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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062337
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】装身品芯材及び芯材入り装身品
(51)【国際特許分類】
   A41C 3/14 20060101AFI20230426BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20230426BHJP
   A41D 31/18 20190101ALI20230426BHJP
   A41D 13/015 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
A41C3/14 Z
A41D31/00 502Z
A41D31/00 504
A41D31/18
A41D13/015
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172240
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】591050729
【氏名又は名称】株式会社オーゼットケー
(74)【代理人】
【識別番号】100167092
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹津 俊一
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 陽彦
(72)【発明者】
【氏名】神戸 保浩
(72)【発明者】
【氏名】三橋 克伯
【テーマコード(参考)】
3B011
3B131
【Fターム(参考)】
3B011AB01
3B011AB18
3B011AC04
3B011AC17
3B011AC21
3B131AA16
3B131BA21
3B131BB25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】装身品芯材が横断面方向のどちらかの向きに回転して捻じれてしまうという状態である立上り状態を低減して、安定的に本来の変形抵抗を得ることができる装身品芯材及びその装身品芯材を保持する装身品を提供する。
【解決手段】身体部分に直接に又は間接に着けられる装身品に保持され、身体部分の屈曲方向の外力を受けたときの変形抵抗が高まるように構成され且つ軸方向と直交する横断面における縦横の寸法が異なる装身品芯材11であって、横断面における長手方向である芯材長手方向の略中央に空洞状の中空空間である第1の中空空間13を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体部分に直接に又は間接に着けられる装身品に保持され、前記身体部分の屈曲方向の外力を受けたときの変形抵抗が高まるように構成され且つ軸方向と直交する横断面における縦横の寸法が異なる装身品芯材であって、
前記横断面における長手方向である芯材長手方向の略中央に空洞状の中空空間である第1の中空空間を形成する
ことを特徴とする装身品芯材。
【請求項2】
前記第1の中空空間は、前記横断面における縦横の寸法が異なり、前記横断面における長手方向である空間長手方向が前記芯材長手方向と略直交する
ことを特徴とする請求項1に記載の装身品芯材。
【請求項3】
前記横断面において、前記第1の中空空間と、前記第1の中空空間を囲む合成樹脂製の芯部と、前記芯部を囲む合成樹脂製の鞘部とを含む重層構造を有し、
前記芯部の材料の弾性変形抵抗が、前記鞘部の材料の弾性変形抵抗よりも大きい
ことを特徴とする請求項1または2に記載の装身品芯材。
【請求項4】
前記横断面において、前記芯部の外縁は略円形状を形成する
ことを特徴とする請求項3に記載の装身品芯材。
【請求項5】
前記鞘部は、前記軸方向視における一対の前記芯材長手方向の端面を有し、
前記芯部の外縁は、前記横断面において対向する二辺の何れもが前記各端面と略平行に位置する略四角状を形成する
ことを特徴とする請求項3に記載の装身品芯材。
【請求項6】
前記横断面において、前記鞘部は、前記芯部に対して前記芯材長手方向の両側に配置される一対の空洞状の中空空間である第2の中空空間を形成する
ことを特徴とする請求項3に記載の装身品芯材。
【請求項7】
前記横断面において、前記芯材長手方向の両端に延設される一対の薄肉状の延長部を有し、
前記延長部は、その薄肉を貫通して穿設される針孔を有する
ことを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載の装身品芯材。
【請求項8】
身体部分に直接又は間接に着けることができ、前記身体部分の屈曲方向の外力を受けたときの変形抵抗が高まるように構成される装身品芯材を保持するとともに、前記装身品芯材が、その軸方向と直交する横断面における縦横の寸法が異なり且つ前記身体部分の表面方向と前記横断面における長手方向である芯材長手方向とが略平行となるように保持される芯材入り装身品であって、
前記装身品芯材は、前記芯材長手方向の略中央に空洞状の中空空間を形成する
ことを特徴とする芯材入り装身品。
【請求項9】
前記装身品芯材は、前記横断面において、前記芯材長手方向の両端に延設される一対の薄肉状の延長部を有し且つ前記延長部がその薄肉を貫通して穿設される針孔を有するとともに、軸方向視において重ねられる生地に対して前記針孔に挿通される縫糸によって縫い付けられる
ことを特徴とする請求項8に記載の芯材入り装身品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は装身品芯材及び芯材入り装身品に関し、特に身体部分の屈曲方向の外力を受けたときの変形抵抗が高まるように構成される装身品芯材及びこの装身品芯材を保持する芯材入り装身品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、身体部分に直接に又は間接に着けられる装身品に保持され、この身体部分の屈曲方向の外力を受けたときの変形抵抗が高まるように構成され且つ軸方向と直交する横断面における縦横の寸法が異なる装身品芯材がある(特許文献1)。
