IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 宮川 達治の特許一覧

<>
  • 特開-鮮度保持装置および鮮度保持方法 図1
  • 特開-鮮度保持装置および鮮度保持方法 図2
  • 特開-鮮度保持装置および鮮度保持方法 図3
  • 特開-鮮度保持装置および鮮度保持方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006223
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】鮮度保持装置および鮮度保持方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/32 20060101AFI20230111BHJP
   H05B 7/09 20060101ALN20230111BHJP
【FI】
A23L3/32
H05B7/09 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108717
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】521289353
【氏名又は名称】宮川 達治
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】木内 正人
【テーマコード(参考)】
3K084
4B021
【Fターム(参考)】
3K084CA07
3K084DA11
4B021LP10
4B021LW02
4B021LW03
4B021LW04
(57)【要約】
【課題】本発明は、鮮度保持装置および鮮度保持方法において、生鮮品に電磁場を印加し、より均一な鮮度保持を実現する。
【解決手段】鮮度保持装置1は、互いに対向する2枚の電極2と、電極2間に電圧を印加する電源20と、2枚の電極2に挟まれた空間に設けられた生鮮品配置部3と、を備えている。2枚の電極2は、電源20によって2枚の電極2間に生成される電場の電気力線10の密度が、少なくとも生鮮品配置部3に配置された生鮮品9が占める空間において均一となるように構成される。生鮮品配置部3に配置された生鮮品9は、電源20によって2枚の電極2間に生成される電場の電気力線10が生鮮品9の内部を透過することにより鮮度が保持される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する2枚の電極と、前記電極間に電圧を印加する電源と、前記2枚の電極に挟まれた空間に設けられた生鮮品配置部と、を備え、
前記2枚の電極間に電圧を印加することによって前記電極間に生成される電場の電気力線を前記生鮮品配置部に配置した生鮮品に透過させることによって、前記生鮮品の鮮度を保持させることを特徴とする鮮度保持装置。
【請求項2】
前記電源は、前記電極間に生成される電場が100V/m以上となるように、前記電極間に電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の鮮度保持装置。
【請求項3】
前記電源は、周波数が10Hz以上、10kHz以下であるサイン波の交流電圧または矩形波または三角波の交番電圧を前記電極間に印加することを特徴とする請求項1または2に記載の鮮度保持装置。
【請求項4】
前記2枚の電極は、前記電源によって前記2枚の電極間に生成される電場の電気力線の密度が、少なくとも前記生鮮品配置部に配置された生鮮品が占める空間において均一となるように構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の鮮度保持装置。
【請求項5】
前記2枚の電極に挟まれた空間を取り囲むように設置された浮遊電極をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の鮮度保持装置。
【請求項6】
前記2枚の電極および前記浮遊電極を電気的に接続するキャパシタをさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の鮮度保持装置。
【請求項7】
前記電源は、直流電圧、サイン波からなる交流電圧、および矩形波または三角波からなる交番電圧のいずれかを前記2枚の電極に印加して生成される電場、またはこれらの電場の時間的または空間的な組み合わせによる電場を、前記2枚の電極に挟まれた空間に生成するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の鮮度保持装置。
【請求項8】
前記2枚の電極は、それぞれが備えている抵抗器を介して互いに接続され、その接続点を通じて接地されており、
