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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062268
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】装着具
(51)【国際特許分類】
   A41B 11/00 20060101AFI20230426BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20230426BHJP
   A41D 13/06 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
A41B11/00 D
A41D13/05 143
A41D13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172140
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】592154411
【氏名又は名称】岡本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】吹上 正人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 絢沙
【テーマコード(参考)】
3B011
3B018
【Fターム(参考)】
3B011AA15
3B011AB08
3B011AC17
3B018AA02
3B018AB02
3B018AC01
3B018AD01
(57)【要約】
【課題】 本発明の課題は、下腿部に対する圧迫効果を著しく低下させることなく下腿部に過度な締付けを感じさせない装着具を提供することにある。
【解決手段】 本発明に係る装着具100は、下腿前側被覆部150および下腿後側被覆部160を備える。下腿前側被覆部は、装着具の装着状態において装着者の下腿部の前側を覆う。下腿後側被覆部は、下腿前側被覆部よりも着圧が高い高着圧部162を含む。そして、下腿後側被覆部は、装着具の装着状態において装着者の下腿部の後側を覆う。高着圧部には、低伸張領域LERおよび高伸張領域HERが含まれる。低伸張領域は、帯状の部位であって、少なくとも2つ存在し、装着具の装着状態において装着者の下腿部の膝側から踵側に向かう方向に沿って延びている。高伸張領域は、低伸張領域よりも高い伸張性を有する。そして、高伸張領域は、各低伸張領域を分断するように各低伸張領域の間を通っている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着された状態において膝下から踵上までの部位である下腿部の前側を覆う下腿前側被覆部と、
前記下腿前側被覆部よりも着圧が高い高着圧部を含み、装着された状態において前記下腿部の後側を覆う下腿後側被覆部と
を備え、
前記高着圧部は、装着された状態において前記下腿部の膝側から踵側に向かう方向に沿って延びる少なくとも2つの帯状の低伸張領域と、前記低伸張領域よりも高い伸張性を有し、前記低伸張領域を分断するように前記低伸張領域の間を通る高伸張領域とを含む
装着具。
【請求項2】
前記高着圧部は、装着された状態において少なくとも前記下腿部の踵側部位を覆う
請求項1に記載の装着具。
【請求項3】
前記低伸張領域および前記高伸張領域それぞれは、後側中心線に対して対称となる形状を有している
請求項1または2に記載の装着具。
【請求項4】
前記高着圧部の着圧より着圧が低く、装着された状態において前記高着圧部の膝側に隣接して配設される膝側隣接部と、
前記高着圧部の着圧より着圧が低く、装着された状態において前記踵の上側部分を覆う踵上部被覆部と
をさらに備え、
前記高伸張領域は、前記膝側隣接部から前記踵上部被覆部まで延びている
請求項1から3のいずれか1項に記載の装着具。
【請求項5】
前記高着圧部は、装着された状態において前記下腿部の踵側部位を覆う第1高着圧領域と、装着時において前記下腿部の膝側部位を覆う第2高着圧領域とを含み、
前記第1高着圧領域の着圧は、前記第2高着圧領域の着圧よりも高い
