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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006230
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/32 20060101AFI20230111BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20230111BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20230111BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20230111BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B63H21/32 Z
F01N3/08 B
F01N3/24 R
B01D53/56 310
B63H21/38 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108730
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】雲石 隆司
【テーマコード(参考)】
3G091
4D002
【Fターム(参考)】
3G091AA04
3G091AA19
3G091AB05
3G091BA14
3G091CA17
3G091EA01
3G091EA22
3G091EA33
3G091HA37
4D002AA12
4D002AC10
4D002BA06
4D002DA07
4D002EA14
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB02
4D002GB05
4D002GB06
4D002GB08
4D002GB11
4D002GB20
(57)【要約】
【課題】船体の大型化を抑制できる船舶を提供する。
【解決手段】船体と、前記船体に設けられて、燃料アンモニアを貯留する燃料アンモニアタンクと、前記燃料アンモニアタンクに接続された燃料供給ラインと、前記燃料供給ラインを介して前記燃料アンモニアタンクから前記燃料アンモニアが導入される燃焼装置と、前記燃料供給ラインを介して少なくとも前記燃焼装置に不活性ガスを圧送する不活性ガス供給装置と、前記燃焼装置に圧送された前記不活性ガスとともに前記燃焼装置内に残留したアンモニアが導入されるアンモニア回収タンクと、前記燃焼装置での前記燃料アンモニアの燃焼により発生する排ガスが導入される脱硝装置と、前記アンモニア回収タンクと前記脱硝装置とを接続するとともに、前記アンモニア回収タンク内の前記アンモニアを、前記脱硝装置に還元剤として導入するアンモニア導入ラインと、を備える船舶。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体と、
前記船体に設けられて、燃料アンモニアを貯留する燃料アンモニアタンクと、
前記燃料アンモニアタンクに接続された燃料供給ラインと、
前記燃料供給ラインを介して前記燃料アンモニアタンクから前記燃料アンモニアが導入される燃焼装置と、
前記燃料供給ラインを介して少なくとも前記燃焼装置に不活性ガスを圧送する不活性ガス供給装置と、
前記燃焼装置に圧送された前記不活性ガスとともに前記燃焼装置内に残留したアンモニアが導入されるアンモニア回収タンクと、
前記燃焼装置での前記燃料アンモニアの燃焼により発生する排ガスが導入される脱硝装置と、
前記アンモニア回収タンクと前記脱硝装置とを接続するとともに、前記アンモニア回収タンク内の前記アンモニアを、前記脱硝装置に還元剤として導入するアンモニア導入ラインと、
を備える船舶。
【請求項2】
前記アンモニア回収タンク内の気体を前記アンモニア導入ラインに導入するガスラインを更に備え、
前記ガスラインを流通する前記気体から前記アンモニアを分離するとともに、該アンモニアを前記脱硝装置へ送気する分離装置を更に備える請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記燃料アンモニアタンクの前記燃料アンモニアを、前記脱硝装置に還元剤として供給する還元剤供給ラインを更に備える請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項4】
前記アンモニア導入ライン内及び前記還元剤供給ライン内の、前記アンモニアの濃度と流量のうち少なくとも一方を測定するアンモニアセンサと、
前記アンモニアの前記濃度と前記流量のうち少なくとも一方と、前記燃焼装置の負荷情報と、に基づいて、前記アンモニア導入ライン及び前記還元剤供給ラインから前記脱硝装置に導入する前記アンモニアの量を調整するミキサーと、
を更に備える請求項3に記載の船舶。
【請求項5】
前記不活性ガス供給装置と前記アンモニア回収タンクとを接続するとともに、内部を前記不活性ガスが流通するアンモニアパージラインを更に備える請求項1から4の何れか一項に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアを主燃料にする船舶では、窒素酸化物の排出を抑制するためにアンモニアの燃焼に伴って生じた排ガスを脱硝装置(SCR)にて処理する必要がある。この脱硝装置で処理された排ガスは、例えば、煙突等を介して大気中へ放出される。
特許文献1には、脱硝装置で用いる還元剤としてのアンモニアを、アンモニア生成器によって生成する船舶が開示されている。
【0003】
一方で、上記船舶では、燃焼装置である主機の燃料をアンモニアから重油等の他の燃料へ切り替える場合がある。そして、主機の燃料をアンモニアから他の燃料へ切り替える時には、アンモニア燃料を配管中から取り除く目的で、例えば、燃焼装置内で燃焼せずに残留したアンモニアを不活性ガス等によりパージする必要がある。
特許文献2には、可燃性ガスにより駆動されるガスエンジンの配管内等に残る可燃性ガスを、不活性ガスでパージし、ベントポストを介して大気中へ放出する船舶が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-47094号公報
【特許文献2】特開2013-11332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された船舶では、還元剤を生成するためのアンモニア生成器が必要となるため、アンモニア生成器を設置するためのスペースを船体内に確保する必要がある。
