IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太陽油脂株式会社の特許一覧

特開2023-6215加熱調理用油脂組成物及びその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006215
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】加熱調理用油脂組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20230111BHJP
   A23D 9/02 20060101ALI20230111BHJP
   C11B 3/10 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A23D9/00 506
A23D9/02
C11B3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108699
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】591040144
【氏名又は名称】太陽油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】野上 文
(72)【発明者】
【氏名】石川 隼人
【テーマコード(参考)】
4B026
4H059
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DG02
4B026DP10
4B026DX01
4H059AA13
4H059BC13
4H059BC47
4H059CA21
4H059CA72
4H059DA07
4H059EA24
4H059EA25
(57)【要約】
【課題】本発明は油ちょう食品に甘味や風味持続性を提供しかつえぐ味を与えない加熱調理用油脂組成物を簡便に提供することを課題とする。
【解決手段】加熱調理用油脂組成物として用いるためのパーム系油脂を製造する方法であって、原料であるパーム系油脂の質量に対して1.8質量%以下の白土を使用して脱色処理を行ない、続いて脱臭処理を行なうことにより、βカロテン濃度が0.7ppm以上30ppm以下であり、かつ過酸化物価が0.3以下であるパーム系油脂を製造することを含む、上記方法により、甘味や風味持続性がありかつえぐ味のない加熱調理食品を得ることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱調理用油脂組成物として用いるためのパーム系油脂を製造する方法であって、
原料であるパーム系油脂の質量に対して1.8質量%以下の白土を使用して脱色処理を行ない、続いて脱臭処理を行なうことにより、βカロテン濃度が0.7ppm以上30ppm以下であり、かつ過酸化物価が0.3以下であるパーム系油脂を製造することを含む、上記方法。
【請求項2】
脱臭処理を、150~270℃の範囲の温度で行なう、請求項1記載の方法。
【請求項3】
脱臭処理を30~120分間行なう、請求項2記載の方法。
【請求項4】
脱色処理を110℃以下の温度で行なう、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
パーム系油脂が、パーム油あるいはパーム分別軟質油から選択される油脂である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
βカロテン濃度が0.7ppm以上30ppm以下であり、かつ過酸化物価が0.3以下であり、脱色及び脱臭処理されてなる、加熱調理用油脂組成物として用いるためのパーム系油脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフライ等の油ちょう食品を調理する際に用いられる加熱調理用油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
油ちょう食品の風味をコントロールするために、油ちょう食品を調理する際に用いられる油脂組成物の処理方法が提案されている。
