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特開2023-62037ハイブリッド自動車の減速気筒カットオフ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062037
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】ハイブリッド自動車の減速気筒カットオフ
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/06 20060101AFI20230425BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20230425BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20230425BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20230425BHJP
   B60W 20/40 20160101ALI20230425BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20230425BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/48 ZHV
B60W10/02 900
B60W10/08 900
B60W20/40
B60K6/547
F02D29/06 D
B60W10/00 102
B60W10/02
B60W10/06
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023019194
(22)【出願日】2023-02-10
(62)【分割の表示】P 2019559352の分割
【原出願日】2018-04-12
(31)【優先権主張番号】15/584,686
(32)【優先日】2017-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/847,481
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511001747
【氏名又は名称】トゥラ テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TULA TECHNOLOGY,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】セラーノ,ルイス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ロバート シー.
(72)【発明者】
【氏名】ユアン,シン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】減速気筒カットオフ(DCCO)状態と動作状態間でエンジンを遷移させる方法及び配置について説明する。
【解決手段】一態様では、DCCOからの遷移は、いかなる気筒も点火する前に吸い込みマニホールド内の圧力を下げるために空気をポンピングするために気筒を再活性化することから始まる。別の態様では、DCCOからの遷移は空気ポンピングスキップ点火動作モードの使用を含む。マニホールド圧力が下げられた後、エンジンは、気筒非活性化スキップ点火動作モード又は他の適切な動作モードの何れかへ遷移し得る。さらに別の態様では、スキップ点火手法を使用してDCCOへ遷移する方法について説明する。この態様では、点火される作業サイクルの割合は閾値点火比まで徐々に下げられる。次に、作業室のすべては閾値点火比に到達後に非活性化される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動トレイン、電気モータ/発電機、エンジン及び変速機を有する車両を作動する方法において、前記エンジンはクランク軸、吸気マニホールド及び複数の作業室を含み、
前記クランク軸が回転している前記エンジンの動作中に、無エンジントルク要求に応じて前記作業室のすべてを非活性化して、前記作業室の何れも点火されないように、そして前記クランク軸が回転する際に空気が前記作業室内にポンピングされないようにする工程と、
前記車両の動き及びクランク軸の回転が機械的に連結されないように前記エンジンを前記駆動トレインから切り離す工程と、
前記クランク軸の回転速度がシフト速度より低くなるまで低下させる工程と、
を含み、
前記エンジンと前記電気モータ/発電機は前記変速機とは独立して一緒に回転できることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記電気モータ/発電機及びエンジンは、独立して前記駆動トレインと機械的に係合できないことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記クランク軸の回転速度がエンジンアイドル速度より低い間に、前記吸気マニホールドの圧力は実質的に大気圧であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法において、前記車両は停止/始動能力を有することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法において、前記作業室の非活性化、前記エンジンの係合解除、及び前記クランク軸回転速度の前記シフト速度未満への低下はすべて、前記車両の動作中に起こることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法において、前記エンジン回転速度はゼロまで低下できることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法において、前記クランク軸の回転速度はエンジンアイドル速度まで低下できることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法において、前記クランク軸の回転速度はエンジン点火速度まで低下できることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法において、前記クランク軸の回転速度は、前記エンジンが前記駆動トレインから切り離されている間に、前記電気モータ/発電機により前記クランク軸にトルクを加えたりそこから取り除いたりすることによって制御されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の方法において、回転速度エンジンは前記電気モータ/発電機によりエンジン点火速度より高く保持されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の方法において、前記作業室は各々、吸気弁と排気弁を有し、各作業室は、前記吸気弁及び排気弁の少なくとも一方を少なくとも1つの関連する作業サイクルにわたり閉じたままにすることによって非活性化されることを特徴とする方法。
【請求項12】
駆動トレイン、電気モータ/発電機及びエンジンを有する車両を作動する方法において、前記エンジンはクランク軸、吸気マニホールド及び複数の作業室を含み、
前記車両の動作中及び前記クランク軸の回転中に、前記電気モータ/発電機により供給されることが可能なエンジントルクの要求に応じて前記作業室のすべてを非活性化して、前記作業室の何れも点火されないように、そして前記クランク軸が回転する際に空気が前記作業室内にポンピングされないようにする工程と、
前記電気モータ/発電機を使って前記要求されたトルクを供給する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記要求されたトルクは前記車両を前方にクリープさせるための動力を供給することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法において、前記要求されたトルクは前記車両の動きを巡行速度に維持するための動力を供給することを特徴とする方法。
【請求項15】
電気モータ/発電機を有するハイブリッド車の内燃機関を始動させる方法において、前記エンジンはクランク軸と複数の作業室を有し、各作業室は吸気弁と排気弁を有し、
前記モータ/発電機にトルクを生成するための電力を印加する工程と、
前記生成されたトルクを前記エンジンに加えて、前記クランク軸を回転させる工程と、
初期クランク軸起動フェーズ中に前記クランク軸が回転している間に、前記作業室を非活性化して、前記作業室の何れも点火されないように、そして空気が前記エンジン内にポンピングされないようにする工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、係合解除装置は、前記初期クランク軸起動フェーズ中の少なくとも一部にわたり、前記エンジンを前記車両の駆動軸から機械的に切り離すことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の方法において、前記エンジン始動は前記エンジンへのトルク要求に応じて開始されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項15又は16に記載の方法において、前記エンジン始動は運転手がブレーキペダルから圧力を解除したことに応じて開始されることを特徴とする方法。
【請求項19】
駆動トレイン、電気モータ/発電機及びエンジンを有する車両を作動する方法において、前記エンジンはクランク軸、吸気マニホールド及び複数の作業室を有し、
前記エンジンの動作中に、無エンジントルク要求に応じて前記作業室のすべてを非活性化して、前記作業室の何れも点火されないように、そして前記クランク軸が回転する際に空気が前記作業室内にポンピングされないようにする工程と、
前記エンジンを前記駆動トレインから切り離して、前記車両の動きとクランク軸の回転が機械的に連結されなくなるようにする工程と、を含み、前記クランク軸の回転速度は前記電気モータ/発電機により前記クランク軸にトルクを加えたりそこから取り除いたりすることによって制御されることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、前記作業室のすべてが非活性化された後に前記エンジンが前記駆動トレインから切り離されることを特徴とする方法。
【請求項21】
電気モータ/発電機を有するハイブリッド車の内燃機関を始動させる方法において、前記エンジンはクランク軸と複数の作業室を有し、各作業室は吸気弁と排気弁を有し、
前記モータ/発電機にトルクを生成するための電力を印加する工程と、
前記生成されたトルクを前記エンジンに加えて前記クランク軸を回転させる工程と、
第一の作業室の前記吸気又は排気弁の少なくとも一方を非活性化して、前記クランク軸の回転中に前記第一の作業室内に空気がポンピングされないようにする工程と、
第二の作業室内に、前記第二の作業室に燃料を供給することなく空気をポンピングして、エンジンの空気導入のためのエアリザーバを提供する吸気マニホールド内の圧力を低下させる工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、前記クランク軸を変速機入力に連結する係合解除装置の係合の前に、前記モータ/発電機により生成されたトルクを使って前記ハイブリッド車を推進する工程をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
電気モータ/発電機を有するハイブリッド車の内燃機関を作動する方法において、前記エンジンはクランク軸と複数の作業室を有し、各作業室は吸気弁と排気弁を有し、
前記モータ/発電機にトルクを生成するための電力を印加する工程と、
前記生成されたトルクを前記エンジンに加えて前記クランク軸を第一のエンジン速度で回転させる工程と、
