(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062091
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】S1P1受容体アゴニストの付加塩およびその結晶形態、ならびに薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
C07D 413/10 20060101AFI20230425BHJP
A61K 31/4245 20060101ALI20230425BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
C07D413/10 CSP
A61K31/4245
A61P37/06
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023091
(22)【出願日】2023-02-17
(62)【分割の表示】P 2021510499の分割
【原出願日】2018-05-04
(71)【出願人】
【識別番号】516084848
【氏名又は名称】スーチョウ・コネクト・バイオファーマシューティカルズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】チェン ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】パン ウービン
(72)【発明者】
【氏名】グオ ジアワン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】溶解性および結晶形態安定性が改善された、S1P1受容体媒介性疾患または症状の薬である化合物を提供する。
【解決手段】下式(A)で表される化合物1-{2-フルオロ-4-[5-(4-イソブチルフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]ベンジル}-3-アゼチジンカルボン酸(式A)のナトリウム塩、硫酸塩、マレイン酸塩の特定の結晶形態を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式で表される構造を有する、式Aで表される化合物のナトリウム塩:
。
【請求項2】
実質的に結晶状態であり、好ましくは、無水物、水和物、または非溶媒和物である、請求項1記載のナトリウム塩。
【請求項3】
Cu-Kα線により、4.4±0.2°、6.6±0.2°、14.7±0.2、および17.2±0.2°の位置に特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有する、請求項1または2記載のナトリウム塩の結晶形態。
【請求項4】
以下の位置に以下の相対強度の特徴的なピークを有する、角度2θによって表されるX線粉末回折パターンを有し
好ましくは、
図2に示すX線粉末回折パターンを有する、請求項3記載の結晶形態。
【請求項5】
波数1560cm-1、1505cm-1、1476cm-1、1417cm-1、1365cm-1、1276cm-1、885cm-1、849cm-1、および756cm-1に特徴的なピークを有するフーリエ変換赤外スペクトルを有する、請求項3または4記載の結晶形態。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項記載のナトリウム塩または結晶形態を調製するための方法であって、
反応のために、式Aで表される化合物および水酸化ナトリウムを、C1-C4アルコール、C3-C4ケトン、C4-C6エーテル、水、アセトニトリル、またはその混合物からなる群より選択される溶媒中、1:1~1:5のモル比で混合する段階;
反応が完了した後に溶媒を除去する段階;ならびに
乾燥を行う段階
を含み、
好ましくは、溶媒が、メタノール、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル、水、アセトニトリル、またはその混合物からなる群より選択され;
好ましくは、式Aで表される化合物対水酸化ナトリウムのモル比が、1:1.0~1:1.3であり;
好ましくは、反応を10~60℃、より好ましくは室温で実施し;
好ましくは、反応を撹拌下で実施し、撹拌時間が1~48時間、より好ましくは3~24時間であり;
好ましくは、乾燥を減圧下で実施し、乾燥温度が10~60℃、より好ましくは10~40℃であり;
好ましくは、乾燥時間が1~48時間、より好ましくは1~24時間であり;
好ましくは、該方法における式Aで表される化合物の質量対溶媒の体積の比が、1mg:1mL~50mg:1mL、より好ましくは2.5mg:1mL~41mg:1mLである、
方法。
【請求項7】
以下の式で表される構造を有する、式Aで表される化合物の硫酸塩:
。
【請求項8】
実質的に結晶状態であり、好ましくは、無水物、水和物、または非溶媒和物である、請求項7記載の硫酸塩。
【請求項9】
Cu-Kα線により、5.4±0.2°、8.1±0.2°、14.8±0.2°、16.7±0.2°、および18.3±0.2°の位置に特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有する、請求項7または8記載の硫酸塩の結晶形態。
【請求項10】
5.4±0.2°、8.1±0.2°、14.8±0.2°、15.6±0.2°、16.7±0.2°、18.3±0.2°、21.0±0.2°、22.0±0.2°、22.9±0.2°、25.2±0.2°、および26.3±0.2°の位置に特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有し;
好ましくは、以下の位置に以下の相対強度の特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有し
より好ましくは、
図6に示すX線粉末回折パターンを有する、請求項9記載の結晶形態。
【請求項11】
波数1733cm-1、1438cm-1、1346cm-1、1230cm-1、1184cm-1、1109cm-1、1063cm-1、1009cm-1、885cm-1、854cm-1、および758cm-1に特徴的なピークを有するフーリエ変換赤外スペクトルを有する、請求項9または10記載の結晶形態。
【請求項12】
請求項7~11のいずれか一項記載の硫酸塩または結晶形態を調製するための方法であって、
それぞれC1-C4アルコール、C3-C4ケトン、環状エーテル、アセトニトリル、水、またはその混合物からなる群より選択される溶媒中の、式Aで表される化合物の懸濁液または溶液および硫酸の懸濁液または溶液を生成する段階;
反応のために、該懸濁液または溶液を、式Aで表される化合物対硫酸のモル比1:0.4~1:10で混合する段階;
反応が完了した後に溶媒を除去する段階;ならびに
乾燥を行う段階
を含み、
好ましくは、溶媒が、メタノール、エタノール、n-プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、水、アセトニトリル、またはその混合物からなる群より選択され;
好ましくは、式Aで表される化合物対硫酸のモル比が、1:0.4~1:7.9であり;
好ましくは、反応を-10~60℃、より好ましくは10~40℃で実施し;好ましくは、反応を撹拌下で実施し、撹拌時間が1~72時間、より好ましくは1~24時間であり;
好ましくは、乾燥温度が10~60℃、より好ましくは10~40℃であり;
好ましくは、乾燥時間が1~48時間、より好ましくは1~24時間であり;
好ましくは、該方法における式Aで表される化合物の質量対溶媒の体積の比が、1mg:1mL~50mg:1mL、より好ましくは4mg:1mL~35mg:1mLである、
方法。
【請求項13】
以下の式で表される構造を有する、式Aで表される化合物のマレイン酸塩:
。
【請求項14】
実質的に結晶状態であり、好ましくは、無水物、水和物、または非溶媒和物である、請求項13記載のマレイン酸塩。
【請求項15】
Cu-Kα線により、10.6±0.2°、16.3±0.2°、19.5±0.2°、21.5±0.2°、および26.9±0.2°の位置に特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有する、請求項13または14記載のマレイン酸塩の結晶形態。
【請求項16】
7.0±0.2°、10.6±0.2°、13.6±0.2°、16.3±0.2°、19.5±0.2°、20.1±0.2°、21.5±0.2°、24.5±0.2°、および26.9±0.2°の位置に特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有し;
好ましくは、以下の位置に以下の相対強度の特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有し
より好ましくは、
図10に示すX線粉末回折パターンを有する、請求項15記載の結晶形態。
【請求項17】
波数1734cm-1、1574cm-1、1485cm-1、1439cm-1、1364cm-1、1346cm-1、1080cm-1、1003cm-1、893cm-1、871cm-1、757cm-1、および729cm-1に特徴的なピークを有するフーリエ変換赤外スペクトルを有する、請求項15または16記載の結晶形態。
【請求項18】
請求項13~17のいずれか一項記載のマレイン酸塩または結晶形態を調製するための方法であって、
それぞれC1-C4アルコール、C3-C4ケトン、C4-C6エーテル、C2-C5エステル、水、またはその混合物からなる群より選択される溶媒中の、式Aで表される化合物の懸濁液または溶液およびマレイン酸の懸濁液または溶液を生成する段階;
反応のために、該懸濁液または溶液を、式Aで表される化合物対マレイン酸のモル比1:1~1:5で混合する段階;
反応が完了した後に溶媒を除去する段階;ならびに
乾燥を行う段階
を含み、
好ましくは、溶媒が、エタノール、アセトン、エーテル、水、酢酸エチル、1,4-ジオキサン、またはその混合物からなる群より選択され;
好ましくは、式Aで表される化合物対マレイン酸のモル比が、1:1.0~1:2.6であり;
好ましくは、反応を-10~60℃、より好ましくは10~40℃で実施し;好ましくは、反応を撹拌下で実施し、撹拌時間が10~72時間、より好ましくは10~24時間であり;
好ましくは、乾燥温度が10~60℃、より好ましくは10~40℃であり;
好ましくは、乾燥時間が1~48時間、より好ましくは1~24時間であり;
好ましくは、該方法における式Aで表される化合物の質量対溶媒の体積の比が、1mg:1mL~50mg:1mL、より好ましくは4mg:1mL~26mg:1mLである、
方法。
【請求項19】
請求項1~4のいずれか一項記載のナトリウム塩または結晶形態、請求項6~11のいずれか一項記載の硫酸塩または結晶形態、および請求項13~17のいずれか一項記載のマレイン酸塩または結晶形態からなる群より選択される1つまたは複数の、治療的および/または予防的有効量、ならびに
任意に、少なくとも1つの薬学的に許容される担体または賦形剤
を含む、薬学的組成物。
【請求項20】
S1P1受容体媒介性疾患または状態を処置および/または予防するための医薬の製造における、請求項1~4のいずれか一項記載のナトリウム塩または結晶形態、請求項6~11のいずれか一項記載の硫酸塩または結晶形態、および請求項13~17のいずれか一項記載のマレイン酸塩または結晶形態の使用。
【請求項21】
S1P1受容体媒介性疾患または状態の処置法および/または予防法であって、
それを必要としている対象に請求項1~4のいずれか一項記載のナトリウム塩もしくは結晶形態、請求項6~11のいずれか一項記載の硫酸塩もしくは結晶形態、請求項13~17のいずれか一項記載のマレイン酸塩もしくは結晶形態、または請求項19記載の薬学的組成物を投与する段階を含み、
好ましくは、対象が哺乳動物であり、より好ましくは、対象がヒトである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、医薬の化学的調製および結晶化の技術分野に属する。特に、本出願は、S1P1受容体媒介性疾患または状態に対する医薬の塩形態およびその結晶形態に関し、かつ塩形態または結晶形態の調製法、ならびに塩形態または結晶形態の薬学的組成物および使用にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
1-{2-フルオロ-4-[5-(4-イソブチルフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]ベンジル}-3-アゼチジンカルボン酸の化学式はC
23H
24FN
3O
3であり、409.45の分子量、および以下の式Aで表される化学構造を有する。
本明細書において、「1-{2-フルオロ-4-[5-(4-イソブチルフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]ベンジル}-3-アゼチジンカルボン酸」なる用語および「式Aによって表される化合物」なる用語は交換可能である。
【0003】
