(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062086
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】改変されたグラム陰性エンドリシン
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230425BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20230425BHJP
C12N 9/14 20060101ALI20230425BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20230425BHJP
C12N 15/33 20060101ALI20230425BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230425BHJP
C07K 14/005 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/55 ZNA
C12N9/14
C12N15/31
C12N15/33
C07K19/00
C07K14/005
【審査請求】有
【請求項の数】31
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023005
(22)【出願日】2023-02-17
(62)【分割の表示】P 2020503382の分割
【原出願日】2018-04-02
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2017/051886
(32)【優先日】2017-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】519356560
【氏名又は名称】サシナパス コーポレイション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリッセル,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ビーブル,マンフレッド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来の抗生物質に対する耐性の増加により、抗菌剤の設計をさらに改善する必要性が存在する。
【解決手段】本発明は、球状グラム陰性エンドリシンのアミノ酸配列、及びi)モジュール型グラム陰性エンドリシン又はii)バクテリオファージの尾部/ベースプレートタンパク質の細胞壁結合ドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する。本発明は、対応する核酸、ベクター、バクテリオファージ、宿主細胞及び組成物にも関する。本発明はまた、手術若しくは治療によるヒト若しくは動物の身体の処置方法における、又はヒト若しくは動物の身体で実施される診断方法における、前記ポリペプチド、核酸、ベクター、バクテリオファージ、宿主細胞及び組成物の使用に関する。本発明によるポリペプチド、核酸、ベクター、バクテリオファージ、宿主細胞及び組成物は、例えば食品若しくは飼料、化粧品中に使用される抗菌剤又は殺菌剤として使用されてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状グラム陰性エンドリシンのアミノ酸配列、及び、i)モジュール型グラム陰性エンドリシン又はii)バクテリオファージ尾部/ベースプレートタンパク質の細胞壁結合ドメインのアミノ酸配列、を含むポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌酵素の分野に関する。特に、本発明は、球状グラム陰性エンドリシンのアミノ酸配列、及びi)モジュール型グラム陰性エンドリシン又はii)バクテリオファージ尾部/ベースプレートタンパク質の細胞壁結合ドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する。本発明はまた、対応する核酸、ベクター、バクテリオファージ、宿主細胞及び組成物に関する。本発明はまた、手術若しくは治療によるヒト若しくは動物の身体の処置方法における、又はヒト若しくは動物の身体で実施される診断方法における、前記ポリペプチド、核酸、ベクター、バクテリオファージ、宿主細胞及び組成物の使用に関する。本発明によるポリペプチド、核酸、ベクター、バクテリオファージ、宿主細胞及び組成物は、例えば食品若しくは飼料中、又は化粧品中の抗菌剤として、又は殺菌剤として使用することもできる。
【背景技術】
【0002】
エンドリシンは、バクテリオファージ(つまり、バクテリアウイルス)によってコードされるペプチドグリカンヒドロラーゼである。それらは、ファージ増殖の溶解サイクルにおける後期遺伝子発現中に合成され、細菌のペプチドグリカンの分解を通じて感染細胞からの子孫ビリオンの放出を媒介する。酵素活性に関しては、通常、β(1,4)-グリコシラーゼ(リゾチーム)、トランスグリコシラーゼ、アミダーゼ又はエンドペプチダーゼのいずれかである。エンドリシンの抗菌剤への活用は、1991年にGasson(GB2243611)によってすでに提案されていた。エンドリシンの殺傷能力は長い間知られていたが、抗生物質の成功と優位性のために、これらの酵素を抗菌剤として使用することは無視されていた。複数の抗生物質耐性細菌が出現して初めて、エンドリシンでヒト病原体と闘うというこの単純な概念に関心が寄せられた。まったく新しいクラスの抗菌剤を開発する切実な必要性が明らかになり、エンドリシンは「エンザイバイオティクス(enzybiotics)」-「酵素(enzyme)」と「抗生物質(antibiotics)」とのハイブリッド用語-として使用され、このニーズを完全に満たした。2001年に、Fischettiと共同研究者は、グループA連鎖球菌に対するバクテリオファージC1エンドリシンの治療可能性を初めて実証した(Nelson et al., 2001)。それ以来、多くの文献が、特にグラム陽性菌による細菌感染を制御するための魅力的で補完的な代替物としてエンドリシンを確立している。その後、肺炎球菌(Loeffler et al., 2001)、炭疽菌(Schuch et al., 2002)、S. agalactiae(Cheng et al., 2005)及び黄色ブドウ球菌(Rashel et al., 2007)などの他のグラム陽性病原体に対する異なるエンドリシンが、エンザイバイオティクスとしての有効性を証明している。今日、エンドリシン療法の最も重要な課題は、外膜がペプチドグリカンからのエンドリシンへのアクセスを遮断するので、エンドリシンの外因性作用に対するグラム陰性菌の非感受性にある。
【0003】
グラム陰性菌は、特質的な非対称二重層を特徴とする外膜を持っている。外膜二重層は、リン脂質(主にホスファチジルエタノールアミン)を含む内部単層と、主に単一の糖脂質、リポ多糖(LPS)で構成される外部単層で構成されている。細菌界には非常に多様なLPS構造があり、一般的な環境条件に応じてLPS構造が変更される可能性がある。LPS層の安定性と、異なるLPS分子間の相互作用とは、主に二価イオン(Mg2 +、Ca2 +)とLPS分子のアニオン成分(リピッドAのリン酸基及び内核とKDOのカルボキシル基)の静電相互作用によって達成される。さらに、不飽和脂肪酸が存在しないことで好まれる、リピッドAの疎水性部分の高密度で規則正しいパッキングが、高粘度で堅固な構造を形成する。これにより、親油性分子の透過性が低くなり、外膜(OM)の安定性が向上する。
【0004】
グラム陰性菌とは対照的に、グラム陽性菌は外膜を持たない。細胞膜は、細胞壁を形成する最大25nmのペプチドグリカン層(グラム陰性菌の場合は最大5nm)に囲まれている。グラム陽性細胞壁の主な目的は、細菌の形状を維持し、細菌細胞内圧に対抗することである。ペプチドグリカン又はムレインは、糖とアミノ酸からなるポリマーである。糖成分は、糖成分を構成する交互になったβ-(1,4)結合のN-アセチルグルコサミン残基及びN-アセチルムラミン酸残基からなる。3~5個のアミノ酸のペプチド鎖がN-アセチルムラミン酸に結合している。ペプチド鎖は、三次元メッシュ様の層を形成する別の鎖のペプチド鎖に架橋できる。ペプチド鎖にはD-及びL-アミノ酸残基が含まれる場合があり、組成は細菌によって異なる場合がある。
【0005】
グラム陽性菌種に感染するファージに由来するエンドリシンとグラム陰性菌種に感染するファージに由来するエンドリシンとを比較すると、著しい違い、すなわちエンドリシン自体の一般構造を観察することができる。グラム陽性菌に感染するファージのファージエンドリシンはモジュール型であり、異なる個々の機能的ドメイン又はモジュールを含む。最も共通する構造は、N末端触媒ドメインとC末端細胞壁結合ドメインである(Loessner、2005)。いくつかのグラム陽性エンドリシンは、3つのモジュール:特異性の異なるN末端及び中央の触媒ドメインと、C末端の基質結合モジュールとで構成される(Navarre et al., 1999; Pritchard et al., 2004; Yokoi et al., 2005)。対照的に、グラム陰性宿主細胞に関連するファージによってコードされるエンドリシンは、典型的には非モジュール型であるが単一モジュールの球状タンパク質であり、その例外は少数である。抗菌剤としてのエンドリシンのさらなる詳細については、Nelson et al.(“Endolysins as Antimicrobials", Advances in Virus Research、vol.83(2012), p.299-365, Eds. M.Lovoxk and W.Szybalski、Elsevier)を参照せよ。
【0006】
