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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062218
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20230426BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
H01L27/04 A
H01L29/80 H
H01L29/80 G
H01L27/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020056592
(22)【出願日】2020-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】秋枝 真実
(72)【発明者】
【氏名】岡田 徹
【テーマコード(参考)】
5F038
5F102
【Fターム(参考)】
5F038AZ06
5F038CA09
5F038CA20
5F038CD02
5F038CD05
5F038CD13
5F038EZ20
5F102FA10
5F102GB01
5F102GC01
5F102GS09
5F102GV01
(57)【要約】
【課題】複数のソースフィンガ間における電位差を低減しつつ、ゲートフィンガに対する視認性を確保可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、半導体基板と、半導体基板上に並んで設けられた複数のソースフィンガ、半導体基板上に複数のソースフィンガと交互に並んで設けられた複数のドレインフィンガ、並びに、半導体基板上における隣り合うソースフィンガ及びドレインフィンガの間にそれぞれ設けられた複数のゲートフィンガを有するトランジスタと、複数のゲートフィンガ同士を接続するゲート配線と、複数のドレインフィンガ同士を接続するドレイン配線と、複数のソースフィンガの一端同士を接続するソース配線と、複数のドレインフィンガ、及び複数のドレインフィンガのそれぞれから延びる複数の引出配線のうち少なくとも一方を跨いで配置され、複数のソースフィンガの他端同士を接続するブリッジ配線と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に第1方向に並んで設けられた複数のソースフィンガ、前記半導体基板上に前記複数のソースフィンガと前記第1方向に交互に並んで設けられた複数のドレインフィンガ、並びに、前記半導体基板上における前記第1方向に隣り合う前記ソースフィンガ及び前記ドレインフィンガの間にそれぞれ設けられた複数のゲートフィンガを有するトランジスタと、
前記複数のゲートフィンガ同士を接続するゲート配線と、
前記複数のドレインフィンガ同士を接続するドレイン配線と、
前記第1方向に交差する第2方向における前記複数のソースフィンガの一端同士を接続するソース配線と、
前記複数のドレインフィンガ、及び前記複数のドレインフィンガのそれぞれから前記第2方向に延びる複数の引出配線のうち少なくとも一方を跨いで配置され、前記第2方向における前記複数のソースフィンガの他端同士を接続するブリッジ配線と、
を備える、
半導体装置。
【請求項2】
前記ドレイン配線は、前記第1方向に隣り合う2つの前記ドレインフィンガを接続する複数の第1バスラインと、前記第1バスラインとは異なる幅を有し、前記複数の第1バスライン同士を接続する第2バスラインと、を有する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1バスラインの幅は、前記第2バスラインの幅よりも小さい、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1バスラインの幅は、前記ブリッジ配線の幅以上である、
請求項2または請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板は、活性領域と、前記活性領域を囲む不活性領域と、を有し、
前記ブリッジ配線は、不活性領域上に配置されている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体基板は、活性領域と、前記活性領域を囲む不活性領域と、を有し、
前記ゲート配線は、前記第2方向における前記複数のゲートフィンガの一端同士を接続しており、
前記第2方向における前記複数のソースフィンガの他端、及び前記第2方向における前記複数のゲートフィンガの他端は、前記不活性領域上に位置しており、
前記第2方向における前記複数のソースフィンガの他端は、前記第2方向における前記複数のゲートフィンガの他端よりも前記活性領域から遠い位置にて、前記ブリッジ配線と接続されている、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ブリッジ配線は、平面視において前記複数のゲートフィンガと重ならない、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ブリッジ配線は、平面視において前記複数のゲートフィンガと重なる、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波帯、準ミリ波帯、またはミリ波帯といった高周波帯域の信号の増幅に適した半導体装置として、例えば、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)等の電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)が知られている。
【0003】
電界効果トランジスタの一例として、特許文献1及び特許文献2には、マルチフィンガ型構造の電界効果トランジスタが記載されている。特許文献1に記載された電界効果トランジスタは、互いに並列に配置された複数のゲートフィンガと、各ゲートフィンガを挟んで互いに向かい合うように配置されたソースフィンガ及びドレインフィンガと、を備える。
【0004】
特許文献2に記載された電界効果トランジスタは、複数のゲート電極、複数のソース電極、及び複数のドレイン電極と、複数のソース電極を接続するグランド電極と、ソース電極の表面側に設けられ、複数のソース電極の中央部同士を接続するブリッジ配線と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-172104号公報
【特許文献2】特開2008-72027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなマルチフィンガ型構造の電界効果トランジスタでは、複数のソース電極間におけるソースインダクタンスのばらつきにより、ソースフィンガごとにソース電位が異なる場合がある。このような場合、ゲート-ソース間の電位差にばらつきが生じ、トランジスタの均一動作が乱れ、電界効果トランジスタにおいて不要波が発生する、いわゆる発振現象が発生することがある。
