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特開2023-62079CD43の固有のシアログリコシル化がん関連エピトープを標的化するモノクローナル抗体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062079
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】CD43の固有のシアログリコシル化がん関連エピトープを標的化するモノクローナル抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230425BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230425BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20230425BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20230425BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20230425BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230425BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230425BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230425BHJP
   C12N 5/12 20060101ALI20230425BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230425BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20230425BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230425BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230425BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230425BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230425BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/86 Z
C12N15/867 Z
C12N15/85 Z
C12N15/12
C12N5/10
C12N5/0783
C12N5/12
C12P21/08
C07K16/30
C07K19/00
C07K14/47
A61K39/395 N
A61K35/17
A61K35/76
A61P35/02
A61P7/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023022494
(22)【出願日】2023-02-16
(62)【分割の表示】P 2019555725の分割
【原出願日】2017-12-22
(31)【優先権主張番号】102016015379.2
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】519226894
【氏名又は名称】ウニヴェルシタ・デリ・ストゥディ・マニャ・グレチア・カタンツァーロ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピエールフランチェスコ・タッソーネ
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、OEの検出及び新規の免疫療法手法の開発を可能にする抗体を提供することである。
【解決手段】本発明は、ICLC受託番号ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される、CD43の固有のシアログリコシル化がん関連エピトープを標的化するモノクローナルマウス抗体に関する。更に、本発明は、相補性決定領域CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域並びに相補性決定領域CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域を含み、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2及びCDRL3がアミノ酸配列GFTFSSFGMH、YISSGSGNFYYVDTVKG、STYYHGSRGAMDY、SASSSVSSMYWY、DTSKMAS及びQQWSSYPPITをそれぞれ含む抗体に関する。加えて、本発明は、同じエピトープを認識する抗体に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICLC受託番号ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナルマウス抗体。
【請求項2】
相補性決定領域CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域並びに相補性決定領域CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域を含み、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2及びCDRL3がアミノ酸配列GFTFSSFGMH、YISSGSGNFYYVDTVKG、STYYHGSRGAMDY、SASSSVSSMYWY、DTSKMAS及びQQWSSYPPITをそれぞれ含む、抗体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の抗体と同じエピトープを認識する抗体であって、好ましくは、モノクローナル若しくは二重特異性抗体であり、又はヒト、キメラ若しくはヒト化抗体であり、より好ましくは請求項1に記載の抗体のキメラ若しくはヒト化抗体である、抗体。
【請求項4】
T細胞急性リンパ性白血病(T-ALL)細胞のEGIL T3サブグループ、T細胞リンパ芽球性リンパ腫細胞、及びワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症(WM)細胞に対して抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を誘導する能力がある、請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
ヒトCD43にO結合しているGalNAcを含むエピトープを認識する、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
好ましくは、一本鎖抗体からなる群から選択され、好ましくはscFv、ダイアボディ、トリアボディ又はテトラボディのようなscFvの多量体、抗体断片、好ましくはFab、tandab、及びフレキシボディからなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体に由来する結合分子。
【請求項7】
好ましくは1つ又は複数のシグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインに連結されている、請求項5に記載の結合分子を含むキメラ抗原受容体。
【請求項8】
請求項7に記載のキメラ抗原受容体、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体又は請求項6に記載の結合分子をコードする核酸配列を含む発現ベクターであって、好ましくは、ウイルス又は非ウイルス、より好ましくはウイルス、更により好ましくはレンチウイルスベクターである、ベクター。
【請求項9】
請求項6に記載のキメラ抗原受容体又は請求項8に記載の発現ベクターを含むCD3+リンパ球、NKリンパ球、サイトカイン誘導性キラー(CIK)細胞、γδリンパ球又はNKT細胞。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体又は請求項6に記載の結合分子又は請求項7に記載のCD3+リンパ球、CD3+リンパ球、NKリンパ球、サイトカイン誘導性キラー(CIK)細胞、γδリンパ球若しくはNKT細胞を含む医薬組成物。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体又は請求項6に記載の結合分子をコードしている核酸。
【請求項12】
請求項1から5のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞。
【請求項13】
ICLC受託番号ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ。
【請求項14】
請求項1から5のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体を産生する方法であって、ICLC受託番号ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ細胞から前記抗体を単離する工程を含む方法。
【請求項15】
CD45+、CD3+、CD8-、CD127+、CCR7+ Tリンパ球の同定又は単離方法であって、前記Tリンパ球を含む細胞サンプルを請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体又は請求項6に記載の結合分子と接触させる工程を含む方法。
【請求項16】
T細胞急性リンパ性白血病細胞、Tリンパ腫細胞、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症細胞又は腫瘍関連マクロファージの同定又は単離方法であって、前記細胞を含む細胞サンプルを請求項1から5のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体又は請求項6に記載の結合分子と接触させる工程を含む方法。
【請求項17】
請求項6に記載のキメラ抗原受容体を発現するCD3+リンパ球、NKリンパ球、サイトカイン誘導性キラー(CIK)細胞、γδリンパ球又はNKT細胞を産生する方法であって、CD3+リンパ球、NKリンパ球、サイトカイン誘導性キラー(CIK)細胞、γδリンパ球又はNKT細胞への請求項8の発現ベクターの導入を含む方法。
【請求項18】
T細胞急性リンパ性白血病又はワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症の処置方法に使用するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体、請求項6に記載の結合分子、請求項8に記載の発現ベクター、請求項9に記載のCD3+リンパ球、NKリンパ球、サイトカイン誘導性キラー(CIK)細胞、γδリンパ球若しくはNKT細胞、又は請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項19】
CD45+、CD3+、CD8-、CD127+、CCR7+ Tリンパ球の同定又は単離方法に使用するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体又は請求項6に記載の結合分子。
【請求項20】
T細胞急性リンパ性白血病細胞、Tリンパ腫細胞、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症細胞又は腫瘍関連マクロファージの単離又は同定方法に使用するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体又は請求項6に記載の結合分子。
【請求項21】