一方、グラム陰性菌に起因する感染を制御するために、グラム陰性菌種に感染するファージに由来するエンドリシンも利用する新しい戦略が登場した。この目的のために、グラム陰性菌のエンドリシンは、例えばカチオン性、両親媒性、疎水性又は抗菌性ペプチドと融合された。このタイプの融合タンパク質は、グラム陰性菌の外膜に関する以前の問題を克服することを可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、抗菌剤に関する技術の進歩にもかかわらず、特に従来の抗生物質に対する耐性の増加により、このような抗菌剤の設計をさらに改善する必要性がいまだに当技術分野に存在する。
【0008】
この問題は、以下及び添付の特許請求の範囲に記載される主題によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、球状グラム陰性エンドリシンをグラム陰性エンドリシン又はバクテリオファージ尾部/ベースプレートタンパク質の細胞壁結合ドメインと融合させると、より効果的なグラム陰性ムラリティック(muralytic)酵素が得られることを見出した。
【0010】
したがって、第1の態様では、本発明は、グラム陰性球状エンドリシンのアミノ酸配列と、i)グラム陰性モジュール型エンドリシン又はii)バクテリオファージ尾部/ベースプレートタンパク質の細胞壁結合ドメインのアミノ酸配列とを含むポリペプチドに関する。
【0011】
そのような本発明のポリペプチドは、通常、選択される成分に応じて、アシネトバクター、アエロモナス、アグリガチバクター、アゾスピリルム、バクテロイデス、バークホルデリア、カンピロバクター、カンジダタス、カウロバクター、クラビバクター、クロノバクター、デルフティア、エンテロバクター、エルウィニア、エシェリヒア、フラボバクテリウム、ヘモフィルス、ヨードバクテリア、クレブシエラ、クルイベラ、マンハイミア、モルガネラ、ナイセリア、パントエア、パスツレラ、プランクトトリクス、シュードアルテロモナス、シュードモナス、ラルストニア、サルモネラ、シゲラ、シノリゾビウム、ソダリス、シネココッカス、タラソモナス、セルムス、ビブリオ、キサントモナス、キシレラ、エルシニアからなる群から選択される細菌の細胞壁を分解できる。
【0012】
本発明のポリペプチドは、両親媒性ペプチド、カチオン性ペプチド、疎水性ペプチド、天然に存在する抗菌ペプチド、スシペプチド及びデフェンシンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列をさらに含むことができる。そのようなさらなるペプチドは、本発明のポリペプチドの抗菌活性を増強することができる。
【0013】
さらなる態様において、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする核酸、本発明の核酸を含むベクター又はバクテリオファージ、並びに、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター及び/又はバクテリオファージを含む宿主細胞に関する。
【0014】
本発明は、また、さらなる態様において、本発明によるポリペプチド、核酸、ベクター、バクテリオファージ及び/又は宿主細胞を含む組成物に関する。そのような組成物は、好ましくは、薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は添加剤を含む医薬組成物である。
【0015】
最後に、本発明は、処置方法における使用のための、特に細菌感染の処置又は予防のための本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、バクテリオファージ、宿主細胞、組成物及び/又はキットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
以下に、添付の図面の簡単な説明を示す。図面は、本発明をより詳細に説明することを意図する。しかしながら、それらは、本発明の範囲をこれらの特定の例に限定することを意図するものではない。
【
図1】
図1はモジュール型グラム陰性エンドリシンの典型的な構造を示す。描写されているのは、KZ144エンドリシンの3次元構造である(Fokine et al. J. Biol. Chem. 2008, 283 :7242-7250)。細胞壁結合ドメイン(CBD)は、酵素活性ドメイン(構造の下部)とは明確に分離されたドメインである(図の上部を参照)。
【
図2】
図2は球状グラム陰性エンドリシンの構造を示す。描写されているのは、Lys394エンドリシンのモデル化された3次元構造である。この構造は、Lys394と97%の配列同一性を共有するT5リゾチームの構造に基づくホモロジーモデリングによって作製された。例えば、KZ144エンドリシンにみられるドメインアーキテクチャはLys394エンドリシンの構造には見られない。
【
図3】
図3はクロロホルム処理された緑膿菌(P. aeruginosa)細胞に対するサルモネラファージLys68エンドリシン及びその2つのキメラ変異体(cEL188-Lys68; cKZ144-Lys68)のムラリティック活性を示す。追加の異種CBDを示す融合タンパク質は、増加した活性を示す。
【
図4】
図4はクロロホルム処理された緑膿菌細胞に対するABgp46エンドリシン及びその2つのキメラ変異体(cKZ144-ABgp46;cICP-ABgp46)のムラリティック活性を示す。追加の異種CBDを示す融合タンパク質は、増加した活性を示す。
【
図5】
図5はクロロホルム処理された緑膿菌細胞に対するLys394エンドリシン及びそのキメラ変異体(cICP-S394)のムラリティック活性を示す。追加の異種CBDを示す融合タンパク質は、増加した活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
例示的な実施形態の説明
I.定義
本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、特定の配列内のペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基のポリマーを特に指す。ポリペプチドのアミノ酸残基は、例えば炭水化物やリン酸塩などのさまざまな基の共有結合によって修飾される場合がある。他の物質は、ヘム又は脂質などのポリペプチドとより緩く結合し、本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語にも含まれるコンジュゲートポリペプチドを生じさせる場合がある。本明細書で使用される用語は、タンパク質もまた包含することを意図している。したがって、「ポリペプチド」という用語は、例えば2つ以上のアミノ酸ポリマー鎖の複合体も包含する。「ポリペプチド」という用語は、例えば当技術分野で典型的に使用される、例えば、ビオチン化、アセチル化、ペグ化、又は、アミノ基、SH基若しくはカルボキシル基(保護基など)の化学変化などの修飾を示すポリペプチドの実施形態を包含する。以下の説明から明らかになるように、本発明によるポリペプチドは融合タンパク質であり、すなわち、この組み合わせでは自然には生じない少なくとも2つのアミノ酸配列の連結を表す。本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、特定の長さのアミノ酸ポリマー鎖に限定されないが、典型的には、ポリペプチドは約150を超えるアミノ酸の長さを示す。通常、必ずしもそうではないが、本発明の典型的なポリペプチドは、長さが約1000アミノ酸を超えない。本発明のポリペプチドは、例えば、最大約750アミノ酸長、最大約500アミノ酸長又は最大約300アミノ酸長である場合がある。したがって、本発明のポリペプチドの可能な長さの範囲は、これに限定されないが、例えば、約200~約750アミノ酸又は約250~約600アミノ酸である場合がある。特に好ましい範囲は約250~約300アミノ酸である。
【0018】
本明細書で使用される「断片」という用語は、それぞれの参照配列、例えば所定のエンドリシン又は配列番号に関してN末端、C末端及び/又は両方の末端が切断されたアミノ酸配列を指す。したがって、本明細書で使用されるアミノ酸配列の断片は、それぞれの参照配列よりも少なくとも1アミノ酸短いアミノ酸配列である。本明細書で使用されるアミノ酸配列の断片は、好ましくは最大20、より好ましくは最大19、より好ましくは最大18、より好ましくは最大17、より好ましくは最大16、より好ましくは最大15、より好ましくは最大14、より好ましくは最大13、より好ましくは最大12、より好ましくは最大11、より好ましくは最大10、より好ましくは最大9、より好ましくは最大8、より好ましくは最大7、より好ましくは最大6、より好ましくは最大5、より好ましくは最大4、より好ましくは最大3、より好ましくは最大2、より好ましくは1アミノ酸残基、各々の参照アミノ酸配列よりも短いアミノ酸配列である。断片は、例えば、参照配列に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20アミノ酸のN末端、C末端又はその両方の切断を示す場合がある。所定のアミノ酸配列の断片を含むポリペプチドは、前記参照アミノ酸配列の全長を含まないことが理解される。
【0019】