特許文献1には、過酸化物価が3以上250以下であるように酸化処理することにより、油脂風味をコントロールする方法が記載されている。しかし、酸化処理によって生成する過酸化脂質は体に悪影響がある可能性があり、また風味にえぐ味を与えるため好ましくない。
特許文献2には、油脂中のアルデヒド類の量を低減させ、油脂の曝光臭を低減させて風味を改良する方法として、特定の条件下で水蒸気と接触させることにより行なう脱臭工程を含む方法が開示されている。
特許文献3には、フライ調理用油脂組成物の着色を抑制するために、脱ガム工程や脱臭工程を行なう方法が記載されている。しかしながらかかる精製の風味への影響については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2020/090609号公報
【特許文献2】特開2015-193776号公報
【特許文献3】国際公開2019/151007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、油ちょう食品に甘味や風味持続性を提供しかつえぐ味を与えない加熱調理用油脂組成物は知られていなかったところ、本発明は油ちょう食品に甘味や風味持続性を提供しかつえぐ味を与えない加熱調理用油脂組成物を簡便に提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、パーム系油脂の精製方法を工夫することにより、甘味があり、風味の持続性がよく、さらにえぐ味もない油脂が得られることを見いだした。精製された油脂の分析を行なったところ、油脂の色調が上記効果と関連性があること、さらに精製された油脂中のβカロテン濃度と過酸化物価が上記効果と特に関連性があることを見いだし、本発明を完成した。
本発明は、以下を提供する。
〔1〕加熱調理用油脂組成物として用いるためのパーム系油脂を製造する方法であって、
原料であるパーム系油脂の質量に対して1.8質量%以下の白土を使用して脱色処理を行ない、続いて脱臭処理を行なうことにより、βカロテン濃度が0.7ppm以上30ppm以下であり、かつ過酸化物価が0.3以下であるパーム系油脂を製造することを含む、上記方法。
〔2〕脱臭処理を150~270℃の範囲の温度で行なう、前記〔1〕記載の方法。
〔3〕脱臭処理を30~120分間行なう、前記〔2〕記載の方法。
〔4〕脱色処理を110℃以下の温度で行なう、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の方法。
〔5〕パーム系油脂が、パーム油あるいはパーム分別軟質油から選択される油脂である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載の方法。
〔6〕βカロテン濃度が0.7ppm以上30ppm以下であり、かつ過酸化物価が0.3以下であり、脱色及び脱臭処理されてなる、加熱調理用油脂組成物として用いるためのパーム系油脂。
【発明の効果】
【0006】
本発明のパーム系油脂を加熱調理用油脂組成物として用いて食品を加熱調理することにより、甘味があり、風味の持続性がよく、さらにえぐ味もない加熱調理食品を得ることができる。また、ナゲットのようなスパイス感のある食品については、かかるスパイス感を損なうことなく、甘味、風味の持続性を提供する。
また本発明の製造方法により、加熱調理用油脂組成物として用いるための上記特徴を有するパーム系油脂を簡便に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の第一の実施態様は、加熱調理用油脂組成物として用いるためのパーム系油脂を製造する方法であって、原料であるパーム系油脂の質量に対して1.8質量%以下の白土を使用して脱色処理を行ない、続いて脱臭処理を行なうことにより、βカロテン濃度が0.7ppm以上30ppm以下であり、かつ過酸化物価が0.3以下であるパーム系油脂を製造することを含む、上記方法である。
また、本発明の第二の実施態様は、βカロテン濃度が0.7ppm以上30ppm以下であり、かつ過酸化物価が0.3以下であり、脱色及び脱臭処理されてなる、加熱調理用油脂組成物として用いるためのパーム系油脂である。
【0008】
<パーム系油脂>