【0007】
発振現象を回避するために、特許文献2に記載された電界効果トランジスタのように、ブリッジ配線によって互いに接続することにより複数のソース電極同士を同電位に維持することが考えられる。しかしながら、特許文献2に記載された電界効果トランジスタにおいては、ブリッジ配線によってゲート電極(ゲートフィンガ)が覆われるので、ゲートフィンガに対する視認性が低下する。この結果、製造過程での不良発見を見過ごすおそれが生じる。また、製造過程において視覚的検査が必要とされる製品において、ゲートフィンガに対する視覚的検査の実施が困難になるという問題も生じる。
【0008】
本開示は、このような問題に鑑みてなされたものであり、複数のソースフィンガ間における電位差を低減しつつ、ゲートフィンガに対する視認性を確保可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、一実施形態に係る半導体装置は、半導体基板と、半導体基板上に第1方向に並んで設けられた複数のソースフィンガ、半導体基板上に複数のソースフィンガと第1方向に交互に並んで設けられた複数のドレインフィンガ、並びに、半導体基板上における第1方向に隣り合うソースフィンガ及びドレインフィンガの間にそれぞれ設けられた複数のゲートフィンガを有するトランジスタと、複数のゲートフィンガ同士を接続するゲート配線と、複数のドレインフィンガ同士を接続するドレイン配線と、第1方向に交差する第2方向における複数のソースフィンガの一端同士を接続するソース配線と、複数のドレインフィンガ、及び複数のドレインフィンガのそれぞれから2方向に延びる複数の引出配線のうち少なくとも一方を跨いで配置され、第2方向における複数のソースフィンガの他端同士を接続するブリッジ配線と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施形態に係る半導体装置によれば、複数のソースフィンガ間における電位差を低減しつつ、ゲートフィンガに対する視認性を確保可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る半導体装置としての増幅素子を備える高周波増幅器の内部構成を示す平面図である。
図2図2は、図1に示された増幅素子11の一部を拡大して示す平面図である。
図3図3は、図2に示されたトランジスタ13の一部を拡大して示す平面図である。
図4図4は、図3におけるIV―IV線に沿った断面図である。
図5図5は、比較例に係る増幅素子11Xを示す平面図である。
図6図6は、別の比較例に係る増幅素子11Yを示す平面図である。
図7図7は、図6におけるVII―VII線に沿った断面図である。
図8図8は、変形例に係る増幅素子11Aを示す平面図である。
図9図9は、別の変形例に係る増幅素子11Bを示す平面図である。
図10図10は、更に別の変形例に係る増幅素子11Cの一部を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。一実施形態に係る半導体装置は、半導体基板と、半導体基板上に第1方向に並んで設けられた複数のソースフィンガ、半導体基板上に複数のソースフィンガと第1方向に交互に並んで設けられた複数のドレインフィンガ、並びに、半導体基板上における第1方向に隣り合うソースフィンガ及びドレインフィンガの間にそれぞれ設けられた複数のゲートフィンガを有するトランジスタと、複数のゲートフィンガ同士を接続するゲート配線と、複数のドレインフィンガ同士を接続するドレイン配線と、第1方向に交差する第2方向における複数のソースフィンガの一端同士を接続するソース配線と、複数のドレインフィンガ、及び複数のドレインフィンガのそれぞれから2方向に延びる複数の引出配線のうち少なくとも一方を跨いで配置され、第2方向における複数のソースフィンガの他端同士を接続するブリッジ配線と、を備える。
【0013】
この半導体装置では、複数のソースフィンガがブリッジ配線によって互いに接続されている。したがって、複数のソースフィンガ間における電位差を低減できる。また、第2方向における複数のソースフィンガの一端同士がソース配線によって接続されており、第2方向における複数のソースフィンガの他端同士がブリッジ配線によって接続されている。このため、第2方向におけるトランジスタの中央部では、ソースフィンガ及びドレインフィンガ間に設けられたゲートフィンガがブリッジ配線に覆われていない構成を実現し得る。したがって、ゲートフィンガに対する視認性を確保できる。
【0014】
一実施形態に係る半導体装置において、ドレイン配線は、第1方向に隣り合う2つのドレインフィンガを接続する複数の第1バスラインと、第1バスラインとは異なる幅を有し、複数の第1バスライン同士を接続する第2バスラインと、を有していてもよい。複数のソースフィンガにおける他端同士をブリッジ配線が接続する構成においては、出力合成回路の長さ(第2方向における寸法)が大きくなりやすい。出力合成回路の長さが大きくなると当該出力合成回路におけるインピーダンスも大きく変化するので、対応する整合回路も大きく変更する必要が生じる。これに対し、上記の構成においては、第1バスラインまたは第2バスラインの一方の幅を他方の幅よりも小さくすることによって出力合成回路の長さ(第2方向における寸法)を調整できる。したがって、上記の構成によれば、出力合成回路におけるインピーダンスが変化する程度を軽減し得る。
【0015】
一実施形態に係る半導体装置において、第1バスラインの幅は、第2バスラインの幅よりも小さくてもよい。この場合、第2バスラインの幅を第1バスラインの幅よりも小さくすることによって出力合成回路の長さを調整する場合と比較して、インピーダンスが変化する程度をより軽減できるとともに、出力合成回路において電流密度が大きくなる程度を軽減できる。
【0016】
一実施形態に係る半導体装置において、第1バスラインの幅は、ブリッジ配線の幅以上であってもよい。この場合、第1バスラインの幅がブリッジ配線の幅よりも小さい場合と比較して、第1バスラインにおける電流密度を小さくできる。また、第1バスラインがソース電流を流すのに対し、ブリッジ配線は電位を規定するに過ぎないので、ブリッジ配線の幅を比較的小さくしやすい。このブリッジ配線の幅を第1バスラインの幅と同じかそれよりも小さくすることにより、出力合成回路におけるインピーダンスが変化する程度を軽減し得る。
【0017】
一実施形態に係る半導体装置において、半導体基板は、活性領域と、活性領域を囲む不活性領域と、を有し、ブリッジ配線は、不活性領域上に配置されていてもよい。この場合、活性領域がブリッジ配線に覆われないので、活性領域のゲートフィンガに対する視認性を十分に確保できる。
【0018】
