(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006201
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】皮膚化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/39 20060101AFI20230111BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230111BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20230111BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230111BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A61K8/39
A61K8/37
A61K8/86
A61K8/06
A61K8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108676
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】596154365
【氏名又は名称】株式会社ウテナ
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 智仁
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB172
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC092
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC262
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC532
4C083AC662
4C083AC852
4C083AD022
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD212
4C083AD282
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD492
4C083AD532
4C083AD632
4C083AD662
4C083BB04
4C083BB05
4C083BB13
4C083BB21
4C083BB32
4C083BB33
4C083BB34
4C083BB46
4C083BB51
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD12
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD33
4C083EE06
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】良好な使用感と高い保湿効果を有する皮膚化粧料を提供する。
【解決手段】(A)液状油を含み、
(B)炭素数22以上の脂肪酸鎖を有するグリセリン脂肪酸エステル または
(C)ポリグリセリンの平均重合度が6以上であり、炭素数12以上の脂肪酸鎖を有するポリグリセリン脂肪酸エステル の少なくとも一方を含む、
O/W型の皮膚化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液状油を含み、
(B)炭素数22以上の脂肪酸鎖を有するグリセリン脂肪酸エステル または
(C)ポリグリセリンの平均重合度が6以上であり、炭素数12以上の脂肪酸鎖を有するポリグリセリン脂肪酸エステル の少なくとも一方を含む、
O/W型の皮膚化粧料。
【請求項2】
前記グリセリン脂肪酸エステルと、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が合計で0.01質量%以上10質量%未満である、請求項1に記載の皮膚化粧料。
【請求項3】
前記グリセリン脂肪酸エステルと、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの合計含有量は、前記液状油の含有量に対し質量比で0.5以下である、請求項1または2に記載の皮膚化粧料。
【請求項4】
ペースト油または固形油のいずれをも含有しないか、ペースト油または固形油の少なくともいずれか一方を合計で2質量%未満含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の皮膚化粧料。
【請求項5】
前記液状油が、植物油、動物油、ロウ、炭化水素、脂肪酸、有機酸、アルコール(高級アルコールを含む)、エーテル油、エステル油、シリコーン油、フッ素油、からなる群より選択される1種又は2種以上の物質である、請求項1~4のいずれか一項に記載の皮膚化粧料。
【請求項6】
前記グリセリン脂肪酸エステルが、ベヘン酸グリセリル、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコ酸二酸)グリセリル、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、からなる群より選択される1種又は2種以上の物質である、請求項1~6のいずれか一項に記載の皮膚化粧料。