前記クランク軸の回転速度を前記第一のエンジン速度から、前記第一のエンジン速度より速い第二のエンジン速度へとランプアップさせる工程と、
第一の作業室の前記吸気又は排気弁の少なくとも一方を非活性化して、前記クランク軸の回転中に前記第一の作業室内に空気がポンピングされないようにする工程と、
第二の作業室内に、前記第二の作業室に燃料を供給することなく空気をポンピングして、エンジンの空気導入のためのエアリザーバを提供する吸気マニホールド内の圧力を低下させる工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、前記第一のエンジン速度はゼロでないことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項23又は請求項24に記載の方法において、前記第一のエンジン速度はエンジン点火速度であることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項23乃至25の何れか1項に記載の方法において、前記第二のエンジン速度はエンジンアイドル速度であることを特徴とする方法。
【請求項27】
車両内のエンジンの動作を制御するように構成されたコントローラにおいて、
気筒カットオフモードで前記エンジンのすべての作業室を非活性化して、前記作業室の何れも点火されないように、そして前記作業室を通じて吸気マニホールドから前記車両の排気系へと空気がポンピングされないようにし、
前記コントローラへの入力に応じて前記エンジンの前記動作を前記気筒カットオフモードから第二の動作モードへと遷移させる時期を判断し、
前記吸気マニホールド内の吸気マニホールド絶対圧力(MAP)を測定し、
前記測定されたMAPが閾値MAPより低ければ:
前記測定されたMAPに基づいて、前記測定されたMAPを前記閾値MAP未満までポンプダウンするのに必要な作業サイクル数を判断し、
前記エンジンを、前記吸気マニホールドから前記排気系へと前記エンジンの前記作業室の1つ又は複数を通じて前記判断された作業サイクル数にわたり空気をポンピングするように作動し、
前記判断された作業サイクル数にわたる前記空気の前記ポンピングの後で前記エンジンを前記第二の動作モードで作動する
ように構成されることを特徴とするコントローラ。
【請求項28】
請求項27に記載のコントローラにおいて、前記測定されたMAPを前記吸気マニホールドの中又はその付近に提供されたセンサから受け取るようにさらに構成されることを特徴とするコントローラ。
【請求項29】
請求項27又は28に記載のコントローラにおいて、前記作業サイクル数を下記要素:
ポンピング前の前記MAP、
閾値MAP、
前記エンジンの前記作業室と比較した前記吸気マニホールドの相対的大きさ
吸気及び排気弁のタイミング、
エンジン速度及び/又は
前記吸気マニホールドに空気を供給するように構成されたスロットルを通過する空気漏洩率
のうちの1つ又は複数に基づいて決定するようにさらに構成されることを特徴とするコントローラ。
【請求項30】
請求項27乃至29の何れか1項に記載のコントローラにおいて、前記測定されたMAPを前記閾値MAP未満までポンプダウンするのに必要な作業サイクルの数を判断するための参照テーブルをさらに含むことを特徴とするコントローラ。
【請求項31】
請求項30に記載のコントローラにおいて、前記参照テーブルはある範囲のMAP値の範囲を含み、各MAP値は前記MAP値を前記閾値MAP未満までポンプダウンするのに必要な、それに対応する作業サイクル数を規定することを特徴とするコントローラ。
【請求項32】
請求項27乃至31の何れか1項に記載のコントローラにおいて、前記コントローラへの前記入力はトルク要求を示す信号であり、それに応じて、前記コントローラは、前記所定の作業サイクル数にわたる前記ポンピングが完了した後で前記エンジンを前記第二の動作モードに遷移させる前まで前記エンジントルクの生成を遅らせるようにさらに構成されることを特徴とするコントローラ。
【請求項33】
請求項27乃至31の何れか1項に記載のコントローラにおいて、前記コントローラへの前記入力はトルク要求を示す信号であり、それに応じて、前記コントローラは、前記エンジンの前記作業室をスキップ点火モードで作動して、前記スキップされた作業室の少なくとも1つ内へ空気を前記判断された作業サイクル数にわたりポンピングしながら、前記要求されたトルクを送出するようにさらに構成されることを特徴とするコントローラ。
【請求項34】
請求項27乃至33の何れか1項に記載のコントローラにおいて、前記エンジンを前記第二の動作モードで作動するようにさらに構成され、前記第二の動作モードは:
(a)全排気量モード
(b)前記スキップ点火モード
(c)低減排気量モード
のうちの1つを含むことを特徴とするコントローラ。
【請求項35】
請求項27に記載のコントローラにおいて、前記コントローラは、前記入力信号が「ペダルストンプ」トルク要求であるときに、ポンピングによって前記MAPを低下させる代わりに前記エンジンの前記作業室のすべてを活性化することによる前記第二の動作モードに直接遷移するようにさらに構成されることを特徴とするコントローラ。
【請求項36】
請求項27乃至35の何れか1項に記載のコントローラにおいて、前記コントローラは、前記測定されたMAPが前記第二の動作モードに関連付けられる所望マニホールド圧力より低い場合に、ポンピングによって前記吸気マニホールド内の前記空気圧を低下させる代わりに、前記第二の動作モードに遷移するようにさらに構成されることを特徴とするコントローラ。
【請求項37】
請求項27乃至35の何れか1項に記載のコントローラにおいて、前記測定されたMAPが前記閾値MAPと同じかそれより低い場合に、ポンピングによって前記吸気マニホールド内の前記空気圧を低下させる代わりに、前記エンジンの前記動作を前記第二の動作モードに直接遷移させるようにさらに構成されることを特徴とするコントローラ。
【請求項38】
請求項27乃至37の何れか1項に記載のコントローラにおいて、前記コントローラへの前記入力はエンジン速度を示す信号であり、それに応じて、前記コントローラは、
前記エンジン速度が気筒カットオフモード閾値エンジン速度より低いか否かを確認し、
前記エンジン速度が前記気筒カットオフモード閾値エンジン速度より低い場合、空気を前記1つ又は複数の作業室内に前記判断された作業サイクル数にわたってポンピングし、
前記空気を前記判断された作業サイクル数にわたってポンピングした後に前記エンジンの動作を前記第二の動作モードに遷移させるようにさらに構成され、
前記第二の動作モードはエンジンアイドルモードであることを特徴とするコントローラ。
【請求項39】
請求項27乃至38の何れか1項に記載のコントローラにおいて、前記判断された作業サイクル数は1~12作業サイクルの範囲であることを特徴とするコントローラ。
【請求項40】
請求項27乃至39の何れか1項に記載のコントローラにおいて、前記吸気マニホールド内の前記空気圧は、0.1~0.2秒間の前記ポンピングにより前記MAP閾値まで低下させられることを特徴とするコントローラ。
【請求項41】
請求項27乃至40の何れか1項に記載のコントローラにおいて、前記閾値MAPは0.3~0.5バールの範囲内であることを特徴とするコントローラ。
【請求項42】
請求項27乃至41の何れか1項に記載のコントローラにおいて、前記確認されたポンピング作業サイクル数の実行中に、前記エンジン内に空気がポンピングされない非活性化作業サイクルの実行が点在することを特徴とするコントローラ。
【請求項43】
クランク軸、吸気マニホールド及びエンジンの複数の作業室を有する車両を作動する方法において、前記エンジンの動作中、
無エンジントルク要求に応じて前記作業室のすべてを非活性化し、前記作業室の何れも点火せず、前記クランク軸が回転する際に前記作業室内に空気がポンピングされないようにする工程と、
前記クランク軸の回転速度を測定する工程と、
前記測定されたクランク軸の回転速度がクランク軸回転速度閾値未満まで低下したときに吸気マニホールド絶対圧力(MAP)を測定する工程と、
前記測定されたMAPを閾値MAP未満に低下させるために必要な空気ポンピング作業サイクル数を確認する工程と、
何れかの作業室を点火する前に、前記確認された作業サイクル数にわたり前記エンジン内に空気をポンピングする工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項43に記載の方法において、前記閾値MAPは、少なくとも一部に、何れかの作業室に点火すると前記エンジンが容認可能なNVH特性を有することに基づくことを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項43又は44に記載の方法において、前記確認された空気ポンピング作業サイクル数は、前記測定されたMAPが前記閾値MAPより低い場合にゼロであることを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項43乃至45の何れか1項に記載の方法において、前記確認された空気ポンピング作業サイクル数は0~12の間で変化することを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項43乃至46の何れか1項に記載の方法において、エンジンを、前記確認されたポンピング作業サイクル数にわたり前記エンジン内へと空気をポンピングした後にエンジンアイドル状態にする工程をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項43乃至46の何れか1項に記載の方法において、前記確認されたポンピング作業サイクル数にわたり前記エンジン内に空気をポンピングした後に作業室を点火する工程をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項49】
車両内のエンジンの動作を制御するように構成されたコントローラにおいて、前記コントローラは、
気筒カットオフモードで前記エンジンのすべての作業室を非活性化して、前記作業室の何れも点火されないように、そして前記作業室を通じて吸気マニホールドから前記車両の排気系へと空気がポンピングされないようにし、
前記コントローラへの入力に応じて、前記エンジンの前記動作が前記気筒カットオフモードから第二の動作モードへと遷移される時期を判断し、
前記エンジンに関連付けられる吸気マニホールド内の吸気マニホールド絶対圧力(MAP)を測定し、
エンジン速度を測定し、
前記測定されたMAP及びエンジン速度に基づいて、前記MAPを閾値MAPより低くポンプダウンするのに必要な時間を判断し、
前記エンジンを、空気を前記吸気マニホールドから前記排気系へと前記エンジンの前記作業室の1つ又は複数を通じて前記判断された時間にわたりポンピングするように作動し、
前記判断された時間にわたる前記空気の前記ポンピングの後に前記エンジンを前記第二の動作モードで作動する
ように構成されることを特徴とするコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年5月2日出願の米国特許出願第15/584,686号(TULAP048X1)と2017年12月19日出願の米国特許出願第15/847,481号(TULAP048X2)の優先権を主張するものであり、その両方をあらゆる目的のために参照によって本願に援用する。
【0002】
本発明は一般的には、内燃エンジンの動作中の減速気筒カットオフを支援するための制御戦略に関する。
【背景技術】
【0003】
燃料節約はエンジン設計における主要考慮事柄である。自動車エンジンにおいて頻繁に使用される1つの燃料節約技術は減速燃料カットオフ(DFCO)と呼ばれる(時に減速燃料シャットオフ:DFSOと呼ばれる)。この動作モードは通常、トルク要求が存在しない(例えば加速ペダルが押されていない)エンジン/車両の減速中に使用される。DFCO中、燃料は気筒内に注入されなく、これにより燃料節約の改善を提供する。