特許文献2のように不活性ガスによりパージされたアンモニアは、そのまま大気中に放出することができないため、アンモニア除害装置によって無害化(除害)する必要がある。しかしながら、例えば、燃焼装置内にアンモニアが多量に残留している場合には、多量のアンモニアを除害しなくてはならないため、大型のアンモニア除害装置が必要となり、船体が大型化するという課題が有る。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、船体の大型化を抑制できる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る船舶は、船体と、前記船体に設けられて、燃料アンモニアを貯留する燃料アンモニアタンクと、前記燃料アンモニアタンクに接続された燃料供給ラインと、前記燃料供給ラインを介して前記燃料アンモニアタンクから前記燃料アンモニアが導入される燃焼装置と、前記燃料供給ラインを介して少なくとも前記燃焼装置に不活性ガスを圧送する不活性ガス供給装置と、前記燃焼装置に圧送された前記不活性ガスとともに前記燃焼装置内に残留したアンモニアが導入されるアンモニア回収タンクと、前記燃焼装置での前記燃料アンモニアの燃焼により発生する排ガスが導入される脱硝装置と、前記アンモニア回収タンクと前記脱硝装置とを接続するとともに、前記アンモニア回収タンク内の前記アンモニアを、前記脱硝装置に還元剤として導入するアンモニア導入ラインと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、船体の大型化を抑制できる船舶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る船舶の側面図である。
図2】本開示の実施形態に係る脱硝装置へのアンモニアの導入系統を示す図である。
図3】本開示のその他の実施形態に係る脱硝装置へのアンモニアの導入系統を示す図である。
図4】本開示のその他の実施形態に係る脱硝装置へのアンモニアの導入系統を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の各実施形態に係る船舶を図面に基づき説明する。
【0011】
(船舶の構成)
本実施形態における船舶は、アンモニアを燃料とする船舶である。船舶の船種は、特定のものに限られることはない。船舶の船種には、例えば液化ガス運搬船、フェリー、RO-RO船、自動車運搬船、客船等が挙げられる。
【0012】
図1及び図2に示すように、船舶1は、船体10と、上部構造20と、燃焼装置30と、燃料アンモニアタンク40と、燃料供給系統50と、アンモニア回収タンク100と、不活性ガス供給装置60と、不活性ガス供給系統70と、パージ系統80と、アンモニアパージライン90と、脱硝装置110と、排ガスダクト120と、煙道130と、アンモニア導入系統140と、アンモニア分離系統150と、還元剤供給系統160と、ミキサー170と、アンモニア除害系統180と、ベントポスト190と、を備えている。
【0013】
(船体)
図1に示すように、船体10は、舷側11A,11Bと、船底12と、上甲板13と、を有している。舷側11A,11Bは、左右の舷側11A及び舷側11Bをそれぞれ形成する一対の舷側外板を有している。船底12は、これら舷側11A,11Bを接続する二重底の船底外板を有している。上甲板13は、一対の舷側11A,11B外板の上下方向Dvの上方側端部に亘って設けられている。
【0014】
これら舷側11A,11B、船底12、及び上甲板13により、船体10の外殻は、船首尾方向Faに直交する断面視で、箱型形状を成している。本実施形態における船首尾方向Faとは、船体10の船尾15から船首14にかけて延びる方向である。
【0015】
(上部構造)
上部構造20は、上甲板13から上下方向Dvの上方側に向かうように設けられている構造物である。上部構造20内には、例えば、居住区等が設けられている。
【0016】
(燃焼装置)
燃焼装置30は、燃料を燃焼させることで熱エネルギーを発生させる装置である。燃焼装置30は、例えば、船体10内部に設けられている機関室(図示省略)等の区画に設けられている。燃焼装置30としては、船舶1を推進させるための主機や、船内に電気を供給する発電機、作動流体としての蒸気を発生させるボイラ等を例示できる。本実施形態における燃焼装置30は、燃料としてアンモニア(以下、燃料アンモニアと称する)を用いる主機である。
【0017】
燃焼装置30には、この燃焼装置30の負荷情報を所定の時間間隔で定期的に取得する出力監視装置(図示省略)が設けられている。本実施形態における負荷情報は、例えば、燃焼装置30の回転数や、エンジン出力(馬力)等の燃焼装置30の出力の大きさ(燃焼装置30にどの程度の負荷がかけられているか)を表す情報である。出力監視装置は、燃焼装置30の負荷情報を取得するとともに、燃焼装置30の外部に設けられている弁制御装置(後述する供給量制御装置171)へ有線又は無線で送信する。出力監視装置には、例えば、馬力計(船舶用軸馬力計)等の計測機器が挙げられる。
【0018】
(燃料アンモニアタンク)
燃料アンモニアタンク40は、燃焼装置30用の燃料アンモニアとして液化アンモニアを内部に貯留するタンクである。本実施形態における燃料アンモニアタンク40は、上部構造20よりも船首尾方向Faにおける船尾15側の上甲板13上に設けられている。
【0019】
(燃料供給系統)
燃料供給系統50は、燃料アンモニアタンク40から燃焼装置30に液体の燃料アンモニアを供給する系統である。本実施形態における燃料供給系統50は、例えば、船体10内部に設けられている。
【0020】
図2に示すように、燃料供給系統50は、燃料供給ライン51と、ミックスタンク52と、リターンライン53と、第一ポンプ54と、第一熱交換器55と、第一燃料圧調整装置56と、第二燃料圧調整装置57と、第二熱交換器58と、を有している。
【0021】
燃料供給ライン51は、燃料アンモニアタンク40と燃焼装置30とを接続している管である。燃料供給ライン51には、液体の燃料アンモニアが燃料アンモニアタンク40から燃焼装置30に向かって流れる。したがって、燃焼装置30には、燃料供給ライン51を介して燃料アンモニアタンク40から燃料アンモニアが導入される。
【0022】
ミックスタンク52は、燃焼装置30の内部へ供給されずに戻ってきた、即ち燃焼に使用されなかった燃料アンモニアを燃焼装置30から回収するとともに、この回収したアンモニアを燃料供給ライン51内に再度燃料アンモニアとして供給するタンクである。ミックスタンク52は、燃料供給ライン51に設けられている。なお、ミックスタンク52は、タンクに限定されることはなく、例えば、管であってもよい。
【0023】
リターンライン53は、燃焼装置30とミックスタンク52とを接続している管である。リターンライン53には、燃焼装置30内で燃焼しきらずに残留した液体のアンモニアが燃焼装置30からミックスタンク52に向かって流れる。したがって、リターンライン53によってミックスタンク52に送られたアンモニアは、ミックスタンク52内で燃料供給ライン51内に再度供給されることで、再度燃焼装置30で用いられる燃料アンモニアとなる。
