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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006214
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】Timothy症候群のモデル動物
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/027 20060101AFI20230111BHJP
   C12N 5/073 20100101ALI20230111BHJP
   C12N 5/076 20100101ALI20230111BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230111BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230111BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230111BHJP
【FI】
A01K67/027 ZNA
C12N5/073
C12N5/076
C12N5/10
C12Q1/02
C12N15/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108698
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 さやか
(72)【発明者】
【氏名】堀金 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 学
(72)【発明者】
【氏名】小澤 享弘
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA07
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ91
4B063QR72
4B063QR77
4B063QR80
4B063QX10
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
【課題】Timothy症候群のモデル動物を提供すること。
【解決手段】Timothy症候群症状の原因変異を含む変異型CACNA1C遺伝子を、心臓以外の組織のみにおいて発現する、Timothy症候群のモデル動物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Timothy症候群症状の原因変異を含む変異型CACNA1C遺伝子を、心臓以外の組織のみにおいて発現する、Timothy症候群のモデル動物。
【請求項2】
前記変異型CACNA1C遺伝子を対の染色体の一方のみに有する、請求項1に記載のモデル動物。
【請求項3】
前記組織が、神経、消化管、皮膚、眼、鼻、歯、肺、内分泌器官、筋肉、及び免疫系からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載のモデル動物。
【請求項4】
前記組織が神経を含む、請求項1~3のいずれかに記載のモデル動物。
【請求項5】
前記原因変異が、CACNA1Cタンパク質の膜貫通ドメイン内の変異又は細胞内ドメイン内の変異である、請求項1~4のいずれかに記載のモデル動物。
【請求項6】
前記膜貫通ドメイン内の変異が、膜貫通ドメイン内の細胞内ドメイン近傍における変異である、且つ/或いは前記細胞内ドメイン内の変異が、細胞内ドメイン内の膜貫通ドメイン近傍における変異である、請求項5に記載のモデル動物。
【請求項7】
前記原因変異が、ヒトCACNA1Cタンパク質におけるG406、G402、A28、R860、I1166、I1475、E1496、E407、G419、R518、S643、R1115、A1473、G1911、A582、K834、P857、R858、R860、及びR1906からなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸に対応するアミノ酸の変異を引き起こす変異である、請求項1~6のいずれかに記載のモデル動物。
【請求項8】
前記原因変異が、ヒトCACNA1Cタンパク質におけるG406に対応するアミノ酸の変異を引き起こす変異である、請求項1~7のいずれかに記載のモデル動物。
【請求項9】
前記原因変異が、ヒトCACNA1Cタンパク質におけるG406R変異に対応する変異を引き起こす変異である、請求項1~8のいずれかに記載のモデル動物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載のモデル動物に発生する、受精卵、精子又は胚。
【請求項11】
請求項1~9のいずれかに記載のモデル動物由来の、細胞。
【請求項12】
請求項1~9のいずれかに記載のモデル動物、又は請求項10に記載の受精卵、精子若しくは胚、又は請求項11に記載の細胞を用いた、Timothy症候群の予防剤、改善剤、又は増悪原因物質のスクリーニング方法。
【請求項13】
(a)請求項1~9のいずれかに記載のモデル動物、又は請求項10に記載の受精卵、精子若しくは胚、又は請求項11に記載の細胞に被検物質を投与する又は接触させる工程、
(b)被検物質が投与又は接触された前記モデル動物、前記受精卵、精子若しくは胚、又は前記細胞の、Timothy症候群の表現型を評価する工程、及び
(c1)前記表現型が治癒又は緩和していた場合に、前記被検物質をTimothy症候群の予防剤又は改善剤として選別する工程、又は
(c2)前記表現型が悪化していた場合に、前記被検物質をTimothy症候群の増悪原因物質として選別する工程、
を含む、請求項12に記載のスクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Timothy症候群のモデル動物等に関する。
【背景技術】
【0002】
Timothy症候群(TS)は電位依存性Ca2+チャネル(Cav1.2、遺伝子名 CACNA1C)の1塩基変異(G406R)による全身性疾患である。特徴的な症状としては、心臓のQT延長、自閉症等が知られている。変異の導入されるExonによってTS1、TS2と分類がされており、Cacna1c Exon8Aに変異が入ったものがTS1、Cacna1c Exon8に変異が入ったものがTS2と命名されている。このExon8とExon8Aは相互排他的なSplicing variantであり、臓器によっていずれのExonが多く発現するかが知られている。Exon8における他の変異としてG402S変異が知られている(非特許文献1)。
【0003】
また、非特許文献2では、心臓のQT延長を示す患者をスクリーニングした結果、CACNA1C遺伝子におけるいくつかの変異が同定されており、これらの変異が、TSと同様に、電流振幅の変化、不活性化速度の変化、活性化・不活性化の電圧依存性などをもたらし、QT延長を引き起こす可能性が高いことが報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Europace. 2018 Feb 1;20(2):377-385.