【0004】
減速燃料カットオフは燃料効率を改善するがいくつかの制限を有する。最も顕著には、燃料は気筒内に注入されないが、吸気及び排気弁が依然として動作しており、これにより気筒内に空気をポンピングする。気筒内に空気をポンピングすることはいくつかの潜在的欠点を有する。例えば、ほとんどの自動車エンジンは、大量の未燃焼空気を扱うには適切でない排出物制御システム(例えば触媒コンバータ)を有する。したがって、長期間に渡る減速燃料カットオフモードの動作は許容不能な排出レベルを生じ得る。したがって、DFCOモードでの動作は通常、長期間に渡っては許容されなく、しばしば望ましくない排出特性を伴う。加えて、気筒内に空気をポンピングするための作業が必要とされ、燃料節約を制限する。
【0005】
原理的に、DFCOに伴う燃料節約は、燃料供給を単にカットオフするのではなくむしろ燃料が供給されない場合に気筒内に空気がポンピングされないように気筒を非活性化することによりさらに改善され得る。この気筒非活性化手法はDFCOよりむしろ減速気筒カットオフ(DCCO)と呼ばれ得る。減速気筒カットオフは燃料節約と排出特性の両方の改善を提供する。燃料節約改善は、気筒内に空気をポンピングすることによる損失の低減により部分的に与えられる。燃料節約は、排気系触媒の酸素飽和がそれほど問題にならないので、DFCOモードより長い期間の間DCCOモードで動作することによりさらに改善される。排気改善は、DCCO中に大量の空気が気筒を通って排気系内に注入されないことによる。
【0006】
減速気筒カットオフは燃料節約及び排出特性の著しい改善の可能性を提供するが、その商業的採用を妨げてきた多くの挑戦的課題を含む。実際、本出願人らは商用車両用途で使用されているDCCOを知らない。したがって、減速気筒カットオフの使用を容易にする改善されたエンジン制御戦略が望まれるであろう。本出願は、減速気筒カットオフの使用を容易にする技術及び制御戦略について述べる。
【発明の概要】
【0007】
内燃エンジンと電気モータ/発電機を有するハイブリッド車両において、減速気筒カットオフ状態へ及びその逆にエンジンを遷移させる方法について説明する。ハイブリッド車両は、エンジンとモータが直接連結されて、そのトルク出力が車両を駆動するための動力を独立して提供できないように構成され得る。一態様では、無トルク要求に応じてエンジンの作業室のすべてが非活性化され、何れの作業室も点火されず、クランク軸が回転する際に空気が作業室内にポンピングされない。作業室のすべてが非活性化されたことに続いて、エンジンは、車両の駆動トレインから切り離されて、車両の運動とクランク軸の回転が機械的に連結されなくなる。すると、クランク軸回転速度をシフト速度より低くすることができる。いくつかの実施形態では、クランク軸の回転を止めることができ、その一方で車両は動き続ける。他の実施形態では、モータ/発電機はクランク軸の回転をある所望回転速度、例えばエンジンアイドル速度又はエンジン点火速度等に制御し得る。
【0008】
他の態様では、エンジンはトルク要求に応じて始動する。エンジンが止まると、エンジンの作業室のいくつか又は全部は、電気モータ/発電機がトルクを供給してエンジンを起動するときに非活性化される。クランク軸の回転速度がエンジン点火速度と等しくなるか、それを超えると、燃料供給と点火が始まる。いくつかの態様では、エンジンへの空気導入のためのエアリザーバを提供する吸気マニホールドは、作業室の何れかに燃料供給する前にポンプダウンし、そのため、その圧力が下がる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明とその利点は、以下の添付図面と併せて取り込まれた以下の説明を参照することにより最も良く理解され得る。
【0010】
図1図1は、本発明の非排他的実施形態に従って気筒カットオフを実現する方法を示すフローチャートである。
図2図2は、DCCOモードから動作モードへ遷移する非排他的方法を示すフローチャートである。
図3図3は、DCCOモードからアイドルモードへ遷移する非排他的方法を示すフローチャートである。
図4図4は、スキップ点火制御を取り込む本発明の非排他的実施形態と併せて使用するのに好適なスキップ点火コントローラ及びエンジンコントローラの機能ブロック図である。
図5図5は、パワートレインの代表的な概略レイアウトである。
図6図6は、DCCOモードへの及びその逆への遷移の代表的なタイミング線図である。
図7図7は、スキップ点火制御を取り込む本発明による他の非排他的実施形態と併せて使用するのに好適なスキップ点火コントローラ及びエンジンコントローラの機能ブロック図である。
図8図8は、本発明の非排他的な例に従って異なる吸気マニホールド圧力弁のための多数のポンピング作業サイクルを提供する参照テーブルである。
図9図9A-9Dは、本発明の非排他的実施形態に従うDCCOへのトルク生成からアイドリングへの遷移中の各種のエンジンパラメータの変化を示す。
【0011】
添付図面では、同じ構造要素を示すために同じ参照符号が時に使用される。添付図面内の描写は図解的であり原寸に比例していないということも理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
内燃エンジンを作動中に減速気筒カットオフを支援するための多くの制御戦略について説明する。
【0013】
背景技術の章で暗示したように、減速気筒カットオフを実施することに伴ういくつかの挑戦的課題が存在する。1つのこのような挑戦的課題は吸気マニホールド圧力に関連する。特に、気筒のすべてが非活性化されると、いかなる空気も吸気マニホールドから引き出されない。同時に、スロットル及び吸気システム周囲の漏洩がマニホールドを大気圧方向へ満ちさせることになる。したがって、気筒が再係合されると、望ましくないNVH(騒音、振動及びハーシュネス)特性を生じ得る所望より大きなトルクが各気筒点火により供給され得る。NVH影響に対処する1つの可能なやり方は、NVH懸念を軽減するのに十分にエンジン出力を低下させるやり方で発火を過渡的に遅らせることである。この手法はうまく働き得るが、発火遅れが利用される気筒点火機会中に燃料を浪費する欠点を有する。
【0014】
一態様では、本出願人は、DCCO(気筒カットオフ)モードから動作モードへの遷移中の過渡的NVH問題を軽減するのを助け得る別の手法を提案する。具体的には、遷移はDCCO(気筒カットオフ)モードから動作モードへなされるので、いくつか又はすべての気筒は、燃料を供給され点火される前に空気をポンピングするために短期間活性化される。気筒内に空気をポンピングすることは、標的動作が開始される前にマニホールド圧力を所望レベルまでを引き下げるために使用され得る。これは、気筒点火モードへ遷移する前にDCCO(気筒カットオフ)からDFCO(燃料カットオフ)モードへ遷移することと考えられ得る。点火を再開する前にマニホールド圧力を下げることは、発火遅れなどのより多くの無駄な技術を利用する必要性を低減する又は時には除去さえする一方で、遷移に伴うNVH特性を改善するのを助け得る。
【0015】
次に図1のフローチャートを参照して、DCCOを実施する方法について説明する。当初、エンジンの動作中に、気筒カットオフがボックス110、112により表されるように現在の動作条件に基づき適切であるとエンジンコントローラ(例えばパワートレイン制御モジュール(PCM)、エンジン制御ユニット(ECU)など)が判断する。気筒カットオフが適切であるという判断に至る一般的シナリオは、いつ運転手が加速ペダルを解放する(時に加速器「チップアウト」と呼ばれる)かであり、これは運転手が速度を落としたい場合に頻繁に発生する(この使用ケースが語句「減速」気筒カットオフDCCOの使用に至った)。減速は気筒カットオフモードに入るための最も一般的なトリガの1つである傾向があるが、気筒カットオフ(DCCOと呼ばれる)は、様々な他の状況、例えば(a)車両が加速しているか減速しているかにかかわらず下り坂を走行している間に加速ペダルが解放される場合、(b)正味エンジントルクを過渡的に低減することが望ましいかもしれない変速機シフト事象又は他の過渡的事象中などにおいても適切であり得るということを理解すべきである。通常、エンジン制御設計者は、DCCOが適切である又は適切でないと考えられる状況を定義する任意数の規則を規定し得る。
【0016】
DCCOが適切であるほとんどのシナリオは車両を運転するためにエンジントルクが必要でない状況に対応する。したがって、図1のフローチャートはいかなるエンジントルクも必要とされないという初期判断がなされる工程110で始まる。工程112において、いかなるトルクも必要とされない場合、DCCOモードに入るのに動作条件が好適かどうかを論理が判断する。
【0017】
DCCOモードに入ることが望ましくないかもしれない多くの無エンジントルク動作条件が存在し得るということを理解すべきである。例えば、ほとんどの非ハイブリッドエンジンでは、車両が運転されている間にクランク軸をある最小速度で(例えばアイドリング速度で)回転するように維持することが望ましい。したがって、エンジン動作規則は、「DCCOモードはクランク軸が指定DCCOエントリエンジン速度閾値を越えた速度で回っている場合だけ入られることになり、これによりエンジンがアイドルエンジン速度で又はその近傍で動作している場合のDCCOモードへのエントリを防止する」ということを規定し得る。同様に、多くの用途では、クランク軸を駆動系から完全に切り離すことは可能ではないかもしれない。したがって、エンジン動作規則は、「DCCOモードは車両が停止される又はゆっくり移動している(例えば、ギヤ又は他の動作条件に応じて変化し得るDCCOエントリ閾値車速未満の速度で走行する)場合には入られ得ない」ということを規定し得る。別の例では、運転手がブレーキをかけている場合及び/又はローギヤで運転している場合がそうであり得るようにDCCOはエンジンブレーキが望まれる場合は適切でないかもしれない。さらに別の例では、DCCOは、いくつかの診断試験が行われている間は不適切かもしれない。DCCO動作はまた、いくつかのタイプのトラクションコントロール事象中などでは望ましくない(又は特に望ましい)かもしれない。これらはいくつかの例にすぎないということとDCCOが適切又は不適切であると考えられ得る多種多様の状況が存在するということとを理解すべきである。DCCO動作が適切である又は適切でない場合を定義する実際の規則は実施形態間で広く変化し得、エンジン制御設計者の完全に自由裁量内にある。
【0018】
このフローチャートでは、無エンジントルク判断とDCCOエントリ判断は別個の工程であるとして示されている。しかし、これらの判断が別個である必要性は無いということを理解すべきである。むしろ、任意特定時刻に必要とされるトルクの量はDCCO動作が適切であると考えられる場合を判断する規則の単なる一部であり得る。
【0019】
DCCOモードに入ることが適切であると考えられれば、気筒のすべてはボックス114により表されるように非活性化される。又は、DCCOエンジン動作が現在適切でなければ、ボックス116により表されるように、DCCOモードには入られなく、エンジンは従来のやり方で制御され得る。
【0020】
DCCOモードに入ると、気筒が非活性化され得るいくつかのやり方が存在する。いくつかの状況では、気筒のそれぞれは、DCCOモードに入る判断がなされた後の次の制御可能作業サイクル中に非活性化される(すなわち、直ちに有効になる)。他の状況では、いくつかの作業サイクルが点火され他の作業サイクルはスキップされるスキップ点火手法を使用することにより点火比をDCCOまでランプダウンさせることが望ましいかもしれない。スキップ点火ランプダウン手法は、エンジンがスキップ点火モードからDCCOモードへ遷移するときにうまく働く。しかし、スキップ点火ランプダウン手法はまた、エンジンの「通常」全気筒動作からDCCOへ、又は低減排気量が使用される(例えば4~8気筒を使用して動作する場合などの)可変排気量モードからDCCOへ遷移することを容易にするために使用され得るということを理解すべきである。
