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特開2023-62209半導体デバイス及び半導体デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062209
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】半導体デバイス及び半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3205 20060101AFI20230426BHJP
【FI】
H01L21/88 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020043206
(22)【出願日】2020-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 孝紀
【テーマコード(参考)】
5F033
【Fターム(参考)】
5F033GG01
5F033GG02
5F033HH07
5F033HH08
5F033HH09
5F033HH13
5F033HH18
5F033HH21
5F033HH22
5F033HH23
5F033MM08
5F033MM30
5F033PP15
5F033PP19
5F033PP27
5F033PP28
5F033QQ08
5F033QQ13
5F033QQ46
5F033RR04
5F033RR06
5F033RR08
5F033SS13
5F033TT02
(57)【要約】
【課題】ソースフィンガの直下にビアを設ける場合に、トランジスタの電気的特性の劣化を抑制する。
【解決手段】基板の主面上に設けられ、デバイス領域を含む窒化物半導体層と、デバイス領域上に設けられたソース電極と、デバイス領域上においてソース電極に対して第1方向に並んで設けられたドレイン電極と、デバイス領域上においてソース電極とドレイン電極との間に設けられたゲート電極と、基板及び窒化物半導体層を貫通する第1及び第2のビアとを備える。第1のビアは、主面の法線方向から見て、デバイス領域上のソース電極の第1方向と交差する第2方向における一端側に設けられている。第2のビアは、主面の法線方向から見て、デバイス領域上のソース電極の第2方向における他端側に設けられている。第1及び第2のビアのソース電極側の一端はソース電極と電気的に接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面及び裏面を有する基板と、
前記基板の前記主面上に設けられ、デバイス領域を含む窒化物半導体層と、
前記デバイス領域上に設けられたソース電極と、
前記デバイス領域上において前記ソース電極に対して第1方向に並んで設けられたドレイン電極と、
前記デバイス領域上において前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられたゲート電極と、
前記基板及び前記窒化物半導体層を貫通する第1及び第2のビアと、
を備え、
前記第1のビアは、前記主面の法線方向から見て、前記デバイス領域上の前記ソース電極の前記第1方向と交差する第2方向における一端側に設けられ、
前記第2のビアは、前記主面の法線方向から見て、前記デバイス領域上の前記ソース電極の前記第2方向における他端側に設けられ、
前記第1及び第2のビアの前記ソース電極側の一端は前記ソース電極と電気的に接続されている、半導体デバイス。
【請求項2】
前記ソース電極の平面形状は長方形である、請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項3】
前記第1及び第2のビアは平坦な側面を有し、
前記第1及び第2のビアの前記側面同士が互いに対向する、請求項1又は請求項2に記載の半導体デバイス。
【請求項4】
前記第1及び第2のビアの平面形状は円形である、請求項1又は請求項2に記載の半導体デバイス。
【請求項5】
前記第2方向と直交する方向における前記第1及び第2のビアの幅は、同方向における前記ソース電極の幅の80%以上100%未満である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体デバイス。
【請求項6】
前記基板及び前記窒化物半導体層を貫通するとともに前記第1のビアと前記第2のビアとの間に位置する第3のビアを更に備え、
前記第3のビアは、前記主面の法線方向から見て、前記デバイス領域上の前記ソース電極に設けられ、
前記第3のビアの前記ソース電極側の一端は前記ソース電極と電気的に接続されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体デバイス。
【請求項7】
半導体デバイスの製造方法であって、
デバイス領域を含む窒化物半導体層を基板の主面上に形成する工程と、
ソース電極と、前記ソース電極に対して第1方向に並ぶドレイン電極とを前記デバイス領域上に形成する工程と、
前記デバイス領域上の前記ソース電極と前記ドレイン電極との間にゲート電極を形成する工程と、
前記基板及び前記窒化物半導体層を貫通する第1及び第2の孔を、前記主面の法線方向から見て、前記デバイス領域上の前記ソース電極の前記第1方向と交差する第2方向における一端側及び他端側に、反応性イオンエッチングによりそれぞれ形成する工程と、
前記第1の孔に第1のビアを、前記第2の孔に第2のビアをそれぞれ形成し、前記第1及び第2のビアの前記ソース電極側の一端を前記ソース電極と電気的に接続する工程と、
を含む、半導体デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記基板はSiC基板であり、
前記第1及び第2の孔を形成する工程では、フッ素系ガスを用いる反応性イオンエッチングにより前記基板をエッチングしたのち、塩素系ガスを用いる反応性イオンエッチングにより前記窒化物半導体層をエッチングする、請求項7に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記第1及び第2の孔を形成する工程では、前記フッ素系ガスに由来するフッ素イオンを前記基板に向けて間欠的に照射する、請求項8に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記第1及び第2の孔を形成する工程では、前記塩素系ガスに由来する塩素イオンを前記窒化物半導体層に向けて間欠的に照射する、請求項8または9に記載の半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体デバイス及び半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体装置の製造方法が開示されている。この文献に記載された方法では、第1の孔と、第1の孔よりも小さい径を有する第2の孔とを備えるビアホールを、表面側に化合物半導体積層構造を備える半導体基板の裏面側から形成する。ビアホール形成工程は、ドライエッチングによって半導体基板に第1の孔を形成する工程と、ウェットエッチングによって化合物半導体積層構造に第2の孔を形成する工程とを含む。
