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特開2023-62199脳中の転移乳癌および他の癌を処置するための方法および組成物
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  • 特開-脳中の転移乳癌および他の癌を処置するための方法および組成物 図1
  • 特開-脳中の転移乳癌および他の癌を処置するための方法および組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062199
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】脳中の転移乳癌および他の癌を処置するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/76 20150101AFI20230425BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230425BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230425BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230425BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230425BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20230425BHJP
【FI】
A61K35/76 ZNA
A61P35/00
A61P35/04
A61K48/00
A61P25/00
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 N
A61K39/395 T
C12N15/13
C12N15/864 100Z
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023028221
(22)【出願日】2023-02-27
(62)【分割の表示】P 2020019623の分割
【原出願日】2015-04-24
(31)【優先権主張番号】61/984,686
(32)【優先日】2014-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】502409813
【氏名又は名称】ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウイルソン,ジエームズ・エム
(72)【発明者】
【氏名】ロスウエル,ウイリアム・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヒンデラー,クリスチヤン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】中枢神経系送達のため配合される少なくとも1つのAAVベクターを含んでなる組成物を提供する。
【解決手段】組成物は、そのための発現制御配列に作動可能に連結されている脳への送達のための抗悪性腫瘍免疫グロブリン構築物をコードする配列を含有する少なくとも1つの発現カセットおよび製薬学的に許容できる担体を含んでなる。該抗悪性腫瘍免疫グロブリン構築物は、胎児性Fc受容体(FcRn)に対する低下された親和性を有するか若しくは測定可能な親和性を有しないように改変されている免疫グロブリンでありうる。とりわけ脳の原発および/若しくは転移癌のための製薬学的組成物の製造におけるこれら構築物の使用方法および抗悪性腫瘍レジメンにおけるそれらの使用もまた提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中枢神経系送達のため配合される少なくとも1つのAAVベクターを含んでなる組成物であって、前記組成物が、そのための発現制御配列に作動可能に連結されている脳への送達のための抗悪性腫瘍免疫グロブリン構築物をコードする配列を含有する少なくとも1つの発現カセットおよび製薬学的に許容できる担体を含んでなる、上記組成物。
【請求項2】
抗悪性腫瘍免疫グロブリン構築物が、胎児性Fc受容体(FcRn)に対する低下された親和性を有するか若しくは測定可能な親和性を有しないように改変されている免疫グロブリンを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
抗悪性腫瘍免疫グロブリン構築物が、増大されたADCC活性を有するように改変されている免疫グロブリンを含んでなる、請求項1若しくは請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
免疫グロブリン構築物が、位置Y436(配列番号25のaa459)、S254(配列番号25のaa277)、I253(配列番号25のaa276)および/若しくはH435(配列番号25のaa458)の1種若しくはそれ以上で改変されている、請求項2若しくは請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
抗悪性腫瘍免疫グロブリン構築物が、モノクローナル抗体、Fv、Fab、F(ab)2、F(ab)3、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、イムノアドヘシン若しくは一本鎖可変フラグメント抗体から選択される、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項6】
免疫グロブリン構築物が原発若しくは転移CNS癌に向けられる、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項7】
免疫グロブリンが、トラスツズマブ、212-Pb-TCMC-トラスツズマブ若しくはペルツズマブよりなる群から選択される抗Her2抗体である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
トラスツズマブの重鎖をコードする配列が、配列番号1のnt61-1410の核酸配列若しくはそれに最低90%同一の配列を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
トラスツズマブの軽鎖をコードする配列が、配列番号1のnt2070-2711に示される核酸配列若しくはそれに最低90%同一の配列を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1つのAAVベクターがAAV9、AAV rh10若しくはAAV hu37キャプシドを有する、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項11】
組成物が最低2種の異なる抗体発現カセットを含んでなるAAVを含んでなる、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項12】
組成物が単一抗体発現カセットを含んでなる、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項13】
FcRnについての破壊された結合を有する抗Her2重鎖を含んでなる、AA9キャプシドを有しかつ抗Her2 IgG抗体若しくはその機能的フラグメントをコードする発現カセットをその中にパッケージングしているAAVウイルスベクターを含んでなる組
成物。
【請求項14】
脳中の腫瘍の増殖を遅らせる方法であって、前記方法が請求項1ないし13のいずれか1つに記載の組成物をそれの必要な被験体に投与することを含んでなる、上記方法。
【請求項15】
前記組成物がくも膜下腔内に投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が血液脳関門の化学的若しくは物理的破壊の非存在下で投与される、請求項14若しくは15に記載の方法。
【請求項17】
脳中の転移乳癌の処置方法であって、前記方法が請求項1ないし13のいずれか1つに記載の組成物をそれの必要な被験体に投与することを含んでなる、上記方法。
【請求項18】
前記組成物がくも膜下腔内に投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が血液脳関門の化学的若しくは物理的破壊の非存在下で投与される、請求項17若しくは18に記載の方法。
【請求項20】
生物学的製剤、小分子、抗悪性腫瘍薬、放射線および/若しくは化学療法剤と組合せの請求項1ないし13のいずれかに記載の組成物を投与することを含んでなる抗悪性腫瘍レジメン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[電子的形態で提出された資料の引用することによる組み込み]
出願人は、電子的形態で提出される配列表資料を引用することにより本明細書に組み込む。本ファイルは「14-7028PCT_ST25.txt」と表示される。
【背景技術】
【0002】
脳転移は、そのための処置の選択肢がほとんどなくかつ不十分である乳癌の普遍的かつ破壊的な続発症である。乳癌患者の6~16%が中枢神経系(CNS)転移を発症する。これらの患者は診断の時から20%の1年および1.3%の5年の生存率中央値を有する。非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4。脳転移の外科的切除はしばしば実現不可能であり、そして化学療法剤は血液脳関門(BBB)によりCNSからほとんど排除される[非特許文献5]。乳癌脳転移を処置するための代替療法が必要とされる。
【0003】
HER2受容体チロシンキナーゼを過剰発現する乳癌はCNSに転移する高い傾向を有し、そして全乳癌症例の25~30%を構成する[非特許文献6]。トラスツズマブ(ハーセプチン(Herceptin)(登録商標))はHER2に向けられた第一選択の治療的免疫グロブリンG(IgG)モノクローナル抗体(mAb)であり;この抗体はHER2陽性疾患を伴う患者の生存を有意に改善することが報告されている[非特許文献7;非特許文献8]。しかしながら、mAbはBBBを横断しないため、トラスツズマブから利益を得る患者は、しばしばCNS疾患の同時の進行を経験する。[上に引用される非特許文献5]。トラスツズマブをCNS中に直接注入することは安全であることが判明しており、そして髄膜癌腫症を伴う患者へのトラスツズマブのくも膜下腔内投与は全生存を2から13.5か月に増大させることが報告されている[非特許文献9]。軟膜癌腫症は無傷よりはむしろ障害された血液脳関門を伴う。非特許文献10は、循環する微小気泡と組合せられた集束超音波バースト(focused ultrasound burst)がトラスツズマブに対し血液脳関門および血液腫瘍関門の双方を一時的に透過性にし得ることを報告する。
【0004】
現在の治療法は全身性疾患の改良された制御に至った一方、ヒト乳癌のCNSへの転移性播種の処置は大きな治療上の課題である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】DiStefano Aら、Cancer.1979;44:1913-1918
【非特許文献2】Takakura Kら、Metastatic tumors of the central nervous system.Tokyo:Igaku-Shoin、1982
【非特許文献3】Hall WAら、Long-term survival with metastatic cancer to the brain.Med Oncol.2000 Nov;17(4):279-86
【非特許文献4】Pienkowski T、Zielinski CC.Trastuzumab treatment in patients with breast cancer and metastatic CNS disease.Ann Oncol.2010 May;21(5):917-24
【非特許文献5】Nakayama Aら、Antitumor Activity of TAK-285,an Investigational,Non-Pgp Substrate HER2/EGFR Kinase Inhibitor,in Cultured Tumor Cells,Mouse and Rat Xenograft Tumors,and in an HER2-Positive Brain Metastasis Model、J Cancer.2013 Aug 16;4(7)
【非特許文献6】Bendell JCら、Central nervous system metastases in women who receive trastuzumab-based therapy for metastatic breast carcinoma.Cancer.2003 Jun 15;97(12):2972-7
【非特許文献7】Lin NUら、Brain metastases:the HER2 paradigm.Clin Cancer Res.2007 Mar 15;13(6):1648-55
【非特許文献8】Palmieri Dら、Her-2 overexpression increases the metastatic outgrowth of breast cancer cells in the brain.Cancer Res.2007 May 1;67(9):4190-8
【非特許文献9】Zagouri Fら、Intrathecal administration of trastuzumab for the treatment of meningeal carcinomatosis in HER2-positive metastatic breast cancer:a systematic review and pooled analysis.Breast Cancer Res Treat.2013 May;139(1):13-22
【非特許文献10】Park,E-Jら、J Controlled Release、163(2012)、277-284
【発明の概要】
【0006】
中枢神経系への送達のため配合されている少なくとも1つのAAVベクターを含んでなる抗悪性腫瘍組成物が提供され、ここで前記組成物は、そのための発現制御配列に作動可能に連結されているCNSへの送達のための抗悪性腫瘍免疫グロブリン産物をコードする配列を含有する最低1個の発現カセットおよび製薬学的に許容できる担体を含んでなる。一例において、該抗悪性腫瘍免疫グロブリン構築物は胎児性Fc受容体(FcRn)に対する低下された親和性を有するか若しくは測定可能な親和性を有しないように改変されている免疫グロブリンを含んでなる。適しては、本組成物は、脳中の腫瘍の増殖を遅らせることにおける使用ならびに/または腫瘍サイズを低下させるためおよび/若しくは被験体の無増悪生存を増大させるために有効である。
【0007】
一局面において、本明細書で提供されるところの組成物は、AAV9キャプシドを有し、かつ、FcRnに対する破壊された結合を有する抗Her2重鎖を含んでなる抗Her2 IgG抗体若しくはその機能的フラグメントをコードする発現カセットをその中にパッケージングさせている、AAVウイルスベクターを含んでなる。
【0008】
別の局面において、本明細書に記述されるところの組成物を中枢神経系に例えばくも膜下腔内に投与することを必要とする、脳中の腫瘍の増殖を遅らせる方法が提供される。一局面において、該組成物は血液脳関門の化学的若しくは物理的破壊の非存在下で投与される。
【0009】
なお別の局面において、本発明は、本明細書に記述されるところの組成物をそれの必要な被験体に投与することによる脳中の腫瘍の処置方法を提供する。
【0010】