T細胞急性リンパ性白血病又はワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症の診断方法に使用するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体又は請求項6に記載の結合分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICLC受託番号ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナルマウス抗体、関連抗体及び結合分子並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CD43は、膜貫通タンパク質であり、造血系の細胞に制限される特異的な白血球マーカーである。しかしながら、これらの細胞の中でも、CD43は、大部分の末梢及び骨髄由来細胞成分において広く発現される。CD43の前駆体形態は、54kDの見かけの分子量で移動する。成熟形態において、CD43は、激しくグリコシル化され、115~200kDの分子量を有する。全体として、CD4+胸腺細胞及び単球は、115kD形態を発現し、活性化型CD4+及びCD8+-T細胞、B細胞、好中球並びに血小板は、130kD形態を発現する。CD43は、細胞接着、アポトーシス及び遊走等複数の機能に関係する(Ostberg JR et al. Immunology today. 1998; 19:546~50頁)。
【0003】
グリコシル化CD43等の糖タンパク質は、構造可変性及びレクチンリガンドに対する結合特異性を付与するグリカン枝のため、細胞シグナル伝達、免疫認識及び細胞-細胞相互作用において主要な役割を演ずる(Ohtsubo K. et al. Cell 2006; 126、855~867頁)。ムチン型糖タンパク質は、O結合型炭水化物鎖(O-グリカン)の高い含有量によって特徴付けられ、分泌又は造血及び上皮細胞の膜上で発現される。O-グリカン生合成は、UDP-N-アセチル-D-ガラクトサミン: O-グリカンのTn抗原構造を生成するポリペプチド-N-アセチルガラクトサミン転移酵素(GalNAc転移酵素)によってセリン又はトレオニン残基へN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を付加することによりゴルジ体において開始する。O結合型グリカン枝のその後の伸長は、組織特異的糖転移酵素に触媒されるガラクトース、フコース及びシアル酸等他の炭水化物の追加により、その伸長は、O結合型炭水化物鎖の性質及び長さが異なるO-グリカン構造の複雑な配置が合成をもたらす(Wopereis S. et al. Clin. Chem 2006; 52、574~600頁)。加えて、オリゴ糖はシアリル化、フコシル化、硫酸化(sulfatation)、メチル化又はアセチル化よって修飾され得る。O-グリカン構造の短縮及び特定のO-グリカンの異常な発現が、がん細胞に起こり、このことは、逸脱したグリコシル化が、細胞シグナル伝達、接着及び抗原性を修飾することによりがん進行に寄与し得ることを示唆している(Hakomori S. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2002; 99、10231~10233頁、Brockhausen I. EMBO Rep. 7 2006; 599~604頁)。
【0004】
腫瘍胎児抗原(OA)は主として、胎児の発達の間にだけ正常には高度に発現され、分化の間に徐々に抑制され、したがって成人組織において発現されない1つ又は複数の遺伝子の糖タンパク質及び産物である。成人におけるその再発現は、がんにおいて起こるような、制御された遺伝子の逸脱した活性化の結果である。がん胎児性エピトープ(OE)は、抗体に認識されるOAの部分である。発現が、がん組織に限定されるOA又は特定のがん胎児性エピトープ(OE)の同定は、初期の発がん過程を検出するのに役立ち得るだけでなく、最も重要なことに、ヒトがんに対する新たな免疫療法手法を開発するのに不可欠であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,816,567号
【特許文献2】米国特許第4,816,397号
【特許文献3】WO 1988/001649 A1
【特許文献4】WO 1993/011161 A1
【特許文献5】WO 1999/057150 A2
【特許文献6】欧州特許第1293514号B1
【特許文献7】米国特許出願公開第2007031436号
【特許文献8】WO 1990/012592 A1
【特許文献9】WO 2007/030642 A2
【特許文献10】WO 2004/067038 A1
【特許文献11】WO 2004/003183 A1
【特許文献12】米国特許出願公開第2005/0074426号A1
【特許文献13】WO 1994/004189 A1
【特許文献14】米国特許第5,965,726号
【特許文献15】米国特許第6,174,666号
【特許文献16】米国特許第6,291,664号
【特許文献17】米国特許第6,414,132号
【特許文献18】米国特許第6,794,498号
【特許文献19】米国特許出願公開第2005/0048549号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Ostberg JR et al. Immunology today. 1998;19:546~50頁
【非特許文献2】Ohtsubo K. et al. Cell 2006; 126、855~867頁
【非特許文献3】Wopereis S. et al. Clin. Chem 2006; 52、574~600頁
【非特許文献4】akomori S. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2002; 99、10231~10233頁
【非特許文献5】Brockhausen I. EMBO Rep. 7 2006; 599~604頁
【非特許文献6】Tassone et al.、Tissue Antigens、1994
【非特許文献7】De Laurentiis et al、Mol Cel Proteomics 2011
【非特許文献8】Cecco et al、Tissue Antigens、1998
【非特許文献9】De Laurentiis et al、Int J Biol Macromol、2006
【非特許文献10】Tassone et al、Int J Oncol、2002
【非特許文献11】Tassone et al、Anticancer Res、2002
【非特許文献12】Kabat et al.、J. Biol. Chem. 252、6609~6616頁(1977)
【非特許文献13】Kabat et al.、Sequences of protein of immunological interest. (1991)
【非特許文献14】Chothia et al.、J. Mol. Biol. 196:901~917頁(1987)
【非特許文献15】MacCallum et al.、J. Mol. Biol. 262:732~745頁(1996)
【非特許文献16】Segal DM et al. Current Opin. Immunol. 1999、11:558~562頁
【非特許文献17】Van Spriel AB et al. Immunology Today 2000、21:391~397頁
【非特許文献18】P. J. Lachmann、Clin. Exp. Immunol. 1990, 79: 315頁
【非特許文献19】V. Raso、T. Griffin, Cancer Res. 1981, 41:2073頁
【非特許文献20】S. Honda et al.、Cytotechnology, 1990, 4:59頁
【非特許文献21】J. Corvalan et al.、Intl. J. Cancer Suppl. 1988、2:22頁
【非特許文献22】M. Pimm et al.、British J. of Cancer 1990、61:508頁
【非特許文献23】M. Brennan et al.、1985、Science 229:81頁
【非特許文献24】Milstein and Cuello、Nature, 1983、305: 537~539頁
【非特許文献25】Bene MC、Leukemia 1995;9:1783頁
【非特許文献26】Carter PJ. Potent antibody therapeutics by design. Nature Rev. Immunol. 6:343~357頁、2006
【非特許文献27】Bird, et al. (1988) Science 242:423~426頁
【非特許文献28】Orlandi, et al (1989) Proc Natl Acad Sci USA 86:3833~3837頁
【非特許文献29】Clarkson et al.、Nature 352: 624~628頁(1991)
【非特許文献30】Wu AM, Senter PD. Nature Biotechnol. 23:1137~1146頁、2005
【非特許文献31】Pastan et al. Annu. Rev. Med. 58:221~237頁、2007
【非特許文献32】Porter DL et al.、N Eng J Med, 2011
【非特許文献33】Remington's Pharmaceutical Sciences、17版、1985、Mack Publishing Co
【非特許文献34】Kutmeier G et al.、(1994)、BioTechniques 17: 242~6頁
【非特許文献35】Marks et al.、1992、Bio/Technology 10:779~783頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、OEの検出及び新規の免疫療法手法の開発を可能にする抗体を提供することである。
【0008】
問題は、本発明による抗体よって解決される。例に示されるデータは、胎児組織における制限された発現の特定のパターン及び悪性病変における再発現のため、本発明により寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体に認識されるエピトープが、OEであると見なし得ることを示す。したがって、後者は、ヒトがんを処置するための革新的な免疫療法戦略にとって潜在的に適した標的を表す。
【0009】
更に、CD3ζ鎖を含む細胞内領域、T細胞受容体のシグナル伝達領域、並びに2つの共刺激ドメインCD28及び41BBに連結された、本発明による抗体に基づく結合分子のscFvを含むキメラ抗原受容体(CAR)が開発された。本発明によるCARを発現するCD3+リンパ球は、本発明により寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体に認識されるエピトープを発現する細胞に対して有意な細胞毒性を誘導する。
【0010】
本発明のマウス抗体の効果が、一部すでに記述されているとしても(Tassone et al.、Tissue Antigens、1994; De Laurentiis et al、Mol Cel Proteomics 2011; Cecco et al、Tissue Antigens、1998; De Laurentiis et al、Int J Biol Macromol、2006; Tassone et al、Int J Oncol、2002; Tassone et al、Anticancer Res、2002)、抗体自体又はその配列及びその抗体が結合するエピトープは、公にこれまで利用できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生されるマウス抗体が提供される。加えて、ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体と同じエピトープを認識する抗体が提供される。
【0012】
本発明は、相補性決定領域CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域並びに相補性決定領域CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域を含み、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2及びCDRL3がアミノ酸配列GFTFSSFGMH、YISSGSGNFYYVDTVKG、STYYHGSRGAMDY、SASSSVSSMYWY、DTSKMAS及びQQWSSYPPITをそれぞれ含む抗体に更に関する。
