(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062187
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】癌を治療するためのIRS/STAT3二重修飾因子と抗癌剤の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/16 20060101AFI20230425BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230425BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20230425BHJP
A61K 31/4184 20060101ALI20230425BHJP
A61K 31/166 20060101ALI20230425BHJP
A61K 31/4525 20060101ALI20230425BHJP
A61K 31/437 20060101ALI20230425BHJP
A61K 31/44 20060101ALI20230425BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20230425BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230425BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230425BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230425BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230425BHJP
A61K 31/5415 20060101ALI20230425BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20230425BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20230425BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
A61K31/16
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K31/513
A61K31/4184
A61K31/166
A61K31/4525
A61K31/437
A61K31/44
A61K31/506
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K31/5415
A61K31/4745
A61K31/282
A61K39/395 T
A61K45/00
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027482
(22)【出願日】2023-02-24
(62)【分割の表示】P 2021011512の分割
【原出願日】2016-02-04
(31)【優先権主張番号】62/112,257
(32)【優先日】2015-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/136,530
(32)【優先日】2015-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】517258408
【氏名又は名称】ティルノーヴォ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】リューベニ,ハダス
(72)【発明者】
【氏名】ハビブ,イズハック
(72)【発明者】
【氏名】クーパーシュミドト,ラナ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】薬物耐性腫瘍の出現を防止又は克服するのに有用な医薬品の組み合わせを提供する。
【解決手段】(i)上皮成長因子阻害剤(EGFR阻害剤)及びEGFR抗体から選択されるタンパク質キナーゼ(PK)の修飾因子;(ii)哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の阻害剤;(iii)マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MEK)阻害剤;(iv)変異型B-Raf阻害剤;(v)ゲムシタビン、5-FU、イリノテカン及びオキサリプラチンのような化学療法剤;並びに(vi)それらの特定の組み合わせと組み合わせた、インスリン受容体基質(IRS)及びシグナル伝達性転写因子3(Stat3)の二重修飾因子を含む併用療法を用いた、癌の治療のための組み合わせを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MEK)阻害剤および/または変異型B-Raf阻害剤と共に式(III)または式(IV)の構造によって表される化合物を含む、医薬品の組み合わせであって、
前記MEK阻害剤は、トラメチニブ(GSK1120212)、セルメチニブ、ビニメチニブ(MEK162)、PD-325901、コビメチニブ、CI-1040及びPD035901からなる群より選択され、
前記変異型B-Raf阻害剤は、ベムラフェニブ(PLX-4032)、PLX4720、ソラフェニブ(BAY43-9006)、及びダブラフェニブからなる群より選択され、
化合物(III)および(IV)の構造は以下のように表される、組み合わせ:
【化1】
(式中、
R
1、R
2、R
5及びR
6は、独立して、H、C
1~C
4アルキル、(CH
2CH
2O)
nH(ここで、nは1~20の整数である)、アシル及び加水分解されるとヒドロキシルを生じさせる官能基から選択され;
R
3、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13及びR
14は、独立して、H、ハロゲン、C
1~C
4アルキル、ハロアルキル、およびOR
16(ここで、R
16は、H、C
1~C
4アルキル、(CH
2CH
2O)
nH、アシル又は加水分解されるとヒドロキシルを生じる官能基である)から選択され;
R
4は、H又はCNであり;
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物が包含される);
【化2】
(式中、
Aは、H又はCNであり;
Zは、S、SO又はSO
2であり;
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル及びOR
1から選択され;
Y
3及びY
4は、それぞれOR
1であり、各R
1は、独立して、H、C
1~C
4アルキル、-(CH
2CH
2O)
nH(ここで、nは1~20の整数である)、アシル又は加水分解されるとヒドロキシルを生じる官能基であり、
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物が包含される)。
【請求項2】
マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MEK)阻害剤および/または変異型B-Raf阻害剤に対する耐性を発現した腫瘍の治療における使用のための、あるいはマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MEK)阻害剤および/または変異型B-Raf阻害剤に対する腫瘍の獲得耐性を防止するための、あるいはマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MEK)阻害剤および/または変異型B-Raf阻害剤による治療の中止後の腫瘍再発を防止するか遅延させるための、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項3】
前記化合物は、式(III)の化合物であり、式A、B、C、D、E、F、G、H、IまたはJのうちのいずれかの構造によって表される;あるいは
前記化合物は、式(IV)の化合物であり、式(IV-4)の構造によって表される;
請求項1または2に記載の組み合わせ:
【化3】
(その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物が包含される)。
【請求項4】
抗癌薬物と共に式(III)または式(IV)の化合物を含む、医薬品の組み合わせであって、KRASの変異及び/又は増幅が原因で前記抗癌薬物に対して耐性を発現している腫瘍の治療における使用のためのものであり、
化合物(III)および(IV)の構造は以下のように表される、組み合わせ:
【化4】
(式中、
R
1、R
2、R
5及びR
6は、独立して、H、C
1~C
4アルキル、(CH
2CH
2O)
nH(ここで、nは1~20の整数である)、アシル及び加水分解されるとヒドロキシルを生じさせる官能基から選択され;
R
3、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13及びR
14は、独立して、H、ハロゲン、C
1~C
4アルキル、ハロアルキル、およびOR
16(ここで、R
16は、H、C
1~C
4アルキル、(CH
2CH
2O)
nH、アシル又は加水分解されるとヒドロキシルを生じる官能基である)から選択され;
R
4は、H又はCNであり;
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物が包含される);
【化5】
(式中、
Aは、H又はCNであり;
Zは、S、SO又はSO
2であり;
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル及びOR
1から選択され;
Y
3及びY
4は、それぞれOR
1であり、各R
1は、独立して、H、C
1~C
4アルキル、-(CH
2CH
2O)
nH(ここで、nは1~20の整数である)、アシル又は加水分解されるとヒドロキシルを生じる官能基であり、
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物が包含される)。
【請求項5】
(a)CTLA4、CD20、CD30、CD33、CD52、VEGF、EGFR及びErbB2からなる群から選択される標的に対する抗体である免疫療法剤と共に式(III)の構造によって表される化合物を含む組み合わせ;および
(b)免疫療法剤と共に式(IV)の構造によって表される化合物を含む組み合わせ;
からなる群より選択される、医薬品の組み合わせであって、化合物(III)および(IV)の構造は、以下のように表される、組み合わせ:
【化6】
(式中、
R
1、R
2、R
5及びR
6は、独立して、H、C
1~C
4アルキル、(CH
2CH
2O)
nH(ここで、nは1~20の整数である)、アシル及び加水分解されるとヒドロキシルを生じさせる官能基から選択され;
R
3、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13及びR
14は、独立して、H、ハロゲン、C
1~C
4アルキル、ハロアルキル、およびOR
16(ここで、R
16は、H、C
1~C
4アルキル、(CH
2CH
2O)
nH、アシル又は加水分解されるとヒドロキシルを生じる官能基である)から選択され;
R
4は、H又はCNであり;
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物が包含される);
【化7】
(式中、
Aは、H又はCNであり;
Zは、S、SO又はSO
2であり;
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル及びOR
1から選択され;
Y
3及びY
4は、それぞれOR
1であり、各R
1は、独立して、H、C
1~C
4アルキル、-(CH
2CH
2O)
nH(ここで、nは1~20の整数である)、アシル又は加水分解されるとヒドロキシルを生じる官能基であり、
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物が包含される)。
【請求項6】
免疫療法に対して腫瘍を感作させるのに使用するための、請求項5に記載の組み合わせ。
【請求項7】
前記化合物は、式(III)の化合物であり、式A、B、C、D、E、F、G、H、IまたはJのうちのいずれかの構造によって表される;あるいは
前記化合物は、式(IV)の化合物であり、式(IV-4)の構造によって表される;
請求項5または6に記載の組み合わせ:
【化8】
(その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物が包含される)。
【請求項8】
前記抗体が、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ブレンツキシマブ ベドチン、セツキシマブ、ゲムツズマブ オゾガマイシン、イブリツモマブ チウキセタン、イピリムマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トシツモマブ及びトラツズマブからなる群より選択される、請求項5または6に記載の組み合わせ。
【請求項9】
前記腫瘍が、頭頸部(H&N)癌、肉腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、乳癌、腎臓癌、胃癌、造血癌、リンパ腫、白血病(リンパ芽球性白血病が包含される)、肺癌、黒色腫、神経膠芽腫、肝癌、前立腺癌及び結腸癌からなる群から選択される癌を有する患者に存在する、請求項6に記載の組み合わせ。
【請求項10】
式(III)若しくは(IV)の構造によって表される化合物と共に上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤及び/又はEGFR抗体を含む、医薬品の組み合わせであって、
前記EGFR阻害剤は、AZD9291、エルロチニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、ネラチニブ、イコチニブ、ダコミチニブ、ポジオチニブ、CO-1686、HM61713及びAP26113からなる群より選択され、
前記EGFR抗体は、セツキシマブ、パニツムマブ、トラスツズマブおよびネシツムマブからなる群より選択され、
化合物(III)および(IV)の構造は以下のように表される、組み合わせ:
【化9】
(式中、
R
1、R
2、R
5及びR
6は、独立して、H、C
1~C
4アルキル、(CH
2CH
2O)
nH(ここで、nは1~20の整数である)、アシル及び加水分解されるとヒドロキシルを生じさせる官能基から選択され;
R
3、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13及びR
14は、独立して、H、ハロゲン、C
1~C
4アルキル、ハロアルキル、およびOR
16(ここで、R
16は、H、C
1~C
4アルキル、(CH
2CH
2O)
nH、アシル又は加水分解されるとヒドロキシルを生じる官能基である)から選択され;
R
4は、H又はCNであり;
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物が包含される);
【化10】
(式中、
Aは、H又はCNであり;
Zは、S、SO又はSO
2であり;
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル及びOR
1から選択され;
Y
3及びY
4は、それぞれOR
1であり、各R
1は、独立して、H、C
1~C
4アルキル、-(CH
2CH
2O)
nH(ここで、nは1~20の整数である)、アシル又は加水分解されるとヒドロキシルを生じる官能基であり、
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物が包含される)。
【請求項11】
上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤及び/若しくはEGFR抗体に対する耐性を発現した腫瘍の治療における使用のための、又はEGFR阻害剤及び/若しくはEGFR抗体に対する腫瘍の獲得耐性を防止するための、又はEGFR阻害剤及び/若しくはEGFR抗体による治療の中止後の腫瘍再発を防止するか遅延させるための、請求項10に記載の組み合わせ。
【請求項12】
前記腫瘍が、EGFR阻害剤及び/又はEGFR抗体治療に対する耐性を獲得した腫瘍を有する癌患者に存在し、前記治療が、前記耐性腫瘍の成長の減弱又は退縮をもたらす;または
前記腫瘍が、EGFR阻害剤及び/若しくはEGFR抗体による治療を受けているかそのような治療を受ける候補である癌患者に存在する;または
前記腫瘍が、頭頸部(H&N)癌、肉腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、乳癌、腎臓癌、胃癌、造血癌、リンパ腫、白血病(リンパ芽球性白血病が包含される)、肺癌、黒色腫、神経膠芽腫、肝癌、前立腺癌及び結腸癌からなる群から選択される癌を有する癌患者に存在する;
請求項11に記載の組み合わせ。
【請求項13】
式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物とゲムシタビン、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチン及びそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1種類の化学療法剤とを含む、医薬品の組み合わせであって、前記化合物及び前記化学療法剤(複数可)が一緒に相乗的な抗癌治療効果を提供し、化合物(III)および(IV)の構造は、以下のように表される、組み合わせ:
【化11】
(式中、
R
1、R
2、R
5及びR
6は、独立して、H、C
1~C
4アルキル、(CH
2CH
2O)
nH(ここで、nは1~20の整数である)、アシル及び加水分解されるとヒドロキシルを生じさせる官能基から選択され;
R
3、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13及びR
14は、独立して、H、ハロゲン、C
1~C
4アルキル、ハロアルキル、およびOR
16(ここで、R
16は、H、C
1~C
4アルキル、(CH
2CH
2O)
nH、アシル又は加水分解されるとヒドロキシルを生じる官能基である)から選択され;
R
4は、H又はCNであり;
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物が包含される);
【化12】
(式中、
Aは、H又はCNであり;
Zは、S、SO又はSO
2であり;
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル及びOR
1から選択され;
Y
3及びY
4は、それぞれOR
1であり、各R
1は、独立して、H、C
1~C
4アルキル、-(CH
2CH
2O)
nH(ここで、nは1~20の整数である)、アシル又は加水分解されるとヒドロキシルを生じる官能基であり、
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物が包含される)。
【請求項14】
癌の治療における使用のための、あるいは少なくとも1種類の化学療法剤に対する耐性を発現した腫瘍を治療するための、あるいは前記化学療法剤(複数可)のいずれかに対する腫瘍の獲得耐性を防止するための、あるいは前記化学療法剤(複数可)のいずれかによる治療の中止後の腫瘍再発を防止するか遅延させるための、請求項13に記載の組み合わせ。
【請求項15】
前記化合物は、式(III)の化合物であり、式A、B、C、D、E、F、G、H、IまたはJのうちのいずれかの構造によって表される;あるいは
前記化合物は、式(IV)の化合物であり、式(IV-4)の構造によって表される;
請求項13または14に記載の組み合わせ:
【化13】
(その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物が包含される)。
【請求項16】
前記腫瘍が、頭頸部(H&N)癌、肉腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、乳癌、腎臓癌、胃癌、造血癌、リンパ腫、白血病(リンパ芽球性白血病が包含される)、肺癌、黒色腫、神経膠芽腫、肝癌、前立腺癌及び結腸癌からなる群から選択される癌を有する患者に存在する、請求項14に記載の組み合わせ。
【請求項17】
mTOR阻害剤と共に式(III)または式(IV)の化合物を含む、医薬品の組み合わせであって、
前記mTOR阻害剤は、ラパマイシン(シロリムス)、リダフォロリムス(AP23573)、NVP-BEZ235、エベロリムス(アフィニトール、RAD-001)、テムシロリムス(CCI-779)、OSI-027、XL765、INK128、MLN0128、AZD2014、DS-3078a及びパロミド529からなる群より選択され、
化合物(III)および(IV)の構造は以下のように表される、組み合わせ:
【化14】
(式中、
R
1、R
2、R
5及びR
6は、独立して、H、C
1~C
4アルキル、(CH
2CH
2O)
nH(ここで、nは1~20の整数である)、アシル及び加水分解されるとヒドロキシルを生じさせる官能基から選択され;
R
3、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13及びR
14は、独立して、H、ハロゲン、C
1~C
4アルキル、ハロアルキル、およびOR
16(ここで、R
16は、H、C
1~C
4アルキル、(CH
2CH
2O)
nH、アシル又は加水分解されるとヒドロキシルを生じる官能基である)から選択され;
R
4は、H又はCNであり;
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物が包含される);
【化15】
(式中、
Aは、H又はCNであり;
Zは、S、SO又はSO
2であり;
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル及びOR
1から選択され;
Y
3及びY
4は、それぞれOR
1であり、各R
1は、独立して、H、C
1~C
4アルキル、-(CH
2CH
2O)
nH(ここで、nは1~20の整数である)、アシル又は加水分解されるとヒドロキシルを生じる官能基であり、
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物が包含される)。
【請求項18】
mTOR阻害剤に対する耐性を発現した腫瘍の治療における使用のための、あるいはmTOR阻害剤に対する腫瘍の獲得耐性を防止するための、あるいはmTOR阻害剤による治療の中止後の腫瘍再発を防止するか遅延させるための、請求項17に記載の組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(i)上皮成長因子阻害剤(EGFR阻害剤)及びEGFR抗体から選択されるタンパク質キナーゼ(PK)の修飾因子;(ii)哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の阻害剤;(iii)マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MEK)阻害剤;(iv)変異型B-Raf阻害剤;(v)ゲムシタビン、5-FU、イリノテカン及びオキサリプラチンのような化学療法剤;並びに(vi)それらの特定の組み合わせと組み合わせた、インスリン受容体基質(IRS)及びシグナル伝達性転写因子3(Stat3)の二重修飾因子を含む併用療法を用いた癌の治療に関する。該組み合わせを用いて、EGFR阻害剤、EGFR抗体、mTOR阻害剤、MEK阻害剤、変異型B-Raf阻害剤、化学療法剤、及びそれらの特定の組み合わせに対する耐性を発現している腫瘍を治療するか、又は前記阻害剤若しくは薬剤のいずれかに対する腫瘍の獲得耐性を防止するか、又は前記阻害剤若しくは薬剤のいずれか若しくはそれらの組み合わせによる治療の中止後の腫瘍再発を防止することができる。該組み合わせは、少なくとも相加的で、好ましくは相乗的な治療効果を提供する。本発明は、さらに、免疫療法剤と組み合わせた、IRS及びStat3の二重修飾因子を含む併用療法を用いた癌の治療に関する。該組み合わせを用いて、免疫療法に対して腫瘍を感作させることができる。
【背景技術】
【0002】
チルホスチンは、チロシン基質、ATPを模倣するように設計されたタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤のファミリーであり、アロステリックに酵素を阻害することができる(Levitzkiら、Science(1995),267:1782-88;Levitzkiら、Biochem.Pharm.(1990),40:913-920;Levitzkiら、FASEB J.(1992),6:3275-3282;米国特許第5,217,999号及び同第5,773,476号、Posnerら、Mol.Pharmacol.(1994),45:673-683)。これらチルホスチンのファルマコフォア、及び特に、ベンジリデンマロノニトリルタイプのチロホスチンは、親水性のカテコール環及びより親油性の置換シアノ-ビニル基である。動態研究により、いくつかのチロホスチン化合物はチロシン基質に対する純粋な競合的阻害剤であるが、ATP結合部位については、非競合的阻害剤として作用することが示された(Yaishら、Science(1988),242:933-935;Gazitら、J.Med.Chem.(1989),32:2344-2352)。それにもかかわらず、多くのチルホスチンは、基質とATP結合部位の両方に対する競合阻害又は混合された競合阻害を示した(Posnerら、Mol.Pharmacol.(1994),45:673-683)。
【0003】
チルホスチンの関連グループにおいて、親水性のカテコール環が、親油性ジクロロ-フェニル基又はジメトキシ-フェニル基で置換されると、低いマイクロモル範囲で有効なEGFRキナーゼ阻害剤をもたらした(Yonedaら、Cancer Res.(1991),51:4430-4435)。さらに、これらチルホスチンを、腫瘍を有するヌードマウスに準最適用量で抗EGFRモノクローナル抗体と共に投与すると、腫瘍成長の著しく増強された阻害をもたらした。
【0004】
本発明の発明者らの一部によるWO 2008/068751は、インスリン様成長因子1受容体(IGF1R)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、上皮成長因子受容体(EGFR)、及びIGF1R関連インスリン受容体(IR)の活性化並びにシグナル伝達の阻害特性が増加した化合物を開示している。
【0005】
本発明の発明者らの一部によるWO 2009/147682は、タンパク質キナーゼ(PK)及び受容体キナーゼ(RK)のシグナル伝達修飾因子として作用する化合物を開示している。さらに、WO 2009/147682には、特に、代謝性障害、炎症性障害、線維症、及び細胞増殖性障害、特に、癌などのPK及びRK関連障害の防止並びに治療のための化学療法剤としてのそのような化合物の調製方法、そのような化合物を含む医薬組成物、並びにこれらの化合物及び組成物を使用する方法が開示されている。
【0006】
本発明の発明者らの一部によるWO 2012/117396は、癌の治療のための抗癌剤とWO 2008/068751又はWO 2009/147682の化合物の組み合わせを記載している。
【0007】
従来の放射線療法若しくは化学療法又は他の抗癌剤で治療された癌は、頻繁に、これらの治療に対する耐性を発達させ、最終的に、元の診断の時に観察されたものよりもより侵襲性の表現型を有する場合が多い疾患を再発させる(Liら、J.Med.Chem.(2009),52(16):4981-5004)。
【0008】
併用化学療法レジメンで使用するための薬剤を選択するための原理に従って、異なる作用機序を有し、腫瘍に対する相加的又は相乗的細胞毒性効果を有する薬物を組み合わせることができる(Pazdurら、第3章:腫瘍薬物療法の原理(Principles of Oncologic Pharmacotherapy)(2005)、第9版:23-42)。多剤療法は、単剤療法を上回る3つの重要な理論的利点を有する。第1に、多剤療法は、用量制限毒性が重複しない薬剤を用いることによって宿主の毒性を最小限に抑えながら、細胞死を最大化することができる。第2に、多剤療法は、治療の特定の種類に対して内因性耐性を有する腫瘍細胞に対して薬物活性の範囲を増大させることができる。最後に、多剤療法はまた、新たな耐性腫瘍細胞の発育を防止又は低下させることができる。事実上、癌のほぼ全ての根治的化学療法レジメンは、多剤薬物の組み合わせを使用している(Frei及びEder,Cancer medicine(2003),11:817-837)。
【0009】
比較的新しい抗癌剤のファミリーは、癌細胞内で分裂促進、抗アポトーシス、血管新生若しくは転移経路に関与する特定のキナーゼ又は他のシグナル伝達酵素の阻害剤(例えば、抗体及び小分子)である。このファミリーに含まれる承認薬の例としては、EGFR及び/又はHER2ブロッカー(例えば、小分子ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ又はトラスツズマブのような抗体(Herceptin(登録商標))及びセツキシマブ(Erbitux(登録商標)))、B-Raf阻害剤(例えば、PLX-4032、ソラフェニブ)、BCR-ABL及び/又はSrcファミリーキナーゼ阻害剤(例えば、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ)、VEGFR/PDGFR及び/又はマルチキナーゼ阻害剤(例えば、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、ソラフェニブ、スニチニブ、及びパゾパニブ)、並びにプロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ(Velcade(登録商標))などである。2004年にタルセバ(エルロチニブ)、2003年にイレッサ(ゲフィチニブ)、及び2010年にラパチニブ、並びにEGFRに対する抗体のようないくつかのEGFR阻害剤がFDAにより承認された。
【0010】