【非特許文献2】Journal of Molecular and Cellular Cardiology Volume 80, March 2015, Pages 186-195.
【非特許文献3】Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology. 2015;8:1122-1132.
【非特許文献4】Front Pediatr. 2021; 9: 668546.
【非特許文献5】Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 Sep 13;108(37):15432-7.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存のTSモデルマウスTS2-neoでは、薬剤耐性遺伝子発現カセットが変異チャネル発現カセットの近傍に配置されているので、変異チャネルの発現が抑えられている。非特許文献3によると、変異チャネルの発現割合(=変異チャネル発現量/(変異チャネル発現量+野生型チャネル発現量))は約25%であり、本発明者によっても低いことが確認された。しかし、実際のTS患者は、片方のアレルに変異が導入されているので、変異チャネルの発現割合は50%程度であると考えられる。ただ、変異チャネルの発現割合を高めるために、例えば上記モデルマウスにおいて薬剤耐性遺伝子発現カセットの位置を変更しただけでは、心臓での変異チャネルが一定以上発現することに伴い、死亡率が高まり、繁殖可能年齢まで生存させることが困難になると考えられる。
【0006】
本発明は、Timothy症候群のモデル動物を提供することを課題とする。好ましくは、本発明は、変異チャネルの発現割合をより高くすることが可能なTimothy症候群のモデル動物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、Timothy症候群症状の原因変異を含む変異型CACNA1C遺伝子を心臓以外の組織のみにおいて発現させることに着目した。このような変異体の作出にはCre-loxPシステムの利用が考えられるものの、従来の方法では、目的の変異体を得ることができなかった。本発明者はさらに鋭意研究を重ねた結果、Timothy症候群症状の原因変異を含む変異型CACNA1C遺伝子を心臓以外の組織のみにおいて発現する動物の作出に成功し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0008】
項1. Timothy症候群症状の原因変異を含む変異型CACNA1C遺伝子を、心臓以外の組織のみにおいて発現する、Timothy症候群のモデル動物。
【0009】
項2. 前記変異型CACNA1C遺伝子を対の染色体の一方のみに有する、項1に記載のモデル動物。
【0010】
項3. 前記組織が、神経、消化管、皮膚、眼、鼻、歯、肺、内分泌器官、筋肉、及び免疫系からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1又は2に記載のモデル動物。
【0011】
項4. 前記組織が神経を含む、項1~3のいずれかに記載のモデル動物。
【0012】
項5. 前記原因変異が、CACNA1Cタンパク質の膜貫通ドメイン内の変異又は細胞内ドメイン内の変異である、項1~4のいずれかに記載のモデル動物。
【0013】
項6. 前記膜貫通ドメイン内の変異が、膜貫通ドメイン内の細胞内ドメイン近傍における変異である、且つ/或いは前記細胞内ドメイン内の変異が、細胞内ドメイン内の膜貫通ドメイン近傍における変異である、項5に記載のモデル動物。
【0014】
項7. 前記原因変異が、ヒトCACNA1Cタンパク質におけるG406、G402、A28、R860、I1166、I1475、E1496、E407、G419、R518、S643、R1115、A1473、G1911、A582、K834、P857、R858、R860、及びR1906からなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸に対応するアミノ酸の変異を引き起こす変異である、項1~6のいずれかに記載のモデル動物。
【0015】
項8. 前記原因変異が、ヒトCACNA1Cタンパク質におけるG406に対応するアミノ酸の変異を引き起こす変異である、項1~7のいずれかに記載のモデル動物。
【0016】
項9. 前記原因変異が、ヒトCACNA1Cタンパク質におけるG406R変異に対応する変異を引き起こす変異である、項1~8のいずれかに記載のモデル動物。
【0017】
項10. 項1~9のいずれかに記載のモデル動物に発生する、受精卵、精子又は胚。
【0018】
項11. 項1~9のいずれかに記載のモデル動物由来の、細胞。
【0019】
