(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062296
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】延線クランプ装置およびカバー部材
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20230426BHJP
H02G 7/00 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
H02G1/02
H02G7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172181
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000213884
【氏名又は名称】住電機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187643
【弁理士】
【氏名又は名称】白鳥 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】大高 和良
【テーマコード(参考)】
5G352
5G367
【Fターム(参考)】
5G352AA01
5G352AB09
5G367BA03
5G367BB04
(57)【要約】
【課題】カバー部材を容易に着脱する。
【解決手段】延線クランプ装置は、架空線の先端が圧縮接続され、且つ、牽引ワイヤが接続されるクランプ本体と、弾性材料を含む筒状部材として構成され、クランプ本体の後端から架空線が延出する部分付近における外周を覆うカバー部材と、を備え、カバー部材は、クランプ本体の一部および架空線の一部が挿通される中空部と、該カバー部材の軸方向の全体に亘って、カバー部材の外周側から径方向に中空部まで切り込まれ、中空部を開放可能に構成された貫通スリットと、を有する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空線の先端が圧縮接続され、且つ、牽引ワイヤが接続されるクランプ本体と、
弾性材料を含む筒状部材として構成され、前記クランプ本体の後端から前記架空線が延出する部分付近における外周を覆うカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材は、
前記クランプ本体の一部および前記架空線の一部が挿通される中空部と、
該カバー部材の軸方向の全体に亘って、前記カバー部材の外周側から径方向に前記中空部まで切り込まれ、前記中空部を開放可能に構成された貫通スリットと、
を有する
延線クランプ装置。
【請求項2】
前記クランプ本体は、前記後端から先端側に所定距離だけ離れた位置の外周において、該クランプ本体の径方向に凹んだ係止溝を有し、
前記カバー部材は、
前記クランプ本体の前記後端から前記係止溝までを覆う本体被覆部と、
前記本体被覆部の内側で該カバー部材の中心軸に向けて径方向に突出し、前記クランプ本体の前記係止溝に係止される突起部と、
を有する
請求項1に記載の延線クランプ装置。
【請求項3】
前記クランプ本体は、前記架空線の前記先端が挿通される本体中空部を有し、
前記本体中空部は、前記クランプ本体の軸方向に沿って前記後端まで徐々に拡径した拡径部を有し、
前記カバー部材は、前記本体被覆部の径方向の内側において、前記本体中空部の前記拡径部の内周面と前記架空線との間に挿入される挿入部を有する
請求項2に記載の延線クランプ装置。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記カバー部材の軸方向に沿って前記本体被覆部に部分的に切り込まれ、前記挿入部を残しつつ前記本体被覆部のみを径方向に拡開可能に構成された部分スリットを有する
請求項3に記載の延線クランプ装置。
【請求項5】
前記カバー部材は、前記貫通スリットと重ならない位置の内周または外周のいずれかにおいて、前記カバー部材の径方向に凹み、前記カバー部材の軸方向に沿って設けられた沿軸溝を有する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の延線クランプ装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の延線クランプ装置に用いられる
カバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、延線クランプ装置およびカバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
金車を通して架空線(架空送電線)を延線するための延線クランプ装置には、クランプ本体の後端付近を保護するよう、カバー部材が設けられることがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、カバー部材を容易に着脱することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
架空線の先端が圧縮接続され、且つ、牽引ワイヤが接続されるクランプ本体と、
弾性材料を含む筒状部材として構成され、前記クランプ本体の後端から前記架空線が延出する部分付近における外周を覆うカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材は、
前記クランプ本体の一部および前記架空線の一部が挿通される中空部と、
該カバー部材の軸方向の全体に亘って、前記カバー部材の外周側から径方向に前記中空部まで切り込まれ、前記中空部を開放可能に構成された貫通スリットと、