抗癌剤の別のファミリーは、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の阻害剤である。mTOR(FRAP(FKBP-ラパマイシン関連タンパク質)、RAFT(ラパマイシン及びFKBP標的)、RAPT1、又はSEPとも呼ばれている)は、ホスファチジルイノシトール-3キナーゼ(PI3K)関連キナーゼ(PIKK)ファミリーに属するセリン/スレオニンキナーゼである。mTORは、成長、増殖、代謝及び血管新生の中枢コントローラとして機能するが、そのシグナル伝達は、様々なヒト疾患、特に、腎細胞癌及び乳癌のような特定の癌において調節解除されている。癌では、mTORは、頻繁に過剰活性化され、癌の発症及び進行を促進する。最近の開発により、癌治療は、従来の細胞傷害性薬物から、mTOR阻害剤と呼ばれる、mTORのような特定のタンパク質を標的とする薬剤へと移行した。一般的なmTOR阻害剤であるラパマイシン(シロリムス)は、その細胞内受容体と結合することによってmTORを阻害する細菌の生成物である。ラパマイシンの誘導体である2つのmTOR阻害剤のテムシロリムス(CCI-779)及びエベロリムス(アフィニトール、RAD-001)は、進行性腎細胞癌(RCC)及びマントル細胞リンパ腫を有する患者の治療のために承認されている。mTOR阻害剤の他の例としては、PI3K及びmTORの二重阻害剤であるリダフォロリムス(デフォロリムス、AP23573)、及びNVP-BEZ235が挙げられる。
【0011】
ラパマイシンのようなmTOR阻害剤の第1世代は、C1アイソフォームのみを阻止し、AKTのフィードバック活性化を誘導し、第2のアイソフォームmTORC2に対する耐性を示すことによって一定の制限を示す。高度の選択性を有するキナーゼドメインを標的化することによってmTORC1及びmTORC2の両方を阻害することができる第2世代の薬剤のパネルが開発されている。第2世代のmTOR阻害剤の例としては、OSI-027(OSI Pharmaceuticals社)、XL765(Exelixis社)、INK128、MLN0128、AZD2014、DS-3078a及びパロミド(Palomid)529が挙げられる。
【0012】
過去数十年で、免疫療法は、数種類の癌の治療の重要な一部となっている。癌免疫療法の目標は、患者の免疫系が癌細胞を特異的に認識し、死滅させることができることである。シグナル伝達性転写因子3(Stat3)は、癌内で活性化される場合が多く、癌の免疫抑制微小環境の実現及び維持に直接関与し、腫瘍免疫回避において中心的な役割を果たしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
癌を治療するのに有用であり、好ましくは、少なくとも相加的治療効果を提供する組み合わせのニーズが満たされていない。異なるカテゴリからの薬物の組み合わせは、薬物耐性腫瘍の出現を防止又は克服するのに有用である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、(i)上皮成長因子阻害剤(EGFR阻害剤)及びEGFR抗体から選択されるタンパク質キナーゼ(PK)の修飾因子;(ii)哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の阻害剤;(iii)マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MEK)阻害剤;(iv)変異型B-Raf阻害剤;(v)ゲムシタビン、5-FU、イリノテカン及びオキサリプラチンのような化学療法剤;並びに(vi)それらの特定の組み合わせと組み合わせた、インスリン受容体基質(IRS)及びシグナル伝達性転写因子3(Stat3)の二重修飾因子である少なくとも1種類の化合物、例えば、式(III)又は(IV)の化合物、又はこれらの式に含まれる化合物のいずれかを含む組み合わせを投与することによって癌を治療するための組成物及び方法に関する。さらに、本発明は、免疫療法剤と組み合わせた、IRS及びStat3の二重修飾因子、例えば、式(III)若しくは(IV)の化合物、又はこれらの式に含まれる化合物のいずれかを含む併用療法を用いる癌の治療に関する。
【発明の効果】
【0015】
本明細書に記載の化合物は、インスリン受容体基質1(IRS1)及び/又はインスリン受容体基質2(IRS2)のシグナル伝達の修飾因子である。したがって、これらの化合物は、「IRSの修飾因子」と本明細書で呼ぶ。いくつかの実施形態において、該化合物は、IRS1及び/又はIRS2の阻害剤である。さらなる実施形態において、本発明の化合物は、インスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)の阻害剤である。そのようなものとして、これらの化合物は、IGF-1R及び/又はIRS1及び/又はIRS2のシグナル伝達関連障害、例えば、癌を阻害、治療又は防止するのに有用である。いくつかの実施形態において、該化合物は、任意の順序で、以下のこと:(i)細胞膜からのIRS1及び/若しくはIRS2の解離;(ii)IGF-1Rの直接基質IRS1及び/若しくはIRS2のセリンリン酸化;及び/又は(iii)IRS1及び/又はIRS2を分解し、したがってこれらの化合物の阻害活性を増強する長期効果を提供することのうちの任意の1以上を誘導する。他の実施形態において、該化合物はまた、IGF1R関連インスリン受容体(IR)の阻害剤、又はこれらのPTKによって影響を受けるか、若しくは媒介されるタンパク質、又はPTK媒介性シグナル伝達経路の一部であるタンパク質である。
【0016】
IRSは、EGFR下流要素及びmTOR/S6Kによって負に調節される。したがって、これらの標的を阻害する薬物を用いて患者を治療すると、副作用として、IRSを上方制御し、AKTへの中心的な生存経路を活性化する結果を招き得る。本明細書で実証されるように、本発明の原理によれば、薬物耐性につながるこのフィードバック機構は、治療にIRS破壊者を組み合わせることによって圧倒され得る。
【0017】
本明細書に記載の化合物はまた、シグナル伝達性転写因子3(Stat3)の修飾因子である。したがって、これらの化合物はまた、「Stat3の修飾因子」と本明細書で呼ぶ。いくつかの実施形態において、該化合物は、癌細胞におけるStat3リン酸化の阻害をもたらす。Stat3リン酸化の増加レベルは、様々な癌及び薬剤耐性癌で検出され、癌の生存を高める。さらに、本明細書で実証されるように、PK阻害薬での癌の治療は、驚くべきことに、Stat3リン酸化の誘導をもたらす。いかなる特定の理論又は作用機序に束縛されることなく、本発明の化合物によるStat3活性の阻害は、そのようなPK阻害薬と相乗作用し得、副作用として、Stat3を上方制御し、このような薬物に対する獲得耐性を防止し得、薬物耐性癌に有効であり得ることが企図される。
【0018】
IRS及びStat3に対するそれらの二重の効果により、該化合物は、さらに、本明細書では「IRS/Stat3の二重修飾因子」と記載される。
【0019】
このように、一実施形態において、本発明は、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤及び/又はEGFR抗体に対する耐性を発現している腫瘍を治療する方法であって、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と組み合わせたEGFR阻害剤及び/又はEGFR抗体と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法に関する。
【0020】
別の実施形態において、本発明は、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤及び/又はEGFR抗体に対する腫瘍の獲得耐性を防止する方法であって、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と組み合わせたEGFR阻害剤及び/又はEGFR抗体と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法に関する。
【0021】
別の実施形態において、本発明は、EGFR阻害剤及び/又はEGFR抗体による治療の中止後の腫瘍再発を防止するか又は遅延させる方法であって、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と組み合わせたEGFR阻害剤及び/又はEGFR抗体と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法に関する。
【0022】
別の実施形態において、本発明は、上皮成長因子(EGFR)阻害剤、及び/又はEGFR抗体と組み合わせた式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物を含む医薬品の組み合わせに関する。
【0023】
別の実施形態において、本発明は、上皮成長因子(EGFR)阻害剤及び/又はEGFR抗体と組み合わせた式(III)の構造によって表される化合物を含む医薬品の組み合わせであって、該EGFR阻害剤が、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、ネラチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ダコミチニブ、ポジオチニブ(poziotinib)、AZD9291、CO-1686、HM61713及びAP26113からなる群から選択され、該EGFR抗体が、トラスツズマブ、ネシツムマブ、セツキシマブ及びパニツムマブからなる群から選択され、好ましくは、該EGFR阻害剤が、エルロチニブ又はアファチニブであり、かつ/又は該EGFR抗体がセツキシマブである医薬品の組み合わせに関する。
【0024】
他の実施形態において、本発明は、上皮成長因子(EGFR)阻害剤及び/又はEGFR抗体と組み合わせた式(IV)の構造によって表される化合物を含む医薬品の組み合わせに関する。
【0025】
他の実施形態において、本発明はさらに、EGFR阻害剤及び/若しくはEGFR抗体に耐性である腫瘍の治療に使用するため、又はEGFR阻害剤及び/若しくはEGFR抗体に対する獲得耐性を防止するため、又はEGFR阻害剤及び/若しくはEGFR抗体による治療の中止後の腫瘍再発を防止するか若しくは遅延させるための上記の医薬品の組み合わせに関する。
【0026】
他の実施形態において、本発明は、さらに、EGFR阻害剤及び/若しくはEGFR抗体に耐性である腫瘍の治療のため、又はEGFR阻害剤及び/若しくはEGFR抗体に対する獲得耐性を防止するため、又はEGFR阻害剤及び/若しくはEGFR抗体による治療の中止後の腫瘍再発を防止するか若しくは遅延させるための医薬の調製のための上記組み合わせの使用にも関する。
【0027】
一実施形態において、該化合物は、式(III)の構造によって表される。別の実施形態において、該化合物は、式(IV)の構造によって表される。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0028】
いくつかの実施形態において、該腫瘍は、EGFR阻害剤及び/又はEGFR抗体治療に対する耐性を獲得した腫瘍を有する癌患者に存在する。他の実施形態において、該腫瘍は、EGFR阻害剤及び/又はEGFR抗体で治療を受けているか、又はそのような治療を受ける候補である癌患者に存在する。他の実施形態において、該治療は、耐性腫瘍の成長の減弱又は退縮をもたらす。
【0029】
いくつかの実施形態において、該EGFR阻害剤は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、ネラチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ダコミチニブ、ポジオチニブ、AZD9291、CO-1686、HM61713及びAP26113からなる群から選択される。現在好ましい一実施形態において、該EGFR阻害剤はエルロチニブである。別の現在好ましい実施形態において、該EGFR阻害剤はアファチニブである。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0030】
いくつかの実施形態において、該EGFR抗体は、トラスツズマブ、ネシツムマブ、セツキシマブ及びパニツムマブからなる群から選択される。現在好ましい一実施形態において、該EGFR抗体はセツキシマブである。
【0031】
いくつかの実施形態において、該化合物は、エルロチニブ又はアファチニブと組み合わせた式Dの構造によって表される式(III)の化合物である。
【0032】
他の実施形態において、該化合物は、セツキシマブと組み合わせた式Dの構造によって表される式(III)の化合物である。
【0033】
他の実施形態において、該化合物は、アファチニブ及びセツキシマブと組み合わせた式Dの構造によって表される式(III)の化合物である。
【0034】
いくつかの実施形態において、該併用治療は、式(III)又は(IV)の化合物、及びEGFR抗体又はEGFR阻害剤のいずれかを含む。他の実施形態において、該併用治療は、式(III)又は(IV)の化合物、及びEGFR抗体とEGFR阻害剤の両方を含む。いくつかの現在好ましい実施形態において、該EGFR阻害剤は、エルロチニブ又はアファチニブであり、該EGFR抗体はセツキシマブである。
【0035】
特定の一実施形態において、本発明は、エルロチニブと組み合わせた式Dの構造によって表される化合物を含む医薬品の組み合わせに関する。特定の一実施形態において、本発明は、アファチニブと組み合わせた式Dの構造によって表される化合物を含む医薬品の組み合わせに関する。別の特定の実施形態において、本発明は、セツキシマブと組み合わせた式Dの構造によって表される化合物を含む医薬品の組み合わせに関する。別の特定の実施形態において、本発明は、アファチニブ及びセツキシマブと組み合わせた式Dの構造によって表される化合物を含む医薬品の組み合わせに関する。
【0036】
他の態様において、本明細書に記載のインスリン受容体基質(IRS)及びシグナル伝達性転写因子3(Stat3)の二重修飾因子と哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の阻害剤の組み合わせが、各薬剤単独の治療効果と比較して少なくとも相加的で、好ましくは、相乗的な治療効果を提供することが今、予想外に見出された。さらに、該組み合わせを用いて、mTOR阻害剤に対する耐性を発現した腫瘍を治療し、かつ/又はmTOR阻害剤に対する腫瘍の獲得耐性を防止し、かつ/又は哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の阻害剤による治療の中止後の腫瘍再発を防止するか若しくは遅延させることができる。
【0037】
したがって、一実施形態において、本発明は、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物、及び哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の少なくとも1種類の阻害剤を含む医薬品の組み合わせであって、該化合物及び少なくとも1種類のmTOR阻害剤は、共に、相乗的抗癌治療効果を提供する医薬品の組み合わせに関する。
【0038】
他の実施形態において、本発明は、癌を治療する方法であって、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物、及び哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の少なくとも1種類の阻害剤を含む治療有効量の医薬品の組み合わせを、それを必要とする対象に投与する工程を含み、該化合物及び少なくとも1種類のmTOR阻害剤が共に相乗的治療効果をもたらす方法に関する。
【0039】
他の実施形態において、本発明は、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の阻害剤に対する耐性を発現した腫瘍を治療する方法であって、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と組み合わせたmTOR阻害剤と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法に関する。
【0040】
他の実施形態において、本発明は、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の阻害剤に対する腫瘍の獲得耐性を防止する方法であって、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と組み合わせたmTOR阻害剤と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法に関する。
【0041】
他の実施形態において、本発明は、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の阻害剤による治療の中止後の腫瘍再発を防止するか又は遅延させる方法であって、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と組み合わせたmTOR阻害剤と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法に関する。
【0042】
他の実施形態において、本発明は、さらに、mTOR阻害剤に対して耐性である腫瘍の治療に使用するため、又はmTOR阻害剤に対する獲得耐性を防止するため、又はmTORの阻害剤による治療中止後の腫瘍再発を防止するか若しくは遅延させるための、上記の医薬品の組み合わせに関する。
【0043】
他の実施形態において、本発明は、さらに、mTOR阻害剤に耐性である腫瘍の治療のため、又はmTOR阻害剤に対する獲得耐性を防止するため、又はmTORの阻害剤による治療の中止後の腫瘍再発を防止若しくは遅延させるための医薬の調製のための、上記組み合わせの使用に関する。
【0044】
一実施形態において、該化合物は、式(III)の構造によって表される。別の実施形態において、該化合物は、式(IV)の構造によって表される。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0045】
いくつかの実施形態において、該腫瘍は、mTOR阻害剤の治療に対する耐性を獲得した腫瘍を有する癌患者に存在する。他の実施形態において、該腫瘍は、mTOR阻害剤による治療を受けているか、又はそのような治療を受ける候補である癌患者に存在する。他の実施形態において、該治療は、耐性腫瘍の成長の減弱又は退縮をもたらす。
【0046】
当業者に公知の任意のmTOR阻害剤は、本発明の組み合わせで使用され得る。いくつかの実施形態において、該mTOR阻害剤は、ラパマイシン(シロリムス)、リダフォロリムス(デフォロリムス、AP23573)、NVP-BEZ235、エベロリムス(アフィニトール、RAD-001)、テムシロリムス(CCI-779)、OSI-027、XL765、INK128、MLN0128、AZD2014、DS-3078a及びパロミド529からなる群から選択される。現在好ましい実施形態において、該mTOR阻害剤はエベロリムスである。
【0047】
特定の一実施形態において、該化合物は、式Dの構造によって表され、該mTOR阻害剤は、エベロリムス(アフィニトール)である。
【0048】
いくつかの実施形態において、該対象又は癌患者はヒトである。
【0049】
他の態様において、IRSとStat3の二重修飾因子を用いて、免疫療法に対して腫瘍を感作させることができることが予想外に見出された。Stat3は、癌で活性化される場合が多く、癌免疫抑制微小環境の実現及び維持に直接関与し、腫瘍免疫回避において中心的な役割を果たしていることが知られている。いかなる特定の理論又は作用機序に束縛されることなく、本発明の化合物によるStat3リン酸化の阻害は、局所免疫系から腫瘍を暴露し、免疫療法、例えば、PDL、PD1、CTLA4に対する抗体又は任意の他の免疫療法剤に対してそれらを感作させることが企図される。
【0050】
このように、一実施形態において、本発明は、免疫療法に対して腫瘍を感作させる方法であって、免疫療法剤と組み合わせた式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法に関する。
【0051】
別の実施形態において、本発明は、さらに、免疫療法剤と組み合わせた式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物を含む医薬品の組み合わせに関する。
【0052】
他の実施形態において、本発明は、さらに、免疫療法に対して腫瘍を感作させるのに使用するための、免疫療法剤と共に式(III)又は(IV)の化合物を含む組み合わせに関する。
【0053】
他の実施形態において、本発明は、さらに、免疫療法に対して腫瘍を感作させることによる腫瘍の治療のための医薬の調製のための、免疫療法剤と共に式(III)又は(IV)の化合物を含む組み合わせの使用に関する。
【0054】
一実施形態において、該化合物は、式(III)の構造によって表される。別の実施形態において、該化合物は、式(IV)の構造によって表される。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0055】
いくつかの実施形態において、上記化合物と組み合わせて使用される免疫療法剤は、PDL、PD1、CTLA4、CD20、CD30、CD33、CD52、VEGF、CD30、EGFR及びErbB2からなる群から選択される標的に対する抗体である。いくつかの態様において、該抗体は、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ブレンツキシマブベドチン、セツキシマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イブリツモマブチウキセタン、イピリムマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トシツモマブ及びトラツズマブからなる群から選択される。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0056】
いくつかの実施形態において、該腫瘍は、免疫療法を受けているか、又は免疫療法を受ける候補である癌患者に存在する。
【0057】
他の態様において、本明細書に記載のインスリン受容体基質(IRS)及びシグナル伝達性転写因子3(Stat3)の二重修飾因子と、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MEK)の阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤の組み合わせが、各薬剤単独の治療効果と比較して少なくとも相加的で、好ましくは、相乗的な治療効果を提供することが今、予想外に見出された。さらに、該組み合わせを用いて、MEK阻害剤及び/若しくは変異型B-Raf阻害剤に対する耐性を発現している腫瘍を治療し、かつ/又はMEK阻害剤及び/若しくは変異型B-Raf阻害剤に対する腫瘍の獲得耐性を防止し、かつ/又はMEK阻害剤及び/若しくは変異型B-Raf阻害剤による治療の中止後の腫瘍再発を防止するか若しくは遅延させることができる。
【0058】
このように、いくつかの実施形態において、本発明は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MEK)阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤に対する耐性を発現した腫瘍を治療する方法であって、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と組み合わせたMEK阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法に関する。
【0059】
他の実施形態において、本発明は、MEK阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤に対する腫瘍の獲得耐性を防止する方法であって、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と組み合わせたMEK阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法に関する。
【0060】
他の実施形態において、本発明は、MEK阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤による治療の中止後の腫瘍再発を防止するか又は遅延させる方法であって、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と組み合わせたMEK阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法に関する。
【0061】
他の実施形態において、本発明は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MEK)阻害剤、及び必要に応じて、変異型B-Raf阻害剤と組み合わせた式(III)の構造によって表される化合物を含む医薬品の組み合わせに関する。いくつかの実施形態において、該組み合わせは、式(III)の化合物、MEK阻害剤及び変異型B-Raf阻害剤を含み、好ましくは、該MEK阻害剤はトラメチニブであり、かつ該変異型B-Raf阻害剤はベムラフェニブである。
【0062】
他の実施形態において、本発明は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MEK)阻害剤、及び/又は変異型B-Raf阻害剤と組み合わせた式(IV)の構造によって表される化合物に関する。
【0063】
いくつかの実施形態において、該腫瘍は、MEK阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤治療に対する耐性を獲得した腫瘍を有する癌患者に存在する。他の実施形態において、該治療は、耐性腫瘍の成長の減弱又は退縮をもたらす。他の実施形態において、該腫瘍は、MEK阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤による治療を受けているか、又はそのような治療を受ける候補である癌患者に存在する。
【0064】
当業者に知られている任意のMEK阻害剤は、本発明の組み合わせで使用され得る。いくつかの実施形態において、該MEK阻害剤は、トラメチニブ(GSK1120212)、セルメチニブ、ビニメチニブ(MEK162)、PD-325901、コビメチニブ、CI-1040及びPD035901からなる群から選択され、好ましくは、該MEK阻害剤はトラメチン(Trametin)である。
【0065】
当業者に知られている任意の変異型B-Raf阻害剤は、本発明の組み合わせで使用され得る。いくつかの実施形態において、該変異型B-Raf阻害剤は、ベムラフェニブ(PLX-4032)、PLX4720、ソラフェニブ(BAY43-9006)、及びダブラフェニブからなる群から選択され、好ましくは、該変異型B-Raf阻害剤はベムラフェニブである。
【0066】
一実施形態において、該化合物は、式(III)の構造によって表される。別の実施形態において、該化合物は、式(IV)の構造によって表される。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0067】
いくつかの実施形態において、該化合物は、式Dの構造によって表され、該MEK阻害剤はトラメチニブである。
【0068】
他の実施形態において、該化合物は、式Dの構造によって表され、該変異型B-Raf阻害剤はベムラフェニブである。
【0069】
いくつかの実施形態において、併用治療は、式(III)又は(IV)の化合物、及びMEK阻害剤又は変異型B-Raf阻害剤のいずれかを含む。他の実施形態において、該併用治療は、式(III)又は(IV)の化合物、並びにMEK阻害剤及び変異型B-Raf阻害剤の両方を含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、該対象又は癌患者はヒトである。
【0071】
いくつかの実施形態において、本発明は、トラメチニブと組み合わせた式Dの構造によって表される化合物を含む医薬品の組み合わせに関する。
【0072】
他の実施形態において、本発明は、トラメチニブとベムラフェニブとを組み合わせた式Dの構造によって表される化合物を含む医薬品の組み合わせに関する。
【0073】
他の実施形態において、本発明は、MEK阻害剤及び/若しくは変異型B-Raf阻害剤に対して耐性である腫瘍の治療に使用するため、又はMEK阻害剤及び/若しくは変異型B-Raf阻害剤に対する獲得耐性を防止するため、又はMEK阻害剤及び/若しくは変異型B-Raf阻害剤による治療の中止後の腫瘍再発を防止するか又は遅延させるための上記組み合わせに関する。
【0074】
他の実施形態において、本発明は、MEK阻害剤及び/若しくは変異型B-Raf阻害剤に対して耐性である腫瘍の治療のため、又はMEK阻害剤及び/若しくは変異型B-Raf阻害剤に対する獲得耐性を防止するため、又はMEK阻害剤及び/若しくは変異型B-Raf阻害剤による治療の中止後の腫瘍再発を防止するか又は遅延させるための医薬の調製のための上記組み合わせの使用に関する。
【0075】
他の態様において、本明細書に記載のインスリン受容体基質(IRS)及びシグナル伝達性転写因子3(Stat3)の二重修飾因子と、ゲムシタビン、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチン、及びそれらの任意の組み合わせなどの化学療法剤(例えば、併用治療用のフォルフィリ又はフォルフォックス)の組み合わせが、各薬剤単独の治療効果と比較して少なくとも相加的で、好ましくは、相乗的な治療効果を提供することが今、予想外に見出された。さらに、該組み合わせを用いて、これらの化学療法剤のいずれか若しくはそれらの組み合わせに対する耐性を発現した腫瘍を治療し、かつ/又はこれらの化学療法剤のいずれか若しくはそれらの組み合わせに対する腫瘍の獲得耐性を防止し、かつ/又はこれらの化学療法剤のいずれか若しくはそれらの組み合わせによる治療の中止後の腫瘍再発を防止するか若しくは遅延させることができる。
【0076】
フォルフィリは、ロイコボリン(フォリン酸)、5-FU及びイリノテカンを含有する癌の併用治療である。フォルフォックスは、ロイコボリンカルシウム(フォリン酸)、5-FU及びオキサリプラチンを含有する癌の併用治療である。
【0077】