なお別の局面において、本発明は、抗体若しくは他の生物学的製剤、小分子抗悪性腫瘍薬、放射線および/または化学療法剤と組合せの本明細書に記述されるところの組成物を投与することを含んでなる、抗悪性腫瘍レジメンを提供する。
【0011】
本発明のなお他の局面および利点は本発明の以下の詳細な記述から容易に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】配列の上の配列表の番号付け[配列番号25]および配列の下の慣習的なEu(IMGT)の番号付けを伴うトラスツズマブのポリペプチドの重鎖のアミノ酸配列を提供する。
図2】1×1011 GC ICVのAAV9.trastuzumab若しくはAAV9.201IAを予防的に与えられ、その後ベクター投与21日後にBT474-M1.ffluc腫瘍細胞を脳中に移植されたマウスの生存曲線を提供する。201IA群(偽似処置)の生存中央値は66日であることが示される一方、AAV9.trastuzumabで処置された群の生存中央値は99日で、生存率の33%増加である。
【0013】
[発明の詳細な記述]
本明細書に記述される組成物およびレジメンは抗悪性腫瘍免疫グロブリン構築物の中枢神経系への送達に有用である。AAV-Igを含んでなる本明細書に記述される組成物は、中枢神経系(CNS)の癌(腫瘍)および具体的には脳中に位置するものに十分に適する。
【0014】
本明細書で使用されるところの「CNS腫瘍」という用語は、脳(頭蓋内)、髄膜(脳および脊髄を覆う結合組織層)若しくは脊髄中に位置しうる原発若しくは転移癌を包含する。原発CNS癌の例は、とりわけ、神経膠腫(膠芽腫(多形神経膠芽腫としてもまた知られる)、星状細胞腫、乏突起神経膠腫および上衣腫ならびに混合膠腫を包含しうる)、髄膜腫、髄芽腫、神経腫、ならびに原発CNSリンパ腫(脳、脊髄若しくは髄膜中の)であり得る。転移癌の例は、別の組織若しくは器官例えば乳房、肺、リンパ腫、白血病、黒色腫(皮膚癌)、結腸、腎、前立腺から発するもの若しくは脳に転移する他の種類を包含する。
【0015】
本明細書で使用されるところの「抗悪性腫瘍」免疫グロブリン構築物(本明細書で定義されるところの抗体若しくは抗体フラグメントを包含する)は、癌細胞若しくは充実性腫瘍上に位置する細胞表面抗原若しくは受容体に結合しかつ腫瘍若しくは非充実型腫瘍中の悪性細胞の増殖および拡散を阻害若しくは予防しそして場合によっては腫瘍のサイズを低下させる、ポリペプチドに基づく部分をコードする。抗悪性腫瘍免疫グロブリンポリペプチドは、多数の機序、例えば、増殖因子受容体を阻害すること、細胞周期を制御するシグナルを送達するための細胞膜抗原に架橋結合すること、血管新生を阻害すること、化学療法後のDNA修復を阻害すること、若しくはなお細胞死を誘発することにより腫瘍細胞増殖を阻害することにより、機能し得る。あるいは、それらは抗体依存性および補体媒介性細胞傷害のような宿主の免疫エフェクター機能を活性化することにより間接的に腫瘍増殖に影響し得る。一態様において、本明細書に記述される組成物およびレジメンの抗悪性腫瘍効果は、処置されない若しくは他のレジメンで処置される被験体に比較した腫瘍サイズの低減および/若しくは増大された無増悪生存率により評価し得る。
【0016】
「免疫グロブリン」という用語は、抗体、その機能的フラグメントおよびイムノアドヘシンを包含するように本明細書で使用される。抗体は、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ラクダ化単一ドメイン抗体、細胞内抗体(「イントラボディ(intr
aobodies)」、組換え抗体、多特異性抗体、Fv、Fab、F(ab)2、F(
ab)3、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2のような抗体フラグメント、一本鎖可変フラグメント抗体(scFv)、タンデム/ビスscFv、Fc、pFc’、scFvFc(若しくはscFv-Fc)、ジスルフィドFv(dsfv)、BiTE抗体のような二特異性抗体(bc-scFv);ラクダ科動物の(camelid)抗体、表面再構成(resurfaced)抗体、ヒト化抗体、完全にヒトの抗体、単一ドメイン抗体(sdAb、NANOBORY(登録商標)としてもまた知られる)、キメラ抗体、最低1個のヒト定常領域を含んでなるキメラ抗体などを包含する多様な形態で存在しうる。「抗体フラグメント」は、その標的例えば腫瘍細胞に結合する免疫グロブリンの可変領域の少なくとも一部分を指す。
【0017】
タンパク質若しくは核酸に関して使用される場合の「異種の」という用語は、該タンパク質若しくは核酸が、天然に相互に対し同一の関係で見出されない2種若しくはそれ以上の配列若しくは下位配列を含んでなることを示す。例えば、核酸は典型的に組換えで製造され、新たな機能的核酸を作成するように配置されている無関係の遺伝子からの2若しくはそれ以上の配列を有する。例えば、一態様において、核酸は異なる遺伝子からのコーディング配列の発現を指図するよう配置されている1遺伝子からのプロモーターを有する。従って、該コーディング配列に関して該プロモーターは異種である。
【0018】
本明細書で使用されるところの「発現カセット」は、免疫グロブリン遺伝子(1個若しくは複数)(例えば、免疫グロブリン可変領域、免疫グロブリン定常領域、完全長軽鎖、完全長重鎖若しくは免疫グロブリン構築物の別のフラグメント)、プロモーターを含んでなりかつそのための他の制御配列を包含しうる核酸分子を指し、このカセットは、遺伝要素(例えばプラスミド)を介してパッケージング宿主細胞に送達されかつウイルスベクターのキャプシド(例えばウイルス粒子)中にパッケージングされることができる。典型的には、ウイルスベクターを生成するためのこうした発現カセットは、ウイルスゲノムのパッケージングシグナルおよび本明細書に記述されるもののような他の発現制御配列により隣接されている本明細書に記述される免疫グロブリン配列を含有する。
【0019】
上述されたところの「約」という用語は、数値を修飾するために使用される場合、別の方法で明記されない限り±10%の変動を意味している。
【0020】
本明細および請求の範囲を通じて使用されるところの「含んでなる(comprise)」および「含有する(contain)」という用語、ならびに変形のなかでも「含んでなる(comprises)」、「含んでなる(こと)(comprising)」、「含有する(contains)」および「含有する(こと)(containing)」を包含するその変形は、他の成分、要素、整数、段階などを包含する。「よりなる(consist of)」若しくは「よりなる(こと)(consisting of)」という用語は他の成分、要素、整数、段階などを排除する。
【0021】
AAVベクターからの発現のため、抗悪性腫瘍免疫グロブリン構築物についてのアミノ酸配列は、公表されているもの、商業的に入手可能であるもの、および本明細書に記述されるコーディング配列から選択される。本明細書に記述されるところの抗悪性腫瘍免疫グロブリンは、HER2のようなヒト上皮成長因子受容体(HER)を標的としうる。トラスツズマブの一例は組換えIgG1κ、すなわち細胞に基づくアッセイでヒト上皮成長因子受容体タンパク質の細胞外ドメインに高親和性(Kd=5nM)を伴い選択的に結合するヒト化モノクローナル抗体である。商業的に入手可能な製品はCHO細胞培養物中で製造される。例えばhttp://www.drugbank.ca/drugs/DB00072を参照されたい。トラスツズマブ軽鎖1および2ならびに重鎖1および2のアミノ酸配列、ならびにトラスツズマブのX線構造の研究から得られる配列は、受託番号DB
00072でこのデータベース上で提供され、この配列は引用することにより本明細書に組み込まれる。212-Pb-TCMC-trastuzumab[Areva Med、メリーランド州ベセスダ]もまた参照されたい。目的の別の抗体は、例えばペルツズマブ、すなわちヒト上皮成長因子受容体2タンパク質(HER2)の細胞外二量体化ドメイン(サブドメインII)を標的とする組換えヒト化モノクローナル抗体を包含する。それはそれぞれ448および214残基を有する2本の重鎖および2本の軽鎖よりなる。FDA承認2012年6月8日。その重鎖および軽鎖のアミノ酸配列は、例えば、www.drugbank.ca/drugs/DB06366(異名は2C4、MOAB 2C4、モノクローナル抗体2C4およびrhuMAb-2C4を包含する)中のこのデータベース上に受託番号DB06366で提供される。HER2に加え、他のHER標的を選択しうる。
【0022】
例えば、MM-121/SAR256212は、HER3受容体を標的とし[Merrimack’s Network Biology]かつ非小細胞肺癌(NSCLC)、乳癌および卵巣癌の処置で有用であることが報告されている、完全にヒトのモノクローナル抗体である。SAR256212はHER3(ErbB3)受容体を標的とする治験用の完全にヒトのモノクローナル抗体である[Sanofi Oncology]。別の抗Her3/EGFR抗体はRG7597[Genentech]であり、頭頸部癌で有用であると記述されている。別の抗体マルゲツキシマブ(margetuximab)(若しくはMGAH22)すなわちHERを標的とする次世代のFc最適化されたモノクローナル抗体(mAb)[MacroGenics]もまた利用しうる。
【0023】
あるいは、他のヒト上皮細胞表面マーカーおよび/または他の腫瘍受容体若しくは抗原を標的としうる。他の細胞表面マーカー標的の例は、例えば、5T4、CA-125、CEA(例えばラベツズマブにより標的とされる)、CD3、CD19、CD20(例えばリツキシマブにより標的とされる)、CD22(例えばエプラツズマブ若しくはベルツズマブにより標的とされる)、CD30、CD33、CD40、CD44、CD51(またインテグリンαvβ3)、CD133(例えば膠芽腫細胞)、CTLA-4(例えば、例えば神経芽腫の処置で使用されるイピリムマブ)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体2(CXCR2)(脳中の多様な領域で発現される;例えば抗CXCR2(細胞外)抗体#ACR-012(Alomene Labs));EpCAM、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)[例えば第WO2012020006A2号明細書を参照されたい、脳癌]、葉酸受容体α(例えば小児上衣脳腫瘍、頭頸部癌)、線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)(抗FGFR1抗体を用いる癌の協議処理(discusion treatment)について、ら、第WO2012125124A1号明細書を参照されたい)、FGFR2(例えば、第WO2013076186A号明細書および第WO2011143318A2号明細書に記述される抗体を参照されたい)、FGFR3(例えば、第US8187601号明細書および第WO2010111367A1号明細書に記述される抗体を参照されたい)、FGFR4(例えば、第WO2012138975A1号明細書に記述される抗FGFR4抗体を参照されたい)、肝細胞増殖因子(HGF)(例えば第WO2010119991A3号明細書中の抗体を参照されたい)、インテグリンα5β1、IGF-1受容体、ガングリオシドGD2(例えば第WO2011160119A2号明細書に記述される抗体を参照されたい)、ガングリオシドGD3、膜貫通糖タンパク質NMB(GPNMB)(とりわけ神経膠腫と関連しかつ抗体グレムバツムマブ(glembatumumab)(CR011)の標的、ムチン、MUC1、ホスファチジルセリン(例えば、バビツキシマブ(bavituximab)により標的とされる、Peregrine Pharmaceuticals,Inc]、前立腺癌細胞、PD-L1(例えば、ニボルマブ(BMS-936558、MDX-1106、ONO-4538)、完全にヒトのgG4、例えば転移黒色腫]、血小板由来増殖因子受容体α(PDGFRα)若しくはCD140、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72)、テネイシンC、
腫瘍壊死因子(TNF)受容体(TRAIL-R2)、血管内皮増殖因子(VEGF)A(例えばベバシズマブにより標的とされる)ならびにVEGFR2(例えばラムシルマブにより標的とされる)を包含する。他の抗体およびそれらの標的は、例えばモノクローナル抗体APN301(hu14.19-IL2)[小児における悪性黒色腫および神経芽腫、Apeiron Biologics、オーストリア・ウィーン]を包含する。例えば、転移乳癌を包含する充実性腫瘍の処置に有用であると記述されているモノクローナル抗体8H9もまた参照されたい。モノクローナル抗体8H9はB7H3抗原に対する特異性をもつマウスIgG1抗体である[United Therapeutics Corporation]。このマウス抗体はヒト化され得る。B7-H3および/若しくはB7-H4抗原を標的とするなお他の免疫グロブリン構築物を本発明で使用しうる。別の抗体はS58(抗GD2、神経芽腫)である。CotaraTM[Perregrince Pharmaceuticals]は再発性膠芽腫の処置について記述されているモノクローナル抗体である。他の抗体は、例えばアバスチン、フィクラツズマブ(ficlatuzumab)、medi-575およびオララツマブ(olaratumab)を包含しうる。なお他の免疫グロブリン構築物若しくはモノクローナル抗体を本発明での使用のため選択しうる。例えば、Medicines in Development Biologics,2013 Report、pp.1-87、PhRMA’s Communications&Public Affairs Departmentの刊行物。(202)835-3460(本明細書に引用することにより組み込まれる)を参照されたい。
【0024】
標的および免疫グロブリンが一旦選択されれば、選択された免疫グロブリン(例えば重および/若しくは軽鎖(1種若しくは複数))のコーディング配列を得かつ/若しくは合成することができる。タンパク質、ペプチド若しくはポリペプチド(例えば免疫グロブリンのような)のシークエンシング方法は当業者に既知である。タンパク質の配列が一旦知られれば、アミノ酸配列を核酸コーディング配列に戻し翻訳する、ウェブに基づくおよび商業的に利用可能なコンピュータプログラムならびにサービスをベースとする会社(service based companies)が存在する。例えば、EMBOSSによるbacktranseq、http://www.ebi.ac.uk/Tools/st/;Gene Infinity(http://www.geneinfinity.org/sms/sms_backtranslation.html);ExPasy(http://www.expasy.org/tools/)を参照されたい。一態様において、RNAおよび/若しくはcDNAコーディング配列が、ヒト細胞中での最適の発現のために設計される。
【0025】
コドン最適化されたコーディング領域は多様な異なる方法により設計し得る。この最適化は、オンラインで利用可能である方法(例えばGeneArt)、公表された方法、若しくはコドン最適化サービスを提供する会社例えばDNA2.0(カリフォルニア州メンローパーク)を使用して実施しうる。1つのコドンを最適化するアルゴリズムが、例えば米国国際特許公開第WO2015/012924号明細書(本明細書に引用することにより組み込まれる)に記述されている。例えば米国特許公開第2014/0032186号明細書および米国特許公開第2006/0136184号明細書もまた参照されたい。適しては、産物の読み取り枠(ORF)の長さ全体が改変される。しかしながら、いくつかの態様において、ORFの1フラグメントのみを変えてもよい。これらの方法の1つを使用することにより、いずれか所定のポリペプチド配列に対する該頻度を適用し得、そして該ポリペプチドをコードするコドン最適化されたコーディング領域の核酸フラグメントを製造し得る。