項12. 項1~9のいずれかに記載のモデル動物、又は項10に記載の受精卵、精子若しくは胚、又は項11に記載の細胞を用いた、Timothy症候群の予防剤、改善剤、又は増悪原因物質のスクリーニング方法。
【0020】
項13. (a)項1~9のいずれかに記載のモデル動物、又は項10に記載の受精卵、精子若しくは胚、又は項11に記載の細胞に被検物質を投与する又は接触させる工程、
(b)被検物質が投与又は接触された前記モデル動物、前記受精卵、精子若しくは胚、又は前記細胞の、Timothy症候群の表現型を評価する工程、及び
(c1)前記表現型が治癒又は緩和していた場合に、前記被検物質をTimothy症候群の予防剤又は改善剤として選別する工程、又は
(c2)前記表現型が悪化していた場合に、前記被検物質をTimothy症候群の増悪原因物質として選別する工程、
を含む、項12に記載のスクリーニング方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、Timothy症候群のモデル動物ならびにモデル細胞を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】FLExマウスのアリール構造の模式図を示す。
図2】試験例3の変異チャネル(G406R変異型)の発現割合の測定結果を示す。
図3】試験例4-1のGrooming時間の測定結果を示す。
図4】試験例4-2の3 chamber testの方法の概要を示す。
図5】試験例4-2の3 chamber testの測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.定義
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0024】
アミノ酸配列の「同一性」とは、2以上の対比可能なアミノ酸配列の、お互いに対するアミノ酸配列の一致の程度をいう。従って、ある2つのアミノ酸配列の一致性が高いほど、それらの配列の同一性又は類似性は高い。アミノ酸配列の同一性のレベルは、例えば、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて決定される。若しくは、Karlin及びAltschulによるアルゴリズムBLAST(KarlinS,Altschul SF.“Methods for assessing the statistical significance of molecular sequence features by using general scoringschemes”Proc Natl Acad Sci USA.87:2264-2268(1990)、KarlinS,Altschul SF.“Applications and statistics for multiple high-scoring segments in molecular sequences.”Proc Natl Acad Sci USA.90:5873-7(1993))を用いて決定できる。このようなBLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている。これらの解析方法の具体的な手法は公知であり、National Center of Biotechnology Information(NCBI)のウェエブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照すればよい。また、塩基配列の『同一性』も上記に準じて定義される。
【0025】
本明細書中において、「保存的置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されることを意味する。例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジンといった塩基性側鎖を有するアミノ酸残基同士で置換されることが、保存的な置換にあたる。その他、アスパラギン酸、グルタミン酸といった酸性側鎖を有するアミノ酸残基;グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システインといった非帯電性極性側鎖を有するアミノ酸残基;アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンといった非極性側鎖を有するアミノ酸残基;スレオニン、バリン、イソロイシンといったβ-分枝側鎖を有するアミノ酸残基;チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンといった芳香族側鎖を有するアミノ酸残基同士での置換も同様に、保存的な置換にあたる。
【0026】
2.モデル動物、細胞