請求項1から4のいずれか1項に記載の装着具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴下(ソックスやハイソックス等)、ストッキング、タイツ等、少なくとも下腿部(膝下から踵上までの部位)に装着され得る装着具に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に「装着された状態において一方の側面から後側を通り他方の側面に向ってU字を描くように形成される複数の圧迫領域が形成される靴下等」が提案されている(例えば、特表2019-518878号公報参照)。そして、このような形状の圧迫領域を有する靴下等は、下腿部全体を圧迫して静脈還流特性を改善する効能を有するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2019-518878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような靴下等では周方向全面に亘って圧迫領域が形成されているため、その靴下等の装着者の中には下腿部に過度な締付けを感じて不快感を示す者もいることが懸念される。
【0005】
本発明の課題は、下腿部に対する圧迫効果を著しく低下させることなく下腿部に過度な締付けを感じさせない装着具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1局面に係る装着具は、下腿前側被覆部および下腿後側被覆部を備える。下腿前側被覆部は、装着具が装着された状態において装着者の下腿部の前側(脛側)を覆う。なお、ここにいう「下腿部」は、人間(装着者)の膝下から踵上までの部位である。すなわち、ここにいう「下腿部」には、膝や踵は含まれない。下腿後側被覆部は、下腿前側被覆部よりも着圧が高い高着圧部を含む。そして、下腿後側被覆部は、装着具が装着された状態において装着者の下腿部の後側(脹脛側)を覆う。なお、下腿前側被覆部と下腿後側被覆部とは、隣接して筒状の被覆部を形成していてもよいし、他の部位を挟んで筒状の被覆部を形成していてもよい。高着圧部には、低伸張領域および高伸張領域が含まれる。低伸張領域は、帯状の部位であって、少なくとも2つ存在し、装着具が装着された状態において装着者の下腿部の膝側から踵側に向かう方向に沿って延びている。なお、この低伸張領域は、直帯状(直線的に延びる帯状)であることが好ましい。また、高伸張領域は、直線状(直線的に延びる線状)であることが好ましい。高伸張領域は、低伸張領域よりも高い伸張性を有する。そして、高伸張領域は、各低伸張領域を分断するように各低伸張領域の間を通っている。
【0007】
この装着具では、上述の通り、下腿前側被覆部よりも着圧が高い高着圧部(すなわち圧迫領域)が下腿後側被覆部に含まれている。また、高着圧部には、低伸張領域および高伸張領域が含まれている。そして、帯状の低伸張領域が少なくとも2つ形成されており、その低伸張領域は、装着具が装着された状態において装着者の下腿部の膝側から踵側に向かう方向に沿って延びている。一方、高伸張領域は、各低伸張領域を分断するように各低伸張領域の間を通っている。このため、この装着具は、下腿部に対する圧迫効果を著しく低下させることなく下腿部に過度な締付けを感じさせなくすることができる。
【0008】
本発明の第2局面に係る装着具は、第1局面に係る装着具であって、高着圧部は、装着具が装着された状態において少なくとも下腿部の踵側部位を覆う。
【0009】
このため、この装着具では、装着者の下腿部の踵側部位を圧迫することができる。
【0010】
本発明の第3局面に係る装着具は、第1局面または第2局面に係る装着具であって、低伸張領域および高伸張領域それぞれは、後側中心線に対して対称となる形状を有している。なお、ここいう「後側中心線」とは、脹脛被覆側が表に向くように装着具を平置きにした状態で装着具の上辺(上端の辺)の中心点と下辺(下端の辺)の中心点とを結んだ線である。
【0011】
このため、この装着具は、下腿三頭筋の内側と外側に同程度の圧迫を加えることができる。
【0012】
本発明の第4局面に係る装着具は、第1局面から第3局面のいずれか一局面に係る装着具であって、膝側隣接部および踵上部被覆部をさらに備える。膝側隣接部は、高着圧部の着圧より着圧が低く、装着具が装着された状態において高着圧部の膝側に隣接して配設される。なお、この膝側隣接部は、履き口部であってもよい。踵上部被覆部は、高着圧部の着圧より着圧が低く、装着具が装着された状態において装着者の踵の上側部分を覆う。高伸張領域は、膝側隣接部から踵上部被覆部まで延びている。
【0013】
この装着具では、上述の通り、高着圧部の着圧より着圧が低い膝側隣接部が設けられており、高伸張領域が膝側隣接部から踵上部被覆部まで延びている。このため、この装着具は、足を通しやすくすることができると共に、装着者の下腿部を効果的に圧迫することができる。
【0014】
