(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062164
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】電池管理
(51)【国際特許分類】
H02J 7/04 20060101AFI20230425BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20230425BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20230425BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
H02J7/04 F
H02J7/04 G
H02J7/02 J
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023025921
(22)【出願日】2023-02-22
(62)【分割の表示】P 2019572150の分割
【原出願日】2018-07-05
(31)【優先権主張番号】1710818.4
(32)【優先日】2017-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100187584
【弁理士】
【氏名又は名称】村石 桂一
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ヘイル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】互いと並列接続される複数の電池セルを備える電池を使用するための装置、方法及び電池管理システムを提供する。
【解決手段】電池100において、電池管理システム103は、複数の電池セル101、102の1以上にわたる接続のための電子回路104を備える。電子回路は、電荷蓄積素子105及びスイッチング素子106を備える。電荷蓄積素子は、1以上の電池セルから放電される電荷を蓄積する。スイッチング素子は、1以上の電池セルから電荷が放電されて、電荷蓄積素子の充電のために電荷蓄積素子に導かれる第1の状態と、電荷蓄積素子から電荷が放電されて、1以上の電池セルの充電のために、1以上の電池セルに導かれる第2の状態との間で回路を切り替える。スイッチング素子はまた、1以上の電池セルに電荷蓄積素子への及びそこからのパルス充放電を受けさせるよう、第1の状態と第2の状態との間で回路を繰り返し切り替えるように配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いと並列に接続される複数の電池セルを備える電池のための電池管理システムであって、
前記複数の電池セルの少なくとも1つにわたる接続のための電子回路であり、
前記少なくとも1つの電池セルから放電される電荷を蓄積するように構成される電荷蓄積素子と、
前記少なくとも1つの電池セルから電荷が放電されて前記電荷蓄積素子の充電のために前記電荷蓄積素子に導かれる第1の状態と前記電荷蓄積素子から電荷が放電されて前記少なくとも1つの電池セルの充電のために前記少なくとも1つの電池セルに導かれる第2の状態との間で前記回路を切り替えるように動作可能なスイッチング素子と、
を備える、電子回路を備え、
前記スイッチング素子が、前記少なくとも1つの電池セルに前記電荷蓄積素子へのおよび前記電荷蓄積素子からのパルス充放電を受けさせるよう、前記第1の状態と前記第2の状態との間で前記回路を繰り返し切り替えるように配置される、電池管理システム。
【請求項2】
前記回路が、前記電池が待機状態にあるときに前記第1の状態と前記第2の状態との間で前記回路を繰り返し切り替えるように構成され、前記待機状態が、外部接続を通して前記電池にまたは前記電池から流れる電流の大きさが閾値電流未満である状態である、請求項1に記載の電池管理システム。
【請求項3】
前記スイッチング素子が前記第1の状態と前記第2の状態との間で前記回路を繰り返し切り替える第1のモードと前記スイッチング素子が前記第1の状態と前記第2の状態との間で前記回路を切り替えない第2のモードとの間で切り替わるように動作可能なコントローラを更に備える、請求項1または2に記載の電池管理システム。
【請求項4】
前記コントローラが、前記電池が前記待機状態にあるときに前記第1のモードと前記第2のモードとの間で周期的に切り替わるように構成される、請求項2に従属する請求項3に記載の電池管理システム。
【請求項5】
前記コントローラが、前記電池が待機状態にあると判定するように構成される、請求項3または4に記載の電池管理システム。
【請求項6】
外部接続を通して前記電池にまたは前記電池から流れる電流を測定するように構成される電流監視デバイスを更に備える、請求項5に記載の電池管理システム。
【請求項7】
前記電池管理システムが、前記測定された電流が閾値電流を下回るときに前記電池が前記待機状態にあると判定するように構成される、請求項6に記載の電池管理システム。
【請求項8】
前記コントローラが、外部接続を通して前記電池にまたは前記電池から流れる前記測定された電流に基づいていつ前記第1のモードと第2のモードとの間で切り替わるべきかを判定するように構成される、請求項6または7に記載の電池管理システム。
【請求項9】
前記スイッチング素子が、前記少なくとも1つの電池セルに約0.5ヘルツ超の周波数で前記電荷蓄積素子へのおよび前記電荷蓄積素子からのパルス充放電を受けさせるように構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の電池管理システム。
【請求項10】
前記スイッチング素子が、前記少なくとも1つの電池セルに約10ヘルツ未満の周波数で前記電荷蓄積素子へのおよび前記電荷蓄積素子からのパルス充放電を受けさせるように構成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の電池管理システム。
【請求項11】
前記電子回路がDC/DCコンバータ回路を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の電池管理システム。
【請求項12】
前記電荷蓄積素子が少なくとも1つのコンデンサを備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の電池管理システム。
【請求項13】
前記電荷蓄積素子が第1のコンデンサを備え、前記電子回路が第2のコンデンサを更に備え、前記スイッチング素子は、前記少なくとも1つの電池セルから電流を引き出して前記第1のコンデンサを充電するために前記第1のコンデンサが接続される前記第1の状態と、前記少なくとも1つの電池セルに電流を供給するために前記第1のコンデンサおよび前記第2のコンデンサが互いと直列に接続される前記第2の状態との間で前記回路を切り替えるように動作可能である、請求項12に記載の電池管理システム。
【請求項14】
前記第2のコンデンサの静電容量が前記第1のコンデンサの静電容量より少なくとも10倍大きい、請求項13に記載の電池管理システム。
【請求項15】
前記スイッチング素子が、前記第2のコンデンサを充電するために前記少なくとも1つの電池セルから電流を引き出すように前記第2のコンデンサが接続される第3の状態に前記回路を切り替えるように動作可能である、請求項13または14に記載の電池管理システム。
【請求項16】
前記第1の状態と前記第2の状態との間の前記回路の繰返し切替えを中断することと、前記少なくとも1つの電池セルから前記第2のコンデンサを充電するために前記第3の状態に前記回路を切り替えることとを行うように、前記スイッチング素子を制御するように構成されるコントローラを更に備える、請求項15に記載の電池管理システム。
【請求項17】
互いと並列に接続される複数の電池セル、および請求項1から16のいずれか一項に記載の電池管理システムを備える電池。
【請求項18】
前記複数の電池セルがリチウム硫黄電池セルである、請求項17に記載の電池。
【請求項19】
互いと並列に接続される複数の電池セルを備える電池を制御するための方法であって、
複数の電池セルの少なくとも1つにわたって接続される電子回路を第1の状態と第2の状態との間で繰り返し切り替えるステップであり、前記第1の状態において前記少なくとも1つの電池セルから電荷が放電されて電荷蓄積素子の充電のために前記電荷蓄積素子に導かれ、前記第2の状態において前記電荷蓄積素子から電荷が放電されて前記少なくとも1つの電池セルの充電のために前記少なくとも1つの電池セルに導かれる、ステップを含み、
前記第1の状態と前記第2の状態との間の前記回路の繰返し切替えが、前記少なくとも1つの電池セルに、前記電荷蓄積素子へのおよび前記電荷蓄積素子からのパルス充放電を受けさせる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、互いと並列に接続される複数の電池セルを備える電池に使用するための装置および方法に関する。本装置および方法は、リチウム硫黄電池セルを備える電池の分野に特定の用途を見出すことができる。
【背景技術】
【0002】
典型的な電池セルは、アノード、カソードおよびアノードとカソードとの間に設けられる電解質を備える。アノード、カソードおよび電解質はハウジング、例えば、パウチ内に含まれてよい。ハウジングに電気的接続部、例えば、接続タブが結合されて、セルのアノードおよびカソードとの電気的接続を提供してよい。典型的な電池は複数の電池セルを備える。セルは、例えば、電気コネクタに電気的接続部を結合することによって、直列にまたは並列に結合されてよい。
【0003】
