(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062342
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】大型管の地中建込み方法及び有底埋設管
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20230426BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172246
(22)【出願日】2021-10-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】518302139
【氏名又は名称】株式会社九建総合開発
(74)【代理人】
【識別番号】100092163
【弁理士】
【氏名又は名称】穴見 健策
(72)【発明者】
【氏名】新永 隆一
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB03
2E139AB24
2E139AC19
2E139AC32
2E139AC42
2E139AC65
(57)【要約】
【課題】簡単な工程の組合せで円滑、確実に埋設管の埋設建込み作業を遂行し、かつ施工後に漏水等を生じることを確実に防止させる。
【解決手段】大型管の地中建込み方法は、埋設させる管より径大の先行掘削管であり、埋設管の平面視埋設外径を内包する管壁位置となるように埋設管の埋設に先立って地面に対して該先行掘削管を圧入掘削させる工程と、先行掘削管の掘削と同時に管内の掘削土を排土する工程と、計画深さまで先行掘削管を圧入させた後に掘削管の管内空間に有底埋設管を挿入降下させて先行掘削管と埋設管とで二重管状に配置させる工程と、埋設管を所定深さ位置まで挿入した後に先行掘削管を抜き上げる工程と、を含む。本埋設管内の利用目的に応じた内装、設備を地上作業で正確に行えるうえに、作業工程の簡単化、作業の短縮化、止水性能の向上を図れる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内空間を種々の用途に用いるべく地中に縦方向に埋設させる大型の埋設管の建込み方法であり、
埋設させる管より径大の先行掘削管であり、埋設管の平面視埋設外径を内包する管壁位
置となるように埋設管の埋設に先立って地面に対して該先行掘削管を圧入掘削させる工程
と、
先行掘削管の掘削と同時に管内の掘削土を排土する工程と、
計画深さまで先行掘削管を圧入させた後に掘削管の管内空間に有底埋設管を挿入降下させて先行掘削管と埋設管とで二重管状に配置させる工程と、
埋設管を所定深さ位置まで挿入した後に先行掘削管を抜き上げる工程と、を含むことを特徴とする大型管の地中建込み方法。
【請求項2】
先行掘削管を計画深さまで圧入させた後に該先行掘削管の管内空間に挿入降下させる有底埋設管の内底部には、地中側からの浮力に対する抗浮力錘部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の大型管の地中建込み方法。
【請求項3】
有底埋設管の底外部には下方に先端側を向けた旋回食込器が設けられ、有底埋設管の
先行掘削管の管内空間への挿入降下後に有底埋設管自体を縦軸回りに旋回させる工程を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の大型管の地中建込み方法。
【請求項4】
請求項2の 先行掘削管を計画深さまで圧入させた後に 先行掘削管の管内空間に挿入降下させる有底埋設管であり、
その内底部には、地中側からの浮力に対する抗浮力錘部が設けられていることを特徴とする有底埋設管。
【請求項5】
底外部に下方に先端側を向けた旋回食込器が設けられていることを特徴とする請求項4記載の有底埋設管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震、津波、台風等自然災害や人災時の人や物の一時避難用のシェルター、、物や食物保管用の保管庫、レジャー用その他多目的の空間を形成可能な大型管の地中建込み方法及び有底埋設管に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、地震、津波、台風等自然災害や人災時に人や物の一時避難、物や食物保管用のシェルター、レジャー用その他多目的空間を、比較的短期で地下設置可能であり、低コストで簡易に施工でき、しかも占有平面スペースが小さくて地上構築物や設備に左右されにくい大型有底管体について、特許文献1において提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は大型管体を地中に圧入後、管体の上端開口から水中コンクリートを供給して大型管体の下端より下方の凹部に投入して管の下端外部のコンクリート基盤を形成し、この後に管体内を下降させて充填孔付きの底蓋を管体の下端部分に配置し、さらにその充填孔を介して底蓋下面と管外のコンクリート基盤との隙間にモルタルを注入して底蓋と管外のコンクリート基盤とを一体化させて管体底部を構築しようとするものである。
【0005】
この方法では、大型管体の地中建込みについて管体の地中圧入後に管の下端側において管内への水の進入を抑制しながら底蓋の端部を管の内壁に溶接接合することができる。しかしながら、管体を地中に圧入後にコンクリートを供給していったん大型管体の下端の下方の凹部に該コンクリートを投入し、その後管体の下端側に配置した底蓋の充填孔からモルタル注入して底蓋下面と管外のコンクリート基盤との隙間にモルタルを注入するので、底蓋下面側のコンクリート基盤の状態を確認できないままに作業を行わなければならない。また、底蓋の充填孔からのモルタル注入作業は限られたスペースでの狭所作業であり、作業段取りや注入作業に時間がかかり、作業コストがかかる。また、注入後の底蓋下面と管外のコンクリート基盤との隙間の充填を確認できないので必要以上のモルタル注入を行って作業全体、あるいは材料に無用なコストがかかる問題があった。これに対し、出願人は、管内壁にリブ部等を取り付けた管本体の内側の土を排出しながら該管本体を地中鉛直方向に圧入する工程と、管本体を計画深さまで圧入後に管本体内のリブ部分に対応する高さまで生コンクリートを投入する工程と、生コンクリートの硬化後に、管本体内で底蓋を吊下ろして硬化コンクリートの上部に配置する工程と、底蓋の外縁と管本体の内壁面とを溶接して管本体と底蓋とを接合する工程と、を含む大型有底管体の建込み方法を特願2020-192207号により提案した。
