(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062249
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】ストレスを軽減するための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/353 20060101AFI20230426BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20230426BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230426BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20230426BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20230426BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20230426BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20230426BHJP
【FI】
A61K31/353
A61K31/375
A61K45/00
A61P25/18
A61P25/22
A61P25/24
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172108
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】516148346
【氏名又は名称】松本 忠昌
(71)【出願人】
【識別番号】518444691
【氏名又は名称】株式会社次々世代イノベーション開発
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 文夏
(72)【発明者】
【氏名】亀井 飛鳥
(72)【発明者】
【氏名】阿部 啓子
【テーマコード(参考)】
4B018
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B018MD48
4B018ME14
4B018MF01
4C084AA19
4C084MA52
4C084NA03
4C084NA05
4C084ZA11
4C084ZA12
4C084ZA18
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086BA18
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA11
4C086ZA12
4C086ZA18
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、ストレスを軽減するための新規な組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明は、タキシフォリン又はその塩を有効成分として含有するストレスを軽減するための新規な組成物に関する。本発明によれば、ストレスに起因する症状又は疾患の予防、治療又は改善に有用な医薬組成物又は食品組成物を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タキシフォリン又はその塩を有効成分として含有するストレスを軽減するための組成物。
【請求項2】
ストレスが、精神的ストレスである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ストレスに起因する症状又は疾患の予防及び/又は治療用である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ストレスに起因する症状又は疾患が、精神的疲労、自律神経障害、意欲喪失、全身倦怠感、及び注意集中力欠陥からなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
さらに、ビタミン類及び賦形剤を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
医薬組成物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
食品組成物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
ストレス軽減に関連する機能の表示を付した、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
機能の表示が、「ストレスを予防する」、「ストレスを軽減する」、「ストレスを緩和する」、「精神的疲労を軽減する」、「精神的疲労を回復させる」、「神経機能を高める」、「集中力を高める」、及び「やる気を起こさせる」からなる群より選択されるものである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