再充電電池は、連続充放電サイクルを経るように設計される複数の再充電セルを典型的に含む。そのような再充電セル、特にそのスタック(電池)を、それらに後の放電および使用のために蓄積された電気化学エネルギーを充電する目的で使用することは、自動車、船舶および他の乗物用途において、家庭用で無停電のエネルギー供給において、ならびに家庭用でグリッド連系の電力網における需要および負荷平準化のための間欠的で再生可能な電気源から生産されるエネルギーの蓄積を含め、用途の範囲においてますます重要になっている。
【0004】
電池の充放電の間、電池を形成する異なる電池セルの容量状態が互いとほぼ同じままであることが望ましいことがある。すなわち、電池における異なるセルの充電状態(または同等に放電度)が充放電の間に調和して増減することが望ましいことがある。例えば、電池セルは、電池セルを形成するセルの各々が所与の充電状態に達するまで充電されてよい。セルの各々の充電状態が互いと実質的に同じままであれば、各セルはほぼ同時に(充電が停止される)所与の充電状態に達し得る。
【0005】
電池のそのような動作は、さもなければ電池を形成する異なるセルの充電状態の差から生じ得る、電池におけるセルの1つまたは複数の性能劣化を軽減し得る。
【0006】
一部の電池(例えば、リチウムイオンセルを備える電池)では、互いと並列に接続される電池セルは、電池セル間の容量状態のいかなる差も修正されるように互いを自己平衡させるために典型的に作用する電圧特性を呈する。しかしながら、リチウム硫黄電池セルなどの他の電池セルは、各々と並列に接続されるセル間の自己平衡を促進するために(少なくとも一部の状況では)作用しない電圧特性を呈する。したがって、互いと並列に接続されるセル間で起こり得る容量状態差の低減を促進する装置および方法を提供することが望ましい。
【0007】
本明細書で企図される特定の種類の電池セルはリチウム硫黄(Li-S)電池セルである。リチウム硫黄は、例えば、リチウムイオンより5倍大きな理論エネルギー密度を有しており、用途の範囲に対する電気化学エネルギー蓄積部としてより良好に機能し得る次世代電池化学である。典型的なリチウム硫黄セルは、リチウム金属またはリチウム金属合金から形成されるアノード、および元素硫黄または他の電気活性硫黄材料から形成されるカソードを備える。硫黄または他の電気活性硫黄含有材料は、炭素などの導電性材料と混合されて、その導電率を改善し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上言及したように、一部の電池セルでは、電池セルにわたる電圧は電池セルの充電状態に依存している。例えば、電池セルにわたる電圧は電池セルの容量状態にほぼ比例し得る。そのような電池セルが互いと並列に接続されると、電池セルは典型的に、電池セル間の容量のいかなる差も修正されて各電池セルがほぼ同じ容量を有するように互いを自己平衡させる。例えば、互いと並列に接続される2つのセルが異なる容量を有すれば、各セルにわたる電圧は異なり得る。そのような電圧差は、より高容量の電池セルからより低容量の電池セルに電荷を渡すように2つの電池セル間に電流を流れさせ、それによって2つのセル間の容量の差を修正するために作用する。
【0009】
しかしながら、リチウム硫黄電池セルなどの一部の電池セルは、電池セルにわたる開放セル電圧が比較的広範囲の異なる容量にわたって比較的一定のままである電圧特性を呈する。更には、リチウム硫黄電池セルなどの一部の電池セルは典型的に、電池セルから電流がほとんどまたは全く引き出されないとそれらの開放セル電圧に落ち着く。すなわち、電池セルが能動的に充電されていない、または負荷に放電されていないと、電池セルにわたる電圧はその開放セル電圧に降下する。そのような電池セルが互いと並列に接続されると、したがって、異なる容量の異なるセル間に電圧差がほとんどまたは全くないことになり、こうして、いかなる容量差も修正するようにセル間に流される電流はほとんどまたは全くないことになる。
【0010】
互いと並列に接続される電池セルのパルス充放電を通じて、電池セルの開放セル電圧特性が電池セル容量の自己平衡を典型的にはさせないときでも、異なるセル間の容量差が低減できることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、互いと並列に接続される複数の電池セルを備える電池のための電池管理システムであって、複数の電池セルの少なくとも1つにわたる接続のための電子回路であり、少なくとも1つの電池セルから放電される電荷を蓄積するように構成される電荷蓄積素子と、少なくとも1つの電池セルから電荷が放電されて電荷蓄積素子の充電のために電荷蓄積素子に導かれる第1の状態と電荷蓄積素子から電荷が放電されて少なくとも1つの電池セルの充電のために少なくとも1つの電池セルに導かれる第2の状態との間で回路を切り替えるように動作可能なスイッチング素子とを備える、電子回路を備え、スイッチング素子が、少なくとも1つの電池セルに電荷蓄積素子へのおよびそこからのパルス充放電を受けさせるよう、第1の状態と第2の状態との間で回路を繰り返し切り替えるように配置される、電池管理システムが提供される。
【0012】
少なくとも1つの電池セルから電荷が引き出されている第1の状態と少なくとも1つの電池セルへ電荷が導かれている第2の状態との間で少なくとも1つの電池セルを切り替えることは、少なくとも1つの電池セルにおよびから電流が流れていることを保証する。電池セルにまたはそこから電流が流れるとき、電池セルにわたる電圧はセルの動作電圧と称されてよく、それは電池セルの内部抵抗に依存している。電池セルの内部抵抗は電池セルの容量に依存しており、そのため電池セルの動作電圧は電池セルの容量に依存している。電池セルに(電池セルのパルス放充電を通じて)それらの動作電圧を採用させることは、したがって、異なる容量状態を有するセル間の電圧差に結びつく。そのような電圧差は、電池セル間に平衡電流を流れさせるために作用する。平衡電流は、異なるセル間のいかなる容量差も低減させるようにより高容量を有するセルからより低容量を有するセルに電荷を渡すために作用する。互いと並列に接続される1つまたは複数の電池セルのパルス充放電は、したがって有利にも、異なるセル間の容量状態のいかなる差も低減されるようにする。
【0013】
換言すれば、異なる充電状態の並列セルは、セルの充電状態または容量への内部抵抗の依存によってもたらされる異なる内部抵抗を有し得る。電荷蓄積素子への並列セルの放電の間、セル間の内部抵抗の差(および結果的なセルの電圧の差)は、比較的高充電状態の並列セルに比較的低充電状態の並列セルより多くの電流を電荷蓄積素子に送り出させる。同様に、電荷蓄積素子からの並列セルの充電の間、比較的高充電状態の並列セルが比較的低充電状態の並列セルより低い充電電流を受けることになる。結果的に、並列セルの充電状態の差は、電荷蓄積素子へのおよびそこからのパルス放充電の間に低減される。
【0014】
少なくとも1つの電池セルから引き出される電荷は、電荷蓄積素子に一時的に蓄積された後、少なくとも1つの電池セルへ逆に電荷蓄積素子から放電される。そのようなメカニズムは比較的エネルギー効率的であり得る。例えば、このようにして少なくとも1つの電池セルにおよびから電荷を移動させるときに、おおよそ95%を上回るエネルギー効率が達成され得る。
【0015】
一部の実施形態において、電子回路は複数の並列セルにわたる接続に適してよい。そのような実施形態において、複数の並列セルが電荷蓄積素子に放電されて電荷蓄積素子から充電されてよい。
【0016】
他の実施形態において、電子回路は、互いと並列に接続される複数の電池セルの1つの電池セルにわたる接続に適してよい。そのような実施形態において、単一のセルが電荷蓄積素子に放電されて電荷蓄積素子から充電される。
【0017】
一部の実施形態において、上記した種類の複数の電子回路が設けられてよく、ここで電子回路の各々は異なる1つまたは複数の電池セルにわたる接続に適する。例えば、第1の電子回路が第1の電池セルにわたって接続されてよく、そして第2の電子回路が、第1の電池セルと並列に接続される第2の電池セルにわたって接続されてよい。第1および第2の電池セルは、したがって、第1および第2の回路の一部をそれぞれ形成する異なる電荷蓄積素子へのおよびそこからのパルス充放電を受けてよい。
【0018】
第1の状態において電荷が放電される少なくとも1つの電池セルは、第2の状態において充電のために電荷が導かれる少なくとも1つの電池セルと同じでよい。すなわち、電荷は、第1の状態において互いと並列に接続される1つまたは複数の電池セルから引き出され、そして第2の状態において1つまたは複数の電池セルの充電のために同じ1つまたは複数の電池セルに逆に導かれる。少なくとも1つの電池セルが並列に接続される複数の電池セルを備える実施形態において、第1の状態において電荷蓄積素子に放電される複数のセルは、第2の状態において電荷蓄積素子から充電される同じ複数のセル(すなわち同じ数のセルかつ同じ群のセル)である。少なくとも1つの電池セルが(少なくとも1つの他のセルと並列に接続される)単一の電池セルを備える実施形態において、第1の状態において電荷蓄積素子に放電される単一のセルは、第2の状態において電荷蓄積素子から充電される同じセルである。
【0019】
換言すれば、少なくとも一部の実施形態において、第1の状態において電荷蓄積素子に放電されないセルは、第2の状態において電荷蓄積素子から全く充電されない。同様に、第2の状態において電荷蓄積素子から充電されないセルは、第1の状態において電荷蓄積素子に全く放電されない。
【0020】