式Aで表される化合物は、S1P1受容体に対するアゴニスト活性および選択特異性を有し、かつ著しく短いインビボ半減期を有し、したがってこれは優れた第二世代S1P1受容体アゴニストである。多くの種類のS1P1受容体アゴニストがあり、これらはリンパ球上に発現した同族受容体に結合し、S1P1受容体内部移行を引き起こし、次いでリンパ球が排出されるのを防止し得ることを、多数の試験が明らかにしている。したがって、S1P1受容体アゴニストは、リンパ球の輸送を阻止することにより、ヒトの体が免疫応答を開始する能力を低減することができ、したがってこれらを様々な自己免疫疾患の処置において免疫抑制剤として用いることができる。
【0004】
理論的には、式Aで表される化合物および式XmHnで表される1つまたは複数の酸化合物によって塩を形成することができ、ここでHは解離性水素イオンであり、Xは薬学的に許容されるアニオンであり、かつmおよびnは自然数である。塩は式Aで表される化合物およびアルカリ金属イオンまたは他の薬学的に許容される有機カチオンなどの1つまたは複数の薬学的に許容されるカチオンによって形成することもできる。
【0005】
式Aで表される化合物の同定、調製、組成物および使用が、特許文献CN103450171A(特許文献1)(これは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に開示されている。具体的には、化合物の調製法が実施例2に開示されている。式Aで表される化合物の12の結晶形態が、特許文献CN105315266A(特許文献2)(これは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に開示されている。しかし、本発明者らによる研究は、それらの遊離アルカリは25℃の水中で1.1μg/mLの非常に低い溶解度を有し、異なる溶媒環境において異なる安定形態を示すことを見出した。例えば、水中で最も安定な結晶形態は結晶形態Iであったが、有機溶媒中で最も安定な結晶形態は結晶形態IVであった。化合物の制限として、化合物の遊離アルカリが水に不溶であり、明らかな結晶多形性を有することが挙げられる。したがって、形成される式Aで表される化合物の塩による、医薬の溶解性または溶解および多形現象などの、医薬の特定の望ましくない物理化学的または生物薬剤学的特性を改善するために、式Aで表される化合物の塩形態を研究することは非常に実用的な意義がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】CN103450171A
【特許文献2】CN105315266A
【発明の概要】
【0007】
先行技術の欠陥を考慮して、本出願の第1の目的は、式Aで表される化合物の塩形態およびその結晶形態を提供することである。式Aで表される化合物の塩形態およびその結晶形態は、特に多形性、溶解性、結晶形態安定性および化学的安定性などに関する、1つまたは複数の改善された特性を有する。例えば、カリウム塩、カルシウム塩、塩酸塩、クエン酸塩およびリン酸塩などの他の通常の塩形態と比較して、本出願の式Aで表される化合物の塩形態は、吸湿性、溶解性および熱安定性(融点および分解温度)において1つまたは複数の改善された特性を有する。
【0008】
本出願の第2の目的は、式Aで表される化合物の塩形態の調製法を提供することである。式Aで表される化合物は、ほとんどの溶媒中で低い溶解性を有し、温度は溶解性の改善に明らかな効果を有しないため、通常の溶液-溶液混合反応を用いて塩を形成することは困難である。本出願の塩形態の調製法は、塩を形成するために懸濁液-溶液、固体-溶液、固体-固体-溶媒、懸濁液-懸濁液および固体-懸濁液混合反応を含む様々な方法を採用し、塩形成の完全性をモニターするために結晶形態検出法を用い、式Aで表される化合物と対イオンとの比率を確認するためにイオンクロマトグラフィーを採用している。通常の塩の形成法と比較して、式Aで表される化合物の塩形態の調製法は、低溶解性化合物の塩形成において良好な制御性を有する。
【0009】
本出願の第3の目的は、式Aで表される化合物の塩形態および結晶形態の薬学的組成物、ならびにその使用を提供することである。
【0010】
本出願の目的に従い、本出願は、以下の式で表される構造を有する、モル比1:1の式Aで表される化合物およびナトリウムイオンによって形成される化合物である、1-{2-フルオロ-4-[5-(4-イソブチルフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]ベンジル}-3-アゼチジンカルボン酸のナトリウム塩を提供する。
本明細書において、「1-{2-フルオロ-4-[5-(4-イソブチルフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]ベンジル}-3-アゼチジンカルボン酸のナトリウム塩」なる用語および「式Aによって表される化合物のナトリウム塩」なる用語は交換可能である。
【0011】
本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩は、実質的に結晶状態であり、好ましくは、無水物、水和物、または非溶媒和物である。より好ましくは、本出願の目的に従い、本出願は、式Aで表される化合物のナトリウム塩の結晶形態を提供する。結晶形態は、4.4±0.2°、6.6±0.2°、14.7±0.2°、および17.2±0.2°の位置に特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有する。
【0012】
さらに好ましくは、本出願は、式Aで表される化合物のナトリウム塩の結晶形態を提供する。結晶形態は、以下の位置に以下の相対強度の特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有する。
【0013】
限定されないが、式Aで表される化合物のナトリウム塩の結晶形態の典型的な例は、
図2に示すX線粉末回折(XRPD)パターンを有する。より好ましくは、式Aで表される化合物のナトリウム塩の結晶形態は、波数1560cm
-1、1505cm
-1、1476cm
-1、1417cm
-1、1365cm
-1、1276cm
-1、885cm
-1、849cm
-1、および756cm
-1に特徴的なピークを有するフーリエ変換赤外スペクトルを有する。
【0014】
本出願の目的に従い、本出願は式Aで表される化合物のナトリウム塩またはその結晶形態の調製法を提供する。方法は以下の段階を含む:反応のために式Aで表される化合物および水酸化ナトリウムを、アルコール、ケトン、エーテル、水、ニトリル、またはその混合物からなる群より選択される溶媒中、1:1~1:5のモル比で混合する段階、反応が完了した後に溶媒を除去する段階、および乾燥を行う段階。
【0015】
本出願の特定の態様に従い、塩形態の調製のために、反応が完了した後に溶媒を除去する操作において、溶媒の一部を最初に除去することができ、次いで冷却後に遠心分離を行い、得られた固体を乾燥するか;または、反応が完了した後に全ての溶媒を除去し、得られた固体に溶媒を加えて再度スラリーを調製し、次いで遠心分離を行い、得られた固体を乾燥する。
【0016】
本出願の特定の態様に従い、結晶形態の調製のために、反応が完了した後に溶媒を除去する操作において、溶媒の一部を最初に除去することができ、次いで冷却(例えば、室温まで)を実施して固体を沈澱させ、得られた固体を乾燥する。
【0017】
好ましくは、溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル、水、アセトニトリル、またはその混合物からなる群より選択される。
【0018】
好ましくは、式Aで表される化合物対水酸化ナトリウムのモル比は1:1.0~1:1.3である。
【0019】
好ましくは、反応を10~60℃、より好ましくは室温で実施する。好ましくは、反応を撹拌下で実施し、撹拌時間は1~48時間、より好ましくは3~24時間である。
【0020】
好ましくは、乾燥を減圧下で実施し、乾燥温度は10~60℃、より好ましくは10~40℃である。
【0021】
好ましくは、乾燥時間は1~48時間、より好ましくは1~24時間である。
【0022】
好ましくは、方法における式Aで表される化合物の質量対溶媒の体積の比は、1mg:1mL~50mg:1mL、より好ましくは2.5mg:1mL~41mg:1mLである。
【0023】
「溶媒の除去」は、当技術分野における通常の技術的手段、例えば、ろ過、揮発、遠心分離、窒素吹き込みまたはスピン乾燥を用いて行うことができる。好ましくは、溶媒を窒素吹き込み、揮発またはろ過を通して除去する。好ましくは、「溶媒の除去」は、10~60℃の実験温度で行う。
【0024】
式Aで表される化合物のナトリウム塩およびその結晶形態は、以下の有益な効果を有する:
1)本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩の結晶多形は明らかでない。
2)本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩は、25℃の水中で10mg/mLの溶解度を有する。式Aで表される化合物の公知の遊離状態と比較して、ナトリウム塩は明らかに改善された水溶性およびより良いバイオアベイラビリティを有する。
3)本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩は、25℃の水中で10mg/mLの溶解度を有する。式Aで表される化合物のカルシウム塩、式Aで表される化合物の塩酸塩、式Aで表される化合物のクエン酸塩、および式Aで表される化合物のリン酸塩などの通常の塩形態と比較して、ナトリウム塩は有意に改善された水溶性およびより良いバイオアベイラビリティを有する。
4)式Aで表される化合物の遊離状態と比較して、本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩の結晶形態は水性系において安定であり、したがって湿式造粒または懸濁製剤においてより実用的な価値を有する。
5)本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩の結晶形態は、室温および相対湿度10%~90%の条件下で4ヶ月間貯蔵した後に、外観、XRPDパターンおよび融点が未変化のままである。本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩およびその結晶形態は、良好な貯蔵安定性を有し、かつ薬物製造および/または貯蔵中の活性成分自体および式Aで表される化合物のナトリウム塩またはその結晶形態を含む製剤の品質、安全性および安定性の問題など、例えば、不純物結晶形態および溶解性の差などを回避する上で良好であり得ることが示される。
【0025】
本出願はさらに、式Aで表される化合物のナトリウム塩および/またはその結晶形態、ならびに任意に少なくとも1つの薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、薬学的組成物を提供する。
【0026】
本出願はさらに、S1P1受容体媒介性疾患または状態を処置および/または予防するための医薬の製造における、式Aで表される化合物のナトリウム塩および/またはその結晶形態の使用を提供する。
【0027】
本出願はさらに、S1P1受容体媒介性疾患または状態の処置法および/または予防法であって、それを必要としている対象に本出願によって提供される式Aで表される化合物のナトリウム塩および/またはその結晶形態を投与する段階を含む方法を提供する。好ましくは、対象は哺乳動物であり;より好ましくは、対象はヒトである。
【0028】
本出願の目的に従い、本出願は、以下の式で表される構造を有する、モル比2:1の式Aで表される化合物および硫酸によって形成される化合物である、1-{2-フルオロ-4-[5-(4-イソブチルフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]ベンジル}-3-アゼチジンカルボン酸の硫酸塩を提供する。
本明細書において、「1-{2-フルオロ-4-[5-(4-イソブチルフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]ベンジル}-3-アゼチジンカルボン酸の硫酸塩」なる用語および「式Aによって表される化合物の硫酸塩」なる用語は交換可能である。
【0029】
本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩は、実質的に結晶状態であり、好ましくは、無水物、水和物、または非溶媒和物である。より好ましくは、本出願の目的に従い、本出願は、式Aで表される化合物の硫酸塩の結晶形態を提供する。Cu-Kα線により、結晶形態は、5.4±0.2°、8.1±0.2°、14.8±0.2°、16.7±0.2°、および18.3±0.2°の位置に特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有する。
【0030】
より好ましくは、式Aで表される化合物の硫酸塩の結晶形態は、5.4±0.2°、8.1±0.2°、14.8±0.2°、15.6±0.2°、16.7±0.2°、18.3±0.2°、21.0±0.2°、22.0±0.2°、22.9±0.2°、25.2±0.2°、および26.3±0.2°の位置に特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有する。
【0031】
さらに好ましくは、本出願は、式Aで表される化合物の硫酸塩の結晶形態を提供する。結晶形態は、以下の位置に以下の相対強度の特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有する。
