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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006227
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
H02G3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108725
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 心優
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
(72)【発明者】
【氏名】黄 強翔
【テーマコード(参考)】
5G357
【Fターム(参考)】
5G357DA06
5G357DB03
5G357DD01
5G357DD14
(57)【要約】
【課題】複数の線状伝送部材を扁平に保つ配線部材を、容易に製造できるようにすること目的とする。
【解決手段】配線部材10は、第1シート材12と、第1シート材に重ね合わされた第2シート材14と、第1シート材12と第2シート材14との間に位置する固定線状伝送部材20及び遊離線状伝送部材30と、を備え、第2シート材14が、第1固定部16と前記第1固定部から離れた第2固定部17とで、第1シート材12に固定されており、固定線状伝送部材20が、第1固定部16と第2固定部17との間で、第1シート材12に固定されており、遊離線状伝送部材30が、固定線状伝送部材20に並列配置された状態で、第1シート材12と第2シート材14との間に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シート材と、
前記第1シート材に重ね合わされた第2シート材と、
前記第1シート材と前記第2シート材との間に位置する固定線状伝送部材及び遊離線状伝送部材と、
を備え、
前記第2シート材が、第1固定部と前記第1固定部から離れた第2固定部とで、前記第1シート材に固定されており、
前記固定線状伝送部材が、前記第1固定部と前記第2固定部との間で、前記第1シート材に固定されており、
前記遊離線状伝送部材が、前記固定線状伝送部材に並列配置された状態で、前記第1シート材と前記第2シート材との間に配置されている、配線部材。
【請求項2】
請求項1に記載の配線部材であって、
前記固定線状伝送部材は、前記第1固定部と前記第2固定部との間で、互いに離れて並列状態で固定された第1固定線状伝送部材と第2固定線状伝送部材とを含み、
前記遊離線状伝送部材は、前記第1固定線状伝送部材と前記第2固定線状伝送部材との間に配置された中間遊離線状伝送部材を含む、配線部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配線部材であって、
前記第1シート材と前記第2シート材との剛性が異なる、配線部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記固定線状伝送部材は、前記遊離線状伝送部材よりも太い、配線部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記固定線状伝送部材は、前記第2シート材に接触している、配線部材。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記固定線状伝送部材の表面素材は、前記第1シート材に対する融着による剥離強度が、前記第1シート材に対する融着による前記遊離線状伝送部材の剥離強度よりも大きいか同じ程度の性質を有する、配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電線の絶縁被覆とシート材とが直接溶着されて固定されたワイヤーハーネスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-179630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シート材によって複数の電線を容易に扁平に保てるようにすることが要請されている。
【0005】
そこで、本開示は、複数の線状伝送部材を扁平に保つ配線部材を、容易に製造できるようにすること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線部材は、第1シート材と、前記第1シート材に重ね合わされた第2シート材と、前記第1シート材と前記第2シート材との間に位置する固定線状伝送部材及び遊離線状伝送部材と、を備え、前記第2シート材が、第1固定部と前記第1固定部から離れた第2固定部とで、前記第1シート材に固定されており、前記固定線状伝送部材が、前記第1固定部と前記第2固定部との間で、前記第1シート材に固定されており、前記遊離線状伝送部材が、前記固定線状伝送部材に並列配置された状態で、前記第1シート材と前記第2シート材との間に配置されている、配線部材である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数の線状伝送部材を扁平に保つ配線部材を、容易に製造できるようにすること目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は配線部材を示す平面図である。