電池管理システムは、互いと並列に接続される複数の電池セルの少なくとも2つが異なる充電状態または容量を有するときに、スイッチング素子に第1の状態と第2の状態との間で回路を切り替えさせるように構成されてよい。
【0021】
スイッチング素子は、互いと並列に接続される複数の電池セルの少なくとも2つ間の充電状態または容量の差が低減されるように少なくとも1つの電池セルに電荷蓄積素子へのおよびそこからのパルス充放電を受けさせるよう、第1の状態と第2の状態との間で回路を繰り返し切り替えるように配置されてよい。
【0022】
回路は、電池が待機状態にあるときに第1の状態と第2の状態との間で回路を繰り返し切り替えるように構成されてよい。待機状態は、電池が充放電のために外部デバイスにわたって接続されていない状態でよい。すなわち、電池は、待機状態において外部デバイスにまたはそこから能動的に充放電していない。待機状態は、外部接続を通して電池にまたはそこから流れる電流の大きさが閾値電流未満である状態である。
【0023】
閾値電流は、例えば、電池がおおよそ0.01Cの率で充放電されているときに外部接続を通して電池にまたはそこから流れる電流に対応してよい。閾値電流に対応する充/放電率は、一般に、約0.05C未満でよく、約0.03C未満でよく、または約0.01C以下でさえよい。
【0024】
パルス充放電は、電池といかなる外部デバイスとの間にも電流がほとんどまたは全く流れない時に実施されてよい。例えば、パルス充放電は、電池が電源から充電されていないかつ外部負荷に放電していない時に実施されてよい。パルス充放電は、低レベルの充電電流が電池に流れている、または低レベル放電電流が電池から外部負荷に流れている時にも実施されてよい。電池のそのような状態は電池の待機状態の例であると考えられる。
【0025】
一般に、待機状態は、外部接続を通して電池にまたはそこから流れる電流の大きさが閾値電流未満である任意の状態である。例えば、待機状態の間、電池にまたはそこから流れる電流の大きさは実質的にゼロでよい。そのような状態は電池の蓄積状態と称されてよい。蓄積状態は待機状態の一例であると考えられる。
【0026】
電池の待機状態の間、電池といかなる外部デバイスとの間にも電流がほとんどまたは全く流れていないので、電池セルにわたる電圧はそれらの開放セル電圧に緩和し得る。異なる容量の異なる電池セルの開放セル電圧はほぼ同じであり得、そのため異なる容量を有するセル間に電圧差がほとんどまたは全くないことになる。そのような時に、したがって、少なくとも1つの電池セルにわたる電圧をそれらの動作電圧に至らせて、異なる容量状態のセル間に自己平衡電流が流れるのを促進するように蓄積素子へのおよびそこからのパルス充放電を提供することが特に有利である。
【0027】
電池の待機状態の間、一部の電池セル(例えばリチウム硫黄セル)は時間とともに自己放電を経験し得る。そのような自己放電は異なるセルに対して僅かに異なる率で発生し得、そして待機状態の間に異なるセル間に容量差が出現するようにし得る。したがって、さもなければ待機状態の間に出現し得るいかなる容量差も低減させるように、電池が待機状態にある間にパルス充放電を提供することが特に有利である。
【0028】
電池管理システムは、スイッチング素子が第1の状態と第2の状態との間で回路を繰り返し切り替える第1のモードとスイッチング素子が第1の状態と第2の状態との間で回路を切り替えない第2のモードとの間で切り替わるように動作可能なコントローラを更に備えてよい。
【0029】
所与の時にだけ電荷蓄積素子へのおよびそこからのパルス充放電を行うことが有利であり得る。例えば、上記したように、電池が待機状態にあるときに蓄積素子へのおよびそこからのパルス充放電を行うことが有利であり得る。しかしながら、他の時には、蓄積素子へのおよびそこからのパルス充放電を行わないことが好適であり得る。例えば、外部接続を通して電池にまたはそこから実質的な充放電電流が流れている時には、電荷蓄積素子へのおよびそこからのパルス充放電を行わないことも好適であり得る。コントローラは、したがって、パルス充放電を実施することとパルス充放電を実施しないこととの間で選択的に交互するよう、第1のモードと第2のモードとの間で切り替わるように動作可能である。
【0030】
更には、電池の待機状態の間、電荷蓄積素子へのおよびそこからのパルス充放電が常に必要とされるわけでもない。例えば、コントローラを待機状態の間、常に第1のモードにしておくよりむしろ、コントローラを充/放電が全く実施されない第2のモードに時折切り替えることがよりエネルギー効率的であり得る。
【0031】
コントローラは、電池が待機状態にあるときに第1のモードと第2のモードとの間で周期的に切り替わるように構成されてよい。
【0032】
コントローラは、コントローラが第1のモードにある時の間に出現したかもしれない、セル間のいかなる容量差も修正するように、待機状態にあるときに周期ベースで第1のモードに切り替わるように構成されてよい。コントローラは、所与の一部の時間の間、第1のモードにあるように構成されてよい。例えば、コントローラは、24時間の時限ごとの間に、おおよそ1時間の間、第1のモードに切り替わってよい。そのような実施形態において、コントローラが最後に第1のモードに切り替えられた間の24時間の期間の間に電池セル間に出現したかもしれないいかなる容量差も修正するのに、電池セルの1時間のパルス充放電が十分でよい。
【0033】
コントローラは、電池が待機状態にあると判定するように構成されてよい。
【0034】
電池管理システムは、電池の1つまたは複数の性質を監視して、電池が待機状態にあると判定してよい。例えば、電池といずれかの外部デバイスとの間に流れるいずれかの電流が閾値電流レベルを下回れば、これは、電池が待機状態にあることを示してよい。以上説明したように、コントローラは、電池が待機状態にあると判定されるときに電荷蓄積素子へのおよびそこからのパルス充放電を実施してよい。
【0035】
電池管理システムは、外部接続を通して電池にまたはそこから流れる電流を測定するように構成される電流監視デバイスを更に備えてよい。
【0036】
電池管理システムは、測定された電流が閾値電流を下回るときに電池が待機状態にあると判定するように構成されてよい。
【0037】
閾値電流は、例えば、電池がおおよそ0.01Cの率で充放電されているときに外部接続を通して電池にまたはそこから流れる電流に対応してよい。閾値電流に対応する充/放電率は、一般に、約0.05C未満でよく、約0.03C未満でよく、または約0.01C以下でさえよい。
【0038】
コントローラは、外部接続を通して電池にまたはそこから流れる測定された電流に基づいていつ第1モードの第2のモードとの間で切り替わるべきかを判定するように構成されてよい。
【0039】
例えば、コントローラが第1のモードに切り替わる間隔期間は、外部接続を通る電池へのまたはそこからの電流の大きさに応じて変動してよい。例えば、第1のモードへの切替え間の時限は、電池にまたはそこから電流が実質的に全く流れていないときより外部接続を通して電池にまたはそこから流れる若干の電流があるときに大きくてよい。外部接続を通して電池にまたはそこから流れる若干の電流があると、並列セル間の若干の自己平衡が発生し得る。したがって、並列セル間に有意な容量差が出現するのに、電池にまたはそこから電流が実質的に全く流れていない場合より長くかかり得る。第1のモードに切り替わることによってセル間の容量平衡を行うこと間の期間は、したがって、電池にまたはそこから電流が実質的に全く流れていない状況と比較して、拡大されてよい。
【0040】
スイッチング素子は、少なくとも1つの電池セルに約0.5ヘルツ超の周波数で電荷蓄積素子へのおよびそこからのパルス充放電を受けさせるように構成されてよい。
【0041】
スイッチング素子は、少なくとも1つの電池セルに約10ヘルツ未満の周波数で電荷蓄積素子へのおよびそこからのパルス充放電を受けさせるように構成されてよい。
【0042】
電子回路はDC/DCコンバータ回路を備えてよい。
【0043】
電荷蓄積素子は少なくとも1つのコンデンサを備えてよい。
【0044】
電荷蓄積素子は第1のコンデンサを備えてよく、電子回路は第2のコンデンサを更に備え、ここではスイッチング素子は、少なくとも1つの電池セルから電流を引き出して第1のコンデンサを充電するために第1のコンデンサが接続される第1の状態と、少なくとも1つの電池セルに電流を供給するために第1のコンデンサおよび第2のコンデンサが互いと直列に接続される第2の状態との間で回路を切り替えるように動作可能である。
【0045】
回路が第1の状態にあると、少なくとも1つの電池セルから電流が引き出されて第1のコンデンサを充電する。したがって電荷が第1のコンデンサに蓄積され、これは後に回路が第2の状態に切り替えられると少なくとも1つの電池セルに逆に放電できる。第2の状態において、第1および第2のコンデンサは、それらの電圧を結合してコンデンサから少なくとも1つの電池セルに電流を送り込むように、互いと直列に接続される。第2のコンデンサは、例えば、少なくとも1つの電池セルからプリチャージされてよく、そして少なくとも1つの電池セルを充電するようにコンデンサから少なくとも1つの電池セルに電流を送り込むように、直列に接続されたときに両コンデンサにわたる電圧を上げるために作用し得る。
【0046】
第2のコンデンサの静電容量は第1のコンデンサの静電容量より少なくとも10倍大きくてよい。
【0047】
一部の実施形態において、第2のコンデンサの静電容量は第1のコンデンサの静電容量の10倍より非常に大きい。例えば、第2のコンデンサの静電容量は第1のコンデンサの静電容量の約20倍より大きく、約40倍より大きく、約60倍より大きく、または約80倍以上より大きくてよい。第2のコンデンサの静電容量は第1のコンデンサの静電容量より、例えば、最高約100倍大きくてよい。