【0032】
限定されないが、式Aで表される化合物の硫酸塩の結晶形態の典型的な例は、
図6に示すX線粉末回折(XRPD)パターンを有する。
【0033】
式Aで表される化合物の硫酸塩の結晶形態は、波数1733cm-1、1438cm-1、1346cm-1、1230cm-1、1184cm-1、1109cm-1、1063cm-1、1009cm-1、885cm-1、854cm-1、および758cm-1に特徴的なピークを有するフーリエ変換赤外スペクトルを有する。
【0034】
本出願の目的に従い、本出願は式Aで表される化合物の硫酸塩またはその結晶形態の調製法を提供する。方法は以下の段階を含む:それぞれアルコール、ケトン、環状エーテル、アセトニトリル、水、またはその混合物からなる群より選択される溶媒中の、式Aで表される化合物の懸濁液または溶液および硫酸の懸濁液または溶液を生成する段階;反応のために懸濁液または溶液を式Aで表される化合物の硫酸に対するモル比1:0.4~1:10で混合する段階;反応が完了した後に溶媒を除去する段階;および乾燥を行う段階。
【0035】
本出願の特定の態様に従い、塩形態の調製のために、反応が完了した後に溶媒を除去する操作において、溶媒の一部を最初に除去することができ、次いで冷却もしくは遠心分離を行い、得られた固体を乾燥するか;または、反応が完了した後に全ての溶媒を除去し、得られた固体に溶媒を任意に加えて再度スラリーを調製し、次いで遠心分離を行い、得られた固体を乾燥する。
【0036】
本出願の特定の態様に従い、結晶形態の調製のために、反応が完了した後に溶媒を除去する操作において、全ての溶媒を最初に除去することができ、次いで超音波処理のために水を加え、遠心分離を実施し、得られた固体を乾燥する。
【0037】
好ましくは、溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、水、アセトニトリル、またはその混合物からなる群より選択される。
【0038】
好ましくは、式Aで表される化合物対硫酸のモル比は1:0.4~1:7.9である。
【0039】
好ましくは、反応を-10~60℃、より好ましくは10~40℃で実施する。好ましくは、反応を撹拌下で実施し、撹拌時間は1~72時間、より好ましくは1~24時間である。
【0040】
好ましくは、乾燥温度は10~60℃、より好ましくは10~40℃である。
【0041】
好ましくは、乾燥時間は1~48時間、より好ましくは1~24時間である。
【0042】
好ましくは、方法における式Aで表される化合物の質量対溶媒の体積の比は、1mg:1mL~50mg:1mL、より好ましくは4mg:1mL~35mg:1mLである。
【0043】
「溶媒の除去」は、当技術分野における通常の技術的手段、例えば、ろ過、揮発、遠心分離、窒素吹き込みまたはスピン乾燥を用いて行うことができる。好ましくは、溶媒を窒素吹き込み、揮発またはろ過を通して除去する。好ましくは、溶媒の除去は、10~60℃の実験温度で行う。
【0044】
「硫酸」は、98%(重量%)の濃度を有する濃硫酸を指し、市販されている。
【0045】
式Aで表される化合物の硫酸塩およびその結晶形態は、以下の有益な効果を有する:
1)本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩の結晶多形は明らかでない。
2)本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩は、25℃の水中で19μg/mLの溶解度を有する。式Aで表される化合物の公知の遊離状態と比較して、硫酸塩は明らかに改善された水溶性およびより良いバイオアベイラビリティを有する。
3)本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩は、25℃の水中で19μg/mLの溶解度を有する。式Aで表される化合物のカルシウム塩、式Aで表される化合物の塩酸塩、式Aで表される化合物のクエン酸塩、および式Aで表される化合物のリン酸塩などの通常の塩形態と比較して、硫酸塩は有意に改善された水溶性およびより良いバイオアベイラビリティを有する。
4)本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩は、20%~80%の相対湿度で重量が0.7%増加する。式Aで表される化合物のカリウム塩、式Aで表される化合物のカルシウム塩、式Aで表される化合物の塩酸塩、式Aで表される化合物のクエン酸塩、および式Aで表される化合物のリン酸塩などの通常の塩形態と比較して、硫酸塩は吸湿性の重量増加が低く、したがって貯蔵安定性が良好である。
5)本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩の結晶形態は水性系において安定であり、したがって湿式造粒または懸濁製剤においてより実用的な価値を有する。
6)本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩の結晶形態は、通常の高温(60℃)および促進条件(40℃-相対湿度75%)下で1ヶ月間貯蔵した後に、外観、XRPDパターンおよび融点が未変化のままである。本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩およびその結晶形態は、良好な貯蔵安定性を有し、かつ薬物製造および/または貯蔵中の活性成分自体および式Aで表される化合物の硫酸塩またはその結晶形態を含む製剤の品質、安全性および安定性の問題など、例えば、不純物結晶形態および溶解性の差などを回避する上で良好であり得ることが示される。
【0046】
本出願はさらに、式Aで表される化合物の硫酸塩および/またはその結晶形態、ならびに任意に少なくとも1つの薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、薬学的組成物を提供する。
【0047】
本出願はさらに、S1P1受容体媒介性疾患または状態を処置および/または予防するための医薬の製造における、式Aで表される化合物の硫酸塩および/またはその結晶形態の使用を提供する。
【0048】
本出願はさらに、S1P1受容体媒介性疾患または状態の処置法および/または予防法であって、それを必要としている対象に本出願によって提供される式Aで表される化合物の硫酸塩および/またはその結晶形態を投与する段階を含む方法を提供する。好ましくは、対象は哺乳動物であり;より好ましくは、対象はヒトである。
【0049】
本出願の目的に従い、本出願は、以下の式で表される構造を有する、モル比1:1の式Aで表される化合物およびマレイン酸によって形成される化合物である、1-{2-フルオロ-4-[5-(4-イソブチルフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]ベンジル}-3-アゼチジンカルボン酸のマレイン酸塩を提供する:
本明細書において、「1-{2-フルオロ-4-[5-(4-イソブチルフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]ベンジル}-3-アゼチジンカルボン酸のマレイン酸塩」なる用語および「式Aによって表される化合物のマレイン酸塩」なる用語は交換可能である。
【0050】
本出願の式Aで表される化合物のマレイン酸塩は、実質的に結晶状態であり、好ましくは、無水物、水和物、または非溶媒和物である。より好ましくは、本出願の目的に従い、本出願は、式Aで表される化合物のマレイン酸塩の結晶形態を提供する。Cu-Kα線により、結晶形態は、10.6±0.2°、16.3±0.2°、19.5±0.2°、21.5±0.2°、および26.9±0.2°の位置に特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有する。
【0051】
より好ましくは、式Aで表される化合物のマレイン酸塩の結晶形態は、7.0±0.2°、10.6±0.2°、13.6±0.2°、16.3±0.2°、19.5±0.2°、20.1±0.2°、21.5±0.2°、24.5±0.2°、および26.9±0.2°の位置に特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有する。
【0052】
さらに好ましくは、本出願は、式Aで表される化合物のマレイン酸塩の結晶形態を提供する。結晶形態は、以下の位置に以下の相対強度の特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有する。
【0053】
限定されないが、式Aで表される化合物のマレイン酸塩の結晶形態の典型的な例は、
図10に示すX線粉末回折(XRPD)パターンを有する。
【0054】
式Aで表される化合物のマレイン酸塩の結晶形態は、波数1734cm-1、1574cm-1、1485cm-1、1439cm-1、1364cm-1、1346cm-1、1080cm-1、1003cm-1、893cm-1、871cm-1、757cm-1、および729cm-1に特徴的なピークを有するフーリエ変換赤外スペクトルを有する。
【0055】
本出願の目的に従い、本出願は式Aで表される化合物のマレイン酸塩またはその結晶形態の調製法を提供する。方法は以下の段階を含む:それぞれアルコール、ケトン、エーテル(環状エーテルを含む)、エステル、水、またはその混合物からなる群より選択される溶媒中の、式Aで表される化合物の懸濁液または溶液およびマレイン酸の懸濁液または溶液を生成する段階;反応のために懸濁液または溶液を式Aで表される化合物対マレイン酸のモル比1:1~1:5で混合する段階;反応が完了した後に溶媒を除去する段階;および乾燥を行う段階。
【0056】
好ましくは、溶媒は、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル、水、酢酸エチル、1,4-ジオキサン、またはその混合物からなる群より選択される。
【0057】
好ましくは、式Aで表される化合物対マレイン酸のモル比は1:1.0~1:2.6である。
【0058】
好ましくは、反応を-10~60℃、より好ましくは10~40℃で実施する。好ましくは、反応を撹拌下で実施し、撹拌時間は10~72時間、より好ましくは10~24時間である。
【0059】
好ましくは、乾燥温度は10~60℃、より好ましくは10~40℃である。
【0060】
好ましくは、乾燥時間は1~48時間、より好ましくは1~24時間である。
【0061】
好ましくは、方法における式Aで表される化合物の質量対溶媒の体積の比は、1mg:1mL~50mg:1mL、より好ましくは4mg:1mL~26mg:1mLである。
【0062】
式Aで表される化合物のマレイン酸塩およびその結晶形態は、以下の有益な効果を有する:
1)本出願の式Aで表される化合物のマレイン酸塩の結晶多形は明らかでない。
2)本出願の式Aで表される化合物のマレイン酸塩は、25℃の水中で16μg/mLの溶解度を有する。式Aで表される化合物の公知の遊離状態と比較して、マレイン酸塩は明らかに改善された水溶性およびより良いバイオアベイラビリティを有する。
3)本出願の式Aで表される化合物のマレイン酸塩は、25℃の水中で16μg/mLの溶解度を有する。式Aで表される化合物のカルシウム塩、式Aで表される化合物の塩酸塩、式Aで表される化合物のクエン酸塩、および式Aで表される化合物のリン酸塩などの通常の塩形態と比較して、マレイン酸塩は有意に改善された水溶性およびより良いバイオアベイラビリティを有する。
4)本出願の式Aで表される化合物のマレイン酸塩は、20%~80%の相対湿度で重量が0.4%増加する。式Aで表される化合物のカリウム塩、式Aで表される化合物のカルシウム塩、式Aで表される化合物の塩酸塩、式Aで表される化合物のクエン酸塩、および式Aで表される化合物のリン酸塩などの通常の塩形態と比較して、マレイン酸塩は吸湿性の重量増加が低く、したがって貯蔵安定性が良好である。
5)本出願の式Aで表される化合物のマレイン酸塩の結晶形態は水性系において安定であり、したがって湿式造粒または懸濁製剤においてより実用的な価値を有する。
6)本出願の式Aで表される化合物のマレイン酸塩の結晶形態は、通常の高温(60℃)および促進条件(40℃-相対湿度75%)下で1ヶ月間貯蔵した後に、外観、XRPDパターンおよび融点が未変化のままである。本出願の式Aで表される化合物のマレイン酸塩およびその結晶形態は、良好な貯蔵安定性を有し、かつ薬物製造および/または貯蔵中の活性成分自体および式Aで表される化合物のマレイン酸塩またはその結晶形態を含む製剤の品質、安全性および安定性の問題など、例えば、不純物結晶形態および溶解性の差などを回避する上で良好であり得ることが示される。
【0063】
本出願はさらに、式Aで表される化合物のマレイン酸塩および/またはその結晶形態、ならびに任意に少なくとも1つの薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、薬学的組成物を提供する。
【0064】
本出願はさらに、S1P1受容体媒介性疾患または状態を処置および/または予防するための医薬の製造における、式Aで表される化合物のマレイン酸塩および/またはその結晶形態の使用を提供する。
【0065】
本出願はさらに、S1P1受容体媒介性疾患または状態の処置法および/または予防法であって、それを必要としている対象に本出願によって提供される式Aで表される化合物のマレイン酸塩および/またはその結晶形態を投与する段階を含む方法を提供する。好ましくは、対象は哺乳動物であり;より好ましくは、対象はヒトである。