本発明の第5局面に係る装着具は、第1局面から第4局面のいずれか一局面に係る装着具であって、高着圧部には、第1高着圧領域および第2高着圧領域が含まれる。第1高着圧領域は、装着具が装着された状態において下腿部の踵側部位を覆う。第2高着圧領域は、装着具が装着された状態において下腿部の膝側部位を覆う。そして、第1高着圧領域の着圧は、第2高着圧領域の着圧よりも高い。
【0015】
この装着具では、装着具が装着された状態において第1高着圧領域が下腿部の踵側部位を覆い、第2高着圧領域が下腿部の膝側部位を覆う。そして、第1高着圧領域の着圧は、第2高着圧領域の着圧よりも高い。このため、この装着具は、高着圧部の着圧を均一にする場合に比べて下腿三頭筋を動かしやすくすることができる。したがって、この装着具は、先の場合に比べて歩行動作等の動作を行いやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る高着圧ソックスの装着時の側面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る高着圧ソックスの背面図に、高着圧ソックスの低伸張領域および高伸張領域の展開図を重ね合わせた図である。
図3】変形例(A)に係る高着圧ソックスの装着時の側面図である。
図4】変形例(A)に係る高着圧ソックスの背面図に、高着圧ソックスの低伸張領域および高伸張領域の展開図を重ね合わせた図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<本発明の実施の形態に係る下腿部装着具の構成>
本発明の実施の形態に係る下腿部装着具は、少なくとも下腿部に装着される装着具であって、例えば、靴下(ソックス,ハイソックス)、カーフスリーブ(ふくらはぎ用スリーブ)、レギンス(legging、レギング)、ストッキング、タイツ、スエットパンツ、シェイプウェア、シェイピング下着、ボディスーツ、ユニタード等である。なお、ここにいう「下腿部」とは、膝下から踵上までの部位である。本発明の実施の形態に係る下腿部装着具の一例として、図1図6に示される高着圧ソックス100が挙げられる。以下、この高着圧ソックス100について詳述すると共に、本発明において許容され得る構成を説明する。
【0018】
本発明の実施の形態に係る高着圧ソックス100は、図1に示されるように側面視において略「く」の字状を呈しており、図1および図2に示されるように、主に、足被覆部110、踵被覆部120、踵上部被覆部130、足首被覆部140、下腿前側被覆部150、下腿後側被覆部160および履き口部170から形成されている。なお、説明の便宜上、図1および図2において上下方向、左右方向および前後方向が規定されている。以下、これらの方向を用いて高着圧ソックス100の構成を説明する場合がある。
【0019】
なお、下腿部装着具がカーフスリーブである場合、足被覆部110および踵被覆部120は存在しない。また、下腿部装着具がレギンス、ストッキング、タイツ、スエットパンツ、シェイプウェア、シェイピング下着、ボディスーツ、ユニタードである場合、履き口部170の代わりに大腿部被覆部が設けられ、さらに大腿部被覆部の上側にパンティー部等が追加されることになる。なお、大腿部は、膝上から股下までの部位であり、パンティー部は、股下から腰の領域の一部あるいは全部を覆う部位である。
【0020】
足被覆部110は、足首から趾先までの部位を覆うための袋状の部位である。なお、この足被覆部110には、趾袋部が形成されてもよい。
【0021】
踵被覆部120は、踵を覆うための部位であって足被覆部110の後端から後側に向かって延びている。
【0022】
踵上部被覆部130は、踵の上部すなわちアキレス腱の部位を覆うための部位であって踵被覆部120の後側上端から上方に向かって延びている。
【0023】
足首被覆部140は、足首を覆うための部位であって足被覆部110の前側上端から上方に向かって延びている。なお、この足首被覆部140は、下腿前側被覆部150の下側に位置しており、下腿後側被覆部160の下端部に対向している。そして、この足首被覆部140は、足被覆部110、踵被覆部120、踵上部被覆部130、下腿前側被覆部150、下腿後側被覆部160の低着圧部162および履き口部170の着圧よりも着圧が高くなるように形成されている(すなわち、この足首被覆部140は、高着圧部位として形成されている。)。また、この足首被覆部140は、その着圧が下腿後側被覆部160の高着圧部161の着圧よりも僅かに高くなるように形成されている。
【0024】