このように、いくつかの実施形態によれば、本発明は、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と、ゲムシタビン、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチン及びそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1種類の化学療法剤を含む医薬品の組み合わせであって、該化合物及び該化学療法剤(複数可)は共に、相乗的な抗癌治療効果を与える医薬品の組み合わせに関する。
【0078】
いくつかの実施形態において、本発明は、癌を治療する方法であって、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と、ゲムシタビン、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチン、及びそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1種類の化学療法剤を含む治療有効量の組み合わせを、それを必要とする対象に投与する工程を含み、該化合物及び該化学療法剤(複数可)が、共に相乗的な抗癌治療効果を与える方法に関する。
【0079】
他の実施形態において、本発明は、少なくとも1種類の化学療法剤、例えば、ゲムシタビン、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチン、及びそれらの任意の組み合わせに対する耐性を発現した腫瘍を治療する方法であって、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と組み合わせた前記化学療法剤(複数可)のうちの少なくとも1種類と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法を提供する。
【0080】
他の実施形態において、本発明は、少なくとも1種類の化学療法剤、例えば、ゲムシタビン、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチン、及びそれらの任意の組み合わせに対する腫瘍の獲得耐性を防止する方法であって、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と組み合わせた前記化学療法剤(複数可)のうちの少なくとも1種類と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法を提供する。
【0081】
他の実施形態において、本発明は、少なくとも1種類の化学療法剤、例えば、ゲムシタビン、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチン、及びそれらの任意の組み合わせによる治療の中止後の腫瘍再発を防止するか又は遅延させる方法であって、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と組み合わせた前記化学療法剤(複数可)のうちの少なくとも1種類と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法を提供する。
【0082】
いくつかの実施形態において、該腫瘍は、前記化学療法剤(複数可)のうちの任意の1以上に対する耐性を獲得した腫瘍を有する癌患者に存在する。他の実施形態において、該治療は、耐性腫瘍の成長の減弱又は退縮をもたらす。他の実施形態において、該腫瘍は、前記化学療法剤(複数可)を用いた治療を受けているか、又はそのような治療を受ける候補である癌患者に存在する。
【0083】
他の実施形態において、本発明は、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物並びにゲムシタビン、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチン及びそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1種類の化学療法剤を含み、前記化学療法剤(複数可)のうちの任意の1以上に耐性である腫瘍の治療に使用するため、又は前記化学療法剤(複数可)に対する獲得耐性を防止するため、又はそのような化学療法剤(複数可)のうちの任意の1以上による治療の中止後の腫瘍再発を遅延させるための医薬品の組み合わせを提供する。
【0084】
他の実施形態において、本発明は、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物並びにゲムシタビン、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチン及びそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1種類の化学療法剤を含み、前記化学療法剤(複数可)に耐性である腫瘍の治療用の医薬の調製のため、又は前記化学療法剤(複数可)に対する獲得耐性を防止するため、又はそのような化学療法剤(複数可)による治療の中止後の腫瘍再発を防止若しくは遅延させるための医薬品の組み合わせの使用に関する。
【0085】
本明細書において企図されるように、本発明は、抗癌薬に応答しなかった活性化K-RASを有する腫瘍が、該抗癌薬と化合物Dを組み合わせた場合に、印象的な腫瘍退縮を示したいくつかの例を提供する。例えば、化合物Dと抗癌剤の組み合わせは、抗癌剤に対して「応答しない」腫瘍から「レスポンダー」に変換させた。実施例1(
図1)において、エンドポイントでのエルロチニブ治療グループ、すなわちエルロチニブ耐性クローンのゲノム分析により、対照と比較していくつかの変化が明らかになった。これらの新規なゲノム変化のうち、KRASは、EGFR阻害剤に対して耐性を生じることが知られている。KRASに関連するゲノムの変更には、KRASの増幅及びNF-1欠失が含まれ、KRASの活性化をもたらす。エルロチニブで治療した腫瘍とは対照的に、エルロチニブと化合物Dの両方で治療した腫瘍は、KRASの変更を有していなかった。これらの腫瘍(エルロチニブと化合物Dの両方によって治療した)において、エルロチニブに対する耐性を獲得せず、治療の間、腫瘍は成長しなかった。加えて、化合物D+エルロチニブでのエルロチニブ耐性腫瘍の治療は、これらの腫瘍をエルロチニブに対して再感作させ、腫瘍退縮を誘導した。これは、化合物Dの含有がKRASの増幅及び/又は活性化によって課される耐性を拮抗することを示唆している。別の例では、変異KRASを有するゲムシタビン耐性膵臓腫瘍(
図13A、B)は、化合物Dと組み合わせることによるゲムシタビンによる治療に再感作した。さらに、文献からの支援データは、多くの薬物によって治療された「癌遺伝子中毒」癌細胞が、正のフィードバックループに従事することでSTAT3の活性化をもたらし、結果的に、細胞の生存を促進し、全体的な薬物応答を制限することを示す。これは、EGFR、HER2、ALK、及びMET、並びに変異KRASを含む多様な活性化キナーゼによって駆動される癌細胞で観察された。
【0086】
したがって、いくつかの態様において、本発明は、腫瘍を治療する方法であって、抗癌薬物と式(III)又は(IV)の化合物の組み合わせと、KRASの変異及び/又は増幅により耐性を発現した腫瘍とを接触させる工程を含む方法に関する。KRASの変異及び/又は増幅によりそのような薬剤に対する耐性を発現している腫瘍を治療することによるそのような方法において、本明細書に記載の抗癌剤のいずれか(例えば、EGFR阻害剤/EGFR抗体/mTOR阻害剤/免疫療法剤/MEK阻害剤/変異型B-Raf阻害剤/化学療法剤/前述の組み合わせ)を使用することができる。
【0087】
式(III)の化合物は、構造
【化1】
(式中、
R
1、R
2、R
5及びR
6は、独立して、H、C
1~C
4アルキル、(CH
2CH
2O)
nH(式中、nは1~20の整数である)、アシル及び加水分解の際にヒドロキシルを生じさせる官能基から選択され;
R
3、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13及びR
14は、独立して、H、ハロゲン、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4ハロアルキル、CH
2SR
a(式中、R
aは、H、C
1~C
4アルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C
1~C
4アルキルアリール、C
1~C
4アルキルヘテロシクリル及びC
1~C
4アルキルヘテロアリールから選択される)、並びにOR
16(式中、R
16は、H、C
1~C
4アルキル、(CH
2CH
2O)
nH、アシル、又は加水分解の際にヒドロキシルを生じる官能基である)から選択され;かつ
R
4は、H又はCNである)
によって表され、その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物を含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、式(III)の化合物は、化合物A、B、C、D、E、F、G、H、I及びJ:
【化2】
からなる群から選択される。
【0089】
一実施形態において、該化合物は式Aの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Bの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Cの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Dの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Eの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Fの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Gの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Hの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Iの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Jの化合物である。現在好ましい一実施形態において、該化合物は式Dの構造によって表される。
【0090】
式(IV)の化合物は、構造
【化3】
(式中、
Aは、H又はCNであり;
Zは、S、SO又はSO
2であり;
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル及びOR
1から選択され;かつ
Y
3及びY
4は、それぞれOR
1(式中、各R
1は、独立して、H、C
1~C
4アルキル、-(CH
2CH
2O)
nH(式中、nは1~20の整数である)、アシル又は加水分解の際にヒドロキシルを生じる官能基である)である)
によって表され、その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物を含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、式(IV)の化合物は、式(IV-4)
【化4】
の構造によって表される。
【0092】
本明細書に記載の式(I)又は(IV)の任意の他の化合物は、本発明が説明する併用治療のいずれかのために使用することができることは、当業者にさらに明らかである。
【0093】
本発明の組み合わせは、様々な種類の癌の治療に適している。特に、本発明の組み合わせは、頭頸部(H&N)癌、肉腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、乳癌、腎臓癌、胃癌、造血癌、リンパ腫、リンパ芽球性白血病を含む白血病、肺癌、黒色腫、神経膠芽腫、肝癌、前立腺癌及び結腸癌に対して活性がある。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0094】
本明細書で使用する「組み合わせ」又は「併用治療」という用語は、少なくとも2種類の別々の治療剤と同時の治療又は平行治療の任意の形態を意味する。この用語は、2つの治療様式、すなわち実質的に同じ治療スケジュールを用いた同時投与と、各治療の連続的又は交互のスケジュールでの重複投与の両方を包含することを意図している。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0095】
併用治療における各薬剤の投与量は、各薬剤での単独療法と比較して、全体的な抗癌効果をなお達成しながら低減することができるので、併用治療は特に都合がよい。したがって、各薬剤の投与量の低減は、副作用の減少をもたらし得る。併用療法は、本明細書で実証されるように、特定の抗癌治療に対する耐性の発現を低減し、かつ/又は耐性を獲得した後の腫瘍の退縮をもたらし得る。
【0096】
式(III)又は(IV)の化合物及びEGFR阻害剤/EGFR抗体/mTOR阻害剤/免疫療法剤/MEK阻害剤/変異型B-Raf阻害剤/化学療法剤/上記組み合わせは、同時に(同じ剤形又は別々の剤形で)投与することができるか、又は任意の順序で逐次的に投与することができる。投与はまた、交互の投与スケジュール、例えば、式(III)又は(IV)の化合物の後に追加の薬剤(複数可)、次いで、追加用量の式(III)又は(IV)の化合物の後に同一薬剤(複数可)又はさらに別の薬剤(複数可)などに従って行うことができる。同時、逐次及び交互を含む全ての投与スケジュールは本発明によって企図され、各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0097】
本発明の医薬組成物は、当技術分野で公知の任意の形態で、例えば、経口投与(例えば、溶液、懸濁液、シロップ剤、乳剤、分散液、錠剤、丸剤、カプセル剤、ペレット、顆粒及び粉末)、非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、経皮、皮下、又は腹腔内)、局所投与(例えば、軟膏、ゲル、クリーム)、吸入による投与又は坐薬を介した投与に適する形態で提供することができる。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0098】
本発明のさらなる実施形態及び適用性の完全な範囲は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の精神及び範囲内の様々な変更及び修正が、発明を実施するための形態から当業者に明らかとなるので、詳細な説明及び具体的な例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、例示としてのみ与えられることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【
図1】化合物Dが、頭頸部(H&N)癌患者からの腫瘍を移植したマウスにおいてエルロチニブに対する獲得耐性を防止する。マウスを、(a)ビヒクル(◇);(b)エルロチニブ(□);(c)化合物D(Δ);又は(d)エルロチニブ+化合物D(〇)で治療した。平均腫瘍サイズが約80mm
3になったときに治療を開始した。エルロチニブによる治療は、著しい腫瘍退縮を誘導したが、治療の間、全てのエルロチニブ治療マウスは、エルロチニブに対する耐性を発現し、それらの腫瘍は激しく再成長した。エルロチニブと化合物Dの併用治療は、腫瘍退縮を誘導し、それらのどれもが、治療の間、再成長しなかった。P値(対エルロチニブ)=0.0001。
【
図2】化合物Dは、エルロチニブに対する獲得耐性を防止し、頭頸部(H&N)癌患者からの腫瘍を移植したマウスにおいてエルロチニブ耐性腫瘍の退縮をもたらす。マウスを、(a)ビヒクル(◇);(b)エルロチニブ(□);(c)化合物D(Δ);又は(d)エルロチニブ+化合物D(〇)で治療した。エルロチニブによる治療(グループb)は、最初は腫瘍の退縮をもたらした。治療の間、該腫瘍は、エルロチニブに対する耐性を発現し、再成長した。エルロチニブと化合物Dの併用治療は、腫瘍退縮を誘導し、腫瘍のどれもが再成長しなかった(グループd)ことは、
図1に示す結果と一致する。エルロチニブに対する耐性を獲得した後に、10日目に腫瘍が約130mm
3であるグループbのマウスを2グループに分け、第1グループにエルロチニブ単独(□)を与え、第2グループにエルロチニブ+化合物D(10日目に治療を開始する)の併用治療を施した(●)。腫瘍は、エルロチニブ単独(□)による治療下で著しく成長したが、化合物Dとエルロチニブの併用治療は腫瘍退縮を誘導した(●)。
【
図3】化合物Dは、大きい腫瘍(700mm
3)においてエルロチニブに対する獲得耐性を防止する。マウスを、ビヒクル(◇)、エルロチニブ(□)、化合物D(Δ)、又はエルロチニブ+化合物D(〇)で治療した。平均腫瘍サイズが約700mm
3になったときに治療を開始した。
【
図4】アフィニトールと化合物Dによる併用治療は、マウスにおける高悪性度の子宮腺肉腫の腫瘍退縮を誘導する。平均腫瘍サイズが約130mm
3になったときに、激しい子宮腺肉腫の患者由来の異種移植片を移植したマウスを、ビヒクル(◇)、アフィニトール(□)、化合物D(Δ)、又はアフィニトール+化合物D(〇)のいずれかで治療した。アフィニトール治療グループ(□)の平均腫瘍体積は、腫瘍成長阻害を示した。対照と比較して、化合物D単独(Δ)は、腫瘍成長に著しい影響を及ぼさなかったが、エベロリムス+化合物D(〇)による併用治療は、腫瘍退縮をもたらした。結果(
図5で実証した)の別の分析では、マウスのいずれも、化合物D単独(Δ)に応答せず、アフィニトール治療グループ(□)では、グループの半分が応答し、他の半分は応答せず、アフィニトール+化合物D(〇)による併用治療は、この群の全てのマウスに陽性反応をもたらした。
【
図5】化合物Dは、アフィニトールに対する獲得耐性を防止し(A)、アフィニトール耐性腫瘍の退縮をもたらす(B)。高悪性度の子宮腺肉腫の患者由来の異種移植片を移植したマウスを、腫瘍が約130mm
3になったときに、
図4に説明したように、最初に治療した。マウスを、ビヒクル(菱形);アフィニトール(四角);化合物D(三角);又はアフィニトール+化合物D(〇)のいずれかで治療した。
図5A.アフィニトール治療グループを、レスポンダー(□、グループA、n=8)対非レスポンダー(灰色四角、グループB、n=7)に分けた。グループAのアフィニトール治療は最初に腫瘍退縮を誘導したが、治療の間、全ての腫瘍は、アフィニトールに対する耐性を発現し、激しく成長した。0日目(治療開始)からのアフィニトールと化合物Dの併用治療は、腫瘍退縮を誘導したが、それらの平均腫瘍体積は実験の終わりまで低いままであった(〇)。
図5B.アフィニトールに対する耐性を獲得した後に、グループAのマウスを2グループに分け、第1グループにアフィニトール単独(□)を与え、第2グループにアフィニトール+化合物Dの併用治療(6日目に治療を開始する)を施した(●)。腫瘍は、アフィニトール単独(□)による治療下で著しく成長したが、化合物Dとアフィニトールの併用治療は腫瘍退縮を誘導した(●)。
図5Bのグラフは%での成長率を表し、各腫瘍について100%を、6日目のその体積として定義した。
図5C.医学的治療が利用可能でない高悪性度の子宮腺肉腫の癌のアフィニトール+化合物Dの併用治療は、アフィニトールに対する獲得耐性を遅延し、このグループの40%で完全寛解を達成した。
【
図6】IRS/Stat3の二重修飾因子は、用量依存的に無傷の細胞においてStat3リン酸化を強力に阻害し、Stat3に対するそれらの阻害作用は、該修飾因子が細胞から洗い流された後もずっと続く。A.ヒト黒色腫A375細胞を、1.3及び4.5時間、示される濃度の化合物A又はDで処理した。細胞を溶解し、リン酸化Y705 Stat3(pSTAT3)及びStat3に対する抗体で免疫ブロットした。マイクロモル以下のIC50値でのpStat3の用量反応阻害が実証され、その効果は、時間内に増強される。B.細胞を2μMの化合物Aで処理し、示した時間の後に溶解した。C.A375細胞を化合物Dで4時間処理し、次いで、培地で数回洗浄し、阻害剤を含めない4、24及び48時間のインキュベーション後に溶解した。D.化合物A、C、Dについては1μM未満;化合物Bについては1μM及び化合物Fについては2μMのIC50値を示すpStat3の用量依存的阻害。E.3μMの化合物IV-1、IV-2、IV-3及びIV-4による治療後24時間の時点での黒色腫A375細胞におけるStat3 Y705-リン酸化の完全阻害。
【
図7】黒色腫におけるBRAF阻害剤(BRAFi)に対する獲得耐性は、Stat3リン酸化レベルの増強を伴い、ヒト黒色腫細胞のBRAFiによる治療は、驚くべきことにpStat3の劇的な増加を誘導する。
図7A.親黒色腫細胞(P)と比較して、BRAFi耐性黒色腫クローン(R)において高度に増加したレベルのpStat3。共に変異BRAFを保有するヒト転移性黒色腫451-Lu細胞(P)及びPLX4032耐性クローンを、血清を含まない培地で増殖させ、抗pStat3 Ab、続いて抗Stat3 Abで免疫ブロットした。
図7B.PLX4032で治療しなかったナイーブ患者(N)からの変異BRAFを有する黒色腫細胞と比較した、BRAFi PLX4032に対する耐性を獲得した患者由来の変異BRAFを有する黒色腫細胞(R)における高度に増加したレベルのpStat3。上記のように、患者からの細胞を完全培地中で増殖させ、免疫ブロットした。
図7C~E.BRAF変異ヒト黒色腫細胞のPLX4032による治療は、驚くほどにpStat3の劇的な増加を誘導する。化合物A/Dは、基底及びPLX4032誘導性のpStat3を阻止する。PLX4032感受性ヒト黒色腫A375(C)、451-Lu(D)又はMel1617(E)細胞を1μMのPLX4032で18~24時間処理すると、pStat3の劇的な増加を誘導する。化合物A(
図7C、D)又はD(
図7E)は、基底及びPLX4032誘導性のpStat3の両方を阻止する。IGF1RのATP競合阻害剤であるOSI-906は、pStat3に影響しない。
【
図8】IRS/Stat3の二重修飾因子は、培養物又は患者において耐性を獲得したBRAFi耐性黒色腫細胞においてpStat3を効率的に阻害する。pStat3を阻害する能力は、様々な癌の種類で例示された。
図8A~B.化合物Aは、IGF1R阻害剤のOSI-906とは対照的に、黒色腫のBRAFi耐性クローン、451-BR(
図8A)及びMEl1617-BR(
図8B)においてpStat3を強力に阻害する。
図8C.化合物A、及びより強力な化合物Dは、治療後にPLX4032に対する耐性を獲得した患者からの黒色腫細胞内のpStat3を阻害する(i及びii)。
図8D.様々な癌の種類の細胞を、無血清培地中で4時間、10%血清を含む培地又は含まない培地中で20時間、化合物Dで処理した。アスタリスクは、RPMI8226及びHepG2細胞の10μMの濃度を示す。
【
図9】化合物Aでの黒色腫A375細胞の処理は、PBMCの走化性を誘導する。A375細胞を化合物Aの示されている濃度で処理し、示される処理後4時間の時点で培地で2回洗浄した(洗浄)。処理後30時間の時点で、細胞培地を走化性装置の下部プレートに移した。1ウェル当たり10,000個のPBMCを、上部プレートに添加した。加えて、PBMCを陽性対照として下部プレートに添加した。
図9A.化合物Aの方へのPBMCの走化性を、下部プレートのセルタイターグロ分析によって24時間後に調べた。
図9B.1ウェル当たり10~10,000個の細胞のPBMCの検量線。
【
図10】化合物Dとセツキシマブ+アファチニブの併用治療は、HNSCC患者から腫瘍を移植したマウスにおいて、セツキシマブ+アファチニブのみと比較して、腫瘍再発の劇的な遅延を示す。マウスを、(a)ビヒクル(◇);(b)化合物D(Δ);(c)セツキシマブ(□);(d)セツキシマブ+アファチニブ(■);(e)セツキシマブ+化合物D(〇);又は(e)セツキシマブ+アファチニブ+化合物D(●)で9日間治療した。平均腫瘍サイズが約110
3mmになったときに治療を開始した。セツキシマブ又はセツキシマブ+アファチニブのいずれかと化合物Dの9日間のみの併用治療は、退縮した腫瘍再発を著しく遅延し、セツキシマブ又はセツキシマブ+アファチニブに対する応答を延長した。
【
図11】化合物Dは、変異型B-Raf阻害剤(BRAFi)及びMEK阻害剤(MEKi)の組み合わせと相乗作用し、変異B-RAF阻害薬治療に対する耐性を獲得した黒色腫患者からの腫瘍細胞を移植したマウスにおいて劇的な腫瘍退縮を誘導する。マウスを、(a)ビヒクル(◇);(b)トラメチニブ(MEKi)+ベムラフェニブ(BRAFi)(□);(c)化合物D(Δ);又は(d)トラメチニブ+ベムラフェニブ+化合物D(〇)で治療した。平均腫瘍サイズが約60mm
3になったときに治療を開始した。腫瘍は、トラメチニブ+ベムラフェニブで治療した全てのマウスにおいて激しく成長したが、トラメチニブ+ベムラフェニブと化合物Dの併用治療は、このグループの全てのマウスにおいて腫瘍退縮を誘導し、それらのいずれも治療の間、再成長しなかった。トラメチニブ+ベムラフェニブに対するトラメチニブ+ベムラフェニブ+化合物DのP値=0.0001。
【
図12】化合物Dは、MEK阻害剤のトラメチニブと相乗作用して、BRAFに変異を保有する腺様嚢胞癌患者からの腫瘍を移植したマウスにおいて腫瘍退縮を誘導する。マウスを、(a)ビヒクル(◇);(b)トラメチニブ(□);(c)化合物D(Δ);又は(d)トラメチニブ+化合物D(〇)で治療した。平均腫瘍サイズが約65mm
3になったときに、治療を開始した。トラメチニブによる治療は、腫瘍退縮を誘導したが、治療の間、腫瘍は成長した。トラメチニブと化合物Dの併用治療は、腫瘍退縮を誘導し、治療の間、これらの腫瘍のいずれも再成長しなかった。この研究には、0日目~13日目及び24日目~31日目の2つの治療フェーズを含めた。
【
図13】化合物Dは、膵臓癌患者の肝臓転移からの腫瘍を移植したマウスにおけるゲムシタビンに対するゲムシタビン耐性腫瘍を再感作させる。A.マウスを、35日間ゲムシタビンで治療し、一週間後に退縮腫瘍は、ゲムシタビンに対する耐性を獲得し、成長した。この時点で、平均腫瘍サイズは既に約110mm
3になっており、ゲムシタビン治療マウスを、(a)ゲムシタビン(□);(b)ゲムシタビン+化合物D(〇)の2グループに分けた。ゲムシタビンで治療した全ての腫瘍は成長したが、化合物D+ゲムシタビンによる併用治療は、このグループの半分に腫瘍退縮をもたらし、ゲムシタビン治療グループと比較して、このグループの平均腫瘍サイズの点で、有意な腫瘍成長阻害をもたらした(P値=7.35×10
-5)。B.実験の終了時に、サイズが類似した腫瘍片をプレート中で培養し(1群当たり3つの腫瘍)、それらの生存率及び増殖活性を試験した。9日後に、このプレートを固定し、染色すると、ゲムシタビン+化合物Dで治療したマウスからの腫瘍において非常に低い増殖活性~無視できるほどの増殖活性とは対照的に、ゲムシタビンで治療した腫瘍において大規模な増殖が示された。
【
図14】化合物Dは、付属器腺癌転移患者からの腫瘍を移植したマウスにおいてセツキシマブに対する獲得耐性を防止する。マウスを、(a)ビヒクル(◇);(b)化合物D(Δ);(c)セツキシマブ(□);(d)セツキシマブ+化合物D(〇)で32日間治療した。平均腫瘍サイズが約90mm
3になったときに、治療を開始した。セツキシマブによる治療は、一過的な腫瘍成長の減弱をもたらした後、セツキシマブに対する耐性を獲得したが、セツキシマブ+化合物Dの併用治療は、腫瘍退縮を誘導し、セツキシマブに対する獲得耐性を防止した。
【
図15】化合物Dは、結腸癌患者からの腫瘍を移植したマウスにおけるセツキシマブとフォルフィリの併用治療(結腸癌患者のために承認された治療)に対する獲得耐性を防止する。マウスを、(a)ビヒクル(◇);(b)化合物D(Δ);(c)セツキシマブ+フォルフィリ(□);(d)セツキシマブ+フォルフィリ+化合物D(〇);(e)フォルフィリ(■);及び(f)セツキシマブ(■、破線)で14日間治療した。平均腫瘍サイズが約110mm
3になったときに、治療を開始した。化合物Dを含む場合又は含まない場合のセツキシマブ+フォルフィリの併用治療は、治療の第1週に腫瘍退縮を誘導した。セツキシマブ+フォルフィリで治療したマウスにおける全ての腫瘍は、治療の第2週の間にこの治療に対する耐性を発現し、激しく成長したが、化合物Dとの併用治療は、セツキシマブ+フォルフィリに対する獲得耐性を防止した。
【発明を実施するための形態】
【0100】
本発明は、(i)上皮成長因子阻害剤(EGFR阻害剤)及びEGFR抗体から選択されるタンパク質キナーゼ(PK)の修飾因子;(ii)哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の阻害剤;(iii)マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MEK)阻害剤;(iv)変異型B-Raf阻害剤;(v)ゲムシタビン、5-FU、イリノテカン及びオキサリプラチンのような化学療法剤;並びに(vi)それらの特定の組み合わせと組み合わせた、インスリン受容体基質(IRS)及びシグナル伝達性転写因子3(Stat3)の二重修飾因子を含む併用治療を用いた癌の治療に関する。該組み合わせを用いて、EGFR阻害剤、EGFR抗体、mTOR阻害剤、MEK阻害剤、変異型B-Raf阻害剤、化学療法剤、及びそれらの特定の組み合わせに対する耐性を発現している腫瘍を治療するか、又は前記阻害剤若しくは薬剤のいずれかに対する腫瘍の獲得耐性を防止するか、又は前記阻害剤若しくは薬剤のいずれか若しくはそれらの組み合わせによる治療の中止後の腫瘍再発を防止することができる。該組み合わせは、少なくとも相加的で、好ましくは相乗的な治療効果を提供する。本発明は、さらに、免疫療法剤と組み合わせて、IRS及びStat3の二重修飾因子を含む併用療法を用いた癌の治療に関する。該組み合わせを用いて、免疫療法に対して腫瘍を感作させることができる。
【0101】
インスリン受容体基質(IRS)/シグナル伝達性転写因子3(Stat3)二重修飾因子
式(I)
【化5】
(式中、
R
1、R
2、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、H、C
1~C
4アルキル、C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル、C
1~C
4アルキル-C
2~C
6アルケニル、C
1~C
4アルキル-C
2~C
6アルキニル、(CH
2CH
2O)
nH、C
3~C
7シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、(C