一実施形態に係る半導体装置において、半導体基板は、活性領域と、活性領域を囲む不活性領域と、を有し、ゲート配線は、第2方向における複数のゲートフィンガの一端同士を接続しており、第2方向における複数のゲートフィンガの他端、及び第2方向における複数のゲートフィンガの他端は、不活性領域上に位置しており、第2方向における複数のソースフィンガの他端は、第2方向における複数のゲートフィンガの他端よりも活性領域から遠い位置にて、ブリッジ配線と接続されていてもよい。この場合、第2方向におけるゲートフィンガの他端が不活性領域上に位置している構成において、ゲートフィンガに対する視認性を十分に確保できる。
【0019】
一実施形態に係る半導体装置において、ブリッジ配線は、平面視において複数のゲートフィンガと重ならなくてもよい。この場合、ゲートフィンガに対する視認性をより十分に確保できる。
【0020】
一実施形態に係る半導体装置において、ブリッジ配線は、平面視において複数のゲートフィンガと重なっていてもよい。この場合、例えば、不活性領域上において複数のゲートフィンガがブリッジ配線下までそれぞれ延在している等、ブリッジ配線が平面視において複数のゲートフィンガと重なる構成においても、ゲートフィンガに対する視認性を確保できる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の一実施形態に係る半導体装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明においては、同一要素または同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。説明に際しては、図面に示されたXYZ直交座標系を参照する場合がある。
【0022】
一実施形態に係る半導体装置は、例えば高周波増幅器に用いられる増幅素子である。図1は、本開示の一実施形態に係る増幅素子11を備える高周波増幅器1の内部構成を示す平面図である。図1に示されるように、高周波増幅器1は、一つの入力端子2、一つの出力端子3、増幅素子部10、分岐回路基板20、合成回路基板30、マッチング回路40、及びマッチング回路50を備える。この高周波増幅器1は、一例としてマッチング回路40,50を2つずつ備える。また、増幅素子部10は2つの増幅素子11を含む。1つの増幅素子11あたりの出力は例えば30Wであり、増幅素子部10全体の出力は例えば60Wである。高周波増幅器1は、増幅素子部10、分岐回路基板20、合成回路基板30、及びマッチング回路40,50を収容するパッケージ4を備える。
【0023】
パッケージ4は金属製であり、基準電位に接続されている。パッケージ4の平面形状は略長方形状である。パッケージ4は、第1方向において向かい合う端壁4c,4dと、第2方向において向かい合う側壁4a,4bと、を有する。第1方向及び第2方向は互いに交差しており、一例では互いに直交する。本実施形態においては、第1方向がX軸方向であり、第2方向がY軸方向である。
【0024】
パッケージ4は、長方形状の平坦な底板4eを有する。底板4eは、Y軸方向及びX軸方向によって規定される平面に沿って延びている。側壁4a,4bは底板4eの一対の辺(Y軸方向に沿って延びる辺)に沿って立設しており、端壁4c,4dは底板4eの別の一対の辺(X軸方向に沿って延びる辺)に沿って立設している。なお、パッケージ4は、図示しない蓋部を更に有する。蓋部は、側壁4a,4b及び端壁4c,4dによって形成される上部開口を封止する。
【0025】
入力端子2は、金属製の配線パターンであって、高周波信号を高周波増幅器1の外部から入力する。高周波信号は、マルチキャリア伝送方式に基づく信号であって、キャリア信号の周波数が互いに異なる複数の信号を重畳してなる。キャリア信号の周波数帯域は、例えば500MHz以下である。入力端子2は、X軸方向における端壁4cの中央部に設けられており、パッケージ4の外部から内部へ延在している。
【0026】
増幅素子部10は、パッケージ4の底板4e上であって、Y軸方向におけるパッケージ4の略中央部に配置されている。増幅素子部10の各増幅素子11は、半導体基板12と、半導体基板12上に設けられたトランジスタ13と、複数の配線とを備える。トランジスタ13は例えば電界効果トランジスタ(FET)であり、一実施例では高電子移動度トランジスタ(HEMT)である。半導体基板12の平面形状は、X軸方向を長手方向とする長方形状である。半導体基板12は、Y軸方向及びX軸方向によって規定される平面に沿って延びている。半導体基板12は、X軸方向に沿って延びる一対の12a,12b(図2参照)を有する。端辺12aは入力端子2と向かい合っており、端辺12bは出力端子3と向かい合っている。半導体基板12上には、例えば複数のトランジスタ13が設けられている。
【0027】
図2は、図1に示された増幅素子11の一部を拡大して示す平面図である。図3は、図2に示されたトランジスタ13の一部を拡大して示す平面図である。図2及び図3に示されるように、半導体基板12は、活性領域R1と、活性領域R1の周囲に設けられた不活性領域R2,R3とを有する。なお、各図においては、図示の便宜上、活性領域R1と不活性領域R2,R3との間には僅かな隙間が設けられているが、実際には不活性領域R2,R3は活性領域R1に接している。
【0028】
活性領域R1はトランジスタとして動作する領域である。不活性領域R2,R3は電気的に不活性化された領域である。不活性領域R2,R3は、互いに隣り合うトランジスタ13同士の電気的な分離、及びトランジスタ13の動作領域の限定のために設けられる。不活性領域R2は、活性領域R1に対してY軸方向における一方側(図1における入力端子2側)に位置する。不活性領域R3は、活性領域R1に対してY軸方向における他方側(図1における出力端子3側)に位置する。すなわち、不活性領域R2と、活性領域R1と、不活性領域R3とは、Y軸方向に沿ってこの順に並んでいる。
【0029】
トランジスタ13は、複数のソースフィンガ61、複数のドレインフィンガ62、及び複数のゲートフィンガ63を有する。複数のソースフィンガ61、複数のドレインフィンガ62、及び複数のゲートフィンガ63は、活性領域R1上に設けられ、Y軸方向にそれぞれ延在する導電体である。本実施形態においては、一例として、1つのトランジスタ13が、5つのソースフィンガ61と、4つのドレインフィンガ62と、8つのゲートフィンガ63を有している。
【0030】
複数のソースフィンガ61は、半導体基板12の活性領域R1上に、X軸方向に並んで設けられている。各ソースフィンガ61は、半導体基板12と向かい合う裏面においてソース電極61aを構成している。各ソース電極61aは、半導体基板12上において活性領域R1の内部に位置している。Y軸方向における各ソースフィンガ61の一端61bは端辺12a側に位置しており、Y軸方向における各ソースフィンガ61の他端61cは端辺12b側に位置している。各ソースフィンガ61は、Y軸方向における活性領域R1の一端から他端まで延びている。
【0031】