サプリメント、機能性食品、健康食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、又は栄養機能食品として調製されていることを特徴とする、請求項7~9のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレスを軽減するための組成物に関する。より具体的には、本発明は、タキシフォリン又はその塩を有効成分として含有するストレスを軽減するための組成物、並びにストレスに起因する症状又は疾患を予防及び/又は治療(若しくは改善)するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多忙な生活を余儀なくされている現代社会では、勉強やデスクワーク、人間関係の精神的な緊張等により各種ストレスが発生し、精神的疲労が増加している。このようなストレスや精神的疲労は、意欲がなくなる、注意力が散漫になる、集中できない、イライラする、怒りっぽくなるといった自覚症状を伴う気力低下を引き起こし、また、肉体的疲労と同様に、頭が重い、全身がだるい等の自覚症状を伴う場合や、肩こり、腰痛、頭痛等を併発する場合もある。さらに、重度のストレスや精神的疲労は、神経障害等を引きおこす場合すらある。肉体的疲労であれば、基本的には休息を取ることによって回復が期待できるが、慢性的なストレスや精神的疲労は、意欲、注意集中力、作業性の低下等をきたす上に、その回復は容易でない。それ故、ストレスやそれに起因する精神的疲労は、未病(病気を発症していない予備群)の段階において、効果的に改善し得る医薬品又は飲食品の開発が望まれている。
【0003】
ストレスに起因する精神的な障害を軽減する医薬品としては、抗精神病薬、抗うつ薬、精神安定剤、抗不安薬、睡眠薬、精神刺激薬、抗てんかん薬等が用いられてきた。しかし、上記医薬品は、口の乾き、便秘、鼻詰まり、排尿困難、動悸、目のかすみ、気力低下等の様々な副作用を示す。また、用量、用法を誤ると逆効果になってしまう上に、投与期間が通常1年以上におよぶという問題点があった。
【0004】
また、疲労を軽減する化合物としてはカフェインが広く知られているが、カフェインは、中枢興奮作用により肉体的な疲労自覚時の眠気に対しては有効性を示すものの、ストレスに起因する精神的疲労を改善する効果は低い上に、過度に服用すると興奮が亢進し、ストレスや疲労の改善に必要とされる安静や睡眠の妨げとなる場合がある。
【0005】
上記医薬品等の問題点を克服するために、食品又は食品添加物を使用したストレス軽減剤が報告されている。例えば、グルタチオンと他の抗酸化物質とを組み合わせたストレス改善食品(特許文献1)、グルテン分解物を有効成分とするストレス抑制剤(特許文献2)、カキノキ科に属する植物の溶媒抽出物を有効成分とする抗ストレス組成物(特許文献3)、松樹皮抽出物(プロアントシアニジン及びカテキン類)を含有する抗ストレス剤(特許文献4)、ワサビ葉の抽出物を含有する抗ストレス剤(特許文献5)、ラクトバチルス・ガゼリを有効成分として含有するストレス軽減剤(特許文献6)等が知られている。しかし、これらのストレス軽減剤は、効果の点では必ずしも十分なものとは言えなかった。
【0006】
以上のように、従来のストレスを軽減するための医薬品(医薬組成物)又は食品(食品組成物)はいずれにおいても、安全性又は効果の面で問題点を有していたため、安心して摂取し続けることのできる安全かつ効果的なストレスを軽減するための医薬又は食品の開発が急務であった。
【0007】
タキシフォリンは、下記式(1):
【0008】
【0009】
で表される化合物であり、ダフリアカラマツ又はシベリアカラマツの木質部から分離されるバイオフラボノイド複合体であるジクベルチンの有効成分の大部分(90%以上)を占めるフラボノイドの一種である(非特許文献1)。タキシフォリンは、抗酸化特性及び毛細血管保護特性を有することが報告されており(非特許文献2)、ロシア連邦保健省により、毛細血管保護、及び抗酸化特性を有する医薬品として承認されている。また、機能性食品として、食品の賞味期限を延ばす食品添加物としても承認されている。さらに、タキシフォリンは最近、摂取上の安全性が確認される(非特許文献3)と共に、急性膵炎モデルマウスにおける抗酸化作用(非特許文献4)や1型糖尿病モデルラットにおける血糖改善効果(非特許文献5)、アルツハイマー病モデルマウスにおけるアミロイドβ凝集抑制、脳血流の改善、水迷路試験でのマウスの空間認識機能の改善等の認知症改善効果(特許文献7、非特許文献6)、並びに非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の予防又は治療効果(特許文献8)が確認されている。
しかし、タキシフォリンのストレス軽減作用に関する報告例はなく、また、ストレスに起因する症状又は疾患の予防及び/又は治療剤としてのタキシフォリンの使用に関する報告例もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8-275752号公報
【特許文献2】特開平11-49697号公報
【特許文献3】特表2000-136143号公報
【特許文献4】特開2003-95964号公報
【特許文献5】特開2008-230975号公報
【特許文献6】国際公開第2014/132982号
【特許文献7】国際公開第2017/199755号
【特許文献8】国際公開第2020/262703号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】опчоп. вён, 1998, 19
【非特許文献2】хйм-фарм. журн, 1995, 29, 9, 61-64
【非特許文献3】Int. J. Toxicol., 2015, 34(2), 162-181
【非特許文献4】J. Ethnopharmacol., 2018, 224, 261-272
【非特許文献5】J. Cell. Biochem., 2019, 120(1), 425-438