本発明は、その一態様において、Timothy症候群症状の原因変異を含む変異型CACNA1C遺伝子を、心臓以外の組織のみにおいて発現する、Timothy症候群のモデル動物(本明細書において、「本発明のモデル動物」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。
【0027】
動物としては、特に制限されず、例えばサル、マウス(ハツカネズミ属動物)、ラット、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、シカ等の哺乳類動物が挙げられる。これらの中でも、実験動物として使用し得る動物が好ましく、ハツカネズミ属動物がより好ましく、Mus musculusがさらに好ましい。また、哺乳類動物は、系統種であってもよく、雑種であってもよい。また、系統種としては、マウスの場合であれば、例えばC57BL/6、C3H、ICR、BALB/cが挙げられるが、好ましくはC57BL/6である。ヒトをモデル動物とする場合には、健常人あるいは疾患患者に由来する細胞や、iPS細胞などの使用が想定される。
【0028】
CACNA1C(Calcium Voltage-Gated Channel Subunit Alpha1 C)遺伝子は、電位依存性Ca2+チャネルの遺伝子である。哺乳類動物等各種動物において、CACNA1C遺伝子の塩基配列及びアミノ酸配列は公知である、或いは公知のCACNA1C遺伝子の塩基配列及びアミノ酸配列に基づいて(例えば、これらとの同一性解析等により)容易に決定することができる。一例として、マウスのCACNA1C遺伝子は、NCBI Gene ID:12288で特定される遺伝子であり、そのアミノ酸配列としてはNCBI RefSeqアクセッション番号:NP_001153006.1で特定されるアミノ酸配列(配列番号3)が挙げられ、そのmRNA配列としてはNCBI RefSeqアクセッション番号:NM_001159534.2で特定される塩基配列(配列番号5)が挙げられる。
【0029】
本発明が対象とするCACNA1C遺伝子には、自然界において生じ得る機能正常の変異体も含まれる。本発明が対象とするCACNA1C遺伝子は、コードするタンパク質の酵素活性が著しく損なわれない限りにおいて、置換、欠失、付加、挿入等の塩基変異を有していてもよい。変異としては、該mRNAから翻訳されるタンパク質においてアミノ酸置換が生じない変異やアミノ酸の保存的置換が生じる変異が好ましい。
【0030】
本発明が対象とするCACNA1C遺伝子は、例えば、それによりコードされるタンパク質のアミノ酸配列が、同種動物の野生型CACNA1C遺伝子によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列と、例えば95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有する、遺伝子である。また、本発明が対象とするCACNA1C遺伝子は、例えば、それによりコードされるタンパク質のアミノ酸配列が、同種動物の野生型CACNA1C遺伝子によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列と同一であるか又は該アミノ酸配列に対して1もしくは複数個(例えば2~10、好ましくは2~5、より好ましくは2~3個、さらに好ましくは2個)が置換、欠失、付加、又は挿入されたアミノ酸配列である、遺伝子である。
【0031】
本発明のモデル動物は、Timothy症候群症状の原因変異を含む変異型CACNA1C遺伝子を有する。すなわち、本発明のモデル動物においては、対の染色体の一方又は両方において、CACNA1C遺伝子が、変異型CACNA1C遺伝子に置き換わっている。モデル動物の生存期間の一定上の確保という観点からは、本発明のモデル動物は、変異型CACNA1C遺伝子を対の染色体の一方のみに有することが好ましい。
【0032】
Timothy症候群症状としては、Timothy症候群患者の症状として認められているものである限り特に制限されず、例えばQT間隔延長、自閉症、合指(単純性合指で、左右対称的に、両側上・下肢に認めることが多い)、生直後からの禿頭、小歯症、心奇形(卵円孔開存、動脈管開存、心室中隔欠損、その他)、知的発育障害、顔面形態異常、近視、免疫不全、間欠的低血糖、低体温、筋疾患、言語発育遅延等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはQT間隔延長が挙げられる。
【0033】
Timothy症候群症状の原因変異は、Timothy症候群症状の原因となり得るものである限り特に制限されない。原因変異として、好ましくはCACNA1Cタンパク質の膜貫通ドメイン内の変異又は細胞内ドメイン内の変異が挙げられる。なお、CACNA1Cタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインがどの領域であるかは、既に公知であるか、或いは公知の配列情報に基づいて膜貫通ドメイン予測プログラムを利用すること、及び/又は膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインが公知のCACNA1Cタンパク質のアミノ酸配列との比較に基づいて、容易に決定することができる。