【0013】
好ましくは、前記抗体は、モノクローナル抗体である。
【0014】
更に、ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体又は本発明の上記の抗体に由来する結合分子が提供される。
【0015】
更に、キメラ抗原受容体が提供され、その受容体は、CD3ζ鎖を含む細胞内領域、T細胞受容体のシグナル伝達領域、並びに2つの共刺激ドメインCD28及び41BBに連結された本発明によるscFv結合分子を含む。
【0016】
更に、本発明によるキメラ抗原受容体、本発明による抗体又は本発明による結合分子をコードする核酸配列を含む発現ベクターが提供される。
【0017】
本発明は、本発明によるキメラ抗原受容体を含むCD3+リンパ球、NKリンパ球、サイトカイン誘導性キラー(CIK)細胞、γδリンパ球若しくはNKT細胞、又は本発明による発現ベクターを更に提供する。
【0018】
本発明による抗体若しくは本発明による結合分子又は本発明によるCD3+リンパ球、NKリンパ球、サイトカイン誘導性キラー(CIK)細胞、γδリンパ球若しくはNKT細胞を含む医薬組成物が提供される。
【0019】
本発明による抗体又は本発明による結合分子をコードする核酸が提供される。
【0020】
本発明による抗体を産生するハイブリドーマ細胞が提供される。
【0021】
本発明による抗体を産生する方法が提供され、この方法は、ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ細胞から前記抗体を単離する工程を含む。
【0022】
T細胞急性リンパ性白血病細胞、Tリンパ腫細胞、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症細胞又は腫瘍関連マクロファージの同定又は単離方法が提供され、この方法は、前記細胞を含む細胞サンプルを本発明による抗体又は本発明による結合分子と接触させる工程を含む。
【0023】
本発明によるキメラ抗原受容体を発現するCD3+リンパ球、NKリンパ球、サイトカイン誘導性キラー(CIK)細胞、γδリンパ球又はNKT細胞を産生する方法であって、CD3+リンパ球、NKリンパ球、サイトカイン誘導性キラー(CIK)細胞、γδリンパ球又はNKT細胞への本発明による発現ベクターの導入を含む方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
第1の態様において、本発明は、ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナルマウス抗体に関する。
【0025】
ハイブリドーマ細胞は、2016年8月4日付けで受託番号ICLC PD n°16001でCentro Biotecnologie Avanzate(CBA)、Interlay Cell Line Collection(ICLC)、Largo Rosanna、10、16132、ジェノヴァ、イタリアに寄託された。抗体は、下記の例において試験された。例に示すように、抗体は、CD43上にある特定のシアログリコシル化エピトープに結合する。
【0026】
この第1の態様において、本発明は、相補性決定領域CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域並びに相補性決定領域CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域を含み、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2及びCDRL3がアミノ酸配列GFTFSSFGMH、YISSGSGNFYYVDTVKG、STYYHGSRGAMDY、SASSSVSSMYWY、DTSKMAS及びQQWSSYPPITをそれぞれ含む抗体に更に関する。
【0027】
これらの配列は、配列番号1~6にも与えられる。
【0028】
配列決定で決定した通り、上記のCDR配列は、ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナルマウス抗体由来のCDR配列である。
【0029】
本明細書では、用語「CDR」又は「相補性決定領域」は、重鎖及び軽鎖ポリペプチド両方の可変領域内に見られる隣接しない抗原結合部位を意味する。これらの特定の領域は、Kabat et al.、J. Biol. Chem. 252、6609~6616頁(1977)及びKabat et al.、Sequences of protein of immunological interest. (1991)、及びChothia et al.、J. Mol. Biol. 196:901~917頁(1987)及びMacCallum et al.、J. Mol. Biol. 262:732~745頁(1996)に記述されており、互いに対して比較した場合、定義はアミノ酸残基の重なり又はサブセットを含む。上記引用文献のそれぞれに定義されるCDRを包含するアミノ酸残基が、比較のために述べられる。好ましくは、用語「CDR」は、配列比較に基づくKabatによって定義されるCDRである。CDRH1、CDRH2及びCDRH3は重鎖CDRを意味し、CDRL1、CDRL2及びCDRL3は軽鎖CDRを意味する。
【0030】
このモノクローナル抗体は、任意の種由来のフレームワーク配列を有してもよい。好ましくは、それは、マウス又はヒトフレームワークを有してもよい。
【0031】
本明細書では、用語「フレームワーク(FR)アミノ酸残基」とは、免疫グロブリン鎖のフレームワーク領域中のアミノ酸のことを指す。本明細書では用語「フレームワーク領域」又は「FR領域」は、可変領域の部分であるが、CDRの部分でないアミノ酸残基を含む(例えば、CDRのKabat定義を使用する)。
【0032】
上述のCDR配列を持つモノクローナル抗体を産生する方法は、当技術分野で公知であり、所望のフレームワーク配列をコードしている適切な発現ベクターへのCDRをコードしている核酸配列の導入を含む。さらなる方法について、以下で記述される。
【0033】
第2の態様において、本発明は、第1の態様による抗体と同じエピトープを認識する抗体に関する。
【0034】
一般に、及び当技術分野で概して公知であるように、抗体は、免疫グロブリンのタンパク質ファミリーに属するタンパク質であり、上で定義したフレームワーク領域及び相補性決定領域からなる可変領域で構成される。天然には、抗体は、特定の抗原に対応して形質細胞によって産生される。一般に、各抗体は、2つの同一の重鎖免疫グロブリン及び2つの同一の軽鎖免疫グロブリンを有する。各重鎖並びに各軽鎖は、可変及び定常領域を有してもよい。重鎖の定常領域は、哺乳動物のIg重鎖の5つの型:α、δ、ε、γ及びμのうちの1つであり得る。存在する重鎖の型は、抗体のクラス(アイソタイプ): IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM抗体をそれぞれ通常定義する。同様に、軽鎖の定常領域は、哺乳動物のIg軽鎖の2つの型:κ及びλのうちの1つであり得る。重鎖及び軽鎖の可変領域は、特定の抗原に対する結合を可能にする多数のタンパク質配列の固有の組合せで通常できている。
【0035】
本発明によると、用語「抗体」は、単離された抗体も網羅する。
【0036】
一般に、各重鎖は、軽鎖のうちの1つに接続され、それにより重鎖と軽鎖の可変領域が結合して2つの同一の抗原結合部位のうちの1つを形成し、それらの定常領域が結合して抗体の定常領域を形成する。更に、1つの重鎖及び1つの軽鎖の構築物の両方は、その重鎖の定常領域を介して接続され、「Y」形状の分子を形成してもよく、その際2本の腕は抗原結合可変領域を表し、基部は定常領域を表す。
【0037】
第2の態様による抗体は、完全抗体でもよく、これは重鎖の3つ又は4つの定常ドメイン及び軽鎖の1つの定常ドメイン並びにそれぞれの可変ドメインを通常含むことを意味し、その際各ドメインは、突然変異、欠失又は挿入等のさらなる修飾を含んでもよく、その修飾は全体のドメイン構造を変化させない。
【0038】
更に、本発明の第2の態様による抗体は、ホモ若しくはヘテロ二量体又はホモ若しくはヘテロ多量体を形成してもよく、その際「二量体」及び「多量体」とは、2つ及び少なくとも3つの抗体が、それぞれ結合して複合体を形成してもよいことを意味する。接頭辞「ホモ」は、複合体が、同一の抗体分子の形状をなし得ることを意味し、その際、接頭辞「ヘテロ」は、複合体が異なる抗体分子の形状をなし得ることを意味する。
【0039】
一般に、用語「抗体」は、上述した免疫グロブリンアイソタイプの全てを含むことを意図し、すなわち、抗体は、アイソタイプの任意のサブクラスを含めたIgA、IgD、IgE、IgG又はIgM抗体でもよい。好ましくは、抗体はIgG抗体であり、より好ましくは、抗体はIgG1抗体である。抗体は、組換えにより発現及び産生されてもよいので、抗体は、異なる2つの重鎖の定常領域、例えば一方がIgG1及び一方がIgG2重鎖、又は異なる種由来の重鎖を含んでもよい。しかしながら、重鎖は好ましくは同じ種由来である。更に、抗体はλ又はκ軽鎖を含んでもよい。
【0040】
本発明の第1の態様の抗体のうちの1つと同じエピトープを認識する抗体は、相補性決定領域CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域並びに相補性決定領域CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域を含み、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2及びCDRL3が、アミノ酸配列GFTFSSFGMH、YISSGSGNFYYVDTVKG、STYYHGSRGAMDY、SASSSVSSMYWY、DTSKMAS及びQQWSSYPPITをそれぞれ有する抗体であっても更によい。
【0041】
更に、本発明の第1の態様の抗体のうちの1つと同じエピトープを認識する抗体は、CDRが、上記の配列と比較して、少なくとも1つの保存的アミノ酸交換、例えば、元のアミノ酸と類似の化学構造並びに特性及び/又は機能を持つ類似のアミノ酸、を有する抗体でもよい。
【0042】
本発明の第1の態様の抗体のうちの1つと同じエピトープを認識する抗体は、本発明の第1の態様の抗体のうちの1つと比較して親和性若しくは特異性が増大又は低下した抗体でもよい。そのような抗体は、当技術分野で公知の及び本明細書において以下で更に記述される方法によって直ちに得られる。
【0043】
概して、本発明の第2の態様による抗体は、特にその可変領域において、ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナルマウス抗体の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は100%(例えば、少なくとも86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%)同一である配列を有してもよい。
【0044】
通常、本発明による抗体は、モノクローナル、二重特異的又は多重特異的抗体であり得る。そのような抗体は当技術分野で公知である。本発明の文脈では、用語「モノクローナル」は、Bリンパ球の単一クローンによって産生される抗体又は同一若しくは類似のアミノ酸配列を有する抗体について記述する最も広い趣意で理解され得る。本明細書では、用語「二重特異的」は、2つの異なるエピトープと相互作用する抗体について記述する最も広い趣意で理解され得る。二重特異性抗体は、2つのモノクローナル抗体に由来し得る。任意選択で、これら2つの異なるエピトープは、同じ抗原上に局在してもよいが、異なる2つの抗原上に局在してもよい。本明細書では用語「多重特異的」は、3つ又はより多くの異なる型のエピトープと相互作用する抗体について記述する最も広い趣意で理解され得る。任意選択で、これらのエピトープは、同じ抗原又は2つ以上の抗原上に局在してもよい。
【0045】
好ましくは、本発明の態様2による抗体は、モノクローナル抗体である。更に、本発明の態様2による抗体は、好ましくは二重特異的又は多重特異的抗体である。
【0046】