「エンドリシン」という用語は、一般に、当業者によって理解されている。 すでに前述したように、この用語はバクテリオファージによって天然においてコードされる特定のタイプの酵素を指す。バクテリオファージは、このような酵素を利用して、感染した細菌細胞の内部からウイルスの子孫を放出する。この酵素は細胞壁のペプチドグリカンを加水分解し、細菌細胞の破裂をもたらす。すべてのエンドリシンはペプチドグリカン分解酵素であるが、触媒される実際の反応、つまり細菌のペプチドグリカンで切断される実際の結合は異なる場合がある。触媒される反応に関して、エンドリシンは、例えば、グリコシダーゼ、アミダーゼ、エンドペプチダーゼ又は溶解性トランスグリコシラーゼである場合がある。当業者に知られているように、「エンドリシン」という用語は、バクテリオファージに由来するものではないが、同じ反応を触媒する酵素を包含しない。そのような酵素(例えば、ニワトリ卵白リゾチーム)は形式的に同じ反応を触媒するが、それらは、例えば生物学的機能、進化の背景及び構造に関して、エンドリシンと著しく相違する。本明細書で使用される「エンドリシン」という用語は、天然に存在するエンドリシン、その酵素的に活性な切断型、及び、熱安定性の向上、凝集の減少など、これらに由来する技術的に修飾されたエンドリシン(すなわち、天然に存在するエンドリシン及びそれらの酵素的に活性な断片)を包含する。そのような修飾エンドリシンは通常、それぞれの天然に存在するエンドリシン若しくはその酵素的に活性な断片に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも82.5%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも87.5%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも92.5%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97.5%、より好ましくは少なくとも99%以上の配列同一性を示す。「グラム陰性エンドリシン」という用語は、グラム陰性菌を標的とするバクテリオファージに由来するエンドリシンを指す。
【0020】
本明細書で使用される「モジュール型」エンドリシンは、少なくとも2つの異なる機能的ドメイン、すなわち少なくとも1つの「酵素活性ドメイン」(EAD)及び少なくとも1つの「細胞壁結合ドメイン」(CBD)を示すエンドリシンである。前者は実際の酵素活性を提供するが、後者は標的結合を提供する。それらのドメインの特性により、これら2つの活性は互いに分離できる。 明確なCBDを欠くエンドリシンは、「モジュール型エンドリシン」という用語に該当しない。
【0021】
「細胞壁結合ドメイン」又はCBDは、構造的に目立たないモジュールに折り畳まれるエンドリシン配列又はファージ尾部/ベースプレートタンパク質内のアミノ酸配列である。CBDの役割は、ペプチドグリカンに結合し、全長エンドリシン又はファージ尾部/ベースプレートタンパク質の触媒機構をその基質に向かわせることにより、マルチモジュールペプチドグリカン分解酵素の触媒効率を高めることである。CBD自体にはいかなる触媒活性もない。
【0022】
本明細書で使用される「酵素活性ドメイン」(EAD)は、構造的に目立たないモジュールに折り畳まれるモジュール型エンドリシン配列内のアミノ酸配列を指す。EADは触媒的、酵素的機能を発揮し、すなわち、例えば、エンドペプチダーゼ、キチナーゼ、ムラミニダーゼ様T4、ムラミニダーゼ様ラムダ、N-アセチル-ムラモイル-L-アラニン-アミダーゼ(アミダーゼ)、ムラモイル-L-アラニン-アミダーゼ、ムラミダーゼ、溶菌性トランスグリコシラーゼ(C)、溶菌性トランスグリコシラーゼ(M)、N-アセチル-ムラミダーゼ(リゾチーム)、N-アセチル-グルコサミニダーゼ又はトランスグリコシラーゼとして作用する。EADはモジュール型エンドリシンに由来するため、EADはモジュール型エンドリシンと高度の配列同一性を示す、すなわち、天然に存在するモジュル型エンドリシン又はその酵素的に活性な断片に対して、少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97.5%、又は最も好ましくは100%の配列同一性を示す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「球状エンドリシン」は、モジュール型の構成並びにEAD及びCBDの構造を欠いているエンドリシンである。この用語は、モジュール型エンドリシンの酵素活性ドメインのみを保持するモジュール型エンドリシンの断片を含むことを意図していない、すなわち、EADは球状エンドリシンではない。したがって、球状エンドリシンは、天然に存在するモジュール型エンドリシン又はその酵素的に活性な断片と意味のある配列同一性を示さない。通常、球状エンドリシンは、モジュール型エンドリシンに対して、90%未満、より好ましくは85%未満、より好ましくは80%未満、より好ましくは75%未満、より好ましくは70%未満、より好ましくは60%未満、最も好ましくは50%以下の配列同一性を示す。
【0024】
「バクテリオファージ尾部/ベースプレートタンパク質」という用語は、一般に当業者に理解されている。尾部タンパク質とベースプレートタンパク質はバクテリオファージのタンパク質である。バクテリオファージの尾部繊維及び/又はベースプレートに位置する結合構造は、宿主細胞へのファージゲノムの注入を媒介する上で重要な役割を果たす。尾部繊維タンパク質は尾部の先端に位置し、付着潜在力を有する宿主細菌を認識してその外表面に付着することにより、細胞表面への結合を担う。ベースプレートタンパク質は遺伝物質の移動を制御し、細胞結合特性も有することができる。特に、グラム陰性菌のミオウイルス(例えば、T4又はP2ファージ)の異なるモチーフが記載されており、LysM様のペプチドグリカン結合ドメインとの相同性を示す。別の例は、ICP1ビブリオファージのgp5と、例えばメチロバクター属のような異なる種に感染するファージのゲノムにエンコードされた関連タンパク質である。これらは、ペプチドグリカン結合ドメインと酵素活性ドメインとで構成され、宿主細菌のムレイン層を分解することができる。
【0025】
「%配列同一性」という用語は、一般的に本技術分野で理解されている。 比較される2つの配列は、該配列間の最大の相関関係を与えるために整列される。これには、一方又は両方の配列に「ギャップ」を挿入して、アライメントの程度を高めることが含まれる。次に、%同一性は、比較される各配列の全長にわたって決定される場合がある(いわゆるグローバルアライメント)。これは、同じ若しくは類似の長さの配列、又はより短い定義された長さ(いわゆるローカルアライメントアラインメント)に特に適しており、長さが等しくない配列により適している。上記の文脈において、例えば、クエリアミノ酸配列に対して少なくとも95%の「配列同一性」を有するアミノ酸配列は、対象アミノ酸配列の配列がクエリ配列と、同一であることを意味することを意図している。ただし、対象のアミノ酸配列は、クエリアミノ酸配列の各100アミノ酸あたり最大5個のアミノ酸の変更が含まれる場合がある。言い換えれば、クエリアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性の配列を有するアミノ酸配列を得るために、対象配列中のアミノ酸残基の最大5%(100個中5個)について、別のアミノ酸を挿入若しくは置換する又は削除することができる。2つ以上の配列の同一性及び相同性を比較する方法は、本技術分野で周知である。2つの配列が同一である割合は、たとえば数学的アルゴリズムを使用して決定できる。使用できる数学的アルゴリズムの好ましいが限定されない例は、Karlin et al., (1993), PNAS USA、90:5873-5877のアルゴリズムでる。そのようなアルゴリズムは、プログラムのBLASTファミリー、例えば、BLAST又はNBLASTプログラム(Altschul et al., 1990, J. Mol. Biol. 215, 403-410又はAltschul et al.(1997), Nucleic Acids Res, 25:3389-3402)、及びFASTA(Pearson(1990)、Methods Enzymol. 83, 63-98; Pearson and Lipman(1988), Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 85, 2444-2448.)に統合されており、ワールドワイドなウェブサイトncbi.nlm.nih.govのNCBIのホームページからアクセス可能である。他の配列と所定の程度同一である配列は、これらのプログラムによって識別できる。さらに、Wisconsin Sequence Analysis Packageバージョン9.1(Devereux et al., 1984、Nucleic Acids Res., 387-395)で利用可能なプログラム、たとえばBESTFIT及びGAPプログラムを使用して、2つのポリペプチド配列間の%同一性を決定することができる。BESTFITは、(Smith and Waterman(1981), J. Mol. Biol. 147, 195-197.)の「局所相同性」を使用し、2つの配列間で、類似性の最良で唯一の領域を見つける。本明細書において、参照配列と特定の程度の配列同一性を共有するアミノ酸配列に言及する場合、前記配列の違いは、保存的アミノ酸置換によることが好ましい。好ましくは、そのような配列は、参照配列の活性を保持しており、例えば、速度は遅くなる場合があるものの、グラム陰性菌のペプチドグリカン層を分解する活性を保持する。さらに、本明細書において、配列同一性の所定の割合で「少なくとも」として共有する配列に言及する場合、100%の配列同一性は含まれないことが好ましい。
【0026】
本明細書で使用される「カチオン性ペプチド」という用語は、好ましくは、正に荷電したアミノ酸残基を有するペプチドを指す。好ましくは、カチオン性ペプチドは9.0以上のpKa値を有する。典型的には、カチオン性ペプチドの少なくとも4つのアミノ酸残基、例えばリジン又はアルギニンが正に荷電している可能性がある。「正に荷電した」とは、ほぼ生理学的条件で正味の正電荷を有するアミノ酸残基の側鎖を指す。本明細書で使用される「カチオン性ペプチド」という用語は、ポリカチオン性ペプチドも指すが、例えば、20%未満、好ましくは10%未満の正荷電アミノ酸残基を含むカチオン性ペプチドも含む。
【0027】
本明細書で使用される「ポリカチオン性ペプチド」という用語は、好ましくは、ほとんど正に荷電したアミノ酸残基、特にリジン及び/又はアルギニン残基から構成されるペプチドを指す。ペプチドは、少なくとも約20、30、40、50、60、70、75、80、85、90、95又は約100%のアミノ酸残基が正に荷電したアミノ酸、特にリジン及び/又はアルギニン残基である場合、ペプチドは、ほとんど正に荷電したアミノ酸残基で構成される。正に荷電したアミノ酸残基ではないアミノ酸残基は、中性に荷電したアミノ酸残基及び/又は負に荷電したアミノ酸残基及び/又は疎水性アミノ酸残基であり得る。好ましくは、正に荷電したアミノ酸残基ではないアミノ酸残基は、中性に荷電したアミノ酸残基、特にセリン及び/又はグリシンである。