【0006】
この方法では、管本体内のリブ部分まで投入するコンクリートの状態等を目視しながら充填作業を行えるので作業状態や作業終了の確認を確実に行える利点がある。一方、この方法では、管本体の地下十数メートルまでの圧入後、生コンクリートを管内に投入して管内下端部の所要高さまで充填する作業であるから、暗所で多湿の劣悪な作業環境下で作業者による管内補助作業が必要である。また、作業時間が掛かりまた、コンクリートの場所打ち工法の一つであるから水の漏洩の有無確認を確実に行うことは困難であった。さらに、作業コストが大幅に膨らむ問題があった。
【0007】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、簡単な工程の組合せで円滑、確実に埋設管の埋設作業を遂行し、かつ施工後に漏水等を生じることを確実に防止し得る大型管の地中建込み方法及び有底埋設管を提供することにある。また、本発明の他の目的は、短時間で低コストにより埋設管の埋設作業を完了させることができる大型管の地中建込み方法及び有底埋設管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、管内空間を種々の用途に用いるべく地中に縦方向に埋設させる大型の埋設管の建込み方法であり、埋設させる管1より径大の先行掘削管20であり、埋設管1の平面視埋設外径を内包する管壁位置となるように埋設管1の埋設に先立って地面に対して該先行掘削管20を圧入掘削させる工程と、先行掘削管20の掘削と同時に管内の掘削土を排土する工程と、計画深さまで先行掘削管20を圧入させた後に掘削管20の管内空間100に有底埋設管1を挿入降下させて先行掘削管20と埋設管1とで二重管状に配置させる工程と、埋設管1を所定深さ位置まで挿入した後に先行掘削管20を抜き上げる工程と、を含む大型管の地中建込み方法から構成される。
【0009】
その際、先行掘削管20を計画深さまで圧入させた後に該先行掘削管の管内空間100に挿入降下させる有底埋設管1の内底部には、地中側からの浮力に対する抗浮力錘部が設けられるとよい。
【0010】
また、有底埋設管1の底外部には下方に先端側を向けた旋回食込器401が設けられ、有底埋設管1の先行掘削管20の管内空間100への挿入降下後に有底埋設管1自体を縦軸回りに旋回させる工程を含むとなおよい。
【0011】
また、本発明は、先行掘削管20を計画深さまで圧入させた後に 先行掘削管20の管内空間100に挿入降下させる有底埋設管1であり、その内底部には、地中側からの浮力に対する抗浮力錘部30が設けられ有底埋設管から構成される。
【0012】
その際、底外部に下方に先端側を向けた旋回食込器4が設けられてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の大型有底管体の建込み方法及び有底埋設管によれば、管本体の改良により作業工程を大幅に簡略化でき、各作業自体が簡単、明確で作業時間を大幅に短縮でき、さらに作業コストを大幅に低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の大型管の地中建込み方法及び有底埋設管の実施形態にかかる先行掘削管と埋設管の地中埋設位置関係を示した平面説明図である。
【
図2】本発明の実施形態にかかる先行掘削管をチュービング装置を用いて地中に圧入させる状態を示す正面説明図である。
【
図3】
図2の先行掘削管の地中圧入を実施するチュービング装置の斜視説明である。
【
図4】(a)は、排土した先行掘削管の管内に有底埋設管を挿入降下させる状態を示す説明図である。(b)は、有底埋設管の一部省略正面説明図である。
【
図5】(a)は、先行掘削管の管内に埋設管を二重管状に配置した状態を示す説明図である。(b)は、先行掘削管と埋設管との間に設定された二重管状の間隙を示す説明図である。
【
図6】先行掘削管の管内に埋設管を二重管状に配置した後、外側の先行掘削管を地上側に抜き上げる状態を示す説明図である。
【
図7】先行掘削管を抜き上げた後の埋設管の周囲にセメントミルクを投入して固化部を形成した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の大型管の地中建込み方法及び有底埋設管の実施形態について説明する。
【0016】
本発明に係る大型管の地中建込み方法に用いられる大型の有底埋設管は、管内空間を種々の用途に用いるために埋設し建込みされる。例えば地震その他の自然災害、戦争その他の人的災害からの避難用シェルター等として使用される。また書類、宝飾品、磁気テープ、フィルムその他の電子記録媒体等の保管庫等として使用され得る。また、薬品、薬剤、水、その他の液体、その他の有価物資材の倉庫、その他任意の用途の空間利用用管体として用いられる。本発明に係る大型の有底埋設管は内部に空間を有し底部が閉鎖された中空の有底管体である。管体は、例えば直径が2メートル以上~5メートル程度で、地中深さが例えば5メートル~20メートル、あるいはそれ以上の地中深さで埋設される管体であり、火山灰土や粘土質土の地中はもとより、特に地中に水や転石を多く含む地域においても有効に用いられる。本発明の大型管の地中建込み方法は、これらの地域において有効に活用し得る。
【0017】
本発明の大型有底管体はその建込み工程によって部材の構成が異なるので、各工程とともに大型有底管体について説明する。
【0018】
[第一工程]
図1ないし
図7は、本発明の大型管の地中建込み方法の一実施形態を説明している。