図2図2図1のII-II線断面図である。
図3図3は配線部材の製造方法例を示す説明図である。
図4図4は配線部材の製造方法例を示す説明図である。
図5図5は配線部材の製造方法例を示す説明図である。
図6図6は変形例に係る配線部材を示す断面図である。
図7図7は他の変形例に係る配線部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の配線部材は、次の通りである。
【0011】
(1)第1シート材と、前記第1シート材に重ね合わされた第2シート材と、前記第1シート材と前記第2シート材との間に位置する固定線状伝送部材及び遊離線状伝送部材と、を備え、前記第2シート材が、第1固定部と前記第1固定部から離れた第2固定部とで、前記第1シート材に固定されており、前記固定線状伝送部材が、前記第1固定部と前記第2固定部との間で、前記第1シート材に固定されており、前記遊離線状伝送部材が、前記固定線状伝送部材に並列配置された状態で、前記第1シート材と前記第2シート材との間に配置されている、配線部材である。
【0012】
この配線部材によると、遊離線状伝送部材は、固定線状伝送部材に並列配置されることで、当該固定線状伝送部材によって経路規制された状態で、第1シート材と第2シート材との間に配置される。このため、遊離線状伝送部材を第1シートに固定しなくても、第1シート材と第2シート材との間で経路規制できる。これにより、複数の線状伝送部材を扁平に保つ配線部材を、容易に製造できる。
【0013】
(2)(1)の配線部材であって、前記固定線状伝送部材は、前記第1固定部と前記第2固定部との間で、互いに離れて並列状態で固定された第1固定線状伝送部材と第2固定線状伝送部材とを含み、前記遊離線状伝送部材は、前記第1固定線状伝送部材と前記第2固定線状伝送部材との間に配置された中間遊離線状伝送部材を含んでもよい。これにより、第1固定線状伝送部材と第2固定線状伝送部材との間に、中間遊離線状伝送部材を収めることができる。
【0014】
(3)(1)又は(2)の配線部材であって、前記第1シート材と前記第2シート材との剛性が異なっていてもよい。この場合、第1シート材及び第2シート材のうち剛性が高い方に対して他方を張った状態とすることができる。これにより、第1シート材と第2シート材との間に第1固定線状伝送部材と第2固定線状伝送部材とを並んだ状態に保持できる。
【0015】
(4)(1)から(3)のいずれか1つの配線部材であって、前記固定線状伝送部材は、前記遊離線状伝送部材よりも太くてもよい。これにより、比較的太い固定線状伝送部材によって、細い遊離線状伝送部材を経路規制し易い。
【0016】
(5)(1)から(4)のいずれか1つの配線部材であって、前記固定線状伝送部材は、前記第2シート材に接触していてもよい。これにより、固定線状伝送部材に沿って遊離線状伝送部材を経路規制し易い。
【0017】
(6)(1)から(5)のいずれか1つの配線部材であって、前記固定線状伝送部材の表面素材は、前記第1シート材に対する融着による剥離強度が、前記第1シート材に対する融着による前記遊離線状伝送部材の剥離強度よりも大きいか同じ程度の性質を有していてもよい。これにより、固定線状伝送部材を第1シート材に強固に融着できる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
[実施形態]
以下、実施形態に係る配線部材について説明する。図1は配線部材10を示す平面図である。図2図1のII-II線断面図である。
【0020】
配線部材10は、第1シート材12と、第2シート材14と、固定線状伝送部材20と、遊離線状伝送部材30とを備える。
【0021】
第1シート材12は、固定線状伝送部材20及び遊離線状伝送部材30の配線経路に沿った形状に形成されてもよい。ここでは、第1シート材12は、一方向に長い長方形状に形成されている。第1シート材は曲っていてもよい。第1シート材は、曲線状に曲る部分を有していてもよい。第1シート材は、分岐部分を有していてもよい。
【0022】