抗体の産生方法は、当業者に周知である。好ましくは、抗体は、ハイブリドーマ細胞を作製することによって産生される。ハイブリドーマ細胞の産生方法、及びハイブリドーマ細胞を用いた抗体の産生方法は、当業者に周知である。概して、マウスは、所望の抗原で注射され、数日後に殺されて、所望の抗原に対する抗体を分泌している脾臓細胞が単離される。一般に、これら抗体分泌脾臓細胞と不死化非分泌性骨髄腫細胞との融合は、ハイブリドーマ細胞をもたらす。これらのハイブリドーマ細胞は、次いで通常スクリーニングされ、所望の抗体を産生しているハイブリドーマが選択される。選択したハイブリドーマは、in vivo又はin vitroで次いで培養されてもよく、所望の抗体が単離され得る。
【0047】
二機能性、又は二重特異性抗体は、異なる特異性の抗原結合部位を有してもよい。二重特異性抗体の様々な形態及びその産生は、当業者に公知である。例えば、これらには、いわゆる「ハイブリッドハイブリドーマ」によって分泌される2つの固有の重鎖及び2つの固有の軽鎖を含むIgG分子であるBSIgG、並びに異なる特異性の抗体又は抗体断片の化学コンジュゲーションによって産生される異種抗体コンジュゲートがある(Segal DM et al. Current Opin. Immunol. 1999、11:558~562頁; Van Spriel AB et al. Immunology Today 2000、21:391~397頁)。
【0048】
二重特異性抗体は、特定の部位に細胞、細胞毒素又は薬物を送達するために生成されてもよい。重要な使用は、特定の細胞標的にNK又は細胞傷害性T細胞等の宿主細胞障害性細胞を送達することであり得る(P. J. Lachmann、Clin. Exp. Immunol. 1990、79: 315頁)。別の重要な使用は、特定の細胞標的への細胞傷害性タンパク質の送達であり得る(V. Raso、T. Griffin、Cancer Res. 1981、41:2073頁; S. Honda et al.、Cytotechnology、1990、4:59頁)。さらなる重要な使用は、特定の細胞標的に抗がん非タンパク質性薬物を送達することであり得る(J. Corvalan et al.、Intl. J. Cancer Suppl. 1988、2:22頁; M. Pimm et al.、British J. of Cancer 1990、61:508頁)。そのような二重特異性抗体は、化学架橋(M. Brennan et al.、1985、Science 229:81頁)、ジスルフィド交換又はハイブリッドハイブリドーマ(クアドローマ)の産生によって調製されてもよい。クアドローマは、異なる2つの抗原に対する異なる2つの型の抗体を分泌するハイブリドーマを融合することによって構築されてもよい(Milstein and Cuello、Nature、1983、305: 537~539頁)。
【0049】
本発明の文脈では、用語「エピトープ」は、抗体の抗原結合領域の1つ又は複数で、ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体に認識され、結合され得るCD43分子の一部として最も広い趣意で理解され得る。エピトープに結合する抗体の部分は、パラトープと呼ばれる。多くの場合、エピトープは、パラトープに対する結合部位を特異的に生成する立体配座特性を有する。
【0050】
エピトープは、アミノ酸又は糖側鎖等分子の化学的に活性な表面集団から通常なり、特異的な三次元構造的特質及び特異的な電荷特質を概して有する。
【0051】
更に、エピトープと抗体間の相互作用は、抗原の一次構造、すなわちアミノ酸の連続的な配列に概して基づき得ることは、当業者によって理解され、認められている。通常、相互作用は、エピトープの二次構造、三次構造又は四次構造及びグリコシル化等の翻訳後修飾に基づいてもよい。エピトープと抗体間の相互作用は、抗原の三次元構造及び得られる表面上の特徴に更に基づいてもよく、抗体との相互作用と離れた位置でアミノ酸を含むアミノ酸配列の非連続的な区画を含んでもよい。
【0052】
2つの抗体が同一の又は立体的に重なり合うエピトープを認識する場合、抗体は、第1の態様による抗体と「同じエピトープ」を認識する。一般に、2つのエピトープが同一の又は立体的に重なり合うエピトープを認識するかどうか決定する最も広く使用されており、迅速な方法は、競合アッセイであり、その方法は通常、標識抗原又は標識抗体のいずれかを使用する、全ての数の異なるフォーマットで構成されてもよい。例えば、抗原が、96ウェルプレートに固定化され、標識抗体の結合を遮断する未標識抗体の能力が、放射性又は酵素標識を使用して測定される。
【0053】
第1の態様による抗体と「同じエピトープ」を認識する抗体とは、競合アッセイにおいて抗原に対する参照抗体の結合を50%又はより多く遮断する抗体のことを通常指し、逆に言えば、参照抗体は、競合アッセイにおいて抗原に対する抗体の結合を50%又はより多く通常遮断する。
【0054】
一般に、ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体に認識され、結合されるエピトープは、ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体と組み合わせて当技術分野で公知の任意の適切なエピトープマッピング方法によって同定されてもよい。
【0055】
そのような方法の例は、CD43に由来する多様な長さのペプチドを、ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体に対する結合についてスクリーニングする工程を含み、その際抗体に特異的に結合できる最小の断片は、抗体に認識されるエピトープの配列を通常含有する。一般に、CD43ペプチドは、合成によって又はCD43のタンパク質分解性消化によって産生されてもよい。質量分光分析等、抗体に結合しているペプチドの同定方法は、当業者に周知である。別の例において、NMR分光法を使用して、本発明の抗体と相互作用する残基を同定することができる。例えば、均一に15N及び2H標識されたCD43ペプチドを、未標識抗体と混合することができ、未標識抗体と相互作用する標識ペプチドのアミノ酸を、NMRスペクトル変化内の位置として検出することができる。一般に、2つのスペクトル間の差異により、抗体との相互作用に関係するCD43中のアミノ酸の同定が可能になる。好ましくは、質量分光分析を使用して、抗体に結合しているペプチドを同定する。
【0056】
見本として、ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体に認識され、結合されるエピトープは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってCD43 DNAの様々なDNA断片を増幅する工程と、ヒスチジン融合タンパク質との接続を含む発現ベクター中にこれらの断片を組み込む工程と、タンパク質発現の後に、例えばウェスタンブロットによってエピトープを検出する工程とを含む方法によって同定されてもよい。
【0057】
好ましい実施形態において、態様1又は2による抗体は、ヒトCD43にO結合しているGalNAcを含むエピトープを認識する。
【0058】
さらなる例において、ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体に認識され、結合されるCD43上の部位を決定するために、CD43でクローニングした発現ベクターにPCR方法によって欠失突然変異を導入して、CD43中に様々な欠失部位を有するタンパク質を発現する大腸菌(Escherichia coli(E. coli))変異体系列等の変異体系列を調製してもよい。これらの大腸菌変異体は、発現のために培養され、誘導されてもよい。抗原として細胞溶解物を使用してウェスタンブロット解析が実施されてもよい。
【0059】
ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体に認識され、結合されるエピトープを同定するさらなる方法は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)等の免疫アッセイによる検出を含んでもよい。
【0060】
本発明の文脈では、用語「親和性」は、エピトープと抗体のエピトープ結合部位の間の相互作用の強度として最も広い趣意で理解され得る。抗体親和性の絶対値、すなわち親和定数を決定する方法は、当業者に周知である。しかしながら、抗体親和性の相対値も、概して決定され得、すなわち、2つの抗体の親和性が、それらの絶対値を決定することなく比較される。抗体の親和性を比較する方法は、当業者に周知である。例えば、フローサイトメトリーが使用されてもよく、その際、所望のエピトープを有する細胞は、異なる抗体とそれぞれ独立に接触されてもよく、その抗体は、免疫蛍光二次抗体でその後印をつけられる。通常、フローサイトメトリーによる検出後に、抗体のシグナルの強度が、比較され得る。
【0061】
第1の態様の抗体による抗体と同じエピトープを認識する第2の態様による抗体の同定方法は、当業者に周知である。例えば、第2の態様による抗体は、抗体ライブラリーに基づくファージディスプレイによって同定されてもよい。
【0062】
結果として、同じエピトープを認識する本発明の抗体は、ヒト抗体でもよい。
【0063】
別の好ましい実施形態において、第2の態様による抗体は、キメラ抗体である。より好ましい実施形態において、第2の態様による抗体は、第1の態様によるキメラ抗体である。
【0064】
キメラ抗体は、ある種の免疫グロブリンの少なくとも1つの領域が、遺伝子工学によって別の種の免疫グロブリンの別の領域に融合されて、その免疫原性が減少している抗体である(例えば米国特許第4,816,567号及び米国特許第4,816,397号を参照のこと)。
【0065】
別の好ましい実施形態において、第2の態様による抗体は、ヒト化抗体である。より好ましい実施形態において、第2の態様による抗体は、第1の態様の抗体によるキメラ又はヒト化抗体である。
【0066】
一般に、ヒト化抗体は、キメラ抗体の特定の型である。例えば、ヒト化抗体は、マウス抗体フレームワークコードDNAにヒト抗体のDNAを移植することによって又はヒト抗体フレームワークコードDNAにマウス抗体のDNAを移植することによって産生してもよい。好ましくは、ヒト抗体のDNAが、マウス抗体フレームワークコードDNAに移植される。一般に、DNAの移植は、標的抗体フレームワークコードDNAへの1つ又は複数のDNA配列の移植を含む。任意選択で、可変及び定常領域並びに重鎖及び軽鎖が、部分的又は完全にヒト化されてもよい。好ましくは、マウス抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が、ヒト化される。より好ましくは、マウス抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、1~50、好ましくは1~30、より好ましくは1~20アミノ酸をコードしているDNA配列を変化させることによってヒト化される。移植されるDNAは、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる抗原特異性を決定する6つの超可変ループのDNA領域、若しくはCDRを含まないDNA領域、又は両方を概して含み得る。好ましくは、ヒト化は、CDRを含まないDNAの移植を含む。
【0067】
一般に、得られたDNA構築物を次いで使用して、非ヒト親抗体と比較して免疫原性が通常より少ない又はない抗体を発現させ、産生してもよい。これは、脱グリコシル化抗体又は脱フコシル化抗体等の修飾抗体の産生を含む。そのような方法は当技術分野で周知である。
【0068】
結果として、同じエピトープを認識する本発明の抗体は、脱グリコシル化抗体又は脱フコシル化抗体でもよい。
【0069】
別の好ましい実施形態において、態様2の抗体によるモノクローナル抗体は、T細胞急性リンパ性白血病(T-ALL)のEGIL T3サブグループ、T細胞リンパ芽球性リンパ腫細胞、及びワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症(WM)細胞に対する抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を誘導する能力がある。
【0070】
リンパ球は白血球の群に属し、体液性及び細胞媒介性免疫のメディエータである。リンパ球には、B細胞及びT細胞という2つの群がある。
【0071】
他の多くの細胞型のように、B及びT細胞は、B及びT細胞腫瘍へと異常に発達することがあり得る。B及びT細胞を発達させる発達段階が多いため、様々な腫瘍が存在する。B細胞及びT細胞の両方が、リンパプロジェニター細胞から生じる。