【0003】
特許文献2には、半導体装置の構造が開示されている。この文献に記載された半導体装置は、半導体素子と、阻止膜と、第1のビア配線と、第2のビア配線とを備える。半導体素子は、半導体基板の第1の面に形成される。阻止膜は、半導体基板の第1の面に凹状に形成される第1のビアホール内に設けられる。阻止膜は、少なくとも1種類以上の第8族元素を含む。第1のビア配線は、阻止膜に接して半導体素子の電極に接続される。第2のビア配線は、半導体基板の第1の面と対向する第2の面に阻止膜に達し凹状に形成される第2のビアホール内に形成される。第2のビア配線は、阻止膜を介して第1のビア配線と電気的に接続され、第2の面に形成される配線の一部となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-191763号公報
【特許文献2】特開2008-085020号公報
【特許文献3】特開2012-033690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、半導体技術の進展により、半導体素子サイズの縮小と、それに伴う内部構成要素の微細化が求められている。また、トランジスタにおいては、高周波特性の改善(具体的にはソースインダクタンスの低減によるゲインの改善及び安定化)のため、ソースフィンガの直下にビアを形成する、いわゆるアイランドソースビア(ISV)が有効である。しかし、ソースフィンガを細くし、更にソースフィンガの直下に微小なビアを設けると、電荷密度の不均一性に起因するソース電位の安定性の低下、及びインダクタンスの増大といった不利益が生じ、これらに起因する電流量の増大及び電流の乱れといった現象により、トランジスタの電気的特性が劣化する。本開示は、ソースフィンガの直下にビアを設ける場合に、トランジスタの電気的特性の劣化を抑制することが可能な半導体デバイス及び半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係る半導体デバイスは、主面及び裏面を有する基板と、基板の主面上に設けられ、デバイス領域を含む窒化物半導体層と、デバイス領域上に設けられたソース電極と、デバイス領域上においてソース電極に対して第1方向に並んで設けられたドレイン電極と、デバイス領域上においてソース電極とドレイン電極との間に設けられたゲート電極と、基板及び窒化物半導体層を貫通する第1及び第2のビアと、を備える。第1のビアは、主面の法線方向から見て、デバイス領域上のソース電極の第1方向と交差する第2方向における一端側に設けられている。第2のビアは、主面の法線方向から見て、デバイス領域上のソース電極の第2方向における他端側に設けられている。第1及び第2のビアのソース電極側の一端はソース電極と電気的に接続されている。
【0007】
また、本開示の一形態に係る半導体デバイスの製造方法は、半導体デバイスの製造方法であって、デバイス領域を含む窒化物半導体層を基板の主面上に形成する工程と、ソース電極と、ソース電極に対して第1方向に並ぶドレイン電極とをデバイス領域上に形成する工程と、デバイス領域上のソース電極とドレイン電極との間にゲート電極を形成する工程と、基板及び窒化物半導体層を貫通する第1及び第2の孔を、主面の法線方向から見て、デバイス領域上のソース電極の第1方向と交差する第2方向における一端側及び他端側に、反応性イオンエッチングによりそれぞれ形成する工程と、第1の孔に第1のビアを、第2の孔に第2のビアをそれぞれ形成し、第1及び第2のビアのソース電極側の一端をソース電極と電気的に接続する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、トランジスタの電気的特性の劣化を抑制することが可能な半導体デバイス及び半導体デバイスの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る半導体デバイスとしてのトランジスタ1Aの構成を示す平面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図3は、図1のIII-III線に沿った断面図である。
図4図4は、ソース電極22及び金属ビア44A,44Bを拡大して示す平面図である。
図5図5は、トランジスタ1Aの作製方法に含まれる各工程を示す断面図である。
図6図6は、トランジスタ1Aの作製方法に含まれる各工程を示す断面図である。
図7図7は、トランジスタ1Aの作製方法に含まれる各工程を示す断面図である。
図8図8は、トランジスタ1Aの作製方法に含まれる各工程を示す断面図である。
図9図9は、トランジスタ1Aの作製方法に含まれる各工程を示す断面図である。
図10図10は、トランジスタ1Aの作製方法に含まれる各工程を示す断面図である。
図11図11は、トランジスタ1Aの作製方法に含まれる各工程を示す断面図である。
図12図12は、ソース電極22における電荷密度を色の濃淡によって模式的に示す図であって、金属ビアが設けられない場合を示す。
図13図13は、ソース電極22における電荷密度を色の濃淡によって模式的に示す図であって、金属ビア44がソース電極22の長手方向における中央部に1つのみ設けられた場合を示す。
図14図14は、ソース電極22における電荷密度を色の濃淡によって模式的に示す図であって、ソース電極22の長手方向における両端部に金属ビア44A,44Bが設けられた場合を示す。
図15図15のグラフG1は、一実施形態におけるトランジスタの動作特性として、ゲート電極21またはドレイン電極23にステップ状の電圧を印加した際における、トランジスタのソース電圧の時間変化を示すグラフである。
図16図16は、第1変型例として、トランジスタ1Bの構成を示す平面図である。
図17図17は、金属ビア44A,44Bの平坦な側面44aa,44ba同士が互いに対向する場合に、金属ビア44A,44Bの間に生じる電界Bを示す図である。
図18図18は、金属ビア47A,47Bの平面形状が円形又は楕円形である場合に、金属ビア47A,47Bの間に生じる電界Bを示す図である。