第1シート材12を構成する材料は特に限定されるものではないが、第1シート材12は、PVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)などの樹脂を含む材料によって形成されてもよい。第1シート材12は、内部が一様に埋ったシート材であってもよいし、不織シート等であってもよい。第1シート材12は、金属などの材料を含むこともあり得る。第1シート材12は、厚み方向において容易に曲る柔軟性を有していてもよい。第1シート材12は、単層であってもよいし、複数層積層されていてもよい。複数層積層されている場合、例えば、第1シート材12は、樹脂層と樹脂層とが積層されていることが考えられる。より具体的には、例えば、第1シート材12は、内部が一様に埋った樹脂シート材と不織シートとが積層されていることが考えられる。例えば、内部が一様に埋った樹脂シート材は、固定線状伝送部材20を融着可能なシート材であってもよい。不織シートは、内部が一様に埋った樹脂シート材の一部が溶けて繊維間に充填された状態で、当該樹脂シート材に接合された層であってもよい。この場合、内部が一様に埋った樹脂シート材に固定線状伝送部材20が固定される。また例えば、第1シート材12は、樹脂層と金属層とが積層されていることが考えられる。
【0023】
第2シート材14は、第1シート材12に重ね合される。第2シート材14は、上記第1シート材12と同じ材料のシート材によって構成されてもよい。
【0024】
第2シート材14が、第1固定部16と第1固定部16から離れた第2固定部17とで、第1シート材12に固定されている。本実施形態では、第1シート材12及び第2シート材14は、同じ長方形状である。第1シート材12の一側部と第2シート材14の一側部とが重ね合わされた状態で固定された部分が第1固定部16である。第1シート材12の他側部と第2シート材14の他側部とが重ね合わされた状態で固定された部分が第2固定部17である。第1シート材12と第2シート材14とは、例えば、超音波溶着、熱溶着等の溶着によって固定されてもよい。第1シート材12と第2シート材14とは、その他、粘着剤、接着剤等によって固定されてもよい。第1固定部16及び第2固定部17は、第1シート材12と第2シート材14とが連続して固定された部分であってもよいし、断続的に固定された部分であってもよい。
【0025】
本実施形態では、第1シート材12と第2シート材14とは、同じ長方形状であり、その両側部同士が連続的に固定されている。第1固定部16と第2固定部17との間では、第1シート材12と第2シート材14とは固定されていない。このため、第1シート材12と第2シート材14との間であって、第1固定部16と第2固定部17との間に、上記固定線状伝送部材20と遊離線状伝送部材30を配置可能な空間を形成することができる。
【0026】
なお、第1シート材12と第2シート材14とが同じ形状であることは必須ではない。例えば、第1シート材12よりも小さい第2シート材14が、第1シート材12の部分的な領域に対して重ね合わされた状態で、互いに離れた第1固定部及び第2固定部で、当該第1シート材12に固定されてもよい。
【0027】
第1シート材12と第2シート材14とは、同程度の剛性であってもよいし、異なる剛性を有していてもよい。剛性の違いは、シート材を構成する材料の違い(例えば、硬質PVC、軟質PVCの違い)、厚みの違い等によって設けられ得る。第1シート材12と第2シート材14との剛性が異なっていてもよい。例えば、第2シート材14が自信で面状に広がる状態を保てる剛性を有しており、第1シート材12が容易に曲る柔軟性を有していてもよい。この場合、第1シート材12に、第2シート材14を後述する第1固定部16と第2固定部17とで固定すると、当該第1固定部16と第2固定部17との間で、第1シート材12が張った状態に保たれるようにすることができる。
【0028】
固定線状伝送部材20と、遊離線状伝送部材30とは、第1シート材12と第2シート材14との間に位置する部材である。
【0029】
ここで、固定線状伝送部材20及び遊離線状伝送部材30を構成する線状伝送部材は、電気又は光を伝送する線状の部材である。線状伝送部材は、伝送線本体22と被覆層24とを含む。例えば、線状伝送部材は、伝送線本体22としての芯線と芯線の周囲の被覆層24とを有する一般電線であってもよいし、シールド線、ツイスト線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。
【0030】
電気を伝送する線状伝送部材としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材の一部等は、信号又は電力を空間に対して送る又は空間から受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。
【0031】
また、線状伝送部材は、単一の線状物であってもよいし、複数の線状物の複合物(ツイスト線、複数の線状物を集合させてこれをシースで覆ったケーブル等)であってもよい。
【0032】
本実施形態では、2つの固定線状伝送部材20と、3つの遊離線状伝送部材30とが、第1シート材12と第2シート材14との間で並列状態に配置される例が示される。なお、固定線状伝送部材20及び遊離線状伝送部材30が、それらが並列配置される以外の部分で曲っていたり、分岐したりしていてもよい。
【0033】