【請求項7】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、オクタステアリン酸ポリグリセリル-6、(ベヘン酸/エイコサン二酸)ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-6、からなる群より選択される1種又は2種以上の物質である、請求項1~6のいずれか一項に記載の皮膚化粧料。
【請求項8】
アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、ノニオン高分子、アニオン高分子、カチオン高分子、粉体、美白剤、紫外線吸収剤、シワ改善剤、抗炎症剤、からなる群から選択される1種又は2種以上の組合せを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の皮膚化粧料。
【請求項9】
化粧水、乳液、クリーム、マスク製剤のいずれかとして調製された、請求項1~8のいずれか1項に記載の皮膚化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成分として油脂を含有する皮膚用の化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の保湿を目的として使用される化粧料においては、保湿効果は勿論のこと、使用感の良さも重要とされる。一方で、こうした化粧料一般において、保湿効果と使用感の両立が難しいという課題が存在する。
【0003】
すなわち、こうした皮膚化粧料では、油性成分の含有量が多いほど高い保湿効果が得られる一方でべたつきが強いため使用感が悪くなり、油性成分を少なく水性成分の占める割合を多くすると、瑞々しく心地よい使用感を得やすい一方で保湿効果は劣るという傾向がある。そこで、保湿効果と使用感の両立を目指すべく、種々の成分や組成による化粧料が多くのメーカーによって創案されている(例えば、下記の特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-190841号公報
【特許文献2】特開2013-112679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載されているような化粧料でも、保湿効果と使用感の両立という上記の課題を必ずしも十全に達成できているとは言い難い。特許文献1に記載の化粧料では、使用感(ぬるつきやべたつきの少なさ)と保湿効果(エモリエント効果)の両立が企図されてはいるものの、液状油を多く含むため、水分の多いタイプの化粧料と比較すると、やはり使用感の点で劣る。特許文献2に記載の化粧料は、O/W型(水中油型)の乳化化粧料であり、油性あるいはW/O型(油中水型)の化粧料と比較すれば良好な使用感が得られる可能性はあるが、エモリエント感やコク感を得るために固形状のエステル油を使用しているので、このエステル油由来のべたつきが生じる虞がある。このように、保湿効果と使用感の両立は、未だ保湿用の皮膚化粧料一般における大きな課題であり続けている。
【0006】
本発明は、斯かる実情に鑑み、良好な使用感と高い保湿効果を有する皮膚化粧料を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し得る手段として、本発明は、
(A)液状油を含み、
(B)炭素数22以上の脂肪酸鎖を有するグリセリン脂肪酸エステル または
(C)ポリグリセリンの平均重合度が6以上であり、炭素数12以上の脂肪酸鎖を有するポリグリセリン脂肪酸エステル の少なくとも一方を含む、
O/W型の皮膚化粧料を提供する。
【0008】
本発明の皮膚化粧料においては、前記グリセリン脂肪酸エステルと、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が合計で0.01質量%以上10質量%未満であることが好ましい。
【0009】
本発明の皮膚化粧料において、前記グリセリン脂肪酸エステルと、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの合計含有量は、前記液状油の含有量に対し質量比で0.5以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の皮膚化粧料は、ペースト油または固形油のいずれをも含有しないか、ペースト油または固形油の少なくともいずれか一方を合計で2質量%未満含有することが好ましい。
【0011】
本発明の皮膚化粧料において、前記液状油は、植物油、動物油、ロウ、炭化水素、脂肪酸、有機酸、アルコール(高級アルコールを含む)、エーテル油、エステル油、シリコーン油、フッ素油、からなる群より選択される1種又は2種以上の物質とすることができる。
【0012】
本発明の皮膚化粧料において、前記グリセリン脂肪酸エステルは、ベヘン酸グリセリル、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコ酸二酸)グリセリル、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、からなる群より選択される1種又は2種以上の物質とすることができる。
【0013】
本発明の皮膚化粧料において、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、オクタステアリン酸ポリグリセリル-6、(ベヘン酸/エイコサン二酸)ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-6、からなる群より選択される1種又は2種以上の物質とすることができる。