【0028】
本明細書で使用される「抗菌ペプチド」(AMP)という用語は、好ましくは、例えば細菌、ウイルス、真菌、酵母、マイコプラズマ及び原生動物に対して殺菌及び/又は微生物活性を有する任意の天然に存在するペプチドを指す。 したがって、本明細書で使用される「抗菌ペプチド」という用語は、特に、抗菌、抗真菌(anti-fungal)、抗真菌(anti-mycotic)、抗寄生虫、抗原虫、抗ウイルス、抗感染(anti-infectious)、抗感染性及び/又は殺菌性(anti-infective and/or germicidal)、殺藻、殺アメーバ、殺菌(microbicidal)、殺菌(bactericidal)、殺菌(fungicidal)、殺寄生虫、殺原虫、殺原虫性の特性を有するいかなるペプチドを指す。好ましくは、抗菌ペプチドである。 抗菌ペプチドは、RNase Aスーパーファミリー、デフェンシン、カテリシジン、グラニュリシン、ヒスタチン、プソリアシン、デルミシジン又はヘプシジンのメンバーである場合がある。抗菌ペプチドは、昆虫、魚、植物、クモ類、脊椎動物又は哺乳類に天然に存在する場合がある。好ましくは、抗菌ペプチドは、昆虫、魚、植物、クモ類、脊椎動物又は哺乳動物に天然に存在するものである場合がある。好ましくは、抗菌ペプチドは、ダイコン、カイコ、コモリクモ、カエル好ましくはアフリカツメガエル、ラナカエル、より好ましくはラナ・カテスビーアナ、ヒキガエル、好ましくはアジアのヒキガエル ブフォ ブフォ ガルガリザンス、ハエ、好ましくはショウジョウバエ、より好ましくはキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、ネッタイシマカ、ミツバチ、マルハナバチ、好ましくはボンバスパスキュラム、ニクバエ、好ましくはサルコガガペレグリン、サソリ、カブトガニ、ナマズ、好ましくはアマガエル、ウシ(cow)、ブタ(pig)、ヒツジ、ブタ(porcine)、ウシ(bovine)、サル及びヒトにおいて天然に存在する場合がある。本明細書で使用される「抗菌ペプチド」(AMP)は、特に、カチオン性ペプチド、ポリカチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、スシペプチド、デフェンシン、及び疎水性ペプチドではないが抗菌活性を示すペプチドである場合がある。
【0029】
本明細書で使用される「スシペプチド」という用語は、短いコンセンサスリピートを有する補体制御タンパク質(CCP)を指す。スシペプチドのスシモジュールは、多くの異なるタンパク質のタンパク質間相互作用ドメインとして機能する。スシドメインを含むペプチドは、抗菌活性を持つことが示されている。好ましくは、スシペプチドは天然に存在するペプチドである。
【0030】
本明細書で使用される「両親媒性ペプチド」という用語は、親水性官能基と疎水性官能基の両方を有する合成ペプチドを指す。好ましくは、本明細書で使用される「両親媒性ペプチド」という用語は、親水性基及び疎水性基の定義された配置を有するペプチドを指す。例えば、両親媒性ペプチドは、例えばアルファらせんであり、らせんの片側に沿って主に非極性側鎖を持ち、その表面の残りの片側に沿って極性残基を有する。
【0031】
本明細書で使用される「疎水基」という用語は、好ましくは、実質的に水不溶性であるが油相に可溶性であり、油相の溶解度が水又は水相中の溶解度よりも高いアミノ酸側鎖などの化学基を指す。水中では、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基が互いに相互作用して、非水性環境を生成する。疎水性側鎖を持つアミノ酸残基の例は、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、アラニン、チロシン及びプロリン残基である。
【0032】
本明細書で使用される「疎水性ペプチド」という用語は、疎水性ペプチドを指し、これは、好ましくは、疎水性基を有するアミノ酸残基の大部分で構成される。そのようなペプチドは、好ましくは、ほとんど疎水性のアミノ酸残基から構成される、すなわち、少なくとも約20、30、40、50、60、70、75、80、85、90、95、又はアミノ酸残基の少なくとも約100%が疎水性のアミノ酸残基である。疎水性ではないアミノ酸残基は、好ましくは中性であり、好ましくは親水性ではない。
【0033】
本明細書で使用される「含む」という用語は、「のみからなる」(すなわち、追加の他の事項の存在を除く)という意味に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、「含む」は、任意で追加の事項が存在する可能性があることを意味する。「含む」という用語は、「~のみからなる(すなわち、追加のその他の事項の存在を除外する)」及び「~のみからなるではなく含む」(ただし、追加のその他の事項の存在を必要とする)で、前者がより好ましい範囲内に入る具体的に想定される実施形態を包含する。
【0034】
本明細書で使用される場合、単語「a」又は「an」の使用は「1つ」を意味する場合があるが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」及び「1つ以上」の意味ともまた一致する。
【0035】
II.ポリペプチド
既に述べたように、本発明は、第一の態様において、球状グラム陰性エンドリシン、及びi)モジュール型グラム陰性エンドリシン又はii)バクテリオファージの尾部/ベースプレートタンパク質の細胞壁結合ドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する。
【0036】
エンドリシンは、抗菌剤の当業者によく知られている。これらのタンパク質の多くは配列決定されており、その構造とドメイン構造(CBDとEADを含む)が分析されている。従って、通常、例えば相同性分析に基づいて、所定のエンドリシン配列における細胞壁結合ドメインの存在を解明することは非常に簡単である。疑わしい場合、エンドリシンの所定の配列が細胞壁結合ドメインとして作用するかどうかにかかわらず、当該特性は、当技術分野で知られている日常的な試験によってまた分析することもできる。例示的な試験は、例えばMol Microbiol. 2002 Apr;44(2):335-49 and Briers et al.(Mol Microbiol. 2007 Sep;65(5): 1334-44)で提供されている。簡単に言えば、候補の細胞壁結合ドメインは緑色蛍光タンパク質(GFP)に融合される(例えばN末端)。その後、GFP融合タンパク質は、親エンドリシンの標的細菌と共にインキュベートされる。これらがグラム陰性菌である場合、次に外膜は、クロロホルム飽和緩衝液(クロロホルム飽和0.05Mトリス緩衝液(pH7.7)、45分(Lavigne et al, Cell Mol Life Sci. 2004 Nov;61(21):2753-9)により透過化処理される。次に、候補CBD-GFP融合体は、透過化処理された細胞に加えられる(最終濃度5μMなど)。精製された組換えGFPが陰性対照に使用される。次に、この混合物は、例えば25℃で5分間、インキュベートされ、続いて遠心分離され、上清が除去される。次いで、任意で細胞ペレットは洗浄され(例えば、対応する緩衝液で2回)、落射蛍光顕微鏡法、フローサイトメトリー又は共焦点蛍光顕微鏡法などの適切な手段によりGFP結合について分析される。さらに、特定のペプチドグリカン結合試験を実施することができる(Briers et al. Mol Microbiol. 2007 Sep;65(5): 1334-44)。この目的のために、標的細菌のムレインが単離され、候補CBD-GFP融合タンパク質と接触させられ、例えば落射蛍光顕微鏡によって、結合が再度分析される。
【0037】
本発明を実施するのに使用できるグラム陰性エンドリシンの例示的な細胞壁結合ドメインは、バクテリオファージΦKZ及びELのエンドリシン、又はOBPgpLYS、PVPSElgpl46及び201φ2-1エンドリシンに由来する細胞壁結合ドメインである。
【0038】
ファージのベースプレート/尾部タンパク質も当技術分野で知られており、配列、構造及びドメイン構造に関する情報が高い頻度で入手可能である。そうでなければ、エンドリシンについて上記で述べたのと同様のテストが、バクテリオファージの尾部/ベースプレートタンパク質の細胞壁結合ドメインを特定するために適している。本発明を実施する際に使用することができるバクテリオファージの尾部/ベースプレートタンパク質の例示的な細胞壁結合ドメインは、ビブリオファージICP1(YP_004251150.1を参照)又はビブリオファージRYC(BAV80844.1)のベースプレートタンパク質に由来する細胞壁結合ドメインである。
【0039】
細胞壁結合ドメイン(グラム陰性エンドリシン又はバクテリオファージの尾部/ベースプレートタンパク質に由来する)を含む特定の配列の例としては、本明細書の配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17及びこれらのいずれかと少なくとも80%の配列同一性を持ち、細胞壁結合の特性を保持する配列が提供される。特に好ましい配列は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13及び14、並びにこれらのいずれかに対して少なくとも80%の配列同一性を持ち、細胞壁結合の特性を保持する配列である。最も好ましくは、配列番号1、2、3、4、5、6、7及び8などのKZ144エンドリシンの細胞壁結合ドメインに由来する配列、並びにいずれかと少なくとも80%の配列同一性を持ち、細胞壁結合の特性を保持する配列である。
【0040】