【0021】
漸進的遷移が利用される場合、点火比は閾値点火比(この時点で気筒のすべてが非活性化され得る)に達するまで徐々に低下され得る。一例として、0.12~0.4の範囲内の点火比閾値はほとんどのランプ型用途にうまく働くと考えられる。漸進的低下中、スキップ作業サイクルに関連する作業室はスキップ作業サイクル中に好適に非活性化される(これは必要要件ではないが)。DCCOモードエントリ判断がなされたときにエンジンが点火比閾値未満の点火比で、スキップ点火モードで動作していれば、気筒のすべては次のそれぞれの作業サイクル中に非活性化され得る。
【0022】
駆動系の変速機又は他の部分からクランク軸を切り離すことが望ましいかもしれない場合がある。したがって、DCCOモードに入ると、パワートレインコントローラは、ボックス118により表されるように、車速とエンジン速度との間の結合を低減するために、トルクコンバータクラッチ(TCC)又は他のクラッチ又は駆動系スリップ制御機構にクランク軸を変速機から少なくとも部分的に切り離すように任意選択的に指示し得る。可能である切り離しの程度は、パワートレイン内に取り込まれる特定の駆動系スリップ制御機構に応じて変化する傾向がある。駆動系からエンジンを機械的に切り離すことが望ましいかもしれない多くの動作条件がある。例えば、切り離しは車速が零であるがエンジン速度はそうではない場合に望ましい。減速中(特にブレーキが使用されている場合)もまた、エンジンを駆動系から切り離すことが望ましいかもしれない。変速機シフトなどの他の状況もまた、駆動系からエンジンを切り離すことからしばしば恩恵を受ける。
【0023】
DCCO(気筒カットオフ)の特徴は、エンジンが、ポンピング損失の低下のおかげでDFCO(燃料カットオフ)中に有するより少ない抵抗を有するということである。実際、この違いは極めて著しく、エンジンが変速機から実質的に係合解除される場合に容易に観測され得る。許容されれば、DFCOポンピング損失は多くのエンジンに1秒又は2秒程度の期間内に減速し停止させ得る一方、同じエンジンはDCCO(気筒カットオフ)下で減速して停止するには5~10倍の時間がかかり得る。DFCOはエンジンを極めて迅速に拘束するので、DFCO中は駆動系を係合状態のままにすることが一般的であり、このことは、エンジンが車両と共に減速する傾向があるということと、DFCOに関連するポンピング損失がエンジンブレーキに寄与するということとを意味する。対照的に、DCCOが使用される場合、エンジンは、駆動系部品(例えばトルクコンバータクラッチ(TCC)、二段クラッチ変速機など)により許容される程度に変速機から切り離され得る。実際、これは、DCCOがいくつかの動作条件におけるDFCOよりはるかに長い期間の間使用され得るようにする。
【0024】
エンジンは、DCCOモードから出る時間であるとECUが判断するまでDCCOモードのままである。DCCOモードを出るための2つの最も一般的なトリガは、トルク要求が受信されたとき又はアイドル動作が適切であると考えられる速度までエンジンが減速したときの何れかとなる傾向がある。エンジン速度のさらなる低下は望ましくないエンジン失速を生じ得るので、エンジンは失速を避けるようにアイドル動作に置かれる。しばしば、トルク要求は加速ペダルが押下されること(時に本明細書では加速器チップインと呼ぶ)により引き起こされる。しかし、加速ペダルチップインと無関係なトルクを必要とする様々な他のシナリオが存在し得る。例えば、これらのタイプのシナリオはエアコンなどのアクセサリがトルクを必要とする場合に発生し得る。多くの車両エアコンは車両パワートレインへのエアコンクラッチの係合により活性化され、追加トルク負荷をエンジンに課す。
【0025】
一実施形態では、アクセサリトルク負荷の要求がDCCO動作モード中に受信されれば、この要求はDCCOモード動作が完了するまで拒絶される。DCCO中にエアコンなどのアクセサリの係合を禁止することの重要な利点は、エンジンへのトルク要求がDCCO期間中零であり続けるということである。エアコンは、エンジンがもはやDCCOモードでなくなると直ちに、車両乗員快適性への影響無しに係合され得る。これにより、エンジンをDCCOモードから時期尚早にシフトさせることなくエンジン速度を保持する。連続的DCCO動作を許容することの重要な利点は燃料節約が改善され得るということである。
【0026】
別の実施形態では、エアコン係合などのアクセサリトルク負荷の要求がDCCOモードを終了させ得る。この実施形態では、エアコンクラッチの係合などエンジン負荷の実際の増加は、本明細書で説明する方法を使用することにより、DCCOから円滑に遷移する時間を見込むために若干遅延され得る。エアコン係合のエンジンパラメータを予め適切に調整することにより、軸トルクの望ましくない変化が回避され得る。又は、いくつかの実施形態では、車両トルクコンバータは、補助負荷の追加を予想して又はそれと同期してロックされ得る。この場合、エンジン速度がDCCOモード中維持されるように、補助負荷に給電するのを車両運動量が支援することになる。
【0027】
別の実施形態では、アクセサリトルク負荷の要求は、固定期間(例えば10又は20秒)後にDCCOモードを終了するタイマを設定することになる。ほとんどのDCCOモード動作期間は10又は20秒未満であるので、この実施形態は通常、DCCO動作が時期尚早な終了無しに続けられ得るようにする。この実施形態は、車両エアコンが長期間オフのままであれば車両乗員が不快になり得る長い下り坂を下る場合などで有用かもしれない。
【0028】
トルク増加要求が受信されると(ボックス120により示すように)、エンジンは、ボックス122により表されるように所望トルクを供給する動作モードへ遷移する。又は、エンジン速度がDCCO閾値未満に減速すれば、又はエンジンがそうでなければアイドルモードに入るようにトリガされれば(ボックス125により示すように)、エンジンはボックス127により表されるようにアイドルモードへ遷移する。
【0029】
上述のように、気筒のすべてが非活性化されると、いかなる空気も吸気マニホールドから引き出されない。同時に、スロットル及び吸気システム周囲の漏洩がマニホールドを大気圧方向へ満たすようにする。したがって、気筒が再係合されると、望ましくないNVH(騒音、振動及びハーシュネス)特性を生じ得る所望より大きなトルクが各気筒点火により提供され得る。これは、比較的小さな動力が必要とされるアイドルモード又は他のモードへ遷移する際の特別な懸念である。したがって、例えば、DCCOモードからアイドルモードへ遷移する際、アイドル動作を開始するのにより好ましい標的圧力までマニホールド圧力を下げることがしばしば望ましい。これは、一組の作業サイクル中に吸気及び排気弁を開き、これにより吸気マニホールドから空気を吸い込み、このような空気を未燃焼排気により出させることにより達成され得る。これは、DFCO動作中に通常発生するように燃料を気筒内に注入すること無く気筒内に空気をポンピングすることを企図するので、時に本明細書ではDFCO作業状態と呼ばれる。
【0030】
アイドル動作を開始するための実際の標的空気圧は、設計目標と任意の特定のエンジンの必要性とに従って変化することになる。一例として、約0.3~0.4バールの範囲内の標的マニホールド圧力が多くの用途においてアイドル状態へ遷移するのに適切である。
【0031】
マニホールド圧力を所与の標的圧力まで下げるために必要とされるDFCO作業サイクルの数は、初期圧力及び標的マニホールド圧力、気筒に対する吸気マニホールドの寸法、及びスロットル通過空気漏洩率を含む様々な要因に応じ変わることになる。マニホールド及び気筒サイズは知られおり、スロットルを通り抜ける空気漏洩は容易に推定され得、現在の吸気マニホールド圧力は吸気マニホールド圧力センサから取得され得る。したがって、マニホールド圧力を所与の標的圧力まで下げるのに必要とされる作業サイクルの数はいつでも容易に判断され得る。次に、エンジンコントローラは、適切な数の作業サイクルのための空気をポンピングするために気筒を活性化し得る。
【0032】
アイドル以外の動作条件への遷移は、標的マニホールド圧力がトルク要求と恐らく様々な現在の動作条件(例えばエンジン速度、ギヤなど)とに基づき異なり得るということを除きほとんど同じやり方で処理され得る。より高いマニホールド圧力が望まれる場合、より小さいDFCOポンピングが所望マニホールド圧力を達成するために必要とされる。
【0033】
マニホールド圧力を所望レベルまでポンプダウンするのに適切な作業サイクルの実際の数は変化するが、典型的スケールは1~4エンジンサイクル、より好適には1~2エンジンサイクル程度である(4ストロークエンジンでは、各エンジンサイクルがクランク軸の2回転を構成する)。したがって、マニホールド圧力低下は通常、エンジンがアイドル速度に近づいている場合ですら極めて迅速に達成され得る(例えば0.1又は0.2秒内に)。このような応答は、多くの動作状況において極めて適切である。
【0034】
トルク要求に対するより速い応答が望まれる場合があり得、純粋なDFCOを使用してマニホールド圧力が所望レベルまで下げられ得る前にトルクを供給し始めることが望ましいかもしれない。より速い応答が提供され得るいくつかのやり方がある。例えば、トルクが最初に要求されると、エンジンは当初、スキップされた気筒を非活性化するよりむしろスキップ作業サイクル中に気筒内に空気がポンピングされるスキップ点火モードで作動され得る。他の場合では、いくつかの気筒が点火しており、いくつかの気筒が非活性化され、いくつかの気筒が空気をポンピングする過渡的モードが使用され得る。これは、より速く点火し始めることにより迅速応答を提供する利点と、すべての非点火気筒により同時にポンピングしないことにより触媒へポンピングされる酸素の全体的レベルを下げる恩恵とを有する。点火/非活性化/ポンピングするための実際の判断はトルク要求のレベル及び緊急性に依存する。
【0035】
スキップ点火動作を使用することにより初期トルク要求を満たすことは、遷移の初期トルク衝撃及び当該ハーシュネスを低下する傾向がある。スキップ作業サイクル中の空気のポンピングはマニホールド圧力を迅速に下げるのを助ける。又は、いくぶん同様な恩恵は、固定された一組の気筒を活性化及び点火する一方で第2の組の気筒内へ空気をポンピングすること(第2の組の気筒をDFCOモードで動作させることと考えられ得る)により得られ得る。
【0036】
所望であれば、点火された気筒のトルク出力は発火遅れ又は他の従来のトルク低減技術を使用することにより要望通りさらに軽減され得る。
【0037】
DCCOモード動作は、駆動系へトルクを供給するために内燃エンジンと電気モータの両方を使用するハイブリッド車両に使用され得るということを理解すべきである。DCCO動作モードの使用は、電気モータを給電し得る電池を充電するためにより大きなトルクが捧げられ得るようにする。電池からのエネルギーはまた、エアコンなどのアクセサリを駆動するために使用され得るので、エアコンの動作はDCCOモード動作に影響を与えない。DCCOモード動作はまた、始動/停止(すなわち運転サイクル中にエンジンが自動的にターンオフされる)能力を有する車両に使用され得る。後者の場合、DCCOモード動作は、連続的エンジン動作を維持する必要性がもはや無いのでエンジンアイドル又は低エンジン速度に維持され得る。
【0038】