を有する
延線クランプ装置が提供される。
【0006】
本開示の他の態様によれば、
上記延線クランプ装置に用いられる
カバー部材が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、カバー部材を容易に着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、本開示の第1実施形態に係る延線クランプ装置を示す概略上面図である。
【
図4】
図4は、本開示の第2実施形態に係る延線クランプ装置を示す概略断面図である。
【
図5A】
図5Aは、本開示の変形例に係るカバー部材を示す概略背面図である。
【
図5B】
図5Bは、本開示の変形例に係るカバー部材を示す概略背面図である。
【
図5C】
図5Cは、本開示の変形例に係るカバー部材を示す概略背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
<発明者等の得た知見>
まず、発明者等の得た知見について説明する。
【0010】
上述のように、金車を通して架空線を延線する場合には、架空線の先端をクランプ本体に圧縮接続しつつ、クランプ本体に対して牽引ワイヤを接続する。当該クランプ本体に接続した牽引ワイヤを牽引することで、架空線を延線することができる。
【0011】
このとき、クランプ本体の後端から架空線が延出する部分付近における外周を覆うように、上述のカバー部材が設けられる。これにより、架空線が金車を通過するときにクランプ本体の後端付近で架空線が過度な曲げ応力を受けることを抑制し、架空線の損傷を抑制することができる。
【0012】
しかしながら、従来のカバー部材は、クランプ本体に取り付ける前に、架空線に通しておく必要があった。また、従来のカバー部材は、クランプ本体に取り付けた際に固着され、クランプ本体から取り外し困難となっていた。
【0013】
具体的には、カバー部材はクランプ本体の後端に螺合され、この状態で該クランプ本体に対して接着剤により固定されていた。このため、延線クランプ装置の使用が完了したときには、カバー部材は、クランプ本体とともに廃棄されていた。
【0014】
このように、従来では、架空線を延線するごとに、カバー部材が必要となっていた。そのため、延線に係るコストが大きくなる傾向にあった。
【0015】
本開示は、本開示者等が見出した上記知見に基づくものである。
【0016】
<本開示の実施態様>
次に、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0017】
[1]本開示の一態様に係る延線クランプ装置は、
架空線の先端が圧縮接続され、且つ、牽引ワイヤが接続されるクランプ本体と、
弾性材料を含む筒状部材として構成され、前記クランプ本体の後端から前記架空線が延出する部分付近における外周を覆うカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材は、
前記クランプ本体の一部および前記架空線の一部が挿通される中空部と、
該カバー部材の軸方向の全体に亘って、前記カバー部材の外周側から径方向に前記中空部まで切り込まれ、前記中空部を開放可能に構成された貫通スリットと、
を有する。
この構成によれば、クランプ本体が圧縮接続された状態の架空線に対して、カバー部材を容易に着脱させることができる。
【0018】
[2]上記[1]に記載の延線クランプ装置において、
前記クランプ本体は、前記後端から先端側に所定距離だけ離れた位置の外周において、該クランプ本体の径方向に凹んだ係止溝を有し、
前記カバー部材は、
前記クランプ本体の前記後端から前記係止溝までを覆う本体被覆部と、
前記本体被覆部の内側で該カバー部材の中心軸に向けて径方向に突出し、前記クランプ本体の前記係止溝に係止される突起部と、
を有する。
この構成によれば、カバー部材がクランプ本体から軸方向に外れることを抑制することができる。
【0019】
[3]上記[2]に記載の延線クランプ装置において、
前記クランプ本体は、前記架空線の前記先端が挿通される本体中空部を有し、
前記本体中空部は、前記クランプ本体の軸方向に沿って前記後端まで徐々に拡径した拡径部を有し、
前記カバー部材は、前記本体被覆部の径方向の内側において、前記本体中空部の前記拡径部の内周面と前記架空線との間に挿入される挿入部を有する。
この構成によれば、延線クランプ装置が金車を通過するときに、スリーブの後端において架空線に加わる曲げ応力を緩和することができる。
【0020】
[4]上記[3]に記載の延線クランプ装置において、
前記カバー部材は、前記カバー部材の軸方向に沿って前記本体被覆部に部分的に切り込まれ、前記挿入部を残しつつ前記本体被覆部のみを径方向に拡開可能に構成された部分スリットを有する。
この構成によれば、本体中空部の拡径部と架空線との間に、挿入部を容易に挿入することができる。
【0021】
[5]上記[1]から[4]のいずれか1つに記載の延線クランプ装置において、
前記カバー部材は、前記貫通スリットと重ならない位置の内周または外周のいずれかにおいて、前記カバー部材の径方向に凹み、前記カバー部材の軸方向に沿って設けられた沿軸溝を有する。
この構成によれば、貫通スリットをカバー部材の周方向に容易に拡開することができる。
【0022】
[6]本開示の他の態様に係るカバー部材は、
上記[1]から[5]のいずれか1つに記載の延線クランプ装置に用いられる。
この構成によれば、クランプ本体が圧縮接続された状態の架空線に対して、カバー部材を容易に着脱させることができる。
【0023】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0024】