【0014】
本発明の皮膚化粧料は、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、ノニオン高分子、アニオン高分子、カチオン高分子、粉体、美白剤、紫外線吸収剤、シワ改善剤、抗炎症剤、からなる群から選択される1種又は2種以上の組合せを更に含むことができる。
【0015】
本発明の皮膚化粧料は、化粧水、乳液、クリーム、マスク製剤のいずれかとして調製することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、良好な使用感と高い保湿効果を有する皮膚化粧料を提供するという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者は、高い保湿効果と、べたつきの極力少ない心地よい使用感を両立し得る皮膚化粧料について鋭意研究を重ねた結果、(A)液状油に加え、特定のグリセリン骨格を有する(B)グリセリン脂肪酸エステルまたは(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル((B)炭素数22以上の脂肪酸鎖を有するグリセリン脂肪酸エステル、または、(C)ポリグリセリンの平均重合度が6以上であり且つ炭素数12以上の脂肪酸鎖を有するポリグリセリン脂肪酸エステル、の少なくともいずれか一方)を含む組成を有するO/W型の皮膚化粧料が、上述の課題を解決し得ることを見出した。以下、具体的な組成や効果等について説明する。
【0018】
一般に、水と油脂を混合した化粧料は、O/W型とW/O型に大別される。O/W型の化粧料では、油脂の粒子が水中に分散しており、瑞々しく心地よい使用感を得やすい反面、水分が蒸発しやすく、皮膚に付与した水分を保持する力(広義の「保湿効果」のうち、「エモリエント力」等と呼ばれる効果)は弱めである。一方、W/O型の化粧料では、水性の粒子が油脂中に分散しており、水分が蒸発しにくく高い保湿効果を得やすいものの、油脂分を多く含むために皮膚の上で伸ばしにくく、べたつきやすいなど、使用感の点で劣る傾向がある。
【0019】
同じO/W型の化粧料であっても、配合される油脂の性質により、使用感や保湿効果は異なる。油脂は、その固さによって液状油(常温で液体の油脂)、ペースト油(常温で粘稠性を有する液体である油脂)、固形油(常温で固体の油脂)に分類することができる。O/W型の化粧料に使用した場合、液状油は皮膚の上での伸びや肌なじみは良いが、保湿効果は比較的低い傾向がある。固形油は、保湿効果は高いが、伸びや肌なじみは劣る。ペースト油も比較的保湿効果が高いが、べたつきが強い傾向がある。
【0020】
すなわち、O/W型の化粧料では、使用感を重視して液状油を配合すれば保湿効果が不足し、保湿効果を重視して固形油やペースト油を配合すれば使用感が悪くなるというジレンマが存在する。
【0021】
本発明者は、このようなジレンマを解決する技術として、液状油を含むO/W製剤に特定の構造を有するグリセリン誘導体を配合することにより、べたつきを抑えながら高い保湿効果をも実現し得ることを発見し、良好な使用感と高い保湿効果を有する皮膚化粧料として具体化するに至った。
【0022】
グリセリン誘導体は、W/O型の化粧料において乳化状態の安定化を目的として用いられる場合があるが、O/W型の化粧料において保湿効果を高めることを目的とした使用については、本発明者の知る限り、本発明の他に類例がない。
【0023】
以下、本発明の皮膚化粧料の成分、組成、使用形態等について説明する。
【0024】
本発明の皮膚化粧料は、
(A)液状油を含むO/W型の皮膚化粧料であって、さらにグリセリン誘導体として、
(B)炭素数22以上の脂肪酸鎖を有するグリセリン脂肪酸エステル、または、
(C)ポリグリセリンの平均重合度が6以上であり、炭素数12以上の脂肪酸鎖を有するポリグリセリン脂肪酸エステル、の少なくとも一方を含む。
【0025】
すなわち、(A)液状油を水中に分散させたO/W製剤として皮膚化粧料を構成し、液状油を含むO/W型の皮膚化粧料に特有の使用感の良さを基本としつつ、ある程度のグリセリン骨格を有する(B)グリセリン脂肪酸エステルまたは(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルを加えて保湿効果を高め、良好な使用感と高い保湿効果の両立を実現することができる。
【0026】
ここで、(B)グリセリン脂肪酸エステルおよび(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルに関し、脂肪酸鎖の炭素数はそれぞれ22以上または12以上が適当とした。十分な保湿効果の発揮には、脂肪酸鎖にある程度の長さの炭素鎖長が必要であるからである。一方、これらの成分(B)(C)において、脂肪酸鎖の炭素数の上限は実際上、22程度である。通常、脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルとして販売されている製品に含まれる脂肪酸の鎖長は、炭素数が多くて22程度までだからである。仮に炭素数が22以上の脂肪酸鎖を有するグリセリン脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルが入手できれば、それを上記成分(B)(C)として使用してもよい。
【0027】