複数のドレインフィンガ62は、半導体基板12の活性領域R1上に、複数のソースフィンガ61とX軸方向に交互に並んで設けられている。各ドレインフィンガ62は、半導体基板12と向かい合う裏面においてドレイン電極62aを構成している。各ドレイン電極62aは、半導体基板12上において活性領域R1の内部に位置している。各ドレインフィンガ62のY軸方向における一端62bは端辺12a側に位置しており、各ドレインフィンガ62のY軸方向における他端62cは端辺12b側に位置している。各ドレインフィンガ62は、Y軸方向における活性領域R1の一端から他端まで延びている。
【0032】
複数のゲートフィンガ63は、半導体基板12の活性領域R1上においてX軸方向に隣り合うソースフィンガ61及びドレインフィンガ62の間にそれぞれ設けられている。ゲートフィンガ63と当該ゲートフィンガ63に隣り合うソースフィンガ61とはX軸方向に所定の間隔をもって配置されている。同様に、ゲートフィンガ63と当該ゲートフィンガ63に隣り合うドレインフィンガ62とはX軸方向に所定の間隔をもって配置されている。各ゲートフィンガ63は、半導体基板12と向かい合う裏面においてゲート電極63a(図3参照)を構成している。各ゲートフィンガ63のY軸方向における一端63bは端辺12a側に位置しており、各ゲートフィンガ63のY軸方向における他端63cは端辺12b側に位置している。
【0033】
各ゲートフィンガ63は、半導体基板12上においてY軸方向における活性領域R1の一端から他端にわたって延び、不活性領域R2,R3まで延在している。換言すると、複数のゲートフィンガ63は、それぞれ、活性領域R1上に位置する部分と、不活性領域R2上に位置する部分と、不活性領域R3上に位置する部分と、を有する。つまり、複数のゲート電極63aも、それぞれ、活性領域R1上に位置する部分と、不活性領域R2上に位置する部分と、不活性領域R3上に位置する部分と、を有する。本実施形態においては、各ゲートフィンガ63における一端63bが不活性領域R2上に位置し、他端63cが不活性領域R3上に位置している。
【0034】
複数の配線は、ソース配線64と、ドレイン配線65と、ゲート配線66とを含む。ソース配線64は、導電性の配線であり、複数のソースフィンガ61のY軸方向における一端61b同士を電気的に接続する。また、ソース配線64は、半導体基板12上に設けられた複数のソースパッド14と電気的に接続される。ソース配線64は、ソースバスライン64aと複数の接続配線64bとを有する。ソースバスライン64aは、半導体基板12における不活性領域R2上に設けられ、X軸方向に延在している。複数の接続配線64bは、それぞれ、半導体基板12におけるソースバスライン64aとソースフィンガ61の一端61bとの間に設けられ、Y軸方向に延在している。各接続配線64bは、ソースバスライン64aとソースフィンガ61とを電気的に接続する。
【0035】
ドレイン配線65は、導電性の配線であり、複数のドレインフィンガ62における他端62c同士を電気的に接続する。また、ドレイン配線65は、半導体基板12上に設けられた信号出力端としてのドレインパッド16と電気的に接続される。ドレイン配線65は、複数の中間バスライン65a(第1バスライン)とドレインバスライン65b(第2バスライン)とを有する。中間バスライン65aの数は、例えばドレインフィンガ62の半数とされる。
【0036】
各中間バスライン65aは、X軸方向に隣り合う2つのドレインフィンガ62を電気的に接続する。各中間バスライン65aは、バスライン部651a(第1バスライン)と2つの引出部652a(引出配線)と引出部653aとを有する。バスライン部651aは、不活性領域R3上に設けられ、X軸方向に延在している。各引出部652aは、半導体基板12におけるバスライン部651aとドレインフィンガ62の他端62cとの間に設けられ、他端62cからY軸方向に延在している。各引出部652aは、バスライン部651aとドレインフィンガ62とを電気的に接続する。各引出部653aは、半導体基板12におけるバスライン部651aとドレインバスライン65bとの間に設けられ、Y軸方向に延在している。各引出部653aは、バスライン部651aとドレインバスライン65bとを電気的に接続する。高周波増幅器1の動作時において、各引出部653aには2ドレインフィンガ分(すなわち、4ゲートフィンガ分)の電流が流れる。
【0037】
ドレインバスライン65bは、複数の中間バスライン65a同士を電気的に接続する。また、ドレインバスライン65bは、半導体基板12上に設けられた複数のドレインパッド16と電気的に接続される。ドレインバスライン65bは、バスライン部651b(第2バスライン)と引出部652bとを有する。バスライン部651bは、不活性領域R3上に設けられ、X軸方向に延在している。バスライン部651bは、中間バスライン65aにおけるバスライン部651aの幅D1(ここでは、Y軸方向における寸法)とは異なる幅D2(ここでは、Y軸方向における寸法)を有する。具体的には、幅D1が幅D2よりも小さい。本実施形態において、幅D1は15μmであり、幅D2は35μmである。各引出部652bは、半導体基板12におけるバスライン部651bとドレインパッド16との間に設けられ、Y軸方向に延在している。各引出部652bは、バスライン部651bとドレインパッド16とを電気的に接続する。高周波増幅器1の動作時において、引出部652bには全フィンガ分(本実施形態では、4ドレインフィンガ分であって8ゲートフィンガ分)の電流が流れる。
【0038】
ゲート配線66は、導電性の配線であり、複数のゲートフィンガ63における一端63b同士を電気的に接続する。また、ゲート配線66は、半導体基板12上に設けられた信号入力端としてのゲートパッド(不図示)と電気的に接続される。ゲート配線66は、半導体基板12上における不活性領域R2上に設けられ、X軸方向に延在するゲートバスラインによって構成されている。ゲート配線66は、一部のソースフィンガ61(本実施形態では、3つのソースフィンガ61)とソースバスライン64aとによってY軸方向に挟まれており、一部の接続配線64b(本実施形態では、3つの接続配線64b)下を潜ってX軸方向に延在している。言い換えると、ソース配線64における一部の接続配線64bは、ゲート配線66上に重なる部分を有する。
【0039】
ソースパッド14及びゲートパッドは、半導体基板12の不活性領域R2上において端辺12aに沿って交互に並んでいる。ドレインパッド16は、半導体基板12の不活性領域R3上において端辺12bに沿って並んでいる。各ソースパッド14は、増幅素子11を厚さ方向(ここでは、Z軸方向)に貫通するビアホール15を介してパッケージ4(図1参照)の底板4e(図1参照)と電気的に接続され、基準電位とされている。各増幅素子11は、各ゲートパッドに入力された高周波信号を増幅し、増幅後の高周波信号を各ドレインパッド16から出力する。
【0040】
増幅素子11においては、活性領域R1と端辺12aとの間にトランジスタ13への入力回路が構成されており、活性領域R1と端辺12bとの間にトランジスタ13からの出力合成回路が構成されている。図2に示されるように、出力合成回路の長さD3(ここでは、Y軸方向における寸法)は、活性領域R1の境界のうちY軸方向において最も端辺12bに近い位置と、ドレイン配線65におけるドレインバスライン65bのバスライン部651bのうちY軸方向において最も活性領域R1から遠い位置とによって規定される。本実施形態において、長さD3は85μmである。