【0072】
B細胞の場合、このリンパプロジェニター細胞は、形質細胞が形成されるまでに定義可能な特定の細胞型をそれぞれ含む多くのB細胞発達段階を経て発達する。これらの段階の1つには、いわゆる「IgM分泌B細胞」があり、その細胞は、抗体産生形質細胞に最終的に発達する。「IgM分泌B細胞」から生じる腫瘍は、「ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症」(WM)と呼ばれる。WMは、珍しい、無痛性の不治の病である。WMは、クローン性IgM分泌リンパ形質細胞性細胞の骨髄蓄積によって特徴付けられる。
【0073】
T細胞は、わずかな発育段階でリンパプロジェニター細胞から成熟T細胞に発。腫瘍は、成熟T細胞又はリンパプロジェニター細胞から特に進化することがあり、後者はそれぞれ、B又はT細胞急性リンパ性白血病、(B-ALL)及び(T-ALL)に至る。T細胞表現型T-ALLは、全ての急性リンパ性白血病事例のうち約20%の主因であり、子供より成人に多く起こる。T-ALLは、T細胞リンパ芽球性リンパ腫(T-LBL)と密接に関係しており、2つの疾患同士の判別診断は、T-ALLにおける骨髄又はT-LBLにおける二次リンパ器官等特定部位に多く見られる局在化に基づく。European Group for the Immunological Characterization of Leukemias (EGIL)は、免疫表現型によってT-ALLを4つのサブグループに分類した(Bene MC、Leukemia 1995;9:1783頁):
1) EGIL T1(pro-)、CD3(cCD3)の細胞質陽性及びCD7の表面発現によって特徴付けられる;
2) EGIL T2(pre-)、cCD3、CD7の陽性及びCD2又はCD5の陽性によって特徴付けられる;
3) EGIL T3(皮質)、cCD3、CD1aの陽性及び表面CD3(sCD3)の存在又は不在によって特徴付けられる
4) EGIL T4(成熟白血病)、cCD3及びsCD3の陽性並びにCD1aの陰性によって特徴付けられる。
【0074】
本明細書では用語「抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)」とは、ナチュラルキラー(NK)細胞等の細胞傷害性エフェクター細胞により、抗体に結合され、印をつけられた細胞を殺すことである。
【0075】
抗体がADCCを誘導する能力があるかどうか検査するために、以下のアッセイを使用することができる。エフェクター細胞を含む健康な提供者由来の末梢血単核細胞(PBMC)を、エピトープを発現している標的細胞と共培養することによる脱顆粒アッセイが、異なる濃度の抗体の存在下で実行される。4×104個の標的細胞を、96ウェル丸底プレートに播種し、異なる濃度の抗体(0、10、50、100及び200ug/mL)又は対照IgG1の存在下で、37℃、5% CO2で30分間培養する。その後、同じ提供者由来の0.4×106個PBMC(固定エフェクター細胞(E):標的細胞(T) =10:1)を、20μL/mLフィコエリトリン(PE)コンジュゲート抗CD107aモノクローナル抗体(mAb)(BD)と一緒に各ウェルに添加し、細胞を、37℃、5% CO2で3時間次いでインキュベートする。1時間後、6μg/mLモネンシンを各ウェルに添加する(GolgiStop、BD)。インキュベーション期間の終了時に、細胞を、アロフィコシアニン(APC)コンジュゲート抗CD56及びペリジニンクロロフィルタンパク質複合体(PerCp)コンジュゲート抗CD3で染色し、ATTUNE NxTフローサイトメーター(THERMO Scientific)で分析する。CD3-/CD56+/CD107a+細胞を検出することにより、標的細胞溶解を誘導するNK細胞(CD3-/CD56+)(CD107a+)が測定される。抗体濃度の増大によるCD3-/CD56+/CD107a+細胞の増大は、したがって抗体がADCCを誘導する潜在性を確認する。得られたデータにより、免疫標的化手法を設計することが可能になり、その手法は、例えば、T細胞急性リンパ性白血病/リンパ芽球性リンパ腫における切迫した、満たされていない臨床的必要性である。抗体がADCCを誘導する能力があるかどうか、検査するさらなる方法も使用され得、当業者に周知である。
【0076】
第3の態様において、本発明は、態様1又は態様2による抗体に由来する結合分子に関する。
【0077】
本発明によると、結合分子は、ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナルマウス抗体に由来する分子である。好ましくは、結合分子は、免疫グロブリンを含む分子であり、すなわち、少なくとも1つの免疫グロブリン(Ig)ドメインを含む。
【0078】
好ましい実施形態において、本発明の結合分子は、一本鎖抗体からなる群から選択されている。より好ましい実施形態において、結合分子は、一本鎖可変断片(scFv)、ダイアボディ、トリアボディ又はテトラボディ等のscFvの多量体、抗体断片、好ましくはFab、tandab及びフレキシボディからなる群から選択される。
【0079】
抗体の構造、特にそのCDRの機能は、概して当技術分野で公知である(Carter PJ. Potent antibody therapeutics by design. Nature Rev. Immunol. 6:343~357頁、2006)。一本鎖Fv(scFv)及びその多量体、tandab、ダイアボディ並びにフレキシボディは一般に、例えばWO 1988/001649 A1、WO 1993/011161 A1、WO 1999/057150 A2及び欧州特許第1293514号B1からの当技術分野で公知の標準抗体のフォーマットである。
【0080】
scFvにおいて、抗体の軽及び重鎖の2つの抗原結合可変領域(VH Fv及びVL Fv)は、リンカーペプチドによって一般に人工的に接続され、一本鎖可変断片又は一本鎖抗体と称される(Bird, et al. (1988) Science 242:423~426頁; Orlandi, et al (1989) Proc Natl Acad Sci USA 86:3833~3837頁; Clarkson et al.、Nature 352: 624~628頁(1991))。抗原結合部位は、モノクローナル抗体の軽及び重鎖の可変ドメインで構成され得る。いくつかの調査は、scFv断片が、全抗体の1つの結合部位の完全に本質的な抗原結合親和性を実際に有し得ることを示した。
【0081】
この発明の文脈において、ダイアボディは、2つの結合特異性を持つscFvであり、単一特異的である二価、又は二重特異性である二価のいずれかであり得る。
【0082】
Tandabs及びフレキシボディは、例えば米国特許出願公開第2007031436号及び欧州特許第1293514号B1にそれぞれ定義されるさらなる抗体のフォーマットである。
【0083】
タンパク質のイディオタイプを含有する抗体断片は、当技術分野で公知の技術によって生成され得る。例えば、これらの断片には、抗体分子のペプシン消化によって産生され得るF(ab')2断片; F(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することによって生成され得るFab'断片;パパイン及び還元薬剤で抗体分子を処理することによって生成され得るFab断片;及びFv断片があるが、これに限定されない。
【0084】
本発明の抗体又は結合分子は、活性物質、好ましくは毒素、ナノ粒子、サイトカイン若しくはラジオヌクレオチドに更に連結され得る。そのような抗体コンジュゲートは当技術分野で公知である(Wu AM、Senter PD. Nature Biotechnol. 23:1137~1146頁、2005、Pastan et al. Annu. Rev. Med. 58:221~237頁、2007、WO 1990/012592 A1、WO 2007/030642 A2、WO 2004/067038 A1、WO 2004/003183 A1、米国特許出願公開第2005/0074426号A1、WO 1994/004189 A1)。
【0085】
本発明は、そのさらなる態様において、好ましくは1つ又は複数のシグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインに連結された態様3の結合分子を含むキメラ抗原受容体(CAR)に更に関する。
【0086】
好ましくは、本発明は、CD3ζ鎖を含む細胞内領域、T細胞受容体のシグナル伝達領域、並びに2つの共刺激ドメインCD28及び4-1BBに連結された態様3の結合分子の好ましい実施形態のscFvを含むキメラ抗原受容体(CAR)に関する。
【0087】
本発明によるCARは、T細胞又はNK細胞において発現された場合、態様1若しくは態様2のモノクローナル抗体に認識され、結合されるエピトープを保有する悪性細胞を標的化するための妥当なツールである。本明細書では、用語「キメラ抗原受容体」(CAR)とは、単一融合分子内に1つ又は複数のシグナル伝達ドメインと関連付けられた標的化部分を含む合成受容体のことを指す。一般に、CARの結合部分はscFvを含むが、他の結合実体を含んでもよい。受容体又はリガンドドメインに基づく結合部分も、成功裏に使用されてきた。CARのシグナル伝達ドメインは、CD3ζ又はFc受容体γ鎖の細胞質領域に由来し得るが、他の細胞質領域にも由来し得る。第1世代CARは、T細胞の細胞毒性を成功裏に方向付け直すことが示された。共刺激分子由来のシグナル伝達ドメイン、並びに膜貫通及びヒンジドメインを追加して第2及び第3世代のCARが形成され、T細胞が、CD19を発現する悪性細胞に対して方向付け直すことができたという、ヒトにおいていくつかの良好な治療的研究が得られた(Porter DL et al.、N Eng J Med, 2011)。
【0088】
第5の態様において、本発明は、態様4によるキメラ抗原受容体、態様1及び2による抗体又は態様3による結合分子による結合分子をコードする核酸配列を含む、発現ベクターに関する。
【0089】
概して、発現ベクターは、標的細胞に遺伝子等所望の核酸配列を導入するために使用されるプラスミドであり、核酸配列にコードされるタンパク質、すなわちキメラ抗原受容体、抗体又は結合分子の転写及び翻訳をもたらす。したがって、発現ベクターは、発現ベクター上にある核酸配列の効果的な転写を指令するために、プロモーター及びエンハンサー領域等の調節配列、並びにポリアデニル化部位を一般に含む。発現ベクターは、真核生物若しくは原核生物の細胞における選択用として選択可能なマーカー、得られたタンパク質を精製するための精製タグ、多重クローニング部位若しくは複製起点等追加の必要な又は有用な領域を更に含んでもよい。
【0090】
通常、発現ベクターは、ウイルス又は非ウイルスベクターでもよい。一般に、レトロウイルスベクター、例えばレンチウイルス若しくはアデノウイルスベクター等の様々なウイルスベクター、又はプラスミドが使用され得る。好ましい実施形態において、態様5による発現ベクターは、ウイルスベクターである。より好ましい実施形態において、発現ベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0091】
第6の態様において、本発明は、態様4によるキメラ抗原又は態様5による発現ベクターを含むCD3+リンパ球、NKリンパ球、サイトカイン誘導性キラー(CIK)細胞、γδリンパ球、NKT細胞若しくは別の免疫エフェクター細胞に関する。
【0092】
概して、CD3は、機能的T細胞受容体複合体においてT細胞受容体のα:βヘテロ二量体に会合する4つのシグナル伝達鎖の複合体である。CD3複合体は、T細胞受容体シグナル伝達に通常必要とされる。一般に、CD3+リンパ球の群は、胸腺細胞及びT細胞だけを含有する。CD3+細胞の検出は、例えばフローサイトメトリーによって達成され得る。
【0093】
第7の態様において、本発明は、態様1若しくは2によるモノクローナル抗体又は態様3による結合分子又は態様6によるCD3+リンパ球、NKリンパ球、サイトカイン誘導性キラー(CIK)細胞、γδリンパ球、NKT細胞若しくは他の免疫エフェクター細胞を含む医薬組成物に関する。
【0094】
本明細書では、用語「医薬組成物」は、用語「薬物」と互換的に使用され得る。
【0095】