【0048】
スイッチング素子は、第2のコンデンサが接続されて、第2のコンデンサを充電するように少なくとも1つの電池セルから電流を引き出す第3の状態に回路を切り替えるように動作可能でよい。
【0049】
第3の状態において、第2のコンデンサは少なくとも1つの電池セルによって充電される。以上説明したように、第2のコンデンサの静電容量は第1のコンデンサの静電容量の何倍でもよく、そして第2のコンデンサは、コンデンサから少なくとも1つの電池セルに電流を流れさせるように、直列に接続されたときに両コンデンサの電圧を上げるために主に作用し得る。少なくとも1つの電池セルのパルス充放電を行うように第1の状態と第2の状態との間で回路を繰り返し切り替える前に、第2のコンデンサはプリチャージされて、その完全充電状態に近付いてよい。第2のコンデンサは、例えば、第3の状態に回路を切り替えることによってプリチャージされてよい。追加的または代替的に、回路は、第1の状態と第2の状態との間の反復切替えの間に第2のコンデンサが放電された後に、それを再充電するように第3の状態に周期的に切り替えられてよい。
【0050】
電池管理システムは、スイッチング素子を制御して、第1の状態と第2の状態との間の回路の繰返し切替えを中断することと、少なくとも1つの電池セルから第2のコンデンサを充電するように第3の状態に回路を切り替えることとを行うように構成されるコントローラを更に備えてよい。
【0051】
少なくとも1つの電池セルに充電電流を送り込むように(第2の状態に回路を切り替えることによって)コンデンサが直列に接続されると、第1のコンデンサは、(そのより小さな静電容量により)第2のコンデンサより大きな程度に放電され得る。第2のコンデンサは、したがって、(少なくとも1つの電池セルにパルス充放電を送り出すように)第1の状態と第
2の状態との間の回路の繰返し切替えの間に第1のコンデンサより非常にゆっくりと放電され得る。第2のコンデンサは、したがって、第2のコンデンサが著しく放電されることなく第1の状態と第2の状態との間の切替えの複数連続サイクルを通して使用され得る。第1のコンデンサは、他方で、第1の状態と第2の状態との間の切替えの各サイクル中に充放電される。しかしながら、第2のコンデンサは、第1の状態と第2の状態との間の繰返し切替えの間に依然ゆっくりと放電されることになり、そして周期的に再充電される必要があり得る。第2のコンデンサは、少なくとも1つの電池セルから電流を引き出して第2のコンデンサを再充電するように第3の状態に回路を切り替えることによって再充電され得る。
【0052】
本発明の第2の態様によれば、互いと並列に接続される複数の電池セルおよびいずれかの上記請求項の電池管理システムを備える電池が提供される。
【0053】
複数の電池セルはリチウム硫黄電池セルでよい。
【0054】
本発明の第3の態様によれば、互いと並列に接続される複数の電池セルを備える電池を制御するための方法であって、複数の電池セルの少なくとも1つにわたって接続される電子回路を第1の状態と第2の状態との間で繰り返し切り替えるステップであり、第1の状態において少なくとも1つの電池セルから電荷が放電されて電荷蓄積素子の充電のために電荷蓄積素子に導かれ、第2の状態において電荷蓄積素子から電荷が放電されて少なくとも1つの電池セルの充電のために少なくとも1つの電池セルに導かれる、ステップを含み、第1の状態と第2の状態との間の回路の繰返し切替えが、少なくとも1つの電池セルに電荷蓄積素子へのおよびそこからのパルス充放電を受けさせる、方法が提供される。
【0055】
本出願の範囲内で、前項に、請求項にならびに/または以下の説明および図面に定められる様々な態様、実施形態、実施例および代替例、ならびに特にその個々の特徴が独立してまたはいかなる組合せでもとられてよいことが明白に意図される。すなわち、そのような特徴が両立しない場合を除き、全ての実施形態および/またはいずれの実施形態の特徴もいかなる方法および/または組合せでも組み合わせ可能である。本出願人は、いずれの当初出願された請求項をも、当初その方式で特許請求されていなくともいずれかの他の請求項のいずれの特徴にも従属するかつ/または組み込むように補正する権利を含め、いずれの当初出願された請求項も変更するまたはそれに応じていかなる新たな請求項も出願する権利を保有する。
【0056】
本発明の1つまたは複数の実施形態が添付図面に単に例として概略的に図示される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電池の概略図である。
【
図2A】放電中のリチウム硫黄電池セルの電圧の概略図である。
【
図2B】放電中のリチウム硫黄電池セルの電圧の概略図である。
【
図3】異なる自己放電期間前後のリチウム硫黄電池セルの容量の概略図である。
【
図4A】放電中のリチウム硫黄電池セルの抵抗の概略図である。
【
図4B】充電中のリチウム硫黄電池セルの抵抗の概略図である。
【
図5】放充電中のリチウム硫黄電池セルの動作電圧の概略図である。
【
図6】並列に接続される2つの電池セルの等価回路図の概略図である。
【
図7】
図1の電池の一部を形成し得る回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明の特定の例が記載される前に、本開示が、本明細書に記載される特定の電池管理システム、電池または方法に限定されないことを理解されたい。本明細書で使用される用語法が特定の例だけを記載するために使用され、かつ請求項の範囲を限定するとは意図されないことも理解されるはずである。
【0059】
本発明の電池管理システム、電池および方法を記載および特許請求する際に、以下の用語法が使用されることになる:文脈が別途明示しない限り、単数形「a」、「an」および「the」は複数形を含む。このように、例えば、「電池セル(a battery cell)」への言及はそのような要素の1つまたは複数への言及を含む。
【0060】
図1は、本発明の一実施形態に係る電池100の概略図である。電池100は、第1の電池セル101、第2の電池セル102および電池管理システム103を備える。電池管理システム103は、
図1において点線ボックス103内に図示される部品を含む。第1の電池セル101および第2の電池セル102は互いと並列に接続される。
図1に図示される電池100が2つのセル101、102を備えるのに対して、他の実施形態において電池100は3つ以上の電池セルを備えてよい。一般に、電池は、少なくとも2つの電池セルが互いと並列に接続される、複数の電池セルの任意の配置を含む。互いと並列に接続される少なくとも2つのセルに加えて、電池は、互いと直列に接続されるセルを含んでよい。電池セルは再充電電池セルである。
【0061】
電池管理システム103は電子回路104を備える。
図1に図示される実施形態において、電池管理システム103はコントローラ107も備える。
図1に図示されないが、回路104は電池セル101、102と外部デバイスとの間の接続を確立するように動作可能でよい。例えば、電池セル101、102に充電電流を送り出すために、外部電源が電池セル101、102にわたって接続され得る。回路104は、外部負荷へ電池セル101、102を放電させるよう、電池セル101、102にわたって負荷を接続するように動作可能でよい。回路104は、例えば、電池セルと外部電源および/または外部負荷が接続され得る電池100の端子(図示せず)との間の接続を含んでよい。回路は、電池100の端子におよびから電池セル101、102を接続および切断するために動作され得る1つまたは複数のスイッチを含んでよい。回路104は、電池セル101、102と(電源および/または負荷などの)外部装置との間に流れ得る充放電電流を調整するように配置される回路網または他の装置を含んでよい。
【0062】
電池100の寿命の間、第1および第2のセル101、102の充電状態は、それらの間に差を出現させ得る。上述したように、一部の電池セル(例えばリチウムイオンセル)において、電池セルにわたる開放セル電圧は電池セルの容量状態にほぼ正比例する。異なる容量状態を有する異なる電池セルは、したがって、それらにわたる異なる電圧を有することになる。そのようなセルが互いと並列に接続されると、(セルの異なる容量状態によってもたらされる)セル間の電圧差が、容量のいかなる差も修正するようにセル間に自己平衡電流を流れさせるために作用する。例えば、互いと並列に接続される2つのセルが異なる容量状態を有すれば、各セルにわたる電圧は異なることになる。そのような電圧差は、より高容量状態の電池セルからより低容量状態の電池セルに電荷を渡すように2つの電池セル間に電流を流れさせ、それによって2つのセル間の容量の差を修正するために作用するであろう。
【0063】
しかしながら、Li-Sセルなどの一部の電池セルは、異なる容量状態を有するセル間に自己平衡電流を流れさせるために典型的には作用しない電圧特性を呈する。
図2Aは、セルの放電中の放電容量の関数としての典型的なLi-Sセルの動作電圧の概略図である。動作電圧は、セルから放電電流が引き出されている間の(または同等にセルに充電電流が送り出されている間の)Li-Sセルの電圧である。
図2Aから、比較的高充電状態で、セルが、容量変化につれて電圧が比較的一定のままである短い高容量プラトー領域201を呈することが見て取れる。高容量プラトー領域201の後、電圧の急速変化202が発生した後に、容量変化につれて電圧が比較的一定のままである比較的長い低容量プラトー領域203に達する。低容量プラトー領域203は、低充電状態で電圧が急速にゼロに降下するまで継続する。
【0064】
