回転方向及び回転速度を各々制御する。制御部80は、例えば、車輪1が搭載される自走車の車体側に設けられる。
【0075】
制御部80は、例えば、車軸部材10の正回転方向R1への回転速度が車輪本体20の正回転方向R1への回転速度より大きくなるように、爪用アクチュエータ65及び本体用アクチュエータ75を制御する。この場合、車軸部材10が車輪本体20に対して正回転方向R1へ相対回転する。このように、車軸部材10が車輪本体20に対して正回転方向R1へ相対回転するように制御部80が車軸部材10及び車輪本体20の回転方向及び回転速度を制御した場合、腕部材30は爪収容位置から爪突出位置へ向かう突出方向Rpに回転する。
【0076】
制御部80は、例えば、車軸部材10の正回転方向R1への回転速度が車輪本体20の正回転方向R1への回転速度より小さくなるように、爪用アクチュエータ65及び本体用アクチュエータ75を制御する。この場合、車軸部材10が車輪本体20に対して逆回転方向R2へ相対回転する。このように、車軸部材10が車輪本体20に対して逆回転方向R2へ相対回転するように制御部80が車軸部材10及び車輪本体20の回転方向及び回転速度を制御した場合、腕部材30は爪突出位置から爪収容位置へ向かう収容方向Rsに回転する。
【0077】
制御部80は、例えば、車軸部材10の正回転方向R1への回転速度が車輪本体20の正回転方向R1への回転速度と等しくなるように、爪用アクチュエータ65及び本体用アクチュエータ75を制御する。この場合、車軸部材10が車輪本体20に対して相対回動しない。このように、車軸部材10が車輪本体20に対して相対回動しないように制御部80が車軸部材10と車輪本体20とが同回転方向かつ同回転速度で回転させる制御をした場合、腕部材30は、車輪本体20に対する相対位置を維持する。
【0078】
支持部90は、車軸部材10、車軸駆動部60及び本体駆動部70を支持する。支持部90は、実施形態において、車軸Aw方向に厚みを有する板形状を含む。支持部90は、実施形態において、車軸部材10を介して外側面90a側に車輪本体20を支持する。外側面90aは、車輪1が自走車に搭載される際に車体の外側に面する側面である。支持部90は、第1貫通孔91と、第1筒状部92と、第2貫通孔93と、第2筒状部94と、を含む。
【0079】
第1貫通孔91は、軸心が車軸Awと一致するように設けられる。第1貫通孔91には、車軸部材10の被支持部11が挿通する。第1貫通孔91は、軸受B1を介して車軸部材10を車軸Aw回りに回動可能であるように支持する。
【0080】
第1筒状部92は、支持部90の内側面90b側に突出するように設けられる。内側面90bは、外側面90aと反対側の面であって、車輪1が自走車に搭載される際に車体の内側寄りに面する側面である。第1筒状部92の内周面は、第1貫通孔91に連通する。第1筒状部92は、爪用アクチュエータ65の筐体を支持する。
【0081】
第2貫通孔93は、軸心が本体駆動回転軸Adと一致するように設けられる。第2貫通孔93には、本体駆動部70の本体駆動軸71が挿通する。第2貫通孔93は、軸受B5を介して本体駆動軸71を本体駆動回転軸Ad回りに回動可能であるように支持する。
【0082】
第2筒状部94は、支持部90の内側面90b側に突出するように設けられる。第2筒状部94の内周面は、第2貫通孔93に連通する。第2筒状部94は、本体用アクチュエータ75の筐体を支持する。
【0083】
支持部90は、例えば、後述の図7に示すように、車輪1が搭載される自走車(車両100)の車体101に固定される。支持部90が車体101に固定されることによって、車体101に対して、車輪1の車軸Aw及び本体駆動回転軸Adが固定される。なお、支持部90は、車体101と一体で設けられてもよい。
【0084】