下腿前側被覆部150は、下腿部の前側を覆うための部位(高着圧ソックス100を平置きにした状態(高着圧ソックス100を、図1に示される折り目箇所FLに沿って折り畳んで置いた状態。なお、折り目箇所は左右対称に存在する。)で折り目より脛側の部位)であって足首被覆部140の前側上端から上方に向かって延びている。なお、この下腿前側被覆部150は、下腿後側被覆部160と共に筒状の下腿被覆部を形成している。この筒状の下腿被覆部は、足首被覆部側から履き口部側に向かって徐々に幅が広くなるテーパー形状とされるのが好ましい。また、下腿被覆部と足首被覆部140とを合わせた部位の上下方向の全長を25mm以上210mm以下の範囲内とすることが好ましい。最も圧迫すべき下腿部の最小囲近傍を確実に覆うことができるからである。また、かかる場合、足首被覆部140によって足首を周方向に締め付けることができ、適度な着圧効果を得ることができる。
【0025】
下腿後側被覆部160は、下腿部の後側を覆うための部位(高着圧ソックス100を平置きにした状態で折り目より脹脛側の部位)であって足首被覆部140の後側上端から上方に向かって延びている。この下腿後側被覆部160は、図1および図2に示されるように、高着圧部161および低着圧部162から形成されている。低着圧部162は、主に下腿三頭筋の上側部位を覆うための部位であって、図1および図2に示されるように高着圧部161の上側に形成されている。高着圧部161は、主に下腿三頭筋の下側部位を覆うための部位であって、図1および図2に示されるように低着圧部162の下側に形成されている。そして、この高着圧部161は、足被覆部110、踵被覆部120、踵上部被覆部130、下腿前側被覆部150、低着圧部162および履き口部170の着圧よりも着圧が高くなるように形成されている。また、この高着圧ソックス100において、高着圧部161と低着圧部162との境界線は、図1および図2に示されるように、側面側において前側から後側に向かうに従って下方へ直線的に傾斜する斜線と、背面側において左右方向(幅方向)に直線的に延びる水平線とからなっている。
【0026】
また、高着圧部161は、図1および図2に示されるように、7本の直帯状の低伸張領域LERおよび6本の直線状の高伸張領域HERから形成されている。このため、高着圧部161の全体的な着圧は、足首被覆部140の着圧よりも僅かに低くなっている。また、この高伸張領域HERの存在によって着用者の不快な締め付け感が軽減される。低伸張領域LERおよび高伸張領域HERは、図1および図2に示されるように、周方向に交互になるように(近隣の高伸張領域HERの間に線状の低伸張領域LERが挟まるように)形成されている。言い換えると、低伸張領域LERおよび高伸張領域HERは、後側中心線Axに沿って縦縞模様を形成するように配設されている。このため、低伸張領域LERおよび高伸張領域HERは、下腿三頭筋の筋繊維に沿って延びていることになる。したがって、高着圧部161は、筋肉の伸縮を妨げず、着用者に対して不快な締め付け感を感じさせないようにすることができる。また、図1および図2から明らかなように、低伸張領域LERは、その幅が高伸張領域HERの幅よりも広くなるように形成されている。すなわち、低伸張領域LERを太帯状と表現した場合、高伸張領域HERを細帯状と表現することもできる。また、その言葉通り、高伸張領域HERは、その伸張性が低伸張領域LERの伸張性よりも高くなるように形成されている。高着圧ソックス100が人の下肢に装着された状態において、低伸張領域LERおよび高伸張領域HERは、下腿三頭筋の膝側から踵側に向かう方向に沿って延びる。また、この高着圧ソックス100が人の下肢に装着された状態において、低伸張領域LERおよび高伸張領域HERそれぞれは、下腿部の後側中心線Axに対して対称となる形状とされている。また、この高着圧部161において、異なる着圧を有する複数の領域が形成されてもよい。また、高着圧部161は、踵側から履き口側に向かうに従って着圧が低くなるように形成されてもよい。また、足首被覆部140が足首に対して10の着圧力を付与する際、下腿被覆部が下腿最大囲部に対して7の着圧力を付与するのが好ましい。同着圧比をこの比とすることによって効果的な着圧効果を得ることができるからである。なお、なお、下腿部装着具がレギンス、ストッキング、タイツ、スエットパンツ、シェイプウェア、シェイピング下着、ボディスーツ、ユニタードである場合、足首、下腿最大囲部および大腿部(太腿)に対する着圧比を10:7:4とすることによって、同効果を期待することができる。なお、上述の着圧力はザルツマン社製の着圧測定機MST-MKIVを用いて測定される。
【0027】