図5は、本発明の実施形態によるパワートレインの概略的レイアウトを示す。DCCO機能付き内燃エンジン10は、クラッチ、デュアルクラッチ、又はトルクコンバータ等の係合解除装置513に接続されたクランク軸511にトルクを加えることができる。係合解除装置513により、エンジン510と変速機入力515との間の滑りを制御できる。変速機入力515は、変速機512に動力を供給し、これは駆動軸516への変速機入力515の相対的回転速度を変化させる。変速機512は、多数の固定ギヤを有していてもよく、又は連続可変変速機であってもよい。駆動軸516自体は、車両の選択された車輪520を駆動する。図5では図示されないが、差動装置がパワートレインに組み込まれて、車輪間で異なる回転速度を可能にし得る。電気モータ/発電機514もまた、クランク軸に連結されて、電力を生成する(それによってクランク軸511からトルクを有効に減らす)か、又はエンジンのトルクを補足(クランク軸511へのトルクを追加する)することができる。モータ/発電機514は、ベルト、チェーン、ギヤ、又は他の何れかの好適な手段を使ってクランク軸511に機械的に連結できる。いくつかの実施形態では、モータ/発電機はクランク軸と統合して、エンジンとモータ/発電機のトルクの両方を共通の軸に加え、及びそこから取り除くようにし得る。パワートレインは、個人用輸送に好適なハイブリッド車両に組み込まれてよいが、動力を必要とする他の用途に組み込まれてもよい。ハイブリッド車両は、停止/始動能力を有し得、エンジンはトルク要求がないと自動的に停止し、エンジントルクが再び必要になると自動的に再始動する。
【0039】
エンジンが余剰なトルクを生成すると、余剰なトルクは電気モータ/発電機514に発電させ、それがパワーエレクトロニクス526によりコンディショニングされた後にエネルギー貯蔵モジュール522に貯蔵される。パワーエレクトロニクス526は、エネルギー貯蔵モジュール522の出力電圧をモータ/発電機514から動力を送出し/受け取るのに適した電圧に変換するための回路を含んでいてもよい。この回路は、各種の電気システム構成要素の電圧をマッチさせるためのDC-DCコンバータを含み得る。エネルギー貯蔵モジュール522は、バッテリ、コンデンサ、又はバッテリとコンデンサの両方の組合せを含み得る。コンデンサを使って余剰エネルギーを貯蔵することは、車両の燃費全体の大きな改善につながり、これは、それによって従来のバッテリの充電と放電に伴うエネルギー損失がほとんど回避されるからである。コンデンサのエネルギー貯蔵は、比較的頻繁な貯蔵及び呼出しサイクルが想定される場合に特に有利である。
【0040】
モータ/発電機514、パワーエレクトロニクス526、及びエネルギー貯蔵モジュール522は、車両の動きに関連付けられる運動エネルギーを後で使用するために貯蔵できる運動エネルギー回生システム(KERS)の一部である。その他の種類のKERSは、フライホイール又は圧縮性流体を使って車両の動きに関連付けられる運動エネルギーを貯蔵し、解放し得る。エンジンがシャットダウンされる毎回のDCCO事象、すなわち気筒が非活性化されるが、エンジンは必ずしも停止しないとき、及び車両が減速中であるときは、余剰の運動エネルギーをエネルギー貯蔵モジュール522に貯蔵し得る機会である。
【0041】
図5に示されるパワートレインは、P型ハイブリッド構成と呼び得、モータ/発電機は、エンジンの、係合解除装置及び変速機の反対側でクランク軸に接続される。このタイプの構成では、モータ/発電機とエンジンは一緒に回転でき、機械的にベルトに接続されているが、係合解除装置によりホイール及び駆動トレインから機械的に隔離されていることが多い。モータは、エンジンクランク軸を回転させなければ車両を駆動するための動力を供給できない。Pハイブリッド構成は、フロントエンド補助アクセサリドライブ(FEAD)の一部として実装され得、これによりハイブリッド機能を車両に低コストで統合できる。モータ/発電機がエンジンの、変速機と同じ側に、ただし係合解除装置の前でクランク軸に接続されるPハイブリッド構成は、モータ/発電機とエンジンが駆動トレインとは独立して一緒に回転できるという特徴を有する。クラッチ又は他の何れかの係合解除機構がモータ/発電機とエンジンとの間にあって、これらが常に一緒に回転している必要がなくなるようにし得るということも理解すべきである。P及びPハイブリッド構成において、電気モータ/発電機とエンジンは、駆動トレインと機械的に独立して係合しえない。P及びPハイブリッド構成は、エンジンとモータを直接かつ独立してドライブトレインに連結できるその他のハイブリッド構成と対照的である。本発明はあらゆるタイプのハイブリッド車両に適用可能であり得るが、P及びP構成を用いるハイブリッド車に特に適用可能である。
【0042】
図6は、始動/停止能力を有するハイブリッド車両が完全に停止するDCCO事象中の各種のエンジンパラメータと時間の代表的な行動の簡略的概略図を示す。当初、車両は動力源としてエンジンのみを使って動作していると仮定する。車両は高速で動作し、その変速機は6段目のギヤに入っている。DCCO事象は時間tから始まり、その時点で無パワートレイントルク要求に応じて燃料消費がカットオフされる。エンジンとモータ/発電機の何れもトルクを生じさせないため、摩擦力損失により車両とエンジンの速度はどちらも低下する。図6に示される実施形態では、係合解除装置は最小スリップ状態に保持され、エンジン速度と車両速度の両方が一緒に低下する。モータ/発電機また、減速期間中の車両及びパワートレインのモーメントを貯蔵し得、これはモータ/発電機のトルク曲線がtでマイナスになることにより示される。車両減速率は、クランク軸から引き出されるトルクのレベルを変えることによって制御できる。減速率は、より多くのトルクが取り除かれると高くなるが、これは、車両のより多くの運動エネルギーが貯蔵されるエネルギーへと変換されているからである。貯蔵されるエネルギーの割合は、要求される減速率と共に変化し得、減速率が増大すると、エネルギー貯蔵モジュールの総貯蔵能力又はモータ/発電機及びパワーエレクトロニクスのパワーハンドリング能力の何れかによって設定される、ある最大値までより多くのエネルギーが貯蔵される。より高い減速率が望まれる場合はブレーキを使用できる。
【0043】
車両及びエンジン速度が低下すると、変速機はシフトダウンして、エンジン速度を、その要求が行われた場合にエンジントルクを生成するのに適した速度であるω又はそれ以上に保持する。このシフトエンジン速度は1000rpmの範囲内であり得るが、正確な速度はエンジンの設計の詳細に応じてそれより高くても低くてもよい。係合解除装置は、これらのギヤシフト事象中に瞬間的に係合解除して、スリップできるようにし得る。時間tで、エンジン速度はωに到達し、変速機は3段目のギヤに入っている。この時点で、係合解除装置はエンジンクランク軸を変速機入力から切断し、それによってエンジンとモータ/発電機の回転は車両の運動に連結されなくなる。車両減速率は、エンジンとモータ/発電機の摩擦損失が車両を低下させていないため、低下する。
【0044】
時間tで、エンジン速度は、摩擦力損失とモータ/発電機によるクランク軸トルクの除去により、ゼロに低下する。時間tで、モータ/発電機がクランク軸から引き出すトルクもゼロでなければならず、それはクランク軸がもう動いていないからである。車両は動き続け、最終的に時間tで休止する。時間tとtとの間で、エンジンはオフとなり、車両は停止する。係合解除装置は高スリップ状態にあるように示されているが、車両とエンジンは同じ速度、すなわちゼロであるため、低スリップ状態に移行し得る。
【0045】
時間tで、トルク要求が再びなされる。エンジンは停止しているため、モータ/発電機はエンジンを再始動させて、トルクの供給を開始できるようにしなければならない。気筒は非活性化しているかもしれないため、クランク軸が回転し始めるときに空気がエンジンの中にポンピングされない。係合解除装置は高スリップ状態であるべきであり、すると、エンジンは車両を移動させるために余剰トルクを必要とせずに始動できる。空気のポンピングが行われないと、有利な点として、エンジン始動時のポンピング損失がほとんど、又はまったくない。モータ/発電機はクランク軸に正のトルクを供給し、エンジン速度をそのエンジン点火速度ωignに到達するまで上昇させる。この時点tで、エンジンはそれが安定した燃焼を保持できるのに十分な速さで回転している。エンジン点火速度は300rpm前後であり得る。より高いエンジン点火速度を利用して、NVHを下げてもよい。エンジン燃焼が開始すると、モータ/発電機が供給するトルクはゼロに戻り得る。
【0046】
この時点tで、燃料が再びエンジンに注入されて、エンジン速度は燃料燃焼により放出されるエネルギーによって高くなる。エンジンがアイドル速度ωidleに到達した時又はその付近で発生する時間tで、係合解除装置はクランク軸を変速機入力に機械的に連結し始め、車両の運動を開始させ得る。車両が移動を始めると、電気モータはトルクを駆動トレインに供給し始め、車両を適当な速度に向かって推進させ、その後、係合解除装置513が再び係合する(このモードは、エンジンとモータ速度が本来的にマッチしているP及びPハイブリッド構成には当てはまらないかもしれない点に留意されたい)。車両の変速機は1段目のギヤにあり得、ここではホイールの回転とエンジンの回転の比が最も低い。エンジンと車両速度が速くなると、変速機は1回又は複数回のギヤのアップシフトを行って、エンジン速度を最適な動作領域内に保持し得る。図6に示される例では、新たな定常状態車両速度に時間tで到達し、エンジンは2段目のギヤに入っている。燃料燃焼はここでは、tより前の初期状態時より低いが、それは車両速度がより低いからである。
【0047】
DCCO中、吸気マニホールド絶対圧力(MAP)は実質的に大気圧まで上昇するが、これは、空気がマニホールドから、それをエンジン内にポンピングすることによって除去されないからである。それゆえ、tでエンジンがその再始動を開始すると、MAPは大気圧又はそれに近い。従来のエンジン制御では、吸気及び排気弁がtとtとの間の期間中に開閉する。このポンピング空気により、触媒コンバータが冷却されるだけでなく、コンバータ内の酸化/還元バランスが変化する。これらの問題を回避するために、吸気及び/又は排気弁は、モータ/発電機がエンジンをエンジン点火速度ωignまで回転させているtとtとの間の期間中に閉じたままとし得る。このようにして、燃焼されない空気がエンジン内にポンピングされ、再始動中に触媒コンバータの酸化/還元バランスは変化しない。
【0048】
再始動中のエンジントルクの送出をさらに円滑にするために、エンジンは、その全体をあらゆる目的のために参照によって本願に援用する米国特許第9,387,849号に記載されているスキップ点火方式で動作して車両を再始動させ得る。同特許は、吸気マニホールド圧力が大気圧又はそれに近いときにエンジンを再始動させることに伴うトルクバンプの回避方法について論じている。エンジン再始動は、車両及びエンジンが完全に停止した状態から、又は車両が依然として動いていてエンジンが停止している状態の何れからも行われ得る。いくつかの実施形態では、再始動中、スキップされたいくつかの気筒はそれらの弁を非活性化させていなくてよく、それによってこれらは空気をエンジンの中にポンピングし、エンジンのエアインダクションのためのエアリザーバを提供する吸気マニホールド内の圧力を低下させる。吸気マニホールドの圧力をポンピングダウンすることにより、エンジンを再始動させることによるトルクサージの可能性を低減させ得る。これには、触媒コンパータ内の酸化/還元バランスをある程度調整する必要があり得るが、触媒の調整に必要な燃料の量は通常、シリンダの非活性化又はDFCO事象がない状態で始動した後に必要となる分より少ない。モータ/発電機はまた、トルクを取り除いて、点火開始時にエンジン速度サージの可能性を軽減させうる。
【0049】