【0026】
多数の選択肢が、コドンに対する実際の変化を実施するため若しくは本明細書に記述されるとおり設計されたコドン最適化されたコーディング領域を合成するために利用可能で
ある。こうした改変若しくは合成は、当業者に公知の標準かつ慣例の分子生物学的操作を使用して実施し得る。1アプローチにおいて、長さ各80~90ヌクレオチドのかつ所望の配列の長さにわたる一連の相補オリゴヌクレオチド対を標準的方法により合成する。アニーリングに際してそれらが付着端を含有する80~90塩基対の二本鎖フラグメントを形成するようなこれらのオリゴヌクレオチド対を合成し、例えば、該対中の各オリゴヌクレオチドを、該対中の他のオリゴヌクレオチドに相補的である領域を超え3、4、5、6、7、8、9、10若しくはそれ以上の塩基を伸長するように合成する。オリゴヌクレオチドの各対の一本鎖端を、オリゴヌクレオチドの別の対の一本鎖端とアニーリングするよう設計する。該オリゴヌクレオチド対をアニーリングさせ、そしてこれら二本鎖フラグメントのおよそ5ないし6個をその後、付着一本鎖端を介して一緒にアニーリングさせ、そしてその後それらを一緒に連結し、そして標準的細菌クローニングベクター、例えばInvitrogen Corporation、カリフォルニア州カールズバッドから入手可能なTOPO(登録商標)ベクター中にクローン化する。該構築物をその後標準的方法によりシークエンスする。一緒に連結された80ないし90塩基対フラグメントの5ないし6フラグメント、すなわち約500塩基対のフラグメントよりなるこれら構築物のいくつかを製造し、その結果所望の配列全体が一連のプラスミド構築物中で表示される。これらプラスミドの挿入物をその後適切な制限酵素で切断し、そして一緒に連結して最終構築物を形成する。該最終構築物をその後標準的細菌クローニングベクターにクローン化しかつシークエンスする。付加的な方法は当業者に直ちに明らかであろう。加えて、遺伝子合成は容易に商業的に利用可能である。
【0027】
本明細書に記述される免疫グロブリン遺伝子は、「野生型」すなわち公表された若しくは商業的に入手可能なまたは他の既知の定常免疫グロブリンドメインを発現するのに使用しうるか、あるいは免疫グロブリン上に存在するFc結合部位に結合するための親和性を低下若しくは結合を除去するように操作し得る。それらが認識する抗体の種類に基づき分類されるいくつかの異なる種類のFc受容体が存在する。本明細書で使用されるところの「FcRn」はIgGを結合する胎児性Fc受容体を指す。それはMHCクラスIタンパク質に構造が類似である。ヒトにおいて、それはFCGRT遺伝子によりコードされる。該Fc受容体は、例えば血液脳関門の上皮細胞を包含する多用な細胞型上に位置する。本明細書で使用されるところの「FcRn結合ドメイン」という用語は、FcRnに直接若しくは間接的に結合するタンパク質ドメインを指す。FcRnは哺乳動物FcRnでありうる。さらなる態様において、FcRnはヒトFcRnである。FcRnに直接結合するFcRn結合ドメインは抗体Fc領域である。同時に、ヒトFcRn結合活性を有するアルブミン若しくはIgGのようなポリペプチドに結合することが可能な領域は、アルブミン、IgG若しくはそのようなものを介してヒトFcRnに間接的に結合し得る。従って、こうしたヒトFcRn結合領域はヒトFcRn結合活性を有するポリペプチドに結合する領域でありうる。本明細書で使用されるところの「Fc領域」という用語は、FcRnすなわち哺乳動物FcRn若しくはヒトFcRnに直接結合するFcRn結合ドメインを指す。具体的には、Fc領域は抗体のFc領域である。Fc領域は哺乳動物Fc領域若しくはより具体的にはヒトFc領域でありうる。具体的には、Fc領域はヒト免疫グロブリンの第二および第三定常ドメイン(CH2およびCH3)内に位置しうる。さらに、Fc領域はCH2およびCH3のヒンジでありうる。一態様において、免疫グロブリン構築物はIgGである。さらなる一態様において、Fc領域はヒトIgG1のFc領域である。他のIgアイソタイプを同様に使用し得る。
【0028】
これら結合ドメインはIgG重鎖の定常領域(領域CH2およびCH3)内に位置するため、トラスツズマブ中の改変のための本明細書に提供されるアミノ酸位置は、対応するアミノ酸番号を同定するために改変のため選択された別の免疫グロブリン重鎖とのアライメントを製造することにより容易に決定し得る。こうしたアライメントを製造するための方法およびコンピュータプログラムが当業者に利用可能かつ公知である。本出願で言及さ
れるアミノ酸位置は配列番号3および25(重鎖)ならびに配列番号4(軽鎖)中で提供されるところのトラスツズマブの番号付けに基づく。置換は、(1文字記号により特定されるアミノ酸)-位置番号-(1文字記号により特定されるアミノ酸)としてもまた書くことができ、それにより第一のアミノ酸は置換されるアミノ酸でありかつ第二のアミノ酸は指定される位置の置換するアミノ酸である。本明細書で使用されるところの「置換」および「アミノ酸の置換」ならびに「アミノ酸置換」という用語は、アミノ酸配列中の1アミノ酸の別のものでの置換を指し、ここで後者は置き換えられるアミノ酸と異なる。アミノ酸の置換方法は当業者に公知であり、そして限定されるものでないが該アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の突然変異を挙げることができる。IgG中のアミノ酸置換の作成方法は、例えば、アミノ酸改変技術のその議論について引用することにより組み込まれる第WO2013/046704号明細書について記述されるとは言え、この文書は本明細書に記述されるところの結合親和性を低下若しくは除去することよりむしろFcRn親和性を増大することを記述する。
【0029】
上述される「アミノ酸置換」という用語およびその同義語は、1アミノ酸の別の置換するアミノ酸での置換による1アミノ酸配列の改変を包括することを意図している。該置換は保存的置換でありうる。2アミノ酸に関する保存的という用語は、該アミノ酸が当業者により認識される共通の特性を共有することを意味することを意図している。2アミノ酸に関する非保存的という用語は、当業者により認識される少なくとも1つの特性において差違を有するそのアミノ酸を意味することを意図している。例えば、こうした特性は、疎水性の非酸性側鎖を有するアミノ酸、疎水性側鎖(酸性若しくは非酸性とさらに識別されうる)を有するアミノ酸、脂肪族の疎水性側鎖を有するアミノ酸、芳香族の疎水性側鎖を有するアミノ酸、極性の中性側鎖をもつアミノ酸、荷電している側鎖をもつアミノ酸、荷電している酸性側鎖をもつアミノ酸、および荷電している塩基性側鎖をもつアミノ酸を包含しうる。天然に存在するおよび天然に存在しないアミノ酸双方が当該技術分野で既知であり、そして態様において置換するアミノ酸として使用されうる。従って、保存的アミノ酸置換は、疎水性側鎖を有する第一のアミノ酸を疎水性側鎖を有する異なるアミノ酸と交換することを必要とすることができ;一方、非保存的アミノ酸置換は、酸性の疎水性側鎖をもつ第一のアミノ酸を異なる側鎖例えば塩基性の疎水性側鎖若しくは親水性側鎖を有する異なるアミノ酸と交換することを必要としうる。なお他の保存的若しくは非保存的変化は当業者により決定され得る。
【0030】
なお他の態様において、所定の1位置での置換は、本明細書で特定される目的を達成するために当業者に明らかであることができる1アミノ酸若しくはアミノ酸の一群の1つであることができる。
【0031】
一態様において、本明細書で定義されるところの免疫グロブリン構築物は、免疫グロブリンFc領域の保存される領域に位置する天然の配列が除去されて、FcRnへの結合を排除しそして(CNS領域から)血液脳関門を横断しかつ全身循環中へのタンパク質性免疫グロブリン構築物の移動を最小限にする若しくは排除するように操作される。一例において、これはFcRn結合ドメインの1若しくはそれ以上のアミノ酸を変えることにより、例えば選択されるアミノ酸(1若しくは複数)のコドンの改変により、達成しうる。
【0032】
例えば、免疫グロブリンは、位置Y436(配列番号25のaa459)、S254(配列番号25のaa277)、I253(配列番号25のaa276)および/若しくはH435(配列番号25のaa458)のアミノ酸残基をコードするコドンの1個若しくはそれ以上において、別の適するアミノ酸例えばアラニン(Ala、A)に改変しうる。しかしながら、例えばT250(配列番号25のaa273)、M252(配列番号25のaa275)、S254(配列番号25のaa277)、T256(配列番号25のaa279)、P257(配列番号25のaa280)、P271(配列番号25のaa2
94)、T307(配列番号25のaa330)、Q311(配列番号25のaa334)、D376(配列番号25のaa399)、E380(配列番号25のaa403)、M428(配列番号25のaa451)および/若しくはN434(配列番号25のaa457)、または相互との若しくは本明細書に記述される他の改変とのこれらの組合せ1種若しくはそれ以上のような、FcRnに機能的に結合することに関与する他の位置を変異させうる。他の適する改変は、I253(配列番号25のaa276)、S254(配列番号25のaa277)、K288(配列番号25のaa311)、V305(配列番号25のaa328)、Q311(配列番号25のaa334)、D312(配列番号25のaa335)、K317(配列番号340のaa340)、K360(配列番号25のaa383)、Q362(配列番号25のaa385)、E380(配列番号25のaa403)、S415(配列番号25のaa438)、S424(配列番号25のaa447)、H433(配列番号25のaa456)、N434(配列番号25のaa457)、H435(配列番号25のaa458)および/若しくはY436(配列番号25のaa459)、または2種若しくはそれ以上の組合せに配置しうる。上述されたとおり、他のIgG重鎖CH2およびCH2中の対応する位置を選択しうる。本明細書の「1若しくはそれ以上」への言及は、例えば1、2、3、4、5、の個別の態様を包括することを意図している。付加的な態様において、「1若しくはそれ以上」という用語は、トラスツズマブ重鎖可変領域配列番号3、軽鎖可変領域配列番号4、重鎖配列番号25若しくは本明細書で同定される別のアミノ酸配列に対する最低約85%の同一性、最低90%の同一性、最低約95%の同一性若しくは最低約99%の同一性を生じるとみられる、本明細書に記述されるポリペプチド中の多数の置換を包含する。
【0033】
加えて、補体依存性細胞傷害(CDC)および/若しくは抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能を高める突然変異を、本明細書に記述されるトラスツズマブバリアントに組み込みうる。さらなる態様において、こうした突然変異は免疫細胞による腫瘍細胞の死滅を助長する。ADCC機能を高めるための適するアミノ酸改変の例は、例えば、とりわけ米国特許公開第2008/0118501号明細書;A Nasumeら、Drug Des
Devel Ther、2009、3;7-16、オンライン公開2009年9月21日。GA Lazarら、Proc Natl Acad Sci、vol.103、no.11、p.4005-4010(Mar 14,2006);およびGL Mooreら、MAbs、2010 Mar-Apr;2(2):181-189に記述されている。
【0034】
変異体の位置を同定するために本明細書で使用される重鎖アミノ酸の番号付けはEU番号付け体系[IMGT特有の番号付け、Edelman、G.M.ら、Proc.Natl.Acad.USA、63、78-85(1969);http://www.imgt.org/IMGTScientificChart/-Numbering/Hu_IGHGnber.html]]に基づき、そしてFcRn結合ドメイン、具体的にはFc領域中の位置を指す。類似の様式で、置換は例えば「EU387R」若しくは「EU440E」として示され、ここで「EU」の後に示される数字はEU番号付けに従った置換の位置を示し、そして数字の後の文字は1文字記号で示される置換されるアミノ酸である。他の番号付け体系は、例えばKabat,E.A.、T.T.Wu、H.M.Perry、K.S.Gottesman、C.Foeler.(1991)Sequences
of Proteins of Immunological Interest.No.91-3242 U.S.Public Health Services、National Institutes of Health、ベセスダ)を包含する。
【0035】
一態様において、抗Her2抗体は本明細書に記述されるところの組成物および方法のために選択される。一態様において、選択される抗体はトラスツズマブである。トラスツズマブのアミノ酸配列は、例えばP.Carterら、Proc Natl Acad
Sci.、89:4285-4289(May 1982)に記述されている。トラスツズマブ重鎖のアミノ酸配列は図1に提供され、配列表[配列番号25]およびEU番号付け体系双方を示す。トラスツズマブ重鎖可変領域のアミノ配列は[配列番号3]に示され、また、トラスツズマブ軽鎖可変領域は付属として付けられる配列表[配列番号4]に提供される。トラスツズマブを発現するため、ヒトにおけるトラスツズマブポリペプチドの最適の発現のため選択されたコドンを含有する新規核酸分子が設計された。さらに、該新規核酸分子は、可変および定常領域から構成される重および軽鎖ポリペプチドの上流に融合されたIL-2シグナルリーダーペプチドをコードするトラスツズマブの各重鎖および軽鎖にとって異種のリーダー配列を包含する。しかしながら、別の異種リーダー配列をIL-2シグナル/リーダーペプチドの一方若しくは双方の代わりに使用しうる。シグナル/リーダーペプチドは、各重鎖および軽鎖免疫グロブリン構築物について同一若しくは異なることができる。これらは免疫グロブリン(例えばIgG)中に天然に見出されるシグナル配列でありうるか、若しくは異種供給源からでありうる。こうした異種供給源は、とりわけ、サイトカイン(例えばIL-2、IL12、IL18など)、インスリン、アルブミン、β-グルクロニダーゼ、アルカリプロテアーゼ若しくはフィブロネクチン分泌シグナルペプチドでありうる。プロモーター(1種若しくは複数)は、多様な供給源、例えばヒトサイトメガロウイルス(CMV)前初期エンハンサー/プロモーター、SV40初期エンハンサー/プロモーター、JCポリモウイルス(polymovirus)プロモーター、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)若しくはグリア線維酸性タンパク質(GFAP)プロモーター、単純疱疹ウイルス(HSV-1)潜伏関連プロモーター(LAP)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)末端反復配列(LTR)プロモーター、ニューロン特異的プロモーター(NSE)、血小板由来増殖因子(PDGF)プロモーター、hSYN、メラニン凝集ホルモン(MCH)プロモーター、CBA、マトリックスメタロプロテインプロモーター(MPP)およびニワトリβ-アクチンプロモーターから選択し得る。
【0036】