1~C
4)-アルキルアリール、(C
1~C
4)-アルキルヘテロシクリル、(C
1~C
4)-アルキルヘテロアリール、ハロアルキル、アシル及び加水分解の際にヒドロキシルを生じる官能基から選択され;
R
3、R
4、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13及びR
14は、それぞれ独立して、H、C
1~C
4アルキル、C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル、C
1~C
4アルキル-C
2~C
6アルケニル、C
1~C
4アルキル-C
2~C
6アルキニル、C
3~C
7シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、(C
1~C
4)-アルキルアリール、(C
1~C
4)-アルキルヘテロシクリル、(C
1~C
4)-アルキルヘテロアリール、ハロゲン、ハロアルキル、NO
2、CN、N
3、SO
2R
a、COOR
a、CSNR
aR
b、CSOR
a、OR
a、CONR
aR
b、NR
aR
b、SR
a、及びCH
2SR
aから選択され、式中、R
a及びR
bは、それぞれ独立して、H、C
1~C
4アルキル、C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル、C
1~C
4アルキル-C
2~C
6アルケニル、C
1~C
4アルキル-C
2~C
6アルキニル、C
3~C
7シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、(C
1~C
4)-アルキルアリール、(C
1~C
4)-アルキルヘテロシクリル、(C
1~C
4)-アルキルヘテロアリール、ハロアルキル、(CH
2CH
2O)
nH、アシル、又は加水分解の際にヒドロキシルを生じる官能基から選択され;
R
15は、H、C
1~C
4アルキル、C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル、C
1~C
4アルキル-C
2~C
6アルケニル、C
1~C
4アルキル-C
2~C
6アルキニル、ハロアルキル、又はOR
b(式中、R
bは、独立して、H又はC
1~C
4アルキルである)である)
の一般構造のいずれかの化合物は、その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物を含めて、本発明の組成物に使用することができる。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0102】
例示的な実施形態において、該化合物は、式A:
【化6】
によって表される化合物である。
【0103】
別の例示的な実施形態において、該化合物は、式B:
【化7】
によって表される化合物である。
【0104】
別の例示的な実施形態において、該化合物は、式C:
【化8】
によって表される化合物である。
【0105】
別の例示的な実施形態において、該化合物は、式D:
【化9】
によって表される化合物である。
【0106】
別の例示的な実施形態において、該化合物は、式E:
【化10】
によって表される化合物である。
【0107】
別の例示的な実施形態において、該化合物は、式F:
【化11】
によって表される化合物である。
【0108】
別の例示的な実施形態において、該化合物は、式G:
【化12】
によって表される化合物である。
【0109】
別の例示的な実施形態において、該化合物は、式H:
【化13】
によって表される化合物である。
【0110】
別の例示的な実施形態において、該化合物は、式I:
【化14】
によって表される化合物である。
【0111】
別の例示的な実施形態において、該化合物は、式J:
【化15】
によって表される化合物である。
【0112】
別の実施形態において、該化合物は、式I(式中、R1、R2、R4、R5、R6、R10、R12、R13、R14及びR15は、それぞれHであり;R7はOHであり;かつR3、R8、R9及びR11の少なくとも1つは、ハロゲンである)の化合物である。
【0113】
別の実施形態において、該化合物は、式I(式中、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R10、R12、R13、R14及びR15は、それぞれHであり;R7はOHであり;かつR3、R9及びR11のうちの少なくとも1つはハロゲンである)の化合物である。
【0114】
別の実施形態において、該化合物は、式I(式中、R1、R2、R5及びR6は、それぞれH又は加水分解の際にヒドロキシルを生じる官能基である)の化合物である。
【0115】
別の実施形態において、該化合物は、式I(式中、R7は、H又はORaであり、R1、R2、R5、R6、及びRaは、それぞれH又は加水分解の際にヒドロキシルを生じる官能基である)の化合物である。
【0116】
別の実施形態において、該化合物は、式I(式中、R13及びR14は、それぞれ独立して、H、C1~C4アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C1~C4アルキル-C2~C6アルケニル又はC1~C4アルキル-C2~C6アルキニルである)の化合物である。
【0117】
別の実施形態において、該化合物は、式I(式中、R13及びR14のうちの少なくとも1つは、H又はC1~C4アルキルである)の化合物である。
【0118】
別の実施形態において、該化合物は、式I(式中、R3、R4、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ハロアルキル、OH、NO2、CN、又はCH2SRa(式中、Raは上記で定義した通りである)である)の化合物である。
【0119】
別の実施形態において、該化合物は、式I(式中、R4はHである)の化合物である。
【0120】
別の実施形態において、該化合物は、式I(式中、R4はCNである)の化合物である。
【0121】
別の実施形態において、該化合物は、式I(式中、R4、R11、R12、R13、R14及びR15はそれぞれHである)の化合物である。
【0122】
別の実施形態において、該化合物は、式I(式中、R13、R14及びR15はそれぞれHである)の化合物である。
【0123】
別の実施形態において、該化合物は、式I(式中、R3、R7、R8、R9、R10及びR11は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ハロアルキル、CH2SRa又はOHであり;R4、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、H、C1~C4アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C1~C4アルキル-C2~C6アルケニル、C1~C4アルキル-C2~C6アルキニル、アリール、ハロゲン、ハロアルキル、NO2、又はCNであり;かつR15はHである)の化合物である。
【0124】
別の実施形態において、該化合物は、式I(式中、R3、R7、R8、R9、R10及びR11は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ハロアルキル、OH又はCH2SRaであり;かつR4、R12、R13、R14及びR15は、それぞれHであるか、又はC1~C4アルキルである)の化合物である。
【0125】
別の実施形態において、該化合物は、式I(式中、R1、R2、R5及びR6は、それぞれH又は加水分解の際にヒドロキシルを生じる官能基であり;R3、R8、及びR9は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ハロアルキル、又はCH2SRaであり;R7、R10及びR11は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ハロアルキル、OH又は加水分解の際にヒドロキシルを生じる官能基であり;かつR4、R12、R13、R14及びR15は、それぞれH、又はC1~C4アルキルである)の化合物である。
【0126】
別の実施形態において、該化合物は式Iの化合物であり、該化合物は以下の構造のいずれか1つによって表される:
【化16】
【0127】
各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0128】
他の実施形態において、該化合物は、式II:
【化17】
(式中、
R
1、R
2、R
5及びR
6は、独立して、H、C
1~C
4アルキル、アシル、及び加水分解の際にヒドロキシルを生じる官能基から選択され;
R
3及びR
7は、独立して、H、ハロゲン、ハロアルキル及びOR
8(式中、R
8は、H、C
1~C
4アルキル、アシル、又は加水分解の際にヒドロキシルを生じる官能基である)から選択され;かつ
R
4は、H又はCNである)
の構造によって表される化合物であり、その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物を含む。
【0129】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R1、R2、R5及びR6は、独立して、H、C1~C4アルキル、(CH2CH2O)nH(式中、nは1~20の整数である)、アシル及び加水分解の際にヒドロキシルを生じさせる官能基から選択され;
R3及びR7は、独立して、H、ハロゲン、C1~C4アルキル、ハロアルキル及びOR16(式中、R16は、H、C1~C4アルキル、(CH2CH2O)nH、アシル又は加水分解の際にヒドロキシル生じる官能基である)から選択され;かつ
R4は、H又はCNである)
の構造によって表される化合物であり、その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物を含む。
【0130】
各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0131】
別の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R4はCNである)の化合物である。
【0132】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R1、R2、R5及びR6は、それぞれ水素である)の化合物である。
【0133】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R1、R2、R5及びR6は、それぞれCH3である)の化合物である。
【0134】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R3及びR7は、それぞれ水素、ハロゲン、ハロメチル、OH又はOCH3である)の化合物である。
【0135】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R1、R2、R5及びR6は、それぞれHであり、R3はハロゲンであり、R7はOHである)の化合物である。
【0136】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R1、R2、R5及びR6は、それぞれHであり、R3及びR7はそれぞれハロゲンである)の化合物である。
【0137】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R1、R2、R5及びR6は、それぞれHであり、R3はハロメチルであり、R7はOHである)の化合物である。
【0138】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R1、R2、R5及びR6は、それぞれHであり、R3はハロゲンであり、R7はHである)の化合物である。
【0139】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R1、R2、R5及びR6は、それぞれHであり、R3はOHであり、R7はハロゲンである)の化合物である。
【0140】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R1、R2、R5及びR6は、それぞれCH3であり、R3はハロゲンであり、R7はOCH3である)の化合物である。
【0141】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R1、R2、R5及びR6は、それぞれCH3であり、R3及びR7は、それぞれハロゲンである)の化合物である。
【0142】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R4は水素である)の化合物である。
【0143】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R1、R2、R5及びR6は、それぞれ水素である)の化合物である。
【0144】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R1、R2、R5及びR6は、それぞれCH3である)の化合物である。
【0145】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R3及びR7は、それぞれ水素、ハロゲン、ハロメチル、OH又はOCH3である)の化合物である。
【0146】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R1、R2、R5及びR6は、それぞれHであり、R3はハロゲンであり、R7はOHである)の化合物である。
【0147】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R1、R2、R5及びR6は、それぞれHであり、R3及びR7はそれぞれハロゲンである)の化合物である。
【0148】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R1、R2、R5及びR6は、それぞれHであり、R3はハロメチル、R7はOHである)の化合物である。
【0149】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R1、R2、R5及びR6は、それぞれHであり、R3はハロゲンであり、R7はHである)の化合物である。
【0150】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R1、R2、R5及びR6は、それぞれHであり、R3はOHであり、R7はハロゲンである)の化合物である。
【0151】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R3はハロゲンであり、R7はOCH3である)の化合物である。
【0152】
他の実施形態において、該化合物は、式II(式中、R1、R2、R5及びR6は、それぞれCH3であり、R3及びR7はそれぞれハロゲンである)の化合物である。
【0153】
他の実施形態において、式(II)の化合物は、以下の化合物のいずれかによって表される:
【化18】
【0154】
各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。別の実施形態において、該化合物は、式III:
【化19】
(式中、
R
1、R
2、R
5及びR
6は、独立して、H、C
1~C
4アルキル、(CH
2CH
2O)
nH(式中、nは1~20の整数である)、アシル及び加水分解の際にヒドロキシルを生じさせる官能基から選択され;
R
3、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13及びR
14は、独立して、H、ハロゲン、C
1~C
4アルキル、ハロアルキル及びOR
16(式中、R
16は、H、C
1~C
4アルキル、(CH
2CH
2O)
nH、アシル、又は加水分解の際にヒドロキシルを生じる官能基である)から選択され;かつ
R
4は、H又はCNである)
の構造によって表される。
【0155】
他の実施形態において、該化合物は、式IV:
【化20】
(式中、
Aは、H又はCNであり;
Zは、S、SO又はSO
2であり;
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル及びOR
1から選択され;かつ
Y
3及びY
4は、それぞれOR
1であり、式中、各R
1は、独立して、H、C
1~C
4アルキル、-(CH
2CH
2O)
nH(式中、nは1~20の整数である)、アシル、又は加水分解の際にヒドロキシルを生じる官能基である)
の構造によって表され、その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物を含む。
【0156】
いくつかの実施形態において、該化合物は、AがHである式IVの化合物である。
【0157】
他の実施形態において、該化合物は、AがCNである式IVの化合物である。
【0158】
他の実施形態において、該化合物は、ZがSである式IVの化合物である。
【0159】
他の実施形態において、該化合物は、ZがSO2である式IVの化合物である。
【0160】
他の実施形態において、該化合物は、X1、X2、X3、X4、Y1及びY2のうちの少なくとも1つがハロゲンである式IVの化合物である。
【0161】
他の実施形態において、該化合物は、X1、X2、X3、X4、Y1及びY2のうちの少なくとも1つがBrである式IVの化合物である。
【0162】
他の実施形態において、該化合物は、X1、X2、X3、X4、Y1及びY2のうちの少なくとも1つがIである式IVの化合物である。
【0163】
他の実施形態において、該化合物は、X1、X2、X3、及びX4は、それぞれH又はハロゲンから選択され、該ハロゲンは好ましくはBr又はIである式IVの化合物である。
【0164】
他の実施形態において、該化合物は、X2がHである式IVの化合物である。
【0165】
他の実施形態において、該化合物は、X5がHである式IVの化合物である。
【0166】
他の実施形態において、該化合物は、X5がアルキル、好ましくはメチルである式IVの化合物である。
【0167】
他の実施形態において、該化合物は、Y3及びY4がそれぞれOHである式IVの化合物である。
【0168】
他の実施形態において、該化合物は、Y1及びY2がそれぞれOHである式IVの化合物である。
【0169】
他の実施形態において、該化合物は、AがHであり、ZがSであり、Y3及びY4がそれぞれOHであり、X1がBr及びIから選択されるハロゲンである式IVの化合物である。
【0170】
各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0171】
他の実施形態において、式(IV)の化合物は、以下の化合物のいずれかによって表される:
【化21】
【0172】
式IVの現在好ましい化合物は、式IV-4の化合物である。
【0173】
他の実施形態において、該化合物は、A)PCT国際特許出願公開番号WO2008/068751;B)PCT国際特許出願公開番号WO2009/147682;又はC)PCT国際特許出願番号WO2012/090204に記載の誘導体のいずれかである。前述の参考文献の各々の内容は、本明細書に完全に記載されたかのようにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0174】
本明細書に記載の化合物のいずれかの配座異性体、幾何異性体、立体異性体、鏡像異性体及びジアステレオマーの全てが包含され、本出願によって記載される組み合わせ及び方法において使用され得ることが理解される。
【0175】
いかなる特定の理論又は作用機序に束縛されることなく、本発明の化合物は、IGF-1RなどのPKシグナル伝達の阻害剤であることが企図される。驚くべきことに、これらの化合物は、IGF-1Rの阻害剤であることに加えて、細胞膜からのIGF-1R基質IRS1/2の解離、IRS1/2タンパク質の阻害的セリンリン酸化及び/又は分解ももたらすことが今、見出されている。この活性は、長期的なIGF-1R及びIR経路の阻害、広い範囲の癌細胞型の成長阻害、及び強力な抗腫瘍効果につながる。これらの化合物は、したがって、「IRSの修飾因子」と呼ばれる。このように、別の実施形態において、本発明は、対象におけるインスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)及び/又はインスリン受容体基質1(IRS1)及び/又はインスリン受容体基質2(IRS2)のシグナル伝達関連障害を抑制、治療又は防止する方法であって、式Iの構造によって表される治療有効量の少なくとも1種類の化合物又はそのような式に含まれる化合物のいずれかを含む医薬組成物を、EGFR阻害剤、EGFR抗体、mTOR阻害剤及び/又は免疫療法剤から選択される抗癌剤と共に対象に投与する工程を含み、式Iの化合物及び抗癌剤が、共に、少なくとも相加的、好ましくは相乗的である抗癌効果を提供する方法を提供する。いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、インスリン受容体又はインスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)シグナル伝達の阻害剤であり、かつ/又は式Iの化合物は、IGF-1R媒介経路の中の基質タンパク質と相互作用するか、それに影響を及ぼすか又は阻害する。いくつかの実施形態において、基質タンパク質は、インスリン受容体基質1(IRS1)、インスリン受容体基質2(IRS2)、又はそれらの組み合わせである。特定の一実施形態において、式Iの化合物は、任意の順序で、細胞膜からのIRS1若しくはIRS2の解離、IRS1若しくはIRS2のリン酸化、及び/又はIRS1若しくはIRS2の分解のうちの少なくとも1つにつながるIGF-1Rキナーゼ阻害剤である。
【0176】
IGF1R及び具体的にはIRS1は、EGFR阻害に対する耐性の重要なメカニズムの1つである(Buck E.ら、フィードバック機構は、上皮成長因子受容体及びインスリン様成長因子受容体の小分子阻害剤に対して協同的に促進する(Feedback mechanisms promote cooperativity for small molecule inhibitors of epidermal and insulin-like growth factor receptors)、Cancer Res.2008 Oct 15;68(20):8322-32)。
【0177】
本明細書に記載の化合物はまた、シグナル伝達性転写因子3(Stat3)の修飾因子である。いくつかの実施形態において、該化合物は、癌細胞におけるStat3リン酸化の阻害をもたらす。増加したレベルのStat3リン酸化が、様々な癌及び薬剤耐性癌で検出され、癌生存の増強をもたらす。いかなる特定の理論又は作用機序に束縛されることなく、Stat3活性の阻害は、副作用としてStat3を上方制御するそのようなPK阻害薬と相乗作用し得、そのような薬物に対する獲得耐性を防止し得、薬物耐性癌に有効であり得ることが企図される。さらに、Stat3は、癌で活性化される場合が多く、癌免疫抑制微小環境の実現及び維持に直接関与し、腫瘍免疫回避において中心的な役割を果たしている。いかなる特定の理論又は作用機序に束縛されることなく、Stat3リン酸化の阻害は、局所免疫系から腫瘍を暴露し、それらを免疫療法、例えば、PDL、PD1、CTLA4に対する抗体又は任意の他の免疫療法剤に対して感作させることが企図される。
【0178】
化学的定義:
「アルキル」基は、直鎖及び分枝鎖のアルキル基を含む任意の飽和脂肪族炭化水素を指す。一実施形態において、アルキル基は、C1~C12-アルキルとして本明細書で指定する1~12個の炭素を有する。別の実施形態において、アルキル基は、C1~C6-アルキルとして本明細書で指定する1~6個の炭素を有する。別の実施形態において、アルキル基は、C1~C4-アルキルとして本明細書で指定する1~4個の炭素有する。アルキル基は、非置換であり得るか、又はハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシカルボニル、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシル、チオ及びチオアルキルから選択される1個以上の基によって置換され得る。
【0179】
「アルケニル」基は、直鎖、分岐鎖及び環状のアルケニル基を含む少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する脂肪族炭化水素基を指す。一実施形態において、アルケニル基は、C2~C8-アルケニルとして本明細書で指定する2~8個の炭素原子を有する。別の実施形態において、アルケニル基は、鎖の中にC2~C6-アルケニルとして本明細書で指定する2~6個の炭素原子を有する。例示的なアルケニル基としては、エテニル、プロペニル、n-ブテニル、i-ブテニル、3-メチルブタ-2-エニル、n-ペンテニル、ヘプテニル、オクテニル、シクロヘキシル-ブテニル及びデセニルが挙げられる。アルケニル基は、非置換であるか、又は利用可能な炭素原子を介して、アルキルについて上記で定義した1個以上の基で置換することができる。
【0180】
「アルキニル」基は、直鎖及び分枝鎖を含む少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有する脂肪族炭化水素基を指す。一実施形態において、アルキニル基は、鎖の中にC2~C8-アルキニルとして本明細書で指定する2~8個の炭素原子を有する。別の実施形態において、アルキニル基は、鎖の中にC2~C6-アルキニルとして本明細書で指定する2~6個の炭素原子を有する。例示的なアルキニル基としては、エチニル、プロピニル、n-ブチニル、2-ブチニル、3-メチルブチニル、n-ペンチニル、ヘプチニル、オクチニル及びデシニルが挙げられる。アルキニル基は、非置換であるか、又は利用可能な炭素原子を介して、アルキルについて上記で定義した1個以上の基で置換することができる。
【0181】
本明細書において単独で又は別の基の一部として使用する「C3~C7シクロアルキル」という用語は、任意の飽和若しくは不飽和の(例えば、シクロアルケニル、シクロアルキニル)単環式又は多環式基を指す。シクロアルキル基の非限定的な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルである。シクロアルケニル基の非限定的な例としては、シクロペンテニル、及びシクロヘキセニルなどが挙げられる。シクロアルキル基は、非置換であるか、又はアルキルについて上記で定義した置換基の任意の1以上で置換することができる。同様に、「シクロアルキレン」という用語は、シクロアルキル基が2つの位置で結合され、2個の別々の追加の基を互いに連結している、上記で定義した二価のシクロアルキルを意味する。
【0182】
本明細書において単独で又は別の基の一部として使用する「アリール」という用語は、6~14個の環炭素原子を含む芳香族環系を指す。アリール環は、単環式、二環式、及び三環式などであり得る。アリール基の非限定的な例としては、フェニル、並びに1-ナフチル及び2-ナフチルを含むナフチルなどである。アリール基は、非置換であるか、又は利用可能な炭素原子を介して、アルキルについて上記で定義した1個以上の基で置換することができる。
【0183】
本明細書において単独で又は別の基の一部として使用する「ヘテロアリール」という用語は、原子が窒素、硫黄及び酸素から選択される少なくとも1つのヘテロ原子環を含有する複素環式芳香族系を指す。ヘテロアリールは、5個以上の環原子を含有する。ヘテロアリール基は、単環式、二環式、及び三環式などであり得る。ベンゾ複素環もこの定義に含まれる。窒素が環原子である場合、本発明はまた、ヘテロアリールを含有する窒素のN-オキシドを企図する。ヘテロアリールの非限定的な例としては、チエニル、ベンゾチエニル、1-ナフトチエニル、チアントレニル、フリル、ベンゾフリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、プリニル、イソキノリル、キノリル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルボリニル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、及びイソオキサゾリルなどが挙げられる。ヘテロアリール基は、非置換であるか、又は利用可能な原子を介して、アルキルについて上記で定義した1個以上の基で置換することができる。
【0184】
本明細書において単独で若しくは別の基の一部として使用する「複素環」又は「ヘテロシクリル」という用語は、単独で又は硫黄若しくは酸素環原子と連結した、酸素、硫黄及び/又は窒素など、特に窒素の1~4個のヘテロ原子を有する5員環~8員環を指す。これらの5員環~8員環は、飽和、完全不飽和又は部分的に不飽和であり得、完全飽和環が好ましい。好ましい複素環には、ピペリジニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラニル、チオピラニル、ピペラジニル、インドリニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオフェニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、及びジヒドロチアゾリルなどが含まれる。ヘテロシクリル基は、非置換であるか、又は利用可能な原子を介して、アルキルについて上記で定義した1個以上の基で置換することができる。
【0185】
本明細書で使用する「アシル」という用語は、限定されないが、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ペンタノイル、ピバロイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、及びベンゾイルなどの基を包含する。現在好ましいアシル基は、アセチル及びベンゾイルである。
【0186】
「ヒドロキシ」基は、OH基を指す。「アルコキシ」基は、上記で定義した通りの、Rがアルキルである-O-アルキル基を指す。
【0187】
「チオ」基は-SH基を指す。「アルキルチオ」基は、上記で定義した通りの、Rがアルキルである-SR基を指す。
【0188】
「アミノ」基は、NH2基を指す。アルキルアミノ基は、上記で定義した通りの、Rがアルキルである-NHR基を指す。ジアルキルアミノ基は、上記で定義通りの、R及びR’がアルキルである-NRR’基を指す。
【0189】
