(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062279
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】カチオン系アスファルト乳剤用添加剤
(51)【国際特許分類】
C08L 95/00 20060101AFI20230426BHJP
C08L 51/04 20060101ALI20230426BHJP
C08F 265/06 20060101ALI20230426BHJP
C09K 23/52 20220101ALI20230426BHJP
E01C 7/24 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
C08L95/00
C08L51/04
C08F265/06
B01F17/52
E01C7/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172154
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼御堂 成剛
【テーマコード(参考)】
2D051
4D077
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
2D051AE01
2D051AG01
4D077AB20
4D077DC04Z
4D077DC20Z
4D077DC32Z
4J002AG002
4J002BN121
4J002CH021
4J002EV256
4J002FA081
4J002FD316
4J002GL00
4J002HA06
4J026AA45
4J026BA05
4J026BA27
4J026BB04
4J026DA04
4J026DA07
4J026DA13
4J026DB03
4J026DB13
4J026DB24
4J026DB32
4J026EA08
4J026FA07
4J026GA08
(57)【要約】
【課題】カチオン系アスファルト乳剤に対して添加することで、施工後のアスファルト付着が抑制され、かつ乳剤中に凝集物が生じにくい、カチオン系アスファルト乳剤用添加剤の提供。
【解決手段】カチオン系アスファルト乳剤用添加剤は、重合体粒子を含み、前記重合体粒子は、アクリル系ゴムを含む。前記重合体粒子は、コア層と、該コア層の外側に位置するシェル層を含み、前記コア層が、前記アクリル系ゴムであり、前記シェル層は、非架橋の重合体から形成されるものであってよい。また、前記非架橋の重合体は、ガラス転移温度が50℃以上であってもよく、(ポリ)アルキレングリコール鎖を含んでよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン系アスファルト乳剤用添加剤であって、
前記添加剤は、重合体粒子を含み、
前記重合体粒子は、アクリル系ゴムを含む、添加剤。
【請求項2】
前記重合体粒子は、コア層と、該コア層の外側に位置するシェル層を含み、
前記コア層が、前記アクリル系ゴムであり、
前記シェル層は、非架橋の重合体から形成される、請求項1に記載の添加剤。
【請求項3】
前記非架橋の重合体は、ガラス転移温度が50℃以上である、請求項2に記載の添加剤。
【請求項4】
前記非架橋の重合体は、(ポリ)アルキレングリコール鎖を含む、請求項2又は3に記載の添加剤。
【請求項5】
前記重合体粒子中の前記アクリル系ゴムの含有量は50~80重量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の添加剤。
【請求項6】
前記重合体粒子は、体積平均粒子径が80~500nmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の添加剤。
【請求項7】
前記添加剤は、前記重合体粒子のラテックスである、請求項1~6のいずれか1項に記載の添加剤。
【請求項8】
アスファルト、水、カチオン系乳化剤、及び、請求項1~7のいずれか1項に記載の添加剤を含む、カチオン系アスファルト乳剤組成物。
【請求項9】
前記カチオン系アスファルト乳剤組成物中の前記添加剤の含有量は、前記重合体粒子の固形分換算で、1~50重量%である、請求項8に記載のカチオン系アスファルト乳剤組成物。
【請求項10】
アスファルト、水、及びカチオン系乳化剤を含むカチオン系アスファルト乳剤に、請求項1~7のいずれか1項に記載の添加剤を添加し、混合する工程を含む、カチオン系アスファルト乳剤組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項8又は9に記載のカチオン系アスファルト乳剤組成物から形成されたコート層。
【請求項12】
前記コート層がタックコート層である、請求項11に記載のコート層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン系アスファルト乳剤用添加剤、カチオン系アスファルト乳剤組成物、及び、コート層に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルトは一般的には加熱して液状にして使用されるが、加熱することなく、常温で使用できるように、アスファルトを水に乳化させた形態で利用することが知られている。このような乳化物はアスファルト乳剤と呼ばれている。
【0003】
アスファルト乳剤では、通常、乳化剤を含む水中に、アスファルトが微粒子状に分散している。アスファルト乳剤を散布又は塗布して使用すると、アスファルトが水から分離(分解)して、粘結性が生じ、強度を発現することとなる。
【0004】
アスファルト乳剤は、使用する乳化剤によって、カチオン系、アニオン系、又はノニオン系のアスファルト乳剤に分類される。
【0005】
カチオン系アスファルト乳剤の用途には、浸透用と混合用があり、浸透用のアスファルト乳剤としては、タックコートや、プライムコートとしての使用などが知られている。タックコートは、新たに敷設するアスファルト混合物層と、その下のアスファルト混合物層等との層間接着を行うか、あるいは、継ぎ目部や構造物との付着を改善するために使用される。また、プライムコートは、上層路盤の上に適用され、路盤を安定化させると共に、路盤とその上のアスファルト混合物層とのなじみを改善するために使用される。
【0006】
タックコート用のカチオン系アスファルト乳剤としては、日本工業規格JIS K 2208(2000)で規定された「PK-4」、プライムコート用のものとしては、同規格で規定された「PK-3」等がある。しかし、これらのアスファルト乳剤を用いて形成されたアスファルト被膜は、べたつきを有するため、特に、路面温度が高くなる夏場では、施工機械のタイヤなどにアスファルトが付着して、施工面の被膜が剥がれたり、タイヤに付着したアスファルトが施工現場以外の路面を汚すなどの問題があった。
【0007】
このようなアスファルト付着の問題を抑制したアスファルト乳剤として、日本アスファルト乳剤協会規格JEAAS2011に規定された、タイヤ付着抑制型アスファルト乳剤「PKM-T」がある。
【0008】