図2Aから、プラトー領域201、203において、セルの電圧が広範囲の異なる容量にわたって比較的一定のままであることが見て取れる。各々と並列に接続され、かつプラトー領域201、203において異なる容量状態を有する異なるセル101、102は、したがって、ほぼ同様の電圧を有するであろう。したがって、並列セル101、102間には、自己平衡電流を引き起こして並列セル101、102間の容量差を修正することになる大電圧差はないであろう。
【0065】
更には、典型的なLi-Sセルの電圧は、セルから電流がほとんどまたは全く引き出されないと比較的短期間後に公称開放セル電圧に落ち着く傾向がある。
図2Bは、Li-Sセルの動作電圧(実線)およびLi-Sセルの開放セル電圧(OCV)(破線)の概略図である。開放セル電圧(OCV)は、セルが負荷に接続されていないときのセルの電圧である。
図2Bに見て取れるように、Li-SセルのOCVは広範囲の異なる充電状態に対して実質的に一定である。異なる容量を有する並列セル101、102がそれらの開放セル電圧に落ち着くと、セルにわたる電圧間に差がほとんどまたは全くなくなり得ることが認識されるであろう。したがって、セル101、102間のいかなる容量差も修正するようにセル間に自己平衡電流を流れさせるために存在する電圧差はほとんどまたは全くない。
【0066】
放電容量の関数としてのLi-Sセルの内部抵抗(点線)も
図2Bに図示される。
図2Bに見て取れるように、セルの内部抵抗は放電中にLi-Sセルの充電状態の関数として変動する。以下に更に詳細に説明するように、Li-Sセルのその充電状態への内部抵抗の依存は、互いと並列に接続されるセルの充電状態の平衡を促進するために使用されてよい。
【0067】
一部の電池セル(例えばLi-Sセル)は、時間とともに比較的高い自己放電度を呈するとも知られている。例えば、時間とともに、電池セル101、102の充電状態は、それらが外部負荷に接続されていないときでも減少し得る。セル101、102が自己放電する率はセル内の変動に従って変動し得、このようにセル101、102は互いに異なる率で自己放電し得る。第1および第2のセル101、102の充電状態間の差が、したがって、自己放電の間に出現し得る。
【0068】
自己放電は、特にリチウム硫黄(Li-S)セルにおいて比較的速い率で発生し得る。例えば、典型的なLi-Sセルの充電状態は、自己放電により、48時間の時限にわたっておおよそ25%減少し得る。
図3は、セルが保存されている(したがって、外部負荷に接続されていない)幾つかの異なる時限前後のLi-Sセルの容量状態の概略図である。容量状態はアンペア時(Ah)で図示され、かつ5、10、50および168時間の保存期間に対して図示される。保存期間の開始時の容量状態は右ハッチで塗りつぶされた長方形で描かれ、そして保存期間の終了時の容量状態は塗りつぶされていない長方形で描かれる。左側4つのペアの長方形は摂氏20度(℃)の周囲条件下で保存されたセルを表す。右側4つのペアの長方形は40℃の周囲条件下で保存されたセルを表す。
【0069】
図3から、Li-Sセルの容量状態が
図3に表される保存期間の各々の間に減少することが見て取れる。表された保存期間の間、セルは外部負荷に接続されないので、容量状態の降下はセルの自己放電による。
図3から、Li-Sが自己放電する程度が保存時間の増加と共に増加し、かつセルが保存される温度に依存していることが更に見て取れる。
【0070】
互いと並列に接続されるLi-Sセル(例えば第1および第2のセル101、102)の保存期間の間、異なるLi-Sセルが異なる量(例えば異なるセルの特性の差による)だけ自己放電し得ることが認識されるであろう。自己放電期間の後、並列セル101、102は、したがって、異なる容量状態であり得る。
【0071】
修正されないままにされれば、並列セル101、102間の容量状態の差が、セルの抵抗特性によりセル101、102の更なる放電の間に増加し得る。
図4Aは、放電中の幾つかの異なるLi-Sセルの、それらの充電状態の関数としての抵抗の概略図である。
図4Bは、充電中の異なるLi-Sセルの抵抗の等価な表現である。
図4Aおよび
図4Bに表される異なるセルは最高10%の初期容量の広がりを有する。
図4Aおよび
図4Bにおける実線は、初期基準容量を有するセルの放充電中の抵抗を表す。
図4Aおよび
図4Bに図示されるその他の線は、
図4Aおよび
図4Bに図示される凡例によって示されるように、初期基準容量より1%、2%、5%および10%大きな初期容量を有するセルの放充電中の抵抗を表す。
【0072】
図4Aから、Li-Sセルの放電中に、セルの内部抵抗が最初に増加した後にピーク抵抗に達し、次いで更なる放電と共に減少することが見て取れる。異なる初期容量を有する異なるセルがそれらの充電状態に対して異なる抵抗も有することも見て取れる。異なる抵抗を有するセルが互いと並列に接続されて、負荷に放電するように負荷にわたって接続されると、セルは、それらの抵抗に従って異なる率で放電するであろう。特に、より高抵抗を有するセルが、より低抵抗を有するセルより低い率で放電するであろう。
【0073】
上記した性質は、互いと並列に接続されて負荷に放電する異なるセルの容量の広がり拡大に至ることができる。例えば、
図4Aを参照すると、おおよそ30%の放電深度で、初期基準容量(
図4Aにおいて実線によって表される)を有するセルはそのピーク抵抗に達し、そしてその抵抗は更なる放電と共に減少し始める。セルの抵抗が減少するにつれて、それが放電する率は同時に(その降下抵抗により)増加することになる。
【0074】
同時に、基準容量より10%大きな初期容量(
図4Aにおいて点線によって表される)を有するセルは、そのピーク抵抗に向けて増加し続けている抵抗を有する。セルの抵抗が増加するにつれて、それが放電する率は同時に(その上昇抵抗により)減少することになる。
【0075】
上記した状況では、より低容量を有するセルがより速い(かつ増加する)率で放電しており、そしてより高容量を有するセルがより遅い(かつ減少する)率で放電している。2つのセル間の容量の差は、したがって、更なる放電の間に増加することになる。この影響は、セルが放電中にその抵抗ピークに達した後に特に発生し、例えば、おおよそ30%の放電度で発生し得る。
【0076】
図3から見て取れるように、おおよそ20°Cで保存されるセルは、自己放電により50時間後にその初期容量のおおよそ25%を、そして168時間(1週間)後にその容量の35%以上を失う。そのようなセルは、したがって、それがその抵抗ピークに接近しているまたは越えたであろう程度まで放電したであろう。
【0077】
例えば、
図1に図示される第1および第2のセル101、102が全容量まで充電され、次いで50時間を超える期間の間保存されれば、セルは異なる率で自己放電し得る。セルは、その時点で異なる容量を有するかもしれず、かつそれらの抵抗ピークに接近しているまたは越えたかもしれない。セルが続いて負荷に接続されて、負荷に放電し始めれば、それらの容量の差は、それらの抵抗の差により放電中に増加し得る。
【0078】
以上詳細に説明したように、互いと並列に接続されるセル(
図1に図示される第1および第2のセル101、102など)は、典型的にはそれら自体を修正できず、かつ使用中に(例えば負荷に放電中に)増加され得る、それらの間の容量差を出現させ得る。したがって、並列セル間に出現し得る容量差を修正するための方法および装置を提供することが望ましい。
【0079】
互いと並列に接続される電池セルのパルス充放電を通じて、電池セルの開放セル電圧特性が電池セル容量の自己平衡を典型的にはさせないときでも、異なるセル間の容量差が低減できることが見出された。
図1を再び参照すると、電池管理システム103の一部を形成する回路104は、回路104の一部を形成する蓄積素子へのおよびそこからのセル101、102のパルス充放電を送り出すように動作可能である。
【0080】
一般に、回路104は、
図1に概略的に例示されるように電荷蓄積素子105およびスイッチング素子106を備える。電荷蓄積素子105は、セル101、102から放電される電荷を蓄積するように構成される。スイッチング素子106は、第1の状態と第2の状態との間で回路104を切り替えるように動作可能である。第1の状態において、セル101、102から電荷が放電されて、電荷蓄積素子105の充電のために電荷蓄積素子105に導かれる。第2の状態において、電荷蓄積素子105から電荷が放電されて、セル101、102の充電のためにセル101、102に導かれる。スイッチング素子106は、セル101、102に電荷蓄積素子105へのおよびそこからのパルス充放電を受けさせるよう、第1の状態と第2の状態との間で回路を繰り返し切り替えるように動作可能である。
【0081】
セル101、102から引き出される電荷は、電荷蓄積素子105に一時的に蓄積された後、セル101、102へ逆に電荷蓄積素子105から放電される。そのようなメカニズムは比較的エネルギー効率的であり得る。例えば、このようにしてセル101、102におよびから電荷を移動させるときに、おおよそ95%を上回るエネルギー効率が達成され得る。電荷蓄積素子105に放電されるセル101、102は、電荷蓄積素子105から続いて充電される同じセル101、102である。すなわち、回路104は、同じ1つまたは複数のセル101、102および電荷蓄積素子105におよびから電荷を移送するように配置される。少なくとも一部の実施形態において、第1の状態において電荷蓄積素子105に放電されないセルは、第2の状態において電荷蓄積素子105から全く充電されない。同様に、第2の状態において電荷蓄積素子105から充電されないセルは、第1の状態において電荷蓄積素子105に全く放電されない。