【0034】
本発明のより好ましい態様において、膜貫通ドメイン内の変異が、膜貫通ドメイン内の細胞内ドメイン近傍における変異である、且つ/或いは細胞内ドメイン内の変異が、細胞内ドメイン内の膜貫通ドメイン近傍における変異であることができる。ここで、「膜貫通ドメイン内の細胞内ドメイン近傍」とは、例えば膜貫通ドメインの細胞内ドメイン側の半分の領域であり、好ましくは膜貫通ドメインの細胞内ドメイン側の1~30アミノ酸からなる領域、1~20アミノ酸からなる領域、又は1~10アミノ酸からなる領域であることができる。同様に、「細胞内ドメイン内の膜貫通ドメイン近傍」とは、例えば細胞内ドメインの膜貫通ドメイン側から1~30アミノ酸からなる領域であり、好まし細胞内ドメインの膜貫通ドメイン側から1~20アミノ酸からなる領域、又は1~10アミノ酸からなる領域であることができる。
【0035】
原因変異として、具体的には、例えばヒトCACNA1Cタンパク質(アミノ酸配列:配列番号6)におけるG406、G402、A28、R860、I1166、I1475、E1496、E407、G419、R518、S643、R1115、A1473、G1911、A582、K834、P857、R858、R860、及びR1906からなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸に対応するアミノ酸の変異を引き起こす変異が挙げられる。上記アミノ酸表記は、アミノ酸+N末端からの当該アミノ酸番号である。すなわち、G406は、配列番号6のN末端から406番目のアミノ酸(グリシン)を意味する。ヒトCACNA1Cタンパク質の上記アミノ酸に対応するアミノ酸、すなわち他のCACNA1Cタンパク質(例えば他の生物種のCACNA1Cタンパク質)における対応するアミノ酸は、ヒトCACNA1Cタンパク質との同一性解析により、容易に同定することができる。より具体的には、例えばヒトCACNA1Cタンパク質のアミノ酸配列(配列番号6:アミノ酸配列1)と当該アミノ酸配列とは異なるCACNA1Cタンパク質のアミノ酸配列(アミノ酸配列2)とを比較して、同一性が最大となるように両者を並列に並べた場合に、アミノ酸配列2における、アミノ酸配列1中のアミノ酸残基G406に対応する残基を、「対応するアミノ酸」であると決定することができる。
【0036】
原因変異は、アミノ酸の置換であることが好ましい。この場合、上記した原因変異の具体例における好ましい置換後のアミノ酸は以下のとおりである:
G406:好ましくはアルギニン、リジン、ヒスチジン、より好ましくはアルギニン
G402:好ましくはセリン、トレオニン、より好ましくはセリン
A28:好ましくはセリン、トレオニン、より好ましくはトレオニン
R860:好ましくはグリシン、アラニン、より好ましくはグリシン
I1166:好ましくはセリン、トレオニン、バリン、より好ましくはトレオニン、バリン
I1475:好ましくはメチオニン、システイン、より好ましくはメチオニン
E1496:好ましくはアルギニン、リジン、ヒスチジン、より好ましくはリジン
E407:好ましくはアラニン、グリシン
G419:好ましくはアルギニン、リジン、ヒスチジン、より好ましくはアルギニン
R518:好ましくはアルギニン、リジン、ヒスチジン、システイン、メチオニン、より好ましくはヒスチジン、システイン
S643:好ましくはフェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、より好ましくはフェニルアラニン
R1115:好ましくはアルギニン、リジン、ヒスチジン、より好ましくはリジン
A1473:好ましくはグリシン
G1911:好ましくはアルギニン、リジン、ヒスチジン、より好ましくはアルギニン
A582:好ましくはアスパラギン酸、グルタミン酸、より好ましくはアスパラギン酸
K834:好ましくはアスパラギン酸、グルタミン酸、より好ましくはグルタミン酸
P857:好ましくはアルギニン、リジン、ヒスチジン、ロイシン、イソロイシン、バリン、より好ましくはアルギニン、ロイシン
R858:好ましくはアルギニン、リジン、ヒスチジン、より好ましくはヒスチジン
R860:好ましくはグリシン、アラニン、より好ましくはグリシン
R1906:好ましくはグルタミン、アスパラギン、より好ましくはグルタミン。
【0037】
原因変異は、好ましくはヒトCACNA1Cタンパク質におけるG406に対応するアミノ酸の変異を引き起こす変異であり、より好ましくはヒトCACNA1Cタンパク質におけるG406R変異に対応する変異を引き起こす変異である。
【0038】