次に、実施形態の車輪1の作動について説明する。腕部材30が図1に示す爪収容位置にある場合、爪部材40は、伸展位置においても車輪本体20の外周より径方向内側に収容された状態であり、車輪1の走行面に接して外力を受けることがない。爪部材40は、爪付勢部50の付勢力と、腕部材30の規制壁部32dと爪部材40の規制壁部40cとの接触とによって、伸展位置を維持する。すなわち、実施形態の車輪1は、腕部材30が図1に示す爪収容位置にある場合、爪部材40が車輪本体20の外周より径方向外側に突出しないため、円形を保ち、通常の車輪と同様な走行が可能である。
【0085】
車輪本体20の腕支持軸部24は、円板状部22に固定されているため、車輪本体20と共に車軸Aw回りに回動する。車軸部材10、すなわち腕作動歯車14が車輪本体20と同回転方向かつ同回転速度で回転する(相対回転しない)場合、腕部材30の歯部32cに対して腕作動歯車14が回転しないので、収容位置にある腕部材30は、収容位置から移動しない。すなわち、平地走行時においては、車軸部材10と車輪本体20とが同回転方向かつ同回転速度で回転するように、制御部80が爪用アクチュエータ65及び本体用アクチュエータ75を制御することにより、腕部材30の収容位置を維持させる。
【0086】
車軸部材10、すなわち腕作動歯車14の正回転方向R1への回転速度が車輪本体20の正回転方向R1への回転速度より大きい場合、腕部材30の歯部32cに対して相対的に腕作動歯車14が正回転方向R1に回転するので、腕部材30は、腕回転軸Aa回りに突出方向Rpに回転し、収容位置にある腕部材30は、図3及び図4に示す突出位置へ移動する。腕部材30が突出位置にある状態で、腕作動歯車14が車輪本体20と同回転方向かつ同回転速度で回転する(相対回転しない)場合、腕部材30は、突出位置を維持する。
【0087】
腕部材30が爪突出位置にある場合、爪部材40は、伸展位置において、先端部40dを含む一部が、車輪本体20の外周より径方向外側に突出する。爪部材40は、車輪本体20の外周より径方向外側に突出している状態において、伸展方向Reへの外力を受けると、腕部材30の規制壁部32dと爪部材40の規制壁部40cとの接触とによって、伸展位置を維持する。すなわち、実施形態の車輪1は、腕部材30が図3に示す爪突出位置にあって、爪部材40が図3に示す伸展位置にある場合、爪部材40の凹状円弧壁部40b側を段差に引っ掛けることによって、段差の走破が可能である。
【0088】
すなわち、段差走行時においては、車軸部材10の正回転方向R1への回転速度が車輪本体20の正回転方向R1への回転速度より大きくなるように、制御部80が爪用アクチュエータ65及び本体用アクチュエータ75を制御することにより、腕部材30を収容位置から突出位置へ移動させて車輪1を変形させる。この際、制御部80は、例えば、爪用アクチュエータ65の出力軸66の正回転方向R1の回転速度を維持したまま、本体用アクチュエータ75の出力軸76の正回転方向R1の回転を停止させる、又は回転速度を落とすことによって、車軸部材10の正回転方向R1への回転速度が車輪本体20の正回転方向R1への回転速度より大きくなるように制御してもよい。
【0089】
腕部材30が図3及び図4に示す突出位置に達した後は、車軸部材10と車輪本体20とが同回転方向かつ同回転速度で回転するように、制御部80が爪用アクチュエータ65及び本体用アクチュエータ75を制御することにより、腕部材30の突出位置を維持させる。
【0090】
腕部材30が図3及び図4に示す爪突出位置にあり、爪部材40は、車輪本体20の外周より径方向外側に一部が突出している状態において、車輪1が走行面を走行すると、下方に位置する爪部材40が走行面と接触して外力を受ける。爪部材40は、屈曲方向Rfへの外力を受けると、屈曲方向Rfに回転し、図4に示すように、車輪本体20の外周より径方向内側に収容される。すなわち、車輪1は、進行方向の段差を走破するために突出させた爪部材40のうち、前方に位置する爪部材40を段差に引っ掛ける際、下方に位置する爪部材40を走行面からの外力によって、車輪本体20の外周より径方向内側に収容させることができる(図8のステップS4等参照)。