前記電源は、前記2つの電極に挟まれた空間に交流電場または交番電場が生成されるように、前記電極間に電圧を印加する、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の鮮度保持装置。
【請求項9】
互いに対向する2枚の電極と、前記電極間に電圧を印加する電源と、前記2枚の電極に挟まれた空間に設けられた生鮮品配置部と、を備える鮮度保持装置を用いて、
前記2枚の電極間に電圧を印加することによって前記電極間に電場を生成し、
前記生成される電場の電気力線を前記生鮮品配置部に配置した生鮮品に透過させ、
前記生鮮品に含まれる極性分子である活性酸素の動きを電場によって束縛して、活性酸素による生鮮品の有機物の酸化の広がりを抑制し、および/または活性酸素から細菌へのエネルギー供給を抑えて細菌の活動を抑制することを特徴とする鮮度保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鮮度保持装置および鮮度保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、肉、魚、野菜、果物、花卉などの鮮度保持を必要とする生鮮品の鮮度保持には、種々の工夫が凝らされてきた。凍結や塩蔵などは、食品保存に利用されるが生鮮性が失われてしまう。生鮮品の鮮度保持には、低温に維持することが最もよく利用されている。摂氏4度程度の温度を維持して鮮度を保持する冷蔵技術は、業務用や家庭用を問わず広く利用されている。摂氏4度程度が温度帯として選択されるのは、氷結させない範囲でできるだけ低温に維持するためである。
【0003】
生鮮品一般について、鮮度保持のために低温を維持する理由は、細菌の活動を抑制することにある。低温維持による技術は、細菌の活動を抑えながら生鮮性を保持できるという作用機序(メカニズム)が判明している唯一の技術として一般に利用されている。このような低温維持は有用な技術であるが、鮮度保持の期間は数日にとどまる。そこで、生鮮性を保持できる期間を延長できる技術が求められている。
【0004】
ところで、食品の品質や鮮度の保持を目的として、食品に電磁場を作用させる方法が提案されている。例えば、粉体化して食用される各種植物の粉砕工程の前に、電圧を印加した電極上にその食用物を堆積または電極を食用物の堆積物中に挿入し、電極を単極アンテナとして電磁波を放出し、その電磁場中に食用物をさらす処理装置と処理方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、貯蔵物質が接触載置される複数の載置電極と、載置電極と各々対向する複数の上下移動電極とを有し、載置電極と移動電極に同極性の交流電圧を印加して発生する電磁場中に貯蔵する電場処理冷蔵貯蔵庫が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-189789号公報(特許3668848)
【特許文献2】特表2012-527216号公報(特許5593235)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1、特許文献2に示されるような装置や方法においては、交流の電磁場を印加して鮮度を保持することを企図するものであるがその作用機序は不明である。そのため技術の問題点の把握や改良が行われてなく、例えば、生鮮品における鮮度保持の効果が不均一で予測不可であることが課題となっている。
【0008】
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単な構成により、生鮮品に電磁場を印加し、その電磁場が直流か交流かにかかわらず、より均一な鮮度保持を実現できる鮮度保持装置および鮮度保持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、本発明の鮮度保持装置は、互いに対向する2枚の電極と、前記電極間に電圧を印加する電源と、前記2枚の電極に挟まれた空間に設けられた生鮮品配置部と、を備え、前記2枚の電極間に電圧を印加することによって前記電極間に生成される電場の電気力線を前記生鮮品配置部に配置した生鮮品に透過させることによって、前記生鮮品の鮮度を保持させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の鮮度保持方法は、互いに対向する2枚の電極と、前記電極間に電圧を印加する電源と、前記2枚の電極に挟まれた空間に設けられた生鮮品配置部と、を備える鮮度保持装置を用いて、前記2枚の電極間に電圧を印加することによって前記電極間に電場を生成し、前記生成される電場の電気力線を前記生鮮品配置部に配置した生鮮品に透過させ、前記生鮮品に含まれる極性分子である活性酸素の動きを電場によって束縛して、活性酸素による生鮮品の有機物の酸化の広がりを抑制し、および/または活性酸素から細菌へのエネルギー供給を抑えて細菌の活動を抑制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の鮮度保持装置および鮮度保持方法によれば、互いに対向する2枚の電極間に生成される電場の電気力線を生鮮品に透過させるので、極性分子である活性酸素の動きを電気力線のもとに束縛するという明確な作用機序のもとで、電磁場が直流か交流かにかかわらず、より均一な鮮度保持を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る鮮度保持装置の構成を概念的に示す斜視図。