本発明のモデル動物は、変異型CACNA1C遺伝子を、心臓以外の組織のみにおいて発現する。すなわち、本発明のモデル動物は、変異型CACNA1C遺伝子を、心臓においては発現せず、心臓以外の組織で発現する。なお、「発現する」とは、遺伝子発現産物であるmRNA及びタンパク質が産生されていることを示す。
【0039】
心臓以外の組織としては、特に制限されず、例えば神経、消化管、皮膚、眼、鼻、歯、肺、内分泌器官、筋肉、免疫系等が挙げられる。これらの中でも神経が好ましく、中枢神経がより好ましく、脳がさらに好ましい。
【0040】
変異型CACNA1C遺伝子を発現する組織における変異型CACNA1C遺伝子の発現割合(=変異型CACNA1C遺伝子発現量/(変異型CACNA1C遺伝子発現量+野生型CACNA1C遺伝子発現量))は、例えば15%以上である。当該発現割合は、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上、よりさらに好ましくは35%以上である。当該割合の上限は、特に制限されないが、例えば70%、60%、55%、又は50%である。当該発現割合は、後述の試験例3の方法に従って又は準じてで測定することができる。
【0041】
本発明のモデル動物は、Timothy症候群症状、例えば自閉症、合指(単純性合指で、左右対称的に、両側上・下肢に認めることが多い)、生直後からの禿頭、小歯症、知的発育障害、顔面形態異常、近視、免疫不全、間欠的低血糖、低体温、筋疾患、言語発育遅延等の1つ或いは複数の症状(表現型)を呈する。本発明のモデル動物は、例えばTimothy症候群の病態解析、治療薬のスクリーニングなどに使用することができる。
【0042】
本発明は、その一態様において、本発明のモデル動物由来の細胞(本発明の細胞)、に関する。本発明の細胞は、本発明のモデル動物における変異型CACNA1C遺伝子を発現する組織から細胞を採取することにより、得ることができる。本発明の細胞は、初代培養細胞であることができ、また当該初代培養細胞の株化細胞であることもできる。
【0043】
本発明の細胞は、Timothy症候群のモデル細胞として、例えばTimothy症候群の病態解析、治療薬のスクリーニングなどに使用することができる。細胞としては、初代培養細胞であっても、細胞株であっても特に制限されず、例えば神経細胞、血液細胞、造血幹細胞・前駆細胞、配偶子(精子、卵子)、線維芽細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、肝細胞、ケラチン生成細胞、筋細胞、表皮細胞、内分泌細胞、ES細胞、iPS細胞、組織幹細胞、がん細胞等が挙げられる。また、細胞の由来生物も特に制限されず、例えばヒト、サル、マウス(ハツカネズミ属動物)、ラット、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、シカ等の哺乳類動物が挙げられる。
【0044】
3.モデル動物、細胞の作製方法
本発明のモデル動物は、ターゲティングベクターを用いた相同組換え法及びCreによる組換えにより作製することができる。
【0045】
ターゲティングベクターは、図1の上段に示すように、CACNA1C遺伝子において目的の変異(Timothy症候群症状の原因変異)が導入された変異型エクソンと、対応する野生型エクソンが向かい合わせで配置され、その周囲にloxP, lox2272が図1のように配置された構造を有する。すなわち、一方を方向1、その反対側を方向2とすると、方向1側から、方向1向きのlox2272(或いはloxP)、野生型エクソン、方向1向きのloxP(或いはlox2272)、野生型エクソンと逆向きの変異型エクソン、方向2向きのlox2272(或いはloxP)、方向2向きのloxP(或いはlox2272)の順に配置された構造となる。
【0046】
変異型エクソンと野生型エクソンの間には、スペーサー配列を導入することが好ましい。これにより、変異チャネルの発現割合をより高くすることができる。スペーサー配列の塩基長は、例えば300以上、好ましくは600以上、より好ましくは800以上、さらに好ましくは1000以上であり、またその上限は、特に制限されず、例えば3000、2500、又は2000である。スペーサー配列としては、好ましくは遺伝子発現やゲノム安定性などに影響を与えない配列(例えば転写ターミネーター配列、ポリアデニル化配列等)を任意に組み合わせて用いることができる。
【0047】
ターゲティングベクターは、5´側から、5´側ホモロジーアーム、上記の構造、3´側ホモロジーアームが配置された塩基配列を含むDNAである。
【0048】
5´側ホモロジーアーム及び3´側ホモロジーアームは、上記構造に置換する対象部位であるゲノム内領域の5´側及び3´側に隣接する領域の塩基配列を意味する。これらのホモロジーアームを介した相同組換えにより、上記構造に置換することができる。