<本開示の第1実施形態>
(1)延線クランプ装置
本実施形態に係る延線クランプ装置10について、
図1A~
図3Dを参照して説明する。
図1Aは、本実施形態に係る延線クランプ装置を示す概略上面図である。
図1Bは、
図1AにおけるA-A’線断面図である。
図2Aは、クランプ本体を示す概略上面図である。
図2Bは、
図2AにおけるB-B’線断面図である。
図1Bおよび
図2Bでは、鋼心接続部220の頭部222は、断面図ではなく側面図を示している。
図3A、
図3Bおよび
図3Cは、それぞれ、カバー部材を示す概略上面図、概略正面図、概略背面図である。
図3Dは、
図3AにおけるC-C’線断面図である。
【0025】
以下の説明において、「先端」は、牽引ワイヤが接続される側の端部(牽引される方向の端部)のことをいい、「後端」は、先端から遠い側の端部のことをいう。
【0026】
また、架空線100の「軸方向」とは、架空線100の中心軸の方向のことをいい、「長手方向」と言い換えることができる。また、架空線100の「径方向」とは、架空線100の中心軸から外周に向かう方向のことをいい、場合によっては「短手方向」と言い換えることができる。また、架空線100の「周方向」とは、架空線100の外周または内周に沿った方向のことをいう。
【0027】
なお、筒状のクランプ本体200およびカバー部材300などについても、架空線100と同様の用語を用いることができる。
【0028】
図1A~
図3Dに示すように、延線クランプ装置10は、架空線100の先端を接続し、架空線100を延線可能に構成されている。
【0029】
本実施形態では、延線クランプ装置10は、例えば、クランプ本体200と、カバー部材300と、を備えている。本実施形態の延線クランプ装置10は、クランプ本体200が圧縮接続された状態の架空線100に対して、カバー部材300を容易に着脱可能に構成されている。
【0030】
[架空線]
図1Bに示すように、架空線100は、例えば、いわゆる架空送電線として構成されている。具体的な架空送電線としては、例えば、アルミ覆鋼心アルミ撚線(ACSR/AC)などが挙げられる。
【0031】
架空線100は、例えば、鋼心部120と、外部撚線層140と、を有している。鋼心部120は、架空線100の中心で、架線時に張力を負担するテンションメンバとして機能するように構成されている。鋼心部120は、例えば、鋼またはインバからなる複数の心線を撚り合わせることにより構成されている。外部撚線層140は、例えば、送電時に主に電流を流す導体部分として構成されている。外部撚線層140は、例えば、複数の導電性の素線を撚り合わせることにより構成されている。外部撚線層140を構成する素線は、例えば、アルミ(Al)またはAl合金からなっている。
【0032】
本実施形態の架空線100は、例えば、段階的に剥がされた状態(いわゆる「段剥ぎ」された状態)となっている。すなわち、架空線100の鋼心部120は、外部撚線層140の先端から所定の長さだけ露出されている。架空線100には、この状態で、延線クランプ装置10が装着されている。
【0033】
[クランプ本体]
図1A~
図2Bに示すように、クランプ本体200は、例えば、架空線100の先端が圧縮接続され、且つ、牽引ワイヤ(不図示)が接続されるよう構成されている。具体的には、クランプ本体200は、例えば、鋼心接続部220と、スリーブ240と、を有している。
【0034】
(鋼心接続部)
鋼心接続部220は、例えば、鋼心部120の先端が圧縮接続され、且つ、牽引ワイヤが接続されるよう構成されている。鋼心接続部220は、例えば、鋼からなっている。
【0035】
鋼心接続部220は、例えば、頭部222と、芯部224と、を有している。
【0036】
頭部222は、例えば、U字溝222aと、連結軸222bと、を有している。U字溝222aは、例えば、該頭部222の中心軸に交差する方向に貫通した断面U字状の溝部として構成されている。連結軸222bは、例えば、該頭部222の中心軸に交差する方向に設けられ、U字溝222aを挟んだ両片(符号不図示)に接続されている。連結軸222bには、牽引ワイヤが接続される。
【0037】
芯部224は、例えば、連結部224aと、筒状部224bと、を有している。連結部224aは、自身の中心軸を頭部222の中心軸と一致させて、頭部222の後端に接続されている。連結部224aは、例えば、径方向に拡径した複数の凸部224cを有し、後述のスリーブ240に係合可能に構成されている。筒状部224bは、自身の中心軸を連結部224aおよび頭部222と一致させて、連結部224aに接続されている。筒状部224b内には、鋼心部120の先端が挿入され、当該筒状部224bには、鋼心部120の先端が圧縮接続される。
【0038】
(スリーブ)
スリーブ240は、例えば、鋼心接続部220の芯部224と、外部撚線層140を含む架空線100と、が圧縮接続される筒状体として構成されている。スリーブ240は、例えば、AlまたはAl合金からなっている。
【0039】
スリーブ240は、例えば、本体中空部242と、係止溝246と、を有している。
【0040】
本体中空部242内には、鋼心部120の先端に鋼心接続部220が圧縮接続された状態の架空線100の先端が挿通されている。スリーブ240は、本体中空部242内に架空線100が挿通された状態で、径方向に圧縮されている。圧縮されたスリーブ240において、本体中空部242の先端側の内周面に、上述の鋼心接続部220の連結部224aの凸部224cが食い込むことで、スリーブ240と鋼心接続部220とが互いに係合している。
【0041】