【0024】
第一ポンプ54は、燃料アンモニアを燃料アンモニアタンク40から燃焼装置30に圧送するポンプである。第一ポンプ54は、ミックスタンク52よりも燃焼装置30側の燃料供給ライン51に設けられている。
【0025】
第一熱交換器55は、燃料供給ライン51内を流れる燃料アンモニアを加熱する熱交換器である。第一熱交換器55は、第一ポンプ54よりも燃焼装置30側の燃料供給ライン51に設けられている。第一熱交換器55には、例えば、船体10内部に設けられている補助ボイラ等(図示省略)で発生した蒸気、又は加熱された液体が導入される(以下、この蒸気又は液体を加熱源と称する)。
【0026】
この加熱源と燃料アンモニアとが第一熱交換器55内で熱交換することで、燃料アンモニアが燃焼に適した温度まで温められる。
【0027】
第一燃料圧調整装置56は、燃料供給ライン51内を流れる燃料アンモニアの燃焼装置30への流入圧力を調整する装置である。第一燃料圧調整装置56は、第一熱交換器55よりも燃焼装置30側の燃料供給ライン51に設けられている。
【0028】
第一燃料圧調整装置56は、例えば、シャットバルブ56aと、第一制御弁56bと、を有している。本実施形態におけるシャットバルブ56aは、燃料供給ライン51上に相互に離間した状態で二つが設けられている。シャットバルブ56aは、通常時は開放状態とされており、所定のタイミングで閉塞状態とされる。シャットバルブ56aが閉塞状態になると、燃料アンモニアタンク40内の燃料アンモニアが燃料供給ライン51内を燃焼装置30に向かって流れることが不可能になる。
【0029】
第一制御弁56bは、二つのシャットバルブ56a間の燃料供給ライン51に設けられている自動操作弁である。第一制御弁56bは、弁の開度によって燃料供給ライン51を流れる燃料アンモニアの圧力を調整する。第一制御弁56bの開度は、例えば、第一燃料圧調整装置56の外部に設けられている第一制御弁56bを制御する制御装置等(図示省略)から送信される開度を指示する制御信号が第一制御弁56bに入力されることによって好適に制御される。
【0030】
第二燃料圧調整装置57は、リターンライン53を流れるアンモニアのミックスタンク52への流入圧力を調整する装置である。第二燃料圧調整装置57は、リターンライン53に設けられている。
【0031】
第二燃料圧調整装置57は、例えば、シャットバルブ57aと、第二制御弁57bと、を有している。シャットバルブ57aは、リターンライン53上に相互に離間した状態で二つが設けられている。シャットバルブ57aは、通常時は開放状態とされており、所定のタイミングで閉塞状態とされる。シャットバルブ57aが閉塞状態になると、燃焼装置30内のアンモニアがリターンライン53内をミックスタンク52に向かって流れることが不可能になる。
【0032】
第二制御弁57bは、二つの上記シャットバルブ57a間のリターンライン53に設けられている自動操作弁である。第二制御弁57bは、弁の開度によってリターンライン53内を流れるアンモニアの圧力を調整する。第二制御弁57bの開度は、例えば、第二燃料圧調整装置57の外部に設けられている第二制御弁57bを制御する制御装置等(図示省略)から送信される開度を指示する制御信号が第一制御弁56bに入力されることによって好適に制御される。
【0033】
なお、シャットバルブ56a,57aが閉塞状態とされるタイミングとしては、例えば、主機としての燃焼装置30が用いる燃料をアンモニアから重油等へ切り換える際に、シャットバルブ56a,57a間に存在する燃料アンモニアを外部へ取り出して回収する場合等を例示できる。
【0034】
第二熱交換器58は、上記か熱源を利用してリターンライン53内を流れるアンモニアを加熱する熱交換器である。第二熱交換器58は、第二燃料圧調整装置57よりもミックスタンク52側のリターンライン53に設けられている。第二熱交換器58よりも上流側のリターンライン53内を流れるアンモニアが加熱源よりも高温である場合、このアンモニアは、第二熱交換器58内で冷却される。
【0035】
(アンモニア回収タンク)
アンモニア回収タンク100は、燃料供給ライン51内、燃焼装置30内、及びリターンライン53内に残留したアンモニアが導入されるとともに、このアンモニアを内部に貯留するアンモニア回収部としてのタンクである。本実施形態におけるアンモニア回収タンク100は、例えば、船体10内部に設けられている。
【0036】
アンモニア回収タンク100内には、レベルセンサS3が設けられている。レベルセンサS3は、アンモニア回収タンク100内に貯留された液体のアンモニアの貯留量を測定する水位計である。本実施形態におけるレベルセンサS3は、アンモニア回収タンク100内のアンモニアの貯留量の測定結果を、アンモニア回収タンク100の外部に設けられている制御装置等(図示省略)へ無線又は有線で送信する。
【0037】
(不活性ガス供給装置)
不活性ガス供給装置60は、アンモニアと非反応性のパージ用の不活性ガスを生成するとともに圧送する装置である。不活性ガスには、例えば窒素ガス(N)等の気体が挙げられる。本実施形態における不活性ガス供給装置60は、例えば、船体10内部に設けられている。
【0038】
(不活性ガス供給系統)
不活性ガス供給系統70は、不活性ガス供給装置60が生成した不活性ガスを燃料供給系統50及び燃焼装置30に送り、燃料供給系統50及び燃焼装置30に存在するアンモニアをパージする系統である。本実施形態における不活性ガス供給系統70は、例えば、船体10内部に設けられている。不活性ガス供給系統70は、第一パージライン71と、第一パージ弁72と、を有している。
【0039】
第一パージライン71は、不活性ガス供給装置60が生成する不活性ガスが流れる管である。第一パージライン71の一端は、不活性ガス供給装置60に接続されている。第一パージライン71の他端は、第一熱交換器55と第一燃料圧調整装置56との間における燃料供給ライン51に接続されている。
【0040】
不活性ガス供給装置60から第一パージライン71を介して圧送される不活性ガスは、燃料供給ライン51に流入した後、燃焼装置30、リターンライン53の順に圧送される。これにより、この不活性ガスは、燃料供給ライン51内、燃焼装置30内、及びリターンライン53内に存在するアンモニアを押し出す(パージする)。
【0041】
第一パージ弁72は、第一パージライン71に設けられている自動操作弁である。第一パージ弁72は、通常時は閉塞状態とされており、所定のタイミングで開放状態とされる。第一パージ弁72が開放状態になると、不活性ガスが第一パージライン71内を不活性ガス供給装置60から燃料供給ライン51に向かって流れることが可能になる。なお、本実施形態における自動操作弁は、電磁弁や、電動モーターで駆動する弁等を含む。