【0066】
本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩および式Aで表される化合物のナトリウム塩の結晶形態、式Aで表される化合物の硫酸塩および式Aで表される化合物の硫酸塩の結晶形態、式Aで表される化合物のマレイン酸塩および式Aで表される化合物のマレイン酸塩の結晶形態の任意の調製法において以下である。
【0067】
特に記載がないかぎり、「室温」とは、約10~30℃の温度を指す。
【0068】
「環状エーテル」はテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどであり得る。
【0069】
「撹拌」は、当技術分野において通常の方法を用いて行うことができる。例えば、撹拌には磁気撹拌および機械的撹拌が含まれ;撹拌速度は50~1800rpm、好ましくは300~900rpmである。
【0070】
「溶媒の除去」は、ろ過、揮発、遠心分離、窒素吹き込みまたはスピン乾燥などの、当技術分野において通常の方法を用いて行うことができる。「ろ過」とは、一般に、大気圧未満、好ましくは0.09MPa未満の圧で室温で行う吸引ろ過を指す。「スピン乾燥」とは、一般に、大気圧未満、好ましくは0.09MPa未満の圧でのロータリーエバポレーションを指す。「窒素吹き込み」とは、一般に、窒素吹き込み装置を通して窒素を供給することを指し、供給する窒素の急速な気流により液体を揮発させて乾燥する。「遠心分離」の具体的な操作は以下の通りである:分離する試料を遠心管に入れ、固体が遠心管の底部に完全に沈着するまで、例えば、6000rpmの速度で遠心分離する。「揮発」の具体的な操作は以下の通りである:開放容器に入れた試料溶液を、溶媒が乾燥するまで異なる温度で揮発させる。「溶媒の除去」は、好ましくは10~60℃の実験温度で行う。
【0071】
「乾燥」は、室温乾燥、エアブロー乾燥または減圧下での乾燥などの、当技術分野において通常の技術的手段を用いて行うことができる。これは減圧または大気圧で、好ましくは0.09MPa未満の圧で行うことができる。乾燥器具および方法は限定されない。乾燥器具は、換気装置、エアブロー乾燥機、噴霧乾燥機、流動床乾燥機または真空乾燥機であり得;乾燥は、減圧または非減圧で、好ましくは0.09MPa未満の圧で行うことができる。
【0072】
本出願における「結晶形態」とは、化合物が、示したX線粉末回折パターンでの特徴づけによって証明されるように、独特で規則正しい分子配置または格子内配置を有することを意味する。当業者には周知のとおり、機器の状態、試料調製および試料の純度に応じて実験誤差があることもある。XRDパターンにおけるピークの角度2θは、通常は機器および試料によってわずかに変動する。異なる機器および異なる試料などに応じて、ピーク角度の差は1°、0.8°、0.5°、0.3°、0.1°などであり、通常は±0.2°の誤差が許容され;したがって、ピーク角度の差は唯一の標準として使用することはできない。ピークの相対強度は、試料、試料調製および他の実験条件によって変動し得、したがってピーク強度の順序は唯一または決定的要因として使用することはできない。試料高さおよび他の実験因子による影響は、ピーク角度の全体的なシフトをもたらし、通常はある程度のシフトが許容される。したがって、当業者であれば、本出願において提供するX線粉末回折パターンのものと同じまたは類似の特徴的ピークを有する任意の結晶形態が本出願の範囲内に属することを理解することができる。「単結晶形態」は、X線粉末回折により検出される単結晶形態を指す。
【0073】
本出願の式Aで表される化合物の新しい塩形態は、実質的に純粋かつ単一であり、かつ実質的に他のいかなる結晶形態または非晶質状態と混合されない。本出願における「実質的に純粋」とは、新しい結晶形態を指すために使用される場合、新しい結晶形態が化合物の少なくとも80(重量)%、さらに少なくとも90(重量)%、特に少なくとも95(重量)%、特に少なくとも99(重量)%を占めることを意味する。
【0074】
本出願における出発原料、すなわち、式Aで表される化合物は、特許文献CN103450171Aに開示された調製法に従って調製することができる。
【0075】
さらに、本出願は、本出願の塩形態もしくはその結晶形態および非晶質形態、または本出願の方法によって調製した塩形態ならびに/もしくはその結晶形態および非晶質形態からなる群より選択される1つまたは複数の治療的または予防的有効量、および任意に少なくとも1つの薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、薬学的組成物を提供する。式Aで表される化合物の塩形態およびその結晶形態には、式Aで表される化合物のナトリウム塩、式Aで表される化合物のナトリウム塩の結晶形態、式Aで表される化合物の硫酸塩、式Aで表される化合物の硫酸塩の結晶形態、式Aで表される化合物のマレイン酸塩、および式Aで表される化合物のマレイン酸塩の結晶形態が含まれる。さらに、薬学的組成物は、式Aで表される化合物の他の薬学的に許容される塩、塩の結晶形態または塩の非晶質形態をさらに含むことができる。
【0076】
前記薬学的組成物は、固体剤形、液体剤形、半液体剤形、エアロゾルまたは坐剤などを含むが、それらに限定されない、一定の剤形、好ましくは経口投与、非経口投与(皮下、筋肉内および静脈内を含む)、直腸投与、経皮投与、頬側投与および鼻投与による剤形に調製することができる。例えば、経口投与に適した剤形には、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、散剤、ロゼンジ、シロップ剤または懸濁剤が含まれ;非経口投与に適した剤形には、水性または非水性液剤または乳剤が含まれ;直腸投与に適した剤形には、親水性または疎水性担体を用いての坐剤が含まれ;経皮投与に適した剤形には、軟膏およびクリームが含まれ;鼻投与に適した剤形には、エアロゾルおよび噴霧剤が含まれる。必要に応じて、前記剤形は、活性成分の急速放出、遅延放出または制御放出に適合させることができる。
【0077】
本出願における薬学的に許容される担体には、具体的には、デンプン、アルファ化デンプン、ラクトース、粉末セルロース、微結晶セルロース、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、マンニトール、ソルビトール、および糖などの希釈剤;アラビアゴム、グアーガム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリエチレングリコールなどの結合剤;デンプン、デンプンヒドロキシ酢酸ナトリウム、アルファ化デンプン、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびコロイド状シリカなどの崩壊剤;ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、安息香酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムなどの滑沢剤;コロイド状シリカなどの流動補助剤;様々な等級のシクロデキストリンおよび樹脂などの複合体形成剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、メチルメタクリレート、およびワックスなどの放出速度制御剤を含むが、それらに限定されない、固体担体が含まれる。本出願において薬学的に許容される担体には、具体的には、滅菌水、生理食塩水、グルコース溶液、マンニトール溶液、植物油、タラ肝油、エタノール、プロパノール、およびグリセリンなどの、水性、油性またはアルコール溶液の溶媒を含むが、それらに限定されない、液体担体がさらに含まれる。加えて、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどの他の担体を用いてもよい。他の薬学的に許容される担体は、例えば、フィルム形成剤、可塑剤、着色剤、着香剤、粘度調整剤、保存剤、抗酸化剤、浸透剤、緩衝剤などを含むが、それらに限定されない、異なる剤形に従って選択してもよい。各担体は、製剤中で許容され、他の成分と適合性であり、患者に無害でなければならない。
【0078】
薬学的組成物は、当業者には周知の方法を用いて調製することができる。薬学的組成物が調製されれば、式Aで表される化合物のナトリウム塩、式Aで表される化合物のナトリウム塩の結晶形態、式Aで表される化合物の硫酸塩、式Aで表される化合物の硫酸塩の結晶形態、式Aで表される化合物のマレイン酸塩、式Aで表される化合物のマレイン酸塩の結晶形態またはその組み合わせを、1つまたは複数の薬学的に許容される担体と混合し、任意に1つまたは複数の他の活性な薬学的成分と混合する。固体製剤は、混合および造粒などのプロセスによって調製することができ、一方で液体または半液体剤形は、混合、溶解、分散および乳化などのプロセスによって調製することができる。
【0079】
さらに、本出願は、S1P1受容体媒介性疾患または状態を処置および/または予防するための医薬の製造における、本出願の塩形態ならびに/もしくはその結晶形態および非晶質形態、または本出願の調製法を用いて得た塩形態ならびに/もしくはその結晶形態および非晶質形態の使用を提供する。塩形態ならびにその結晶形態および非晶質形態には、式Aで表される化合物のナトリウム塩、式Aで表される化合物のナトリウム塩の結晶形態、式Aで表される化合物の硫酸塩、式Aで表される化合物の硫酸塩の結晶形態、式Aで表される化合物のマレイン酸塩、式Aで表される化合物のマレイン酸塩の結晶形態、またはその組み合わせが含まれる。S1P1受容体媒介性疾患または状態は、関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸炎、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患、喘息、炎症性神経障害、関節炎、移植、クローン病、潰瘍性結腸炎、紅斑性狼蒼、乾癬、虚血再灌流障害、固形腫瘍、血管新生関連疾患、血管疾患、疼痛症状、急性ウイルス性疾患、炎症性腸疾患、インスリンおよび非インスリン依存性糖尿病ならびに他の関連免疫疾患からなる群より選択される。好ましくは、疾患または状態は、多発性硬化症、関節リウマチ、炎症性腸炎および乾癬からなる群より選択される。
【0080】
さらに、本出願は、S1P1受容体媒介性疾患または状態の処置法および/または予防法であって、それを必要としている対象に、本出願の塩および/もしくはその結晶形態またはその組み合わせあるいは薬学的組成物の治療的または予防的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。塩ならびにその結晶形態および非晶質形態には、式Aで表される化合物のナトリウム塩、式Aで表される化合物のナトリウム塩の結晶形態、式Aで表される化合物の硫酸塩、式Aで表される化合物の硫酸塩の結晶形態、式Aで表される化合物のマレイン酸塩、式Aで表される化合物のマレイン酸塩の結晶形態、またはその組み合わせが含まれる。S1P1受容体媒介性疾患または状態は、関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸炎、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患、喘息、炎症性神経障害、関節炎、移植、クローン病、潰瘍性結腸炎、紅斑性狼蒼、乾癬、虚血再灌流障害、固形腫瘍、血管新生関連疾患、血管疾患、疼痛症状、急性ウイルス性疾患、炎症性腸疾患、インスリンおよび非インスリン依存性糖尿病ならびに他の関連免疫疾患からなる群より選択される。好ましくは、疾患または状態は、多発性硬化症、関節リウマチ、炎症性腸炎および乾癬からなる群より選択される。対象には哺乳動物が含まれるが、それらに限定されない。本出願によって提供する結晶形態および非晶質形態もしくはその組み合わせまたは薬学的組成物は、他の治療法または治療剤と共に用いることができる。さらに、処置、予防または軽減などに必要な化合物または薬学的組成物の用量は、一般に、投与する特定の化合物、患者、特定の疾患または状態およびその重症度、投与の経路および頻度、ならびに特定の状況に応じて主治医が決定する必要性に依存する。
[本発明1001]
以下の式で表される構造を有する、式Aで表される化合物のナトリウム塩:
。
[本発明1002]
実質的に結晶状態であり、好ましくは、無水物、水和物、または非溶媒和物である、本発明1001のナトリウム塩。
[本発明1003]
Cu-Kα線により、4.4±0.2°、6.6±0.2°、14.7±0.2、および17.2±0.2°の位置に特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有する、本発明1001または1002のナトリウム塩の結晶形態。
[本発明1004]
以下の位置に以下の相対強度の特徴的なピークを有する、角度2θによって表されるX線粉末回折パターンを有し
好ましくは、
図2に示すX線粉末回折パターンを有する、本発明1003の結晶形態。
[本発明1005]
波数1560cm
-1、1505cm
-1、1476cm
-1、1417cm
-1、1365cm
-1、1276cm
-1、885cm
-1、849cm
-1、および756cm
-1に特徴的なピークを有するフーリエ変換赤外スペクトルを有する、本発明1003または1004の結晶形態。
[本発明1006]
本発明1001~1005のいずれかのナトリウム塩または結晶形態を調製するための方法であって、