本実施形態の本体中空部242は、例えば、後端側に拡径部244を有している。拡径部244は、例えば、スリーブ240の軸方向に沿ってスリーブ240の(一部から)後端まで(ラッパ状に)徐々に拡径している。
【0042】
係止溝246は、例えば、スリーブ240の後端から先端側に所定距離だけ離れた位置の外周において、該スリーブ240の径方向(の内側)に凹んでいる。本実施形態では、係止溝246は、例えば、スリーブ240の外周に沿って該スリーブ240の外周全周に亘って設けられている。係止溝246には、後述のカバー部材300の突起部342が係止される。
【0043】
[カバー部材]
図1A、
図1B、
図3A~
図3Dに示すように、カバー部材300は、例えば、弾性材料を含む筒状部材として構成されている。カバー部材300を構成する弾性材料としては、例えば、ウレタンゴムなどが挙げられる。
【0044】
カバー部材300は、例えば、クランプ本体200の後端から架空線100が延出する部分(口元部)付近における外周を覆うよう構成されている。当該カバー部材300により、クランプ本体200の後端付近を弾性的に保護することができる。なお、ここでいう「クランプ本体200の後端から架空線100が延出する部分付近」とは、クランプ本体200の後端から先端側に所定長さ離れた位置から、クランプ本体200の後端から架空線100の軸方向に所定長さ離れた位置までの部分のことをいう。
【0045】
具体的な構成としては、カバー部材300は、例えば、中空部320と、本体被覆部340と、架空線被覆部360と、挿入部380と、を有している。本体被覆部340、架空線被覆部360および挿入部380は、一体としてモールド成形されている。
【0046】
(中空部)
中空部320は、カバー部材300の軸方向に沿って設けられた空隙として構成されている。中空部320は、本体被覆部340から架空線被覆部360まで連続的に貫通している。中空部320内には、クランプ本体200の一部および架空線100の一部が挿通される。中空部320の内周面は、クランプ本体200の一部および架空線100の一部のそれぞれに弾性的に密着するようになっている。
【0047】
(本体被覆部)
本体被覆部340は、例えば、スリーブ240の後端から係止溝246までを覆うよう構成されている。本体被覆部340は、例えば、突起部342と、締付溝344と、を有している。
【0048】
突起部342は、例えば、本体被覆部340の内側で該カバー部材300の中心軸に向けて径方向に突出している。本実施形態の突起部342は、例えば、本体被覆部340の内周に沿って該内周全体に亘って設けられている。突起部342は、クランプ本体200の係止溝246に係止される。
【0049】
締付溝344は、例えば、本体被覆部340の後端と突起部342との間の外周において、該カバー部材300の径方向に凹んでいる。締付溝344は、例えば、カバー部材300の外周に沿って該カバー部材300の外周全周に亘って設けられている。締付溝344には、インシュロック(登録商標)などの締付部材(不図示)が締め付けられる。これにより、締付溝344からの締付部材のずれを抑制しつつ、カバー部材300をスリーブ240の後端に固定することができる。
【0050】
(架空線被覆部)
架空線被覆部360は、例えば、スリーブ240の後端から延出した架空線100の外周を覆うよう構成されている。架空線被覆部360は、例えば、沿軸溝362と、沿周溝364と、外周テーパ部368と、を有している。
【0051】
外周テーパ部368は、例えば、カバー部材300の軸方向に沿ってカバー部材300の後端に近づくにつれて縮径するよう構成されている。これにより、外周テーパ部368を金車の車輪溝に滑らかに当接させることができる。その結果、延線クランプ装置10は、容易に金車を通過させることができる。
【0052】
なお、沿軸溝362および沿周溝364については後述する。
【0053】
(挿入部)
挿入部380は、例えば、本体被覆部340の径方向の内側において、架空線被覆部360側から突起部342側に向けて突出している。挿入部380は、例えば、スリーブ240における本体中空部242の拡径部244の内周面と架空線100との間に挿入されるよう構成されている。これにより、延線クランプ装置10が金車を通過するときに、スリーブ240の後端において架空線100に加わる曲げ応力を緩和することができる。
【0054】
挿入部380は、例えば、本体中空部242の拡径部244の内周面に倣ったテーパ形状を有していることが好ましい。言い換えれば、挿入部380は、カバー部材300の軸方向に沿って突起部342側に向けて徐々に縮径していることが好ましい。これにより、本体中空部242の拡径部244と架空線100との間の間隙形状に合わせて、挿入部380を密に嵌合させることができる。
【0055】
(2)カバー部材の着脱可能構造
図1A、
図1B、
図3A~
図3Dに示すように、本実施形態のカバー部材300は、上述のように、クランプ本体200が圧縮接続された状態の架空線100に対して容易に着脱可能に構成されている。
【0056】
具体的には、カバー部材300は、例えば、貫通スリット312と、部分スリット314(314a~314c)と、を有している。
【0057】
なお、
図1Bおよび
図3Dのカバー部材300において、中空部320を除いた部分のうち、ハッチングが付与されていない部分に、貫通スリット312および部分スリット314が設けられている。
【0058】
貫通スリット312は、例えば、カバー部材300の軸方向の全体に亘って、カバー部材300の外周側から径方向に中空部320まで切り込まれている。当該貫通スリット312をカバー部材300の周方向に開くことで、中空部320を開放し、中空部320内にクランプ本体200の一部および架空線100の一部を嵌め込むことができる。