図2】他の実施形態に係る鮮度保持装置の構成を概念的に示す斜視図。
図3】さらに他の実施形態に係る鮮度保持装置の構成を概念的に示す斜視図。
図4】さらに他の実施形態に係る鮮度保持装置の構成を概念的に示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る鮮度保持装置および鮮度保持方法について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1に示すように、鮮度保持装置1は、互いに対向する2枚の電極2と、電極2間に電圧を印加する電源20と、2枚の電極2に挟まれた空間に設けられた生鮮品配置部3と、を備えている。2枚の電極2は、電源20によって2枚の電極2間に生成される電場の電気力線10の密度が、少なくとも生鮮品配置部3に配置された生鮮品9が占める空間において均一となるように構成されている。
【0015】
互いに対向する2枚の電極2は、互いに対向する2枚の電極であればよい。それぞれの電極2は、複数の電極要素をまとめて1枚の電極として構成されてもよい。このような電極2または電極要素は、平板状であってもよく、曲面板状であってもよい。また、これらは、板状に限られず、2枚の電極2における互いに対向する面が、所定の平面や曲面であればよい。
【0016】
電源20は、2枚の電極2間に直流電圧または交流電圧を印加できればよく、2枚の電極2間に生成される電場は、直流電場に限られず、交流電場であってもよい。電源20は、1つに限られず複数備えられていてもよい。例えば、2枚の電極2のそれぞれが複数の電極要素で構成されている場合、複数の電源20を用いて、複数の電極要素の各々またはグループ化した電極要素の組に対して、個別に電圧を印加してもよい。互いに対向する2枚の電極2と電源20とは、少なくとも生鮮品9が占める空間に、電気力線10の密度が均一な電場を形成できればよい。
【0017】
生鮮品配置部3は、生鮮品9を載置する載置台に限られず、鮮度保持が実行される空間に生鮮品9を配置できるものであればよく、配置移動できるコンベアでもよく、上方から生鮮品9を吊り下げる構造体や移動体であってもよい。対向した2枚の電極に挟まれた空間において鮮度保持が可能になるのだが、その空間内に金属部品を設置すると、電気力線を吸収してしまい、鮮度保持の効果が減少する。そのため、生鮮品配置部3は、電気力線10の密度を乱さない材料で構成される。プラスチック製もしくは木製の棚やパレットなどを利用するのが好ましい。金属製の棚などを設置してはならない。
【0018】
電源20によって2枚の電極2間に電場が生成され、その電場の電気力線10は、生鮮品配置部3に配置された生鮮品9を透過する。生鮮品9は、密度が均一な電気力線10が生鮮品9の内部を透過することにより、鮮度が保持される。その原理を以下に説明する。
【0019】
(電磁場による鮮度保持の作用機序)
生鮮品の鮮度保持には2つの要点がある。活性酸素の影響をなくすこと、および細菌の活動を止めることである。(1)活性酸素は、その近傍に存在する生鮮品の有機物を酸化させ鮮度を落とす。従って、活性酸素を束縛すれば、活性酸素が移動して生鮮品の有機物を次々に酸化させていくという反応を抑制できる。(2)また、細菌は活動に必要なエネルギーを得るために活性酸素を利用する。従って、その活性酸素を束縛すれば、細菌はエネルギーを得られなくなり、細菌の活動を停止できる。これら2点を適用して、活性酸素の影響をなくし、細菌の活動を止めることができれば、生鮮品の鮮度保持を実現できる。
【0020】
ところで、水や活性酸素、生体分子などは一般に分子内に分極を持っている。これらの分子は、総称して極性分子と呼ばれる。極性分子を含む物質を配置した空間を2枚の電極2で挟み、対向する2枚の電極間に電圧をかけると、2枚の電極間に電場が発生し、電気力線10が定義される。極性分子は、電場がなければブラウン運動などにより動き回れる。また、極性分子は、電場があると磁針が磁力線の方向に束縛されるように電気力線に沿って束縛され、電場が弱くなれば束縛が緩み電気力線を横切って動くことができる。
【0021】