図1は地中に略鉛直方向に圧入させる先行掘削管20と、埋設管1と、の圧入位置関係を示す平面説明図であり、内側の一点鎖線示の管が最終的に埋設して建込みする埋設管1であり、外側の実線示の管が先行掘削管20を示す。この方法では、建て込み位置が設定された地盤G中に先行掘削管20を圧入しつつ排土させ、先行掘削管20内側の空間100に最終的に建込みする埋設管1を挿入降下させ、その後、先行掘削管20を地上に抜き上げることにより大型管を建込みさせるものである。
【0019】
先行掘削管20は、
図2,4,5に示すように、両端部(図中では上下)を開口した鋼製の円筒管からなる、いわゆるケーシングチューブと称される鋼管である。単一鋼管で目的の地中深さに到達できる場合には1本の鋼管で構成されるが、複数鋼管を連結して使用するのが通常である。通常は、数メートル直径で数メートルの軸方向長さのユニット管をチュービング装置で把持させて軸回り方向に回転させながら地中に圧入させる。チュービング装置内で1つのユニット管の圧入降下が完了しない状態で他のユニット管の管端同士を溶接又は管内外の水密保持状態で任意の締結手段により接続しながら、順次、圧入下降させる。例えば、カップリング部材を用いて上下対向させたユニット管の管端どうしをねじ締結し、複数の管体を連結して例えば20m程度の長さの一体の先行掘削管を形成しながら圧入下降させてもよい。本実施形態では、
図4(b)に示すように、管内外を水密保持のために地上にて予め溶接部10において、溶接連結している。先行掘削管20は、下端に複数の掘削ビット部21を取り付けており、チュービング装置40の軸回り回転に伴い回転あるいは旋回掘削しながら下方に掘り進んでいく。これによって、転石が多い地盤であっても掘削ビット21部で岩盤等を破砕しつつ確実に下方へ掘進することができる。掘削ビット部21は、掘削ビット21aを間隔を設けて管本体の下端縁に環状に複数個固定して構成されている。後述するように、管本体1を地中に圧入するには専用機械装置により管本体の長手軸周り方向に回転させながら圧入するが、管本体1の下端縁に掘削ビット部21を取り付けることにより圧入途中に硬い岩盤層などが存在している場合でも管本体を回転させながらこれらを切り崩して地中に進入させることができる。
【0020】
図2,3において、地面上にチュービング装置40が設置されており、このチュービング装置40の中央に軸心を縦方向に配置した先行掘削管20をチャックで掴み、先行掘削管20を回転させながら地中に押し込みさせる。
図2において、チュービング装置40は、機体枠41に支持された図示しない管回転用の回転体、回転体を回転可能に支持する昇降フレーム、昇降装置、チャック部材、チャックシリンダ等を有する公知の全回転チュービング装置である。チュービング装置40の下面で地面上には受板42が予め載置されている。また、チュービング装置40を両側から挟みつけるようにカウンタウエイト43が配置されている。カウンタウエイト43は、大型の管体の圧入操作に際してチュービング装置40が反動で移動しないようにチュービング装置40全体を安定化させる。
【0021】
本発明に係る大型管の地中建込み方法における第1の工程は、埋設させる管より径大の先行掘削管であり、埋設管1の平面視埋設外径を内包する管壁位置となるように埋設管1の埋設に先立って地面に対して該先行掘削管20を圧入掘削させる。すなわち、例えば
図1において最終的に埋設して建て込むべき管1の地上平面位置に対応した中心位置Qについて、チュービング装置40の回動中心を設定し、これに埋設すべき管1より径大の先行掘削管20の中心位置をセットして、先行掘削管20を圧入埋設する。先行掘削管20と埋設本管1とは必ずしも同心位置に設定される必要はない。先行掘削管20の圧入掘削後、その管20内に本埋設用の管1を挿入配置させる間隔的余裕があればよい。実施形態では、理解を容易化するために、先行掘削管内に降下挿入される埋設本管1と先行掘削管20とは、直径線で縦断すると両端側にそれぞれ所要の間隔D(
図5(b)参照)が形成され、先行掘削管20に接触しないように同心位置で直径が異なる円のように圧入される。これによって、先行掘削管20の圧入埋設位置が
図1に示すように、埋設管1の平面視埋設外径を内包する先行掘削管の管壁位置となるように埋設管1の埋設に先立って地面に対して該先行掘削管20を圧入掘削させる。
【0022】
先行掘削管20は、埋設本管1の埋設建込みに先立って該埋設管1を挿入配置するための地中空隙を形成すべく、先行して掘削しつつ管内を排土し、管内に空間100を形成する。そして、掘削後の管内空間に埋設本管を挿入配置させる際に形成された縦穴の周壁が崩壊しないように崩落防止管として機能する。
【0023】
[第二工程]
先行掘削管20のチュービング装置40による回転圧入掘削と同時に先行掘削管の下端の掘削ビット21を介した掘削により管内に排出されて生じる掘削土は排土される。すなわち、
図30において、チュービング装置40で先行掘削管20を回転させながら地中に圧入する際、同時に先行掘削管20の内側の土を排土機44で地上側に排出させる。実施形態において、排土機は、クローラクレーン等重機により吊支され、落下力によって地盤に打ち込み、土砂をつかみ取る方式のグラブハンマー等の公知の大口径掘削機械が用いられている。なお、先行掘削管の掘削に際し、深度を徐々に大きくするに従い通常は、管本体の下端側の地中から水が管の内側に浸出してくる場合が多い。水の浸出は数メートルの深度でも数十メートルの深度でも
あり得る。
【0024】
[第三工程]
図4において、排土機44により管内を排土させながら計画深さまで先行掘削管20を圧入させた後に該先行掘削管20の管内空間に埋設本管としての有底埋設管1を挿入降下させて先行掘削管と埋設管とで二重管状に配置させる(
図5参照)。
図4(b)において、先行掘削管20の内側に配置しする有底埋設管1は、上端側となる一端側を開口した鋼製の円筒管からなる、いわゆるケーシングチューブと称される鋼管である。複数鋼管を連結して構成される。