【0059】
また、上述の沿軸溝362は、例えば、貫通スリット312と重ならない位置の外周において、カバー部材300の径方向の内側に凹み、カバー部材300の軸方向に沿って設けられている。本実施形態では、沿軸溝362は、例えば、該カバー部材300の中心軸を挟んで貫通スリット312と反対側の外周に設けられている。沿軸溝362は、例えば、架空線被覆部360の後端から沿周溝364まで設けられている。このような沿軸溝362が設けられていることにより、貫通スリット312を容易に拡開することができる。
【0060】
なお、沿軸溝362の断面形状は、弾性材料が除去されたクリアランスを確保するようU字状であることが好ましい。弾性材料がある程度剛性を有しているため、断面U字状の沿軸溝362を設けることで、貫通スリット312の拡開容易性を向上させることができる。
【0061】
上述のように、カバー部材300が貫通スリット312および沿軸溝362を有しているが、当該カバー部材300は、貫通スリット312および沿軸溝362によって、2つに分離されていない。すなわち、貫通スリット312は、中空部320を挟んでカバー部材300の片側のみに設けられており、沿軸溝362は、中空部320まで貫通していない。このように、カバー部材300が1つの部材として一体に成形されていることで、現場でのカバー部材300の着脱作業を容易に行うことができる。
【0062】
一方、部分スリット314は、例えば、カバー部材300の軸方向に沿って本体被覆部340に部分的に切り込まれている。具体的には、部分スリット314は、例えば、カバー部材300の先端から挿入部380まで切り込まれている。これにより、挿入部380を残しつつ、本体被覆部340のみを径方向に拡開することができる。
【0063】
部分スリット314は、例えば、複数設けられている。複数の部分スリット314は、例えば、カバー部材300の周方向に所定の間隔をあけて設けられている。
【0064】
本実施形態では、部分スリット314は、例えば、3つ設けられている。3つの部分スリット314のうち、中央の部分スリット314bは、中空部320を挟んで貫通スリット312の反対側に設けられている。他の2つの部分スリット314a、314cは、中央の部分スリット314bを挟んで対称に設けられている。さらに、3つの部分スリット314a~314cおよび貫通スリット312は、カバー部材300の中心軸に対して軸対称に配置されている。このような3つの部分スリット314a~314cおよび貫通スリット312により、本体被覆部340をバランスよく拡開することができる。
【0065】
また、上述の沿周溝364は、例えば、本体被覆部340の後端付近における架空線被覆部360の外周において、カバー部材300の径方向に凹み、カバー部材300の外周に沿って設けられている。沿周溝364は、例えば、カバー部材300の外周に沿って該カバー部材300の外周全周に亘って設けられている。これにより、金車通過時にカバー部材300を曲げ方向に追従させ、カバー部材300の外れを抑制することができる。また、カバー部材300を曲げに追従させることで、カバー部材300の破損を抑制(軽減)することができる。さらに、沿周溝364が設けられていることにより、カバー部材300の装着時(嵌込工程S34)に、本体被覆部340を容易に拡開することができる。
【0066】
(3)延線クランプ装置の製造方法(延線クランプ装置の組み立て方法)
次に、本実施形態に係る延線クランプ装置の製造方法について説明する。
【0067】
[S10:準備工程]
まず、架空線100を準備する。
【0068】
具体的には、架空線100を軸方向に段階的に剥がし、架空線100の鋼心部120を、外部撚線層140の先端から所定の長さだけ露出させる。
【0069】
架空線100を準備したら、クランプ本体200のスリーブ240の本体中空部242内に、段階的に剥がされた状態の架空線100を挿通させ、架空線100の所定位置にスリーブ240を退避させておく。
【0070】
[S20:圧縮接続工程]
準備工程S10が完了したら、牽引ワイヤが接続されるクランプ本体200に、架空線100の先端を圧縮接続する。
【0071】
具体的には、架空線100の外部撚線層140から露出した鋼心部120の先端を、鋼心接続部220の芯部224に圧縮接続する。鋼心部120を圧縮接続したら、当該鋼心部120の先端に鋼心接続部220が圧縮接続された状態の架空線100の先端側に、スリーブ240を移動させる。次に、鋼心接続部220の芯部224と、外部撚線層140を含む架空線100とが、スリーブ240の本体中空部242内に挿通された状態で、スリーブ240を径方向に圧縮する。なお、このとき、スリーブ240において、係止溝246よりも先端側までを圧縮する。
【0072】
このようにして、圧縮されたスリーブ240において、本体中空部242の先端側の内周面に、鋼心接続部220の連結部224aの凸部224cを食い込ませ、スリーブ240と鋼心接続部220とを互いに係合させることができる。
【0073】
[S30:カバー工程]
圧縮接続工程S20が完了したら、弾性材料を含む筒状部材として構成されるカバー部材300により、クランプ本体200の後端から架空線100が延出する部分付近における外周を覆う。
【0074】
本実施形態のカバー工程S30は、例えば、カバー部材準備工程S32と、嵌込工程S34と、締付工程S36と、を有している。
【0075】
(S32:カバー部材準備工程)
カバー部材300として、例えば、中空部320と、本体被覆部340と、架空線被覆部360と、挿入部380と、を有する部材を準備する。