履き口部170は、高着圧ソックス100を履きやすくすると共に高着圧ソックス100をズレ落ちにくくすることを目的として形成された部位であって、図1および図2に示されるように、下腿前側被覆部150および下腿後側被覆部160で形成される筒体の上側に形成されている。
【0028】
<本発明の実施の形態に係る高着圧ソックスの具体的な形成方法>
高着圧ソックス100は、様々な方法で形成され得るが、特に編地を編成することによって形成されることが好ましい。高着圧ソックス100が編地を編成することによって形成される場合、足被覆部110、踵被覆部120、踵上部被覆部130、下腿前側被覆部150および履き口部170は、伸縮性に富む編地で形成される。伸縮性に富む編地は、例えば、綿、麻、毛、絹などの天然繊維、またはナイロン、ポリエステルなどの合成繊維、もしくはこれらの混紡糸などから編成することができる。
【0029】
足被覆部110は、踵被覆部120と一連に編成されてもよいし、踵被覆部120と別に編成されてもよい。なお、足被覆部110と踵被覆部120との間に数コース平編み等を編成することによって足被覆部110の長さを調整することができる。
【0030】
踵上部被覆部130は、踵被覆部120と一連に編成されることが好ましい。なお、編み機の設計上、踵上部被覆部130と踵被覆部120との間に数コース平編み等を編成してもよい。また、踵上部被覆部130の上下方向の長さは35mm以上110mm以下の範囲内であることが好ましく、周方向の長さは4mm以上20mm以下の範囲内であることが好ましい。踵上部被覆部130の形状は、上下方向に長い長方形であってもよいし、踵被覆部側から履き口部側に向かうに従って先細りになる三角形であってもよいし、円弧側が踵被覆部側に向く半円形状であってもよい。踵上部被覆部130は、その着圧が足首被覆部140や高着圧部161の着圧よりも低くなるように編成される。アキレス腱は身体の表層に存在するため、踵上部被覆部130の着圧が過度に高くなると、アキレス腱の動作を阻害するおそれがあるからである。
【0031】
足首被覆部140は、高着圧の編地に編成されることが好ましい。高着圧の編地に編成する方法としては、例えば、平編みとタック編みを交互に編成する方法が挙げられる。
【0032】
下腿前側被覆部150および下腿後側被覆部160の低着圧部162は、伸縮力に富む平編みやメッシュ編みなどで編成されることが好ましい。
【0033】
下腿後側被覆部160の高着圧部161において、低伸張領域LERは、タック編みなどの伸びにくい編み方を採用したり、カットボスや度目の調整、ゴム糸の送り量の調整などの技術的手段を適宜組み合わせたりすることによって編成することができる。一方、高伸張領域HERは、平編みやメッシュ編みなど、低伸張領域LERと比べて高い伸張性を有するように編成される。高伸張領域HERは、上下方向に沿って一連に編成されるのが好ましい。また、この高伸張領域HERの編地は、下腿後側被覆部160の低着圧部162および/または踵被覆部120や踵上部被覆部130を構成する編地と同一の編地とされてもよい。また、高着圧部161の着圧を調整するために、上下方向に沿って高伸張領域HERと低伸張領域LERとが交互に配設されるように(破線または点線状(高伸張領域HER→低伸張領域LER→高伸張領域HER→低伸張領域LER・・・))に編成することができる。また、高伸張領域HERを同コース数で編成することもできるが、高伸張領域HERのコース数を変化させることによって高着圧部161の着圧を調整することも可能である。例えば、高着圧部161の履き口部側の高伸張領域HERを5コースで編成し、足被覆部110に向かうに従って高伸張領域HERのコース数を4コース、3コースと減らして編成することが考えられる。また、高伸張領域HERを、後側中心線Axに対して左右対称に編成することによって、高伸張領域HERの周方向の着圧を均等に弱めることができる。なお、ここにいう後側中心線Axとは、脹脛被覆側が表に向くように高着圧ソックス100を平置きにした状態で高着圧ソックス100の履き口部170の上辺(上端の辺)の中心点と、足被覆部110の下辺(下端の辺)の中心点とを結んだ線である。また、下腿三頭筋の筋肥大箇所に高伸張領域HERを多く編成することも考えられる。かかる場合、高伸張領域HERは、後側中心線Axに対して左右非対称に編成されることになる。下腿三頭筋の筋肥大箇所は高着圧ソックス100の伸縮の度合いで高着圧になる。このため、高着圧部161において高伸張領域HERを広く形成することによって、下腿部を必要以上に締め付けることなく、着用者に対して不快な締め付け感を感じにくくさせることができる。