【0025】
有底埋設管1は、下端が水密状態を保持して内外を閉鎖するように底壁2が予め地上側の製作で取付られている。さらに、埋設管1の内部であって底壁2の上部、すなわち有底埋設管1の内底部には抗浮力錘部3が設けられている。抗浮力錘部3は、先行掘削管を計画深さまで圧入掘削させた後に該先行掘削管の管内空間に有底埋設管1を挿入降下させる際に、管の下端の地中側からの浸出水の浮力に対抗して有底埋設管1が浮き上がらないようにするものである。抗浮力錘部3は、浮力に対抗し得る重力を有する有体物であればよく、鋼材やコンクリート、あるいはそれらの廃材等でもよい。なお、それらの抗浮力錘部3の上面は、管内空間の利用形態に応じて任意のフローリングが施される。
【0026】
さらに、本実施形態において、有底埋設管1の底壁1の外部には下方に先端側を向けた旋回食込器4が設けられている。旋回食込器4は、有底埋設管1を先行掘削管20の管内空間へ挿入降下させて着底した後に、有底埋設管1自体を縦軸回りに旋回させて底壁2外の地盤に有底埋設管1の底部を食い込ませて地盤Gに一体化させる手段であり、本実施形態において、
図4~
図7に示すように、スクリュ軸5とスクリュ軸5外周回りに螺旋刃6を取り付けたスクリュ羽根7から構成されている。旋回食込器4は本体側を旋回させることにより地面に食い込んでいく機構であれば、任意の構造の装置を採用することができる。また、計画深さ部分の地盤状態に応じて下方に長いスクリュ羽根としてもよい。実施形態では、二重管状態に配置された先行掘削管とその内側に挿入された有底埋設管1との上部を連結し、両管を一体としてチュービング装置で旋回させて有底埋設管1の地盤への食い込み状態を確保するようにしている。
【0027】
有底埋設管1を先行掘削管20の内側に同心状位置に挿入降下させるに際しては、所要の軸方向長さのユニット管をチュービング装置40で把持しながらそのまま降下させてもよいし、また、重機クレーン等の吊支装置に支持させた状態で挿入降下させてもよい。その際、両管間の空隙Dを保持して円滑迅速に有底埋設管1は先行掘削管20の内側に挿入配置される。
【0028】
[第四工程]
埋設管1を所定深さ位置まで挿入した後に先行掘削管20を抜き上げる。先行掘削管20の地上側への抜き上げ作業について、チュービング装置40で把持させて軸回り反対方向に回転させながら地中に抜き上げることもできる。この場合、先行掘削管20の圧入掘削、埋設管1の管20内側への挿入配置、先行掘削管20の抜き上げ操作まで、主要な装置の段取り替えの必要がない。したがって、作業工数が大幅に削減でき、作業時間短縮、作業労力の軽減、作業コストの大幅低減を達成し得る。なお、クレーンその他の吊り上げ機能を有する重機を用いて先行掘削管20を抜き上げるようにしてもよい。
【0029】
実施形態では、先行掘削管20を地上側に抜き上げた跡に形成される隙間に例えばグラウト材等の流動固化材を注入して固化部12を形成し、地盤と一体化させている。なお、両管間の間隔の大きさや地盤の状態によってはこの固化部12の形成は必ずしも行わなくともよい。
【0030】
上記のように、地中において先行掘削管20でその内側に有底埋設管1の収容空間を形成し、周壁の土留めを施した状態で収容空間に有底埋設管1を挿入降下させ、地盤側と固定させるから、有底埋設管1内での諸設備の設置、施工、構築、インテリア配備その他の管内空間利用のための設備等を地上にて行うことができる。また、有底埋設管1の止水のための全体工事、確認も地上側で行えるから埋設管1内への水の侵入対策の万全を期することができる。例えば動力付きの昇降ラックや、換気装置、設備、備品、食料、物品の保管設備等構築、災害避難用のシェルター、その他任意の用途の利用形態について、地上側で設計し具体的に管内に設備した状態で挿入降下して埋設管を利用することができる。
【0031】
上記第1~第4工程により大型管の地中建込みを行うことにより、有底埋設管1内での利用目的に応じた組立て設備施工を予め地上側で管内について行うから設備の精度の良い完成状態を保持することができるばかりでなく、作業工程が簡単で工程数も少なく作業時間短縮、工期短縮、作業コスト大幅低減に資する。特に、地上側で管底部からの地下水の侵入防止対策を万全に施して安定的かつ安全に管内利用を持続させることが可能である。
【0032】
また、先行掘削管を計画深さまで圧入させた後に該先行掘削管の管内空間に挿入降下させる有底埋設管の内底部には、地中側からの浮力に対する抗浮力錘部が設けられていることにより、先行掘削管の管内空間に有底埋設管1を挿入降下させる際に、管の下端の地中側からの浸出水の浮力により埋設本管1が不安定となることなく安定的に先行掘削管の管内空間に配置させることができる。
【0033】
また、有底埋設管の底外部には下方に先端側を向けた旋回食込器が設けられ、有底埋設管の先行掘削管の管内空間への挿入降下後に有底埋設管自体を縦軸回りに旋回させる工程を含むことにより、先行掘削管20の管内空間において着底した後に、有底埋設管1自体の縦軸回り旋回により、旋回食込器を介して底壁22外の地盤に有底埋設管1の底部を食い込ませて地盤Gに一体化させることが可能である。
【0034】
また、本発明の有底埋設管は、上記の方法により大型管の地中建込みを行う方法において用いる有底埋設管であり、先行掘削管を計画深さまで圧入させた後に先行掘削管の管内空間に挿入降下させる有底埋設管であり、その内底部には、地中側からの浮力に対する抗浮力錘部が設けられている構成とすることにより、先行掘削管の管内空間に有底埋設管1を挿入降下させる際に、管の下端の地中側からの浸出水の浮力により埋設本管1が不安定となることなく安定的に先行掘削管の管内空間に配置させることができる。
【0035】
また、上記の有底埋設管は、底外部に下方に先端側を向けた旋回食込器が設けられていることにより、先行掘削管20の管内空間において着底した後に、有底埋設管1自体の縦軸回り旋回により、旋回食込器を介して底壁2外の地盤に有底埋設管1の底部を食い込ませて地盤Gに一体化させることが可能である。