「アミド」基は、-C(O)NH2基を指す。アルキルアミド基は、上記で定義した通りの、Rがアルキルである-C(O)NHR基を指す。ジアルキルアミド基は、上記で定義した通りの、R及びR’がアルキルである-C(O)NRR’基を指す。
【0190】
「チオアミド」基は、Rがアルキル、アリール、アルキルアリール又はHのいずれかである-C(S)NHR基を指す。
【0191】
「ポリオキシアルキレン」基は、(CH2CH2O)nH基(式中、n=1~20)を指す。現在好ましいポリオキシアルキレン基は、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリプロピレングリコールである。
【0192】
本明細書において単独で又は別の基の一部として使用する「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、塩素、臭素、フッ素、及びヨウ素を指す。「ハロアルキル」という用語は、限定されないが、トリクロロメチル、トリブロモメチル、トリフルオロメチル、トリヨードメチル、ジフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、1,1-ジフルオロエチルブロモメチル、クロロメチル、フルオロメチル、及びヨードメチルなどを含むハロゲン基などによって独立に置換された水素原子の一部又は全部を有するアルキル基を指す。
【0193】
加水分解の際にヒドロキシルを生じる官能基の例としては、エステル、無水物、カルバメート、及びカルボネートなどが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、R1、R2、R5又はR6のいずれかがアシル基(COR)である場合は、生じる官能基は、エステル(OCOR)である。R1、R2、R5又はR6のいずれかがアミド基(CONHR)である場合、生じる官能基は、カルバメート(OCONHR)である。R1、R2、R5又はR6のいずれかがカルボキシレート基(COOR)である場合は、生じる官能基は、カーボネート(OCOOR)である。
【0194】
本明細書に開示される化合物のプロドラッグは本発明の範囲内である。「プロドラッグ」という用語は、例えば、血液中での加水分解によって、式Iによって表される化合物のいずれかにインビボで急速に変換される化合物を表す。このように、「プロドラッグ」という用語は、薬学的に許容される本発明の化合物のいずれかの前駆体を指す。プロドラッグは、対象に投与された場合に不活性であってよいが、活性化合物にインビボで変換される。プロドラッグの使用は、化合物の投与を容易にするのに特に有利である。プロドラッグ化合物は、哺乳類生物における溶解性、組織適合性又は遅延放出の利点を提供する場合が多い。例えば、該プロドラッグは、本発明の原理によれば、式I(式中、R1、R2、R5及びR6は、上記で定義した通りの、加水分解の際にヒドロキシルを生じる官能基である)の構造によって表される化合物であり得る。
【0195】
上記化合物の全ての立体異性体は、混合物又は純粋若しくは実質的に純粋な形態のいずれかであることが企図される。該化合物は、原子のいずれかに不斉中心を有することができる。結果的に、該化合物は、鏡像異性体若しくはジアステレオマーの形態で、又はそれらの混合物で存在することができる。本発明は、任意のラセミ体(すなわち、各鏡像異性体を等量含有する混合物)、鏡像異性的に富む混合物(すなわち、1つの鏡像異性体に富む混合物)、純粋な鏡像異性体若しくはジアステレオマー、又はそれらの任意の混合物の使用を企図する。キラル中心は、R又はS又はR,S又はd,D、l,L又はd,l、D,Lとして指定することができる。アミノ酸残基を含む化合物は、D-アミノ酸、L-アミノ酸、又はアミノ酸のラセミ誘導体の残基を含む。糖残基を含む化合物は、D-糖、L-糖、又は糖のラセミ誘導体の残基を含む。自然界に現れるD-糖の残基が好ましい。加えて、本発明の化合物のいくつかは、1個以上の二重結合を含有する。本発明は、各発生時に、独立して、シス、トランス、E及びZ異性体を含む全ての構造異性体及び幾何異性体を包含することを意図する。
【0196】
本発明の化合物のうちの1以上は、塩として存在してもよい。「塩」という用語は、カルボン酸塩又はアミン窒素との塩を含むが、これらに限定されない塩基付加塩と酸付加塩の両方を包含し、以下に説明する有機及び無機アニオン並びに有機及び無機カチオンと形成される塩を含む。さらに、この用語は、塩基性基(アミノ基など)と有機酸又は無機酸との標準的な酸-塩基反応によって形成される塩を含む。このような酸は、塩酸、フッ化水素酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、リン酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、パルミチン酸、コール酸、パモ酸、粘液酸、D-グルタミン酸、D-ショウノウ酸、グルタル酸、フタル酸、酒石酸、ラウリン酸、ステアリン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ソルビン酸、ピクリン酸、安息香酸、及び桂皮酸などを含む。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0197】
「有機又は無機のカチオン」という用語は、塩のアニオンの対イオンを指す。対イオンには、アルカリ金属及びアルカリ土類金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、バリウム、アルミニウム及びカルシウムなど)、アンモニウム及びモノアルキルアミン、ジアルキルアミン及びトリメチルアミンなどのトリアルキルアミン、シクロヘキシルアミン;及びジベンジルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、2-ヒドロキシエチルアンモニウム、ビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、フェニルエチルベンジルアンモニウム、及びジベンジルエチレンジアンモニウムなどのカチオンなどの有機カチオンが含まれるが、これらに限定されない。例えば、参照により本明細書に組み込まれるBergeら、J.Pharm.Sci.(1977),66:1-19を参照されたい。
【0198】
本発明はまた、本発明の化合物及びその塩の溶媒和物を含む。「溶媒和物」は、1以上の溶媒分子と本発明の化合物の物理的会合を意味する。この物理的会合は、水素結合を含む様々な程度のイオン結合及び共有結合を伴う。特定の例において、溶媒和物は単離することが可能である。「溶媒和物」は、溶液相及び単離可能な溶媒和物の両方を包含する。適切な溶媒和物の非限定的な例としては、エタノレート、及びメタノレートなどが挙げられる。「水和物」は、溶媒分子が水である溶媒和物である。
【0199】
本発明はまた、本発明の化合物及びその塩の多形体を含む。「多形体」という用語は、X線回折、IR若しくはラマンスペクトル、及び融点などの特定の物理的特性によって特徴づけることができる物質の特定の結晶又は非晶質の状態を指す。
【0200】
IRS/Stat3の二重修飾因子とEGFR阻害剤/抗体の組み合わせ
一実施形態において、本発明は、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤及び/又はEGFR抗体に対する耐性を発現した腫瘍を治療する方法であって、式(I)、(II)、(III)、(IV)のいずれかの化合物、又はそのような式に含まれる個々の化合物のいずれかと組み合わせたEGFR阻害剤及び/又はEGFR抗体と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法に関する。
【0201】
別の実施形態において、本発明は、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤及び/又はEGFR抗体に対する腫瘍の獲得耐性を防止する方法であって、式(I)、(II)、(III)、(IV)のいずれかの化合物、又はそのような式に含まれる個々の化合物のいずれかと組み合わせたEGFR阻害剤及び/又はEGFR抗体と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法に関する。
【0202】
別の実施形態において、本発明は、上皮成長因子(EGFR)阻害剤及び/又はEGFR抗体と組み合わせた式(I)、(II)、(III)、(IV)のいずれかの構造によって表される化合物、又はそのような式に含まれる個々の化合物のいずれかを含む医薬品の組み合わせに関する。
【0203】
他の実施形態において、本発明は、さらに、EGFR阻害剤及び/又はEGFR抗体に対して耐性である腫瘍の治療に使用するため、又はEGFR阻害剤及び/又はEGFR抗体に対する獲得耐性を防止するための上記組み合わせに関する。
【0204】
他の実施形態において、本発明は、さらに、EGFR阻害剤及び/又はEGFR抗体に耐性である腫瘍の治療のための、又はEGFR阻害剤及び/又はEGFR抗体に対する獲得耐性を防止するための医薬の調製のための上記組み合わせの使用に関する。
【0205】
いくつかの実施形態において、該腫瘍は、EGFR阻害剤及び/又はEGFR抗体治療に対する耐性を獲得した腫瘍を有する癌患者に存在する。他の実施形態において、該治療は、耐性腫瘍の成長の減弱又は退縮をもたらす。他の実施形態において、該腫瘍は、EGFR阻害剤及び/又はEGFR抗体による治療を受けている、又はそのような治療を受ける候補である癌患者に存在する。
【0206】
当業者に公知の任意のEGFR阻害剤又は抗体は、本発明の組み合わせで使用してよい。いくつかの実施形態において、該EGFR阻害剤は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、ネラチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ダコミチニブ、ポジオチニブ、AZD9291、CO-1686、HM61713及びAP26113からなる群から選択される。現在好ましい一実施形態において、該EGFR阻害剤はエルロチニブである。具体的な一実施形態において、該化合物は、式Dの構造によって表され、該EGFR阻害剤はエルロチニブである。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0207】
いくつかの実施形態において、該EGFR抗体は、トラスツズマブ、ネシツムマブ、セツキシマブ及びパニツムマブからなる群から選択される。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0208】
一実施形態において、該化合物は式Aの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Bの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Cの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Dの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Eの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Fの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Gの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Hの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Iの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Jの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式IV-4の化合物である。現在好ましい一実施形態において、該化合物は式Dの構造によって表される。しかしながら、本明細書に記載の化合物のいずれかが、本発明の組み合わせにおいて使用され得ることは当業者に明らかである。
【0209】
IRS/Stat3二重修飾因子とmTOR阻害剤の組み合わせ
本発明のさらなる態様において、本明細書に記載の式(I)、(II)、(III)、(IV)のいずれか、又はそのような式に含まれる個々の化合物のいずれかのIRS/Stat3二重修飾因子と、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の阻害剤の組み合わせが、各薬剤単独の治療効果と比較して少なくとも相加的で、好ましくは、相乗的な治療効果を提供することが今、予想外に見出された。さらに、該組み合わせを用いて、mTOR阻害剤に対する耐性を発現している腫瘍を治療し、かつ/又はmTOR阻害剤に対する腫瘍の獲得耐性を防止することができる。
【0210】
したがって、一実施形態において、本発明は、式(I)、(II)、(III)、(IV)のいずれかの構造によって表される化合物、又はそのような式に含まれる個々の化合物のいずれかと、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の少なくとも1種類の阻害剤を含む医薬品の組み合わせであって、該化合物及び少なくとも1種類のmTOR阻害剤が共に、相乗的な抗癌治療効果を提供する医薬品の組み合わせに関する。
【0211】
別の実施形態において、本発明は、癌を治療する方法であって、式(I)、(II)、(III)、(IV)のいずれかの構造によって表される化合物と、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の少なくとも1種類の阻害剤を含む治療有効量の医薬品の組み合わせを、それを必要とする対象に投与する工程を含み、該化合物及び少なくとも1種類のmTOR阻害剤が共に、相乗的な治療効果を提供する方法に関する。
【0212】
別の実施形態において、本発明は、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の阻害剤に対する耐性を発現した腫瘍を治療する方法であって、式(I)、(II)、(III)、(IV)のいずれかの化合物、又はそのような式に含まれる個々の化合物のいずれかと組み合わせたmTOR阻害剤と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法に関する。
【0213】
別の実施形態において、本発明は、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の阻害剤に対する腫瘍の獲得耐性を防止する方法であって、式(I)、(II)、(III)、(IV)のいずれかの化合物、又はそのような式に含まれる個々の化合物のいずれかと組み合わせたmTOR阻害剤と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法に関する。
【0214】
他の実施形態において、本発明は、さらに、mTOR阻害剤に対して耐性である腫瘍の治療に使用するため、又はmTOR阻害剤に対する獲得耐性を防止するための上記組み合わせに関する。
【0215】
他の実施形態において、本発明は、さらに、mTOR阻害剤に耐性である腫瘍の治療のため、又はmTOR阻害剤に対する獲得耐性を防止するための医薬の調製のための上記組み合わせの使用に関する。
【0216】
他の実施形態において、本発明は、さらに、mTOR阻害剤に耐性である腫瘍の治療に使用するため、又はmTOR阻害剤に対する獲得耐性を防止するための上記組み合わせに関する。
【0217】
いくつかの実施形態において、該腫瘍は、mTOR阻害剤治療に対する耐性を獲得した腫瘍を有する癌患者に存在する。他の実施形態において、該治療は、耐性腫瘍の成長の減弱又は退縮をもたらす。他の実施形態において、該腫瘍は、mTOR阻害剤による治療を受けている、又はそのような治療を受ける候補である癌患者に存在する。
【0218】
当業者に公知の任意のmTOR阻害剤を、本発明の組み合わせで使用してよい。いくつかの実施形態において、該mTOR阻害剤は、ラパマイシン(シロリムス);リダフォロリムス(デフォロリムス、AP23573、MK-8669);NVP-BEZ235(2-メチル-2-{4-[3-メチル-2-オキソ-8-(キノリン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]フェニル}プロパンニトリル);エベロリムス(アフィニトール、RAD-001、シロリムスの40-O-(2-ヒドロキシエチル)誘導体);及びテムシロリムス(CCI-779)からなる群から選択される第1世代の阻害剤である。現在好ましい実施形態において、該mTOR阻害剤は、エベロリムスである。
【0219】
他の実施形態において、該mTOR阻害剤は、OSI-027(トランス-4-[4-アミノ-5-(7-メトキシ-1H-インドール-2-イル)イミダゾ[5,1-f[1,2,4]トリアジン-7-イル]シクロヘキサンカルボン酸);XL765(SAR245409);INK128(3-(2-アミノ-5-ベンゾオキサゾリル)-1-(1-メチルエチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン);MLN0128、AZD2014(3-(2,4-ビス((S)-3-メチルモルホリノ)ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-イル)-N-メチルベンズアミド);DS-3078a及びパロミド529(3-(4-メトキシベンジルオキシ)-8-(1-ヒドロキシエチル)-2-メトキシ-6H-ベンゾ[c]クロメン-6-オン)などの第2世代の化合物(mTORC1及びmTORC2の阻害剤)である。
【0220】
具体的な一実施形態において、該化合物は、式Dの構造によって表され、該mTOR阻害剤は、エベロリムス(アフィニトール)である。
【0221】
一実施形態において、該化合物は式Aの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Bの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Cの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Dの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Eの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Fの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Gの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Hの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Iの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Jの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式IV-4の化合物である。現在好ましい一実施形態において、該化合物は式Dの構造によって表される。しかしながら、本明細書に記載の化合物のいずれかが、本発明の組み合わせで使用され得ることは当業者に明らかである。
【0222】
IRS/Stat3二重修飾因子と免疫療法剤の組み合わせ
一実施形態において、本発明は、免疫療法に対して腫瘍を感作させる方法であって、免疫療法剤と組み合わせた式(I)、(II)、(III)、(IV)のいずれかの化合物、又はそのような式に含まれる個々の化合物のいずれかと該腫瘍とを接触させる工程を含む方法に関する。
【0223】
別の実施形態において、本発明は、免疫療法剤と組み合わせた式(I)、(II)、(III)、(IV)のいずれかの構造によって表される化合物、又はそのような式に含まれる個々の化合物のいずれかを含む医薬品の組み合わせに関する。
【0224】
他の実施形態において、本発明は、さらに、免疫療法に対して腫瘍を感作させることによる腫瘍の治療に使用するための上記組み合わせに関する。
【0225】
他の実施形態において、本発明は、さらに、免疫療法に対して腫瘍を感作させることによる腫瘍の治療のための医薬の調製のための上記組み合わせの使用に関する。
【0226】
いくつかの実施形態において、該腫瘍は免疫療法を受けているか、又は免疫療法を受ける候補である癌患者に存在する。
【0227】
当業者に公知の任意の免疫療法剤は、本発明の組み合わせで使用することができる。いくつかの実施形態において、該免疫療法剤は、PDL、PD1、CTLA4、CD20、CD30、CD33、CD52、VEGF、CD30、EGFR及びErbB2からなる群から選択される標的に対する抗体である。いくつかの実施形態において、該抗体は、アレムツズマブ(Campath(登録商標))、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、ブレンツキシマブベドチン(Adcetris(登録商標))、セツキシマブ(Erbitux(登録商標))、ゲムツズマブオゾガマイシン(Mylotarg(登録商標))、イブリツモマブチウキセタン(Zevalin(登録商標))、イピリムマブ(Yervoy(登録商標))、オファツムマブ(Arzerra(登録商標))、パニツムマブ(Vectibix(登録商標))、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))、トシツモマブ(Bexxar(登録商標))及びトラツズマブ(Herceptin(登録商標))からなる群から選択される。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0228】
一実施形態において、該化合物は式Aの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Bの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Cの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Dの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Eの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Fの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Gaの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Hの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Iの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Jの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式IV-4の化合物である。現在好ましい一実施形態において、該化合物は式Dの構造によって表される。しかしながら、本明細書に記載の化合物のいずれかが、本発明の組み合わせにおいて使用され得ることは当業者に明らかである。
【0229】
IRS/Stat3二重修飾因子とマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MEK)阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤の組み合わせ
他の態様において、本明細書に記載のインスリン受容体基質(IRS)及びシグナル伝達性転写因子3(Stat3)の二重修飾因子と、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MEK)の阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤の組み合わせが、各薬剤単独の治療効果と比較して少なくとも相加的で、好ましくは、相乗的な治療効果を提供することが今、予想外に見出された。さらに、該組み合わせを用いて、MEK阻害剤及び/若しくは変異型B-Raf阻害剤に対する耐性を発現している腫瘍を治療し、かつ/又はMEK阻害剤及び/若しくは変異型B-Raf阻害剤に対する腫瘍の獲得耐性を防止し、かつ/又はMEK阻害剤及び/若しくは変異型B-Raf阻害剤による治療の中止後の腫瘍再発を防止するか若しくは遅延させることができる。
【0230】
このように、いくつか実施形態において、本発明は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MEK)阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤に対する耐性を発現している腫瘍を治療する方法であって、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と組み合わせたMEK阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法に関する。
【0231】
他の実施形態において、本発明は、MEK阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤に対する腫瘍の獲得耐性を防止する方法であって、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と組み合わせたMEK阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法に関する。
【0232】
他の実施形態において、本発明は、MEK阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤による治療の中止後の腫瘍再発を防止するか又は遅延させる方法であって、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と組み合わせたMEK阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法に関する。
【0233】
他の実施形態において、本発明は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MEK)阻害剤、及び必要に応じて、変異型B-Raf阻害剤と組み合わせた式(III)の構造によって表される化合物を含む医薬品の組み合わせに関する。いくつかの実施形態において、該組み合わせは、式(III)の化合物、MEK阻害剤及び変異型B-Raf阻害剤を含み、好ましくは、該MEK阻害剤がトラメチニブであり、及び該変異型B-Raf阻害剤はベムラフェニブである。
【0234】
他の実施形態において、本発明は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MEK)阻害剤、及び/又は変異型B-Raf阻害剤と組み合わせた式(IV)の構造によって表される化合物に関する。
【0235】
いくつかの実施形態において、該腫瘍は、MEK阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤治療に対する耐性を獲得した腫瘍を有する癌患者に存在する。他の実施形態において、該治療は、耐性腫瘍の成長の減弱又は退縮をもたらす。他の実施形態において、該腫瘍は、MEK阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤による治療を受けている、又はそのような治療を受ける候補である癌患者に存在する。
【0236】
当業者に公知の任意のMEK阻害剤を、本発明の組み合わせで使用してよい。いくつかの実施形態において、該MEK阻害剤は、トラメチニブ(GSK1120212)、セルメチニブ、ビニメチニブ(MEK162)、PD-325901、コビメチニブ、CI-1040及びPD035901からなる群から選択され、好ましくは、該MEK阻害剤がトラメチンである。
【0237】
当業者に公知の任意の変異型B-Raf阻害剤を、本発明の組み合わせで使用してよい。いくつかの実施形態において、該変異型B-Raf阻害剤は、ベムラフェニブ(PLX-4032)、PLX4720、ソラフェニブ(BAY43-9006)、及びダブラフェニブからなる群から選択され、好ましくは、該変異型B-Raf阻害剤はベムラフェニブである。
【0238】
一実施形態において、該化合物は、式(III)の構造によって表される。別の実施形態において、該化合物は、式(IV)の構造によって表される。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0239】
いくつかの実施形態において、該化合物は、式Dの構造によって表され、該MEK阻害剤はトラメチニブである。
【0240】
他の実施形態において、該化合物は、式Dの構造によって表され、該変異型B-Raf阻害剤はベムラフェニブである。
【0241】
いくつかの実施形態において、該併用治療は、式(III)又は(IV)の化合物、及びMEK阻害剤又は変異型B-Raf阻害剤のいずれかを含む。他の実施形態において、該併用治療は、式(III)又は(IV)の化合物、及びMEK阻害剤と変異型B-Raf阻害剤の両方を含む。
【0242】
いくつかの実施形態において、本発明は、トラメチニブと組み合わせた式Dの構造によって表される化合物を含む医薬品の組み合わせに関する。
【0243】
他の実施形態において、本発明は、トラメチニブ及びベムラフェニブと組み合わせた式Dの構造によって表される化合物を含む医薬品の組み合わせに関する。
【0244】
他の実施形態において、本発明は、MEK阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤に対して耐性である腫瘍の治療に使用するため、又はMEK阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤に対する獲得耐性を防止するための上記組み合わせに関する。
【0245】
他の実施形態において、本発明は、MEK阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤に対して耐性である腫瘍の治療のため、又はMEK阻害剤及び/又は変異型B-Raf阻害剤に対する獲得耐性を防止するための医薬の調製のための上記組み合わせの使用に関する。
【0246】