さらに、極性分子は、電気力線の密度に不均一性があれば、その不均一性に基づいて発生する力を受けて、その力に従って移動する。逆に、密度が一定の電気力線が存在する空間の場合、電気力線の密度の不均一に基づく力が発生しないので、極性分子は電気力線に沿う熱運動だけが可能となる。熱運動は、必要に応じて温度を下げて抑制できる。
【0022】
鮮度保持装置1は、直流や交流にかかわらず、空間の電気力線10によって、活性酸素をはじめとする極性分子を拘束することができること、これによって鮮度保持が達成できること、という2点を鮮度保持の作用機序としている。すなわち、鮮度保持装置1は、極性分子である活性酸素に注目し、活性酸素を電気力線10で補足し、活性酸素の移動による影響をなくし、細菌の活動を止めて、生鮮品の鮮度保持を行うことを作用機序として取り入れている。鮮度保持装置1は、電気力線10によって極性分子を束縛するという明確な作用機序のもとで、電磁場が直流か交流かにかかわらず、より均一な鮮度保持を実現できる。
【0023】
(電気力線の密度の均一化)
鮮度保持が期待される空間内部では、鮮度保持能力を空間内で一様に確立する必要がある。そのためには、上述のように、鮮度保持が期待される空間における電気力線の密度が均一であらねばならない。例えば、矩形の平行平板から成る対向する2枚の電極2の場合、中心部分は、容易に電気力線の密度を一定にすることができる。しかしながら、電極の端部では電気力線が発散して電気力線の密度が下がり、均一ではなくなる。
【0024】
より多くの生鮮品の鮮度保持を実施できるように、電気力線の密度が一定の空間(鮮度保持空間という)を、2枚の電極2間により広く実現する必要がある。そのため、それぞれの電極2は、単純な平板電極に限られず、例えば、凹面構造、複数の電極要素を組み合わせた構造などにしてもよい。対向配置される2枚の電極2をどのような形状にすれば、より広くて密度が均一な電場の空間を形成できるかについては、有限要素法による電磁界シミュレーションなどによって知ることができる。
【0025】
(浮遊電極)
図2は、電気力線の密度が一定の鮮度保持空間をより広くする一方法を示す。鮮度保持装置1は、図1に示した鮮度保持装置1において、2枚の電極2に挟まれた空間を取り囲むように設置された浮遊電極4を備えるものである。本実施形態では、浮遊電極4は8本あり、対向配置された円板状の2枚の電極2に挟まれた空間を上下左右から額縁状に囲む4本で1組のものを2組備えている。浮遊電極4の設置個数には限定はなく、また、組数、組の構成方法、組を構成するか否かなどにも限定はない。鮮度保持空間を囲む浮遊電極4によって、電気力線の広がりを抑制でき、有効な鮮度保持空間をより広くできる。
【0026】
鮮度保持装置1は、例えば、鮮度保持機能を発揮せしめる空間を包摂する容器の内壁に、2枚の対向電極2と、浮遊電極4とを配置して構成される。浮遊電極4は、電気的に絶縁した状態で容器の内壁に保持すればよい。容器の内壁の材質や形状に限定はなく、空気の循環や光線の流入についても限定はない。浮遊電極4の適切な配置や構成の情報は、電磁界シミュレーションで得られる。
【0027】
(キャパシタ結合)
図3は、電気力線の密度が一定の鮮度保持空間をより広くする他の方法を示す。鮮度保持装置1は、図2に示した鮮度保持装置1において、2枚の電極2および浮遊電極4を電気的に接続するキャパシタ5を備えるものである。本実施形態では、2枚の対向電極2と、8本の浮遊電極4と、を11個のキャパシタで電気的に結合している。この場合においても、諸量を決定するために、電磁界シミュレーションを用いることができる。
【0028】
(印加電圧、生成される電場)
電源20には、特段の限定はなく、直流電圧と、例えばサイン波からなる交流電圧と、例えば矩形波または三角波からなる交番電圧と、のうちのいずれかの電圧を2枚の電極2に印加できればよい。また、電源20は、これらのいずれかの電圧を印加して生成される電場の時間的または空間的な組み合わせによる電場を、2枚の電極2に挟まれた空間に生成できるようにしてもよい。
【0029】
電源20が印加する電圧がサイン波である場合、サイン波の電圧は、昇圧が容易で一般に利用されていて使いやすいが、波形がサイン波であることによる弱点を有し、その周期の一部で電圧が小さくなる時間が長く、電圧がゼロにもなる。周期的に、電圧が小さくなって電場が弱くなり、電気力線の密度が低くなって極性分子を拘束する力が弱くなり、その分、鮮度保持の効果が周期的に低下し、全体として効果が低下する。
【0030】
対向する2枚の電極間に印加する電圧は直流であってもよい。直流の場合、電気力線の密度が時間的に一定であり、極性分子を拘束する効果が安定的に得られる。ただし、水分子やイオン化した物質が、例えば保護されていない電極の近傍に存在すると、電気分解の効果によって電極材料が溶出する虞がある。
【0031】