図6に示されるパラメータの相対的タイミング及び大きさについては多くの相違があると理解すべきである。例えば、車両はエンジン停止より前に停止する可能性があり、又はこれらは実質的に同時に停止する可能性もある。緩慢な減速率が望まれる場合、モータ/発電機はt~tの間の時間間隔中にエネルギーを貯蔵する必要がない。また、モータ/発電機のトルク曲線の形状は、要求された減速率に応じて変わり得る。モータ/発電機は、始動中、加速中、又は燃焼中に車両への動力の供給を助けるために使用され得る。エンジンが完全に停止するのではなく、クランク軸の回転速度が、電気モータ/発電機によりクランク軸にトルクを加えたりそこから取り除いたりすることによって制御され得る。例えば、エンジンは、比較的低速、例えばエンジン点火速度又はアイドル速度で回転を続け得る。これらの速度でのエンジンの回転を保持することにより、エンジンがトルク要求に応じて再びトルクを供給するために必要な時間が短縮され得る。図6に示される時間スケールは均一ではないかもしれないと理解すべきである。例えば、時点t~t間の時間は秒であり得るが、時点t~t間の時間は1秒又はそれ未満のオーダであり得る。
【0050】
ハイブリッド車における気筒非活性化のコンセプトは、車両の減速中のみならず、より広く応用され得る。車両を駆動するために必要な要求されたトルクがモータ/発電機の能力内であるかぎり、モータ/発電機の使用で必要なトルクのすべてを送出し得る。このような例には、前方へのクリーピング又は巡行速度維持が含まれるが、これらに限定されない。これらの場合、車両は動き続け、クランク軸は回転し続けるが、空気はエンジン内にポンピングされず、したがって触媒コンバータはエンジン動作の再開時に酸化/還元バランスの調整を必要としないかもしれない。
【0051】
DCCOモードから通常トルク送出モードへ遷移するために使用される遷移制御規則及び戦略は、トルク要求の性質とエンジン設計者により選択されるNVH/性能トレードオフとの両方に基づき広範に変わり得る。いくつかの代表的遷移戦略について図2のフローチャートを参照して以下に論述する。
【0052】
遷移戦略はトルク要求の性質に基づき著しく変わり得る。例えば、運転手が加速ペダルを強く押す(本明細書では時に「ペダルストンプ」と呼ばれる)と、即時トルク供給が最も重要であるということと、過渡的NVH懸念はそれ程の懸念ではないとみなされ得るということとが推定され得る。したがって、トルク要求がペダルストンプに応答すると、図2のボックス305及び308により表されるように、コントローラは最も早い利用可能機会に気筒のすべてを活性化し、全(又は最大利用可能)動力で気筒を直ちに作動し得る。それに加えて、電気モータからのトルクはペダルストンプに応じて加えることもできる。
【0053】
コントローラはまた、ボックス311により表されるように所望吸気マニホールド圧力を判断する。次に、所望圧力は、ボックス314により表されるように実際(現在)のマニホールド圧力と比較され得る。上述のスロットル漏洩問題のおかげで、現在のマニホールド圧力は非常にしばしば(しかし常にではなく)所望マニホールド圧力より高くなる。現在のマニホールド圧力が所望マニホールド圧力以下であれば、気筒は所望トルクを供給するために適切に活性化され得る。エンジンコントローラがスキップ点火エンジン動作を支援する場合、トルクはスキップ点火制御又は全気筒動作(ボックス317により表されるようにトルク要求の性質に基づき適切であればどちらでも)を使用することにより供給され得る。又は、現在のマニホールド圧力が所望マニホールド圧力より高けれれば、ボックス320から下る「イエス」分岐により表されるように、説明した遷移技術のうちのいくつかが採用され得る。
【0054】
上述のように、マニホールド圧力はいくつか又はすべての気筒内に空気をポンピングすることにより引き下げられ得る。NVH問題は通常、いかなる気筒も点火する前にマニホールド圧力を所望レベルまで下げることにより軽減され得る。しかし、気筒内に空気をポンピングすることによりマニホールド圧力が下げられるのを待つことは本質的に、トルク供給の遅延を導入する。ポンピング遅延の長さは、現在のエンジン速度と、現在のマニホールド圧力と所望マニホールド圧力との差異との両方に応じて変化することになる。通常、遅延は比較的短いので、多くの状況では、ボックス320から下る「イエス」分岐により表されるように1つ又は複数の気筒内に空気をポンピングすることによりマニホールド圧力が目標レベルへ下げられるまでトルク供給を遅延することが適切かもしれない。他の状況では、できるだけ早くトルク供給を開始することが望ましいかもしれない。このような状況では、エンジンは、ボックス323により表されるようにマニホールド圧力が所望レベルへ下げられるまでスキップ作業サイクル中に気筒内に空気をポンピングする一方で所望トルクを供給するためにスキップ点火モードで作動され得る。所望マニホールド圧力が達成されると(チェック326により表される)、ボックス329により表されるように、所望トルクは、全気筒動作、スキップ点火動作、又は低減排気量動作を含む任意の所望手法を使用することにより供給され得る。スキップ点火動作が所望トルクを供給するために使用される場合、気筒は、所望マニホールド圧力が達成されるとスキップ作業サイクル中に好適に非活性化される。
【0055】
「遷移中にスキップ点火動作を使用することの利点は、エンジンのトルク出力を低下するために発火遅れなどの燃料非効率的技術を必要とすることなく又はそれを使用する必要性を低減することなく所望レベルのトルクが供給され得るということである」ということは明らかである。スキップ作業サイクル中に気筒内に空気をポンピングすることは、スキップ作業サイクル中に気筒非活性化によるスキップ点火を使用することにより発生し得るマニホールド圧力をより迅速に下げる利点を有する。
【0056】
説明した空気ポンピング手法によるスキップ点火は、適切ならば、NVH問題をさらに低減するために他のトルク管理戦略と結合され得るということを理解すべきである。例えば、可変バルブリフトを容易にするエンジンでは、バルブリフトは、NVH懸念をさらに低減するためにスキップ点火/空気ポンピングと併せて修正され得る。別の例では、発火遅れもまた、トルク供給をさらに管理するために適切ならば使用され得る。したがって、空気ポンピングによるスキップ点火は、多種多様な用途において、そしてDCCO動作から遷移する際にNVH懸念を軽減するのを助ける多種多様な他のトルク管理戦略と併せて、利用され得るツールであるということは明らかである。
【0057】
スキップ点火動作について主として説明したが、「いくぶん同様な恩恵は、遷移中に第1の組の気筒が作動(点火)され第2の組の気筒は空気をポンピングする可変排気量型手法を使用することにより得られ得る」ということを理解すべきである。さらに他の実施形態では、第1の組の気筒が(遷移中に)スキップ点火モードで作動され得、一方第2の組の気筒は遷移中に空気をポンピングし得る。すなわち、スキップ点火組内の気筒は、当該組内のスキップされた気筒内への空気ポンピングの有無にかかわらず遷移中に選択的に点火され選択的にスキップされ得る。
【0058】
ボックス320へ戻ると、ボックス320からの「イエス」分岐により表されるように、トルク供給が始まる前に1つ又は複数の気筒内へ空気をポンピングすることにより吸気マニホールド圧力の空気が所望レベルまで低下され得るようにトルク供給が十分に遅延され得る時があり得る。この場合、コントローラはポンプサイクル(ボックス332では「DFCO作業サイクル」と呼ばれる)の数を判断し得る。次に、空気は、ボックス335により表されるように、判断された作業サイクルの数の間1つ又は複数の気筒内にポンピングされ、この時点で、エンジンは所望トルクを供給するために所望通りに作動され得る。
【0059】
図2のフローチャートは別個の経路としてDFCOポンピングと空気ポンピングによるスキップ点火とを示すが、他の状況では、2つの手法は様々なハイブリッド手法において一緒に(及び/又は他のトルク管理方式と併せて)使用され得るということを理解すべきである。例えば、いくつかの状況では、短期間の間(例えば1エンジンサイクルの間)すべての気筒内に空気をポンピングし、その後マニホールド圧力が所望レベルへ下げられるまで空気ポンピングモードによるスキップ点火で動作することが望ましいかもしれない。このような手法は、トルク供給が始まるまで遅延を短縮し得る一方で、空気ポンピングモードによるスキップ点火に直ちに入ることと比較していくつかのNVH影響を恐らく軽減し得る。
【0060】
当業者により理解されるように、エンジン内への大量の空気のポンピングは触媒コンバータを飽和させ、これにより潜在的排出物懸念を生じ得る。したがって、いくつかの状況では、排気物懸念が現在燃料カットオフDFCOの使用を制限するやり方と同様に、排出物懸念はDCCO動作から所望動作状態への遷移中に使用され得る空気ポンピング作業サイクルの数を制限し得る。しかし、ほぼすべての場合においてDCCOの使用はDFCOとは対照的に燃料が必要でない期間を延長しこれにより燃料効率を改善するということは明らかである。説明した空気ポンピング手法によるスキップ点火は、吸気マニホールド圧力を所望レベルまで下げるために必要とされるスキップ作業サイクルの数を低減する追加の利点を有する。これは、点火作業サイクルが通常、空気ポンピング作業サイクルとしてほぼ同じ量の空気を吸い込むためである。
【0061】
記載の実施形態のいくつかでは、コントローラは、マニホールド圧力を所望レベルまで下げるのに必要とされる空気ポンピング(及び/又は点火される)作業サイクルの数を予め判断する。これは、マニホールド充填及び縮小動力学が比較的容易に特徴付けられ得るので非常に実用的である。いくつかの実施形態では、空気ポンピング作業サイクルの適切な数、及び/又は任意の現在及び標的エンジン状態を所与とした使用に好適な空気ポンピングによるスキップ点火遷移シーケンスは、参照テーブルの使用により発見され得る。他の実施形態では、空気ポンピング作業サイクル及び/又は空気ポンピング遷移シーケンスによるスキップ点火の必要数は遷移時に動的に計算され得る。さらに他の実施形態では、所定シーケンスが、適切なDFCO遅延又は空気ポンピング遷移シーケンスによるスキップ点火を定義するために使用され得る。
【0062】
DCCOからアイドル動作へ遷移することはしばしばトルク要求の特別な場合と考えられ得る。図3は、DCCOからアイドル状態へ遷移する非排他的方法を示すフローチャートである。上に論述したように、DCCOからアイドル状態への遷移を開始し得る多種多様なトリガが存在する。1つの一般的トリガは、ボックス403により表されるようにエンジン速度がDCCO退出閾値を下回るときである。いくつかの実施形態では、ボックス406により表されるように別のトリガは車速に基づき得る。異なる実施形態では、ボックス409により表されるように様々な他のアイドルトリガも存在し得る。一般的に、ボックス411により表されるように、DCCO動作は遷移トリガに行き付くまで又はエンジンがターンオフされるまで続くことになる。
【0063】
通常、アイドル状態への遷移が命じられると、コントローラは、いかなる気筒点火も始まる前に吸気マニホールドを所望アイドルマニホールド圧力までポンプダウンする時間が有る。したがって、示された実施形態では、アイドル遷移がトリガされると、制御論理は、ボックス415により表されるようにマニホールド圧力を所望標的圧まで下げるのに必要とされる空気ポンピング作業サイクルの数を判断する。いくつかの実施形態では、現在のマニホールド圧力及び/又はエンジン速度など1つ又は2つの単純指標に基づき空気ポンピング作業サイクルの数を定義するために参照テーブルが使用され得る。次に、ボックス418により表されるように、気筒は、指定数の作業サイクルの間空気をポンピングしマニホールド圧力を所望レベルまで下げるために活性化される。その後、ボックス421により表されるように、エンジンは通常アイドル動作モードへ遷移し得る。
【0064】
他の実施形態では、デフォルトの固定数の空気ポンピング作業サイクルは、規定判定基準が満たされる限りDCCOからアイドル状態への遷移が命じられればいつでも使用され得る。
【0065】