【0076】
(S34:嵌込工程)
カバー部材300を準備したら、カバー部材300の貫通スリット312から中空部320を開放し、カバー部材300の中空部320内にクランプ本体200および架空線100を嵌め込む。
【0077】
本実施形態では、例えば、以下の手順で、嵌込工程S34を行う。
【0078】
カバー部材300の貫通スリット312から中空部320を開放し、クランプ本体200から離れた位置で、カバー部材300の中空部320内に架空線100を一時的に嵌め込む。これにより、架空線100の所定位置にカバー部材300を退避させておく。
【0079】
次に、カバー部材300において、部分スリット314により分離された本体被覆部340を拡開する。このとき、挿入部380を残しつつ、本体被覆部340のみを径方向に拡開し、この状態を保持する。
【0080】
本体被覆部340を拡開したら、カバー部材300の挿入部380を、スリーブ240における本体中空部242の拡径部244の内周面と架空線100との間に挿入する。挿入部380を挿入したら、本体被覆部340の拡開状態を解除し、本体被覆部340により、スリーブ240の後端から係止溝246までを覆う。このとき、本体被覆部340の突起部342を、クランプ本体200の係止溝246に係止させる。
【0081】
このようにして、カバー部材300の中空部320内にクランプ本体200および架空線100を嵌め込む。
【0082】
(S36:締付工程)
嵌込工程S34が完了したら、カバー部材300の締付溝344に、締付部材を締め付ける。これにより、カバー部材300をスリーブ240の後端に固定する。
【0083】
[S40:ワイヤ接続工程]
カバー工程S30が完了したら、鋼心接続部220の頭部222に牽引ワイヤを接続する。
【0084】
以上により、本実施形態の延線クランプ装置10が製造される。
【0085】
(4)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0086】
(a)本実施形態では、カバー部材300は、貫通スリット312を有している。貫通スリット312は、カバー部材300の軸方向の全体に亘って、カバー部材300の外周側から径方向に中空部320まで切り込まれている。当該貫通スリット312をカバー部材300の周方向に開くことで、中空部320を開放することができる。その結果、クランプ本体200が圧縮接続された状態の架空線100に対して、カバー部材300を容易に着脱させることができる。
【0087】
(b)本実施形態では、カバー部材300が上述の構成を有することで、所定長の架空線100が延線され、延線クランプ装置10の使用が完了したときに、クランプ本体200が圧縮接続された状態の架空線100から、カバー部材300を損傷させることなく、容易に脱離させることができる。
【0088】
カバー部材300を損傷させないことで、別の架空線100を延線するときに、上述の外されたカバー部材300を再利用することができる。これにより、延線に係るコストを削減することが可能となる。
【0089】
(c)本実施形態では、クランプ本体200は、スリーブ240の後端から先端側に所定距離だけ離れた位置の外周において、該スリーブ240の径方向に凹んだ係止溝246を有している。カバー部材300は、本体被覆部340の内側で該カバー部材300の中心軸に向けて径方向に突出した突起部342を有している。これにより、カバー部材300の突起部342を、クランプ本体200の係止溝246に係止させることができる。例えば、架空線100が金車を通過する際に、カバー部材300に曲げ応力が加わったとしても、カバー部材300の突起部342をクランプ本体200の係止溝246に係止させ、カバー部材300の軸方向のずれを規制することができる。これにより、カバー部材300がクランプ本体200から軸方向に外れることを抑制することができる。その結果、架空線100に損傷を与えること無く、延線を安定的に行うことが可能となる。
【0090】
(d)本実施形態では、クランプ本体200の本体中空部242は、スリーブ240の軸方向に沿ってスリーブ240の後端まで徐々に拡径した拡径部244を有している。一方で、カバー部材300の挿入部380は、本体被覆部340の径方向の内側において、スリーブ240における本体中空部242の拡径部244の内周面と架空線100との間に挿入されるよう構成されている。これにより、延線クランプ装置10が金車を通過するときに、スリーブ240の後端において(架空線100の曲げ角を緩和し、)架空線100に加わる曲げ応力を緩和することができる。その結果、架空線100の損傷を抑制することが可能となる。
【0091】
(e)本実施形態では、カバー部材300は、カバー部材300の軸方向に沿って本体被覆部340に部分的に切り込まれた部分スリット314を有している。これにより、挿入部380を残しつつ、本体被覆部340のみを径方向に拡開することができる。
【0092】
本体被覆部340のみを拡開することで、クランプ本体200の後端の外周面から、カバー部材300の突起部342を退避させることができる。さらに、この状態で、挿入部380の位置を確認しつつ、本体中空部242の拡径部244の内周面と架空線100との間に、当該挿入部380を容易に挿入することができる。その結果、クランプ本体200の後端に、カバー部材300を安定的に且つ密に嵌め込むことが可能となる。
【0093】
(f)本実施形態では、沿軸溝362は、貫通スリット312と重ならない位置の外周において、カバー部材300の径方向の内側に凹み、カバー部材300の軸方向に沿って設けられている。当該沿軸溝362により、弾性材料が除去されたクリアランスを確保することができる。これにより、貫通スリット312をカバー部材300の周方向に容易に拡開することができる。