図19図19は、第2変型例として、トランジスタ1Cの構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態を列記して説明する。本開示の一形態に係る半導体デバイスは、主面及び裏面を有する基板と、基板の主面上に設けられ、デバイス領域を含む窒化物半導体層と、デバイス領域上に設けられたソース電極と、デバイス領域上においてソース電極に対して第1方向に並んで設けられたドレイン電極と、デバイス領域上においてソース電極とドレイン電極との間に設けられたゲート電極と、基板及び窒化物半導体層を貫通する第1及び第2のビアと、を備える。第1のビアは、主面の法線方向から見て、デバイス領域上のソース電極の第1方向と交差する第2方向における一端側に設けられている。第2のビアは、主面の法線方向から見て、デバイス領域上のソース電極の第2方向における他端側に設けられている。第1及び第2のビアのソース電極側の一端はソース電極と電気的に接続されている。
【0011】
この半導体デバイスでは、ISVである第1及び第2のビアが、主面の法線方向から見て、デバイス領域上のソース電極(ソースフィンガ)の第2方向における一端側及び他端側にそれぞれ設けられ、ソース電極と電気的に接続されている。この場合、ソース電極における電荷密度の均一性が増すので、ソース電極の細長形状に起因するインダクタンスの増大に対し、ソース電位の安定性の低下が抑制される。故に、電流量の増大及び電流の乱れといった現象が低減し、トランジスタの電気的特性の劣化を抑制することができる。
【0012】
上記の半導体デバイスにおいて、ソース電極の平面形状は長方形であってもよい。この場合、特に長方形の四隅において電荷密度の均一性が低下し易い。上記の半導体デバイスの構成は、このような場合において特に効果的である。
【0013】
上記の半導体デバイスにおいて、第1及び第2のビアは平坦な側面を有し、第1及び第2のビアの側面同士が互いに対向してもよい。過渡状態では、ソース電極のインダクタンスに起因して、第1のビアと第2のビアとの間に微小な電界が生じる。第1及び第2のビアの平坦な側面同士が互いに対向する場合、電界がソース電極の外側に膨らみにくくなるので、ソース電位の安定性が更に向上する。
【0014】
上記の半導体デバイスにおいて、第1及び第2のビアの平面形状は円形であってもよい。この場合、第1及び第2のビアの形成が容易になる。
【0015】
上記の半導体デバイスにおいて、ソース電極の短手方向における第1及び第2のビアの幅は、同方向におけるソース電極の幅の80%以上100%未満であってもよい。このように第1及び第2のビアの幅がソース電極の幅に対して大きな割合を占めることにより、ソース電極における電荷密度の均一性を更に高めることができる。
【0016】
上記の半導体デバイスは、基板及び窒化物半導体層を貫通するとともに第1のビアと第2のビアとの間に位置する第3のビアを更に備え、第3のビアは、主面の法線方向から見て、デバイス領域上のソース電極に設けられ、第3のビアのソース電極側の一端はソース電極と電気的に接続されてもよい。この場合、ソース電極における電荷密度の均一性を更に高めることができる。
【0017】
また、本開示の一形態に係る半導体デバイスの製造方法は、半導体デバイスの製造方法であって、デバイス領域を含む窒化物半導体層を基板の主面上に形成する工程と、ソース電極と、ソース電極に対して第1方向に並ぶドレイン電極とをデバイス領域上に形成する工程と、デバイス領域上のソース電極とドレイン電極との間にゲート電極を形成する工程と、基板及び窒化物半導体層を貫通する第1及び第2の孔を、主面の法線方向から見て、デバイス領域上のソース電極の第1方向と交差する第2方向における一端側及び他端側に、反応性イオンエッチングによりそれぞれ形成する工程と、第1の孔に第1のビアを、第2の孔に第2のビアをそれぞれ形成し、第1及び第2のビアのソース電極側の一端をソース電極と電気的に接続する工程と、を含む。
【0018】
この製造方法では、ISVである第1及び第2のビアが、主面の法線方向から見て、デバイス領域上のソース電極(ソースフィンガ)の第2方向における一端側及び他端側にそれぞれ形成され、ソース電極と電気的に接続される。この場合、ソース電極における電荷密度の均一性が増すので、ソース電極の細長形状に起因するインダクタンスの増大に対し、ソース電位の安定性の低下が抑制される。故に、電流量の増大及び電流の乱れといった現象が低減し、トランジスタの電気的特性の劣化を抑制することができる。
【0019】
上記の半導体デバイスの製造方法において、基板はSiC基板であり、第1及び第2の孔を形成する工程では、フッ素系ガスを用いる反応性イオンエッチングにより基板をエッチングしたのち、塩素系ガスを用いる反応性イオンエッチングにより窒化物半導体層をエッチングしてもよい。この場合、SiC基板及び窒化物半導体層のそれぞれを容易にエッチングすることができる。また、この場合、第1及び第2の孔を形成する工程において、フッ素系ガスに由来するフッ素イオンを基板に向けて間欠的に照射してもよい。同様に、塩素系ガスに由来する塩素イオンを窒化物半導体層に向けて間欠的に照射してもよい。第1及び第2の孔の内径が小さくなるほどアスペクト比が大きくなり、エッチングの際に分解・再生成した分子やイオンが孔内から排出されにくくなる。従って、エッチング種が孔内に入り込みにくくなり、エッチングレートが大きく低下する。また、窒化物半導体といった広いバンドギャップを有する半導体に対してエッチングを施す際には、化学的エッチングだけでなく、物理的エッチングの要素が必要となる。従って、エッチングの際に高いパワーが必要となり、入射イオンの影響によって第1及び第2の孔の底部周辺が帯電してしまう。第1及び第2の孔の底部周辺が帯電すると、物理的エッチングの作用が弱まり、エッチングレートが大きく低下する。このような傾向は、第1及び第2の孔のアスペクト比が大きいほど顕著である。上記のように、フッ素系ガスに由来するフッ素イオン、及び塩素系ガスに由来する塩素イオンをそれぞれ基板及び窒化物半導体層に向けて間欠的に照射する、いわゆるパルスエッチング法を用いることによって、エッチングの際に分解・再生成した分子やイオンが第1及び第2の孔内から排出され易くなり、また、第1及び第2の孔の底部周辺の帯電を緩和できる。従って、エッチングレートの低下を抑制して、アスペクト比が大きい第1及び第2の孔を容易に形成することができる。
【0020】
[本願発明の実施形態の詳細]