【0034】
履き口部170は、ゆったりとした伸縮性に富む編地で編成されることが好ましい。履き口部170をこのように編成することによって、締め付けによる不快感を低減あるいは解消することができるからである。履き口部170の肌接触側(内周側)は、少なくとも一部において表糸としてナイロンを用いて編成される。履き口部170には裏糸は使用されない。履き口部170をこのように編成することによって、履き口部170の厚みが薄くなり、ゆったりとして伸びやすくすることができる。履き口部170の編成方法は、上記方法に限られず従来技術を各種組み合わせることで実現されてもよい。
【0035】
<変形例>
(A)
先の実施の形態に係る高着圧ソックス100では下腿後側被覆部160が高着圧部161および低着圧部162から形成されていたが、図3および図4に示されるように下腿後側被覆部160aが第1高着圧部161aおよび第2高着圧部162aから形成されてもよい。なお、ここで、第1高着圧部161aは、その着圧が第2高着圧部162aの着圧よりも高くなるように形成されている。高着圧ソックス100aがこのように設計されることによって、装着者は歩行時の疲労軽減効果を得ることができる。また、かかる場合において、第1高着圧部161aを、ヒラメ筋を周囲から覆う形状に編成することが好ましい。第1高着圧部161aをこのように編成することによって、第1高着圧部161aとヒラメ筋との位置ズレを抑制することができ、延いては装着者に対して歩行等による筋ポンプを効果的に付与し、歩行時の疲労軽減効果が得られる。ところで、図3および図4に示されるように、本変形例に係る高着圧ソックス100aが人の下肢に装着された状態において、第1高着圧部161aの高伸張領域HER1および低伸張領域LER1ならびに第2高着圧部162aの高伸張領域HER2および低伸張領域LER2は、下腿三頭筋の膝側から踵側に向かう方向に沿って履き口部170の下辺(下端の辺)から足被覆部110または踵上部被覆部130の上辺(上端の辺)まで延びている。すなわち、ここで、第1高着圧部161aの高伸張領域HER1および低伸張領域LER1ならびに第2高着圧部162aの高伸張領域HER2および低伸張領域LER2は、履き口部170の下辺から延び、踵被覆部120または踵上部被覆部130の上辺にまで達している。
【0036】
また、上述の高着圧ソックス100では第1高着圧部161aの高伸張領域HER1の上に第2高着圧部162aの高伸張領域HER2を形成し、第1高着圧部161aの低伸張領域LER1の上に第2高着圧部162aの低伸張領域LER2を形成していたが、第1高着圧部161aの高伸張領域HER1の上に第2高着圧部162aの低伸張領域LER2を形成し、第1高着圧部161aの低伸張領域LER1の上に第2高着圧部162aの高伸張領域HER2を形成していてもよい。
【0037】
(B)
先の実施の形態に係る高着圧ソックス100では高着圧部161と低着圧部162との境界線が、側面側において前側から後側に向かうに従って下方へ直線的に傾斜する斜線と、背面側において左右方向(幅方向)に直線的に延びる水平線とからなっていたが、高着圧部161と低着圧部162との境界線は、これに限られず、例えば、水平線のみからなっていてもよいし、U字形状とされてもよいし、V字形状とされてもよいし、下側に向かって湾曲する円弧線とされてもよい。
【0038】
(C)
先の実施の形態に係る高着圧ソックス100では低伸張領域LERおよび高伸張領域HERが後側中心線Axに沿って縦縞模様を形成するように配設されていたが、低伸張領域LERおよび高伸張領域HERは、後側中心線Axから離れるに従って下方または上方に僅かに傾斜する斜め縞模様を形成するように配設されてもよいし、僅かに湾曲形状を呈していてもよい。
【0039】
(D)
先の実施の形態に係る高着圧ソックス100では足首被覆部140が高着圧部位として形成されていたが、足首被覆部140が低着圧部位として形成されていてもよい。
【0040】
(E)
先の実施の形態に係る高着圧ソックス100では左右3本の低伸張領域LERが踵被覆部130の上端にまで達していたが、同低伸張領域LERが踵被覆部130の上端にまで達していなくてもよい。
【符号の説明】
【0041】
100 高着圧ソックス(装着具)
120 踵被覆部
150 下腿前側被覆部
160 下腿後側被覆部
161 高着圧部
161a 第1高着圧部
162a 第2高着圧部
170 履き口部(膝側隣接部)
Ax 後側中心線
HER,HER1,HER2 高伸張領域
LER,LER1,LER2 低伸張領域

図1
図2
図3
図4