【非特許文献6】Acta Neuropathol. Commun., 2017, 5(1), 26, doi:10.1186/s40478-017-0429-5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような背景のもと、未だ安全かつ効果的な予防若しくは治療方法、又は軽減(若しくは改善)方法が確立されていないストレス、特に、精神的ストレスを標的とした新規な医薬品又は飲食品の開発が切望されている。
【0013】
本発明は、ストレスを軽減するための組成物を提供することを目的とする。また、本発明の更なる目的は、ストレスに起因する症状又は疾患の予防及び/又は治療(若しくは改善)に有効な医薬組成物又は食品組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、かかる状況下、鋭意検討を重ねた結果、タキシフォリン又はその塩が、優れたストレス軽減作用を示すことを見出すと共に、ストレスに起因する症状又は疾患の予防及び/又は治療(若しくは改善)において、有用且つ安全な医薬組成物又は食品組成物となり得ることを初めて見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]タキシフォリン又はその塩を有効成分として含有するストレスを軽減するための組成物。
[2]ストレスが、精神的ストレスである、上記[1]に記載の組成物。
[3]ストレスに起因する症状又は疾患の予防及び/又は治療用である、上記[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]ストレスに起因する症状又は疾患が、精神的疲労、自律神経障害、意欲喪失、全身倦怠感、及び注意集中力欠陥からなる群より選択される1種又は2種以上である、上記[3]に記載の組成物。
[5]さらに、ビタミン類及び賦形剤を含有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]医薬組成物である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の組成物(以下、「本発明の医薬組成物」又は「本発明の医薬」と称することもある。)。
[7]食品組成物である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の組成物(以下、「本発明の食品組成物」又は「本発明の飲食品」と称することもある。)。
[8]ストレス軽減に関連する機能の表示を付した、上記[7]に記載の組成物。
[9]機能の表示が、「ストレスを予防する」、「ストレスを軽減する」、「ストレスを緩和する」、「精神的疲労を軽減する」、「精神的疲労を回復させる」、「神経機能を高める」、「集中力を高める」、及び「やる気を起こさせる」からなる群より選択されるものである、上記[8]に記載の組成物。
[10]サプリメント、機能性食品、健康食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、又は栄養機能食品として調製されていることを特徴とする、上記[7]~[9]のいずれかに記載の組成物。
[11]錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、トローチ、又は液剤の形態で調製されていることを特徴とする、上記[6]~[10]のいずれかに記載の組成物。
[12]タキシフォリン又はその塩を有効成分として含有するストレス軽減剤。
[13]予防及び/又は治療的有効量のタキシフォリン又はその塩を対象に経口投与することを特徴とする、ストレスに起因する症状又は疾患の予防及び/又は治療方法。
[14]ストレスに起因する症状又は疾患が、精神的疲労、自律神経障害、意欲喪失、全身倦怠感、及び注意集中力欠陥からなる群より選択される1種又は2種以上である、上記[13]に記載の方法。
[15]ストレスに起因する症状又は疾患の予防及び/又は治療において使用するためのタキシフォリン又はその塩。
[16]ストレスに起因する症状の予防及び/又は改善において使用するための、タキシフォリン含有食品組成物。
[17]ストレスに起因する症状又は疾患の予防及び/又は治療において使用するための医薬の製造のためのタキシフォリン又はその塩の使用。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、安全な植物由来成分であるタキシフォリン又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする優れたストレス軽減剤(ストレスを軽減するための組成物)を提供することができる。また、本発明によれば、タキシフォリン又はその塩の有効量を対象に投与又は摂取することにより、ストレスを受けにくくなり、また、ストレスを受けてもストレスに起因する症状又は疾患(例えば、精神的疲労、神経障害、意欲喪失、注意集中力欠陥等)の発症を防止しやすいという予防的作用を有することから、ストレスに起因する症状又は疾患の予防及び/又は治療(若しくは改善)において有用かつ安全な医薬又は食品組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、試験例(脳活動テスト)の試験日の実施順序を時間で示す試験プロトコールの略図を示す。
【
図2】
図2の(1)は、本発明の組成物又はプラセボ摂取後における、Serial Threes減算課題の2分間の回答数と正答数を示し、(2)は、数字入力に要した時間(回答にかかる時間)と正解にかかる時間を示す。
【
図3】