特許文献1では、カチオン系アスファルト乳剤に関するものではないが、アスファルトのべたつきを抑制するために、共役ジエン系重合体粒子と、アニオン系又はノニオン系の乳化剤と、アスファルトと、特定のシランカップリング剤と、エポキシ樹脂を含有するアスファルト乳剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したようにアスファルト乳剤には、一般に、施工後のアスファルト付着の問題があり、また、その問題を抑制したカチオン系アスファルト乳剤として「PKM-T」が知られている。しかし、アスファルト付着の問題は十分には解消されておらず、この点での改善が求められている。
【0011】
本発明者らが、カチオン系アスファルト乳剤におけるアスファルト付着の問題を解消することを目的に、特許文献1で開示されているような共役ジエン系重合体粒子をカチオン系アスファルト乳剤に添加したところ、乳剤中で凝集物が発生してしまうことが判明した。乳剤中に凝集物が含まれると、粘度が上昇し、タックコートやプライムコートとして散布又は塗布する時の作業性が低下する恐れがある。
【0012】
本発明は、上記現状に鑑み、カチオン系アスファルト乳剤に対して添加することで、施工後のアスファルト付着が抑制され、かつ乳剤中に凝集物が生じにくい、カチオン系アスファルト乳剤用添加剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、カチオン系アスファルト乳剤に対し、アクリル系ゴムを含む重合体粒子を添加することで、前記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0014】
すなわち本発明は、カチオン系アスファルト乳剤用添加剤であって、前記添加剤は、重合体粒子を含み、前記重合体粒子は、アクリル系ゴムを含む、添加剤に関する。
好ましくは、前記重合体粒子は、コア層と、該コア層の外側に位置するシェル層を含み、前記コア層が、前記アクリル系ゴムであり、前記シェル層は、非架橋の重合体から形成される。
好ましくは、前記非架橋の重合体は、ガラス転移温度が50℃以上である。
好ましくは、前記非架橋の重合体は、(ポリ)アルキレングリコール鎖を含む。
好ましくは、前記重合体粒子中の前記アクリル系ゴムの含有量は50~80重量%である。
好ましくは、前記重合体粒子は、体積平均粒子径が80~500nmである。
好ましくは、前記添加剤は、前記重合体粒子のラテックスである。
また本発明は、アスファルト、水、カチオン系乳化剤、及び、前記添加剤を含む、カチオン系アスファルト乳剤組成物にも関する。
好ましくは、前記カチオン系アスファルト乳剤組成物中の前記添加剤の含有量は、前記重合体粒子の固形分換算で、1~50重量%である。
さらに本発明は、アスファルト、水、及びカチオン系乳化剤を含むカチオン系アスファルト乳剤に、前記添加剤を添加し、混合する工程を含む、カチオン系アスファルト乳剤組成物の製造方法にも関する。
さらにまた本発明は、前記カチオン系アスファルト乳剤組成物から形成されたコート層にも関する。
好ましくは、前記コート層がタックコート層である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カチオン系アスファルト乳剤に対して添加することで、施工後のアスファルト付着が抑制され、かつ乳剤中に凝集物が生じにくい、カチオン系アスファルト乳剤用添加剤を提供することができる。
本発明に係る添加剤をアスファルト乳剤に対して添加、混合することで、施工後のアスファルト付着が抑制され、かつ組成物中に凝集物が生じにくく、散布又は塗布する時の作業性が良好な、アスファルト乳剤組成物を提供することが可能となる。
本発明に係るアスファルト乳剤組成物は、対象物に散布又は塗布することでコート層を形成することができ、該コート層は、該対象物に対する接着性、特にアスファルト混合物層に対する接着性が良好となり得る。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態に係るカチオン系アスファルト乳剤用添加剤は、少なくとも重合体粒子を含むものである。
【0017】
(重合体粒子)
前記重合体粒子は、少なくともアクリル系ゴムを含む。前記重合体粒子がアクリル系ゴムを含むことによって、当該重合体粒子をカチオン系アスファルト乳剤に添加してなるアスファルト乳剤組成物を施工した後のアスファルト付着が抑制され得る。加えて、該乳剤組成物中には凝集物が生じにくく、該乳剤組成物を散布又は塗布する時の作業性が良好になり得る。好適な態様によると、該乳剤組成物は、被着体、特にアスファルト混合物層に対する接着性が良好となり得る。
【0018】
前記アクリル系ゴムとは、アクリル系単量体を主成分とする合成ゴムのことをいう。
前記アクリル系単量体としては特に限定されないが、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニルなどのアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ベンジルなどの芳香環含有アクリレート;2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート;グリシジルアクリレート、グリシジルアルキルアクリレートなどのグリシジルアクリレート;アルコキシアルキルアクリレート等が挙げられる。なかでも、アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸ブチルが特に好ましい。
【0019】
前記アクリル系ゴムでは、前記アクリル系単量体以外の単量体を併用してもよいし、併用しなくともよい。当該他の単量体としては、例えば、メタクリル系単量体、スチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル;エチレン、プロピレン等のアルケン類等が挙げられる。
【0020】
前記アクリル系ゴム全体に対する前記アクリル系単量体の割合は50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましく、90重量%以上が特に好ましい。
【0021】
前記アクリル系ゴムは架橋構造を有するものである。架橋構造を導入するには、例えば、単量体成分を重合してアクリル系ゴムを合成する際に、多官能性単量体等の架橋性単量体を使用すればよい。
【0022】
前記多官能性単量体としては、例えば、アリル(メタ)アクリレート;アリルアルキル(メタ)アクリレート;アリルオキシアルキル(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の、(メタ)アクリル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレート類;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。好ましくはアリルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンであり、特に好ましくはアリルメタクリレートである。
【0023】