反応のために、式Aで表される化合物および水酸化ナトリウムを、C
1-C
4アルコール、C
3-C
4ケトン、C
4-C
6エーテル、水、アセトニトリル、またはその混合物からなる群より選択される溶媒中、1:1~1:5のモル比で混合する段階;
反応が完了した後に溶媒を除去する段階;ならびに
乾燥を行う段階
を含み、
好ましくは、溶媒が、メタノール、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル、水、アセトニトリル、またはその混合物からなる群より選択され;
好ましくは、式Aで表される化合物対水酸化ナトリウムのモル比が、1:1.0~1:1.3であり;
好ましくは、反応を10~60℃、より好ましくは室温で実施し;
好ましくは、反応を撹拌下で実施し、撹拌時間が1~48時間、より好ましくは3~24時間であり;
好ましくは、乾燥を減圧下で実施し、乾燥温度が10~60℃、より好ましくは10~40℃であり;
好ましくは、乾燥時間が1~48時間、より好ましくは1~24時間であり;
好ましくは、該方法における式Aで表される化合物の質量対溶媒の体積の比が、1mg:1mL~50mg:1mL、より好ましくは2.5mg:1mL~41mg:1mLである、
方法。
[本発明1007]
以下の式で表される構造を有する、式Aで表される化合物の硫酸塩:
。
[本発明1008]
実質的に結晶状態であり、好ましくは、無水物、水和物、または非溶媒和物である、本発明1007の硫酸塩。
[本発明1009]
Cu-Kα線により、5.4±0.2°、8.1±0.2°、14.8±0.2°、16.7±0.2°、および18.3±0.2°の位置に特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有する、本発明1007または1008の硫酸塩の結晶形態。
[本発明1010]
5.4±0.2°、8.1±0.2°、14.8±0.2°、15.6±0.2°、16.7±0.2°、18.3±0.2°、21.0±0.2°、22.0±0.2°、22.9±0.2°、25.2±0.2°、および26.3±0.2°の位置に特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有し;
好ましくは、以下の位置に以下の相対強度の特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有し
より好ましくは、
図6に示すX線粉末回折パターンを有する、本発明1009の結晶形態。
[本発明1011]
波数1733cm
-1、1438cm
-1、1346cm
-1、1230cm
-1、1184cm
-1、1109cm
-1、1063cm
-1、1009cm
-1、885cm
-1、854cm
-1、および758cm
-1に特徴的なピークを有するフーリエ変換赤外スペクトルを有する、本発明1009または1010の結晶形態。
[本発明1012]
本発明1007~1011のいずれかの硫酸塩または結晶形態を調製するための方法であって、
それぞれC
1-C
4アルコール、C
3-C
4ケトン、環状エーテル、アセトニトリル、水、またはその混合物からなる群より選択される溶媒中の、式Aで表される化合物の懸濁液または溶液および硫酸の懸濁液または溶液を生成する段階;
反応のために、該懸濁液または溶液を、式Aで表される化合物対硫酸のモル比1:0.4~1:10で混合する段階;
反応が完了した後に溶媒を除去する段階;ならびに
乾燥を行う段階
を含み、
好ましくは、溶媒が、メタノール、エタノール、n-プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、水、アセトニトリル、またはその混合物からなる群より選択され;
好ましくは、式Aで表される化合物対硫酸のモル比が、1:0.4~1:7.9であり;
好ましくは、反応を-10~60℃、より好ましくは10~40℃で実施し;好ましくは、反応を撹拌下で実施し、撹拌時間が1~72時間、より好ましくは1~24時間であり;
好ましくは、乾燥温度が10~60℃、より好ましくは10~40℃であり;
好ましくは、乾燥時間が1~48時間、より好ましくは1~24時間であり;
好ましくは、該方法における式Aで表される化合物の質量対溶媒の体積の比が、1mg:1mL~50mg:1mL、より好ましくは4mg:1mL~35mg:1mLである、
方法。
[本発明1013]
以下の式で表される構造を有する、式Aで表される化合物のマレイン酸塩:
。
[本発明1014]
実質的に結晶状態であり、好ましくは、無水物、水和物、または非溶媒和物である、本発明1013のマレイン酸塩。
[本発明1015]
Cu-Kα線により、10.6±0.2°、16.3±0.2°、19.5±0.2°、21.5±0.2°、および26.9±0.2°の位置に特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有する、本発明1013または1014のマレイン酸塩の結晶形態。
[本発明1016]
7.0±0.2°、10.6±0.2°、13.6±0.2°、16.3±0.2°、19.5±0.2°、20.1±0.2°、21.5±0.2°、24.5±0.2°、および26.9±0.2°の位置に特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有し;
好ましくは、以下の位置に以下の相対強度の特徴的なピークを有する、角度2θによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有し
より好ましくは、
図10に示すX線粉末回折パターンを有する、本発明1015の結晶形態。
[本発明1017]
波数1734cm
-1、1574cm
-1、1485cm
-1、1439cm
-1、1364cm
-1、1346cm
-1、1080cm
-1、1003cm
-1、893cm
-1、871cm
-1、757cm
-1、および729cm
-1に特徴的なピークを有するフーリエ変換赤外スペクトルを有する、本発明1015または1016の結晶形態。
[本発明1018]
本発明1013~1017のいずれかのマレイン酸塩または結晶形態を調製するための方法であって、
それぞれC
1-C
4アルコール、C
3-C
4ケトン、C
4-C
6エーテル、C
2-C
5エステル、水、またはその混合物からなる群より選択される溶媒中の、式Aで表される化合物の懸濁液または溶液およびマレイン酸の懸濁液または溶液を生成する段階;
反応のために、該懸濁液または溶液を、式Aで表される化合物対マレイン酸のモル比1:1~1:5で混合する段階;
反応が完了した後に溶媒を除去する段階;ならびに
乾燥を行う段階
を含み、
好ましくは、溶媒が、エタノール、アセトン、エーテル、水、酢酸エチル、1,4-ジオキサン、またはその混合物からなる群より選択され;
好ましくは、式Aで表される化合物対マレイン酸のモル比が、1:1.0~1:2.6であり;
好ましくは、反応を-10~60℃、より好ましくは10~40℃で実施し;好ましくは、反応を撹拌下で実施し、撹拌時間が10~72時間、より好ましくは10~24時間であり;
好ましくは、乾燥温度が10~60℃、より好ましくは10~40℃であり;
好ましくは、乾燥時間が1~48時間、より好ましくは1~24時間であり;
好ましくは、該方法における式Aで表される化合物の質量対溶媒の体積の比が、1mg:1mL~50mg:1mL、より好ましくは4mg:1mL~26mg:1mLである、
方法。
[本発明1019]
本発明1001~1004のいずれかのナトリウム塩または結晶形態、本発明1006~1011のいずれかの硫酸塩または結晶形態、および本発明1013~1017のいずれかのマレイン酸塩または結晶形態からなる群より選択される1つまたは複数の、治療的および/または予防的有効量、ならびに
任意に、少なくとも1つの薬学的に許容される担体または賦形剤
を含む、薬学的組成物。
[本発明1020]
S1P1受容体媒介性疾患または状態を処置および/または予防するための医薬の製造における、本発明1001~1004のいずれかのナトリウム塩または結晶形態、本発明1006~1011のいずれかの硫酸塩または結晶形態、および本発明1013~1017のいずれかのマレイン酸塩または結晶形態の使用。
[本発明1021]
S1P1受容体媒介性疾患または状態の処置法および/または予防法であって、
それを必要としている対象に本発明1001~1004のいずれかのナトリウム塩もしくは結晶形態、本発明1006~1011のいずれかの硫酸塩もしくは結晶形態、本発明1013~1017のいずれかのマレイン酸塩もしくは結晶形態、または本発明1019の薬学的組成物を投与する段階を含み、
好ましくは、対象が哺乳動物であり、より好ましくは、対象がヒトである、方法。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】本出願の実施例3による式Aで表される化合物のナトリウム塩のIRパターンである。
【
図2】本出願の実施例3による式Aで表される化合物のナトリウム塩のXRPDパターンである。
【
図3】本出願の実施例3による式Aで表される化合物のナトリウム塩のTGAパターンである。
【
図4】本出願の実施例3による式Aで表される化合物のナトリウム塩のDSCパターンである。
【
図5】本出願の実施例13による式Aで表される化合物の硫酸塩のIRパターンである。
【
図6】本出願の実施例13による式Aで表される化合物の硫酸塩のXRPDパターンである。
【
図7】本出願の実施例13による式Aで表される化合物の硫酸塩のTGAパターンである。
【
図8】本出願の実施例13による式Aで表される化合物の硫酸塩のDSCパターンである。
【
図9】本出願の実施例21による式Aで表される化合物のマレイン酸塩のIRパターンである。
【
図10】本出願の実施例21による式Aで表される化合物のマレイン酸塩のXRPDパターンである。
【
図11】本出願の実施例21による式Aで表される化合物のマレイン酸塩のTGAパターンである。
【
図12】本出願の実施例21による式Aで表される化合物のマレイン酸塩のDSCパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0082】
好ましい態様の詳細な説明
以下の実施例は、本出願のさらなる理解を促進することになり、本出願を限定するために使用されることはない。
【0083】
検出器および方法:
X線粉末回折(XPRD):機器はBruker D8 Advance回折計であった。試料を室温で試験した。検出条件は以下の通りであった:角度範囲:3~40°2θ;ステップサイズ:0.02°2θ;速度:0.2秒/ステップ。
【0084】
示差走査熱量測定(DSC)データをTA Instruments Q200 MDSCで収集した。使用した検出法は以下の通りであった:1~10mgの試料を気密性の小穴アルミニウムるつぼに入れ、試料の温度を、40mL/分の乾燥N2保護下、10℃/分の加熱速度で、室温から250℃に上昇させた。
【0085】
熱重量分析(TGA)データをTA Instruments Q500 TGAで収集した。使用した検出法は以下の通りであった:5~15mgの試料を白金るつぼに入れ、試料の温度を、40mL/分の乾燥N2保護下、10℃/分の加熱速度で、室温から300℃に上昇させる、分割型(segmented)高解像度検出法を採用した。
【0086】
1H核磁気共鳴(1HNMR)データをBruker Avance II DMX 400MHZ核磁気共鳴分光計を用いて得た。1~5mgの試料を秤量し、核磁気共鳴用の試料管中、約0.5mLの重水素化試薬に溶解し、検出した。
【0087】
赤外分光法(IR)データをBruker Tensor 27で収集した。計測器制御ソフトウェアおよびデータ解析ソフトウェアはいずれもOPUSであった。600~4000cm-1の範囲の赤外吸収スペクトルを一般にはATR装置で収集した。
【0088】
動的水蒸気吸着(DVS)データおよび等温吸着解析データをTA Instruments Q5000 TGAで収集した。使用した検出法は以下の通りであった:1~10mgの試料を白金るつぼに入れ、20%~80%までの相対湿度の変化に伴う重量変化を検出した。
【0089】
HPLC溶解性データをAgilent 1260高性能液体クロマトグラフで収集した。使用したクロマトグラフィーカラムはPoroshell 120 EC-C18(2.7×50mm、4.6μm)、検出波長は254nm、検出用カラム温度は40℃、流速は1.5mL/分、試料体積は5μLであった。試料を移動相Bに溶解して、約0.45mg/mLの濃度の試料溶液を調製し、HPLC検出を以下の勾配溶出モードに従って行い、試料中の濃度を得た。
【0090】
イオンクロマトグラフィー(IC)データをDionex ICS-900で収集した。ワークステーションおよび解析ソフトウェアはいずれもChromeleon Consoleであった。イオン含有量検出は、外部標準法を用いて行った。
【0091】
実施例に記載の超音波処理操作は、試料の溶解を促進することができる。装置は超音波洗浄機であり、超音波処理は40kHzの電力で15分間実施した。
【実施例0092】
調製実施例1:式Aで表される化合物の調製
式Aで表される化合物を、特許文献CN103450171Aの実施例2に記載の調製法に従って調製することができる。
【0093】