【0003】
こうした装身品芯材は、胴体、手足の関節などの身体部分に直接的に又は間接的に着けるテープ、ブラジャー、補正下着、プロテクター、コルセット、パワーアシストスーツなどの装身品に保持される。これらの装身品は肌着、アンダーウェアなどを介して身体部分に着けられることがある。また、装身品芯材を保持するテープがブラジャー、補正下着等に縫着、接着などの方法により支持されることもある。この装身品芯材が前記身体部分の屈曲方向の外力を受けたときの変形抵抗が高まるため、使用者がこうした装身品を身に着けるときは、胴体、手足の関節などが曲がりにくい。これにより、例えば、怪我、故障等のときに手足の関節を保護することができ、日常的に手足の機能を補強することができ、また、姿勢を正しく保って美しい外観を呈することができる。
【0004】
しかも、こうした装身品芯材は、軸方向と直交する横断面における縦横の寸法が異なるため、装着する身体部分の表面方向と、この横断面における装身品芯材の長手方向とが略平行となるように装身品を着けることによって表面の法線方向における厚さを小さくすることができる。これにより、この装身品芯材を保持する装身品を身に着けても嵩張らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-229679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の、横断面における縦横の寸法が異なる装身品芯材の場合、装身品芯材をその横断面における長手方向に曲げようとすると、装身品芯材が横断面方向のどちらかの向きに回転して捻じれてしまうという問題があった。例えば、従来の装身品芯材が前記横断面における長手方向の端面を有し、かつ、この端面を水平な床面に置いて装身品芯材を曲げると、前記端面は床面に対して傾斜し、回転の外側端及び内側端の何れかが床面から離れて立ち上るといった状態が生じる。この状態を、以下において「立上り状態」とよぶ。
【0007】
すなわち、装身品芯材を、装着する身体部分の表面方向と横断面における長手方向とが略平行となるように配置する場合、身体部分の屈曲方向の外力を受けるときは、従来の装身品芯材がその横断面における短手方向に曲がるために立上り状態が生じない。それに対して、同じ従来の装身品芯材が身体部分の表面に沿った外力を受けるときは、その横断面における長手方向に曲がるために立上り状態が生じる。例えば、関節を通常の屈曲方向である前後方向に曲がる場合ではなく、その関節が複雑に運動して左右方向に曲がる場合は長手方向に曲がって立上り状態が生じる。
【0008】
これにより、従来の装身品芯材を保持する装身品は、この装身品芯材が立ち上がることにより形状が歪んで外見が悪い上に、装身品と装身品芯材との接合が外れてしまう虞がある。また、立ち上ったままの状態において、次に関節を通常の屈曲方向に曲げようとするときは、本来の屈曲方向の力に対する変形抵抗を得られない虞もある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑み、立上り状態の発生を低減して、安定的に本来の変形抵抗を得ることができる装身品芯材及びその装身品芯材を保持する装身品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は身体部分に直接に又は間接に着けられる装身品に保持され、前記身体部分の屈曲方向の外力を受けたときの変形抵抗が高まるように構成され且つ軸方向と直交する横断面における縦横の寸法が異なる装身品芯材であって、前記横断面における長手方向である芯材長手方向の略中央に空洞状の中空空間である第1の中空空間を形成することを特徴とする装身品芯材を提供するものである。
【0011】
本発明者は、鋭意検討の結果、横断面における縦横の寸法が異なる装身品芯材の場合、横断面の長手方向である芯材長手方向の略中央に空洞状の第1の中空空間を形成することにより、この装身品芯材が、前記芯材長手方向に曲がるときでも「立上り状態」の発生が低減されることを見出し、本発明を完成させるに至った。これにより、本発明の装身品芯材は身体部分の屈曲方向の外力を受けるときの変形抵抗を高めることができ、かつ、前記装身品芯材を装着する身体部分の表面方向と前記芯材長手方向とが略平行となるように配置する場合でも、前記装身品芯材が前記身体部分の表面に沿った外力を受けるときの立上り状態が生じ難い。こうして、本発明の装身品芯材によっては、安定的に本来の変形抵抗を得ることができる。
【0012】
(2)また、前記第1の中空空間は、前記横断面における縦横の寸法が異なり、前記横断面における長手方向である空間長手方向が前記芯材長手方向と略直交してもよい。
【0013】
すなわち、第1の中空空間の長手方向である空間長手方向が芯材長手方向と略直交することにより、装身品芯材が芯材長手方向に曲がるときは、前記空間長手方向が前記装身品芯材の曲がる方向と直交する。そして、前記第1の中空空間の短手方向は前記装身品芯材の曲がる方向と一致する。
【0014】
換言すれば、前記空間長手方向が前記芯材長手方向と一致する場合に比べて、本発明の装身品芯材の場合、前記装身品芯材の曲がる方向と直交する方向における前記第1の中空空間の直径は長い。そのため、前記曲がる方向と直交する方向における前記第1の中空空間周りの肉厚がより薄い。そこで、本発明者は前記装身品芯材が前記芯材長手方向に曲がるのに対して前記空間長手方向における前記第1の中空空間周りの肉厚がより薄いとき、前記装身品芯材の変形時における前記芯材長手方向の抵抗が小さく、立上り状態が発生しにくいことを見出した。こうして、本発明の装身品芯材は、前記装身品芯材が前記身体部分の表面に沿った外力を受けるときの立上り状態がより生じ難い。
【0015】
(3)また、前記横断面において、前記第1の中空空間と、前記第1の中空空間を囲む合成樹脂製の芯部と、前記芯部を囲む合成樹脂製の鞘部とを含む重層構造を有し、前記芯部の材料の弾性変形抵抗が、前記鞘部の材料の弾性変形抵抗よりも大きくてもよい。
【0016】