【0036】
以上説明した本発明の大型管の地中建込み方法及び有底埋設管は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の本質を逸脱しない範囲において、他の実施形態を用いるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の大型管の地中建込み方法及び有底埋設管は、地震、津波、土砂災害、戦時危険状態等でシェルターとして利用できるうえ、通常には種々の物品の収納、保管倉庫などでも利用することができる。また、光や空気についての生育条件がそれほど厳しくないきのこ類栽培空間を形成することもできる。
【符号の説明】
【0038】
1 有底埋設管(埋設本管)
2 底壁
3 抗浮力錘部
4 旋回食込器
5 スクリュ軸
6 螺旋刃
7 スクリュ羽根
20 先行掘削管
21 掘削ビット部
21a 掘削ビット
40 チュービング装置
44 排土機
D 両管間の間隙
G 地盤
【手続補正書】
【提出日】2022-02-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内空間を種々の用途に用いるべく地中に縦方向に埋設させる大型の埋設管の建込み方法であり、
埋設させる管より径大の先行掘削管であり、埋設管の平面視埋設外径を内包する管壁位
置となるように埋設管の埋設に先立って地面に対して該先行掘削管を圧入掘削させる工程
と、
先行掘削管の掘削と同時に管内の掘削土を排土する工程と、
計画深さまで先行掘削管を圧入させた後に掘削管の管内空間に有底埋設管を挿入降下させて先行掘削管と埋設管とで二重管状に配置させる工程と、
埋設管を所定深さ位置まで挿入した後に先行掘削管を抜き上げる工程と、を含むことを特徴とする大型管の地中建込み方法。
【請求項2】
先行掘削管を計画深さまで圧入させた後に該先行掘削管の管内空間に挿入降下させる有底埋設管の内底部には、地中側からの浮力に対する抗浮力錘部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の大型管の地中建込み方法。
【請求項3】
有底埋設管の底外部には下方に先端側を向けた旋回食込器が設けられ、有底埋設管の
先行掘削管の管内空間への挿入降下後に有底埋設管自体を縦軸回りに旋回させる工程を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の大型管の地中建込み方法。
【請求項4】
請求項2の先行掘削管を計画深さまで圧入させた後に先行掘削管の管内空間に挿入降下させる有底埋設管であり、
底外部に下方に先端側を向けた旋回食込器が設けられていることを特徴とする有底埋設管。
【請求項5】
内底部には、地中側からの浮力に対する抗浮力錘部が設けられていることを特徴とする請求項4記載の有底埋設管。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震、津波、台風等自然災害や人災時の人や物の一時避難用のシェルター、、物や食物保管用の保管庫、レジャー用その他多目的の空間を形成可能な大型管の地中建込み方法及び有底埋設管に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、地震、津波、台風等自然災害や人災時に人や物の一時避難、物や食物保管用のシェルター、レジャー用その他多目的空間を、比較的短期で地下設置可能であり、低コストで簡易に施工でき、しかも占有平面スペースが小さくて地上構築物や設備に左右されにくい大型有底管体について、特許文献1において提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は大型管体を地中に圧入後、管体の上端開口から水中コンクリートを供給して大型管体の下端より下方の凹部に投入して管の下端外部のコンクリート基盤を形成し、この後に管体内を下降させて充填孔付きの底蓋を管体の下端部分に配置し、さらにその充填孔を介して底蓋下面と管外のコンクリート基盤との隙間にモルタルを注入して底蓋と管外のコンクリート基盤とを一体化させて管体底部を構築しようとするものである。
【0005】
この方法では、大型管体の地中建込みについて管体の地中圧入後に管の下端側において管内への水の進入を抑制しながら底蓋の端部を管の内壁に溶接接合することができる。しかしながら、管体を地中に圧入後にコンクリートを供給していったん大型管体の下端の下方の凹部に該コンクリートを投入し、その後管体の下端側に配置した底蓋の充填孔からモルタル注入して底蓋下面と管外のコンクリート基盤との隙間にモルタルを注入するので、底蓋下面側のコンクリート基盤の状態を確認できないままに作業を行わなければならない。また、底蓋の充填孔からのモルタル注入作業は限られたスペースでの狭所作業であり、作業段取りや注入作業に時間がかかり、作業コストがかかる。また、注入後の底蓋下面と管外のコンクリート基盤との隙間の充填を確認できないので必要以上のモルタル注入を行って作業全体、あるいは材料に無用なコストがかかる問題があった。これに対し、出願人は、管内壁にリブ部等を取り付けた管本体の内側の土を排出しながら該管本体を地中鉛直方向に圧入する工程と、管本体を計画深さまで圧入後に管本体内のリブ部分に対応する高さまで生コンクリートを投入する工程と、生コンクリートの硬化後に、管本体内で底蓋を吊下ろして硬化コンクリートの上部に配置する工程と、底蓋の外縁と管本体の内壁面とを溶接して管本体と底蓋とを接合する工程と、を含む大型有底管体の建込み方法を特願2020-192207号により提案した。
【0006】
この方法では、管本体内のリブ部分まで投入するコンクリートの状態等を目視しながら充填作業を行えるので作業状態や作業終了の確認を確実に行える利点がある。一方、この方法では、管本体の地下十数メートルまでの圧入後、生コンクリートを管内に投入して管内下端部の所要高さまで充填する作業であるから、暗所で多湿の劣悪な作業環境下で作業者による管内補助作業が必要である。また、作業時間が掛かりまた、コンクリートの場所打ち工法の一つであるから水の漏洩の有無確認を確実に行うことは困難であった。さらに、作業コストが大幅に膨らむ問題があった。