また、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルに関し、ポリグリセリンの平均重合度は6以上が適当とした。これも十分な保湿効果の発揮のために必要な数値であるが、このポリグリセリンの平均重合度について、上限は実際上、10程度である。通常、ポリグリセリン脂肪酸エステルとして販売されている製品において、ポリグリセリンの平均重合度はせいぜい10程度までだからである。ポリグリセリンの平均重合度が11以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルが入手できれば、それを上記成分(C)として使用してもよい。
【0028】
また、上記皮膚化粧料においては、(B)グリセリン脂肪酸エステルと、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が合計で0.01質量%以上10質量%未満であることが好ましい。(B)グリセリン脂肪酸エステルまたは(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が少なすぎれば十分な保湿効果を発揮できず、多すぎれば油脂分が固化したり、あるいはこれらの成分自体の感触によって使用感を損なう虞があるためである。
【0029】
またここで、上記皮膚化粧料において、(B)グリセリン脂肪酸エステルと、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルの合計含有量は、(A)液状油の含有量に対し質量比で0.5以下であることが好ましい。(B)グリセリン脂肪酸エステルまたは(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル油脂分の(A)液状油に対する量を適当な範囲とすることで、十分な保湿効果と心地よい使用感を確実に発揮することができる。
【0030】
また、上記皮膚化粧料は、ペースト油または固形油のいずれをも含有しないか、ペースト油または固形油の少なくともいずれか一方を合計で2質量%未満含有することが好ましい。
【0031】
(A)液状油としては、植物油、動物油、ロウ、炭化水素、脂肪酸、有機酸、アルコール(高級アルコールを含む)、エーテル油、エステル油、シリコーン油、フッ素油、からなる群より選択される1種又は2種以上の物質を使用することができる。
【0032】
(B)グリセリン脂肪酸エステルとしては、ベヘン酸グリセリル、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコ酸二酸)グリセリル、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、からなる群より選択される1種又は2種以上の物質を使用することができる。
【0033】
(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、オクタステアリン酸ポリグリセリル-6、(ベヘン酸/エイコサン二酸)ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-6、からなる群より選択される1種又は2種以上の物質を使用することができる。
【0034】
また、本発明の皮膚化粧料は、上記(A)~(C)の物質に加え、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、ノニオン高分子、アニオン高分子、カチオン高分子、粉体、美白剤、紫外線吸収剤、シワ改善剤、抗炎症剤、からなる群から選択される1種又は2種以上の組合せを更に含んでもよい。
【0035】
ここで、アニオン界面活性剤の例としては、脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル乳酸塩、アシル化アミノ酸塩、アシルタウリン塩、アルカンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アシルメチルタウリン塩、アルキルエーテル酢酸塩、又はポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、等を挙げることができるが、本発明においてアニオン界面活性剤として用い得る物質はこれらに限定されない。
【0036】
ノニオン界面活性剤の例としては、プロピレングルコールモノ脂肪酸エステル、エチレングリコールモノ脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、メチルグルコシド脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンフィトスタノール、ポリオキシエチレンコレステロール、ポリオキシエチレンコレスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリエチレングルコールジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンメチルグルコシド脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン動植物油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングルコール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキルジエタノールアミド、アルキルアミンジオキシド、ポリオキシエチレンアルキルメルカプタン、等を挙げることができるが、本発明においてノニオン界面活性剤として用い得る物質はこれらに限定されない。
【0037】