本開示の半導体デバイス及び半導体デバイスの製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、本開示の一実施形態に係る半導体デバイスとしてのトランジスタ1Aの構成を示す平面図である。図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。図3は、図1のIII-III線に沿った断面図である。図1図2及び図3に示すように、トランジスタ1Aは、基板3、窒化物半導体層4、絶縁膜5~8、複数のゲート電極21、複数のソース電極22、複数のドレイン電極23、ゲートパッド31、複数のソース配線32、ドレイン配線33、複数のフィールドプレート35、複数の金属ビア44A、及び複数の金属ビア44Bを備える。
【0022】
基板3は、平坦な主面3aと、主面3aの反対側に位置する平坦な裏面3bとを有する。基板3は、窒化物半導体層4のエピタキシャル成長のために用いられ得る材料からなり、一例では、基板3はSiC基板である。基板3の厚さは、例えば50μmから120μmの範囲内であり、一例では100μmである。
【0023】
窒化物半導体層4は、基板3の主面3a上に形成されたエピタキシャル層である。トランジスタ1Aが高電子移動度トランジスタ(HEMT)である場合、窒化物半導体層4は、例えば、主面3aに接するAlNバッファ層と、AlNバッファ層上に設けられたGaNチャネル層と、GaNチャネル層上に設けられたAlGaN(若しくはInAlN)バリア層と、バリア層上に設けられたGaNキャップ層とを有する。場合によってはGaNキャップ層を省略することもできる。AlNバッファ層はアンドープであり、その厚さは例えば10nmから30nmの範囲内である。GaNチャネル層はアンドープであり、その厚さは例えば0.3μmから2.0μmの範囲内である。バリア層の厚さは例えば10nmから30nmの範囲内である。但し、InAlNバリア層の場合、その厚さは20nmよりも小さく設定される。GaNキャップ層はn型であり、その厚さは例えば1.5nmから5nmである。窒化物半導体層4は、活性領域であるデバイス領域4aを有し、デバイス領域4a以外の領域は不活性領域とされている。
【0024】
絶縁膜5~8は、窒化物半導体層4上に位置する絶縁性の積層構造体を構成する。絶縁膜5~8は、例えばSiN、SiO2、SiONといったシリコン化合物を主に含む。なお、本実施形態では絶縁膜5~8は互いに接しているが、少なくとも1つの層間に他の層が設けられることを妨げない。絶縁膜5~8がSiN層である場合、絶縁膜5の厚さは例えば10nmから30nmの範囲内であり、絶縁膜6の厚さは例えば30nmから90nmの範囲内であり、絶縁膜7の厚さは例えば150nmから500nmの範囲内であり、絶縁膜8の厚さは例えば100nmから1000nmの範囲内である。
【0025】
複数のソース電極22(ソースフィンガ)は、窒化物半導体層4のデバイス領域4a上に設けられており、窒化物半導体層4とオーミック接触を成す。図1に示すように、複数のソース電極22は主面3aに沿う方向D1(第1方向)に沿って並んでおり、各ソース電極22の平面形状は、方向D1と交差する方向D2(第2方向)を長手方向とする形状を呈する。一例では、各ソース電極22の平面形状は方向D2を長手方向とする長方形状である。ソース電極22は、例えばTi層、Al層及びTi層(又はTa層、Al層及びTa層)を含む積層構造が合金化されてなり、主にAlを含む。
【0026】
複数のドレイン電極23は、窒化物半導体層4のデバイス領域4a上に設けられており、窒化物半導体層4とオーミック接触を成す。図1に示すように、ドレイン電極23は、ソース電極22に対して方向D1に並んでおり、図示例では複数のドレイン電極23が複数のソース電極22と方向D1において交互に並んでいる。各ドレイン電極23の平面形状は、方向D2を長手方向とする形状を呈し、一例では、各ドレイン電極23の平面形状は方向D2を長手方向とする長方形状である。ドレイン電極23もまた、例えばTi層、Al層及びTi層(又はTa層、Al層及びTa層)を含む積層構造が合金化されてなり、主にAlを含む。
【0027】
複数のゲート電極21は、窒化物半導体層4のデバイス領域4a上に設けられている。各ゲート電極21は、方向D2に沿って延びており、方向D1においてソース電極22とドレイン電極23との間に位置し、ソース電極22及びドレイン電極23から間隔を空けて設けられている。これらのゲート電極21は、窒化物半導体層4とショットキ接触を成す。各ゲート電極21と窒化物半導体層4との方向D1における接触幅(ゲート長)は、例えば0.2μmから2.0μmの範囲内であり、一実施例では0.5μmである。方向D2におけるゲート電極21の長さは、例えば100μmから800μmの範囲内である。ゲート電極21は、Ni層と、該Ni層上のAu層とを含む積層構造を有する。一例ではNi層は窒化物半導体層4に接しており、Au層はNi層に接している。或いは、Ni層とAu層との間にPd層が介在してもよい。この場合、Ni層の厚さは例えば50nmから100nmであり、Pd層の厚さは例えば20nmから70nmであり、Au層の厚さは例えば100nmから500nmである。
【0028】
フィールドプレート35は、ゲート電極21に沿って設けられる金属膜である。フィールドプレート35とゲート電極21との間には、絶縁膜7が介在している。フィールドプレート35は、例えばTi層(又はTa層)とAu層との積層構造を有する。Ti層の厚さは例えば3nmから10nmの範囲内であり、Au層の厚さは例えば100nmから500nmの範囲内である。
【0029】
ゲートパッド31は、窒化物半導体層4の不活性領域上に延び出したゲート電極21の部分を覆う金属膜である。本実施形態では、一つのゲートパッド31が、窒化物半導体層4のデバイス領域4aに対して方向D2の一方側に位置する不活性領域上に設けられている。ゲートパッド31は、2本以上(図示例では4本)のゲート電極21と接続され、ボンディングワイヤを介して、トランジスタ1Aの外部配線と電気的に接続される。そのため、ゲートパッド31の表面は最表面の保護膜(図示せず)の開口から露出している。ゲートパッド31は、例えばTiW層と、TiW層上のAu層とを含む積層構造を有する。
【0030】
複数のソース配線32は、窒化物半導体層4のデバイス領域4a上に設けられた金属膜であり、それぞれソース電極22を覆い、ソース電極22の上面に接している。本実施形態の各ソース配線32は、各ソース電極22の上面および周囲を完全に覆っている。各ソース配線32は、ゲートパッド31と同様の積層構造、例えばTiW層と、TiW層上のAu層とを含む積層構造を有する。各ソース配線32の平面形状は、例えば方向D2を長手方向とする形状を呈している。一例では、各ソース配線32の平面形状は方向D2を長手方向とする長方形であり、4つの角部を有する。方向D1における各ソース配線32の幅は、例えば15μmから100μmの範囲内である。方向D2における各ソース配線32の長さは、例えば100μmから800μmの範囲内である。