前記多官能性単量体の使用量は、公知の範囲内であってよく特に限定されないが、例えば、前記アクリル系ゴムを構成する単量体成分(多官能性単量体以外の単量体)の合計100重量部に対して、0.01~10重量部であってよく、好ましくは0.05~5重量部であり、より好ましくは0.1~3重量部である。
【0024】
前記アクリル系ゴムは、単一組成のゴムから構成されても良いし、互いに単量体及び/又は架橋性単量体の種類又は量が異なる複数種のゴムから構成されてもよい。
【0025】
(シェル層)
前記重合体粒子は、前記アクリル系ゴムのみから構成されるものであっても良い。しかし、カチオン系アスファルト乳剤に該重合体粒子を添加した時に凝集物が生じにくく、重合体粒子が乳剤中で均一に分散しやすいこと、また、乳剤組成物を施工した後のアスファルト付着がより抑制され得ることから、アクリル系ゴムをコア層とし、当該コア層の外側に位置するシェル層をさらに含むことが好ましい。当該シェル層は、ゴムではなく、非架橋の重合体から構成される。当該非架橋の重合体とは、架橋構造を含まない重合体のことを指す。
【0026】
前記シェル層は、重合体粒子の表面側に位置する重合体層のことを指し、グラフト層ともいう。シェル層は、コア層にグラフト結合していることが好ましい。しかし、前記シェル層の重合体には、コア層にグラフト結合していない重合体も包含される。
シェル層は、コア層の表面を被覆するものであるが、コア層の表面の全面を被覆するものに限られず、コア層の表面の少なくとも一部を被覆していればよい。
【0027】
前記シェル層の非架橋の重合体を構成する単量体としては特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系単量体、芳香族ビニル系単量体等が挙げられる。尚、本願では、「(メタ)アクリル」とは、アクリルとメタクリルをまとめて指すための表記である。
前記(メタ)アクリル系単量体としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの芳香環含有(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアルキル(メタ)アクリレートなどのグリシジル(メタ)アクリレート;アルコキシ(メタ)アルキルアクリレート;(メタ)アクリロニトリル、置換(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリロアミド等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸アルキルエステルが特に好ましい。
【0028】
前記芳香族ビニル化合物としては特に限定されず、例えば、スチレン、2-ビニルナフタレン等の無置換ビニル芳香族化合物類;α-メチルスチレン等の置換ビニル芳香族化合物類;3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン等の環アルキル化ビニル芳香族化合物類;4-メトキシスチレン、4-エトキシスチレン等の環アルコキシル化ビニル芳香族化合物類;2-クロロスチレン、3-クロロスチレン等の環ハロゲン化ビニル芳香族化合物類;4-アセトキシスチレン等の環エステル置換ビニル芳香族化合物類;4-ヒドロキシスチレン等の環ヒドロキシル化ビニル芳香族化合物類が挙げられる。中でも、置換又は非置換のスチレンが好ましく、スチレン及び/又はα-メチルスチレンがより好ましく、スチレンが特に好ましい。芳香族ビニル化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
前記シェル層の非架橋の重合体を構成する単量体としては、アクリル系単量体、メタクリル系単量体、及び、芳香族ビニル系単量体からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0030】
アスファルト付着抑制の観点から、前記シェル層の重合体を構成する単量体として、少なくとも、メタクリル系単量体、及び/又は、芳香族ビニル系単量体を用いることが好ましい。この時、前記シェル層の重合体を構成する単量体全体のうち、メタクリル系単量体及び芳香族ビニル系単量体の合計量は、40~100重量%であることが好ましく、60~100重量%がより好ましく、80~100重量%がさらに好ましく、90~100重量%が特に好ましい。
【0031】
また、前記重合体粒子をカチオン系アスファルト乳剤に添加してなる乳剤組成物が長時間にわたって安定性を保持できるように、前記シェル層の重合体を構成する単量体として、少なくとも、メタクリル系単量体を用いることが好ましい。また、前記シェル層の重合体を構成する単量体として、メタクリル系単量体のみを用いても良いが、重合安定性付与の観点から、メタクリル系単量体と芳香族ビニル系単量体を併用することがより好ましい。
【0032】
以上の観点から、前記シェル層の重合体を構成する単量体全体のうち、メタクリル系単量体の合計量は、40~100重量%であることが好ましく、60~99重量%がより好ましく、80~98重量%がさらに好ましく、90~97重量%が特に好ましい。
【0033】
前記シェル層の重合体は、乳剤組成物施工後のアスファルト付着をより抑制できるよう、ガラス転移温度(Tg)が-25℃以上を示す重合体であることが好ましく、-10℃以上がより好ましく、0℃以上がさらに好ましく、20℃以上がより更に好ましく、40℃以上が特に好ましく、50℃以上が最も好ましい。更に、60℃以上であっても良いし、70℃以上であっても良いし、80℃以上であってもよい。また、前記シェル層の重合体のガラス転移温度が高くなる程、前記重合体粒子をカチオン系アスファルト乳剤に添加してなる乳剤組成物が長時間にわたって安定性を保持できる利点も得ることができる。前記シェル層の重合体のガラス転移温度の上限値は特に限定されないが、例えば、120℃以下であってよく、110℃以下であっても良い。
【0034】
前記シェル層の重合体のガラス転移温度は、該重合体を構成する単量体の種類や比率を変更することによって制御できる。例えば、前記シェル層の重合体を構成する単量体として、少なくとも、メタクリル系単量体、及び/又は、芳香族ビニル系単量体を用いることで、該重合体のガラス転移温度を高めることが可能である。
【0035】
前記ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。
【0036】
前記シェル層の重合体は、(ポリ)アルキレングリコール鎖を含むことが好ましい。これによって、前記重合体粒子をカチオン系アスファルト乳剤に添加した時の凝集物の発生、又は、該乳剤の凝固などをより抑制することができる。尚、「(ポリ)アルキレングリコール鎖」との表記は、重合度が1のアルキレングリコール鎖と、重合度が2以上のポリアルキレングリコール鎖の双方を包含するためのものである。即ち、「(ポリ)アルキレングリコール鎖」は、アルキレングリコール鎖であってもよいし、ポリアルキレングリコール鎖であってもよい。
【0037】
前記(ポリ)アルキレングリコール鎖は、1価の基であり、フリーの末端基を有する。当該末端基は特に限定されないが、水酸基であってもよいし、アルキル基やアリール基、アシル基等の置換基であってもよい。前記置換基の炭素数は、例えば、1~20程度であってよく、1~10程度が好ましく、1~6程度がより好ましい。