本明細書において、「パーム系油脂」は、パーム油及びその分別油から選択される油脂を意味する。具体的には、パーム油、パーム分別軟質油、パーム分別硬質油、パーム分別中融点部、等が挙げられる。パーム分別軟質油は、パーム油を分別して得られる低融点画分の油脂であり、ヨウ素価は、通常50を超える(例えば、55以上の)範囲から選択される。パーム分別硬質油とは、パーム油を分別して得られる高融点画分の油脂であり、ヨウ素価は、通常40未満(例えば、10~40)の範囲から選択される。パーム分別中融点部は、パームを更に分別して得られる高融点画分の油脂であり、ヨウ素価は通常30~50の範囲から選択される。
【0009】
原料となる「パーム系油脂」は、通常、原油(植物を圧搾して得た油)を物理的精製法により脱臭した油脂である(『油脂の特性と応用』戸谷洋一郎監修 幸書房(2012年1月30日発行)。
また、本発明に使用するパーム系油脂は、RBD油を含んでいてもよい。パーム系油脂は、生産地において原油に物理精製(RBD: Refined Bleached Deodorized)と呼ばれる精製処理を施したRBD油が、日本等の消費国へ輸出されている。通常、RBD油は消費国で再び、(必要に応じ脱酸)、脱色、脱臭の精製処理を行ってから使用される場合が多い(再精製RBD油)。
本発明において原料として用いるパーム系油脂のうち、例えば「パーム油」の分析値は、ヨウ素価が50以上55以下程度のものであり、色調が50~80程度であり、βカロテン量が1~40ppm程度、過酸化物価が30以下程度のものである。また「パーム分別軟質油」の分析値は、ヨウ素価が55以上、好ましくは60以上67以下のものであり、色調が50~90程度であり、βカロテン量が1~40程度、過酸化物価が1~30程度のものである。
【0010】
<加熱調理用油脂組成物>
本発明のパーム系油脂は、加熱調理用油脂組成物として用いるための油脂である。本発明において「加熱調理用油脂組成物」とは、炒める、焼く、揚げるなどの加熱調理に用いる油脂組成物をいう。本発明の加熱調理用油脂組成物を用いて、公知の方法で食品を加熱調理することができる。加熱調理食品としては、チキンナゲット、フライドチキン、フライドポテトなどのフライ、天ぷら、からあげ、ドーナツ、スナック菓子などの油ちょう品が挙げられる。
本発明において、加熱調理用油脂組成物は、本発明のパーム系油脂(本発明の製造方法により製造されたパーム系油脂あるいは本発明の所定のβカロテン量及び過酸化物価を有する脱色及び脱臭処理されてなるパーム系油脂)のみからなるものであってもよく、また本発明のパーム系油脂に加えてその他の油脂を本発明の効果を損なわない程度に含むものであってもよい。例えば、全体の油脂組成物質量に対して、20質量%程度まで他の油脂を含んでいてもよく、さらに好ましくは10質量%以下の量で含んでいてもよい。
【0011】
<脱色処理>
本発明における白土を用いた脱色処理は、原料であるパーム系油脂の質量に対して1.8質量%以下の白土を使用することを特徴とする。
従来の脱色工程は、通常2~3質量%の活性白土を加え、減圧下において100℃付近まで加熱し、一定時間油脂と接触させて、油脂中の色素成分などを吸着除去する工程である。しかしながら、本発明では、白土量を1.8質量%以下に押さえることにより、βカロテン量を0.7ppm以上含む油脂を得ることができることを見いだした。
白土量の下限は好ましくは0.1質量%以上である。上限は1.5質量%以下であることが好ましく、1.2質量%以下であることがより好ましく、0.9質量%以下がさらに好ましく、0.7質量%以下がよりさらに好ましく、0.5質量%以下であることがまたさらに好ましい。
本発明における白土を用いた脱色処理の温度は、110℃以下が好ましく、60~100℃がより好ましく、70℃~90℃がさらに好ましい。
白土を用いた脱色処理の時間は適宜決めることができるが、例えば10~60分程度であり、さらに例えば20~50分程度である。白土の脱色能は油との接触が十分であれば10~20分で最高点に達することが知られており、油の色相は10~60分程度の間においてほぼ同様である(参照:中沢忠久「油化学工業における吸着剤」(『油化学』12巻9号483~490頁(1963年)日本油化学会発行))。よって、例えば30分程度脱色を行なうことにより十分に目的の脱色効果が奏されると考えられる。