図3の(1)は、本発明の組成物又はプラセボ摂取後における、Serial Sevens減算課題の2分間の回答数と正答数を示し、(2)は、数字入力に要した時間(回答にかかる時間)と正解にかかる時間を示す。
【
図4】
図4は、本発明の組成物又はプラセボ摂取後における、試験に要した時間(VAS所要時間)(1)と、参加者による精神的疲労度(精神的ストレス)の主観的評価結果(VASアンケート結果)(2)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において用いる用語を以下のように定義する。
【0019】
本明細書中、「タキシフォリン」とは、前記式(1)で示される化合物であり、ダフリアカラマツ又はシベリアカラマツの木質部から分離されるバイオフラボノイド複合体であるジクベルチンの有効成分の大部分(90%以上)を占めるフラボノイドの一種である。
【0020】
本明細書中、タキシフォリンの塩としては、医薬的に許容される塩基を作用させることによって容易に形成し得る塩が挙げられる。そのような塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0021】
シベリアカラマツ由来のタキシフォリンは、光学活性体((+)-タキシフォリン)である。本発明のタキシフォリンには、(+)-タキシフォリンだけでなく、その鏡像異性体である(-)-タキシフォリン、光学純度の低い化合物(光学的に純粋な両鏡像異性体を適当な配合比で混合したもの)、及びラセミ体も包含される。また、本発明のタキシフォリンは、ラベル体、すなわち、タキシフォリンを構成する1又は2以上の原子を同位元素(例えば、2H、3H、11C、13C、14C、15N、18O、18F、35S等)で標識された化合物も包含される。
【0022】
本発明のタキシフォリン又はその塩の光学活性体は、自体公知の方法により化学合成することにより、或いはダフリアカラマツ又はシベリアカラマツの木質部から抽出及び/又は精製することにより製造することができる。具体的には、光学活性な合成中間体を用いることにより、又は、最終物のラセミ体を常法(例えば、J.Jacquesらの、「Enantiomers, Racemates and Resolution, John Wiley And Sons,Inc.」等参照)に従って光学分割することにより光学活性体を得ることができる。本発明のタキシフォリン又はその塩としては、市販品の(+)-タキシフォリンをそのまま使用することができ、また、(+)-タキシフォリンを主成分として含有する市販品のカラマツ抽出物(ジクベルチン)を使用することもできる。
【0023】
本発明のタキシフォリン又はその塩は、結晶であってもよく、結晶形が単一であっても結晶形混合物であってもタキシフォリン又はその塩に包含される。結晶は、自体公知の結晶化法を適用して、結晶化することによって製造することができる。
【0024】
本発明のタキシフォリン又はその塩には、それらの溶媒和物も包含され得る。それらの溶媒和物とは、タキシフォリン又はその塩に、溶媒の分子が配位したものであり、水和物も包含される。例えば、タキシフォリン又はその塩の水和物、エタノール和物、ジメチルスルホキシド和物等が挙げられる。
【0025】
本明細書中、「ストレス」とは、生体の精神及び肉体に対する化学的、物理的、精神的、言語的又は労作的な臨時の負荷が加わったことによる生体の様々な応答を意味する。また、「ストレス」とは、生体内部からの恒常的な負荷が加わったことによる生体の様々な応答も意味する。本発明のストレスを軽減するための組成物は、特に限定されないが、精神的負荷から生じたストレス(すなわち、精神的ストレス)の対処に特に好適である。
【0026】
本明細書中、「ストレスを軽減する」とは、これから受けるストレスの程度を通常よりも低減させることを意味し、ストレスに起因する症状又は疾患を予防、緩和又は治癒させることも包含する。
【0027】
本明細書中、「ストレスに起因する症状又は疾患」とは、ストレスによって起こる体調不良を意味し、具体的には、例えば、精神的疲労、自律神経障害、意欲喪失、全身倦怠感、及び注意集中力欠陥からなる群より選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0028】
本明細書中、「自律神経障害」とは、精神的ストレスや過労により交感神経と副交感神経の2つのバランスが崩れた状態を意味し、それにより、疲れやすい、めまい、ふらつき、のぼせ、冷え、緊張、頭痛、耳鳴り、動悸、便秘、下痢、生理不順、口や喉の不快感、頻尿、残尿感、発汗、肩凝り等の症状、イライラや不安、うつ状態、記憶力や集中力の低下、感情の起伏が激しくなる等の精神症状が随伴する。「自律神経障害」は、「自律神経失調症」ともいわれる。
【0029】
本明細書中、「予防」には、疾患の発症の防止、疾患の発症の遅延、及び病態発生の防止が含まれる。「予防的有効量」とは、予防目的を達成するに足る有効成分の用量をいう。
【0030】
本明細書中、「治療」には、疾患の治癒、疾患の病態(例えば、1つ又は複数の症状)の改善、及び疾患(の重篤度)の進展の抑制が含まれる。「治療的有効量」とは、治療目的を達成するに足る有効成分の用量をいう。従って、「改善」は、「治療」に包含される概念である。
【0031】
本明細書中、「対象」とは、疾患又は疾患の病態を予防及び/又は治療(若しくは改善)するために必要な有効量の有効成分を含有する医薬又は食品を投与又は摂食させる対象を意味する。当該「対象」としては、ヒト又は非ヒト動物(特に哺乳動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル等))が挙げられる。
【0032】
本発明の医薬組成物(又は本発明の医薬)