【0094】
<本開示の第2実施形態>
次に、本開示の第2実施形態について説明する。以下、上述の実施形態と異なる要素についてのみ説明し、上述の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0095】
上述の第1実施形態では、カバー部材300が挿入部380を有する場合について説明したが、本開示はこの場合に限られない。以下の本実施形態のように、カバー部材300は、挿入部380を有していなくてもよい。
【0096】
図4を参照し、本実施形態の延線クランプ装置10について説明する。
図4は、本実施形態に係る延線クランプ装置を示す概略断面図である。
【0097】
図4に示すように、本実施形態の延線クランプ装置10は、上述の実施形態の装置よりも簡略化した構成を有している。
【0098】
本実施形態のクランプ本体200において、スリーブ240の本体中空部242の内径は、スリーブ240の軸方向に均等になっている。すなわち、スリーブ240の本体中空部242は、上述の実施形態における拡径部244を有していない。
【0099】
また、本実施形態では、カバー部材300は、上述の実施形態における挿入部380を有していない。つまり、カバー部材300の本体被覆部340を拡開した状態で、挿入部380をスリーブ240の拡径部244内に挿入する工程を実施する必要がない。
【0100】
そのため、本実施形態では、カバー部材300は、上述の実施形態における部分スリット314を有していない。
【0101】
[本実施形態の効果]
本実施形態のように、延線クランプ装置10の構成および嵌め込みを簡略化することができる。例えば、カバー部材300をモールド成形する金型を簡略化し、金型の作製コストを削減することができる。
【0102】
ただし、金車通過時の架空線100への曲げ応力の緩和性を向上させるためには、上述の第1実施形態のように、カバー部材300が、スリーブ240の本体中空部242内に挿入される挿入部380を有していたほうが好ましい。
【0103】
<本開示の他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について具体的に説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0104】
上述の実施形態では、架空線100が架空送電線である場合について説明したが、架空線100は、架空地線であってもよい。
【0105】
上述の実施形態では、クランプ本体200のスリーブ240の係止溝246が該スリーブ240の外周全周に亘って設けられ、カバー部材300の突起部342が内周全体に亘って設けられている場合について説明したが、本開示はこの場合に限られない。クランプ本体200のスリーブ240の係止溝246が該スリーブ240の外周全周に亘って設けられ、カバー部材300の突起部342がカバー部材300の内周の一部に設けられていてもよい。或いは、クランプ本体200のスリーブ240の係止溝246が該スリーブ240の外周の少なくとも一部に設けられ、カバー部材300の突起部342が当該係止溝246に対応する位置のみに設けられていてもよい。
【0106】
上述の実施形態では、カバー部材300の締付溝344を締め付ける締付部材の一例として、インシュロック(登録商標)を挙げたが、本開示はこれに限られない。締付部材は、例えば、ビニルテープなどであってもよい。すなわち、締付部材により、カバー部材300の外れを抑制する程度にカバー部材300を締め付けておけば(留めておけば)よい。
【0107】
上述の実施形態では、沿軸溝362は、該カバー部材300の中心軸を挟んで貫通スリット312と反対側の外周に設けられている場合について説明したが、本開示はこの場合に限られない。沿軸溝362は、貫通スリット312と重ならない位置であれば、カバー部材300の外周のどの位置に設けられていてもよい。また、カバー部材300の外周における沿軸溝362は、1箇所だけではなく、複数箇所に設けられていてもよい。沿軸溝362は、例えば、カバー部材300の中心軸を中心として回転対称な位置に設けられていてもよい。具体的には、沿軸溝362は、例えば、カバー部材300の中心軸を中心として貫通スリット312から120°ずつ回転させた位置に2箇所設けられていてもよいし、或いは、カバー部材300の中心軸を中心として貫通スリット312から90°ずつ回転させた位置に3箇所設けられていてもよい。これにより、貫通スリット312をカバー部材300の周方向にさらに容易に拡開することができる。
【0108】
上述の実施形態では、カバー部材300の沿軸溝362が、該カバー部材300の中心軸を挟んで貫通スリット312と反対側の外周において、カバー部材300の径方向の内側に凹み、カバー部材300の軸方向に沿って設けられている場合について説明したが、本開示はこの場合に限られず、以下の変形例のような構成を有していてもよい。
【0109】
[変形例]
図5A~
図5Cを参照し、変形例のカバー部材300について説明する。
図5A~
図5Cのそれぞれは、本開示の変形例に係るカバー部材を示す概略背面図である。
【0110】
図5Aに示すように、変形例では、カバー部材300の沿軸溝362は、該カバー部材300の中心軸を挟んで貫通スリット312と反対側の内周において、カバー部材300の径方向の外側に凹み、カバー部材300の軸方向に沿って設けられている。沿軸溝362の断面形状は、例えば、U字状である。
【0111】