【0041】
続けて、図4を更に参照する。図4は、図3におけるIV―IV線に沿った断面図である。図2図3及び図4に示されるように、増幅素子11は、ソースエアブリッジ67を更に有している。ソースエアブリッジ67は、増幅素子11における上記の出力合成回路に含まれる導電性の配線であり、複数のソースフィンガ61同士を電気的に接続する。ソースエアブリッジ67は、エアブリッジ配線671(ブリッジ配線)と複数の接続配線672とを有する。
【0042】
各接続配線672は、複数のソースフィンガ61のY軸方向における他端61cのそれぞれから不活性領域R3上をY軸方向に沿って延びている。エアブリッジ配線671は、不活性領域R3上に配置されており、X軸方向に延在している。エアブリッジ配線671は、複数の引出部652aを跨いで配置されており、各接続配線672に接合されたエアブリッジ構造を有している。エアブリッジ配線671は、各接続配線672を介して複数のソースフィンガ61のY軸方向における他端61c同士を接続している。図3に示されるように、各接続配線672は、Y軸方向において各ゲートフィンガ63の他端63cよりも活性領域R1から遠い位置まで延在している。そして、各接続配線672は、不活性領域R3上における各ゲートフィンガ63の他端63cよりも活性領域R1から遠い位置にて、エアブリッジ配線671と接続されている。換言すると、各ソースフィンガ61の他端61cは、不活性領域R3上における各ゲートフィンガ63の他端63cよりも活性領域R1から遠い位置にて、エアブリッジ配線671と接続されている。つまり、エアブリッジ配線671は、平面視において複数のゲートフィンガ63と重ならない位置に配置されている。エアブリッジ配線671の幅D4(ここでは、Y軸方向における寸法)は、中間バスライン65aにおけるバスライン部651aの幅D1以下である。本実施形態において、幅D4は幅D1と同じであり、15μmである。
【0043】
エアブリッジ配線671は、複数の接続部67aと、複数の中継部67bとを有する(図4参照)。接続部67aの数はソースフィンガ61と同数とされる。複数の接続部67aは、複数の接続配線672にそれぞれ接合される部分である。複数の中継部67bは、X軸方向に隣り合う2つの接続部67aの間にそれぞれ位置し、当該2つの接続部67a同士をそれぞれ連結する部分である。エアブリッジ配線671は、各中継部67bにおいて引出部652aを跨いでいる。複数の中継部67bのそれぞれは、接続部67aよりも半導体基板12から遠ざかる向きに突出しており、引出部652aと離間している。
【0044】
再び図1を参照する。分岐回路基板20は、パッケージ4の底板4e上に配置されている。分岐回路基板20は、Y軸方向に沿って入力端子2及び増幅素子部10と並んで配置され、入力端子2と増幅素子部10との間に位置する。分岐回路基板20は、セラミック製の基板21と、基板21の主面上に設けられた分岐回路22とを有する。基板21の平面形状は例えば長方形であり、一方の長辺21aは入力端子2と向かい合っており、他方の長辺21bはマッチング回路40を介して増幅素子部10と向かい合っている。基板21の裏面はパッケージ4の底板4eと向かい合っている。基板21の一方の短辺21cはパッケージ4の側壁4aの近傍に位置しており、基板21の他方の短辺21dはパッケージ4の側壁4bの近傍に位置している。すなわち、基板21は、X軸方向においてパッケージ4の一端近傍から他端近傍にわたって延在している。
【0045】
分岐回路22は、基板21の主面上に設けられた配線パターン23を含む。配線パターン23は、ボンディングワイヤ9aを介して入力端子2と電気的に接続されている。高周波信号は、X軸方向における基板21の中央部から配線パターン23に入力される。配線パターン23は、Y軸方向に沿った基板21の中心線に関して線対称な形状を有する。配線パターン23は、ボンディングワイヤ9aとの接続点を起点として二分岐を繰り返し、最終的に8つの金属パッド23aに至る。8つの金属パッド23aは、長辺21bに沿って並んで配列されている。互いに隣り合う金属パッド23a同士は、膜抵抗を介して互いに接続されており、ウィルキンソン型カプラを構成する。これにより、増幅素子部10の複数のゲートパッド間のアイソレーションを確保しつつ、入力端子2から見た、増幅素子部10の入力インピーダンスの整合を図っている。なお、図には、代表して1つの膜抵抗23bのみ図示している。8つの金属パッド23aは、ボンディングワイヤ9bを介して、マッチング回路40と電気的に接続されている。
【0046】
マッチング回路40は、パッケージ4の底板4e上に配置され、Y軸方向において分岐回路基板20と増幅素子部10との間に配置されている。マッチング回路40は、例えばダイキャパシタであり、誘電体基板の主面上に複数の金属パッド(不図示)を有する。金属パッドの数は、例えば金属パッド23aと同数とされる。複数の金属パッドは、X軸方向に沿って一列に配列されている。各金属パッドは、ボンディングワイヤ9bを介して、対応する金属パッド23aと電気的に接続されるとともに、ボンディングワイヤ9cを介して、増幅素子部10の対応するゲートパッドと電気的に接続されている。
【0047】
マッチング回路40においては、ボンディングワイヤ9b及び9cによるインダクタンス成分と、これらのインダクタンス成分の間のノードと基準電位(底板4e)との間に接続された、金属パッドのキャパシタンスとによって、T型フィルタ回路が構成される。マッチング回路40は、このT型フィルタ回路によってインピーダンス変換を行う。通常、増幅素子部10においてゲートパッドからトランジスタ内部を見込んだインピーダンスは、伝送線の特性インピーダンス(例えば50Ω)と異なる。マッチング回路40は、このインピーダンスを、T型フィルタ回路により入力端子2からパッケージ4内部を見込んだ50Ωに変換する。
【0048】
マッチング回路50は、パッケージ4の底板4e上に配置され、Y軸方向において増幅素子部10と合成回路基板30との間に配置されている。マッチング回路40は、マッチング回路40と同様に、例えば平行平板型キャパシタ(ダイキャパシタ)であり、誘電体基板の主面上に複数の金属パッド(不図示)を有する。金属パッドの数は、例えば金属パッド23aと同数とされる。複数の金属パッドは、X軸方向に沿って一列に配列されている。各金属パッドは、ボンディングワイヤ9dを介して、増幅素子部10の対応するドレインパッド16と電気的に接続されるとともに、ボンディングワイヤ9eを介して、合成回路基板30の対応する金属パッド33a(後述)と電気的に接続されている。
【0049】