【0031】
ドレイン配線33は、金属膜であり、窒化物半導体層4のデバイス領域4a上のドレイン電極と重なり、当該ドレイン電極から不活性領域上にわたって設けられている。すなわち、ドレイン配線33は、デバイス領域4a上に設けられた複数のフィンガ部33aと、不活性領域上に設けられたパッド部33bとを有する。ドレイン配線33は、ゲートパッド31及びソース配線32と同様の積層構造、例えばTiW層と、TiW層上のAu層とを含む積層構造を有する。各フィンガ部33aは、対応するドレイン電極23を覆っており、該ドレイン電極23の上面に接している。各フィンガ部33aは、例えば方向D2を長手方向とする長方形状を呈している。方向D1における各フィンガ部33aの幅は、例えば15μmから100μmの範囲内である。方向D2における各フィンガ部33aの長さは、例えば100μmから800μmの範囲内である。パッド部33bは、窒化物半導体層4のデバイス領域4aに対して方向D2の他方側(ゲートパッド31とは反対側)に位置する不活性領域上に設けられている。パッド部33bは、2本以上(図示例では2本)のフィンガ部33aと一体的に接続され、ボンディングワイヤを介してトランジスタ1Aの外部配線と電気的に接続される。そのため、各パッド部33bの表面は最表面の保護膜(図示せず)の開口から露出している。
【0032】
複数の金属ビア44Aは本実施形態における第1のビアの例であり、複数の金属ビア44Bは本実施形態における第2のビアの例である。金属ビア44Aは、基板3及び窒化物半導体層4を貫通する孔11(図2を参照)内に設けられた金属膜である。同様に、金属ビア44Bは、基板3及び窒化物半導体層4を貫通する別の孔12(図3を参照)内に設けられた金属膜である。金属ビア44A,44Bは、基板3及び窒化物半導体層4を貫通し、基板3の裏面3b上から、対応するソース電極22(又はソース配線32)に達している。金属ビア44A,44Bのソース電極22側の一端は、ソース配線32を介して又は直接に、ソース電極22と電気的に接続されている。図示例では、金属ビア44A,44Bの一端はソース電極22に接している。金属ビア44A,44Bは、裏面3b上に設けられる裏面金属膜46とソース電極22とを互いに電気的に接続するために設けられる。グランド電位(基準電位)に接続されたマウント部材上にトランジスタ1Aが実装される際、該マウント部材と裏面3b上の裏面金属膜46とは、半田等の導電性接着材を介して電気的に接続される。これにより、ソース電極22にグランド電位が与えられる。
【0033】
デバイス領域4aに対して方向D2の他方側(ゲートパッド31とは反対側)に位置する不活性領域上には、一対のソースパッド34が更に設けられている。一対のソースパッド34は、それらの間にゲートパッド31を挟む位置に設けられている。各ソースパッド34は、基板3及び窒化物半導体層4を貫通する金属ビア48を介して、裏面金属膜46と電気的に接続されている。各ソースパッド34は、必要に応じて、ボンディングワイヤを介してトランジスタ1Aの外部配線と電気的に接続される。そのため、各ソースパッド34の表面は最表面の保護膜(図示せず)の開口から露出している。
【0034】
図4は、ソース電極22及び金属ビア44A,44Bを拡大して示す平面図である。図4に示すように、ソース電極22は、方向D1にそれぞれ沿っており方向D2において互いに対向する一対の端辺22a,22bと、方向D2にそれぞれ沿っており方向D1において互いに対向する一対の側辺22c,22dとを有する。金属ビア44Aは、基板3の主面3aの法線方向(すなわち方向D1及びD2の双方と交差する方向)から見て、デバイス領域4a上のソース電極22の長手方向(方向D2)における一端側に設けられ、図示例では一端部221と重なっている。また、金属ビア44Bは、主面3aの法線方向から見て、デバイス領域4a上のソース電極22の長手方向(方向D2)における他端側に設けられ、図示例では他端部222と重なっている。なお、本実施形態において、一端部221は、方向D2におけるソース電極22の中心に対して端辺22a寄りの領域を指し、他端部222は、方向D2におけるソース電極22の中心に対して端辺22b寄りの領域を指す。
【0035】
本実施形態の金属ビア44A,44Bの平面形状(すなわち方向D1及びD2を含む平面に沿った断面形状)は、正方形または長方形である。この場合、金属ビア44Aは平坦な側面44aa,44ab,44ac,44adを有し、金属ビア44Bは平坦な側面44ba,44bb,44bc,44bdを有する。そして、側面44aaと側面44baとは、方向D2において互いに対向し、且つ互いに平行である。また、側面44abはソース電極22の端辺22aに沿っており、側面44bbはソース電極22の端辺22bに沿っている。側面44ac及び44bcはソース電極22の側辺22cに沿っており、側面44ad及び44bdはソース電極22の側辺22dに沿っている。
【0036】
ソース電極22の短手方向、すなわち方向D2と直交する方向(方向D1)の幅のうち、金属ビア44A,44Bの幅は比較的大きな割合を占める。一例では、方向D2と直交する方向(方向D1)における金属ビア44A,44Bの幅Waは、同方向におけるソース電極22の幅Wbの80%以上100%未満である。
【0037】
以上に説明した構成を備える本実施形態のトランジスタ1Aを作製する方法について説明する。図5図11は、トランジスタ1Aの作製方法に含まれる各工程を示す断面図である。
【0038】
まず、図5の(a)に示すように、主面3a及び裏面3bを有する基板3を準備する。基板3の主面3a上に、窒化物半導体層4をエピタキシャル成長する。窒化物半導体層4の詳細は前述した通りである。そして、窒化物半導体層4のデバイス領域4aの周囲の領域をプロトン注入により不活性化する。続いて、窒化物半導体層4上に絶縁膜5を堆積する。例えば絶縁膜5がSiN等のシリコン化合物からなる場合、絶縁膜5をプラズマCVD法または減圧CVD(LPCVD)法により堆積する。
【0039】