【0012】
<脱臭処理>
本発明における脱臭処理は、例えば、高真空下、高温に加熱された油脂中にスチームを吹き込み、有臭成分や、脂肪酸、不けん化物などの揮発成分を蒸留する水蒸気蒸留の原理により行われる。脱臭装置には、バッチ式、半連続式、連続式などがあるが、いずれの装置を用いてもよい。水蒸気量は従来公知の量で用いることができるが、例えば、油脂に対し1.0~3.0質量%の範囲で用いることができる。
従来の脱臭処理は、230℃以上の温度で、真空度が約200~800Pa程度で、0.3~2.5時間行われる。本発明では、上述の脱色処理とあわせて行なったとき、得られる油脂中のβカロテン濃度が0.7ppm以上であり、かつ過酸化物価が0.3以下となるような条件で行なわれる。より具体的には、150~270℃の温度で行なうことが好ましく、より好ましくは160~230℃であり、さらに好ましくは165~210℃であり、よりさらに好ましくは170~190℃である。上記温度において、30~120分程度の時間脱臭処理を行なうことが好ましく、40~90分程度がより好ましい。真空度は200~800Paが好ましい。
【0013】
<βカロテン濃度>
βカロテンは植物によって生合成される光合成色素の1つである。
本発明の加熱調理用油脂組成物として用いるためのパーム系油脂のβカロテン濃度は0.7ppm以上30ppm以下である。かかる範囲であることにより、油ちょうした食品の甘味と風味持続性が良好になる。またβカロテン濃度が高くなると、βカロテン自体の青臭い風味が強くなる傾向にあるため、βカロテン濃度は30ppm以下である。さらに好ましくは0.8~20ppmであり、よりさらに好ましくは0.9~1.5ppmである。
βカロテン濃度は、「MPOB Test Method p2.6:2004」(Malaysian Palm Oil Board)に記載される方法により、算出した。1cmの厚さのPMMA製セルを用いて「ダブルビーム分光光度計UH-5300」(日立ハイテクサイエンス)を使用し446nmの吸光度を測定し、383×吸光度÷90の式に従って計算した値である。なお吸光度が1を超える場合にはイソオクタンを用い希釈し、測定、算出した。
【0014】
<過酸化物価>
本発明の加熱調理用油脂組成物として用いるためのパーム系油脂の過酸化物価は、0.3以下である。かかる範囲であることにより、油ちょうした食品にえぐ味を生じず、良好な風味を感じることができる。過酸化物価は0.2以下であることがより好ましい。
過酸化物価の調整は、所定の脱色処理条件に加えて、脱臭温度と時間を調整することにより、好ましい範囲にすることが可能である。
過酸化物価は、「基準油脂分析試験法 2.5.2過酸化物価」(日本油化学会)に記載される方法により測定した。
【0015】
<酸価>
本発明の加熱調理用油脂組成物として用いるためのパーム系油脂の酸価は、0.2以下であることが好ましい。かかる範囲であることにより、油ちょうした食品にえぐ味を生じず、良好な風味を感じることができる。
酸価の調整は、所定の脱色処理条件に加えて、脱臭温度と時間を調整することにより、好ましい範囲にすることが可能である。
酸価は、「基準油脂分析試験法 2.3.1酸価」(日本油化学会)に記載される方法により測定した。
【0016】
<色調>
本発明の加熱調理用油脂組成物として用いるためのパーム系油脂の色調(10R+Y)は、油ちょうした食品の外観の観点から70以下であることが好ましい。かかる範囲であることにより、油ちょうした食品にえぐ味を生じず、良好な風味を感じることができる。
色調は、「基準油脂分析試験方法 2.2.1.1色(ロビボンド法)」(日本油化学会)に記載される方法により、133.4mmの厚さのガラス製セルを用いて測定し、10R+Yの式に従って計算した値である。
【実施例0017】
<油脂の製造>
原料:パーム分別軟質油1
・酸価:0.16
・過酸化物価:9
・色調(10R+Y):64
・βカロテン量:1.2ppm
・ヨウ素価:64
原料:パーム分別軟質油2
・酸価:0.14
・過酸化物価:12
・色調(10R+Y):68
・βカロテン量:1.2ppm
・ヨウ素価:64
原料:パーム油
・酸価:0.17