【0007】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、簡単な工程の組合せで円滑、確実に埋設管の埋設作業を遂行し、かつ施工後に漏水等を生じることを確実に防止し得る大型管の地中建込み方法及び有底埋設管を提供することにある。また、本発明の他の目的は、短時間で低コストにより埋設管の埋設作業を完了させることができる大型管の地中建込み方法及び有底埋設管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、管内空間を種々の用途に用いるべく地中に縦方向に埋設させる大型の埋設管の建込み方法であり、埋設させる管1より径大の先行掘削管20であり、埋設管1の平面視埋設外径を内包する管壁位置となるように埋設管1の埋設に先立って地面に対して該先行掘削管20を圧入掘削させる工程と、先行掘削管20の掘削と同時に管内の掘削土を排土する工程と、計画深さまで先行掘削管20を圧入させた後に掘削管20の管内空間100に有底埋設管1を挿入降下させて先行掘削管20と埋設管1とで二重管状に配置させる工程と、埋設管1を所定深さ位置まで挿入した後に先行掘削管20を抜き上げる工程と、を含む大型管の地中建込み方法から構成される。
【0009】
その際、先行掘削管20を計画深さまで圧入させた後に該先行掘削管の管内空間100に挿入降下させる有底埋設管1の内底部には、地中側からの浮力に対する抗浮力錘部3が設けられるとよい。
【0010】
また、有底埋設管1の底外部には下方に先端側を向けた旋回食込器4が設けられ、有底埋設管1の先行掘削管20の管内空間100への挿入降下後に有底埋設管1自体を縦軸回りに旋回させる工程を含むとなおよい。
【0011】
また、本発明は、先行掘削管20を計画深さまで圧入させた後に先行掘削管20の管内空間100に挿入降下させる有底埋設管1であり、底外部に下方に先端側を向けた旋回食込器4が設けられた有底埋設管から構成される。
【0012】
その際、内底部には、地中側からの浮力に対する抗浮力錘部3を設けるとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の大型有底管体の建込み方法及び有底埋設管によれば、管本体の改良により作業工程を大幅に簡略化でき、各作業自体が簡単、明確で作業時間を大幅に短縮でき、さらに作業コストを大幅に低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の大型管の地中建込み方法及び有底埋設管の実施形態にかかる先行掘削管と埋設管の地中埋設位置関係を示した平面説明図である。
【
図2】本発明の実施形態にかかる先行掘削管をチュービング装置を用いて地中に圧入させる状態を示す正面説明図である。
【
図3】
図2の先行掘削管の地中圧入を実施するチュービング装置の斜視説明である。
【
図4】(a)は、排土した先行掘削管の管内に有底埋設管を挿入降下させる状態を示す説明図である。(b)は、有底埋設管の一部省略正面説明図である。
【
図5】(a)は、先行掘削管の管内に埋設管を二重管状に配置した状態を示す説明図である。(b)は、先行掘削管と埋設管との間に設定された二重管状の間隙を示す説明図である。
【
図6】先行掘削管の管内に埋設管を二重管状に配置した後、外側の先行掘削管を地上側に抜き上げる状態を示す説明図である。
【
図7】先行掘削管を抜き上げた後の埋設管の周囲にセメントミルクを投入して固化部を形成した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の大型管の地中建込み方法及び有底埋設管の実施形態について説明する。
【0016】
本発明に係る大型管の地中建込み方法に用いられる大型の有底埋設管は、管内空間を種々の用途に用いるために埋設し建込みされる。例えば地震その他の自然災害、戦争その他の人的災害からの避難用シェルター等として使用される。また書類、宝飾品、磁気テープ、フィルムその他の電子記録媒体等の保管庫等として使用され得る。また、薬品、薬剤、水、その他の液体、その他の有価物資材の倉庫、その他任意の用途の空間利用用管体として用いられる。本発明に係る大型の有底埋設管は内部に空間を有し底部が閉鎖された中空の有底管体である。管体は、例えば直径が2メートル以上~5メートル程度で、地中深さが例えば5メートル~20メートル、あるいはそれ以上の地中深さで埋設される管体であり、火山灰土や粘土質土の地中はもとより、特に地中に水や転石を多く含む地域においても有効に用いられる。本発明の大型管の地中建込み方法は、これらの地域において有効に活用し得る。
【0017】
本発明の大型有底管体はその建込み工程によって部材の構成が異なるので、各工程とともに大型有底管体について説明する。
【0018】
[第一工程]
図1ないし
図7は、本発明の大型管の地中建込み方法の一実施形態を説明している。
図1は地中に略鉛直方向に圧入させる先行掘削管20と、埋設管1と、の圧入位置関係を示す平面説明図であり、内側の一点鎖線示の管が最終的に埋設して建込みする埋設管1であり、外側の実線示の管が先行掘削管20を示す。この方法では、建て込み位置が設定された地盤G中に先行掘削管20を圧入しつつ排土させ、先行掘削管20内側の空間100に最終的に建込みする埋設管1を挿入降下させ、その後、先行掘削管20を地上に抜き上げることにより大型管を建込みさせるものである。
【0019】
先行掘削管20は、