すなわち、本発明の装身品芯材は、周辺の鞘部よりも材料の弾性変形抵抗が大きい芯部を有するため、前記芯部を有しない場合と比べて屈曲方向の外力を受けるときの変形抵抗が高い。しかも、前記芯部が前記第1の中空空間に近い位置に配置されるため、仮に前記芯部が横断面において偏った位置に配置される場合と比べて、芯材長手方向と、短手方向である芯材短手方向との何れの方向の曲げに対してもバランスの良い変形抵抗を得ることができる。こうして、本発明の装身品芯材は、安定的な変形抵抗を得ることができる。
【0017】
(4)また、前記横断面において、前記芯部の外縁は略円形状を形成してもよい。
【0018】
すなわち、本発明の装身品芯材は、芯部と鞘部との境界が略円柱状に形成されるため、それぞれ合成樹脂製の前記芯部と前記鞘部とを成形する際により効率に製作することができる。例えば、二色成形によって前記芯部を成形し、その外側から前記鞘部を成形する場合でも、略円柱状の前記芯部は横断面形状が押し潰されて歪な形状に形成されることが少なく製作時の不良が生じ難い。
【0019】
(5)また、前記鞘部は、前記軸方向視における一対の前記芯材長手方向の端面を有し、前記芯部の外縁は、前記横断面において対向する二辺の何れもが前記各端面と略平行に位置する略四角状を形成してもよい。
【0020】
すなわち、本発明の装身品芯材は、鞘部の両端面に対して芯部の二辺が略平行に位置する略四角状を形成するため、前記芯部がこれと異なる形状を形成する場合に比べ、前記鞘部の断面において前記芯部の断面によって占められる面積が広い。そのため、前記鞘部よりも材料の弾性変形抵抗が大きく外力を受けるときの変形抵抗が高い前記芯部の体積が大きいことにより、本発明の装身品芯材によってより高い変形抵抗を得ることができる。
【0021】
(6)また、前記横断面において、前記鞘部は、前記芯部に対して前記芯材長手方向の両側に配置される一対の空洞状の中空空間である第2の中空空間を形成してもよい。
【0022】
すなわち、本発明の装身品芯材は、空洞状である第2の中空空間を形成するため、芯部によって変形抵抗を得て且つ鞘部によって安定した姿勢で装身品に保持されつつ、全体として重量を低減することができる。そのため、前記装身品が軽量の装身品芯材を保持することにより、使用者は、前記装身品を軽快に着けることができる。また、前記装身品芯材の扱いが容易であり、その製作、輸送、保管などを効率良く行うことができる。
【0023】
(7)また、前記横断面において、前記芯材長手方向の両端に延設される一対の薄肉状の延長部を有し、前記延長部は、その薄肉を貫通して穿設される針孔を有してもよい。
【0024】
すなわち、本発明の装身品芯材は、装身品によって保持される際、針孔に挿通される縫糸によって前記装身品芯材に重ねられる生地に縫い付けることができる。そのため、前記装身品に保持された状態の前記装身品芯材の位置がずれること、同じく前記装身品芯材が軸方向を中心に回転すること、同じく前記軸方向を中心に捩れてしまうことなどを防ぐことができる。これらにより、使用者は、本発明の装身品芯材及びそれを保持する前記装身品を長期間に適切な状態の下で使用することができる。
【0025】
(8)本発明は身体部分に直接又は間接に着けることができ、前記身体部分の屈曲方向の外力を受けたときの変形抵抗が高まるように構成される装身品芯材を保持するとともに、前記装身品芯材が、その軸方向と直交する横断面における縦横の寸法が異なり且つ前記身体部分の表面方向と前記横断面における長手方向である芯材長手方向とが略平行となるように保持される芯材入り装身品であって、前記装身品芯材は、前記芯材長手方向の略中央に空洞状の中空空間を形成することを特徴とする芯材入り装身品を提供するものである。
【0026】
すなわち、本発明の装身品は、保持する装身品芯材によって身体部分の屈曲方向の外力を受けるときの変形抵抗を高めることができ、かつ、前記装身品芯材が芯材長手方向の略中央に中空空間を形成することにより、前記装身品を装着する身体部分の表面方向と芯材長手方向とが略平行となるように配置する場合でも、前記装身品芯材が前記身体部分の表面に沿った外力を受けるときの立上り状態が生じ難い。こうして、本発明の装身品によっては、安定的に本来の変形抵抗を得ることができる。
【0027】
(9)また、前記装身品芯材は、前記横断面において、前記芯材長手方向の両端に延設される一対の薄肉状の延長部を有し且つ前記延長部がその薄肉を貫通して穿設される針孔を有するとともに、軸方向視において重ねられる生地に対して前記針孔に挿通される縫糸によって縫い付けられてもよい。
【0028】
すなわち、本発明の装身品は、保持する装身品芯材が、針孔に挿通される縫糸によって重ねられる生地に縫い付けることができる。そのため、前記装身品に保持された状態の前記装身品芯材の位置がずれること、同じく前記装身品芯材が軸方向を中心に回転すること、同じく前記軸方向を中心に捩れてしまうことなどを防ぐことができる。これらにより、使用者は、本発明の装身品を長期間に適切な状態の下で使用することができる。
【発明の効果】
【0029】
このように本発明では、使用者の身体部分の屈曲方向の外力を受けたときの変形抵抗が高まり、しかも、立上り状態の発生を低減して、安定的に本来の変形抵抗を得ることができる装身品芯材及びその装身品芯材を保持する装身品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1の実施形態に係る装身品芯材の斜視図である。
図2図1の装身品芯材が装身品に保持されている状態の例の横断面図である。
図3】(a)図1の装身品芯材が厚み方向の曲げを起こす状態の模式図である。(b)図1の装身品芯材が幅方向の曲げを起こす状態の模式図である。
図4】(a)図1の装身品芯材の左側面側が上方に立ち上がる状態を模式的に表わすA-A線断面図である。(b)図1の装身品芯材の右側面側が上方に立ち上がる状態を模式的に表わすA-A線断面図である。
図5図1の装身品芯材の横断面図である。
図6図5の横断面のうち第1の中空空間を拡大した部分断面図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る装身品芯材の横断面図である。
図8】本発明の第3の実施形態に係る装身品芯材の斜視図である。