・過酸化物価:13
・色調(10R+Y):62
・βカロテン量:1.1ppm
・ヨウ素価:53
【0018】
上記原料パーム分別軟質油1、2あるいはパーム油を、表1に記載される条件下で、脱色処理及び脱臭処理を行なった。実施例9は、比較例2の方法で脱色及び脱臭処理した油脂に、βカロテンを0.5ppm添加して、βカロテン濃度を0.9ppmに変えた。実施例10は、比較例2の方法で脱色及び脱臭処理した油脂に、βカロテンを20ppm添加して、βカロテン濃度を20.4ppmに変えた。比較例5は、比較例2の方法で脱色及び脱臭処理した油脂に、βカロテンを40ppm添加して、βカロテン濃度を40.4ppmに変えた。なお、実施例1~3、5及び比較例1~3については原料として上記パーム分別軟質油1を使用し、実施例6~8及び比較例4については原料として上記パーム分別軟質油2を使用した。
典型的な実施例1の脱色処理及び脱臭処理工程は以下のとおりである。
原料パーム分別軟質油16kgを真空下で70℃まで昇温させ、活性白土(ガレオンアースV2 水澤化学工業)を原料のパーム分別軟質油の質量に対し0.3質量%添加して30分間攪拌し、その後ろ過し脱色油脂を得た。得られた脱色油脂を真空度200Pa、水蒸気量2.0質量%、脱色温度170℃の条件で60分間脱臭処理を行い、実施例1の油脂を得た。
【0019】
<βカロテン濃度の測定方法>
βカロテン濃度は、「MPOB Test Method p2.6:2004」(Malaysian Palm Oil Board)に記載される方法により、算出した。1cmの厚さのPMMA製セルを用いて「ダブルビーム分光光度計UH-5300」(日立ハイテクサイエンス)を使用し446nmの吸光度を測定し、383×吸光度÷90の式に従って計算した値である。なお吸光度が1を超える場合にはイソオクタンを用い希釈し、測定、算出した。
【0020】
<色調の測定方法>
色調は、「基準油脂分析試験方法 2.2.1.1色(ロビボンド法)」(日本油化学会)に記載される方法により、133.4mmの厚さのガラス製セルを用いて測定し、10R+Yの式に従って計算した値である。
【0021】
<過酸化物価の測定方法>
過酸化物価は、「基準油脂分析試験法 2.5.2.1-2013過酸化物価(酢酸―イソオクタン法)」(日本油化学会)に記載される方法により測定した。
【0022】
<酸価の測定方法>
酸価は、「基準油脂分析試験法 2.3.1酸価」(日本油化学会)に記載される方法により測定した。指示薬はフェノールフタレイン指示薬を使用した。
【0023】
製造した油脂を用いて、市販のプレフライ済み冷凍チキンナゲットを180℃で3分15秒間フライ調理し、官能評価(甘味及び味の持続性)を行った。官能評価は、よく訓練された5人のパネラーにより以下の評価基準を用いて行った。
【0024】
<官能評価基準>
甘味
1点:甘味が弱い
2点:甘味がやや弱い
3点:甘味がある
4点:甘味が強い
【0025】
風味の持続性
1点:風味が持続せず、あっさりとしている
2点:やや風味が持続するが弱く、ややあっさりとしている
3点:風味が持続し、口に残るコク味を感じる
4点:強く風味が持続し、口に残るコク味を強く感じる
【0026】
スパイス感
〇:スパイス感がある
△:やや弱いがスパイス感がある
×:スパイス感がない
【0027】
えぐ味・青臭さ
〇:えぐ味や青臭さがなく、ナゲットの風味が良好
△:えぐ味は感じないが青臭さがあり、ナゲットの風味がやや悪い
×:えぐ味が強く、ナゲットの風味が非常に悪い
【0028】
表1-1
【0029】
表1-2
【0030】
βカロテン量は白土量と相関して、白土量が多いほど低くなる傾向にある。甘味・風味の持続性はβカロテン量と概ね相関しており、βカロテン量が0.7ppm以上の場合、特にこれらの評価が高かった。また、脱臭条件もこれらの風味に影響があると考えられる。スパイス感はβカロテン量とある程度の相関関係が見られ、βカロテン量が多く、甘味が強いいほど感じにくくなる傾向にある。
酸価・過酸化物価は脱臭温度・時間と相関があり、脱臭温度が高く、脱臭時間が長いほどこれらの数値は低くなる傾向にある。過酸化物価が0.3を超える場合、えぐ味がでてきてしまい、製品としての価値が低下する。