上述のように、本出願人は内燃エンジンの燃料効率を改善するのに良く適した動的スキップ点火エンジン制御技術を開発した。一般的に、スキップ点火エンジン制御は選択点火機会中にいくつかの気筒の点火を選択的にスキップすることを企図する。したがって、例えば、特定の気筒が1点火機会中に点火され得、そして次の点火機会中にスキップされ、そして次の点火機会中に選択的にスキップ又は点火され得る。スキップ点火エンジン動作は、固定組の気筒がいくつかの低負荷動作条件中にほぼ同時に非活性化されるとともに、エンジンが同じ排気量を維持する限り非活性化状態のままである従来の可変排気量エンジン制御とは区別される。従来の可変排気量制御では、特定気筒点火のシーケンスは常に、エンジンが同じ排気量モードに留まる限りエンジンサイクル毎に全く同じとなるが、一方、スキップ点火動作中はしばしばそうはならない。例えば、8気筒可変排気量エンジンは、残りの4気筒だけを使用して動作するように気筒の半数(すなわち4気筒)を非活性化し得る。今日入手可能な市販可変排気量エンジンは通常、2つだけ又は最大3つの固定排気量モードを支援する。
【0066】
一般的に、スキップ点火エンジン動作は、スキップ点火動作が少なくともいくつかの実効排気量(同じ気筒が各エンジンサイクルに必ずしも点火及びスキップされない)を含むので、従来の可変排気量手法を使用することにより可能なものより微細な有効排気量制御を容易にする。例えば、4気筒エンジン内の2つおきの気筒を点火することは、全エンジン排気量の3分の1の実効排気量(一組の気筒を非活性化するだけでは得られない分数的排気量)を供給するだろう。
【0067】
動的スキップ点火により、点火判断は、所定点火パターンを単に使用することとは対照的に、点火機会毎ベースで行なわれ得る。一例として、代表的動的スキップ点火コントローラが米国特許第8,099,224号明細書と第9,086,020号明細書に記載されており、その両方を参照により本明細書に援用する。
【0068】
スキップ点火モードで動作する際、気筒は通常、ポンピング損失を低減するためにスキップ作業サイクル中に非活性化されるが、既に論述したように、スキップ作業サイクルが空気をポンピングし得るケースがある。したがって、動的スキップ点火モードで動作するように構成されたエンジンは好適には、気筒のそれぞれを非活性化するのに好適なハードウェアを有する。この気筒非活性化ハードウェアは説明した減速気筒カットオフを支援するのを助けるために使用され得る。
【0069】
本出願人は様々なスキップ点火コントローラについて既に説明した。本発明を実施するのに好適なスキップ点火コントローラ10が図4に機能的に示される。図示のスキップ点火コントローラ10はトルク計算器20、点火比判断ユニット40、遷移調整ユニット45、点火タイミング判断ユニット50及びパワートレインパラメータ調整モジュール60を含む。トルク計算器20は加速ペダル位置(APP)センサ80を介し運転手要求トルクを取得し得る。例示目的のために、スキップ点火コントローラ10は、実際のエンジン設定を指揮するエンジン制御ユニット(ECU)70とは別個に示される。しかし、多くの実施形態ではスキップ点火コントローラ10の機能はECU70内に取り込まれ得るということを理解すべきである。実際、ECU又はパワートレイン制御ユニット内へのスキップ点火コントローラの取り込みは一般的実施形態であると予想される。
【0070】
図1~3に関して上に説明した制御方法はECUにより指示されるように構成される。スキップ点火遷移及び動作はスキップ点火コントローラ10により指示され得る。
【0071】
DCCOモード動作の特徴は、スロットルブレードが閉じられすべてのエンジン気筒が非活性化され得るので吸気マニホールド内への空気流がほとんど無いということである。このエンジン状態は、エンジン診断を行うための独自条件を提供する。特に、空気取り入れ系の中断に起因する空気漏洩はスロットルブレードが閉じられすべての気筒が非活性化されたMAPの変化率を監視することにより診断され得る。MAPの変化率の増加(すなわち、予想より速い吸気マニホールド充填)は空気取り入れ系漏洩を示す。吸気マニホールドが予想より速く充填しているということが判断されると、診断エラーコード又は他の好適な警報信号がエンジンコントローラ、エンジン診断法モジュール又は他の好適な装置へ提供され得る。
【0072】
DCCOモードはまた、正しいバルブ非活性化を検証するための診断窓を提供する。正しく動作するDCCOモードはエンジンから排気系内へのすべてのガス流を停止させる。気筒の非活性化に失敗すれば、空気が排気系内にポンピングされる。気筒内への未燃焼空気ポンピングに関連する排気系内の過剰酸素は排気システム酸素モニタにより検知され得る。このような過剰酸素が排気システム内で検知されると、診断エラーコード又は他の好適な警報信号がエンジンコントローラ、エンジン診断法モジュール又は他の好適な装置へ提供され得る。
【0073】
DCCOモード中に行われ得る別の診断は漏洩に関し排気系を試験することである。排気系漏洩の存在下で、酸素センサはDCCO中の酸素レベルの増加を感知するだろう。酸素レベル増大の大きさは気筒非活性化故障に関連するものより恐らく小さいだろう。その事象タイミング行動もまた異なるだろう。これは、排気系漏洩が連続的酸素流入を有し、一方、ポンピング気筒は気筒排気行程中に排気系内に酸素を導入するだけであるためである。したがって、ベースライン値に対する感知酸素レベルの時間的行動を解析することにより、排気系漏洩は気筒非活性化故障とは区別され得る。このような排気漏洩が検知されると、診断エラーコード又は他の好適な警報信号がエンジンコントローラ、エンジン診断法モジュール又は他の好適な装置へ提供され得る。
【0074】
これらの故障、空気取り入れ系内への空気漏洩、排気系内への空気漏洩又は気筒非活性化故障は指標により運転手へ任意選択的にシグナリングされ得るので、運転手はその問題に気付き、適切な是正処置を取り得る。
【0075】
出願人はこれまでに、各種のスキップ点火コントローラについて説明した。他の非排他的実施形態を実施するのに適したスキップ点火コントローラ10が図7に機能的に示される。この特定の実施形態では、コントローラ10は複数の作業室又は気筒82を有するエンジン80の動作を制御するように構成される。当業界でよく知られているように、吸気マニホールド84は、動作中にエアサプライ88を介してエンジン80の作業室82へと空気を供給するために提供される。スロットルプレート89は、大気から吸気マニホールド84への空気流を制御する。DCCO動作中、スロットルが閉じて、吸気マニホールドへの空気漏洩を最小化し得る。マニホールド84は圧力センサ86をさらに含んでおり、これはマニホールド内の実際の空気圧(MAP)を測定し、圧力測定値をコントローラ10に提供するために提供されている。
【0076】
示される特定の実施形態では、エンジン80は8つの作業室82を有する。図の作業室の数は限定的と一切考えるべきではない。本願で想定される本発明の各種の実施形態と原理は、何れの任意の数の作業室82を有するエンジン80とも併用し得る。
【0077】
図のスキップ点火コントローラ10は、トルク計算器20、点火比判断ユニット40、遷移調整ユニット45、点火タイミング判断ユニット50及びパワートレインパラメータ調整モジュール60を含む。トルク計算器20は加速ペダル位置(APP)センサ80を介し運転手要求トルクを取得し得る。例示目的のために、スキップ点火コントローラ10は、実際のエンジン設定を指揮するエンジン制御ユニット(ECU)70とは別個に示される。しかし、多くの実施形態ではスキップ点火コントローラ10の機能はECU70内に取り込まれ得るということを理解すべきである。実際、ECU又はパワートレイン制御ユニット内へのスキップ点火コントローラの取り込みは一般的実施形態であると予想される。
【0078】
図1~3及び図7、9A~9Dに関して上に説明した制御方法は後述のようにECUにより指示されるように構成される。スキップ点火遷移及び動作はスキップ点火コントローラ10により指示され得る。
【0079】
DCCOモード動作の特徴は、スロットルプレート89が閉じられすべてのエンジン気筒が非活性化され得るので吸気マニホールド内への空気流がほとんど無いということである。このエンジン状態は、エンジン診断を行うための独自条件を提供する。特に、空気取り入れ系の中断に起因する空気漏洩はスロットルブレードが閉じられすべての気筒が非活性化されたMAPの変化率を監視することにより診断され得る。MAPの変化率の増加(すなわち、予想より速い吸気マニホールド充填)は空気取り入れ系漏洩を示す。吸気マニホールドが予想より速く充填しているということが判断されると、診断エラーコード又は他の好適な警報信号がエンジンコントローラ、エンジン診断法モジュール又は他の好適な装置へ提供され得る。
【0080】
DCCOモードはまた、正しい弁非活性化を検証するための診断窓を提供する。正しく動作するDCCOモードはエンジンから排気系内へのすべてのガス流を停止させる。気筒の非活性化に失敗すれば、空気が排気系内にポンピングされる。気筒内への未燃焼空気ポンピングに関連する排気系内の過剰酸素は排気系酸素モニタにより検知され得る。このような過剰酸素が排気系内で検知されると、診断エラーコード又は他の好適な警報信号がエンジンコントローラ、エンジン診断法モジュール又は他の好適な装置へ提供され得る。
【0081】
DCCOモード中に行われ得る別の診断は漏洩に関し排気システムを試験することである。排気系漏洩の存在下で、酸素センサはDCCO中の酸素レベルの増加を感知するだろう。酸素レベル増大の大きさは気筒非活性化故障に関連するものより恐らく小さいだろう。その事象タイミング行動もまた異なるだろう。これは、排気系漏洩が連続的酸素流入を有し、一方、ポンピング気筒は気筒排気行程中に排気系内に酸素を導入するだけであるためである。したがって、ベースライン値に対する感知酸素レベルの時間的行動を解析することにより、排気系漏洩は気筒非活性化故障とは区別され得る。このような排気漏洩が検知されると、診断エラーコード又は他の好適な警報信号がエンジンコントローラ、エンジン診断法モジュール又は他の好適な装置へ提供され得る。
【0082】
これらの故障、空気取り入れ系内への空気漏洩、排気系内への空気漏洩又は気筒非活性化故障のうちの任意のものの検出は指標により運転手へ任意選択的にシグナリングされ得るので、運転手はその問題に気付き、適切な是正処置を取リ得る。前述のように、DCCO動作中、空気はマニホールド84からポンピングされない。その結果、空気圧はしばしば気圧(大気圧と同義)に向かって上昇する。その後にトルク要求がなされたときの大量の気筒給気の問題を緩和するために、トルク送出の前にマニホールド84内の空気圧力をポンプダウンするためにDFCOモードが使用される。この手法により、NVHは大きく改善される。しかし、この方法ではいくつかの問題が生じる。第一に、DFCOモード中に空気をポンピングした後に排気系内の触媒コンバータを再調整するために燃料が必要となり得る。第二に、マニホールド84内の圧力が十分に低く、ポンピングが不要であり得、これは、DFCOモード内の介入動作が実際には必要とならないということを意味する。第三に、トルク生成が遅れ、その前にDFCOモードが終了してしまう。これは問題とならないことが多いものの、緊急のトルク要求がなされたときには、エンジン応答は極めて重要である。第四に、マニホールド内の圧力が低いと、DFCOでの動作によって望ましくないエンジンブレーキが効いてしまい得る。
【0083】
出願人は、以下の各種の実施形態で述べるように、吸気マニホールド84内のセンサ86により測定される空気圧を使って、マニホールド圧力を閾値レべルまで下げるために必要なDFCOモードの作業サイクル数を判断できるということを発見した。作業サイクルの持続時間は既知のエンジン速度に基づくことから、DFCO動作を終了するタイミングは判断又は計算可能である。換言すれば、センサ86により測定されたマニホールド84内の空気圧はDFCO動作の持続時間及び/又はDFCO動作の終了時期をDFCO作業サイクル数又はDFCO動作時間の何れかの点で定義するために使用できる。