本明細書に記述される発現カセットは、重および軽鎖のコーディング領域の間に配置される最低1個の配列内リボソーム進入部位すなわちIRESを含有しうる。あるいは、重および軽鎖はフューリン2a自己切断ペプチドリンカーにより分離されうる[例えばRadcliffeとMitrophanous、Gene Therapy(2004)、11、1673-1674を参照されたい。該発現カセットは最低1個のエンハンサーすなわちCMVエンハンサーを含有しうる。なお他のエンハンサーエレメントは、例えば、アポリポタンパク質エンハンサー、ゼブラフィッシュエンハンサー、GFAPエンハンサーエレメント、および第WO2013/1555222号明細書に記述されるような脳特異的エンハンサー、ウッドチャック肝炎後転写後調節エレメント(woodchuck post hepatitis post-transcriptional regulatory element)を包含しうる。加えて、若しくは、あるいは、他の、例えばハイブリッドヒトサイトメガロウイルス(HCMV)-前初期(IE)-PDGRプロモーター若しくは他のプロモーター-エンハンサーエレメントを選択しうる。発現を高めるため、他のエレメントはイントロンであり得る(promegaイントロン若しくはキメラニワトリグロビン-ヒト免疫グロブリンイントロンのような)。
【0037】
本明細書に提供されるところの、配列番号1の操作された核酸分子の番号付けに関して、トラスツズマブの重鎖ポリペプチドをコードする核酸配列はリーダー配列(配列番号1の1-60)を特徴とし、核酸61ないし423は免疫グロブリン重鎖(HC)可変配列のコーディング領域であり、核酸439ないし714はHC定常領域1のコーディング領域であり、核酸715ないし1410はHC定常領域2および3のコーディング領域である。IRESは、トラスツズマブ重鎖とトラスツズマブ軽鎖コーディング配列のリーダー配列との間の配列番号1の核酸1422-2012に配置される。トラスツズマブ軽鎖可変配列の可変領域は配列番号1のヌクレオチド2070-2391であり;軽鎖定常領域は配列番号1の核酸2407ないし2711に配置される。
【0038】
トラスツズマブ免疫グロブリンポリペプチド[例えば、重鎖、軽鎖若しくはそのフラグメントであって、そのフラグメントは、例えば、配列番号1の相補性決定領域(CDR)1、2および/若しくは3、定常領域(1、2若しくは3)、あるいは、配列番号1に対しそれに最低約85%同一、最低約90%、それに最低約95%同一、若しくはそれに最低約99%同一である配列を包含することができ、又は、免疫グロブリンポリペプチド(例えば重鎖、軽鎖、若しくは、いかなるFcRN改変も伴わないトラスツズマブについて本明細書に提供されると同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドおよびそのフラグメントをコードするそのフラグメント[例えば重鎖、軽鎖、若しくはそのフラグメント(例えば可変領域(例えば相補性決定領域(CDR)1、2および/若しくは3を包含する)、定常領域(1、2若しくは3))]をコードするそのフラグメントをコードする核酸配列もまた本明細書に包括される。
【0039】
2種若しくはそれ以上の核酸若しくはポリペプチド配列の文脈における「同一の」若しくは「同一性」パーセントという用語は、下述されるデフォルトのパラメータを用いるBLAST若しくはBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを使用して、または人的アライメントおよび目視点検(例えばNCBIウェブサイトなどを参照されたい)により評価されるところの、指定される一領域(例えば、比較窓若しくは指定される領域にわたる最大の対応について比較かつ整列される場合に本明細書に提供される改変されたORFのいずれか1種)にわたり同一であるかまたは同一であるアミノ酸残基若しくはヌクレオチドの指定されるパーセンテージ(すなわち、約70%同一性、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の同一性を有する、2種若しくはそれ以上の配列若しくは下位配列を指す。別の例として、ポリヌクレオチド配列はGCGバージョン6.1中のプログラムFastaを使用して比較し得る。Fastaはクエリおよび検索配列の間の最良の重複の領域のアライメントおよび配列同一性パーセントを提供する。例えば、核酸配列間の配列同一性パーセントは、GCGバージョン6.1(引用することにより本明細書に組み込まれる)に提供されるところのそのデフォルトのパラメータ(6のワードサイズおよびスコアリングマトリックスについてのNOPAMファクター)を用いてFastaを使用して決定し得る。一般に、これらのプログラムはデフォルトの設定で使用されるとは言え、当業者はこれらの設定を必要とされるとおり変更し得る。あるいは、当業者は、少なくとも、参照されるアルゴリズムおよびプログラムにより提供されるもののような同一性若しくはアライメントの水準を提供する別のアルゴリズム若しくはコンピュータプログラムを利用し得る。この定義はまた配列の相補物も指すか若しくはそれにも適用され得る。該定義は、欠失および/若しくは付加を有する配列ならびに置換を有するものもまた包含する。下述されるとおり、好ましいアルゴリズムはギャップなどを説明し得る。好ましくは、同一性は、長さが最低約25、50、75、100、150、200アミノ酸若しくはヌクレオチドである領域、およびしばしば長さが225、250、300、350、400、450、500アミノ酸若しくはヌクレオチドである領域、またはアミノ酸若しくは核酸配列の完全長にわたり存在する。
【0040】
典型的に、アライメントをあるアミノ酸配列に基づき製造する場合、該アライメントは参照AAV配列に関してそのように同定される挿入および欠失を含有し、そして、該アミノ酸残基の番号付けは該アライメントについて提供される参照尺度に基づく。しかしながら、いずれの所定のAAV配列も参照尺度より少ないアミノ酸残基を有しうる。本発明において、親配列を議論する場合、「同一位置」若しくは「対応する位置」という用語は、整列される配列のための参照尺度に関して該配列のそれぞれ中の同一残基番号に配置されるアミノ酸を指す。しかしながら、アライメントから取り出される場合、タンパク質のそれぞれはこれらのアミノ酸を異なる残基番号に配置させていることができる。アライメントは多様な公的若しくは商業的に利用可能な多配列アライメントプログラムのいずれかを
使用して実施する。配列アライメントプログラム、例えば「Clustal X」、「MAP」、「PIMA」、「MSA」、「BLOCKMAKER」、「MEME」および「Match-Box」プログラムがアミノ酸配列に利用可能である。一般に、これらのプログラムのいずれもデフォルトの設定で使用されるとは言え、当業者はこれらの設定を必要とされるとおり変更し得る。あるいは、当業者は、少なくとも、参照されるアルゴリズムおよびプログラムにより提供されるもののような同一性若しくはアライメントの水準を提供する別のアルゴリズム若しくはコンピュータプログラムを利用し得る。例えば、J.D.Thomsonら、Nucl.Acids.Res.、“A comprehensive comparison of multiple sequence alignments”、27(13):2682-2690(1999)を参照されたい。
【0041】
別の態様において、FcRnに対するその親和性を変えさせておりかつ有効な抗悪性腫瘍活性を保持する改変された抗Her2抗体が提供される。1個若しくはそれ以上のアミノ酸改変を、FcRnへの機能的結合を除去するように選択しうる。一態様において、該改変はFcRnに対するトラスツズマブ免疫グロブリンの結合親和性を天然のタンパク質の10%未満に低下させる。適しては、これらの突然変異をもつ免疫グロブリンは全部の他のFc受容体に実質的に正常に結合する。例えば、該免疫グロブリンは、位置Y436、S254、I253および/若しくはH435の最低1つをアラニン若しくは他のアミノ酸に、または相互とのこれらの1種若しくはそれ以上、または本明細書に記述される改変の1種若しくはそれ以上との1、2種若しくはそれ以上の組合せを改変しうる。しかしながら、例えばT250(配列番号25のaa273)、M252(配列番号25のaa275)、S254(配列番号25のaa278)、T256(配列番号25のaa280)、P257(配列番号25のaa281)、P271(配列番号25のaa294)、T307(配列番号25のaa330)、Q311(配列番号25のaa334)、D376(配列番号25のaa399)、E380(配列番号25のaa403)、M428(配列番号25のaa451)および/若しくはN434(配列番号25のaa457)、あるいは相互とのまたは本明細書に記述される他の改変とのこれらの組合せ1種若しくはそれ以上のような、FcRnへの機能的結合に関与する他の位置を変異させうる。他の適する改変は、例えば所望の抗悪性腫瘍活性を保持する別のアミノ酸での置換により、I253(配列番号25のaa276)、S254(配列番号25のaa278)、K288(配列番号25のaa311)、V305(配列番号25のaa328)、Q311(配列番号25のaa334)、D312(配列番号25のaa335)、K317(配列番号340のaa340)、K360(配列番号25のaa383)、Q362(配列番号25のaa385)、E380(配列番号25のaa403)、S415(配列番号25のaa438)、S424(配列番号25のaa447)、H433(配列番号25のaa456)、N434(配列番号25のaa457)、H435(配列番号25のaa458)および/若しくはY436(配列番号25のaa459)または2種若しくはそれ以上の組合せに配置されうる。なお他の突然変異を組み込みうる。例えば、KuoとAveson、mAbs、3:5、422-430(Sept/Oct 2011)およびShield、J Biol Chem、2001、276:659-6604を参照されたい。アミノ酸配列が一旦選択されれば、該核酸配列を設計し得、かつ/若しくは以前に記述された配列を上述されたとおり操作しうる。これら改変は、当業者に既知である部位特異的突然変異誘発若しくは他の遺伝子工学技術を使用して該核酸コーディング領域を操作することによりなされる。
【0042】
類似の改変を、別の選択された抗HER2免疫グロブリン構築物、若しくは、あるいは、本明細書に記述されるところの別の抗悪性腫瘍免疫グロブリン構築物中に操作しうる。
【0043】
一態様において、本明細書に記述される免疫グロブリン遺伝子は、その上に運搬される免疫グロブリン構築物配列を移入するAAVベクターを生成するために有用な遺伝要素(
例えばプラスミド)中に操作される。選択されるベクターは、トランスフェクション、電気穿孔法、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNA被覆ペレット、ウイルス感染およびプロトプラスト融合を包含するいずれかの適する方法によりAAVパッケージング細胞に送達しうる。安定なパッケージング細胞もまた作成し得る。こうした構築物を作成するのに使用される方法は核酸操作の当業者に既知であり、そして遺伝子工学、組換え工学および合成技術を包含する。例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、GreenとSambrook編、Cold Spring
Harbor Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(2012)を参照されたい。
【0044】
AAVベクター
本明細書に記述されるところのAAVベクターは、そのそれぞれが抗悪性腫瘍免疫グロブリン構築物の重および/若しくは軽鎖ポリペプチドまたは他のポリペプチドの1種若しくはそれ以上をコードする1種若しくはそれ以上の核酸配列を含み得る。適しては、組成物はin vivoで抗悪性腫瘍構築物を形成するポリペプチドの全部を含有する1種若しくはそれ以上のAAVベクターを含有する。例えば、完全長抗体は4個のポリペプチドすなわち重(H)鎖ポリペプチドの2個の同一のコピーおよび軽(L)鎖ポリペプチドの2コピーよりなる。重鎖のそれぞれは1個のN末端可変(VH)領域および3個のC末端定常(CH1、CH2およびCH3)領域を含有し、ならびに各軽鎖は1個のN末端可変(VL)領域および1個のC末端定常(CL)領域を含有する。軽および重鎖の各対の可変領域は抗体の抗原結合部位を形成する。この点に関して、本明細書に記述されるところのAAVベクターは、免疫グロブリン構築物の2個の重鎖ポリペプチド(例えば定常、可変(conant variable)および2個の軽鎖ポリペプチドをコードする単一核酸配列を含み得る。あるいは、AAVベクターは、最低1個の重鎖定常ポリペプチドおよび最低1個の重鎖可変ポリペプチドをコードする第一の発現カセット、ならびに免疫グロブリン構築物の双方の軽鎖ポリペプチドをコードする第二の発現カセットを含み得る。なお別の態様において、AAVベクターは、第一の重鎖ポリペプチドをコードする第一の発現カセット、第二の重鎖ポリペプチドをコードする第二の発現カセット、第一の軽鎖ポリペプチドをコードする第三の発現カセット、および第二の軽鎖ポリペプチドをコードする第四の発現カセットを含み得る。
【0045】
典型的には、AAVベクターの発現カセットは、AAV 5’末端逆位配列(ITR)、免疫グロブリン構築物コーディング配列およびいずれかの制御配列、ならびにAAV 3’ITRを含んでなる。しかしながら、これらのエレメントの他の構成が適することができる。D配列および末端解離部位(terminal resolution site)(trs)が欠失されている、ΔITRと称される5’ITRの短縮されたバージョンが記述されている。他の態様において、完全長のAAV 5’および3’ITRを使用する。
【0046】
シュードタイピングされたAAVが製造されるはずである場合、発現におけるITRはキャプシドのAAV供給源と異なる供給源から選択される。例えば、AAV2 ITRを、CNSまたはCNS内の組織若しくは細胞を標的とするための特定の効率を有するAAVキャプシドとの使用に選択しうる。一態様において、AAV2からのITR配列若しくはその欠失されたバージョン(ΔITR)を、便宜上および規制当局による承認を促進するために使用する。しかしながら他のAAV供給源からのITRを選択しうる。ITRの供給源がAAV2からでありかつAAVキャプシドが別のAAV供給源からである場合、生じるベクターはシュードタイピングされたと称することができる。しかしながらAAV
ITRの他の供給源を利用しうる。
【0047】
「sc」という略称は自己相補性を指す。「自己相補性AAV」は、組換えAAV核酸
配列により運搬されるコーディング領域が分子内二本鎖DNAテンプレートを形成するよう設計されている構築物をゆだねる(refer)。感染に際して、第二の鎖の細胞媒介性合成を待機するよりことむしろ、scAAVの2個の相補的半分が会合して、即座の複製および転写の準備ができている1個の二本鎖DNA(dsDNA)ユニットを形成することができる。例えばD M McCartyら、“Self-complementary recombinant adeno-associated virus(scAAV)vectors promote efficient transduction independently of DNA synthesis”、Gene Therapy、(August 2001)、Vol 8、Number 16、1248-1254ページを参照されたい。自己相補性AAVは、例えば米国特許第6,596,535号明細書;同第7,125,717号明細書;および同第7,456,683号明細書(それらのそれぞれはそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる)に記述されている。
【0048】