後述する試験例に示されるように、タキシフォリンは、優れたストレス軽減作用を示すことから、タキシフォリン又はその塩、或いはそれを有効成分として含有する医薬組成物は、ストレスに起因する症状又は疾患の予防及び/又は治療用の医薬として好適に使用することができる。
【0033】
本発明の医薬は、タキシフォリン又はその塩のみからなる医薬、或いはタキシフォリン又はその塩と医薬上許容される担体等を配合した医薬のいずれでもよい。本発明の医薬は、その予防的有効量又は治療的有効量を対象に経口投与することができる。
【0034】
医薬上許容される担体としては、賦形剤(例えば、デンプン、乳糖、砂糖、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等)、結合剤(例えば、デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク等)、崩壊剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、タルク等)、溶剤(例えば、注射用水、生理的食塩水、リンゲル液、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油、綿実油、菜種硬化油等)、溶解補助剤(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、トレハロース、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等)、懸濁化剤(例えば、アラビアゴム、トラガント、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等)、界面活性剤(例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン、ポリソルベート類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等)、コーティング基材(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール、D-ソルビトール、ブドウ糖等)、緩衝剤(例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等)、増粘剤(例えば、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポビドン等)、防腐剤(例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等)、抗酸化剤(例えば、亜硫酸塩等)、着色剤(例えば、水溶性食用タール色素(例えば、食用赤色2号及び3号、食用黄色4号及び5号、食用青色1号及び2号等の食用色素)、水不溶性レーキ色素(例えば、前記水溶性食用タール色素のアルミニウム塩等)、天然色素(例えば、β-カロチン、クロロフィル、ベンガラ等))、甘味剤(例えば、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム、ステビア等)等が挙げられる。
【0035】
本発明の医薬組成物は、上記諸成分を混合した後、混合物を自体公知の手段に従い、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、散剤、顆粒剤、細粒剤、トローチ、液剤(シロップ剤、乳剤、懸濁剤を含む)等の経口投与用の製剤とすることができる。
【0036】
錠剤、顆粒剤、細粒剤の形状の医薬組成物に関しては、味のマスキング、光安定性の向上、外観の向上或いは腸溶性等の目的のため、前記コーティング基材を用いて自体公知の方法でコーティングしてもよい。
【0037】
本発明の医薬中のタキシフォリン又はその塩の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して、約1~100重量%、好ましくは、約5~100重量%、より好ましくは、約10~100重量%である。
【0038】
タキシフォリン又はその塩の投与量(すなわち、予防的有効量又は治療的有効量)は、投与対象、疾患、症状、剤形、投与ルート等により異なるが、例えば、ヒトの場合、成人の患者(体重約60kg)に経口投与する場合、1日あたり、有効成分であるタキシフォリンに換算すると通常10~10000mg、好ましくは30~1000mg、より好ましくは50~500mgを、1日1回から数回に分けて投与することができ、食前、食後、食間を問わない。投与期間は特に限定されない。
【0039】
タキシフォリン又はその塩は、単独、又はストレス軽減作用を示す公知の他の薬剤等と組み合わせて使用することができる。他の薬剤との併用により、タキシフォリン又はその塩のストレスに起因する症状又は疾患に対する予防及び/又は治療効果を増強することが可能である。他の薬剤としては、抗不安薬(例えば、クロルジアゼポキシド、オキサゾラム、ジアゼパム等)、抗うつ薬(例えば、アモキサピン、 ノルトリプチリン、 アミトリプチリン、トリミプラミン、イミプラミン、クロミプラミン、ドスレピン、 ロフェプラミン、マプロチリン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、デュロキセチン等)、カフェイン、ビタミン類(例えば、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシンアミド、パントテン酸、ビタミンB12、ビタミンE、ビオチン、ビタミンC等)等が挙げられ、中でも、ビタミン類が好ましく、優れた抗酸化作用を示し、且つ副作用のないビタミンCが特に好ましい。