また、皮膚化粧料に含まれるノニオン界面活性剤の全部または一部として、グリセリン脂肪酸エステルまたはポリグリセリン脂肪酸エステルに該当する物質のうち少なくとも一種類を用いることもできる。その場合、ノニオン界面活性剤として使用されるグリセリン脂肪酸エステルまたはポリグリセリン脂肪酸エステルは、上記(B)または(C)に該当し得る物質であってもよい。
【0038】
ノニオン高分子、アニオン高分子、カチオン高分子、あるいはこれらを含む高分子としては、アルギン酸、カラギーナン、寒天、ファーセレラン、グアーガム、クインスシード、コンニャクマンナン、タンマリンド種子ガム、タラガム、デキストリン、デンプン、ローカストビーンガム、アラビアガム、ガッティガム、カラヤガム、トラガカントガム、アラビノガラクタン、ペクチン、マルメロ、アルブミン、カゼイン、ゼラチン、キトサン、ヒアルロン酸、カードラン、キサンタンガム、ジェランガム、シクロデキストリン、デキストラン、プルランおよびその誘導体、微結晶セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキプロピルセルロース、ヒドロキシプピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロース、デンプンリン酸エステル、デンプングルコール酸ナトリウム、カチオン化グアーガム、カルボキシメチル・ヒドロキシプロピル化グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガム、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、高重合ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリクオタニウム-51、ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64、ポリクオタニウム-65、ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリル、(メタクリル酸グリセリルアミドエチル/メタクリル酸ステアリル)コポリマー、等を挙げることができるが、本発明においてノニオン高分子、アニオン高分子、カチオン高分子、あるいはこれらを含む高分子として用い得る物質はこれらに限定されない。
【0039】
粉体の例としては、カオリン、シリカ、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、合成金雲母、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン、セリサイト、タルク、窒化ホウ素、マイカ、硫酸バリウム、麻セルロース末、小麦デンプン、シルク末、トウモロコシデンプン、シリコーン、ナイロン、ポリアクリル酸エステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ乳酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛、等を挙げることができるが、本発明において粉体として用い得る物質はこれらに限定されない。
【0040】
紫外線吸収剤の例としては、ホモサレート、オクトクリレン、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、パラアミノ酸安息香酸およびそのエステル、4-tert-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタン、4-(2―β―グルコピラノシロキシ)プロポキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、サリチル酸オクチル、2,5-ジイソプロピルケイ皮酸メチル、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル、シノキサート、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジメチコジエチルベンザルマロネート、1-(3,4)-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-1,3-ペンタンジオン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル、テトラヒドロキシベンゾフェノン、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン、トリメトキシケイ皮酸メチルビス)トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル、ドロメトリゾールトリシロキサン、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、2,4-ビス-[{4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸及びその三水塩、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、フェルラ酸、2,2'-メチレンビス{6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール}、4-メトキシケイ皮酸2-メチルフェニル、等を挙げることができるが、本発明において紫外線吸収剤として用い得る物質はこれらに限定されない。