発現カセットは、典型的に、例えば選択された5’ITR配列と免疫グロブリン構築物コーディング配列の間に配置される、発現制御配列の一部としてプロモーター配列を含有する。組織特異的プロモーター、構成的プロモーター、調節可能なプロモーター[例えば第WO2011/126808号明細書および第WO2013/04943号明細書を参照されたい]若しくは生理学的合図に応答性のプロモーターを、本明細書に記述されるベクター中で使用しうる利用しうる(may be used may be utilized)。プロモーターに加え、発現カセットおよび/若しくはベクターは、他の適切な転写開始、終止、エンハンサー配列、スプライシングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナルのような効率的RNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列:翻訳効率を高める配列(すなわちコザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を高める配列;ならびに所望の場合はコードされる産物の分泌を高める配列を含有しうる。
【0049】
これらの制御配列は免疫グロブリン構築物遺伝子配列に「作動可能に連結されて」いる。本明細書で使用されるところの「作動可能に連結されている」という用語は、目的の遺伝子と隣接している発現制御配列および目的の遺伝子を制御するためにトランスで若しくは離れて作用する発現制御配列の双方を指す。
【0050】
一態様において、自己相補性AAVが提供される。このウイルスベクターはΔ5’ ITRおよびAAV 3’ ITRを含有しうる。別の態様において、一本鎖AAVウイルスベクターが提供される。被験体への送達に適するAAVウイルスベクターの生成および単離方法は当該技術分野で既知である。例えば、米国特許第7790449号明細書;米国特許第7282199号明細書;第WO2003/042397号明細書;第WO2005/033321号明細書、第WO2006/110689号明細書;および第US7588772B2号明細書を参照されたい]。一系において、産生体細胞株を、ITRにより隣接されている導入遺伝子をコードする構築物ならびにrepおよびcapをコードする構築物(1個若しくは複数)で一過性にトランスフェクトする。第二の系において、repおよびcapを安定的に供給するパッケージング細胞株を、ITRにより隣接されている導入遺伝子をコードする構築物で一過性にトランスフェクトする。これらの系のそれぞれにおいて、AAVビリオンがヘルパーアデノウイルス若しくはヘルペスウイルスへの感染に応答して産生され、汚染するウイルスからの該rAAVの分離を必要とする。より最近、AAVを回収するためにヘルパーウイルスへの感染を必要としない系が開発された。すなわち、必要とされるヘルパー機能(すなわちアデノウイルスE1、E2a、VAおよびE4若しくはヘルペスウイルスUL5、UL8、UL52およびUL29、ならびにヘルペスウイルスポリメラーゼ)もまた該系によりトランスに供給される。これらのより新しい系において、ヘルパー機能は、必要とされるヘルパー機能をコードする構築物への細胞の一過性トランスフェクションにより供給し得るか、若しくは、細胞を、ヘルパー
機能をコードする遺伝子を安定に含有するように操作することができ、その発現を転写若しくは翻訳後レベルで制御し得る。なお別の系において、ITRおよびrep/cap遺伝子により隣接されている導入遺伝子を、バキュロウイルスに基づくベクターへの感染により昆虫細胞中に導入する。これら産生系に関する総説については、全般として、例えばZhangら、2009、“Adenovirus-adeno-associated
virus hybrid for large-scale recombinant adeno-associated virus production”、Human Gene Therapy 20:922-929(その各内容はそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい。これらおよび他のAAV産生系の作成および使用方法は、以下の米国特許(その各内容はそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる)すなわち第5,139,941号明細書;第5,741,683号明細書;第6,057,152号明細書;第6,204,059号明細書;第6,268,213号明細書;第6,491,907号明細書;第6,660,514号明細書;第6,951,753号明細書;第7,094,604号明細書;第7,172,893号明細書;第7,201,898号明細書;第7,229,823号明細書;および第7,439,065号明細書にもまた記述されている。
【0051】
パッケージングのための利用可能な空間は、単一発現カセット中に1個以上の転写ユニットを組合せてかように必要とされる制御配列の量を低減することにより保存しうる。例えば、単一プロモーターが、2若しくは3種またはそれ以上の遺伝子をコードする単一のcDNA若しくはRNAの発現を指図することができ、また、下流の遺伝子の翻訳がIRES配列により駆動される。別の例において、単一のプロモーターが、自己切断ペプチド(例えば2A)および/若しくはプロテアーゼ認識部位(例えばフューリン)をコードする配列により相互から分離されている2若しくは3種またはそれ以上の遺伝子を単一読み取り枠(ORF)中に含有するcDNA若しくはRNAの発現を指図しうる。該ORFは従って、翻訳の間若しくは後のいずれかに個別のタンパク質(例えば重鎖および軽鎖のような)に切断される単一のポリタンパク質をコードする。しかしながら、これらのIRESおよびポリタンパク質系を使用してAAVパッケージング空間を節約し得るとは言え、それらは同一のプロモーターにより駆動され得る成分の発現についてのみ使用し得ることが注目されるべきである。別の代替において、AAVの導入遺伝子容量は、アニーリングしてヘッドトゥテールコンカテマーを形成し得る2種のゲノムのAAV ITRを提供することにより増大させ得る。
【0052】
下の実施例において、乳癌のCNS転移を処置するためにCNS中で直接トラスツズマブを発現させるためのAAV9ベクターが記述される。AAV9ベクターは例えば米国特許第7,906,111号明細書(引用することにより本明細書に組み込まれる)に記述されている。しかしながら、AAVキャプシドおよび他のウイルスエレメントの他の供給源を、他の免疫グロブリン構築物および他のベクターエレメントでしうるように選択しうる。AAVベクターの生成方法は、例えば第WO2003/042397号明細書;第WO2005/033321号明細書、第WO2006/110689号明細書;第US7588772B2号明細書を包含する文献および特許文書に広範囲に記述されている。AAVキャプシドの供給源は、CNS、CNS内の特定の細胞、および/または特定の癌関連抗原若しくは受容体を標的とするAAVから選択しうる。適するAAVは、例えばAAV9[第US7,906,111号明細書;第US2011-0236353-A1号明細書]、rh10[第WO2003/042397号明細書]および/若しくはhu37[例えば第US7,906,111号明細書;第US2011-0236353-A1号明細書を参照されたい]を包含しうる。しかしながら、例えばAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8[米国特許第7790449号明細書;米国特許第7282199号明細書]および例えば、ここで欠落しているものとみなされる一語で記述されるもののような他者を包含する他のAAVが、本明細書に記
述されるAAVベクターを製造するために選択しうる。
【0053】
用途およびレジメン
適するのは、本発明の組成物は、AAVベクターが、免疫グロブリン構築物、および選択された細胞中でその免疫グロブリンの発現を命令する制御配列をコードする核酸発現カセットを所持するように設計される。CNS中への該ベクターの投与後に、ベクターは発現カセットをCNSに送達し、そしてタンパク質性免疫グロブリン構築物をin vivoで発現する。抗悪性腫瘍の方法における本明細書に記述される組成物の使用が、1種若しくはそれ以上の他の抗悪性腫瘍若しくは他の有効な剤の送達を場合によっては必要としうる抗悪性腫瘍レジメンでのこれらの組成物の使用がそうであるように、記述される。
【0054】
上で述べられたとおり、組成物は、抗悪性腫瘍免疫グロブリン構築物をin vivoで送達するための発現カセットを含有する、本明細書に記述されるところの単一の種類のAAVベクターを含有しうる。あるいは、組成物は、そのそれぞれがその中に異なる発現カセットをパッケージングしている2種若しくはそれ以上の異なるAAVベクターを含有しうる。例えば、該2種若しくはそれ以上の異なるAAVは、in vivoで集成して単一の機能的免疫グロブリン構築物を形成する免疫グロブリンポリペプチドを発現する多様な発現カセットを有しうる。別の例において、2種若しくはそれ以上のAAVは、異なる標的のための免疫グロブリンポリペプチドを発現する異なる発現カセットを有することができ、例えば、2者が2種の機能的免疫グロブリン構築物(例えば1種の抗Her2免疫グロブリン構築物および第二の抗悪性腫瘍免疫グロブリン構築物)を提供する。なお別の代替において、該2種若しくはそれ以上の異なるAAVは、同一標的に向けられる免疫グロブリン構築物を発現することができ、ここで該免疫グロブリン構築物の一方はFcRn結合を除去するよう改変されており、かつその能力を保持する若しくはFcRnに結合する高められた能力を有する第二の免疫グロブリン構築物を発現することができる。こうした組成物は脳領域中の増大された保持を伴う抗体および免疫グロブリン構築物の全身送達のための抗体を同時に提供するのに有用でありうる。
【0055】
場合によっては、本明細書に記述されるこれらの免疫グロブリン構築物の一方若しくは双方は高められたADCC活性を有する。本明細書に記述されるところのレジメンは、本明細書に記述される組合せの1種若しくはそれ以上に加え、抗悪性腫瘍生物学的製剤、抗悪性腫瘍小分子薬、化学療法剤、免疫増強剤、放射線、外科手術などの1種若しくはそれ以上とのさらなる組合せを含みうる。本明細書に記述されるところの生物学的製剤は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、酵素、核酸分子、ベクター(ウイルスベクターを包含する)などに基づく。
【0056】
適しては、本明細書に記述される組成物は、注入、浸透圧ポンプ、くも膜下腔内カテーテルを介する被験体への送達、または別の装置若しくは経路による送達のための設計されている製薬学的に適する担体に懸濁された、抗悪性腫瘍有効量の1種若しくはそれ以上のAAVを含んでなる。一例において、該組成物はくも膜下腔内送達のため配合される。本明細書で使用されるところのくも膜下腔内送達は脊柱管、より具体的にはくも膜下腔中への注入を包括する。しかしながら他の送達経路、および例えば頭蓋内、鼻内、大槽内、脳脊髄内液(intracerebrospinal fluid)送達、とりわけ適する直接若しくは全身経路すなわちオンマヤリザーバーを包含するAAV組成物のための製薬学的に許容できる担体を選択しうる。
【0057】
該組成物は、約1×109ゲノムコピー(GC)ないし約5×1013GC(体重が70
kgの平均的被験体を処置するため)の範囲にあるAAVの量を含有するよう投薬量単位に配合し得る。一態様において、その中で約15mL(若しくは未満)から約40mLまでのCSFを取り出し、およびその中でベクターを該CSFと混合かつ/若しくは適合性
の担体に懸濁しそして被験体に送達する脊椎穿刺を実施する。一例において、ベクター濃度は約3×1013GC、しかし約1×109GC、約5×109GC、約1×1010GC、約5×1010GC、約1×1011GC、約5×1011GC、約1×1012GC、約5×1012GC若しくは約1.0×1013GCのような他の量である。
【0058】
好ましくは生理学的に適合性の担体に懸濁されているrAAVをヒト若しくはヒト以外の哺乳動物患者に投与しうる。適する担体は、移入ウイルスが指図される適応症を鑑み当業者により容易に選択されうる。例えば、1つの適する担体は、多様な緩衝溶液と配合されうる食塩水(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)を包含する。他の例示的担体は滅菌食塩水、乳糖、ショ糖、麦芽糖および水を包含する。担体の選択は本発明の制限でない。場合によっては、本発明の組成物は、rAAVおよび担体(1種若しくは複数)に加え、保存剤若しくは化学的安定化剤のような他の慣習的製薬学的成分を含有しうる。
【0059】
一態様において、本明細書に記述される組成物は腫瘍の増殖を遅らせる方法で使用される。なお別の態様において、本明細書に記述される組成物は被験体における腫瘍サイズを低減するために有用である。さらなる一態様において、本明細書に記述される組成物は非充実性腫瘍癌(non-solid tumor cancer)中の癌細胞の数を低減することにおいて有用である。別の態様において、本明細書で提供されるところの組成物は、患者における全生存および/若しくは無増悪生存の増大方法で使用される。例えば、下の実施例のデータは、試験された期間にわたる単独治療としての脳中の転移乳癌の生存率の33%増大を示す。しかしながら、生存率のなおより控えめな増大が望ましいとみられる。抗悪性腫瘍免疫グロブリン構築物は、処置されるべき腫瘍を視野に入れて選択される。例えば、脳中の転移乳癌の処置のため、本明細書に記述されるところの組換えAAV中に抗HER抗体のための発現カセットを操作しうる。場合によっては、本明細書に記述されるところのAAV組成物を、付加的な外因性の薬理学的若しくは化学的剤または血液脳関門の他の物理的破壊の非存在下で投与する。
【0060】
併用療法において、本明細書に記述されるAAVに送達される免疫グロブリン構築物を、別の剤での治療を開始する前、間若しくは後、ならびにそのいずれかの組合せ、すなわち抗悪性腫瘍療法を開始する前および間、前および後、間および後若しくは前、間および後に投与する。例えば、該AAVは、放射線治療を開始する前1と30日の間、好ましくは3と20日の間、より好ましくは5と12日の間に投与し得る。本発明の別の態様において、化学療法は、AAVに媒介される免疫グロブリン(抗体)療法と同時に若しくはより好ましくはその後に投与する。なお他の態様において、本発明の組成物は他の生物製剤、例えば組換えモノクローナル抗体薬、抗体-薬物複合物などと組合せうる。さらに、上で論考されるような多様なAAVに送達される免疫グロブリン構築物の組合せをこうしたレジメンで使用しうる。
【0061】
いかなる適する方法若しくは経路も、本明細書に記述されるところのAAVを含有する組成物を投与するために、ならびに場合によっては抗悪性腫瘍薬および/若しくは他の受容体のアンタゴニストを共投与するために使用し得る。本発明により利用される抗悪性腫瘍薬レジメンは、患者の腫瘍の状態の処置に最適に適すると考えられるいかなるレジメンも包含する。多様な悪性病変が、患者ごとに決定されることができる特異的抗腫瘍抗体および特異的抗悪性腫瘍薬の使用を必要とし得る。投与経路は、例えば全身、経口、静脈内、腹腔内、皮下若しくは筋肉内投与を包含する。投与されるアンタゴニストの用量は、例えばアンタゴニストの種類、処置されている種類および重症度腫瘍、ならびにアンタゴニストの投与経路を包含する多数の因子に依存する。
【0062】
以下の実施例は本明細書に記述される本発明に対する具体的説明のみでありかつ制限でない。
【0063】
[実施例]
【実施例0064】
GFPのAAV9に媒介される送達のCNS発現
GFPおよびmAbの双方が、5×1012ゲノムコピー(gc)/kgのCMV若しくはCB7いずれかのプロモーター下にGFP導入遺伝子を含有するAAV9ベクターの大槽内注入後にカニクイザルのCNSで発現されている。14日後に、マカクを剖検しかつ組織学および生体分布研究を実施した。剖検後組織学的分析は、大脳、小脳、脈絡叢、髄膜および脊髄前角におけるGFPの広範なCSN発現を示した。
【0065】