具体的には、室温で、メタノール-テトラヒドロフラン(200mL/200mL)中の2-フルオロ-4-[5-(4-イソブチルフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]-ベンズアルデヒド(9.0g、27.8mmol)、アゼチジン-3-カルボン酸(2.8g、27.8mmol)および酢酸(10mL)の溶液を2時間撹拌した。次いで、メタノール(600mL)中のシアノ水素化ホウ素ナトリウム(10.3g、163.5mmol)の溶液(600mL)を反応混合物に加え、次いで得られた混合物を室温でさらに16時間撹拌した。ろ過を行ってろ過ケークを得、ろ過ケークをメタノール(100mL)で洗浄し、乾燥して、2.0gの白色固体生成物を得た。
【0094】
は、生成物が式Aで表される化合物、すなわち、1-{2-フルオロ-4-[5-(4-イソブチルフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]ベンジル}-3-アゼチジンカルボン酸であることを示していた。
【0095】
調製実施例2: 式Aで表される化合物の塩形態のスクリーニングおよび調製
2.1 塩スクリーニング
式Aで表される化合物の構造に従い、12のI型酸および3つのI型アルカリを塩スクリーニング実験のために選択した。実験の設定および結果を表1に示した。
【0096】
【0097】
2.2 いくつかの塩の調製
アセトンおよび水を反応溶媒として選択し、式Aで表される化合物の遊離状態および対イオンをモル比1:1.2で塩形成に用い、形成した塩における比をICを用いて検出した。式Aで表される化合物のクエン酸塩、式Aで表される化合物のリン酸塩、式Aで表される化合物の塩酸塩、式Aで表される化合物のカリウム塩、および式Aで表される化合物のカルシウム塩を調製した。
【0098】
実施例1:式Aで表される化合物のナトリウム塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物14.50mgを秤量して、0.5mLのメタノール中に加え、得られた混合物を撹拌して懸濁液を得た。水酸化ナトリウム溶液(1.75mgの水酸化ナトリウムを0.45mLのメタノール中に加えた)を、メタノール中の式Aで表される化合物の懸濁液中に滴加し、得られた混合物を室温で約10分間撹拌して清澄溶液を得、これをさらに3時間撹拌した。次いで、溶媒を溶液から室温で窒素吹き込みにより除去して、0.2mLの無色透明清澄溶液を得、これを5℃まで冷却して懸濁液を得た。遠心分離を実施し、得られた固体を減圧下、室温で16時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩を得た。
【0099】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物のナトリウム塩は、式Aで表される化合物とナトリウムイオンとのモル比1:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0100】
実施例2:式Aで表される化合物のナトリウム塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物40.71mgを秤量して、0.4mLのメタノール中に加え、得られた混合物を撹拌して懸濁液を得た。水酸化ナトリウム溶液(4.0mgの水酸化ナトリウムを2.8mLのメタノール中に加えた)を、メタノール中の式Aで表される化合物の懸濁液中に滴加し、得られた混合物を室温で約1時間撹拌して清澄溶液を得た。溶液をさらに2時間撹拌し、次いでろ過し、溶媒をろ液から室温で揮発により除去して、0.2mLの懸濁液を得た。遠心分離を実施し、得られた固体を減圧下、室温で24時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩を得た。
【0101】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物のナトリウム塩は、式Aで表される化合物とナトリウムイオンとのモル比1:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0102】
実施例3:式Aで表される化合物のナトリウム塩の調製
水酸化ナトリウム4.9mgを秤量して1.0mLの水中に加え、超音波処理をして清澄溶液を得た。清澄溶液を、調製実施例1で調製した式Aで表される化合物40.7mgに滴加し、得られた混合物を室温で24時間撹拌した。ろ過を行い、溶媒をろ液から60℃で窒素吹き込みにより除去して、0.2mLの淡黄色透明清澄溶液を得た。溶液を室温まで冷却して固体を沈澱させ、次いで遠心分離を実施し、得られた固体を減圧下、40℃で1時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩を得た。
【0103】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物のナトリウム塩は、式Aで表される化合物とナトリウムイオンとのモル比1:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0104】
ナトリウム塩のIRパターンは
図1に示すとおりであった。
【0105】
ナトリウム塩のXRDパターンは
図2に示すとおりであった。
【0106】
ナトリウム塩のTGAパターンは
図3に示すとおりであった。
【0107】
ナトリウム塩のDSCパターンは
図4に示すとおりであった。
【0108】
実施例4:式Aで表される化合物のナトリウム塩の調製
水酸化ナトリウム3.5mgを秤量して1.0mLのアセトン:水(4:1)中に加え、超音波処理をして清澄溶液を得た。清澄溶液を、調製実施例1で調製した式Aで表される化合物29.2mgに滴加し、得られた混合物を室温で16時間撹拌した。ろ過を行い、得られたろ過ケークを減圧下、40℃で1時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩を得た。
【0109】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物のナトリウム塩は、式Aで表される化合物とナトリウムイオンとのモル比1:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0110】
実施例5:式Aで表される化合物のナトリウム塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物5.05mgを秤量して、0.2mLのジエチルエーテル:エタノール(4:1)中に加え、得られた混合物を撹拌して懸濁液を得た。水酸化ナトリウム溶液(0.65mgの水酸化ナトリウムを0.3mLのジエチルエーテル:エタノール(体積比4:1)中に加えた)を、ジエチルエーテル:エタノール中の式Aで表される化合物の懸濁液中に滴加し、得られた混合物を室温で24時間撹拌した。ろ過を行い、溶媒をろ液から60℃で揮発により除去した。得られた固体を0.2mLのジエチルエーテルで1時間スラリー化し、次いで遠心分離を実施し、遠心分離後に得られた固体を減圧下、室温で19時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩を得た。
【0111】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物のナトリウム塩は、式Aで表される化合物とナトリウムイオンとのモル比1:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0112】
実施例6:式Aで表される化合物のナトリウム塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物8.02mgを秤量した。8.0mLのn-ブタノール:メチルtert-ブチルエーテル(1:1)および2.5mgの水酸化ナトリウムを化合物に加え、得られた混合物を60℃で1時間撹拌した。ろ過を行い、溶媒をろ液から60℃でロータリーエバポレーションにより除去した。得られた固体を0.2mLのn-ブタノール:メチルtert-ブチルエーテル(1:1)で1時間スラリー化し、次いで遠心分離を実施し、遠心分離後に得られた固体を減圧下、40℃で48時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩を得た。
【0113】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物のナトリウム塩は、式Aで表される化合物とナトリウムイオンとのモル比1:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0114】
実施例7:式Aで表される化合物のナトリウム塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物45.01mgを秤量した。0.9mLのブタノン:n-プロパノール(2:1)および19.5mgの水酸化ナトリウムを化合物に加え、得られた混合物を60℃で48時間撹拌した。ろ過を行い、溶媒をろ液から室温でロータリーエバポレーションにより除去した。得られた固体を0.2mLのブタノン:n-プロパノール(2:1)で1時間スラリー化し、次いで遠心分離を実施し、遠心分離後に得られた固体を減圧下、60℃で40時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩を得た。
【0115】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物のナトリウム塩は、式Aで表される化合物とナトリウムイオンとのモル比1:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0116】
実施例8:式Aで表される化合物のナトリウム塩の調製
水酸化ナトリウム4.69mgを秤量して1.0mLの水中に加え、超音波処理をして清澄溶液を得た。清澄溶液を、調製実施例1で調製した式Aで表される化合物38.77mgに滴加し、次いで14.0mLの水を加え、得られた混合物を室温で16時間撹拌した。ろ過を行い、溶媒をろ液から50℃で窒素吹き込みにより除去して、0.2mLの淡黄色透明清澄溶液を得た。溶液を5℃まで冷却して固体を沈澱させ、次いで遠心分離を実施し、得られた固体を減圧下、40℃で24時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩を得た。
【0117】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物のナトリウム塩は、式Aで表される化合物とナトリウムイオンとのモル比1:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0118】
実施例9:式Aで表される化合物のナトリウム塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物6.15mgを秤量した。3.0mLのメタノール:イソプロピルエーテル(1:1)および1.3mgの水酸化ナトリウム固体を化合物に加え、得られた混合物を40℃で1時間撹拌した。ろ過を行い、溶媒をろ液から50℃でロータリーエバポレーションにより除去した。得られた固体を0.1mLのメタノール:イソプロピルエーテル(1:1)で1時間スラリー化し、次いで遠心分離を実施し、遠心分離後に得られた固体を減圧下、25℃で24時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩を得た。
【0119】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物のナトリウム塩は、式Aで表される化合物とナトリウムイオンとのモル比1:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0120】
実施例10:式Aで表される化合物のナトリウム塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物35.62mgを秤量した。1.2mLのアセトニトリルおよび8.7mgの水酸化ナトリウム固体を化合物に加え、得られた混合物を35℃で3時間撹拌した。ろ過を行い、溶媒をろ液から室温でロータリーエバポレーションにより除去して、0.2mLの無色透明清澄溶液を得た。溶液を5℃まで冷却して固体を沈澱させ、次いで遠心分離を実施し、得られた固体を減圧下、40℃で30時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩を得た。
【0121】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物のナトリウム塩は、式Aで表される化合物とナトリウムイオンとのモル比1:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0122】