続いて、図5の(b)に示すように、ソース電極22およびドレイン電極23に対応する開口を、方向D2を長手方向として、デバイス領域4a上の絶縁膜5に形成する。具体的には、絶縁膜5上に当該開口に対応する開口パターンを有するレジストマスクを形成し、該開口パターンを通じて絶縁膜5をエッチングすることにより、開口を形成する。その後、リフトオフ法を用いてソース電極22およびドレイン電極23を開口内に形成する。すなわち、上記レジストマスクを残した状態で、ソース電極22およびドレイン電極23のための各金属層(例えばTi/Al/Ti、またはTa/Al/Ta)を、蒸着などの方法を用いて順に堆積する。各Ti層(またはTa層)の厚さは例えば10~30nmの範囲内であり、Al層の厚さは例えば200~400nmの範囲内である。すなわち、この時点でのソース電極22およびドレイン電極23は、Alを主に含む多層金属である。
【0040】
レジストマスク上に堆積した金属材料をレジストマスクとともに除去したのち、500~600℃の温度で熱処理(アニール)を行い、前工程で堆積した多層金属の合金化を行う。500~600℃の範囲内の温度を維持する時間は、例えば1分である。続いて、図5の(c)に示すように、絶縁膜5、ソース電極22及びドレイン電極23を覆う絶縁膜6を堆積する。例えば絶縁膜6がSiN等のシリコン化合物からなる場合、絶縁膜6をプラズマCVD法により堆積する。
【0041】
続いて、図6の(a)に示すように、ゲート電極21をデバイス領域4a上に形成する。まず、絶縁膜6上にゲート電極21のための開口を有するフォトレジストを形成する。ゲート電極21のための開口パターンを、ソース電極22とドレイン電極23との間に形成する。次に、フォトレジストの開口パターンを介して絶縁膜6及び絶縁膜5を連続してエッチングすることにより、絶縁膜5,6を貫通する開口を形成して窒化物半導体層4を露出する。その後、リフトオフ法を用いて、ゲート電極21を絶縁膜5,6の開口内に形成する。すなわち、フォトレジストを残した状態で、ゲート電極21のための各金属層(例えばNi/AuまたはNi/Pd/Au)を、蒸着などにより順に堆積する。その後、フォトレジスト上に堆積した金属材料をフォトレジストとともに除去する。続いて、図6の(b)に示すように、絶縁膜6及びゲート電極21を覆う絶縁膜7を堆積する。例えば絶縁膜7がSiN等のシリコン化合物からなる場合、絶縁膜7をプラズマCVD法により堆積する。
【0042】
続いて、図6の(c)に示すように、ゲート電極21に沿ってフィールドプレート35を形成する。この工程では、フィールドプレート35を例えばリフトオフ法を用いて形成する。すなわち、フィールドプレート35の平面形状に対応する開口パターンを有するレジストマスクを形成し、フィールドプレート35のための各金属層(例えばTi/Au)を、蒸着などの方法を用いて順に堆積する。その後、レジストマスク上に堆積した金属材料をレジストマスクとともに除去する。続いて、図7の(a)に示すように、絶縁膜7及びフィールドプレート35を覆う絶縁膜8を堆積する。例えば絶縁膜8がSiN等のシリコン化合物からなる場合、絶縁膜8をプラズマCVD法により堆積する。
【0043】
続いて、図7の(b)に示すように、ソース電極22およびドレイン電極23上の絶縁膜6,7,8をエッチングにより除去して開口を形成し、ソース電極22およびドレイン電極23をそれぞれ露出させる。また、同時に、ゲートパッド31と、ソースパッド34と、ドレイン配線33のパッド部33bとにそれぞれ対応する領域の絶縁膜5,6,7,8をエッチングにより除去して開口を形成し、窒化物半導体層4を露出させる。
【0044】
続いて、図7の(c)に示すように、ゲートパッド31、ソース配線32、ドレイン配線33、及びソースパッド34を並行して同時に形成する。具体的には、絶縁膜8、及び絶縁膜5,6,7,8に形成された開口から露出したソース電極22、ドレイン電極23、及び窒化物半導体層4を覆うシード金属層(TiW/Au)をスパッタ法により形成する。そして、ゲートパッド31、ソース配線32、ドレイン配線33、及びソースパッド34を形成する領域に開口を有するレジストマスクをシード金属層上に形成する。その後、めっき処理を行い、Au層をレジストマスクの開口内に形成する。このとき、Au層の厚さは例えば5μmである。めっき処理の後、レジストマスクを除去する。
【0045】
続いて、主面3a上の全面に保護膜(パシべーション膜)を形成し、ゲートパッド31上、ソースパッド34上、及びドレイン配線33のパッド部33b上に開口を形成して、ゲートパッド31、パッド部33b、及びソースパッド34を露出させる。以上により、主面3a側のプロセスが完了する。
【0046】
続いて、図8の(a)に示すように、主面3a上に保護用のレジスト51をスピンコートにより形成し、該レジスト51によって主面3a上の全ての構成物を覆う。次に、図8の(b)に示すように、レジスト51に支持基板52を貼り付ける。支持基板52は例えばガラス板である。続いて、基板3の裏面3bの研磨を行い、基板3を薄化する。このとき、例えば厚さ500μmの基板3を100μmまで薄くする。
【0047】
続いて、図8の(c)に示すように、基板3の裏面3b上及び側面上に、シード金属膜53(例えばTiW/Au)を例えばスパッタ法により形成する。そして、図9の(a)に示すように、ソース電極22と対向する位置にレジストパターン55を形成したのち、Niのめっき処理を行うことによりNiマスク54を形成する。その後、図9の(b)に示すように、レジストパターン55を除去し、露出したシード金属膜53をエッチングして除去する。これにより、ソース電極22と対向する裏面3bの領域が、Niマスク54の開口を通じて露出する。なお、シード金属膜53がTiW/Auからなる場合、フッ素系ガスによる反応性イオンエッチング(RIE)によりシード金属膜53を容易に除去できる。
【0048】
続いて、図9の(c)に示すように、Niマスク54の開口を介して、基板3及び窒化物半導体層4のエッチングを行うことにより、基板3及び窒化物半導体層4を貫通する孔11(第1の孔)と、基板3及び窒化物半導体層4を貫通する別の孔12(第2の孔、図3を参照)とを形成する。この工程では、これらの孔11,12を、主面3aの法線方向から見て、デバイス領域4a上のソース電極22の長手方向(方向D2)における一端側及び他端側に形成する。言い換えると、主面3aの法線方向から見て、これらの孔11,12を、一端部221及び他端部222(図4を参照)とそれぞれ重なるように形成する。これらの孔11,12は、基板3の裏面3bからソース電極22に達する。これにより、孔11,12を通じてソース電極22が裏面3b側に露出する。
【0049】