加えて、CB7プロモーターの制御下に201抗SIVイムノアドヘシン(201IA)導入遺伝子を含有する3×1012gc/kgのAAV9ベクターを大槽内注入し、そしてCSFを定期的間隔で採取してイムノアドヘシンの濃度を測定した。CSF中で発現される201IAの生じるレベルは約600ng/mLで頂点に達し、約250nm/mLで安定状態に達し、そして注入後198日に安定した状態を保った。
【0066】
A.201IA発現構築物
アカゲザル抗SIV mac251 gp120 IgG-201(Glamannら
J Virol.1998;74(15):7158-7163.doi:10.1128/JVI.74.15.7158-7163.2000.更新。)イムノアドヘシン(201IA)のコドン最適化されたヌクレオチド配列を、AAV発現構築物中にクローン化した。該構築物はAAV2末端逆位配列により隣接され、そしてCB7プロモーター、キメライントロンおよびウサギグロビンポリアデニル化配列を含有した(pAAV.CB7.CI.201IA.rBG)。
【0067】
B.FcRn結合を廃止するための201IAのI253A突然変異
201IA遺伝子に相補的しかし重鎖アミノ酸配列のI253A[配列番号24はこの突然変異をもつCH2.CH3フラグメントを提供する]若しくはH453A[配列番号23はこの突然変異をもつCH2.CH3フラグメントを提供する](Kabatの番号付け)に対応する突然変異を含有する、ヌクレオチド配列長さ768bpを、GeneArt(Life Technologies)から得た。該配列はpAAV.CB7.CI.201IA.rBG中のものに一致するPst1およびBstZ17I制限部位により隣接された。該変異された配列を、製造元により記述されるとおり、示される酵素(NEB)を使用する制限消化および連結(TaKaRa Inc.)によりpAAV.CB7.CI.201IA.rBGに別個にクローン化した。サンガーシークエンシング(GeneWiz)を使用して、pAAV.CB7.CI.201IA.rBG[配列番号5(配列番号6はコードされる201IA配列に対応する)]、pAAV.CB7.CI.201IA(I253A).rBG[配列番号7(配列番号8をコードする)]およびpAAV.CB7.CI.201IA(H435A).rBG[配列番号9(配列番号10をコードする]の相補性を、所望の突然変異のいずれの側でも確認した。
【0068】
B.HEK293細胞中でのIA発現およびプロテインAによる精製
3×108HEK293細胞(293細胞)を、10%FBSおよび1%ペニシリン/
ストレプトマイシンで補充されたダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Corning CellGro)(DMEM complete)中で10スタックCellSTACK(登録商標)(Corning)中に播種し、そして37℃ 5%CO2で48時間
インキュベートした。TE緩衝液(Qiagen)中の1mgのpAAV.CB7.CI.201IA.rBG若しくはpAAV.CB7.CI.201IA(I253A).rBGを42mLの室温の抗生物質および血清を含まないDMEMで希釈した。1mg/m
LおよびpH7.1の2mLのPEI-Max 40kDa、直鎖状(Polysciences)を、42mLの室温の抗生物質および血清を含まないDMEMで別個に希釈した。希釈されたDNAおよび希釈されたPEIを組合せそして室温で15分間インキュベートした。DNA-PEI混合物を1L最終容量の抗生物質および血清を含まないDMEMに添加した。293T細胞を無菌PBSで2回洗浄した。該DNA-PEI DMEM混合物を添加し、そして細胞とともに37℃ 5%CO2で72時間インキュベートした
。上清を収集し、そして3000×gで10分間遠心分離して細胞破片をペレットにした。上清をその後、製造元の説明書に従ってCentrikon(登録商標)Plus-70遠心式フィルターユニット(EMD Millipore)を使用して濃縮した。201IA若しくは201IA(I253A)をその後、プロテインA抗体精製キット(Sigma)を使用して精製し、そしてNanoDrop 2000(Thermo Scientific)を使用して定量した。精製されたIAをその後、グリセロールを使用して1mg/mLに希釈しかつ-20℃で保存した。
【0069】
C.IAのSDS-PAGE/ウエスタンブロット分析
NuPage試薬(Life Technologies)を使用するSDS-PAGEを製造元の説明書に従って実施した。簡潔には、1μgの201IA、201IA(I253A)若しくは201IA(H453A)を293上清から精製したか、または、組織内で以前に精製された201IAを、NuPage試料緩衝液およびNuPage還元剤と混合しかつ70℃で10分間加熱した。プレキャストNuPage 4-12%ビス-トリス1mmアクリルアミドゲルに試料およびMagicMark XPウエスタンタンパク質標準(LifeTechnologies)を負荷し、そして1×NuPage
MOPS SDS泳動緩衝液中200Vで1時間泳動した。Trans-Blot(登録商標)TurboTM 1×転写装置(BioRad)を使用してタンパク質をLF PVDFメンブレンに転写した。イオンリザーバースタックを1×Trans-Blot(登録商標)TurboTM(TBT)転写緩衝液で2~3分間濡らした。プレカットLF PVDFメンブレンを透明まで100%エタノールに浸漬し、その後1×TBT緩衝液に2~3分間移した。転写スタックを組み立て、そして1.3Aおよび25Vで7分間泳動した。該LF PVDFメンブレンを、1×NET緩衝液+2%ゼラチン(二重蒸留されたH2O中50mMトリスHCL、pH7、125mM NaCl、5mM EDTA pH8、0.05%Triton X-100、2%ゼラチン)中で穏やかな振とうを伴い一夜ブロッキングした。ビオチンに結合されたヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体(Abcam)を1×NET+2%ゼラチンで希釈し、そしてメンブレンとともに室温でインキュベートし、1×NETで洗浄し、1×NET+2%ゼラチンで希釈されたストレプトアビジン-ワサビペルオキシダーゼ(Abcam)とともにインキュベートし、そして1×NETで洗浄した。ウエスタンブロットを、製造元のプロトコルに従いSuperSignal(登録商標)West Pico化学発光基質(Thermo Scientific)を使用して検出した。画像は、高解像度化学発光自動設定を伴うBioRad
ChemiDocTM MP画像装置(Thermo Scientific)を使用して撮影した。
【0070】
D.201IA ELISA
全部の手順は別の方法で示されない限り室温で実施した。プレートを、PBS+0.05%Tween-20を使用してBioTek 405TSマイクロプレート洗浄装置で洗浄した。PBSで2μg/mLに希釈されたmac251 gp120(Immune
Technology Corp.)を、Costar(登録商標)96ウェルEasyWashTM ELISAアッセイプレート(Corning)上4℃で一夜インキュベートした。プレートがその後、201IA ELISAブロッキング緩衝液(PBS+5%熱不活性化ウシ胎児血清+1mM EDTA+0.07%Tween-20)でブロッキングされた。希釈された試料をプレートに添加しかつプレートを2倍に最低4回希釈し
た。プレートを37℃で1hインキュベートし、そして201IA ELISAブロッキング緩衝液中で再度ブロッキングした。プレートをその後、PBSで希釈されたAffiniPureポリクローナルヤギ抗ヒトIgG-ビオチン(Jackson ImmunoResearch Labs)、その後PBSで希釈されたストレプトアビジン-ワサビペルオキシダーゼ(Abcam)とともにインキュベートした。3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質を使用してプレートを発色させた。H2SO4で発色反応を停止した後に、プレートを、SpectraMax M3(Molecular
Devices)プレートリーダーを使用して450nmで読み取った。
【0071】
201IA若しくは201IA(I253A)の同等な性能、ならびにこれら実施例に記述されるところの293細胞から精製された201(H453)および組織内で製造された201IA標準タンパク質の性能を、201IA ELISAにより確認した。各IAを50ng/mLに希釈しかつ上述されたとおりアッセイした。標準として使用された201IAは後に続くとおり製造した。RAG KOマウスに、AAV8.TBG.201IAベクターを3×1011GC/マウスあたりで静脈内注入し、そして眼窩出血を週1回8週間収集し、マウスを心出血により殺した(terminated)。一般に群あたり5マウスが存在する。全部の収集された血清を一緒にプールし、そして上述されたとおりSIGMAからのプロテインAアフィニティーカラムに負荷する。一般に、精製された201IAを1mg/mlに希釈し、そして最終グリセロールがより良好な保存のため約20%になるようにグリセロールを添加する。
【0072】
E.AAV9ベクター製造
pAAV.CB7.CI.201IA.rBGおよびpAAV.CB7.CI.201IA(I253A).rBGを、M.Lockら、Hum Gene Ther.2010 Oct;21(1);1259-1271、オンライン公開2010年9月24日に以前に記述されたとおり、293細胞の三重トランスフェクションによりAAV9キャプシドにパッケージングしかつ精製した。
【0073】
F.マウスの脳および血清中の201IAおよび201IA(I253A)の発現
全部の動物は、研究における動物の管理と使用についてのNIHおよびUSDAのガイドラインに従って飼養した。C57BL/6バックグラウンドの6~8週齢雌性Rag1-/-(Jackson Labs #002216)、FcRn-/- Rag1-/-(Jackson Labs #017700)若しくはヒトFcRnトランスジェニックマウス(mFcRn-/- hFcRn+/+、Jackson Labs #016919)を得、そしてペンシルバニア大学(University of Pennsylvania)で飼育した。
【0074】
ベクター投与のため、AAV9.CB7.CI.201IA.rBG若しくはAAV9.CB7.CI.201IA(I253A).rBGを無菌PBSで希釈した。静脈内(IV)投与のため、ベクターを100μLあたり1×1010若しくは1×1011ゲノムコピー(GC)に希釈した。脳室内(ICV)投与のため、ベクターを10μLあたり1×1010GC若しくは1×1011GCに希釈した。IV注入は尾静脈注入により実施し、およびICV注入は、麻酔のイソフルオラン誘導(isofluorane induction of anesthesia)後に、以前に記述された(Glascockら J Vis Exp.2011 Oct 3;(56))とおりフリーハンドで実施した。血液を、第3、7、14、21、28、42、56日、および201IA(I253A)について第60日若しくは201IAについて第76日の最終時点に、Z-GelTMマイクロチューブ血清分離装置(Sarstedt)中への後眼窩出血により採取した。血液を室温で20分間インキュベートし、その後5000×gで5分間遠心分離した。血清を-80℃で保ち、そして血清201IA濃度を測定するためにD部で上述された201
IA ELISAで使用した。
【0075】
剖検で、マウスを無菌PBS中100mg/kgケタミンおよび10mg/kgキシラジンで麻酔の脊髄面(spinal plane of anesthesia)まで深く麻酔した。胸腔を露出させた。20ゲージAngiocathTM AutoguardTM IVカテーテル(Becton Dickenson)を心の左室に挿入し、そして右房に剪刀で刻み目を付けた。ヘパリン(10U/mL、Sigma)を含む50mLのPBSを、30mL携帯型シリンジを使用して該IVカテーテルを通し左室中にゆっくりと投与した。右房を出る液体は灌流処置の終了時に澄明であった。脳、肝および脾を取り出しかつドライアイス上で直ちに凍結した。脳組織抽出液を、凍結されたマウス脳を四分すること(1/4あたり(per quarter)約100mg脳)およびそれらを1mLの組織溶解緩衝液(25mM Tris-HCl、5mM EDTA、1%TritonTM-X、150mM NaCl、pH7.6)に浸漬することにより製造した。試料を、TissueLyzerTM(Qiagen)を使用してステンレス鋼製ビーズを用い30Hzで2分間均質化し、―80℃で一夜凍結し、室温水浴中で融解し、そして10K×gで4℃で10分間遠心分離した。個別のマウス脳の4区分のそれぞれからの上清を組合せた。穏やかなボルテックス撹拌後に脳抽出液を分注しそして使用まで-80℃で凍結した。希釈された脳抽出液を上述された201IA ELISAで使用して、脳中の201IA発現を確認した。
【0076】
各I253AおよびH435A 201IA変異体の血清発現は、双方の試験された用量(1×1010GC/マウス若しくは1×1011GC/マウス)のiv若しくはicv双方の投与後に野生型201IA(標準)より有意により低かった。ICV投与(1×1011GC/マウス)後に試験された脳抽出液は野生型(標準)のものを超えるレベルの脳中のI253A変異体の発現を示した。H435A(1×1011GC/マウス)の発現が観察された。
【0077】
G.カニクイザルのCSFおよび血清中の201IAおよび201IA(I253A)の発現
3~5kgの間の体重である4匹の3~4年齢雌性カニクイザルを、研究における動物の管理と使用についてのNIHおよびUSDAのガイドラインに従って、ペンシルバニア大学で12時間の明/暗周期でステンレス鋼製ケージングに収容した。動物を試験の開始前7週馴化させた。サルに霊長類飼料(Primate Diet)5049(PMI Feeds Inc.)を与えた。水は自動給水装置から任意に与えた。
【0078】
ベクター投与の日に、動物を、筋肉内に(IM)与えられるケタミン(10~15mg/kg)およびでデクスメデトミジン(0.05~0.10mg/kg)を使用して麻酔した。動物の重量を測定しかつバイタルサインを記録した。頭部および頸椎の背部の上の毛を剃った。皮膚をベタジンで無菌的に準備処置した。頸部を、顎先が胸部にほとんど触れていたように屈曲させた(動物の気道を閉塞しないよう注意を払った)。頭蓋の背部の後頭隆起および環椎(C1)の翼(wings)を触診し、そして脊髄針若しくは通常針(20~24ゲージ)をそれらの間の中ほどに挿入した。骨が遭遇された場合は針を前方若しくは後方に向け直した。一旦くも膜下腔中で、CSFを、それが針のハブ中に込み上がった際に重力流を介してシリンジ若しくは他の無菌容器中に収集した(2mLまで)。吸引を針に適用しなかった。2mLまでのベクター溶液を、0.5mL/分でシリンジポンプを使用して若しくは人的にゆっくりの一定のペースで注入した。針を除去し、そして直接の圧を穿刺部位に適用した。2匹のサルがAAV9.CB7.CI.201IA.rBG.N401を受領しかつ2匹がAAV9.CB7.CI.201IA(I253A).rBGを受領した。用量は体重1キログラムあたり1.00×1012VGであった。
【0079】
少なくとも2週ごとに1度、動物をバイタルサイン、臨床病理学および免疫学について監視した。血液および腰椎CSFを処置後第8および15日に、その後月1回収集した。血清およびCSFはおよそ-65ないし-80℃で保存した。201IA発現を上で示されたところの201IA ELISAにより評価した。動物の血液化学および血液プロファイルの変化を契約施設Antech Diagnositics,Inc.により監視した。
【0080】