【0042】
(パージ系統)
パージ系統80は、燃料供給ライン51内、燃焼装置30内、及びリターンライン53内に残留するアンモニアを燃料アンモニアタンク40へ取り出す系統である。本実施形態におけるパージ系統80は、例えば、船体10内部に設けられている。パージ系統80は、複数の第二パージライン81と、複数の第二パージ弁82と、を有している。
【0043】
複数の第二パージライン81は、燃料供給ライン51と燃料アンモニアタンク40、燃焼装置30と燃料アンモニアタンク40、及びリターンライン53と燃料アンモニアタンク40をそれぞれ接続している管である。燃料供給ライン51内、燃焼装置30内、及びリターンライン53に存在するアンモニアが不活性ガスにパージされることで、このアンモニアが第二パージライン81内を不活性ガスとともに流れる。
【0044】
本実施形態では、一例として、五つの第二パージライン81が、それぞれ燃料供給ライン51と燃料アンモニアタンク40、燃焼装置30と燃料アンモニアタンク40、及びリターンライン53と燃料アンモニアタンク40を接続している。
【0045】
複数の第二パージライン81の一端は、燃焼装置30と、第一燃料圧調整装置56の二つのシャットバルブ56aの間における燃料供給ライン51と、第二燃料圧調整装置57の二つのシャットバルブ57aの間におけるリターンライン53と、第一燃料圧調整装置56と第一熱交換器55との間における燃料供給ライン51と、第二燃料圧調整装置57とミックスタンク52との間におけるリターンライン53と、にそれぞれ接続されている。複数の第二パージライン81の他端は、燃料アンモニアタンク40にそれぞれ接続されている。
【0046】
複数の第二パージ弁82は、複数の第二パージライン81にそれぞれ一つずつ設けられている自動操作弁である。第二パージ弁82は、通常時は閉塞状態とされており、第一パージ弁72とともに開放状態とされる。したがって、第一パージ弁72及び第二パージ弁82が開放状態になると、不活性ガスは第一パージライン71を流れて、燃料供給ライン51内、燃焼装置30内、及びリターンライン53内に流入する。
【0047】
不活性ガスがこれら燃料供給ライン51内、燃焼装置30内、及びリターンライン53内に流入すると、この不活性ガスによりパージされたアンモニアは、各第二パージライン81を介してアンモニア回収タンク100に向かって流れる。即ち、燃料供給ライン51内、燃焼装置30内、及びリターンライン53内に残留しているアンモニアが不活性ガスに置換される(パージされる)。
【0048】
(アンモニアパージライン)
アンモニアパージライン90は、アンモニア回収タンク100内のアンモニアをパージするための不活性ガスが流通する管である。アンモニアパージライン90の一端は、第一パージ弁72よりも不活性ガス供給装置60側の第一パージライン71に接続されている。アンモニアパージライン90の他端は、アンモニア回収タンク100に接続されている。即ち、アンモニアパージライン90は、第一パージライン71から分岐することで、不活性ガス供給装置60とアンモニア回収タンクとを接続している。
【0049】
アンモニアパージライン90には、第三パージ弁91が設けられている。第三パージ弁91は、自動操作弁である。第三パージ弁91は、通常時は閉塞状態とされており、所定のタイミングで開放状態とされる。第三パージ弁91が開放状態になると、不活性ガスは第一パージライン71を介してアンモニアパージライン90内に導入された後、アンモニア回収タンク100に圧送される。
【0050】
なお、第三パージ弁91が開放状態とされるタイミングとしては、例えば、第一パージ弁72が閉塞状態とされた場合であって、且つアンモニア回収タンク100内のアンモニアをパージする必要がある場合等を例示できる。
【0051】
(脱硝装置)
脱硝装置110は、燃焼装置30でのアンモニアの燃焼により発生する排ガスGが導入されるとともに、この排ガスGに脱硝処理を施す装置である。脱硝装置110は、脱硝触媒等を用いて排ガスG中に含まれる窒素酸化物(NO)を窒素(N)と水(HO)とに分解する。
【0052】
本実施形態における脱硝装置110は、選択的触媒還元脱硝装置(SCR;Selective catalytic reduction)である。脱硝装置110は、例えば、船体10内部に設けられている。脱硝装置110は、燃焼装置30から導入された排ガスGの窒素酸化物濃度を大気中に放出してもよい水準まで下げる。
【0053】
(排ガスダクト)
排ガスダクト120は、燃焼装置30で生じた排ガスGを脱硝装置110へ導くための煙道を内側に形成するダクトである。排ガスダクト120の一端は、燃焼装置30に接続されている。排ガスダクト120の他端は、脱硝装置110に接続されている。したがって、燃焼装置30内での燃料アンモニアの燃焼に伴って発生した排ガスGは、この排ガスダクト120を介して燃焼装置30から脱硝装置110に導入される。
【0054】
(煙道)
煙道130は、脱硝装置110によって脱硝処理が施された排ガスGを、大気中へ放出する排ガスダクトである。本実施形態における煙道130は、脱硝装置110に接続されるとともに、上甲板13を貫通して船体10外部における上下方向Dvの上方側に延びている。なお、図1に示すように煙道130の船体10外部に延びている部分は、船体構造131やファンネル132によって囲まれている。
【0055】
煙道130の内部には、アンモニアセンサS1と、窒素酸化物センサS2とが設けられている。以下、煙道130の内部に設けられているアンモニアセンサS1を第一アンモニアセンサS1aと称する。
【0056】
第一アンモニアセンサS1aは、煙道130内部を上方に向かって流れる排ガスGに含まれるアンモニアの濃度を測定するセンサである。本実施形態における第一アンモニアセンサS1aは、煙道130内部を流れる排ガスGに含まれるアンモニアの濃度の測定結果を、制御装置等(図示省略)へ無線又は有線で送信する。
【0057】
窒素酸化物センサS2は、煙道130内部を上方に向かって流れる排ガスGの窒素酸化物濃度を測定するセンサである。本実施形態における窒素酸化物センサS2は、煙道130内部を流れる排ガスGの窒素酸化物濃度の測定結果を、制御装置等(図示省略)へ無線又は有線で送信する。
【0058】
(アンモニア導入系統)
アンモニア導入系統140は、アンモニア回収タンク100から脱硝装置110へアンモニアを導入する系統である。本実施形態におけるアンモニア導入系統140は、例えば、船体10内部に設けられている。アンモニア導入系統140は、アンモニア導入ライン141と、第二ポンプ142と、アンモニア導入弁143と、を有している。