【0082】
電池セルから電荷が引き出されている第1の状態とセル101、102に電荷が導かれている第2の状態との間でセル101、102を切り替えることは、電池セル101、102におよびから電流を流れさせる。セル101、102にまたはそこから電流が流れると、セル101、102にわたる電圧はセルの動作電圧を採用し、それはセルの内部抵抗に依存している。以上言及したように(ならびに
図2B、
図4Aおよび
図4Bに例示されるように)、セルの内部抵抗はセルの容量状態に依存している。繰り返して電池セル101、102から蓄積素子105に電流を引き出し、そして蓄積素子105からセル101、102に電流を引き出すことによって、電池セル101、102にそれらの動作電圧を採用させることは、したがって、セル101、102が異なる容量状態を有すれば、セル101、102間の電圧差に結びつく。
【0083】
図5は、幾つかの異なる充放電率での充放電中の比容量の関数としてのLi-Sセルの動作電圧の概略図である。
図5から、Li-Sセルの動作電圧が、特により高充放電率(例えば0.6Cおよび1C)に対して充放電中に容量に強く依存するようになることが見て取れる。Li-Sセルの充放電中に、異なる容量状態の異なるセルは、したがって、それらにわたる異なる電圧を有することになる。そのようなセルが並列に接続され(セル101、102など)かつ異なる容量状態であると、したがって、充放電中のセル間に電圧差が存在することになる。
【0084】
並列に接続されるセル間のそのような電圧差が、セル101、102間に電流を流れさせるために作用することになることが認識されるであろう。特に、より高容量を有するセルからより低容量を有するセルに電流が流れることになる。そのような電流は平衡電流と称されてよい。平衡電流は、より高容量状態を有するセルからより低容量状態を有するセルに電荷を移送することによってセル101、102間の容量差を低減させるために作用する。セル101、102のパルス充放電をもたらすように第1の状態と第2の状態との間で回路104を切り替えることは、したがって有利にも、セル101、102間のいかなる容量差も低減させるために作用する。
【0085】
本発明を理解するのを更に支援するために、2つの並列セル101、102の等価回路図が
図6に概略的に示される。各セル101、102は、純オーム抵抗R01、R02ならびに抵抗の拡散/過渡損失成分RC1a、RC1b、RC2aおよびRC2bの直列結合に等価である内部抵抗を有する。
図6に図示されるように、各拡散/過渡損失抵抗成分RC1a、RC1b、RC2a、RC2bは、静電容量と並列の純オーム抵抗に等価である。セル101、102の動作電圧oV1およびoV2も
図6に示される。実際には、セル101、102が
図6に図示される電気成分を含まないことが認識されるであろう。
図6は、セル101、102の電気挙動を説明するために使用できる等価回路図を単に提供する。
【0086】
セル101、102にパルス充放電を適用することは、セルの動作電圧oV1、oV2を近付けるために作用し、そして最終的に動作電圧oV1、oV2の平衡に至り得る。以上説明したように、異なる充電状態であるセルは異なる内部抵抗を有し得る。例えば、第1のセル101が第2のセル102より高充電状態であれば、セル101、102の内部抵抗は異なり得る。特に、オーム成分R01およびR02が異なり得る、かつ/または拡散/過渡損失成分RC1a、RC1bおよびRC2a、RC2bが異なり得る。
【0087】
セルの抵抗の差は、放電パルスの間にセル101、102から電荷蓄積素子に異なる電荷量が放電され、そして充電パルスの間にセル101、102によって異なる電荷量が受け取られることに結びつくであろう。例えば、第1のセル101が第2のセル102より高充電状態であれば、セル101、102は異なる内部抵抗を有することになり、そしてセルと関連する動作電圧oV1、oV2が異なることになる。セル101、102が電荷蓄積素子105に放電される放電パルスの間、2つのセル101、102間の内部抵抗の差は、第1のセル101に第2のセル102より高電流を電荷蓄積素子105に放電させる。同様に、セル101、102が電荷蓄積素子105から充電される充電パルスの間、2つのセル101、102間の内部抵抗の差、および充電中の所与の充電状態に対する内部抵抗と放電のそれとの間の比例差は、第1のセル101にそれが放電中に捨てたより小さな充電電流を受け取らせ、かつ第2のセル102にそれが放電中に捨てたより大きな充電電流を受け取らせる。電荷蓄積素子105への/からのセルのパルス充放電は、したがって、並列セル101、102間の充電状態の差を低減させるために、かつ動作電圧oV1、oV2の差を低減させるためにも作用する。セル101、102が電荷蓄積素子105に/から繰り返し充放電されれば、セルの充電状態および動作電圧oV1、oV2は実質的に同じになり得る。
【0088】
図4Aおよび
図4Bに401と標示される破線内にある充電状態で、有利な平衡電流が特に促進され得る。線401によって囲まれる領域内に収まる充電状態では、放電パルスの間、抵抗は容量減少と共に増加し、そして充電パルスの間、抵抗は容量減少と共に減少する。そのような条件は、より高容量状態のセルからより低容量状態のセルに平衡電流が流れるのを有利にも促進し得る。したがって、
図4Aおよび
図4Bに示される充電状態でセル101、102のパルス充放電を行うことが特に有利であり得る。そのようなパルス充放電は、セルの抵抗ピークが達される前に並列セル間の容量差を有利にも低減させ得る。以上説明したように、セルの1つがそれらの抵抗ピークに達した後の並列セルの更なる放電は、セル間の容量差が更に増加することに結びつき得る。したがって、セルの1つがそれらの抵抗ピークに達する前に並列セル間のいかなる容量差も低減させることが望ましいであろう。
【0089】
図7は、
図1の回路104の一実施形態の概略図である。回路104は、第1のセル101および第2のセル102にわたって接続されており、それら自体は互いと並列に接続される。回路104は、セル101、102から蓄積素子に電荷を移送するように、かつ蓄積素子からセル101、102に逆に電荷を移送するように配置されるDC-DCコンバータ回路である。
図7の実施形態において、蓄積素子は第1のコンデンサC1を備える。
【0090】
回路104は、第1のコンデンサC1、第2のコンデンサC2、第1のスイッチS1、第2のスイッチS2、第3のスイッチS3、複数の抵抗器R1~R7、インダクタL、演算増幅器(オペアンプ)501およびインバータ502を備える。第2のコンデンサC2の静電容量は第1のコンデンサC1の静電容量より大きい。一部の実施形態において、第2のコンデンサC2の静電容量は第1のコンデンサC1の静電容量より何倍も大きい。例えば、第2のコンデンサC2の静電容量は第1のコンデンサC1の静電容量より約10倍以上大きくてよい。一部の実施形態において、第2のコンデンサC2の静電容量は第1のコンデンサC1の静電容量の約20倍より大きく、約40倍より大きく、約60倍より大きく、または約80倍以上より大きくてさえよい。第2のコンデンサの静電容量は第1のコンデンサC1の静電容量より、一部の実施形態において、最高約100倍大きくてよい。
【0091】
第2のコンデンサC2は、セル101、102のパルス充放電を提供することに先立ってプリチャージされてよい。例えば、第2のコンデンサC2は、第2のコンデンサC2がセル101、102にわたって接続されるように第1のスイッチS1を閉じることによって、セル101、102からプリチャージされてよい。第1のスイッチS1は、第1のスイッチS1に第1の切替信号504を出力するコントローラ503によって制御される。
図7に図示されるコントローラ503は、
図1に図示されるコントローラ107と同じ部品でよく、または異なる部品でよい。第1のスイッチS1の状態は第1の切替信号504に依存している。第1のスイッチS1は、例えば、トランジスタでよい。一旦第2のコンデンサC2がセル101、102からプリチャージされると、コントローラ503は、第1のスイッチS1を開くように第1のスイッチS1を制御してよい。
【0092】
セル101、102のパルス充放電は、第2のスイッチS2および第3のスイッチS3の繰返し開閉によって行われてよい。第2のS2および第3のS3スイッチは、それぞれ第2の505および第3の506切替信号に応じて動作する。第3の切替信号506はオペアンプ501の出力と一致する。第2の切替信号505はインバータ502を通過しているので、それはオペアンプ501の出力の逆と一致する。第2の切替信号505は、したがって、第3の切替信号506の逆に対応する。第2のS2および第3のS3スイッチは、したがって一般に、互いに反対して開閉される。すなわち、第2のスイッチS2が開いているとき、第3のスイッチS3は閉じており、そして第2のスイッチS2が閉じているとき、第3のスイッチS3は開いている。第2のスイッチS2および第3のスイッチS3は、例えば、トランジスタでよい。
【0093】
上記言及した回路104の第1の状態は、第2のスイッチS2が開いてかつ第3のスイッチS3が閉じた状態に対応する。第1の状態において、第1のコンデンサC1を充電するためにセル101、102から第1のコンデンサC1に電流が流れるように、第1のコンデンサC1は第1および第2のセル101、102にわたって接続される。
【0094】