サルはそれらの試験期間の終了時に安楽死されることができる。動物は最初にケタミン(10~15mg/kg)およびデクスメデトミジン(0.05~0.10mg/kg)IMで鎮静される。それらはペントバルビタール(80mg/kg IV)を使用して安楽死される。死亡は心拍および呼吸の非存在により確認する。動物は死亡を保証するため放血されてもまたよい。収集される組織は組織病理学のため10%中性緩衝ホルマリン中に置かれることができる。ゲノムコピー分析のため、組織試料をドライアイス上で直ちに凍結しかつ<-60℃で維持することができる。試料は凍結切片作成のためにOCT包埋媒体中で直接凍結させることができる。スライドを、ペンシルバニア大学の遺伝子治療プログラム細胞・形態学中核施設(Cellular and Morphology Core of the Gene Therapy Program)により調製することができる。他の適切な染色を試験病理学者の判断で使用してもよい。
【実施例0081】
トラスツズマブを発現するAAV9の製造
乳癌脳転移の十分に公表されたマウス異種移植モデルを使用して、CNSで発現されるトラスツズマブが生存を延長若しくは腫瘍量を軽減するかどうかを確認する[Martinez-Aranda Aら、Development of a Preclinical Therapeutic Model of Human Brain Metastasis with Chemoradiotherapy.Int J Mol Sci.2013;14:8306-8327]。HER2陽性ヒトBT474乳管癌細胞をルシフェラーゼでトランスフェクトし、そしてヌードマウスの脳実質に定位注入する。腫瘍サイズを発光強度により監視することができる。腫瘍が10mm2に増殖する場合
に、マウスに、トラスツズマブ導入遺伝子を運搬する変動する濃度のAAV9ベクターを脳室内注入することができる。
【0082】
該導入遺伝子は、トラスツズマブの軽および重可変鎖の公表された配列をコードする配列番号1に今や提供されるコドン最適化された核酸配列をIgG発現カセット中にクローン化することにより創成する。第WO2015/012924号明細書(本明細書に引用することにより組み込まれる)に記述される定常領域アミノ酸配列を使用し得る。例えば、トラスツズマブのマウスmAb前駆体のヒト化を記述するCarter Pら、Humanization of an anti-p185HER2 antibody for human cancer therapy.Proc Natl Acad Sci USA.1992 May 15;89(10):4285-9を参照されたい。これらのアミノ酸配列は、2013年に質量分析によりシークエンスされた臨床生成物のもの[Gahoual Rら、Rapid and multi-level characterization of trastuzumab using sheathless capillary electrophoresis-tandem mass spectrometry.MAbs.2013 Apr 5;5(3)。[印刷に先立つ電子出版(Epub ahead of print)]に正確に一致する。ベクターの注入後、腫瘍サイズおよびマウス生存を30日間監視することができる。剖検で、腫瘍の病理学的検査を実施することができ、そして脳抽出液のELISAによるトラスツズマブ発現のレベルを測定することができる。本明細書に記述されるベクターおよび方法は、延長された生存、無増悪生存ならびに/または腫瘍量の軽減および/若しくは安定
化を提供するはずである。
【0083】
A.トラスツズマブ発現構築物
トラスツズマブの重および軽鎖のWHO公表されたヌクレオチド配列に一致する配列をGeneArt(Life Technologies)から得た。軽鎖配列はEcoRVおよびBsiW1制限部位により隣接され、そして重鎖配列はXba1およびSal1制限部位により隣接され[該核酸配列は、トラスツズマブ重鎖可変(配列番号12)、重鎖定常(配列番号13)、軽鎖可変(配列番号14)、κ鎖(配列番号15)およびAmp-R(配列番号16)をコードする配列番号11に提供されている]、こうしてトラスツズマブ重および軽鎖を含有するプラスミドの配列を提供する。
【0084】
重および軽鎖配列を、既知のクローン化技術を使用する制限消化(NEB)および連結(TaKaRa Inc.)を使用してAAV発現構築物にクローン化した。該重および軽鎖配列はF2A自己切断ペプチドにより相互から分離された。該構築物はAAV2末端逆位配列により隣接され、そしてCMV前初期プロモーター、キメライントロンおよびSV40ポリアデニル化シグナルを含有し、pAAV.CMV.CI.trastuzumab.SV40と呼ばれた[配列番号17、トラスツズマブ重鎖可変、重鎖定常、軽鎖可変、κ鎖(それぞれ配列番号18-21)をコードする)]。
【0085】
B.HEK293細胞中のトラスツズマブ発現およびプロテインAによる精製
3×108HEK293細胞[ATCCから得られた]を、10スタックCellST
ACK(登録商標)中でDMEM complete中37℃ 5%CO2で48時間播
種した。1mgのpAAV.CMV.CI.trastuzumab.SV40(A部に記述された)を42mLの室温の抗生物質および血清を含まないDMEMで希釈した。1mg/mLかつpH7.1の2mLのPEI-Max 40KDa、直鎖状(Polysciences)を、42mLの室温の抗生物質および血清を含まないDMEMで別個に希釈した。希釈されたDNAおよび希釈されたPEIを組合せそして室温で15分間インキュベートした。該DNA-PEI混合物を1Lの最終容量の抗生物質および血清を含まないDMEMに添加した。293細胞を無菌PBSで2回洗浄し、そして細胞をその後DNA-PEI DMEM混合物とともに72時間インキュベートした。上清を収集し、3000×gで10分間遠心分離して細胞破片をペレットにし、そして製造元の説明書に従い、Centricon(登録商標)Plus-70遠心式フィルターユニット(EMD
Millipore)を使用して濃縮した。トラスツズマブをその後、プロテインA抗体精製キット(Sigma)を使用して精製し、そしてNanoDrop 2000(Thermo Scientific)を使用して定量した。精製されたトラスツズマブを、グリセロールを使用して1mg/mLに希釈しかつ-20℃で保存した。
【0086】
C.IAのSDS-PAGE/ウエスタンブロット分析
NuPage試薬(Life Technologies)を使用するSDS-PAGEを製造元の説明書に従って実施した。簡潔には、本実施例のB部に記述されたとおり293上清から精製された1μgのトラスツズマブ、若しくはPBSに再懸濁されたトラスツズマブ臨床生成物(Hoffmann-La Roche、HUP Pharmacy)を、NuPage試料緩衝液およびNuPage還元剤と混合しかつ70℃で10分間加熱した。プレキャストNuPAGE(登録商標)4-12%勾配ビス-トリス(中性のpH)1mmアクリルアミドゲルに試料およびMagicMarkTM XPウエスタンタンパク質標準(LifeTechnologies)を負荷し、そして1×NuPage(登録商標)3-モルホリノプロパン-1-スルホン酸(MOPS)SDS泳動緩衝液中200Vで1時間泳動した。Trans-Blot(登録商標)TurboTM 1×転写システム(BioRad)を使用して、タンパク質を低蛍光(LF)フッ化ポリビニリデン(PVDF)メンブレンに転写した。イオンリザーバースタックを1×Trans-B
lot(登録商標)TurboTM(TBT)転写緩衝液で2~3分間濡らした。プレカットLF PVDFメンブレンを透明まで100%エタノールに浸漬し、その後1×TBT緩衝液に2~3分間移した。転写スタックを組み立て、そして1.3Aおよび25Vで7分間泳動した。該LF PVDFメンブレンを、1×NET緩衝液+2%ゼラチン(二重蒸留H2O中50mMトリスHCl pH7、125mM NaCl、5mMエチレンジ
アミン四酢酸(EDTA)pH8、0.05%TritonTM X-100(TritonTM X-100は親水性ポリエチレンオキシド鎖および芳香族炭化水素親油すなわち疎水性基を有する非イオン性界面活性剤であり)、2%ゼラチン)中で穏やかな振とうを伴い一夜ブロッキングした。ビオチンに結合されたヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体(Abcam)を1×NET+2%ゼラチンで希釈し、そしてメンブレンと室温でインキュベートし、1×NETで洗浄し、1×NET+2%ゼラチンで希釈されたストレプトアビジン-ワサビペルオキシダーゼ(Abcam)とインキュベートし、そして1×NETで洗浄した。ウエスタンブロットを、製造元のプロトコルに従いSuperSignal(登録商標)West Pico化学発光基質(Thermo Scientific)を使用して検出した。画像は、高解像度化学発光自動設定を伴うBioRad ChemiDocTM MP画像システム(Thermo Scientific)を使用して撮影した。
【0087】
D.ベクター製造
pAAV.CMV.CI.trastuzumab.SV40は293細胞の三重トランスフェクションによりAAV9キャプシドにパッケージングし、そして以前に記述された(Lockら、2010、上で引用される)とおり精製した。
【0088】
E.トラスツズマブELISA
トラスツズマブのミモトープのELISAを、以前に記述された(Jiangら J Biol Chem.2005 Feb 11;280(6):4656-62.電子出版(Epub)2004年11月9日)とおり開発した。全部の段階は別の方法で述べられない限り室温で実施した。プレートをBioTek 405TSマイクロプレート洗浄装置で洗浄した。トラスツズマブが結合するHER2のエピトープのペプチドミモトープLLGPYELWELSH[配列番号22]を該ミモトープから得、DMSOに再懸濁しかつ-80℃で保存した。Costar(登録商標)96ウェルEasyWashTM ELISAアッセイプレート(Corning)を、100mM重炭酸塩溶液(pH9.6)中1μg/mLのLLGPYELWELSH[配列番号22]で被覆し、4℃で一夜インキュベートし、そしてトラスツズマブELISAブロッキング緩衝液(TEB、PBS+5%ウシ血清アルブミン+1mM EDTA+0.07%Tween-20)でブロッキングした。試料をTEBで希釈しかつプレーティングし、TEBでELISAプレートを2倍に希釈しかつインキュベートした。プレートをその後、TEBで希釈されたAffiniPureポリクローナルヤギ抗ヒトIgG-ビオチン(Jackson ImmunoResearch Labs)、次いでTEBで希釈されたストレプトアビジン-ワサビペルオキシダーゼ(Abcam)とインキュベートした。プレートをTMB基質で発色させ、2N H2SO4で停止し、その後SpectraMax M3(Molecular Devices)プレートリーダーを使用して450nmで読み取った。
【0089】
F.マウスの脳および血清中の201IAおよび201IA(I253A)の発現
C57BL/6バックグラウンドの6~8週齢雌性Rag1-/-マウス(Jackson Labs #002216)を得かつペンシルバニア大学で飼育し、そして研究における動物の管理と使用についてのNIHおよびUSDAのガイドラインに従って飼養した。
【0090】
ベクター投与のため、pAAV.CMV.CI.trastuzumab.SV40を
無菌PBSで希釈した。静脈内(IV)投与のため、ベクターを100μLあたり1×1010若しくは1×1011GCに希釈した。脳室内(ICV)投与のため、ベクターを10μLあたり1×1010若しくは1×1011GCに希釈した。IV注入は尾静脈注入により実施し、およびICV注入は以前に記述された(Glascockら)とおり麻酔のイソフルオラン誘導後にフリーハンドで実施した。血液を、ベクター投与後第3、7、14、21、28、42、56および60日に、Z-Gelマイクロチューブ血清分離装置(Sarstedt)中への後眼窩出血により採取した。血液を室温で20分間インキュベートし、その後5000×gで5分間遠心分離した。血清を-80℃で保ち、そして血清トラスツズマブ濃度を測定するために上述されたトラスツズマブELISAで使用した。
【0091】
剖検で、マウスを無菌PBS中100mg/kgケタミンおよび10mg/kgキシラジンで麻酔の脊髄面まで深く麻酔した。胸腔を露出させた。20ゲージAngiocathTM AutoguardTM IVカテーテル(Becton Dickenson)を心の左室に挿入し、そして右房に剪刀で刻み目を付けた。ヘパリン(10U/mL、Sigma)を含む50mLのPBSを、30mL携帯型シリンジを使用して該IVカテーテルを通し左室にゆっくりと投与した。右房を出る液体は灌流処置の終了時に澄明であった。脳、肝および脾を取り出しかつドライアイス上で直ちに凍結した。
【0092】
脳組織抽出液を、凍結されたマウス脳を四分すること(1/4あたり約100mg脳)およびそれらを1mLの組織溶解緩衝液(25mM Tris-HCl、5mM EDTA、1%Triton-X、150mM NaCl、pH7.6)に浸漬することにより製造した。試料を、TissueLyzer(Qiagen)上でステンレス鋼製ビーズを用い30Hzで2分間均質化し、-80℃で一夜凍結し、室温水浴中で融解し、そして10K×gで4℃で10分間遠心分離した。単一マウス脳の4区分のそれぞれからの上清を組合せた。穏やかなボルテックス撹拌後に、脳抽出液を分注しそして使用まで-80℃で凍結した。希釈された脳抽出液を上のトラスツズマブELISAで使用して、脳トラスツズマブ濃度を測定した。
【0093】
これらのデータは、実験の持続期間(60日)の間の静脈内ベクター送達後のRag1-/-マウスの血清中の1000μg/mL超の定常状態の発現レベルを示す。ICVベクター投与を受領するマウスについて、750μg/mL超の定常状態の発現レベルが実験の持続期間(60日)の間観察される。これらの量は治療効果を提供することができるレベルの発現を示すと考えられる。
【0094】
脳の研究は、1×1010および1×1011静脈内ベクターを受領するものについて、試験マウスにおける約1200ないし約1800μgのトラスツズマブの間の濃度を示した。iv送達についてこれらの投薬量レベル間で何らかの有意差が存在するように思われなかった。同一用量で、より大きな変動が、ICVを介してこれらの濃度で送達されたベクターについて観察された。該濃度は約1000μgから約2500μgまで変動した。
【0095】
G.ホタルルシフェラーゼを発現するHER2+ BT474-M1乳癌細胞株の生成
継代27のHER2+BT474.M1ヒト乳管癌細胞はLouis ChodoshとJason Ruthから恵与された。[BT474.MI細胞はカリフォルニア太平洋医療センター(California Pacific Medical Center)から得ることができるBT474のサブクローンであり;Si Tuen Lee-Hoeflichら、Cancer Res July 15、2008 68;5878。]細胞を、10%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンで補充されたDMEM/F12培地(Corning Cellgro)(DMEM/F12 complete)中、T75組織培養フラスコ(Corning)中で増殖させた。VSVG.HIV.SIN.cPPT.CMV.ff-luciferase.WPREレンチウイ
ルスベクターをPenn Vector Coreから得た[E.Copriniら、Viruses、Aug 2010、2(8):1577-1588。]BTB474-M1細胞が60~70%コンフルエントになった場合に、培地を吸引し、細胞を無菌PBSで洗浄し、トリプシン処理しかつ計数した。2mLのDMEM/F12 complete中の2.5×105細胞を6ウェル組織培養処理済みプレート(Falcon)のウェ