図9】(a)図8の装身品芯材の横断面図である。(b)図8の装身品芯材が装身品に保持されている状態の例の横断面図である。
図10】(a)(b)図8の装身品芯材が装身品に保持されている状態の別の例の横断面図である。
図11】芯部の形状が図8と異なる本発明の第3の実施形態に係る装身品芯材が装身品に保持されている状態の例の横断面図である。
図12】実施例1における実施例の装身品芯材の横断面を表わす寸法図である。
図13】(a)実施例1における比較例の装身品芯材を上下面方向から視た写真である。(b)実施例1における実施例の装身品芯材を上下面方向から視た写真である。
図14】実施例2における変形前の装身品芯材を測定した寸法図である。
図15】(a)型に装身品芯材を嵌めて幅方向の曲げを起こした状態を示す写真である。(b)実験室において装身品芯材を測定中の状態を示す写真である。
図16】実施例2における曲げ変形後の装身品芯材を測定した寸法図である。
図17】実施例2における曲げ変形前後の芯材横寸法及び芯部横寸法の測定値と、芯部横寸法の変化率及び減少率とを示す表である。
図18】実施例2における芯部横寸法の減少率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態を、図1図6を用いて説明する。図1の斜視図に示す11は装身品芯材を示す。図においては、矢印Uの向きが装身品芯材11の上方を示し、矢印Dの向きが同じく下方を示す。矢印Fの向きが同じく前方を示し、矢印Bの向きが同じく後方を示す。また、矢印Lの向きが同じく左方を示し、矢印Rの向きが同じく右方を示す。装身品芯材11はいわゆる長尺物であり、構造が前後方向に連続する。
【0032】
装身品芯材11は前後方向の軸方向を有する柱状に形成される。C1はこの柱状の中心線を示す。軸方向の任意の位置における断面の形状及び寸法は略同一である。装身品芯材11は前端及び後端にそれぞれ端面12を有し、図1が前端面12aを示す。また、装身品芯材11は後述する装身品の長さ、製造・流通するための単位の長さなどに応じた軸方向の長さを有する。図1は模式的に軸方向の長さが比較的短い装身品芯材11を例示するにすぎない。装身品芯材11の横断面は、中心線C1と直交する上下方向の芯材縦寸法Vと、同じく直交する左右方向の芯材横寸法Hとが異なり、芯材縦寸法Vが芯材横寸法Hよりも短い。そして、この横断面の短手方向とは寝装品芯材11の上下方向を指し、以下において芯材短手方向ともよぶ。また、この横断面の長手方向とは装身品芯材11の左右方向を指し、以下において芯材長手方向ともよぶ。
【0033】
装身品芯材11は、軸方向視において中心線C1を取り囲む位置の空洞状の中空空間を有し、この中空空間を第1の中空空間13と呼ぶ。第1の中空空間13は、装身品芯材11の横断面の芯材短手方向の略中央且つ芯材長手方向の略中央に配置されている。
【0034】
装身品芯材11は、装着者の身体部分に直接に又は間接に着けられる装身品14に保持される。そして、装身品芯材11はこの身体部分の屈曲方向の外力を受けたときの変形抵抗が高まるように構成される。そのため、装身品芯材11は「骨」を意味する「ボーン」と呼ばれることがある。また、装身品14は内部にこのボーンを挿通する、例えばテープ状の製品である「ループ」と呼ばれることがある。装身品14の例としてはテープ、ブラジャー、補正下着、プロテクター、コルセット、パワーアシストスーツなどが挙げられる。また、装身品芯材11が装身品14であるテープに保持されて、そのテープがブラジャー、補正下着等に縫着、接着などの方法により支持されてもよい。さらに、プロテクター、コルセット、パワーアシストスーツなどは肌着、アンダーウェア等を介して身体部分に着けられてもよい。
【0035】
図2は、装身品芯材11が装身品14に保持されている状態の例の横断面図を示す。この場合は装身品14が矩形状断面のテープの例であり、装身品芯材11と同様に上下方向の寸法が左右方向の寸法よりも短い。例えば、テープは繊維製品の生地を用いて、保持する装身品芯材11を上下左右から囲むことのできる袋状に形成される。また、このテープの上面又は下面をブラジャー、補正下着等の表面に縫着、接着などの方法により固着して、テープを支持してもよい。
【0036】
装身品芯材11の断面は、左右に左向き凸状の略半円弧と右向き凸状の略半円弧とを有し、これら略半円弧同士を上下二本の左右方向の直線により結んだ陸上トラック状の形状を表わす。そして、平面状である装身品芯材11の上面を芯材上面15とよび、同じく下面を芯材下面16とよぶ。また、半円柱の外周面状である左右の側面をそれぞれ左側面17及び右側面18とよぶ。
【0037】
装着品芯材11は、合成樹脂、ゴム等の材質により形成されてよく、例えば、ウレタン、ナイロン等の合成樹脂材料により、または、これら合成樹脂材料を組み合わせて形成されてもよい。装着品芯材11は、これらの材質により形成されるため、装着品芯材11を曲げようとする外力を受けるとき、その外力に対してできるだけ変形をしないように変形抵抗を示す。このような、装着品芯材11が外力を受けた場合に変形しやすいかどうかの変形抵抗を剛性とよび、こわさともよぶ。一方で、装着品芯材11は、これらの材質により形成されるため、変形させた後に力を取除くと元の状態に戻りいわゆるスプリングバックをなす。こうした性質を弾性とよぶ。
【0038】
装身品芯材11は、芯材上面15及び芯材下面16が、装着者が装身品14を装着する身体部分の表面と平行に配置されるように装身品14に保持される。この装着者の身体部分の表面を身体表面とよび、図示をしないが符号Fにより表わす。装身品芯材11の上下面15,16が身体表面Fと平行となるように装身品芯材11が配置され、かつ、装身品芯材11の芯材縦寸法Vが芯材横寸法Hよりも短いことにより、装身品14が装着される状態において、装身品芯材11の身体表面Fに対する垂直方向における厚さは薄い。すなわち、仮に、上下面15,16が身体表面Fに対して垂直となるように配置されるときは、装身品芯材11の芯材横寸法Hが芯材縦寸法Vよりも長いことにより、装身品芯材11の身体表面Fに対する垂直方向における厚さは厚い。このため、図2のように装身品芯材11を保持することによって装身品14が身体表面Fに対する垂直方向に膨らむ度合は小さく済む。これにより、装身品14全体の意匠性、嵩などに対する影響は小さい。