この工程では、間欠的にエッチングを行う、いわゆるパルスエッチングにより孔11,12を形成する。エッチング方法は例えばRIEである。具体的には、まずフッ素系ガスを用いたRIEにより基板3をエッチングしたのち、反応性ガスを変更し、塩素系ガスを用いたRIEにより窒化物半導体層4をエッチングする。そして、基板3をエッチングする際には、フッ素系ガスに由来するフッ素イオンを基板3に向けて間欠的に照射する。また、窒化物半導体層4をエッチングする際には、塩素系ガスに由来する塩素イオンを窒化物半導体層4に向けて間欠的に照射する。なお、窒化物半導体層4をエッチングする際、基板3から連続してフッ素系ガスによりエッチングを行い、そのスパッタリング効果によって窒化物半導体層4をエッチングしてもよい。その場合においても、フッ素系ガスに由来するフッ素イオンを窒化物半導体層4に向けて間欠的に照射するとよい。エッチングが進行してソース電極22が露出すると、ソース電極22においてエッチングが停止する。その後、Niマスク54を例えば希硝酸を用いて除去する。
【0050】
続いて、図10の(a)に示すように、基板3の裏面3b上、及び孔11,12の内面上(露出したソース電極22上を含む)に、シード金属膜56(例えばTiW/Au)を例えばスパッタ法により形成する。そして、図10の(b)に示すように、スクライブラインと重なる領域にレジストパターン57を形成する。その後、レジストパターン57から露出したシード金属膜56に対してめっき処理を行うことにより、裏面金属膜46を裏面3b上に形成し、裏面3bからソース電極22に達する金属ビア44Aを孔11内に形成し、裏面3bからソース電極22に達する金属ビア44B(図3を参照)を孔12内に形成する。このとき、金属ビア44A,44Bのソース電極22側の一端がソース電極22と電気的に接続される。その後、図10の(c)に示すように、レジストパターン57を除去し、露出したシード金属膜56をエッチングして除去する。
【0051】
最後に、保護用のレジスト51を除去して基板3の主面3a側の構成物と支持基板52とを分離する。取り出された基板3及び窒化物半導体層4を含む基板生産物を洗浄したのち、図11に示すように、基板3の裏面3b(本実施形態では裏面金属膜46)をダイサーテープ58に貼り付け、スクライブラインに沿って基板3のダイシングを行い、個々のチップを相互に分離する。以上の工程を経て、本実施形態のトランジスタ1Aが完成する。
【0052】
以上に説明した本実施形態のトランジスタ1A及びその製造方法によって得られる効果について説明する。このトランジスタ1A及びその製造方法では、ISVである金属ビア44A,44Bが、主面3aの法線方向から見て、デバイス領域4a上のソース電極22の方向D2における一端側及び他端側にそれぞれ設けられ、ソース電極22と電気的に接続されている。この場合の効果について、図12図13及び図14を参照しながら説明する。これらの図は、ソース電極22における電荷密度を色の濃淡によって模式的に示す。色が濃いほど電荷密度が大きく、色が淡いほど電荷密度が小さい。図12は、第1の比較例として、金属ビアが設けられない場合(すなわち、ソース電極22(ソースフィンガ)が主面3a上のソースパッドに主面3a上の配線を介して接続されている場合)を示す。図13は、第2の比較例として、金属ビア44がソース電極22の長手方向における中央部に1つのみ設けられた場合を示す。図14は、本実施形態のように、ソース電極22の長手方向における両端部に金属ビア44A,44Bが設けられた場合を示す。
【0053】
図12に示すように、金属ビアが設けられない場合には、ソースパッドに近い領域ほど電荷密度が小さくなり、ソースパッドから遠い領域ほど電荷密度が大きくなる。故に、片端に電荷密度が偏るので、ソース電極22の細長形状に起因するインダクタンスにより逆電圧が生じた際に大きな電流が不均一に生じ、ソース電位の安定性が低下する。また、図13に示すように、金属ビア44がソース電極22の中央部に1つのみ設けられた場合には、電荷密度はソース電極22の中央付近において均一化されるが、ソース電極22の両端に近づくほど電荷密度が小さくなり、逆電圧が生じた際に大きな電流が不均一に生じる現象が依然として存在する。これらに対し、図14に示すように、ソース電極22の両端部に金属ビア44A,44Bが設けられた場合には、ソース電極22の中央付近及び両端において電荷密度が均一化され、電荷密度のばらつきが低減される。すなわち、本実施形態によれば、ソース電極22における電荷密度の均一性が増すので、ソース電極22の細長形状に起因するインダクタンスの増大に対し、ソース電位の安定性の低下が抑制される。故に、電流量の増大及び電流の乱れといった現象が低減し、トランジスタの電気的特性の劣化を抑制することができる。
【0054】
図15のグラフG1は、本実施形態におけるトランジスタの動作特性として、ゲート電極21またはドレイン電極23にステップ状の電圧を印加した際における、トランジスタのソース電圧の時間変化を示すグラフである。なお、図15には、上述した第2の比較例(金属ビア44がソース電極22の中央部に1つのみ設けられる場合)における同様の時間変化を併せて示す(グラフG2)。同図に示すように、本実施形態によれば、第2の比較例と比べてソース電圧の安定性が増しており、トランジスタの高周波化に向けた特性改善に寄与できる。
【0055】
本実施形態のように、ソース電極22の平面形状は長方形であってもよい。この場合、特に長方形の四隅において電荷密度の均一性が低下し易い。本実施形態の構成は、このような場合において特に効果的である。
【0056】
本実施形態のように、方向D1と直交する方向における金属ビア44A,44Bの幅Waは、同方向におけるソース電極22の幅Wbの80%以上100%未満であってもよい。このように金属ビア44A,44Bの幅Waがソース電極22の幅Wbに対して大きな割合を占めることにより、ソース電極22における電荷密度の均一性を更に高めることができる。
【0057】
本実施形態のように、孔11,12を形成する工程では、フッ素系ガスを用いたRIEにより基板3をエッチングしたのち、塩素系ガスを用いたRIEにより窒化物半導体層4をエッチングしてもよい。この場合、基板3及び窒化物半導体層4のそれぞれを容易にエッチングすることができる。また、この場合、フッ素系ガスに由来するフッ素イオンを基板3に向けて間欠的に照射してもよい。同様に、塩素系ガスに由来する塩素イオンを窒化物半導体層4に向けて間欠的に照射してもよい。
【0058】
近年、トランジスタ1Aの小型化に伴い、金属ビアにも微細化が求められている。金属ビアの微細化の為には孔11,12の微細化が必要となるが、孔11,12の内径が小さくなるほどアスペクト比が大きくなる。孔11,12のアスペクト比が大きくなると、エッチングの際に分解・再生成した分子やイオンが孔11,12内から排出されにくくなる。従って、エッチング種が孔11,12内に入り込みにくくなり、エッチングレートが大きく低下する。また、窒化物半導体といった広いバンドギャップを有する半導体に対してエッチングを施す際には、化学的エッチングだけでなく、物理的エッチングの要素が必要となる。従って、エッチングの際に高いパワーが必要となり、入射イオンの影響によって孔11,12の底部周辺が帯電してしまう。孔11,12の底部周辺が帯電すると、物理的エッチングの作用が弱まり、エッチングレートが大きく低下する。このような傾向は、孔11,12のアスペクト比が大きいほど顕著である。