上述したように、本発明のポリペプチドは、モジュール型グラム陰性エンドリシン又はバクテリオファージのベースプレート尾部タンパク質の細胞壁結合ドメインのアミノ酸配列の他に、球状グラム陰性エンドリシンのアミノ酸配列も含む。当業者は、所定のポリペプチドが細胞壁結合ドメインを示すグラム陰性エンドリシンに由来するか(即ちモジュール型エンドリシンであるか)、又はそのようなドメイン構造を示さないグラム陰性エンドリシン(球状エンドリシン)に由来するかを容易に確認することができる。球状エンドリシンの例は、例えば以下の表1に提供される。
【0041】
表1:球状エンドリシンの例
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【0042】
表1の球状エンドリシンの配列は、例えばNCBIのタンパク質データベースを介してアクセスできる。表1にリストされたエンドリシンの配列は、修飾されている場合があり、例えば、対応する核酸配列におけるさらなる開始コドンを回避するために、N末端メチオニンを欠く場合があることが理解される。そのような僅かに修飾された配列を使用することも本発明の範囲内であり、本明細書で表1のエンドリシンを参照すると、そのような修飾エンドリシンも前記定義に含まれることが理解される。
【0043】
特に好ましい本発明を実施する際に使用できる球状エンドリシンの配列は、Abgp46球状エンドリシン、サルモネラファージphi68のLys68及びLys394エンドリシンに由来する配列である。例示的な配列は、配列番号18、19、20、21、22、23、24、25、26、27及び28として提供される。
【0044】
細胞壁結合ドメインの配列(例えば、モジュール型グラム陰性エンドリシンの)及び球状グラム陰性エンドリシンの配列は、互いに直接又は中間リンカー配列を介して連結される場合があり、リンカー配列は好ましくは50アミノ酸長未満、より好ましくは30アミノ酸長以下、さらにより好ましくは20アミノ酸長以下である。好ましくは、細胞壁結合ドメインは、球状エンドリシンの配列、即ち酵素活性を有するドメインのN末端に位置する。
【0045】
本発明のポリペプチドの非限定的な例は、配列番号29、30、31、32、33及び34に提供されている。そのような配列が、以下でさらに定義されるアミノ酸配列ストレッチと組み合わされ、かつさらなるアミノ酸配列ストレッチが、細胞壁結合ドメイン及び球状エンドリシン配列によって形成されるユニットのN末端に位置する場合、前記配列は好ましくはメチオニン開始コドン無しで使用される(配列番号35、36、37、38、39、40を参照)。
【0046】
本発明のポリペプチドは、好ましくはペプチドグリカン分解酵素の活性を示す、即ち細菌のペプチドグリカンを分解することができる。典型的には、本発明のポリペプチドは、肺炎桿菌(K. pneumoniae)、大腸菌(E. coli)又は緑膿菌(P. aeruginosa)などの少なくとも1つの種類のグラム陰性菌のペプチドグリカンを分解することができる。グラム陰性菌に対するペプチドグリカン分解活性は、当技術分野で周知のアッセイ、例えばグラム陰性菌の外膜を透過化又は除去して(例えば、クロロホルムで)、推定酵素がペプチドグリカン層にアクセスできるようにするムラリティックアッセイ(muralytic assay)によって測定することができる。酵素が活性である場合、ペプチドグリカン層の分解は濁度の低下をもたらし、これは測光法で測定することができる(例えばBriers et al., J. Biochem. Biophys Methods 70: 531-533, (2007))。
【0047】
本発明のポリペプチドは、両親媒性ペプチド、カチオン性ペプチド、ポリカチオン性ペプチド、疎水性ペプチド、又はスシペプチド及びデフェンシンのような天然に存在する抗菌ペプチドからなる群から選択される追加の少なくとも1つのさらなるアミノ酸配列ストレッチをさらに含むことができる。この追加の少なくとも1つのアミノ酸配列ストレッチは、原則として、本発明のポリペプチドの任意の位置に存在する場合があるが、好ましくは末端、即ち本発明のポリペプチドのN末端又はC末端領域に存在する。従って、この追加のアミノ酸配列ストレッチは、細胞壁結合ドメインの配列(例えば、モジュール型グラム陰性エンドリシンの配列)と球状グラム陰性エンドリシンの配列の間に位置しないことが好ましい。そのような追加のアミノ酸配列ストレッチは、ポリペプチドの残りの部分に直接又はペプチドリンカーを介して融合される場合がある。本発明による1つ(又はそれ以上)のそのような追加のアミノ酸配列ストレッチが本発明のポリペプチドのN末端領域に存在する場合、追加のアミノ酸配列ストレッチのN末端にさらなる追加のアミノ酸が存在できることが理解される。好ましくは、これらはアミノ酸はメチオニン(Met)又は配列メチオニン、グリシン及びセリン(Met-Gly-Ser)を含む。
【0048】
この少なくとも1つの追加のアミノ酸配列ストレッチは、好ましくは、細菌の外膜を通して本発明のポリペプチドを導く機能を有し、本発明のポリペプチドに融合せずに投与される場合、活性を有するか、活性を有さないか、又は低い活性のみを有する場合がある。グラム陰性菌の外膜を通してポリペプチドを導く機能は、外膜又はLPSを破壊、透過化又は不安定化する前記アミノ酸配列ストレッチの活性によって引き起こされる。
【0049】
これらのアミノ酸配列ストレッチの活性による外膜又はLPSのそのような破壊又は透過化又は不安定化活性は、好ましくは以下の方法で決定することができる:指数関数的に成長するグラム陰性細胞が、緩衝液(20mM NaH2P04-NaOH pH7.4; 0.5M NaCl;0.5Mイミダゾール)中の最終濃度が100μg/mlのタンパク質(少なくとも1つの追加アミノ酸配列ストレッチを示す本発明の候補ポリペプチド)と共に~106/mlの細胞密度で室温でインキュベートされる。1時間後、細胞懸濁液はPBS緩衝液(10-5、10-4及び10-3)で希釈され、プレーティング(標準LB培地)され、37℃で一晩インキュベートされる。さらに、PBS緩衝液に細胞を含む陰性対照、又は追加のアミノ酸配列ストレッチを有さないマッチングしているポリペプチドとインキュベートされた細胞がプレーティングされる。残りのコロニーは、各プレートで一晩インキュベートされた後に数えられる。タンパク質がそのような外膜又はLPSを破壊又は透過化又は不安定化する活性を示す場合、細菌細胞はポリペプチドでの処置により溶解され、寒天プレート上の細菌コロニーの数は減少する。従って、タンパク質での処置後の細菌コロニーの数の減少は、外膜又はLPSを破壊、透過化又は不安定化するポリペプチドの活性を示す。
【0050】
特に好ましいのは、配列番号41(KRKKRK)による少なくとも1つのモチーフを含むカチオン性及び/又はポリカチオン性アミノ酸配列ストレッチである。特に、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17個の配列番号41のモチーフを含むカチオン性アミノ酸配列ストレッチ(KRKKRK)が好ましい。より好ましくは、少なくとも1つのKRKモチーフ(lys-arg-lys)、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32個又は33個のKRKモチーフを含むカチオン性ペプチドストレッチである。
【0051】
本発明の別の好ましい実施形態では、カチオン性アミノ酸配列ストレッチは、正に荷電したアミノ酸残基、特にリジン及び/又はアルギニン残基、中性に荷電したアミノ酸残基、特にグリシン及び/又はセリン残基をそばに(beside)含む。好ましくは約70%~約100%、又は約80%~約95%、又は約85%~約90%の正に荷電したアミノ酸残基、特にリジン、アルギニン及び/又はヒスチジン残基から構成されるカチオン性アミノ酸配列ストレッチであり、より好ましくはリジン及び/又はアルギニン残基及び約0%~約30%、又は約5%~約20%、又は約10%~約20%の中性に荷電したアミノ酸残基、特にグリシン及び/又はセリン残基である。好ましくは約4%~約8%のセリン残基、約33%~約36%のアルギニン残基、及び約56%~約63%のリジン残基から構成されるアミノ酸配列ストレッチである。特に好ましくは、少なくとも1つの配列番号42(KRXKR)のモチーフを含むアミノ酸配列ストレッチであり、式中、Xはリジン、アルギニン及びヒスチジン以外の任意のアミノ酸である。特に好ましくは、少なくとも1つの配列番号43(KRSKR)のモチーフを含むポリペプチドストレッチである。より好ましくは、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19個又は少なくとも約20個の配列番号42(KRXKR)又は配列番号43(KRSKR)のモチーフを含むカチオン性ストレッチである。
【0052】
また、好ましくは約9~約16%のグリシン残基、約4~約11%のセリン残基、約26~約32%のアルギニン残基、及び約47~約55%のリジン残基から構成されるアミノ酸配列ストレッチである。特に好ましくは、少なくとも1つの配列番号44(KRGSG)のモチーフを含むアミノ酸配列ストレッチである。より好ましくは、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19個又は少なくとも約20個の配列番号44(KRGSG)のモチーフを含むカチオン性ストレッチである。
【0053】
本発明の別の好ましい実施形態では、そのようなカチオン性アミノ酸配列ストレッチは、正に荷電したアミノ酸残基、特にリジン及び/又はアルギニン残基、疎水性アミノ酸残基、特にバリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、アラニン、チロシン、プロリン及びグリシン残基、より好ましくはアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン及び/又はトリプトファン残基をそばに(beside)含む。好ましくは約70%~約100%、又は約80%~約95%、又は約85%~約90%の正に荷電したアミノ酸残基、特にリジン及び/又はアルギニン残基及び約0%~約30%、又は約5%~約20%、又は約10%~約20%の疎水性アミノ酸残基、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、アラニン、チロシン、プロリン及びグリシン残基、より好ましくはアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン及び/又はトリプトファン残基、から構成されるカチオン性アミノ酸配列ストレッチである。カチオン性及びポリカチオン性アミノ酸配列ストレッチの例が次の表にリストされる。