【0039】
また、例えば芯材上面15が身体表面Fから遠くなり、芯材下面16が身体表面Fから近くなるように装身品芯材11が保持されるとき、装身品芯材11が中心線C1を中心に揺動する場合でも、面積の大きな芯材下面16が身体表面Fに倣っていることにより、装身品芯材11及び装身品14は大きく揺動せずに姿勢が安定する。仮に、上下面15,16が身体表面Fに対して垂直に配置されるときは、面積の比較的小さな左右の側面17,18の何れかが身体表面Fから近くなるように装身品芯材11が保持されるため姿勢が安定しない。
【0040】
そして、装着者が装身品14を装着した胴体、手足の関節等の身体部分を曲げるとき、または、それ以外の部分を動かすことに伴って装身品14を装着した身体部分が曲がるとき、装着品芯材11は変形抵抗を示してこれらの身体部分を保護することができる。こうした、胴体、手足の関節などを曲がりにくくすることにより、怪我、故障等のときにこれらの身体部分を保護する。また、日常的に手足の機能を補強すること、姿勢を正しく保って美しい外観を呈することなどができる。装着品芯材11は、芯材短手方向に曲がる力を受けることにより芯材短手方向の変形抵抗を示し、かつ、芯材長手方向に曲がる力を受けることにより芯材長手方向の変形抵抗を示す。こうした芯材短手方向の力及び芯材短手方向の曲げを、以下において、それぞれ厚み方向の力及び厚み方向の曲げTともよぶ。また、芯材長手方向の力及び芯材長手方向の曲げを、以下において、それぞれ幅方向の力及び幅方向の曲げWともよぶ。
【0041】
図3は厚み方向の曲げT及び幅方向の曲げWを説明するための模式図を表わす。図3(a)は装身品芯材11の芯材上面15を内側にして厚み方向の曲げTを起こす状態を側面から視た状態を表わす。また、図3(b)は装着品芯材11の右側面18を内側にして幅方向の曲げWを起こす状態を平面又は底面から視た状態を表わす。各図の太字の矢印が、それぞれ厚み方向の曲げT及び幅方向の曲げWを示す。逆に芯材下面16を内側にして厚み方向の曲げTを起こす状態と、左側面17を内側にして幅方向の曲げWを起こす状態とは、それぞれ左右及び上下に反転した図によって表わされる。
【0042】
ところで、装身品芯材11が横断面方向のどちらかの向きに回転して捻じれてしまうような「立上り状態」とは、主に装身品芯材11に対して幅方向の力が加わり、図3(b)のように幅方向の曲げWが生じるときに起きる。その状態を図4によって模式的に示す。図4(a)(b)は、図3(b)に示したA-A線の断面図を表わす。すなわち、幅方向の曲げWが生じるときに、図4(a)において装身品芯材11が立ち上がる前の状態を二点鎖線により表わし、左側面17側が上方に立ち上がる状態を実線により表わす。また、図4(b)において右側面18側が上方に立ち上がる状態を同様に表わす。このような左側面17側の立上りと右側面18側の立上りとは、いずれかが略ランダムに生じる。
【0043】
これに対して、本発明者は、鋭意検討の結果、本実施形態の装身品芯材11のように、横断面における芯材横寸法Hが芯材縦寸法Vよりも長い場合、芯材長手方向の略中央に空洞状の第1の中空空間13を形成することにより、装身品芯材11が、幅方向の曲げWを生じるときでも「立上り状態」の発生が低減されることを見出した。これにより、装身品芯材11は身体部分の屈曲方向である厚み方向の外力を受けるときの変形抵抗を高めることができ、かつ、装身品芯材11を身体表面Hと芯材長手方向とが略平行となるように配置する場合でも、装身品芯材が身体表面Hに沿った幅方向の外力を受けるときの立上り状態が生じ難い。こうして、装身品芯材11によっては、安定的に本来の変形抵抗を得ることができる。
【0044】
図5は装身品芯材11の軸方向の任意の位置における横断面を表わす。また、図6は、図5の断面図のうち第1の中空空間13を拡大した部分断面の例を表わす。図6に示す寸法は一例に過ぎない。この第1の中空空間13は、中心線C1と直交する横断面における縦横の寸法が異なり、第1の中空空間13の上下方向の寸法である空間縦寸法v1が同じく左右方向の寸法である空間横寸法h1よりも長い。このとき、上下方向が第1の中空空間13の長手方向であり、以下において空間長手方向ともよぶ。また、左右方向が第1の中空空間13の短手方向であり、以下において空間短手方向ともよぶ。そして、空間長手方向は左右方向である芯材長手方向と直交する。
【0045】
第1の中空空間13は、図6の断面図において上部が半円弧13aを描き、また、下部も半円弧13aを描く。上部の半円弧13aの中心と下部の半円弧13aの中心とは、それぞれ、中心線C1よりも上下に離れて位置している。例えば、上部の半円弧13aの中心は図3においてC2に位置して、中心線C1よりも上向きに離れている。上下の半円弧13a同士は、左側の上下方向の直線13b及び右側の上下方向の直線13bによって結ばれている。こうして、空間縦寸法v1は空間横寸法h1よりも長い。
【0046】
こうして、第1の中空空間13の空間長手方向が装身品芯材11の芯材長手方向と直交することにより、装身品芯材11が幅方向の曲げWを起こすときは、空間長手方向が装身品芯材11の曲がる方向と直交する。そして、第1の中空空間13の空間短手方向は装身品芯材11の曲がる方向である幅方向と一致する。
【0047】
すなわち、空間長手方向が芯材長手方向と一致する場合に比べて、本発明の装身品芯材11の場合、装身品芯材11の曲がる方向である幅方向と直交する空間長手方向における第1の中空空間13の直径は空間短手方向における直径よりも長い。そのため、第1の中空空間13の上側及び下側における装身品芯材11の肉厚がより薄い。そして、本発明者は装身品芯材11が幅方向に曲がるのに対して第1の中空空間13の上側及び下側における装身品芯材11の肉厚がより薄いとき、装身品芯材11の変形時における芯材長手方向の抵抗が小さく、立上り状態が発生しにくいことを見出した。こうして、本発明の装身品芯材11は、装身品芯材11が身体表面Fに沿った外力を受けるときの立上り状態がより生じ難い。
【0048】