【0041】
抗炎症剤、美白剤、シワ改善剤の例としては、アスコルビン酸、L-アスコルビン酸2-グルコシド、ε-アミノカプロン酸、アラントイン、イソプロピルメチルフェノール、エストラジオール、オリザノールカンフル、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、β-グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、サリチル酸、酸化亜鉛、ジパルミチン酸アスコルビル、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トラネキサム酸、ナイアシンアミド、ニコチン酸アミド、尿素、ビタミンA油、ヒノキチオール、プラセンタエキス、ベンザルコニウム塩化物、メントール、レチノールパルミチン酸エステル、等を挙げることができるが、本発明において抗炎症剤、美白剤、シワ改善剤として用い得る物質はこれらに限定されない。
【0042】
また、本発明の皮膚化粧料は、化粧水、乳液、クリーム、マスク製剤のいずれかとして調製してもよい。
【0043】
[実験1]グリセリン誘導体による保湿効果の増強
【0044】
液状油を配合したO/W型の皮膚化粧料において、特定のグリセリン誘導体の添加によって保湿効果が増強されることを、複数の種類のグリセリン誘導体について検証した。実験区としてサンプル1-1~1-6の6種類の皮膚化粧料を、対照区としてサンプル1-C0~1-C3の4種類の皮膚化粧料をそれぞれ調製し、保湿効果と使用感を比較した。各サンプルの組成は下記表1の通りである。表中、数値の単位は質量%(化粧料全体に対する各成分の割合)である。
【表1】
【0045】
実験区のサンプル1-1~1-6および対照区のサンプル1-C0~1-C3は、いずれも(A)液状油として共通する組成の油脂を同じ割合(合計6.1質量%)ずつ含む。さらに、実験区のサンプル1-1、1-5は、グリセリン誘導体として、(B)グリセリン脂肪酸エステル(炭素数22以上の脂肪酸鎖を有する)および(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリンの平均重合度が6以上であり、炭素数12以上の脂肪酸鎖を有する)に該当する化合物を、それぞれ所定量含む。また、実験区のサンプル1-2、1-3は、グリセリン誘導体として、(B)グリセリン脂肪酸エステルに該当する物質のみをそれぞれ所定量含む。実験区のサンプル1-4、1-6は、グリセリン誘導体として、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルに該当する物質のみをそれぞれ所定量含む。
【0046】
これに対し、対照区のサンプル1-C0は、グリセリン誘導体を含まない。また、サンプル1-C1は、グリセリン誘導体として、(B)グリセリン脂肪酸エステル(炭素数22以上の脂肪酸鎖を有する)の代わりに、炭素数の少ない脂肪酸鎖を有する(B')グリセリン脂肪酸エステル(脂肪酸鎖の炭素数が22未満)を所定量含む。また、対照区のサンプル1-C2、1-C3は、グリセリン誘導体として、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリンの平均重合度が6以上であり、炭素数12以上の脂肪酸鎖を有する)の代わりに、ポリグリセリンの平均重合度が小さい(C')ポリグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリンの平均重合度が6未満であり、炭素数12以上の脂肪酸鎖を有する)、または炭素数の少ない脂肪酸鎖を有する(C')ポリグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリンの平均重合度が6以上であり、脂肪酸鎖の炭素数が12未満)を所定量含む。すなわち、実験区のサンプル1-1~1-6は、グリセリン誘導体として上記した所定の条件(ある程度のグリセリン骨格を有する)に適う物質を含むのに対し、対照区のサンプル1-C1~1-C3は、上記条件に適わないグリセリン誘導体を含んでいる。
【0047】
その他に、各サンプルは、アニオン高分子およびpH調整剤を添加剤として含む。
【0048】
これら全10種類のサンプルについて、保湿効果を検証する実験を行った。4名の被験者の前腕内側3cm×3cmの範囲に、各サンプルを0.15gずつ塗布し、20分静置した。その後、各被験者が自身の塗布部に指で触れることにより、各被験者自身に各サンプルの使用による体感的な保湿効果を評価してもらった。評価は1~5点の5段階の点数により行った。4名の被験者による点数を、サンプル毎に集計した。
【0049】
結果は上記表1の下から2行目に示す通りである。合計の点数が5点以下であれば「×」、6-10点であれば「△」、11-15点であれば「○」、16-20点であれば「◎」で示している。グリセリン誘導体として(B)グリセリン脂肪酸エステルおよび(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルの両方を含むサンプル1-1、1-5、(B)グリセリン脂肪酸エステルまたは(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルのうち一方のみを含むサンプル1-2、1-3、1-4、1-6のいずれにおいても、「○」または「◎」の高評価であり、良好な保湿効果を示した。これに対し、グリセリン誘導体を含まない対照区のサンプル1-C0、および所定の要件を満たさないグリセリン誘導体((B')グリセリン脂肪酸エステルまたは(C')ポリグリセリン脂肪酸エステル)を含む対照区のサンプル1-C1~1-C3では、保湿効果は「×」または「△」の低評価であり、満足な保湿効果を得られなかった。(A)液状油を配合したO/W型の皮膚化粧料においては、ある程度以上のサイズの炭素鎖によるグリセリン骨格を形成する物質((B)グリセリン脂肪酸エステルまたは(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル)を使用した場合のみ、保湿効果の向上効果が得られることがわかる。