変形例では、カバー部材300の沿軸溝362がカバー部材300の内周に設けられていることで、貫通スリット312を拡開するときに、カバー部材300の中心軸を挟んで貫通スリット312の反対側においても、沿軸溝362を境にカバー部材300を割り開くことができる。これにより、貫通スリット312をカバー部材300の周方向に容易に拡開することができる。
【0112】
なお、変形例では、沿軸溝362は、スリット状であってもよい。
【0113】
また、変形例では、沿軸溝362は、貫通スリット312と重ならない位置であれば、カバー部材300の内周のどの位置に設けられていてもよい。また、カバー部材300の内周における沿軸溝362は、1箇所だけではなく、複数箇所に設けられていてもよい。
【0114】
図5Bおよび
図5Cに示すように、沿軸溝362は、例えば、カバー部材300の中心軸を中心として回転対称な位置に設けられていてもよい。具体的には、沿軸溝362は、例えば、カバー部材300の中心軸を中心として貫通スリット312から120°ずつ回転させた位置に2箇所設けられていてもよいし、或いは、カバー部材300の中心軸を中心として貫通スリット312から90°ずつ回転させた位置に3箇所設けられていてもよい。これにより、貫通スリット312をカバー部材300の周方向にさらに容易に拡開することができる。
【0115】
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様を付記する。
【0116】
(付記1)
架空線の先端が圧縮接続され、且つ、牽引ワイヤが接続されるクランプ本体と、
弾性材料を含む筒状部材として構成され、前記クランプ本体の後端から前記架空線が延出する部分付近における外周を覆うカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材は、
前記クランプ本体の一部および前記架空線の一部が挿通される中空部と、
該カバー部材の軸方向の全体に亘って、前記カバー部材の外周側から径方向に前記中空部まで切り込まれ、前記中空部を開放可能に構成された貫通スリットと、
を有する
延線クランプ装置。
【0117】
(付記2)
前記クランプ本体は、前記後端から先端側に所定距離だけ離れた位置の外周において、該クランプ本体の径方向に凹んだ係止溝を有し、
前記カバー部材は、
前記クランプ本体の前記後端から前記係止溝までを覆う本体被覆部と、
前記本体被覆部の内側で該カバー部材の中心軸に向けて径方向に突出し、前記クランプ本体の前記係止溝に係止される突起部と、
を有する
付記1に記載の延線クランプ装置。
【0118】
(付記3)
前記クランプ本体は、前記架空線の前記先端が挿通される本体中空部を有し、
前記本体中空部は、前記クランプ本体の軸方向に沿って前記後端まで徐々に拡径した拡径部を有し、
前記カバー部材は、前記本体被覆部の径方向の内側において、前記本体中空部の前記拡径部の内周面と前記架空線との間に挿入される挿入部を有する
付記2に記載の延線クランプ装置。
【0119】
(付記4)
前記カバー部材は、前記カバー部材の軸方向に沿って前記本体被覆部に部分的に切り込まれ、前記挿入部を残しつつ前記本体被覆部のみを径方向に拡開可能に構成された部分スリットを有する
付記3に記載の延線クランプ装置。
【0120】
(付記5)
前記部分スリットは、前記カバー部材の周方向に所定の間隔をあけて複数設けられている
付記4に記載の延線クランプ装置。
【0121】
(付記6)
前記カバー部材は、前記部分スリットよりも後端側の外周において、前記カバー部材の径方向に凹み、前記カバー部材の外周に沿って設けられた沿周溝を有する
付記4又は付記5に記載の延線クランプ装置。
【0122】
(付記7)
前記カバー部材は、前記貫通スリットと重ならない位置の内周または外周のいずれかにおいて、前記カバー部材の径方向に凹み、前記カバー部材の軸方向に沿って設けられた沿軸溝を有する
付記1から付記6のいずれか1つに記載の延線クランプ装置。
【0123】
(付記8)
付記1から付記7のいずれか1つに記載の延線クランプ装置に用いられる
クランプ本体。
【0124】
(付記9)
付記1から付記7のいずれか1つに記載の延線クランプ装置に用いられる
カバー部材。
【0125】
(付記10)
牽引ワイヤが接続されるクランプ本体に、架空線の先端を圧縮接続する工程と、
弾性材料を含む筒状部材として構成されるカバー部材により、前記クランプ本体の後端から前記架空線が延出する部分付近における外周を覆う工程と、
を備え、
前記カバー部材により覆う工程は、
前記カバー部材として、前記クランプ本体の一部および前記架空線の一部が挿通される中空部と、該カバー部材の軸方向の全体に亘って、前記カバー部材の外周側から径方向に前記中空部まで切り込まれた貫通スリットと、を有する部材を準備する工程と、
前記カバー部材の前記貫通スリットから前記中空部を開放し、前記カバー部材の前記中空部内に前記クランプ本体および前記架空線を嵌め込む工程と、
を有する
延線クランプ装置の製造方法。
【符号の説明】
【0126】
10 延線クランプ装置
100 架空線
120 鋼心部
140 外部撚線層
200 クランプ本体
220 鋼心接続部
222 頭部
222a U字溝
222b 連結軸
224 芯部
224a 連結部
224b 筒状部
224c 凸部
240 スリーブ
242 本体中空部
244 拡径部
246 係止溝
300 カバー部材
312 貫通スリット
314、314a~314c 部分スリット
320 中空部
340 本体被覆部
342 突起部
344 締付溝
360 架空線被覆部
362 沿軸溝
364 沿周溝
368 外周テーパ部
380 挿入部