図5の断面図が示すように、第1の中空空間13は、その上下左右が芯部19によって囲まれている。芯部19は軸方向視における外縁が略円形を描き、中心線C1を中心軸とする略円柱状に形成される。芯部19の材質は合成樹脂であり、例えば、ナイロン6をはじめとするナイロン樹脂が用いられている。この芯部19の周りは鞘部20によって囲まれている。鞘部20の材質は合成樹脂であり、例えばポリウレタンが用いられている。芯部19の材料として、その弾性変形抵抗が鞘部20の材料の弾性変形抵抗よりも大きいものが採用される。例えば、芯部19の材質がナイロン6であればその引張弾性率が2.7GPaであり、鞘部20の材質がポリウレタンであればその引張弾性率が0.07GPaから2.4GPaであるので、芯部19の弾性変形抵抗が鞘部20のそれよりも大きい。
【0049】
こうして、装身品芯材11は、周辺の鞘部20よりも材料の弾性変形抵抗が大きい芯部19を有するため、芯部19を有しない場合と比べて屈曲方向の外力を受けるときの変形抵抗が高い。しかも、芯部19が第1の中空空間13に近い位置に配置されるため、仮に芯部が横断面において偏った位置に配置される場合と比べて、幅方向の曲げWと厚さ方向の曲げTとの何れに対してもバランスの良い変形抵抗を得ることができる。こうして、装身品芯材11は、安定的な変形抵抗を得ることができる。
【0050】
また、装身品芯材11は、芯部19と鞘部20との境界が略円柱状に形成されるため、それぞれ合成樹脂製の芯部19と鞘部20とを成形する際により効率に製作することができる。例えば、二色成形によって芯部19を成形し、その外側から鞘部20を成形する場合でも、略円柱状の芯部19は横断面形状が押し潰されて歪な形状に形成されることが少なく製作時の不良が生じ難い。
【0051】
また、図5の断面図が示すように、装身品芯材11の鞘部20は、芯部19に対して芯材長手方向の左右両側に配置される一対の空洞状の中空空間である第2の中空空間21,22を形成する。一対の第2の中空空間21,22は、左側に配置される左中空空間21と右側に配置される右中空空間22とから成る。
【0052】
左中空空間21は、軸方向視において左側の円弧を有する半円柱と、その右側に隣接する四角柱とを合わせた空間を有する。そして、左中空空間21の半円柱部分の径方向外側における鞘部20は、その外周面が半円柱の外周面状である左側面17を形成する。また、四角柱部分の上側における鞘部20は、その上面が平面状である芯材上面15の一部を形成する。同じく下側における鞘部20は、その底面が平面状である芯材下面16の一部を形成する。右中空空間22についても、同様に、周囲の鞘部20の外周面が半円柱の外周面状である右側面18を形成し、同じく上面が平面状である芯材上面15の一部を形成し、また、下面が平面状である芯材下面16の一部を形成する。こうして、左右の第2の中空空間21,22は、それぞれの周囲の鞘部20の外側面に倣った形状を有する。
【0053】
こうして、装身品芯材11は、空洞状である第2の中空空間21,22を形成するため、芯部19によって変形抵抗を得て且つ左右に偏平な鞘部20によって安定した姿勢で装身品に保持されつつ、全体として重量を低減することができる。特に、第2の中空空間21,22の形状がその周囲の鞘部20の外側面に倣うことによって、これら周囲の鞘部20を肉薄に形成することができ、尚更に重量を低減することができる。そのため、装身品14が軽量の装身品芯材11を保持することにより、使用者は、装身品14を軽快に着けることができる。また、装身品芯材11の扱いが容易であり、その製作、輸送、保管などを効率良く行うことができる。
【0054】
また、装身品芯材11は、第2の中空空間21,22を有するため、製作時に第2の中空空間21,22の形状若しくは位置、第2の中空空間21,22の周りにおける鞘部20の肉厚などを変更することにより、上記の重量だけでなく、装身品芯材11の全体の剛性、弾性等を調節することができる。こうして装身品芯材11の設計における高い自由度を得ることができる。
【0055】
[第2の実施形態]
図7は、本発明の第2の実施形態を例示している。図に示す31は装身品芯材を示す。装身品芯材31は前後方向の軸方向を有する柱状に形成される。また、図7は装身品芯材31の軸方向の任意の位置における横断面を表わす。装身品芯材31の鞘部20は、芯材長手方向の端面である上側の芯材上面15と、同じく下側の芯材下面16とを有する。
【0056】
図7の断面図が示すように、第1の中空空間13は、その上下左右が芯部32によって囲まれている。この断面図において、芯部32の外縁は丸角長方形を描く。そして、この丸角長方形の上辺33と同じく下辺34とは、いずれも芯材上面15及び芯材下面16と平行に位置する。
【0057】
これにより、本実施形態の装身品芯材31は、芯材上面15及び芯材下面16に対して芯部32の上辺33及び下辺34が略平行に位置するため、芯部32がこれと異なる形状を形成する場合に比べ、鞘部20の断面の内側において芯部32の断面によって占められる面積が広い。そのため、鞘部20よりも材料の弾性変形抵抗が大きく外力を受けるときの変形抵抗が高い芯部32の体積が大きい。このことから、装身品芯材31によってより高い変形抵抗を得ることができる。
【0058】
その他の構成は、第1の実施形態と共通する。
【0059】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態を、図8図11を用いて説明する。図8の斜視図に示す41は装身品芯材を示す。装身品芯材41は、中心線C1と直交する横断面において、左右方向である芯材長手方向の両端に延設される一対の薄肉状の延長部42,43を有する。この一対の延長部42,43は左向きに延設される左延長部42と、右向きに延設される右延長部43とから成る。
【0060】
図9(a)は装身品芯材41の軸方向の任意の位置における横断面を表わす。左延長部42は、鞘部20のうち左側面17の略下半分が左向きに膨出するように延設され、左側に位置するほど上下方向の厚さが小さくなるような薄肉状に形成される。また、右延長部43も同様に、右側面18の略下半分が右向きに膨出するように延設され、右側に位置するほど厚さが小さくなるような薄肉状に形成される。芯材下面46は、左右の各延長部42,43の下面部分にまで拡がって全体に広い底面を構成する。