一実施形態において、該化合物は式Aの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Bの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Cの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Dの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Eの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Fの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Gaの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Hの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Iの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Jの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式IV-4の化合物である。現在好ましい一実施形態において、該化合物は式Dの構造によって表される。しかしながら、本明細書に記載の化合物のいずれかが、本発明の組み合わせにおいて使用され得ることは当業者に明らかである。
【0247】
IRS/Stat3二重修飾因子と化学療法剤の組み合わせ
他の態様において、本明細書に記載のインスリン受容体基質(IRS)及びシグナル伝達性転写因子3(STAT3)の二重修飾因子と、ゲムシタビン、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチン、及びそれらの任意の組み合わせなどの化学療法剤(例えば、併用治療のフォルフィリ又はフォルフォックス)の組み合わせが、各薬剤単独の治療効果と比較して少なくとも相加的で、好ましくは、相乗的な治療効果を提供することが今、予想外に見出された。さらに、該組み合わせを用いて、これらの化学療法剤のいずれか若しくはそれらの組み合わせに対する耐性を発現した腫瘍を治療し、かつ/又はこれらの化学療法剤のいずれか若しくはそれらの組み合わせに対する腫瘍の獲得耐性を防止し、かつ/又はこれらの化学療法剤のいずれか若しくはそれらの組み合わせによる治療の中止後の腫瘍再発を防止するか若しくは遅延させることができる。
【0248】
フォルフィリは、ロイコボリン(フォリン酸)、5-FU及びイリノテカンを含有する癌の併用治療である。フォルフォックスは、ロイコボリンカルシウム(フォリン酸)、5-FU及びオキサリプラチンを含有する癌の併用治療である。
【0249】
このように、いくつかの実施形態によれば、本発明は、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と、ゲムシタビン、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチン及びそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1種類の化学療法剤を含む医薬品の組み合わせであって、該化合物及び該化学療法剤(複数可)が共に、相乗的な抗癌治療効果を与える医薬品の組み合わせに関する。
【0250】
いくつかの実施形態において、本発明は、癌を治療する方法であって、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物並びにゲムシタビン、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチン、及びそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1種類の化学療法剤を含む治療有効量の組み合わせを、それを必要とする対象に投与する工程を含み、該化合物及び該化学療法剤(複数可)が、共に、相乗的な抗癌治療効果を提供する方法に関する。
【0251】
他の実施形態において、本発明は、少なくとも1種類の化学療法剤、例えば、ゲムシタビン、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチン、及びそれらの任意の組み合わせに対する耐性を発現した腫瘍を治療する方法であって、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と組み合わせた前記化学療法剤(複数可)のうちの少なくとも1種類と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法を提供する。
【0252】
他の実施形態において、本発明は、少なくとも1種類の化学療法剤、例えば、ゲムシタビン、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチン、及びそれらの任意の組み合わせに対する腫瘍の獲得耐性を防止する方法であって、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と組み合わせた前記化学療法剤(複数可)のうちの少なくとも1種類と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法を提供する。
【0253】
他の実施形態において、本発明は、少なくとも1種類の化学療法剤、例えば、ゲムシタビン、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチン、及びそれらの任意の組み合わせによる治療の中止後の腫瘍再発を防止するか又は遅延させる方法であって、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物と組み合わせた前記化学療法剤(複数可)のうちの少なくとも1種類と該腫瘍とを接触させる工程を含む方法を提供する。
【0254】
いくつかの実施形態において、該腫瘍は、前記化学療法剤(複数可)に対する耐性を獲得した腫瘍を有する癌患者に存在する。他の実施形態において、該治療は、耐性腫瘍の成長の減弱又は退縮をもたらす。他の実施形態において、該腫瘍は、前記化学療法剤(複数可)による治療を受けているか、又はそのような治療を受ける候補である癌患者に存在する。
【0255】
他の実施形態において、本発明は、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物並びに少なくとも1種類の化学療法剤、例えば、ゲムシタビン、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチン及びそれらの任意の組み合わせを含む医薬品の組み合わせであって、前記化学療法剤(複数可)に耐性である腫瘍の治療に使用するため、又は前記化学療法剤(複数可)に対する獲得耐性を防止するため、又はそのような化学療法剤(複数可)による治療の中止後の腫瘍再発を遅延させるための医薬品の組み合わせを提供する。
【0256】
他の実施形態において、本発明は、式(III)又は(IV)の構造によって表される化合物並びに少なくとも1種類の化学療法剤、例えば、ゲムシタビン、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチン及びそれらの任意の組み合わせを含む医薬品の組み合わせの使用であって、前記化学療法剤(複数可)に耐性である腫瘍の治療用の医薬の調製のため、又は前記化学療法剤(複数可)に対する獲得耐性を防止するため、又はそのような化学療法剤(複数可)による治療の中止後の腫瘍再発を防止若しくは遅延させるための医薬品の組み合わせの使用に関する。
【0257】
上記の非限定的な例に関連する他の化学療法剤は、本発明の組み合わせで使用することができることは当業者には明らかである。例えば、本発明は、他の白金化合物(例えば、カルボプラチン及びシスプラチン)、SN-38(イリノテカンの代謝物)及び他のフルオロピリミジン(5-FUのアナログ)の使用を企図する。
【0258】
一実施形態において、該化合物は式Aの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Bの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Cの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Dの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Eの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Fの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Gaの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Hの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Iの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式Jの化合物である。別の実施形態において、該化合物は式IV-4の化合物である。現在好ましい一実施形態において、該化合物は式Dの構造によって表される。しかしながら、本明細書に記載の化合物のいずれかが、本発明の組み合わせにおいて使用され得ることは当業者に明らかである。
【0259】
癌の治療
本明細書で使用する「癌」という用語は、細胞の集団が、様々な程度で、通常、増殖及び分化を支配する制御機構に反応しなくなった障害を指す。癌は、様々な種類の悪性新生物及び原発腫瘍を含む腫瘍、並びに腫瘍転移を指す。本発明の組み合わせにより治療することができる癌の非限定的な例としては、脳、卵巣、結腸、前立腺、腎臓、膀胱、乳房、肺、口腔、及び皮膚の癌である。癌の具体例としては、癌腫、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫及び混合型腫瘍である。腫瘍の特定のカテゴリには、リンパ増殖性障害、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頸癌、子宮体癌、骨癌、肝臓癌、胃癌、結腸癌、膵臓癌、甲状腺癌、頭頸部癌、中枢神経系の癌、末梢神経系の癌、皮膚癌、腎臓癌、及び上記の全ての転移が含まれる。特定の種類の腫瘍には、肝細胞癌、ヘパトーマ、肝芽腫、横紋筋肉腫、食道癌、甲状腺癌、神経節芽腫(ganglioblastoma)、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋皮肉腫(rhabdotheliosarcoma)、浸潤性腺管癌、乳頭状腺癌、黒色腫、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌(高分化、中分化、低分化又は未分化)、腎細胞癌、副腎腫、副腎腺癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、精巣腫瘍、小細胞、非小細胞及び大細胞肺癌を含む肺癌、膀胱癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、網膜芽腫、神経芽腫、結腸癌、直腸癌、急性骨髄性白血病、急性骨髄球性白血病、急性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、肥満細胞白血病、多発性骨髄腫、骨髄性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫を含む全ての種類の白血病及びリンパ腫を含む造血器悪性腫瘍、並びに肝癌が含まれる。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0260】
いくつかの代表的な実施形態において、該癌は、頭頸部(H&N)癌、肉腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、乳癌、腎臓癌、胃癌、造血癌、リンパ腫、リンパ芽球性白血病を含む白血病、肺癌、黒色腫、神経膠芽腫、肝癌、前立腺癌及び結腸癌からなる群から選択される。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0261】
本発明の文脈における「癌の治療」という用語には、以下:癌の増殖速度の減少(すなわち、癌はなお成長しているが、遅い速度である);癌成長の成長休止、すなわち、腫瘍成長の静止状態のうちの少なくとも1つを含み、好ましい場合において、該腫瘍はサイズが減少するか、又は低減される。この用語はまた、転移の数の減少、形成された新たな転移の数の減少、1つの段階から他の段階への癌の進行の遅延及び癌によって誘導される血管新生の減少を含む。最も好ましい例では、該腫瘍は完全に排除される。また、治療を受けている対象の生存期間の延長、疾患の進行時間の延長、及び腫瘍退縮などがこの用語に含まれる。「癌を治療する」という用語は、腫瘍形成、原発腫瘍、腫瘍成長又は腫瘍転移を含む悪性(癌)細胞増殖の阻害も指すことを理解されたい。癌細胞に関連して、「増殖の阻害」という用語は、さらに以下のこと:対照と比較した(壊死性、アポトーシスであり得る細胞死若しくは任意の他の種類の細胞死又はそれらの組み合わせによる)細胞の数の減少;細胞の増殖速度の低下、すなわち、細胞の総数は増加するが、対照における増加よりも低いレベル又は低い速度であり得ること;それらの総数が変更されなかったとしても、対照と比較して細胞の侵襲性が減少すること(例えば、軟寒天アッセイにより決定されるとおり);あまり分化していない細胞型からより分化した細胞型への進行;腫瘍性形質転換における減速;あるいは、1つの段階から次の段階への癌細胞の進行の遅延のうちの少なくとも1つの減少を指すことができる。
【0262】
本明細書で使用する場合、「投与」という用語は、本発明の組み合わせに接触させることを指す。投与は、細胞又は組織培養物、又は生物、例えば、ヒトに施すことができる。一実施形態において、本発明は、ヒト対象への本発明の組み合わせの投与を包含する。
【0263】
「治療的」治療は、病状の徴候を示す対象に、それらの兆候を減少させるか又は除去する目的のために施される治療である。「治療有効量」は、化合物又は組成物が投与される対象に有益な効果を提供するのに十分である化合物又は組成物の量である。
【0264】
本明細書で使用する「治療の中止後」という用語は、選択薬による治療が停止された後を意味する。例えば、本発明の特定の実施形態によれば、IRS/Stat3二重修飾因子(例えば、式(III)又は(IV)の化合物)は、所望の期間、本明細書に記載の併用治療のいずれかと一緒に(順次又は同時に)投与される。次いで、治療(全ての化合物による)が停止され、所望の期間、腫瘍が監視される。本明細書において企図されるように、本発明のIRS/Stat3二重修飾因子は、これらの薬物のいずれかが単独で投与された場合よりも大きな程度で、本明細書に記載の組み合わせ薬物のいずれかによる治療の中止後の腫瘍再発を防止するか又は遅延させることが可能である。
【0265】
特定の抗癌薬に対して「耐性を発現した腫瘍を治療する」という用語、又は特定の抗癌薬に対して「腫瘍の獲得耐性を防止する」という用語は、以下のこと:(i)腫瘍が、治療の結果としてその抗癌薬に対する耐性を獲得若しくは発現すること;(ii)腫瘍が、他の抗癌薬による治療の結果として耐性を獲得若しくは発現すること;又は(iii)腫瘍がその抗癌薬に対して一次耐性を有していることのいずれか1以上を意味する。
【0266】
併用治療は、2つの個々の治療に関連した差次的な毒性(differential toxicity)を考慮して治療上の利点を提供することができる。例えば、1つの化合物による治療は、他の化合物では見られない、又はその逆である特定の毒性をもたらすことができる。このように、この差次的な毒性は、組み合わせ剤の成分のそれぞれの毒性を回避しながら、併用療法が共に治療用量を提供するように、毒性が存在しないか、又は最小である用量で各治療が施されるのを可能にすることができる。さらに、併用治療の結果として達成される治療効果が増強されるか、又は相乗的である場合、すなわち、相加的治療効果よりも著しく良好である場合に、薬剤の各々の用量は、さらに低減することができ、ひいては、さらに大きな程度まで関連毒性を低下させることができる。
【0267】
「相乗的」、「協調的」及び「超相加的」という用語、及びそれらの様々な文法上の変形は、本明細書において互換的に使用される。薬物と一緒の存在下で観察される効果(例えば、細胞毒性)が、各薬物を別々に投与した時の個々の効果の合計よりも高い場合、IRS/Stat3二重修飾因子と別の抗癌剤(例えば、mTOR阻害剤、EGFR阻害剤、EGFR抗体及び/又は免疫療法剤)の間の相互作用は、相乗的、協調的又は超相加的であるとみなされる。一実施形態において、薬物の観察される併用効果は、個々の効果の合計よりも著しく高い。著しいという用語は、観察されるp値が0.05未満であることを意味する。併用治療の有効性を計算する非限定的な方法は、以下の式:Ebliss=EA+EB-EA×EB(式中、EA及びEBは、特定の濃度で、薬物A単独及び薬物B単独によって得られる阻害の割合である)を用いるブリス相加性モデル(Cardoneら、Science(1998),282:1318-1321)の使用を含む。実験的に測定された阻害の割合はEblissに等しい場合、該組み合わせは相加的な治療効果を提供する。実験的に測定された阻害の割合がEblissより大きい場合、該組み合わせは、相乗的治療効果を提供する。
【0268】
医薬組成物
本発明の組み合わせの成分は単独で投与することができるが、該成分は、さらに少なくとも1種類の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含有する医薬組成物で投与されることが企図される。成分の各々は、別々の医薬組成物で投与することができるか、又は該組み合わせは、1種類の医薬組成物で投与することができる。
【0269】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、経皮、非経口(皮下、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮及び筋肉内)、局所、鼻腔内、又は坐剤を介した投与を含む様々な経路による投与用に製剤化することができる。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。そのような組成物は、医薬分野において周知の方法で調製され、有効成分として、上述した本発明の少なくとも1種類の化合物及び薬学的に許容される賦形剤又は担体を含む。「薬学的に許容される」という用語は、連邦政府又は州政府の規制当局によって承認されているか、又は動物、より具体的にはヒトにおける使用のために米国薬局方若しくは他の一般に認められた薬局方に記載されていることを意味する。
【0270】
本発明による医薬組成物の調製中に、有効成分は、通常、固体、半固体、又は液体材料であり得る担体又は賦形剤と混合される。該組成物は、例えば、活性化合物を10重量%まで含有している錠剤、丸剤、カプセル剤、ペレット、顆粒、粉末、トローチ剤、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、分散液、乳剤、溶液、シロップ剤、エアロゾル(固体として又は液体媒体中の)、軟膏、軟及び硬ゼラチンカプセル、坐剤、無菌注射溶液、並びに無菌包装粉末の形態であり得る。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0271】
該担体は、従来使用されているもののいずれであり得、本発明の化合物との溶解性及び反応性の欠如などの化学物理的判断によって、並びに投与経路によってのみ制限される。担体の選択は、医薬組成物を投与するために使用される特定の方法により決定される。適切な担体のいくつかの例としては、ラクトース、グルコース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水及びメチルセルロースが挙げられる。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。該製剤はさらに、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱油などの潤滑剤;湿潤剤、界面活性剤、乳化剤及び懸濁剤;メチルヒドロキシベンゾエート及びプロピルヒドロキシベンゾエートなどの保存剤;甘味剤;香味剤、着色剤、緩衝化剤(例えば、酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩)、崩壊剤、湿潤剤、抗細菌剤、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム)、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸)、及び塩化ナトリウムなどの張度の調整のための薬剤を含むことができる。他の医薬担体は、水並びに落花生油、大豆油、鉱油、及びゴマ油などの石油、動物、植物又は合成起源のものを含む油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒など無菌の液体であり得る。該医薬組成物が静脈内投与される場合、水が好ましい担体である。生理食塩及び水性デキストロース並びにグリセロール溶液も、特に注射溶液用の液体担体として使用することができる。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0272】
錠剤などの固体組成物を調製するために、主要な有効成分(複数可)は、本発明の化合物の均質な混合物を含有する固体の予備製剤化組成物を形成するために、薬学的賦形剤と混合される。これらの予備製剤化組成物を均質と言及する場合、該組成物を錠剤、丸剤及びカプセル剤などの同等に有効な単位剤形に容易に細分することができるように、有効成分が該組成物全体に均一に分散されていることを意味する。この固体予備製剤は、その後、本発明の有効成分(複数可)を、例えば、約0.1mg~約2000mg、約0.1mg~約500mg、約1mg~約100mg、約100mg~約250mgなど含有する上記の種類の単位剤形に細分される。
【0273】
任意の方法が、該医薬組成物を調製するために使用することができる。固体剤形は、湿式造粒、乾式造粒、及び直接圧縮などによって調製することができる。本発明の固体剤形は、コーティングされるか、そうでなければ、長期的作用の利点を与える剤形を提供するように配合され得る。例えば、錠剤又は丸剤は、内部投薬成分及び外部投薬成分を含み、後者は前者を覆うエンベロープの形態であり得る。これらの2つの成分は、胃での崩壊に抵抗し、内部成分が十二指腸に無傷で通過するか、又は放出を遅延させるのを可能にするように機能する腸溶性層によって分離することができる。様々な材料を、そのような腸溶性層又はコーティング、幾種類かのポリマー酸、並びにセラック、セチルアルコール、及び酢酸セルロースなどの材料とポリマー酸の混合物を含むそのような材料のために使用することができる。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0274】
経口又は注射による投与のために、本発明の組成物が組み込まれ得る液体形態には、綿実油、ゴマ油、ココナッツ油、又は落花生油などの食用油、並びにエリキシル剤及び類似の医薬ビヒクルと共に、水溶液、適切な風味のシロップ、水性又は油性の懸濁液、及び風味エマルジョンが含まれる。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0275】
吸入又は絶縁(insulation)用の組成物には、薬学的に許容される水性若しくは有機溶媒中の溶液及び懸濁液、又はそれらの混合物、並びに粉末が含まれる。該液体又は固体組成物は、上記の適切な薬学的に許容される賦形剤を含有してよい。一実施形態において、該組成物は、局所若しくは全身の効果のために経口又は鼻呼吸の経路によって投与される。薬学的に許容される溶媒中の組成物は、不活性ガスの使用により噴霧されてよい。噴霧溶液は、噴霧装置から直接呼吸され得るか、又は噴霧装置をフェースマスクテント、若しくは間欠的陽圧呼吸器に取り付けてよい。溶液、懸濁液、又は粉末組成物は、適切な方法で製剤を送達するデバイスから、経口又は経鼻投与してよい。
【0276】
本発明の組成物及び方法に適する別の製剤は、経皮送達デバイス(「パッチ」)を用いる。そのような経皮パッチを用いて、制御された量で本発明の化合物の連続的又は非連続的注入を提供してよい。薬剤の送達のための経皮パッチの構築及び使用は、当技術分野で周知である。
【0277】
さらに別の実施形態において、該組成物は、局所投与のため、例えば、軟膏、ゲル、ドロップ又はクリームとして調製される。例えば、クリーム、ゲル、ドロップ、及び軟膏などを用いた体表面への局所投与のために、本発明の化合物は、医薬担体の有無にかかわらず生理学的に許容される希釈剤中で調製し、適用することができる。本発明は、癌、例えば、黒色腫を治療するために局所的又は経皮的に使用してよい。局所形態又はゲルベースの形態用のアジュバントは、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び木材ワックスアルコールを含んでよい。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0278】
代替的な製剤には、当技術分野で知られているように、鼻スプレー、リポソーム製剤、徐放製剤、体内に薬物を送達するポンプ(機械的又は浸透圧ポンプを含む)、及び制御放出製剤などを含む。
【0279】
該組成物は、好ましくは単位剤形で製剤化される。「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び他の哺乳類のための単位用量として適する物理的に別々の単位を指し、各単位は、適切な医薬賦形剤と共に、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性物質(複数可)を含有する。
【0280】
製剤を調製するには、他の成分と組み合わせる前に、適切な粒径を提供するために、有効成分を粉砕する必要があり得る。活性化合物が実質的に不溶性である場合は、通常、200メッシュ未満の粒径まで粉砕される。有効成分が実質的に水溶性である場合は、粒径は、通常、製剤中で実質的に均一な分布を提供するために、例えば、約40メッシュに粉砕することによって調整される。
【0281】
治療の必要な領域に局所的に本発明の医薬組成物を投与することが望ましい場合がある。これは、例えば、限定されないが、手術中の局所注入、手術の有無にかかわらず血管の供給を介した肝臓への注入、例えば、手術後の創傷包帯と併せた局所適用によって、注射によって、カテーテルによって、座薬によって、又は多孔性、非多孔性、若しくはゼラチン状の材料であるインプラントによって達成することができる。いくつかの実施形態によれば、投与は、腫瘍又は新生物又は前新生物組織の部位に、例えば、注射器を介した直接注射によるものであり得る。
【0282】
該化合物はまた、任意の好都合な経路によって、例えば、注入又はボーラス注射によって、上皮ライニング(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜など)を通しての吸収により投与してもよく、かつ他の治療活性剤と一緒に投与してよい。該投与は局所的であるか、又は全身的であってよい。加えて、脳室内及び髄腔内注射を含む任意の適切な経路によって中枢神経系に本発明の医薬組成物を導入することが望ましい場合がある。脳室内注射は、例えば、リザーバに取り付けられた脳室内カテーテルによって容易にすることができる。肺投与はまた、例えば、吸入器又は噴霧器の使用により、及びエアロゾル化剤と共に製剤化することにより使用することができる。
【0283】
本発明の化合物は、即時放出又は制御放出システムで送達することができる。一実施形態において、特定の臓器又は腫瘍に化学療法剤を送達するために使用されるものなどの輸液ポンプを用いて、本発明の化合物を投与してよい(Buchwaldら、1980,Surgery 88:507;Saudekら、1989,N.Engl.J.Med.321:574を参照されたい)。一実施形態において、本発明の化合物は、選択された部位で制御された期間にわたって化合物を放出する、生分解性、生体適合性ポリマーインプラントと組み合わせて投与される。高分子材料の例としては、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリエチレン酢酸ビニル、それらのコポリマー及びブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。さらに別の実施形態において、制御放出系は、治療標的の近傍に配置することができるので、全身用量の一部のみを必要とする。
【0284】
さらに、時には、該医薬組成物は、非経口投与(皮下、静脈内、動脈内、経皮、腹腔内又は筋肉内注射)用に製剤化されてよく、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び意図されたレシピエントの血液と該製剤を等張にさせる溶質を含有することができる水性及び非水性の等張無菌注射溶液、並びに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び保存剤を含む水性及び非水性の無菌懸濁液を含んでよい。石油、動物、植物、又は合成油などの油類、並びに脂肪アルカリ金属、アンモニウム、及びトリエタノールアミン塩、並びに適切な界面活性剤などの石鹸も、非経口投与のために使用することができる。上記製剤はまた、直接の腫瘍内注射のために使用することができる。さらに、注射部位の刺激を最小化又は取り除くために、該組成物は、1以上の非イオン性界面活性剤を含有してよい。適切な界面活性剤には、ソルビタンモノオレエートなどのポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びプロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合により形成される疎水性塩基とエチレンオキシドの高分子量付加物などが含まれる。
【0285】
非経口製剤は、アンプル及びバイアルなどの単位用量又は多用量の密封容器で提供することができ、使用直前に注射用の無菌液体担体、例えば、水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。即席の注射溶液及び懸濁液は、前述の、及び当技術分野で公知の種類の無菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製することができる。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0286】