【0038】
前記(ポリ)アルキレングリコール鎖を構成するアルキレングリコール単位1個当たりの炭素数は特に限定されないが、1~6が好ましく、2~4がより好ましく、2~3が更に好ましい。炭素数が異なる複数種のアルキレングリコール単位が共存してもよい。
【0039】
前記(ポリ)アルキレングリコール鎖の具体例としては、(ポリ)エチレングリコール鎖、(ポリ)プロピレングリコール鎖、(ポリ)エチレングリコール-(ポリ)プロピレングリコール鎖、(ポリ)エチレングリコール-(ポリ)ブチレングリコール鎖、(ポリ)プロピレングリコール-(ポリ)ブチレングリコール鎖等が挙げられる。特に、(ポリ)エチレングリコール鎖が好ましい。
【0040】
前記(ポリ)アルキレングリコール鎖の重合度、即ち(ポリ)アルキレングリコール鎖1つ当たりのアルキレングリコール単位の数は特に限定されないが、例えば、1~30程度であってよく、1~20がより好ましく、1~15が更に好ましく、2~10が特に好ましい。前記(ポリ)アルキレングリコール鎖の末端基が水酸基である場合、前記重合度は、凝集物発生抑制の観点から、3以上が好ましく、4以上がより好ましい。また、前記(ポリ)アルキレングリコール鎖の末端基が前記置換基である場合は、6以上が好ましく、8以上がより好ましい。
【0041】
以上述べた(ポリ)アルキレングリコール鎖を有するシェル層を得るには、シェル層の重合時に、(ポリ)アルキレングリコール鎖を有する単量体、特に、(ポリ)アルキレングリコール鎖を有する(メタ)アクリル系単量体を使用することが好ましい。
【0042】
そのような単量体のうち、末端基が水酸基であるものの具体例としては、(メタ)アクリル酸(ポリ)エチレングリコール(日油製ブレンマーPE-90、PE-200、PE-350、AE-90U、AE-200、AE-400等)、(メタ)アクリル酸(ポリ)プロピレングリコール(日油製ブレンマーPP-500、PP-500D、PP-800、PP-1000、PP-2000D、AP-200、AP-400、AP-400D、AP-550、AP-800、AP-1000D等)、(メタ)アクリル酸(ポリ)エチレングリコール-(ポリ)プロピレングリコール(日油製ブレンマー50PEP-300等)、(メタ)アクリル酸(ポリ)エチレングリコール-(ポリ)ブチレングリコール(日油製ブレンマー55PET-800、50PEP-500D等)、(メタ)アクリル酸(ポリ)プロピレングリコール-(ポリ)ブチレングリコール(日油製ブレンマー10PPB-500B、10PPB-500BD等)等が挙げられる。
【0043】
また、末端基が前記置換基である前記単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メトキシ(ポリ)エチレングリコール(日油製ブレンマーPME-100、PME-200、PME-400、PME-1000、PME-2000、AME-400等;新中村化学工業(株)製NKエステルM-20G、M-40G、M-90G、M-130G、M-230G、M-450G、AM-30G、AM-90G、AM-130G、AM-230G等)、(メタ)アクリル酸メトキシ(ポリ)プロピレングリコール(新中村化学工業(株)製NKエステルM-30PG、AM-30PG等)、(メタ)アクリル酸ラウロキシ(ポリ)エチレングリコール(日油製ブレンマーPLE-1300等)、(メタ)アクリル酸ステアロキシ(ポリ)エチレングリコール(日油製ブレンマーPSE-1300等)、(メタ)アクリル酸オクチル(ポリ)エチレングリコール-(ポリ)プロピレングリコール(日油製ブレンマー50POEP-800B等)、(メタ)アクリル酸フェノキシ(ポリ)エチレングリコール(新中村化学工業(株)製NKエステルPHE-1G、AMP-30GY等)、(メタ)アクリル酸フェノキシ(ポリ)エチレングリコール-(ポリ)ブチレングリコール(日油製ブレンマー43PAEP-600B等)、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシ(ポリ)プロピレングリコール(日油製ブレンマーANP-300等)、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシ(ポリ)エチレングリコール-(ポリ)プロピレングリコール(日油製ブレンマー75ANEP-600等)等が挙げられる。
これら単量体は1種のみを使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0044】
前記(ポリ)アルキレングリコール鎖を有する単量体の使用量は、適宜設定することができ、特に限定されないが、例えば、前記重合体粒子を構成する単量体全体のうち、0.1重量%以上であってよい。しかし、上述した凝集物の発生や該乳剤の凝固をより効果的に抑制する観点から、0.5重量%以上であることが好ましく、1重量%以上がより好ましく、2重量%以上がさらに好ましく、2.5重量%以上がより更に好ましく、3重量%以上が特に好ましい。
【0045】
また、重合体粒子を合成する時の重合系の安定性を確保する観点から、前記(ポリ)アルキレングリコール鎖を有する単量体の使用量は、8重量%以下であることが好ましく、6重量%以下がより好ましく、4重量%以下がさらに好ましく、3.5重量%以下が特に好ましい。
【0046】
(ゴムの含有量)
前記重合体粒子がコア層とシェル層を含む態様において、前記重合体粒子中の前記ゴムの含有量は、特に限定されず、20~90重量%であってもよい。しかし、アスファルト付着抑制の観点、及び、接着力の観点から、30~85重量%であることが好ましく、40~80重量%がより好ましく、50~80重量%がさらに好ましく、55~75重量%がより更に好ましく、60~70重量%が特に好ましい。
【0047】
また、前記重合体粒子がシェル層を有する場合は、発明の効果を奏する限り、コア層とシェル層の間に、中間層をさらに有するものであってもよい。中間層は、重合体から構成される層であり、コア層にグラフト結合していることが好ましい。このような中間層を有する場合、中間層が、コア層の表面の少なくとも一部を被覆し、シェル層は、中間層の表面の少なくとも一部を被覆することになる。
【0048】
(重合体粒子の体積平均粒子径)
前記重合体粒子の粒子径は、特に限定されず、例えば、体積平均粒子径が10~1000nm程度であってよい。しかし、散布や塗布時の作業性や、生産性、重合系の安定性、乳剤組成物の安定性等の観点から、体積平均粒子径が80~500nmであることが好ましく、100~400nmがより好ましく、150~350nmがさらに好ましい。なお、重合体粒子の体積平均粒子径は、重合体粒子のラテックスの状態で、粒子径の測定装置を使用することによって測定される。重合体粒子の粒子径は、重合時に用いる重合開始剤、連鎖移動剤、酸化還元剤、乳化剤等の種類や量、重合温度、重合時間等によって制御することができる。
【0049】
(重合体粒子の製造方法)
前記重合体粒子の製造法としては、特に限定されないが、例えば、乳化重合、ミニエマルション重合、マイクロエマルション重合、無乳化剤(ソープフリー)乳化重合を用いることができる。
【0050】