【0059】
アンモニア導入ライン141は、アンモニア回収タンク100と脱硝装置110とを接続している管である。アンモニア導入ライン141の内部は、アンモニア回収タンク100内のアンモニアが脱硝装置110に向かって流れる。
【0060】
アンモニア導入ライン141を介して脱硝装置110に導入されたアンモニアは、脱硝装置110内で上記脱硝触媒の還元剤として利用される。つまり、アンモニア導入ライン141は、アンモニア回収タンク100と脱硝装置110とを接続するとともに、アンモニア回収タンク100内のアンモニアを、脱硝装置110に還元剤として導入する。
【0061】
アンモニア導入ライン141の内部には、アンモニアセンサS1が設けられている。以下、アンモニア導入ライン141に設けられているアンモニアセンサS1を第二アンモニアセンサS1bと称する。第二アンモニアセンサS1bは、アンモニア導入ライン141内を流れるアンモニアの濃度及び流量を測定するセンサである。
【0062】
本実施形態における第二アンモニアセンサS1bは、所定の時間間隔でアンモニア導入ライン141内を流れるアンモニアの濃度及び流量を測定し、測定結果をアンモニア導入ライン141の外部に設けられた弁制御装置(後述する供給量制御装置171)に送信する。
【0063】
第二ポンプ142は、アンモニア回収タンク100内に貯留されている液体のアンモニアを、アンモニア回収タンク100から脱硝装置110に圧送するポンプである。第二ポンプ142は、アンモニア導入ライン141内の第二アンモニアセンサS1bが設けられている位置とアンモニア回収タンク100との間におけるアンモニア導入ライン141に設けられている。
【0064】
なお、アンモニア回収タンク100の内圧が十分に高い状態である場合、アンモニア導入系統140は、第二ポンプ142を有していなくてもよい。即ち、アンモニア回収タンク100内の圧力が高い状態であれば、圧力差によってアンモニア回収タンク100内の液体のアンモニアはアンモニア導入ライン141内に押し出される。これにより、液体のアンモニアは、アンモニア導入ライン141内をアンモニア回収タンク100から脱硝装置110に向かって流れることが可能となる。
【0065】
アンモニア導入弁143は、第二ポンプ142とアンモニア回収タンク100との間におけるアンモニア導入ライン141に設けられている自動操作弁である。アンモニア導入弁143は、通常時は開放状態とされており、所定のタイミングで閉塞状態とされる。アンモニア導入弁143が閉塞状態になると、アンモニアがアンモニア導入ライン141内をアンモニア回収タンク100から脱硝装置110に向かって流れることが不可能になる。
【0066】
具体的には、アンモニア導入弁143は、例えば、アンモニア回収タンク100からアンモニア導入ライン141に流入するアンモニアが液体から気体の状態へ遷移した場合等に閉塞状態とされる。アンモニアの状態が液体から気体に遷移した場合、アンモニア回収タンク100からアンモニア導入ライン141へ導入されるアンモニアには不活性ガスが混在する。
【0067】
なお、アンモニア導入弁143は、アンモニア回収タンク100内に設けられているレベルセンサS3の測定結果に基づいて、開放状態か閉塞状態かが決定されてもよい。具体的には、レベルセンサS3の測定結果を受け取った制御装置等が、この測定結果と、所定の水位に係る閾値とを比較して、アンモニア導入弁143がとるべき開閉状態を判定してもよい。
【0068】
(アンモニア分離系統)
アンモニア分離系統150は、アンモニア回収タンク100の気相部からの不活性ガスとアンモニアガスとが混ざった混合気体からアンモニアを分離する系統である。本実施形態におけるアンモニア分離系統150は、例えば、船体10内部に設けられている。アンモニア分離系統150は、ガスライン151と、ガス圧送機152と、分離装置153と、ガスライン入口弁154と、ガスライン出口弁155と、返送ライン156と、を有している。
【0069】
ガスライン151は、アンモニア回収タンク100の気相部からの不活性ガスとアンモニアガスとが混ざった混合気体を導入させる管である。ガスライン151の一端は、アンモニア回収タンク100に接続されている。ガスライン151の他端は、アンモニア導入弁143と、アンモニア導入ライン141内の第二アンモニアセンサS1bが設けられている位置との間におけるアンモニア導入ライン141に接続されている。
【0070】
ガス圧送機152は、ガスライン151に設けられるとともに、気体をガスライン151内に流通させる送風機である。
【0071】
分離装置153は、ガスライン151を流通する気体からアンモニアを分離するとともに、該アンモニアを脱硝装置110に送気する装置である。本実施形態における分離装置153は、気体からアンモニアを分離する分離膜等を有する。分離装置153は、ガス圧送機152よりも下流側のガスライン151に設けられている。
【0072】
分離装置153は、ガス圧送機152によって送給された気体を、アンモニア(図2に示すNH)と、分離されなかったアンモニアが一部混入した不活性ガス(図2に示す不活性ガス+NH)とに分離する。
【0073】
分離装置153は、分離後のアンモニアのみをガスライン151の下流へ送る。したがって、分離装置153によって気体から分離されたアンモニアは、アンモニア導入ライン141に導入され、上記脱硝触媒の還元剤として脱硝装置110に向かう。
【0074】
ガスライン入口弁154は、ガス圧送機152よりも上流側のガスライン151に設けられている自動操作弁である。ガスライン出口弁155は、分離装置153よりも下流側のガスライン151に設けられている自動操作弁である。
【0075】
ガスライン入口弁154及びガスライン出口弁155は、通常時は閉塞状態とされており、所定のタイミングで開放状態とされる。ガスライン入口弁154及びガスライン出口弁155は、例えば、アンモニア導入弁143が閉塞状態、且つ、アンモニア回収タンク100に気体が残留している状態とされた場合に開放状態となるように制御される。
【0076】
返送ライン156は、分離装置153とアンモニア回収タンク100とを接続している管である。返送ライン156には、分離装置153が気体から分離したアンモニアと、気体から分離されなかったアンモニアが一部混入した不活性ガスとのうち、後者のアンモニアが一部混入した不活性ガスが流れる。したがって、分離装置153によって分離後のアンモニアが一部混入した不活性ガスは、返送ライン156を介して分離装置153からアンモニア回収タンク100に戻される。
【0077】
(還元剤供給系統)
還元剤供給系統160は、アンモニア回収タンク100を経由せずに燃料アンモニアタンク40から脱硝装置110へ燃料アンモニアを供給する系統である。還元剤供給系統160は、還元剤供給ライン161と、第三ポンプ162と、第三熱交換器163と、を有している。