あるいは、本発明の組み合わせは、白血球除去法及び他の関連する方法などの血液透析で使用することができ、例えば、血液は、カラム/中空糸膜、カートリッジなどを介した透析などの様々な方法によって患者から採取され、エクソビボで、IRS/Stat3二重修飾因子及び/又はさらなる抗癌剤で処理され、治療後に患者に戻される。このような治療方法は、当技術分野において周知であり、記載されている。例えば、Kolhoら(J.Med.Virol.1993,40(4):318-21);Tingら(Transplantation,1978,25(1):31-3)を参照されたく、これらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0287】
用量及び投与スケジュール
IRS/Stat3二重修飾因子及び他の抗癌剤(すなわち、EGFR阻害剤/EGFR抗体/mTOR阻害剤/免疫療法剤/MEK阻害剤/変異型B-Raf阻害剤/化学療法剤又はそれらの組み合わせ)による治療は、任意の順序で、同時に、又はそれらの組み合わせで順番に行うことができる。例えば、IRS/Stat3二重修飾因子の投与は、他の抗癌剤又はそれらの組み合わせの投与前に、投与後、又はそれと同時に行うことができる。例えば、全治療期間は、IRS/Stat3二重修飾因子について決定することができる。他の抗癌剤は、IRS/Stat3二重修飾因子による治療の開始前に又はIRS/Stat3二重修飾因子による治療後に投与することができる。加えて、他の抗癌剤は、IRS/Stat3二重修飾因子の投与期間中に投与することができるが、全治療期間にわたって行う必要はない。別の実施形態において、治療レジメンは、後に他の薬剤又は複数の薬剤の添加を伴う、IRS/Stat3二重修飾因子又はEGFR阻害剤/EGFR抗体/mTOR阻害剤/免疫療法剤/MEK阻害剤/変異型B-Raf阻害剤/化学療法剤又はそれらの組み合わせのいずれかの1つの薬剤による前治療を含む。交互の投与の順番も企図される。交互の投与は、例えば、IRS/Stat3二重修飾因子の後に他の抗癌剤、その後に、IRS/Stat3二重修飾因子などの交互の順番でのIRS/Stat3二重修飾因子及び他の抗癌剤の投与を含む。
【0288】
癌を含む特定の障害又は病状の治療に有効である化合物の量は、障害又は病状の性質に依存し、標準的な臨床技術によって決定することができる。加えて、インビトロアッセイは、必要に応じて、最適な用量範囲の特定を助けるために使用することができる。製剤に使用されるべき正確な用量はまた、投与の経路、及び疾患又は障害の進行に依存し、医師の判断及び各患者の状況にしたがって決定されるべきである。好ましい投与量は、0.01~1000mg/kg体重、0.1mg/kg~100mg/kg、1mg/kg~100mg/kg、10mg/kg~75mg/kg、0.1~1mg/kgなどの範囲内である。IRS/Stat3二重修飾因子、EGFR阻害剤/EGFR抗体/mTOR阻害剤/免疫療法剤/MEK阻害剤/変異型B-Raf阻害剤/化学療法剤の例示的(非限定的)な量は、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、75mg/kg及び100mg/kgを含む。あるいは、投与される量を測定し、投与される化合物のモル濃度として表すことができる。例として、限定されないが、IRS/Stat3二重修飾因子(例えば、式I、II、II、IVのいずれかの化合物)は、0.1~10mMの範囲、例えば、0.1、0.25、0.5、1及び2mMの範囲で投与することができる。あるいは、投与される量を測定し、mg/ml、μg/ml、又はng/mlとして表すことができる。例として、限定されないが、EGFR阻害剤/EGFR抗体/mTOR阻害剤/免疫療法剤/MEK阻害剤/変異型B-Raf阻害剤/化学療法剤は、1ng/ml~100mg/ml、例えば、1~1000ng/ml、1~100ng/ml、1~1000μg/ml、1~100μg/ml、1~1000mg/ml、1~100mg/mlなどの量で投与することができる。有効用量は、インビトロの若しくは動物モデルの試験バイオアッセイ又はシステムに由来する用量反応曲線から推定してよい。相乗効果が観察された場合、各成分の全体的な用量はより低くしてよく、そのため対象が経験する副作用はかなり低くなり得、それにもかかわらず、十分な抗癌効果は達成される。
【0289】
一実施形態において、該併用療法は、その成分の各々の量を2倍減少させる、すなわち、各成分が単剤療法と比較して、半分の用量で投与され、さらに同一又は類似の治療効果を達成する。別の実施形態において、該併用療法は、その成分の各々の量を5、10、20、50又は100倍減少させる。本明細書で実証されるように、様々な癌細胞における抗増殖剤としての化学療法剤のIC50は、単独で投与された場合に、該化学療法剤のIC50と比較して減少する。
【0290】
投与スケジュールは、治療される癌、重症度及び進行、患者集団、年齢、体重などのいくつかの要因に依存する。例えば、本発明の組成物は、1日1回、1日2回、1日3回、週1回又は月に1回取ることができる。加えて、投与は継続的、すなわち、毎日、又は間欠的であり得る。本明細書で使用する「間欠的」又は「間欠的で」という用語は、規則的又は不規則的な間隔のいずれかでの停止及び開始を意味する。例えば、間欠的投与は、週あたり1~6日の投与であり得るか、又はサイクル(例えば、連続した2~8週の間の毎日投与、次いで、最大1週間の投与なしの休止期間)での投与を意味してよく、又は交互の日での投与を意味してよい。組み合わせの異なる成分は、互いに独立して、異なる投与スケジュールに従うことができる。
【0291】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態をより完全に説明するために提示される。しかしながら、それらは、決して、本発明の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される原理の多くの変形及び修正を容易に考案することができる。
【0292】
実験の詳細セクション
実施例1:化合物Dでのエルロチニブに対する獲得耐性の防止
実験システム:頭頸部の扁平上皮細胞癌(SCCHN)腫瘍生検の患者由来の異種移植片(PDX)をNodScidマウスに皮下移植する。
I.動物及び生検
・生検:新鮮なヒト原発SCCHN腫瘍生検
腫瘍の種類:唾液腺粘膜表皮癌
ゲノム解析により、EGFRの増幅及び変異(活性化)が明らかになった。
・腫瘍生検移植片(P0)の移植:新鮮なヒト原発SCCHN腫瘍生検移植片を、順化の14日後に、5~6週齢の5匹の雌のNOD.CB17-Prkdcscid/J(NodScidマウス)(Harlan,IL)の皮下(SC)に移植した。
・有効性研究のためのNodScidマウスへの腫瘍生検移植片(P1)の移植:腫瘍が約1,200mm3の平均サイズに達した生検(P0)の移植後3.5週目に、マウスを頸椎脱臼により屠殺し、腫瘍を切除した。腫瘍を測定し、2~4mmの小片に切断し、無菌生理食塩水を含有するgentleMACSチューブに移した。腫瘍体積を生理食塩水で調整し、100μlの生理食塩水あたり1.5mm3の腫瘍体積にした。この試料を、gentleMACS Octo Dissociatorを用いて解離した。解離した腫瘍組織を、18Gの注射器で採取し、皮膚の下に直接注射した。4~5週齢の35匹の雌のNodScidマウス(Harlan,IL)の項部に、100μlの得られた細胞溶液(1匹のマウスあたり100μlの生理食塩水中約1.5mm3の腫瘍体積P1)をそれぞれ皮下注射した。動物は観察し、全ての不快感及び不動について毎日監視し、適切な移動又は摂食の不能、猫背、消極的であること、及び壊死中心の暴露として定義される潰瘍について調べた。
・腫瘍成長の開始(触知可能な腫瘍塊)を、細胞注射後10日目に検出した。8日後、注射したマウスの35匹中32匹は、約80mm3の平均サイズを有する腫瘍を発症した。これらのマウスを、1群あたり8匹の動物を含む4つの治療グループに無作為に分けた。
【0293】
II.治療及び手順
腫瘍サイズが約80mm3になったとき(0日目)に、以下の治療を開始した:
1.対照(ビヒクル):水100μl PO(5回/週、毎日)
2.20%の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPbCD)中の化合物D 70mg/kg、IV(3回/週、隔日)
3.エルロチニブ 100mg/kg PO(5回/週、毎日)
4.エルロチニブ 100mg/kg PO(5回/週)+化合物D 70mg/kg IV(3回/週)。同じ日に投与する場合、エルロチニブを、化合物D投与後、約4時間の時点で投与した。
治療グループ1~4のそれぞれについての全ての治療を同時に開始した。
【0294】
腫瘍の長さ(l)及び幅(w)を週4回測定し、以下のように腫瘍体積を計算した:v=lw2/2。グラフは、標準誤差(標準偏差/グループサイズの平方根)付き平均腫瘍体積を表す。マウスの体重及び行動を、少なくとも週1回調べた。治療の2週間後に、マウスを屠殺し、生化学的解析及びゲノム解析のために、薬物/阻害剤の最後の投与後に14時間の時点で腫瘍を切除した。併用治療グループ中の3匹のマウスを、治療の終了時に屠殺せず、さらなる治療なしで保った。
【0295】
結果
図1に示すように、エルロチニブ、EGFR TK阻害剤による治療は、最初に、全ての治療マウスにおいて著しい腫瘍退縮をもたらした(
図1、白四角)。しかしながら、治療の1週間後に、全ての腫瘍は、エルロチニブに対する耐性を発現し、激しく成長した。エルロチニブと化合物Dとの併用治療は、全ての治療マウスにおける著しい腫瘍退縮をもたらし、腫瘍のいずれも併用治療の期間中に再成長しなかった(
図1、白丸)。
【0296】
完全奏効を達成した2匹のマウスは、さらなる治療を行うことなく生き続け、さらなる治療を行うことなく3ヶ月後にも疾患のない状態であった。
【0297】
初期の腫瘍は単独の化合物Dに応答しなかったが、エルロチニブに対する獲得耐性は完全に化合物Dによって無くなった。文献からの証拠により、エルロチニブによる治療は、IRSの上方制御を誘導し、IGF1R/IRSからAKTへの生存経路の活性化による耐性をもたらすことが示唆されている。他の報告は、Stat3のリン酸化がH&N癌でエルロチニブによって誘導され、Stat3&EGFRの阻害がH&N腫瘍に対して相乗阻害効果を有することを主張している。いかなる特定の理論又は作用機序に束縛されることなく、化合物D及び本明細書に記載の式(I~IV)の他の化合物は、IRS1/2とStat3の二重阻害剤であり、したがって、これらエルロチニブ誘導性機構と拮抗し、耐性を防ぐであろう。
【0298】
実施例2:エルロチニブと化合物Dの併用治療によるエルロチニブ耐性腫瘍の退縮
実験システム:頭頸部の扁平上皮細胞癌(SCCHN)腫瘍生検の患者由来の異種移植片(PDX)をNodScidマウスに皮下移植する。
I.動物及び生検
・有効性研究のためのNodScidマウスへのSCCHN腫瘍生検移植片(P8)の移植:P1の移植について記載したのと同じ手順を使用して、上記のSCCHN腫瘍生検移植片(P1)の移植後5ヶ月の時点で、腫瘍細胞(P8)を、自己繁殖する9.5週齢のNodScidマウスに注射した。元の生検は上記と同じであり、Pは経過(マウスにおける移植数)を示す。
・腫瘍成長の開始(触知可能な腫瘍塊)を、細胞注射後7日目に検出した。12日後に、マウスは、サイズが約70mm3の腫瘍を発症した。これらのマウスを4つの治療グループに無作為に分け、ビヒクル、化合物D又は化合物D+エルロチニブで治療するグループに4匹の動物を含め、残りをエルロチニブで治療した。治療を同時に開始した(0日目)。
【0299】
II.治療及び手順
治療グループには以下のものを含めた:
1.ビヒクル-対照:20%の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPbCD) 50μl/注射、IV(3回/週、隔日)
2.HPbCD中化合物D 70mg/kg、IV(3回/週、隔日)
3.HPbCD中エルロチニブ 100mg/kg、PO(5回/週)
4.エルロチニブ 100mg/kg PO(5回/週)+化合物D 70mg/kg IV(3回/週)。同じ日に投与する場合、エルロチニブを、化合物D投与後、約4時間の時点で投与した。
全てのこれらの治療を同時に開始した。
【0300】
エルロチニブによる治療(グループ3)は、劇的な腫瘍退縮をもたらした(
図2、白四角)。治療の間、腫瘍は治療の1週間後にエルロチニブに対する耐性を発現し、激しく成長した。10日目に、約130mm
3の腫瘍を発現したエルロチニブ治療マウス(n=7)を、以下の2つのグループに分けた。
5.第1グループ(n=3)には、エルロチニブ(100mg/kg PO、5回/週)を与え続け、かつ
6.第2グループ(n=4)に、治療の10日目にエルロチニブ(100mg/kg PO、5回/週)+化合物D(70mg/kg IV、3回/週、隔日)による併用治療を開始した。同じ日に投与する場合、エルロチニブを、化合物D投与後、約4時間の時点で投与した。
【0301】
腫瘍の長さ(l)及び幅(w)を週4回測定し、以下のように腫瘍体積を計算した:v=lw2/2。グラフは、標準誤差(標準偏差/グループサイズの平方根)付き平均腫瘍体積を表す。マウスの体重及び行動を、少なくとも週1回調べた。マウスを屠殺し、生化学的解析及びゲノム解析のために腫瘍を切除した。
【0302】
結果
図2に示すように、エルロチニブ(白四角)による治療は、治療マウスの78%(18匹のマウスのうち14匹が応答した)において腫瘍退縮をもたらした。しかしながら、治療の間、腫瘍は、エルロチニブに対する耐性を1週間後に発現し、激しく成長した。10日目に腫瘍が約130mm
3になったエルロチニブ治療マウス(n=7)を、2つのグループに分け、第1グループ(n=3)には、エルロチニブ(白四角)を与え続け、かつ第2グループ(n=4)に、治療の10日目にエルロチニブ+化合物D(黒丸)による併用治療を開始した。劇的な腫瘍退縮が、併用治療の開始後に観察されたが(
図2、後期治療、黒丸)、エルロチニブで治療したマウスの腫瘍のみが激しく発現した(
図2、白四角)。0日目に開始したエルロチニブ+化合物Dによる併用治療(
図2、早期治療、白丸)は、全ての治療マウスにおいて著しい腫瘍退縮をもたらし、実施例1の結果と一致して、どの腫瘍も再成長しなかった。
【0303】
結論
結論として、化合物D+エルロチニブの併用治療は、非常に有効であり、エルロチニブに対する耐性が既に獲得された後に、腫瘍の劇的な退縮をもたらす。さらに、確立された腫瘍の早期治療において、化合物Dは、エルロチニブに対する獲得耐性を防止する。
【0304】
実施例3:化合物Dは、最初の腫瘍サイズが非常に高い(700mm3)場合であっても、エルロチニブに対する獲得耐性を防止する
実験システム:SCCHN扁平上皮細胞癌の腫瘍生検の患者由来の異種移植片(PDX)をNRGマウスに皮下移植した。
I.動物及び生検
・有効性研究のためのNRGマウスへのSCCHN腫瘍生検移植片(P11)の移植:上記のSCCHN腫瘍生検移植片(P1)の移植後8ヶ月の時点で、腫瘍細胞(P11)を、P1の移植について記載したのと同じ手順を用いて、自己繁殖からの20匹の雄の、NOD.Cg-Ragltm1Mom I12rgtmlWjl/SzJマウス(一般名:NRG)に注射した。元の生検は上記と同じであり、Pは経過(マウスにおける移植数)を示す。
・腫瘍成長の開始(触知可能な腫瘍塊)を、細胞注射後6日目に検出した。13日後に、注射したマウス20匹中19匹が、700~720mm3の平均サイズを有する腫瘍を発現した(0日目)。これらのマウスを4つの治療グループに無作為に分け、ビヒクルで処置するグループに4匹、並びにエルロチニブ、化合物D又は化合物D+エルロチニブで治療するグループに1グループあたり5匹のマウスを含めた。全ての治療を0日目に同時に開始した。
【0305】
II.治療及び手順
治療グループには以下のものを含めた:
1.ビヒクル対照:20%のHPbCD 50μl/注射、IV(3回/週、隔日)、4匹のマウス
2.HPbCD中化合物D 70mg/kg、IV(3回/週、隔日)、5匹のマウス
3.HPbCD中エルロチニブ 100mg/kg、PO(5回/週)、5匹のマウス
4.エルロチニブ 100mg/kg PO(5回/週)+化合物D 70mg/kg IV(3回/週)、5匹のマウス。同じ日に投与する場合、エルロチニブを、化合物D投与後、約4時間の時点で投与した。
【0306】
腫瘍の長さ(l)及び幅(w)を週4回測定し、以下のように腫瘍体積を計算した:v=lw2/2。グラフは、標準誤差(標準偏差/グループサイズの平方根)付き平均腫瘍体積を表す。マウスの体重及び行動を日常的に調べた。マウスを屠殺し、生化学的解析及びゲノム解析のために腫瘍を切除した。
【0307】
結果
図3に示すように、エルロチニブによる治療は、腫瘍の著しい応答をもたらし、それらの成長は停止し、退縮した。しかしながら、治療の間、腫瘍は、治療開始後1週間の時点でエルロチニブに対する耐性を発現し、激しく成長した(
図3、白四角)。0日目に開始したエルロチニブ+化合物D(
図3、白四角)による併用治療は、最初の週にエルロチニブに対するのと同じ応答を示したが、化合物Dによる併用治療は、エルロチニブに対する獲得耐性を防止し、腫瘍の再成長を防止し、腫瘍退縮を誘導し、実施例1の結果と一致した。
【0308】
結論
結論として、治療を開始した時に、初期の腫瘍サイズが非常に高い(700mm3)であっても、化合物D+エルロチニブの併用治療は、非常に有効であり、エルロチニブに対する獲得耐性を防止する。
【0309】
実施例4:化合物Dとアフィニトールの併用治療は、マウスにおいて肉腫患者由来の異種移植片の成長を効率的に阻止する
実験システム:子宮腺肉腫生検の患者由来の異種移植片(PDX)をNodScidマウスに皮下移植する。
I.動物及び生検
・生検:凍結ヒト初代子宮腺肉腫(試料ID:OT_001)
・腫瘍生検移植片の移植(P0):雌のNOD.CB17-Prkdcscid/J(NodScidマウス、Harlan IL)に、凍結ヒト初代子宮腺肉腫生検移植片を皮下(SC)移植した(P0)。3ヶ月後に、腫瘍を切除し、小片に切断し、有効性試験のために38匹のNodScidマウス(P1)に移植した。
・生検(P1)移植後8日目に、37匹のマウスで腫瘍の発症を検出した。
・1週間後(0日)、33匹のマウスの腫瘍は、130mm3の平均サイズに達し、マウスを4つの治療グループに無作為に分けた。
【0310】
II.治療及び手順
治療グループには以下のものを含めた:
1.対照:20%のHPbCD 50μl IP、隔日(6匹のマウス)
2.20%のHPbCD中化合物D 70mg/kg、IV、隔日(6匹のマウス)
3.アフィニトール 5mg/kg PO、隔日(15匹のマウス)
4.アフィニトール 5mg/kg PO(隔日)+化合物D 70mg/kg IV(隔日)、6匹のマウス。アフィニトールを、化合物D投与後、約4時間の時点で投与した。
全ての治療を0日目に同時に開始した。
【0311】
腫瘍の長さ(l)及び幅(w)を1日おきに測定し、以下のように腫瘍体積を計算した:v=lw2/2。グラフは、標準誤差(標準偏差/グループサイズの平方根)付き平均腫瘍体積を表す。治療の開始後4日目に、対照グループと化合物Dグループの腫瘍が既にエンドポイントに到達し、マウスを屠殺した。
【0312】
結果
図4に示すように、アフィニトール(白四角)、mTOR/S6K阻害剤による治療は、腫瘍の成長阻害をもたらした:対照グループの平均腫瘍サイズは16倍増加したが、アフィニトールグループの平均腫瘍サイズは5.5倍増加した。
【0313】
驚くべきことに、化合物D単独(白三角)は、腫瘍成長に対して著しい影響を及ぼさなかったが、アフィニトール+化合物D(白丸)の併用治療は腫瘍退縮をもたらした。併用治療の平均腫瘍サイズは、4日間で、2つのみの治療後に130mm3から70mm3に退縮した。
【0314】
レスポンダー対非レスポンダーマウスの観点で、化合物D単独への応答は検出されず、アフィニトール治療グループ中のマウスの半分のみが応答し(グループA、n=8)、半分は応答せず(グループB、n=7)、併用治療における全てのマウスが応答し、ほとんどの腫瘍も著しく退縮した。
【0315】
実施例5:化合物Dは、アフィニトール(A)に対する獲得耐性を防止し、アフィニトール耐性腫瘍(B)の退縮をもたらす。
実験システム:子宮腺肉腫生検の患者由来の異種移植片(PDX)を実施例4に記載のNodScidマウスに皮下移植する。
【0316】
実施例4に記載した実験(フェーズI)は、実験のフェーズII(
図5A)及びフェーズIII(
図5B)まで延長した。フェーズI(実施例4)に記載の治療後、腫瘍がエンドポイントに到達したマウスを屠殺し、以下の治療を継続した。
フェーズII:
1.アフィニトールレスポンダグループ(グループA、白四角)に、アフィニトール5mg/kgを1日1回経口投与した(8匹のマウス)。
2.併用治療グループ(白丸)に、アフィニトール 5mg/kgの経口投与(隔日)+化合物D 70mg/kgの静脈内投与(隔日)による治療を継続した(6匹のマウス)。アフィニトールを、化合物D投与後、約4時間の時点で投与した。
フェーズIII:
アフィニトールレスポンダグループ(グループA)の腫瘍は退縮したが、治療の間、アフィニトールに対する耐性を獲得し、6日目に590mm
3の平均腫瘍サイズまで激しく成長した。このグループを4匹ずつのマウスの2グループに分け、6日目以降に以下の治療を行った:
-第1グループに、アフィニトール 5mg/kgの経口投与(1日1回)を継続し(4匹のマウス)、
-第2グループに、アフィニトール 5mg/kgの経口投与(隔日)+化合物D 70mg/kgの静脈内投与(隔日)による併用治療(4匹のマウス)を行った。アフィニトールを、化合物D投与後、約4時間の時点で投与した。
【0317】
腫瘍の長さ(l)及び幅(w)を1日おきに測定し、以下のように腫瘍体積を計算した:v=lw
2/2。
図5Aのグラフは、標準誤差(標準偏差/グループサイズの平方根)付き平均腫瘍体積を表す。
図5Bのグラフは、%での成長率を表し、各腫瘍についての100%を6日目の体積として定義した。
【0318】
結果
アフィニトール治療グループを、レスポンダー(白四角、グループA、n=8)対非レスポンダー(灰色の四角、グループB、n=7)に分けた。グループAのアフィニトール治療は、最初に腫瘍退縮を誘導した(腫瘍の平均腫瘍サイズが0日目に125mm3から5日目に37mm3まで退縮した)が、治療の間、全ての腫瘍は、アフィニトールに対する耐性を発現し、(6日目に590mm3の平均腫瘍サイズまで)激しく成長した。
【0319】
0日目(治療開始)からのアフィニトールと化合物Dの併用治療は、腫瘍退縮を誘導し、それらの平均腫瘍体積は実験の終わりまで低いままであった(
図5A、〇)。初期の腫瘍は化合物D単独に応答しなかったが、アフィニトールに対する獲得耐性は、化合物Dによって完全になくなった。文献からの証拠により、アフィニトールによる治療はIRSの上方制御を誘導し、IGF1R/IRSからAKTへの生存経路の活性化による耐性をもたらすことが示唆されている。mTOR/S6Kは、IRSタンパク質の負の調節因子である。これは、セリン残基でIRSをリン酸化し、それによって、IRSのレベルを下方制御し、受容体チロシンキナーゼ(RTK)IGF1R及びIRへの親和性を減少させる。mTOR/S6Kの阻害は、IRS1/2を安定化し、それらのレベルを増加させ、IGF1RとIRとの複合体形成を高め、AKT生存経路の活性化及びmTOR阻害剤に対する耐性の獲得をもたらすであろう。このフィードバックループは、文献(Crose L.E.S.及びLinardic C.M. Sarcoma 2011,Keniry M.及びParsons R.Cancer Discovery 2011;1:203-204)に記載されており、AKTのリン酸化が、乳癌女性におけるmTOR阻害剤のアフィニトール/エベロリムスによる治療後に臨床的に観察可能な現象であることが示された。いかなる特定の理論又は作用機序に束縛されることなく、本明細書に記載の化合物D及び式(I~IV)の他の化合物などのIRS/Stat3二重修飾因子による癌細胞からのIRS1/2の除去は、アフィニトール又は任意の他のmTOR阻害剤に対する獲得耐性を防止し、耐性がすでに獲得された後にはこれらの阻害剤と相乗作用して、腫瘍退縮を誘導し得ると考えられている。
【0320】
アフィニトールに対する耐性を獲得した後に、グループAのマウスを2つのグループに分け、第1グループにアフィニトール単独(□)を与え、第2グループに、治療の6日目に開始するアフィニトール+化合物D(●)の併用治療を行った。腫瘍は、アフィニトール単独(□)での治療下で著しく成長したが、化合物Dとアフィニトールの併用治療は、腫瘍退縮を誘導した(●)。
図5Bのグラフは%での成長率を表し、各腫瘍についての100%を6日目の体積として定義した。
【0321】
実施例5A:利用可能な医学的治療のない高悪性度の癌のアフィニトール+化合物Dによる併用治療は、アフィニトールに対する獲得耐性を遅延させ、グループの40%において完全寛解を達成した。
実験システム:子宮腺肉腫生検の患者由来の異種移植片(PDX)を実施例4に記載のNodScidマウスに皮下移植する。
実施例4に記載した実験を、Harlan社から購入したマウスで繰り返した。
治療:
1.対照:20%のHPbCD 50μl IP、隔日(3匹のマウス)
2.20%のHPbCD中化合物D 70mg/kg、IV、週3回、隔日(3匹のマウス)
3.アフィニトール 5mg/kg PO、週4回(17匹のマウス)
4.アフィニトール 5mg/kg PO(隔日)+化合物D 70mg/kg IV(隔日)、週3回(5匹のマウス)。アフィニトールを、化合物Dの投与後、約4時間の時点で投与した。治療は17日目に中止した。
【0322】
腫瘍の長さ(l)及び幅(w)を1日おきに測定し、以下のように腫瘍体積を計算した:v=lw2/2。グラフは、標準誤差(標準偏差/グループサイズの平方根)付き平均腫瘍体積を表す。治療の開始後5日の時点で、対照グループ及び化合物Dグループの腫瘍はすでにエンドポイントに到達し、マウスを屠殺した。
【0323】
結果
前の実験に示すように、化合物D単独(白三角)は腫瘍成長に影響を及ぼさなかったが、アフィニトール+化合物D(黒丸)の併用治療は腫瘍退縮をもたらした。アフィニトールレスポンダグループ(17匹の治療マウスのうちの14匹)の腫瘍は退縮したが、治療の間、治療の1週間後にアフィニトールに対する耐性を獲得し、激しく成長した(白四角)。アフィニトール及び化合物Dの併用治療は、グループの60%においてアフィニトールに対する獲得耐性を著しく遅延し(5匹の治療マウスのうち3匹、白丸、破線)、このグループの40%において腫瘍を完全になくした(5匹の治療マウスのうち2匹、白丸、実線)。これらの2匹のマウスは、さらなる治療を行うことなく生き続け、さらなる治療を行うことなく3ヶ月を超えた後も疾患のない状態であった(
図5C)。
【0324】
実施例6:
I.細胞株
・A375(ヒト黒色腫)、HCT15(結腸癌)、SK-ES.1(ユーイング肉腫)、NCI-H460(肺癌)及びPC3(前立腺癌)を、10%ウシ胎児血清(FCS)を含むRPMI中で培養した。
・HePG2(肝癌)を、10%FCSを含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)及びF12(1:1)中で培養した。
・DU145(前立腺癌)を、5%FCS及び5mg/Lのインスリンを含有するRPMI中で培養した。
【0325】
全ての細胞株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手した。YUMAC、YURIF、YUSIK(全て、コネチカット州ニューヘブンのエール大学のルース・ハラバン教授から親切に提供されたヒト黒色腫)を、5%FCSを含有するOptiMEM中で培養した。M571、M2068、M560n(全て、イスラエルのエルサレムにあるハダーサ病院のマイカル・ロータム博士によって親切に提供されたヒト黒色腫)を、10%FCSを含有するRPMI、DMEM及びF12(1:3:1)中で維持した。451-Lu(ヒト黒色腫)及び451-Lu-BR(PLX4032耐性黒色腫;参考文献32)を、5%FCSを含有するRPMI(1mmol/LのPLX4032を含有する耐性株用の培地)中で維持した。全ての培地に、100U/mLのペニシリン及び100mg/mLのストレプトマイシンを補充し、全ての細胞を37℃/5%CO2で成長させた。
【0326】
図6~9及び表1で使用し、説明した全ての黒色腫細胞は、ヒト起源であり、変異BRAF
600K/Eを有している。
【0327】
II.細胞増殖
細胞を、完全培地中で成長させ、播種後1日目に阻害剤により治療した。72時間後、生存細胞をメチレンブルー染色、又は非接着細胞用のWST-1染色(Roche)によって定量した。
【0328】
III
.免疫ブロット
・細胞を、(異なる指示がない限り)一晩の血清飢餓後に、
図6~9及び対応する図の凡例に示されているように処理した。細胞をPLX4032と化合物A又はDの両方で処理した場合に、PLX4032を、化合物添加後3~4時間の時点で添加した。
・細胞を煮沸試料緩衝液(10% グリセロール、50mmol/LのTris-HCl、pH6.8、3% SDS、及び5% 2-メルカプトエタノール)で溶解した。ウエスタンブロット分析を、下記の抗体を用いて8% SDS-PAGEにて行った。
・等量のタンパク質を含有する細胞抽出物のアリコートを、8% SDS/PAGEによって分離し、ニトロセルロースフィルター上に電気ブロットした。この膜を、TBST(0.2% Tween-20を含有するNaCl/Tris)で1:20希釈した低脂肪乳で0.5時間ブロッキングし、0.05%アジドを含有するTBST中5%BSA中のウサギ抗リン酸化705-Stat3抗体(Cell signaling社のカタログ番号9131)、マウス抗ERK-二リン酸化-YT(Sigma Aldrich社のカタログ番号M8159)又は抗PARP抗体と一晩、4℃でインキュベートし、TBSTで十分に洗浄し、次いで、TBST中5%BSA中の西洋ワサビペルオキシダーゼ結合2次抗体と45分間、室温でインキュベートした。
・免疫反応性バンドを、増強化学発光を用いて可視化した。膜を、マウス抗Stat3抗体(Transduction labsのカタログ番号21320)又はウサギ抗AKT1/2(Santa cruz社のカタログ番号sc-8312)、又は抗アクチンを用いて、上記のようにして再ブロットした。
【0329】
IV.