【0059】
本実施形態のように、フッ素系ガスに由来するフッ素イオン、及び塩素系ガスに由来する塩素イオンをそれぞれ基板3及び窒化物半導体層4に向けて間欠的に照射する、いわゆるパルスエッチング法を用いることによって、エッチングの際に分解・再生成した分子やイオンが孔11,12内から排出され易くなり、また、孔11,12の底部周辺の帯電を緩和できる。従って、エッチングレートの低下を抑制して、アスペクト比が大きい孔11,12を容易に形成することができる。
【0060】
(第1変型例)
金属ビアは、基板3及び窒化物半導体層4を貫通して裏面金属膜46とソース電極22とを電気的に接続しさえすれば、どのような平面形状を有してもよい。図16は、上記実施形態の第1変型例として、トランジスタ1Bの構成を示す平面図である。本変形例と上記実施形態との相違点は、金属ビアの形状である。すなわち、本変形例のトランジスタ1Bは、上記実施形態の金属ビア44A,44Bに代えて、金属ビア47A,47Bを備える。金属ビア47A,47Bは、上記実施形態の金属ビア44A,44Bとは異なり、円形(又は楕円形)といった平面形状を有する。なお、金属ビア47A,47Bの平面形状を除く他の構成は、上記実施形態の金属ビア44A,44Bの構成と一致する。この場合においても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、上記実施形態と比較して、孔11,12の形成が容易となり、ひいては金属ビア47A,47Bの形成が容易となる。
【0061】
ここで、ソース電極22に2つの金属ビアが設けられる場合、過渡状態では、ソース電極22のインダクタンスに起因して、これらの金属ビアの間に微小な電界が生じる。図17は、上記実施形態のように金属ビア44A,44Bの平坦な側面44aa,44ba同士が互いに対向する場合に、金属ビア44A,44Bの間に生じる電界Bを示す図である。また、図18は、本変形例のように金属ビア47A,47Bの平面形状が円形又は楕円形である場合に、金属ビア47A,47Bの間に生じる電界Bを示す図である。図18に示すように、本変形例の場合、電界Bがソース電極22の外側に膨らむので、電界Bの一部が、活性領域から不活性領域に出て再び活性領域に戻る。その場合、活性領域と不活性領域とでは誘電率や透磁率が異なるので、活性領域と不活性領域との境界面において電気力線の曲率が変化し、電界Bが該境界面による影響を受け易い。故に、ソース電極22がノイズを拾い易くなってしまう。これに対し、上記実施形態のように、金属ビア44A,44Bは平坦な側面44aa,44ba同士が互いに対向する場合、電界Bがソース電極22の外側に膨らみにくくなるので、活性領域と非活性領域との境界面による影響を受けにくくなり、ソース電位の安定性が更に向上する。
【0062】
(第2変型例)
図19は、上記実施形態の第2変型例として、トランジスタ1Cの構成を示す平面図である。本変形例のトランジスタ1Cは、上記実施形態のトランジスタ1Aの構成に加えて、複数の金属ビア44Cを更に備える。金属ビア44Cは、本変形例における第3のビアの例である。金属ビア44Cは、基板3及び窒化物半導体層4を貫通する孔内に設けられた金属膜である。金属ビア44Cは、基板3及び窒化物半導体層4を貫通し、基板3の裏面3b上から、対応するソース電極22(又はソース配線32)に達している。各金属ビア44Cは、金属ビア44Aの金属ビア44Bとの間に位置し、例えば方向D2におけるソース電極22の中央部に位置する。金属ビア44Cのソース電極22側の一端は、ソース配線32を介して又は直接に、ソース電極22と電気的に接続されている。金属ビア44Cは、裏面3b上に設けられる裏面金属膜46とソース電極22とを互いに電気的に接続するために設けられる。
【0063】
本変形例のように、トランジスタ1Cは、金属ビア44Aと金属ビア44Bとの間に位置する金属ビア44Cを更に備えてもよい。この場合、ソース電極22における電荷密度の均一性を更に高めることができる。なお、前述した第1変形例においても、金属ビア47Aと金属ビア47Bとの間に位置する金属ビアを更に設けてもよい。
【0064】
本開示による半導体デバイス及び半導体デバイスの製造方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では孔11,12をパルスエッチングにより形成しているが、孔11,12のアスペクト比が小さい場合等には、フッ素系ガスに由来するフッ素イオン、及び塩素系ガスに由来する塩素イオンをそれぞれSiC基板及び窒化物半導体層に向けて連続的に照射してもよい。また、上記実施形態ではソース電極が方向D2を長手方向とする場合を例示したが、ソース電極は方向D1を長手方向としてもよい。その場合、金属ビアは、方向D2におけるソース電極の一端側及び他端側に設けられる。そのような場合であっても、上記実施形態の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0065】
1A,1B,1C…トランジスタ
3…基板
3a…主面
3b…裏面
4…窒化物半導体層
4a…デバイス領域
5,6,7,8…絶縁膜
11…第1の孔
12…第2の孔
21…ゲート電極
22…ソース電極
23…ドレイン電極
31…ゲートパッド
32…ソース配線
22a,22b…端辺
22c,22d…側辺
33…ドレイン配線
33a…フィンガ部
33b…パッド部
34…ソースパッド
35…フィールドプレート
44…金属ビア
44A…金属ビア(第1のビア)
44aa,44ab,44ac,44ad…側面
44B…金属ビア(第2のビア)
44ba,44bb,44bc,44bd…側面
44C…金属ビア(第3のビア)
46…裏面金属膜
48…金属ビア
47A…金属ビア(第1のビア)
47B…金属ビア(第1のビア)
51…レジスト
52…支持基板
53,56…シード金属膜
54…Niマスク
55,57…レジストパターン
58…ダイサーテープ
221…一端部
222…他端部
B…電界
D1…第1方向
D2…第2方向
G1,G2…グラフ
Wa,Wb…幅
図1
図2
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図19