乳化重合において用いることができる乳化剤としては、特に限定されず、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを使用可能である。また、ポリビニルアルコール、アルキル置換セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸誘導体などの分散剤を併用してもよい。
【0051】
上記乳化剤のうちアニオン性界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、次の化合物が挙げられる:ラウリン酸カリウム、ヤシ脂肪酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸カリウムジエタノールアミン塩、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、混合脂肪酸ソーダ石けん、半硬化牛脂脂肪酸ソーダ石けん、ヒマシ油カリ石けんなどの脂肪酸石鹸;ドデシル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸トリエタノールアミン、ドデシル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、2-エチルヘキシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム;ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸ナトリウム;アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム;アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム;アルキルリン酸カリウム塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどのリン酸エステル塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩;ポリカルボン酸型高分子アニオン;アシル(牛脂)メチルタウリン酸ナトリウム;アシル(ヤシ)メチルタウリン酸ナトリウム;ココイルイセチオン酸ナトリウム;α-スルホ脂肪酸エステルナトリウム塩;アミドエーテルスルホン酸ナトリウム;オレイルザルコシン;ラウロイルザルコシンナトリウム;ロジン酸石けんなど。
【0052】
上記乳化剤のうち非イオン性界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、次の化合物が挙げられる:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルあるいはポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタンエステル類、ポリエチレングルコールモノラウレート、ポリエチレングルコールモノステアレート、ポリエチレングルコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマーなど。
【0053】
上記乳化剤のうちカチオン性界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、次の化合物が挙げられる:ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテート、テトラデシルアミンアセテートなどのアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩など。
【0054】
上記乳化剤のうち両性界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、次の化合物が挙げられる:ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ジメチルラウリルベタインなどのアルキルベタイン;ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム;アミドベタイン;イミダゾリン;ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなど。
【0055】
これらの乳化剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。乳化剤のなかでは、得られるラテックス、又はカチオン系アスファルト乳剤組成物の流動性が良好になる観点から、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、又は、オキシエチレン構造を有する界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0056】
乳化重合法を採用する場合には、公知の重合開始剤、すなわち2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどを加熱分解型開始剤として用いることができる。
【0057】
また、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ヘキシルパーオキサイドなどの有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物といった過酸化物と、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、グルコースなどの還元剤;硫酸鉄(II)などの遷移金属塩;エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなどのキレート剤;及びピロリン酸ナトリウムなどのリン含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを併用したレドックス型開始剤を使用することもできる。
【0058】
レドックス型開始剤を用いた場合には、前記過酸化物が実質的に熱分解しない低い温度でも重合を行うことができ、重合温度を広い範囲で設定できるようになり好ましい。中でもクメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物をレドックス型開始剤として用いることが好ましい。前記開始剤の使用量、レドックス型開始剤を用いる場合には前記還元剤、遷移金属塩、キレート剤、リン含有化合物などの使用量は公知の範囲で用いることができる。また、多官能性単量体を重合するに際しては、公知の連鎖移動剤を公知の範囲で用いることができる。追加的に界面活性剤を用いることができるが、これも公知の範囲である。
【0059】
乳化重合時に使用される溶媒としては、乳化重合を安定に進行させるものであればよく、例えば、水等を好適に使用することができる。
【0060】
乳化重合時の温度は、乳化剤が溶媒に均一に溶解すれば、特に限定されないが、例えば、40~75℃であり、好ましくは45~70℃、より好ましくは49~65℃である。
【0061】