マッチング回路50においても、ボンディングワイヤ9d及び9eによるインダクタンス成分と、これらのインダクタンス成分の間のノードと基準電位(底板4e)との間に接続された、金属パッドのキャパシタンスとによって、T型フィルタ回路が構成される。マッチング回路50は、このT型フィルタ回路によってインピーダンス変換を行う。通常、増幅素子部10においてドレインパッド16からトランジスタ内部を見込んだインピーダンスは、伝送線の特性インピーダンス(例えば50Ω)と異なり、大概は50Ωより小さい値である。マッチング回路50は、このインピーダンスを、T型フィルタ回路により出力端子3からパッケージ4内部を見込んだ50Ωに変換する。
【0050】
合成回路基板30は、パッケージ4の底板4e上に配置されている。合成回路基板30は、Y軸方向に沿って増幅素子部10及び出力端子3と並んで配置され、増幅素子部10と出力端子3との間に位置する。合成回路基板30は、セラミック製の基板31と、基板31の主面上に設けられた合成回路32とを有する。基板31の平面形状は例えば長方形であり、一方の長辺31aはマッチング回路50を介して増幅素子部10と向かい合っており、他方の長辺31bは出力端子3と向かい合っている。基板31の裏面はパッケージ4の底板4eと向かい合っている。基板31の一方の短辺31cはパッケージ4の側壁4aの近傍に位置しており、基板31の他方の短辺31dはパッケージ4の側壁4bの近傍に位置している。すなわち、基板31は、X軸方向においてパッケージ4の一端近傍から他端近傍にわたって延在している。
【0051】
合成回路32は、増幅素子部10の複数のドレインパッド16から出力される信号を合成して一の出力信号とする。合成回路32は、基板31の主面上に設けられた配線パターン33を含む。配線パターン33は、Y軸方向に沿った基板31の中心線に関して線対称な形状を有する。配線パターン33は、4つの金属パッド33aを含む。4つの金属パッド33aは、長辺31aに沿って並んで配列されている。互いに隣り合う金属パッド33a同士は、膜抵抗を介して互いに接続されており、ウィルキンソン型カプラを構成する。これにより、増幅素子部10の複数のドレインパッド16間のアイソレーションを確保しつつ、出力端子3から見た、増幅素子部10の出力インピーダンスの整合を図っている。なお、図には、代表して1つの膜抵抗33bのみ図示している。各金属パッド33aは、ボンディングワイヤ9eを介して、マッチング回路50の対応する2つの金属パッドと電気的に接続されている。配線パターン33は、4つの金属パッド33aから結合を繰り返しつつ、最終的にボンディングワイヤ9fとの接続点に至る。配線パターン33は、ボンディングワイヤ9fを介して、出力端子3と電気的に接続されている。増幅後の高周波信号は、X軸方向における基板31の中央部から出力端子3に出力される。
【0052】
出力端子3は、金属製の配線パターンであって、増幅後の高周波信号を高周波増幅器1の外部へ出力する。出力端子3は、X軸方向における端壁4dの中央部に設けられており、パッケージ4の内部から外部へ延在している。
【0053】
[作用効果]
以上説明した増幅素子11の作用効果について説明する。まず、比較例を説明する。図5は、比較例に係る増幅素子11Xを示す平面図である。増幅素子11Xは、ドレイン配線65に代えてドレイン配線65Xを備える点において増幅素子11と相違している。また、増幅素子11Xは、ソースエアブリッジ67を備えていない。増幅素子11Xは、その他の点において増幅素子11と同様に構成されている。以下では、主に相違点について説明する。
【0054】
ドレイン配線65Xは、中間バスライン65aに代えて中間バスライン65cを有する点においてドレイン配線65と相違し、その他の点においてドレイン配線65と同様に構成されている。中間バスライン65cは、バスライン部651aに代えてバスライン部651cを有する点において中間バスライン65aと相違し、その他の点において中間バスライン65aと同様に構成されている。バスライン部651cは、ドレインバスライン65bにおけるバスライン部651bの幅D2と同じ幅D11(ここでは、Y軸方向における寸法)を有する点においてバスライン部651aと相違し、その他の点においてバスライン部651aと同様に構成されている。なお、増幅素子11Xにおける出力合成回路の長さD13(ここでは、Y軸方向における寸法)は、増幅素子11における出力合成回路の長さD3と同じである。
【0055】
上記のような増幅素子11Xでは、複数のソース電極61a間におけるソースインダクタンスのばらつきにより、ソースフィンガ61ごとにソース電位が異なる場合がある。このような場合、ゲート-ソース間の電位差にばらつきが生じ、トランジスタとしての均一動作が乱れ、トランジスタ13において不要波が発生する、いわゆる発振現象が発生することがある。この発振現象を回避するために、複数のソースフィンガ61同士を接続して複数のソース電極61a同士を同電位に維持することが考えられる。
【0056】
また、図6は、別の比較例に係る増幅素子11Yを示す平面図である。図7は、図6におけるVII―VII線に沿った断面図である。増幅素子11Yは、ソースエアブリッジ67Yを備える点において増幅素子11Xと相違し、その他の点において増幅素子11Xと同様に構成されている。
【0057】
ソースエアブリッジ67Yは、ソースエアブリッジ67と同様に、導電性の配線であり、複数のソースフィンガ61同士を電気的に接続する。ソースエアブリッジ67Yは、ソースエアブリッジ67におけるエアブリッジ配線671と同様に、複数の接続部67aと、複数の中継部67bとを有する(図7参照)。ただし、ソースエアブリッジ67Yは、ソースエアブリッジ67とは異なり、増幅素子11Yにおける出力合成回路には含まれない配線である。
【0058】
ソースエアブリッジ67Yは、活性領域R1上に配置されており、複数のソースフィンガ61のY軸方向における中央部同士を接続している。したがって、ソースエアブリッジ67Yは、ゲートフィンガ63及びドレインフィンガ62の両方を跨いでいる。ソースエアブリッジ67Yの幅D14(ここでは、Y軸方向における寸法)は、中間バスライン65cにおけるバスライン部651cの幅D11よりも小さい。例えば、幅D14は20μmである。
【0059】
上記の増幅素子11Yのように、複数のソース電極61a(ソースフィンガ61)同士をソースエアブリッジ67Y(エアブリッジ配線)によって接続することにより、当該複数のソース電極61a同士を同電位に維持しようとする場合、ソース-ドレイン間の容量増加を抑制し得る点では利点がある。一方で、ソースエアブリッジ67Yによって各ゲートフィンガ63の中央部が覆われるので、各ゲートフィンガ63に対する視認性が低下してしまう。この結果、製造過程での不良発見を見過ごすおそれが生じる。また、例えば、高信頼性を要求されるアプリケーション向け製品に増幅素子11Yが用いられる場合等では、製造過程または完成品において複数(例えば全て)のゲートフィンガ63に対する視覚的検査が必要とされることが考えられる。しかしながら、増幅素子11Yでは、このように製造過程または完成品において視覚的検査が必要とされる場合に、全てのゲートフィンガ63に対する視覚的検査の実施が困難になるという問題が生じる。