医薬組成物中の抗体、結合分子若しくはCD3+リンパ球の含有量は、処置又は予防に有用である限り限定されないが、好ましくは全組成物当たり0.0000001~10質量%を含有する。更に、本明細書に記述される抗体、結合分子又はCD3+リンパ球は、担体中で好ましくは利用される。担体の選択は、投与経路及び活性薬剤の濃度によって決まってもよく、担体は、凍結乾燥組成物又は水性溶液の形態であってもよい。概して、適当な量の薬学的に許容できる塩を担体に使用して、組成物を等張性にする。担体の例には、それだけには限らないが、生理食塩水、リンガー溶液及びブドウ糖溶液がある。好ましくは、許容可能な賦形剤、担体又は安定剤は、利用される投薬量及び濃度で非毒性であり、クエン酸、リン酸及び他の有機酸等の緩衝液;塩形成対イオン、例えばナトリウム及びカリウム;低分子量(>10アミノ酸残基)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン若しくはゼラチン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;ヒスチジン、グルタミン、リジン、アスパラギン、アルギニン若しくはグリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース若しくはデキストリンを含めた炭水化物;単糖類;二糖類;他の糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトール;キレート化剤、例えばEDTA;非イオン性界面活性剤、例えばTween、プルロニック若しくはポリエチレングリコール;メチオニン、アスコルビン酸及びトコフェロールを含めた酸化防止剤;並びに/又は防腐剤、例えばオクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;ベンザルコニウムクロリド、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチル若しくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール; 3-ペンタノール;及びm-クレゾールを含む。適切な担体及びその製剤については、Remington's Pharmaceutical Sciences、17版、1985、Mack Publishing Coにより詳細に記述されている。組成物は、化学療法剤等少なくとも1つのさらなる活性化合物を含有してもよい。
【0096】
好ましくは、抗体、結合分子、CD3+リンパ球及び/又は活性化合物は、有効量で含まれる。用語「有効量」とは、医薬組成物が投与される対象に検出可能な治療応答を誘導するのに十分な量のことを指す。
【0097】
第8の態様において、本発明は、態様1若しくは2による抗体又は態様3による結合分子をコードしている核酸若しくはポリヌクレオチドに関する。
【0098】
例えば、コドン/RNA最適化、異種性シグナル配列との置きかえ及びmRNA不安定化要素の削除によって最適化される抗体をコードしているポリヌクレオチドも、本明細書に提供される。したがって、コドン変化を導入する及び/又はmRNA中の阻害領域を削除することによって組換え発現のための抗体若しくはその断片(例えば、軽鎖、重鎖、VHドメイン又はVLドメイン)をコードしている最適化された核酸を生成する方法は、例えば、米国特許第5,965,726号;第6,174,666号;第6,291,664号;第6,414,132号;及び第6,794,498号に記述されている最適化方法を適合させることによって実施できる。例えば、RNA内の潜在的スプライス部位及び不安定化要素(例えば、A/T又はA/Uリッチな要素)を、核酸配列にコードされるアミノ酸を改変することなく突然変異させて、組換え発現用としてRNAの安定性を増大させ得る。改変は、例えば同一アミノ酸に対して代わりのコドンを使用する遺伝暗号の退縮を利用する。一部の実施形態において、保存的な突然変異、例えば、元のアミノ酸と類似の化学構造並びに特性及び/又は機能を持つ類似のアミノ酸をコードするように1つ又は複数のコドンを改変することが望ましい場合がある。そのような方法は、最適化されていないポリヌクレオチドにコードされる抗体の発現と比較して、抗体又はその断片の発現を少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍若しくは100倍若しくはより多く増大させ得る。
【0099】
ある特定の実施形態において、本明細書に記述される抗体又はその断片(例えば、VLドメイン及び/又はVHドメイン)をコードしている最適化されたポリヌクレオチド配列は、本明細書に記述される抗体又はその断片(例えば、VLドメイン及び/又はVHドメイン)をコードしている最適化されていないポリヌクレオチド配列のアンチセンス(例えば、相補的)ポリヌクレオチドにハイブリダイズできる。特定の実施形態において、本明細書に記述される抗体又は断片をコードしている最適化されたヌクレオチド配列は、本明細書に記述される抗体又はその断片をコードしている最適化されていないポリヌクレオチド配列のアンチセンスポリヌクレオチドに高い厳しさの条件下でハイブリダイズする。特定の実施形態において、本明細書に記述される抗体又はその断片をコードしている最適化されたヌクレオチド配列は、本明細書に記述される抗体又はその断片をコードする最適化されていないヌクレオチド配列のアンチセンスポリヌクレオチドに高い厳しさ、中程度若しくはより低い厳しさのハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。ハイブリダイゼーション条件に関係する情報は、記述されている、例えば、米国特許出願公開第2005/0048549号(例えば、72~73節)を参照のこと。
【0100】
本発明のポリヌクレオチドは、当技術分野で公知の任意の方法によって得ることができ、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定できる。本明細書に記述される抗体及びこれらの抗体の修飾されたバージョンをコードしているヌクレオチド配列は、当技術分野で周知の方法を使用して決定され得、すなわち、抗体をコードする核酸を生成するように、特定のアミノ酸をコードすることが公知のヌクレオチドコドンが組立てられる。抗体をコードしているそのようなポリヌクレオチドは、化学的に合成されたオリゴヌクレオチドから組立てることができ(例えば、Kutmeier G et al.、(1994)、BioTechniques 17: 242~6頁に記載の通り)、その組み立ては、簡潔には、抗体をコードしている配列の部分を含有する重なり合ったオリゴヌクレオチドの合成、それらオリゴヌクレオチドのアニーリング及びライゲーション、次いでPCRによるライゲートしたオリゴヌクレオチドの増幅を含む。
【0101】
別法として、本明細書に記述される抗体をコードしているポリヌクレオチドは、当技術分野で周知の方法(例えば、PCR及び他の分子クローニング方法)を使用して適切な供給源(例えば、ハイブリドーマ)の核酸から生成することができる。例えば、ハイブリドーマ細胞から得られるゲノムDNAを使用して公知の配列の3'及び5'末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを使用するPCR増幅を実行し、対象の抗体を産生することができる。そのようなPCR増幅方法を使用して、抗体の軽鎖及び/又は重鎖をコードしている配列を含む核酸を得ることができる。そのようなPCR増幅方法を使用して、抗体の軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域をコードしている配列を含む核酸を得ることができる。増幅された核酸を宿主細胞における発現、並びに例えば、キメラ及びヒト化抗体を生成するためのさらなるクローニングのためにベクターにクローニングすることができる。
【0102】
特定の抗体をコードしている核酸を含有するクローンは利用できないが、抗体分子の配列が公知である場合、免疫グロブリンをコードしている核酸は、化学的に合成する又は配列の3'及び5'末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを使用するPCR増幅、若しくは特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用して例えば、抗体をコードするcDNAライブラリーからcDNAクローンを同定するクローニングによって、適切な供給源(例えば、本明細書に記述される抗体を発現させるために選択されたハイブリドーマ細胞等抗体を発現する任意の組織若しくは細胞から生成される抗体cDNAライブラリー若しくはcDNAライブラリー、又はそれらから単離される核酸、好ましくはポリA+ RNA)から得ることができる。PCRによって生成された増幅核酸は、当技術分野で周知の任意の方法を使用して複製可能なクローニングベクターに次いでクローニングされ得る。
【0103】
本明細書に記述される本発明の抗体をコードしているDNAは、従来通りの手順(例えば、抗体の重及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合する能力があるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによる)を使用して直ちに単離し、配列決定され得る。ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの供給源として役立ち得る。一旦単離されたら、DNAは、発現ベクター内に配置され得、そのベクターは、他の方法で免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えば、CHO GS System(商標)(Lonza)のCHO細胞)、又は骨髄腫細胞等の宿主細胞に次いでトランスフェクトされて、組換え宿主細胞における抗体の合成を得る。
【0104】
全抗体を生成するために、VH若しくはVLヌクレオチド配列、制限部位及び制限部位を保護するための隣接配列を含むPCRプライマーを使用して、scFvクローン又は他のクローン内のVH若しくはVL配列を増幅することができる。当業者に公知のクローニング技術を利用して、PCR増幅したVHドメインは、重鎖定常領域、例えば、ヒトγ4定常領域を発現しているベクターにクローニングされ得、PCR増幅したVLドメインは、軽鎖定常領域、例えば、ヒトκ又はλ定常領域を発現しているベクターにクローニングされ得る。ある特定の実施形態において、VH又はVLドメインを発現するためのベクターは、プロモーター、分泌シグナル、可変領域のためのクローニング部位、定常ドメイン及びネオマイシン等の選択マーカーを含む。VH及びVLドメインは、必要な定常領域を発現する1つのベクターにもクローニングされ得る。当業者に公知の技術を使用して、重鎖変換ベクター及び軽鎖変換ベクターを細胞系に次いで同時トランスフェクトして、全長抗体、例えば、IgGを発現する安定又は一過性細胞系が生成される。
【0105】
DNAは、例えば、マウス配列の代わりにヒト重及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することによって、又は非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全て若しくは部分を免疫グロブリンコード配列に共有結合させることによって修飾することもできる。
【0106】
可変領域の部位特異的若しくは高密度突然変異誘発又は他の突然変異誘発方法を使用して、モノクローナル抗体の特異性、親和性、等を最適化することができる。特に、親和性成熟戦略及びチェーンシャッフリング戦略(Marks et al.、1992、Bio/Technology 10:779~783頁)は当技術分野で公知であり、それを利用して高親和性ヒト抗体を生成することができる。
【0107】
第9の態様において、本発明は、態様1又は2の抗体によるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞に関する。
【0108】
第10の態様において、本発明は、ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマに関する。
【0109】
第11の態様において、本発明は、態様1又は2によるモノクローナル抗体を産生する方法に関し、前記方法が、ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ細胞から前記抗体を単離する工程を含む。