末梢血単核細胞(PBMC)の走化性
A375細胞を96ウェルプレートに播種し(6000個の細胞/ウェル)、一晩増殖させた。細胞を化合物Aで処理し、示した処理後4時間の時点で、培地で2回洗浄した(洗浄)。処理後30時間の時点で、150μlの培地を走化性装置の下部プレートに移した。10,000個のPBMC/75μlの培地/ウェルを上部プレートに加えた。加えて、PBMCを陽性対照として下部プレートに添加した(
図9B-セルタイターグロ較正グラフ、10~10,000細胞/ウェル)。下部プレートのセルタイターグロ分析によって24時間後に走化性を調べた。加えて、A375細胞の生存を、化合物Aでの処理後30時間の時点でメチレンブルーによって分析した。
【0330】
【0331】
細胞を、96ウェルプレートの5~10%FCSを含む培地に播種した。翌日、様々な濃度の化合物A、化合物D又はOSI-906に曝露し、3日後にメチレンブルーで染色し、相対細胞数を定量した。
【0332】
結果
以前にIRS1/2セリンのリン酸化を誘導することが示された化合物A及びDは、癌細胞におけるStat3のY705-リン酸化レベルの低下を効率的に誘導することが見出された。IRS/Stat3のこれらの二重修飾因子は、Stat3タンパク質レベルに影響を与えることなく、用量依存的(
図6A)にStat3リン酸化(pStat3)を強力に阻害する。化合物A及びDによって実証される阻害効果は時間とともに増強される:両方の化合物のIC50値は、処理後1.3時間の時点で約2μMであり、3時間後には1μM未満まで減少した。修飾因子が細胞から洗浄された後にも長く検出することができるので(
図6C)、Stat3リン酸化レベルに対する記載の阻害効果は長期的であった(
図6B)。
図6Cはまた、化合物DへのA375黒色腫細胞の短い曝露が24及び48時間後に細胞のアポトーシスを誘導するのに十分であったことを示している。Stat3 Y705-リン酸化の遮断が、化合物A、B、C、D、F、IV-1、IV-2、IV-3及びIV-4について例示されている。
【0333】
Stat3が生存及び薬物耐性と様々な癌の種類の免疫回避の両方に関与することが報告されているので、特定のPK阻害薬及び免疫療法のそれぞれに対して腫瘍を感作させるStat3/IRS二重修飾因子の能力を試験した。
【0334】
PLX4032(ベムラフェニブ又はゼルボラフとしても知られている)などのBRAF阻害剤(BRAFi)に対する耐性を獲得した黒色腫におけるStat3のリン酸化レベルは、親黒色腫細胞/腫瘍と比較して著しく高い(
図7A及び7B)。これは、治療前の親転移性黒色腫451-LU細胞株(P)と比較して、BRAFiによる6ヶ月の治療後に単離した転移性黒色腫クローン451-LU-BR(R)[Villanuevaら、Cancer Cell 2010;18:683-95]で示されている。変異BRAF(YUMAC、YURIF、YUSIK)を保有するが、BRAFiでまだ治療されていないナイーブ患者(N)からの黒色腫細胞と比較して、PLX4032で治療し、それに対する耐性を発現している患者(M2068、M560n、M571)から取得した細胞(R)におけるより高いレベルのStat3リン酸化がさらに実証されている(
図7B)。
【0335】
Stat3のタンパク質レベルは全ての試料で類似しているが、リン酸化レベルのみがPLX4032耐性細胞において劇的に増強されている。
【0336】
驚くべきことに、18~24時間の、1μMのPLX4032による治療は、Stat3 Y705-リン酸化(pStat3)の顕著な誘導を誘導したことを、PLX4032感受性黒色腫細胞において発見した。これを試験し、3つの異なるヒト転移性黒色腫細胞株において実証した(
図7C~E)。
図7の結果は、pStat3の増加がBRAFiに対する獲得耐性において役割を果たし得、耐性細胞が生存因子としての高い一定のpStat3レベルを適応させることを示唆している。それによって、BRAFiとのIRS/Stat3二重修飾因子の組み合わせが、BRAFi並びにpStat3及び/又はIRS1及び/又はIRS2の上方制御を誘導する他の薬物に対する獲得耐性を防止し得ることが推測された。そのような薬物に対する獲得耐性を防止するIRS/Stat3二重修飾因子の能力は、実施例1で実際に示されており、化合物Dが、患者由来で、マウスに移植したHNSCCにおいてエルロチニブに対する獲得耐性を防止したことを示す。
【0337】
さらに、pStat3は、腫瘍の免疫回避において主要な役割を有し、免疫抑制因子の発現及び分泌を上方制御し、炎症促進性メディエーターを下方制御することにより、局所免疫系から腫瘍をマスキングする。癌細胞に加えて、腫瘍微小環境における多様な免疫サブセットはまた、構成的に活性化されたStat3を示し、免疫細胞におけるStat3の阻止はまた、強力な抗腫瘍免疫応答(NK細胞及び好中球の細胞毒性の増加、T細胞活性化及び腫瘍浸潤の増加など)を誘発し得る。そのため、発明者らのIRS/Stat3二重修飾因子と免疫療法の組み合わせは、pStat3を下方制御し、様々な免疫療法剤に対して腫瘍を感作させることが推測された。
【0338】
本明細書で、化合物A&Dによって表されるIRS/Stat3二重修飾因子は、pStat3の基底レベルとPLX4032誘導レベルの両方を阻止するが、IGF1R/IRのTK阻害剤OSI-906はpStat3レベルに影響を及ぼさなかったことが実証されている(
図7E及び
図8A)。抗癌活性の観点でこの発見の重要性を試験するために、IRS/Stat3二重修飾因子対IGF1R/IRのTK阻害剤OSI-906の抗増殖活性を様々な癌の種類で比較した。表1は、化合物A及びDが、様々な黒色腫細胞(PLX4032耐性とPLX4032感受性の両方)において;様々な化学療法及びEGFRiに耐性である結腸癌細胞において;(いくつかの化学療法に耐性である)前立腺癌細胞及び(EGFRiに耐性である)肝細胞癌においてOSI-906よりもはるかに効果的であることを示す。二重修飾因子とIGF1R/IRのチロシンキナーゼ阻害剤の間のこれらの差異は、生存率及び薬物耐性に大いに関与する中心的結合タンパク質であるStat3とIRSの両方の阻害が、様々な治療法に対して耐性癌細胞を感作させる二重修飾因子の能力に寄与し得ることを示唆している。
【0339】
図6A及びBで前述したとおり、BRAFiに対する耐性を発現した黒色腫細胞においてpStat3のレベルが増加している。
図8A及びBは、黒色腫細胞株のこれらのPLX4032耐性クローン(上記の451-LU-BR及びMel1617-BR[Villanuevaら、Cancer Cell 2010;18:683-95])並びにPLX4032治療に対する耐性を獲得した2人の患者[M2068(i)&M571(ii)]由来の黒色腫細胞において、化合物A&DがStat3リン酸化を完全に阻止することを示す(
図8C)。
図8Cは、化合物Aと比較して化合物Dの良好な活性を示す。これらの結果は、IRS/Stat3二重修飾因子がBRAFiに対する耐性を獲得した黒色腫細胞を再感作させ得、BRAFiとIRS/Stat3二重修飾因子の併用療法が耐性腫瘍の腫瘍退縮を誘導し得ることを示唆している。薬物に対して薬物耐性腫瘍を再感作させるIRS/Stat3二重修飾因子の能力は、実施例2及び3で実際に実証され、化合物Dとエルロチニブの組み合わせは、マウスにおけるエルロチニブ耐性HNSCC腫瘍の退縮を誘導することを実証している。
【0340】
IRS1/2のセリンのリン酸化及び除去に対するそれらの効果について以前に実証したように、pStat3を阻害するIRS/Stat3二重修飾因子の能力を、様々な癌の種類において実証した。
図8Dは、前立腺癌、多発性骨髄腫、ユーイング肉腫、肝細胞癌及びNSCLにおけるStat3 Y705のリン酸化(pStat3)における二重修飾因子の阻害活性を例示している。
【0341】
免疫系は、腫瘍と戦うための強力で、ほとんど未開発の力である。腫瘍は、免疫系を回避するための高度なメカニズムを発達させている。Stat3は、腫瘍細胞と腫瘍と相互作用する免疫細胞間のクロストークを媒介する重要な役割を有している。腫瘍におけるStat3標的化に、様々な免疫エフェクター細胞の浸潤に関連するバイスタンダーの腫瘍細胞死滅が関与している。したがって、IRS/Stat3二重修飾因子による腫瘍細胞の治療が、癌細胞に対する末梢血単核細胞の動員を誘導し得るかどうかを試験した。ヒト黒色腫A375細胞を、化合物Aの濃度を増加させて処理し、示した処理後4時間の時点で、培地で2回洗浄した(洗浄)。処理後30時間の時点で、細胞培地を走化性装置の下部プレートに移し、1ウェル当たり10,000個のヒトPBMCを、上部プレートに添加した。A375培地試料に向かうPBMCの走化性を、下部プレートのCell Titer Glo分析によって24時間後に調べた。
図9Aに示すように、用量依存的な走化性が検出され、化合物Aによって調節されるサイトカインの発現/分泌が治療される腫瘍に向かうPBMCの動員を誘導することが示唆される。このように、免疫療法と発明者らの二重修飾因子の組み合わせにより、増強された抗腫瘍効果が得られ得る。これらのIRS/Stat3二重修飾因子は、腫瘍と相互作用する免疫細胞を含む腫瘍細胞及び腫瘍の微小環境に直接的並びに間接的に影響を与えることにより、他の免疫療法又はPK阻害剤(EGFRi、mTORiなど)に対して腫瘍を感作させるであろう。
【0342】
実施例7:EGFR抗体のセツキシマブと化合物Dの併用治療は、頭頸部扁平上皮細胞癌(HNSCC)患者からの腫瘍を移植したマウスにおいて、セツキシマブ単独と比較して腫瘍再発の劇的な遅延を示す。セツキシマブの代わりに、セツキシマブ+アファチニブが用いられる場合も同様である。
【0343】
実験システム:HNSCC腫瘍生検の患者由来の異種移植片(PDX)をNodScidマウスに皮下移植する。
I.動物及び生検
・有効性研究のためのNodScidマウスにHNSCC腫瘍生検移植片(P6)の移植:マウスへの凍結HNSCC腫瘍生検移植片(P1)の移植後数ヶ月の時点で、腫瘍細胞(P6)を、P1の移植について記載したのと同じ手順を用いて、(自家育種によって作製された)NodScidマウスに注射した。元の生検は上記と同じであり、Pは経過(マウスにおける移植の数)を示す。
・腫瘍成長の開始(触知可能な腫瘍塊)を、細胞注射後4日目に検出した。5日後、腫瘍サイズが約113mm3になったマウスにおいて治療を開始した。マウスを6つの治療グループに無作為に分け、1グループにつき4匹の動物に、セツキシマブ、セツキシマブ+アファチニブ、セツキシマブ+化合物D、セツキシマブ+アファチニブ+化合物Dで治療し、これらのグループのうちの3匹のマウスをビヒクル又は化合物Dで治療した。治療を同時に開始し(0日目)、9日間適用した。
【0344】
II.治療及び手順
治療グループには以下のものを含めた:
1.ビヒクル対照:ビヒクル(0.5%のヒドロキシメチル-セルロース、0.4%のTween-80)200μl PO(5回/週、1日1回)
2.HPbCD中化合物D 70mg/kg、IV(3回/週、隔日)
3.セツキシマブ 1mg/マウス IP(2回/週)
4.セツキシマブ 1mg/マウス IP(2回/週)+化合物D 70mg/kg IV(3回/週)。同じ日に投与する場合、セツキシマブを、化合物D投与後約4時間の時点で投与した。
5.ビヒクル中セツキシマブ 1mg/マウス IP(2回/週)+アファチニブ 25mg/kg PO(5回/週)
6.セツキシマブ 1mg/マウス IP(2回/週)+アファチニブ 25mg/kg PO(5回/週)+化合物D 70mg/kg IV(3回/週)。同じ日に投与する場合、セツキシマブ及び/又はアファチニブを、化合物D投与後、約4時間の時点で投与した。
【0345】
腫瘍の長さ(l)及び幅(w)を週に2~4回測定し、以下のように腫瘍体積を計算した:v=lw2/2。グラフは、標準誤差(標準偏差/グループサイズの平方根)付き平均腫瘍体積を表す。マウスの体重及び行動を、少なくとも週1回調べた。マウスを屠殺し、腫瘍を生化学的解析及びゲノム解析のために切除した。
【0346】
結果
図10に示すように、治療の最初の4日間で、全ての腫瘍は成長したが、その後、セツキシマブ、セツキシマブ+化合物D、セツキシマブ+アファチニブ又はセツキシマブ+アファチニブ+化合物Dのいずれかによる治療は、全てのマウスにおいて劇的な腫瘍退縮をもたらしたが、ビヒクル治療マウス及び化合物D治療マウス(独立型の治療として)における全ての腫瘍は、激しく成長した。治療を9日間のみ適用した。
【0347】
治療中止後8日の時点で、セツキシマブ治療グループの腫瘍は、再成長を開始し、激しく成長し、1週間後にセツキシマブ+アファチニブ治療グループの腫瘍は成長したが、化合物Dとの組み合わせは、治療終了後4週間を超えて、陽性反応を延長した。
【0348】
アファチニブは、EGFR阻害薬に対する耐性の獲得を克服するために開発された第2世代の不可逆的EGFRチロシンキナーゼ阻害剤であり、EGFR T790M突然変異から生じ、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する獲得耐性の最高頻度の機構である。
【0349】
結論
9日間のみのセツキシマブあるいはさらにセツキシマブ+アファチニブのいずれかとの化合物Dの併用治療は、退縮した腫瘍再発を著しく遅延させ、セツキシマブ又はセツキシマブ+アファチニブに対する応答を延長した。
【0350】
実施例8:化合物Dは、変異BRAF及びMEKの阻害剤を含む、薬物の組み合わせと相乗作用して、ベムラフェニブに対する耐性を獲得した黒色腫患者からの腫瘍細胞を移植したマウスにおいて劇的な腫瘍退縮を誘導する。
実験システム:黒色腫の患者由来の異種移植片(PDX)をNodScidマウスに皮下注射する。
I.動物及び生検
・生検:生検を、ベムラフェニブに短期応答を示した変異BRaFV600Eを保有する黒色腫患者から切除し、細胞をプレートに播種した。初期継代細胞(百万個の細胞/マウス)を、(自家育種によって作製した)10週齢のNOD.CB17-Prkdcscid/J(NodScid)の雌マウスに皮下(SC)注射した。腫瘍の発症を5日後に検出し、治療を、平均腫瘍体積が約60mm3になった時の細胞注射後7日の時点で開始した。
【0351】
II.治療及び手順
腫瘍サイズが約60mm3(0日目)になったとき、以下の治療を開始した:
5.対照(ビヒクル):ベムラフェニブ+トラメチニブのビヒクル PO-滅菌DDW中5% プロピレングリコール、0.5% Tween-80、30% PEG 400(5回/週、1日1回)、6匹のマウス
6.20%の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPbCD)中の化合物D 70mg/kg、IV(3回/週、隔日)、6匹のマウス
7.ベムラフェニブ 75mg/kg+トラメチニブ 1mg/kg PO(5回/週、1日1回)、20匹のマウス
8.ベムラフェニブ 75mg/kg+トラメチニブ 1mg/kg PO(5回/週、1日1回)+化合物D 70mg/kg IV(3回/週)、7匹のマウス。同じ日に投与する場合、ベムラフェニブ+トラメチニブを化合物D投与後約4時間の時点で投与した。
治療グループ1~4のそれぞれについての全ての治療を同時に開始した。
【0352】
腫瘍の長さ(l)及び幅(w)を週に4回測定し、以下のように腫瘍体積を計算した:v=lw2/2。グラフは、標準誤差(標準偏差/グループサイズの平方根)付き平均腫瘍体積を表す。マウスの体重及び行動を、少なくとも週2回調べた。
【0353】
結果
図11に示すように、ベムラフェニブ+トラメチニブによる治療の間、治療の6日目に腫瘍は激しく成長し(
図11、白四角)、化合物D(ベムラフェニブ+トラメチニブ+化合物D)との併用治療において全ての腫瘍が退縮した(
図11、白丸)。
【0354】
ベムラフェニブは、BRafV600に変異を保有する黒色腫患者の治療についてFDAによって承認された最初の変異BRaF阻害剤であった。残念ながら、治療開始後数ヶ月の時点で、患者はベムラフェニブに対する耐性を発現し、退縮した腫瘍はより積極的に生き返った。その結果、変異型B-Raf阻害剤及びMEK阻害剤の組み合わせは、BRafV600に変異を保有する黒色腫患者の治療のために承認されたが、なお耐性が獲得される。発明者らは、2つのフィードバック経路がベムラフェニブ(変異型BRaf阻害剤)又はトラメチニブ(MEK阻害剤)による培養中の細胞の処理によって誘導され、IRSとリン酸化STAT3の両方のレベルが増加することを示す。両方の経路は、細胞の生存、増殖、転移及び血管新生にとって重要である。任意の特定の理論又は作用機序に束縛されることなく、本明細書に記載の化合物D及び式(I~IV)の化合物は、IRS1/2とStat3の二重阻害剤であり、したがって、MAPK経路阻害剤(変異型BRaf阻害剤及びMEK阻害剤のような)によって誘導されるこれらの機構に拮抗し、これらの阻害剤と相乗作用し(それぞれ単独で又はそれらの組み合わせで)、これらの阻害剤に対する耐性を防止するであろう。
【0355】
実施例9:化合物Dは、MEK阻害剤トラメチニブと相乗作用し、BRAFに変異を保有する腺様嚢胞癌患者からの腫瘍を移植したマウスにおいて腫瘍退縮を誘導する。
実験システム:腺様嚢胞癌腫瘍生検の患者由来の異種移植片(PDX)をNodScidマウスに皮下移植する。
I.動物及び生検
・生検:新鮮なヒト原発腺様嚢胞癌腫瘍生検。
ゲノム解析により、BRafの変異が明らかになった。
・有効性研究のためのNodScidマウスに腺様嚢胞癌RA_148腫瘍生検移植片の移植。
・腫瘍生検移植片(P0)の移植:新鮮なヒト原発腺様嚢胞癌腫瘍生検移植片を、NOD.CB17-Prkdcscid/J(NodScidマウス)に皮下(SC)移植した。
・有効性研究のための(自家育種によって作製した)NodScid雌マウスへの腫瘍生検移植片(P5)の移植を、HNSCCの移植について上述したのと同じ手順を用いて行った。
・腫瘍成長の開始(触知可能な腫瘍塊)が、細胞注射後5日の時点で、全てのマウスにおいて検出された。さらに3日後に、マウスは、約65mm3の平均サイズの腫瘍を発症した。これらのマウスを、5匹の動物/グループを含む治療グループに無作為に分けた。ビヒクル治療グループには4匹のマウスを含めた。
【0356】
II.治療及び手順
治療グループには、以下のものを含めた:
1.ビヒクル-対照:トラメチニブのビヒクル(滅菌DDW中5% プロピレングリコール、0.5% Tween-80、30% PEG 400)200μl PO(5回/週、1日1回)
2.HPbCD中化合物D 70mg/kg、IV(3回/週、隔日)
3.トラメチニブ 1mg/kg PO(5回/週、1日1回)
4.トラメチニブ 1mg/kg PO(5回/週、1日1回)+化合物D 70mg/kg IV(3回/週)。同じ日に投与する場合には、トラメチニブを化合物Dの投与後約4時間の時点で投与した。
【0357】
治療グループ1~4のそれぞれについての全ての治療を0日目に同時に開始し、この研究には、0日目~13日目及び24日目~31日目の2つの治療段階を含めた。
【0358】
腫瘍の長さ(l)及び幅(w)を週に2~4回測定し、以下のように腫瘍体積を計算した:v=lw2/2。グラフは、標準誤差(標準偏差/グループサイズの平方根)付き平均腫瘍体積を表す。マウスの体重及び行動を、少なくとも週2回調べた。
【0359】
結果
図12に示すように、トラメチニブによる治療は、腫瘍退縮を誘導したが、治療の間、10日後に腫瘍が成長した。トラメチニブと化合物Dの併用治療は、腫瘍退縮を誘導し、治療の間、これらの腫瘍のいずれも再成長しなかった。24~31日目の第2相治療は、トラメチニブで治療した全てのマウスにおいて劇的な腫瘍退縮を誘導したが、応答は一時的であり、治療の4日後に、腫瘍はこの治療に対する耐性を獲得し、治療の間、激しく成長した。トラメチニブ+化合物Dの組み合わせによる第2相治療は腫瘍退縮を誘導し、治療の間、これらの腫瘍のいずれも再成長しなかった。
【0360】
結論
化合物D単独での初期の腫瘍の治療は、中程度の腫瘍成長阻害をもたらしたが、トラメチニブと化合物Dによる併用治療は、劇的な腫瘍退縮をもたらし、トラメチニブに対する獲得耐性は化合物Dによって無くなった。文献からの証拠により、トラメチニブによる治療がIRSの上方制御を誘導し、IGF1R/IRSからAKTへの生存経路の活性化による耐性をもたらすことが示唆される。他の報告は、トラメチニブが癌細胞におけるStat3リン酸化を誘導し、生存及びトラメチニブに対する獲得耐性をもたらすことを主張している。いかなる特定の理論又は作用機序に束縛されることなく、本明細書に記載の化合物D及び式(I~IV)の他の化合物は、IRS1/2及びStat3の二重阻害剤であり、したがって、これらトラメチニブ誘導性フィードバック機構を拮抗し、耐性を防止するであろう。
【0361】
実施例10:化合物Dは、膵臓癌患者の肝臓転移からの腫瘍を移植したマウスにおいてゲムシタビンに対するゲムシタビン耐性腫瘍を再感作させる。
実験システム:肝臓からの膵臓癌転移の生検の患者由来の異種移植片(PDX)をNodScidマウスに皮下移植する。
I.動物及び生検
・有効性研究のためのNodScidマウスに肝臓RA_160腫瘍生検移植片(P5)からの膵臓癌転移の移植:マウスへの膵臓癌肝転移生検移植片の移植後数週間の時点で、腫瘍細胞(P5)を、上記と同じ手順を用いて、(自家育種により作成した)NodScidマウスに注射した。
・腫瘍成長の開始(触知可能な腫瘍塊)は、細胞注射後10日の時点で検出された。1週間後(0日目)、90mm3の平均腫瘍サイズを有する19匹のマウスでは、35日間、週2回、ゲムシタビン25mg/kgによるIP治療を開始した。11日目に、ゲムシタビンで治療したマウスにおける全ての腫瘍が退縮したが、全5匹の対照マウスの腫瘍が成長した。21日目に、ゲムシタビン治療グループの平均腫瘍サイズは、対照グループの1400mm3と比較して、約5mm3であった。
・ゲムシタビンによる治療の開始後42日目に、耐性が発現し、退縮した腫瘍が成長した。4日後、平均腫瘍体積が約110mm3であるゲムシタビン治療グループのうちの16匹のマウスを、以下のように2グループに分けた。
【0362】
II.治療
ゲムシタビンに対する耐性を獲得した後の治療グループには、以下のものを含めた:
1.ゲムシタビン 25mg/kg IP 週2回
2.ゲムシタビン 25mg/kg IP+化合物D 70mg/kg IV、週2回。
【0363】
腫瘍の長さ(l)及び幅(w)を週に2~4回測定し、以下のように腫瘍体積を計算した:v=lw2/2。グラフは、標準誤差(標準偏差/グループサイズの平方根)付き平均腫瘍体積を表す。マウスの体重及び行動を、少なくとも週2回調べた。
【0364】
結果
退縮した腫瘍がゲムシタビンに対する耐性を獲得し、成長するまで、マウスを1ヶ月を超えてゲムシタビンで治療した。この時点で、ゲムシタビン治療マウスを2グループ(
図13)に分けた:(a)ゲムシタビン(□);(b)ゲムシタビン+化合物D(〇)。平均腫瘍サイズが約110mm
3になったときに、治療を開始した。ゲムシタビンで治療した全ての腫瘍は成長したが、化合物D+ゲムシタビンによる併用治療は、このグループの半分に腫瘍退縮をもたらし、かつゲムシタビン治療グループと比較して、このグループの平均腫瘍サイズの点で著しい腫瘍成長阻害をもたらした(
図13A、p値=7.35×10
-5)。
【0365】
実験の終わりに、1グループ当たり3つの腫瘍の、サイズが類似した腫瘍片を、それらの生存率及び増殖活性を試験するために、別々のプレートで培養した。9日後に、プレートを固定及び染色すると、ゲムシタビン+化合物Dで治療したマウスの腫瘍における非常に低い程度から無視できる程度の増殖活性とは対照的に、ゲムシタビン治療腫瘍において大規模な増殖が示された(
図13B)。
【0366】
結論
化合物Dは、意外にも化学療法薬ゲムシタビンと相乗作用し、膵臓癌においてゲムシタビンに対して発現した耐性に対抗した。
【0367】
実施例11:化合物Dは、付属器腺癌転移患者由来の腫瘍を移植したマウスにおいてセツキシマブに対する獲得耐性を防止する
実験システム:ヒト原発性付属器アデノ転移性癌生検の患者由来の異種移植片(PDX)をNodScidマウスに皮下移植する。
【0368】
1.動物及び生検
・生検:新鮮なヒト付属器腺癌転移(皮膚)生検(試料ID:RA-162)
・有効性研究のためのNodScidマウスへの腫瘍生検移植片(P3)の移植:腫瘍(P2)が約1500mm3の平均サイズに達した時に、実施例1に記載したのと同じ手順で、バル=イラン大学の動物施設内での自家育種によって作製した50匹の雄NodScidマウスに腫瘍組織を注射した。
・腫瘍が約90mm3の平均サイズに達した19匹のマウスをこの研究に含めた。
【0369】
これらのマウスを4つのグループに分け、以下の治療を開始した(0日目):
対照:NT219のビヒクル(20%のHPbCD)50μl IV 週2回-5匹のマウス
化合物D 70mg/kg IV 週2回-6匹のマウス
セツキシマブ 1mg/マウス IP 週2回-5匹のマウス
セツキシマブ(1mg/マウス IP)+化合物D(70mg/kg IV)、週2回-3匹のマウス
併用グループにおいて、セツキシマブを、化合物D投与後約4時間の時点で投与した。
【0370】
腫瘍の長さ(l)及び幅(w)を週に4回測定し、以下のように腫瘍体積を計算した:v=lw2/2。グラフは、標準誤差(標準偏差/グループサイズの平方根)付き平均腫瘍体積を表す。マウスの体重及び行動を、少なくとも週1回調べた。
【0371】
結果
治療の5日後に対照グループのマウスは、エンドポイント(1.5cm
3を上回る腫瘍サイズとして定義される)に達し(
図14)、屠殺した。
【0372】
セツキシマブによる治療は、一過的な腫瘍成長減弱をもたらし、その後、セツキシマブに対する耐性を獲得し、治療の間、腫瘍は成長した(治療の26日目以降)。
【0373】
セツキシマブ+化合物Dによる併用治療は、著しい腫瘍退縮をもたらしたが、セツキシマブ治療グループは500mm3を超える平均腫瘍体積を示した-併用治療(セツキシマブ+化合物D)の平均腫瘍体積は、実験の終わりの時点でわずか60mm3であった(34日目)。
【0374】
実施例12.化合物Dは、結腸癌患者からの腫瘍を移植したマウスにおいて、セツキシマブとフォルフィリの併用治療(結腸癌患者について承認された治療)に対する獲得耐性を防止する。フォルフィリは以下のレジメンを含有する:
・FOL-フォリン酸(ロイコボリン)、高用量の薬物メトトレキセート用の「レスキュー」薬として使用されるが、5-フルオロウラシルの細胞毒性を増加させるビタミンB誘導体;
・F-フルオロウラシル(5-FU)、DNA分子に組み込まれ、合成を停止させるピリミジンの類似体及び代謝拮抗剤;及び
・IRI-イリノテカン(カンプトサール)、DNAをほどき、複製するのを防止するトポイソメラーゼ阻害剤。
【0375】
実験システム:ヒト原発性結腸転移性癌生検の患者由来の異種移植片(PDX)をNodScidマウスに皮下移植する。
1.動物及び生検
・生検:新鮮なヒト結腸癌生検(試料ID:RA-149)
・有効性研究のためのNodScidマウスへの腫瘍生検移植片(P4)の移植:腫瘍(P3)が約1500mm3の平均サイズに達した時に、実施例1に記載したのと同じ手順で、バル=イラン大学の動物施設内での自家育種によって作製した雄のNodScidマウスに腫瘍組織を注射した。
・腫瘍が約110mm3の平均サイズに達した36匹のマウスをこの研究に含めた。
【0376】
マウスを7つのグループに分け、以下の治療を開始した(0日目):
対照:NT219のビヒクル(20%のHPbCD)50μl IV 週2回-5匹のマウス
化合物D 70mg/kg IV 週2回-5匹のマウス
セツキシマブ 1mg/マウス IP 週2回-5匹のマウス
FOLFIRI IP 週5回-5匹のマウス
セツキシマブ 1mg/マウス IP 週2回+FOLFIRI IP 週5回-5匹のマウス
セツキシマブ 1mg/マウス IP 週2回+FOLFIRI IP 週5回+化合物D 70mg/kg IV 週2回-6匹のマウス
併用グループにおいて、セツキシマブを、化合物D投与後約4時間の時点で投与した。
【0377】
結腸癌において、セツキシマブは、単独療法として有効ではなく、したがって、フォルフィリのような化学療法と組み合わせることで患者のために承認されている。フォルフィリには、フォリン酸(ロイコベリン)、5-FU及びイリノテカンが含まれる。
【0378】
腫瘍の長さ(l)及び幅(w)を週に4回測定し、以下のように腫瘍体積を計算した:v=lw2/2。グラフは、標準誤差(標準偏差/グループサイズの平方根)付き平均腫瘍体積を表す。マウスの体重及び行動を、少なくとも週1回調べた。
【0379】
結果
腫瘍成長に対する効果は、セツキシマブ、化合物D又はフォルフィリ単独のいずれかによって治療したグループでは検出されなかった。しかし、化合物Dの有無にかかわらず、フォルフィリとセツキシマブの組み合わせは、腫瘍の著しい退縮をもたらした(
図15)。
【0380】
治療の12日後に、セツキシマブ+フォルフィリグループの腫瘍は、治療に対する耐性を発現し、成長したが、セツキシマブ+フォルフィリ+化合物Dグループの腫瘍は、退縮し、治療に対する耐性を獲得しなかった(
図15)。
【0381】
結論
FDAは、試験によりKRAS変異について陰性である、転移性結腸直腸癌を有する患者のための1次治療としてフォルフィリレジメンと組み合わせたセツキシマブ(アービタックス)を承認した。結腸直腸癌における単剤療法としてのセツキシマブは、通常、有効ではない。RA_149生検の結腸癌PDXモデルは、臨床症状に従ったものであり、単剤療法としてのセツキシマブは有効ではないが、フォルフィリのような化学療法と共に、劇的な腫瘍退縮を誘導する。加えて、残念ながら患者で見られるとおり、耐性が獲得され、腫瘍は成長する。発明者らは、この療法と化合物Dを組み合わせることで、セツキシマブ+フォルフィリに対する獲得耐性を防止し、陽性応答を延長することを示す。
【0382】
本発明の特定の実施形態を例示し、説明してきたが、本発明は本明細書に記載の実施形態に限定されないことは明らかである。多数の修正、変更、変形、置換及び均等物は、以下の特許請求の範囲によって記載されるように、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく当業者には明らかであろう。