【0060】
これに対し、本実施形態に係る増幅素子11では、複数のソースフィンガ61がソースエアブリッジ67のエアブリッジ配線671によって互いに接続されている。したがって、複数のソースフィンガ61間における電位差を低減できる。また、複数のソースフィンガ61の一端61b同士がソース配線64によって接続されており、複数のソースフィンガ61の他端61c同士がエアブリッジ配線671によって接続されている。このため、トランジスタ13におけるY軸方向の中央部では、ソースフィンガ61及びドレインフィンガ62間に設けられたゲートフィンガ63が、エアブリッジ配線671に覆われていない構成を実現し得る。したがって、ゲートフィンガ63に対する視認性を確保できる。
【0061】
また、本実施形態のように、ドレイン配線65は、X軸方向に隣り合う2つのドレインフィンガ62を接続する複数のバスライン部651aと、バスライン部651aとは異なる幅D2を有し、複数のバスライン部651a同士を接続するバスライン部651bと、を有していてもよい。複数のソースフィンガ61における他端61c同士をエアブリッジ配線671が接続する構成では、増幅素子11X,11Yにおける出力合成回路の長さD13と比較して、増幅素子11における出力合成回路の長さD3が大きくなりやすい。出力合成回路の長さD3が大きくなると当該出力合成回路におけるインピーダンスも大きくなるので、対応する整合回路(例えば、図1のマッチング回路50)も大きく変更する必要が生じ得る。
【0062】
これに対し、上記の構成においては、バスライン部651aまたはバスライン部651bの一方の幅を他方の幅よりも小さくすることによって出力合成回路の長さD3が調整される。したがって、上記の構成によれば、出力合成回路におけるインピーダンスが変化する程度を軽減できる。また、上記実施形態においては、長さD3が長さD13と同じである。したがって、増幅素子11X,11Yが用いられていた製品(例えば、高周波増幅器)において、他の構成を変更することなく、増幅素子11X,11Yを増幅素子11に変更することが可能となる。
【0063】
本実施形態のように、中間バスライン65aにおけるバスライン部651aの幅D1は、ドレインバスライン65bにおけるバスライン部651bの幅D2よりも小さくてもよい。この構成によれば、幅D2を幅D1よりも小さくすることによって出力合成回路の長さD3を調整する場合と比較して、インピーダンスが変化する程度をより軽減できる。また、上述したように、高周波増幅器1の動作時において、各中間バスライン65aにおける各引出部653aには2ドレインフィンガ分(すなわち、4ゲートフィンガ分)の電流が流れ、ドレインバスライン65bにおける各引出部652bには全フィンガ分(本実施形態では、4ドレインフィンガ分であって8ゲートフィンガ分)の電流が流れることとなる。つまり、各バスライン部651aには2ゲートフィンガ分の電流が流れ、バスライン部651bには4ゲートフィンガ分の電流が流れる。したがって、より大量の電流が流れるバスライン部651bの幅D2が幅D1よりも大きいことにより、幅D2が幅D1よりも小さい場合と比較して、出力合成回路におけるインピーダンスが変化する程度を軽減し得る。
【0064】
本実施形態のように、バスライン部651aの幅D1は、エアブリッジ配線671の幅D4以上であってもよい。この構成によれば、幅D1が幅D4よりも小さい場合と比較して、バスライン部651aにおける電流密度を小さくできる。また、バスライン部651aがソース電流を流すのに対し、エアブリッジ配線671は電位を規定するに過ぎないので、幅D4を比較的小さくしやすい。この幅D4を幅D1と同じかそれよりも小さくすることにより、出力合成回路におけるインピーダンスが変化する程度を軽減し得る。
【0065】
本実施形態のように、半導体基板12は、活性領域R1と、活性領域R1を囲む不活性領域R2,R3と、を有していてもよい。エアブリッジ配線671は、不活性領域R3上に配置されていてもよい。上述したように、活性領域R1は、トランジスタとして動作させる領域であることから、活性領域R1においては、特に、ゲートフィンガ63に対する視覚的検査が求められる。上記の構成によれば、活性領域R1がエアブリッジ配線671に覆われないので、活性領域R1においてゲートフィンガ63に対する視認性を十分に確保できる。
【0066】
本実施形態のように、ゲート配線66は、複数のゲートフィンガ63の一端63b同士を接続していてもよい。複数のソースフィンガ61の他端61c、及び複数のゲートフィンガ63の他端63cは、不活性領域R3上に位置していてもよい。複数のソースフィンガ61の他端61cは、複数のゲートフィンガ63の他端63cよりも活性領域R1から遠い位置にて、エアブリッジ配線671と接続されていてもよい。この構成によれば、ゲートフィンガ63の他端63cが不活性領域R3上に位置している構成において、ゲートフィンガ63に対する視認性を十分に確保できる。
【0067】
本実施形態のように、エアブリッジ配線671は、平面視において複数のゲートフィンガ63と重ならなくてもよい。この構成によれば、ゲートフィンガ63に対する視認性をより十分に確保できる。
【0068】
[変形例]
以上の実施形態は、本開示に係る半導体装置の一実施形態について説明したものである。本開示に係る半導体装置は、上述した各実施形態を任意に変更したものとすることができる。
【0069】
図8は、変形例に係る増幅素子11Aを示す平面図である。増幅素子11Aは、ドレイン配線65に代えてドレイン配線65Aを備える点において増幅素子11と相違し、その他の点において増幅素子11と同様に構成されている。ドレイン配線65Aは、中間バスライン65aに代えて中間バスライン65dを備える点、及びドレインバスライン65bに代えてドレインバスライン65eを備える点においてドレイン配線65と相違し、その他の点においてドレイン配線65と同様に構成されている。
【0070】
中間バスライン65dは、バスライン部651aに代えてバスライン部651dを有する点において中間バスライン65aと相違し、その他の点において中間バスライン65aと同様に構成されている。バスライン部651dは、バスライン部651aの幅D1とは異なる幅D5(ここでは、Y軸方向における寸法)を有する。ドレインバスライン65eは、バスライン部651bに代えてバスライン部651eを有する点においてドレインバスライン65bと相違し、その他の点においてドレインバスライン65bと同様に構成されている。バスライン部651eは、バスライン部651bの幅D2とは異なる幅D6(ここでは、Y軸方向における寸法)を有する。バスライン部651d及びバスライン部651eは、その他の点においてバスライン部651a及びバスライン部651bとそれぞれ同様に構成されている。幅D5は、幅D6とは異なり、幅D6よりも大きい。一例として、幅D5は35μmであり、幅D6は15μmである。