【0061】
左延長部42には、その薄肉部分において上下方向に貫通して穿設される複数の針孔44が前後方向の列をなすように開けられる。また、右延長部42にも同様に複数の針孔45が前後方向の列をなすように開けられる。各針孔44,45は、後述する縫糸が挿通される程度の太さの内径を有する。
【0062】
図9(b)は、装身品芯材41が装身品47に保持されている状態の例の横断面図を示す。この図は装身品47が矩形状断面のテープである場合の例を示す。装身品47が軸方向視において装身品芯材41を上下左右から囲む生地を有し、装身品芯材41とこの生地とが重ねられる。そして、生地に対して装身品芯材41は針孔44,45に挿通される縫糸48によって縫い付けられる。図9(b)が示すように、複数本の縫糸48がそれぞれ左列の各針孔44を貫通しつつ装身品47と装身品芯材41とを上下方向に縫着する。また、複数本の縫糸48がそれぞれ右列の各針孔45を貫通しつつ同様に装身品47と装身品芯材41とを上下方向に縫着する。
【0063】
その他の構成は、第1の実施形態又は第2の実施形態と共通とする。
【0064】
このように、装身品芯材41は、装身品47によって保持される際、針孔44,45に挿通される縫糸48によって装身品芯材41に重ねられる生地に縫い付けることができる。そのため、装身品47に保持された状態の装身品芯材41の位置がずれること、同じく装身品芯材41が軸方向を中心に回転すること、同じく軸方向を中心に捩れてしまうことなどを防ぐことができる。しかも、針孔44,45が芯材長手方向の両端に設けられるため、左列の針孔44と右列の針孔45との距離が長い。そのため、軸方向視における装身品芯材41の装身品47に対する揺動を制止する効果が高く、上で述べた回転及び捩れをより効率的に低減することができる。
【0065】
さらに、芯材下面46が左右の各延長部42,43の下面部分にまで拡がって全体に広い装身品芯材41の底面を構成するために、装身品芯材41を、装身品47の生地を介してより広い面積において身体表面Fに沿うように保持することができる。そのため、上で述べた回転及び捩れをなおさら効率的に低減することができる。これらにより、使用者は、装身品芯材41及びそれを保持する装身品47を長期間に適切な状態の下で使用することができる。
【0066】
なお、本実施形態における装身品47は、図9(b)のようなテープである必要がない。例えば、図10(a)が示すように、装身品47はブラジャー、補正下着、プロテクター、コルセット、パワーアシストスーツなどの装身品本体の生地である着生地49と、この着生地49上に被せる生地である被せ生地50との組合せでもよい。この場合、装身品47の着生地49及び被せ生地50は、軸方向視において装身品芯材41を挟むように上下方向に重ねられる。そして、複数本の縫糸48は上から下の順に被せ生地50、延長部42,43及び着生地49を縫着する。このとき、各縫糸48は針孔44,45を貫通する。こうして装身品47は装身品芯材41を保持する。
【0067】
また、本実施形態における装身品47は、図10(b)が示すように、装身品本体の生地である着生地49だけでもよい。この場合、装身品47の着生地49は、軸方向視において装身品芯材41と上下方向に重ねられる。そして、複数本の縫糸48は上から針孔44,45を貫通しつつ、装身品芯材41の延長部42,43を着生地49に縫着する。こうして装身品47は装身品芯材41を保持する。
【0068】
これらのように、装身品47が着生地49及び被せ生地50の組合せ又は着生地49だけの場合、装身品芯材41がブラジャー、補正下着、プロテクター、コルセット、パワーアシストスーツなどに対してテープを介せずに保持されるため、テープの形状、構造、材質等の影響を受けることなくこれらブラジャー、補正下着、プロテクターなどのデザインを自在に決定することができる。
【0069】
これらの他に、本実施形態における芯部19は、図9図10に示すように軸方向視において外縁が略円形に限る必要がない。例えば、図11に示す装身品芯材51のように、軸方向視において外縁が略長方形の芯部32を有していてもよい。
【0070】
[実施例1]
発明者は、比較例として、軸方向視において中心線C1を取り囲む位置に第1の中空空間を有しない装身品芯材の試作品を用意した。また、本発明の実施例として、中心線C1を取り囲む位置に第1の中空空間を有する装身品芯材の試作品を用意した。以下、前者の第1の中空空間を有しない装身品芯材試作品を中実芯材試作品60とよび、後者の第1の中空空間を有する装身品芯材試作品を本発明の装身品芯材試作品11aとよぶ。本発明の装身品芯材11aの寸法の例として、図5に表わした断面におけるmm単位により表示した各寸法を図12に示す。
【0071】
図13(a)の写真は、図3(b)が示すように中実芯材試作品60に幅方向の力を加えて幅方向の曲げWが生じる状態を、もともとの姿勢における芯材上面65及び芯材下面66の方向から視た写真である。また、図13(b)の写真は、装身品芯材試作品11aを同様に幅方向の力を加えて幅方向の曲げWが生じる状態の写真である。これらの写真を対比して、例えば図13(a)の最上部において、下の模式図が示すように中実芯材試作品60の右側面18側が立ち上がっているのに対して、図13(b)の装身品芯材試作品11aにおいては、中実芯材試作品60のように立ち上がっていないことが見て取れる。この装身品芯材試作品11aのように、装身品芯材11は、第1の中空空間13を形成することによって立上り状態の発生が低減されることが見出された。
【0072】
[実施例2]
発明者は、鋭意検討の結果、装身品芯材11の第1の中空空間13aが潰れて減容することにより「立上り状態」を生じさせる力が緩衝されて、立上り状態が生じ難いことを見出した。そこで発明者は、図14図18に示すように本発明の装身品芯材試作品11bを用いて幅方向の曲げWを起こさせ、曲がった箇所の、芯部19aの芯材長手方向における芯部横寸法h2の減少率を測定した。装身品芯材試作品11bには、図示されていないが、本発明に係る第1の中空空間13aが設けられている。
【0073】