ルに添加し、そして37℃ 5%CO2で一夜インキュベートした。ベクターを、抗生物
質および血清を含まないDMEM/F12で3.5×108VG/mLに希釈し、そして
5回の2倍連続希釈を調製した。6種のベクター希釈の1mLを、PBS洗浄されたBT474-M1細胞および1mLの抗生物質および血清を含まないDMEM/F12を含有する6ウェルプレートの対応するウェルに添加した。プレートを37℃ 5%CO2で4
8時間インキュベートした。培地を吸引しそしてDMEM/F12 completeで置き換えた。細胞病理は顕微鏡検査により示されなかった。別の72時間後に、最高濃度のベクターを受領した3ウェル中の細胞を無菌PBSで洗浄し、トリプシン処理し、混合し、そしてT75フラスコ中、DMEM/F12 complete中で培養した。37℃ 5%CO2で72時間後に、細胞をトリプシン処理しかつ200μLのDMEM/F
12 completeあたり1細胞の濃度に希釈した。ウェルあたり200μLの細胞懸濁液を96ウェル組織培養処理済みプレート(Falcon)にプレーティングし、そして37℃ 5%CO2で6週間インキュベートした。培地を2週ごとに変えた。プレー
ティング2週後に、クローン細胞の単一コロニーを含むウェルが顕微鏡検査により示された。ウェルがクローン細胞の単一クラスターで70%コンフルエントとなった場合に、15クローンを、24ウェルプレート中、その後6ウェルプレート、その後T25組織培養フラスコ(Corning)中の70~80%コンフルエンシーへのさらなる増殖のため選択した。細胞の形態学を親BT474.M1細胞株と比較しそして同等であることが示された。
【0096】
細胞のルシフェラーゼ活性を、製造元の説明書のDual Luciferase(登録商標)レポーターアッセイシステム(Promega)を使用して測定した。DNAはDNeasyキット(Qiagen)を使用して細胞から単離した。最高の発光を伴う5クローン中の細胞あたりのルシフェラーゼのコピー数を、プローブとしてレンチウイルスパッケージングシグナルを使用するTaqManリアルタイムPCR(Life Technologies)により測定した[A Hachiyaら、Gene Ther、Apr 2007;14(8):648-656、電子出版2007年2月1日(Epub
2007 Feb1)]。異種移植実験のため選ばれたクローンを継代数52まで増殖させ、そして5%DMSOおよび20%FBSを含むDMEM/F12中で液体窒素中に凍結保存した。
【0097】
H.Rag1-/-マウスにおけるHER2+乳癌脳転移の異種移植モデル
本実施例のG部に記述されるとおり製造されたBT474-M1.ffluc細胞を融解し、DMEM/F12 completeで洗浄し、DMEM/F12 complete中37℃ 5%CO2でT175フラスコ(Corning)中で増殖させ、そして
腫瘍細胞移植の最低1週前に1回継代した。注入の日に、継代53の細胞を70%~80%コンフルエンシーでトリプシン処理し、そして血球計数器を使用して計数した。細胞を1000×gで3分間遠心分離しそして無菌PBSで洗浄した。再度遠心分離した後に、細胞を1×105細胞/1μLで無菌PBSに再懸濁しかつ注入まで氷上に保存した。腫
瘍細胞注入手順のため、マウスを無菌PBS中100mg/kgケタミンおよび10mg/kgキシラジンの腹腔内(IP)注入により麻酔して麻酔の脊髄面を誘導した。眼軟膏をマウスの眼に適宜塗布した。毛を電気バリカンを使用してマウスの頭の頂上から剪断した。エストロゲンペレット(1.6mg、60日放出)を、露出された皮膚を最初にポビドンヨードその後70%エタノールで消毒することにより皮下に移植した。胸椎を覆う皮膚中の小型切開を作成し、そして皮膚および下にある筋膜を平滑に(bluntly)切
開した。エストロゲンペレットを皮下に移植し、そして切開を4.0 vicrylで縫合した。次に、マウスをその後定位装置に固定した。頭蓋上の露出された皮膚をポビドンヨード次いで70%エタノールで清浄にした。前後方切開およそ1cm長を、22替刃メスで頭蓋の頂上の上に作成した。十字縫合を特定した。空気ドリルの位置を十字縫合に定めそして座標を書き留めた。ドリル点を十字縫合の-0.8mm前後方、+2.2mm内外方向に動かし、そしてバーホールを脳実質が達せられるまで突き通した。ドリルを定位装置から取り外し、そして10μLハミルトンシリンジを1μLの細胞懸濁液で負荷した。針の位置を装置上で定め、十字縫合にもたらし、そして上で示された座標に動かした。針をバーホール上の正確な位置決めに関して確認し、そして座標を、十字縫合の-4.0mm DV、その後+1.0mm貫入する前に相応して調節した。1μLの細胞懸濁液を5分にわたり注入した。針を注入後5分間正しい位置に残し、その後ゆっくりと除去した。マウスを定位装置から取り外し、そして4.0 vicrylを使用して頭蓋上の切開を縫合した。マウスを、37℃に設定された加熱パッドの上のクリーンケージに入れた。麻酔から回復した後、マウスに、無菌PBS中の0.3mg/kgブプレノルフィンと一緒に無菌PBS中の100μLの15mg/kgエンロフロキサシン(Bayer)を皮下に与えた。マウスは処置後2日間エンロフロキサシンを皮下に受領した。
【0098】
腫瘍の増殖を、生物発光画像法(BLI)を使用して3~4日ごとに監視した。マウスに、最初に無菌PBS中150mg/kgルシフェリン、その後5分後にPBS中100mg/kgケタミンおよび10mg/kgキシラジンをIP注入した。麻酔を投与した5~10分後に、マウスをIVIS Xenogen画像化装置を使用して画像検査した。生物発光を少なくとも5秒間測定した。発光する腫瘍に対応する関心領域(ROI)を、ROIの周囲にゲートを描くことにより測定した。発光は光量子/秒で報告した。剖検で、マウスをCO2への過剰曝露次いで頸部脱臼により安楽死させた。脳を取り出し、そしてホルマリン次いで70%エタノール中で保存し、そして切片作成のためパラフィン中に包埋した。ヘマトキシリンおよびエオシンならびにルシフェリン免疫染色を実施した。肝および脾もまたベクターゲノムの体内分布分析のため剖検で採取した。
【0099】
I.乳癌脳転移の異種移植モデルの予防的処置
6~8週齢雌性Rag1-/-マウス(Jackson Labs #002216)を、1×1011VGのAAV9.CMV.CI.trastuzumab.SV40(n=9)、AAV9.CB7.CI.201IA.rBG(n=10)若しくは処置なし(n=5)のICV注入で、腫瘍移植21日前に処置した。腫瘍を移植しかつ生物発光を上で示されたとおり測定した。血液をベクター注入後D20、36、62および72にマウスから後眼窩採取して、CNSトラスツズマブ発現の代理物として血清トラスツズマブを測定した。1×108光量子/秒の腫瘍BLIに達した後に、マウスを毎日監視し、そし
て嗜眠、背を丸めること(hunching)、麻痺、神経学的欠陥若しくは痙攣を包含する神経学的障害若しくは重大な病的状態と定義される臨床エンドポイントで殺す。
【0100】
図2は、1×1011GC ICVのAAV9.trastuzumab若しくはAAV9.201IAを予防的に与えられ、その後ベクター投与21日後にBT474-M1.ffluc腫瘍細胞を脳中に移植されたマウスの生存曲線を提供する。この曲線は腫瘍移植後99日の結果を反映する。201IA群(偽似処置)の生存中央値は66日であることが示される一方、AAV9.trastuzumabで処置された群の生存中央値は99日すなわち生存率の33%増加である。
【0101】
Rag1-/-マウスにおいてivおよびicv送達されるところのAAV9.trastuzumabの体内分布を評価した。ivおよびicv送達されるベクター双方について1×1010GCという用量で、比較的低レベルのベクターゲノムが肝若しくは脳いずれでも観察される。より高用量(1×1011GC)で、有意により高レベルのベクターが
双方の送達方法について肝で見出される一方、脳中の有意により高レベルがicv投与を受領する動物でのみ見出される。このベクターが組織非特異的プロモーターを含有したことは注目すべきである。安全性の懸念は、肝での発現を最小限にするために、脳の細胞および場合によっては他の神経細胞若しくは中枢神経系の細胞を特異的に標的とする組織特異的プロモーターの使用を介して低減させうる。あるいは、肝での発現は、他器官への乳癌転移を予防若しくは制御するためにトラスツズマブの全身送達に有益でありうる。
【0102】
J.NSGマウスを使用するBT474-M1乳癌脳転移の研究に適する代替マウスモデル
6~8週齢雌性NSGマウス(Jackson Labs #005557)をペンシルバニア大学で飼育した。腫瘍を、腫瘍細胞の調製および注入技術に対する以下の変更を伴い上で示されたとおり移植した。腫瘍細胞は、50%MatriGel(登録商標)(Corning)/50%無菌PBSに5μLあたり1×105細胞で再懸濁した。注入
量を1μLから5μLに増大した。脳実質中で針の位置を定めた後に、注入を開始する前に5分が経過した。注入は10分にわたりゆっくりと実施し、そしてシリンジを除去前に正しい位置に5分残した。マウスを監視し、そして生物発光を本文書の別の場所に示されるとおり測定した。該データは腫瘍細胞の脳中への成功裏の生着を示した。腫瘍増殖の速度を評価して、このモデルが脳への乳癌転移の研究に望ましいかどうかを決定することができる。
【配列表フリーテキスト】
【0103】
以下の情報は数字見出し<223>にフリーテキストを含有する配列について提供される。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
【表5】
【0109】
【表6】
【0110】
【表7】
【0111】
【表8】
【0112】
本出願は引用することによりここに組み込まれる配列および配列表を含有する。4月25日、20145出願の米国仮出願第61/984,646号明細書、ならびに本出願に引用される全部の刊行物、特許および特許出願は、各個々の刊行物若しくは特許出願が引用することにより組み込まれることを特別にかつ個別に示されたかのようにそっくりそのまま引用することによりここに組み込まれる。前述の発明は理解の明快さの目的上具体的説明および例としていくぶん詳細に記述されたとは言え、ある種の変更および改変が、付属として付けられる請求の範囲の技術思想若しくは範囲から離れることなくそれになされ得ることが、本発明の教示に照らして当業者に容易に明らかであろう。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-02-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)と、少なくとも1つの製薬学的に許容できる担体保存剤及び/又は安定剤を含んでなる組成物であって、
前記1以上の組換えAAVは、AAVキャプシドを含み、かつ、前記AAVキャプシド中には、それの発現制御配列に作動可能に連結された抗ヒト上皮成長因子受容体2(抗Her2)免疫グロブリン構築物をコードする核酸配列を含む少なくとも1つの発現カセットを含む、核酸分子がパッケージされており、
前記コード配列は、異種リーダー配列と、配列番号12の可変領域を含む抗Her2免疫グロブリン重鎖をコードする配列番号17のヌクレオチド1314~2660とを含み、
前記核酸配列は、異種のリーダーと、配列番号1のヌクレオチド2070~2711又はそれに少なくとも90%同一の配列であって、抗Her2軽鎖をコードする配列さらに含み、前記コードされた軽鎖は配列番号14の可変領域を含む、上記組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、前記抗Her2免疫グロブリン構築物が、中枢神経系送達のために配合される、組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物であって、前記1以上の組換えAAVが、AAV9、AAVrh10又はAAVhu37キャプシドを含む、組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物であって、2以上の異なる発現カセットを含む1以上の組換えAAVを含む、組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物であって、単一の発現カセットを含む1以上の組換えAAVを含む、組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物であって、前記重鎖の配列が、配列番号17のヌクレオチド1254~2660を含む、組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物であって、前記軽鎖の配列が、配列番号17のヌクレオチド2805~3452を含む、組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物であって、前記鎖をコードする配列が、配列番号17のヌクレオチド2745~3452を含む、上記組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物であって、前記重鎖及び軽鎖の配列が、配列番号17のヌクレオチド1254~3452を含む、上記組成物。
【請求項10】
(a)アデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドと(b)抗ヒト上皮成長因子受容体2(Her2)免疫グロブリン構築物及びそれに作動可能に連結された発現制御配列をコードする核酸配列を含む、前記AAVキャプシドにパッケージングされた核酸分子と含む、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)であって前記核酸配列は、
(i)異種リーダー配列、配列番号17のヌクレオチド1314~1673を有する重鎖可変領域及び重鎖定常領域を含む、抗Her2免疫グロブリン重鎖、
(ii)リンカー配列、及び
(iii)(a)(i)と同じ起源の異種リーダー配列、配列番号17のヌクレオチド2805~3110を有する軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域を含む抗Her2免疫グロブリン軽鎖、
をコードする核酸配列を含む、上記組換えAAV。
【請求項11】
請求項10に記載の組換えAAVであって、前記種リーダー配列の1以上がIL-2リーダーペプチドである、上記組換えAAV。
【請求項12】
請求項10に記載の組換えAAVであって、コード配列が配列番号17のヌクレオチド1254~2660を含む、上記組換えAAV。
【請求項13】
請求項10に記載の組換えAAVであって、コード配列が配列番号17のヌクレオチド1314~2660の配列を含む、上記組換えAAV。
【請求項14】
請求項10に記載の組換えAAVであって、コード配列が配列番号17のヌクレオチド2745~3452の配列を含む、上記組換えAAV。
【請求項15】
請求項10に記載の組換えAAVであって、コード配列が配列番号17のヌクレオチド2805~3452の配列を含む、上記組換えAAV。
【請求項16】
請求項10に記載の組換えAAVであって、発現制御配列が、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)前初期(IE)エンハンサー/プロモーターとSV40ポリアデニル化(poly A)シグナルを含む、上記組換えAAV。
【請求項17】
請求項10に記載の組換えAAVであって、(b)の核酸配列が配列番号17のヌクレオチド1254~3452を含む、上記組換えAAV。
【請求項18】
請求項10に記載の組換えAAVであって、(b)の核酸配列が配列番号17のヌクレオチド1254~3452に隣接するAAV2末端逆位配列をさらに含む、上記組換えAAV。
【外国語明細書】