固定線状伝送部材20は、第1固定線状伝送部材20Aと、第2固定線状伝送部材20Bとを含む。以下の説明において、必要に応じて、固定線状伝送部材20は、第1固定線状伝送部材20Aと、第2固定線状伝送部材20Bとに区別されることがある。第1固定線状伝送部材20Aと、第2固定線状伝送部材20Bとが、上記第1固定部16と第2固定部17との間で、互いに離れて並列状態で、第1シート材12に固定される。
【0034】
固定線状伝送部材20を第1シート材12に固定する構成は任意である。固定線状伝送部材20を第1シート材12に固定する固定態様としては、接触部位固定であってもよいし、非接触部位固定であってもよいし、両者が併用されていてもよい。ここで接触部位固定とは、固定線状伝送部材20と第1シート材12とが接触する部分がくっついて固定されているものである。また、非接触部位固定とは、接触部位固定でない固定態様であり、例えば、縫糸、粘着テープなどが、固定線状伝送部材20を第1シート材12に向けて押え込んだ状態に維持するものである。
【0035】
接触部位固定の態様として、接触部位間接固定であってもよいし、接触部位直接固定であってもよいし、異なる領域で両者が併用されていてもよい。ここで接触部位間接固定とは、固定線状伝送部材20と第1シート材12とが、その間に設けられた接着剤、粘着剤、両面粘着テープなどを介して間接的にくっついて固定されているものである。また接触部位直接固定とは、固定線状伝送部材20と第1シート材12とが別に設けられた接着剤等を介さずに直接くっついて固定されているものである。接触部位直接固定では、例えば固定線状伝送部材20と第1シート材12とのうち少なくとも一方に含まれる樹脂が溶かされることによってくっついて固定されることが考えられる。
【0036】
係る接触部位直接固定の状態が形成されるに当たり、樹脂は、例えば、熱によって溶かされることも考えられるし、溶剤によって溶かされることも考えられる。つまり、接触部位直接固定の状態としては、熱による接触部位直接固定の状態であってもよいし、溶剤による接触部位直接固定の状態であってもよい。好ましくは、熱による接触部位直接固定の状態であるとよい。
【0037】
このとき接触部位直接固定の状態を形成する手段は特に限定されるものではなく、溶着、融着、溶接等の公知の手段を用いることができる。例えば、溶着によって熱による接触部位直接固定の状態を形成する場合、超音波溶着、加熱加圧溶着、熱風溶着、高周波溶着など種々の溶着手段を採用することができる。またこれらの手段によって接触部位直接固定の状態が形成されると、固定線状伝送部材20と第1シート材12とは、その手段による接触部位直接固定の状態とされる。具体的には、例えば、超音波溶着によって接触部位直接固定の状態が形成されると、固定線状伝送部材20と第1シート材12とは、超音波溶着による接触部位直接固定の状態とされる。
【0038】
以下では、固定線状伝送部材20と第1シート材12とが超音波溶着によって固定されることを前提とした説明がなされる。なお、超音波溶着箇所は、固定線状伝送部材20の長手方向に沿って連続的であってもよいし、断続的であってもよい。図1では、超音波溶着箇所40Pが固定線状伝送部材20の長手方向に沿って断続的に設けられる例が示される。
【0039】
遊離線状伝送部材30は、固定線状伝送部材20に並列配置された状態で、第1シート材12と第2シート材14との間に配置される。遊離線状伝送部材30は、第1シート材12に固定されていない。遊離線状伝送部材30は、第2シート材14にも固定されていない。遊離線状伝送部材30は、第1シート材12と第2シート材14との間で本配線部材10の厚み方向への移動が規制された状態で、固定線状伝送部材20に沿って配置されることから、当該固定線状伝送部材20に沿うように経路規制される。
【0040】
本実施形態では、遊離線状伝送部材30は、第1固定線状伝送部材20Aと、第2固定線状伝送部材20Bとの間に配置された中間遊離線状伝送部材30Aを含む。ここでは、複数(3本)の遊離線状伝送部材30の全てが中間遊離線状伝送部材30Aである。中間遊離線状伝送部材30Aが、第1固定線状伝送部材20Aと、第2固定線状伝送部材20Bとの間に配置されるため、中間遊離線状伝送部材30Aが第1固定線状伝送部材20Aと第2固定線状伝送部材20Bとの外側方にはみ出難くなる。このため、中間遊離線状伝送部材30Aを、所定の経路に沿ってより確実に維持し易い。
【0041】
なお、第1固定線状伝送部材20Aと第2固定線状伝送部材20Bとの間で、複数の遊離線状伝送部材30が互いに交差せずに並列状態で配置されている必要は無い。第1固定線状伝送部材20Aと第2固定線状伝送部材20Bとの間で、複数の遊離線状伝送部材30が重なったり、交差したりしつつ、第1固定線状伝送部材20Aと第2固定線状伝送部材20Bとの間の空間に延在していてもよい。
【0042】
上記固定線状伝送部材20は、遊離線状伝送部材30よりも太くてもよい。固定線状伝送部材20が太ければ、第1シート材12から大きく突出することができ、固定線状伝送部材20と第2シート材14との隙間を小さくできる。これにより、固定線状伝送部材20によって、遊離線状伝送部材30の経路をより確実に規制できる。