先ず、装身品芯材試作品11bに図14の上から下の順に軸方向と直交する目盛A~Mを付し、それぞれの目盛における、芯材長手方向の芯材横寸法H及び芯部横寸法h2をmm単位を用いて測定した。図14にそれぞれの目盛における芯材横寸法H及び芯部横寸法h2の測定値が示されている。これらの芯材横寸法H及び芯部横寸法h2は(株)ミツトヨ製MF-J2017D型測定顕微鏡を用いて測定した。なお、装身品芯材試作品11aの芯材短手方向の芯材縦寸法Vは2.1mmであった。
【0074】
次に、図15(a)に示すように、型に溝を凹設してその溝に装身品芯材試作品11bを嵌め、この装身品芯材試作品11bに幅方向の曲げWを起こさせた。そして、その状態で再び目盛A~Mにおける芯材横寸法H及び芯部横寸法h2を測定した。図15(b)は、幅方向の曲げWを起こさせた状態で芯材横寸法H及び芯部横寸法h2を(株)ミツトヨ製MF-J2017D型測定顕微鏡を用いて測定した際の様子を表わす。
【0075】
図16は、このように幅方向の曲げWを起こさせた装身品芯材試作品11bの目盛A~Mにおける芯材横寸法H´及び芯部横寸法h2´をmm単位を用いて測定した結果を示す。
【0076】
最後に、発明者は図17の表が示すように、装身品芯材試作品11bに幅方向の曲げWを起こさせる前の芯材横寸法H及び芯部横寸法h2と、幅方向の曲げWを起こさせた後の芯材横寸法H´及び芯部横寸法h2´とを対比して、各目盛A~Mにおける芯部横寸法h2の変化率を算出した。表は、芯部横寸法h2´を芯部横寸法h2によって除した変化率をパーセンテージにより表わし、また、この変化率から1を減じた数値を減少率としてパーセンテージにより表わしている。そして、各目盛A~Mにおけるこの減少率を図18のグラフにより表わす。
【0077】
このグラフが示すように、装身品芯材試作品11aに幅方向の曲げWを起こさせたときの芯部横寸法h2の減少率は、全体として、目盛A~Mのうちの両端に近い側の値が小さく、中央に近い側の値が大きい傾向にあった。ここでいう減少率の大小は数値の絶対値の大小を指す。例えば、目盛Bにおける減少率の絶対値が0.0%であり、A~Mのうち減少率が最も小さい。また、目盛A、K及びLにおける減少率の絶対値が1.0%でありそれぞれ二番目に小さい。一方で目盛Jにおける減少率の絶対値が4.4%であり、A~Mのうち減少率が最も大きい。また、目盛G及びHにおける減少率の絶対値が3.4%でありそれぞれ二番目に大きい。
【0078】
このことから、装身品芯材試作品11aの目盛A~Mのうちの両端に近い側において第1の中空空間13aの潰れの度合が小さく、そのために減少率を小さくすることが推測される。すなわち、目盛A~Mのうちの両端に近い側においては幅方向の曲げWの曲率が小さく、そのことが、第1の中空空間13aの潰れを小さくし、減少率を小さくするように推測される。逆に、装身品芯材試作品11aの目盛A~Mのうちの中央に近い側において第1の中空空間13aの潰れの度合が大きく、そのために減少率を大きくすることが推測される。すなわち、目盛A~Mのうちの中央に近い側においては幅方向の曲げWの曲率が大きく、そのことが、第1の中空空間13aの潰れを大きくし、減少率を大きくするように推測される。
【0079】
これら実施例1及び実施例2の実験を通じて、発明者は、本発明の装身品芯材が第1の中空空間を設けたときに立上り状態の発生が低減されたことを見出し、かつ、幅方向の曲げWを起こしてその曲率が大きいときに第1の中空空間が潰れて減容することを確認した。このように、装身品芯材に第1の中空空間を設けることによって「立上り状態」を生じさせる力が緩衝されて、立上り状態が生じ難いことを確認した。
【0080】
以上、本発明の実施形態について例示したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0081】
例えば、装身品芯材の横断面における第1の中空空間の外縁は、上下の半円弧と直線とを組み合わせた形状に限らず、装身品芯材の立ち上がりを低減することができれば、例えば多角形状、半円弧以外の曲線と直線とを組み合わせた不規則的な形状などでもよい。
【0082】
また、装身品芯材の芯部は、横断面が略円柱状又は略四角柱状に限らず、必要な大きさ又は方向の変形抵抗を得ることができ且つ製作の上で差し支えがなければ、例えば略四角柱状以外の略多角形柱状、直線と曲線とを組み合わせた不規則的な形状などでもよい。
【0083】
装身品芯材の鞘部の横断面における外縁は、陸上トラック状の形状に限らず、身体表面に倣うことができ且つ嵩張らなければ、例えば多角形状、陸上トラック状以外の曲線と直線とを組み合わせた不規則的な形状などでもよい。
【0084】
装身品芯材の第2の中空空間は、装身品芯材の重量が大き過ぎなければ、必ずしも設けなくともよく、また、必ずしも左右一対に設けなくともよい。しかも、横断面における第2の中空空間の外縁は、半円柱と四角柱とを組み合わせた形状に限らず、装身品芯材が必要な大きさ又は方向の変形抵抗を得ることができ且つ製作の上で差し支えがなければ、略円形状、略多角形状、曲線と直線とを組み合わせた不規則的な形状などでもよい。
【0085】
装身品芯材の合成樹脂材料には酸化チタンなどの添加剤を加えてもよい。例えば、酸化チタンを加える場合は装身品芯材を白色に着色することができて装身品芯材の変色を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、身体部分に直接に又は間接に着けられる装身品に利用することができ、また、こうした装身品に保持される装身品芯材に利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
11,31,41,51 装身品芯材
12 端面
13 第1の中空空間
14,47 装身品
15,65 芯材上面
16,46,66 芯材下面
17 左側面
18 右側面
19,32 芯部
20 鞘部
21 第2の中空空間(左中空空間)
22 第2の中空空間(右中空空間)
42 延長部(左延長部)
43 延長部(右延長部)
44,45 針孔
48 縫糸
49 着生地
50 被せ生地
60 中実芯材試作品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18