【0040】
他の薬剤(併用薬)の投与時期は限定されず、これらを対象に対し、タキシフォリン又はその塩と同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。また、タキシフォリン又はその塩と併用薬とを組み合わせて含有する単一の製剤として投与することもできる。
【0041】
併用薬の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、タキシフォリン又はその塩と併用薬の配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、併用薬の種類等に応じて適宜選択することができる。
【0042】
本発明の食品組成物
以下、本明細書中、タキシフォリン又はその塩、或いはそれを有効成分として含有する食品組成物を「本発明の食品組成物」と称することもある。
本発明の食品組成物は、タキシフォリン又はその塩のみからなるもの、或いはタキシフォリン又はその塩と食品添加物等を配合したもののいずれでもよい。本発明の食品組成物としては、タキシフォリン又はその塩を含有し、かつ、対象が経口的に摂取し得るものであればよく、食品組成物の種類、形状等に特に制限はない。また、後述する試験例に示されるように、タキシフォリンは、優れたストレス軽減作用を示すことから、本発明の食品組成物は、ストレスに起因する各種症状の予防及び/又は改善用途等に好適に使用することができる。
【0043】
本発明の食品組成物としては、例えば、ドロップ、キャンディー、ラムネ、グミ、チューインガム等の菓子類;クッキー、クラッカー、ビスケット、ポテトチップス、パン、ケーキ、チョコレート、ドーナツ、プリン、ゼリー等の洋菓子;煎餅、羊羹、大福、おはぎ、饅頭、カステラ等の和菓子;アイスクリーム、アイスキャンディー、シャーベット、ジェラート等の冷菓;食パン、フランスパン、クロワッサン等のパン類;うどん、そば、中華麺、きしめん等の麺類;かまぼこ、ちくわ、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品;ハム、ソーセージ、ハンバーグ、コーンビーフ等の畜肉製品;塩、胡椒、みそ、しょう油、ソース、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、甘味料(例えば、砂糖、ハチミツ、粉末あめ、水あめ、ジャム、マーマレード等)、辛味料(例えば、からし、コショウ等)等の調味類;明石焼き、たこ焼き、もんじゃ焼き、お好み焼き、焼きそば、焼きうどん等の鉄板焼き食品;チーズ、バター、マーガリン、ヨーグルト等の乳製品;納豆、厚揚げ、豆腐、こんにゃく、団子、漬物、佃煮、餃子、シューマイ、コロッケ、サンドイッチ、ピザ、ハンバーガー、サラダ等の各種総菜;ビーフ、ポーク、チキン等の畜産物;海老、帆立、蜆、昆布等の水産物;野菜・果実類、植物、酵母、藻類等を粉末にした各種粉末;油脂類・香料類(バニラ、柑橘類、かつお等)を粉末固形化したもの;飲料等が挙げられる。
【0044】
飲料としては、スープ、味噌汁等の飲食品;インスタントコーヒー、インスタント紅茶、インスタントミルク、インスタントスープ、インスタント味噌汁等の粉末飲食品;ウイスキー、バーボン、スピリッツ、リキュール、ワイン、果実酒、日本酒、中国酒、焼酎、ビール、アルコール度数1%以下のノンアルコールビール、発泡酒、酎ハイ等のアルコール飲料;果汁(例えば、リンゴ、ミカン、ブドウ、バナナ、ナシ、ウメの果汁等)入り飲料、野菜汁(例えば、トマト、ニンジン、セロリ、キュウリ、スイカの野菜汁等)入り飲料、果汁及び野菜汁入り飲料、清涼飲料水、牛乳、豆乳、乳飲料、ドリンクタイプのヨーグルト、コーヒー、ココア、茶飲料(例えば、紅茶、緑茶、麦茶、玄米茶、煎茶、玉露茶、ほうじ茶、ウーロン茶、ウコン茶、プーアル茶、ルイボス茶、ローズ茶、キク茶、ハーブ茶(例えば、ミント茶、ジャスミン茶)等)、栄養ドリンク、スポーツ飲料、ミネラルウォーター等の非アルコール飲料等が挙げられる。
【0045】
このような食品組成物としての好適な例としては、例えば、ゼリー、茶飲料、アルコール飲料、ドロップ、キャンディー、ラムネ、クッキー、クラッカー、ビスケット、チョコレート、チーズ、バター、マーガリン、チューインガム等が挙げられる。
【0046】
また、本発明の食品組成物は、機能性食品、健康食品、特定保健用食品、特別用途食品(例えば、病者用食品)、サプリメント等として調製されてもよく、特定保健用食品、特別用途食品、又はサプリメントとして調製されるのが好ましい。
【0047】
本発明の食品組成物の形状としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、散剤、顆粒剤、細粒剤、トローチ、又は液剤(シロップ剤、乳剤、懸濁剤を含む)等が挙げられ、錠剤又はカプセル剤が好ましい。
【0048】
本発明の食品組成物としては、特に錠剤、又はカプセル剤の形状の特定保健用食品、特別用途食品、又はサプリメントであるのが好ましい。
【0049】
本明細書において、サプリメントとは、栄養素等を補うための栄養補助食品、栄養機能食品等を意味するだけではなく、健康の保持、回復、増進等のために役立つ機能(特に、ストレスに起因する各種症状の予防及び/又は改善機能)等を有する健康補助食品、健康機能食品等をも意味する。
【0050】