【0049】
ターゲティングベクターは、上記以外に、他の配列を有していてもよい。他の配列としては、例えば相同組換え法のネガティブセレクションマーカーの発現カセット(例えば、DTA(Diptheria Toxin A)カセット等)等が挙げられる。
【0050】
相同組換え法においては、通常、ターゲティングベクターを、ES細胞に導入することにより行われる。導入方法は特に制限されないが、例えばエレクトロポレーション法が挙げられる。ターゲティングベクターの導入後は、通常、薬剤耐性遺伝子を利用して、薬剤による選別が行われる。上記構造への置換が起こったES細胞を初期胚と凝集し、偽妊娠マウスに移植してキメラ動物を作製し、キメラ動物間交配により、上記構造をヘテロ又はホモで有する動物を得ることができる。
【0051】
続いて、上記構造を有する動物を、心臓以外の組織で特異的にCreを発現する(具体的には、例えば心臓以外の組織の特異的プロモーターの制御下にCreコード配列が連結された発現カセットをゲノム内に有する)動物と交配し、上記構造を有し、且つ心臓以外の組織で特異的にCreを発現する動物を得る。当該動物は、心臓以外の組織で特異的にCreを発現し、当該Creの酵素活性により、心臓以外の組織で特異的に図1に代表的に例示されるような組換えが起こる。このようにして、本発明の動物を得ることができる。
【0052】
上記作製方法の過程で得られた、本発明のモデル動物に発生する受精卵、精子及び胚(例えば凍結胚)も、本発明の一態様である。また、本発明のモデル動物の精子及び/又は卵子を受精させて得られる受精卵も、本発明のモデル動物に発生し得る受精卵であり、このような受精卵も本発明の一態様である。これらの受精卵としては、凍結保存状態から生体に発生させることができる限り特に限定されず、受精直後の卵、前核期胚、初期胚、又は胚盤胞等が挙げられる。
【0053】
4.モデル動物、細胞の用途
本発明のモデル動物及びこれに発生する受精卵、精子及び胚、並びに本発明の細胞は、Timothy症候群の病態解析、予防法開発、治療法開発等に利用することができる。
【0054】
本発明は、その一態様において、本発明のモデル動物、これに発生する受精卵若しくは胚、又は本発明の細胞を用いた、Timothy症候群の予防剤、改善剤、又は増悪原因物質のスクリーニング方法に関する。
【0055】
スクリーニング方法は、本発明のモデル動物又は本発明の細胞を用いている限り特に限定されないが、例えば工程(a)、(b)、及び(c1)又は(c2):
(a)本発明のモデル動物、又は本発明の受精卵、精子若しくは胚、又は本発明の細胞に被検物質を投与する又は接触させる工程、
(b)被検物質が投与又は接触された前記モデル動物、前記受精卵、精子若しくは胚、又は前記細胞の、Timothy症候群の表現型を評価する工程、及び
(c1)前記表現型が治癒又は緩和していた場合に、前記被検物質をTimothy症候群の予防剤又は改善剤として選別する工程、又は
(c2)前記表現型が悪化していた場合に、前記被検物質をTimothy症候群の増悪原因物質として選別する工程、
を含む。
【0056】
被検物質の種類は治療薬の候補になり得る限り特に限定されない。例えば、タンパク質、ペプチド、非ペプチド性化合物(ヌクレオチド、アミン、糖質、脂質等)、有機低分子化合物、無機化合物、醗酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液等が挙げられる。
【0057】
投与は、公知の方法に従って行うことができる。例えば経口投与、経管栄養、注腸投与等の経腸投与; 経静脈投与、経動脈投与、筋肉内投与、心臓内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与等の非経口投与等が挙げられる。
【0058】
表現型の評価は、公知の方法に従って又は準じて行うことができる。
【0059】
選別された被検物質を治療候補物質として、さらなる解析を進めることにより、有用な治療薬を選別することができる。
【実施例0060】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0061】
試験例1.組換えマウスの作出
新規モデルマウスにはFLExシステムを用いた。CACNA1C遺伝子において野生型Exon8(塩基配列:配列番号1)と変異型Exon8(塩基配列:配列番号2)を適切なスペーサー配列(遺伝子発現やゲノム安定性などに影響を与えない配列が候補となりうる。本モデルにおいては、酵母His3遺伝子転写ターミネーター配列とSV40ポリアデニル化配列を結合させた1300塩基(配列番号7)を用いた。)を介して向かい合わせで配置し、その周囲にloxP, lox2272を配置することで(図1)、Cre酵素非存在下では野生型Exon8を有するCACNA1C遺伝子(アミノ酸配列:配列番号3)が発現し、Cre酵素存在下では組み換わり変異型Exon8を有するCACNA1C遺伝子(アミノ酸配列:配列番号4、G406R変異)が発現する様にした組換えマウス(FLEx Allele(図1) / WT Alleleのヘテロマウス)を、常法に従って作出した。この新規系統にFLExマウスと名称を付けた。