実施例11:式Aで表される化合物の硫酸塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物76.02mgを秤量して5.2mLのメタノール中に加え、得られた混合物を撹拌して懸濁液を得た。硫酸溶液(7.3mgの98%硫酸を7.6mLのメタノール中に加えた)を、メタノール中の式Aで表される化合物の懸濁液中に滴加し、得られた混合物を室温で5時間撹拌して懸濁液を得た。5.0mLのメタノールを加えた後、懸濁液をさらに1時間撹拌し、次いでろ過を行い、溶媒をろ液から室温で窒素吹き込みにより除去して、1.0mLの懸濁液を得た。ろ過を行い、得られた固体を減圧下、室温で20時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩を得た。
【0123】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物の硫酸塩は、式Aで表される化合物と硫酸とのモル比2:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0124】
実施例12:式Aで表される化合物の硫酸塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物34.41mgを秤量して1.0mLのエタノール中に加え、得られた混合物を撹拌して懸濁液を得た。24.82mgの98%硫酸を、エタノール中の式Aで表される化合物の懸濁液中に加え、得られた混合物を室温で24時間撹拌した。ろ過を行い、得られたろ過ケークを減圧下、40℃で10時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩を得た。
【0125】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物の硫酸塩は、式Aで表される化合物と硫酸とのモル比2:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0126】
実施例13:式Aで表される化合物の硫酸塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物4.63mgを秤量して0.2mLのn-プロパノール中に加え、得られた混合物を撹拌して懸濁液を得た。硫酸溶液(8.79mgの98%硫酸を0.3mLのn-プロパノール中に加えた)を、n-プロパノール中の式Aで表される化合物の懸濁液中に滴加し、得られた混合物を室温で16時間撹拌した。ろ過を行い、溶媒をろ液から室温で窒素吹き込みにより除去して、油性物質を得た。水を油性物質に加え、超音波処理を行って懸濁液を得た。遠心分離を実施し、得られた固体を減圧下、室温で24時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩を得た。
【0127】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物の硫酸塩は、式Aで表される化合物と硫酸とのモル比2:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0128】
【0129】
硫酸塩のXRDパターンは
図6に示すとおりであった。
【0130】
硫酸塩のTGAパターンは
図7に示すとおりであった。
【0131】
硫酸塩のDSCパターンは
図8に示すとおりであった。
【0132】
実施例14:式Aで表される化合物の硫酸塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物10.02mgを秤量して1.0mLの水中に加え、得られた混合物を撹拌して懸濁液を得た。7.88mgの98%硫酸を、水中の式Aで表される化合物の懸濁液中に加え、得られた混合物を40℃で24時間撹拌した。ろ過を行い、得られたろ過ケークを減圧下、60℃で1時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩を得た。
【0133】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物の硫酸塩は、式Aで表される化合物と硫酸とのモル比2:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0134】
実施例15:式Aで表される化合物の硫酸塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物34.4mgを秤量して1.0mLの水中に加え、得られた混合物を撹拌して懸濁液を得た。硫酸溶液(25.0mgの98%硫酸を0.5mLの水中に加えた)を、水中の式Aで表される化合物の懸濁液中に滴加し、得られた混合物を室温で24時間撹拌した。ろ過を行い、得られたろ過ケークを減圧下、40℃で1時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩を得た。
【0135】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物の硫酸塩は、式Aで表される化合物と硫酸とのモル比2:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0136】
実施例16:式Aで表される化合物の硫酸塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物10.25mgを秤量して0.2mLの水中に加え、得られた混合物を撹拌して懸濁液を得た。8.25mgの98%硫酸および1.0mLのアセトンを、水中の式Aで表される化合物の懸濁液中に逐次加え、得られた混合物を室温で1時間撹拌して清澄溶液を得た。ろ過を行い、次いで溶媒をろ液から室温で窒素吹き込みにより除去し、得られた固体を減圧下、室温で24時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩を得た。
【0137】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物の硫酸塩は、式Aで表される化合物と硫酸とのモル比2:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0138】
実施例17:式Aで表される化合物の硫酸塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物10.40mgを秤量した。0.2mLの水、7.92mgの98%硫酸および1.0mLのテトラヒドロフランを、式Aで表される化合物に逐次加え、得られた混合物を室温で3時間撹拌して清澄溶液を得た。ろ過を行い、溶媒をろ液から60℃で窒素吹き込みにより除去して、0.3mLの懸濁液を得た。遠心分離を実施し、得られた固体を減圧下、40℃で20時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩を得た。
【0139】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物の硫酸塩は、式Aで表される化合物と硫酸とのモル比2:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0140】
実施例18:式Aで表される化合物の硫酸塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物4.15mgを秤量して0.2mLの水:アセトニトリル(1:4)中に加え、得られた混合物を撹拌して懸濁液を得た。硫酸溶液(3.2mgの98%硫酸を0.3mLの水:アセトニトリル(1:4)中に加えた)を、水:アセトニトリル(1:4)中の式Aで表される化合物の懸濁液中に滴加し、得られた混合物を室温で24時間撹拌した。ろ過を行い、溶媒をろ液から室温で窒素吹き込みにより除去して、0.1mLの懸濁液を得た。遠心分離を実施し、得られた固体を減圧下、50℃で1時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩を得た。
【0141】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物の硫酸塩は、式Aで表される化合物と硫酸とのモル比2:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0142】
実施例19:式Aで表される化合物の硫酸塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物5.0mgを秤量した。5.0mLのs-ブタノール:ブタノン(1:4)および10.3mgの98%硫酸を化合物に加え、得られた混合物を-10℃で30時間撹拌した。ろ過を行い、溶媒をろ液から40℃で窒素吹き込みにより除去して、0.1mLの懸濁液を得た。遠心分離を実施し、得られた固体を減圧下、60℃で10時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩を得た。
【0143】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物の硫酸塩は、式Aで表される化合物と硫酸とのモル比2:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0144】
実施例20:式Aで表される化合物の硫酸塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物40.0mgを秤量して0.4mLの1,4-ジオキサン:水(1:1)中に加え、得られた混合物を撹拌して懸濁液を得た。硫酸溶液(96.7mgの98%硫酸を0.4mLの1,4-ジオキサン:水(1:1)中に加えた)を、1,4-ジオキサン:水(1:1)中の式Aで表される化合物の懸濁液中に滴加し、得られた混合物を60℃で72時間撹拌した。ろ過を行い、溶媒をろ液から60℃で窒素吹き込みにより除去した。得られた固体を0.2mLの1,4-ジオキサン:水(1:1)で1時間スラリー化し、次いで遠心分離を実施し、遠心分離後に得られた固体を減圧下、40℃で48時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩を得た。
【0145】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物の硫酸塩は、式Aで表される化合物と硫酸とのモル比2:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0146】
実施例21:式Aで表される化合物のマレイン酸塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物51.7mgを秤量して1.0mLのアセトン中に加えた。マレイン酸溶液(17.7mgのマレイン酸を1.0mLのアセトン中に加えた)を、アセトン中の式Aで表される化合物の系に撹拌下で滴加し、得られた混合物を室温で24時間撹拌した。ろ過を行い、減圧下、40℃で16時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物のマレイン酸塩を得た。
【0147】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物のマレイン酸塩は、式Aで表される化合物とマレイン酸とのモル比1:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0148】
マレイン酸塩のIRパターンは
図9に示すとおりであった。
【0149】
マレイン酸塩のXRDパターンは
図10に示すとおりであった。
【0150】
マレイン酸塩のTGAパターンは
図11に示すとおりであった。
【0151】
マレイン酸塩のDSCパターンは
図12に示すとおりであった。
【0152】
実施例22:式Aで表される化合物のマレイン酸塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物10.37mgを秤量した。マレイン酸溶液(3.91mgのマレイン酸を1.0mLのエタノール中に加えた)を化合物に滴加し、得られた混合物を室温で10時間撹拌した。ろ過を行い、得られたろ過ケークを減圧下、25℃で20時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物のマレイン酸塩を得た。
【0153】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物のマレイン酸塩は、式Aで表される化合物とマレイン酸とのモル比1:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0154】
実施例23:式Aで表される化合物のマレイン酸塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物7.63mgを秤量した。マレイン酸溶液(4.47mgのマレイン酸を1.0mLの水中に加えた)を化合物に滴加し、得られた混合物を40℃で24時間撹拌した。ろ過を行い、得られたろ過ケークを減圧下、40℃で1時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物のマレイン酸塩を得た。
【0155】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物のマレイン酸塩は、式Aで表される化合物とマレイン酸とのモル比1:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0156】