本発明の食品組成物は、例えば、公知の方法によって食品中にタキシフォリン又はその塩を添加することによって製造することができる。具体的には、例えば、錠剤の食品組成物は、例えば、タキシフォリン又はその塩、及び、賦形剤(例えば、デンプン、乳糖、白糖、マンニトール等)、甘味剤、着香剤等の材料を添加、混合し、打錠機等で圧力をかけて錠剤の形状に成形することにより製造することができる。必要に応じて、その他の材料(例えば、ビタミンC等のビタミン類、鉄等のミネラル類、食物繊維等の他の添加物)を添加することもできる。カプセル剤の食品組成物は、例えば、タキシフォリン又はその塩を含有する液状、懸濁状、のり状、粉末状、又は顆粒状の食品組成物をカプセルに充填するか、又はカプセル基剤で被包成形して製造することができる。
【0051】
本発明の食品組成物には、本発明の効果を阻害しない限り、通常用いられる食品素材、食品添加物、各種の栄養素、ビタミン類、風味物質(例えば、チーズやチョコレート等)等に加え、生理学的に許容される担体等を配合することができる。生理学的に許容される担体等としては、慣用の各種有機或いは無機担体物質が用いられ、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、甘味剤、防腐剤、抗酸化剤、増粘剤、乳化剤等が挙げられる。また食品添加物としては、着色剤、甘味剤、防腐剤、抗酸化剤、着香剤等が挙げられる。さらに、その他の材料、例えば、鉄等のミネラル類、ペクチン、カラギーナン、マンナン等の食物繊維等を含有していてもよい。
【0052】
賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、緩衝剤、増粘剤、着色剤、甘味剤、防腐剤、抗酸化剤としては、それぞれ前記した本発明の医薬に用いられるものと同様のものが挙げられる。
【0053】
ビタミン類としては、水溶性であっても脂溶性であってもよく、例えば、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシンアミド、パントテン酸、ビタミンB12、ビタミンE、ビオチン又はビタミンC等が挙げられ、中でも、優れた抗酸化作用を示し、且つ副作用のないビタミンCが好ましい。
【0054】
錠剤、顆粒剤、細粒剤の形状の食品組成物に関しては、味のマスキング、光安定性の向上、外観の向上或いは腸溶性等の目的のため、コーティング基材を用いて自体公知の方法でコーティングしてもよい。そのコーティング基材としては、前記した本発明の医薬に用いられるものと同様のものが挙げられ、同様にして実施することができる。
【0055】
本発明の食品組成物中のタキシフォリン又はその塩の含有量は、食品組成物全体に対して約0.1~50重量%、好ましくは、約0.5~30重量%、より好ましくは、約1~20重量%である。
【0056】
このようにして得られる食品組成物は、安全であるので、対象、特に好ましくはヒトに対して継続的に与えることができる。
【0057】
本発明の食品組成物の摂取量は、タキシフォリン又はその塩のストレスを軽減し得る有効量、或いはストレスに起因する各種症状の予防及び/又は改善する有効量の範囲内であればよい。例えば、本発明の食品組成物をストレス軽減目的で成人に摂取させる場合、摂取させる対象、摂取形態、摂食量等によっても異なるが、タキシフォリン又はその塩の摂取量として、一般的に1日あたり、有効成分であるタキシフォリンに換算すると通常10~10000mg、好ましくは30~1000mg、より好ましくは50~500mgを、1日1回から数回に分けて摂取することができる。また、嗜好性や摂食量に影響を与えずに効果が発現するという観点からも、上記の摂取量が好ましい。対象が他の動物の場合も、同様の量を摂取することができる。
【0058】
さらに、本発明の食品組成物は、それのみで使用してもよいが、前記した他の薬剤(併用薬)、ストレス軽減効果を示す他の食品(例えば、前記した特許文献1~6等に記載の食品等)等と組み合わせて使用してもよい。他の薬剤や食品との組み合わせによって、ストレスに起因する各種症状の予防及び/又は改善効果等をより高めることができる。
【0059】
また、本発明の食品組成物には、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、保健機能食品、ストレス低減表示を付した食品、又は特別用途食品(例えば、病者用食品)のような分類のものも包含される。ストレス低減表示としては、例えば、「ストレスを予防する」、「ストレスを軽減する」、「ストレスを緩和する」、「精神的疲労を軽減する」、「精神的疲労を回復させる」、「神経機能を高める」、「集中力を高める」、「やる気を起こさせる」旨の表示等が挙げられる。従って、本発明の食品組成物は、例えば、タキシフォリン又はその塩を含み、ストレスを低減するためのものである旨、ストレスに起因する各種症状を予防及び/又は改善するためのものである旨等の表示を付した飲食品である。
【0060】
ここで、これら食品組成物に付される機能表示は、製品の本体、容器、包装、説明書、添付文書、又は宣伝物のいずれかにされてなることができる。
【実施例0061】
以下に、試験例及び製剤例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、試験例及び製剤例により限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。また、本発明において使用する試薬や装置、材料等は特に言及されない限り、商業的に入手可能である。
【0062】
以下の試験例は、無作為化並行群間プラセボ対照二重盲検試験計画に従って行われた。タキシフォリン含有組成物(試験組成物)及びプラセボ(対照組成物)として、それぞれ下表1に記載の組成を有する錠剤が投与されるように、参加者を無作為に割り付けた。
【0063】