【0043】
また、比較的細い遊離線状伝送部材30よりも、比較的太い固定線状伝送部材20を、第1シート材12に固定する作業の方が容易である可能性もある。
【0044】
また、固定線状伝送部材20は、第2シート材14に接触した状態となっていてもよい。これにより、遊離線状伝送部材30が固定線状伝送部材20と第2シート材14との間を通って移動し難くなり、遊離線状伝送部材30の経路がより一定に保たれ易い。
【0045】
また、固定線状伝送部材20は第1シート材12に固定され、遊離線状伝送部材30は第1シート材12に固定されないことから、遊離線状伝送部材30が、固定線状伝送部材20と比較して、第1シート材12に固定困難、例えば、融着困難である場合に適用されてもよい。
【0046】
例えば、固定線状伝送部材20である電線の表面素材と、遊離線状伝送部材30の表面素材とが、第1シート材12のうち固定面となる表面素材に対する関係において、次の性質を有する場合である。この性質は、第1シート材12に対する融着による固定線状伝送部材20の剥離強度が、第1シート材12に対する融着による遊離線状伝送部材30の剥離強度よりも大きい場合である。剥離強度は、次のようにして評価されてもよい。例えば、固定線状伝送部材20及び遊離線状伝送部材30を第1シート材12に対して同じ条件で融着する。例えば、同じ加圧力、加圧時間、振動条件で、固定線状伝送部材20及び遊離線状伝送部材30を第1シート材12に対して超音波融着する。そして、第1シート材12に融着された固定線状伝送部材20及び遊離線状伝送部材30に対して、同じ種類の剥離試験(例えばJIS K6854で規定されたいずれかの試験に準じた試験)を実施して剥離強度を評価する。例えば、第1シート材12に対して固定線状伝送部材20又は遊離線状伝送部材30を180゜折返して引張る180゜剥離試験、又は、第1シート材12と固定線状伝送部材20又は遊離線状伝送部材30を融着面に対して互いに反対の垂直方向に引っ張るT型剥離試験等を実施する。固定線状伝送部材20及び遊離線状伝送部材30に対して同種の試験を実施することで、剥離強度の大小が評価される。
【0047】
かかる剥離強度の差異は、第1シート材12のうち固定面の構成材料と、固定線状伝送部材20及び遊離線状伝送部材30の表面材料の組合せによってもたらされうる。例えば、第1シート材12の固定面がPVCを含む材料によって形成されている場合において、固定線状伝送部材20の被覆がPVCを含む材料によって形成され、遊離線状伝送部材30の被覆がPVCを含まない樹脂、例えば、PP(ポリプロピレン)等のオレフィン系樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)、フッ素樹脂等を含む材料によって形成されている場合が考えられる。
【0048】
上記配線部材10の製造方法例について説明する。
【0049】
図3に示すように、第1シート材12の固定対象面に固定線状伝送部材20を配置する。ここでは、第1固定線状伝送部材20Aと第2固定線状伝送部材20Bとを、間隔を空けて並列状態で配置する。この状態で、超音波溶着用のホーン100とアンビル102とで、第1シート材12と固定線状伝送部材20とを挟み込み、超音波振動エネルギーを付与する。これにより、固定線状伝送部材20の被覆の表面と第1シート材12の固定対象面の表面の少なくとも一方の樹脂を溶かす。すると、超音波溶着箇所40Pによって、固定線状伝送部材20が第1シート材12に固定される。
【0050】
次に、図4に示すように、第1シート材12の固定対象面に遊離線状伝送部材30を配置する。第1シート材12には固定線状伝送部材20が固定されていることから、第1シート材12上において、少なくとも一方側で、固定線状伝送部材20によって遊離線状伝送部材30の経路が規制される。ここでは、第1固定線状伝送部材20Aと第2固定線状伝送部材20Bとの間に、遊離線状伝送部材30が配置されるため、このため、遊離線状伝送部材30は、第1固定線状伝送部材20Aと第2固定線状伝送部材20Bとの間で経路規制される。
【0051】
そして、図5に示すように、第1シート材12に第2シート材14を重ね合せる。この状態で、超音波溶着用のホーン100とアンビル102とで、第1シート材12の各側部と第2シート材14の各側部とを挟み込む。この際、超音波溶着用のホーン100とアンビル102とによる固定箇所の内側に固定線状伝送部材20が固定され、遊離線状伝送部材30は、当該固定線状伝送部材20の内側に配置されるように位置規制されている。このため、固定線状伝送部材20及び遊離線状伝送部材30が超音波溶着用のホーン100とアンビル102との間に挟込まれ難い。そして、第1シート材12と第2シート材14との重ね合せ箇所に超音波振動エネルギーを付与する。これにより、第1シート材12の各側部と第2シート材14の各側部とが超音波溶着される。
【0052】