【0062】
試験例2.マウス交配
神経系特異的にCre酵素を発現するマウス(SOX1プロモーターの制御下にCreコード配列を有する発現カセット(Cre Allele)を含むマウス、Cre Allele + / Cre Allele - のヘテロマウス)とFLExマウスを交配し、仔マウスを取得した。仔マウスには4種類の遺伝型 WTマウス, Creマウス, FLExマウス, cKIマウスの4群があり、雄雌いずれも4群が出生する事を確認した。
【0063】
試験例3.変異チャネル発現割合の測定
非特許文献5と同様の方法を行うことで変異チャネル(G406R変異型)の発現割合を確認した。雌マウスを14週齢まで飼育し、マウス脳を摘出し、脳の一部からPureLink RNA Mini キット(ThermoFisher Scientific)を用いてRNA抽出を行った。RNAからPrimeScrip RT Master Mix(Takara)を使用し、cDNAを作成した。cDNAをサンプルとして目的Exon(Exon8 or Exon8A)の両隣のExon (Exon7,9)を標的としたPrimerを用いてPCRを行い、その産物を用いてプラスミドを作成した。このプラスミドを大腸菌に導入し、各サンプルを1プレートごとに散布し、各プレートから30~32コロニーを回収した。各コロニーのプラスミド配列をシーケンシングして、野生型Exon8, Exon8A, 変異型Exon8のコロニー数から発現割合を算出した。変異割合は、非特許文献1と同様に変異型Exon8(G406R)と野生型Exon8の合計と変異型Exon8(G406R)の割合で計算した。
【0064】
結果を図2に示す。cKI-Nii(試験例2:cKIマウス(KI Allele(図1) / WT Alleleのヘテロであり、且つCre Allele + / Cre Allele - のヘテロであるマウス))は変異チャネル(G406R変異型)発現割合が41%であり、TS2-Neo(非特許文献5で作出されたモデルマウス)に比べて高い値を示した。
【0065】
また、cKI-Niiは、一部の個体を除き、生後16週程度まで生存することが確認された。
【0066】
試験例4.行動実験
WTマウス, Creマウス, FLExマウス, cKIマウスについて行動実験を行った。行動実験の前には、各個体1日5分間のハンドリングを連続3日間行った。いずれの行動実験も、マウスを待機室で1時間以上待機させた後に、実験を行った。
【0067】
<試験例4-1.Grooming>
7週齢雄マウスを使用した。100luxの明るさに調節した防音ボックスにケージを配置し、マウスをケージの隅に入れた。最初に10分間慣らしを行い、10分間テストとして動画を撮影し、動画のGrooming時間を実験者が確認した。
【0068】
結果を図3に示す。4群での検定(One way anova, post hoc tukey)を行った結果、cKIはWTに比べて有意にGrooming時間の増加を認めた。
【0069】
<試験例4-2.3 chamber test>
9-10週齢雄マウスを使用した。実験2日前に実験マウスをグループ飼育から個別飼育にした。60*40cmのボックス(10lux)を20cmごとに左チャンバー、中央チャンバー、右チャンバーに分けた。左右チャンバー内のボックス隅に半径10cmの四分円形ケージを配置し、そこに刺激マウスを入れ、自動解析ソフトTimeCSI(O'Hara & Co)を用いて、動画撮影、解析を行った。合計2回のトライアルを行った。図4に示すように、トライアル1は左右ケージが空の状態、トライアル2は右ケージに刺激マウス1を入れた状態で、実験マウスを12分間自由に探索させた。
【0070】
結果を図5に示す。トライアル1では、左右ケージ付近滞在時間に4群において差は認めなかった。トライアル2において、WT、Cre、FLExでは、右ケージ(刺激マウス1の入ったケージ)付近滞在時間が左ケージ(空ケージ)に比べ有意に増加していたが、cKIでは左右ケージ付近滞在時間に差はなかった。
【0071】
常同行動の増加(Grooming時間の増加)と社会性の異常(3 chamber testにおける刺激マウスへの反応の異常)から、cKIマウス(試験例2)は自閉症様行動を示しており、神経系Timothy症候群モデルとして妥当であることが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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