また、乳化重合終了後のラテックスに、ノニオン系乳化剤を添加することが好ましい。これによって、重合体粒子を添加してなるカチオン系アスファルト乳剤組成物の安定性を高めることができる。前記ノニオン系乳化剤としては特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。中でも、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましく、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが特に好ましい。代表的な市販品としては、花王社製のエマルゲン1108、1118S-70、1135S-70、1150S-60、4085、LS-106、LS-110、LS-114、MS-110等が挙げられ、特にLS-110が好ましい。
該ノニオン系乳化剤の添加量は、例えば、重合体粒子の固形分100重量部に対し、0.01~10重量部程度であってよく、0.1~5重量部が好ましい。
【0062】
乳化重合によって前記重合体粒子を製造した場合には、例えば、該重合体粒子のラテックスをスプレードライ乾燥することで、水に再分散が可能なパウダーを得て、これを前記重合体粒子として用いてもよい。
【0063】
本実施形態に係るカチオン系アスファルト乳剤用添加剤は、前記重合体粒子のラテックスの形態であってもよいし、前記重合体粒子の粉体状の形態であってもよい。カチオン系アスファルト乳剤への分散性に優れているため、前記添加剤は、前記重合体粒子のラテックスの形態であることが好ましい。
【0064】
(カチオン系アスファルト乳剤)
本開示において、カチオン系アスファルト乳剤とは、少なくともアスファルト、水、及びカチオン系乳化剤を含む乳化物のことを指す。
【0065】
カチオン系アスファルト乳剤としては特に限定されないが、例えば、日本工業規格JIS K 2208(2000)で規定されている「PK-1」、「PK-2」、「PK-3」、「PK-4」、「MK-1」、「MK-2」、「MK-3」;一般社団法人日本アスファルト乳剤協会規格JEAAS-2006で規定されている「PK-P」、「PK-H」、「MK-C」、「PKM-T」、「PKR-T」、「PKR-S-1」、「PKR-S-2」等が挙げられる。
【0066】
中でも、タックコート用のカチオン系アスファルト乳剤である「PK-4」、「PKM-T」、又は「PKR-T」に対し、本開示に係る添加剤を使用することが好ましい。中でも「PKM-T」はタイヤ付着抑制型アスファルト乳剤であるが、本開示によると、「PKM-T」のタイヤ付着抑制効果をさらに改善することができる。
【0067】
カチオン系アスファルト乳剤に含まれるアスファルトとしては特に限定されないが、例えば、レーキアスファルト、ロックアスファルト、アスファルトタイト等の天然アスファルト;ストレートアスファルト、ブローンアスファルト当の石油アスファルト;セミブローンアスファルト、硬質アスファルト等が挙げられる。また、これらのアスファルトに、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ゴム等を配合して改質した改質アスファルトであってもよい。
【0068】
カチオン系アスファルト乳剤の製造法は常法によることができ、特に限定されないが、例えば、アスファルトと、アミン類と、弱酸(例えば、酢酸などの有機酸)又は強酸(例えば、塩酸又はアミド硫酸などの無機酸)を加えた混合液をコロイドミルやホモジナイザを用いて乳化することにより製造できる。前記アミン類としては、例えば、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム塩又はポリアミン、あるいはこれらの混合アミン等が挙げられる。
【0069】
(カチオン系アスファルト乳剤用添加剤及びカチオン系アスファルト乳剤組成物)
本開示に係る添加剤は、カチオン系アスファルト乳剤に添加及び混合して、重合体粒子を分散させることで使用することができる。本開示に係る添加剤の重合体粒子がカチオン系アスファルト乳剤中に分散したものを、カチオン系アスファルト乳剤組成物という。本開示に係るカチオン系アスファルト乳剤組成物によると、対象物への施工後にアスファルトの付着が抑制されることに加えて、該組成物中に凝集物が生じにくいため、散布や塗布などを行う時の作業性が良好になるという利点を得ることができる。
【0070】
カチオン系アスファルト乳剤への前記添加剤の添加量は、発明の効果を考慮して適宜調節することができるが、例えば、乳剤組成物中、前記重合体粒子の固形分換算で0.1~60重量%の範囲であることが好ましく、0.5~50重量%がより好ましく、1~40重量%がさらに好ましい。
【0071】
カチオン系アスファルト乳剤への前記添加剤の混合方法は特に限定されず、周知の混合方法を適宜適用することができる。
【0072】
本開示に係るカチオン系アスファルト乳剤組成物は、カチオン系アスファルト乳剤と本開示に係る添加剤以外の成分が、更に添加されたものであってもよい。そのような他の成分としては特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素等の有機溶剤、シリカ等の骨材、アスファルト乳剤の分解促進剤、乳化剤、流動化剤等が挙げられる。
【0073】
本開示に係るカチオン系アスファルト乳剤組成物の用途としては特に限定されず、浸透用、混合用のいずれであってもよいが、浸透用が好ましい。浸透用の具体例としては、温暖期浸透用、寒冷期浸透用、表面処理用、プライムコート用、セメント安定処理層養生用、タックコート用等が挙げられる。
【0074】
本開示に係るカチオン系アスファルト乳剤組成物は、被着体、特にアスファルト混合物層との接着性に優れているので、タックコート用又はプライマーコート用として好適に使用することができる。中でも、タックコート用として要求される、アスファルト混合物層間の接着性に優れているので、タックコート用として特に好適に使用することができる。
【0075】
前記タックコートとは、主に、新たに敷設するアスファルト混合物層と、その下のアスファルト混合物層等との層間接着を行うために、後者のアスファルト混合物層の上に散布又は塗布されるもの、あるいは、アスファルト混合物層と、継ぎ目部や構造物との付着を改善するために使用されるものをいう。また、前記プライマーコートとは、主に、上層路盤を安定化させ、上層路盤とその上のアスファルト混合物層とのなじみを改善するために、上層路盤の上に散布又は塗布されるものをいう。
【0076】
本開示に係るカチオン系アスファルト乳剤組成物は、対象物に散布又は塗布することによって使用することができる。散布又は塗布の方法としては特に限定されず、公知の方法によることができるが、例えば、ディストリビューター(アスファルト乳剤散布用車輛)やエンジンスプレイヤー等の散布機、ジョウロ、乳剤スプレー等を用いた散布、ローラー刷毛やゴムレーキ等を用いた塗布が挙げられる。
【0077】
本開示に係るカチオン系アスファルト乳剤組成物を使用すると、ディストリビューターを用いて散布をしても、車輛のタイヤへのアスファルト付着を低レベルに抑制することができる。また、本開示に係るカチオン系アスファルト乳剤組成物によると、該組成物中に凝集物が発生しにくいので、前記散布や塗布時の作業性が良好である。
【0078】