実施例24:式Aで表される化合物のマレイン酸塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物10.70mgを秤量した。3.52mgのマレイン酸および1.0mLのジエチルエーテルを化合物に加え、得られた混合物を室温で24時間撹拌した。ろ過を行い、得られたろ過ケークを減圧下、10℃で24時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物のマレイン酸塩を得た。
【0157】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物のマレイン酸塩は、式Aで表される化合物とマレイン酸とのモル比1:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0158】
実施例25:式Aで表される化合物のマレイン酸塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物13.33mgを秤量して1.5mLの酢酸エチル中に加えた。マレイン酸溶液(5.14mgのマレイン酸を1.0mLの酢酸エチル中に加えた)を、酢酸エチル中の式Aで表される化合物の系に撹拌下で滴加し、得られた混合物を室温で18時間撹拌した。ろ過を行い、得られたろ過ケークを減圧下、40℃で1時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物のマレイン酸塩を得た。
【0159】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物のマレイン酸塩は、式Aで表される化合物とマレイン酸とのモル比1:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0160】
実施例26:式Aで表される化合物のマレイン酸塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物6.04mgを秤量して1.0mLの1,4-ジオキサン中に加えた。マレイン酸溶液(4.4mgのマレイン酸を0.4mLの1,4-ジオキサン中に加えた)を、1,4-ジオキサン中の式Aで表される化合物の系に撹拌下で滴加し、得られた混合物を室温で20時間撹拌した。ろ過を行い、得られたろ過ケークを減圧下、50℃で24時間乾燥して、34.3mgの本出願の式Aで表される化合物のマレイン酸塩を得た。
【0161】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物のマレイン酸塩は、式Aで表される化合物とマレイン酸とのモル比1:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0162】
実施例27:式Aで表される化合物のマレイン酸塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物5.0mgを秤量した。4.7mgのマレイン酸および5.0mLのブタノン:ギ酸メチル(2:1)を化合物に加え、得られた混合物を60℃で30時間撹拌した。ろ過を行い、減圧下、56℃で37時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物のマレイン酸塩を得た。
【0163】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物のマレイン酸塩は、式Aで表される化合物とマレイン酸とのモル比1:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0164】
実施例28:式Aで表される化合物のマレイン酸塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物40.5mgを秤量して0.6mLのメタノール:メチルtert-ブチルエーテル(1:1)中に加えた。マレイン酸溶液(11.5mgのマレイン酸を0.4mLのメタノール:メチルtert-ブチルエーテル(1:1)中に加えた)を、メタノール:メチルtert-ブチルエーテル(1:1)中の式Aで表される化合物の系に撹拌下で滴加し、得られた混合物を45℃で48時間撹拌した。ろ過を行い、減圧下、40℃で48時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物のマレイン酸塩を得た。
【0165】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物のマレイン酸塩は、式Aで表される化合物とマレイン酸とのモル比1:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0166】
実施例29:式Aで表される化合物のマレイン酸塩の調製
調製実施例1で調製した式Aで表される化合物50.0mgを秤量して0.5mLのn-ブタノール:酢酸イソプロピル(3:1)中に加えた。マレイン酸溶液(70.9mgのマレイン酸を0.5mLのn-ブタノール:酢酸イソプロピル(3:1)中に加えた)を、n-ブタノール:酢酸イソプロピル(3:1)中の式Aで表される化合物の系に撹拌下で滴加し、得られた混合物を-10℃で72時間撹拌した。ろ過を行い、減圧下、60℃で30時間乾燥して、本出願の式Aで表される化合物のマレイン酸塩を得た。
【0167】
ICでの特徴づけにより、式Aで表される化合物のマレイン酸塩は、式Aで表される化合物とマレイン酸とのモル比1:1での反応を通して形成されることが判明した。
【0168】
比較実施例1:式Aで表される化合物のナトリウム塩の溶解度
本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩を取って、水中での溶解実験を行なった。具体的な操作は以下の通りであった:本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩5mgを取り、20mlガラス瓶に入れ、脱イオン水を瓶に25℃で徐々に加え、超音波処理を行って清澄溶液を得た。水中での試料の溶解度を算出した。
【0169】
(表2)本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩の水中での溶解度
【0170】
表2から、本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩は高い溶解度を有し、したがってこれはより優れたバイオアベイラビリティを有することがわかる。
【0171】
比較実施例2:式Aで表される化合物の塩形態の熱安定性の比較
本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩および通常の塩(式Aで表される化合物のクエン酸塩、式Aで表される化合物のリン酸塩および式Aで表される化合物の塩酸塩)を取って、DSCおよびTGA検定を行い、各塩形態の融点および分解温度データを得た。
【0172】
(表3)本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩および他の通常の塩の融点データ
【0173】
表3から、通常の塩(式Aで表される化合物のクエン酸塩、式Aで表される化合物のリン酸塩および式Aで表される化合物の塩酸塩)と比較して、本出願の式Aで表される化合物のナトリウム塩は非常に高い融点および分解温度を有し、したがってこれは良好な熱安定性を有することがわかる。
【0174】
比較実施例3:式Aで表される化合物の塩形態の溶解度の比較
式Aで表される化合物の公知の遊離状態、通常の塩(式Aで表される化合物のカルシウム塩、式Aで表される化合物のクエン酸塩、式Aで表される化合物のリン酸塩、および式Aで表される化合物の塩酸塩)、ならびに本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩および式Aで表される化合物のマレイン酸塩を取って、水中での溶解実験を行った。具体的な操作は以下の通りであった:式Aで表される化合物の公知の遊離状態、通常の塩(式Aで表される化合物のカルシウム塩、式Aで表される化合物のクエン酸塩、式Aで表される化合物のリン酸塩、および式Aで表される化合物の塩酸塩)、ならびに調製した本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩および式Aで表される化合物のマレイン酸塩5mgを取り、それぞれ20mlガラス瓶に入れ、15mlの脱イオン水を各瓶に加え、25℃で2時間撹拌した。次いで、試料を取ってろ過し、濃度をHPLCで検出した。各試料中の活性成分の水中での溶解度を算出した。
【0175】
(表4)式Aで表される化合物の遊離状態および塩形態の水中での溶解度
【0176】
表4から、本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩および式Aで表される化合物のマレイン酸塩の25℃の水中での溶解度は、式Aで表される化合物の公知の遊離状態よりも約10~20倍高く;他の通常の塩(式Aで表される化合物のカルシウム塩、式Aで表される化合物のクエン酸塩、式Aで表される化合物のリン酸塩、および式Aで表される化合物の塩酸塩)の約3~8倍高く、したがって硫酸塩およびマレイン酸塩は、より良い溶解性、およびより良いバイオアベイラビリティを有することがわかる。
【0177】
比較実施例4:式Aで表される化合物の塩形態の吸湿性の比較
本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩および式Aで表される化合物のマレイン酸塩、ならびに通常の塩(式Aで表される化合物のカリウム塩、式Aで表される化合物のカルシウム塩、式Aで表される化合物のクエン酸塩、式Aで表される化合物のリン酸塩、および式Aで表される化合物の塩酸塩)を取ってDVS検定を行い、各塩形態の吸湿性データを得た。
【0178】
(表5)本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩および式Aで表される化合物のマレイン酸塩、ならびに他の通常の塩の吸湿性データ
【0179】
表5から、通常の塩(式Aで表される化合物のカリウム塩、式Aで表される化合物のカルシウム塩、式Aで表される化合物のクエン酸塩、式Aで表される化合物のリン酸塩、および式Aで表される化合物の塩酸塩)と比較して、本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩および式Aで表される化合物のマレイン酸塩は、吸湿性の重量増加が少なく、したがってより良い貯蔵安定性を有し、薬物製造および/または貯蔵中の品質、安全性および安定性の問題などを回避するのに良好であり得ることがわかる。
【0180】
比較実施例5:式Aで表される化合物の塩の結晶形態の安定性の比較
本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩の結晶形態および式Aで表される化合物のマレイン酸塩の結晶形態を取って安定性実験を行った。具体的な操作は以下の通りであった:本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩の結晶形態および式Aで表される化合物のマレイン酸塩の結晶形態の試料60mgを取り、それぞれ通常の条件(密封し、25℃の暗所に置いた)、高温条件(密封し、60℃の暗所に置いた)および促進条件(開放し、40℃-相対湿度75%の暗所に置いた)下に30日間置いて、結晶形態の安定性を試験した。
【0181】
(表6)本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩の結晶形態および式Aで表される化合物のマレイン酸の結晶形態の安定性試験の結果
【0182】
表6から、本出願の式Aで表される化合物の硫酸塩の結晶形態および式Aで表される化合物のマレイン酸塩の結晶形態は良好な安定性を有し、これは製造、貯蔵および輸送中の様々な環境条件に適合させるために有益であることがわかる。
【0183】
比較実施例6:式Aで表される化合物の塩の結晶形態の安定性の比較
式Aで表される化合物のナトリウム塩の結晶形態、式Aで表される化合物の硫酸塩の結晶形態および式Aで表される化合物のマレイン酸塩の結晶形態をそれぞれ取って、表7に示す溶媒中の懸濁液を生成し、この懸濁液を室温で3日間撹拌した。結晶形態の安定性を試験し、得られた結果を特許文献CN105315266Aの比較実施例1の結果と比較した。
【0184】
(表7)溶媒中の本出願の式Aで表される化合物の塩形態および式Aで表される化合物の遊離状態の結晶形態安定性試験の結果
【0185】
表7から、式Aで表される化合物の遊離状態は、異なる溶媒中、様々な最終結晶形態で存在することがわかり、これは式Aで表される化合物の遊離状態が、薬物調製中に混合結晶が形成され、結晶形態は制御し難いという問題を起こしやすいことを示す。これに対し、本出願の式Aで表される化合物の各塩形態の結晶形態は比較的単一であり、製造に用いる溶媒の選択はより柔軟であり、結晶形態はより安定である。
【0186】
説明において引用する全ての特許文献および非特許出版物は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0187】
前述のものは本出願の特定の態様にすぎず、本出願の保護の範囲はそれに限定されない。いかなる発明のための労力もなしに本出願によって開示する技術的範囲内で当業者が考案し得るいかなる変更または置換も、本出願の保護の範囲内に含まれる。