【0091】
図3に示す腕部材30が爪突出位置にあり爪部材40が伸展位置にある場合の爪部材40の先端直径は、車輪本体20の直径に比べて大きい。車輪1は、爪部材40が伸展位置から収容しない状態で走行した場合、爪部材40と車輪本体20との直径の差によって大きく上下動する。実施形態の車輪1は、爪部材40が屈曲方向Rfの外力を受けた場合に爪付勢部50の付勢力に抗して爪部材40が車輪本体20の外周より径方向内側に収容されるので、爪部材40の先端直径を小さくすることができる。これにより、車輪1自体の上下動を抑制することができる。
【0092】
車軸部材10、すなわち腕作動歯車14の正回転方向R1への回転速度が車輪本体20の正回転方向R1への回転速度より小さい場合、腕部材30の歯部32cに対して相対的に腕作動歯車14が逆回転方向R2に回転するので、腕部材30は、腕回転軸Aa回りに収容方向Rsに回転し、突出位置にある腕部材30は、突出位置から収容位置へ移動する。
【0093】
すなわち、段差走行を終えて平地走行に移行する時は、車軸部材10の正回転方向R1への回転速度が車輪本体20の正回転方向R1への回転速度より小さくなるように、制御部80が爪用アクチュエータ65及び本体用アクチュエータ75を制御することにより、腕部材30を突出位置から収容位置へ移動させて車輪1を円形に変形させる。この際、制御部80は、例えば、本体用アクチュエータ75の出力軸76の正回転方向R1の回転速度を維持したまま、爪用アクチュエータ65の出力軸66の正回転方向R1の回転を停止させる、又は回転速度を落とすことによって、車軸部材10の正回転方向R1への回転速度が車輪本体20の正回転方向R1への回転速度より小さくなるように制御してもよい。
【0094】
腕部材30が図1に示す収容位置に達した後は、車軸部材10と車輪本体20とが同回転方向かつ同回転速度で回転するように、制御部80が爪用アクチュエータ65及び本体用アクチュエータ75を制御することにより、腕部材30の収容位置を維持させる。これにより、車輪1は、再び円形を保って通常の車輪と同様な走行が可能となる。
【0095】
以上説明したように、実施形態の車輪1は、車軸部材10と、車輪本体20と、腕部材30と、爪部材40と、爪付勢部50と、制御部80と、を備える。車軸部材10は、車軸Aw回りに回動可能である。車輪本体20は、車軸Aw回りに車軸部材10に対して回動可能である。腕部材30は、車軸Awに平行な腕回転軸Aa回りに回動可能であるように車輪本体20に支持されかつ車軸部材10の車輪本体20に対する相対回動に伴って爪収容位置(図1に示す位置)と爪突出位置(図3及び図4に示す位置)との間で回動する。爪部材40は、車軸Aw及び腕回転軸Aaに平行な爪回転軸Ac回りに腕部材30に対して伸展位置(図3に示す位置)と屈曲位置(図4の下方の爪部材40に示す位置)との間で回動可能であるように腕部材30に支持される。爪付勢部50は、爪部材40が屈曲位置から伸展位置へ向かう方向(伸展方向Re)に爪部材40を常時付勢する。制御部80は、車軸部材10及び車輪本体20の回転方向及び回転速度を各々制御する。車輪1は、腕部材30が爪収容位置にある場合、爪部材40が車輪本体20の外周より径方向内側に収容される。車輪1は、腕部材30が爪突出位置にある場合であって爪部材40が伸展位置にある場合、爪部材40が車輪本体20の外周より径方向外側に一部を突出させる。車輪1は、腕部材30が爪突出位置にある場合であって爪部材40が屈曲位置にある場合、爪部材40が車輪本体20の外周より径方向内側に収容される。
【0096】