図2,4,5に示すように、両端部(図中では上下)を開口した鋼製の円筒管からなる、いわゆるケーシングチューブと称される鋼管である。単一鋼管で目的の地中深さに到達できる場合には1本の鋼管で構成されるが、複数鋼管を連結して使用するのが通常である。通常は、数メートル直径で数メートルの軸方向長さのユニット管をチュービング装置で把持させて軸回り方向に回転させながら地中に圧入させる。チュービング装置内で1つのユニット管の圧入降下が完了しない状態で他のユニット管の管端同士を溶接又は管内外の水密保持状態で任意の締結手段により接続しながら、順次、圧入下降させる。例えば、カップリング部材を用いて上下対向させたユニット管の管端どうしをねじ締結し、複数の管体を連結して例えば20m程度の長さの一体の先行掘削管を形成しながら圧入下降させてもよい。本実施形態では、
図4(b)に示すように、管内外を水密保持のために地上にて予め溶接部10において、溶接連結している。先行掘削管20は、下端に複数の掘削ビット部21を取り付けており、チュービング装置40の軸回り回転に伴い回転あるいは旋回掘削しながら下方に掘り進んでいく。これによって、転石が多い地盤であっても掘削ビット21部で岩盤等を破砕しつつ確実に下方へ掘進することができる。掘削ビット部21は、掘削ビット21aを間隔を設けて管本体の下端縁に環状に複数個固定して構成されている。後述するように、管本体1を地中に圧入するには専用機械装置により管本体の長手軸周り方向に回転させながら圧入するが、管本体1の下端縁に掘削ビット部21を取り付けることにより圧入途中に硬い岩盤層などが存在している場合でも管本体を回転させながらこれらを切り崩して地中に進入させることができる。
【0020】
図2,3において、地面上にチュービング装置40が設置されており、このチュービング装置40の中央に軸心を縦方向に配置した先行掘削管20をチャックで掴み、先行掘削管20を回転させながら地中に押し込みさせる。
図2において、チュービング装置40は、機体枠41に支持された図示しない管回転用の回転体、回転体を回転可能に支持する昇降フレーム、昇降装置、チャック部材、チャックシリンダ等を有する公知の全回転チュービング装置である。チュービング装置40の下面で地面上には受板42が予め載置されている。また、チュービング装置40を両側から挟みつけるようにカウンタウエイト43が配置されている。カウンタウエイト43は、大型の管体の圧入操作に際してチュービング装置40が反動で移動しないようにチュービング装置40全体を安定化させる。
【0021】
本発明に係る大型管の地中建込み方法における第1の工程は、埋設させる管より径大の先行掘削管であり、埋設管1の平面視埋設外径を内包する管壁位置となるように埋設管1の埋設に先立って地面に対して該先行掘削管20を圧入掘削させる。すなわち、例えば
図1において最終的に埋設して建て込むべき管1の地上平面位置に対応した中心位置Qについて、チュービング装置40の回動中心を設定し、これに埋設すべき管1より径大の先行掘削管20の中心位置をセットして、先行掘削管20を圧入埋設する。先行掘削管20と埋設本管1とは必ずしも同心位置に設定される必要はない。先行掘削管20の圧入掘削後、その管20内に本埋設用の管1を挿入配置させる間隔的余裕があればよい。実施形態では、理解を容易化するために、先行掘削管内に降下挿入される埋設本管1と先行掘削管20とは、直径線で縦断すると両端側にそれぞれ所要の間隔D(
図5(b)参照)が形成され、先行掘削管20に接触しないように同心位置で直径が異なる円のように圧入される。これによって、先行掘削管20の圧入埋設位置が
図1に示すように、埋設管1の平面視埋設外径を内包する先行掘削管の管壁位置となるように埋設管1の埋設に先立って地面に対して該先行掘削管20を圧入掘削させる。
【0022】
先行掘削管20は、埋設本管1の埋設建込みに先立って該埋設管1を挿入配置するための地中空隙を形成すべく、先行して掘削しつつ管内を排土し、管内に空間100を形成する。そして、掘削後の管内空間に埋設本管を挿入配置させる際に形成された縦穴の周壁が崩壊しないように崩落防止管として機能する。
【0023】
[第二工程]
先行掘削管20のチュービング装置40による回転圧入掘削と同時に先行掘削管の下端の掘削ビット21を介した掘削により管内に排出されて生じる掘削土は排土される。すなわち、
図30において、チュービング装置40で先行掘削管20を回転させながら地中に圧入する際、同時に先行掘削管20の内側の土を排土機44で地上側に排出させる。実施形態において、排土機は、クローラクレーン等重機により吊支され、落下力によって地盤に打ち込み、土砂をつかみ取る方式のグラブハンマー等の公知の大口径掘削機械が用いられている。なお、先行掘削管の掘削に際し、深度を徐々に大きくするに従い通常は、管本体の下端側の地中から水が管の内側に浸出してくる場合が多い。水の浸出は数メートルの深度でも数十メートルの深度でもあり得る。
【0024】
[第三工程]
図4において、排土機44により管内を排土させながら計画深さまで先行掘削管20を圧入させた後に該先行掘削管20の管内空間に埋設本管としての有底埋設管1を挿入降下させて先行掘削管と埋設管とで二重管状に配置させる(
図5参照)。
図4(b)において、先行掘削管20の内側に配置しする有底埋設管1は、上端側となる一端側を開口した鋼製の円筒管からなる、いわゆるケーシングチューブと称される鋼管である。複数鋼管を連結して構成される。
【0025】
有底埋設管1は、下端が水密状態を保持して内外を閉鎖するように底壁2が予め地上側の製作で取付られている。さらに、埋設管1の内部であって底壁2の上部、すなわち有底埋設管1の内底部には抗浮力錘部3が設けられている。抗浮力錘部3は、先行掘削管を計画深さまで圧入掘削させた後に該先行掘削管の管内空間に有底埋設管1を挿入降下させる際に、管の下端の地中側からの浸出水の浮力に対抗して有底埋設管1が浮き上がらないようにするものである。抗浮力錘部3は、浮力に対抗し得る重力を有する有体物であればよく、鋼材やコンクリート、あるいはそれらの廃材等でもよい。なお、それらの抗浮力錘部3の上面は、管内空間の利用形態に応じて任意のフローリングが施される。
【0026】
さらに、本実施形態において、有底埋設管1の底壁1の外部には下方に先端側を向けた旋回食込器4が設けられている。旋回食込器4は、有底埋設管1を先行掘削管20の管内空間へ挿入降下させて着底した後に、有底埋設管1自体を縦軸回りに旋回させて底壁2外の地盤に有底埋設管1の底部を食い込ませて地盤Gに一体化させる手段であり、本実施形態において、