このように構成された配線部材10によると、遊離線状伝送部材30は、固定線状伝送部材20に並列配置されることで、当該固定線状伝送部材20によって経路規制された状態で、第1シート材12と第2シート材14との間に配置される。このため、遊離線状伝送部材30を第1シート材12に固定しなくても、第1シート材12と第2シート材14との間で経路規制される。これにより、固定線状伝送部材20及び遊離線状伝送部材30を含む複数の線状伝送部材を扁平に保つ配線部材を容易に製造できる。
【0053】
第1固定線状伝送部材20Aと第2固定線状伝送部材20Bとの間に、中間遊離線状伝送部材30Aを配置することで、それらの間に中間遊離線状伝送部材を収めて、より確実に経路規制することができる。
【0054】
また、第1シート材12と第2シート材14との剛性が異なれば、第1シート材12及び第2シート材14のうち剛性が高い方に対して他方を張った状態とすることができる。これにより、第1シート材12と第2シート材14との間に固定線状伝送部材20と遊離線状伝送部材30とを並んだ状態に保持し易い。
【0055】
また、固定線状伝送部材20が第2シート材14に接触していれば、固定線状伝送部材20に沿って遊離線状伝送部材30を経路規制し易い。上記のように、第1シート材12及び第2シート材14のうち剛性が高い方に対して他方を張った状態となっていれば、固定線状伝送部材20を第2シート材14に接触した状態に保ち易い。
【0056】
また、固定線状伝送部材20が遊離線状伝送部材30よりも太ければ、固定線状伝送部材20によって遊離線状伝送部材30を経路規制し易い。
【0057】
ここで、例えば、配線部材10が異なる種類の電線を含む場合が考えられる。電線の種類は、被覆材料の違い、太さ等によって区別され得る。電線の種類が異なると第1シート材12に対する固定作業の条件、固定のし易さが異なる。例えば、電線の太さが異なると、超音波溶着を行う際の時間、加圧力等が異なる。また、電線の被覆がPVCとオレフィン系とで異なる場合も、溶着条件を変更することが考えられる。このように、電線の種類が異なると、溶着条件が異なるため、同時に溶着作業を行うことが困難となる。電線の種類別に溶着作業を行うと、溶着回数が多くなり、配線部材10の製造が面倒となる。
【0058】
そこで、本配線部材10のように、一部の固定線状伝送部材20を第1シート材12に固定し、他の一部の遊離線状伝送部材30を固定線状伝送部材20によって経路規制し、第1シート材12に固定しないようにすることで、融着回数を減らすことができ、配線部材10を容易に製造できるようになる。
【0059】
固定線状伝送部材20は、遊離線状伝送部材30よりも第1シート材12に強固に固定できるか容易に固定できることが好ましい。かかる観点からすると、固定線状伝送部材20の表面素材は、第1シート材12に対する融着による剥離強度が、第1シート材12に対する融着による遊離線状伝送部材30の剥離強度よりも大きいか同じ程度の性質を有するとよい。これにより、固定線状伝送部材20を第1シート材12に強固に融着できる。また、強固に固定された固定線状伝送部材20によって遊離線状伝送部材30の経路規制を行える。
【0060】
<変形例>
なお、本実施形態では、2本の固定線状伝送部材20が第1シート材12に固定される例が説明された。しかしながら、第1シート材12に固定される固定線状伝送部材は、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、全ての遊離線状伝送部材30が第1固定線状伝送部材20Aと第2固定線状伝送部材20Bとの間に配置される例が示された。しかしながら、遊離線状伝送部材30が第1固定線状伝送部材20Aと第2固定線状伝送部材20Bとの間に配置されることは必須ではない。例えば、図6にしめすように、遊離線状伝送部材30は、第1固定線状伝送部材20Aと第2固定線状伝送部材20Bとの間ではない外側に配置される外側遊離線状伝送部材30Bを含んでいてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、遊離線状伝送部材30は、固定線状伝送部材20よりも細い例が示されたが、遊離線状伝送部材30が固定線状伝送部材20よりも細いことは必須ではない。図7に示すように、遊離線状伝送部材30に対応する遊離線状伝送部材130は、第1固定線状伝送部材20A及び第2固定線状伝送部材20Bと同じ太さであってもよい。
【0063】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0064】
10 配線部材
12 第1シート材
14 第2シート材
16 第1固定部
17 第2固定部
20 固定線状伝送部材(20A 第1固定線状伝送部材、20B 第2固定線状伝送部材)
22 伝送線本体
24 被覆層
30、130 遊離線状伝送部材(30A 中間遊離線状伝送部材、30B 外側遊離線状伝送部材)
40P 超音波溶着箇所
100 ホーン
102 アンビル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7