本開示に係るカチオン系アスファルト乳剤組成物の散布又は塗布量は特に限定されず、公知の範囲内であってもよい。組成物中のアスファルト濃度にもよるが、タックコートの場合、例えば、0.3~0.6L/m2程度であってよく、プライムコートの場合、例えば、1~2L/m2程度であってよい。
【0079】
また、散布又は塗布をした後、常法により養生をすることが好ましい。養生時間も特に限定されないが、通常、30分から数時間程度である。
【0080】
本開示に係るカチオン系アスファルト乳剤組成物を散布又は塗布し、養生することで、アスファルトを主成分とするコート層が形成される。該コート層の厚みは特に限定されず、性能を考慮して適宜決定すればよいが、通常、0.1~10mmの範囲内であってよい。該コート層は、タックコート層又はプライムコート層であることが好ましく、特に、タックコート層であることが好ましい。
【実施例0081】
以下に実施例を掲げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0082】
(実施例1)
(コア層の形成)
脱イオン水2730g、エマール2FG(花王社製:ラウリル硫酸ナトリウム固形分、30%)5.0gを8L重合機に投入し、50℃に昇温し、窒素をフローした。
アクリル酸ブチル150g(5部)、アリルメタクリレート0.375g(0.01部)、及びt-ブチルハイドロパーオキサイド(固形分69%)0.3gの混合物を前記重合機に追加し、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.00864g、及びエチレンジアミンテトラ酢酸・2ナトリウム 0.03456gを脱イオン水8.6gに溶解した溶液を追加し、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(固形分5%)48.0gを追加し、30分間攪拌した。
エマール2FG(花王社製:ラウリル硫酸ナトリウム、固形分30%)4.7gを追加し、アクリル酸ブチル1650g(55部)、アリルメタクリレート4.125g(0.14部)、フォスファノールRD-510Y(東邦化学社製:ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸)27.0g、及びt-ブチルハイドロパーオキサイド(固形分69%)3.0gの混合物を前記重合機に165分かけて追加した。追加終了時にt-ブチルハイドロパーオキサイド(固形分69%)3.0gを追加し、30分間攪拌した。以上により、アクリル系ゴム粒子を含むラテックスを得た。
【0083】
(シェル層の形成)
前記重合機にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(固形分5%)60.0gを追加した。メタクリル酸メチル1050g(35部)、スチレン60g(2部)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=4.5、商品名:ブレンマーPE-200、日油社製)90g(3部)及びt-ブチルハイドロパーオキサイド(固形分69%)3.3gの混合物を前記重合機に120分かけて追加した。
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、t-ブチルハイドロパーオキサイドを適宜添加し、80分後に重合終了した後、ラテックスにエマルゲンLS-110(花王社製:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル)を10.5g添加し、転化率100%、固形分濃度50.0%の、体積平均粒子径230nmのコアシェル構造のアクリル系ゴム含有重合体粒子のラテックスを得た。
【0084】
(実施例2~6)
表1又は2の記載に沿って、モノマーの種類または使用量を変更した以外は、実施例1と同様にして、コアシェル構造のアクリル系ゴム含有重合体粒子のラテックスを得た。
【0085】
(比較例1)
(コア層の形成)
脱イオン水90gに、リン酸水素2ナトリウム10g(固形分10%)を投入し、更に、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.237g、及びエチレンジアミンテトラ酢酸・2ナトリウム 0.395gを脱イオン水125.8gに溶解した溶液を追加し、-0.01MPaで15分間、脱酸を実施した。
ネオぺレックスG-15(花王社製:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム固形分15.0%)66.7g、ブタジエン16,500g、スチレン3,500g、及びt-ドデシルメルカプタン150gを100L耐圧オートクレーブに投入し、内温50℃に昇温した。
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(固形分5%)140.0g、パラメンタンハイドロパーオキサイド(固形分52%)7.7gを追加し、重合を開始した。
重合開始15時間目に、減圧下にて脱気して、重合に使用されずに残存したブタジエンを脱気除去することにより、重合を終了した。固形分濃度45.0%のラテックスを得た。
重合中、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、パラメンタンハイドロパーオキサイド、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)及びエチレンジアミンテトラ酢酸・2ナトリウムのそれぞれを、任意の量及び任意の時宣で100L耐圧オートクレーブに添加した。以上により、スチレン-ブタジエンゴム粒子を含むラテックスを得た。
【0086】
(シェル層の形成)
得られたゴムラテックス(固形分45.0%)2000gを8L重合機に仕込み、それ以降は実施例1と同様の方法でシェル層を重合し、コアシェル構造のスチレン-ブタジエンゴム含有重合体粒子のラテックスを得た。
【0087】
(比較例2~3)
表1又は2の記載に沿って、モノマーの種類または使用量を変更した以外は、比較例1と同様にして、コアシェル構造のスチレン-ブタジエンゴム含有重合体粒子のラテックスを得た。
【0088】
(評価方法)
各実施例及び比較例で得た重合体粒子ラテックスを用いて以下に示す評価を行った。尚、参考例1及び2では、重合体粒子ラテックスを添加せず、アスファルト乳剤のみを用いて各評価を行った。
【0089】
(凝集物の有無の評価)
AE:タックコート用カチオン系アスファルト乳剤(PK-4、固形分濃度:60%)、又は、タイヤ付着抑制型タックコート用カチオン系アスファルト乳剤(PKM-T、固形分濃度:60%)
Lx:各実施例又は比較例で得た重合体粒子ラテックス(固形分濃度:50%)
AEがPK-4である場合:AE=10.5g、Lx=4.5g(AE/Lx=70%/30%)
AEがPKM-Tである場合:AE=12.75g、Lx=2.25g(AE/Lx=85%/15%)
【0090】
アスファルト乳剤と重合体粒子ラテックスを前記比率で、木べらにて1分間混合し、アスファルト乳剤組成物を得た。該乳剤組成物を32メッシュのSUS平織金網を通して、目視にて、金網上に凝集物が確認できなかったものを「無し」と判定し、確認されたものを「有り」と判定した。