【0064】
以下の試験例(脳活動テスト)には、20~26歳の健常な男女28名が参加した。
【0065】
試験例:脳活動テスト
(1)方法
全てのテストはコンピューター上で、
図1のプロトコールに従って実施された。連続的な認知要求課題の間に、遂行の速度、正確さ及び精神的疲労を測定する約10分間評価の4回反復からなる。このバッテリーの各約10分間サイクルは、2種の連続減算課題(Serial Threes-2分間及びSerial Sevens-2分間)、迅速視覚情報処理課題(Rapid Visual Information Processing (RVIP)-5分間)及び視覚的アナログ精神的疲労尺度を含む。個々の課題を以下に記載する。
【0066】
(i)Serial Threes減算課題(2分):
参加者に、コンピューターに示された900から999のランダムな開始数字から3ずつ引いていくよう命じる。コンピューターの数字キーを用いて、可能な限り速く及び可能な限り正確にそれらの回答を入力するよう、参加者に指示する。開始数字は、参加者が最初の回答を入力すると、スクリーンから消去される。参加者によるその後の3つの数字の回答がそれぞれ、スクリーン上に示される。参加者は、各回答の終わりを示すためにエンターキーを押し、スクリーンから3つの数字を消去する。測定項目は、回答数、正答数、誤答数、正答率、数字の入力し直し回数、回答にかかる時間、及び正解にかかる時間とした。なお、回答となる数字の入力はエンターキーを押して確定するまで、何度でも入力し直すことができ、入力し直した回数は数字の入力し直し回数としてカウントした。回答にかかる時間は回答から次の回答までの時間(エンターキーを押す間の時間、すなわち数字入力に要した時間を表す。正誤問わない)で、正解にかかる時間は正答を入力するのにかかった時間を示す。
【0067】
(ii)Serial Sevens減算課題(2分):
この課題は、参加者に7を引くよう求める以外はSerial Threes減算課題と同一である。
【0068】
(iii)迅速視覚情報処理課題(RVIP-5分):
RVIPは、毎分100個の速度で画面上に1つずつ表示される1~9の数字のうち、公差を2とする3連続の等差数列が表示された際に指定されたエンターキーを押す。RVIPの測定項目は、正答数、誤答数、正答率、見逃し数(公差を2とする3連続の等差数列が表示されたがエンターキーを押さなかった数)、及び反応時間(公差を2とする3連続の等差数列が画面表示されてからエンターキーを押すまでの時間)とした。
【0069】
(iv)「精神的疲労」視覚的アナログ尺度(VAS):
参加者は、精神的疲労の主観的な感情を、「疲れを全く感じない最良の感覚」から「何もできないほど疲れきった最悪の感覚」までをスコア化(0~100)して、視覚的アナログ尺度で自己評価する。
【0070】
統計分析:主要評価項目は、脳活動テストの成績及び精神的疲労の主観的評価とした。
【0071】
精神的疲労:精神的疲労の主観的評価に対する時間の主効果が認められ、精神的疲労は経時的に増加した(
図4の(2)参照)。
【0072】
(2)結果
図2、3の結果から、タキシフォリン含有組成物(試験組成物)摂取群の方が、プラセボ摂取群よりも、計算テストであるSerial Threes減算課題及びSerial Sevens減算課題ともに回答数及び正答数が増加し、回答にかかる時間(入力時間)も短縮されることが確認された。
図4の(1)によれば、タキシフォリン含有組成物(試験組成物)摂取群の方が、プラセボ摂取群よりもVAS(Visual Analog Scale;視覚的アナログ尺度)所要時間が短いことから、意思決定速度が向上することが確認された。また、
図4の(2)の結果から、タキシフォリン含有組成物(試験組成物)摂取群の方が、プラセボ摂取群よりも、脳活動テストの3回目と4回目のVASスコアの差(精神的疲労度のVASの変化量)が小さくなる傾向が観測された。
【0073】
以上の試験結果から、本発明の組成物は、ストレスに起因する精神的疲労を予防及び/又は改善することが確認された。
【0074】
製剤例1(錠剤の製造)
1)(+)-タキシフォリン 120 g
2)デンプン 420 g
3)結晶セルロース 600 g
4)ビタミンC 300 g
5)菜種硬化油 60 g
1000錠 計 1500 g
1)、2)、4)の全量及び400gの3)を水で練合し、真空乾燥後、整粒を行う。この整粒末に200gの3)及び60gの5)を混合し、打錠機により打錠する。このようにして、1錠あたり(+)-タキシフォリン120mgを含有する錠剤1000錠を得る。
【0075】
製剤例2(カプセル剤の製造)
1)(+)-タキシフォリン 50 mg
2)微粉末セルロース 10 mg
3)乳糖 19 mg
4)ステアリン酸マグネシウム 1 mg
計 80 mg
1)、2)、3)及び4)を混合して、ゼラチンカプセルに充填する。
本発明によれば、安全な植物由来成分であるタキシフォリン又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする優れたストレス軽減剤(ストレスを軽減するための組成物)を提供することができる。また、本発明によれば、タキシフォリン又はその塩の有効量を対象に投与又は摂取することにより、ストレスを受けにくくなり、また、ストレスを受けてもストレスに起因する症状又は疾患(例えば、精神的疲労、神経障害、意欲喪失、注意集中力欠陥等)の発症を防止しやすいという予防的作用を有することから、ストレスに起因する症状又は疾患の予防及び/又は治療(若しくは改善)において有用かつ安全な医薬又は食品組成物を提供することができる。