同じく上記言及した回路104の第2の状態は、第2のスイッチS2が閉じてかつ第3のスイッチS3が開いた状態に対応する。第2の状態において、第1のコンデンサC1および第2のコンデンサC2は互いと直列に接続され、かつセル101、102と直列に接続される。第2のコンデンサC2がプリチャージされており比較的高静電容量を有するので、第1および第2のコンデンサC1、C2の直列電圧は、セル101、102を充電するようにコンデンサC1、C2からセル101、102に充電電流を送り込むのに十分である。
【0095】
第2のコンデンサC2が第1のコンデンサC1より非常に大きな静電容量を有する(かつプリチャージされている)ので、回路104が第2の状態にあるときに第2のコンデンサC2の充電状態が第1のコンデンサC1の充電状態よりゆっくりと減少することが認識されるであろう。第1のコンデンサC1は、したがって、回路が第2の状態にあるときに相対放電状態に達し、そして回路が第2の状態から第1の状態に切り替えられる各場合にセル101、102から再充電される。対照的に、第2のコンデンサC2は、再充電されることなく第1の状態と第2の状態との間の切替えの多くの反復を受けることができ得る。第2のコンデンサC2は、セル101、102に充電電流を送り込むように直列に接続されたときにコンデンサC1およびC2の電圧を上げるために効果的に作用する。
【0096】
第2のコンデンサC2が再充電されることなく第1の状態と第2の状態との間の切替えの多くの反復を受けることができ得るのに対して、それはやはり、回路104が第2の状態にあり、したがって、定期的な再充電を必要とし得るときに、ある程度まで放電される。第2のコンデンサC2は、セル101、102にわたって第2のコンデンサC2を接続してセル101、102から第2のコンデンサC2を充電するように第1のスイッチS1を閉じる(例えばコントローラ503の制御下)ことによって再充電され得る。第1のスイッチS1が閉じた回路104の状態は回路104の第3の状態と称されてよい。一般に、回路104の第3の状態は、第2のコンデンサC2が接続されて、第2のコンデンサC2を充電するようにセル101、102から電流を引き出す状態である。
【0097】
上記したように、第2の505および第3の506切替信号はオペアンプ501の出力に依存している。
図7に描かれるように、オペアンプ501への入力は第1のコンデンサC1の両側からとられる。オペアンプ501の出力は、したがって、第1のコンデンサC1にわたる電圧に依存しており、それ自体は第1のコンデンサC1の充電状態に依存している。
図7の実施形態において、セル101、102は、オペアンプ501に対する電源として作用するために接続される。
【0098】
図7に描かれるオペアンプ501および抵抗器R
4~R
7は、第1のコンデンサC1が完全に充電される(またはほとんど完全に充電される)と、第2の切替信号505により第2のスイッチS2が閉じられ、かつ第3の切替信号506により第3のスイッチS3が開かれ、その結果、回路104が第1の状態から第2の状態に遷移するように設計されてよい。第2の状態において、第1のコンデンサC1はセル101、102に放電し、そして第1のコンデンサにわたる電圧は減少することになる。
図7に描かれるオペアンプ501および抵抗器R
4~R
7は、第1のコンデンサC1が所与の程度まで放電されると、第2の切替信号505により第2のスイッチS2が開かれ、かつ第3の切替信号506により第3のスイッチS3が閉じられ、その結果、回路104が第2の状態から第1の状態に遷移するように設計されてよい。第1の状態において、第1のコンデンサC1はセル101、102から再充電される。
【0099】
上記した工程が、セル101、102に第1のコンデンサC1へのおよびそこからのパルス充放電を受けさせるように、回路104に第1の状態と第2の状態との間で繰り返し切り替えさせることが認識されるであろう。セル101、102は、例えば、約0.5ヘルツより大きい周波数でパルス充放電を受けてよい。一部の実施形態において、パルス充放電が発生する周波数は約10ヘルツ未満でよい。
【0100】
図7に図示される実施形態において、インダクタLおよび抵抗器R
2は、第2のコンデンサC2へのいかなる電流サージも制限するために作用する。一部の実施形態において、インダクタはおおよそ1μHのインダクタンスを有してよい。抵抗器R
2はおおよそ0.03オームの抵抗を有してよい。抵抗器R
2は、抵抗が回路の時定数を変更するように調整され得る平衡抵抗器としても作用する。抵抗器R
2は、回路の所望の分解能および精度ならびに/または並列セルの数に従って調整され得る。
【0101】
一部の実施形態において、第1のコンデンサC1はおおよそ1Fの静電容量を有してよい。第2のコンデンサC2はおおよそ10mFの静電容量を有してよい。そのような実施形態において、抵抗器R4はおおよそ12Kオームの抵抗を有してよい。抵抗器R5はおおよそ1.2Kオームの抵抗を有してよい。抵抗器R6はおおよそ10Kオームの抵抗を有してよい。抵抗器R7はおおよそ1.1Kオームの抵抗を有してよい。そのような実施形態において、ダイオード502は、それが導通しているときにダイオード502にわたる電圧降下のない理想ダイオードであると考えられ得る。しかしながら、抵抗器R4~R7の抵抗は、当業者によって認識されるように、実際に発生し得る、ダイオード502にわたる電圧降下を考慮するために調整され得る。
【0102】
図7の実施形態において、第2のスイッチS2、第3のスイッチS3、オペアンプ501、抵抗器R
4~R
7およびインバータ502は、第1の状態と第2の状態との間で回路を切り替えるように動作可能なスイッチング素子106を形成するように配置される。第2のスイッチS2、第3のスイッチS3、オペアンプ501、抵抗器R
4~R
7およびインバータ502は、したがって合わせて、スイッチング素子106の一実施形態を形成すると考えられ得る。本発明の実施形態に係るスイッチング素子106は、第2のコンデンサC2が接続されて、第2のコンデンサC2を充電するように電池セルから電流を引き出す第3の状態に回路を切り替えるようにスイッチング素子106が更に動作可能であるように、第1のスイッチS1を含むと更に考えられ得る。
【0103】
コントローラ503は、第1の状態と第2の状態との間の回路104の繰返し切替えを中断することと、セル101、102から第2のコンデンサC2を充電するために第3の状態に回路を切り替えることとを行うように第1のスイッチS1を制御するように構成されてよい。
図7に図示されるように、コントローラ503は、オペアンプ501の出力に対応する入力507を受け取ってよい。コントローラ503は、したがって、コントローラ503に提供される入力507から回路104の状態を監視してよく、そして入力507に依存して第1のスイッチS1を制御してよい。例えば、入力507が第2のコンデンサは再充電する必要があることを示せば、コントローラ503は、第2のコンデンサC2が充電される第3の状態に回路104が切り替えられるように第1のスイッチS1が閉じられるようにする第1の切替信号504を出力してよい。
【0104】
他の実施形態において、コントローラ503は、第1のスイッチS1を制御して周期ベースで回路104を第3の状態に切り替えてよい。例えば、回路104は、所与の時限が経過した後に第3の状態に切り替えられてよい。時限は、例えば、所定の時限でよい。
【0105】
第1の状態と第2の状態との間で(ならびに任意選択で第3の状態に)回路を切り替えるように動作可能なスイッチング素子が多くの異なる適切な形態をとり得ることが認識されるであろう。スイッチング素子への本明細書における言及は、したがって、
図7を参照しつつ提示される例に限定されると解釈されるべきでない。更には、電荷蓄積素子が
図7に図示される実施形態において2つのコンデンサの形態で実現されるのに対して、他の実施形態において、電荷蓄積素子は任意の適切な形態をとり得る。
【0106】
一般に、本発明に係る、電荷蓄積素子およびスイッチング素子を備える回路は、本明細書に記載される機能を行う任意の適切な形態をとり得る。
【0107】
以上説明したように、電荷蓄積素子(例えば第1のコンデンサC1)へのおよびそこからのセル101、102のパルス充放電を提供することは、セル101、102間のいかなる容量差も低減させるようにセル101、102間に自己平衡電流が流れるのを促進する。更に上記したように、容量差は、特に、電池が保存されているときなど、セルにまたはそこから電流がほとんどまたは全く流れない期間の間にセル間に出現し得る。
【0108】
一般に、外部接続(例えば外部負荷へのおよび/または電池の充電のための電源への接続)を通して電池にまたはそこから流れる電流の大きさが閾値電流未満である状態が電池の待機状態と称されてよい。待機状態は、例えば、電池に外部デバイスが接続されていないときに、または電池から送り出されるもしくは充電のために電池に送り出されることを必要とされる電力がないときに発生し得る。代替的に、待機状態は、電流が電池から引き出されている、または電池に送り出されているが、電流の大きさが比較的低いときに発生し得る。閾値電流は、例えば、電池がおおよそ0.01Cの率で充放電されているときに外部接続を通して電池にまたはそこから流れる電流に対応してよい。閾値電流に対応する充/放電率は、一般に、約0.05C未満でよく、約0.03C未満でよく、または約0.01C以下でさえよい。
【0109】
待機状態の間に並列セル間に出現し得るいかなる容量差も低減させるために、電池が待機状態にあるときに電池のパルス充放電を提供することが特に有利であり得る。回路104は、したがって、電池が待機状態にあるときに第1の状態と第2の状態との間で回路104を繰り返し切り替えるように構成されてよい。
【0110】