【0071】
この増幅素子11Aにおいても、増幅素子11と同様に、複数のソースフィンガ61の他端61cがエアブリッジ配線671によって互いに接続されている。したがって、複数のソースフィンガ61間における電位差を低減できるとともに、ゲートフィンガ63に対する視認性を確保できる。このように、増幅素子11Aによれば、増幅素子11と同様の構成を備えることにより、上述した各効果が得られる。
【0072】
また、上記の構成によれば、バスライン部651eの幅D6をバスライン部651dの幅D5よりも小さくすることによって出力合成回路の長さD3が調整される。したがって、上記の構成によれば、増幅素子11と同様に、出力合成回路におけるインピーダンスが変化する程度を軽減できる。また、上記変形例においても、増幅素子11Aにおける出力合成回路が長さD13と同じ長さD3を有する。したがって、増幅素子11X,11Yが用いられていた製品(例えば、高周波増幅器)において、他の構成を変更することなく、増幅素子11X,11Yを増幅素子11Aに変更することが可能となる。
【0073】
図9は、別の変形例に係る増幅素子11Bを示す平面図である。増幅素子11Bは、ドレイン配線65に代えてドレイン配線65Bを備える点において増幅素子11と相違し、その他の点において増幅素子11と同様に構成されている。ドレイン配線65Bは、中間バスライン65aに代えて中間バスライン65fを備える点においてドレイン配線65と相違し、その他の点においてドレイン配線65と同様に構成されている。
【0074】
中間バスライン65fは、バスライン部651aに代えてバスライン部651fを有する点において中間バスライン65aと相違し、その他の点において中間バスライン65aと同様に構成されている。バスライン部651fは、バスライン部651aの幅D1とは異なる幅D7(ここでは、Y軸方向における寸法)を有する。バスライン部651fは、その他の点においてバスライン部651aと同様に構成されている。幅D7は幅D2と同じである。例えば、幅D7は35μmである。
【0075】
この増幅素子11Bにおいても、増幅素子11と同様に、複数のソースフィンガ61の他端61cがエアブリッジ配線671によって互いに接続されている。したがって、複数のソースフィンガ61間における電位差を低減できるとともに、ゲートフィンガ63に対する視認性を確保できる。このように、増幅素子11Bによれば、増幅素子11と同様の構成を備えることにより、上述した各効果が得られる。
【0076】
図10は、更に別の変形例に係る増幅素子11Cの一部を拡大して示す平面図である。増幅素子11Cは、複数のゲートフィンガ63に代えて複数のゲートフィンガ63Cを備える点において増幅素子11と相違し、その他の点において増幅素子11と同様に構成されている。ゲートフィンガ63Cは、ゲートフィンガ63のY軸方向における長さよりも大きい長さを有する点においてゲートフィンガ63と相違している。各ゲートフィンガ63Cの他端63cは、ソースフィンガ61の他端61c及びドレインフィンガ62の他端62cよりもY軸方向に大きく突出している。不活性領域R3上においては、各ゲートフィンガ63Cの他端63cがエアブリッジ配線671下までY軸方向に延在している。言い換えると、エアブリッジ配線671は、平面視においてゲートフィンガ63Cの少なくとも一部と重なる。
【0077】
この増幅素子11Cにおいても、増幅素子11と同様に、複数のソースフィンガ61の他端61cがエアブリッジ配線671によって互いに接続されている。したがって、複数のソースフィンガ61間における電位差を低減できるとともに、ゲートフィンガ63Cに対する視認性を確保できる。このように、増幅素子11Cによれば、不活性領域R3上において複数のゲートフィンガ63Cがエアブリッジ配線671下までそれぞれ延在し、エアブリッジ配線671が平面視において複数のゲートフィンガ63Cと重なる構成においても、ゲートフィンガに対する視認性を確保できる。
【0078】
また、上記実施形態及び各変形例においては、エアブリッジ配線671が不活性領域R3上に配置されているが、例えばエアブリッジ配線671の少なくとも一部が活性領域R1上に配置されていてもよい。不活性領域R3上には、各ソースフィンガ61の他端61c、及び各ゲートフィンガ63の他端63cが、Y軸方向において互いに同じ位置まで延在していてもよい。また、上記実施形態及び各変形例においては、エアブリッジ配線671が複数の引出部652aを跨いでいるが、エアブリッジ配線671が複数のドレインフィンガ62のそれぞれにおける少なくとも一部を跨いでいてもよい。エアブリッジ配線671は、複数のドレインフィンガ62、及び複数の引出部652aの両方を跨いでいてもよい。また、上記実施形態及び各変形例においては、ブリッジ配線としてエアブリッジ配線671を例示して説明したが、ブリッジ配線はエアブリッジ構造でなくてもよい。例えば、複数のドレインフィンガ62及び複数の引出部652aのうちの少なくとも一方とブリッジ配線との間に、絶縁体が介在していてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…高周波増幅器
2…入力端子
3…出力端子
4…パッケージ
4a,4b…側壁
4c,4d…端壁
4e…底板
9a,9b,9c,9d,9e,9f…ボンディングワイヤ
10…増幅素子部
11,11A,11B,11C,11X,11Y…増幅素子(半導体装置)
12…半導体基板
12a,12b…端辺
13…トランジスタ
14…ソースパッド
15…ビアホール
16…ドレインパッド
20…分岐回路基板
21…基板
21a,21b…長辺
21c,21d…短辺
22…分岐回路
23…配線パターン
23a…金属パッド
23b…膜抵抗
30…合成回路基板
31…基板
31a,31b…長辺
31c,31d…短辺
32…合成回路
33…配線パターン
33a…金属パッド
33b…膜抵抗
40,50…マッチング回路
61…ソースフィンガ
61a…ソース電極
61b…一端
61c…他端
62…ドレインフィンガ
62a…ドレイン電極
62b…一端
62c…他端
63,63C…ゲートフィンガ
63a…ゲート電極
63b…一端
63c…他端
64…ソース配線
64a…ソースバスライン
64b…接続配線
65,65A,65B,65X…ドレイン配線
65a,65c,65d,65f…中間バスライン
65b,65e…ドレインバスライン
66…ゲート配線
67,67Y…ソースエアブリッジ
67a…接続部
67b…中継部
651a,651c,651d,651f…バスライン部(第1バスライン)
651b,651e…バスライン部(第2バスライン)
652a…引出部(引出配線)
652b,653a…引出部
671…エアブリッジ配線(ブリッジ配線)
672…接続配線
D1,D2,D4,D5,D6,D7,D11,D14…幅
D3,D13…長さ
R1…活性領域
R2,R3…不活性領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10