【0078】
還元剤供給ライン161は、燃料アンモニアタンク40から燃料アンモニアをアンモニア導入ライン141に導供給する管である。還元剤供給ライン161の一端は、燃料アンモニアタンク40に接続されており、他端は、アンモニア導入ライン141内の第二アンモニアセンサS1bが設けられている位置と脱硝装置110との間におけるアンモニア導入ライン141に接続されている。
【0079】
還元剤供給ライン161には、燃料アンモニアタンク40内の燃料アンモニアがアンモニア導入ライン141に向かって流れる。アンモニア導入ライン141に導入された燃料アンモニアは、脱硝装置110へ供給される。したがって、還元剤供給ライン161及びアンモニア導入ライン141を介して脱硝装置110に導入された燃料アンモニアは、脱硝装置110内で上記脱硝触媒の還元剤として利用される。したがって、還元剤供給ライン161は、燃料アンモニアタンク40の燃料アンモニアを脱硝装置110に還元剤として供給する。
【0080】
還元剤供給ライン161の内部には、アンモニアセンサS1が設けられている。以下、還元剤供給ライン161に設けられているアンモニアセンサS1を第三アンモニアセンサS1cと称する。第三アンモニアセンサS1cは、還元剤供給ライン161内を流れるアンモニアの濃度及び流量を測定するセンサである。本実施形態における第三アンモニアセンサS1cは、所定の時間間隔で還元剤供給ライン161内を流れるアンモニアの濃度及び流量を測定し、測定結果を還元剤供給ライン161の外部に設けられた弁制御装置に送信する。
【0081】
第三ポンプ162は、還元剤供給ライン161内を流れる燃料アンモニアを、燃料アンモニアタンク40からアンモニア導入ライン141に圧送するポンプである。第三ポンプ162は、還元剤供給ライン161に設けられている。
【0082】
第三熱交換器163は、還元剤供給ライン161を流れる燃料アンモニアを加熱する熱交換器である。第三熱交換器163は、第三ポンプ162が設けられている還元剤供給ライン161の位置よりもアンモニア導入ライン141側の還元剤供給ライン161に設けられている。
【0083】
第三熱交換器163には、例えば、上記加熱源が導入される。この蒸気と燃料アンモニアとが第三熱交換器163で熱交換することで、燃料アンモニアが脱硝装置110の還元剤に適した温度まで温められる。
【0084】
(ミキサー)
ミキサー170は、アンモニア導入ライン141内及び還元剤供給ライン161内のアンモニアの濃度と、アンモニアの流量と、燃焼装置30の負荷情報と、に基づいて、アンモニア導入ライン141及び還元剤供給ライン161から脱硝装置110に導入するアンモニアの量を調整する装置である。本実施形態におけるミキサー170は、例えば、船体10内部に設けられている。ミキサー170は、供給量制御装置171と、第三制御弁172と、第四制御弁173と、を有している。
【0085】
供給量制御装置171は、アンモニア導入ライン141を流れるアンモニアの濃度及び流量と、還元剤供給ライン161を流れる燃料アンモニアの濃度及び流量と、燃焼装置30の負荷情報と、に基づいて脱硝装置110へ供給されるアンモニアの量を制御する弁制御装置である。
【0086】
供給量制御装置171は、第二アンモニアセンサS1b及び第三アンモニアセンサS1cの測定結果、並びに、出力監視装置から送信される燃焼装置30の負荷情報を取得する。供給量制御装置171は、これら測定結果及び負荷情報に基づいて、アンモニア導入ライン141から脱硝装置110へ導入されるアンモニアの量と、還元剤供給ライン161からアンモニア導入ライン141に導入されるアンモニアの量を調整する。
【0087】
第三制御弁172は、アンモニア導入ライン141におけるアンモニアセンサS1bが設けられている位置と、還元剤供給ライン161とアンモニア導入ライン141とが接続する位置との間におけるアンモニア導入ライン141に設けられている自動操作弁である。第三制御弁172は、弁の開度によってアンモニア導入ライン141内を流れるアンモニアの脱硝装置110への流入量を調整する。
【0088】
第三制御弁172の開度は、供給量制御装置171が第二アンモニアセンサS1b及び第三アンモニアセンサS1cの測定結果、並びに出力監視装置から送信される燃焼装置30の負荷情報に基づいて決定した開度を指示する制御信号が第三制御弁172に入力されることによって制御される。
【0089】
第四制御弁173は、第三熱交換器163よりも下流側の還元剤供給ライン161に設けられている自動操作弁である。第四制御弁173は、弁の開度によって還元剤供給ライン161内を流れる燃料アンモニアのアンモニア導入ライン141への流入量を調整する。
【0090】
第四制御弁173の開度は、供給量制御装置171が第二アンモニアセンサS1b及び第三アンモニアセンサS1cの測定結果、並びに出力監視装置から送信される燃焼装置30の負荷情報に基づいて決定した開度を指示する制御信号が第四制御弁173に入力されることによって制御される。
【0091】
(アンモニア除害系統)
アンモニア除害系統180は、アンモニア回収タンク100内のアンモニアを無害化(除害)する系統である。本実施形態におけるアンモニア除害系統180は、例えば、船体10内部に設けられている。アンモニア除害系統180は、アンモニア除害装置181と、アンモニア除害ライン182と、除害装置弁183と、を有している。
【0092】
アンモニア除害装置181は、アンモニア回収タンク100から導入されるアンモニアを除害する装置である。本実施形態におけるアンモニア除害装置181は、スクラバである。なお、アンモニア除害装置181はスクラバに限定されることはなく、燃焼式ガス処理装置等であってもよい。アンモニア除害装置181は、アンモニア回収タンク100から導入されたアンモニアの濃度を、大気中に放出してもよい水準まで下げる。
【0093】
アンモニア除害ライン182は、アンモニア回収タンク100とアンモニア除害装置181とを接続している管である。アンモニア除害ライン182には、アンモニア回収タンク100内のアンモニアがアンモニア除害装置181に向かって流れる。即ち、アンモニア回収タンク100内のアンモニアは、このアンモニア除害ライン182を介してアンモニア除害装置181に導入される。
【0094】
除害装置弁183は、アンモニア除害ライン182に設けられている自動操作弁である。除害装置弁183は、通常時は閉塞状態とされており、所定のタイミングで開放状態とされる。除害装置弁183が開放状態になると、アンモニアがアンモニア除害ライン182内をアンモニア回収タンク100からアンモニア除害装置181に向かって流れることが可能となり、アンモニア回収タンク100内のアンモニアがアンモニア除害装置181によって除害される。