【0054】
【0055】
本発明のさらなる態様において、追加のアミノ酸配列ストレッチのうちの少なくとも1つは、正の正味電荷及び約50%の疎水性アミノ酸を含む抗菌ペプチドである。抗菌ペプチドは、長さが約12~約50アミノ酸残基の両親媒性である。抗菌ペプチドは、昆虫、魚、植物、クモ形類、脊椎動物又は哺乳類に天然に存在する。好ましくは、抗菌ペプチドは、ダイコン、カイコ、コモリクモ、カエル好ましくはアフリカツメガエル、ラナカエル、より好ましくはラナ・カテスビーアナ、ヒキガエル、好ましくはアジアのヒキガエル ブフォ ブフォ ガルガリザンス、ハエ、好ましくはショウジョウバエ、より好ましくはキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、ネッタイシマカ、ミツバチ、マルハナバチ、好ましくはボンバスパスキュラム、ニクバエ、好ましくはサルコガガペレグリン、サソリ、カブトガニ、ナマズ、好ましくはアマガエル、ウシ(cow)、ブタ(pig)、ヒツジ、ブタ(porcine)、ウシ(bovine)、サル及びヒトにおいて天然に存在する場合がある。
【0056】
本発明の別の好ましい実施形態では、抗菌性アミノ酸配列ストレッチは、約0%~約5%、又は約0%~約35%、又は約10%~約35%、又は約15%~約45%、又は約20%~約45%の正に荷電したアミノ酸残基、特にリジン及び/又はアルギニン残基、及び約50%~約80%、又は約60%~約80%、又は約55%~約75%、又は約70%~約90%の疎水性アミノ酸残基、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、アラニン、チロシン、プロリン及びグリシン残基、より好ましくはアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン及び/又はトリプトファン残基、から構成される。
【0057】
本発明の別の好ましい実施形態では、抗菌性アミノ酸配列ストレッチは、約4%~約58%の正に荷電したアミノ酸残基、特にリジン及び/又はアルギニン残基、及び約33%~約89%の疎水性アミノ酸残基、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、アラニン、チロシン、プロリン及びグリシン残基、より好ましくはアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン及び/又はトリプトファン残基から構成される。
【0058】
本発明を実施する際に使用することができる抗菌性アミノ酸配列の例が以下の表にリストされる。
【0059】
【0060】
本発明のさらなる態様において、追加のアミノ酸配列ストレッチの少なくとも1つは、"The Sushi peptides: structural characterization and mode of action against Gram-negative bacteria", Ding JL, Li P, Ho B Cell Mol Life Sci.2008 Apr;65(7-8): 1202-19.に記載されたスシペプチドである場合がある。特に好ましくは、配列番号110のスシ1ペプチドである。
【0061】
好ましいスシペプチドは、スシペプチドS1及びS3及びそれらの複合である;FASEB J. 2000 Sep;14(12): 1801-13。
【0062】
本発明の別の好ましい態様では、少なくとも1つの追加のアミノ酸配列ストレッチは、少なくとも90%の疎水性アミノ酸残基、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、アラニン、チロシン、プロリン及び/又はグリシン、を含む疎水性ペプチドである。別の好ましい実施形態では、本発明のタンパク質に融合した疎水性ペプチドは、約90%~約95%、又は約90%~約100%、又は約95%~約100%の疎水性アミノ酸残基、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、アラニン、チロシン、プロリン及び/又はグリシン、から構成される。
【0063】
好ましい疎水性ペプチドは、配列番号111のアミノ酸配列を有するワルマー1(Walmagh 1)及びアミノ酸配列Phe-Phe-Val-Ala-Pro(配列番号112)を有する疎水性ペプチドである。
【0064】
本発明のさらなる態様において、少なくとも1つの追加のアミノ酸配列ストレッチは、1つ以上の正に荷電したアミノ酸残基、リジン、アルギニン及び/又はヒスチジン、に1つ以上の疎水性アミノ酸残基、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、アラニン、チロシン、プロリン及び/又はグリシン、が結合された両親媒性ペプチドである。アミノ酸残基の側鎖は、陽イオン性表面と疎水性表面がペプチドの反対側に集まっているように配向する。好ましくは、前記ペプチド中のアミノ酸の約30、40、50、60又は70%超が正に荷電したアミノ酸である。好ましくは、前記ペプチド中のアミノ酸残基の約30、40、50、60又は70%超が疎水性アミノ酸残基である。有利には、両親媒性ペプチドは、本発明のポリペプチドのN末端又はC末端に存在する。
【0065】
本発明の別の実施形態では、両親媒性ペプチドは、少なくとも5個、より好ましくは少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49個、又は少なくとも50個のアミノ酸残基から構成される。好ましい実施形態では、両親媒性ペプチドにおける前記アミノ酸残基の少なくとも約30、40、50、60又は70%がアルギニン又はリジン残基であり、及び/又は前記両親媒性ペプチドのアミノ酸残基の少なくとも約30、40、50、60又は70%は疎水性アミノ酸、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、アラニン、チロシン、プロリン及び/又はグリシン、である。
【0066】
本発明の別の好ましい実施形態では、両親媒性ペプチドストレッチは、正に帯電したアミノ酸残基、特にリジン及び/又はアルギニン残基、疎水性アミノ酸残基、特にバリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、アラニン、チロシン、プロリン及びグリシン残基、より好ましくはアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン及び/又はトリプトファン残基である。好ましくは、約10%~約50%、又は約20%~約50%、又は約30%~約45%又は約5%~約30%の正荷電アミノ酸残基、特にリジン及び/又はアルギニン残基、及び約50%~約85%、又は約50%~約90%、又は約55%~約90%、又は約60%~約90%、又は約65%~約90%の疎水性アミノ酸残基、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、アラニン、チロシン、プロリン及びグリシン残基、より好ましくはアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン及び/又はトリプトファン残基、から構成される両親媒性ペプチドストレッチである。別の好ましい実施形態では、12%~約50%の正に荷電したアミノ酸残基、特にリジン及び/又はアルギニン残基、及び約50%~約85%の疎水性アミノ酸残基、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、アラニン、チロシン、プロリン及びグリシン残基、より好ましくはアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン及び/又はトリプトファン残基、から構成される両親媒性ペプチドストレッチである。
【0067】
好ましい両親媒性ペプチドは、配列番号113のT4リゾチームのα4ヘリックス、及び配列番号114のアミノ酸配列のWLBU2-変異体、及び配列番号115のワルマー2(Walmagh 2)である。
【0068】
上記で指定される任意の追加のアミノ酸配列ストレッチは、好ましくは少なくとも5個、より好ましくは少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99個、又は少なくとも100個のアミノ酸残基から構成される。特に好ましくは、約5~約100個のアミノ酸残基、約5~約50個又は約5~約30個のアミノ酸残基から構成される追加のアミノ酸配列ストレッチである。より好ましくは、約6~約42アミノ酸残基、約6~約39アミノ酸残基、約6~約38アミノ酸残基、約6~約31アミノ酸残基、約6~約25アミノ酸、約6~約24アミノ酸残基、約6~約22アミノ酸残基、約6~約21アミノ酸残基、約6~約20アミノ酸残基、約6~約19アミノ酸残基、約6~約16アミノ酸残基、約6~約14アミノ酸残基、約6~約12アミノ酸残基、約6~約10アミノ酸残基又は約6~約9アミノ酸残基から構成されるペプチドストレッチである。
【0069】
好ましい実施形態では、本発明のポリペプチドは、KRK及び配列番号41~115からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列ストレッチを含む。
【0070】
追加のアミノ酸配列ストレッチを含む本発明のポリペプチドの非限定的な例は、N末端SMAP-29ペプチド(配列番号67)、4つの変異を示すKZ144エンドリシンに由来するCBD(配列番号8)、及びP78S変異を伴うLys68エンドリシン配列(配列番号26)を含む配列番号116である。