【0050】
グリセリン誘導体の含有量に関しては、(B)グリセリン脂肪酸エステルまたは(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルの少なくともいずれかを合計で2%以上含むサンプル1-3、1-4、1-6で保湿効果の評価が「◎」であったが、(B)グリセリン脂肪酸エステルまたは(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルの少なくともいずれかを合計で0.2%~1%含むサンプル1-1、1-2、1-5でも、評価は「○」と十分な保湿効果を示した。皮膚化粧料におけるこれらのグリセリン誘導体の含有量が0.1%以上10%以下であれば、このように良好な保湿効果を期待することができる。
【0051】
また、(A)液状油に対する(B)(C)グリセリン誘導体の比率は、最も少ないサンプル1-1で約0.03、最も多いサンプル1-6で約0.5程度であり、いずれのサンプルでも上記の通り良好な保湿効果を示している。液状油に対するこれらのグリセリン誘導体の割合が0.01以上0.5以下であれば、液状油を含むO/W型の皮膚化粧料において、適当な保湿効果を付与することができる。
[実験2]グリセリン誘導体による使用感への影響
【0052】
上記実験1と同じサンプル1-1~1-6およびサンプル1-C0~1-C3について、使用感についても検証を行った。べたつきは使用感の重要な指標であり、これはサンプルを塗布した皮膚に対する物体の貼付きによって評価することができる。そこで、バイオスキンプレート(人の皮膚を模した板状の素材)にこれらのサンプルを一定量塗布し、そこに軽量の粒子を振りかけた後で振り落とし、バイオスキンプレートの表面に残った前記粒子の数を計測することで、各サンプルの使用により生じるべたつきを粒子の残存数の多寡により評価した。具体的には、6cm×6cmのバイオスキンプレートに対し、各サンプルを0.5gずつ塗布し、一定時間静置した後、各30粒のシュガー粒子(製菓用に市販されている砂糖の粒子)を振りかけた。前記バイオスキンプレートを裏返してシュガー粒子を振り落とし、残ったシュガー粒子の枚数を計測した。
【0053】
結果は上記表1の最下行に示す通りである。実験区のサンプル1-1~1-6では、いずれも対照区のサンプル1-C0~1-C3と比較してシュガー粒子の残存付着枚数が増加したものの、さほど顕著な増加ではなく、使用感を著しく損なうほどのべたつきは観察されなかった。上記実験1の結果とあわせ、特定のグリセリン誘導体の添加により、使用感を損なうことなく皮膚化粧料の保湿効果を高め得ることがわかる。
【0054】
[実験3]油脂の種類による性質の差の検証
【0055】
続いて、O/W型の皮膚化粧料に含まれる油脂の種類により、保湿効果および使用感にどの程度の違いが出るかを検証した。実験区としてサンプル2-1~2-3の3種類の皮膚化粧料を、対照区としてサンプル2-C1~2-C3の3種類の皮膚化粧料をそれぞれ調製し、保湿効果と使用感を比較した。各サンプルの組成は下記表2の通りである。
【表2】
【0056】
実験3に用いた実験区のサンプル2-1~2-3は、油脂として(A)液状油のみを含むか、(A)液状油に加えて少量(皮膚化粧料の全量に対し、合計0.01~1質量%)の(A')ペースト油または固形油を含む。これに対し、対照区のサンプル2-C1~2-C3は、(A)液状油も含むが、これに加えてやや多量(皮膚化粧料の全量に対し、合計2~3.5質量%)の(A')ペースト油または固形油を含んでいる。
【0057】
いずれのサンプルも、グリセリン誘導体として、(B)グリセリン脂肪酸エステルであるベヘン酸グリセリルと、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルであるオクタステアリン酸ポリグリセリル-6をそれぞれ適当量含む。その他に、各サンプルは、ノニオン界面活性剤、アニオン高分子およびpH調整剤を添加剤として含む。
【0058】
各サンプルの保湿効果および使用感については、上記実験1、2と同様の手法によって検証した。
【0059】
結果を上記表2の下2行に示す。保湿効果に関しては、実験区および対照区のいずれのサンプルでも「◎」と、良好な結果を示した。一方、使用感に関しては、対照区のサンプル2-C1~2-C3でシュガー粒子の付着枚数に顕著な増加が見られ、7割~8割程度ものシュガー粒子がバイオスキンプレート表面に残存した。これは、これらのサンプルでは化粧料としての使用感を大きく損なうほどにべたつきが強いことを示している。すなわち、ペースト油あるいは固形油を多く含む皮膚化粧料は、保湿効果はあっても使用感の点で劣る。
【0060】