【0084】
図7を参照すると、異なる吸気マニホールドの絶対圧力値を閾値レベルまで下げるためのポンピング作業サイクル数を提供する参照テーブル500が示されている。この特定の実施形態では、各種のマニホールド絶対圧力(「MAP」)値は左の欄に40から100まで10kPa刻みで提供され、一方で、マニホールド84内の圧力を閾値まで下げるために必要な作業室ポンピング作業サイクル数が右の欄に提供されている。この特定の例では、明示されている作業室ポンピングサイクル数は、それぞれ40から100まで増大させたkPaに対応するものである(0、0、6、8、10、12及び12)。換言すれば、この例の「閾値」は50kPaであり、この圧力レベル以下のMAP値では、必要な作業室ポンピング作業サイクルはない。それに対して、50kPaを超えるMAP値については、マニホールド84内の空気圧を閾値又は他の何れかの所望圧力レベル標的まで下げるために複数回の作業室ポンピング作業サイクルが必要である。1つの特定の実施形態では、作業室ポンピング作業サイクルは、作業室82又はエンジン80の気筒をDFCOモードで動作させることによって実現される。DFCO作業はオプションにすぎず、作業室を通じた空気のポンピングが行われることになる何れのエンジン動作も使用され得る。例えば、少量の燃料を作業サイクル中の遅い時点で注入することにより、触媒コンバータ内の酸化/還元バランスの保持を支援し得る。
【0085】
表500の中で提供されている特定の閾値圧力、MAP kPa値、及び作業室ポンピング作業サイクル数の値は単なる例であり、例示目的で提供されていると理解すべきである。実際に実施する実施形態では、表中で提供されている作業室ポンピング作業サイクル数の値、MAP kPa値、及びkPa閾値は、様々な要因に基づいて大きく異なり得、これにはエンジン排気量、気筒の大きさ及び/又は気筒数、エンジン動作条件、周囲空気条件、気圧等が含まれるが、これらに限定されない。例えば、気筒吸気効率は、空気ポンピング効率を示すが、吸気及び排気弁タイミング及びエンジン速度に依存し、表500中の値は弁のタイミングとンエンジン速度に基づいて調整され得る。カム型弁を備えるエンジンでは、弁タイミングはカム位相角に依存する。
【0086】
参照テーブル500に含まれる情報は代替的な方法で表現できることも理解すべきである。例えば、DFCO動作をDFCOポンピングサイクル数で説明するのではなく、代替的に、DFCO動作の時間又は期間として表現されてもよい。DFCOポンピングサイクル数は、測定されたエンジン速度を使って時間間隔に変換できる。エンジン速度はおそらくDFCO動作の期間中に変化するため、DFCO動作中のエンジン速度のモデルを使ってDFCO動作の全体の期間を判断し得る。
【0087】
図9A~9Dは、トルク生成からDCCO事象、さらにアイドル事象への遷移中の時間に対する各種のエンジンパラメータの代表的行動の簡略的概略図を示す。
【0088】
時間t以前は、車両はエンジンから供給されるトルクを使って車両を駆動させて動作していると仮定される。MAPは大気圧より低いある動作レベルMAPopである。
【0089】
DCCO事象は、無パワートレイントルク要求に応じて燃料消費がカットオフされる時間tから始まる。その結果、空気流又はポンピングは図9Cに示されるように減少し、燃料消費は図9Dに示されるように減少する。
【0090】
無トルク要求と同時に、車両のホイールはエンジンから切り離されるため、どちらも独立して回転できる。この例では車両のホイールはエンジンから切り離されるが、常にそれが当てはまるとはかぎらないと理解すべきである。例えば、車両が当初高速で、高い変速機ギヤで動作している場合、ホイールとエンジンは、車速が特定のレベルまで低下するまで係合したままであり得る。
【0091】
エンジンがトルクを生成していないため、エンジン速度(図9A)は摩擦力損失により低下する。
【0092】
図9Bに示されているように、MAPは時間tの後のDCCO動作中に上昇し、大気圧に向かう。この場合、DCCO事象は、MAPが大気圧MAPatmに到達するのに十分な長さにわたり持続するが、常にそれが当てはまるとはかぎらない。エンジン速度が低下すると、時間tでエンジン速度はωminに到達し、これはDCCO動作のための最低速度である。DCCO動作のための最低速度は、アイドル速度ωidleより幾分高く設定される。例えば、アイドル速度が700rpmであれば、最低DCCO速度は1000rpmであり得る。
【0093】
時間tで、コントローラ10はエンジンがDCCOモードからDFCOモードに切り替わるようにする。前述のように、コントローラ10は、エンジンに燃料を供給して燃焼事象を開始させる前にMAPを閾値レベル未満まで低下させるために必要なポンピングサイクル数を判断できる。これらのポンピングサイクルは時間tとtとの間で実行されるため、図9Cに示されるようにエンジンを通じた空気流又はポンピングが起こることから、MAPは図9Bに示されるように低下する。
【0094】
時間tで、MAPはMAP閾値(MAPth)まで低下し、DFCO動作が終わる。燃料の流れが図9Dに示されるように開始され、少なくともトルクを生成する作業室のいくつかにおいて燃焼が再開し、エンジン速度がアイドル速度ωidleに保たれる。触媒コンバータ内の酸化/還元バランスを再調整するために、図9Dに示されるように燃料消費のスパイクがあり得る。MAPレベルは引き続き、図9Bに示されるようにMAPidleレベルまで下がり得る。代替的に、MAPthは、実質的にMAPidleと等しく、MAPは実質的に一定のままであり得る。アイドルへのエンジンの遷移をさらに円滑にするために、時間がDFCO動作が終了するtに近付くにつれて、非活性化作業サイクル中にポンピング作業サイクルが点在し得る。その結果、より漸進的なエンジン減速が行われるが、これは、ポンピングにより誘導されるエンジン減速によってMAPが低下するからである。ポンピング及び非活性化作業サイクルのパターンは、参照テーブル内で定義され得るか、又は動的に計算され得る。
【0095】
いくつかの特定の実施形態及び遷移戦略だけが詳細に説明されたが、本発明は本発明の精神又は範囲から逸脱することなく他の多くの形態で実施され得るということを理解すべきである。説明したアルゴリズムは、プログラマブル論理又はディスクリート論理で、エンジン制御ユニット又はパワートレイン制御モジュール又は他の処理ユニットに関連するプロセッサ上で実行するソフトウェアコードを使用して実装され得る。説明した手法は複数の作業室を有するエンジン上で使用するのに特によく適しているが、同じ手法は単気筒エンジン上で同様に使用され得る。したがって、本実施例は例示的であって限定的でないと考えるべきであり、本発明は本明細書に記載された詳細に限定されなく、添付された請求項の範囲及びその等価物内で修正され得る。
【0096】
本明細書で使用されるように、用語「モジュール」は、特定用途向け集積回路(ASIC)、電子回路、1つ又は複数のソフトウェア又はファームウェアプログラムを実行するプロセッサ(共有、専用化、又はグループ)及びメモリ、組み合せ論理回路、及び/又は説明した機能を提供する他の好適な部品を指す。
【0097】
これまでの説明は本来例示的に過ぎなく、本開示、用途、又は使用を制限するように意図されていない。添付図面を通じ当該参照符号は同様な又は対応する部品及び特徴を示すということを理解すべきである。したがって、本実施例は例示的であって限定的でないと考えるべきであり、本発明は本明細書に記載された詳細に限定されなく、添付された請求項の範囲及びその等価物内で修正され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動トレイン、電気モータ/発電機及びエンジンを有する車両を作動する方法において、前記エンジンはクランク軸、吸気マニホールド及び複数の作業室を含み、前記電気モータ/発電機及びエンジンは独立して前記駆動トレインに機械的に係合することができず、
コントローラによって、前記クランク軸が第一の方向へと回転している前記エンジンの動作中に、無エンジントルク要求に応じて前記作業室のすべてを非活性化して、前記作業室のいずれも点火されないように、そして前記作業室が非活性化された状態で複数のエンジンサイクルにわたり前記クランク軸が前記第一の方向に回転し続ける際に空気が前記作業室内にポンピングされないようにする工程と、
前記コントローラによって、前記作業室のすべてが非活性化されている時間の少なくとも一部において、前記エンジンを前記駆動トレインから切り離して、前記車両の動きとクランク軸の回転が機械的に連結されないようにし、それによって前記エンジンが前記駆動トレインから切り離されると前記電気モータ/発電機が前記駆動トレインから切り離されるようにする工程と、
前記コントローラによって、前記作業室のすべてが非活性化された状態で前記エンジンが前記駆動トレインから切り離されている複数のエンジンサイクルにわたり、前記クランク軸の回転速度がシフト速度未満まで低下できるようにする工程と、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記電気モータ/発電機及びエンジンは、機械的に連結されてそれらが一緒に回転することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記エンジンの前記電気モータ/発電機への前記機械的連結は、ベルト、チェーン、共通軸及びギヤからなる群より選択される固定された機械的連結であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法において、前記クランク軸の回転速度がエンジンアイドル速度より低い間に、前記吸気マニホールドの圧力は実質的に大気圧であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法において、前記作業室の非活性化、前記エンジンの係合解除、及び前記クランク軸の回転速度の前記シフト速度未満への低下はすべて、前記車両の動作中に起こることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法において、前記クランク軸の回転速度はゼロまで低下できることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法において、前記クランク軸の回転速度はエンジンアイドル速度まで低下でき、前記エンジンが前記駆動トレインから切り離されている間に前記電気モータ/発電機により前記エンジンアイドル速度に保持されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法において、前記クランク軸の回転速度はエンジン点火速度まで低下でき、前記エンジンが前記駆動トレインから切り離されている間に前記電気モータ/発電機により前記エンジン点火速度に保持されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法において、前記クランク軸の回転速度は、前記エンジンが前記駆動トレインから切り離されている間に、前記電気モータ/発電機により前記クランク軸にトルクを加えたりそこから取り除いたりすることによって制御されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記クランク軸の回転速度は、前記エンジンが前記駆動トレインから切り離されている間に、前記電気モータ/発電機によりエンジン点火速度より高く保持されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の方法において、前記作業室は各々、吸気弁と排気弁を有し、各作業室は、前記吸気弁及び排気弁の少なくとも一方を少なくとも1つの関連する作業サイクルにわたり閉じたままにすることによって非活性化されることを特徴とする方法。
【外国語明細書】