車輪1は、平地走行時には爪部材40を車輪本体20の外周より径方向内側に収容することによって車輪本体20の外周が全周に亘って転動周面を構成するので、平地走行時の安定性を維持することができる。また、車輪1は、爪付勢部50によって爪部材40が腕部材30に対して伸展する方向に常時付勢されており、段差走行時には腕部材30に対して伸展する位置にある爪部材40の一部が車輪本体20の外周より径方向外側に突出するように腕部材30を車輪本体20に対して移動させることができる。車輪1は、爪部材40の一部が車輪本体20の外周より径方向外側に突出するよう変形することによって、進行方向に位置する爪部材40が段差を捉えて走破することができる。爪部材40は、車軸部材10と車輪本体20とを相対回転させるという単純な構造で、突出及び収容することができる。さらに、車輪1は、変形している状態においても、爪部材40が屈曲する方向に外力を受けることによって、外力を受けた爪部材40が爪付勢部50の付勢力に抗して車輪本体20の外周より径方向内側に収容される。これにより、段差の直前及び直後や、段差走破中において、車輪1を変形させている状態でも、爪部材40の先端直径を小さくすることができるので、車輪1自体の上下動を抑制することができる。
【0097】
また、実施形態の車輪1は、車軸部材10が車輪本体20に対して一方向(実施形態では、正回転方向R1)へ相対回転するように制御部80が車軸部材10及び車輪本体20の回転方向及び回転速度を制御した場合、腕部材30が爪収容位置から爪突出位置へ向かう方向(突出方向Rp)に回転する。車輪1は、車軸部材10が車輪本体20に対して一方向とは反対側の他方向へ(実施形態では、逆回転方向R2)相対回転するように制御部80が車軸部材10及び車輪本体20の回転方向及び回転速度を制御した場合、腕部材30が爪突出位置から爪収容位置へ向かう方向(収容方向Rs)に回転する。車輪1は、制御部80が車軸部材10と車輪本体20とが同回転方向かつ同回転速度で回転するように制御した場合、腕部材30が車輪本体20に対する相対位置を維持する。
【0098】
車輪1は、車軸部材10の回転方向及び回転速度と、車輪本体20の回転方向及び回転速度とを、それぞれ制御して、車軸部材10を車輪本体20に対して相対回転させることによって、腕部材30を車輪本体20に対して移動させて変形する。また、車輪1は、車軸部材10の回転方向及び回転速度と、車輪本体20の回転方向及び回転速度とを、それぞれ制御して、車軸部材10を車輪本体20に対して相対回転させないようにすることによって、爪部材40の収容状態又は突出可能状態を維持する。すなわち、2つの回転駆動源(爪用アクチュエータ65及び本体用アクチュエータ75)の制御の仕方により、爪部材40を突出させる変形と、爪部材40を収容させる変形と、各状態の維持とを行うことができるので、車輪1全体を大型化せず、回転駆動源から車軸部材10及び車輪本体20までの伝達を簡単な構成で実現しつつ、安定的な平地走行及び段差走破が可能である。また、爪部材40の収容状態又は突出可能状態を維持することができるので、車輪1の意図しない変形を抑制でき、安定的な平地走行及び段差走破が可能である。
【0099】
また、実施形態の車輪1は、腕部材30が爪突出位置にある場合であって、爪部材40の接地面から受ける反力Frの方向が、当該爪部材40と接地面との接点(接地点Pc)に対して爪回転軸Acより腕回転軸Aa側に向かう方向である場合、当該爪部材40が爪付勢部50の付勢力に抗して伸展位置から屈曲位置へ向かう方向(屈曲方向Rf)に回転する。
【0100】
これにより、車輪1は、段差を捉えない爪部材40を、車輪本体20の外周より径方向内側に収容することができるので、段差の直前及び直後や、段差走破中において、車輪1を変形させている状態でも、爪部材40の先端直径を小さくすることができ、車輪1自体の上下動を抑制することができる。
【0101】
また、実施形態の車輪1は、腕部材30が爪突出位置にある場合であって、爪部材40の接地面から受ける反力Frの方向が、当該爪部材40と接地面との接点(接地点Pc)に対して爪回転軸Acより腕回転軸Aa側とは反対側に向かう方向である場合、当該爪部材40が伸展位置に維持される。
【0102】
これにより、車輪1は、爪部材40が段差に引っ掛かった際に、伸展位置を超えてさらに回転することがないので、爪部材40の先端を支点として車輪本体20を段差下の走行面から浮き上がらせ、段差に乗り上げることができる。
【0103】
また、実施形態の車輪1において、爪部材40は、腕部材30が爪突出位置にありかつ爪部材40が屈曲位置にある状態で、曲率中心及び曲率半径が車輪本体20と同一である凸状の凸状円弧壁部40aを外周面の一部に含む。
【0104】
これにより、車輪1は、平地走行時には凸状円弧壁部40aが転動周面の一部を構成するため、平地走行時の安定性を維持することができる。
【0105】
また、実施形態の車輪1において、腕部材30及び爪部材40は、車軸Aw回りに回転対称かつ等間隔に複数設けられる。
【0106】
これにより、車輪1は、周方向に均等になるので、走行時の安定性を向上させることができる。また、車輪1は、段差に到達した際に、爪部材40が段差に引っ掛かるまでに空転する量を抑制することができる。
【0107】
[適用形態]
次に、車輪1の適用例としての車両100の構成について、図7を参照して説明する。図7は、実施形態に係る車輪1を搭載する適用例としての車両100の構成例を模式的に示す斜視図である。図7において、車輪1が段差の走破が可能な方向へ回転する場合の車両100の進行方向が、車両100の前方である。すなわち、車両100の前方は、図7において、右方である。また、図7は、車両100を右方から視た側面図である。
【0108】
適用形態の車両100は、車両100の車体101と、4つの車輪1(左側に配置される車輪1は不図示)と、を備える台車である。車体101には、例えば、爪用アクチュエータ65及び本体用アクチュエータ75(図2参照)に供給する電力の電源、爪用アクチュエータ65及び本体用アクチュエータ75の回転方向及び回転速度を制御する制御部80、進行方向の段差を検出する検出装置等が搭載される。検出装置は、例えば、段差までの距離を検出する赤外線センサ等のセンサを含んでもよい。検出装置は、例えば、段差を撮像する撮像部を含み、撮像画像に基づいて段差を検出してもよい。
【0109】
4つの車輪1は、支持部90を介して車体101に固定される。4つの車輪1は、車体101の左右前後に配置される。これにより、車輪1の車軸Aw及び本体駆動回転軸Adが車体101に固定される。車輪1は、適用形態において、支持部90の上端部が、車体101の下面に固体される。車両100は、適用形態において、4つの車輪1が左右前後に配置されるが、車輪1を自走車に適用する場合、3つ以上の車輪1を備えればよい。車両100の左右方向への旋回は、操舵にステアリング装置を用いるのではなく、右側の車輪1と左側の車輪1との回転速度差を用いる。
【0110】
次に、車両100の動作について、図8から図23までを参照して説明する。図8から図23までは、図7に示す車両100による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。車両100は、車輪1が正回転方向R1に回転する方向に移動しているものとし、進行方向に段差があるものとする。また、1段の段差は、車輪1の半径より高く車輪1の直径より低いものを想定する。
【0111】
図8のステップS1において、車両100は、段差に到達せず、平地走行中である。この場合、車輪1は、車軸部材10と車輪本体20とが同回転方向かつ同回転速度で回転するよう、制御部80が爪用アクチュエータ65及び本体用アクチュエータ75を制御することにより、腕部材30の収容位置を維持させる。これにより、車輪1が円形を維持するので、車輪本体20の外輪部23の外周面23b(図1参照)が全周に亘って転動周面を構成する。
【0112】
図9のステップS2において、車両100は、段差に接近する。この際、車輪1は、車軸部材10の正回転方向R1への回転速度が車輪本体20の正回転方向R1への回転速度より大きくなるように、制御部80が爪用アクチュエータ65及び本体用アクチュエータ75を制御することにより、腕部材30を収容位置から突出位置へ移動させる。これにより、前輪側の車輪1は、爪部材40が車輪本体20の外周より径方向外側に突出することによって変形する。腕部材30が突出位置に達した後は、車軸部材10と車輪本体20とが同回転方向かつ同回転速度で回転するように、制御部80が爪用アクチュエータ65及び本体用アクチュエータ75を制御することにより、腕部材30の突出位置を維持させる。
【0113】
なお、腕部材30を突出方向Rpに回転させるタイミングは、前輪側の車輪1が段差に到達してぶつかった時でもよい。すなわち、段差の接近を撮像装置等で検出する場合は、前輪側の車輪1が段差に到達する前に予め腕部材30を突出方向Rpに回転させてもよいが、例えば、加速度センサ等で段差への衝突を検出する場合は、前輪側の車輪1が段差に到達してぶつかった時に突出方向Rpに回転させる。
【0114】
図9のステップS2における車輪1の回転位置では、走行面に接地する爪部材40の接地面から受ける反力Frの方向が、接地点Pcと爪回転軸Acとを結ぶ仮想線Lvより伸展方向Re側である。したがって、爪部材40は、伸展位置を維持する。車輪1は、爪部材40の先端部40dの接地点Pcを支点として、車輪本体20が走行面から浮き上がる。
【0115】
図10のステップS3に示すように、車両100は、前輪側の車輪1が段差に到達する(図11のステップS4)まで、爪部材40を突出させた状態で走行を続ける。図10のステップS3における車輪1の回転位置では、走行面に接地する爪部材40の接地面から受ける反力Frの方向が、接地点Pcと爪回転軸Acとを結ぶ仮想線Lvより屈曲方向Rf側である。したがって、爪部材40は、屈曲方向Rfに回転する。これにより、屈曲位置の爪部材40は、凸状円弧壁部40a(図4等参照)が車輪本体20と共に車輪1の転動周面の一部を構成する。
【0116】
図11のステップS4において、車両100の前輪側の車輪1は、段差に到達する。この際、前輪側の車輪1の前方側に位置する爪部材40は、凹状円弧壁部40b(図4等参照)側を段差の上面に引っ掛ける。この際、段差の上面に接地する爪部材40の接地面から受ける反力Frの方向が、接地点Pcと爪回転軸Acとを結ぶ仮想線Lvより伸展方向Re側である。したがって、爪部材40は、伸展位置を維持する。
【0117】
なお、爪部材40の車軸Aw回りの回転位置によって、爪部材40が段差に引っ掛からないことがある。このような場合は、爪部材40の1つが、段差の上面に引っ掛かるまで、車輪1が段差の手前で正回転方向R1に空転することによって、逆回転方向R2側に隣接する爪部材40が段差に引っ掛かる。
【0118】
図12のステップS5において、車輪1は、さらに正回転方向R1に回転する。これにより、前輪側の車輪1は、爪部材40の先端部40dの接地点Pcを支点として、車輪本体20が走行面から浮き上がる。この際、段差下の走行面に接地する爪部材40は、車輪本体20が走行面から浮き上がるのに伴って、爪付勢部50(図6等参照)の付勢力によって伸展方向Reに回転しながら、走行面と接触し続ける。
【0119】
図13のステップS6において、車輪1は、さらに正回転方向R1に回転する。図12のステップS5で前輪側の車輪1の段差下の走行面に接地していた爪部材40は、伸展位置に達し、走行面から浮き上がる。また、後輪側の車輪1の走行面に接地して車輪本体20の外周より径方向内側に収容されていた爪部材40は、正回転方向R1へ移動することにより走行面からの反力Frから解放されるので、爪付勢部50(図6等参照)の付勢力によって伸展方向Reに回転する。
【0120】
図14のステップS7において、前輪側の車輪1は、段差の上面に接地する爪部材40が伸展位置を維持しながら、段差に乗り上げる。なお、この際の後輪側の車輪1の動作は、図9のステップS2と同様であるため、説明を省略する。
【0121】
図15のステップS8及び図16のステップS9において、車輪1は、さらに正回転方向R1に回転する。この際、前輪側の車輪1は、段差の上面を走行し、後輪側の車輪1は、段差下の走行面を走行する。なお、この際の車輪1の爪部材40の動作は、図10のステップS3と同様であるため、説明を省略する。
【0122】
図17のステップS10において、車両100の後輪側の車輪1は、段差に到達する。図17のステップS10における車輪1の回転位置では、後輪側の車輪1の前方側に位置する爪部材40が段差の側面と接地する。この際、爪部材40が接地面から受ける反力Frの方向は、接地点Pcと爪回転軸Acとを結ぶ仮想線Lvより屈曲方向Rf側である。したがって、爪部材40は、屈曲方向Rfに回転する。これにより、爪部材40は、車輪本体20の外周より径方向内側に収容される。
【0123】
図18のステップS11において、図17のステップS10で収容された爪部材40の逆回転方向R2側に隣接する爪部材40が、凹状円弧壁部40b(図4等参照)側を段差の上面に引っ掛ける。この際、段差の上面に接地する爪部材40の接地面から受ける反力Frの方向が、接地点Pcと爪回転軸Acとを結ぶ仮想線Lvより伸展方向Re側である。したがって、爪部材40は、伸展位置を維持する。
【0124】
図19のステップS12、図20のステップS13、図21のステップS14、及び図22のステップS15において、車輪1は、さらに正回転方向R1に回転し、後輪側の車輪1は、段差に乗り上げる。なお、この際の後輪側の車輪1の動作は、図12のステップS5、図13のステップS6、図14のステップS7、及び図15のステップS8における前輪側の車輪1の動作と同様であるため、説明を省略する。
【0125】
前輪側の車輪1及び後輪側の車輪1が段差を走破すると、車輪1は、車軸部材10の正回転方向R1への回転速度が車輪本体20の正回転方向R1への回転速度より小さくなるように、制御部80が爪用アクチュエータ65及び本体用アクチュエータ75を制御することにより、腕部材30を突出位置から収容位置へ移動させる。
【0126】
図23のステップS16に示すように、腕部材30が収容位置に達した後は、車軸部材10と車輪本体20とが同回転方向かつ同回転速度で回転するように、制御部80が爪用アクチュエータ65及び本体用アクチュエータ75を制御することにより、腕部材30の収容位置を維持させる。これにより、車輪1が再び円形を維持するので、車輪本体20の外輪部23の外周面23b(図1参照)が全周に亘って転動周面を構成する。
【0127】
以上説明したように、適用形態の車両100は、車輪1と、車軸部材10を車軸Aw回りに回動可能に支持する車体101と、を備える。
【0128】
車両100は、平地走行時には爪部材40を車輪本体20の外周より径方向内側に収容することによって車輪本体20の外周が全周に亘って転動周面を構成する車輪1を備えるので、平地走行時の安定性を維持することができる。また、車両100は、爪付勢部50によって爪部材40が腕部材30に対して伸展する方向に常時付勢されており、段差走行時には腕部材30に対して伸展する位置にある爪部材40の一部が車輪本体20の外周より径方向外側に突出するように腕部材30を車輪本体20に対して移動させることができる。車両100は、爪部材40の一部が車輪本体20の外周より径方向外側に突出するよう車輪1が変形することによって、進行方向に位置する爪部材40が段差を捉えて走破することができる。爪部材40は、車軸部材10と車輪本体20とを相対回転させるという単純な構造で、突出及び収容することができる。さらに、車両100は、車輪1が変形している状態においても、爪部材40が屈曲する方向に外力を受けることによって、外力を受けた爪部材40が爪付勢部50の付勢力に抗して車輪本体20の外周より径方向内側に収容される。これにより、段差の直前及び直後や、段差走破中において、車輪1を変形させている状態でも、爪部材40の先端直径を小さくすることができるので、車輪1自体の上下動を抑制することができる。
【0129】
なお、実施形態の車輪1及び車両100は、一部の構成を適宜変更してもよい。例えば、腕部材30及び爪部材40の数及び形状は、実施形態に限定されない。また、腕部材30は、車輪本体20の規制部25によって突出方向Rp側への回転量に制限を設けているが、別途設けるリミッタ部品によるものでもよい。
【0130】
また、車輪本体20は、実施形態では支持部90の外側面90a側に設けられるが、実施形態の構成に限定されず、内側面90b側に設けられてもよい。腕部材30は、実施形態では、車輪本体20の外側面22a側に設けられるが、実施形態の構成に限定されず、内側面22b側に設けられてもよい。また、車軸部材10は、実施形態では支持部90によって片持ちで支持されるが、実施形態の構成に限定されず、正面視断面が逆U字状の支持部に両持ちで支持されてもよい。
【0131】
また、爪用アクチュエータ65は、実施形態では出力軸66が車軸部材10に直接固定されるが、減速機を介して車軸部材10に接続してもよい。同様に、本体用アクチュエータ75は、実施形態では出力軸76が本体駆動軸71に直接固定されるが、減速機を介して本体駆動軸71に接続してもよい。
【0132】
また、車輪本体20は、実施形態では車軸部材10を介して支持部90に対して支持されるが、車軸部材10を介さずに支持部90に対して支持されてもよい。例えば、車輪本体20は、支持部90の外側面90a側に設けられた筒状部の外周面に軸受B2を介して筒状部21の内周面21aを固定してもよい。また、爪用アクチュエータ65(および減速機)は、支持部90の外側面90a側に設けられた筒状部に収容されるように設けられてもよい。なお、支持部90の外側面90a側に設けられた筒状部は、車軸Awを軸心としかつ外径が筒状部21の内径より小さい。
【符号の説明】
【0133】
1 車輪
10 車軸部材
10a 内端面
10b 軸穴
10c 外端面
11 被支持部
12 本体支持部
13 歯車固定部
14 腕作動歯車
14a 軸孔
14b 歯部
20 車輪本体
21 筒状部
21a 内周面
21b 外周面
22 円板状部
22a 外側面
22b 内側面
23 外輪部
23a 内周面
23b 外周面
24 腕支持軸部
25 規制部
26 本体歯車
26a 軸孔
26b 歯部
30 腕部材
31 軸孔
32 腕基部
32a 円筒状部
32b 凸状部
32c 歯部
32d 規制壁部
33 爪支持軸部
34 連結部
40 爪部材
40a 凸状円弧壁部
40b 凹状円弧壁部
40c 規制壁部
40d 先端部
41 軸孔
50 爪付勢部
51 コイル部
52 第1端部
53 第2端部
60 車軸駆動部
65 爪用アクチュエータ
66 出力軸
70 本体駆動部
71 本体駆動軸
72 本体駆動歯車
72a 軸孔
72b 歯部
75 本体用アクチュエータ
76 出力軸
80 制御部
90 支持部
90a 外側面
90b 内側面
91 第1貫通孔
92 第1筒状部
93 第2貫通孔
94 第2筒状部
100 車両
101 車体
B1、B2、B3、B4、B5 軸受
Aw 車軸
Aa 腕回転軸
Ac 爪回転軸
Ad 本体駆動回転軸
R1 正回転方向
R2 逆回転方向
Rp 突出方向
Rs 収容方向
Re 伸展方向
Rf 屈曲方向
Pc 接地点
Lv 仮想線
Fr 反力
S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14、S15、S16 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23