【0071】
本発明のポリペプチドの追加のアミノ酸配列のストレッチは、追加のアミノ酸残基を介在させることにより、酵素の残りの部分に連結させることができる(例えばクローニングの理由による)。任意に、追加のアミノ酸配列ストレッチは、リンカー配列を介在させることなく酵素配列の残りの部分に直接連結される場合がある。追加のアミノ酸配列は、1個以上が本発明のポリペプチドに存在し、酵素の同じ末端に位置する場合、同様に追加の介在アミノ酸残基により互いに連結されてもよく、又は互いに直接結合される場合がある。
【0072】
好ましくは、前記介在する追加のアミノ酸残基は、プロテアーゼによって認識及び/又は切断されない場合がある。好ましくは、前記追加のアミノ酸配列は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の追加の介在アミノ酸残基によって互いに及び/又は酵素に連結される。
【0073】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの追加のアミノ酸配列ストレッチは、グリシン、セリン及びセリン(Gly-Ser-Ser)、グリシン、アラニン、グリシン及びアラニン(Gly-Ala-Gly-Ala;配列番号117)、グリシン、アラニン、グリシン、アラニン、グリシン、アラニン、グリシン及びアラニン(Gly-Ala-Gly-Ala-Gly-Ala-Gly-Ala;配列番号118)又はグリシン、アラニン、グリシン、アラニン、グリシン、アラニン、グリシン、アラニン、グリシン、アラニン、グリシン及びアラニン(Gly-Ala-Gly-Ala-Gly-Ala-Gly-Ala-Gly-Ala-Gly-Ala;配列番号119)によって、好ましくは本発明のポリペプチドのN末端又はC末端で、本発明のポリペプチドの残りの部分に連結される。
【0074】
本明細書で定義される酵素ドメイン(即ちグラム陰性菌のペプチドグリカンを分解する活性を有するドメイン)、細胞壁結合ドメイン、及び任意の追加のアミノ酸配列ストレッチの他に、本発明のポリペプチドは当然に他のアミノ酸配列要素、例えば1つ以上のタグ、例えばHisタグ、Strepタグ、Aviタグ、Mycタグ、Gstタグ、JSタグ、システインタグ、FLAGタグ又はチオレドキシン、マルトース結合タンパク質(MBP)などの当技術分野で知られている他のタグ、をまた含む場合がある。
【0075】
これに関連して、本発明のポリペプチド、好ましくはグラム陰性菌のペプチドグリカン層を分解する能力を有する、はタグをさらに含む場合がある(例えば精製のため)。好ましくは、本発明のポリペプチドのC末端及び/又はN末端のHis6タグ(配列番号120)である。前記タグは、追加のアミノ酸残基よってポリペプチドに結合することができる(例えばクローニングのため)。好ましくは、前記タグは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の追加のアミノ酸残基によってタンパク質に連結することができる。好ましくは、前記追加のアミノ酸残基は、プロテアーゼによって認識及び/又は切断されない。好ましい実施形態では、本発明のポリペプチドは、そのC末端に追加のアミノ酸残基リジン及びグリシン(Lys-Gly)又はロイシン及びグルタミン酸(Leu-Glu)によってポリペプチドに連結されたHis6タグを含む。好ましくは、前記追加のアミノ酸残基は、プロテアーゼによって認識又は切断されない。別の好ましい実施形態では、本発明のポリペプチドは、そのN末端に追加のアミノ酸残基リジン及びグリシン(Lys-Gly)又はロイシン及びグルタミン酸(Leu-Glu)によってポリペプチドに連結されたHis6-タグを含む。別の好ましい実施形態では、ポリペプチドは、そのN末端及びC末端に追加のアミノ酸残基リジン及びグリシン(Lys-Gly)又はロイシン及びグルタミン酸(Leu-Glu)によってポリペプチドに連結されたHis6タグを含む。
【0076】
本発明のポリペプチドは、当技術分野で公知の標準的な手段、例えば、適切な宿主細胞において、それぞれのポリペプチドをコードする核酸を組み換え発現することより生産される。本発明のポリペプチドが、例えば追加のアミノ酸配列ストレッチ又はタグなどをさらに含む場合、そのような融合タンパク質は、必要な個々の核酸配列を、一般的なクローニング技術、例えばSambrook et al. 2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual、により結合することにより生産される。そのようなポリペプチドは、当技術分野で公知の方法、例えば組換えDNA発現系、により同様に生産することができる。
【0077】
III.核酸、ベクター、バクテリオファージ及び宿主
本発明は、本発明の1つ以上の本発明のポリペプチドをコードする核酸にも関する。本発明の核酸は、核酸について考えられるすべての形態を取る場合がある。特に、本発明の核酸は、RNA、DNA又はそれらのハイブリッドである場合がある。それらは一本鎖又は二本鎖である場合がある。小さい転写産物のサイズ、又はバクテリオファージゲノムなどのゲノム全体のサイズを持っている場合がある。本明細書で使用される場合、本発明の1つ以上の本発明のポリペプチドをコードする核酸は、センス鎖を反映する核酸である場合がある。同様に、アンチセンス鎖も包含される。核酸は、本発明のポリペプチドの発現のための異種プロモーターを包含する場合がある。
【0078】
さらなる態様において、本発明は、本発明の核酸を含むベクターに関する。そのようなベクターは、例えば、本発明のポリペプチドの発現を可能にする発現ベクターである場合がある。前記発現は、構成的又は誘導的である場合がある。ベクターは、また、クローニング目的のために本発明の核酸配列を含むクローニングベクターである場合がある。
【0079】
本発明はまた、本発明の核酸を含む、特に本発明のポリペプチドをコードする本発明の核酸を含む、バクテリオファージに関する。
【0080】
本発明はまた、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、又はバクテリオファージを含む(単離された)宿主細胞にも関する。宿主細胞は、特に細菌細胞及び酵母細胞からなる群から選択される場合がある。適切な場合、他の適切な宿主細胞は不死化細胞株、例えば哺乳類(特にヒト)起源のものである場合がある。特に好ましい宿主細胞は、本発明のポリペプチドを含む。
【0081】
IV.組成物
さらなる態様において、本発明は、本発明のポリペプチド、本発明の核酸、本発明のベクター、本発明のバクテリオファージ及び/又は宿主細胞を含む組成物に関する。
【0082】
本発明の組成物は、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体を含む医薬組成物である場合がある。
【0083】
よりさらなる態様では、本発明の組成物は化粧品組成物である。いくつかの細菌種は、皮膚などの患者の体の環境的に露出した表面に炎症を引き起こすことができる。そのような炎症を防ぐため、又は前記細菌性病原体の軽微な兆候を除去するために、面皰改善作用を得るに十分な量の本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞及び/又は組成物を含む特別な化粧品が使用される場合がある。
【0084】
V.使用
さらなる態様では、本発明は、手術若しくは治療によるヒト若しくは動物の身体の処置方法、又はヒト若しくは動物の身体に実施される診断方法に使用するための、本発明のポリペプチド、本発明の核酸、本発明のベクター、本発明のバクテリオファージ、本発明の宿主細胞、本発明の組成物に関する。そのような状況では、特にポリペプチドが上記で特定された追加のアミノ酸配列ストレッチを含む場合、本発明のポリペプチドの抗菌活性を活用することができる。
【0085】
係る方法は、典型的には、有効量の本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、バクテリオファージ、宿主細胞又は組成物を対象に投与することを含む。対象は、例えば、ヒト若しくは動物である場合があり、ヒトの対象がより好ましい。特に、本発明のポリペプチド、本発明の核酸、本発明のベクター、本発明のバクテリオファージ、本発明の宿主細胞及び/又は本発明の組成物は、グラム陰性菌などの細菌感染の処置又は予防のための方法で使用される場合がある。
【0086】
本発明の処置(又は予防)方法で使用される投与量及び投与経路は、治療される特定の疾患/感染部位に依存する。投与経路は、例えば、経口、局所、鼻咽頭、非経口、静脈内、直腸又は他の投与経路である場合がある。
【0087】
本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、バクテリオファージ、宿主細胞又は組成物の感染部位(又は感染の危険にさらされる部位)への適用のために、感染部位に到達するまでにおけるプロテアーゼ、酸化、免疫応答などの環境の影響から活性化合物を保護する製剤が使用される場合がある。従って、製剤は、カプセル、糖衣錠、丸薬、坐薬、注射液、又は他の医学的に妥当なガレヌス製剤である場合がある。好ましくは、ガレヌス製剤は、適切な担体、安定剤、香味料、緩衝液又は他の適切な試薬を含む場合がある。例えば、局所適用の場合、製剤はローション又は湿布薬である場合があり、鼻咽頭適用の場合、製剤は鼻にスプレーを介して適用される生理食塩水溶液である場合がある。
【0088】
好ましくは、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、バクテリオファージ、宿主細胞又は組成物は、抗生物質、ランチバイオティクス、バクテリオシン又はエンドリシンなどの他の従来の抗菌剤と組み合わせて使用される。従来の抗菌剤の投与は、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、バクテリオファージ、宿主細胞又は組成物の投与の前、同時又は後に発生することができる。