図4~
図7に示すように、スクリュ軸5とスクリュ軸5外周回りに螺旋刃6を取り付けたスクリュ羽根7から構成されている。旋回食込器4は本体側を旋回させることにより地面に食い込んでいく機構であれば、任意の構造の装置を採用することができる。また、計画深さ部分の地盤状態に応じて下方に長いスクリュ羽根としてもよい。実施形態では、二重管状態に配置された先行掘削管とその内側に挿入された有底埋設管1との上部を連結し、両管を一体としてチュービング装置で旋回させて有底埋設管1の地盤への食い込み状態を確保するようにしている。
【0027】
有底埋設管1を先行掘削管20の内側に同心状位置に挿入降下させるに際しては、所要の軸方向長さのユニット管をチュービング装置40で把持しながらそのまま降下させてもよいし、また、重機クレーン等の吊支装置に支持させた状態で挿入降下させてもよい。その際、両管間の空隙Dを保持して円滑迅速に有底埋設管1は先行掘削管20の内側に挿入配置される。
【0028】
[第四工程]
埋設管1を所定深さ位置まで挿入した後に先行掘削管20を抜き上げる。先行掘削管20の地上側への抜き上げ作業について、チュービング装置40で把持させて軸回り反対方向に回転させながら地中に抜き上げることもできる。この場合、先行掘削管20の圧入掘削、埋設管1の管20内側への挿入配置、先行掘削管20の抜き上げ操作まで、主要な装置の段取り替えの必要がない。したがって、作業工数が大幅に削減でき、作業時間短縮、作業労力の軽減、作業コストの大幅低減を達成し得る。なお、クレーンその他の吊り上げ機能を有する重機を用いて先行掘削管20を抜き上げるようにしてもよい。
【0029】
実施形態では、先行掘削管20を地上側に抜き上げた跡に形成される隙間に例えばグラウト材等の流動固化材を注入して固化部12を形成し、地盤と一体化させている。なお、両管間の間隔の大きさや地盤の状態によってはこの固化部12の形成は必ずしも行わなくともよい。
【0030】
上記のように、地中において先行掘削管20でその内側に有底埋設管1の収容空間を形成し、周壁の土留めを施した状態で収容空間に有底埋設管1を挿入降下させ、地盤側と固定させるから、有底埋設管1内での諸設備の設置、施工、構築、インテリア配備その他の管内空間利用のための設備等を地上にて行うことができる。また、有底埋設管1の止水のための全体工事、確認も地上側で行えるから埋設管1内への水の侵入対策の万全を期することができる。例えば動力付きの昇降ラックや、換気装置、設備、備品、食料、物品の保管設備等構築、災害避難用のシェルター、その他任意の用途の利用形態について、地上側で設計し具体的に管内に設備した状態で挿入降下して埋設管を利用することができる。
【0031】
上記第1~第4工程により大型管の地中建込みを行うことにより、有底埋設管1内での利用目的に応じた組立て設備施工を予め地上側で管内について行うから設備の精度の良い完成状態を保持することができるばかりでなく、作業工程が簡単で工程数も少なく作業時間短縮、工期短縮、作業コスト大幅低減に資する。特に、地上側で管底部からの地下水の侵入防止対策を万全に施して安定的かつ安全に管内利用を持続させることが可能である。
【0032】
また、先行掘削管を計画深さまで圧入させた後に該先行掘削管の管内空間に挿入降下させる有底埋設管の内底部には、地中側からの浮力に対する抗浮力錘部が設けられていることにより、先行掘削管の管内空間に有底埋設管1を挿入降下させる際に、管の下端の地中側からの浸出水の浮力により埋設本管1が不安定となることなく安定的に先行掘削管の管内空間に配置させることができる。
【0033】
また、有底埋設管の底外部には下方に先端側を向けた旋回食込器が設けられ、有底埋設管の先行掘削管の管内空間への挿入降下後に有底埋設管自体を縦軸回りに旋回させる工程を含むことにより、先行掘削管20の管内空間において着底した後に、有底埋設管1自体の縦軸回り旋回により、旋回食込器を介して底壁22外の地盤に有底埋設管1の底部を食い込ませて地盤Gに一体化させることが可能である。
【0034】
また、本発明の有底埋設管は、上記の方法により大型管の地中建込みを行う方法において用いる有底埋設管であり、先行掘削管を計画深さまで圧入させた後に先行掘削管の管内空間に挿入降下させる有底埋設管であり、その内底部には、地中側からの浮力に対する抗浮力錘部が設けられている構成とすることにより、先行掘削管の管内空間に有底埋設管1を挿入降下させる際に、管の下端の地中側からの浸出水の浮力により埋設本管1が不安定となることなく安定的に先行掘削管の管内空間に配置させることができる。
【0035】
また、上記の有底埋設管は、底外部に下方に先端側を向けた旋回食込器が設けられていることにより、先行掘削管20の管内空間において着底した後に、有底埋設管1自体の縦軸回り旋回により、旋回食込器を介して底壁2外の地盤に有底埋設管1の底部を食い込ませて地盤Gに一体化させることが可能である。
【0036】
以上説明した本発明の大型管の地中建込み方法及び有底埋設管は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の本質を逸脱しない範囲において、他の実施形態を用いるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の大型管の地中建込み方法及び有底埋設管は、地震、津波、土砂災害、戦時危険状態等でシェルターとして利用できるうえ、通常には種々の物品の収納、保管倉庫などでも利用することができる。また、光や空気についての生育条件がそれほど厳しくないきのこ類栽培空間を形成することもできる。
【符号の説明】
【0038】
1 有底埋設管(埋設本管)
2 底壁
3 抗浮力錘部
4 旋回食込器
5 スクリュ軸
6 螺旋刃
7 スクリュ羽根
20 先行掘削管
21 掘削ビット部
21a 掘削ビット
40 チュービング装置
44 排土機
D 両管間の間隙
G 地盤