対向する2枚の電極間に印加する電圧は、例えば、矩形波の交番電圧であってもよい。交番矩形波であれば、交番時以外は電圧が一定であって電気力線の効果が弱くなる時間がなく、また、交番時のゼロになる時間も小さくできるので、所定の鮮度保持効果が得られる。対向する2枚の電極間に印加される電圧の大きさは、特に制限がないが、2枚の電極間に形成される電場の強度が100V/m以上であることが好ましい。
【0032】
対向する2枚の電極間に印加される電圧が、例えばサイン波の交流電圧、あるいは、例えば矩形波または三角波の交番電圧である場合、その周波数が10Hz以上、10kHz以下であることが好ましい。10Hz未満であれば電気力線の効果が弱くなる時間が長く、ブラウン運動によって動き出そうとする極性分子を束縛することができない。10kHzを超える周波数の場合、電磁波の波長が短くなっており、鮮度保持のための空間と同程度以下の波長となり、鮮度保持の効果が鮮度保持空間の中で不均一となってしまうので、好ましくない。電源20が印加する交流電圧または交番電圧は、50Hz以上、1kHz以下の周波数に設定することがより好ましい。
【0033】
(抵抗器を介した電極の結合と接地)
図4に示す鮮度保持装置1は、図1に示した鮮度保持装置1において、2枚の電極2のそれぞれが抵抗器6を備えており、2枚の電極2が抵抗器6を介して互いに接続され、2枚の電極2がその接続点61を通じて接地されているものである。
【0034】
電源20は、2つの電極2に挟まれた空間に交流電場または交番電場が生成されるように、電極2間に電圧を印加する。本実施形態の鮮度保持装置1は、対向する2枚の電極2に印加する電圧が交流または交番の場合に、鮮度保持の効果を高めることができる。また、抵抗器6を備えて接地する本実施形態の構成は、上述の図2図3に示した鮮度保持装置1に適用してもよい。
【実施例0035】
(実施例1)
床面が3m×5m、高さが3mのコンクリート製の部屋に、図1に示す鮮度保持装置1と同等の鮮度保持装置を設置した。2枚の電極2は、共に一辺2.5mの正方形である。一方の電極2を3m四方の壁面に設置し、他方の電極2を対向する壁面に設置した。設置した鮮度保持装置に1kV、50Hzの交流電圧(サイン波)を印加した。
【0036】
部屋の中央に、生鮮品配置部3として、高さ80cmの木製作業台を設置した。鶏もも肉30gを蓋つきシャーレに入れ、作業台の上に置き、鮮度保持装置を駆動させた状態で3日間放置した。部屋内温度は20℃に設定した。
【0037】
3日後にニオイを嗅いだところ、下記(表1)に示す「6段階臭気強度表示法」において、悪臭の程度は、強度2であった。
【0038】
(表1)6段階臭気強度表示法
============================
0:無臭
1:やっと感知できるにおい(検知閾値)
2:何のにおいであるかわかる弱いにおい(認知閾値)
3:楽に感知できるにおい
4:強いにおい
5:強烈なにおい
============================
【0039】
通常市販されている鶏もも肉は、カンピロバクターや大腸菌に汚染されており、室温に放置すれば菌繁殖に伴い臭気が発生するはずであるが、臭気強度が2であることから、実施例1の結果は、鮮度保持装置によって微生物の活動が抑制されたことを示している。
【0040】
(比較例1)
比較例1では、実施例1の鮮度保持装置を用いたが、装置を駆動させず、電極2に電圧を印加しなかった。実施例1と同様に、鶏もも肉30gを蓋つきシャーレに入れ、作業台の上に置き、装置を駆動させない状態で、3日間放置した。部屋内温度は20℃に設定した。
【0041】
3日後にニオイを嗅いだところ、表1に基づく悪臭の程度は、強度5であった。このことから、実施例1における鮮度保持装置の効果が確認できた。すなわち、通常市販されている鶏もも肉は、カンピロバクターや大腸菌に汚染されており、比較例1では、鮮度保持装置を駆動させずに室温に放置したため、鮮度保持装置の鮮度保持効果を受けられず、菌繁殖に伴う臭気が発生したと考えられる。
【0042】
(実施例2)
内面が床面2.5m×4m、高さ2mである金属製の保管庫の内部に、図2に示す鮮度保持装置1と同等の装置を設置した。2枚の電極2は、共に一辺1.8mの正方形である。一方の電極2を2.5m×2mの壁面に設置し、他方の電極2を対向する壁面に設置した。2枚の電極2は、4m離れて設置されている。浮遊電極4の組は、1mずつ距離を置き、等間隔に3組設置した。浮遊電極4の各組を構成する電極部品は、保管庫の内壁にセラミック碍子を用いて固定し、保管庫とは電気的に絶縁して浮遊状態としている。設置した鮮度保持装置の電極2に2kVの直流電圧を印加した。
【0043】