尤も、ペースト油や固形油を使用すれば皮膚化粧料の使用感が悪化することは従前知られているし、グリセリン誘導体には液状油の粘度を高める効果はあってもペースト油や固形油の伸びを良くするような効果はないと思われるので、これは予想された結果である。注目すべきは実験区のサンプル2-2、2-3であり、これらのサンプルでは、(A')ペースト油または固形油をそれぞれ少量含んでいるにもかかわらず、シュガー粒子の付着枚数は(A')ペースト油または固形油を含まないサンプル2-1と同程度に留まっている。すなわち、少量(2%未満)であれば、保湿効果を高める等の目的でペースト油または固形油を混合しても、使用感に大きな影響はないことを示している。斯くして、O/W型の皮膚化粧料に(B)グリセリン脂肪酸エステルや(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加することにより、O/W型の皮膚化粧料に特有の使用感の良さを損なうことなく、良好な保湿効果を得ることができるのである。
【0061】
[実験3.1]グリセリン誘導体の影響のさらなる検証
【0062】
上記実験3に使用した実験区のサンプル2-1~2-3は、上記実験1、2に使用した実験区のサンプル1-1~1-6と比較し、油脂分として液状油を主に含むという点で共通しているものの、油脂分を構成する個別の成分の種類やその量は異なる。このように、実験1、2で使用したサンプルとは異なる組成の油脂を含むサンプルにおいても、グリセリン誘導体による効果が同様に発揮されているかについて検証を行った。
【0063】
ここで用いた対照区のサンプル2-C4、2-C5(上記表2の右2列参照)は、油脂分および添加物の組成においては実験区のサンプル2-1、2-2と共通しているが、サンプル2-1、2-2と異なり、グリセリン誘導体を含んでいない。このようなサンプル2-C4、2-C5に関し、上記と同じ方法により保湿効果と使用感を検証した。
【0064】
その結果、使用感については実験区のサンプル2-1、2-2と比べてさらに良好であることが窺われたが(表2最下行の右2列参照)、それ以上に、保湿効果において大きく劣っていた(その上の2欄参照)。上記実験1の結果と合わせ、主として液状油を油脂分として含む化粧料であれば、所定の要件を満たすグリセリン誘導体の添加により、液状油の種類を問わず同様の効果が得られることがわかる。
【0065】
[実験4]油脂の種類による性質の差の検証(2)
【0066】
さらに、上記実験1~3で検証したサンプルとは異なる油脂の組成を有する化粧料についても性質を検証した。下記表3に組成を示すように、サンプル3-1、3-2およびサンプル3-C1、3-C2の4種類の皮膚化粧料を調製し、保湿効果と使用感を比較した。
【表3】
【0067】
実験区のサンプル3-1、3-2は、油脂として(A)液状油を合計6質量%程度含んでいる。油脂としてサンプル3-1、3-2における(A)液状油の合計含有量は、上記実験1、2で使用した各サンプルと同程度であるが、(A)液状油として含む油脂の組成が異なっている。また、このうちサンプル3-2は、(A)液状油に加え、(A')ペースト油と固形油を少量(合計1質量%程度)含んでいる。
【0068】
また、実験区のサンプル3-1、3-2は、グリセリン誘導体として(B)グリセリン脂肪酸エステルであるベヘン酸グリセリルと、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルであるオクタステアリン酸ポリグリセリル-6をそれぞれ適当量含んでいる。その他、サンプル3-1、3-2は、ノニオン界面活性剤またはアニオン高分子のいずれか、およびpH調整剤を添加剤としてそれぞれ含む。
【0069】
対照区のサンプル3-C1、3-C2は、それぞれ実験区のサンプル3-1、3-2と同じ油脂および添加物を含んでいるが、グリセリン誘導体を含まない。
【0070】
各サンプルの保湿効果および使用感については、上記実験1~3と同様の手法によって検証した。
【0071】
結果を上記表3の下2行に示す。保湿効果に関しては、実験区のサンプル3-1、3-2は「○」または「◎」と、いずれも良好な結果を示した。使用感に関しても、バイオスキンプレート表面に残存したシュガー粒子は1割程度に留まった。これに対し、グリセリン誘導体を含まない対照区のサンプル3-C1、3-C2では、保湿効果がいずれも「△」と、十分な保湿効果を示さなかった。使用感(シュガー粒子の残存数)については、実験区のサンプル3-1、3-2と同等であった。
【0072】
これは、上記実験1~3の結果と一致する。すなわち、(A)液状油に対し(B)(C)グリセリン誘導体が適当な比率で含有されており、また(A)液状油に対する(A')ペースト油または固形油の含有量が十分に少なければ(あるいは(A')ペースト油または固形油が含まれていなければ)、(A)液状油の組成が異なっていても同様の作用効果(十分な保湿効果と快適な使用感)を奏し得る。
【0073】
また、ここまでの実験1~4で用いたサンプルにおいては、油脂分の含有量にも幅があり、「化粧水」や「乳液」等と称される油脂分の比較的少ないタイプから、「クリーム」等と称される油脂分の多いタイプまで様々である。すなわち、クリームから乳液、化粧水まで、幅広い形態の化粧料において、十分な保湿効果と快適な使用感を実現し得ることが示されたと言える。また、これらの化粧料を、シート状の基剤に含浸させたマスク製剤という形態で利用してもよい。
【0074】
[実施例]
【0075】
上記皮膚化粧料の組成の一例を以下に示す。ただし、本発明による皮膚化粧料の組成はこれに限定されるものではない。
【表4】
【0076】
尚、本発明の皮膚化粧料は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。