【0110】
第12の態様において、本発明は、T細胞急性リンパ性白血病細胞、Tリンパ腫細胞、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症細胞又は腫瘍関連マクロファージの同定又は単離方法であって、前記細胞を含む細胞サンプルを態様1若しくは2によるモノクローナル抗体又は態様3による結合分子と接触させる工程を含む方法に関する。
【0111】
一般に、マクロファージは、腫瘍微環境において最も代表的な非悪性細胞である。これらの腫瘍関連マクロファージ(TAM)は、前腫瘍炎症性及び免疫抑制性表現型を獲得し、化学療法抵抗性、血管形成、細胞運動性及び管内/管外遊出に有利に働くと考えられている。したがって、TAMを標的化することにより、新規の治療的な、なお未開拓の臨床的オプションが示されて、現在の抗がん処置の効力が改善される可能性がある。
【0112】
抗体若しくは結合分子に基づくT細胞急性リンパ性白血病細胞、Tリンパ腫細胞、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症細胞又は腫瘍関連マクロファージ等特定の細胞の同定又は単離方法は、フローサイトメトリーによる蛍光細胞選別、磁気細胞単離、若しくは例えば細胞選別機による単一細胞選別に基づく方法等当業者に一般に周知である。
【0113】
第13の態様において、本発明は、CD3+リンパ球、NKリンパ球、サイトカイン誘導性キラー(CIK)細胞、γδリンパ球、NKT細胞又は他の免疫エフェクター細胞に態様5の発現ベクターによる発現ベクターを導入する工程を含む、態様4のキメラ抗原受容体によるキメラ抗原受容体を発現するCD3+リンパ球、NKリンパ球、サイトカイン誘導性キラー(CIK)細胞、γδリンパ球、NKT細胞又は他の免疫エフェクター細胞を産生する方法に関する。
【0114】
これは、単一細胞を産生する又は単一細胞に発現ベクターを導入する可能性も含む。
【0115】
第14の態様において、本発明は、CD45+、CD3+、CD8-、CD127+、CCR7+ Tリンパ球の同定又は単離方法であって、前記Tリンパ球を含む細胞サンプルを態様1若しくは2による抗体若しくは態様3による結合分子と接触させる工程を含む方法に関する。
【0116】
好ましい実施形態は、T細胞急性リンパ性白血病若しくはワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症の処置方法に使用するための、態様1若しくは2の抗体による抗体、態様3による結合分子、態様5による発現ベクター、態様6によるCD3+リンパ球、NKリンパ球、サイトカイン誘導性キラー(CIK)細胞、γδリンパ球、NKT細胞若しくは他の免疫エフェクター細胞、又は態様7による医薬組成物である。
【0117】
加えて、他の悪性病変も処置される可能性があり、細胞は、本発明の態様1及び2の抗体に認識されるエピトープを発現する。
【0118】
追加の好ましい実施形態は、CD45+、CD3+、CD8-、CD127+、CCR7+ Tリンパ球の同定又は単離方法に使用するための、態様1若しくは2による抗体若しくは態様3による結合分子である。
【0119】
別の好ましい実施形態は、T細胞急性リンパ性白血病細胞、Tリンパ腫細胞、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症細胞又は腫瘍関連マクロファージの単離又は同定方法に使用するための、態様1若しくは2の抗体による抗体若しくは態様3による結合分子である。
【0120】
追加の好ましい実施形態は、T細胞急性リンパ性白血病又はワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症の診断方法に使用するための、態様1若しくは2の抗体による抗体若しくは態様3による結合分子である。
【0121】
加えて、他の悪性病変も診断される可能性があり、細胞は、本発明の態様1及び2の抗体に認識されるエピトープを発現する。
【0122】
以下において、本発明は、図及び例によって更に記述され、それらは説明を目的とするものであり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0123】
図1】健康な提供者のパネルの末梢血単核細胞における本発明により寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体のエピトープの発現及び最新技術のCD43検出抗体との比較を示す図である。 上の散布図は、フローサイトメトリーによって得られたデータを示す。x軸は、前方散乱検出(FSC)を示し、y軸は側方散乱(SSC)を図示する。各点は、1個の細胞に対応する。 下のヒストグラムは、x軸にフィコエリトリンシグナル強度を図示する。y軸は、シグナル強度を無染色サンプルの最大シグナル強度100%と関連付ける。塗っていない曲線は無染色対照を表し、横縞で塗った曲線はスクランブルIgG1染色細胞(すなわち陰性対照)を表し、格子縞で塗った曲線はmAb UN1染色細胞を表し、斜縞で塗った曲線はCD43染色細胞を表す。
図2】本発明により寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体に認識される細胞集団を示す図である。 図2は、4つの散布図を示す。左の2つの散布図は、リンパ球に属する。右の2つの散布図は、本発明により寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体によって検出されるリンパ球からのものである。 上の2つの散布図において、x軸はCD4シグナル強度を表し、y軸はCD8シグナル強度を図示する。下の2つの散布図において、x軸はCD45roシグナル強度を表し、y軸はCCR7シグナル強度を表す。
図3】2つのヒストグラムを示す図である。上のヒストグラムは、BCWM.1細胞系における本発明により寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体(mAb UN1)によって検出されるエピトープUN1の発現を示す。下のヒストグラムは、MWCL.1細胞系におけるUN1発現を示す。塗っていない曲線は無染色対照を表し、横縞で塗った曲線は二次mAb染色細胞を表し、縦縞で塗った曲線はスクランブルIgG +二次染色細胞を表し、斜縞で塗った曲線はmAb UN1によって染色した細胞を表す。
図4】本発明により寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体に認識される腫瘍関連マクロファージ(TAM)を示す図である。白い矢は、結腸直腸がんの標本を浸潤しているTAMを示す。
図5】腫瘍細胞非存在下で対照IgG1(第1列)、腫瘍細胞非存在下でUMG1-CH(本発明の態様2によるキメラ抗体であり、元のマウスFc領域が、完全なヒトIgG1 Fc領域と置き換えられている)(第2列)及びPANC1膵臓がん細胞系存在下でUMG1-CH(第3列及び特別に左)により染色したTHP1由来マクロファージを示す図である。第1行は、DAPI染色を表し、第2行は、抗体+ alexa-fluor 488標識二次抗体、及び第3行は、重ね合わせ画像を表す。
図6】HPB- ALL(左グラフ)及びH9細胞系(右グラフ)においてADCCを評価する脱顆粒アッセイの結果を示す図である。x軸の数字は、異なるサンプルを表す、意味:標的なし(1)、E+T(2)、陰性対照(NC) 200μg/mL(3)、UMG1-CH 10μg/mL(4)、UMG1-CH 50μg/mL(5)、UMG1-CH 100μg/mL(6)、UMG1-CH 200μg/mL(7)、陽性対照(PC) 200μg/mL(8)。y軸は、サンプル当たりの試験したCD107a+ NK細胞の総数に関連するADCCによる影響を受けたCD107a+ NK細胞のパーセンテージを表す。
図7】BCWM.1細胞系においてADCCを評価する脱顆粒アッセイの結果を示す図である。x軸の数字は、異なるサンプルを表す。番号付けは、図6にしたがう。y軸は、サンプル当たりの試験したCD107a+ NK細胞の総数に関連するADCCによる影響を受けたCD107a+ NK細胞のパーセンテージを表す。
図8】CD3+発現リンパ球(CAR-T)が、H9細胞の存在下で有意に大量のインターフェロンγ(IFNγ)を放出できたことを示す図である。y軸、発現したIFNγの濃度をng/mLで記録する。x軸は:形質導入していないT細胞(1)、対照CARで形質導入したT細胞(2)及びUMG- 1 CARで形質導入したT細胞(3)を記録する。
図9】CAR-Tが、H9細胞の存在下で有意に大量のインターロイキン2(IL-2)を放出できたことを示す図である。y軸は、発現したIL2の濃度をng/mLで表す。x軸は:形質導入していないT細胞(1)、対照CARで形質導入したT細胞(2)及びUMG- 1 CARで形質導入したT細胞(3)を記録する。
図10】CAR-Tが、H9細胞の選択的致死を誘導できたことを示す図である。y軸は、死/生細胞比を記録する。x軸は: H9単独(1)、形質導入されていないT細胞存在下におけるH9(2)、対照CARで形質導入したT細胞存在下におけるH9(3)及びUMG-1 CARで形質導入したT細胞存在下におけるH9(4)を記録する。
図11】対照IgG1対UN1-mAbのヒト化バージョン(h-UN1)及びUN1-mAbの脱フコシル化バージョン(a-h-UN1)を比較するin vivo実験の腫瘍容積曲線を示す図である。
【0124】
【化1】
【実施例0125】
以下の例は、本発明を例示する目的で提供されるが、本発明を限定するものと解釈されるべきでない。例は、技術的特徴を含むものであり、本発明が、この例証の節に示される技術的特徴の任意の組合せにも関することは言うまでもない。
【0126】
(実施例1)
健康な提供者のパネルの末梢血単核細胞における本発明により寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体のエピトープの発現及び最新技術のCD43検出抗体との比較
最初に、異なる健康な提供者由来の末梢血単核細胞(PBMC)を、フィコール勾配分離によって得た。その後、細胞を5mL管に播種し、結合溶液(リン酸緩衝食塩水(PBS) + 0.5%ウシ胎仔血清(FBS)) 100μL中のICLC受託番号ICLC PD n°16001で寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生されるmAb(mAb UN1)1μg/mL又はスクランブルマウスIgG1抗体1μg/mLで染色し、4℃で30分間インキュベートした。細胞を、次いで、結合溶液中で2回洗浄し、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)コンジュゲート二次抗体で、暗所4℃で30分間染色した。その後、細胞を結合溶液中で2回洗浄し、ATTUNE NxTフローサイトメーター(THERMO Scientific)で入手した。各提供者について1つの管を無染色のまま残し、各提供者について1つの管をFITCコンジュゲート二次抗体だけで染色した。全体として、本発明により寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体は、異なる提供者の変化しやすいリンパ球部分母集団(範囲: 0~15%)を認識することができた。更に、その抗体は、骨髄由来細胞を含めたPBMC内の他の全ての細胞集団といかなる反応性も示さなかった、したがって、それら細胞集団は、それぞれの抗原の発現について陰性であった(図1、上を参照のこと)。
【0127】
それに対し、市販のクローン(Beckton Dickinson製S7)を使用することによってCD43発現について同じPBMCをアッセイした場合、全てのリンパ球及び骨髄細胞が陽性であると判明した(図1、下を参照のこと)。
【0128】
結果として、本発明により寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体は、CD43に対してすでに存在する抗体が有さない特定の制限されたパターンの反応性及び特性を呈する。
【0129】
(実施例2)
本発明により寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体に認識される細胞集団