【0095】
(ベントポスト)
ベントポスト190は、アンモニア除害装置181で除害されたアンモニアを大気中へ放出する管である。本実施形態におけるベントポスト190は、アンモニア除害装置181に接続されるとともに、上甲板13を貫通して船体10外部における上下方向Dvの上方側に延びている。
【0096】
(作用効果)
上記実施形態に係る船舶1の構成によれば、少なくとも燃焼装置30内に残留したアンモニアは、不活性ガス供給装置60が圧送する不活性ガスとともにアンモニア回収タンク100に導入される。そして、このアンモニア回収タンク100内に導入されたアンモニアは、アンモニア導入ライン141を介して脱硝装置110へ導入されるとともに、脱硝装置110の還元剤として利用される。これにより、例えば、燃焼装置30が用いる燃料をアンモニアから他の燃料へ切り換える際、燃焼装置30内に大量に残留するアンモニアを回収したとしても、このアンモニアを脱硝装置110で有効利用しつつ除害できる。つまり、燃焼装置30から回収したアンモニアの全量をアンモニア除害装置181等で除害して、大気中へ放出する必要がなくなるため、大型のアンモニア除害装置181が必要なくなる。したがって、船体10の大型化を抑制できる。
また、例えば、既存のアンモニア除害装置181と、上記構成とを組み合わせて用いることで、回収したアンモニアの除害にかかる時間を短縮できる。
【0097】
また、上記実施形態に係る船舶1の構成によれば、分離装置153が、アンモニア回収タンク100から送られる気体からアンモニアを分離して、このアンモニアを脱硝装置110に送気する。これにより、例えば、アンモニア回収タンク100からアンモニア導入ラインに流入可能な液体のアンモニアが尽きた場合であっても、分離装置153によりアンモニアのみを脱硝装置110に送気できる。したがって、脱硝装置110に常にアンモニアのみを導入できるため、脱硝装置110での還元効率低下を抑制できる。
【0098】
また、上記実施形態に係る船舶1の構成によれば、還元剤供給ライン161を介して燃料アンモニアタンク40内の燃料アンモニアが脱硝装置110に導入されることで、この燃料アンモニアも脱硝装置110の還元剤として利用できる。これにより、例えば、アンモニア回収タンク100からアンモニア導入ライン141に流入可能なアンモニアが尽きたとしても、脱硝装置110に還元剤として燃料アンモニアを供給できる。したがって、脱硝装置110に還元剤としてのアンモニアをいつでも導入できるため、脱硝装置110で還元剤が不足してしまうことがない。
【0099】
また、上記実施形態に係る船舶1の構成によれば、ミキサー170は、アンモニア導入ライン141内及び還元剤供給ライン161内のアンモニアの濃度に基づいて脱硝装置110に導入するアンモニアの量を調整する。これにより、脱硝装置110へ導入するアンモニアを適正な量に調整できる。したがって、脱硝装置110の還元効率を安定させることができる。
【0100】
また、上記実施形態に係る船舶1の構成によれば、不活性ガスを、アンモニアパージライン90を介してアンモニア回収タンク100に供給することができる。これにより、例えば、燃焼装置30が稼働していても、アンモニアパージライン90を介して不活性ガスをアンモニア回収タンク100に送気することができる。したがって、アンモニア回収タンク100内の全てのアンモニアを、アンモニア導入ライン141を介して脱硝装置110へ導入できるため、アンモニア除害装置181を利用する必要がなくなる。
【0101】
[その他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は実施形態の構成に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内での構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本開示は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0102】
また、上記実施形態に記載の複数の第二パージライン81の一端は、燃料供給ライン51、燃焼装置30、及びリターンライン53にそれぞれ接続されているが、この構成に限定されることはない。第二パージライン81の数は適宜の数でよく、第二パージライン81の一端は、適宜の箇所に接続されてよい。即ち、第二パージライン81の数は、五つに限定されることはない。
【0103】
また、上記実施形態に記載のミキサー170の供給量制御装置171は、煙道130の内部に設けられている第一アンモニアセンサS1aの測定結果に基づいて、第三制御弁172及び第四制御弁173の開度を制御してもよい。これにより、例えば、第二アンモニアセンサS1b又は第三アンモニアセンサS1cに故障等が生じ、これらの測定結果に異常をきたしたとしても、第一アンモニアセンサS1aの測定結果にも基づくことで脱硝装置110へ導入するアンモニアの量を安定させることができる。
【0104】
また、上記実施形態に記載のミキサー170は、アンモニアの濃度と流量のうち少なくとも一方と、燃焼装置30の負荷情報と、に基づいて、脱硝装置110に導入するアンモニアの量を調整する構成であってもよい。したがって、アンモニアセンサS1b及びアンモニアセンサS1cは、アンモニアの濃度及び流量のうち一方のみを測定する構成であってもよい。
【0105】
また、アンモニアセンサS1b及びアンモニアセンサS1cがアンモニアの流量のみを測定する場合、供給量制御装置171は、第一アンモニアセンサS1a及び窒素酸化物センサS2の測定結果にも基づいて第三制御弁172及び第四制御弁173の開度を制御してもよい。
【0106】
また、図3に示すように、アンモニア導入ライン141と還元剤供給ライン161のアンモニアは、別々に脱硝装置110に供給される構成であってもよい。これにより、アンモニア導入ライン141からは液体又は気体のアンモニアを供給することができ、還元剤供給ライン161からは液体の燃料アンモニアを供給することができる。したがって、例えば、アンモニア導入ライン141から供給されるアンモニアが気体である場合に、このアンモニアがミキサー170によって還元剤供給ライン161から供給される液体のアンモニアと混合され、アンモニアが気液混合状態になることがない。
【0107】
また、上記実施形態に記載の第一熱交換器55、第二熱交換器58、及び第三熱交換器163は、熱媒体としての上記加熱源を利用する熱交換器の構成に限定されることはなく、例えば、電気ヒーター等の熱エネルギーを付与することができる加熱装置であってもよい。
【0108】
また、図4に示すように、上記実施形態に記載の船舶1は、アンモニア移送タンク101を更に備えてもよい。アンモニア移送タンク101は、アンモニア回収タンク100とアンモニア導入弁143との間におけるアンモニア導入ライン141に設けられるとともに、内部にアンモニアを貯留することができるタンクである。これにより、アンモニア回収タンク100内のアンモニアをアンモニア移送タンク101内に移送することができ、アンモニア回収タンク100内に液体アンモニアがない状態とすることができる。即ち、例えば、燃焼装置30が用いる燃料をアンモニアから重油等の他の燃料へ切り換えた後に他の燃料からアンモニアに再度切り替えする場合等、事前にアンモニア回収タンク100内のアンモニアをアンモニア移送タンク101に一時的に貯留または移送することができる。したがって、空のアンモニア回収タンク100内に他の燃料を回収することができ、燃料の切り替えに係るオペレーション等を円滑に行うことができる。
【0109】
[付記]
実施形態に記載の船舶は、例えば以下のように把握される。
【0110】
(1)第1の態様に係る船舶1は、船体10と、前記船体10に設けられて、燃料アンモニアを貯留する燃料アンモニアタンク40と、前記燃料アンモニアタンク40に接続された燃料供給ライン51と、前記燃料供給ライン51を介して前記燃料アンモニアタンク40から前記燃料アンモニアが導入される燃焼装置30と、前記燃料供給ライン51を介して少なくとも前記燃焼装置30に不活性ガスを圧送する不活性ガス供給装置60と、前記燃焼装置30に圧送された前記不活性ガスとともに前記燃焼装置30内に残留したアンモニアが導入されるアンモニア回収タンク100と、前記燃焼装置30での前記燃料アンモニアの燃焼により発生する排ガスGが導入される脱硝装置110と、前記アンモニア回収タンク100と前記脱硝装置110とを接続するとともに、前記アンモニア回収タンク100内の前記アンモニアを、前記脱硝装置110に還元剤として導入するアンモニア導入ライン141と、を備える。
【0111】
上記構成によれば、例えば、燃焼装置30が用いる燃料をアンモニアから他の燃料へ切り換える際、少なくとも燃焼装置30内に残留する大量のアンモニアを回収したとしても、このアンモニアを脱硝装置110で有効利用しつつ除害できる。また、例えば、既存のアンモニア除害装置181と、上記構成とを組み合わせて用いることで、回収したアンモニアの除害にかかる時間を短縮できる。
【0112】
(2)第2の態様に係る船舶1は、(1)の船舶1であって、前記アンモニア回収タンク100内の気体を前記アンモニア導入ライン141に導入するガスライン151を更に備え、前記ガスライン151を流通する気体から前記アンモニアを分離するとともに、該アンモニアを前記脱硝装置110へ送気する分離装置153を更に備えてもよい。
【0113】
上記構成によれば、例えば、アンモニア回収タンク100からアンモニア導入ラインに流入可能な液体のアンモニアが尽きた場合であっても、ガスライン151に気体のアンモニアを不活性ガスとともに流入させることができる。そして、分離装置153により、アンモニアのみを脱硝装置110に送気できる。
【0114】
(3)第3の態様に係る船舶1は、(1)又は(2)の船舶1であって、前記燃料アンモニアタンク40の前記燃料アンモニアを、前記脱硝装置110に還元剤として供給する還元剤供給ライン161を更に備えてもよい。
【0115】
上記構成によれば、燃料アンモニアタンク40内の燃料アンモニアも脱硝装置110の還元剤として利用できる。したがって、例えば、アンモニア回収タンク100からアンモニア導入ライン141に流入可能なアンモニアが尽きたとしても、脱硝装置110に還元剤として燃料アンモニアを供給できる。
【0116】
(4)第4の態様に係る船舶1は、(3)の船舶1であって、前記アンモニア導入ライン141内及び前記還元剤供給ライン161内の、前記アンモニアの濃度と流量のうち少なくとも一方を測定するアンモニアセンサS1と、前記アンモニアの前記濃度と前記流量のうち少なくとも一方と、前記燃焼装置の負荷情報と、に基づいて、前記アンモニア導入ライン141及び前記還元剤供給ライン161から前記脱硝装置110に導入する前記アンモニアの量を調整するミキサー170と、を更に備えてもよい。
【0117】
上記構成によれば、脱硝装置110へ導入するアンモニアを適正な量に調整できる。
【0118】
(5)第5の態様に係る船舶1は、(1)から(4)の何れかの船舶1であって、前記不活性ガス供給装置60と前記アンモニア回収タンク100とを接続するとともに、内部を前記不活性ガスが流通するアンモニアパージライン90を更に備えてもよい。
【0119】
上記構成によれば、例えば、燃焼装置30が稼働していても、アンモニアパージライン90を介して不活性ガスをアンモニア回収タンク100に送気することができる。したがって、アンモニア回収タンク100内の全てのアンモニアを、アンモニア導入ライン141を介して脱硝装置110へ導入できるため、アンモニア除害装置181を利用する必要がなくなる。
【符号の説明】
【0120】
1…船舶 10…船体 11A,11B…舷側 12…船底 13…上甲板13 14…船首 15…船尾 20…上部構造 30…燃焼装置 40…燃料アンモニアタンク 50…燃料供給系統 51…燃料供給ライン 52…ミックスタンク 53…リターンライン 54…第一ポンプ 55…第一熱交換器 56…第一燃料圧調整装置 56a,57a…シャットバルブ 56b…第一制御弁 57…第二燃料圧調整装置 57b…第二制御弁 58…第二熱交換器 60…不活性ガス供給装置 70…不活性ガス供給系統 71…第一パージライン 72…第一パージ弁 80…パージ系統 81…第二パージライン 82…第二パージ弁 90…アンモニアパージライン 91…第三パージ弁 100…アンモニア回収タンク 101…アンモニア移送タンク 110…脱硝装置 120…排ガスダクト 130…煙道 131…船体構造 132…ファンネル 140…アンモニア導入系統 141…アンモニア導入ライン 142…第二ポンプ 143…アンモニア導入弁 150…アンモニア分離系統 151…ガスライン 152…ガス圧送機 153…分離装置 154…ガスライン入口弁 155…ガスライン出口弁 156…返送ライン 160…還元剤供給系統 161…還元剤供給ライン 162…第三ポンプ 163…第三熱交換器 170…ミキサー 171…供給量制御装置 172…第三制御弁 173…第四制御弁 180…アンモニア除害系統 181…アンモニア除害装置 182…アンモニア除害ライン 183…除害装置弁 190…ベントポスト Dv…上下方向 Fa…船首尾方向 G…排ガス S1…アンモニアセンサ S1a…第一アンモニアセンサ S1b…第二アンモニアセンサ S1c…第三アンモニアセンサ S2…窒素酸化物センサ S3…レベルセンサ
図1
図2
図3
図4