一部の実施形態において、スイッチング素子106が第1の状態と第2の状態との間で回路を繰り返し切り替える第1のモードとスイッチング素子が第1の状態と第2の状態との間で回路を切り替えない第2のモードとの間で切り替わるように動作可能であるコントローラ107(
図1に描かれる)が提供されてよい。コントローラ107は、例えば、
図7に図示される、上記したコントローラ503と同じでよく、または異なるコントローラでよい。コントローラ107は、例えば、第1のモードと第2のモードとの間で切り替わるよう回路104の1つまたは複数の要素に接続するおよび/または接続を切断するよう、1つまたは複数のスイッチを動作させるように動作可能でよい。
【0111】
コントローラ107は、例えば、電池が待機状態にあるときに第1のモードに切り替わってよく、そして電池が待機状態にないときに第2のモードに切り替わってよい。これは、セルと外部デバイスとの間に実質的な電流が流れている時に、電荷蓄積素子に対するセルのパルス充放電を防止し得る。
【0112】
一部の実施形態において、コントローラ107は、電池が待機状態にあるときに第1のモードと第2のモードとの間で切り替わるように構成されてよい。例えば、電池が待機状態にある一部の時にパルス充放電を送り出すだけで、電池が待機状態にある他の時にはパルス充放電を送り出さないことがよりエネルギー効率的であり得る。電荷が電荷蓄積素子105におよびそこからセル101、102に比較的効率的に移送され得るが、そのような移送は依然、一部のエネルギーの喪失に結びつき得る。したがって、セル101、102の不必要な放電を回避するために或る時にパルス充放電の性能を制限することが望ましいであろう。例えば、電池が待機状態にある時間の一部の間にパルス充放電を行うように第1のモードへ切り替わるだけで十分であろう。
【0113】
コントローラ107は、電池が待機状態にあるときに周期ベースで第1のモードと第2のモードとの間で切り替わるように構成されてよい。例えば、電池が待機状態にあるとき、コントローラ107は、24時間の期間ごとの間に、おおよそ1時間の間、第1のモードに切り替わってよい。一部の実施形態において、電池が第2のモードにあった間に並列セル間に出現したいかなる容量差も修正するのに、パルス充放電を1時間行うことで十分であろう。他の実施形態において、第1のモードに連続して切り替わる間の時限および/または電池が第2のモードに逆に切り替えられる前に第1のモードにある時限は異なってよい。時限は、特定の用途に合うように調整されてよい。
【0114】
一部の実施形態において、コントローラ107は、電池が待機状態にあると判定するように構成されてよい。例えば、電池管理システムは、電池の1つまたは複数の性質を監視してよく、そしてコントローラ107は、1つまたは複数の測定された性質に依存して電池が待機状態にあると判定してよい。電池管理システムは、例えば、外部接続(例えば外部負荷へのおよび/または充電電流を送り出す電源からの)を通して電池にまたはそこから流れる電流を測定するように配置される電流監視デバイスを含んでよい。測定された電流が閾値電流を下回るとコントローラ107が判定すれば、コントローラ107は電池が待機状態にあると判定してよい。
【0115】
一部の実施形態において、コントローラ107は、外部接続を通る電池へのまたはそこからの測定された電流に基づいていつ第1の状態と第2の状態との間で切り替わるべきかを判定してよい。例えば、第1のモードへの切替え間の間隔期間は、外部接続を通して電池にまたはそこから流れる電流の大きさに応じて変動してよい。追加的または代替的に、第1のモードが第2のモードに逆に切り替わる前に維持される時間は、外部接続を通して電池にまたはそこから流れる電流の大きさに応じて変動してよい。
【0116】
例えば、外部接続を通して電池にまたはそこから流れる若干の電流があれば、これは、並列セル間に若干の自己平衡を発生させ得る。しかしながら、電流の大きさは十分に小さくなり得る(例えば電流は閾値電流未満であり得る)ので、電池は待機状態であると考えられる。電流の小さな大きさは、並列セル間に依然、容量差が出現し得ることも意味することができ、そのためいかなるそのような容量差も低減させるために、セルへのおよびそこからの若干のパルス放充電を提供することが有利であり得る。しかしながら、流れている小さな外部電流により、容量差が出現するのに、外部電流が全く流れていない場合より長くかかり得る。したがって、第1のモードへの切替え間の時限は、外部電流が実質的に全く流れていない状況と比較して増加し得る。追加的または代替的に、パルス充放電がより短期間の間に行われるように、第1のモードへの切替えと第2のモードへの逆の切替えとの間の時限は減少し得る。
【0117】
一般に、コントローラ107は、並列セル間の容量差を低減させるために並列セル間に自己平衡電流が流れるのを促進するために、任意の適切な時間におよび任意の適切な時限の間、第1のモードに切り替わってよい。コントローラ107が第1のモードと第2のモードとの間で切り替わる時間は所定の予定に従って決定されてよい、または電池の1つもしくは複数の測定された性質に基づいて可変でよい。
【0118】
以上、電池が互いと並列に接続される2つのセルを備える実施形態が記載されたが、他の実施形態において、電池は3つ以上のセルを備えてよい。一般に、本明細書になされる本開示は、互いと並列に接続される少なくとも2つのセルを備えるいかなる電池にも適用可能である。電池は、互いと並列に接続される3つ以上のセルを備えてよく、そして追加的に、互いと直列に接続されるセルを備えてよい。
【0119】
以上、互いと並列に接続される複数のセル101、102にわたって回路104が接続される実施形態が記載された。一部の実施形態において、上記した種類の回路が単一のセルにわたって接続されてよく、それは少なくとも1つの他のセルと並列に接続される。一般に、回路104は少なくとも1つのセルにわたって接続されてよく、それは少なくとも1つの他のセルと並列に接続される。一部の実施形態において、電池管理システムは、上記した種類の複数の回路を備えてよい。各回路は、少なくとも1つの電池セルにわたって接続されてよく、かつ少なくとも1つの電池セルのパルス充放電をもたらすように動作可能でよい。例えば、一部の実施形態において、第1の回路が第1の電池セルにわたって接続されてよく、そして第1の電池セルのパルス充放電をもたらすように動作可能でよく、また第2の回路が第2の電池セルにわたって接続されてよく、そして第2の電池セルのパルス充放電をもたらすように動作可能でよい。第1および第2の電池セルは互いと並列に接続されてよく、そしてセルのパルス充放電はセル間に自己平衡電流が流れるのを促進してよい。
【0120】
本発明の特定の態様、実施形態または例と併せて記載される特徴、完全体、特性、化合物、化学成分または基は、両立しない場合を除き、本明細書に記載される任意の他の態様、実施形態または例に適用可能であると理解されるはずである。本明細書(いずれの添付の特許請求の範囲、要約書および図面も含む)に開示される特徴の全て、ならびに/またはそのように開示されるいずれの方法もしくは工程のステップの全ても、そのような特徴および/またはステップの少なくとも一部が相互排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わされてよい。本発明は、いずれの前述の実施形態の詳細にも限定されない。本発明は、本明細書(いずれの添付の特許請求の範囲、要約書および図面も含む)に開示される特徴のいかなる新規なもの、もしくはいかなる新規な組合せにも、またはそのように開示されるいずれの方法もしくは工程のステップのいかなる新規なもの、もしくはいかなる新規な組合せにも拡張する。
【符号の説明】
【0121】
100 電池
101 第1の電池セル
102 第2の電池セル
103 電池管理システム
104 電子回路
105 電荷蓄積素子
106 スイッチング素子
107 コントローラ
201 高容量プラトー領域
202 急速変化
203 低容量プラトー領域
401 破線
501 演算増幅器(オペアンプ)
502 インバータ
503 コントローラ
504 第1の切替信号
505 第2の切替信号
506 第3の切替信号
507 入力
C1 第1のコンデンサ
C2 第2のコンデンサ
L インダクタ
oV1 動作電圧
oV2 動作電圧
R1~R7 抵抗器
R01 純オーム抵抗
R02 純オーム抵抗
RC1a 拡散/過渡損失抵抗成分
RC1b 拡散/過渡損失抵抗成分
RC2a 拡散/過渡損失抵抗成分
RC2b 拡散/過渡損失抵抗成分
S1 第1のスイッチ
S2 第2のスイッチ
S3 第3のスイッチ
【手続補正書】
【提出日】2023-03-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いと並列に接続される複数の電池セルを備える電池のための電池管理システムであって、
前記複数の電池セルの少なくとも1つにわたる接続のための電子回路であり、
前記少なくとも1つの電池セルから放電される電荷を蓄積するように構成される電荷蓄積素子と、
前記少なくとも1つの電池セルから電荷が放電されて前記電荷蓄積素子の充電のために前記電荷蓄積素子に導かれる第1の状態と前記電荷蓄積素子から電荷が放電されて前記少なくとも1つの電池セルの充電のために前記少なくとも1つの電池セルに導かれる第2の状態との間で前記回路を切り替えるように動作可能なスイッチング素子と、
を備える、電子回路を備え、
前記スイッチング素子が、前記少なくとも1つの電池セルに前記電荷蓄積素子へのおよび前記電荷蓄積素子からのパルス充放電を受けさせるよう、前記第1の状態と前記第2の状態との間で前記回路を繰り返し切り替えるように配置される、電池管理システム。
【外国語明細書】