本発明により寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体によって検出されるリンパ球部分母集団を特徴付けるために、それぞれのリンパ球の免疫磁気選別を実行した(Easysep do-it-yourself、Stemcell technologies)。簡潔には、抗体15μgを、製造業者によって提供される成分と混合して、免疫磁性分離の準備ができている溶液を得た。この溶液を、抗体によって検出されるリンパ球を少なくとも10%有する3名の異なる提供者のPBMCに添加し、FcRブロッキング後に、細胞を室温(r.t.)で15分間インキュベートした。その後、EasySep(登録商標) Magnetic Nanoparticlesを溶液に添加し、細胞をr.t.でさらなる10分間インキュベートした。溶液を磁石内に次いで置き、結合していない細胞を除去した。本発明による抗体によって検出される細胞は、ほとんどすべてCD45+ CD3+ CD4+ CD8- CD127+ CCR7+ Tリンパ球であり、その大多数はCD45ro-であった(図2及びTable1(表1)を参照のこと)。
【0130】
【表1】
【0131】
(実施例3)
本発明により寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体(mAb UN1)は、T-ALL及びワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症細胞系を認識する。
様々ながん細胞系(Table2(表2))を、UN1(MM:多発性骨髄腫)の発現について評価した。簡潔には、細胞を5mL管に播種し、結合溶液(リン酸緩衝食塩水(PBS) + 0.5%ウシ胎仔血清(FBS)) 100μL中のmAb UN1 1μg/mL又はスクランブルマウスIgG1抗体1μg/mLで染色し、4℃で30分間インキュベートした。細胞を、次いで、結合溶液中で2回洗浄し、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)コンジュゲート二次抗体で、暗所4℃で30分間染色した。その後、細胞を結合溶液中で2回洗浄し、ATTUNE NxTフローサイトメーター(THERMO Scientific)で入手した。各細胞系について1つの管を無染色のまま残し、各細胞系について1つの管をFITCコンジュゲート二次抗体だけで染色した。EGIL T3分類に属するT-ALL細胞系及びワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症(図3)が、UN1発現について全て陽性であることが観察された。
【0132】
【表2】
【0133】
(実施例4)
本発明により寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体(mAb UN1)は、腫瘍関連マクロファージを認識する。
すでに記述した通り、CD43は、造血系の異なる細胞に概して制限される特異的白血球マーカーである。mAb UN1に結合され、CD43アイソフォーム上にある特定のエピトープが、腫瘍関連マクロファージ(TAM)によって高度に発現されていることが判明した。
【0134】
免疫組織化学により異なる種類のがん由来標本を評価することによって(Table 3(表3)、図4)、UN1+マクロファージが、大部分の腫瘍の高浸潤成分であり、膵臓及び卵巣がんにおいて特異的且つ特定の高い浸潤悪性度を持つことが観察された。
【0135】
更に、マクロファージ分化のモデルにおいて、共培養されるがん細胞の有無でUN1発現が変化するかどうか評価した。
【0136】
このためにTHP1単球性白血病細胞を使用し、その細胞は、これまでに示されている通り、UN1を発現しない。分化した未分極ヒトM0マクロファージ(THP1-M)を得るために、これらの細胞を、50ng/mLホルボール12-ミリスタート13-アセタート(PMA)の存在下で適当な完全培地中で48時間培養した。培地を、PMAを含まない新しい培地と次いで置き換えた。この工程で、選択したウェルに、1:1の比でPANC1膵臓がん細胞系を48時間添加した。全ての細胞を、免疫蛍光分析用として次いで調製した。簡潔には、固定後に、THP1- Mを、UMG1- CH又はヒトIgG1対照で染色し、4℃で終夜インキュベートした。FITC抗ヒト二次mAbを、細胞に次いで2時間添加した。洗浄後に、DAPIを含む退色防止封入剤(Vectashield、Vectorlabs)を細胞に添加し、読み取りのためにカバーガラスを被せた。
【0137】
図5、右に示すように、対照IgG1で染色したTHP1由来マクロファージは完全に陰性であったが、UMG1-CHで染色したそれは、わずかに陽性であった。興味深いことに、PANC1の存在下で、THP1由来マクロファージは、UN1発現について強陽性になった。THP1由来マクロファージ(白色矢)とPANC1(赤色矢)間の相互作用の詳細を示す(図5、左)。これらの発見は、マクロファージが、再構成された腫瘍微環境内でがん細胞と共培養され、相互作用するとUN1特異的エピトープが有意に上方調節されることを実証する。この上方調節は、腫瘍関連マクロファージ浄化に焦点を合わせた治療的手法にとって都合のよい代表的な標的としてそれ自体妥当である。治療的ツールとしてのこの妥当な潜在性以上に、mAb UN1は、検出、予後の役割の分析及び予測研究に対する有用性を提供する可能性もある。
【0138】
【表3】
【0139】
(実施例5)
キメラmAb UMG1-CH(この発明の態様2による)は、T細胞急性リンパ性白血病/リンパ芽球性リンパ腫の活性な免疫療法ツールである。
免疫療法ツールとしてのmAb UMG1-CHの潜在的活性を決定するために、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)を誘導する能力を、最初に評価した。この目的のために、健康な提供者由来のPBMC(エフェクター細胞)をHPB-ALL又はH9 T-ALL細胞系(標的細胞)と共培養することによる脱顆粒アッセイを、異なる濃度のmAb UMG1-CHの存在下で以下の通り実行した:
【0140】
4×104個の標的細胞を、96ウェル丸底プレートに播種し、異なる濃度のmAb UMG1-CH(0、10、50、100、200μg/mL)又はキメラ陰性若しくは陽性対照(それぞれNC及びPC、各200μg/mL) IgG1の存在下で、最高用量(200μg/mL)で、37℃、5% CO2で30分間培養した。その後、同じ提供者由来の0.4×106個PBMC(固定E:T=10:1)を、20μL/mL PEコンジュゲート抗CD107a mAb(BD)と一緒に各ウェルに添加し、細胞を、37℃、5% CO2で3時間次いでインキュベートした。1時間後、6μg/mLモネンシンを各ウェルに添加した(GolgiStop、BD)。インキュベーション期間の終了時に、細胞を、APCコンジュゲート抗CD56及びPerCpコンジュゲート抗CD3で染色し、ATTUNE NxTフローサイトメーター(THERMO Scientific)で分析した。mAb UMG1- CH濃度と比例してCD3-/CD56+/CD107a+細胞が有意に増大することが判明し、したがって、ADCC誘導物質としてのmAb UMG1-CHの潜在性が確認された(図6)。
【0141】
これらのデータにより、免疫標的化手法を設計することが可能になり、その手法は、T細胞急性リンパ性白血病/リンパ芽球性リンパ腫において切迫した、満たされていない臨床的必要性である。
【0142】
(実施例6)
キメラmAb UMG1-CH(この発明の態様2)は、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症の活性な免疫療法ツールである。
mAb UMG1-CHの免疫療法潜在性を調査するために、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)を誘導する能力を評価した。この目的のために、異なる濃度のmAb UMG1-CH又は陰性/陽性対照の存在下で健康な提供者由来の精製したNK細胞(エフェクター細胞)及びBCWM.1細胞系(標的細胞)を共培養することにより脱顆粒アッセイを実行した。陰性対照としてmAbセツキシマブ及び陽性対照としてmAbリツキシマブを選択した。特に、105個の標的細胞を、96ウェル丸底プレートに播種し、異なる濃度のmAb UMG1-CH(0、10、50、100、200μg/mL)、200ug/mLセツキシマブ又は200μg/mLリツキシマブの存在下で、37℃、5% CO2で30分間培養した。その後、同じ提供者由来の105個NK細胞(固定E:T=1:1)を、20μL/mL PEコンジュゲート抗CD107a mAb(BD)と一緒に各ウェルに添加し、細胞を、37℃、5% CO2で2時間次いでインキュベートした。1時間後、6μg/mLモネンシンを各ウェルに添加した(GolgiStop、BD)。インキュベーション期間の終了時に、細胞を、APCコンジュゲート抗CD56及びPerCpコンジュゲート抗CD3で染色し、ATTUNE NxTフローサイトメーター(THERMO Scientific)で分析した。mAb UMG1- CH濃度に比例してCD3-/ CD56+/ CD107a+細胞が有意に増大し、リツキシマブで得られる全く同じ効果に達することが判明し、したがって、ADCC誘導物質としてのmAbの潜在性が確認された(図7)。
【0143】
(実施例7)
キメラ抗原受容体(CAR)-UMG1は、本発明により寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体のエピトープを発現する細胞に対して有意な細胞毒性を誘導する。
免疫療法ツールとしての本発明により寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される抗体の免疫療法潜在性を更に改善するために、第3世代のCARを開発した。特に、抗体の配列に由来するscFvからなる細胞外ドメインを、CD3ζ鎖からなる細胞内領域、TCRのシグナル伝達領域、並びに2つの共刺激ドメインCD28及び4-1BBとカップリングすることによってCAR-Tを設計し、このようにして生理的T細胞活性化を模倣した。この目的のために、抗体scFvを、3つの選択された共刺激ドメインと共にCARカセットにクローニングして、レンチウイルスベクターを生成した。その後、ウイルス粒子を使用して感染多重度(MOI)5で健康な提供者由来のCD3+リンパ球を形質導入し、形質導入効率をフローサイトメトリーによって評価した(約38%)。抗体のエピトープに対するCAR-Tを、標的細胞の存在下でIFNγ及びIL-2を放出する能力並びに選択的な細胞毒性能力について最終的にアッセイした。図8及び図9に示すように、CAR-UMG1は、H9細胞の存在下においてのみ有意により高い量のインターフェロンγ(IFNγ)及びインターロイキン2(IL-2)を放出することができた。加えて、CAR-UMG1だけが、H9細胞の選択的致死を誘導することができ(図10を参照のこと)、したがって得られたCARがH9細胞を認識し、T細胞活性化を誘導する能力が実証された。
【0144】
(実施例8)
この例では、対照IgG1対UN1-mAbのヒト化バージョン(h-UN1)及びUN1-mAbの脱フコシル化バージョン(a-h-UN1)を比較するin vivo実験の腫瘍容積曲線を記録する。この実験において、NOD-SCID-g-鎖-ヌル(NSG)マウス15匹を、5×106個HPB-ALL細胞で皮下移植した。マウスを、次いでランダム化して、1日目から開始して死亡、腫瘍容積>2000mm3若しくは毒性が容認できなくなるまで対照IgG1、h-UN1又はa-h-UN1 15mg/kgを腹腔内投与で週1回与えた。腫瘍容積を1日おきに判定し、各時点における各群の平均容積を図11に記録する。29日目から始まる通りh-UN1及びa-h-UN1の両方が、疾患負担の有意な減少を示し、両方の抗体のin vivoにおける強い活性が確認された。
【表4】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2023062079000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-03-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書及び図面に記載の抗体。
【外国語明細書】