【0089】
さらなる態様において、本発明は、医療診断、食物診断、飼料診断又は環境診断における診断手段として使用するための、特に細菌感染、特にグラム陰性菌、によって引き起こされるこれらの診断手段として使用するための本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、バクテリオファージ、宿主細胞又は組成物に関する。これに関して、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞又は組成物は、病原性細菌、特にグラム陰性病原性細菌、のペプチドグリカンを特異的に分解するためのツールとして使用される場合がある。本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞又は組成物による細菌細胞の分解は、Triton X-100のような界面活性剤又はポリミキシンBのような細菌細胞エンベロープを弱める他の添加剤の添加によりサポートすることができる。PCR、核酸ハイブリダイゼーション又はNASBA(核酸配列ベースの増幅)などの核酸ベースの方法、IMS、免疫蛍光又はELISA技術などの免疫学的方法、異なる細菌群又は種に特異的なタンパク質を使用した酵素アッセイなどの細菌細胞の分析(例えば腸内細菌のβ-ガラクトシダーゼ、コアグラーゼ陽性株のコアグラーゼ)のような細胞含有量に依存するその他の方法、を使用した細菌のその後の特異的検出において、特定の細胞分解は初期ステップとして必要である。
【0090】
さらなる態様において、本発明は、本発明のポリペプチド、本発明の核酸、本発明のベクター、本発明のバクテリオファージ、本発明の宿主細胞及び/又は本発明の組成物の、食品、飼料、若しくは化粧品の抗菌剤、又は殺菌剤としての使用に関する。これらは特に、食料、食料加工設備、食品加工工場、食料と接触する(無生物)表面(棚や食品置き場など)、飼料、飼料加工設備、飼料加工工場、飼料と接触する(無生物)表面(棚や飼料貯蔵所など)、医療機器、又は病院、診療所などの(無生物)表面、診療所及び他の医療施設におけるグラム陰性菌汚染の処置又は予防に使用できる。
【実施例0091】
VI.実施例
以下に、本発明の様々な実施形態及び態様を示す特定の実施例が提示される。しかし、本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際には、前述の説明、添付の図及び以下の実施例から、本明細書に記載されているそれらに加えて、本発明の様々な改変が、当業者には容易に明らかになる。そのような改変は全て、添付の特許請求の範囲内に含まれる。
【0092】
実施例1:追加のグラム陰性CBDを有するLys68エンドリシンの変異体は、増加したムラリティック活性を示す。
サルモネラファージLys68エンドリシンの2つの変異体が作製された。第一の変異体は、ELI88エンドリシンのCBDを含む配列(配列番号12)との融合体である。得られたキメラ変異体cEL188-Lys68は、配列番号29を含む。2番目の変異体は、KZ144エンドリシンのCBD(配列番号7)との融合体である。使用されるCBDは、システイン残基がセリン残基で置換されたKZ144CBDの配列に3つの点変異を示す。得られたキメラ変異体cKZ144-Lys68は配列番号30を含む。野生型エンドリシンとそのキメラ変異体は大腸菌を用いて発現された。その後、タンパク質が精製された。酵素のムラリティック活性を試験するために、シュードモナスエルジノーサ(緑膿菌)PAO1細胞がクロロホルムを用いて処理され外膜が除去された。従って、20mM HEPES pH7.4、150mM NaCl緩衝液はクロロホルムを用いて飽和された。指数関数的に増殖する緑膿菌細胞が回収され、クロロホルム緩衝液に再懸濁され、45分間インキュベートされた。その後、細胞は20mM HEPES pH7.4及び150mM NaCl中で2回洗浄され、続いて同じ緩衝液を用いて最終のOD600が約0.8のになるまで希釈された。その後、各タンパク質が0.005μΜの最終濃度で1mlの量の細胞溶液に加えられ、OD600の減少が1800秒間を超える時間に亘って記録された。
【0093】
追加のグラム陰性CBDを有するLys68エンドリシンの2つのキメラ変異体は、野生型エンドリシンと比較して顕著に増加したムラリティック活性を示す(
図3を参照)。
【0094】
実施例2:追加のグラム陰性CBDを有するABgp46エンドリシンの変異体は、増加したムラリティック活性を示す。
ABgp46エンドリシンの2つの変異体(アシネトバクターファージvB AbaP CEB1に由来)が作製された。第一の変異体は、KZ144エンドリシンのCBD(配列番号7)との融合体である。得られたキメラ変異体cKZ144-ABgp46は配列番号31を含む。第二の変異体は、ビブリオファージICP1のベースプレート尾部タンパク質のCBDとの融合体(配列番号14)である。得られたキメラ変異体cICP-ABgp46は、配列番号32を含む。野生型エンドリシンとそのキメラ変異体は大腸菌を用いて発現された。その後、タンパク質が精製された。酵素のムラリティック活性を試験するために、緑膿菌PAO1細胞がクロロホルムを用いて処理され外膜が除去された。従って、20mM HEPES pH7.4、150mM NaCl緩衝液はクロロホルムを用いて飽和された。指数関数的に増殖する緑膿菌細胞が回収され、クロロホルム緩衝液に再懸濁され、45分間インキュベートされた。その後、細胞を20mM HEPES pH7.4及び150mM NaClで2回洗浄され、続いて同じ緩衝液を用いて最終のOD600が約0.8になるまで希釈された。その後、各タンパク質が0.005μΜの最終濃度で1mlの量の細胞溶液に加えられ、OD600の減少が1800秒間を超える時間に亘って記録された。
【0095】
追加のグラム陰性CBDを有するABgp46エンドリシンの2つのキメラ変異体は、野生型エンドリシンと比較して顕著に増加したムラリティック活性を示した(
図5を参照)。
【0096】
実施例3:追加のCBDを有するLys394エンドリシンの変異体は、緑膿菌に対して新たな(de novo)ムラリティック活性を示す。
サルモネラファージLys394エンドリシンの変異体が作製された。変異体は、ICP尾部/ベースプレートタンパク質のCBDとの融合体である(配列番号14)。得られたキメラ変異体は、配列番号33を含む。野生型エンドリシンとそのキメラ変異体は大腸菌で発現された。その後、タンパク質が精製された。酵素のムラリティック活性を試験するために、緑膿菌PAO1細胞がクロロホルムを用いて処理され外膜が除去された。従って、20mM HEPES pH7.4、150mM NaCl緩衝液はクロロホルムを用いて飽和された。指数関数的に増殖する緑膿菌細胞が回収され、クロロホルム緩衝液に再懸濁され、45分間インキュベートされた。その後、細胞を20 mM HEPES pH7.4及び150mM NaClで2回洗浄され、続いて同じ緩衝液を用いて最終のOD600が約0.8になるまで希釈された。その後、各タンパク質が0.005μΜの最終濃度で1mlの量の細胞溶液に加えられ、OD600の減少が1800秒間を超える時間に亘って記録された。
【0097】
野生型エンドリシンとは対照的に、Lys394エンドリシンのキメラ変異体は、0.005μΜの濃度で既に緑膿菌細胞に対して顕著なムラリティック活性を示す(
図6を参照)。
【0098】
実施例4:Lys68エンドリシン変異体、KZ144エンドリシンCBDのCBD変異体、及び追加の抗菌ペプチドSMAP-29を示す融合タンパク質は、広範囲のグラム陰性菌に対して抗菌活性を示す。
さらなる実験では、グラム陰性菌を効果的に殺すために本発明のキメラエンドリシンと抗菌ペプチドとの適合性が試験された。この目的のために、構成要素であるSMAP-29(配列番号67)、4つの変異を示すKZ144 CBDの誘導体(配列番号8)、及びLys68エンドリシンの誘導体(配列番号26)を含む融合タンパク質が作製された。得られたポリペプチドは、配列番号116の連続した配列を含む。配列番号8及び26の変異のため、得られた融合タンパク質は改善された熱安定性を示した。キメラ変異体は大腸菌を用いて発現された。
【0099】
簡単に説明すると、細菌を培地(Luria-Bertani)で増殖させ、ミューラーヒントン培地で1:10に希釈した。約0.6のOD600の光学密度の細菌は、同じ培地で1:10に希釈され、その後1:500に希釈された。タンパク質緩衝液(20mM HEPES、500mM NaCl、pH7.4)及びタンパク質を96ウェルプレートにピペットで注入し、様々な濃度のタンパク質及び最終濃度500μMのEDTA(必要な場合)を含む20μlを使用した。180μlの細菌細胞又は培地(ミューラーヒントン)対照を96ウェルプレートに与えて混合した。プレートを37℃で18~22時間インキュベートし、ウェルのOD600値を測定することにより細菌増殖が測定された。非細菌対照と同じOD600値を示したウェルのタンパク質濃度であるMICが決定された。
【0100】
融合タンパク質は、シュードモナス、クレブシエラ、エシェリヒア、アシネトバクター、サルモネラなどの驚くほど広範なグラム陰性菌に対して抗菌活性を示した。対応する結果が表4に示される。
【0101】
【0102】
さらに、配列番号116を含む融合タンパク質は、Lys68エンドリシンの配列中の変異K59M及びP78Sにより、顕著な熱安定性を示した。
球状グラム陰性エンドリシンのアミノ酸配列、及び、i)モジュール型グラム陰性エンドリシン又はii)バクテリオファージ尾部/ベースプレートタンパク質の細胞壁結合ドメインのアミノ酸配列、を含むポリペプチドであって、
前記ポリペプチドが、SEQ ID NO.:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16及び17を有するアミノ酸配列、並びに、これらのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド。