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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062313
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】地中レーダ装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/88 20060101AFI20230426BHJP
   G01V 3/12 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
G01S13/88 200
G01V3/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172207
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】千賀 敦夫
(72)【発明者】
【氏名】小川 智久
【テーマコード(参考)】
2G105
5J070
【Fターム(参考)】
2G105AA02
2G105BB11
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE01
2G105HH04
2G105LL02
5J070AB01
5J070AC01
5J070AC03
5J070AD02
5J070AE11
5J070AF02
5J070AH04
5J070AH31
5J070AK40
5J070BG09
(57)【要約】
【課題】深度精度・分解能特性への影響を抑制しつつ、Aスコープ信号の取得時間を短縮し、Bスコープデータを生成できる地中レーダ装置を提供する。
【解決手段】地中レーダ装置は、探査用の電磁波を地中に送信する送信機23と、電磁波に対応する参照信号を発生する参照信号発生部18と、送信機と参照信号発生部を制御するタイミング制御部11と、地中で反射した電磁波を受信する受信機24と、この受信機から出力されるAスコープ信号を処理する処理装置10とを備える。そして、タイミング制御部により送信機と参照信号発生部の動作タイミングを制御して、Aスコープ信号のサンプリング間隔及び基準タイミングを変化させ、処理装置で補間処理を行ってBスコープデータを生成する、ことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
探査用の電磁波を地中に送信する送信機と、
前記電磁波に対応する参照信号を発生する参照信号発生部と、
前記送信機と前記参照信号発生部を制御するタイミング制御部と、
地中で反射した電磁波を受信する受信機と、
前記受信機から出力されるAスコープ信号を処理する処理装置とを備え、
前記タイミング制御部により送信機と参照信号発生部の動作タイミングを制御して、Aスコープ信号のサンプリング間隔及び基準タイミングを変化させ、前記処理装置で補間処理を行ってBスコープデータを生成する、地中レーダ装置。
【請求項2】
前記処理装置は、前記受信機からのAスコープ信号と前記参照信号発生部からの参照信号との相関を処理する相関処理部と、この相関処理部の出力信号をアナログ/デジタル変換するA/D処理部と、このA/D処理部から出力されるサンプリング信号を補間してBスコープデータを生成する補間処理部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の地中レーダ装置。
【請求項3】
前記タイミング制御部は、前記参照信号発生部を制御して、前記補間処理部にAスコープ信号の深度軸に対して、所定のサンプリング間隔の2倍の間隔でサンプリング信号を入力し、移動軸方向に隣接するAスコープ信号は、交互にサンプリング間隔分ずらしたタイミングでサンプリング信号を入力し、
前記補間処理部は、Bスコープデータの生成時に2次元補間処理を行って欠落点の値を推測する、ことを特徴とする請求項2に記載の地中レーダ装置。
【請求項4】
前記タイミング制御部は、前記参照信号発生部を制御して、前記補間処理部にAスコープの深度軸に対して、深度が深くなるにつれてサンプリング間隔を大きくしたサンプリング信号を入力し、
前記補間処理部は、Aスコープ信号を補間処理してBスコープデータを生成する、ことを特徴とする請求項2に記載の地中レーダ装置。
【請求項5】
前記補間処理部は、Bスコープデータの生成時に、2次元補間処理を行って欠落点の値を推測する、ことを特徴とする請求項4に記載の地中レーダ装置。
【請求項6】
前記タイミング制御部は、前記参照信号発生部を制御して、前記補間処理部にAスコープ信号の深度軸に対して、所定のサンプリング間隔の2倍の間隔で、且つ深度が深くなるにつれてサンプリング間隔を大きくしたサンプリング信号を入力し、移動軸方向に隣接するAスコープ信号は、交互にサンプリング間隔分ずらしたタイミングでサンプリング信号を入力し、
前記補間処理部は、Aスコープ信号を補間処理し、且つBスコープデータの生成時に2次元補間処理を行って欠落点の値を推測する、ことを特徴とする請求項2に記載の地中レーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に電磁波を照射して反射波を計測し、埋設物や内部構造物を探査する地中レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中レーダ装置の受信回路方式として、サンプラー方式が多く用いられている(例えば特許文献1参照)。この方式では、短時間のパルス性もしくはバースト性のレーダ受信信号を時間伸長した相似波形として受信する。
【0003】
サンプラー方式は、サンプリング点数と参照信号の繰り返し時間間隔によって、1回のAスコープ信号(地点計測情報)の取得が決まる。例えば、実時間で100nsのレーダ信号を1ns間隔で100点サンプリングしようとすると、参照信号の繰り返し時間間隔が1μsの場合、「100ns/1ns×1μs=100μs」の時間を要する。また、Aスコープ信号の取得を行うタイミングは、レーダの移動距離に応じたトリガによるものが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-024163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、通常、1回のAスコープ信号の取得動作Taは、レーダの移動トリガ発生間隔Tdに対して十分に短く時間設計される(Ta<Td)。
しかし、一般的に、参照信号の繰り返し時間は、レーダの出力電力や受信感度に影響するため、設定の自由度が比較的低い。その上、例えばレーダを車載して走行するなど、レーダの移動トリガ発生間隔が短くなるにつれて、「Ta>Td」となる場合が生じ得る。
【0006】
深度軸(時間軸)のレンジを変えずにサンプリング点を削減するには、サンプリング間隔を広げることが考えられるが、深度精度・分解能が犠牲となる。このため、特性への影響を抑えて更にAスコープ信号の取得時間を短縮する手法が求められている。
【0007】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、深度精度・分解能特性への影響を抑制しつつ、Aスコープ信号の取得時間を短縮し、Bスコープデータを生成できる地中レーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る地中レーダ装置は、探査用の電磁波を地中に送信する送信機と、前記電磁波に対応する参照信号を発生する参照信号発生部と、前記送信機と前記参照信号発生部を制御するタイミング制御部と、地中で反射した電磁波を受信する受信機と、前記受信機から出力されるAスコープ信号を処理する処理装置とを備え、前記タイミング制御部により送信機と参照信号発生部の動作タイミングを制御して、Aスコープ信号のサンプリング間隔及び基準タイミングを変化させ、前記処理装置で補間処理を行ってBスコープデータを生成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、サンプリング点を間引いてAスコープ信号の取得時間を短縮し、移動軸方向に隣接したデータを用いた補間処理により欠落したデータを推測することで、深度精度・分解能特性への影響を抑えて、Bスコープデータを生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る地中レーダ装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】従来の地中レーダ装置におけるサンプリング点の深度と移動距離との関係を参考例として示す模式図である。
図3図1に示す地中レーダ装置におけるサンプリング点の深度と移動距離との関係を示すもので、サンプリングを交互にずらす場合の模式図である。
図4図1に示す地中レーダ装置におけるサンプリング点の深度と移動距離との関係を示すもので、深度に応じて間引き量を変更する場合の模式図である。
図5図1に示す地中レーダ装置におけるサンプリング点の深度と移動距離との関係を示すもので、深度ごとにサンプリング点をずらす場合の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る地中レーダ装置の概略構成を示している。この地中レーダ装置は、車輪や駆動機構を持った台車などの移動体に搭載されて、移動しつつ地中探査を行うものである。
【0012】
すなわち、処理装置10は、タイミング制御部11、相関処理部12、A/D処理部13及び補間処理部14等を備えている。具体的には、例えば地中探査用のプログラムを搭載したパーソナルコンピュータで構成され、ユーザは計測結果を液晶モニタなどの表示部15によって観察できるとともに、各種計測パラメータの設定、信号処理に関する条件設定、計測結果の表示のためのデータ処理方法の選択等を、操作パネルやキーボードなどの入力部16の操作で指示可能になっている。
【0013】
タイミング制御部11は、探査用の送信信号を発生するTx信号発生部17、及び参照信号を発生するLo信号発生部18の動作タイミングを制御する。
Tx信号発生部17で発生された送信信号は、送信アンプ部19に入力されて増幅され、送信アンテナ20から地中に送信される。Tx信号発生部17、送信アンプ部19及び送信アンテナ20は、探査用の電磁波の送信機23として働く。
【0014】
地中からの反射波は、受信アンテナ21で受信され、受信信号が受信アンプ部22で増幅される。受信アンテナ21と受信アンプ部22は、地中で反射した電磁波を受信する受信機24の一部として機能する。
【0015】
この受信アンプ部22で増幅された受信信号と、Lo信号発生部18で発生された参照信号はそれぞれ、相関処理部12に入力されて相関が取られる。相関処理部12の出力は、A/D処理部13に入力されてアナログ/デジタル変換され、サンプリング信号として補間処理部14に入力される。補間処理部14では、取得したサンプリング信号に基づいて2次元補間処理が行われ、この補間処理されたAスコープ信号を表示部15に表示させるようになっている。
【0016】
Aスコープ信号は、特定測定点での探査によって得た検出信号の受信強度を、電波の送信から受信までに経過した遅延時間又は反射時間の関数として表した波形パターンである。また、Bスコープデータ(経路断面計測情報)は、検出信号の受信強度を、遅延時間と移動距離との関数で表したチャートである。具体的には、Aスコープ信号は、検出信号の強度分布を、一方の軸を反射時間(又は深さ方向の距離)とし他方の軸を信号強度として表した強度波形である。また、Bスコープデータは、移動体の移動経路に沿った多数の測定点で収集した検出信号の強度分布を、一方の軸を反射時間(又は深さ方向の距離)とし、他方の軸を経路方向の距離とする2軸方向の位置の関数からなる2次元的強度分布として表示する2次元画像データである。
【0017】
図2は、参考例として、従来の地中レーダ装置におけるサンプリング点の深度と移動距離との関係を示している。ここで、○印はサンプリング点であり、一点鎖線30で囲んだサンプリング群をAスコープと呼ぶ。地中レーダ装置は移動しているので、サンプリングの最初と最後で位置情報のずれがあるが、この誤差は非常に小さいものなので無視するものとする。
【0018】
地中レーダ装置が所定間隔移動すると、タイミング制御部11からトリガを発生し、このトリガに連動してAスコープを測定する。地中レーダ装置が横方向の矢印で示すように移動すると、トリガから順次深度が深くなるサンプリング群(Aスコープ)が得られる。
このようなサンプリング動作を繰り返すことで、多数の測定点で収集した検出信号の強度分布を、2軸方向の位置の関数で表して表示部15に2次元画像データを表示し、作業者が画像データから地中の埋設物や内部構造物を探査する。この場合、深度をN、距離をMとすると、「N×M×dt」の測定時間が必要となる。
【0019】
図3は、図1に示す地中レーダ装置におけるサンプリング点の深度と移動距離との関係を示している。ここで、○印はサンプリング点、●印は周囲のサンプリング点から補間処理を行って推測する点であり、一点鎖線30で囲んだサンプリング群をAスコープと呼ぶ。また、地中レーダ装置は移動しているので、サンプリングの最初と最後で位置情報のずれがあるが、この誤差は非常に小さいものなので無視するものとする。
【0020】
図3に示すように、Aスコープの時間軸(深度軸方向)に対して、所望のサンプリング間隔(Ts)の2倍の間隔(2Ts)でサンプリングを行う。さらに、次のAスコープ(移動軸方向で隣接)においては、サンプリングのタイミングを当初のサンプリング間隔分(Ts)だけずらしたタイミングで行う。これを順次行ってサンプリング点を交互にずらし、いわゆる市松模様状にデータを取得した後、Bスコープデータ(画像)生成時に補間処理部14で2次元補間処理を行って欠落点の値を推測する。
【0021】
このように、サンプリング点を交互にずらすように間引いてサンプリングを行うことで、「(N/2)×M×dt」の測定時間となり、図2のようなサンプリングに比べ、実質的に半分の時間で処理が可能となる。
しかも、サンプリング数を削減してAスコープ信号の取得時間を短縮しても、深度精度・分解能に必要な信号成分を、隣接したサンプリング点から2次元補間したデータを用いることで、図2に示したものと同様なサンプリング数のデータからBスコープデータを生成することができ、深度精度・分解能特性への悪影響を抑えることができる。
【0022】
<変形例1>
図4は、図1に示す地中レーダ装置におけるサンプリング点の深度と移動距離との関係を示しており、深度に応じて間引き量を変更するものである。本変形例1では、Aスコープの時間軸(深度軸)に対して、後半の時間になるにつれてサンプリング間隔を大きくする。すなわち、所望のサンプリング間隔(Ts)に対して、2倍の間隔(2Ts)、3倍の間隔(3Ts)というようにサンプリングを行う。そして、データを取得した後、Bスコープデータ(画像)生成時に補間処理部14で補間処理を行って欠落点(●印の点)の値を推測する。この補間処理では、深度方向に対して隣接するサンプリング点から線形補間を実行することになる。
【0023】
このように、本変形例1では、地面深くには低周波数のみ浸透する地中レーダの特性を利用し、深度ごとにサンプリング間隔を変更する。具体的には、地中の浅い領域のサンプリングは間引かずに、地中の深い領域のサンプリングを多く間引く。地中レーダの信号は、時間軸後半(深い深度)においては、低周波数成分のみが含まれる(高い周波数は減衰してしまう)特性があるので、必要な周波数成分を維持して補間処理が可能である。
【0024】
<変形例2>
図5は、図1に示す地中レーダ装置におけるサンプリング点の深度と移動距離との関係を示しており、深度ごとにサンプリング点をずらすものである。本変形例2は、前述した2方式を複合したもので、サンプリング点を市松模様状で且つ深度が深くなるにつれてサンプリング間隔を大きくなるようにデータを取得している。そして、各サンプリング点のデータを取得した後、Bスコープデータ(画像)生成時に、補間処理部14で2次元補間処理を行って欠落点(●印の点)の値を推測する。この補間処理は、Aスコープのみで行ってもよいのは勿論である。
【0025】
このように、2方式を複合したサンプリングを行うことで、さらなる時間削減効果を見込むことができる。
しかも、サンプリング数を削減してAスコープ信号の取得時間を短縮しても、深度精度・分解能に必要な信号成分を隣接したサンプリング点から補間し、且つ深い深度においては低周波数成分のみが含まれるので、深度精度・分解能特性への悪影響を抑えることができる。
【0026】
以上の実施形態と変形例1、2で説明された構成やサンプリング手順等については、本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものに過ぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【符号の説明】
【0027】
10…処理装置、11…タイミング制御部、12…相関処理部、13…A/D処理部、14…補間処理部、15…表示部、16…入力部、17…Tx信号発生部(送信信号発生部)、18…Lo信号発生部(参照信号発生部)、19…送信アンプ部、20…送信アンテナ、21…受信アンテナ、22…受信アンプ部、23…送信機、24…受信機
図1
図2
図3
図4
図5