保管庫の中央に、生鮮品配置部3として、高さ60cmのプラスチック製作業台を設置した。カジキマグロ赤身肉200gを用意した。ミオグロビンのメト化率測定(井ノ原康太、尾上由季乃、木村郁夫、「魚類筋肉ミオグロビンのメト化率測定法の検討」、日本水産学会誌、81(3),456-464(2015)参照)を行ったところ、10%であった。このカジキマグロ赤身肉200gを蓋つきシャーレに入れ、作業台の上に置き、鮮度保持装置を駆動させた状態で6日間放置した。庫内温度は7℃に設定した。
【0044】
6日後にミオグロビンのメト化率測定を行ったところ、15%であった。ミオグロビンのメト化には活性酸素が関係しているが、メト化率が低い結果から、鮮度保持装置の電磁場の効果により、活性酸素の影響が抑制されたと考えられる。
【0045】
(比較例2)
比較例2では、実施例2の鮮度保持装置を用いたが、装置を駆動させず、電極2に電圧を印加しなかった。実施例2と同様に、カジキマグロ赤身肉200gを蓋つきシャーレに入れ、作業台の上に置き、装置を駆動させない状態で、6日間放置した。庫内温度は7℃に設定した。
【0046】
6日後にミオグロビンのメト化率測定を行ったところ、70%であった。メト化率が高い結果から、比較例2では、鮮度保持装置を駆動させなかったので活性酸素の影響を抑制できず、メト化が進み、食品としての劣化が進んだと考えられる。
【0047】
(実施例3)
内面が床面1.5m×2m、高さが1.8mである金属製の保管庫の内部に、図3に示す鮮度保持装置1と同等の装置を設置した。2枚の電極2は、共に一辺1.2m×1.4mの長方形である。一方の電極2を、1.5m×1.8mの壁面に設置し、他方の電極2を対向する壁面に設置した。2枚の電極2は、2m離れて設置されている。
【0048】
浮遊電極4の各組は、0.5mずつ距離を置き、等間隔に3組設置した。浮遊電極4の3組および各組を構成する電極部品は、互いにキャパシタ5を介して接続されている。また、各々の浮遊電極4は、保管庫の内壁にセラミック碍子を用いて固定し、保管庫とは電気的に絶縁して浮遊状態としている。キャパシタ5は、全て100pFのものを用いた。設置した鮮度保持装置の電極2には1.5kV、周波数900Hzの交番矩形波の電圧を印加した。
【0049】
保管庫の中央に、生鮮品配置部3として、高さ60cmのプラスチック製作業台を設置した。プチトマト3個をジップロック(登録商標)に入れ、密閉して作業台の上に置き、鮮度保持装置を駆動させた状態で8日間放置した。庫内温度は20℃に設定した。
【0050】
8日後においても、カビが生えなかった。カビの生育には、細菌が分泌した代謝物が必要であるが、カビが生えなかった結果から、鮮度保持装置の電磁場の効果により、活性酸素の動きが抑制されたことに起因して細菌の活動が抑制されたと考えられる。
【0051】
(比較例3)
比較例3では、実施例3の鮮度保持装置を用いたが、装置を駆動させず、電極2に電圧を印加しなかった。実施例3と同様に、プチトマト3個をジップロック(登録商標)に入れ、密閉して作業台の上に置き、鮮度保持装置を駆動させない状態で、8日間放置した。庫内温度は20℃に設定した。
【0052】
放置8日後には、カビが生えていた。カビが生えた結果から、比較例3では、鮮度保持装置を駆動させなかったので活性酸素の動きを抑制できず、細菌の活動を抑制できなかったと考えられる。
【0053】
以上のように、本技術を用いる鮮度保持装置によれば、活性酸素が関係する反応を抑えることができ、食品の鮮度を保つことができる。肉類については、牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉などのメト化防止、野菜類については、サラダなどの微生物抑制など、劣化防止に効果がある。
【0054】
(鮮度保持方法)
本発明の鮮度保持方法は、上述の図1乃至図4に示した鮮度保持装置1を用いて、生鮮品配置部3に配置した生鮮品9に電気力線10を透過させ、生鮮品9に含まれる極性分子である活性酸素の動きを電場によって束縛して、活性酸素による生鮮品9の有機物の酸化の広がりを抑制すること、および活性酸素から細菌へのエネルギー供給を抑えて細菌の活動を抑制すること、によって生鮮品9の鮮度を保持するものである。
【0055】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した各実施形態の構成を互いに組み合わせた構成とすることができる。電気力線の密度は、注目点を通る電気力線に垂直な単位断面を通過する電気力線の数で定義できる。また、鮮度保持に用いられる電気力線は、少なくとも生鮮品の内部で互いに平行であれば、密度が厳密に一定でなくとも、鮮度保持効果を発揮することができる。従って、互いに対向する2枚の電極2は、そのような電気力線を有する電場を生成できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 鮮度保持装置
10 電気力線
2 電極
20 電源
3 生鮮品配置部
4 浮遊電極
5 キャパシタ
6 抵抗器
9 生鮮品
図1
図2
図3
図4