【0091】
(一週間後の分離の有無の評価)
AE:タックコート用カチオン系アスファルト乳剤(PK-4、固形分濃度:60%)、又は、タイヤ付着抑制型タックコート用カチオン系アスファルト乳剤(PKM-T、固形分濃度:60%)
Lx:各実施例及び比較例で得た重合体粒子ラテックス(固形分濃度:50%)
AEがPK-4である場合:AE=10.5g、Lx=4.5g(AE/Lx=70%/30%)
AEがPKM-Tである場合:AE=12.75g、Lx=2.25g(AE/Lx=85%/15%)
【0092】
アスファルト乳剤と重合体粒子ラテックスを前記比率で、木べらにて1分間混合し、アスファルト乳剤組成物を得た。該乳剤組成物をプラスチック試験管(PP製)に移して、168時間(1週間)、23℃の条件下で静置した。静置後、目視にて、茶褐色のアスファルト乳剤と白色の重合体粒子ラテックスが分離していることが確認できなかったものを「無し」と判定し、確認されたものを「有り」と評価した。
【0093】
(タイヤ付着率評価)
アスファルト乳剤への重合体粒子ラテックスの添加による、タイヤへのアスファルト付着抑制効果を評価するために、ホイールトラッキング試験機(株式会社岩田工業所社製)を用いて、60℃におけるゴムシートへの付着率を測定した。
まず、アスファルト乳剤AEと重合体粒子ラテックスLxを、AE:PK-4/Lx=70%/30%、又は、AE:PKM-T/Lx=85%/15%の比率で混合してアスファルト乳剤組成物を調製した。
次いで、縦300mm×横300mm、厚さ3mmのスレートボード(JIS A 5430繊維強化セメント板で軟質板に分類されるもの)に、前記アスファルト乳剤組成物を、固形分換算で300g/m2となるようにゴムベラを用いて表面が均一になるように塗布し、室温でアスファルト乳剤組成物が完全に分解するまで養生し、供試体を作製した。
材質が天然ゴムであり、ゴム硬度がJIS硬度にて20℃で84±4、60℃で78±2の厚み1mmのゴムシートを短冊状(長さ300±10mm、幅60±3mm)に成形し、下記手順(1)~(7)に従いホイールトラッキング試験によって、タイヤ付着率を測定した。
(1) 作製した供試体と、成形したゴムシートを、60±1℃に調整した恒温槽にて4時間以上養生する。
(2) 試験直前にゴムシートの重量を測定する。
(3) ゴムシートを供試体のタイヤ走行箇所に載せ、624±10Nの荷重でタイヤを1往復させる。
(4) タイヤ走行後、ゴムシートを垂直方向に一定の力で2秒以内に剥がす。
(5) ゴムシートの重量を速やかに測定し、付着したアスファルト被膜重量を求める。
(6) 上記(1)~(5)の作業を1供試体あたり3カ所以上で実施する。
(7) タイヤ付着率は次式によって求める。
タイヤ付着率(重量%)=[試験後ゴムシート重量(g)-試験前ゴムシート重量(g)]/[タイヤ走行面積(m2)×乳剤組成物固形分塗布量(g/m2)]×100
【0094】
(接着力評価)
タックコート層を有する2層アスファルト混合物筒状供試体を用いた引張強度(日本アスファルト乳剤協会JEAAT-5準拠)の測定により、アスファルト乳剤組成物の接着力を評価した。試験は下記の通り実施した。
【0095】
・試料の準備
アスファルト混合物の試料の準備は、「舗装調査・試験法便覧((公社)日本道路協会、平成31年版):B003ホイールトラッキング試験方法」に準ずる。
【0096】
・供試体の作製
1)2層供試体の作製方法
1.形状が300mm×300mm×50mmの下層部分に相当するアスファルト混合物供試体の作製方法は、「舗装調査・試験法便覧((公社)日本道路協会、平成31年版):B003ホイールトラッキング試験方法」に準ずる。
2.前述1.で作製した供試体の表面の汚れをウエスなどで除去する。
3.アスファルト乳剤AEと重合体粒子ラテックスLxを、AE:PK-4/Lx=70%/30%、又は、AE:PKM-T/Lx=85%/15%の比率で混合したアスファルト乳剤組成物を、固形分換算で300g/m2となるように、前述2.で準備した供試体の表面に、ゴムベラで均一に塗布する。
4.前述3.で準備した供試体を300mm×300mm×100mmの型枠にはめ込み、上層部分に相当するアスファルト混合物を厚さ50mmで打ち継ぎ、2層アスファルト混合物供試体を作製する。
【0097】
2)引張試験円筒状供試体の作製方法
1.1日養生後、コアカッターにて直径100mmの2層円筒状供試体を抜き取る。作製した2層供試体1枚につき3個の2層円筒状供試体を抜き取る。
2.抜き取った2層円筒状供試体を水洗し、乾燥後に供試体として使用する。
3.供試体固定治具を貼り付ける部分を研磨し、アスファルト被膜を除去する。
4.供試体固定治具を上下に各1枚ずつエポキシ樹脂系接着剤を用いて貼り付け、完全に硬化するまで養生する。
【0098】
3)試験の手順
1.2層円筒状供試体を23℃の試験温度に保った恒温槽で5時間以上養生する。
2.養生後の2層円筒状供試体を試験機に取り付ける。
3.試験速度60mm/分の速度で垂直方向に2層円筒状供試体が破壊するまで引っ張る。この時の最大荷重とそのときの変位量を記録する。
【0099】
4)結果の算出
1.ここの供試体について荷重-変位曲線の最大値から、以下の式によって引張強度を求め、引張強度を接着力とした。
引張強度(MPa)=最大荷重(N)/接着面積(mm2)
【0100】
以上で説明した評価の結果を、表1及び表2に示す。表1では、カチオン系アスファルト乳剤としてPK-4を使用した時の評価結果、表2では、カチオン系アスファルト乳剤としてPKM-Tを使用した時の評価結果を示す。
【0101】
【0102】
【0103】
表1より、スチレン-ブタジエンゴム含有重合体粒子に関する比較例1~3ではカチオン系アスファルト乳剤に添加、混合した後に、凝集物が生じたのに対し、アクリル系ゴム含有重合体粒子を用いた実施例1~6では凝集物が生じなかったことが分かる。
更に、実施例1及び3では、比較例1~3及び参考例1と比較して、タイヤ付着率が明らかに少なくなっていることが分かる。実施例2ではタイヤ付着率はやや高めになっているが、ゴムの種類以外は同じ組成である比較例2と比較するとタイヤ付着率は低減している。また、重合体粒子全体に占めるアクリル系ゴムの割合を変更した実施例4~6でも、タイヤ付着率は少なくなっている。
以上の結果から、アクリル系ゴム含有重合体粒子をアスファルト乳剤に添加することで、施工後のアスファルト付着が抑制され、かつ乳剤中に凝集物が生じにくいことは明らかである。
【0104】
また、実施例1~6で示された、アスファルト混合物層間の接着力は、参考例1と比較すると、比較例1~3で示された接着力と同程度に高いことが分かる。このことから、アクリル系ゴム含有重合体粒子が添加されたアスファルト乳剤組成物は、タックコートとして好適に使用できると言える。
【0105】
表2は、カチオン系アスファルト乳剤として、タイヤ付着抑制型とされているPKM-Tを使用したものであるが、アクリル系ゴム含有重合体粒子を添加することで、PKM-Tのタイヤ付着率がさらに低減することが分かる。また、乳剤中に凝集物が生じなかったこと、及び、接着力も高いことも分かる。